説明

薬液用包装具

【課題】プラスチックアンプル外への薬液の透過を抑制することができると同時に、プラスチックアンプルの材料選択の自由度を広げることができる薬液包装具を提供すること。
【解決手段】薬液が収容された薬液収容室12を有するプラスチックアンプル2を、0.20cc/m・day・atm以下の酸素透過度および0.05g/m・day以下の水蒸気透過度を有する、アルミナ蒸着層30,32が形成されたポリエチレンテレフタレートフィルム31,33からなる内層27および外層28の2層構造の2層フィルム29からなる外袋3の収容室26に収容する。これにより、プラスチックアンプル2外への薬液の透過を抑制することができると同時に、プラスチックアンプル2の材料選択の自由度を広げることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬液の包装具に関し、詳しくは、薬液が収容されたプラスチックアンプルを包む外袋を備える薬液包装具に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、薬液を収容するアンプルなどの容器は、衝撃に対する強度、取扱い易さ、安全性などの観点より、ガラス製の容器からプラスチック製の容器(プラスチックアンプル)へと移行している。
プラスチックアンプルは、例えば、ポリエチレンやポリプロピレンなどのポリオレフィンを用いて形成されている。例えば、ポリエチレンからなる内層、エチレン−酢酸ビニル共重合体からなる中間防気層およびポリプロピレンからなる外層からなる3層フィルムを用いて形成された注射薬剤封入用容器が知られている(特許文献1参照)。
【0003】
一方、薬液がアンプル外へ透過することによる薬液の内容量の減少をできる限り抑制すべく、例えば、環状オレフィン系化合物を重合体成分とする樹脂材料からなる衛生品用容器が提案されている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭60−24844号公報
【特許文献2】特開平5−293159号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献2に開示された手法以外にも、現在まで、アンプル外への薬液の透過を抑制するために様々なプラスチック材料を用いた手法が提案されている。
しかしながら、アンプルを形成するプラスチック材料は、アンプルに収容された薬液に接するものであるため、薬液に対する溶出性が低い材料に制約される。
そこで、本発明の目的は、プラスチックアンプル外への薬液の透過を抑制することができると同時に、プラスチックアンプルの材料選択の自由度を広げることができる薬液包装具を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するための本発明の薬液包装具は、薬液が収容された薬液収容室を有するプラスチックアンプルと、前記プラスチックアンプルが収容された収容室を有し、当該収容室が密閉された外袋とを含み、前記外袋が、第1フィルムと第2フィルムとの2層構造フィルムからなり、前記第1フィルムおよび前記第2フィルムは、0.20cc/m・day・atm以下の酸素透過度および0.05g/m・day以下の水蒸気透過度を有する、アルミナ蒸着層が形成されたポリエチレンテレフタレートフィルムからなる。
【0007】
この構成によれば、プラスチックアンプルが上記特性を有するポリエチレンテレフタレートフィルムの2層構造フィルムからなる外袋で包まれているので、プラスチックアンプル外への薬液の透過を抑制することができる。すなわち、プラスチックアンプル外への薬液の透過を、第1フィルム/第2フィルムの2層構造フィルムからなる外袋を設けることにより抑制することができるので、プラスチックアンプルの材料に関しては、薬液透過を抑制する特性よりも他の特性(例えば、薬液に対する低溶出性)を優先して選択することができる。その結果、プラスチックアンプル外への薬液の透過を抑制することができると同時に、プラスチックアンプルの材料選択の自由度を広げることができる。
【0008】
また、前記外袋の前記収容室内の圧力は大気圧であってもよい。
この場合、薬液を長期間保存した後の薬液の減少量は、収容室を真空に保持した場合に比べて劣るが、プラスチックアンプルを外袋で包む際、例えば、外袋の収容室内を脱気して真空にする等の手間を省くことができる。そのため、短期間保存(例えば、薬液充填後2週間程度)の薬液の包装具として好適に使用することができる。その場合でも、薬液の透過を十分抑制することができる。
【0009】
また、前記プラスチックアンプルにおける薬液の内容量は、1mL〜5mLであってもよい。
すなわち、本発明によれば、麻薬(例えば、モルヒネ等)のように1回分の使用量が少量であり、その1回分単位で保存した場合の内容量の減少割合が大きいと、薬の作用を十分に得ることが困難になる薬液に対しても好適に使用することができる。
【0010】
また、前記プラスチックアンプルの外面と前記薬液収容室の内面との間の厚さは、400μm〜800μmであってもよい。
すなわち、本発明によれば、厚さが比較的に薄い(400μm〜600μm)プラスチックアンプルを使用した場合でも、プラスチックアンプル外への薬液の透過を効果的に抑制することができる
また、前記プラスチックアンプルは、ポリプロピレンを用いて形成されていてもよい。
【0011】
ポリプロピレンは、様々な薬液に対する溶出性が概ね低く、しかも汎用プラスチックであるため、薬液への不純物の溶出を抑制することができると同時に、プラスチックアンプルの低コスト化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施形態に係る薬液包装具の正面図である。
【図2】図1に示す薬液包装具の左側面図である。
【図3】図1に示す薬液包装具の平面図である。
【図4】図1に示す薬液包装具の底面図である。
【図5】図1に示す薬液包装具の断面図であって、図1のA−A切断面における断面を示す。
【図6】図1〜図5に示す薬液包装具の第1変形例を示す図である。
【図7】図1〜図5に示す薬液包装具の第2変形例を示す図である。
【図8】内容量1mLのプラスチックアンプルを25℃で保存したときの保存日数に対する内容量の減少割合を示すグラフである。
【図9】内容量2.5mLのプラスチックアンプルを25℃で保存したときの保存日数に対する内容量の減少割合を示すグラフである。
【図10】内容量1mLのプラスチックアンプルを40℃で保存したときの保存日数に対する内容量の減少割合を示すグラフである。
【図11】内容量2.5mLのプラスチックアンプルを40℃で保存したときの保存日数に対する内容量の減少割合を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下では、本発明の実施の形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。 図1は、本発明の一実施形態に係る薬液包装具の正面図である。図2は、図1に示す薬液包装具の左側面図である。図3は、図1に示す薬液包装具の平面図である。図4は、図1に示す薬液包装具の底面図である。図5は、図1に示す薬液包装具の断面図であって、図1のA−A切断面における断面を示す。なお、図1に示す薬液包装具について、背面図は正面図(図1)と同一に現れ、右側面図は左側面図(図2)と同一に現れる。
【0014】
薬液包装具1は、内部に薬液が収容されたプラスチックアンプル2と、プラスチックアンプル2を収容する外袋3とを含んでいる。
プラスチックアンプル2は、一端および他端を有する略ボトル状に形成され、一端に薬液を注出するための注出口4が形成されたアンプル本体5と、注出口4を密封するようにアンプル本体5に取り付けられた蓋6と、注出口4の周方向に沿って形成され、アンプル本体5と蓋6とを連接する薄肉部7とを一体的に有している。プラスチックアンプル2の長さLは、例えば、プラスチックアンプル2の内容量が1mLのとき46.0mmであり、プラスチックアンプル2の内容量が2.5mLのとき62.5mmであり、プラスチックアンプル2の内容量が5mLのとき70.0mmであり、プラスチックアンプル2の内容量が10mLのとき95.0mmである。また、プラスチックアンプル2の幅Wは、例えば、プラスチックアンプル2の内容量が1mL,2.5mL,5mLおよび10mLのとき18.7mmである。
【0015】
アンプル本体5は、周壁8および底壁9を有し、アンプル本体5の底壁を形成する有底筒状の胴部10と、胴部10における底壁9とは反対側の端部と連続し、胴部10よりも小径の略筒状のネック部11とを含んでいる。この実施形態では、胴部10の周壁8および底壁9によって区画される円柱状の中空部分が、薬液を収容するための薬液収容室12をなしている。
【0016】
薬液収容室12に収容される薬液の内容量は、例えば、1mL〜5mLである。また、収容される薬液の種類としては、例えば、注射用水(とりわけ、モルヒネ等の麻薬)、生理食塩水などが挙げられる。
また、胴部10の周壁8および底壁9の厚さT(アンプル本体5の外面と薬液収容室12の内面との間の厚さ)は、例えば、400μm〜800μmである(図5参照)。
【0017】
胴部10の周壁8には、アンプル本体5の中心軸13を挟んで互いに対向する位置に、周壁8から外方に向かって突出するリブ14が中心軸13の軸方向に沿って直線状に設けられている。また、胴部10の底壁9には、底壁9から外方に向かって突出するリブ15が設けられている。周壁8のリブ14と底壁9のリブ15とは、互いに連続している。
これら互いに連続する2つのリブ14,15は、プラスチックアンプル2の製造方法に起因して形成されるものである。リブ14,15が形成されることにより、アンプル本体5の剛性を向上させることができる。その結果、アンプル本体5の形状を維持することができる。
【0018】
周壁8のリブ14におけるネック部11側の延長上には、胴部10の内径とネック部11の内径との差に起因して生じた段部16においてネック部11の周壁17および胴部10の周壁8に跨る補強片18が設けられている。
補強片18は、ネック部11と胴部10との間に跨って形成されているため、胴部10とネック部11との間の剛性を著しく向上させることができる。そのため、例えば、プラスチックアンプル2の輸送中や取り扱い中において、胴部10から突出しているネック部11が破損しにくくなる。また、摘み片22(後述)を摘んで、薄肉部7を捩じ切り、または、折り裂く際に、補強片18に手指がかけやすくなる。しかも、確実な回り止めの作用があるため、プラスチックアンプル2の開封操作を、容易にかつ確実に行うことができる。
【0019】
補強片18は、フラット部19と、フラット部19の周囲に形成される面取り部20とを有している。補強片18の内部は、中空状の肉厚部分を形成している。これにより、補強片18自体の剛性が保たれ、補強効果がより一層向上するので、補強片18を把持した場合に、補強片18の変形を抑制することができる。しかも、摘み片22(後述)を捩じる際に、補強片18への指当たりが良好となる。
【0020】
ネック部11は、アンプル本体5の注出口4を有している。ネック部11は、例えば、アンプル本体5内の薬液を吸引するためのシリンジのノズルが挿入された場合に、そのノズルが安定な状態で固定されるように、使用されるシリンジのノズルとフィットするような内径を有していることが好ましい。
蓋6は、薄肉部7を介してアンプル本体5のネック部11に接続され、ネック部11と略同じ径を有し、頂部が閉塞された筒状の接続部21と、当該接続部21の周壁および頂壁に跨って設けられた摘み片22とを含んでいる。
【0021】
摘み片22は、フラット部23と、フラット部23の周囲に形成される面取り部24とを有している。摘み片22の内部は、中空状の肉厚部分を形成している。これにより、摘み片22自体の剛性が保たれているので、摘み片22を把持した場合に、摘み片22の変形を抑制することができる。
摘み片22は、図2に示すように、補強片18と同一平面上に形成されるのが好ましい。この場合、すっきりとした外観が得られ、かつ、プラスチックアンプル2を収納しやすくなる。また、摘み片22を捩じる際に、補強片18を手指に引っ掛けやすくなる。なお、摘み片22は、補強片18と直交する方向に形成されていてもよい。
【0022】
摘み片22および補強片18は、プラスチックアンプル2の製造時において、アンプル本体5の各部と同時に成形することができる。
薄肉部7は、アンプル本体5の膜厚(胴部10の厚さT)よりも薄く形成されている部分であり、例えば、0.4N・m/mm以下の力で開封できる程度の厚さで形成されている。具体的には、0.2μm〜0.3μm程度の厚さを有していることが好ましい。
【0023】
そして、このプラスチックアンプル2は、蓋6の摘み片22を把持して捩じり、または、折り曲げることにより薄肉部7を捩じ切りまたは折り裂くことによって、開封することができる。開封によりアンプル本体5の注出口4が開放され、その注出口4にシリンジのノズル(図示せず)を挿入し、アンプル本体5内に収容されている薬液を採取できる状態となる。
【0024】
上記したアンプル本体5および蓋6を一体的に有するプラスチックアンプル2は、例えば、ブローフィルシール(BFS)法によって製造することができる。
例えば、まず、プラスチックアンプル2の材料を押出成形することにより、パリソンを作製する。
使用される材料としては、アンプル本体5に対する溶出性が低いプラスチックであれば特に制限されず、例えば、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ(4−メチルペンテン)、ポリテトラフルオロエチレンなどのポリオレフィン系樹脂、エチレン−テトラシクロドデセンなどのポリ環状オレフィン系樹脂などが挙げられ、好ましくは、ポリプロピレン、ポリ環状オレフィン系樹脂が挙げられる。ポリプロピレンやポリ環状オレフィン系樹脂は、様々な薬液に対する溶出性が概ね低く、しかも汎用プラスチックであるため、薬液への不純物の溶出を抑制することができると同時に、プラスチックアンプル2の低コスト化を図ることができる。
【0025】
また、使用される材料は、単独使用または2種以上併用することができる。2種以上併用する場合、共重合体樹脂として使用してもよいし、ホモポリマー樹脂同士を混ぜ合わせたブレンド樹脂として使用してもよい。また、プラスチックアンプル2は、単一の層構造に形成してもよいし、複数の樹脂(共重合体樹脂、ブレンド樹脂)が積層された多層構造に形成してもよい。
【0026】
次に、得られたパリソンを割り型で挟み、アンプル本体5の各部を形成し(ブロー工程)、アンプル本体5の内部に薬液を充填する(充填工程)。
次に、割り型で挟んで、蓋6の各部を形成し、アンプル本体5の注出口4を密閉する(シール工程)ことにより、薬液が収容されたプラスチックアンプル2が得られる。
なお、リブ14,15は、パリソンを割り型で挟んだときに、その割型の合わせ面に沿って形成される。
【0027】
外袋3は、長方形袋状に形成され、その周縁部25がヒートシールにより閉じられており、周縁部25によってプラスチックアンプル2を収容する収容室26が区画されている。
外袋3の長さLからプラスチックアンプル2の長さLを引いた、長さL(プラスチックアンプル2の頂部から外袋3の周縁部25までの長さ)と長さL(プラスチックアンプル2の底部から外袋3の周縁部25までの長さ)との和は、例えば、プラスチックアンプル2の長さLの0.6〜4.2倍程度であり、具体的には、11mm〜50mmである。また、外袋3の幅Wからプラスチックアンプル2の幅Wを引いた、幅W(プラスチックアンプル2の左側部から外袋3の周縁部25までの長さ)と、幅W(プラスチックアンプル2の右側部から外袋3の周縁部25までの長さ)との和は、例えば、プラスチックアンプル2の幅Wの0.2〜4.0倍程度であり、具体的には、4mm〜45mmである。また、収容室26の容量は、例えば、プラスチックアンプル2の内容量の1〜3倍程度であることが好ましく、例えば、プラスチックアンプル2の内容量が1mLのとき1mL〜3mLであり、プラスチックアンプル2の内容量が2.5mLのとき2.5mL〜7.5mLであり、プラスチックアンプル2の内容量が5mLのとき5mL〜15mLであり、プラスチックアンプル2の内容量が10mLのとき10mL〜30mLである。
【0028】
また、外袋3の収容室26は、例えば、大気圧である。収容室26の圧力が大気圧であることにより、外袋3に多少の膨らみを持たせている。
外袋3は、第1フィルムとしての内層27および第2フィルムとしての外層28が積層されてなる2層フィルム29からなる(図5の要部拡大図参照)。
内層27は、0.20cc/m・day・atm以下の酸素透過度および0.05g/m・day以下の水蒸気透過度を有する、アルミナ蒸着層30が形成されたポリエチレンテレフタレートフィルム31からなる。また、外層28も、内層27と同様に、0.20cc/m・day・atm以下の酸素透過度および0.05g/m・day以下の水蒸気透過度を有する、アルミナ蒸着層32が形成されたポリエチレンテレフタレートフィルム33からなる。
【0029】
2層フィルム29は、内層27のアルミナ蒸着層30と外層28のポリエチレンテレフタレートフィルム31とが、例えば、アンカーコート剤等の接着剤で接着(ドライラミネート)されることによって形成されている。
そして、外袋3は、2枚の2層フィルム29の内層27同士(具体的には、内層27のポリエチレンテレフタレートフィルム31同士)が向かい合うように重ね合わせられた後、これら2層フィルム29の3辺がヒートシールされて収容室26が区画され、その後、残りの1辺がヒートシールされることにより袋状にされる。
【0030】
なお、外袋3は、例えば、2層フィルム29をインフレーション法などの公知の方法によって袋状またはチューブ状に形成し、得られた袋状またはチューブ状のフィルムの周縁部をヒートシールすることによっても作製することができる。
以上のように、このプラスチックアンプル2によれば、プラスチックアンプル2が、0.20cc/m・day・atm以下の酸素透過度および0.05g/m・day以下の水蒸気透過度を有する、アルミナ蒸着層30,32が形成されたポリエチレンテレフタレートフィルム31,33からなる内層27および外層28の2層フィルム29からなる外袋3で包まれているので、プラスチックアンプル2外への薬液の透過を抑制することができる。すなわち、プラスチックアンプル2外への薬液の透過を、内層27/外層28の2層フィルム29からなる外袋3を設けることにより抑制することができるので、プラスチックアンプル2の材料に関しては、薬液透過を抑制する特性よりも他の特性(例えば、薬液に対する低溶出性)を優先して選択することができる。その結果、プラスチックアンプル2外への薬液の透過を抑制することができると同時に、プラスチックアンプル2の材料選択の自由度を広げることができる。
【0031】
また、外袋3の収容室26の圧力が大気圧である。この場合、薬液を長期間保存した後の薬液の減少量は、後述する薬液包装具61のように収容室26を真空に保持した場合に比べて劣るが、プラスチックアンプル2を外袋3で包む際、外袋3の収容室26内の空気を吸引して真空にする手間を省くことができる。そのため、短期間保存(例えば、薬液充填後2週間程度)の薬液の包装具として好適に使用することができる。その場合でも、薬液の透過を十分抑制することができる。
【0032】
また、このプラスチックアンプル2は、麻薬(例えば、モルヒネ等)のように1回分の使用量が少量であり、その1回分単位で保存した場合の内容量の減少割合が大きいと、薬の作用を十分に得ることが困難になる薬液に対しても好適に使用することができる。
また、厚さTが比較的に薄い(400μm〜600μm)プラスチックアンプル2を使用した場合でも、プラスチックアンプル2外への薬液の透過を効果的に抑制することができる。
【0033】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明の実施形態は、これに限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した事項の範囲において、種々の設計変更を施すことが可能である。
例えば、前述の実施形態では、外袋3の収容室26の圧力が大気圧であることにより、外袋3が多少の膨らみを持たせていたが、図6の薬液包装具61のように、収容室26を真空(例えば、100Pa以下)にすることにより、外袋3の内面が、プラスチックアンプル2の外面にほぼ密着していてもよい。
【0034】
また、前述の実施形態では、プラスチックアンプル2に対して比較的サイズの大きい外袋3を用いたが、図7の薬液包装具71のように、比較的サイズの小さい外袋72であってもよい。そのような外袋72のサイズは、外袋72の長さLからプラスチックアンプル2の長さLを引いた、長さL(プラスチックアンプル2の頂部から外袋72の周縁部25までの長さ)と長さL(プラスチックアンプル2の底部から外袋72の周縁部25までの長さ)との和は、例えば、プラスチックアンプル2の長さLの0.3〜0.8倍程度であり、具体的には、5mm〜10mmである。また、外袋72の幅Wからプラスチックアンプル2の幅Wを引いた、幅W(プラスチックアンプル2の左側部から外袋72の周縁部25までの長さ)と、幅W(プラスチックアンプル2の右側部から外袋72の周縁部25までの長さ)との和は、例えば、プラスチックアンプル2の幅Wの0.1〜0.3倍程度であり、具体的には、1mm〜3mmである。また、外袋72の収容室73の容量は、例えば、プラスチックアンプル2の内容量の1〜1.5倍であることが好ましく、例えば、プラスチックアンプル2の内容量が1mLのとき1mL〜1.5mLであり、プラスチックアンプル2の内容量が2.5mLのとき2.5mL〜3.75mLであり、プラスチックアンプル2の内容量が5mLのとき5mL〜7.5mLであり、プラスチックアンプル2の内容量が10mLのとき10mL〜15mLである。
【0035】
本発明の薬液包装具は、例えば、医療用途において、幅広く用いることができる。
【実施例】
【0036】
次に、本発明を実施例および比較例に基づいて説明するが、この発明は下記の実施例によって限定されるものではない。
<実施例1>
ポリプロピレン(PP)を用いたブローフィルシール法により、図1〜図5に示すプラスチックアンプル2と同形状のプラスチックアンプル(アンプルの内容量が1mLのときのサイズ:L=4.60cm、W=1.87cm、アンプルの内容量が2.5mLのときのサイズ:L=6.25cm、W=1.87cm)を作製した。そのプラスチックアンプルには、薬液として水を充填した。
【0037】
次に、0.20cc/m・day・atm以下の酸素透過度および0.05g/m・day以下の水蒸気透過度を有する、アルミナ蒸着層が形成されたポリエチレンテレフタレートフィルムが2層に積層された2層フィルム(サイズ:L=11.0cm、W=7.5cm)を2枚用意した。2層フィルムは、一方の層のアルミナ蒸着層と、他方の層のポリエチレンテレフタレートフィルムとを、アンカーコート剤(接着剤)で接着することによって形成した。
【0038】
次に、当該2層フィルムのポリエチレンテレフタレート層同士が向かい合うように重ね合わせた後、これら2層フィルムの3辺をヒートシールして収容室を区画し、その収容室に上記で得られたプラスチックアンプルを収容した。その後、外袋の収容室内を脱気せずに、フィルムの残りの1辺をヒートシールすることにより外袋を作製した。これにより、プラスチックアンプルが外袋に包まれた薬液包装具を得た。
<実施例2>
サイズの小さい外袋(アンプルの内容量が1mLのときのサイズ:L=7.5cm、W=4.5cm アンプルの内容量が2.5mLのときのサイズ:L=9.0cm、W=4.5cm)を作製したこと以外は、実施例1と同様に、プラスチックアンプルおよび外袋を作製することにより、薬液包装具を得た(図7の薬液包装具と同形状の包装具)。
<比較例1>
実施例1の2層フィルムに代えて、0.50cc/m・day・atmの酸素透過度および8.00g/m・dayの水蒸気透過度を有する、シリカ蒸着層が形成されたナイロンフィルムと、0.50cc/m・day・atmの酸素透過度および0.60g/m・dayの水蒸気透過度を有する、アルミナ蒸着層が形成されたポリエチレンテレフタレートフィルムとが2層に積層された2層フィルムを用いて外袋を作製したこと以外は、実施例1と同様に、プラスチックアンプルおよび外袋を作製することにより、薬液包装具を得た。
<比較例2>
サイズの小さい外袋(アンプルの内容量が1mLのときのサイズ:L=7.5cm、W=4.5cm アンプルの内容量が2.5mLのときのサイズ:L=9.0cm、W=4.5cm)を作製したこと以外は、比較例1と同様に、プラスチックアンプルおよび外袋を作製することにより、薬液包装具を得た。
<比較例3>
実施例1の2層フィルムに代えて、PVA(Poly Vinyl Alcohol:ポリビニルアルコール)の単層フィルムを用いて外袋を作製したこと以外は、実施例1と同様に、プラスチックアンプルおよび外袋を作製することにより、薬液包装具を得た。
<比較例4>
サイズの小さい外袋(アンプルの内容量が1mLのときのサイズ:L=7.5cm、W=4.5cm アンプルの内容量が2.5mLのときのサイズ:L=9.0cm、W=4.5cm)を作製したこと以外は、比較例3と同様に、プラスチックアンプルおよび外袋を作製することにより、薬液包装具を得た。
<比較例5>
プラスチックアンプルのみを実施例1と同様の方法により作製した。
<評価>
上記実施例および比較例で得られた薬液包装具(比較例5はプラスチックアンプル)を、プラスチックアンプルの内容量(1mLおよび2.5mL)ごとにそれぞれ、25℃の環境下で30日間保存した。結果を図8および図9に示す。
【0039】
図8および図9に示すように、PPからなるプラスチックアンプルを、実施例の2層フィルムからなる外袋で包んだ薬液包装具であれば、30日間の保存後においても薬液の内容量の減少割合を小さくできることがわかった。
具体的には、1mLのプラスチックアンプルの薬液の30日後の減少割合は、実施例1=0%、実施例2=−0.08%であった。これに対し、比較例1=−0.41%、比較例2=−0.27%、比較例3=−0.34%、比較例4=−0.31%、比較例5=−0.35%であった。
【0040】
また、2.5mLのプラスチックアンプルの薬液の30日後の減少割合は、実施例1=−0.01%、実施例2=−0.04%であった。これに対し、比較例1=−0.12%、比較例2=−0.11%、比較例3=−0.18%、比較例4=−0.18%、比較例5=−0.20%であった。
また、上記と同様に、プラスチックアンプルの内容量(1mLおよび2.5mL)ごとにそれぞれ、40℃の環境下で30日間保存した。結果を図10および図11に示す。
【0041】
図11に示すように、PPからなるプラスチックアンプル(内容量2.5mL)を、実施例の2層フィルムからなる外袋で包んだ薬液包装具であれば、30日間の保存後においても薬液の内容量の減少割合を小さくできることがわかった。
具体的には、2.5mLのプラスチックアンプルの薬液の30日後の減少割合は、実施例1=−0.15%、実施例2=−0.23%であった。これに対し、比較例1=−0.73%、比較例2=−0.58%、比較例3=−0.94%、比較例4=−0.76%、比較例5=−1.06%であった。
【0042】
また、図10に示すように、PPからなるプラスチックアンプル(内容量1mL)を30日間保存した場合、PPからなるプラスチックアンプル(内容量2.5mL)を、実施例の2層フィルムからなる外袋で包んだ薬液包装具であれば、30日間の保存後の薬液の減少割合は比較例2とほぼ同じであるが(実施例1=−1.18%、実施例2=−1.00%、比較例2=−1.08%)、14日間程度の保存に関しては比較例2に比べて優れることがわかった。具体的には、14日後の薬液の減少割合はそれぞれ、実施例1=−0.18%、実施例2=−0.17%、比較例2=−0.68%であった。これらの結果、実施例1および2の薬液包装具は、短期間保存(例えば、薬液充填後2週間程度)の薬液の包装具として好適に使用することがわかった。
【0043】
これに対し、比較例1〜5のプラスチックアンプルの薬液の30日後の減少割合はそれぞれ、比較例1=−1.49%、比較例2=−1.08%(14日後は−0.68%)、比較例3=−1.71%、比較例4=−1.40%、比較例5=−1.83%であった。
【符号の説明】
【0044】
1 薬液包装具
2 プラスチックアンプル
3 外袋
12 薬液収容室
26 収容室
27 内層
28 外層
29 2層フィルム
30 アルミナ蒸着層
31 ポリエチレンテレフタレートフィルム
32 アルミナ蒸着層
33 ポリエチレンテレフタレートフィルム
61 薬液包装具
71 薬液包装具
72 外袋
73 収容室

【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬液が収容された薬液収容室を有するプラスチックアンプルと、
前記プラスチックアンプルが収容された収容室を有し、当該収容室が密閉された外袋とを含み、
前記外袋は、第1フィルムと第2フィルムとの2層構造フィルムからなり、
前記第1フィルムおよび前記第2フィルムは、0.20cc/m・day・atm以下の酸素透過度および0.05g/m・day以下の水蒸気透過度を有する、アルミナ蒸着層が形成されたポリエチレンテレフタレートフィルムからなる、薬液用包装具。
【請求項2】
前記外袋の前記収容室内の圧力は大気圧である、請求項1に記載の薬液用包装具。
【請求項3】
前記プラスチックアンプルにおける薬液の内容量は、1mL〜5mLである、請求項1または2に記載の薬液用包装具。
【請求項4】
前記プラスチックアンプルの外面と前記薬液収容室の内面との間の厚さは、400μm〜800μmである、請求項1〜3のいずれか一項に記載の薬液用包装具。
【請求項5】
前記プラスチックアンプルは、ポリプロピレンを用いて形成されている、請求項1〜4のいずれか一項に記載の薬液用包装具。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate


【公開番号】特開2012−183153(P2012−183153A)
【公開日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−47365(P2011−47365)
【出願日】平成23年3月4日(2011.3.4)
【出願人】(000149435)株式会社大塚製薬工場 (154)
【Fターム(参考)】