説明

薬液蒸散方法及び薬液蒸散器

【課題】本発明の目的は、薬液を燻煙状にして視認可能な状態(即ち、エアロゾル状態)で室内空間に蒸散でき、しかも室内空間の空気の入れ換えをしても、薬液の効果を残存させて持続的に奏することが可能になる薬液蒸散技術を提供することである。
【解決手段】沸点が170℃以上の溶媒を含む薬液を、100℃以上の温度の発熱体に供給することにより、薬液を視認可能な燻煙状(即ち、エアロゾル状)で蒸散させることが可能になる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬液蒸散方法、及び当該方法の実施に使用される薬液蒸散器に関する。詳細には、本発明は、薬液を燻煙状(エアロゾル状態)で加熱蒸散させる薬液蒸散方法及び薬液蒸散器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、芳香剤、消臭剤、防虫剤等の薬液を室内空間に蒸散させるための装置として、自然蒸散タイプ、スプレータイプ、加熱タイプ等の種々の蒸散器が知られている。
【0003】
自然蒸散タイプの蒸散器では、薬液を自然蒸散させることにより室内空間に薬液を蒸散させるため、薬液の蒸散量が少なく、室内空間において薬液の所望の効果を十分に奏し得ないことがある。更に、自然蒸散によって薬液を蒸散させた場合、室内空間内の空気の入れ換えを行うと、薬液の所望の効果が直ちに消失するため、薬液の効果の持続性の点で欠点もある。
【0004】
また、スプレータイプの蒸散器では、一瞬にして薬液を空間に漂わせることができるが、その効果はスプレーした空間部分に限定され、室内空間全体に薬液を蒸散させることが困難であり、更には薬液による効果も一時的であり、持続性が低いという欠点がある。
【0005】
一方、加熱タイプの蒸散器の一例として、薬液を電気的に加熱することで薬液を積極的に蒸散させ、薬液を室内空間に効率的に充満させる電気加熱蒸散器が知られている。従来の加熱タイプの蒸散器の殆どは、薬液を視認できない状態(即ち、非エアロゾル状態)で蒸散させるものである。このような電気加熱タイプの蒸散器では、薬液の蒸散速度が自然蒸散タイプの場合に比して高められるものの、自然蒸散タイプの場合と同様に、室内空間内の空気の入れ換えを行うと、薬液の所望の効果が消失してしまう。
【0006】
また、加熱タイプの蒸散器の他の例として、キャンドルやアロマポットのように、火を用いて薬液を燻煙状にして視認可能な状態(即ち、エアロゾル状態)で蒸散させる加熱タイプの蒸散器も知られている。このように蒸散される薬液を燻煙状として視認させることは、使用者にとって使用実感や満足感を高める上でも、利点がある。しかしながら、室内で火気を使用して薬液を蒸散させる場合には、火災につながる危険性があり、安全性の観点から好ましくない。
【0007】
そこで、従来、香油を含浸させた蒸散体に対して、香油の沸点より高い温度で加熱することにより、香油を燻煙状(湯気状)で蒸散させる加熱タイプの蒸散器が提案されている(特許文献1参照)。しかしながら、特許文献1では、香油に配合される溶媒としてベンジンやエーテルが使用されており、これらの溶媒を香油の沸点より高い温度で加熱すると、実際には燻煙状の蒸散ができない場合があり、更にはたとえ燻煙状で蒸散しても空間内で燻煙状の香油が直ぐに消失して、視認できなくなり、薬液の効果の持続性も不十分になるという問題点がある。
【0008】
このような従来技術を背景として、薬液を燻煙状にして視認可能な状態(即ち、エアロゾル状態)で室内空間に蒸散でき、しかも室内空間の空気の入れ換えをしても、薬液の効果を残存させて持続的に奏することができる薬液蒸散技術の開発が求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2002−272830号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の課題は、上記従来技術の問題点を解決することである。具体的には、本発明は、薬液を燻煙状にして視認可能な状態(即ち、エアロゾル状態)で室内空間に蒸散でき、しかも室内空間の空気の入れ換えをしても、薬液の効果を残存させて持続的に奏することが可能になる薬液蒸散技術を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意検討を行ったところ、沸点が170℃以上の溶媒を含む薬液を、100℃以上の温度の発熱体に供給することにより、該薬液を視認可能な燻煙状(即ち、エアロゾル状)で蒸散できることを見出した。更に、上記のようにエアロゾル状で蒸散させると、室内空間の壁面や物品等に薬液を付着させることができ、室内空間の空気の入れ換えをしても、壁面や物品等に付着した薬液が室内空間に放出され、その結果、薬液の効果の持続性も高まることを見出した。本発明は、かかる知見に基づいて、更に検討を重ねることにより完成したものである。
【0012】
即ち、本発明は、下記に掲げる態様の発明を提供する。
項1.沸点が170℃以上の溶媒を含む薬液と、
100℃以上の温度に加熱される発熱体と、
前記薬液を前記発熱体に供給可能な薬液供給手段と、
を備えることを特徴とする、薬液を燻煙状で蒸散させる薬液蒸散器。
項2. 前記溶媒の沸点が170〜350℃であり、前記発熱体の加熱される温度が100〜350℃である、項1に記載の薬液蒸散器。
項3. 前記薬液供給手段が、前記発熱体に接触するように配設されている、項1又は2に記載の薬液蒸散器。
項4. 前記薬液供給手段が、前記薬液を含む含浸体であり、
前記含浸体の少なくとも一部が、前記発熱体に接触するように配設されている、
項1乃至3のいずれかに記載の薬液蒸散器。
項5. 前記溶媒が、アルコール系溶媒、グリコールエーテル系溶媒、グリコール系溶媒、及び炭化水素系溶媒からなる群より選択される少なくとも1種である、項1乃至4のいずれかに記載の薬液蒸散器。
項6. 前記溶媒が、3−メトキシ−3−メチル−1−ブタノール、ベンジルアルコール、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールn-プロピルエーテル、ジプロピレングリコールn-ブチルエーテル、トリプロピレングリコールn-ブチルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールフェニルエーテル、プロピレングリコール、エチレングリコール、ヘキシレングリコール、ジプロピレングリコール、及びジエチレングリコールからなる群より選択される少なくとも1種である、項1乃至5のいずれかに記載の薬液蒸散器。
項7. 前記薬液が、香料を含む芳香液、消臭成分を含む消臭液、又は香料及び消臭成分を含む芳香消臭液である、項1乃至6のいずれかに記載の薬液蒸散器。
項8. 前記薬液に含まれる前記溶媒の配合割合が10〜99.9重量%である、項1乃至7のいずれかに記載の薬液蒸散器。
項9. 沸点が170℃以上の溶媒を含む薬液を、100℃以上の温度の発熱体に供給することにより、薬液を燻煙状で蒸散させることを特徴とする、薬液蒸散方法。
項10. 前記溶媒の沸点が170〜350℃であり、前記発熱体の加熱される温度が100〜350℃である、項9に記載の薬液蒸散方法。
項11. 前記溶媒が、アルコール系溶媒、グリコールエーテル系溶媒、グリコール系溶媒、及び炭化水素系溶媒からなる群より選択される少なくとも1種である、項9又は10に記載の薬液蒸散方法。
項12. 前記溶媒が、3−メトキシ−3−メチル−1−ブタノール、ベンジルアルコール、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールn-プロピルエーテル、ジプロピレングリコールn-ブチルエーテル、トリプロピレングリコールn-ブチルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールフェニルエーテル、プロピレングリコール、エチレングリコール、ヘキシレングリコール、ジプロピレングリコール、及びジエチレングリコールからなる群より選択される少なくとも1種である、項9乃至11のいずれかに記載の薬液蒸散方法。
項13. 前記薬液が、香料を含む芳香液、消臭成分を含む消臭液、又は香料及び消臭成分を含む芳香消臭液である、項9乃至12のいずれかに記載の薬液蒸散方法。
項14. 前記薬液に含まれる前記溶媒の配合割合が10〜99.9重量%である、項9乃至13のいずれかに記載の薬液蒸散方法。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、薬液がエアロゾル状になって、視認可能な燻煙状で蒸散できるので、室内空間に薬液を効率的に行き渡らせることができる。また、本発明によって蒸散された薬液は、室内空間で視認可能な燻煙状(エアロゾル状)を持続でき、通常の湯気等に比して視認可能な状態が消失し難いので、使用者の使用実感や満足感を一層高めることができる。
【0014】
更に、本発明では、燻煙状(エアロゾル状)で蒸散させた薬液を室内空間の壁面や物品等に薬液を付着させることができ、室内空間の空気を入れ換えても、壁面や物品等に付着した薬液が再び室内空間に放出されるので、薬液の効果の持続性も高く、利便性がより高められている。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の薬液蒸散器の要部構造の一例を示す図である。
【図2】本発明の薬液蒸散器の要部構造の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本明細書において、燻煙状、及びエアロゾル状とは、薬液が蒸散される様が、線香の煙のように視認される状態を意味する。
1.薬液蒸散方法
本発明の薬液蒸散方法は、沸点が170℃以上の溶媒を含む薬液を、100℃以上の温度の発熱体に供給することにより、該薬液を燻煙状で蒸散させることを特徴とする。以下、本発明の薬液蒸散方法について詳細に説明する。
【0017】
本発明の薬液蒸散方法では、沸点が170℃以上の溶媒を含む薬液が使用される。
【0018】
薬液に配合される溶媒としては、沸点が170℃以上であり、室内空間への蒸散に使用できるものである限り特に制限されるものではないが、沸点が好ましくは170〜350℃、更に好ましくは170〜300℃、より好ましくは170〜250℃のものが例示される。当該溶媒として、具体的には、3−メトキシ−3−メチル−1−ブタノール(沸点174℃)、ベンジルアルコール(沸点205℃)等のアルコール系溶媒;ジプロピレングリコールモノメチルエーテル(沸点190℃)、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル(沸点242℃)、ジプロピレングリコールn-プロピルエーテル(沸点212℃)、ジプロピレングリコールn-ブチルエーテル(沸点229℃)、トリプロピレングリコールn-ブチルエーテル(沸点274℃)、ジプロピレングリコールメチルエーテルアセテート(沸点209℃)、プロピレングリコールフェニルエーテル(沸点243℃)等のグリコールエーテル系溶媒;プロピレングリコール(沸点178℃)、プロピレングリコール(沸点187℃)、エチレングリコール(沸点198℃)、ヘキシレングリコール(沸点198℃)、ジプロピレングリコール(沸点232℃)、ジエチレングリコール(沸点244℃)等のグリコール系溶媒;イソパラフィン、ノルマルパラフィン等の炭化水素系溶媒等が例示される。
【0019】
これらの溶媒の中でも、燻煙状(エアロゾル状)の形成能を高めるために、好ましくはグリコール系溶媒が使用される。
【0020】
本発明に使用される薬液において、これらの溶媒は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0021】
本発明に使用される薬液において、上記溶媒の配合割合については、特に制限されないが、薬液の総量当たり、例えば10〜99.9重量%が挙げられる。薬液を視認可能な燻煙状(即ち、エアロゾル状)で蒸散させる機能をより一層高めるためには、薬液中の上記溶媒の配合割合を、好ましくは25〜99.9重量%に設定すればよい。
【0022】
本発明に使用される薬液には、上記溶媒以外に、当該薬液に備えさせる機能、即ち、当該薬液が室内空間に蒸散された際に発揮される所望の機能に応じて、香料、消臭剤成分、昆虫忌避成分、抗菌剤成分、除菌剤成分等の薬剤成分が配合される。このような薬剤成分については、使用される環境で空気中に蒸散可能である限り、油性又は水性のいずれであってもよい。本発明で使用される薬液は、香料を含む場合には芳香液として、消臭剤成分を含む場合には消臭液として、香料及び消臭剤成分を含む場合には芳香消臭液として、昆虫忌避成分を含む場合には昆虫忌避液として、抗菌剤成分を含む場合には抗菌液として、各々使用される。本発明の薬液蒸散方法は、香料を蒸散させて室内空間に芳香効果を付与するのに好適であり、本発明で使用される薬液として、好ましくは、香料を含む芳香液、香料及び消臭剤成分を含む芳香消臭液が挙げられる。
【0023】
上記薬液に配合される香料については、天然香料、天然香料から分離された単離香料、合成香料のいずれであってもよく、従来の芳香剤に使用されている公知の香料を使用することができる。香料として、具体的には、炭素数6〜12のアルデヒド、アニスアルデヒド、アセタールR、アセトフェノン、アセチルセドレン、アドキサール、アリルアミルグリコレート、アリルシクロヘキサンプロピオネート、アルファダマスコン、アンブレットリッド、アンブロキサン、アミルシンナミックアルデヒド、アミルシンナミックアルデヒドジメチルアセタール、アミルバレリアネート、アミルサリシレート、イソアミルアセテート、アセチルユゲノール、イソアミルサリシレート、インドール、αイオノン、βイオノン、αメチルイオノン、βメチルイオノン、γメチルイオノン、インデン、エチルワニリン、オウランチオール、オークモスNo.1、オリボン、オキシフェニロン、カリオフィレン、カシュメラン、カルボン、ガラキソリッド、キャロン、クマリン、パラクレジールメチルエーテル、ゲラニオール、ゲラニルアセテート、ゲラニルフォーメート、ゲラニルニトリル、テトラヒドロゲラニオール、テトラヒドロゲラニールアセテート、コアボン、サンダロア、サンデラ、サンタレックス、サンタリノール、メチルサリシレート、シンナミックアルコール、シンナミックアルデヒド、シスジャスモン、シトラール、シトラールジメチルアセタール、シトラサール、シトロネラール、シトロネロール、シトロネリルアセテート、シトロネリルフォーメート、シトロネリルニトリル、シクラセット、シクラメンアルデヒド、シクラプロップ、シンナミルアセテート、ジヒドロジャスモン、ジメトール、イソシクロシトラール、ジャスマール、ジャスモラクトン、ジャスモフィラン、スチラリールアセテート、スチラリールプロピオネート、セドロアンバー、セドリルアセテート、セドロール、セレストリッド、βダマスコン、αターピネオール、γターピネオール、ターピニルアセテート、チモール、デルタダマスコン、デルタC6〜C13ラクトン、トナリッド、トラセオライド、トリプラール、イソノニルアセテート、ネロール、ネリールアセテート、ネオベルガメート、ノピールアセテート、ノピールアルコール、バクダノール、ヒヤシンスジメチルアセタール、ヒドロトロピックアルコール、ヒドロキシシトロネラール、αピネン、ブチルブチレート、パラターシャリーブチルシクロヘキサノール、パラターシャリーブチルシクロヘキシルアセテート、オルトターシャリーブチルシクロヘキサノール、ジフェニルオキサイド、フルイテート、フェンチールアルコール、フェニルエチルフェニルアセテート、イソブチルキノリン、フェニルエチルアルコール、フェニルエチルアセテート、フェニルアセトアルデハイドジメチルアセタール、ベンジルアセテート、ベンジルアルコール、ベンジルサリシレート、ベルガミールアセテート、ベンズアルデヒド、ベンジルフォーメート、ジメチルベンジルカービノール、ヘディオン、ヘリオナール、ヘリオトロピン、シス−3−ヘキセノール、シス−3−ヘキセニールアセテート、シス−3−ヘキセニールサリシレート、ヘキシルシンナミックアルデヒド、ヘキシルサリシレート、ペンタリッド、ベルドックス、オルトボルニルアセテート、イソボルニルアセテート、イソボルネオール、エンド−ボルネオール、マンザネート、マイヨール、ミューゲアルデヒド、ミラックアルデヒド、ジヒドロミルセノール、ジミルセトール、ムゴール、ムスクTM−II、ムスク781、ムスクC14、ムスクT、ムスクケトン、ムスクチベチン、ムスクモスケン、メンサニールアセテート、メンソネート、メチルアンスラニレート、メチルユゲノール、メントール、メチルフェニルアセテート、ユゲノール、イソユゲノール、メチルイソユゲノール、γC6〜13ラクトン、ライムオキサイド、メチルラベンダーケトン、ジヒドロリナロール、リグストラール、リリアール、リモネン、リナロール、リナロールオキサイド、テトラヒドロリナロール、テトラヒドロリナリールアセテート、リナリルアセテート、リラール、ルバフラン、ローズフェノン、ローズオキサイド、ワニリン、ベンゾイン、ペルーバルサム、トルーバルサム、チュベローズ油、ムスクチンキ、カストリウムチンキ、シベットチンキ、アンバーグリスチンキ、ペパーミント油、ペリラ油、プチグレン油、パイン油、ローズ油、ローズマリー油、しょう脳油、芳油、クラリーセージ油、サンダルウッド油、スペアミント油、スパイクラベンダー油、スターアニス油、ラバンジン油、ラベンダー油、レモン油、レモングラス油、ライム油、ネロリ油、オークモス油、オコチア油、パチュリ油、タイム油、トンカ豆チンキ、テレピン油、ワニラ豆チンキ、バジル油、ナツメグ油、シトロネラ油、クローブ油、ボアドローズ油、カナンガ油、カルダモン油、カシア油、シダーウッド油、オレンジ油、マンダリン油、タンジェリン油、アニス油、ベイ油、コリアンダー油、エレミ油、ユーカリ油、フェンネル油、ガルバナム油、ゼラニウム油、ヒバ油、桧油、ジャスミン油、ベチバー油、ベルガモット油、イランイラン油、グレープフルーツ油、ゆず油等を挙げることができる。これらの香料は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を任意に組み合わせて調香して使用することもできる。
【0024】
また、上記薬液に配合される消臭剤成分としては、例えば、イネ、松、ヒノキ、笹、緑茶等の植物の抽出物;アルキルベンジルジメチルアンモニウム塩、ジデシルジメチルアンモニウム塩等の第4級アンモニウム塩;セチルビリジニウム塩、ベンゾイソチアゾリン等の複素環化合物;酸化銀、銀含有の水溶性ガラス、銀を担持させたゼオライト、銀ナノ粒子、銀イオン、硝酸銀、硫化銀等の銀化合物;酸化亜鉛、酸化銅、亜鉛イオン、銅イオン、金ナノ粒子等の金属化合物;シクロデキストリンやシクロファン等の包接化合物;両性界面活性剤系消臭剤、アミノ酸系消臭剤などの両性化合物;シリカゲル、アルミナ、活性炭、ゼオライト等の吸着物質の微細粉末等が挙げられる。これらの消臭剤成分は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を任意に組み合わせて使用してもよい。
【0025】
上記薬液に配合される昆虫忌避成分としては、例えば、DEET、ピサボロール、イソピンピネリン、ベルガブテン、ザントトキシン、コクサギン、ジハイドロコクサギン、ジメチルテレフタレート、ジエチルテレフタレート、N,N-ジエチル-m-トルアミド、ジメチルフタレート、ジブチルフタレート、p-メンタン-3,8-ジオール、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、ジ-n-プロピルイソシンコメロネ-ト、p-ジクロロベンゼン、ジ-n-ブチルサクシネート、カラン-3,4-ジオール、1-メチルプロピル-2- (2-ヒドロキシエチル)-1-ピペリジンカルボキシレート、イソチオシアン酸アリル等が挙げられる。さらに、テルペン炭化水素類香料、テルペンアルコール類香料、フェノール類香料、芳香族アルコール類香料、アルデビド類香料、カラシ、ワサビなどの植物抽出物や木酢液等が挙げられる。これらの昆虫忌避成分は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を任意に組み合わせて使用してもよい。
【0026】
上記薬液に配合される抗菌剤成分としては、例えば、オクチルトリメチルアンモニウムクロライド、ジデシルジメチルアンモニウムグルコン酸、クロルヘキシジン、グルコン酸クロルヘキシジン、アリルイソチオシアネート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル等が挙げられる。これらの抗菌剤成分は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を任意に組み合わせて使用してもよい。
【0027】
これらの薬剤成分は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0028】
本発明に使用される薬液において、上記薬剤成分の配合割合については、当該成分の種類に応じて適宜設定されるが、例えば0.01〜90重量%、好ましくは1〜75重量%が挙げられる。
【0029】
本発明に使用される薬液は、本発明の効果を妨げない範囲で、上記成分の他に、水、エタノール等の薬剤成分の溶解剤;非イオン性界面活性剤(ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン硬化ひまし油)、アニオン性界面活性剤、両性界面活性剤等の界面活性剤;1,2-ベンズイソチアゾリン-3-オン、2n-オクチル-イソチアゾリン-3-オン等の防腐剤;酸化防止剤;紫外線吸収剤;顔料、染料等の色素;シリコーン等の添加剤を適当量含有してもよい。
【0030】
本発明において、発熱体への薬液の供給は、薬液を発熱体へ供給可能な薬液供給手段を用いて行うことができる。ここで、薬液の供給とは、大気雰囲気(室内空間内の大気中)で発熱体に薬液を接触又は近接させることをいう。発熱体の熱を効率よく薬液に伝え、燻煙状での薬液蒸散量を高めるためには、薬液を発熱体に接触させることが好ましい。薬液供給手段としては、例えば、含浸体、液滴下手段、塗布手段等が例示される。
【0031】
含浸体とは、薬液を含浸でき、且つ発熱体による加熱に耐え得る耐熱性を備えているものであれば、その素材については特に制限されない。含浸体の素材としては、例えば、ガラス繊維、炭素繊維等が例示される。含浸体による薬液の供給は、含浸体の少なくとも一部に発熱体を接触させることが望ましいが、燻煙形成が可能な限り、含浸体の少なくとも一部を発熱体と近接した状態で維持させることにより行ってもよい。含浸体は、図1に示すように、上記薬液を予め所定量含浸させたものであってもよく、また図2に示すように、薬液を収容した容器から薬液を毛細管現象により吸い上げ可能になっており、発熱体と接触している含浸体部分に薬液が持続的に供給されるように構成されていてもよい。
【0032】
液滴下手段は、発熱体上に薬液を滴下可能なものであれば、その機構等については特に制限されない。また、塗布手段も同様に、発熱体上に薬液を塗布可能なものであれば、その機構等については特に制限されない。
【0033】
また、薬液の加熱に使用される発熱体としては、所定温度に加熱可能なものであればよいが、好ましくは通電により発熱する電熱体が使用される。このような電熱体としては、例えば、電熱線、PTCヒータ、セラミックヒータ、固定抵抗ヒータ等が例示される。電池式で電力を印加する場合は、消費電力の観点から電熱線が好ましい。
【0034】
本発明では、大気雰囲気(即ち、室内空間の大気中)で、薬液供給手段により供給される上記薬液を、100℃以上の発熱体で加熱することにより、該含浸体と発熱体の接触部位又は発熱体と近接している含浸体部位において、薬液がエアロゾルを形成し、視認可能な燻煙状で蒸散可能になる。
【0035】
本発明において、発熱体の温度については、100℃以上である限り、特に制限されないが、室内での使用安全性を備えさせつつ、燻煙の形成能を高めるという観点からは、100〜350℃、好ましくは120〜310℃、更に使用安全性を考慮すると、好ましくは120〜250℃のものが例示される。
【0036】
本発明において、薬液供給手段として含浸体を使用する場合、薬液を含浸させた含浸体1つに対して1つの発熱体を接触又は近接させればよいが、燻煙状の薬液蒸散量を高めるために、2つ以上の発熱体を接触又は近接させてもよい。
【0037】
2.薬液蒸散器
本発明の薬液蒸散器は、上記薬液蒸散方法の実施に使用されるものであり、具体的には、沸点が170℃以上の溶媒を含む薬液と、100℃以上の温度に加熱される発熱体と、前記薬液を前記発熱体に供給可能な薬液供給手段と、を備えることを特徴とする。
【0038】
本実施の形態の薬液蒸散器では、薬液供給手段が含浸体である場合を例として挙げて説明する。
【0039】
また、本発明の薬液蒸散器は、図1に示すように、薬液を含浸させた含浸体1が支持体3によって保持されて、該含浸体3に発熱体2が接触するように構成されていてもよい。かかる態様の薬液蒸散器の場合、薬液を含浸させた含浸体又は該含浸体を保持した支持体が脱着可能になっており、使用後に、薬液を含浸させた含浸体、又は該含浸体を保持した支持体を交換できるように構成されていてもよい。
【0040】
また、本発明の薬液蒸散器の他の一態様として、図2に示すように、薬液5を収容した容器4を備え、含浸体1が、容器に収容された薬液5を吸い上げ可能になっており、該含浸体1が支持体3によって容器4に固定されて保持され、該含浸体1に発熱体2が接触するように構成されていてもよい。なお、図1及び2において、発熱体2は、電熱線を例として記しているが、本発明の薬液蒸散器において、発熱体は電熱線に限定されるものではない。
【0041】
また、本発明の薬液蒸散器は、上記発熱体を発熱させるための手段、即ち、上記発熱体を導電するための導電線、及び上記発熱体に電力を印加するための電圧印加手段を備えていてもよい。
【実施例】
【0042】
以下、実施例を挙げて、本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
試験例1
表1−2に示す芳香液を調製した。この芳香液0.5g程度を、ガラス繊維からなる円柱形の含浸体(外径5mm、高さ10mm)に含浸させた。次いで、芳香液を含浸させた含浸体を、図1と同じ機構を備える蒸散器(発熱体は6.5Ω電熱線、電圧印加手段は定電圧電源、発熱体の温度は印加電圧の調整により制御可能;なお、表1の芳香液の蒸散に使用した蒸散器は1つの含浸体に2つの電熱線を接触させる構造を備え、表2の芳香液の蒸散に使用した蒸散器は1つの含浸体に1つの電熱線を接触させる構造を備える。)に設置し、当該含浸体の側面と蒸散器の発熱体を接触させた。これを30cm容の密閉可能なボックス内に置いて、ボックスを密閉し、電源を入れて発熱体を所定温度に加熱させた。電源を入れた状態を30秒間保持し、芳香液の蒸散状態を観察し、燻煙(エアロゾル)の発生の有無を調べた。また、燻煙の発生が認められたものについては、電源を入れてから30秒後に電源を切り、電源を切ってから燻煙が目視で確認できなくなるまでの時間(燻煙消失時間)を測定した。なお、発熱体の加熱温度は、実施例1−3及び参考例1−2の芳香液については100℃、実施例4−6及び参考例3−4の芳香液については150℃に設定した。
【0043】
結果を表1−2にまとめて示す。この結果、発熱体による100℃以上の加熱によって、実施例1−6、参考例2及び4の芳香液が燻煙状に蒸散することが確認された。即ち、沸点170℃以上の溶媒を含む芳香液は100℃以上の加熱により燻煙状で蒸散可能になることが明らかとなった。更に、溶媒の濃度が25〜100重量%のいずれでも燻煙の発生が認められたことから、芳香液中の溶媒の配合割合は、発生した燻煙が消失して視認できなくなるまでに時間には影響するものの、燻煙の発生の有無には影響しないことも確認された。
【0044】
【表1】

【0045】
【表2】

【0046】
試験例2
表3に示す溶媒0.5g程度を、ガラス繊維からなる円柱形の含浸体(外径5mm、高さ10mm)に含浸させた。次いで、溶媒を含浸させた含浸体を使用し、上記試験例1と同様に、蒸散器(発熱体は6.5Ω電熱線、電圧印加手段は定電圧電源、発熱体の温度は印加電圧の調整により制御可能;なお、本蒸散器は1つの含浸体に1つの電熱線を接触させる構造を備える。)を用いて加熱し、燻煙の発生の有無及び燻煙消失時間を測定した。なお、発熱体の加熱温度は、表3に記載する温度に設定した。
【0047】
得られた結果を表3に示す。表3から分かるように、沸点170℃以上の溶媒において、100℃未満で加熱した場合には、燻煙(エアロゾル)の発生はみとめられなかった。これに対して、沸点170℃以上の溶媒の全てにおいて、100℃以上で加熱した場合には、燻煙の発生が認められた。また、沸点170℃以上の溶媒から生じた燻煙は、直ぐに消失せずに、2秒程度以上は視認可能な状態で維持されていた。特に、沸点170℃以上の溶媒に対して、150℃以上で加熱を行うと、燻煙の消失時間が長くなることも確認できた。一方、沸点170℃未満の溶媒では加熱温度に関わらず、燻煙の発生は認められなかった。
【0048】
本試験結果と共に、薬液中の溶媒の配合割合が燻煙の発生の有無には影響しないことを示す上記試験例1の結果を踏まえると、沸点170℃以上の溶媒を含む薬液に対して、100℃以上の加熱を行うことにより、薬液を燻煙状(エアロゾル状)で蒸散させることが可能になることが明らかである。
【0049】
【表3】

【0050】
試験例3
表4に示す芳香液及び蒸散方式の蒸散器(実施例7−8、比較例1−3)を調製した。芳香液蒸散器を使用して、表4に示す蒸散方式で30cm容の密閉可能なボックス内に芳香液を蒸散させた。なお、芳香液の使用量は、各芳香液の香りの強度が同じになるように調整した。次いで、ボックス内に布を入れてボックスを密閉し、1時間放置した。
【0051】
芳香液を蒸散させた直後のボックス内の香気と、1時間放置した後の布の香気について、3名の臭気判定士により下記の判定基準に従って評価した。
<香気の判定基準>
5:強い香り
4:やや強い香り
3:どちらともいえない
2:やや弱い香り
1:弱い香り
2:無香
【0052】
【表4】

【0053】
得られた結果を表5に示す。この結果から、いずれの芳香液でも、蒸散直後は、ボックス内は程度の香気が嗅知された。一方、芳香液の蒸散から1時間放置した後の布については、比較例1−3では殆ど香気が感じられなかったが、実施例7−8では布が付香されていた。即ち、芳香液を燻煙状で蒸散させることにより、芳香液の香気がボックス壁やボックス内の物品に付香する作用が高まることが本結果から明らかになった。
【0054】
【表5】

【符号の説明】
【0055】
1 薬液を含浸させた含浸体
2 発熱体
3 支持体
4 容器
5 薬液

【特許請求の範囲】
【請求項1】
沸点が170℃以上の溶媒を含む薬液と、
100℃以上の温度に加熱される発熱体と、
前記薬液を前記発熱体に供給可能な薬液供給手段と、
を備えることを特徴とする、薬液を燻煙状で蒸散させる薬液蒸散器。
【請求項2】
前記溶媒の沸点が170〜350℃であり、前記発熱体の加熱される温度が100〜350℃である、請求項1に記載の薬液蒸散器。
【請求項3】
前記薬液供給手段が、前記発熱体に接触するように配設されている、請求項1又は2に記載の薬液蒸散器。
【請求項4】
前記薬液供給手段が、前記薬液を含む含浸体であり、
前記含浸体の少なくとも一部が、前記発熱体に接触するように配設されている、
請求項1乃至3のいずれかに記載の薬液蒸散器。
【請求項5】
前記溶媒が、アルコール系溶媒、グリコールエーテル系溶媒、グリコール系溶媒、及び炭化水素系溶媒からなる群より選択される少なくとも1種である、請求項1乃至4のいずれかに記載の薬液蒸散器。
【請求項6】
前記溶媒が、3−メトキシ−3−メチル−1−ブタノール、ベンジルアルコール、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールn-プロピルエーテル、ジプロピレングリコールn-ブチルエーテル、トリプロピレングリコールn-ブチルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールフェニルエーテル、プロピレングリコール、エチレングリコール、ヘキシレングリコール、ジプロピレングリコール、及びジエチレングリコールからなる群より選択される少なくとも1種である、請求項1乃至5のいずれかに記載の薬液蒸散器。
【請求項7】
前記薬液が、香料を含む芳香液、消臭成分を含む消臭液、又は香料及び消臭成分を含む芳香消臭液である、請求項1乃至6のいずれかに記載の薬液蒸散器。
【請求項8】
前記薬液に含まれる前記溶媒の配合割合が10〜99.9重量%である、請求項1乃至7のいずれかに記載の薬液蒸散器。
【請求項9】
沸点が170℃以上の溶媒を含む薬液を、100℃以上の温度の発熱体に供給することにより、薬液を燻煙状で蒸散させることを特徴とする、薬液蒸散方法。
【請求項10】
前記溶媒の沸点が170〜350℃であり、前記発熱体の加熱される温度が100〜350℃である、請求項9に記載の薬液蒸散方法。
【請求項11】
前記溶媒が、アルコール系溶媒、グリコールエーテル系溶媒、グリコール系溶媒、及び炭化水素系溶媒からなる群より選択される少なくとも1種である、請求項9又は10に記載の薬液蒸散方法。
【請求項12】
前記溶媒が、3−メトキシ−3−メチル−1−ブタノール、ベンジルアルコール、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールn-プロピルエーテル、ジプロピレングリコールn-ブチルエーテル、トリプロピレングリコールn-ブチルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールフェニルエーテル、プロピレングリコール、エチレングリコール、ヘキシレングリコール、ジプロピレングリコール、及びジエチレングリコールからなる群より選択される少なくとも1種である、請求項9乃至11のいずれかに記載の薬液蒸散方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2012−75665(P2012−75665A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−223314(P2010−223314)
【出願日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【出願人】(000186588)小林製薬株式会社 (518)
【Fターム(参考)】