説明

薬物の送達のためのチュアブル剤形を製造する方法およびその製品

薬物などの薬学的に許容される活性成分を動物またはヒト対象へ送達するための、口に合う可食性で柔らかいチュアブル薬剤媒体を提供する。この可食性で柔らかい咀嚼物は食品グレードまたはより好適な不活性成分のみを含み、かつ好ましくは動物が起源の成分を含まない。この可食性で柔らかい咀嚼物を製造するプロセスは、活性および不活性な成分の混合中に熱または水の添加を使用する必要がなく、活性成分の安定な濃度を提供し、かつばらつきの無い重量および質感の咀嚼物を産生する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は経口で投与可能な薬学的投与単位の分野に関連し;特にチャンクなどの可食性の塊の形状である単位の分野に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
薬物を可食性の薬剤、例えばチュアブル錠または糖剤などに製剤すると、患者、特に、堅い錠剤またはカプセルを飲み込むのに抵抗しがちな動物が薬剤を受け入れることを増加しうる。残念ながら、多くの薬物および他の活性成分(まとめて、「活性物」)は、強い苦みまたはさもなくば受け入れ難い風味を有し、これらを咀嚼することを不快にする。
【0003】
香味料は一般的にチュアブル薬剤へ添加され、その食味を向上させる。例えば、獣医学の薬剤は、ウシ、ブタ、ニワトリ、シチメンチョウ、魚、およびヒツジなどの未調理の乾燥肉の部分;肝臓などの臓器の肉;肉粉、骨粉、および砕いた骨などの、動物性製品に基づく香味料を含んでもよく、かつ、カゼイン、牛乳(これは乾燥スキムミルクなどの乾燥形態および低脂肪形態を含んでもよい)、ヨーグルト、ゼラチン、チーズ、および卵などの動物由来の食品(まとめて、「動物由来の香味料」)が利用されうる。
【0004】
しかしながら、多くの動物起源(特に肉、家禽、または海産食品が起源)香味料の使用には、薬物の受容者に対してだけでなく、調味された投与単位を作製する製造設備の汚染を介しても、感染性因子への曝露のリスクがある。この理由から、動物が起源の香味料を用いて薬学的製品を調製する製造施設はしばしば、同時に複数の製品を処理することが可能な施設において製造が実施されうる場合に負うであろうコストよりも大きな相当するコストでそれらを調製することに、限定的に使用される。
【0005】
質感もまたチュアブル薬剤の課題である。チュアブル投与単位に最も普通に用いられる形状の一つは圧縮錠であり、その成分(活性物および結合剤などの不活性成分を含む)は、特に動物にとって、錠剤をざらついたものまたはさもなくば魅力のないものにし得る。従って、特に動物での使用のために好ましい代替的な剤形は、「可食性で柔らかい咀嚼物」であって、一般的に肉様の塊、またはチャンクもまた、調理済み挽き肉パティに似た柔らかさを有する、消耗品であるペット用おやつにおいて広く見うけられる。
【0006】
可食性で柔らかい咀嚼物は、典型的には、ブレンドして押し出すことによって製造される。予め混合された成分は、スクリューを内蔵する押し出しバレルの中へと導入され、その後混合され、凝固させられ、膨張させられ、かつブレンドされた混合物へと剪断される。続いて、より堅い質感が望ましい場合にはさらなる加熱がなされるか、または、混合物へ水が導入される。混合物へ導入される水は、それが混合物内で保持されるであろう場合には、一般的には薬学的グレードでなくてはならない。ブレンドされた混合物はその後成形型プレート上で所望の形に形成され、その後個々の単位へと切断される。
【0007】
押し出し過程で生じる熱は、混合物における活性物の安定性(有効性または完全性)に劣化を起こし得、形成された各単位によって提供される有効量を変動させる。特に、押し出し、特に螺旋状の押し出しの間にかかる圧縮から生じる熱は、多くの化合物の融点を超過しうる。押し出された材料のバッチ間の、咀嚼物の質感、形、および重量の一貫性もまた影響を被りうる。
【0008】
従って、活性物が完全にまたは部分的に分解されるようなレベルの熱が発生することなく活性物の咀嚼混合物へのブレンドが達成される、可食性の柔らかいチュアブル薬剤の製造方法が必要である。好ましくは、この方法は、混合物または形成された産物に対して、室温を超えるいかなる熱も加えることなく実施されると考えられる。咀嚼物を、高価な薬学的グレードの水を成分として使用することなく製造することが容易であることも、また望ましい。当技術分野において、感染性の因子または汚染物を含みうる成分を使用することなく動物に気に入られる食味の、可食性の柔らかい咀嚼薬剤もまた必要とされる。さらに、ばらつきの無い咀嚼物の重量、質感、および活性物の投与量を保証する様式で製造するための、チュアブル薬剤を産生するために採用される製造手段が非常に求められている。
【発明の概要】
【0009】
本発明は、ユニークな可食性で柔らかい咀嚼物剤形の薬剤、およびその製造プロセスを提供する。本発明の可食性で柔らかい咀嚼物は特にペット動物の口に合う。これらは少なくとも食品グレードの質の不活性成分を含み、かつ、最も好ましくは、動物が起源の不活性成分を含まない。そのようにして、可食性で柔らかい咀嚼物は、感染性の因子または汚染物の伝達の懸念なしに、かつ、同じ製造施設において産生される他の産物の交差汚染のリスクなしに製造されうる。
【0010】
本発明の製造プロセスは、可食性で柔らかい咀嚼物を産生することを可能にし、ここで活性物を咀嚼混合物へブレンドすることは、活性物が完全にまたは部分的に分解されるようなレベルの熱の産生なしに達成される。この方法は、咀嚼混合物および形成された咀嚼物が、当製造業者に既知の手段で測定されうる、押し出しにおいて生じる圧縮および/または剪断応力によって典型的に生じる温度またはそれを超える温度に曝露されないようにするように実施される (たとえば、 Vermeulen et al., Chemical Engineering Science (1971) 26: 1445-1455; Chung et al., Polymer Engineering and Science (1977) 17: 9-20; Mount et al., Polymer Engineering and Science (1982) 22(12): 729-737; Lindt, J.T., Conference Proceedings, ANTEC ’84, Society of Plastics Engineers (1984) 73-76; Rauwendaal, C., Conference Proceedings, ANTEC ’93, Society of Plastics Engineers (1993) 2232-2237; Miller et al., Conference Proceedings, ANTEC ’74, Society of Plastics Engineers (1974) 243-246; Derezinski, S.J., Conference Proceedings, ANTEC ’88, Society of Plastics Engineers (1988) 105-108; Derezinski, S.J., Journal of Materials Processing & Manufacturing Science (1997) 6(1): 71-77; Derezinski, S.J., Conference Proceedings, ANTEC ’96, Society of Plastics Engineers (1996) 417-421を参照のこと)。
【0011】
好ましくは、咀嚼混合物および形成された咀嚼物は、室温(20℃)より約10°高い温度に曝露されることはなく、0°もの低さの温度から室温よりも約10°低い温度に曝露され得、かつ、最も好ましくは、ブレンドおよび形成段階を通して室温で維持される。そのようにして、咀嚼混合物および形成された咀嚼物における活性物は、示された範囲外の温度での成分との混合によっても、熱源または圧縮によって生じる熱の適用によっても、または他の手段によっても、ブレンドおよび形成段階の実施の間に示される温度を超えるまたはその温度未満の熱に曝露されない。従って活性物の安定性は、可食性で柔らかい咀嚼物の混合および形成の間保たれ、かつ十分にブレンドされた柔らかい質感が提供される。
【0012】
咀嚼物の成分として水は使用せず、それによって高価な薬学的グレードの水を使用する必要性を回避し、一方で微生物の生育または活性物の有効性の損失の機会を減少させる。
【0013】
活性物を油と混合して懸濁物を形成し、その後咀嚼物の乾燥成分と混合すると、完成した産物において活性物の均一な分布が促進されることもわかっている。好ましくは、活性物は、油と混合する前に活性物の有効性を保護するために被覆されることもあると考えられる。
【0014】
可食性で柔らかい咀嚼物の、被覆された活性物の懸濁物と他の成分(たとえば香味料)をブレンドするために、好ましくは水平ミキサが使用される。そのようなミキサは、咀嚼混合物を回転させて粒子状の形状にするのに、他に類をみないほど良く適合している。混合行為は、混合物中の成分を混合容器の壁から取り除き、容器を縦横に動かして、熱を加えることなく形成された均一にブレンドされた混合物を提供する。冷却段階が不要であるため、調理して押し出す方法と比べ、咀嚼物を産生する時間が短縮される。
【0015】
産生された非常に良くブレンドされた混合物は押し出すことなく型に置かれ、かつ熱を加えることなく固まることが可能な個々の投与単位に形成される。可食性で柔らかい咀嚼物は任意の所望の形で産生されうる。本発明で利用される好ましい混合および成形設備は個々の可食性で柔らかい咀嚼物を、ばらつき無くブレンドされた成分、安定して提供される活性物、およびばらつきの無い重量を伴って提供しうる。
【0016】
本発明の可食性で柔らかい咀嚼物は、任意の食品グレードではない不活性成分(または好ましくは任意の動物が起源の不活性成分)を使用することなく口に合う形状で産生される。従って製造プロセスは、動物用のチュアブル薬剤において通常使用される動物が起源の肉香味料などの供給源に由来する感染性の因子または汚染物による、施設における他の設備の潜在的な交差汚染のリスクなしに実施されてもよい。
【発明を実施するための形態】
【0017】
A. 本発明の可食性で柔らかい咀嚼物において使用する材料
一般的に、可食性で柔らかいチュアブル薬剤およびおやつは、製品の製造可能性、質感、および見た目を向上させるために、不活性成分の内容として、結合剤、ビタミンおよび色素などを含む。当業者は、本発明における使用のために水を含む必要のない、そのような不活性成分に精通しているであろう。可食性でない成分は柔らかい咀嚼物中に存在しない。
【0018】
本発明における使用のために可食性で柔らかい咀嚼物の不活性成分は食品グレードの質未満であるべきではなく、かつより高い質(たとえば、USPまたはNDグレード)ではありえない。この文脈では、「食品グレード」とは、健康を害する化学物質または作用物質を含まない、もしくは与えない材料を指す。従って、食品グレードの香味料は、動物が起源のものである場合、その中に存在する感染性の因子または汚染物を、たとえば殺菌、加圧、または照射などのプロセスによって、実質的に減少させる、もしくは排除するために調製されるものであるだろう。
【0019】
特に後半のプロセスは、広い範囲の食品および動物由来の物質、たとえば生肉製品、野菜、穀物、および果実からの、大腸菌(E.coli)O157:H7、サルモネラ(Salmonella)およびカンピロバクター(Campylobacter)などの感染性の因子を効果的に排除することができる。しかし好ましくは、本発明の可食性で柔らかい咀嚼物はいかなる動物が起源の成分も含まないと考えられ、かつ最も好ましくは、いかなる動物由来の香味料も含まないと考えられる。全ての成分は薬学的に許容されるものであるべきである(必要に応じて、たとえば、食品グレード、USPまたはNF)。
【0020】
香味料は好ましくは、少なくとも食品グレードの質、および、最も好ましくは動物が起源の香味料を除外して、本発明の可食性で柔らかい咀嚼物中に存在する。動物が起源でない好ましい香味料は、可食性の人工的な食品様香味料(たとえば、大豆由来のベーコン香味料)が添加された大豆タンパク質などの植物性タンパク質である。標的とする動物によって、他の非動物香味料は、アニス油、イナゴマメ、落花生、果実フレーバー、例えば蜂蜜、砂糖、メープルシロップ、および果糖などの甘味料、例えばパセリ、セロリの葉、ペパーミント、スペアミント、ニンニクなどのハーブ、またはそれらの組み合わせを含むことができる。
【0021】
本発明における使用のために特に好ましい香味料は、Ohly, Inc.が作製したProvesta(商標)356である。これは、薄い黄褐色で水に可溶性の粉末であり、酵母の抽出物および反応したフレーバーの特性に基づいて、好ましいスモーキーな塩漬けベーコンフレーバーを提供する。Provesta 356は、動物に由来する成分を含まない。
【0022】
ウマおよび他の草食動物、ならびに、ウサギ、ハムスター、スナネズミ、およびモルモットなどの小動物へ投与するためには、穀物および種子が特に魅力的なさらなる香味剤である。穀物は、小麦粉、フスマ、シリアル、繊維、全粒粉、およびグルテンミールを含む粗挽き形状のものを含む咀嚼物の産生と一致する任意の形状で存在してもよく、かつ、丸める、波型にする、摩砕する、脱水する、または粉砕してもよい。ミネラルも、塩および他のスパイスなどの香味料として添加してもよい。好ましくは、利用する穀物は脱水され、粉砕され、または薄片とされている。脱水したニンジンなどの野菜、およびベニバナ種子またはミロ種子などの種子は、小動物にとって特に魅力的であり、含まれてもよい。
【0023】
さらには、可食性で柔らかい咀嚼物の製造可能性および質感を向上させる剤は柔軟剤(これは固着防止剤であってよい)、アンチケーキング剤または潤滑剤、および保湿剤または湿潤剤を含んでもよい。本発明で使用しうる潤滑剤またはアンチケーキング剤の実例としては、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、固体のポリエチレングリコールが挙げられる。融解した場合には、活性物、ラウリル硫酸ナトリウム、またはその混合物と混合する前に、剤は室温±10°に戻される。ステアリン酸マグネシウムは、潤滑させるため、および、成形後に可食性で柔らかい咀嚼物を設置するのを助ける構成要素として特に好ましい。
【0024】
保湿剤は実例としてグリセロールおよびプロピレングリコールを含み、かつ湿潤剤はセチルアルコールおよびモノステアリン酸グリセロールを含む。グリセリンは好ましい保湿剤であり、製品の保存期間にわたって可食性で柔らかい咀嚼物の柔らかさを維持するのに有用である。グリセリンは透明、無色、無臭、粘性のある、吸湿性の液体である。
【0025】
固着防止剤、好ましくはポリエチレングリコール、および最も好ましくはPEG 3350 (Dow Chemical)は、成形前の好ましくは可食性で柔らかい咀嚼混合物中に、約1.0%〜3.0% w/wの体積で含まれると考えられる。成形後、添加された固着防止剤を伴う可食性で柔らかい咀嚼物は、PEG3350について通常8〜24時間の期間以上セットアップされる。PEG3350は速やかに凝結して、咀嚼混合物を柔らかくし、かつ可食性で柔らかい咀嚼物単位が成形後に互いに固着するのを防止する。
【0026】
利用される柔軟剤は、可食性で柔らかい咀嚼製品の密度および堅さを制限するようなものである。そのような剤は多糖および繊維を含んでもよい。多糖は、果実、ジャガイモまたはタピオカ澱粉などの植物性澱粉などの食品の複合体の形状で含まれても良い。多糖も別途、たとえば硫酸コンドロイチンまたはグルコサミンHClなどの形状で提供されてもよい。
【0027】
繊維も、可食性で柔らかい咀嚼物における多孔性を提供または維持するために充填剤または増量剤として提供されてよい。この目的のために使用される繊維は、果実、穀物、マメ科植物、野菜、もしくは種子由来のものであってよく、または木質繊維、紙繊維、もしくは粉末セルロース繊維などのセルロース繊維などの形状で提供されてもよい。本発明における使用のために特に好ましいそのような増量剤は、オーツムギのフスマなどのフスマである。
【0028】
可食性で柔らかい咀嚼物において利用される結合材は、粘着性の物質であってよいが、好ましくは可食性で柔らかい咀嚼産物に食品様の質感を与える。一般的に、結合材はモラセス、コーンシロップ、ピーナッツバター、例えばジャガイモ澱粉、タピオカ澱粉、またはコーンスターチなどの澱粉、ハチミツ、メープルシロップ、および砂糖を含んでも良い。本発明の可食性で柔らかい咀嚼物において使用される好ましい結合材は澱粉である。
【0029】
特に好ましい結合材はColorcon Corporation が作製した、アルファ化澱粉であるStarch 1500である。アルファ化澱粉は、全ての、または一部の澱粉顆粒を破壊して澱粉に流動性を付与するように、化学的および/または機械的に改変された澱粉である。これは、遊離アミラーゼを5%、遊離アミロペクチンを15%、および改変されていない澱粉を80%含む。供給源はコーン由来である。
【0030】
粉砂糖(スクロース)は甘味料として、ならびに結合材として十分に役割を果たす。スクロースは、サトウキビまたはサトウダイコンのいずれかより得られる。塩、および/または他のスパイスを必要に応じて添加してもよく、塩を用いるのは特にフレーバーを増強させるのに好ましい。
【0031】
ソルビン酸カリウム、安息香酸ナトリウム、またはプロピオン酸カルシウムなどの保存料を、微生物および真菌類の生育を遅延させるために含んでもよい。Eastman Chemicals が作製したTenox 4 はBHAおよびBHT抗酸化剤の組み合わせである。これは好ましくかつ便利な保存システムである。
【0032】
ビタミンを、標的とする動物の栄養要求量に従って提供してもよく、かつ利用する油の要素として提供してもよい。ビタミンは様々な油の中にも存在しており、柔軟剤として添加してもよい;たとえば、キャノーラ油、コーン油、大豆油および植物油。
【0033】
活性物の懸濁物ならびにフレーバー増強剤および柔軟剤を形成するために、油が利用される。植物油(コーン油、ベニバナ油、綿実油、大豆油、およびオリーブ油など)が特に好ましく、大豆油が最も好ましい。
【0034】
利用してもよい賦形剤は、澱粉、セルロース、またはそれらの誘導体もしくは混合物を含み、その量はたとえば約1〜約60% (w/w)、好ましくは約2〜約50%、より好ましくは約15〜50%の範囲である。たとえば賦形剤は、グリコール酸澱粉ナトリウム、アルファ化コーンスターチ(Starch 1500)、クロスポビドン(Polyplasdone XL(商標), International Specialty Products)、およびクロスカルメロースナトリウム(Ac-Di-Sol(商標), FMC Corp.)、およびその誘導体からなってもよい。
【0035】
賦形剤は、活性物の研和を行うために用いてもよい。たとえば、10%の研和を行うためには、100gの活性物を900gの賦形剤、例えば好ましい賦形剤であるStarch 1500と組み合わせる。理想的には、活性物の幾何学的希釈が実施され、それにより活性物はまず適したアルコール溶剤;たとえばエチルアルコールに溶解される。溶解した活性物はその後賦形剤と組み合わされ、かつアルコールは蒸発させることが可能である。この段階は少量の活性物を包括的かつ一様に澱粉中に混合することを可能にする。乾燥した混合物を篩目を通して移し、流動化し、かつ、その後好ましくは被覆する。
【0036】
被覆が提供される場合(活性物の安定性の保護を助け、かつその味を遮蔽するため)は、Colorcon Corporation からOPADRY(商標)として販売されている水性のフィルムコートなどの、食品グレードの被覆が好ましい。OPADRYはメチルセルロースに基づく製品であり、可塑剤および顔料を含む。この被覆は水性ベースであるため、可食性で柔らかい咀嚼物の製造中に特別な取り扱いの注意が必要ない。しかし投与後、胃内の水または他の液体に曝露された場合に、水性フィルムコートは数分以内に浸食され、および/または溶解しはじめると考えられる。従って、可食性で柔らかい咀嚼物の崩壊および溶解は、対象へ投与した後、遅延されないはずである。
【0037】
経口投与しうる任意の活性薬物または他の生物学的に活性な化合物を、本発明の可食性で柔らかい咀嚼物中に提供してもよい。しかし本発明は、特に30℃を超える温度で熱に不安定な活性物と共に用いるために他に類をみないほど良く適合されている。ヒトおよび/または獣医学の薬学的分野の当業者は、限定されないが、抗生物質、鎮痛剤、抗ウイルス剤、抗真菌剤、駆虫剤、内部および外部寄生虫駆除剤、ホルモンおよび/またはその誘導体、抗炎症剤(非ステロイド性抗炎症剤を含む)、ステロイド、行動改変剤、ワクチン、制酸剤、緩下剤、抗痙攣剤、鎮静剤、トランキライザー、鎮咳剤、抗ヒスタミン剤、鬱血除去剤、去痰剤、食欲刺激および抑制剤、ミネラル、ならびにビタミンを含みうるそのような活性物の同定に非常に精通していると考えられる。
【0038】
最終産物中の各構成要素の量は、薬物の性質、処置される対象の体重および状態、ならびに所望の単位投与量に依存して、大幅に変動しうる。当業者は本開示の教示をふまえて、可食性で柔らかい咀嚼物中の特定の活性物について投与量を調整することができるだろう。しかし一般的に、活性物は組成物の総重量に基づいて、約0.001%〜75% (w/w)、さらに好ましくは0.095%〜40%、および最も好ましくは50%を超えない重量の範囲で提供されてもよい。たとえば、イヌ糸状虫の処置のために、イヌにイベルメクチンなどの駆虫剤を投与するために(実施例1を参照のこと)、澱粉を用いる研和によって、前述の混合物の31.2%を含むために添加することができる。
【0039】
例示的な産物として記載された処方は、他の種へ活性物を送達するために容易に改変されてもよい。たとえば、ウマ用の可食性で柔らかい咀嚼物は、ベーコンをモラセス粉末、オーツムギのフスマ、およびリンゴに置き換えた同じ基本的処方にもとづいていてよい。特にネコにとって魅力的である香味料は、魚様のフレーバーをもつ人工的な大豆ベースの化合物を含む。ヒト受容者は、砂糖またはモラセスなどの、より甘い香味料を好みうる。
【0040】
本発明の可食性で柔らかい咀嚼物は、投与および安定な保存のために個々に包装されてもよい。適する包装用の材料の例としてはHDPEボトル、またはフォイル/フォイル包装が挙げられる。
【0041】
B.本発明の可食性で柔らかい咀嚼物を製造のためのプロセス
本発明の可食性で柔らかい咀嚼物のための活性成分および不活性成分は、材料をブレンドし、かつ材料を混合容器の側面に対して投げつける(casting)ことができる水平ミキサの混合容器へ添加される。この動作により成分は、混合物に熱が与えられることなくまたは薬学的グレードの水が添加されることなく、十分かつむら無くブレンドされうる。
【0042】
水平ミキサは一般的に混合チャンバ、回転する細長い水平混合シャフト、および、一般的に水平シャフトから垂直に垂れさがってチャンバの内側付近で回転する複数の混合用具を含む(たとえば、開示内容が参照により本明細書に組み入れられる米国特許第5,735,603号を参照のこと)。混合用具は、存在する全ての材料の混合が適切に行われるよう回転するような、チャンバ壁の形に沿った混合プロセスを目的として、必要に応じて構成されかつ寸法決めされる。そのようないくつかの混合チャンバは円柱形であり、他は通常当技術分野においてダブルアームミキサまたはリボンミキサと呼ばれるミキサなどの槽状形である。
【0043】
水平ミキサは一般に、両端においてチャンバの外まで延びる水平な混合シャフトを有すると考えられる。電動式ミキサにおいては、駆動端と呼ばれるシャフトの一端において、シャフトは、シャフトを回転させるために駆動モーターに動作可能に連結している。この駆動端では、シャフトは典型的には、駆動モーターとチャンバとの間に位置するベアリング構造を介して連結している。ベアリング構造は、シャフト駆動端の補助を提供し、かつ滑らかな回転も確保する。多くの場合、分離したシール構造がさらに、混合チャンバ内での、および混合チャンバ外への材料の漏れを塞ぐために、シャフトの長さに沿ってしばしば提供される。
【0044】
使用される本発明における使用のための特に好ましいミキサは、FXM Series(商標)として商標登録されLittleford Day Corporationが販売している、選択できるかくはん羽根を持つプラウ(plough)型のリボンミキサである。商業的規模の産生には、200kg容量のブレンダーを使用することができ、研究規模の作業では咀嚼混合物の産生能力は50kg程度である。混合時に熱は与えられず、かつ産生されたブレンド産物は、バッチ間でばらつきの無い重量、成分の分布、および質感を有する。
【0045】
好ましくは、咀嚼混合物の乾燥成分がまずブレンドされ、その後活性物の油懸濁物がその中にブレンドされ、続いて、徹底的にブレンドされた混合物を形成するために液体成分(たとえば湿潤剤および柔軟剤)を伴う混合がなされる。ブレンド後、咀嚼混合物は圧縮なしにブレンダー通ってポートから放出され、形成機を用いて個々の投与単位に加工するのに適切なコンテナへ入る。
【0046】
本発明において種々の形成設備を利用しうるが、使用するのに特に好ましいものは、予め形成されたハンバーガーパティおよびチキンナゲットなどの、成形された食品製造用の使用のために開発された成形機である。たとえば、米国特許第3,486,186号; 3,887,964号; 3,952,478号; 4,054,967号; 4,097,961号; 4,182,003号; 4,334,339号; 4,338,702号; 4,343,068号; 4,356,595号; 4,372,008号; 4,535,505号; 4,597,135号; 4,608,731号; 4,622,717号; 4,697,308号; 4,768,941号; 4,780,931号; 4,818,446号; 4,821,376号; 4,872,241号; 4,975,039号; 4,996,743号; 5,021,025号; 5,022,888号; 5,655,436号; および5,980,228号(これらの開示は本明細書に組み入れられる)に開示された成形機は本発明で利用されうる形成設備の代表的なものである。
【0047】
本発明における使用のために好ましい形成用設備は、Formax社製のFormax F6(商標)成形機などの、咀嚼混合物に圧縮熱を与えない成形機である。このF6機は1分あたり60ストークの性能を有する。6”×6”の正方形を形成する成形型を、各単位の重量が4gで大きさがおよそ5/8”×5/8”であるような、チャンク様の可食性で柔らかい咀嚼物の単位を1ストロークあたりおよそ16個形成するために、使用することができる。他の形(たとえば、骨型の咀嚼物)の産生用の成形型もまた利用しうる。
【0048】
そのような機械において、ロータリーバルブを開放して、その下のスロットを満たすように型の穴の第一のセットへと咀嚼混合物を流す。型プレートが前進し、咀嚼混合物を穴の第二のセットへと推し進める。その後型プレートは後退し、このサイクルが再び開始される。成形機構は油圧式であり、かつ熱を与えることなく成形プレート上で軽い圧力で作動する。
【0049】
全ての型プレートの穴から同時に、成形された混合物を取り出すために、穴と協調するカップを備えた突き出し機構が提供される。本発明の可食性で柔らかい咀嚼物を成形するために、そのような機械は、サブバッチあたり50,000単位をもたらすブレンダー混合物の使用を想定すると、1時間あたりおよそ57,600単位のアウトプットを産生することができる。咀嚼物の各バッチはバルク包装されてもよく、または好ましくは、各咀嚼物はその後保存用に個々に包装される。
【0050】
本発明を十分に説明してきた。その実施を以下に提供する実施例によって例示する。標準的な省略および測定を、反する定義を与えることなく実施例を通じて適用する。実施例は本発明の範囲を限定することがなく、添付の特許請求の範囲によって完全に定義される。
【0051】
実施例1
可食性で柔らかい咀嚼物の処方
活性物の送達に適する可食性で柔らかい咀嚼物の例を以下の処方1に示す。

【0052】
実施例2
本発明の可食性で柔らかい咀嚼物の活性成分を被覆する方法
100gのイベルメクチンをエチルアルコールへ溶解し、その後この活性物を900gのStarch 1500と3〜5分混合して、活性物(イベルメクチン)の10%研和物を作製した。結果として得られた研和物は乾燥するまで置いておき、その後粉砕して、20メッシュの篩目を通してふるいわけした。ふるいわけした研和物を流動床カラムにおいて流動化した。Wurster被覆機を用いて、研和した活性物に食品グレードの被覆 (OPADRY(商標))を適用した。トップスプレー流動被覆機、または他の適する装置もまたこの工程のために使用できる。被覆された活性物をその後大豆油中に混合し、懸濁物を形成した。
【0053】
実施例3
本発明の可食性で柔らかい咀嚼物の例示的製造方法
実施例1および2に挙げた全ての乾燥した成分を20メッシュの篩目を通して移し、その後水平混合ブレンダーの混合容器中へ置き、5分間混合した。グリセリンをゆっくり添加し、続いて植物油/活性物の懸濁物、および該油に添加されているTenox4をゆっくり添加した。産物を3分間混合した。PEG 3350が融解した後咀嚼混合物へ比較的素早く添加した。その後これを更に数分混合した。混合物は「クッキーの生地様」の外観に似ていた。
【0054】
チャンク様の形を産生するための成形型を有するFormax F6(商標)成形機を用いて混合物を個々のチャンクに形成し、保存のために包装した。
【0055】
本発明を十分に説明してきた。その範囲は本明細書に添付の特許請求の範囲によって定義される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
可食性で柔らかいチュアブル薬剤媒体を製造する方法であって、
(a) 活性作用物質および油を含む、被覆された医薬を含む活性物の懸濁物を形成する段階であって、薬剤の活性物が、その安定性または有効性が押し出しの間に典型的に発生する温度によって不利な影響をうけ得るものである、段階;
(b) 段階(a)で形成された活性物の懸濁物を、動物が起源ではない乾燥した不活性成分と、混合チャンバおよび混合シャフトを有するミキサ内でブレンドする段階であって、該ミキサの動作が、均一にブレンドされた活性成分をその中に有する可食性で柔らかい咀嚼混合物を形成する段階;
(c) 水溶性のポリエチレングリコール固着防止剤を乾燥した混合物へ添加し、その中でブレンドして、可食性で柔らかいチュアブル混合物を形成する段階;
(d) 可食性で柔らかいチュアブル混合物をミキサより取り出す段階;および
(e) 可食性で柔らかいチュアブル混合物を個々の単位の塊に形成する段階であって、そうして形成された該単位の塊が単位間でばらつきの無い重量である、段階、
を含み、
前記方法のいかなる段階の実施によっても熱は発生せず、または前記方法のいかなる段階の間にも熱が加えられず、かつ、
さらに、前記方法の実施中に活性作用物質へ水が添加されることがない、方法。
【請求項2】
前記段階(b)において混合チャンバへ活性作用物質を添加する前に、活性作用物質と賦形剤の研和物を調製する段階をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
活性作用物質の研和物が、活性物をアルコール溶剤に溶解する段階、活性物と賦形剤を混合する段階、および研和された活性物を混合チャンバへ添加する前にアルコールを乾燥させる段階を含む方法によって調製される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
可食性で柔らかいチュアブル薬剤媒体を製造するための方法であって、
(a) 活性作用物質の活性物および油を含む、被覆された医薬を含む活性物の懸濁物を形成する段階であって、薬剤の活性物が、その安定性または有効性が押し出しの間に典型的に発生する温度によって不利な影響をうけ得るものである、段階;
(b) 段階(a)で形成された活性物の懸濁物を、動物が起源ではない乾燥した不活性成分と、混合チャンバおよび混合シャフトを有するミキサ内でブレンドする段階であって、該ミキサの動作が、均一にブレンドされた活性成分をその中に有する可食性で柔らかい咀嚼混合物を形成する、段階;
(c) 水溶性のポリエチレングリコール固着防止剤を乾燥した混合物へ添加し、その中でブレンドして、可食性で柔らかいチュアブル混合物を形成する段階;
(d) 可食性で柔らかいチュアブル混合物をミキサより取り出す段階;および
(e) 可食性で柔らかいチュアブル混合物を個々の単位の塊に形成する段階であって、そうして形成された該単位の塊が単位間でばらつきの無い重量である、段階、
を含み、
可食性で柔らかい咀嚼混合物およびその成分が、前記方法の任意の段階の実施中に室温またはその±10℃で維持され、かつ、
さらに、前記方法の実施中に活性作用物質へ水が添加されることがない、方法。
【請求項5】
活性物が、その有効性または安定性が室温より10℃高いまたは室温より10℃低い温度において不利な影響をうけるものである、請求項1または4に記載の方法。
【請求項6】
請求項1または4に記載の方法に従って製造される、医薬を含む可食性で柔らかいチュアブルな塊の形状である薬剤媒体。
【請求項7】
医薬が、その有効性または安定性が室温より10℃高いまたは室温より10℃低い温度において不利な影響をうけるものである、請求項6に記載の薬剤媒体。

【公表番号】特表2011−503197(P2011−503197A)
【公表日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−534160(P2010−534160)
【出願日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【国際出願番号】PCT/US2008/083373
【国際公開番号】WO2009/064859
【国際公開日】平成21年5月22日(2009.5.22)
【出願人】(508089772)ピードモント ファーマシューティカルズ リミテッド ライアビリティ カンパニー (3)
【Fターム(参考)】