説明

薬物含浸容器

【課題】改良された薬物含浸スリーブが提供を提供する。
【解決手段】医療用インプラントを包容するための薬物含浸スリーブが提供される。このスリーブ、医療用インプラントを受け取るように構成された内部空洞を規定する、生物学的に適合性のある材料でできた本体を含む。この生物学的に適合性のある材料が生物再吸収性である。この本体は、空洞から本体を貫通して延びる穿孔、穴などの複数の開口を含むことができる。このスリーブはさらに、第1の端部と、第2の端部と、再吸収性シートに含浸させた薬物とを含むことができる。そこを通して医療用インプラントを受け取るためにスリーブの第1の端部が開いていてもよく、第2の端部が閉じていてもよい。インプラントをスリーブに包容し、患者に埋め込むことができ、時間の経過とともに、生体内で、そこから、埋込み部位の周囲の組織に薬物が投与される。
【選択図】なし。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、医療用インプラントを受け取るように構成され、適合された改良型の薬物含浸容器(drug−impregnated encasement)に関し、より詳細には、一実施形態では、さまざまなタイプ、サイズおよび形状の整形外科インプラントを包容する働きをする、埋込み部位に薬物を送達するためのスリーブに関する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
インプラント表面における細菌の集落形成はしばしば感染をもたらす。全身性抗生物質は感染の危険を低減させることができるが、全身性予防的抗生物質の存在下であっても、インプラントの表面では依然として感染が起こる。局所抗生物質または他の生物活性作用物質で埋込み部位を処理することは、整形外科医にとって珍しいことではない。あるケースでは、局所抗生物質の貯蔵場所とするために、外科医が抗生物質をPMMA骨セメントと混合する。他のケースでは、より均一で使い勝手のよい解決手段を提供するために、整形外科インプラントに適用させることができる生物再吸収性(bioresorbable)の表面コーティングまたはフィルムが開発された。このコーティングに、薬物またはゲンタマイシンなどの抗生物質を含浸させることができる。このようなコーティングは、脛骨釘または他の釘、プレート、ねじなどのさまざまな整形外科インプラントに適用させることができる。一般に、このようなコーティングは、再吸収性ポリマーから得られ、そのため、薬物が枯渇すると、インプラントは残り、コーティングは溶け出す。
【0003】
コーティングされたインプラントの1つの問題点は、コーティングされたこれらのインプラントはそれぞれが新たな開発製品であり、そのコーティング方法、新しいパッケージングおよび滅菌方法を検証しなければならないことである。さらに、コーティングされたそれぞれのインプラントは、規制上の別個の申請の対象である。その結果、薬物がコーティングされたインプラントの大量の書類は大作業になる。このロジスティクス上の問題は、鎮痛薬、抗腫瘍薬、ビスホスホネート、成長促進物質などの材料を含むさまざまなコーティングを使用することが見込まれることによって、大きくなる。
【0004】
コーティングされた製品の潜在的な数の多さ、サイズおよび形状を考えると、コーティングされていないインプラントおよびコーティングされたインプラントを提供する規制上、財務上およびロジスティクス上の負担は莫大である。鎮痛薬、抗腫瘍薬、成長促進物質などの追加の薬物をこのコーティングに使用することを考えた場合、この問題は増幅される。さらに、これらの事例の一部では、一般的なインプラントの組織接触ゾーンの大部分を構成し得る周囲の軟部組織ではなく、骨の中に薬物を送達しなければならない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
(発明の要旨)
したがって、多種多様なインプラント全般に適合することができ、従来の表面コーティングの制限に対する費用効果の高い解決手段を提供することができる改良型の薬物放出手段が依然として求められている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は一般に、改良型の薬物含浸容器を対象とする。この容器は、生物学的に適合性のある材料から製作されていることが好ましい。本明細書では、生物学的に適合性のある材料とは、患者に埋め込むのに適したFDA認可の任意の材料であると、広く定義される。好ましい一実施形態では、この容器が生物再吸収性材料から製作される。ただしこれに限定されるわけではない。好ましい一実施形態では、この容器がスリーブとして構成される。本発明は、コーティングされたインプラントの上記の問題に対する「1つのサイズが全てに適合する(one−size fits all)」解決手段を提供する。多数の異なるコーティングされたインプラントの在庫を用意する代わりに、代替として、好ましくはある範囲の従来のコーティングされていない異なるインプラントに適合することができる薬物含浸スリーブが提供される。したがって、本発明の一態様によれば、1つのサイズが全てに適合する(one−size fits all)」ように構成される。
【0007】
本発明の他の態様によれば、患者にスリーブが埋め込まれ、時間の経過とともに、生体内で、スリーブから埋込み部位の周囲の組織に薬物が投与される。一実施形態では、本明細書でさらに説明されるように、使用されるスリーブ材料の選択、スリーブの構造、薬物または薬物の組合せのタイプおよび形態、ならびに/あるいはスリーブに含浸させる薬物送達系などの因子によって、スリーブから患者に送達される薬物の持続期間および用量が調節される。
【0008】
本発明の他の態様によれば、包容する必要があるインプラントの特定のサイズおよび形状にスリーブを個別に適合させるために、外科医が、薬物含浸スリーブを有利に変更し、適合させることができる。さらに有利には、一実施形態では、外科医が手術室でスリーブを変更し、次いでインプラントの上に滑らせ得る。この方法は、手術中に目視観察および測定のため埋込み部位にアクセスできるようになるまで、骨固定手技のために、どのタイプまたはサイズのインプラント、例えば骨プレートが必要であるかが、外科医にとって不確かな場合に有益である。これによって外科医は、適正なタイプおよびサイズのインプラントを選択することができ、そして、薬物含浸スリーブを適合するように切断することができる。
【0009】
スリーブに含浸させることができる1種または数種の例示的な薬物または生物作用物質には、限定はされないが、抗生物質、防腐薬、鎮痛薬、抗腫瘍薬、ビスホスホネート、成長因子、ペプチド、スタチンなどが含まれる。任意のタイプの薬物または生物作用物質をスリーブに組み込むことができること、および本発明は使用されるタイプによって限定されないことを理解されたい。本明細書において「薬物」というとき、それは、医療用インプラントの埋込み部位に投与するためにスリーブに有益に組み込むことができる医学的に関連した任意の生物作用物質と広く定義されることに留意されたい。本発明は、任意のタイプの医療用インプラント(本明細書では歯科インプラントを含むと定義される)とともに使用することができ、整形外科インプラントとともにのみ使用することには明白に限定されないことにも留意されたい。
【0010】
医療用インプラントを包容する薬物含浸スリーブの好ましい一実施形態は一般に、生物学的に適合性のある材料の少なくとも1枚のシートでできた本体と、第1の端部と、第2の端部と、シートに含浸させた薬物とを含む。一実施形態では、生物学的に適合性のある材料が生物再吸収性である。一実施形態では、医療用インプラントが取り付けられた後で、薬物が、生体内で、スリーブから患者の埋込み部位に投与される。一実施形態では、本体が、医療用インプラントを受け取るように構成された内部空洞を規定する。一実施形態では、好ましくは、本体がさらに、この空洞から本体を貫通して延びる複数の開口を含む。一実施形態ではそれらの開口が丸い穿孔である。別の実施形態では、それらの開口が、丸穴、楕円穴、スリット、スロットおよびこれらの任意の組合せからなるグループから選択された形態を有し得る。一実施形態では、医療用装置は整形外科装置であってもよく、いくつかの実施形態では、この整形外科装置が、骨固定プレートまたは脛骨釘、大腿釘などの髄内釘であってもよい。好ましくは、そこを通して医療用インプラントを受け取るためにスリーブの第1の端部が開いていてもよく、第2の端部が閉じていてもよい。一実施形態では、スリーブが全体に細長い形状を有する。別の実施形態では、スリーブが上面および下面を有し、この上面または下面の少なくとも一部分が実質的に平面である。別の実施形態では、スリーブが第1の縁を含み、この第1の縁が第1の縁を閉じる継目を有し、第2の端部が第2の端部を閉じる継目を含む。
【0011】
一実施形態では、好ましくは、再吸収性シートがポリマーを含み、より好ましくは、可撓性およびしなやかさをスリーブに追加して、インプラントの上でスリーブをスライドさせ、インプラントの全般的な形状にスリーブを従わせることを容易にするために、再吸収性シートがカプロラクトンを含む。一実施形態では、患者への薬物の放出速度および持続期間を調節するために、シートが同じ薬物の異なる塩を含み得る。別の実施形態では、シートが2種類の異なる薬物を含む。別の実施形態では、スリーブが、一体に積層された少なくとも2枚の再吸収性材料シートから製作される。いくつかの実施形態では、少なくとも1枚のシートがミクロ細孔質(microporous)であってもよい。別の実施形態では、少なくとも2枚のシートが異なる薬物を含み得る。
【0012】
医療用インプラントを包容する薬物含浸スリーブの可能な別の実施形態は一般に、生物学的に適合性のある材料でできた少なくとも1枚のシートと、シートに含浸させた少なくとも1種類の薬物とを含む。一実施形態では、この生物学的に適合性のある材料が生物再吸収性である。シートは複数の開口を含むことができ、一実施形態ではそれらの開口が丸い穿孔または穴であってもよい。一実施形態では、丸められた縁と、反対側の自由縁と、第1の端部と、第1の端部の反対側の第2の端部とを作り出すために、シートが折り畳まれる。一実施形態では、自由縁および第2の端部に沿って、この自由縁および第2の端部を閉じるように継目が形成される。一実施形態では、第1の端部が、スリーブによって少なくとも部分的に包容されるようにそこを通して医療用インプラントを受け取るよう構成された開口を規定する。スリーブは、スリーブの中に包容されることが意図された医療用インプラントのタイプおよびサイズの全般的な形状に従うようにサイズを決定し、構成することができる。
【0013】
また、薬物含浸スリーブを形成する方法が提供される。この方法は、少なくとも1種類の薬物が含浸された、生物学的に適合性のある材料の全体に平らな少なくとも1枚の第1のシートを提供すること、このシートに複数の開口を形成すること、丸められた縁と、反対側の自由縁と、第1の開いた端部と、第1の端部の反対側の第2の開いた端部とを形成するために、シートを折り畳むこと、自由縁を閉じるために自由縁に沿って継目を形成すること、および第2の端部を閉じるために第2の端部に沿って継目を形成することを含む。自由縁に対する継目形成ステップと第2の端部に対する継目形成ステップは任意の順序で実行することができる。別の実施形態では、この方法がさらに、複数の開口を形成し、シートを折り畳む前に、少なくとも1種類の薬物を含浸させた生物学的に再吸収性の材料の全体に平らな第2のシートを、第1のシート上に積層するステップを含む。一実施形態では、生物学的に適合性のある材料が生物再吸収性である。
【0014】
本発明の以上の特徴および利点ならびにその他の特徴および利点は、本開示の残りの部分、特に好ましい実施形態の以下の詳細な説明から明らかになろう。それらの好ましい実施形態は全て、本発明の原理を例示的に示す。
例えば、本願発明は以下を提供する。
(項目1)
医療用インプラントを受け取るように構成された内部空洞を規定する、生物学的に適合性のある材料でできた本体であって、上記本体を貫通して上記空洞から延びる複数の開口を含む本体と、
第1の端部と、
第2の端部と、
上記材料に含浸させた薬物と
を含む生物学的に適合性のあるスリーブ。
(項目2)
上記生物学的に適合性のある材料が生物再吸収性である、項目1に記載のスリーブ。
(項目3)
上記第1の端部が、上記第1の端部を通して上記医療用インプラントを受け取るために開いており、上記第2の端部が閉じている、項目2に記載のスリーブ。
(項目4)
細長い形状を有する、項目2に記載のスリーブ。
(項目5)
上面および下面を有し、上記上面または下面の少なくとも一部分が実質的に平面である、項目2に記載のスリーブ。
(項目6)
生物学的に適合性のある材料の少なくとも1枚のシートから製作された、項目2に記載のスリーブ。
(項目7)
第1の縁を含み、上記第1の縁が上記第1の縁を閉じる継目を有し、上記第2の端部が上記第2の端部を閉じる継目を含む、項目6に記載のスリーブ。
(項目8)
上記継目が、熱融合、化学融合および接着からなるグループから選択された方法によって形成された、項目7に記載のスリーブ。
(項目9)
上記再吸収性シートがポリマーを含む、項目2に記載のスリーブ。
(項目10)
上記再吸収性シートがカプロラクトンを含む、項目2に記載のスリーブ。
(項目11)
上記再吸収性シートが、ポリカプロラクトン30%およびポリ乳酸70%から製作された、項目2に記載のスリーブ。
(項目12)
医療用インプラントの一部分を受け取るように構成され、適合されたポケットをそれぞれの端部に含む、項目2に記載のスリーブ。
(項目13)
開いた中心部分を有する、項目2に記載のスリーブ。
(項目14)
上記薬物が、抗生物質、防腐薬、鎮痛薬、抗腫瘍薬、ビスホスホネート、成長因子、ペプチド、スタチンおよびこれらの組合せからなるグループから選択された、項目2に記載のスリーブ。
(項目15)
上記開口が丸い穿孔である、項目2に記載のスリーブ。
(項目16)
上記開口が、丸穴、楕円穴、スリット、スロットおよびこれらの任意の組合せからなるグループから選択された形態を有する、項目2に記載のスリーブ。
(項目17)
一体に積層された少なくとも2枚の再吸収性材料シートから製作された、項目2に記載のスリーブ。
(項目18)
少なくとも1枚のシートがミクロ細孔質である、項目17に記載のスリーブ。
(項目19)
上記少なくとも2枚のシートが異なる薬物を含む、項目17に記載のスリーブ。
(項目20)
上記少なくとも2枚のシートが同じ薬物を含む、項目17に記載のスリーブ。
(項目21)
上記シートが同じ薬物の異なる塩を含む、項目2に記載のスリーブ。
(項目22)
上記シートが2種類の異なる薬物を含む、項目2に記載のスリーブ。
(項目23)
上記スリーブから、患者の体内の医療用インプラントの埋込み部位に、生体内で上記薬物が投与される、項目2に記載のスリーブ。
(項目24)
生物学的に適合性のある材料でできた少なくとも1枚のシートであって、上記シートに含浸させた少なくとも1種類の薬物を含み、上記シートは複数の開口を含み、丸められた縁と、反対側の自由縁と、第1の端部と、上記第1の端部の反対側の第2の端部とを作り出すために折り畳まれたシートと、
上記自由縁および上記第2の端部に沿って形成された継目であって、上記自由縁および第2の端部を閉じる継目と
を含み、
上記第1の端部が、スリーブによって少なくとも部分的に包容されるように医療用インプラントを受け取るよう構成された開口を規定した
薬物含浸スリーブ。
(項目25)
上記シート材料が生物再吸収性である、項目24に記載のスリーブ。
(項目26)
上記開口が丸い穿孔である、項目24に記載のスリーブ。
(項目27)
上記開口が、丸穴、楕円穴、スリット、スロットおよびこれらの任意の組合せからなるグループから選択された形態を有する、項目24に記載のスリーブ。
(項目28)
細長い形状を有する、項目24に記載のスリーブ。
(項目29)
上面および下面を有し、上記上面または下面の少なくとも一部分が実質的に平面である、項目24に記載のスリーブ。
(項目30)
上記継目が、熱融合、化学融合および接着からなるグループから選択された方法によって形成された、項目24に記載のスリーブ。
(項目31)
上記再吸収性シートがカプロラクトンを含む、項目24に記載のスリーブ。
(項目32)
ポリマーを含む、項目24に記載のスリーブ。
(項目33)
一体に積層された少なくとも2枚の再吸収性材料シートから製作された、項目24に記載のスリーブ。
(項目34)
少なくとも1枚のシートがミクロ細孔質である、項目33に記載のスリーブ。
(項目35)
薬物含浸スリーブを形成する方法であって、
少なくとも1種類の薬物が含浸された、生物学的に適合性のある材料の全体に平らな少なくとも1枚の第1のシートを提供すること、
上記シートに複数の開口を形成すること、
丸められた縁と、反対側の自由縁と、第1の開いた端部と、上記第1の端部の反対側の第2の開いた端部とを形成するために、上記シートを折り畳むこと、
上記自由縁を閉じるために上記自由縁に沿って継目を形成すること、および
上記第2の端部を閉じるために上記第2の端部に沿って継目を形成すること
を含み、
上記自由縁に対する上記継目形成ステップと上記第2の端部に対する上記継目形成ステップを任意の順序で実行することができる
方法。
(項目36)
上記開口が丸い穿孔である、項目35に記載のスリーブ。
(項目37)
上記開口が、丸穴、楕円穴、スリット、スロットおよびこれらの任意の組合せからなるグループから選択された形態を有する、項目35に記載のスリーブ。
(項目38)
上記スリーブが細長い形状を有する、項目35に記載のスリーブ。
(項目39)
上記スリーブが上面および下面を有し、上記上面または下面の少なくとも一部分が実質的に平面である、項目35に記載のスリーブ。
(項目40)
上記継目が、熱融合、化学融合および接着からなるグループから選択された方法によって形成された、項目35に記載のスリーブ。
(項目41)
上記再吸収性シートがカプロラクトンを含む、項目35に記載のスリーブ。
(項目42)
上記再吸収性シートが少なくとも1種類のポリマーから形成された、項目35に記載のスリーブ。
(項目43)
上記複数の開口を形成する前に、少なくとも1種類の薬物を含浸させた生物学的に再吸収性の材料の全体に平らな第2のシートを、上記第1のシート上に積層するステップをさらに含む、項目35に記載のスリーブ。
(項目44)
上記生物学的に適合性のある材料が生物再吸収性である、項目35に記載のスリーブ。
【図面の簡単な説明】
【0015】
次に、好ましい実施形態の特徴を、以下の図面を参照して説明する。これらの図面では、同様の要素には同様の符号が付されている。
【図1】図1は、本発明の原理に基づく薬物含浸スリーブの一実施形態およびこのスリーブに挿入可能な骨プレートの形態の医療用インプラントの上面図である。
【図2】図2は、図1のスリーブの側断面図である。
【図3】図3は、複数のシートまたはフィルム層を含む図1のスリーブの代替実施形態の側断面図である。
【図4】図4は、スリーブの中に骨プレートが途中まで挿入された図1のスリーブの上面図である。
【図5】図5は、スリーブの両端に形成された端の開いたポケットを有する薬物含浸スリーブの代替実施形態の側面図である。
【図6】図6は、スロットの形態の変形可能な開口を有する薬物含浸スリーブの代替実施形態の上面図である。
【図7】図7は、スリットの形態の変形可能な開口を有する薬物含浸スリーブの代替実施形態の上面図である。
【図8】図8は、スリットと穴の形態の変形可能な開口を有する薬物含浸スリーブの代替実施形態の上面図である。
【図9】図9は、x字形のスリットの形態の変形可能な開口を有する薬物含浸スリーブの代替実施形態の上面図である。
【図10】図10は、管状の代替薬物含浸スリーブの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(好ましい実施形態の詳細な説明)
次に、本発明が理解されるように、例示のためだけに示される好ましい実施形態を、添付図面を参照して説明する。したがって、それらの好ましい実施形態は参照に便利なように記載されるのであり、本発明は、本明細書に記載された実施形態に限定されない。本発明の範囲は、本明細書に添付された特許請求の範囲によって定義される。
【0017】
図1は、整形外科インプラント30などの医療用装置の隣に置かれた本発明の原理に基づく薬物含浸スリーブ10を示し、示された非限定的な一実施形態では、この医療用装置が細長い骨プレートである。図2は、図1のスリーブ10の断面図を示す。
【0018】
図1および2を参照すると、薬物含浸スリーブ10の好ましい一実施形態は、2つの端部21、22を有する細長い本体20を含む。端部21、22は開いていても、または閉じていてもよい。一実施形態では、好ましくは端部21が、そこを通してスリーブ10にインプラントを挿入することができる開いた端部である。一実施形態では、好ましくは反対側の端部22が閉じた端部であり、その結果、インプラントがこの閉じた端部にぴったりと接して、より良好な適合を達成し、患者の手術部位にインプラントが固定されたときにスリーブがインプラントに対してスライドすることを防ぐことができる。
【0019】
一実施形態では、スリーブ10が、生物学的に適合性のある材料の単一の薄いシートまたはフィルム12から形成され得る。好ましい一実施形態では、この生物学的に適合性のある材料が生物再吸収性である。スリーブ10を形成する前、シート12は全体に平らであることが好ましい。好ましい一実施形態では、シート12が生分解性の再吸収性ポリマーでできていてもよく、このポリマーは、生体内に埋め込まれると時間の経過とともに溶け出し、患者に吸収され、インプラントが再吸収性材料でできていない場合には、後にインプラントだけを残す。あるいは、別の実施形態では、インプラントも再吸収性材料でできており、その場合には、最終的にインプラントとスリーブの両方が溶解する。好ましい一実施形態では、シート12が、全体に薄く、実質的に平面であってもよく、シート12は、限定はされないが、約0.02mmから0.5mm、より好ましくは約0.04mmから0.1mmの範囲の一般的かつ例示的な厚さTを有することができる。しかし、意図された用途、インプラントをシートに挿入するときの引裂き抵抗性に対する配慮、薬物投与の持続期間などに応じて、適当な任意のシート厚さTを使用することができる。シート12は、当技術分野において知られている適当な任意の手段によって製作することができる。
【0020】
別の実施形態では、薬物送達スリーブ10が、組み(braiding)、編み(knitting)、織り(weaving)などの織物工程によって形成され得る。一実施形態では、この織物スリーブが、関心の薬物をその中に含浸させた繊維を使用して製造され得る。一実施形態では、この織物が、その中に含浸された薬物を含まない生物再吸収性繊維から形成され得る。その場合には、次いで、この織物材料が、関心の薬物を含む弾力性のある生物再吸収性ポリマーの層でコーティングされる。一実施形態では、インプラントに接着することができるように生物再吸収性の接着剤が1つまたは複数の面にコーティングされた弾性材料、編まれた布などのストリップの形態の織物インプラントも製作され得る。一実施形態では、織物材料または接着剤成分、あるいはその両方に、関心の薬物が含まれ得る。
【0021】
可撓性の(flexible)スリーブの一実施形態では、好ましくは、シート12に使用される再吸収性ポリマーがポリカプラクトンを含む。少なくとも一部の可撓性の再吸収性ポリマー(例えばカプロラクトン)を含むポリマーは、良好な可撓性および良好な強度特性を有利に有する。一実施形態では、(例えばポリカプラクトンから作られた)可撓性のスリーブが、インプラントのサイズおよび形状に従うように容易に伸びることができるが、インプラントの上でスリーブを引き伸ばす間の引裂きに抵抗する十分な強度を有する。好ましい一実施形態では、好ましくは、カプロラクトンを含むシート12が、その引き伸ばされていない最初の長さまたは幅の最大で約100%まで伸びることができる。有利には、伸長可能な単一のスリーブが、広範囲のインプラントのサイズおよび/または形状に適合することができ、好ましくは、好ましい一実施形態では、本明細書で説明されるように外科医がわずかな変更を加えることによって、またはそのような変更がなくとも、医療用インプラントの上に比較的にぴったりとはまる。一実施形態では、本発明が、インプラント製品ラインの大部分にはめることができる異なるサイズおよび/または形状の限られた数のスリーブを含むキットを含む。
【0022】
十分な可撓性を有する可撓性の再吸収性スリーブ10の一実施形態では、シート12が、ポリカプロラクトンと他の再吸収性ポリマーとからなってもよい。スリーブのポリカプロラクトン含量の例示的かつ非限定的な好ましい範囲は、約10%から約100%であり、約20%から30%であることがより好ましい。埋込みに一般に使用される他のいくつかの再吸収性ポリマーとは対照的に、ポリカプロラクトンは、生体内で比較的にゆっくりと分解する。したがって、医療用インプラントの上でスリーブ10を引き伸ばすのに十分な可撓性を依然として維持しつつ、シート12の全体的な分解速度を調節するために、カプロラクトンを、より短い生体内分解時間を有する他のポリマーと混合することができる。可能な一実施形態では、シート12が、ポリカプロラクトン30%およびポリ乳酸70%でできていてもよい。
【0023】
スリーブ10では、他の適当な任意の百分率のポリカプラクトンを使用することができることを理解されたい。他の再吸収性ポリマーまたはポリマーの組合せを、ポリカプロラクトンとともに使用して、またはポリカプロラクトンなしで使用して、シート12を製作することもできることも理解されたい。例えば、このポリマーは、グリコリド、ラクチド、トリメチレンカルボナート、ジオキサノン(dioxanone)およびカプロラクトンを含むFDA認可の任意のモノマーのさまざまな組合せからなることができる。このフィルムまたは繊維はさらに、ポリエチレンオキシド、生物再吸収性ポリウレタンなどの合成ポリマーを含むことができる。別の実施形態では、薬物含浸スリーブを形成するために使用されるフィルムまたは繊維がまた、ゼラチン、コラーゲン、キトサン、ヒアルロン酸塩、アルギン酸塩などの天然バイオポリマーを含むことができる。したがって、本発明は、シート12を製作するために使用される材料のタイプ、ポリマーのタイプ、あるいはポリマーまたは他のタイプの材料の組合せのタイプに限定されない。
【0024】
好ましい一実施形態では、好ましくは、スリーブ10がさらに、可能な一実施形態ではスリーブを通した流体の通過または輸送を可能にするために、適当な任意の形状の複数の開口または穿孔14(実質的に丸い穿孔または開口14など)を含む。穿孔14は完全に丸い必要はなく、いくつかの実施形態では卵形または楕円形の形状を有してもよい(図示せず)。開口14は丸い穿孔14に限定されない。穿孔14は、内面11から外面13までシート12を貫通して延びることが好ましい(図2参照)。有利には、薬物または生物作用物質がポリマーから浸出したときに、穿孔14が、隣接する組織および骨に対して、その薬物または生物作用物質を、このような穿孔のないスリーブよりも均一に分配する。薬物の分配を有利にすることに加えて、穿孔14はまた、破片または材料がそこに捕捉され、残存し、患者に対して問題を引き起こす可能性があるインプラントとスリーブの間のデッドスペースを排除する。したがって、体液の流れによってこのような破片を穿孔14を通して流し去ることができる。
【0025】
シート12の全表面積に対する穿孔14によって提供される開いた面積の百分率に基づく多孔率の例示的かつ非限定的な好ましい範囲は、約10%から約80%であり、より好ましくは約20%から約50%である。好ましい一実施形態では、穿孔14が約20%の多孔率を提供する。満足のゆく薬物の分配、および流去のためには、穿孔14が、少なくとも約0.1mmの直径を有することが好ましい。好ましい一実施形態では、穿孔14が、少なくとも約1.5mmの直径を有する。当技術分野において約0.1mm以上の直径は一般に、マクロ細孔(macroporosity)を表すと考えられている。
【0026】
好ましくは、一実施形態では、本明細書でさらに説明されるように、シート12がスリーブ10に形成される前の全体に平らな状態にある間に、穿孔14があけられる。
【0027】
一実施形態では、スリーブ10が、熱処理され圧縮成形された分解性ポリマーのシートを使用して製作され得る。一実施形態では、ポリマーがまだ溶液の形態である間に、このポリマーに、薬物または他の生物作用物質を溶解させるか、または分散させてもよい。一実施形態では、次いで、当技術分野において知られている従来の方法を使用して、このポリマー溶液がシートまたはフィルムに加工され、穿孔され、次いで、本明細書で説明されるようにスリーブとして成形される。好ましくは、シート12がまだ全体に平らな状態にある間に、適当な任意の技法によって、例えば一実施形態ではプレスを使用することによって、シート12が穿孔され得る。
【0028】
一実施形態では、図1および2に示されているような縦に延びる自由縁15aと、縦に延びる丸められたまたは折り畳まれた縁15bとを作り出すためにシートを折り畳むことによって、穿孔されたシート12からスリーブ10が形成され得る。したがって、自由縁15aおよび端部21、22は最初、シートが重なり合ったシート12の2重層または2重の厚さTを有することができる(図2参照)。丸められた縁15bは、横断面において、シート12の単層または単一の厚さTを含む全体にわずかに丸められた湾曲した形状または折り目を有することができる(やはり図2を参照されたい)。一実施形態では、次いで、縁15aおよび端部22に沿って融合された継目16を作り出すために、シート形成縁15aおよび好ましくは端部22が(例えば熱融接によって)一体に接合される。一実施形態では、このように形成されたスリーブ12が、インプラントを受け取るように構成された内部空洞23を規定する。好ましくは、一実施形態では、スリーブ10にインプラントを挿入するための開口18を端部21に規定し、作り出すため、端部21が接合されない。シールを形成し、自由縁15aおよび端部22を閉じるために、化学融合または溶接、生物学的に適合性のある接着剤の使用など、適当な任意の技法を使用することができることに留意されたい。したがって、本発明は、熱融合技法の使用に限定されない。
【0029】
別の実施形態では、生物適合材料の平らなシートを折り畳み、継ぎ合わせる方法以外の方法によって、スリーブが形成され得る。図10に示された一実施形態では、スリーブ100が、開口または穿孔114および2つの端部116、118を有する管112の形状に形成され得る。好ましくは、一実施形態では、管112に継目がない。可能な一実施形態では、管100がポリマーでできていてもよい。可能ないくつかの実施形態では、ポリマー管112が、ポア注型(pour−casting)法またはディップ成形(dip−molding)法によって形成され得る。ポア注型法は、管形の型の中にポリマー溶液を注ぎ入れ、ポリマーを凝固させ、形成された管状スリーブ112を型から取り出すことを含むことが好ましい。一実施形態では、ディップ成形法が、好ましくは、ポリマー溶液の容器の中に棒状のマンドレルを浸漬し、この溶液から、ポリマーがまとわり付いたマンドレルを引き上げ、ポリマーを凝固させ、形成された管状スリーブ112をマンドレルから取り外すことを含む。このディップ成形法で使用されるポリマー溶液は、ポリマーがマンドレルに付着することを可能にする適当な粘度を有することが好ましい。スリーブ112を形成する際に使用することができる1つのディップ成形法が、その全体が参照によって本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第20050209629号に開示されている。いくつかの実施形態では、管状スリーブ112の厚さを増大させるために、マンドレルが1度より多く浸漬される。別の実施形態では、多層管112を作り出すため、同じタイプまたは異なるタイプのポリマー溶液の2つ以上の容器にマンドレルが浸漬され得る。いくつかの実施形態では、同じまたは異なるポリマー溶液の2つ以上が、同じ薬物、同じ薬物の異なる塩、異なる薬物、またはこれらの任意の組合せを含む。したがって、投与される薬物のタイプ、ならびに投与速度および投与持続期間を、特定の用途の要求に応じて調節することを可能にする複数のポリマー層を有する管状スリーブ112を製作することができる。
【0030】
開口または穿孔114は、適当な任意の手段によって管112に形成することができる。一実施形態では、選択された管材料が十分な弾性を有する場合に、管112が凝固した後で、管112が平らにされ得る。次いで、限定はされないが、プレスまたは他の装置を使用して、この平らにされた管に穴をあける(pierce)/穴をあける(puncture)などの適当な任意の手段によって、穿孔114を形成することができる。いくつかの実施形態おいて、管112が、容易に平らにすることができない非弾性材料でできている場合には、管に穴をあけ、穿孔を形成する適当な任意の手段によって穿孔114を形成することができる。注型成形管112とともに使用される可能な別の実施形態では、型が、穿孔114の意図された最終形状およびサイズに見合うようにサイズが決められ、構成された複数の柱体またはピンを備え得る。型に注ぎ込まれると、ポリマー溶液は柱体またはピンの周囲に流れる。ポリマーが凝固すると、管状スリーブが製作されるのと同時に穿孔114が形成される。上記の方法の注型形成穿孔114は、管112が製作された後に穿孔を形成する追加の製造ステップを排除する。管112は、図10に示されているように、どちらも開いた端部116、118を有するように製作することができ、あるいは、いくつかの実施形態では、いずれかの端部116または118を、閉じた端部(図示せず)として形成することができる。継目なし管の形態に製作されたスリーブ10は一般に、折り畳まれ、継ぎ合わされたいくつかの実施形態のスリーブよりも良好な強度を有し得る。
【0031】
図2に示されているように、スリーブの一実施形態は、医療用インプラントをスリーブ10に挿入する前、縁15aの方向に延びると定義されるスリーブの長さに対する横断方向の断面において、全体に平らにされた卵形または楕円形の形状を有し得る。したがって、スリーブ10の上面17tおよび下面17bは、全体に平面の部分または平らな部分を含むことができ、可能な一実施形態では、生体内でそこに破片が捕捉される可能性があるスリーブとインプラントの間の望ましくない極端に大きなポケットを形成する可能性がある不必要な余分のだぶついたスリーブ材料を(インプラントが挿入された後に)排除するため、この全体に平面の部分または平らな部分が、示された相補的な平らなインプラント30の形状に概ね従う。別の実施形態(図示せず)では、管の形状がほぼ形成され得るように、シート12が折り畳まれて、スリーブ10が作り出され得る。
【0032】
ポリマー成分を変更して、広範囲の再吸収プロフィールを生み出すことができることに留意することは重要である。特に圧縮成形工程で使用される温度で関心の薬物が熱分解される場合にはさらに、代替のフィルム製造法を使用することもできる。あるいは、限定はされないが、溶媒注型(solvent casting)、マンドレル上でのディップ成形など、より低温のフィルム製造法を使用することもできる。
【0033】
スリーブ10は、それ自体の無菌パウチに入れて、別々に供給されることが好ましい。外科医は、パウチからスリーブを取り出し、次いで、インプラント30の上にスリーブをスライドさせ、引き伸ばすことによって、スリーブ10を使用することができる。インプラント30は、比較的にぴったりした適合を達成し、その端部の支持されていない過剰なだぶついたスリーブ材料を排除するため、スリーブ10の中で、閉じた端部22まで完全にスライドさせ、または閉じた端部22の近くまでスライドさせることができる。さらに、インプラント30の端部の近くで端部21を切り落とすことによって余分なスリーブの長さを除去するため、手術鋏を使用して、スリーブ10を切り整えることができる。いくつかの状況では、インプラント30を手術部位に取り付ける際に妨げとなる恐れがある過度にだぶついた材料を排除するため、スリーブ10とインプラント30の間の適合は多少ぴったりしているほうが望ましい場合があるが、全ての場合にきつい適合が必要であるとは限らないことに留意されたい。包容する必要があるインプラントの特定のサイズおよび形状にスリーブを個別に適合させるために、外科医は、前述の技法と同様の技法を使用して、スリーブ10を変更することができる。次いで、スリーブの中に包容されたインプラントを患者に挿入し、標準法を使用して所定の位置に固定することができる。有利には、外科医は、スリーブを介してさまざまなインプラントから薬物を送達することができるが、その一方で、医療装置業者は、患者の状態または治療される指示に応じた1種以上の薬物を含むコーティングされていないインプラントおよびコーティングされたインプラントの大きな在庫を持ち、それを維持する負担の大きいロジスティクス業務から解放される。
【0034】
医療用インプラント30は、まっすぐな細長いプレートとして示されているが、多数の異なる形状およびタイプの医療用インプラントを、限定なしに、本発明とともに使用することができることを理解されたい。したがって、限定はされないが、非整形外科インプラント(例えばステント、ペースメーカ、歯科インプラントなど)、他の整形外科インプラント(例えば脛骨釘、大腿釘、脊髄インプラントなど)などの骨プレート以外の装置とともに、スリーブ10を使用することもできる。したがって、いくつかの実施形態では、より複雑な形状を有するインプラントのために、外科医が、同じサイズおよび形状または異なるサイズおよび形状の2つの以上のスリーブ10を組み合わせ得る。例えば、限定はされないが、L字形、T字形、X字形、H字形を有する骨プレートまたは他のタイプの医療用インプラント、あるいは他のタイプおよび形状のインプラントとともに使用するために、2つの以上のスリーブ10を組み合わせることができる。薬物または他の生物作用物質を周囲の組織に効果的に送達するのに、全ての場合に、インプラントがスリーブ10によって完全に包容される必要はないことを認識されたい。したがって、スリーブ10の組合せを使用することによって、さまざまなインプラント形状に適合することができる。
【0035】
図5を参照すると、所望される場合、骨または近くの軟組織に薬物を誘導するために、インプラントの片面だけから薬物が放出されるように設計されたスリーブ40の代替実施形態が示されている。このスリーブ40の実施形態は、シート12の単一の厚さだけを有する開いた中心部分42と、両方の端部46に形成されたポケット44とを含む。この開いた構成は、ポケット44とポケット44の間のインプラント30の片面を露出させ、この構成は、示された形態で外科医に供給することができ、または、(図1に示された)スリーブ10の中心部分を切除することによって、外科医が手術室で作り出すことができる。
【0036】
可能な別の実施形態では、薬物を投与するため、かつ/または移植骨片封じ込め装置としてスリーブを使用するために、埋込みの前に、スリーブ10が、自家移植骨片または同種移植骨片を覆って配置され得る。例えば、骨髄穿刺液(bone marrow aspirate:BMA)がしばしば、ChronOS顆粒(Synthes,Inc.社(米ペンシルバニア州West Chester)から入手可能)または他の形態の担体と混合される。一実施形態では、このChronOS−BMA混合物が埋込み部位から移動することを防ぐために、外科医が、この混合物をスリーブに充填してもよい。他の適当な担体材料のいくつかの例には、Vitoss(登録商標)(r)(Orthovita社(米ペンシルバニアMalvern)から入手可能)、Conduit(商標)(r)(DePuy,Inc.社(米マサチューセッツ州Raynham)から入手可能)などのリン酸カルシウム海綿骨代用物を含む。
【0037】
一実施形態では、ポリマースリーブの再吸収時間および付随する薬物投与速度を、数日から数年にわたって操作することができる。使用されるポリマーの化学性およびタイプは、広範囲の可能な薬物送達動態およびポリマー再吸収時間を提供する。さらに、再吸収時間および薬物送達速度は、ポリマースリーブを構築するために使用されるシートの厚さによって操作することができる。
【0038】
スリーブからの薬物または生物作用物質の送達速度および送達持続期間を調節するために、他の技法を使用することもできる。例えば、図3に示された1つの代替実施形態では、同じまたは異なるポリマー組成を有する複数のポリマーシート層からスリーブ50が形成され得る。スリーブ50は、2枚のシート12および52を含むことができ、一実施形態では、2枚のシート12および52が、当技術分野において知られている従来の任意の方法によって一体に積層されており、図示されているように穿孔50を含み得る。いくつかの実施形態では、望ましくない場合、両方のシート12および52がそれぞれ穿孔14を含む必要はない。一実施形態では、それぞれのシート12、52に薬物が含浸され得るが、スリーブは、異なる速度で薬物を放出するように設計され得る。一実施形態では、これが、フィルム内へのより急速な水または流体の浸透を可能にし、薬物のより急速な溶出を可能にするために1枚または数枚のシート12、52をミクロ細孔質にすることによって達成され得る。非ミクロ細孔質層は薬物をより効果的に捕捉し、それをよりゆっくりした速度で溶出させる。異なるポリマーから製作されたシート12および52を有する別の実施形態では、一方のシートが、もう一方のシートよりも親水性であり、流体の吸収によってより速い速度で膨潤することができ、それにより薬物をより速く放出することができる。あるいは、一方のシート12または52を、もう一方のシートよりも生体内でより速く分解するポリマーから製作することもできる。いくつかの実施形態では、シート12と52に、同じ薬物または生物作用物質が組み込まれる。別の実施形態では、シート12と52に、異なる薬物が含められ得る。したがって、例えば、シート12から第1のタイプの薬物を所与の速度および持続期間で送達することができ、シート52から第2の異なるまたは同じ薬物を、異なってもよい所与の速度および持続期間で送達することができる。
【0039】
別の実施形態では、1つまたは複数のタイプの薬物の異なる塩をスリーブ10または50に組み込むことによって、薬物または生物作用物質が、異なる速度および持続期間で送達され得る。一実施形態では、スリーブ10のシート12が、体液中における溶解度がそれぞれ異なる同じ薬物の異なる塩を含み得る。したがって、薬物の放出速度は、その特定の塩の溶解度に従って変化する。一実施形態では、このことにより、シート12からの薬物の溶出プロフィールを、シート中に存在する同じ薬物の異なる塩の比を変えることによって調節することができる。別の実施形態では、シート12が、2種類以上の異なる薬物または生物作用物質の異なる塩を含み得る。複数のシート層12、52を有するスリーブ50の代替実施形態では、シート12とシート52が、同じ薬物の異なる塩を含み得る。
【0040】
図6〜9を参照すると、インプラント上での伸張または伸長を可能にする完全な可撓性または弾性は持たないが、スリーブにさまざまな向きに切られた穴および/またはスリット/スロットなどの変形可能な開口のパターンを提供することによって、伸張して、多くの異なるサイズのインプラントに適合するようにすることができるポリマーシートまたはフィルムから、スリーブ10または50の代替実施形態を生み出すことができる。これらの穴および/またはスリット/スロットは変形し、インプラントの上でスリーブが伸びることを可能にする。図6は、縦に延びるスロット62を含むポリマーシート60の可能な一実施形態を示す。この配置は、(水平に走る)シート60の幅に沿って、示された伸び矢印の方向に、シート60が伸びることを可能にする。図7は、縦に延びるスリット72を含むポリマーシート70の可能な一実施形態を示す。この配置は、(水平に走る)シート70の幅に沿って、示された伸び矢印の方向に、シート70が伸びることを可能にする。図8は、縦のスリット82と穴84の組合せを含むポリマーシート80の可能な一実施形態を示し、示されたこの実施形態では、スリットがシート上に斜めに配置されている。この配置は、(水平に走る)シート80の幅および(垂直に走る)長さに沿って、示された伸び矢印の方向に、シート80が伸びることを可能にする。図9は、X字形のスリット92を含むポリマーシート90の可能な一実施形態を示す。この配置は、(水平に走る)シート90の幅および(垂直に走る)その長さに沿って、示された伸び矢印の方向に、シート90が伸びることを可能にする。シート90の代替実施形態では、スリットの代わりに、X字形のスロットが提供される。
【0041】
ポリマーシートが1つ以上の方向に伸張しまたは伸長することができる限りにおいて、穴、スリット、スロットなどの変形可能な開口の他の適当なさまざまな形状、組合せおよびパターンを使用することができることを理解されたい。これらの変形可能な開口は、非常によく伸びるスリーブが望ましい可撓性の、半剛性のまたは剛性のポリマーシートで使用することができることを認識されたい。これらの変形可能な開口は、輪郭が完全には直線的でない不規則に成形されたインプラントを包容する目的に有利に使用することができる。
【0042】
以上の説明および添付図面は本発明の好ましい実施形態を示すものであるが、それらの実施形態に、添付の特許請求の範囲に定義された本発明の趣旨および範囲を逸脱しないさまざまな追加、変更および置換えを実施することができることを理解されたい。特に、本発明の趣旨または必須の特徴から逸脱することなく、本発明を、他の特定の形態、構造、配置、割合およびサイズで具体化し、また、他の要素、材料および成分を有するように具体化することができることは当業者には明白である。本発明は、本発明の実施において使用される構造、配置、割合、サイズ、材料および成分の、特に特定の必要性および機能要件に適合した、本発明の原理を逸脱しない多くの変更とともに使用することができることを当業者は理解されたい。したがって、本明細書に開示された実施形態は、あらゆる面で、例示を目的としたものと考えるべきであり、限定を目的としたものとは考えるべきではなく、本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲によって定義され、以上の説明または実施形態に限定されない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生物学的に適合性のあるインプラントであって、以下:
細長いプレート;および
スリーブを備え:該スリーブが、
生物学的に適合性のある再吸収性の材料から作製され、かつ該細長いプレートの形状と相補的である形状を有する内部空洞を規定する本体であって、該本体を貫通して該空洞から延びる複数の開口部を規定し、該複数の開口部が該本体の全表面積の10%〜20%である合わせた開いた面積を有する、本体と、
該細長いプレートを受容するように構成された第1の端部と、
該細長いプレートを保持するために閉じている第2の端部と、
該材料に含浸させた薬物とを備える、生物学的に適合性のあるインプラント。
【請求項2】
請求項1に記載のインプラントであって、前記スリーブが前記細長いプレートの第1の端部分を受容するよう構成される第1のスリーブであり、該インプラントが、以下:
生物学的に適合性のある再吸収性の材料から作製され、かつ該細長いプレートの形状と相補的である形状を有する内部空洞を規定する本体であって、該本体を貫通して該空洞から延びる複数の開口部を規定し、該複数の開口部が該本体の全表面積の10%〜20%である合わせた開いた面積を有する、本体と、
該細長いプレートの第2の端部を受容するように構成された第1の端部と、
該細長いプレートを保持するために閉じている第2の端部と、
該材料に含浸させた薬物とを備える、第2のスリーブをさらに備える、生物学的に適合性のあるインプラント。
【請求項3】
前記再吸収性の材料が、2つ以上の層を備える、請求項1または2のいずれかに記載のインプラント。
【請求項4】
前記2つ以上の層の少なくとも1つが、細孔質である、請求項3に記載のインプラント。
【請求項5】
前記2つ以上の層の少なくとも2つの層が、異なる薬物を含む、請求項3に記載のインプラント。
【請求項6】
前記2つ以上の層の少なくとも2つの層が、同じ薬物を含む、請求項3に記載のインプラント。
【請求項7】
前記2つ以上の層の少なくとも2つの層が、インビボで異なる速度で分解するよう構成されている、請求項3に記載のインプラント。
【請求項8】
前記スリーブが、継目に沿って一緒に保持されるシートを含む、請求項1または2のいずれかに記載のインプラント。
【請求項9】
前記継目が、前記第2の端部を閉じる、請求項8に記載のインプラント。
【請求項10】
前記シートが、前記薬物を該シートの1つの側面のみから放出されるよう構成される、請求項8に記載のインプラント。
【請求項11】
前記シートが、0.04mmから0.1mmの厚さを有する、請求項8に記載のインプラント。
【請求項12】
前記スリーブが、上面および下面を有し、該上面または下面の少なくとも一部分が実質的に平面である、請求項1または2のいずれかに記載のインプラント。
【請求項13】
前記薬物が、抗生物質、防腐薬、鎮痛薬、抗腫瘍薬、ビスホスホネート、成長因子、ペプチド、スタチンおよびこれらの組合せからなる群から選択される、請求項1または2のいずれかに記載のインプラント。
【請求項14】
前記開口部が、丸い穿孔である、請求項1または2のいずれかに記載のインプラント。
【請求項15】
前記開口部が、丸穴、楕円穴、スリット、スロットおよびこれらの任意の組合せからなる群から選択される形態を有する、請求項1または2のいずれかに記載のインプラント。
【請求項16】
前記複数の開口部の各々が、少なくとも1.5mmの直径を有する、請求項1または2のいずれかに記載のインプラント。
【請求項17】
前記複数の開口部が、前記シートの全表面積の20%である合わせた開いた面積を有する、請求項1または2のいずれかに記載のインプラント。
【請求項18】
前記スリーブが、前記薬物を2つ以上の異なる速度で放出するよう構成されている、請求項1または2のいずれかに記載のインプラント。
【請求項19】
前記再吸収性の材料が、0.02mm〜0.5mmの厚みを有する、請求項1または2のいずれかに記載のインプラント。
【請求項20】
前記スリーブが、初期非伸張寸法の100%まで破壊されることなく伸張し得る、請求項1または2のいずれかに記載のインプラント。
【請求項21】
前記再吸収性の材料が、ポリカプロラクトンを含む、請求項1または2のいずれかに記載のインプラント。
【請求項22】
前記再吸収性の材料が、30%のポリカプロラクトンおよび70%のポリ乳酸を含む、請求項1または2のいずれかに記載のインプラント。
【請求項23】
移植可能なスリーブを形成する方法であって、
少なくとも1つの薬物が含浸された、生物学的に適合性のある材料の全体に平らな少なくとも1つの第1のシートを提供する工程、
該シートに複数の開口部を形成する工程であって、該複数の開口部が該シートの全表面積の10%〜20%である合わせた開いた面積を有する、工程、
丸められた縁と、反対側の自由縁と、第1の開いた端部と、該第1の端部の反対側の第2の開いた端部とを形成するために、該シートを折り畳む工程、
該自由縁を閉じるために該自由縁に沿って継目を形成する工程、および
該第2の端部を閉じるために該第2の端部に沿って継目を形成する工程を包含し、
折り畳まれ、かつ形成されたシートが細長いプレートの形状と相補的である形状を有する内部空洞を規定する、方法。
【請求項24】
前記継目が、熱融合、化学融合および接着からなる群から選択される方法によって形成される、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記複数の開口部を形成する前に、少なくとも1つの薬物を含浸させた生物学的に再吸収性の材料の全体に平らな第2のシートを、前記第1のシート上に積層する工程をさらに包含する、請求項23に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−250084(P2012−250084A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−209414(P2012−209414)
【出願日】平成24年9月24日(2012.9.24)
【分割の表示】特願2008−535700(P2008−535700)の分割
【原出願日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【出願人】(508111279)シンセス ゲーエムベーハー (9)
【Fターム(参考)】