説明

薬物担体

担体、ターゲティング剤および治療剤を含み得る組成物がここに開示される。治療剤は、標的器官または組織内での線維化の抑制、または、がん細胞の成長の抑制などの治療活性を有してもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願情報
本出願は、2008年7月30日に出願された米国仮出願第61/084,939号、2008年7月30日に出願された米国仮出願第61/084,947号、2008年7月30日に出願された米国仮出願第61/084,977号、2008年7月30日に出願された米国仮出願第61/084,968号、2008年7月30日に出願された米国仮出願第61/084,955号、および、2008年7月30日に出願された米国仮出願61/084,964に対する優先権を主張し、これら全ての出願の全体をあらゆる目的のために本明細書に援用する。
【0002】
背景
分野
ここで開示されるのは、有機化学、薬品化学、生化学、分子生物学および医薬の分野に関連した組成物および方法である。特に、ここで開示される態様は、活性剤を細胞に送達するための組成物および方法、ならびに、線維化によって特徴づけられる疾患および障害の処置および緩和のための該組成物の使用に関する。
[従来技術]
【0003】
関連技術の説明
線維化、または体内における過剰な線維性結合組織の発生(development)は、複数の疾患および障害、例えば肝線維症、膵線維症、声帯瘢痕化および多くの形態のがんと関連づけられている。
【0004】
器官または組織における線維化を抑制するために、種々のアプローチが試みられてきた。1つのアプローチとして、1また2以上の星細胞の活性化の抑制を挙げることができる。かかる細胞の活性化は、細胞間マトリクス(ECM)の増大した産生によって特徴づけられる。他のアプローチは、コラーゲンの生産抑制に関連し得、これは例えば、コラーゲン分解の促進またはコラーゲン代謝の制御による。しかしながら、それを必要とする特定の器官または組織をターゲティングすることは困難と考えられる。
【発明の概要】
【0005】
本明細書に記載の一部の態様は、担体(carrier)、該担体と作動可能に結合したターゲティング剤(ここで、ターゲティング剤はレチノイドを含む)、および担体と作動可能に結合した治療剤(ここで、治療剤は標的器官または組織に送達されてから治療効果を発揮し、治療効果は標的器官または組織内での線維化の抑制、および標的器官または組織内でのがん細胞の増殖の抑制から選択される)を含むことができる、治療組成物に関する。
【0006】
一部の態様は、本明細書に記載の治療組成物に、薬学的に許容し得る賦形剤および希釈剤から選択される少なくとも1種をさらに含むものに関する。
【0007】
一部の態様は、異常な線維化によって少なくとも部分的に特徴づけられる状態を処置する方法を提供し、これは、治療有効量の本明細書に記載の治療組成物を、それを必要とする対象に投与することを含むことができる。
【0008】
他の態様は、異常な線維化によって少なくとも部分的に特徴づけられる状態を処置するための、本明細書に記載の治療組成物の使用を提供する。
【0009】
さらに別の態様は、異常な線維化によって少なくとも部分的に特徴づけられる状態を処置するための、本明細書に記載の治療組成物を提供する。
【0010】
これらおよび他の態様を、以下でさらに詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は、ポリ−L−グルタミン酸とレチノールとを含む非カチオン性ポリマー担体の調製のための反応スキームを示した図である。
【0012】
【図2】図2は、ポリ−(γ−L−グルタミルグルタミン)とレチノールとを含む非カチオン性ポリマー担体の調製のための反応スキームを示した図である。
【0013】
【図3】図3は、ポリ−L−グルタミン酸、レチノールおよびパクリタキセルを含む治療組成物の調製のための反応スキームを示した図である。
【0014】
【図4】図4は、ポリ−(γ−L−グルタミルグルタミン)、レチノールおよびパクリタキセルを含む治療組成物の調製のための反応スキームを示した図である。
【0015】
【図5】図5は、典型的なリポソーム担体を示した図である。
【0016】
【図6】図6は、2つの典型的な樹枝状担体、デンドリマーおよびデンドロンのそれぞれを示した図である。
【0017】
【図7】図7は、典型的なミセル担体を示した図である。
【0018】
【図8】図8は、テキサスレッド−非カチオン性ポリマー担体−コレステロール複合体と比較した、テキサスレッド−非カチオン性ポリマー担体−レチノイド複合体の細胞取り込みを示したグラフである。
【0019】
【図9】図9は、テキサスレッド−デキストラン−オレイン酸複合体と比較した、テキサスレッド−デキストラン−レチノイド複合体の細胞取り込みを示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
詳細な説明
他に定義されない限り、本明細書で用いる全ての技術用語および科学用語は、当業者が通常理解しているものと同じ意味を有する。本明細書中で参照する全ての特許、出願、公開された出願および他の出版物は、その全体を援用する。本明細書中の用語について複数の定義がある場合には、他に記載がない限り、本節のものが優先する。
【0021】
本明細書で用いる場合、用語「担体」は、非カチオン性ポリマー担体、リポソーム担体、樹枝状(dendritic)担体、ナノ材料(nanomaterial)担体、生体構造(biostructural)担体またはミセル担体を含む、様々なタイプの物質を指すのに用いることができる。担体は、1または2以上の剤、例えば治療剤および/またはターゲティング剤と作動可能に結合していてもよい。この文脈において、「作動可能に結合している」は、担体と1または2以上の剤との間の電子的相互作用を指す。かかる相互作用は、限定されずに、共有結合、極性共有結合、イオン結合、静電結合、配位共有結合、芳香族結合、水素結合、双極子またはファンデルワールス相互作用を含む化学結合の形をとってもよい。当業者は、かかる相互作用の相対的強度が大きく異なり得ることを理解している。
【0022】
担体は、これと作動可能に結合している1または2以上の剤の、体の1つの部分から標的細胞または組織へ、および/または標的細胞または組織内への輸送を容易にする物質である。担体は、電子的に荷電(例えば、負に荷電または正に荷電)していても、または電子的に中性であってもよい。当業者は、担体がカチオン性であるか、アニオン性であるか、または電子的に中性であるかを決定する際に、ポリマー担体と作動可能に結合しているいずれのターゲティング剤または治療剤も担体の一部であるとみなさないことを理解する。換言すると、担体と作動可能に結合している任意のターゲティング剤および/または治療剤が有するいずれの電荷も、担体がカチオン性であるか、アニオン性であるか、電子的に中性であるかを決定する際には無視される。
【0023】
本明細書で用いる用語「非カチオン性ポリマー担体」は、1または2以上の剤と作動可能に結合し得る、アニオン性(すなわち、負に荷電した)ポリマーまたは電子的に中性のポリマーを指す。
【0024】
本明細書で用いる用語「脂質」は、任意の脂溶性(すなわち、親油性)分子を指す。脂質は、限定されずに、油、ワックス、ステロール、モノグリセリド、ジグリセリド、トリグリセリドおよびリン脂質を含み得る。
【0025】
「リポソーム担体」は、水性媒体中で、1または2以上の剤と作動可能に結合し得る実質的に閉鎖された構造を形成する、極性の親水性基に付着した(attached)脂質を含む、脂質二重層構造を指す。リポソーム担体の例を図5に示す。リポソーム担体は、単一の脂質二重層を含んでも(すなわちユニラメラ)、2層または3層以上の同心の脂質二重層を含んでもよい(すなわち、マルチラメラ)。リポソーム担体は、略球状または略楕円状の形状であってもよい。
【0026】
用語「樹枝状担体」は、1種または2種以上の剤と作動可能に結合し得る、デンドリマー、デンドロンまたはこれらの誘導体を指す。
【0027】
用語「デンドリマー」は、コアを有し、かつ、コアから広がる分枝構造の複数のシェル(shell)を有する巨大分子を指す。用語「デンドロン」は、焦点(focal point)から広がる分枝を有するタイプのデンドリマーである。デンドリマーとデンドロンの図解例を図6に示す。デンドリマーおよびデンドロンの両方に関して、分枝はコアに直接または連結基を介して結合していてもよい。デンドリマーは、一般に複数のシェルまたは「世代(generation)」(例えば、図6に示すG1、G2、G3など)を含む。各々の世代をデンドリマーに加えるのに、一連の反応の繰返しをしばしば用いる。
【0028】
樹枝状担体の形状および寸法は様々であってもよい。ある場合において、樹枝状担体は、略球状または略球形の形状であってもよい。さらにまた、樹枝状担体は、約15オングストローム(Å)〜約250Åの範囲の直径を、対応する範囲の分子量、例えば、約500ダルトン〜約2百万ダルトンの範囲の分子量とともに有してもよい。デンドリマーは種々の給源(例えば、Dendritech, Midland, Michigan)から商業的に入手可能であるか、または当業者に既知の方法によって合成することができる。
【0029】
本明細書で用いる用語「ナノ材料担体」は、約100nm〜約1nmの範囲の最長寸法を有し、1または2以上の剤と作動可能に結合し得る材料を指す。典型的なナノ材料担体は、ナノ粒子、ナノポリマーおよびナノスフェアを含む。
【0030】
「ナノ粒子」は、全ての寸法が約100nm〜約1nmである粒子を指す。ナノ粒子は、あらゆる形状およびあらゆる形態を有してもよい。ナノ粒子の例は、ナノパウダー、ナノクラスター、ナノ結晶、ナノスフェア、ナノファイバーおよびナノチューブを含む。
【0031】
「ナノポリマー」は、重合の際に集合してナノ粒子、例えばナノロッド、ナノファイバーまたはナノスフェアなどを形成するポリマーを指す。
【0032】
「ナノスフェア」は、略球状の形状のタイプのナノ粒子を指す。ある場合において、ナノスフェアは1または2以上の剤が作動可能に結合し得る中空のコアを有してもよい。
【0033】
「フラーレン」は、限定されずに、球状フラーレン(例えばC60)、カーボンナノチューブ、フラーレン誘導体およびナノチューブ誘導体を含む、カーボン分子の同素体を指す。フラーレンのサイズに応じ、それはナノ粒子であってもよい。
【0034】
「ミクロ粒子(microparticle)」は、全ての寸法が約100nm〜約1000nmの範囲のサイズを有する粒子を指す。ミクロ粒子は、あらゆる形状およびあらゆる形態を有してもよい。
【0035】
本明細書で用いる用語「生体構造担体」は、生体構造担体の多数(majority)の単位がアミノ酸および/またはサッカリドであり、かつ、1または2以上の剤と作動可能に結合しているポリマーまたは化合物を指す。生体構造担体の例は、糖、タンパク質およびペプチド、ならびにこれらの半合成誘導体を含む。
【0036】
本明細書で用いる用語「糖」は、単糖、オリゴ糖および多糖を指す。「多糖」は、グリコシド結合でつながった単糖の繰り返し単位を含むポリマーである。「オリゴ糖」は、グリコシド結合でつながった2〜10個の単糖単位を含む多糖である。糖は天然に存在するものであっても、合成物であってもよい。糖の例は、限定されずに、グルコース(デキストロース)、フルクトース、ガラクトース、キシロース、リボース、スクロース、セルロース、シクロデキストリンおよびデンプンを含む。
【0037】
用語「シクロデキストリン」は、α−(1,4)グリコシド結合により付着したグルコピラノースの繰り返し単位を含む環状多糖を指す。シクロデキストリンは、オリゴ糖であってもよい。典型的なシクロデキストリンは、α−シクロデキストリン、β−シクロデキストリン、およびγ−シクロデキストリンを含む。シクロデキストリンは非置換であっても置換されていてもよい。
【0038】
本明細書で用いる用語「タンパク質」は、ペプチド結合でつながった50個または51個以上のアミノ酸単位を含む、天然化合物または合成化合物を指す。タンパク質は、三次元構造、例えば三次構造に折り畳まれたアミノ酸鎖であってもよい。本明細書で用いる用語「ペプチド」は、ペプチド結合でつながった2〜49個のアミノ酸単位を含む、天然化合物または合成化合物を指す。ペプチドは、線状のコンフォメーションまたは折り畳まれたコンフォメーションを有することができる。タンパク質およびペプチドに存在するアミノ酸は、天然に存在するものであっても、および/または、天然に存在しないものであってもよい。
【0039】
「アルブミン」は、加熱により凝固する水溶性タンパク質のクラスを指す。アルブミンは、例えば、血清、ミルクおよび/または卵に通常見出すことができる。
【0040】
用語「ミセル担体」は、1または2以上の剤と作動可能に結合し得る両親媒性分子の集合体を指す。ミセル担体は、疎水性コアか、または親水性コアを有することができる。ミセル担体の例を図7に示す。ミセル担体は、略球状を含む、様々な形状を有してもよい。
【0041】
用語「ターゲティング剤」は、特定の標的器官または組織に対して選択性を示す化合物を指す。ターゲティング剤は、それが作動可能に結合している組成物を、特定の標的器官または組織に向かわせることができる。ターゲティング剤は、担体および/または少なくとも1種の他の化合物と作動可能に結合していてもよい。
【0042】
「レチノイド」は、ヘッド−トゥ−テイル式に連結した4個のイソプレノイド単位で構成される化合物のクラスの成員である。G. P. Moss, "Biochemical Nomenclature and Related Documents," 2nd Ed. Portland Press, pp. 247-251 (1992)参照。「ビタミンA」は、レチノールの生物学的活性を定性的に示すレチノイドに対する一般的な記述子である。本明細書で用いる場合、レチノイドは第一世代、第二世代および第三世代レチノイドを含む、天然レチノイドおよび合成レチノイドを指す。天然に存在するレチノイドの例は、限定されずに、(1)11−シス−レチナール、(2)オールトランスレチノール、(3)パルミチン酸レチニル、(4)オールトランスレチノイン酸、および、(5)13−シス−レチノイン酸を含む。さらにまた、用語「レチノイド」は、レチノール、レチナールおよびレチノイン酸を含む。
【0043】
用語「治療的な」は、疾患または状態の任意の望ましくない徴候または症状の、あらゆる程度の緩和、予防または抑制を指す。かかる望ましくない徴候は、対象の全体的な幸福感または外観を悪化させるものを含み得る。この用語は、必ずしも疾患または状態の完全治癒または廃絶を示すわけではない。「治療剤」は、治療有効量で哺乳動物に投与した場合に、該哺乳動物に治療的な利益を提供する化合物である。治療剤は、本明細書中で薬物と称することがある。当業者は、用語「治療剤」が、規制上の承認を受けた薬物に限定されないことを理解する。「治療剤」は、少なくとも1つのリポソーム担体および/または他の剤と作動可能に結合していてもよい。
【0044】
「線維化」は、本明細書においてその通常の意味で用い、修復または反応性プロセスの一部としての、器官または組織における線維性瘢痕様結合組織の発生を指す。「異常な線維化」は、器官または組織における線維性瘢痕様結合組織の、当該器官または組織の機能を障害する程度の発生を指す。
【0045】
本明細書で用いる場合、「リンカー」および「連結基」は1つの化学部分をもう1つの化学部分に接続する1または2以上の原子を指す。連結基の例は、比較的低分子量の基、例えば、アミド、エステル、炭酸塩およびエーテルなど、ならびに、高分子量連結基、例えば、ポリエチレングリコール(PEG)などを含む。
【0046】
本明細書で用いる場合、「m」および「n」が整数である「C〜C」は、アルキル、アルケニルまたはアルキニル基における炭素原子数、または、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキニル、アリール、ヘテロアリールまたはヘテロアリシクリル基の環における炭素原子数を指す。すなわち、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキルの環、シクロアルケニルの環、シクロアルキニルの環、アリールの環、ヘテロアリールの環またはヘテロアリシクリルの環は、「m」〜「n」個(「m」個および「n」個を含む)の炭素原子を含むことができる。したがって、例えば、「C〜Cアルキル」基は1〜4個の炭素を有する全てのアルキル基、すなわちCH−、CHCH−、CHCHCH−、(CHCH−、CHCHCHCH−、CHCHCH(CH)−および(CHC−を指す。アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキニル、アリール、ヘテロアリールまたはヘテロアリシクリル基に関して「m」および「n」が指定されてない場合、これらの定義に記載される最も広い範囲を想定すべきである。
【0047】
本明細書で用いる場合、「アルキル」は、直鎖状または分枝状炭化水素鎖の完全に飽和した(二重結合または三重結合を含まない)炭化水素基を指す。アルキル基は、1〜50個の炭素原子を有し得る(本明細書に記載される場合は常に、「1〜50」などの数値範囲は所定の範囲内の各々の整数を指す。例えば、「1〜50個の炭素原子」は、アルキル基が1個の炭素原子、2個の炭素原子、3個の炭素原子など、50個を含む50個までの炭素原子からなってもよいことを意味するが、本定義は、数値範囲が指定されない用語「アルキル」の存在をもカバーする)。アルキル基はまた、1〜30個の炭素原子を有する中程度のサイズのアルキルであってもよい。アルキル基はまた、1〜5個の炭素原子を有する低級アルキルであってもよい。化合物のアルキル基は、「C〜Cアルキル」または類似した表示で指定することができる。ほんの一例として、「C〜Cアルキル」は、1〜4個の炭素原子がアルキル鎖にあること、すなわち、アルキル鎖がメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチルおよびt−ブチルからなる群から選択されることを示す。典型的なアルキル基は、限定されずに、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、第三級ブチル、ペンチル、ヘキシルなどを含む。
【0048】
アルキル基は置換されていても、非置換であってもよい。置換されている場合、1個または2個以上の置換基は、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキニル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロアリシクリル、アラルキル、ヘテロアラルキル、(ヘテロアリシクリル)アルキル、ヒドロキシ、保護されたヒドロキシル、アルコキシ、アリールオキシ、アシル、エステル、メルカプト、シアノ、ハロゲン、カルボニル、チオカルボニル、O−カルバミル、N−カルバミル、O−チオカルバミル、N−チオカルバミル、C−アミド、N−アミド、S−スルホンアミド、N−スルホンアミド、C−カルボキシ、保護されたC−カルボキシ、O−カルボキシ、イソシアネート、チオシアネート、イソチオシアネート、ニトロ、シリル、スルフェニル、スルフィニル、スルホニル、ハロアルキル(一、二および三置換ハロアルキル)、ハロアルコキシ(一、二および三置換ハロアルコキシ)、トリハロメタンスルホニル、トリハロメタンスルホンアミド、および一および二置換アミノ基を含むアミノ、およびこれらの保護された誘導体から個々に独立して選択される1個または2個以上の基である。
【0049】
本明細書で用いる場合、「アルケニル」は、直鎖状または分枝状の炭化水素鎖に1個または2個以上の二重結合を含むアルキル基を指す。アルケニル基は非置換であっても、置換されていてもよい。置換されている場合、1個または2個以上の置換基は、特に明記しない限り、アルキル基の置換に関して上記に開示したのと同じ基から選択することができる。
【0050】
本明細書で用いる場合、「アルキニル」は直鎖状または分枝状の炭化水素鎖に1個または2個以上の三重結合を含むアルキル基を指す。アルキニル基は非置換であっても、置換されていてもよい。置換されている場合、1個または2個以上の置換基は、特に明記しない限り、アルキル基の置換に関して上記に開示したのと同じ基から選択することができる。
【0051】
本明細書で用いる場合、「アリール」は完全に非局在化したパイ電子系を有する炭素環式(全て炭素)の単環式または多環式芳香環系を指す。アリール基の例は、限定されずに、ベンゼン、ナフタレンおよびアズレンを含む。アリール基の環は、5〜50個の炭素原子を有してもよい。アリール基は置換されていても、非置換であってもよい。置換されている場合、水素原子は、置換基を特に示さない限り、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキニル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロアリシクリル、アラルキル、ヘテロアラルキル、(ヘテロアリシクリル)アルキル、ヒドロキシ、保護されたヒドロキシ、アルコキシ、アリールオキシ、アシル、エステル、メルカプト、シアノ、ハロゲン、カルボニル、チオカルボニル、O−カルバミル、N−カルバミル、O−チオカルバミル、N−チオカルバミル、C−アミド、N−アミド、S−スルホンアミド、N−スルホンアミド、C−カルボキシ、保護されたC−カルボキシ、O−カルボキシ、イソシアネート、チオシアネート、イソチオシアネート、ニトロ、シリル、スルフェニル、スルフィニル、スルホニル、ハロアルキル(一、二および三置換ハロアルキル)、ハロアルコキシ(一、二および三置換ハロアルコキシ)、トリハロメタンスルホニル、トリハロメタンスルホンアミド、および一および二置換アミノ基を含むアミノ、およびこれらの保護された誘導体から独立して選択される1個または2個以上の基である、1個または2個以上の置換基によって置き換えられる。
【0052】
本明細書で用いる場合、「ヘテロアリール」は、1個または2個以上のヘテロ原子、すなわち、限定されずに、窒素、酸素および硫黄を含む炭素以外の元素を含む、単環式または多環式芳香環系(完全に非局在化したパイ電子系を有する環系)を指す。ヘテロアリール基の環は、5〜50個の原子を有してもよい。ヘテロアリール基は置換されていても、非置換であってもよい。ヘテロアリール環の例は、限定されずに、フラン、フラザン、チオフェン、ベンゾチオフェン、フタラジン、ピロール、オキサゾール、ベンゾオキサゾール、1,2,3−オキサジアゾール、1,2,4−オキサジアゾール、チアゾール、1,2,3−チアジアゾール、1,2,4−チアジアゾール、ベンゾチアゾール、イミダゾール、ベンゾイミダゾール、インドール、インダゾール、ピラゾール、ベンゾピラゾール、イソオキサゾール、ベンゾイソオキサゾール、イソチアゾール、トリアゾール、ベンゾトリアゾール、チアジアゾール、テトラゾール、ピリジン、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、プリン、プテリジン、キノリン、イソキノリン、キナゾリン、キノキサリン、シンノリンおよびトリアジンを含む。置換されている場合、水素原子は、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキニル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロアリシクリル、アラルキル、ヘテロアラルキル、(ヘテロアリシクリル)アルキル、ヒドロキシ、保護されたヒドロキシ、アルコキシ、アリールオキシ、アシル、エステル、メルカプト、シアノ、ハロゲン、カルボニル、チオカルボニル、O−カルバミル、N−カルバミル、O−チオカルバミル、N−チオカルバミル、C−アミド、N−アミド、S−スルホンアミド、N−スルホンアミド、C−カルボキシ、保護されたC−カルボキシ、O−カルボキシ、イソシアネート、チオシアネート、イソチオシアネート、ニトロ、シリル、スルフェニル、スルフィニル、スルホニル、ハロアルキル(一、二および三置換ハロアルキル)、ハロアルコキシ(一、二および三置換ハロアルコキシ)、トリハロメタンスルホニル、トリハロメタンスルホンアミド、および一および二置換アミノ基を含むアミノ、およびこれらの保護された誘導体から独立して選択される1個または2個以上の基である、1個または2個以上の置換基によって置き換えられる。
【0053】
本明細書で用いる場合、「シクロアルキル」は完全に飽和した(二重結合を含まない)単環式または多環式炭化水素環系を指す。2個または3個以上の環から構成される場合、環は、縮合、架橋またはスピロ結合によって連結していてもよい。シクロアルキル基はC〜C10の範囲であってもよく、他の態様において、それはC〜Cの範囲であってもよい。シクロアルキル基は非置換であっても、置換されていてもよい。典型的なシクロアルキル基は、限定されずに、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシルなどを含む。置換されている場合、1個または2個以上の置換基は、特に明記しない限り、アルキルであってもよく、または、アルキル基の置換に関して上記に示したのと同じ基から選択することができる。
【0054】
本明細書で用いる場合、「シクロアルケニル」は、環に1個または2個以上の二重結合を含むシクロアルキル基を指すが、二重結合が2個以上ある場合、二重結合は環において完全に非局在化したパイ電子系を形成することはできない(さもなければ、この基は本明細書に定義する「アリール」である)。2個または3個以上の環から構成される場合、環は、縮合、架橋またはスピロ結合によって連結していてもよい。シクロアルケニル基は非置換であっても、置換されていてもよい。置換されている場合、1個または2個以上の置換基は、特に明記しない限り、アルキルであってもよく、または、アルキル基の置換に関して上記に開示したのと同じ基から選択することができる。
【0055】
本明細書で用いる場合、「シクロアルキニル」は、環に1個または2個以上の三重結合を含むシクロアルキル基を指す。2個または3個以上の環から構成される場合、環は、縮合、架橋またはスピロ結合によって連結していてもよい。シクロアルキニル基は非置換であっても、置換されていてもよい。置換されている場合、1個または2個以上の置換基は、特に明記しない限り、アルキルであってもよく、または、アルキル基の置換に関して上記に開示したのと同じ基から選択することができる。
【0056】
本明細書で用いる場合、「ヘテロシクリル」および「ヘテロアリシクリル」は炭素原子と、窒素、酸素および硫黄からなる群から選択される1〜5個のヘテロ原子とからなる安定した3〜18員環を指す。「ヘテロシクリル」または「ヘテロアリシクリル」は単環式、二環式、三環式または四環式環系であってもよく、これは縮合、架橋またはスピロ結合によって連結していてもよく、「ヘテロシクリル」または「ヘテロアリシクリル」における窒素、炭素および硫黄原子は、任意に酸化されていてもよく、窒素は、任意に四級化されていてもよく、環はまた、1個または2個以上の二重結合を含んでもよく、ただしこれらは、いずれの環においても完全に非局在化したパイ電子系を形成しない。ヘテロシクリルおよびヘテロアリシクリル基は、非置換であっても、置換されていてもよい。置換されている場合、1個または2個以上の置換基は、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキニル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロアリシクリル、アラルキル、ヘテロアラルキル、(ヘテロアリシクリル)アルキル、ヒドロキシ、保護されたヒドロキシル、アルコキシ、アリールオキシ、アシル、エステル、メルカプト、シアノ、ハロゲン、カルボニル、チオカルボニル、O−カルバミル、N−カルバミル、O−チオカルバミル、N−チオカルバミル、C−アミド、N−アミド、S−スルホンアミド、N−スルホンアミド、C−カルボキシ、保護されたC−カルボキシ、O−カルボキシ、イソシアネート、チオシアネート、イソチオシアネート、ニトロ、シリル、ハロアルキル(一、二および三置換ハロアルキル)、ハロアルコキシ(一、二および三置換ハロアルコキシ)、トリハロメタンスルホニル、トリハロメタンスルホンアミド、および一および二置換アミノ基を含むアミノ、およびこれらの保護された誘導体から独立して選択される、1個または2個以上の基であってもよい。かかる「ヘテロシクリル」または「ヘテロアリシクリル」の例は、限定されずに、アゼピニル、アクリジニル、カルバゾリル、シンノリニル、1,3−ダイオキシン、1,3−ジオキサン、1,4−ジオキサン、1,2−ジオキソラニル、1,3−ジオキソラニル、1,4−ジオキソラニル、1,3−オキサチアン、1,4−オキサチイン、1,3−オキサチオラン、1,3−ジチオール、1,3−ジチオラン、1,4−オキサチアン、テトラヒドロ−1,4−チアジン、2H−1,2−オキサジン、マレイミド、スクシンイミド、バルビツール酸、チオバルビツール酸、ジオキソピペラジン、ヒダントイン、ジヒドロウラシル、トリオキサン、ヘキサヒドロ−1,3,5−トリアジン、イミダゾリニル、イミダゾリジン、イソオキサゾリン、イソオキサゾリジン、オキサゾリン、オキサゾリジン、オキサゾリジノンエステル、チアゾリン、チアゾリジン、モルホリニル、オキシラニル、ピペリジニルN−オキシド、ピペリジニル、ピペラジニル、ピロリジニル、ピロリドン、ピロリジオン、4−ピペリドニル、ピラゾリン、ピラゾリジニル、2−オキソピロリジニル、テトラヒドロピラン、4H−ピラン、テトラヒドロチオピラン、チアモルホリニル、チアモルホリニルスルホキシド、チアモルホリニルスルホン、およびこれらのベンゾ縮合類似物(例えばベンゾイミダゾリジノン、テトラヒドロキノリン、3、4−メチレンジオキシフェニルなど)を含む。
【0057】
用語「エステル」は、本明細書においてその通常の意味で用いられ、したがって、式−(R)−C(=O)OR’(式中、RおよびR’は、独立して、アルキル、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール(環炭素を介して結合)およびヘテロアリシクリック(環炭素またはヘテロ原子を介して結合)からなる群から選択され、nは0または1である)を有する化学部分を含む。
【0058】
用語「アミド」は、本明細書においてその通常の意味で用いられ、したがって、式−(R)−C(=O)NHR’または−(R)−NHC(=O)R’(式中、RおよびR’は、独立して、アルキル、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール(環炭素を介して結合)およびヘテロアリシクリック(環炭素またはヘテロ原子を介して結合)からなる群から選択され、nは0または1である)を有する化学部分を含む。アミドは、本明細書に記載の薬物分子に付着したアミノ酸またはペプチド分子に含まれてもよく、それによってプロドラッグを形成してもよい。
【0059】
本明細書で開示される化合物上の任意のアミン、ヒドロキシまたはカルボキシル側鎖は、エステル化またはアミド化されていてもよい。この目的を達成するのに用いる手順および具体的な基は当業者に知られており、その全体を本明細書に援用するGreene and Wuts, Protective Groups in Organic Synthesis, 3rd Ed., John Wiley & Sons, New York, NY, 1999などの参照文献中に容易に見出すことができる。
【0060】
基が「任意に置換されている」と記載されている場合は常に、その基は非置換であっても、示された置換基の1個または2個以上で置換されていてもよい。同様に、基が「非置換であるか、または置換されている」と記載されているとき、置換されている場合には、置換基は1個または2個以上の示された置換基から選択され得る。
【0061】
特に明記しない限り、置換基が「任意に置換されている」か、または「置換されている」とみなされる場合には、置換基が、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキニル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロアリシクリル、アラルキル、ヘテロアラルキル、(ヘテロアリシクリル)アルキル、ヒドロキシ、保護されたヒドロキシル、アルコキシ、アリールオキシ、アシル、エステル、メルカプト、シアノ、ハロゲン、カルボニル、チオカルボニル、O−カルバミル、N−カルバミル、O−チオカルバミル、N−チオカルバミル、C−アミド、N−アミド、S−スルホンアミド、N−スルホンアミド、C−カルボキシ、保護されたC−カルボキシ、O−カルボキシ、イソシアネート、チオシアネート、イソチオシアネート、ニトロ、シリル、スルフェニル、スルフィニル、スルホニル、ハロアルキル(一、二および三置換ハロアルキル)、ハロアルコキシ(一、二および三置換ハロアルコキシ)、トリハロメタンスルホニル、トリハロメタンスルホンアミド、および一および二置換アミノ基を含むアミノ、およびこれらの保護された誘導体から個々に独立して選択される、1個または2個以上の基で置換されていてもよい基であることを意味する。上記の置換基の保護誘導体を形成し得る保護基は、当業者に知られており、その全体を本明細書に援用するGreene and Wuts, Protective Groups in Organic Synthesis, 3rd Ed., John Wiley & Sons, New York, NY, 1999などの参考文献中に見出すことができる。
【0062】
1個または2個以上のキラル中心を有する本明細書に記載される任意の化合物において、絶体立体化学が明示されていない場合、各々の中心は、独立してR配置またはS配置またはこれらの複合であってもよい。したがって、本明細書で提供される化合物は、鏡像異性的に純粋であっても、立体異性体の混合物であってもよい。さらに、EまたはZとして定義することができる幾何異性体を生成する1個または2個以上の二重結合を有する任意の化合物において、各々の二重結合は独立してEまたはZまたはこれらの複合であってもよいことが理解される。同様に、全ての互変異性形態もまた包含されることが意図される。
【0063】
本明細書で用いる場合、任意の保護基、アミノ酸および他の化合物の略称は、特に明記しない限り、その一般的な用法、認められた略称、または生化学命名法に関するIUPAC−IUP委員会(Biochem. 11 :942-944 (1972)参照)に従う。
【0064】
本明細書に開示する態様は、担体、該担体と作動可能に結合したターゲティング剤、および該担体と作動可能に結合した治療剤を含み得る治療組成物に関する。様々な担体を、本明細書に開示する組成物において用いることができる。一部の態様において、担体は、非カチオン性ポリマー担体、リポソーム担体、樹枝状担体、ナノ材料担体、生体構造担体およびミセル担体から選択され得る。
【0065】
非カチオン性ポリマー担体
一部の態様において、担体は非カチオン性ポリマー担体であってもよい。様々な非カチオン性ポリマー担体を、本明細書に開示する組成物において用いることができる。好適な非カチオン性ポリマーは当業者に知られている。一部の態様において、非カチオン性ポリマー担体は、アニオン性(すなわち、負に荷電)であってもよい。他の態様において、非カチオン性ポリマー担体は、電子的に中性であってもよい。一部の態様において、非カチオン性ポリマー担体は線状であってもよい。他の態様において、それは分枝していてもよい。一部の態様において、非カチオン性ポリマー担体は水溶性であってもよい。他の態様において、非カチオン性ポリマー担体は水不溶性であってもよい。非カチオン性ポリマー担体は、一部の態様においては生分解性であってもよい。他の態様において、非カチオン性ポリマー担体は非生分解性であってもよい。一部の態様において、非カチオン性ポリマー担体は、ホモポリマーを含んでもよい。ある態様において、非カチオン性ポリマー担体は、ポリ−L−グルタミン酸(PGA)であってもよい。別の態様において、非カチオン性ポリマー担体は、ポリ−(γ−L−グルタミルグルタミン)(PGGA)であってもよい。さらに別の態様において、非カチオン性ポリマー担体は、ポリ−(γ−L−アスパルチルグルタミン)(PGAA)であってもよい。ある態様において、非カチオン性ポリマー担体は、コポリマーであってもよい。典型的なコポリマーは、ポリ−(乳酸−コ−グリコール酸)(PLGA)である。さらに他の態様において、非カチオン性ポリマー担体は、少なくとも2種のポリマーの混合物を含んでもよい。
【0066】
一部の態様において、非カチオン性ポリマー担体は、ミクロ粒子の形態であってもよい。他の態様において、非カチオン性ポリマー担体はナノ粒子の形態であってもよい。
【0067】
非カチオン性ポリマー担体は、様々な繰り返し単位を含んでもよい。ある態様において、非カチオン性ポリマー担体は、式(I):
【化1】

式中、R基は、水素、アンモニウムまたはアルカリ金属であってもよい
で表される繰り返し単位を含んでもよい。R基が水素である場合、式(I)で表される繰り返し単位はグルタミン酸の繰り返し単位である。
【0068】
他の態様において、非カチオン性ポリマー担体は、式(II):
【化2】

【0069】
式中、各々のAは酸素またはNRであってもよく、ここでRは水素または任意に置換されたC1〜4アルキルであってもよく、各々のRは、独立して、水素、任意に置換されたC1〜10アルキル、任意に置換されたC6〜20アリール、アンモニウムおよびアルカリ金属から選択される
で表される繰り返し単位を含んでもよい。ある態様において、各々のAは酸素であってもよく、各々のRは、独立して、水素およびアルカリ金属(例えばナトリウム)から選択されてもよい。各々のAが酸素であり、R基の各々が水素である場合、式(II)で表される繰り返し単位はL−アスパルチル−グルタミンの繰り返し単位である。
【0070】
他の態様において、非カチオン性ポリマー担体は、式(III):
【化3】

【0071】
式中、各々のAは酸素またはNRであってもよく、ここでRは水素または任意に置換されたC1〜4アルキルであってもよく、各々のRは、独立して、水素、任意に置換されたC1〜10アルキル、任意に置換されたC6〜20アリール、アンモニウムおよびアルカリ金属から選択される
で表される繰り返し単位を含んでもよい。ある態様において、各々のAは酸素であってもよく、各々のRは、独立して、水素およびアルカリ金属(例えばナトリウム)から選択されてもよい。各々のAが酸素であり、R基の各々が水素である場合、式(III)で表される繰り返し単位はL−グルタミル−グルタミンの繰り返し単位である。アルカリ金属の例は、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)、ルビジウム(Rb)およびセシウム(Cs)を含む。ある態様において、式(II)および/または(III)で表される1個または2個以上の繰り返し単位のアルカリ金属は、ナトリウムであってもよい。
【0072】
ある態様は、式(IV):
【化4】

で表される繰り返し単位を含むことができる非カチオン性ポリマー担体を提供する。
【0073】
別の態様は、式(V):
【化5】

で表される繰り返し単位を含むことができる非カチオン性ポリマー担体を提供する。
【0074】
ある態様において、非カチオン性ポリマー担体は、式(IV)および式(V)から選択される繰り返し単位を含む。別の態様において、非カチオン性ポリマー担体は、式(IV)で表される繰り返し単位および式(V)で表される繰り返し単位を含んでもよい。非カチオン性ポリマー担体が、式(IV)で表される繰り返し単位および式(V)で表される繰り返し単位の両方を含む場合、担体はPLGAであってもよい。
【0075】
前記のとおり、非カチオン性ポリマー担体は、ホモポリマーであってもよい。例えば、非カチオン性ポリマー担体は、すべてが式(I)で表される繰り返し単位からなってもよい。あるいは、非カチオン性ポリマー担体は、すべてが式(II)で表される繰り返し単位からなってもよい。ある態様において、非カチオン性ポリマー担体は、すべてが式(III)で表される繰り返し単位からなってもよい。他の態様において、非カチオン性ポリマー担体は、すべてが式(IV)または式(V)で表される繰り返し単位からなってもよい。
【0076】
しかしながら、非カチオン性ポリマー担体は、コポリマーであってもよい。非カチオン性ポリマー担体がコポリマーである場合、コポリマーは、1種、2種または3種以上の式(I)、(II)、(III)、(IV)および(V)で表される繰り返し単位を含んでもよい。一部の態様において、非カチオン性ポリマー担体は、式(I)、(II)、(III)、(IV)および(V)から選択される少なくとも2種の異なる繰り返し単位を含むコポリマーであってもよい。一部の態様において、非カチオン性ポリマー担体は、他の繰り返し単位、例えば式(I)、(II)、(III)、(IV)および(V)で表される繰り返し単位を形成するのに用いるモノマーと容易に共重合可能なモノマーを用いた共重合方法によって形成される繰り返し単位を含むコポリマーであってもよい。本明細書で提供される開示に基づくルーチンの実験を、かかるコモノマーおよび重合条件を特定するのに用いてもよい。
【0077】
非カチオン性ポリマー担体は、1個または2個以上のキラルの炭素原子を含み得る。キラル炭素(アスタリスク*によって示すことがある)は、rectus(右手型)またはsinister(左手型)構造を有することができ、したがって、繰り返し単位はラセミであっても、鏡像異性的であっても、鏡像異性的に富化されていてもよい。
【0078】
非カチオン性ポリマー担体における、式(I)および/または式(II)で表される繰り返し単位のパーセンテージは、広範囲にわたって異なってもよい。ある態様において、非カチオン性ポリマー担体は、非カチオン性ポリマー担体における繰り返し単位の総モルに基づいて、約1モル%〜約99モル%の式(I)および/または式(II)で表される繰り返し単位を含んでもよい。別の態様において、非カチオン性ポリマー担体は、非カチオン性ポリマー担体における繰り返し単位の総モルに基づいて、約1モル%〜約50モル%の式(I)および/または式(II)で表される繰り返し単位を含んでもよい。別の態様において、非カチオン性ポリマー担体は、非カチオン性ポリマー担体における繰り返し単位の総モルに基づいて、約1モル%〜約30モル%の式(I)および/または式(II)で表される繰り返し単位を含んでもよい。別の態様において、非カチオン性ポリマー担体は、非カチオン性ポリマー担体における繰り返し単位の総モルに基づいて、約1モル%〜約20モル%の式(I)および/または式(II)で表される繰り返し単位を含んでもよい。別の態様において、非カチオン性ポリマー担体は、非カチオン性ポリマー担体における繰り返し単位の総モルに基づいて、約1モル%〜約10モル%の式(I)および/または式(II)で表される繰り返し単位を含んでもよい。
【0079】
同様に、非カチオン性ポリマー担体における、式(III)で表される繰り返し単位のパーセンテージは、広範囲にわたって異なってもよい。ある態様において、非カチオン性ポリマー担体は、非カチオン性ポリマー担体における繰り返し単位の総モルに基づいて、約1モル%〜約99モル%の式(III)で表される繰り返し単位を含んでもよい。別の態様において、非カチオン性ポリマー担体は、非カチオン性ポリマー担体における繰り返し単位の総モルに基づいて、約1モル%〜約50モル%の式(III)で表される繰り返し単位を含んでもよい。別の態様において、非カチオン性ポリマー担体は、非カチオン性ポリマー担体における繰り返し単位の総モルに基づいて、約1モル%〜約30モル%の式(III)で表される繰り返し単位を含んでもよい。別の態様において、非カチオン性ポリマー担体は、非カチオン性ポリマー担体における繰り返し単位の総モルに基づいて、約1モル%〜約20モル%の式(III)で表される繰り返し単位を含んでもよい。別の態様において、非カチオン性ポリマー担体は、非カチオン性ポリマー担体における繰り返し単位の総モルに基づいて、約1モル%〜約10モル%の式(III)で表される繰り返し単位を含んでもよい。
【0080】
ある態様において、非カチオン性ポリマー担体は、式(II)で表される繰り返し単位および式(III)で表される繰り返し単位を含むコポリマーであってもよい。式(II)で表される繰り返し単位および式(III)で表される繰り返し単位を含む非カチオン性ポリマー担体は、式(II)で表されるものでも式(III)で表されるものでもない他の繰り返し単位を含むコポリマーであってもよい。式(II)または式(III)で表されるものではない典型的な他の繰り返し単位は、限定されずに、式(I)、(IV)および(V)で表される繰り返し単位を含む。
【0081】
式(II)および式(III)で表される繰り返し単位を含む非カチオン性ポリマー担体における繰り返し単位の総数に基づく、式(II)で表される繰り返し単位のパーセンテージは、広範囲にわたって異なってもよい。ある態様において、非カチオン性ポリマー担体は、式(II)および式(III)で表される繰り返し単位の総モルに基づいて、約1モル%〜約99モル%の式(II)で表される繰り返し単位を含んでもよい。別の態様において、非カチオン性ポリマー担体は、式(II)および式(III)で表される繰り返し単位の総モルに基づいて、約1モル%〜約50モル%の式(II)で表される繰り返し単位を含んでもよい。別の態様において、非カチオン性ポリマー担体は、式(II)および式(III)で表される繰り返し単位の総モルに基づいて、約1モル%〜約30モル%の式(II)で表される繰り返し単位を含んでもよい。別の態様において、非カチオン性ポリマー担体は、式(II)および式(III)で表される繰り返し単位の総モルに基づいて、約1モル%〜約20モル%の式(II)で表される繰り返し単位を含んでもよい。別の態様において、非カチオン性ポリマー担体は、式(II)および式(III)で表される繰り返し単位の総モルに基づいて、約1モル%〜約10モル%の式(II)で表される繰り返し単位を含んでもよい。
【0082】
式(III)で表される繰り返し単位に関して、ある態様において、非カチオン性ポリマー担体は、式(II)および式(III)で表される繰り返し単位の総モルに基づいて、約1モル%〜約99モル%の式(III)で表される繰り返し単位を含んでもよい。別の態様において、非カチオン性ポリマー担体は、式(II)および式(III)で表される繰り返し単位の総モルに基づいて、約1モル%〜約50モル%の式(III)で表される繰り返し単位を含んでもよい。別の態様において、非カチオン性ポリマー担体は、式(II)および式(III)で表される繰り返し単位の総モルに基づいて、約1モル%〜約30モル%の式(III)で表される繰り返し単位を含んでもよい。別の態様において、非カチオン性ポリマー担体は、式(II)および式(III)で表される繰り返し単位の総モルに基づいて、約1モル%〜約20モル%の式(III)で表される繰り返し単位を含んでもよい。別の態様において、非カチオン性ポリマー担体は、式(II)および式(III)で表される繰り返し単位の総モルに基づいて、約1モル%〜約10モル%の式(III)で表される繰り返し単位を含んでもよい。
【0083】
ある態様において、非カチオン性ポリマー担体は、式(I)で表される繰り返し単位、式(II)で表される繰り返し単位および式(III)で表される繰り返し単位を含んでもよい。式(I)、式(II)および式(III)で表される繰り返し単位を含む非カチオン性ポリマー担体における繰り返し単位の総数に基づく、式(II)で表される繰り返し単位のパーセンテージは、広範囲にわたって異なってもよい。ある態様において、非カチオン性ポリマー担体は、式(I)、式(II)および式(III)で表される繰り返し単位の総モルに基づいて、約1モル%〜約99モル%の式(II)で表される繰り返し単位を含んでもよい。別の態様において、非カチオン性ポリマー担体は、式(I)、式(II)および式(III)で表される繰り返し単位の総モルに基づいて、約1モル%〜約50モル%の式(II)で表される繰り返し単位を含んでもよい。別の態様において、非カチオン性ポリマー担体は、式(I)、式(II)および式(III)で表される繰り返し単位の総モルに基づいて、約1モル%〜約30モル%の式(II)で表される繰り返し単位を含んでもよい。別の態様において、非カチオン性ポリマー担体は、式(I)、式(II)および式(III)で表される繰り返し単位の総モルに基づいて、約1モル%〜約20モル%の式(II)で表される繰り返し単位を含んでもよい。別の態様において、非カチオン性ポリマー担体は、式(I)、式(II)および式(III)で表される繰り返し単位の総モルに基づいて、約1モル%〜約10モル%の式(II)で表される繰り返し単位を含んでもよい。
【0084】
式(III)で表される繰り返し単位に関して、ある態様において、非カチオン性ポリマー担体は、式(I)、式(II)および式(III)で表される繰り返し単位の総モルに基づいて、約1モル%〜約99モル%の式(III)で表される繰り返し単位を含んでもよい。別の態様において、非カチオン性ポリマー担体は、式(I)、式(II)および式(III)で表される繰り返し単位の総モルに基づいて、約1モル%〜約50モル%の式(III)で表される繰り返し単位を含んでもよい。別の態様において、非カチオン性ポリマー担体は、式(I)、式(II)および式(III)で表される繰り返し単位の総モルに基づいて、約1モル%〜約30モル%の式(III)で表される繰り返し単位を含んでもよい。別の態様において、非カチオン性ポリマー担体は、式(I)、式(II)および式(III)で表される繰り返し単位の総モルに基づいて、約1モル%〜約20モル%の式(III)で表される繰り返し単位を含んでもよい。別の態様において、非カチオン性ポリマー担体は、式(I)、式(II)および式(III)で表される繰り返し単位の総モルに基づいて、約1モル%〜約10モル%の式(III)で表される繰り返し単位を含んでもよい。
【0085】
式(II)および式(III)で表される繰り返し単位と同様に、式(I)で表される繰り返し単位のパーセンテージは、広範囲にわたって異なってもよい。ある態様において、非カチオン性ポリマー担体は、式(I)、式(II)および式(III)で表される繰り返し単位の総モルに基づいて、約1モル%〜約99モル%の式(I)で表される繰り返し単位を含んでもよい。別の態様において、非カチオン性ポリマー担体は、式(I)、式(II)および式(III)で表される繰り返し単位の総モルに基づいて、約1モル%〜約50モル%の式(I)で表される繰り返し単位を含んでもよい。別の態様において、非カチオン性ポリマー担体は、式(I)、式(II)および式(III)で表される繰り返し単位の総モルに基づいて、約1モル%〜約30モル%の式(I)で表される繰り返し単位を含んでもよい。別の態様において、非カチオン性ポリマー担体は、式(I)、式(II)および式(III)で表される繰り返し単位の総モルに基づいて、約1モル%〜約20モル%の式(I)で表される繰り返し単位を含んでもよい。別の態様において、非カチオン性ポリマー担体は、式(I)、式(II)および式(III)で表される繰り返し単位の総モルに基づいて、約1モル%〜約10モル%の式(I)で表される繰り返し単位を含んでもよい。
【0086】
一部の態様において、非カチオン性ポリマー担体は、式(IV)で表される繰り返し単位を含むコポリマーであってもよい。ある態様において、非カチオン性ポリマー担体は、式(V)で表される繰り返し単位を含むコポリマーであってもよい。ある態様において、非カチオン性ポリマー担体は、式(IV)で表される繰り返し単位および式(V)で表される繰り返し単位を含むコポリマーであってもよい。
【0087】
非カチオン性ポリマー担体における、式(IV)で表される繰り返し単位のパーセンテージは、広範囲にわたって異なってもよい。ある態様において、非カチオン性ポリマー担体は、非カチオン性ポリマー担体における繰り返し単位の総モルに基づいて、約1モル%〜約99モル%の式(IV)で表される繰り返し単位を含んでもよい。別の態様において、非カチオン性ポリマー担体は、非カチオン性ポリマー担体における繰り返し単位の総モルに基づいて、約1モル%〜約50モル%の式(IV)で表される繰り返し単位を含んでもよい。別の態様において、非カチオン性ポリマー担体は、非カチオン性ポリマー担体における繰り返し単位の総モルに基づいて、約1モル%〜約30モル%の式(IV)で表される繰り返し単位を含んでもよい。別の態様において、非カチオン性ポリマー担体は、非カチオン性ポリマー担体における繰り返し単位の総モルに基づいて、約1モル%〜約20モル%の式(IV)で表される繰り返し単位を含んでもよい。別の態様において、非カチオン性ポリマー担体は、非カチオン性ポリマー担体における繰り返し単位の総モルに基づいて、約1モル%〜約10モル%の式(IV)で表される繰り返し単位を含んでもよい。
【0088】
同様に、非カチオン性ポリマー担体における、式(V)で表される繰り返し単位のパーセンテージは、広範囲にわたって異なってもよい。ある態様において、非カチオン性ポリマー担体は、非カチオン性ポリマー担体における繰り返し単位の総モルに基づいて、約1モル%〜約99モル%の式(V)で表される繰り返し単位を含んでもよい。別の態様において、非カチオン性ポリマー担体は、非カチオン性ポリマー担体における繰り返し単位の総モルに基づいて、約1モル%〜約50モル%の式(V)で表される繰り返し単位を含んでもよい。別の態様において、非カチオン性ポリマー担体は、非カチオン性ポリマー担体における繰り返し単位の総モルに基づいて、約1モル%〜約30モル%の式(V)で表される繰り返し単位を含んでもよい。別の態様において、非カチオン性ポリマー担体は、非カチオン性ポリマー担体における繰り返し単位の総モルに基づいて、約1モル%〜約20モル%の式(V)で表される繰り返し単位を含んでもよい。別の態様において、非カチオン性ポリマー担体は、非カチオン性ポリマー担体における繰り返し単位の総モルに基づいて、約1モル%〜約10モル%の式(V)で表される繰り返し単位を含んでもよい。
【0089】
ある態様において、非カチオン性ポリマー担体は、式(IV)および式(V)で表される繰り返し単位の総モルに基づいて、約1モル%〜約99モル%の式(IV)で表される繰り返し単位を含んでもよい。別の態様において、非カチオン性ポリマー担体は、式(IV)および式(V)で表される繰り返し単位の総モルに基づいて、約1モル%〜約50モル%の式(IV)で表される繰り返し単位を含んでもよい。別の態様において、非カチオン性ポリマー担体は、式(IV)および式(V)で表される繰り返し単位の総モルに基づいて、約1モル%〜約30モル%の式(IV)で表される繰り返し単位を含んでもよい。別の態様において、非カチオン性ポリマー担体は、式(IV)および式(V)で表される繰り返し単位の総モルに基づいて、約1モル%〜約20モル%の式(IV)で表される繰り返し単位を含んでもよい。別の態様において、非カチオン性ポリマー担体は、式(IV)および式(V)で表される繰り返し単位の総モルに基づいて、約1モル%〜約10モル%の式(IV)で表される繰り返し単位を含んでもよい。
【0090】
ある態様において、非カチオン性ポリマー担体は、式(IV)および式(V)で表される繰り返し単位の総モルに基づいて、約1モル%〜約99モル%の式(V)で表される繰り返し単位を含んでもよい。別の態様において、非カチオン性ポリマー担体は、式(IV)および式(V)で表される繰り返し単位の総モルに基づいて、約1モル%〜約50モル%の式(V)で表される繰り返し単位を含んでもよい。別の態様において、非カチオン性ポリマー担体は、式(IV)および式(V)で表される繰り返し単位の総モルに基づいて、約1モル%〜約30モル%の式(V)で表される繰り返し単位を含んでもよい。別の態様において、非カチオン性ポリマー担体は、式(IV)および式(V)で表される繰り返し単位の総モルに基づいて、約1モル%〜約20モル%の式(V)で表される繰り返し単位を含んでもよい。別の態様において、非カチオン性ポリマー担体は、式(IV)および式(V)で表される繰り返し単位の総モルに基づいて、約1モル%〜約10モル%の式(V)で表される繰り返し単位を含んでもよい。
【0091】
本明細書に開示する非カチオン性ポリマー担体は、商業的に入手できるか、および/または当業者に既知の方法によって製造することができる。ある態様において、式(II)で表される繰り返し単位を含む非カチオン性ポリマー担体は、ポリグルタミン酸およびアミノ酸、例えばアスパラギン酸などから出発して製造することができる。あるいは、別の態様において、非カチオン性ポリマー担体は、最初に出発材料のポリグルタミン酸をその塩形態に変換することによって作出してもよい。ポリグルタミン酸の塩形態は、ポリグルタミン酸と好適な塩基(例えば重炭酸ナトリウム)とを反応させることにより得ることができる。アスパラギン酸部分を、ポリグルタミン酸のペンダントカルボン酸またはカルボキシレート基に付着させることができる。ポリグルタミン酸の重量平均分子量は限定されないが、好ましくは、約10,000〜約500,000ダルトン、より好ましくは約25,000〜約300,000ダルトンである。式(III)で表される繰り返し単位を含む非カチオン性ポリマー担体は、アスパラギン酸の代わりにグルタミン酸を用いて、同様のまたは類似の手順に従って作製することができる。上記反応は、ポリ−(γ−L−アスパルチル−グルタミン)またはポリ−(γ−L−グルタミル−グルタミン)を作出するのに用いることができる。上述の一部の非カチオン性ポリマー担体およびその合成に関するさらなる詳細は、その全体を本明細書に援用する、2006年12月1日に出願された、「POLYGLUTAMATE-AMINO ACID CONJUGATES AND METHODS」と題する米国特許公開第2007-0128118号に見出すことができる。
【0092】
式(IV)で表される繰り返し単位を含む非カチオン性ポリマー担体は、商業的に入手でき、および当業者に既知の方法によって製造することができる。ある態様において、式(IV)で表される繰り返し単位を含む非カチオン性ポリマー担体は、乳酸から出発して製造することができる。乳酸は、反応させてラクチドを得、これを次いで重合させることができる。式(V)で表される繰り返し単位を含む非カチオン性ポリマー担体もまた、商業的に入手でき、および当業者に既知の方法によって製造することができる。ある態様において、式(V)で表される繰り返し単位を含む非カチオン性ポリマー担体は、クロロ酢酸と好適な塩基(例えば水酸化ナトリウム)とを反応させることにより製造することができる。前述のとおり、非カチオン性ポリマー担体は、式(IV)で表される繰り返し単位と式(V)で表される繰り返し単位とを含むコポリマーであってもよい。非カチオン性ポリマー担体が式(IV)で表される繰り返し単位および式(V)で表される繰り返し単位の両方を含む場合、担体はPLGAであってもよい。かかるコポリマーは商業的に入手でき、および当業者に既知の方法によって調製することができる。
【0093】
当業者は、担体を非カチオン性にするために、出発モノマーの塩形態を用いてもよいことを理解する。同様に、重合後、得られたポリマーは、残存するあらゆる正電荷を中和するために、塩基で処理することができる。
【0094】
リポソーム担体
一部の態様において、担体はリポソーム担体であってもよい。様々なリポソーム担体を、本明細書に開示する組成物において用いることができる。好適なリポソーム担体は当業者に知られており、種々の特性、例えば脂質二重層の剛性(rigidity)、脂質二重層の電子電荷および/または剤の一方もしくは両方とリポソーム担体との適合性などに基づいて選択することができる。一部の態様において、リポソーム担体はリン脂質を含んでもよい。ある態様において、リポソーム担体は、天然リン脂質、例えば卵ホスファチジルコリン、卵ホスファチジルエタノールアミン、大豆ホスファチジルコリン、レシチンおよびスフィンゴミエリンなどを含んでもよい。他の態様において、リポソーム担体は、合成リン脂質を含んでもよい。合成リン脂質は、限定されずに、合成ホスファチジルコリン、リゾホスファチジルコリン、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジン酸、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリンおよびこれらの誘導体を含む。合成リン脂質は様々な手法で誘導体化することができ、例えば、合成リン脂質は、1または2以上のポリエチレングリコール部分を含む、いわゆる「PEG化」リン脂質であってもよい。
【0095】
一部の態様において、リポソーム担体はカチオン性であってもよい。他の態様において、リポソーム担体は、電子的に中性であってもよい。さらに他の態様において、リポソーム担体はアニオン性であってもよい。当業者は、リポソーム担体のための所望の正味の電子電荷を得るために、様々な脂質を選択できることを理解する。
【0096】
樹枝状担体
一部の態様において、担体は樹枝状担体であってもよい。様々な樹枝状担体を、本明細書に開示する組成物において用いることができる。好適な樹枝状担体は当業者に知られており、これと作動可能に結合する剤、ならびに、樹枝状担体の所望の特性に応じて選択することができる。一部の態様において、樹枝状担体はデンドリマーであってもよい。ある態様において、樹枝状担体はデンドロンであってもよい。
【0097】
上述のとおり、樹枝状担体はコア分子を含む。典型的なコア分子は、限定されずに、アルキルジアミン(例えばエチレンジアミン、1,4−ジアミノブタン、1,6−ジアミノヘキサンおよび1,12−ジアミノデカンなど)、アミン(例えばアンモニアなど)、シスタミン、アルキルイミン(例えば、ポリ(エチレンイミン)(PEI)など)、および塩素化リン分子(例えば、シクロトリホスファゼンおよびチオホスホリルなど)を含む。樹枝状担体は、一般に1個または2個以上の分枝基を含む。典型的な分枝基は、限定されずに、アルキルイミン(例えばポリ(プロピレンイミン)(PPI)など(例えばDAB−Am−16など))、第三級アミン(例えば、ポリ(アミドアミン)(PAMAM)など)、ポリ(アミノ酸)(例えば、ポリ(リジン)など)、およびフェノキシメチル(メチルヒドラゾノ)(PMMH)を含む。
【0098】
一部の態様において、分枝基は、ポリ(プロピレンイミン)を含むことができない。他の態様において、分枝基は、ポリ(アミドアミン)を含むことができない。さらに他の態様において、分枝基は、ポリ(リジン)を含むことができない。一部の態様において、樹枝状担体は、ポリ(プロピレンイミン)を含むことができない。他の態様において、樹枝状担体は、ポリ(アミドアミン)を含むことができない。さらに他の態様において、樹枝状担体は、リジンおよび/またはポリ(リジン)を含むことができない。ある態様において、樹枝状担体は、PAMAMであることができない。ある態様において、樹枝状担体は、DAB−Am−16であることができない。ある態様において、樹枝状担体は、ポリ(リジン)であることができない。
【0099】
樹枝状担体の分枝の数は多様であってよい。ある態様において、樹枝状担体は、2本または3本以上の分枝を含んでもよい。別の態様において、樹枝状担体は、3本または4本以上の分枝を含んでもよい。さらに他の態様において、樹枝状担体は、4本または5本以上の分枝を含んでもよい。さらにまた、上述のとおり、樹枝状担体は1または2以上の世代を含んでもよい。分枝基の各々の世代は、化学反応の反復または繰り返しによって合成することができる。一部の態様において、樹枝状担体は、1世代の分枝基を含んでもよい。他の態様において、樹枝状担体は、2世代の分枝基を含んでもよい。さらに他の態様において、樹枝状担体は、2世代または3世代以上の分枝基を含んでもよい。
【0100】
一部の態様において、樹枝状担体の少なくとも一部分は疎水性であってもよい。一部の態様において、樹枝状担体の少なくとも一部分は親水性であってもよい。ある態様において、樹枝状担体の一部分は疎水性であってもよく、樹枝状担体の異なる部分は親水性であってもよい。一部の態様において、樹枝状担体はカチオン性であってもよい。他の態様において、樹枝状担体は、電子的に中性であってもよい。さらに他の態様において、樹枝状担体はアニオン性であってもよい。当業者は、所望の特性を示す樹枝状担体を得るために様々な出発原料を選択できることを理解する。
【0101】
ナノ材料担体
一部の態様において、担体はナノ材料担体であってもよい。様々なナノ材料担体を、本明細書に開示する組成物において用いることができる。好適なナノ材料担体は当業者に知られており、これと作動可能に結合する剤に応じて、本明細書で提供されるガイダンスに基づき選択することができる。一部の態様において、ナノ材料担体は、ナノ粒子であってもよい。一部の態様において、ナノ粒子は金属を含んでもよい。ある態様において、ナノ粒子は金ナノ粒子であってもよい。ある態様において、金ナノ粒子は正に荷電されていてもよい。別の態様において、金ナノ粒子は負に荷電されていてもよい。一部の態様において、ナノ粒子はナノスフェアであってもよい。
【0102】
ある態様において、ナノ粒子はナノポリマーであってもよい。ナノポリマーたり得るポリマーの例は、限定されずに、ポリ−(乳酸−コ−グリコール酸)(PLGA)、ポリアルキルシアノアクリレート(PACA)、ポリイプシロン−カプロラクトン(PCL)およびポリ乳酸(PLA)を含む。ある態様において、ナノ材料担体は、PLGAおよびポリエチレングリコール(PEG)を含む。
【0103】
他の態様において、ナノ粒子はフラーレンであってもよい。フラーレンは、限定されずに、球状、楕円状、円筒状、平面状を含む様々な形状で存在してもよい。一部の態様において、円柱形状のフラーレンナノ粒子は、カーボンナノチューブであってもよい。ある態様において、カーボンナノチューブは単一壁であってもよい。別の態様において、カーボンナノチューブは多重壁であってもよい。カーボンナノチューブは、限定されずに、アームチェア、ジグザグおよびキラルを含む、様々な配向であってもよい。カーボンナノチューブの直径は、約0.1nm〜約10nmの範囲にあってもよい。典型的な直径は、約1nmである。ある態様において、さらなる官能基がカーボンナノチューブに付着していてもよい。一部の態様において、さらなる官能基が、細胞膜を横切る輸送を促進するために、カーボンナノチューブに付着していてもよい。例えば、1個または2個以上の親水基が、カーボンナノチューブの末端に付着していててもよい。
【0104】
生体構造担体
一部の態様において、担体は生体構造担体であってもよい。様々な生体構造担体を、本明細書に開示する組成物において用いることができる。好適な生体構造担体は当業者に知られており、これと作動可能に結合する剤に応じて、本明細書で提供されるガイダンスに基づき選択することができる。
【0105】
一部の態様において、生体構造担体における多数の単位は、サッカリド単位であってもよい。多数の単位がサッカリドである、かかる生体構造担体の1つは、糖である。ある態様において、生体構造担体は、単糖またはその半合成誘導体であってもよい。別の態様において、生体構造担体は、オリゴ糖またはその半合成誘導体であってもよい。一部の態様において、生体構造担体は、多糖またはその半合成誘導体、例えば環状多糖、線状多糖および分枝多糖などを含んでもよい。典型的な非環状多糖は、デキストランである。一部の態様において、デキストランは約1キロダルトン(kDa)〜約2,000kDaの範囲の分子量を有してもよい。他の態様において、分子量は約1kDa〜約500kDaの範囲であってもよい。さらに他の態様において、分子量は約10kDa〜約500kDaの範囲であってもよい。一部の態様において、デキストランの分子量は、約1kDa、約10kDa、約20kDa、約40kDa、約60kDa、約70kDaおよび約500kDaから選択することができる。
【0106】
典型的な環状多糖は、シクロデキストリンである。典型的なシクロデキストリンは、限定されずに、α−シクロデキストリン、β−シクロデキストリン、およびγ−シクロデキストリンを含む。シクロデキストリンは非置換であっても、置換されていてもよい。一部の態様において、1個または2個以上のペンダントヒドロキシル基が、別の置換基に置換されていてもよい。典型的な置換基は、限定されずに、アルキル、ジアルキル、カルボキシアルキル、ヒドロキシアルキル、アルコキシ、スルホアルキルおよび/またはグルコース基を含む。典型的な置換シクロデキストリン生体構造担体は、限定されずに、メチルβ−シクロデキストリン、ジメチル−β−シクロデキストリン、カルボキシメチル−β−シクロデキストリン、ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン、スルホブチルエーテル−β−シクロデキストリン、トリ−O−メチル−β−シクロデキストリン、およびグルコシル−β−シクロデキストリンを含む。当業者は、特定の置換基の選択ならびに置換度が、生体構造担体の所望の特性、例えば極性および/または疎水性などによって異なり得ることを理解する。
【0107】
生体構造担体に存在するサッカリド単位の数は多様であってよい。一部の態様において、生体構造担体は、1個または2個以上のサッカリド単位を含んでもよい。他の態様において、生体構造担体は、5個または6個以上のサッカリド単位を含んでもよい。さらに他の態様において、生体構造担体は、7個または8個以上のサッカリド単位を含んでもよい。さらにまた他の態様において、生体構造担体は、10個または11個以上のサッカリド単位を含んでもよい。ある態様において、生体構造担体は、5〜50個のサッカリド単位であってもよい。別の態様において、生体構造担体は、5〜20個のサッカリド単位であってもよい。さらに別の態様において、生体構造担体は、5〜15個のサッカリド単位であってもよい。
【0108】
一部の態様において、生体構造担体の多数の単位は、アミノ酸単位であってもよい。一部の態様において、アミノ酸単位は、リジン、例えばL−リジンではない。多数の単位がアミノ酸である生体構造担体の例は、タンパク質およびペプチドである。一部の態様において、生体構造担体は、アルブミンを含んでもよい。アルブミンの典型的な種類は、限定されずに、C反応性タンパク質、コンアルブミン、ラクトアルブミン、オボアルブミン、パルブアルブミン、血清アルブミンおよびテクネチウムTC99m凝集アルブミンを含む。血清アルブミンの典型的な種類は、限定されずに、ヒト血清アルブミン(HSA)およびウシ血清アルブミン(BSA)を含む。一部の態様において、タンパク質またはペプチドは、天然由来であってもよい。他の態様において、タンパク質またはペプチドは、合成物(例えば組換えヒト血清アルブミン(rHSA)など)であってもよい。一部の態様において、生体構造担体は、ポリ‐L‐リジンを含まない。ある態様において、生体構造担体は、ポリ‐L‐リジンであることができない。
【0109】
生体構造担体に存在するアミノ酸単位の数は多様であってよい。一部の態様において、生体構造担体は、2〜1500個のアミノ酸単位を含んでもよい。他の態様において、生体構造担体は、2〜50個のアミノ酸単位を含んでもよい。さらに他の態様において、生体構造担体は、8〜35個のアミノ酸単位を含んでもよい。さらにまた他の態様において、生体構造担体は、15〜30個のアミノ酸単位を含んでもよい。ある態様において、生体構造担体は、80〜1250個のアミノ酸単位を含んでもよい。別の態様において、生体構造担体は、100〜1000個のアミノ酸単位を含んでもよい。さらに別の態様において、生体構造担体は、200〜700個のアミノ酸単位を含んでもよい。一部の態様において、生体構造担体の少なくとも一部分は疎水性であってもよい。一部の態様において、生体構造担体の少なくとも一部分は親水性であってもよい。ある態様において、生体構造担体の一部分は疎水性であってもよく、生体構造担体の異なる部分は親水性であってもよい。一部の態様において、生体構造担体はカチオン性であってもよい。他の態様において、生体構造担体は、電子的に中性であってもよい。さらに他の態様において、生体構造担体はアニオン性であってもよい。当業者は、本明細書で提供されたガイダンスが示すとおり、所望の特性を示す生体構造担体を得るために様々な出発原料を選択できることを理解する。
【0110】
様々な分子量の生体構造担体を、本明細書に記載の組成物において用いることができる。生体構造担体が多数のサッカリド単位を含む場合、分子量は約500ダルトン〜約2,500ダルトンの範囲であってもよい。一部の態様において、分子量は約1,000ダルトン〜約2,000ダルトンの範囲であってもよい。さらに他の態様において、分子量は約1,000ダルトン〜約1,500ダルトンの範囲であってもよい。生体構造担体が多数のアミノ酸単位を含む場合、分子量は約20,000ダルトン〜約100,000ダルトンの範囲であってもよい。一部の態様において、分子量は約30,000ダルトン〜約70,000ダルトンの範囲であってもよい。他の態様において、分子量は約50,000ダルトン〜約100,000ダルトンの範囲であってもよい。当業者は、生体構造担体の分子量を決定する際に、1または2以上の剤の分子量が考慮されないことを理解する。
【0111】
ミセル担体
一部の態様において、担体はミセル担体であってもよい。様々なミセル担体を、本明細書に開示する組成物において用いることができる。好適なミセル担体は当業者に知られており、これが作動可能に結合する剤に応じて選択することができる。一部の態様において、ミセル担体は、脂質を含んでもよい。典型的な脂質は、限定されずに、脂肪酸およびリン脂質を含む。他の態様において、ミセル担体は、ポリマーを含んでもよい。ある態様において、ミセル担体は、ホモポリマーを含んでもよい。典型的なホモポリマーは、限定されずに、ポリ(アルキレングリコール)(例えば、ポリ(エチレングリコール)(PEG)など)、ポリ(アミノ酸)(例えば、ポリ(アスパラギン酸)およびポリ(グルタミン酸)(PGA)など)、ポリ−(γ−L−グルタミルグルタミン)(PGGA)、ポリ(フェニレンオキシド)(PPO)、ポリ(ε−カプロラクトン)(PCL)、およびポリ(乳酸)を含む。ある態様において、ミセル担体は、ポリ−(γ−L−グルタミルグルタミン)(PGGA)を含んでもよい。他の態様において、ミセル担体は、コポリマー、例えばポリ(乳酸−コ−グリコール酸)(PLGA)を含んでもよい。一部の態様において、ミセル担体は、ブロックコポリマーを含んでもよい。典型的なブロックコポリマーは、ジブロックコポリマーである。一部の態様において、ジブロックコポリマーは、非極性繰り返し単位と極性繰り返し単位とを含んでもよい。典型的な極性繰り返し単位は、限定されずに、アルキレングリコール(例えばエチレングリコールなど)、アルキレンオキシド(例えばエチレンオキシドなど)、および親水性アミノ酸を含む。典型的な非極性繰り返し単位は、限定されずに、γ−L−グルタミルグルタミン、グルタミン酸、乳酸−コ−グリコール酸、フェニレンオキシド、ε−カプロラクトン、乳酸、スチレン、ブチレンオキシド、炭化水素、および疎水性アミノ酸、例えばアスパラギン酸などを含む。2種を超える異なる繰り返し単位を有する他のブロックコポリマー、例えばトリブロックコポリマーなどを用いてもよい。他の態様において、ミセル担体は、ポリマーを含むことができない。ある態様において、ミセル担体は、非ポリマーミセル担体である。
【0112】
一部の態様において、ミセル担体はカチオン性であってもよい。他の態様において、ミセル担体は、電子的に中性であってもよい。さらに他の態様において、ミセル担体はアニオン性であってもよい。当業者は、ミセル担体のための所望の正味の電子電荷を得るために、様々な出発材料を選択できることを理解する。
【0113】
担体と同様に、種々のターゲティング剤を治療組成物に用いることができる。一部の態様において、ターゲティング剤は、レチノイド、例えば本明細書中に記載のものを含み得る。好適なレチノイドは、レチノール、レチナール、レチノイン酸、レキシノイドまたはその誘導体もしくは類似物を含む。典型的なレチノールは、ビタミンA、オールトランスレチノール、パルミチン酸レチニルおよび酢酸レチニルを含む。レチナールの1つの例は、11−シス−レチナールである。レキシノイドは、レチノイドXレセプター(RXR)に対して選択的なレチノイド化合物である。典型的なレキシノイドはベキサロテンである。他のレチノイド誘導体および類似物は、エトレチネート、アシトレチン、タザロテン、ベキサロテン、アダパレンおよびフェンレチニドを含む。一部の態様において、レチノイドはレチノール、レチナール、レチノイン酸、オールトランスレチノール、オールトランスレチノイン酸、パルミチン酸レチニル、11−シス−レチナールおよび13−シス−レチノイン酸から選択することができる。ある態様において、レチノイドはビタミンAを含んでもよい。
【0114】
上記のとおり、ターゲティング剤は、特定の標的器官または組織への治療組成物の送達選択性を高めることができる。標的器官は、例えば、肝臓、膵臓、腎臓、肺、食道、喉頭、骨髄および脳を含み得る。一部の態様において、送達選択性の向上は、ターゲティング剤を欠く以外は同等の治療組成物のものと比較して少なくとも約2倍であってもよい。ある態様において、送達選択性の向上は、少なくとも3倍であってもよい。一部の態様において、本明細書に記載の治療組成物は、治療剤の標的器官への送達を、ターゲティング剤を欠く以外は同等の治療組成物のものと比較して少なくとも10%増大させることができる。他の態様において、本明細書に記載の治療組成物は、治療剤の標的器官への送達を、ターゲティング剤を欠く以外は同等の治療組成物のものと比較して少なくとも25%増大させることができる。さらに別の態様において、本明細書に記載の治療組成物は、治療剤の標的器官への送達を、ターゲティング剤を欠く以外は同等の治療組成物のものと比較して少なくとも50%増大させることができる。さらにまた別の態様において、本明細書に記載の治療組成物は、治療剤の標的器官への送達を、ターゲティング剤を欠く以外は同等の治療組成物のものと比較して少なくとも75%増大させることができる。
【0115】
治療組成物中に存在するターゲティング剤の量は、広範囲にわたって異なってもよい。一部の態様において、ターゲティング剤は、治療組成物の全質量の約1%〜約50%(重量/重量)であってもよい(ここで、ターゲティング剤の質量は治療組成物の全質量に含まれる)。他の態様において、ターゲティング剤は、治療組成物の全質量の約10%〜約30%w/wであってもよい(同基準)。さらに他の態様において、ターゲティング剤は、治療組成物の全質量の約20%〜約40%w/wであってもよい(同基準)。
【0116】
種々の治療剤が、本明細書に記載の治療組成物に含まれてもよい。一部の態様において、治療剤の治療活性は、がん細胞の成長の抑制であってもよい。治療剤は、がん細胞の成長を直接および/または間接的に抑制してもよい。例えば、治療剤は直接がん細胞に作用することによって、アポトーシスを誘発してもよい。治療剤はまた、がん細胞を支持する1または2以上の線維芽細胞を標的とすることによって、がん細胞の成長を間接的に抑制してもよい。ある態様において、治療剤は細胞毒性を有してもよい。
【0117】
一部の態様において、治療剤の治療活性は、標的器官または組織内、例えば上記した標的器官または組織内での線維化の抑制を含んでもよい。例えば、治療剤は、標的器官または組織へ治療剤が送達されてから星細胞の活性化を抑制してもよい。「活性化」は、本明細書でこの用語を用いる場合、増大した増殖、ビタミンA濃度の減少、および/または、コラーゲン産生の増大を特徴とする星細胞の異常な状態を表現する。
【0118】
一部の態様において、治療剤は抗がん剤であってもよい。典型的な抗がん剤はパクリタキセルである。一部の態様において、治療剤は小分子剤であってもよい。これらの態様において、治療剤は、TGFベータ(TGFβ)インヒビター、マトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)プロモーター、肝細胞増殖因子(HGF)プロモーター、組織メタロプロテアーゼインヒビター(TIMP)生産インヒビター、ガンマ型ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体(PPARγ)リガンド、アンギオテンシン活性インヒビター、血小板由来増殖因子(PDGF)インヒビター、ナトリウムチャネルインヒビターおよびアポトーシス誘導物質から選択することができる。
【0119】
他の態様において、治療剤はアミノ酸を含んでもよい。これらの態様において、治療剤はsiRNA、DNA、RNAおよびアンチセンス核酸から選択され得る。ある態様において、治療剤はsiRNAであってもよい。一部の態様において、siRNAは5〜50塩基対、好ましくは10〜35塩基対、より好ましくは19〜27塩基対を有するRNAを含む。siRNAはまた、RNA/DNA混合分子またはタンパク質/RNA混合分子を含んでもよい。ある態様において、治療剤はコラーゲンの分泌を抑制してもよい。治療剤は、標的器官へ送達されてから、組織メタロプロテアーゼインヒビター(TIMP)または分子シャペロンの活性を実質的に抑制してもよい。一部の態様において、治療剤の標的組織への送達によって抑制される分子シャペロンは、コラーゲン特異的なもの、例えば熱ショックタンパク質47(HSP47)などであってもよい。
【0120】
治療組成物中に存在する治療剤の量は、広範囲にわたって異なってもよい。治療剤は、治療組成物の全質量の約25%〜約75%(重量/重量)であってもよい(ここで、治療剤の質量は治療組成物の全質量に含まれる)。他の態様において、治療剤は、治療組成物の全質量の約30%〜約60%w/wであってもよい(同基準)。さらに他の態様において、治療剤は、治療組成物の全質量の約40%〜約70%w/wであってもよい(同基準)。
【0121】
本明細書に開示する治療組成物は、種々の手法で調製することができる。本明細書に開示するターゲティング剤および/または治療剤の1または2以上は、静電結合を介して担体と作動可能に結合していてもよい。ある態様において、ターゲティング剤は、静電結合を介して担体と作動可能に結合していてもよい。同様に、治療剤は、静電結合を介して担体と作動可能に結合していてもよい。治療剤が担体と静電結合を介して結合している一部の態様において、治療剤はアミノ酸を含んでもよい。例えば、治療剤であるsiRNAは担体と静電的に結合していてもよい。
【0122】
あるいは、一部の態様において、剤の1または2以上は、共有結合を介して担体と作動可能に結合していてもよい。共有結合を介して作動可能に結合している場合、剤の1または2以上は担体に直接結合していてもよい。当業者に知られている種々のメカニズム、例えば縮合反応などを、1または2以上の剤と担体との間で共有結合を形成するのに用いることができる。担体に1または2以上の剤を直接結合するさらなる方法は当業者に知られており、本明細書に提供されるガイダンスが示すルーチンの実験によって特定することができる。
【0123】
一部の態様において、ターゲティング剤は、共有結合を介して担体と作動可能に結合していてもよい。例えば、非カチオン性ポリマー担体を用いる場合、レチノールと、本明細書に記載の1または2以上の繰り返し単位(例えば式(I)、(II)、(III)、(IV)および(V)など)とは、縮合反応を介して直接結合していてもよい。一部の態様において、治療剤は共有結合を介して担体と作動可能に結合していてもよい。例えば、抗癌剤が担体に直接結合していてもよい。ある態様において、パクリタキセルがC2’炭素に付着した酸素原子において、担体と作動可能に結合していてもよい。別の態様において、パクリタキセルがC7−炭素に付着した酸素原子において、担体と作動可能に結合していてもよい。一部の態様において、担体は、C2’炭素に付着した酸素原子および/またはC7−炭素に付着した酸素原子において付着したパクリタキセルを有していてもよい。
【0124】
他の態様において、本明細書に記載の1または2以上の剤は、連結基を介して担体と作動可能に結合していてもよい。連結基の例は、比較的低分子量の基、例えば、アミド、エステル、炭酸塩およびエーテルなど、ならびに、より高分子量の連結基、例えば、ポリ(エチレン)グリコール(PEG)などを含む。ある態様において、連結基は酸に不安定であってもよい。一部の態様において、担体の内側および/または外側部分または表面は、連結基を含ませるために修飾されていてもよい。1または2以上の連結基は、ターゲティング剤、治療剤および/または担体を互いに反応させるときに、連結基を形成する部分を含ませるために、ターゲティング剤、治療剤および担体の1または2以上を修飾することによって導入することができる。典型的な部分は二重結合である。修飾されたターゲティング剤、治療剤および/または担体は、次いで、当業者に既知の方法を用いて、例えば、ミカエル反応(J. March, Advanced Organic Chemistry 3rd Ed., pp. 711-712 (1985)参照)などを介して互いに反応させることができる。1または2以上の剤を担体に連結基を介して結合させるための別法は当業者に知られており、本明細書に提供されるガイダンスが示すルーチンの実験によって特定することができる。
【0125】
本明細書に開示する、治療剤と担体との作動可能な結合は、当業者に既知の複数の異なる手法で行うことができる。一部の態様において、作動可能な結合は、溶液中で行ってもよい。他の態様において、作動可能な結合は、固相で生じてもよい。治療剤と担体とを作動可能に結合するための1つの方法は、熱(例えばマイクロ波法を用いた熱など)を用いるものである。ある態様において、反応を約100℃〜約150℃の範囲の温度まで加熱することができる。別の態様において、材料を加熱する時間は、約5〜約40分の範囲である。必要に応じて、反応混合物は室温に冷却してもよい。これらの工程は、手動で、自動化されたシステムにより、または両者の組合わせにより行うことができる。
【0126】
一部の態様において、治療剤とターゲティング剤とは、別々に、または、組合わせて、担体と反応させ、混合物を形成してもよい。混合物は、好適な条件で処理し(例えばインキュベートし)、ターゲティング剤および/または治療剤が担体と作動可能に結合するようにしてもよい。望ましい場合には、剤の1つと担体とを、他の剤の添加の前に反応させることができる。いくつかの態様において、治療剤の添加の前に、ターゲティング剤と担体とを組合わせることができる。他の態様において、ターゲティング剤の添加の前に、治療剤と担体とを組合わせることができる。さらに他の態様において、ターゲティング剤と治療剤とを、ほぼ同時に担体と組合わせることができる。
【0127】
一部の態様において、ターゲティング剤および治療剤の1または2以上は、担体の形成の前に部分(ここで、該部分は担体の一部を形成する)と作動可能に結合させてもよい。典型的な部分は、脂質、糖、タンパク質またはペプチド前駆体(例えばアミノ酸または単糖など)、両親媒性分子、ポリマーまたはモノマーを含む。
【0128】
担体が非カチオン性ポリマー担体である一部の態様において、ターゲティング剤および/または治療剤は、非カチオン性ポリマー担体の一部を形成するのに用いるモノマーに付着させてもよい。非カチオン性ポリマー担体を形成するために、その後、モノマーを当業者に既知の方法を用いて重合させてもよい。例えば、ターゲティング剤および/または治療剤を、重合の前にグルタミン酸モノマーに付着させてもよい。結果として生じる、付着したターゲティング剤および/または治療剤を有するモノマーは、その後、非カチオン性ポリマー担体を形成するために、当業者に既知の方法を用いて重合させてもよい。
【0129】
他の態様において、ターゲティング剤および治療剤の1または2以上は、担体が形成された後に、担体と作動可能に結合してもよい。一部の態様において、担体は、それを治療剤と作動可能に結合する前に、ターゲティング剤と作動可能に結合してもよい。他の態様において、担体は、それを治療剤と作動可能に結合した後に、ターゲティング剤と作動可能に結合してもよい。一部の態様において、ターゲティング剤および治療剤の両方と、担体とを静電的に結合させてもよい。他の態様において、ターゲティング剤および治療剤の両方を、担体に共有結合してもよい。さらに他の態様において、1つのタイプの剤(例えばターゲティング剤または治療剤)を担体と静電的に結合させてもよく、他のタイプの剤(例えば治療剤またはターゲティング剤)を担体に共有結合してもよい。
【0130】
ナノ材料担体を用いる一部の態様において、ターゲティング剤および治療剤の1または2以上は、エマルジョン合成によりナノ材料担体と作動可能に結合してもよい。ある態様において、ターゲティング剤および治療剤の1または2以上は、二重エマルジョン溶媒拡散法、例えば水中油中水エマルジョン溶媒拡散法を介して、ナノ材料担体と作動可能に結合してもよい。別の態様において、エマルジョン蒸発法を用いてもよい。
【0131】
糖を含む生体構造担体は、ターゲティング剤および/または治療剤と、限定されずに、同時粉砕、混練、固体分散、溶媒蒸発、共沈、噴霧乾燥、マイクロ波加熱および凍結乾燥を含む様々な方法によって作動可能に結合することができる。同様に、生体構造担体がタンパク質またはペプチドである場合、生体構造担体をターゲティング剤および/または治療剤に作動可能に結合するのに様々な方法を用いることができる。剤をタンパク質またはペプチドと作動可能に結合する典型的な方法は、ソニケーション、キャビテーションおよび超音波乳化を含む。
【0132】
上記反応は、任意の好適な温度、例えば室温などで行なうことができる。当業者に一般的に知られた、および/または、本明細書に記載された適切な溶媒、カップリング剤、触媒、促進剤および/またはバッファーを、治療剤、ターゲティング剤および担体を作動可能に結合するために用いることができる。
【0133】
さらに、当業者に既知の好適な方法を用いて、治療組成物を単離および/または精製することができる。例えば、反応混合物を酸性の水溶液中で濾過することができる。次いで、形成されるあらゆる沈殿物を濾過し、水で洗浄することができる。任意に、沈殿物を当業者に既知の任意の好適な方法で精製することができる。例えば、沈殿物をアセトン中に移し、溶解することができ、得られる溶液を重炭酸ナトリウム溶液中で再度濾過することができる。必要に応じて、得られる反応溶液をセルロース膜を用いて水中で透析することができ、ポリマーを凍結乾燥および単離することができる。治療組成物の形成後、担体と作動可能に結合していないターゲティング剤または治療剤のあらゆる遊離量を測定してもよい。例えば、薄層クロマトグラフィー(TLC)を用いて、治療組成物において残存している遊離の治療剤が実質的に存在しないことを確認してもよい。
【0134】
ターゲティング剤および治療剤は、担体に対する種々の位置で担体と作動可能に結合していてもよい。かかる位置は固定的(例えば、担体の中央(middle)、末端または側鎖)であっても、相対的であってもよく、例えば、カチオンポリマー担体は特定の媒体(例えば水性媒体など)中で、内側部分および外側部分を有するような構造を示し得る。ある態様において、ターゲティング剤および治療剤の1または2以上は、担体の外側部分または外側表面と作動可能に結合していてもよい。一部の態様において、ターゲティング剤および治療剤の1または2以上は、担体の内側部分または内側表面と作動可能に結合していてもよい。ある態様において、ターゲティング剤および治療剤の1または2以上は、担体内に少なくとも部分的に包含されていてもよい。別の態様において、ターゲティング剤および治療剤の1または2以上は、担体内に実質的に完全に包含されていてもよい。
【0135】
担体が非カチオン性ポリマー担体である一部の態様において、ターゲティング剤および治療剤の1または2以上は、非カチオン性ポリマー担体の側鎖部分と作動可能に結合していてもよい。他の態様において、ターゲティング剤および治療剤の1または2以上は、非カチオン性ポリマー担体の一端または末端繰り返し単位と作動可能に結合していてもよい。さらに別の態様において、ターゲティング剤および治療剤の1または2以上は、非カチオン性ポリマー担体の中央と作動可能に結合していてもよい。さらにまた別の態様において、ターゲティング剤および治療剤の1または2以上は、非カチオン性ポリマー担体の骨格と作動可能に結合していてもよい。
【0136】
担体がリポソーム担体である一部の態様において、ターゲティング剤および治療剤の1または2以上は、脂質二重層内に、部分的にまたは完全に包含されていてもよい。例えば、ターゲティング剤および/または治療剤は、リポソーム担体の脂質二重層の2枚の脂質層の間に、部分的にまたは完全に包含されていてもよい。
【0137】
担体が樹枝状担体である一部の態様において、ターゲティング剤の1または2以上は、樹枝状担体の分枝の外側部分と作動可能に結合していてもよい。一部の態様において、ターゲティング剤および治療剤の1または2以上は、分枝の内側部分または樹枝状担体のコアと作動可能に結合していてもよい。
【0138】
担体が、ナノ材料担体、生体構造担体およびミセル担体から選択される一部の態様において、ターゲティング剤および治療剤の1または2以上は、担体の外側表面と作動可能に結合していてもよい。別の態様において、ターゲティング剤および治療剤の1または2以上は、担体の内側表面と作動可能に結合していてもよい。例として、ターゲティング剤および治療剤の1または2以上は、担体内に、部分的にまたは完全に被包されていてもよい。
【0139】
一部の態様において、ある1つのタイプの剤(例えば、治療剤またはターゲティング剤)がある1つの部分で担体と作動可能に結合している一方で、別のタイプの剤(例えば、治療剤またはターゲティング剤)が別の部分で担体と作動可能に結合していてもよい。例えば、ターゲティング剤は担体の外側部分または外側表面と作動可能に結合していてもよく、かつ、治療剤は担体の内側部分または内側表面と作動可能に結合していてもよい。代替的に、担体の外側部分または外側表面と作動可能に結合していてもよく、かつ、ターゲティング剤は担体の内側表面または内側部分、例えばコアなどと作動可能に結合していてもよい。他の態様において、ある1つのタイプの剤(例えば、治療剤またはターゲティング剤)は、ほぼ同じ部分で担体と作動可能に結合していてもよい。例えば、両方の剤が、担体の内側部分または内側表面と結合していてもよい。代替的に、両方の剤は、担体の外側部分または外側表面と結合していてもよい。剤の1または2以上が内側部分または内側表面と結合しているとき、各々の剤は担体内に部分的または完全に被包されていてもよい。当業者は、結合の場所および向きが、特定のターゲティング剤、治療剤および担体の特性に応じて変わり得ることを理解している。
【0140】
本明細書に開示するポリマー非カチオン性担体は、上述のものに加え、様々な方法によって調製することができる。本明細書に開示する担体の多く、例えばPGA、PGGAおよびPLGAなどは、商業的に入手できるか、または当業者に既知の方法を用いて調製することができる。
【0141】
本明細書に開示するリポソーム担体は、例えば、NDF CorporationからCoatsome ELの商標名で入手することができる。あるいは、本明細書に開示するリポソーム担体は、当業者に既知の方法を用いて調製することができる。例えば、その全体を本明細書に援用するLiposome Technology, 3d Ed., Informa Healthcare, New York (2006)を参照。
【0142】
樹枝状担体は、様々な給源、例えばDendritech, Midland, Michiganなどから商業的に入手できる。代替的に、本明細書に開示する樹枝状担体は、当業者に既知の方法を用いて調製することができ、これは限定されずに、ダイバージェント合成およびコンバージェント合成を含む。例えば、J. Peterson, et al., Synthesis and CZE Analysis of PAMAM Dendrimers with an Ethylenediamene Core, Proc. Estonian Acad. Sci. Chem., 50(3):156-166 (2001)、CJ. Hawker, J.M.J. Frechet, Preparation of Polymers with Controlled Molecular Architecture, A New Convergent Approach to Dendritic Macromolecules, J. Am. Chem. Soc. 112: 7638-7647 (1990)参照。
【0143】
本明細書に開示するナノ材料担体は、様々な方法に従って調製することができる。本明細書に開示するナノ材料担体の多く、例えば、PLGA、金ナノ粒子およびカーボンナノチューブなどは、商業的に入手できるか、または当業者に既知の方法を用いて調製することができる。カーボンナノチューブは、例えば、商業的給源から得ることができるか、または、限定されずに、アーク放電、レーザアブレーション、高圧一酸化炭素および化学蒸着を含む様々な方法によって調製することができる。
【0144】
本明細書に開示する生体構造担体は商業的に入手できるか、または当業者に既知の方法を用いて調製することができる。例えば、シクロデキストリンおよびその多くの誘導体は、様々な給源、例えばCyclodextrin Technologies Development, Inc., High Springs, Floridaなどから商業的に入手できる。任意の様々な方法を、タンパク質を発現、精製および生成するために用いることができる。タンパク質を発現、精製および生成する方法は当該技術分野で既知であり、タンパク質を発現、精製および生成する方法を説明する特定の目的のために本明細書に援用するCurrent Protocols in Protein Science, John Wiley and Sons, Inc. (2007)に例示されている。アルブミンナノ粒子の調製のための方法は、当業者に知られていよう。例えば、Das, Saikat, et al., Aspirin Loaded Albumin Nanoparticles by Coacervation: Implications in Drug Delivery, Trends Biomater. Artif. Organs, 18(2):203-212 (2005)。
【0145】
本明細書に開示するミセル担体は商業的に入手できるか、または当業者に既知の方法を用いて調製することができる。当業者は、多くのミセル担体が、その出発両親媒性分子、例えば脂質および/またはポリマーなどから、両親媒性分子の臨界ミセル濃度(cmc)および臨界ミセル温度(cmt)で自己組織化し得ることを理解している。
【0146】
本明細書に開示するターゲティング剤は、商業的に入手できるか、または当業者に既知の方法によって製造することができる。さらに、本明細書に開示する治療剤は、当業者に既知の種々の方法によって調製することができる。特定の治療剤、例えばパクリタキセルは、商業的に入手できる。いくつかの態様において、治療剤は、核酸、例えばsiRNA、DNA、RNAまたはアンチセンス核酸などを含んでもよい。いくつかの態様において、核酸は特定の分子の分解を促進するために特異的に適合していてもよい。かかる分子は、例えば、組織メタロプロテアーゼインヒビター(TIMP)または分子シャペロンであってもよい。治療剤の標的器官または組織への送達によって抑制される分子シャペロンは、コラーゲン特異的なもの、例えば熱ショックタンパク質47(HSP47)などであってもよい。いくつかの態様において、siRNAはHSP47を認識するための特定の配列を考慮して設計されていてもよい。当業者は、このようにして核酸を設計する種々の技法が利用でき、化学的に合成された核酸が商業的に入手できることを認識する。
【0147】
別の態様は、本明細書に記載の1または2以上の治療組成物を含むことができ、かつ、薬学的に許容し得る賦形剤、医薬担体(本明細書に記載の担体と区別し得る)および希釈剤から選択される少なくとも1つをさらに含む医薬組成物を提供する。いくつかの態様において、本明細書に開示する化合物のプロドラッグ、代謝産物、立体異性体、水和物、溶媒和物、多形および薬学的に許容し得る塩(例えばターゲティング剤と治療剤とを含み得る治療組成物)が提供される。
【0148】
医薬製剤の製造が医薬賦形剤と塩形態の有効成分との均質な混合を伴う場合、非塩基性の医薬賦形剤、すなわち酸性または中性の賦形剤を用いるのが望ましいことがある。
【0149】
種々の態様において、本明細書に開示される組成物(例えば、ターゲティング剤と治療剤とを含み得る治療組成物)は、単独で、本明細書に開示される他の化合物と組み合わせて、または、本明細書に記載の治療領域で活性を有する1または2以上の他の剤と組み合わせて用いることができる。
【0150】
別の側面において、本開示は、1または2以上の生理学的に許容し得る界面活性剤、医薬担体、希釈剤、賦形剤、平滑剤、懸濁化剤、皮膜形成物質および被覆助剤またはこれらの組合わせと、本明細書に開示する組成物(例えばターゲティング剤と治療剤とを含み得る治療組成物)とを含む医薬組成物に関する。治療用の許容し得るさらなる医薬担体または希釈剤は医薬分野でよく知られており、例えば、その全体を本明細書に援用するRemington's Pharmaceutical Sciences, 18th Ed., Mack Publishing Co., Easton, PA (1990)に記載されている。防腐剤、安定化剤、染料、甘味料、フレグランス、着香料などを、医薬組成物に供給してもよい。例えば、安息香酸ナトリウム、アスコルビン酸およびp−ヒドロキシ安息香酸のエステルを、防腐剤として添加することができる。さらに、酸化防止剤および懸濁化剤を用いることができる。種々の態様において、アルコール、エステル、硫酸化脂肪族アルコールなどを界面活性剤として用いてもよく、スクロース、グルコース、ラクトース、デンプン、結晶セルロース、マンニトール、軽質無水ケイ酸塩、アルミン酸マグネシウム、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、合成ケイ酸アルミニウム、炭酸カルシウム、酸性炭酸ナトリウム、リン酸水素カルシウム、カルボキシメチルセルロースカルシウムなどを賦形剤として用いてもよく、ステアリン酸マグネシウム、タルク、硬化油などを平滑剤として用いてもよく、ココナッツ油、オリーブ油、ゴマ油、落花生油、大豆油を懸濁化剤または滑沢剤として用いてもよく、炭水化物(例えばセルロースまたは糖など)の誘導体としての酢酸フタル酸セルロース、またはポリビニルの誘導体としてのメチルアセテート−メタクリレートコポリマーを懸濁化剤として用いてもよく、フタル酸エステルなどの可塑剤などを懸濁化剤として用いてもよい。
【0151】
用語「医薬組成物」は、本明細書に開示する組成物(例えばターゲティング剤と治療剤とを含み得る治療組成物)と、他の化学成分、例えば希釈剤またはさらなる医薬担体との混合物を指す。医薬組成物は、化合物の生体への投与を容易にする。医薬組成物を投与する複数の技術が当該技術分野に存在し、これは、限定されずに、経口、注射、エアゾール、非経口および局所(topical)投与を含む。医薬組成物はまた、化合物を、無機または有機酸、例えば、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、サリチル酸などと反応させることによって得ることができる。
【0152】
用語「医薬担体」は、本担体とは異なる、これに追加される第2の化学物質であって、化合物の細胞または組織への組み込みを容易にするものを指す。例えば、ジメチルスルホキシド(DMSO)は、それが生体の細胞または組織内への多くの有機化合物の取り込みを容易にすることから、一般に用いられている担体である。
【0153】
用語「希釈剤」は、水中の希釈された化学物質であって、対象とする組成物(例えばターゲティング剤と治療剤とを含み得る治療組成物)を溶解するとともに、化合物の生物学的に活性な形態を安定化するものを指す。緩衝溶液に溶解した塩類は、当該技術分野で希釈剤として利用される。一般的に用いられている緩衝溶液の1つはリン酸緩衝生理食塩水だが、これはそれがヒト血液の塩条件を模倣しているからである。緩衝塩は低濃度で溶液のpHを制御することができるため、緩衝希釈剤は化合物の生物学的活性をほとんど変更しない。本明細書で用いる場合、「賦形剤」は、組成物に、限定されずに、嵩高さ、粘稠性、安定性、結合能力、滑沢性、崩壊能力などを提供するために組成物に添加される不活性物質を指す。「希釈剤」は、賦形剤の一種のである。
【0154】
用語「生理学的に許容し得る」は、化合物の生物学的活性および特性を無効にしない医薬担体または希釈剤を指す。
【0155】
本明細書に記載の医薬組成物は、ヒト患者にそれ自体で、または、医薬組成物中、併用療法のように他の有効成分と、または好適な医薬担体または1または2以上の賦形剤と混合して投与することができる。本出願の化合物の製剤化および投与のための技法は、"Remington's Pharmaceutical Sciences," Mack Publishing Co., Easton, PA, 18th edition, 1990に見出すことができる。
【0156】
好適な投与経路は、例えば、経口投与、直腸投与、経粘膜投与、局所投与または腸投与、筋肉内注射、皮下注射、静脈内注射、骨髄内注射、ならびに、髄腔内注射、直接脳室内注射、腹腔内注射、鼻腔内注射、または眼内注射を含む非経口送達を包含する。化合物(例えばターゲティング剤と治療剤とを含み得る治療組成物)はまた、デポ注射、浸透圧ポンプ、ピル、経皮パッチ(エレクトロトランスポートパッチを含む)などを含む、持続性または制御放出剤形で、所定の速度での、長期間および/または持続的な、パルス状の投与のために投与することができる。
【0157】
医薬組成物は、それ自体知られた方法で、例えば、慣用の混合、溶解、造粒、糖衣剤作製、粉末化、乳化、カプセル化、封入または打錠処理によって製造することができる。
【0158】
医薬組成物は、活性化合物を医薬的に用いることができる製剤に加工するのを容易にする賦形剤および助剤を含む、1または2以上の生理学的に許容し得る医薬担体を用いて、任意の慣用の手法で製剤することができる。適した製剤は、選択する投与経路によって異なる。任意の周知の技法、医薬担体および賦形剤を、当該技術分野において、例えば、上記Remington's Pharmaceutical Sciencesにおいて適切なように、かつ理解されているように用いることができる。
【0159】
注射剤は、溶液または懸濁液として、注射前に液体に溶解または懸濁するのに適した固体形態として、またはエマルジョンとして、慣用の形態に調製することができる。好適な賦形剤は、例えば、水、食塩水、デキストロース、マンニトール、ラクトース、レシチン、アルブミン、グルタミン酸ナトリウム、塩酸システインなどである。さらに、注射可能な医薬組成物は、必要に応じて、少量の無毒性補助物質、例えば湿潤剤、pH緩衝剤などを含んでもよい。生理学的に適合するバッファーは、限定されずに、ハンクス液、リンゲル液または生理食塩水バッファーを含む。必要に応じて、吸収増強製剤を利用してもよい。
【0160】
経粘膜投与のために、透過すべき障壁に適した浸透剤を製剤に用いてもよい。
【0161】
非経口投与、例えばボーラス注射または持続注入などによる非経口投与のための医薬製剤は、水溶性形態の活性化合物の水溶液を含む。また、活性化合物の懸濁液は、適切な油性注射懸濁液として調製することができる。水性の注射懸濁液は、懸濁液の粘性を高める物質、例えばカルボキシルメチルセルロースナトリウム、ソルビトールまたはデキストランなどを含んでもよい。任意に、懸濁液はまた、高度に濃縮された溶液の調製を可能にするために、好適な安定化剤、または、化合物の溶解性を高める剤を含んでもよい。注射用製剤は、単位投与形態で、例えば、アンプルまたは多回投与容器中に、添加された保存剤とともに提供することができる。組成物は油性または水性ビヒクル中の懸濁液、溶液またはエマルジョンなどの形態をとってもよく、製剤用物質、例えば、懸濁化剤、安定化剤および/または分散剤などを含んでいてもよい。あるいは、有効成分は、使用の前に好適なビヒクル、例えば無菌のパイロジェンフリー水などによる構成のために粉末形態であってもよい。
【0162】
経口投与のために、対象となる組成物(例えばターゲティング剤と治療剤とを含み得る治療組成物)を当該技術分野で周知の薬学的に許容し得る担体と組み合わせることによって、組成物を容易に製剤することができる。上記で開示した1種または2種以上の担体に加えて用いることができるかかる医薬担体により、組成物を、処置する患者による経口摂取用の錠剤、ピル、糖衣剤、カプセル、液剤、ゲル剤、シロップ剤、スラリー剤、懸濁剤などとして製剤化することが可能となる。経口用途のための医薬製剤は、活性化合物を固形賦形剤と組合わせ、得られる混合物を任意に粉砕し、顆粒の混合物を、必要に応じて好適な助剤を添加した後に、錠剤または糖衣剤コアを得るために処理することにより得ることができる。好適な賦形剤は、特に、充填剤、例えば、ラクトース、スクロース、マンニトールまたはソルビトールを含む糖など、セルロース調製物、例えばトウモロコシデンプン、小麦デンプン、米デンプン、ジャガイモデンプン、ゼラチン、トラガカントガム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウムおよび/またはポリビニルピロリドン(PVP)などである。必要に応じて、崩壊剤、例えば、架橋ポリビニルピロリドン、寒天、またはアルギン酸もしくはその塩、例えばアルギン酸ナトリウムなどを添加してもよい。糖衣剤のコアは、好適なコーティングを備えている。この目的のために、濃縮した糖液を用いることができ、これは、任意に、アラビアゴム、タルク、ポリビニルピロリドン、カルボポールゲル、ポリエチレングリコール、および/または二酸化チタン、ラッカー溶液、および好適な有機溶媒または溶媒混合物を含んでもよい。染料または顔料を、識別のため、または、活性化合物用量の異なる組合わせを特徴づけるために、錠剤または糖衣剤コーティングに加えてもよい。この目的のために、濃縮した糖液を用いることができ、これは、任意に、アラビアゴム、タルク、ポリビニルピロリドン、カルボポールゲル、ポリエチレングリコール、および/または二酸化チタン、ラッカー溶液、および好適な有機溶媒または溶媒混合物を含んでもよい。染料または顔料を、識別のため、または、活性化合物用量の異なる組合わせを特徴づけるために、錠剤または糖衣剤コーティングに加えてもよい。
【0163】
経口で用いることができる製剤は、ゼラチン製のプッシュフィットカプセル、ならびに、ゼラチンおよび可塑剤(例えば、グリセロールまたはソルビトールなど)で作製されたシールされたソフトカプセルを含む。プッシュフィットカプセルは、充填剤、例えば、ラクトースなど、結合剤、例えば、デンプンなど、および/または、滑沢剤、例えば、タルクまたはステアリン酸マグネシウムなど、および任意に安定化剤と混合された有効成分を含み得る。ソフトカプセルにおいて、活性化合物は、好適な液体、例えば脂肪油、流動パラフィンまたは液体ポリエチレングリコールなどの中に溶解または懸濁していてもよい。さらに、安定化剤を添加してもよい。経口投与のための全ての製剤は、かかる投与に適した投薬量であるべきである。
【0164】
バッカル投与のために、組成物は、慣用の手法で製剤された錠剤またはロゼンジ剤の形態をとってもよい。
【0165】
吸入による投与のために、組成物は、加圧パック(pressurized pack)またはネブライザーから、好適なプロペラント、例えばジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン、二酸化炭素または他の好適なガスにより、エアゾールスプレー物の形態で有利に送達することができる。加圧エアゾールの場合、投薬単位は、計量された量を放出するためのバルブを提供することにより決定することができる。吸入器またはインサフレーターに用いるカプセルおよびカートリッジ、例えばゼラチン製のものは、例えば、化合物と好適な粉末基剤、例えばラクトースまたはデンプンなどの粉末混合物を含んだ製剤としてもよい。
【0166】
本明細書でさらに開示されるのは、眼内、鼻腔内、および耳介内送達を含む用途について医薬分野においてよく知られた種々の医薬組成物である。これらの用途のための好適な浸透剤は、当該技術分野で一般的に知られている。かかる好適な医薬製剤は、ほとんどの場合、そして、好ましくは、無菌、等張、かつ安定性および快適性のために緩衝された製剤として製造される。鼻腔内送達のための医薬組成物はまた、通常の線毛作用の維持を保証するために多くの点で鼻内分泌物を模するようにしばしば調製されている点鼻剤およびスプレーを含んでもよい。その全体を本明細書に援用するRemington's Pharmaceutical Sciences, 18th Ed., Mack Publishing Co., Easton, PA (1990)に開示されているとおり、および、当業者に周知のとおり、好適な製剤は、ほとんどの場合、そして、好ましくは等張であり、5.5〜6.5のpHを維持するためにわずかに緩衝されており、ほとんどの場合、そして、好ましくは抗菌保存剤および適切な薬物安定化剤を含む。耳介内の送達のための医薬製剤は、耳内での局所適用のための懸濁剤および軟膏を含む。かかる耳用製剤のための一般的な溶媒は、グリセリンおよび水を含む。
【0167】
組成物はまた、直腸組成物、例えば坐剤または保持浣腸などに製剤することができ、これは、例えば、慣用の坐剤基剤、例えばココアバターまたは他のグリセリドなどを含む。
【0168】
前述の製剤に加えて、組成物はまた、デポ製剤として製剤化してもよい。かかる長時間作用製剤は、移植(例えば皮下もしくは筋肉内)によって、または筋肉内注射によって投与することができる。したがって、例えば、化合物は、好適なポリマー材料または疎水性材料(例えば、許容し得る油中のエマルジョンとして)またはイオン交換樹脂とともに、または、難溶性誘導体として、例えば、難溶性塩として製剤化してもよい。
【0169】
疎水性化合物に関して、好適な医薬担体は、ベンジルアルコール、非極性界面活性剤、水混和性有機ポリマーと、水相とを含む共溶媒系であってもよい。用いられる一般的な共溶媒系は、3%w/vのベンジルアルコール、8%w/vの非極性界面活性剤ポリソルベート80TM、および65%w/vのポリエチレングリコール300とを含み、無水エタノールで体積を合わせた溶液である、VPD共存溶媒系である。当然ながら、共存溶媒系の比率は、その溶解性および毒性の特徴を損なうことなく、相当に多様であってもよい。さらにまた、共溶媒成分の同一性(identity)は多様であってもよい。例えば、他の低毒性非極性界面活性剤を、ポリソルベート80TMの代わりに用いてもよく、ポリエチレングリコールのフラクションサイズは多様であってもよく、ポリエチレングリコールを他の生体適合性ポリマー、例えばポリビニルピロリドンに置き換えてもよく、デキストロースを、他の糖または多糖に置換してもよい。
【0170】
本明細書に記載されるのは、本明細書に記載の治療組成物の治療有効量を投与することを含み得る、異常な線維化によって特徴づけられる状態を処置する方法である。異常な線維化によって特徴づけられる状態は、がんおよび/または線維性疾患を含んでもよい。本明細書に記載の治療組成物によって処置または改善することができるがんの種類は、限定されずに、肺がん、膵がん、乳がん、肝がん、胃がんおよび大腸がんを含む。ある態様において、処置または改善することができるがんは、膵がんである。別の態様において、処置または改善することができるがんは、肺がんである。本明細書に記載の治療組成物によって処置または改善することができる線維性疾患の種類は、限定されずに、肝線維症、肝硬変、膵炎、膵線維症、嚢胞性線維症、声帯瘢痕化、声帯粘膜線維症、喉頭線維症、肺線維症、特発性肺線維症、嚢胞性線維症、骨髄線維症、後腹膜線維症および腎性全身性線維症を含む。ある態様において、処置または改善することができる状態は、肝線維症である。
【0171】
本明細書に記載の組成物または医薬組成物は、対象に任意の好適な手段で投与することができる。投与方法の非限定例は、なかでも、活性化合物を生体組織と接触させるために当業者が適切と考える、(a)経口経路を介した投与(当該投与は、カプセル、錠剤、顆粒、スプレー、シロップなどの形態での投与を含む)、(b)非経口経路を介した投与、例えば、直腸投与、膣内投与、尿道内投与、眼内投与、鼻腔内投与または耳介内投与など(当該投与は、水性懸濁液もしくは油性製剤などとしての、または、滴剤、スプレー、坐薬、膏薬、軟膏などとしての投与を含む)、(c)注射、例えば、皮下注射、腹腔内注射、静脈内注射、筋肉内注射、皮内注射、眼窩内注射、嚢内注射、脊髄内注射、胸骨内注射など(注入ポンプ送達を含む)、(d)局部(locally)投与、例えば、腎臓または心臓領域における直接注射、例えば、デポ移植によるもの、ならびに(e)局所投与を含む。
【0172】
投与に適した医薬組成物は、有効成分がその意図される目的を達成するために有効な量で含まれる組成物を含む。用量として要求される本明細書に開示する化合物の治療有効量は、投与経路、処置する動物種(ヒトを含む)、および対象とする特定の動物の身体的特徴に依存する。用量は所望の効果を達成するように調整することができるが、重量、食事、併用薬物などの要因、および医学分野の当業者が認識する他の要因に依存する。より具体的には、治療有効量は、疾患の徴候を予防、緩和もしくは改善するか、処置する対象の生存を延長するのに有効な化合物の量を意味する。治療有効量の決定は、特に本明細書に提供される詳細な開示を考慮すれば、十分に当業者の能力の範囲内である。
【0173】
当業者に直ちに明らかなように、投与すべき有用なin vivoの投薬量および投与の特定の方法は、年齢、重量および処置する哺乳動物種、用いる特定の化合物、およびこれらの化合物を用いる特定の用途によって異なる。有効投薬量レベル、すなわち所望の結果を達成するのに必要な投薬量レベルの決定は、当業者が通常の薬理学的方法を用いて行なうことができる。典型的には、製剤のヒト臨床適用は低い投薬量レベルで開始し、所望の効果が達成されるまで投薬量レベルを増大させる。あるいは、確立した薬理学的方法を用いた許容し得るin vitro実験を、本方法によって特定された組成物の有用な用量および投与経路を確立するのに用いることができる。
【0174】
非ヒト動物試験において、潜在的製剤の適用は高い投薬量レベルで開始し、所望の効果もはや達成されなくなるまで、または副作用が消失するまで投薬量レベルを低減させる。投薬量は、所望の効果および治療適応に応じて広い範囲に及んでもよい。典型的に、投薬量は、約10マイクログラム/kg〜約100mg/体重kg、好ましくは約100マイクログラム/kg〜10mg/体重kgであってもよい。あるいは、当業者によって理解されるように、投薬量は患者の表面積に基づいて計算してもよい。
【0175】
医薬組成物のための正確な剤形、投与経路および投薬量は、個々の医師が患者の状態を考慮して選択することができる。(例えば、その全体を本明細書に援用する, in "The Pharmacological Basis of Therapeutics"におけるFingl et al. 1975、特に第1章、第1頁を参照)。典型的には、患者に投与される組成物の用量範囲は、約0.5〜約1000mg/患者体重kgであってもよい。投薬量は、患者の必要に応じて、1日または2日間以上の間に与えられる、単回のものであっても、一連の2回または3回のものであってもよい。化合物のヒトの投薬量が少なくともいくつかの状態に対して確立されている場合、投薬量はほぼ同じであるか、または、確立されたヒトの投薬量の約0.1%〜約500%、より好ましくは25%〜約250%である投薬量である。ヒトの投薬量が確立されていない場合、例えば、新規に見出された医薬組成物などの場合、好適なヒトの投薬量は、ED50もしくはID50値、または、動物における毒性試験および有効性試験によって認定された、in vitroまたはin vivo試験に由来する他の適切な値から推定することができる。
【0176】
主治医が、毒性または臓器機能不全によって、どのように、および、いつ投与を終了するか、中断するか、調整するかを知っている点に留意する必要がある。逆に、主治医は、臨床効果が適切ではない(毒性を除く)場合に、処置をより高いレベルに調整することも知っている。対象となる障害の管理における投与量の程度は、処置する状態の重篤度および投与経路によって異なる。状態の重篤度は、例えば、部分的に、標準的な予後評価方法によって評価することができる。さらに、用量およびおそらく投与頻度もまた、個々の患者の年齢、体重および反応によって異なる。上記で論じたのと同等の手法を、獣医学で用いることができる。
【0177】
正確な投薬量は薬物ごとに決定するが、ほとんどの場合、投薬量に関するある程度の一般化を行なうことができる。成人ヒト患者のための1日の投薬レジメンは、例えば、約0.1mg〜2000mg、好ましくは約1mg〜約500mg、例えば5〜200mgの各々の有効成分の経口用量であってもよい。他の態様において、約0.01mg〜約100mg、好ましくは約0.1mg〜約60mg、例えば約1〜約40mgの各々の有効成分の静脈内、皮下、筋肉内用量を用いる。薬学的に許容し得る塩の投与の場合、投薬量は遊離塩基として計算することができる。いくつかの態様において、組成物は1日あたり1〜4回投与される。あるいは、組成物は、静脈内持続点滴によって、好ましくは約1000mg/日までの各々の有効成分の用量で投与することができる。当業者によって理解されるように、特定の状況において、特に悪性の疾患または感染症を効果的かつアグレッシブに治療するために、本明細書に開示する化合物を、上記の好ましい投薬量範囲を超える量、さらにはそれをはるかに超える量で投与しなければならないことがある。いくつかの態様において、化合物は、持続治療の期間中、例えば1週間もしくはそれ以上、または数ヶ月もしくは数年にわたって投与される。
【0178】
投薬量および投薬間隔は、調節効果、または最小有効濃度(MEC)を維持するのに十分な活発部分の血漿レベルをもたらすために、個々に調整することができる。MECは各々の化合物について異なるが、in vitroデータから推定することができる。MECを達成するのに必要な投薬量は、個々の特徴および投与経路に依存する。しかしながら、HPLCアッセイまたはバイオアッセイを、血漿濃度を決定するのに用いることができる。
【0179】
投薬間隔はまた、MEC値を用いて決定することができる。組成物は、10〜90%、好ましくは30〜90%、および最も好ましくは50〜90%の時間、血漿レベルをMECより上に維持するレジメンで投与すべきである。
【0180】
局部投与または選択的取り込みの場合、薬物の有効な局部濃度は、血漿濃度と関連しないことがある。
【0181】
投与する組成物の量は、処置する対象、対象の重量、苦痛の重篤度、投与の様式、および処方医の判断に依存し得る。
【0182】
本明細書に開示される組成物(例えばターゲティング剤と治療剤とを含み得る治療組成物)は、既知の方法を用いて、有効性および毒性について評価することができる。例えば、特定の化合物、または、特定の化学部分を共有する化合物のサブセットの毒性学は、細胞系、例えば哺乳動物などの細胞系、好ましくはヒト細胞系に対するin vitro毒性を決定することにより確立することができる。かかる試験の結果は、しばしば、動物、例えば哺乳動物など、またはより具体的にはヒトにおける毒性を予測するものである。あるいは、動物モデル、例えばマウス、ラット、ウサギまたはサルなどにおける特定の化合物の毒性は、既知の方法を用いて測定することができる。特定の化合物の有効性は、いくつかの認められた方法、例えばin vitro方法、動物モデルまたはヒト臨床試験などによって確立することができる。認められたin vitroモデルは、限定することなく、がん、心血管疾患および種々の免疫機能障害を含む、ほとんどすべての種類の状態について存在する。同様に、許容し得る動物モデルは、かかる状態を処置するための化学品の有効性を確立するのに用いることができる。有効性を決定するためにモデルを選択する場合、当業者は、従来技術に基づいて、適切なモデル、用量および投与経路、ならびにレジメンを選ぶことができる。当然ながら、ヒト臨床試験によってヒトにおける化合物の有効性を決定することができる。
【0183】
組成物は、必要に応じて、有効成分を含む1個または2個以上の単位投薬形態を含み得るパックまたはディスペンサー装置中に提供することができる。パックは、例えば、金属またはプラスチックのホイル、例えばブリスターパックなどを含み得る。パックまたはディスペンサー装置には、投与のために指示が付属していてもよい。パックまたはディスペンサーにはまた、医薬の製造、使用または販売を規制する政府機関が規定する様式の、容器に関連した通知が付属していてもよく、この通知は、ヒトまたは獣医学的な投与のための薬物形態に対する当局による承認を反映したものである。かかる通知は、例えば、米国食品医薬品局により承認された処方薬についてのラベルまたは製品説明書であってもよい。適合性のある医薬担体中に製剤化された化合物を含む組成物もまた、調製され、好適な容器内に入れられ、指示された状態の処置のためにラベルすることができる。
【実施例】
【0184】
以下の例は、本明細書に記載の態様をさらに説明する目的で提供するものであり、発明の範囲を制限するものではない。
【0185】
例1
ポリ−L−グルタミン酸(PGA)−レチノール組成物を、図1に示す一般的なスキームに従い、以下のようにして調製した。ポリ−L−グルタミン酸(PGA、200mg)をDMF(10mL)に溶解した。レチノール(10mg)およびEDC(30mg)およびDMAP(5mg)を溶液に添加した。溶液を、5分間マイクロ波条件下に置いた。反応混合物を0.2NのHCl溶液に注いだ。白色沈殿を遠心分離で単離した。沈殿物を、0.5Mの重炭酸ナトリウム溶液に再溶解した。溶液を、水に対する透析下に置いた。生成物PGA−レチノールを凍結乾燥した。生成物の同一性は、H−NMRによって確認した。また同様の生成物(PGA−レチノール)を5mgのレチノールから出発して得、H−NMRによって確認した。
【0186】
例2
ポリ(L−γ−グルタミルグルタミン)(PGGA)−レチノール組成物を、図2に示す一般的なスキームに従い、以下のようにして調製した。ポリ(L−γグルタミルグルタミン)(PGGA、200mg)をDMF(10mL)に溶解した。レチノール(5mg)およびEDC(30mg)およびDMAP(5mg)を溶液に添加した。溶液を、5分間マイクロ波条件下に置いた。反応混合物を0.2NのHCl溶液に注いだ。白色沈殿を遠心分離で単離した。沈殿物を、0.5Mの重炭酸ナトリウム溶液に再溶解した。溶液を、水に対する透析下に置いた。PGGA−レチノール生成物を凍結乾燥した。生成物の同一性は、H−NMRによって確認した。
【0187】
例3
パクリタキセルPGA−レチノール組成物を、図3に示す一般的なスキームに従い、以下のようにして調製した。例1からのPGA−レチノール(150mg)を、0.2NのHCl溶液で酸性化した。PGA−レチノールの酸形態を遠心分離によって単離し、凍結乾燥した。次いでこの酸形態(100mg)をDMF(10mL)に溶解した。パクリタキセル(10mg)、EDC(30mg)およびDMAP(5mg)を溶液に添加した。溶液を、5分間マイクロ波条件下に置いた。反応混合物を0.2NのHCl溶液に注いだ。白色沈殿を遠心分離で単離した。沈殿物を、0.5Mの重炭酸ナトリウム溶液に再溶解した。溶液を、水に対する透析下に置いた。生成物を凍結乾燥した。生成物の同一性は、H−NMRによって確認した。
【0188】
例4
パクリタキセルPGGA−レチノール組成物を、図4に示す一般的なスキームに従い、以下のようにして調製した。例2からのPGGA−レチノール(150mg)を、0.2NのHCl溶液で酸性化した。PGGA−レチノールの酸形態を遠心分離によって単離し、凍結乾燥した。次いでこの酸形態(100mg)をDMF(10mL)に溶解した。パクリタキセル(10mg)、EDC(30mg)およびDMAP(5mg)を溶液に添加した。溶液を、5分間マイクロ波条件下に置いた。反応混合物を0.2NのHCl溶液に注いだ。白色沈殿を遠心分離で単離した。沈殿物を、0.5Mの重炭酸ナトリウム溶液に再溶解した。溶液を、水に対する透析下に置いた。生成物を凍結乾燥した。生成物の同一性は、H−NMRによって確認した。
【0189】
例5
テキサスレッド−ポリ(L−グルタミン酸)−コレステロール(TR−PGA−コレステロール)の合成
ポリ(L−グルタミン酸)(PGA、99.7mg)を50mLの丸底フラスコに入れた。無水DMF(15mL)をフラスコに添加し、懸濁物を30分間撹拌した。コレステロール(5.9mg)、EDC(10.7mg)および微量のDMAPを添加した。混合物を40時間撹拌した。テキサスレッド(1mLのDMF中に1mg)、EDC(300μL、5mg/mL DMF)およびHOBt(300μL、1mg/mL DMF)を、反応混合物に添加した。混合物を15時間撹拌した。次いで反応混合物を0.2N HCl水溶液(75mL)に注いだ。得られた混合物を遠心管に移し、遠心分離した。上清を廃棄した。固形物を0.5N NaHCO水溶液(約60mL)に溶解した。溶液を脱イオン水に対して透析し、0.45μmの酢酸セルロースシリンジフィルターで濾過し、凍結乾燥した。TR−PGA−コレステロール(90mg)を得、H−NMRおよびUV−Vis分光法により特性化した。
【0190】
例6
テキサスレッド−ポリ(L−グルタミン酸)−レチノイド(TR−PGA−レチノイド)の合成
ポリ(L−グルタミン酸)(PGA、95.6mg)を50mLの丸底フラスコに入れた。無水DMF(15mL)をフラスコに添加し、懸濁物を30分間撹拌した。レチノール(5.5mg)、EDC(12.7mg)および微量のDMAPを添加した。混合物を40時間撹拌した。テキサスレッド(1mLのDMF中に1mg)、EDC(300μL、5mg/mL DMF)およびHOBt(300μL、1mg/mL DMF)を、反応混合物に添加した。混合物を15時間撹拌した。次いで反応混合物を0.2N HCl水溶液(75mL)に注いだ。得られた混合物を遠心管に移し、遠心分離した。上清を廃棄した。固形物を0.5N NaHCO水溶液(約60mL)に溶解した。次いで溶液を脱イオン水に対して透析し、0.45μmの酢酸セルロースシリンジフィルターで濾過し、凍結乾燥した。TR−PGA−レチノイド(93mg)を得、H−NMRおよびUV−Vis分光法により特性化した。
【0191】
例7
テキサスレッド-ポリ(L−γ−グルタミルグルタミン)−レチノイド(TR−PGGA−レチノイド)の合成
ポリ(L−γ−グルタミルグルタミン)(PGGA、95.5mg)を50mLの丸底フラスコに入れた。無水DMF(6mL)をフラスコに添加し、懸濁物を30分間撹拌した。レチノール(5.0mg)、EDC(16.3mg)および微量のDMAPを添加した。混合物を40時間撹拌した。テキサスレッド(1mLのDMF中に1mg)、EDC(300μL、5mg/mL DMF)およびHOBt(300μL、1mg/mL DMF)を、反応混合物に添加した。混合物を15時間撹拌した。次いで反応混合物を0.2N HCl水溶液(75mL)に注いだ。得られた混合物を遠心管に移し、遠心分離した。上清を廃棄した。固形物を0.5N NaHCO水溶液(約60mL)に溶解した。溶液を脱イオン水に対して透析し、0.45μmの酢酸セルロースシリンジフィルターで濾過し、凍結乾燥した。TR−PGGA−レチノイド(91mg)を得、H−NMRおよびUV−Vis分光法により特性化した。
【0192】
例8
テキサスレッド−デキストラン−オレイン酸(TR−デキストラン−オレイン酸)の合成
以下の濃度の化合物をDMF中に調製した:
DMF中の[EDCおよびHOBt]=5mg/mL
DMF中の[TR−デキストラン−Lys]=5mg/mL
DMF中の[オレイン酸]=3.2mg/mL
【0193】
オレイン酸の溶液(25μL、DMF中3.2mg/mL)を、EDCおよびHOBtの溶液(500μL、DMF中5mg/mL)に添加した。反応物を、25分間撹拌した。TR−デキストラン−Lysの懸濁液(1000μL、DMF中5mg/mL)を反応混合物に添加し、これを10分間撹拌した。水(1mL)を添加し、反応混合物を15時間撹拌した。溶液を脱イオン水に対して透析し、0.22μmの酢酸セルロースシリンジフィルターで濾過し、凍結乾燥した。TR−デキストラン−オレイン酸(5mg)を得、UV−Vis分光法により特性化した。
【0194】
例9
テキサスレッド−デキストラン−レチノイド(TR−デキストラン−レチノイド)の合成
以下の濃度の化合物をDMF中に調製した:
DMF中の[EDCおよびHOBt]=5mg/mL
DMF中の[TR−デキストラン−Lys]=5mg/mL
DMF中の[レチノイン酸]=1.2mg/mL
【0195】
レチノイン酸の溶液(100μL、DMF中1.2mg/mL)を、EDCおよびHOBtの溶液(500μL、DMF中5mg/mL)に添加した。反応物を、25分間撹拌した。TR−デキストラン−Lysの懸濁液(1000μL、DMF中5mg/mL)を反応混合物に添加し、これを10分間撹拌した。水(1mL)を添加し、反応混合物を15時間撹拌した。溶液を脱イオン水に対して透析した。溶液を0.22μmの酢酸セルロースシリンジフィルターで濾過し、凍結乾燥した。TR−デキストラン−レチノイド(5mg)を得、UV−Vis分光法により特性化した。
【0196】
例10
レチノイド化合物のHSC−T6細胞への取り込み
ビタミンA結合タンパク質レセプターを発現するHSC−T6細胞を、実験の1日前に96穴プレートに播種した(1ウェルあたり培養培地100μL)。例5〜9で調製した、TR−PGA−コレステロール、TR−PGA−レチノイド、TR−PGGA−レチノイド、TR−デキストラン−オレイン酸およびTR−デキストラン−レチノイドを水に溶解し、約2〜4mg/mLの原液を作製した。溶液を培養培地で希釈し、室温で15分間インキュベートした。15μLを細胞に添加した。細胞を溶液中でインキュベートした後に、培養培地を除去した。細胞をDPBSで一回洗浄し、新しい培養培地を添加した(1ウェルあたり培養培地100μL)。吸光度(励起波長および放出波長はそれぞれ560nmおよび590nmであった)を、BioTek FLx800 96穴プレート蛍光リーダーで読み取り、記録した。結果を図8〜9に示す。
【0197】
図8は、テキサスレッド−非カチオン性ポリマー担体−レチノイドの細胞取り込みを、テキサスレッド−非カチオン性ポリマー担体−コレステロールの細胞取り込みと比較する。より大きな吸光度は、より大きな光学密度およびより大きな細胞取り込みを示す。したがって、図8はレチノイド組成物がコレステロール組成物より大きな細胞取り込みをもたらしたことを示す。図9は、テキサスレッド−デキストラン−レチノイドの細胞取り込みを、テキサスレッド−デキストラン−オレイン酸の細胞取り込みと比較する。図8と同様に、より大きな吸光度はより大きな光学密度およびより大きな細胞取り込みを示す。したがって、図9はレチノイド組成物がオレイン酸組成物より大きな細胞取り込みもたらしたことを示す。
【0198】
多数の様々な改変が、本発明の精神から逸脱せずになされ得ることを当業者は理解する。したがって、本発明の形態は例示にすぎず、本発明の範囲を制限する意図がないことを明確に理解すべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
非カチオン性ポリマー担体、リポソーム担体、樹枝状担体、ナノ材料担体、生体構造担体およびミセル担体からなる群から選択される担体、
非カチオン性ポリマー担体に作動可能に結合したターゲティング剤(ここで、該ターゲティング剤はレチノイドを含む)、および
非カチオン性ポリマー担体に作動可能に結合した治療剤(ここで、治療剤は標的器官または組織に送達されてから治療効果を発揮し、治療効果は、標的器官または組織内での線維化の抑制、および標的器官または組織内でのがん細胞の増殖の抑制からなる群から選択される)
を含む、治療組成物。
【請求項2】
レチノイドが、レチノール、レチナールおよびレチノイン酸からなる群から選択される、請求項1に記載の治療組成物。
【請求項3】
レチノイドが、オールトランスレチノール、オールトランスレチノイン酸、パルミチン酸レチニル、11−シス−レチナールおよび13−シス−レチノイン酸からなる群から選択される、請求項1に記載の治療組成物。
【請求項4】
標的器官が、肝臓、膵臓、腎臓、肺、食道、喉頭、骨髄および脳からなる群から選択される、請求項1〜2のいずれか一項に記載の治療組成物。
【請求項5】
ターゲティング剤が、標的器官または組織に送達されたときに、治療組成物の送達選択性を、ターゲティング剤を欠く以外は同等の治療組成物の送達選択性と比較して少なくとも約2倍向上させる、請求項1〜3のいずれか一項に記載の治療組成物。
【請求項6】
送達選択性の向上が少なくとも約3倍である、請求項5に記載の治療組成物。
【請求項7】
ターゲティング剤が、静電結合を介して担体と作動可能に結合している、請求項1〜6のいずれか一項に記載の治療組成物。
【請求項8】
ターゲティング剤が、共有結合を介して担体と作動可能に結合している、請求項1〜6のいずれか一項に記載の治療組成物。
【請求項9】
担体とターゲティング剤との間に連結基をさらに含む、請求項1〜6のいずれか一項に記載の治療組成物。
【請求項10】
担体が、連結基を介してターゲティング剤と作動可能に結合している、請求項9に記載の治療組成物。
【請求項11】
治療組成物が、治療組成物の全質量の約1%〜約50%(重量/重量)の範囲のターゲティング剤の量を含む、請求項1〜10のいずれか一項に記載の治療組成物。
【請求項12】
治療組成物が、治療組成物の全質量の約10〜約30%(重量/重量)の範囲のターゲティング剤の量を含む、請求項1〜10のいずれか一項に記載の治療組成物。
【請求項13】
治療組成物が、治療組成物の全質量の約20〜約40%(重量/重量)の範囲のターゲティング剤の量を含む、請求項1〜10のいずれか一項に記載の治療組成物。
【請求項14】
治療剤が、静電結合を介して担体と作動可能に結合している、請求項1〜13のいずれか一項に記載の治療組成物。
【請求項15】
治療剤が、共有結合を介して担体と作動可能に結合している、請求項1〜13のいずれか一項に記載の治療組成物。
【請求項16】
担体と治療剤との間に連結基をさらに含む、請求項1〜13のいずれか一項に記載の治療組成物。
【請求項17】
担体が、連結基を介して治療剤と作動可能に結合している、請求項16に記載の治療組成物。
【請求項18】
担体が電子的に中性である、請求項1〜17のいずれか一項に記載の治療組成物。
【請求項19】
担体がアニオン性である、請求項1〜17のいずれか一項に記載の治療組成物。
【請求項20】
担体がカチオン性である、請求項1〜17のいずれか一項に記載の治療組成物。
【請求項21】
担体がリポソーム担体である、請求項1〜20のいずれか一項に記載の治療組成物。
【請求項22】
担体が樹枝状担体である、請求項1〜20のいずれか一項に記載の治療組成物。
【請求項23】
担体がナノ材料担体である、請求項1〜20のいずれか一項に記載の治療組成物。
【請求項24】
担体が生体構造担体である、請求項1〜20のいずれか一項に記載の治療組成物。
【請求項25】
担体が多糖である、請求項24に記載の治療組成物。
【請求項26】
担体がミセル担体である、請求項1〜20のいずれか一項に記載の治療組成物。
【請求項27】
担体が非カチオン性ポリマー担体である、請求項1〜19のいずれか一項に記載の治療組成物。
【請求項28】
非カチオン性ポリマー担体が線状ポリマーである、請求項27に記載の治療組成物。
【請求項29】
非カチオン性ポリマー担体が分枝ポリマーである、請求項27に記載の治療組成物。
【請求項30】
非カチオン性ポリマー担体が水溶性である、請求項27〜29のいずれか一項に記載の治療組成物。
【請求項31】
非カチオン性ポリマー担体が水不溶性である、請求項27〜29のいずれか一項に記載の治療組成物。
【請求項32】
非カチオン性ポリマー担体が生分解可能である、請求項27〜31のいずれか一項に記載の治療組成物。
【請求項33】
非カチオン性ポリマー担体が非生分解性である、請求項27〜31のいずれか一項に記載の治療組成物。
【請求項34】
非カチオン性ポリマー担体がホモポリマーである、請求項27〜33のいずれか一項に記載の治療組成物。
【請求項35】
非カチオン性ポリマー担体がコーポリマーである、請求項27〜33のいずれか一項に記載の治療組成物。
【請求項36】
非カチオン性ポリマー担体が少なくとも2種のポリマーの混合物を含む、請求項27〜35のいずれか一項に記載の治療組成物。
【請求項37】
非カチオン性ポリマー担体が、式(I):
【化1】

式中、各々のRは、水素、アンモニウムおよびアルカリ金属からなる群から選択される
で表される繰り返し単位を含む、請求項27〜36のいずれか一項に記載の治療組成物。
【請求項38】
非カチオン性ポリマー担体が、式(II):
【化2】

式中、各々のAは、独立して、酸素およびNRからなる群から選択され、
各々のRは、独立して、水素、任意に置換されたC1〜1Oアルキル、任意に置換されたC6〜20アリール、アンモニウムおよびアルカリ金属からなる群から選択され、
は、水素およびC1〜4アルキルからなる群から選択される
で表される繰り返し単位を含む、請求項27〜37のいずれか一項に記載の治療組成物。
【請求項39】
非カチオン性ポリマー担体が、式(III):
【化3】

式中、各々のAは、独立して、酸素およびNRからなる群から選択され、
各々のRは、独立して、水素、任意に置換されたC1〜1Oアルキル、任意に置換されたC6〜20アリール、アンモニウムおよびアルカリ金属からなる群から選択され、
は、水素およびC1〜4アルキルからなる群から選択される
で表される繰り返し単位を含む、請求項27〜38のいずれか一項に記載の治療組成物。
【請求項40】
非カチオン性ポリマー担体が式(IV)および式(V):
【化4】

からなる群から選択される繰り返し単位を含む、請求項27〜39のいずれか一項に記載の治療組成物。
【請求項41】
非カチオン性ポリマー担体が、式(IV)で表される繰り返し単位および式(V)で表される繰り返し単位の両方を含む、請求項40に記載の治療組成物。
【請求項42】
非カチオン性ポリマー担体が、ポリグルタミン酸(PGA)を含む、請求項27に記載の治療組成物。
【請求項43】
非カチオン性ポリマー担体が、ポリ(L−γ−グルタミルグルタミン)(PGGA)を含む、請求項27に記載の治療組成物。
【請求項44】
非カチオン性ポリマー担体は、ポリ(L−γ−アスパルチルグルタミン)(PGAA)を含む、請求項27に記載の治療組成物。
【請求項45】
非カチオン性ポリマー担体が、ポリ(乳酸−コ−グリコール酸)(PLGA)を含む、請求項27に記載の治療組成物。
【請求項46】
非カチオン性ポリマー担体がミクロ粒子を含む、請求項27〜45のいずれか一項に記載の治療組成物。
【請求項47】
非カチオン性ポリマー担体がナノ粒子を含む、請求項27〜45のいずれか一項に記載の治療組成物。
【請求項48】
治療剤が細胞毒性を有する、請求項1〜47のいずれか一項に記載の治療組成物。
【請求項49】
治療剤が、TGFβインヒビター、MMPプロモーター、HGFプロモーター、TIMP産生インヒビター、PPARγリガンド、アンギオテンシン活性インヒビター、PDGFインヒビター、ナトリウムチャネルインヒビターおよびアポトーシス誘導物質からなる群から選択される、請求項1〜48のいずれか一項に記載の治療組成物。
【請求項50】
治療剤が、標的器官または組織へ治療剤が送達されてから星細胞の活性化を実質的に抑制する、請求項1〜49のいずれか一項に記載の治療組成物。
【請求項51】
治療剤が核酸を含む、請求項1〜50のいずれか一項に記載の治療組成物。
【請求項52】
治療剤が、標的器官または組織へ治療剤が送達されてからコラーゲン生産を実質的に抑制する、請求項51に記載の治療組成物。
【請求項53】
治療剤が、標的器官または組織へ治療剤が送達されてから、組織メタロプロテアーゼインヒビター(TIMP)および分子シャペロンからなる群から選択される物質の活性を実質的に抑制する、請求項51〜52のいずれか一項に記載の治療組成物。
【請求項54】
分子シャペロンがHSP47である、請求項53に記載の治療組成物。
【請求項55】
治療剤が、siRNA、DNA、RNAおよびアンチセンス核酸からなる群から選択される、請求項51〜54のいずれか一項に記載の治療組成物。
【請求項56】
治療剤が抗がん剤である、請求項1〜50のいずれか一項に記載の治療組成物。
【請求項57】
抗がん剤がパクリタキセルである、請求項56に記載の治療組成物。
【請求項58】
治療組成物が、治療組成物の全質量の約25%〜約75%(重量/重量)の範囲の治療剤の量を含む、請求項1〜57のいずれか一項に記載の治療組成物。
【請求項59】
治療組成物が、治療組成物の全質量の約30〜約60%(重量/重量)の範囲の治療剤の量を含む、請求項1〜57のいずれか一項に記載の治療組成物。
【請求項60】
治療組成物が、治療組成物の全質量の約40〜約70%(重量/重量)の範囲の治療剤の量を含む、請求項1〜57のいずれか一項に記載の治療組成物。
【請求項61】
薬学的に許容し得る賦形剤および希釈剤から選択される少なくとも1種をさらに含む、請求項1〜60のいずれか一項に記載の治療組成物。
【請求項62】
異常な線維化によって少なくとも部分的に特徴づけられる状態を処置するための方法であって、治療有効量の請求項1〜61のいずれか一項に記載の治療組成物の1または2以上を、それを必要とする対象に投与することを含む、前記方法。
【請求項63】
状態が、がんおよび線維性疾患からなる群から選択される、請求項62に記載の方法。
【請求項64】
状態が線維性疾患である、請求項62に記載の方法。
【請求項65】
状態が、肝線維症、肝硬変症、膵炎、膵線維症、嚢胞性線維症、声帯瘢痕化、声帯粘膜線維症、喉頭線維症、肺線維症、特発性肺線維症、嚢胞性線維症、骨髄線維症、後腹膜線維化症および腎性全身性線維症からなる群から選択される、請求項62に記載の方法。
【請求項66】
状態が肝線維症である、請求項62に記載の方法。
【請求項67】
状態ががんである、請求項62に記載の方法。
【請求項68】
状態が、肺がん、膵がん、乳がん、肝がん、胃がんおよび大腸がんからなる群から選択される、請求項62に記載の方法。
【請求項69】
状態が膵がんである、請求項62に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2011−529492(P2011−529492A)
【公表日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−521085(P2011−521085)
【出願日】平成20年9月12日(2008.9.12)
【国際出願番号】PCT/US2008/076295
【国際公開番号】WO2010/014117
【国際公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】