説明

薬物添加ナノカプセルを用いる局所的薬物デリバリー

(a)薬物含有コア及び(b)薬物含有をコアカプセル化した高分子電解質多層からなるナノカプセルを開示する。ナノカプセルはその最大寸法が通常50nmと10000 nm間の範囲の粒子を含む。ある実施形態ではナノカプセルは単一薬物を含有する。他の場合ナノカプセルは同一ナノカプセル内か異なる集団のナノカプセル内のいずれかに複数薬物を含有する。ある実施形態ではナノカプセルは例えば体組織と結合できる配位子で機能化した表面を含む。本発明のある実施形態ではナノカプセルは磁性を持つか又は磁界感応性である。又(a)上記の物のようなナノカプセルを供与し且つ(b)埋め込みか挿入可能な医療装置を用いて被験者体内の望ましい場所にナノカプセルを配置する段階からなる薬物デリバリー法も開示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は放出制御のナノカプセル、そのデリバリー用装置とシステム及びこれを用いた局所治療に関する。
【背景技術】
【0002】
種々の医療装置が治療薬を体に送るために開発されてきた。しかし好ましい標的部位に持続的な期間薬物を供与するには多く課題が残っている。
【0003】
例えば血管外傷による問題はバルーン血管形成術や冠動脈ステント挿入術中に重要な課題を突きつける。残念ながら血管外傷による合併症、例えば内皮裸出及び高度の血栓性内皮下層露出に対処できる制御した長期で局所的薬物デリバリーシステムは限られた数しか開発されていない。薬物塗布ステントのような幾つかの医療装置は治療薬(例えば免疫抑制剤及び/又は抗増殖性薬)の持続的局所的デリバリー用手段を提供するが、バルーン血管形成術装置の様な他の医療装置は提供されない。
【0004】
本発明はこの分野のこれらや他の必要性に対処する。
【発明の開示】
【0005】
本発明の種々な様態に従うと(a)薬物含有コア及び(b)薬物含有コアをカプセル化する高分子電解質多層からなるナノカプセルを提供する。その名前が示唆するように、ナノカプセルは最大寸法がナノメータースケールで、通常最大寸法で50乃至10000nmの粒子からなる。ある実施形態ではナノカプセルは単一の薬物を含有する。その他の場合にはナノカプセルは同一ナノカプセル中か又は別集団のナノカプセル中に複数の薬物を含有する。
【0006】
パクリタキセル、ヘパリン、シロリムス、エバロリムス、タクロリムス、デキサメタゾン、エストラジオール、ABT―578(アボットラボラトリ(Abbott Laboratories))、トラ
ピジル、リプロスチン、ダクチノマイシン、レステンーNG、Ap−17、アブシキシマブ、クロピドグレル及びリドグレルのような抗再狭窄薬は典型的薬物グループの一つである。
【0007】
本発明のある実施形態ではナノカプセルは体組織例えば、血管、胃腸管、腎臓系、胆管系或いは肺系のような体内腔関連組織と結合できる、例えば配位子により機能化した表面を含む。インテグリン、特にラミニン及び/又はコラーゲンと結合するインテグリンは、ナノカプセル表面機能化用の一つの好ましいグループの配位子である。
【0008】
本発明のある実施形態ではナノカプセルは磁性を持たすか或いは磁界感応性(例えば磁性又は常磁性材をナノカプセルに組み込む事により)を持たす。
【0009】
本発明の他の様態に従うと(a)上記の物の様なナノカプセルを供与し且つ(b)埋め込みか挿入可能な医療装置を用いて被験者体内の望ましい場所にこのナノカプセルを配置する段階からなる薬物デリバリー法を供与する。
【0010】
ある実施形態では望ましい場所は体内腔壁、例えば血管外傷部である。
【0011】
ある実施形態では上述の物のような配位子機能化ナノカプセルを含む埋め込みか挿入可能な医療装置を提供する。患者体内にこのような装置を挿入か埋め込んでナノカプセルを送る。例えばナノカプセルを少なくとも医療装置表面の一部上に配置した生分解性塗布層内に備え、生分解性塗布層が分解するとナノカプセルを放除する。他の例ではナノカプセルを医療装置からナノカプセル含有液体を注射する事により患者に放除する。
【0012】
ある実施形態では医療装置は膨脹可能なステントやバルーンカテーテルのような膨脹可能な医療装置であり、外表面にナノカプセルが放除できるように配置されている。特定例では上述の物の様な機能化ナノカプセルをヒドロゲル層内に備えることができる。もし必要ならば医療器具にナノカプセルの早まった放除を防止するように伸縮自在な鞘を備える事ができる。一旦外傷の望ましい部位に達すると、鞘(もしあれば)は後退し、装置は膨脹してナノカプセルが現れ隣接組織と結合できる。
【0013】
ある実施形態では医療装置を(a)この装置及び(b)体組織(例えば体内腔壁)による境界がある孤立領域又“区画"が提供されるようにする。一旦この区画が確立すると、上述の物のような機能化表面付きナノカプセルは同区画に放除できる。結合に十分な時間を
与えた後、非結合粒子をもし必要なら装置撤去以前に区画から除去でき(例えば真空により)、その結果薬物の全身作用を制限する。
【0014】
ある実施形態ではナノカプセルは磁性(例えばカプセルは磁化材料を含有する)を有するか又は少なくとも磁界感応性である(例えばカプセルは鉄のような常磁性材を含有する)。同時に埋め込みか挿入可能な装置は、例えば(i)帯磁及び常磁性ナノカプセルの両者が引き付け合う付随磁界を有するか(例えば永久磁石又は電磁石を含有する事により)、又は(ii)帯磁粒子が装置に引き付けられる一個又はそれ以上の常磁性粒子(例えば鉄)を含有する事によりこのナノカプセルを引き付ける様にする。
【0015】
これら実施形態のある物では埋め込みか挿入可能な医療装置を先ず被験者体内に配置した後、ナノカプセルを装置近辺に導入し(例えば注射、経口摂取などにより)、その結果ナノカプセルをこの医療装置と結合する。ナノカプセルの結合後一個又は(複数の)カプセル化薬物が装置部位で制御下に放除される。更に本発明のこの実施形態では装置部位での薬物補充が可能である。
【0016】
これら実施形態のあるものではナノカプセルを患者に埋め込み又は挿入前に医療装置と磁性的に結合する。もし好ましければナノカプセルを装置の埋め込み又は挿入後に、例えば本装置付随の磁界を徐々に又は迅速に減少させて放除できる。
【0017】
本発明の他様態に従うと埋め込みか挿入可能な医療装置は電気活性高分子作動(EAP−作動)装置である。ある実施形態ではEAP―作動装置は電気活性高分子層と隣接導電層からなる。一つの典型的装置はEAP作動ステントで、適当な電位をかける事により収縮しその電位を除去すると膨脹して体内腔と接触する。ある場合には上に論じた物のようなナノカプセルをEAP―作動装置外面に放出できるように配置し、この場合本装置を粒子の結合後撤去できる。他の場合にはナノカプセルを本装置外面に結合し、この場合は装置を多量の薬物放除が起こった後に撤去できる。さらに他の例では装置は放射性表面を、例えばカプセル化放射性同位元素の供与により備え、隣接組織の放射線治療を提供する。
【0018】
本発明のこれら及び他の様態、実施形態及び利点は技術に関する通常技能者には以下の開示を読めば直ちに明白となる。
【本発明の詳細な説明】
【0019】
本発明はとりわけ薬物デリバリー制御のナノカプセル、このデリバリー用装置とシステム及びこれを用いた局所治療に向けられる。
【0020】
本発明の一様態に従うと(a)薬物含有コア及びと(b)薬物含有コアをカプセル化した高分子電解質多層からなるナノカプセルを提供する。
【0021】
このようなナノカプセルは例えば種々の既知の層重ね(LbL)法を用いて作成できる。LbL法は通常水媒体に分散した粒子を荷電高分子(高分子電解質)材を用いてナノスケールで静電的に自己組織化により塗布する必要がある。この技法は高分子電解層用鋳型として働く各粒子が表面電荷を有し、水分散を可能にしそれに続く層の吸着に必要な電荷を提供する事実を活用している(即ち高分子電解質多層カプセル化)。外層上の電荷は各々の逐次高分子電解質層の沈積ごとに逆転する。このような多層殻は薬物放除を制御できることが知られている。例えば厚みや透過性の様な殻物性を調整して適切な放除特性を提供できる。
【0022】
タンパク質の様な多くの材料は同一物からなる粒子上に存在する内在表面電荷を有する。荷電高分子治療薬の例は特にポリヌクレオチド(例えばDNA及びRNA)及びポリペプチド(例えばその全体の正味電荷がそれらの各等電点に基づいてpHにより変化するポリペプチド)を含む。例えばインスリンは中性pHでは負に荷電した分子であるが、プロタミンは正に荷電している。
【0023】
他材料、例えば多くの固体及び液体有機化合物は非荷電である。しかしこのような材料はそれでも尚(a)化合物を例えば(i)コロイドミリング法、ジェットミリング法又は沈降法を用いて微粉にするか、又は(ii)エマルジョン法を用いて連続液体又はゲル相内に液体粒子を供与するかによって、LbL法でカプセル化できる。粒子は例えば少なくとも一個の両親媒性物質(例えばイオン性界面活性剤、両親媒性高分子電解質又は高分子電解質コンプレックス、親水性モノマーと疎水性モノマーの荷電共重合体)を固体/液体鋳型粒子と連続相(通常は水相)間界面に供与する事により表面電荷を備える。
【0024】
一旦荷電鋳型粒子が供与されると、粒子は反対電荷を有する高分子電解質相で塗布できる。反対電荷をもつ高分子電解質による処理を繰り返すことにより、即ち陽イオン及び陰イオン高分子電解質で交互に処理する事により多層が形成される。高分子層は静電気的、層重ね沈着により前もって荷電した固体/液体粒子上に自己組織化し、コアの周りに多層高分子殻を形成する。
【0025】
両親媒性物質は親水及び疎水基を持ついかなる物質をも含む。両親媒性物質は鋳型粒子(固体又は液体)に電荷を与える少なくとも一個の電気的に荷電した基を有する。それ故使用する両親媒性物質はイオン性両親媒性物質ともいえる。両親媒性高分子電解質は、ポリスチレンスルホン酸(PSS)の様に例えば親水基としての荷電基と例えば芳香族基のような疎水基を含む高分子電解質が両親媒性物質として使用できる。陽イオン及び陰イオン界面活性剤も又両親媒性物質として使用できる。陽イオン界面活性剤は第四級アンモニウム塩(R)、例えば臭化ジドデシルジメチルアンモニウム(DDDAB)、臭化ヘキサデシルトリメチルアンモニウム(HDTAB)、臭化ドデシルトリメチルアンモニウム(DTMAB)、臭化ミリスチルトリメチルアンモニウム(MTMAB)又は臭化パルミチルトリメチルアンモニウムのような臭化アルキルトリメチルアンモニウム、N−アルキルピリジニウム塩又は第三級アミン(RNH)、例えばコレステリル−3β―N―(ジメチルアミノエチル)カルバメート又はこれらの混合物を含み、ここでXは対イオン、例えばハロゲン化物である。陰イオン界面活性剤はアルキル又はオレフィン硫酸塩(R−OSOM)、例えばドデシル硫酸ナトリウム(SDS)のようなドデシル硫酸塩、ラウリル硫酸ナトリウム(SLS)のようなラウリル硫酸塩、もしくは、アルキル又はオレフィン硫酸塩(R−SOM)、例えばn-ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、又は脂肪酸(R−COOM)、例えばドデカン酸ナトリウム塩、又はリン酸、コール酸又はフッ素系有機物、例えば3−(2−ペルフルオロアルキル)エチルチオ)プロピオン酸リチウム又はこれらの混合物を含み、ここでRは有機基であり且つMは対イオンである。
【0026】
高分子電解質はイオン解離性基を有する高分子であって、そのイオン解離性基は、高分子鎖の構成成分であっても置換基であってもよい。通常高分子電解質中のこれらイオン解離性基数は非常に多いので解離形の高分子(ポリイオンとも云われる)は水溶性である。高分子電解質は解離基の種類により通常多塩基酸と多塩基に分けられる。解離すると多塩基酸はプロトンを解離しポリアニオンを生じ、無機、有機及び生体高分子であり得る。多塩基酸の例はポリリン酸、ポリビニル硫酸、ポリビニルスルホン酸、ポリビニルホスホン酸及びポリアクリル酸がある。多価塩とも呼ばれる対応塩の例はポリリン酸塩、ポリビニル硫酸塩、ポリビニルスルホン酸塩、ポリビニルホスホン酸塩及びポリアクリル酸塩である。多塩基は例えば酸と反応してプロトンを受容できる基を有し、塩を形成する。幹及び/又は側鎖基内に解離性基を有する多塩基の例はポリアリルアミン、ポリエチレンイミン、ポリビニルアミン及びポリビニルピリジンがある。プロトンを受容して多価塩基はポリカチオンを形成する。
【0027】
本発明に従う適切な高分子電解質はアルギン酸、アラビアゴム、核酸、ペクチン及びタンパク質の様な生体高分子、カルボキシメチルセルロース及びリグニンスルホネートのような化学的修飾生体高分子及びポリメタアクリル酸、ポリビニルスルホン酸、ポリビニルホスホン酸及びポリエチレンイミンの様な合成高分子に基づく物を含む。直鎖又は分岐高分子電解質が使用できる。分岐高分子電解質の使用により高度の壁気孔率を有する、より緻密性の低い高分子電解質多層が生成する。高分子電解質分子は例えばアミノ基をアルデヒド基で架橋する事により各層内及び/又は間で架橋して、例えばカプセル安定性を増加できる。更に両親媒性高分子電解質、例えば部分的に高分子電解質特性を有する両親媒性ブロック又はランダム共重合体を用いて極性小分子に対する透過性を減少できる。このような両親媒性共重合体は、例えば一方で酸性又は塩基性単位を、他方で高分子中にブロックとして存在するか又は統計的分布しているスチレン、ジエン又はシロキサンの様な疎水性単位からなるというように、異なる機能性単位から成る。
【0028】
分解可能な高分子電解質を用いることにより封入薬物の放出をカプセル壁の崩壊により更に制御できる。例としては特にポリグリコール酸(PGA)、ポリ乳酸(PLA)、ポリアミド、ポリ−2−ヒドロキシブチラート(PHB)、ポリカプロラクトン(PCL)及び乳酸・グリコール酸共重合体(PLGA)、硫酸プロタミン、ポリアリルアミン、ポリジアリルジメチルアンモニウム、ポリエチレンイミン、キトサン、オイドラギット、ゼラチン、スペルジミン、アルブミン、ポリアクリル酸、アルギン酸ナトリウム、ポリスチレンスルホン酸、ヒアルロン酸、カラギーナン、コンドロイチン硫酸、カルボキシメチルセルロース、ヘパリン、その他ポリペブチド及びタンパク質及びDNAがある。
【0029】
おおむね使用分子が十分な高電荷を有し又は/且つ下層と他種の相互作用、例えば水素結合及び/又は疎水性相互作用により結合できるかぎり、使用高分子電解質に関する制限はない。従って適切な高分子電解質は例えば分子量が数百ダルトンの低分子量高分子電解質から分子量数百万ダルトンの巨大分子高分子電解質、例えば生物起源の高分子電解質までを含む。
【0030】
ポリカチオンの特定例としては硫酸プロタミンポリカチオン、ポリ(アリルアミン)ポリカチオン(例えばポリ(アリルアミン塩酸塩)(PAH))、ポリジアリルジメチルアンモニウムポリカチオン、ポリエチレンイミンポリカチオン、キトサンポリカチオン、オイドラギットポリカチオン、ゼラチンポリカチオン、スペルジミンポリカチオン及びアルブミンポリカチオンがある。ポリアニオンの特定例としてはポリ(スチレンスルホン酸)ポリアニオン(例えばポリ(スチレンスルホン酸ナトリウム)(PPS))、ポリアクリル酸ポリアニオン、アルギン酸ナトリウムポリアニオン、オイドラギットポリアニオン、ゼラチンポリアニオン、ヒアルロン酸ポリアニオン、カラギーナンポリアニオン、コンドロイチン硫酸ポリアニオン及びカルボキシメチルセルロースポリアニオンがある。
【0031】
他の技法では殻内に好ましい物質の沈降又は生成が起こるようカプセル壁上の変化度を利用する。例えば高分子のような巨大分子は高分子電解質多層に浸透できないが、小さい溶質、例えば小分子薬剤は浸透できる。従ってカプセル中に巨大分子が存在すると、例えばカプセル中の材料の沈降/生成に利用できるpH及び/又は極性勾配を供与して、バルクとカプセル内部間に物理化学的性質の差が生じる。通常巨大分子は二重殻高分子電解質構造を形成する事によりカプセル内部に供与され、その後内部殻を分解する。
【0032】
例えばナノカプセルを反対に荷電した高分子電解質(即ち交互のPAH及びPSS外殻)を3価イットリウム/PSS内殻上に層重ね吸着法により作成し、更にコロイド状鋳型粒子(即ちメラミン−ホルムアルデヒド粒子)表面上に配置する。続いてメラミン−ホルムアルデヒドコアを除去し、続いて3価イットリウム/PSS内殻を分解する。水に難溶な薬物の有機溶剤(例えばアセトン)溶液をカプセル水懸濁液と混合し薬物が完全に溶解するまでアセトンで希釈する。ついで有機溶剤を蒸発させる。コア中に自由な高分子電解質分子が存在することによりバルクに比しコア中の水濃度が高くなる。水濃度がバルクよりコア中で高いため薬物がコア中で沈降し、薬物添加ナノカプセルを生成する。追加情報は例えばアイ.エル.ラドチェンコ(I.L.Radtchenko)等、“水難溶性薬物カプセル化に関する新規手段:高分子電解質多層殻内での沈降"("A Novel Method for Encapsulation of Poorly Water-soluble Drugs: Precipitation in Polyelectrolyte Multilayer Shells" インターナショナルジャーナルオブファーマシューティックス(International Journal of Pharmaceutics)、242巻、219−223頁(2002年)に見られ、その開示はここに文献として含む。
【0033】
他の例としてミクロンスケールのポリ(スチレンスルホン酸)/ポリ(アリルアミン塩酸塩)高分子電解質カプセル内での磁鉄鑛(Fe)の選択的無機合成を行った。ミクロン及びサブミクロンサイズのカプセルをコロイド状鋳型粒子(例えば沈降PAH―クエン酸塩錯体を有する弱く架橋したメラミン−ホルムアルデヒド粒子)上に反対に荷電した高分子電解質(PSS、PAH)を層重ね吸着法により作成し、続いて鋳型コアを分解した。これによりコア中に遊離のPAHが残り殻上にpH勾配を生じる。この時点で(a)負荷電を持ち前もって形成した十分に小さいサイズの磁性粒子(例えばFeナノ粒子)を用いて、カプセル中に浸透し静電気的相互作用により保持するか又は(b)磁性粒子(例えばFe)をpH勾配に基づいてカプセル内に溶解したPAH存在下にコア中に選択的に合成する。生成カプセルは磁界により容易に駆動する。追加情報は例えばディ.ジー.シュウキン(D.G.Shchukin)等、“ナノサイズ磁性Fe含有のミクロンスケール中空高分子電解質カプセル"("Micron-Scale Hollow Polyelectrolyte Capsules with Nanosized Magnetic Fe3O4 Inside"、マテリアルレター(Materials Letters)、(印刷中)に見られ、ここに文献として含む。
【0034】
更にナノカプセル生成に関する更なる情報は例えば米国特許申請20020187197、WO99/47252、WO00/03797、WO00/77281、WO01/51196、WO02/09864、WO02/09865、WO02/17888、エル.デーネ(L.Daehne)等、“注文通りの性質を持つミクロ反応かごの製作"("Fabrication of Micro Reaction Cages with Tailored Properties")、ジャーナル オブアメリカンケミカルソサエティ(J. Am. Chem. Soc.)、123巻、5431−5436頁(2001年)、モヤ(Moya)等、“高分子電解質による表面修飾コロイド粒子上への脂質塗布と高分子電解質カプセル"("Lipid Coating on Polyelectrolyte Surface Modified Colloidal Particles and Polyelectrolyte Capsules")、マクロモリキュール(Macromolecules)、33巻、4538−4544頁(2000年)、エス.モヤ等、“有機溶剤の高分子電解質多層ミクロメーターサイズ殻内への微少カプセル化"("Microencapsulation of Organic Solvents in Polyelectrolyte Multilayer Micrometer-sized Shells" )、ジャーナルオブコロイドアンドインタフェースサイエンス(Journal of Colloid and Interface Science)、216巻、297−302頁(1999年)、アイ.エル.ラドチェンコI.L.Radtchenko)等、“コロイド粒子上への交互多価イオン/高分子電解質層の組み立て"("Assembly of Alternated Multivalent Ion/Polyelectrolyte Layers on Colloidal Particles" )、ジャーナルオブコロイドアンドインタフェースサイエンス(Journal of Colloid and Interface Science)、230巻、272−280頁(2000年)、ジー.スコルコブ(G.Sukhorukov)
等、“中空高分子電解質カプセル中への染料の制御沈降"("Controlled Precipitation of Dyes into Hollow Polyelectrolyte Capsules")、アドバンスドマテリアル(Advanced Materials)、12巻、2号、112−115頁(2000年)に見られ、これら開示は文献としてここに含む。
【0035】
上記の層重ね法により得られる壁厚さはしばしば例えば4乃至1000nmの範囲である。例えば典型的PAH/PSS単一層厚みは1.5nmである。しかしタンパク質では遙かに大なる厚みにしばしば出会う。生成ナノカプセルサイズはしばしば例えば50乃至10,
000nmの範囲である。
【0036】
上述の物の様な技法を用いて単一薬物を単一ナノカプセル中にカプセル化できる。更にこのようなナノカプセルにそれぞれが異なる薬物を含有する二個又はそれ以上の集団を混合して複数の薬物放除を提供できる。更に二個又はそれ以上の薬物を単一ナノカプセル内に、例えばコア中に或いは複数の薬物領域内にカプセル化できる。例えば第一薬物(例えば平滑筋細胞増殖又は炎症反応に対処する薬物)をコアの様な内部領域に供与し、このコアを内部多層カプセル化により包囲し(例えば薬物相互作用及び/又は遅延拡散に対処し)、第二薬物(例えば急性動脈損傷に対処する薬物)含有追加層をこの内部多層カプセル化物上に供与し、第二薬物含有層上に外部多層カプセル化を行う。
【0037】
“薬物"、“治療薬"、“薬学的活性試薬"、“薬学的活性材料"及びその他の関連用語はここではいずれを使っても変わりなく使用でき遺伝子治療薬、非遺伝子治療薬及び細胞を含む。治療薬は単一或いは組み合わして使用できる。
【0038】
本発明に関して使用の典型的非遺伝子治療薬は(a)ヘパリン、ヘパリン誘導体、ウロキナーゼ及びピーパック(デキストロフェニルアラニンプロリンアルギニンクロロメチルケトン)の様な抗血栓剤、(b)デキサメタゾン、プレドニゾロン、コルチコステロン、ブデソニド、エストロゲン、スルファサラジン及びメサラミンの様な抗炎症剤、(c)パクリタキセル、5−フルオロウラシル、シスプラチン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、エポチロン、エンドスタチン、アンギオスタチン、アンギオペプチン、平滑筋細胞増殖遮断可能なモノクロナール抗体及びチミジンキナーゼ阻害剤の様な抗悪性腫瘍薬/抗増殖性薬/有糸分裂阻害剤、(d)リドカイン、ブビバカイン及びロビバカインの様な麻酔薬、(e)D−フェニルアラニンプロリンアルギニンクロロメチルケトン、RGDペプチド含有化合物、ヘパリン、ヒルジン、抗トロンビン化合物、血小板受容体拮抗薬、抗トロンビン抗体、抗血小板受容体抗体、アスピリン、プロスタグランジン阻害剤、血小板阻害剤及びティック抗血小板ペプチドのような抗凝血剤、(f)成長因子、転写活性化因子及び翻訳プロモータ
ーの様な血管細胞成長プロモーター、(g)成長因子阻害剤、成長因子受容体拮抗剤、転写リプレッサー、翻訳リプレッサー、複製阻害剤、阻害抗体、成長因子に拮抗する抗体、内皮前駆細胞上受容体を認知する抗体、CD9ベータ―1及びベーター3インテグリンの様なテトラスパニン群タンパク質、CD63、CD81、FcガンマRII、成長因子及び細胞毒素からなる二官能性分子、抗体と細胞毒素からなる二官能性分子の様な血管細胞成長阻害剤、(h)タンパク質キナーゼ及びチロシンキナーゼ阻害剤(例えばチロホスチン、ゲニステイン、キノキサリン)、(i)プロスタサイクリン類似体、(j)コレステロール低下剤、(k)アンジオポエチン、(l)トリクロサン、セファロスポリン、アミノ配糖体及びニトロフラントインの様な抗菌剤、(m)細胞毒性薬、細胞分裂停止剤及び細胞増殖影響因子、(n)血管拡張薬、(o)内因性血管作動機構の妨害剤、(p)モノクロナール抗体の様な白血球補填阻害剤、(q)サイトカイン及び(r)ホルモンを含む。好ましい非遺伝子治療薬としてはパクリタキセル、シロリムス、エベロリムス、タクロリムス、デキサメタゾン、ハロフジノン、クラドリビン、エストラジオール、ABT―578(アボットラボラトリ(Abbott Laboratories))、トラピジル、リプロスチン、ダクチノマイシン、レステンーNG、Ap−17、アブシキシマブ、クロピドグレル及びリドグレルがある。
【0039】
本発明に関して使用の典型的遺伝子治療薬としては(a)アンチセンスRNA、(b)欠陥又は欠乏内生分子置換用の転移RNA又はリボソームRNA、(c)酸性及び塩基性線維細胞成長因子、血管内皮成長因子、内皮分裂促進成長因子、上皮成長因子、トランスフォーミング成長因子α及びβ、血小板誘導内皮成長因子、血小板誘導成長因子、腫瘍壊死因子α、肝細胞成長因子及びインスリン様成長因子の様な成長因子を含む血管形成因子及びその他の因子、(d)CD阻害剤を含む細胞周期阻害剤及び(e)チミジンキナーゼ(“TK")及び細胞増殖妨害に有効なその他試薬に関するアンチセンスDNA及びRNA更にはコード化DNAを含む。又興味ある物としてBMP−2、BMP−3、BMP−4、BMP−5、BMP−6(Vgr−1)、BMP−7(OP−1)、BMP−8、BMP−9、BMP−10、BMP−11、BMP−12、BMP−13、BMP−14、BMP−15及びBMP−16を含む骨形成タンパク質(“BMP")群用のコード化DNAがある。現在好ましいBMPはBMP−2、BMP−3、BMP−4、BMP−5、BMP−6及びBMP−7のいずれかである。これら二量体タンパク質はそれ自身か他分子と共にホモ二量体、ヘテロ二量体又はそれらを組み合わして供与できる。代わりに又は別にBMPに上流又は下流効果を起こせる分子を供与できる。このような分子としては“ヘッジホッグ"タンパク質のいかなる物か又はそれらのコード化DNAである。
【0040】
遺伝子治療薬デリバリー用ベクターとしてはアデノウイルス、ウイルス遺伝子除去アデノ
ウイルス、アデノ関連ウイルス、レトロウイルス、アルファウイルス(セムリキ森林ウイルス、シンドビスウイルス等)、レンチウイルス、単純疱疹ウイルス、複製コンピテントウイルス(例えばONYX―015)及び混成ベクターの様なウイルスベクター、人造染色体及びミニ染色体のような非ウイルスベクター、プラスミドDNAベクター(例えばpCOR)、カチオンポリマー(例えばポリエチレンイミン(PEI))グラフト共重合体(例えばポリエーテル−PEI及びポリエチレンオキサイドーPEI)、中性ポリマーのPVP、SP1017(スプラテック(SUPRATEK))、陽イオン脂質の様な脂質、リポソーム、リポプレックス複合体、タンパク質形質導入ドメイン(PTD)のような目標配列付き及び無しのナノ粒子又はミクロ粒子がある。
【0041】
本発明に関する使用細胞としては全骨髄、骨髄由来の単核細胞、前駆細胞(例えば内皮前駆細胞)、幹細胞(例えば間葉細胞、造血性細胞、神経細胞)、多能性幹細胞、線維芽細胞、筋芽細胞、衛星細胞、周皮細胞、心筋細胞、骨格ミオサイト又はマクロファージを含むヒト起源細胞(自家性又は同種間の)或いはもし必要であれば興味のタンパク質の供給に遺伝子操作できる動物、細菌又は真菌起源(異種間の)の細胞がある。
【0042】
上述のリストに限定されない多数の治療薬が血管治療法の候補として、例えば再狭窄目標薬として確認されている。このような薬物は本発明実施に有用であり一個又はそれ以上の以下の物を含む。(a)ジルチアゼム及びクレンチアゼムの様なベンゾジアゼピン、ニフェジピン、アムロピジン及びニカルジピンの様なジヒドロピリジン及びベラパミルの様なフェニルアルキルアミンを含むカルシウムチャネル遮断薬、(b)ケタンセリン及びナフチドロフリルの様な5−HT拮抗薬更にはフルオキセチンの様な5−HT吸収阻害剤を含むセロトニン経路修飾因子、(c)シロスタゾール及びジピリダモールの様なホスホジエステラーゼ阻害剤を含む環状ヌクレオチド経路薬、フォルスコリンの様なアデニレート/グアニレートシクラーゼ刺激薬、更にはアデノシン類似体、(d)プラゾシン及びブナゾシンの様なα―拮抗薬、プロプラノールの様なβ―拮抗薬及びラベタロール及びカルベジロールの様なα/β―拮抗薬を含むカテコールアミン修飾因子、(e)エンドセリン受容体拮抗薬、(f)ニトログリセリン、硝酸イソソルビド及び亜硝酸アミルの様な有機硝酸塩/亜硝酸塩、ニトロプルシドナトリウムの様な無機ニトロソ化合物、モルシドミン及びリンシドミンの様なシドノンイミン、ジアゼニウムジオレート及びアルカンジアミンの一酸化窒素付加物のようなノノエート、低分子量化合物含有S−ニトロソ化合物(例えばカプトプリル、グルタチオン及びN−アセチルペニシラミンのS−ニトロソ誘導体)及び高分子量化合物含有S−ニトロソ化合物(例えばタンパク質、ペプチド、オリゴ糖、多糖類、合成高分子/オリゴマー及び天然高分子/オリゴマーのS−ニトロソ誘導体)、更にはC−ニトロソ化合物、
O−ニトロソ化合物、N−ニトロソ化合物及びL−アルギニンを含む一酸化窒素供与体/放出分子、(g)シラザプリル、フォシノプリル及びエナラプリルの様なACE阻害剤、(h)サララシン及びロサルチンの様なATII受容体拮抗薬、(i)アルブミン及びポリエチレンオキサイドの様な血小板接着阻害剤、(j)アスピリン及びチエノピリジン(チクロピジン、クロピドグレル)を含む血小板凝集阻害剤及びアブシキシマブ、エプチフィバチド及びチロフィバンの様なGPIIb/IIIa阻害剤、(k)ヘパリン、低分子量ヘパリン、硫酸デキストラン及びβ―シクロデキストリンテトラデカサルフェートの様なヘパリノイド、ヒルジン、ヒルログ、ピーパック(D−フェニルアラニン―L―プロリン―L−アルギニンクロロメチルケトン)及びアルガトロバンの様なトロンビン阻害剤、アンチスタチン及びTAP(ティック抗凝集ペプチド)の様なFXa阻害剤、ワルファリンの様なビタミンK阻害剤、更には活性化タンパク質Cを含む凝集経路修飾因子、(l)アスピリン、イブプロフェン、フルルビプロフェン、インドメタシン及びスルフィンピラゾンの様なシクロオキシゲナーゼ経路阻害剤、(m)デキサメタゾン、プレドニゾロン、メトプレドニゾロン及びヒドロコーチゾンの様な天然及び合成副腎皮質ステロイド、(n)ノルジヒドログアヤレト酸及びコーヒー酸の様なリポキシゲナーゼ経路阻害剤、(o)ロイコトリエン受容体拮抗薬、(p)E−及びP−セレクチンの拮抗薬、(q)VCAM−1及びICAM−1相互作用阻害剤、(r)PGE1及びPGI2の様なプロスタグランジンを含むプロスタグランジン及びその類似体及びシプロステン、エポステノール、カルバサイクリン、イロプロスト及びベラプロストの様なプロスタサイクリン類似体、(s)ビスホスホネートを含むマクロファージ活性化防止剤、(t)ロバスタチン、プラバスタチン、フルバスタチン、シムバスタチン及びセリバスタチンの様なHMG―CoA還元酵素阻害剤、(u)魚油及びオメガ−3―脂肪酸、(v)プロブコール、ビタミンC及びE、エブセレン、トランスレチノイン酸及びSOD擬態物の様な遊離基捕捉剤/抗酸化剤、(w)bFGF抗体及びキメラ融合タンパク質の様なFGF経路薬、トラピジルの様なPDGF受容体拮抗薬、アンギオペプチン及びオクレオチドの様なソマトスタチン類似体を含むIGF経路薬、ポリアニオン系試薬(ヘパリン、フコイダン)、デコリン及びTGF−β抗体の様なTGF−β経路薬、EGF抗体の様なEGF経路薬、受容体拮抗薬及びキメラ融合タンパク質、サリドマイド及びその類似体の様なTNF−α経路薬、スロトロバン、バピプロスト、ダゾキシベン及びリドグレルの様なトロンボキサンA2(TAX2)経路修飾因子、更にはチロホスチン、ゲニステイン及びキノザリン誘導体の様なタンパク質チロシンキナーゼ阻害剤の様な種々の成長因子に影響する試薬、(x)マリマスタット、アイロマスタット及びメタスタットの様なMMP経路阻害剤、(y)サイトカラシンBの様な細胞運動阻害剤、(z)プリン類似体(6−メルカプトプリン又は塩素化プリンヌクレオチド類似体であるクラドリビン)、ピリミジン類似体(例えばシタラビン及び5−フルオロウラシル)及びメトトレキサートの様な代謝拮抗剤、ナイトロジェンマスタード、アルキルスルホン酸、エチレンイミン、抗生物質(例えばダウノルビシン、ドキソルビシン)、ニトロソ尿素、シスプラチン、微少管運動に影響する薬剤(例えばビンブラスチン、ビンクリスチン、コルヒチン、パクリタキセル及びエポチロン)、カスパーゼ活性体、プロテアソーム阻害剤、血管形成阻害剤(例えばエンドスタチン、アンギオスタチン及びスクアラミン)、ラパマイシン、セリバスタチン、フラボピリドール及びスラミンを含む抗増殖/抗悪性腫瘍薬、(aa)ハロフジノン、他のキナゾリノン誘導体及びトラニラストの様な基質沈着/組織化経路阻害剤、(bb)VEGF及びRGDペプチドの様な内皮化促進剤及び(cc)ペントキシフィリンの様な血液レオロジー修飾因子。
【0043】
本発明実施に使用できる多くの追加治療薬は又ネオアールエックス社(NeoRx Corporation)に帰属された米国特許5、733、925に開示され、その全開示を文献として含む。
【0044】
本発明の種々な実施形態に関して広範囲の薬物添加レベルが用いられ、その添加量は本技術の通常技能者により容易に決定でき、結局は例えば治療条件、治療薬自身の性質、対象被験者への治療薬投与手段などに依存する。
【0045】
本発明の多くの実施形態でナノカプセルは表面が例えば目的組織との結合を促進する配位子で機能化される。目的組織の例は血管系(例えば冠動脈及び脳血管構造)、胃腸系(例えば咽喉、食道、腸、結腸)、泌尿器系(例えば尿道、膀胱及び尿管)、胆管系及び肺系(例えば胸部及び肺)関連の組織を含む。
【0046】
例えば配位子はコラーゲンの様な露出内皮下成分と結合できる様になっている。通常機能化ナノカプセルが内皮下部と結合するよう内皮下部で露出するかナノカプセルを内皮下層に導入するかのいずれかである。ある実施形態では表面を例えばバルーン血管形成術又はPCTAを実施するか又は切断バルーンを用いて内皮下層を露出して作成することが好ましい。
【0047】
一旦結合すると薬物はナノカプセルから隣接組織へ予測且つ制御可能な速度で拡散できる。本発明実施形態に従う薬物コア110、生体適合性高分子電解質多層カプセル120及び複数配位子130(一個番号付け)からなる機能化表面を有するナノカプセルを図1に模式的に示す。
【0048】
インテグリンは本発明のナノカプセル表面機能化に好ましい種類の配位子である。インテグリンはコラーゲン、フィブロネクチン、ビトロネクチン、ラミニン、フィブリノゲン及
び細胞内接着分子(ICAMS)及び血管接着分子(VCAMS)を含む接着分子を含む多種多様な細胞外基質成分及び細胞表面受容体を認識する。細胞表面受容体のインテグリン群メンバーはほぼ全ての哺乳類細胞上で発現し細胞の相互及び細胞外基質接着を調節する。
【0049】
インテグリンはヘテロ二量体(アルファ及びベータ)分子からなる構造的且つ機能的に関連した糖タンパクである。好ましいインテグリンはラミニン及び/又はコラーゲンと特異的に結合する物で、ナノカプセルと例えば炎症部位の内皮間の密着を迅速に安定化できるものである。例としてはインテグリン最晩期抗原(VLA)スーパーファミリーの数個のメンバーがある。(A)アルファ1/ベータ1はコラーゲン−I、コラーゲンIV及びラミニン(E1領域)の受容体である。このインテグリンは又VLA−1(最晩期活性化抗原1)及びCD49aとして知られている。(B)アルファ2/ベータ1はコラーゲンI乃至VI、ラミニン及び多分フィブロネクチンの受容体である。この受容体は又VLA−2(最晩期活性化抗原2)、GPIa―IIa(血小板上の糖タンパクIa―IIa)及びECMRII(細胞外基質受容体II)として知られている。(C)アルファ3/ベータ1はエピリグリン、ラミニン(E3断片)、ニドジェン/エンタクチン、フィブロネクチン及びコラーゲンI用受容体である。このインテグリンは又VLA−3(最晩期活性化抗原3)、VCA−2(最共通抗原2)、ECMRI(細胞外基質受容体I)及びGapb−3(ガラクトタンパクb3)として知られている。(D)アルファ6/ベータ1はラミニン−1、ラミニン−2、ラミニン−4及びラミニン−5の受容体である。この受容体は又VLA−6(最晩期活性化抗原6)及びGPIc−IIa(血小板上の糖タンパクIc−IIa)として知られている。(E)アルファー6/ベータ4はラミニン−1及びラミニン−5の受容体である。追加のインテグリンは例えば米国特許申請20020058336及び米国特許申請20030007969に記載され、その開示はここに文献として含まれる。
【0050】
技術的に既知の多くの技法がナノカプセルと配位子との結合に利用でき、共有結合法、更にはイオン交換法、抗体―抗原法、核ハイブリッド形成法などの非共有結合法がある。例えばナノカプセル外層を形成する高分子電解質は反応性官能基を備えることができるか、或いはナノカプセル表面を表面に化学的反応基を備える試薬で処理できる。これらの基を用いて一般にアミン、アルコール、カルボン酸及びチオールのような基に見られる反応基を介してナノカプセルと直接又は間接的に(例えば結合基を用いて)関心の配位子(例えばインテグリン)と結合できる。
【0051】
本発明はナノカプセル表面上での単一種配位子の使用に限定されない事を指摘したい。又
表面機能化は配位子に限られない。例えば異なる機能化表面物性を持つナノカプセルを混合できるし、或いは表面に複数の表面配位子/受容体/等を持つナノカプセルを供与できる。更に種々の表面作動装置/引き金/受容体を結合、組織への移行及び/又は血小板受容体の遮断を強めるためにナノカプセル上に配置できる。
【0052】
本発明のある実施形態ではナノカプセルは磁性を持つか磁界感応性を持たす。例えば磁化材又は常磁性材粉末(通常金属、合金又はある遷移、希土類及びアクチニド元素化合物、例えば鉄)をナノカプセル内に薬物と共にカプセル化する。例えば0.9ミクロンフェライト磁石粉末が中国、アモイ、361009のザイアンジング磁性材社(Xiangying Magnetic Materials Co. Ltd)から入手でき、ナノカプセルに供与できる。
【0053】
本発明の追加様態は上述のナノカプセル送達法及びシステムに向けられる。多くの実施形態でナノカプセルは埋め込みか挿入可能な医療装置を用いて被験者(例えば哺乳類被験者、好ましくはヒト被験者)体内の望ましい場所に送達/配置する。
【0054】
本発明は手順的な使用か又はインプラントとして体内に埋め込みか又は挿入した種々の医療装置に応用できる。本発明に関して使用の埋め込みか挿入可能な医療装置としてはカテーテル(例えばバルーンカテーテルの様な腎臓又は血管カテーテル)、ガイドワイヤー、バルーン、フィルター(例えば大静脈フィルター)、ステント(冠動脈血管ステント、脳、尿道口、尿管、胆管、気管、胃腸及び食道ステントを含む)、ステントグラフト、脳動脈瘤フィラーコイル(グリエルモ脱着可能コイル及び金属コイルを含む)、代用血管、静脈弁、心臓弁及び生体検査装置がある。
【0055】
多くの実施形態で医療装置は血管、胃腸、泌尿器、胆管及び肺系関連の管腔の様な体内腔中での配置及び拡張に対応する。このような体内腔内への配置及び拡張用医療器具としてはカテーテル(例えば腎臓又は血管バルーンカテーテル)、ステント(例えば冠動脈血管ステント、脳、尿道口、尿管、胆管、気管、胃腸及び食道ステント)及びコイル及び塞栓症薬の様な他の埋め込み可能な医療装置がある。
【0056】
本発明のある実施形態では膨脹可能な医療装置はその表面にナノカプセル含有層を備えている。ある特定例では医療装置はヒドロゲルと上記ナノカプセルからなる外層を備える事ができる。
【0057】
ヒドロゲルは通常大量の水や他の極性分子をヒドロゲル自身重量の何倍までも吸収できる
親水性高分子材料である。ヒドロゲルは埋め込みか挿入可能な医療装置用塗布剤又は装置自身内部の構築材として開示され、例えばボストンサイエンティフィック社(Boston Scientific Corporation)又はサイメドライフシステム社(SciMed Life Systems, Inc)に譲渡された米国特許6,316,522、6,261,630、6,184,266、6,176,849、6,096,108、6,060,534、5,702,754、5,693,034及び5,304,121があり、それら各々を全て文献としてここに含む。前述の典型的米国特許に記載の物の様なのようなヒドロゲルは合成又は天然存在の材料又はそれらの混合物を基にしており、生分解性又は実質的に非生分解性でも良く、且つヒドロゲルを希望目的により適合する様に多くの方法で改良又は誘導化できる。例えばヒドロゲルは例えば高分子構造と共有結合した官能基と反応する多官能性架橋剤で化学的に架橋して改良できる。ヒドロゲルポリマーは又例えば多価金属イオンでイオン的に架橋できる。多くのヒドロゲルポリマーは化学的且つイオン的に架橋できる。ヒドロゲルポリマーの例としてはポリアクリル酸塩、ポリ(アクリル酸)、ポリ(メタアクリル酸)、ポリヒドロキシエチルメタアクリレート、ポリアクリルアミド、ポリ(N−アルキルアクリルアミド)、ポリアルキレンオキサイド、ポリ(エチレンオキサイド)、ポリ(プロピレンオキサイド)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリビニル芳香族、ポリ(ビニルピロリドン)、ポリ(エチレンイミン)、ポリエチレンアミン、ポリアクリロニトリル、ポリエステル、ポリビニルスルホン酸、ポリアミド、ポリ(L−リシン)、親水性ポリウレタン、無水マレイン酸ポリマー、タンパク質、線維素、コラーゲン、セルロース系ポリマー、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、デキストラン、カルボキシメチルデキストラン、改良デキストラン、アルギン酸塩、アルギン酸、ペクチン酸、ヒアルロン酸、キチン、プルラン、エラスチン、ラミニン、アガロース、ゼラチン、ジェラン、キサン、カルボキシメチル澱粉、コンドロイチン硫酸、グアー、澱粉及びそれらの共重合体、混合物及び誘導体を含む。
【0058】
一特定例では図2Aに図式的に示したバルーンカテーテル200は例えば疎水性(又は親水性)ヒドロゲルと混合したナノカプセルからなる層220を加えることによっていかなる結合配位子の官能性を保持する様に改良されている。バルーンカテーテル200は更に図示実施形態のナノカプセル/ヒドロゲル層を覆う鞘230を加えて改良されている。バルーンカテーテル200は体管腔内挿入に適応する。一旦関心部位に到達すると、鞘230は後退し、ナノカプセル含有ヒドロゲル層220を露出し、バルーンは図2Bに示すように膨脹する。バルーン210の一部、ナノカプセル含有ヒドロゲル外層220及び管腔組織300(この場合露出内皮下部)を図示する模式的小断面を図3に示す。この方法ではナノカプセル100(番号付きの物)が管腔壁300に送られ機能化表面を通して結合できる。続いてたとえバルーンが除去されても、薬物は結合ナノカプセルから隣接組織へ制御された形で放除され続ける。
【0059】
本発明のある実施形態では電気活性高分子(EAP)作動装置を膨脹可能な医療装置として用いる。EAP作動装置は既知である。本発明に関して使用するEAP作動装置は非常に簡単で、例えば金属箔(例えば金箔、銀箔など)の様な伝導層、電導高分子層(例えば導電性カーボン塗布膜を有する高分子層)又はカーボンナノチューブペーパー(時々“バッキーペーパー"と呼ばれる)に隣接の電気活性高分子層(例えばポリピロール、ポリアニリン、ポリスルフォン又はポリアセチレンからなる層)からなる。
【0060】
このタイプのステント装置はスウェーデン、リンチェピングのミクロマッスル社(Micromuscle AB)が製造している。動作が起動するとステントは収縮する。動作が停止するとステントは膨脹する。従って一旦装置を体管腔内に、例えば血管内に配置すると、印加電圧との電気的接続が切断され、装置は膨脹して血管と接触する。
【0061】
本発明の一実施形態ではナノカプセル含有層を上述の物の様なEAP作動装置に塗布する。ナノカプセルをイオン結合、水素結合、共有結合、物理的取り込み、ファンデルワールス結合及び親水性/疎水性相互作用による結合を含む種々な方法でEAP作動装置表面に塗布できる。例えばナノカプセルは共有結合により装置表面に塗布するか又は上に論じたヒドロゲル層の様な高分子層中に取り込む事ができる。意図の放除部位に到達した後、EAPの動作を停止して本装置を配備する。ナノカプセルに放除部位で結合するに十分な時間を与えた後(例えばナノカプセルが放除でき且つ結合用に機能化している場合)又は薬物が十分な時間放除された後(例えばナノカプセルが装置に放除できる様に結合していないで且つ/又は結合用に機能化されていない場合)、電圧を再度装置に印加し、その結果装置は収縮し体から取り外す。
【0062】
薬物使用の化学療法に加えて上記装置は例えばEAP含有装置に放射性表面を供与して(例えば放射性粉末又は放射性含有ナノカプセルを装置外面と結合して供与される)放射治療を行うのに使用される。
【0063】
本発明のその他の実施形態では医療装置を体内に埋め込むか又は挿入し、そこで装置を治療組織に隣接の孤立領域(又は“区画")形成に使用する。例えば“ドッグボーン"及び“ダブルソーセージ"バルーンカテーテルは既知技術であるが、膨脹時に独立領域或いは区画を確立し、その境界を医療装置と体管腔により規定する。このような孤立領域を医療装置により確立した後に、上述の物の様な組織結合用に機能化したナノカプセルを孤立領域
に放除し(例えば緩衝化溶液内での注射により)、ナノカプセルを隣接管腔壁(例えば血管壁)と結合できる。割り当て時間後、過剰の注射材を例えば吸引又は洗い出し作用によりデリバリー装置を通じて除去できる。本発明のこの様態は例えばナノカプセルの循環系全体への広がりを減少したい場合に有益である。
【0064】
更に本発明の他実施形態では以前に論じた物のように磁性をもつか(例えば磁性粉末含有ナノカプセル)又は磁界感応性を有するか(例えば鉄粉の様な常磁性材含有ナノカプセル)のいずれかであるナノカプセルを利用する。
【0065】
例えばある実施形態では、このようなナノカプセルを先ず体外で(例えばカテーテル周囲に巻き付けたコイルを用いて例えば磁界を発生する事により)装置(例えばカテーテル)に磁気的に結合して体内の好ましい場所に送る。ついで結合カプセル付き装置を患者体内の好ましい場所に導き、その場所で磁界を切りその結果局所的にカプセルを放除する。この様な粒子デリバリー法は多くの理由で有利である。例えばナノカプセルをカテーテルから周囲組織に放除する場合、デリバリー機構は非常に簡単であり(例えばコイル)且つナノカプセルに必要な物は装置外部上だけに供与され、その結果代わりのデリバリー機構を有する種々な装置に比し装置のデリバリー形状を小さくできる。
【0066】
他実施形態では医療装置を被験者体内に挿入し、例えば(a)磁界を有する(例えば永久磁石又は電磁石を含有する事で)事で、この場合帯磁及び常磁性ナノカプセルの両者を引き付けるか、或いは(b)鉄の様な一個又はそれ以上の常磁性材を含有し、この場合は帯磁ナノカプセルを引き付ける事に基づいてこの粒子を引き付ける。
【0067】
医療装置を正しく配置した後に、ナノカプセルを医療装置の近くに配置した(例えば注射又は経口摂取により)、直ちにナノカプセルを磁気的に医療装置と結合する。ナノカプセルは続いて装置部位で制御下に一個又は複数カプセル化薬物を放除する。この方法では医療装置は定期的に薬物補給できる。ある実施形態では装置は開口部を備え、例えば装置は一本又は複数のワイヤーから形成されるか又は装置は絞り又は窓を備え、装置の隣接組織が十分な薬物濃度に暴露されるのを保証する。
【0068】
特定実施形態を図4A−4Dに図式的に示す。図4AはEAP作動ステント400の体内腔420、この場合は食道中への配置を図式的に示す。上に指摘したように装置は非常に簡単で、例えば金属箔層が片側に結合電気活性高分子層付きの一連の絞り410を備え、食道内部で装置を膨脹及び圧着できる。装置は多数の方法を用いて磁性を持たす事ができ
る。例えば装置はEAP構造にサンドイッチしたり、箔に結合したり、織り構造などにしたシート、細長い片、ワイヤー又は粉末の形で磁石を備える。この特定実施形態では一連の磁性ワイヤー(図示していない)を装置400に織り込む。図示装置400は適当な電圧の印加によりデリバリー中収縮状態を維持する。
【0069】
印加電圧を打ち切ると、装置400が膨脹して図4Bに示すように管腔壁420と合致するように膨脹する。一旦装置が食道内で膨脹すると、被験者は図4Cに模式的に示したように定期的に磁性ビーズ430(番号付きの物)含有液体を嚥下できる。少なくとも幾つかのビーズ430は通過時に装置に引き付けられ、装置400に補充する。図4D参照。
【0070】
ある実施形態では医療器具は生分解性塗膜を備え、塗膜内に磁性ナノ粒子の様な磁性粒子を取り込む。磁性粒子は例えば単に磁性材(例えば強磁性材のみ)からなるか又はカプセル化磁性粒子(例えば高分子電解質多層殻内にカプセル化した強磁性材)を含有できる。本発明のナノカプセルの様に磁性ナノ粒子の最大寸法は通常50nm と10000nmの間である。
【0071】
本実施形態では本装置は生分解性塗膜内に磁性ナノ粒子を備え磁性を持たすため、患者に埋め込み又は挿入すると粒子数は減少し、時間と共に装置の磁性はより低くなる。その結果磁性又は常磁性材、例えば薬物含有磁性又は常磁性ナノカプセルを引き付け保持する本装置の能力が低下する。同様に磁性又は常磁性装置が医療器具に保持される能力(例えばステント用保持システム、大静脈フィルター用握り装置など)も又時間と共に低下する。このような塗膜を供与する事により、例えば医療器具用に非金属性か又は非磁性金属(例えばニオブ、チタンなど)からなるコア材を用いることができる。これにより後ほど例えば磁性層が分解し装置に感知できる程の磁性が無くなった後に、MRIを用いて医療器具を可視化できる。
【0072】
種々の実施形態をここに具体的に図示し記載したが、本発明の修正及び変更は本発明の精神と目的範囲から離脱しない限り上記教示による範囲内である事が認識される。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】本発明実施形態に従う機能化表面付きナノカプセルの略図。
【0074】
【図2A】本発明実施形態に従う未膨脹のバルーンカテーテル薬物デリバリーシステムの略図。
【図2B】本発明実施形態に従う図2Aの膨脹後のバルーンカテーテル薬物デリバリーシステムの略図。
【図3】本発明実施形態に従う血管の露出内皮下部に隣接配置したナノカプセル含有ヒドロゲル外層付きバルーンカテーテル外層の一部を図解した略図。
【0075】
【図4】本発明実施形態に従うEAP−作動医療装置の食道への挿入、それに続く本装置の配置、及び磁性ナノカプセルの露出を図解する一連の略図。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者に埋め込むか又は挿入に適した医療装置で、該医療装置が磁性又は常磁性領域及び該磁性又は常磁性領域に磁性的に引き付けられる複数のナノカプセルからなり、該ナノカプセルが治療薬、磁性又は常磁性材及び高分子電解質多層殻からなる装置。
【請求項2】
該医療装置がカテーテル又はガイドワイヤーである請求項1の医療装置。
【請求項3】
該医療装置がステント、グラフト、大静脈フィルター、ペースメーカー、心臓弁及び静脈弁から選んだインプラントである請求項1の医療装置。
【請求項4】
該医療装置が磁性領域を含む請求項1の医療装置。
【請求項5】
該磁性領域が強磁性領域である請求項4の医療装置。
【請求項6】
該磁性領域が電磁性領域である請求項4の医療装置。
【請求項7】
該医療器具が複数の異なる磁性領域を含む請求項1の医療装置。
【請求項8】
該医療装置全体が磁性又は常磁性である請求項1の医療装置。
【請求項9】
該医療装置が電気活性高分子作動装置を含む請求項1の医療装置。
【請求項10】
該ナノカプセルが磁性材を含む請求項1の医療装置。
【請求項11】
該ナノカプセルが常磁性材を含む請求項1の医療装置。
【請求項12】
該医療装置が磁性材領域を含み且つ該ナノカプセルが磁性又は常磁性材を含む請求項1の医療装置。
【請求項13】
該医療装置が磁性又は常磁性領域を含み且つ該ナノカプセルが磁性材を含む請求項1の医療装置。
【請求項14】
(a)医療器具を患者に挿入又は埋め込み、該医療装置が磁性又は常磁性領域を含み且つ(b)該医療器具に(i)治療薬、(ii)磁性又は常磁性材及び (iii)高分子電解質多層殻からなる複数のナノカプセルを磁性的に結合する事からなる方法。
【請求項15】
該ナノカプセルを患者に挿入又は埋め込み後に医療装置に磁性的に結合する請求項14の方法。
【請求項16】
該ナノカプセルを磁性的に結合後医療装置から放除する請求項15の方法。
【請求項17】
該ナノカプセルを患者への挿入又は埋め込み以前に医療器具に磁性的に結合する請求項14の方法。
【請求項18】
該ナノカプセルを患者に挿入又は埋め込み後に医療器具から放除する請求項17の方法。
【請求項19】
該ナノカプセルの一部を医療器具の埋め込み又は挿入以前に磁性的に除去する請求項17の方法。
【請求項20】
一時的に磁界を低下又は除去する事により更に該ナノカプセルを放除する事からなる請求項14の方法。
【請求項21】
該磁性領域が電磁性領域で且つ該一時的磁界が電磁性領域への電流フローを停止する事により減少又は除去する請求項20の方法。
【請求項22】
該磁性領域が強磁性領域で且つ該一時的磁界が患者に外部磁界を印加する事により減少又は除去し、その結果強磁性領域を消磁する請求項20の方法。
【請求項23】
(a)治療薬、(b)該治療薬をカプセル化した高分子電解質多層殻及び(c)該高分子電解質多層殻外面に結合する組織に特異的な配位子を含むナノカプセル。
【請求項24】
該組織に特異的な配位子がコラーゲン、フィブロネクチン、ビトロネクチン、ラミニン、フィブリノゲン及び接着分子から選択した一個又はそれ以上の細胞又は細胞外成分と結合する請求項23のナノカプセル。
【請求項25】
該接着分子が細胞内接着分子(ICAMS)及び血管接着分子(VCAMS)から選択した請求項24のナノカプセル。
【請求項26】
該組織に特異的な配位子が露出内皮下部と結合する請求項23のナノカプセル。
【請求項27】
該組織に特異的な配位子が糖タンパク配位子である請求項23のナノカプセル。
【請求項28】
該組織に特異的な配位子がインテグリンである請求項23のナノカプセル。
【請求項29】
該インテグリンが最晩期抗原(VLA)インテグリンスーパーファミリーの一員である請求項28のナノカプセル。
【請求項30】
該インテグリンがVLA−1、VLA−2、VLA−3及びVLA−6から選択した請求項29のナノカプセル。
【請求項31】
該治療薬を高分子電解質多層殻で囲まれたコア領域内に備えた請求項23のナノカプセル。
【請求項32】
該治療薬を高分子電解質多層殻層間に備えた請求項23のナノカプセル。
【請求項33】
請求項23のナノカプセルを含む埋め込みか挿入可能な医療装置。
【請求項34】
該医療装置がカテーテルか又はガイドワイヤーである請求項33の医療装置。
【請求項35】
該医療装置がステント、グラフト、大静脈フィルター、ペースメーカー、心臓弁及び静脈弁から選択したインプラントである請求項33の医療装置。
【請求項36】
該ナノカプセルを少なくとも医療装置表面の一部上に配置した塗布層内に備える請求項33の医療装置。
【請求項37】
該塗布層がヒドロゲル塗布層である請求項36の医療装置。
【請求項38】
該塗布層が生分解性塗布層である請求項36の医療装置。
【請求項39】
該生分解性塗布層が生分解性高分子電解質からなる請求項38の医療装置。
【請求項40】
該高分子電解質がゼラチン及びヘパリンから選択した請求項39の医療装置。
【請求項41】
該医療装置が磁性又は常磁性領域を含み、ナノカプセルが磁性又は常磁性材を含み、且つナノカプセルが医療装置の磁性又は常磁性領域に磁性的に引き付けられる装請求項33の医療装置。
【請求項42】
該医療装置が電気活性高分子作動装置を含む請求項33の医療装置。
【請求項43】
(a)請求項33の医療装置を患者に挿入又は埋め込み且つ(b)ナノカプセルを患者に放除する事を含む方法。
【請求項44】
該ナノカプセルを少なくとも医療装置表面の一部上に配置した生分解性塗布層内に備え且つナノカプセルを生分解性塗布層の分解時に放除する請求項43の方法。
【請求項45】
該ナノカプセルをナノカプセル含有液体を注射する事により医療装置から患者に放除する請求項43の方法。
【請求項46】
該医療装置が磁性領域を含み、ナノカプセルが磁性又は常磁性材を含み、ナノカプセルを磁界により挿入又は埋め込み段階中に磁性的に磁性領域と結合し、ナノカプセルを挿入又は埋め込み段階以後に磁界を低下又は除去する事により放除する請求項43の方法。
【請求項47】
該医療装置の磁性領域が生分解性塗膜内に取り込んだ磁性ナノ粒子を含む請求項4の医療装置。
【請求項48】
該磁性領域が生分解性塗膜内に取り込んだ磁性ナノ粒子を含み且つ一時的磁界を塗膜分解時に低下又は除去する請求項20の方法。



【図1】
image rotate

image rotate

【図3】
image rotate

image rotate


【公表番号】特表2006−518736(P2006−518736A)
【公表日】平成18年8月17日(2006.8.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−503146(P2006−503146)
【出願日】平成16年1月30日(2004.1.30)
【国際出願番号】PCT/US2004/002523
【国際公開番号】WO2004/069169
【国際公開日】平成16年8月19日(2004.8.19)
【出願人】(505036571)ボストン サイエンティフィック リミティッド (2)
【Fターム(参考)】