説明

薬物溶出性複合材

本発明は材料中に治療剤組成物を解放可能に含んでいる材料に関する。その材料は所望の速度で治療剤組成物を解放するように構成されている。本発明は、また、その材料を取り込んだデバイスにも関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は2010年10月21日に出願された同時係属出願第12/909,609号の一部係属出願であり、そして2009年11月9日に出願された米国仮出願第61/259,491号に基づく優先権を主張する。
【0002】
発明の分野
本発明は治療剤を解放することができるメディカルデバイス及びメディカル材料に関する。
【発明の概要】
【0003】
発明の要旨
本発明は、本発明に含まれる治療剤を決められた時間にわたって決められた濃度で解放することができる材料に関する。治療剤が通過するための経路は本発明の材料中に存在する。その経路は本発明に含まれる治療剤が本発明内を通りそして出ていくために進まなければならない距離を延長する。治療剤が本発明を出ていくために要する時間もその経路によって延長される。経路は治療剤を含んでいる材料内にある透過性及び不透過性組成物及び/又は構造の組み合わせによって本発明において確立される。選択された治療剤に対して不透過性である組成物及び/又は構造は、本発明の1つ以上の表面の少なくとも一部の上で治療剤に対するバリアとしても使用される。結果として、治療剤は、その選択された治療剤に対して不透過性である組成物及び/又は構造により覆われておらず、それと接触しておらず、又は、さもなければそれにより構成されていない領域においてのみ本発明を出ていくことができる。本発明のある実施形態において、選択された治療剤に対して不透過性である組成物及び/又は構造において開口部も提供される。
【0004】
代わりの実施形態において、経路は治療剤を含む材料内にある透過性及び半不透過性組成物及び/又は構造との組み合わせで本発明において確立される。半不透過性組成物及び/又は構造は本発明をとおした治療剤の移動に対するバリア又は他の障害物として作用する。結果として、治療剤は透過性組成物及び/又は構造よりも半不透過性組成物及び/又は構造をとおしてゆっくりと透過するであろう。
【0005】
本発明の実施形態により、治療剤組成物のデリバリーを適合させることができる。ある実施形態において、このような適合はその実施形態中に存在する治療剤の出発量又は分配を変更することなく、不透過性又は半不透過性組成物及び/又は構造の寸法、組成、特性及び配置を変更することにより行うことができる。
【0006】
本発明の実施形態は単独で、又は、本発明の他の実施形態と組み合わせて使用されうる。本発明は、また、心臓ペーシングデバイス、心臓除細動デバイス、神経刺激デバイス、グラフト及びステントグラフトなどの内部人工器官、ドラッグデリバリーデバイス、カテーテル及びフィルタなどの介入性デバイス、トランスデューサ、センサなどの診断デバイス、及び、1種以上の治療剤によって標的とされる生体組織及び/又は体液に近接して配置されるその他の医療デバイスなどのデバイスの部品であることもできる。
【0007】
本発明の実施形態は短時間又は長時間、体の中又は体の上に配置されるメディカルデバイスと組み合わせて使用されうる。
【0008】
本発明の埋め込み式実施形態は前立腺又は左心耳の近傍のような体内の特定の位置に抗血栓薬を溶出するために使用されうる。左心耳の領域の血栓の予防は左心耳遮蔽具の必要性を無くすことができる。この実施形態では、本発明において治療剤組成物、治療剤又は治療剤化合物を埋め込み式実施形態中に含ませることができ、そして埋め込まれたときに、高濃度の治療剤を溶出し、それは、次いで、血液が心臓及び循環器系中に洗い流されるときに急速に希釈される。
【0009】
本発明のこのような埋め込み式実施形態は、また、より長時間にわたって治療剤を溶出するように構成されうる。
【0010】
したがって、本発明の1つの実施形態は、少なくとも1つの表面を有する第一の生体適合性ポリマー材料及びその少なくとも一部の中に解放可能に取り込まれた治療剤、ここで、前記第一の生体適合性ポリマー材料の一部は前記治療剤に対して不透過性である、及び、前記少なくとも1つの表面の実質的にすべてを覆っている前記治療剤に対して不透過性である第二の生体適合性ポリマー材料を含む、治療剤解放性材料に関する。
【0011】
本発明の別の実施形態は、少なくとも1つの表面を有する多孔性生体適合性ポリマー材料、生体適合性フルオロポリマーコポリマーと解放可能に混合されておりかつ前記多孔性生体適合性ポリマー材料の孔中に取り込まれている治療剤、ここで、前記多孔性生体適合性ポリマー材料の一部は前記治療剤に対して不透過性である、及び、前記少なくとも1つの表面の実質的にすべてを覆っている前記治療剤に対して不透過性である非多孔性生体適合性ポリマー材料を含む、治療剤解放性材料に関する。
【0012】
本発明のさらなる実施形態は、少なくとも1つの表面を有するフィルムの形態の第一の生体適合性ポリマー材料及び前記フィルムの少なくとも一部の中に解放可能に取り込まれた治療剤、ここで、前記第一の生体適合性ポリマー材料の一部は前記治療剤に対して不透過性である、及び、前記フィルムの前記少なくとも1つの表面の実質的にすべてを覆っている前記治療剤に対して不透過性である第二の生体適合性ポリマー材料に関する。
【0013】
本発明の他の実施形態は治療剤解放性材料を中に取り込んだメディカルデバイスに関する。たとえば、1つの実施形態は、近位末端及び遠位末端を有する心臓リード要素、前記近位末端での導電性コネクタ、前記遠位末端にある電極、前記コネクタを前記電極に接続する少なくともlつの導電性要素を含み、前記心臓要素の少なくとも一部は治療剤解放性材料により覆われており、該治療剤解放性材料は少なくとも1つの表面を有する第一の生体適合性ポリマー材料及びその少なくとも一部の中に解放可能に取り込まれた治療剤、ここで、前記第一の生体適合性ポリマー材料の一部は前記治療剤に対して不透過性である、及び、前記少なくとも1つの表面の実質的にすべてを覆っている前記治療剤に対して不透過性である第二の生体適合性ポリマー材料を含む、心臓ぺーシング又は心臓内除細動器(Intracardiac Cardioverter Defibrillation)(ICD)リードに関する。
【0014】
別の実施形態は、近位末端及び遠位末端を有するリード要素、前記近位末端での導電性コネクタ、前記遠位末端にある電極、前記コネクタを前記電極に接続する少なくともlつの導電性要素、前記遠位末端にあるチューブ状リード先端部を含み、前記リード要素の少なくとも一部は治療剤解放性材料により被覆されており、該治療剤解放性材料は少なくとも1つの表面を有する第一の生体適合性ポリマー材料及びその少なくとも一部の中に解放可能に取り込まれた治療剤、ここで、前記第一の生体適合性ポリマー材料の一部は前記治療剤に対して不透過性である、及び、前記少なくとも1つの表面の実質的にすべてを覆っている前記治療剤に対して不透過性である第二の生体適合性ポリマー材料を含む、導電性リードに関する。
【0015】
本発明の各実施形態において、少なくとも1つの開口部は本発明の不透過性材料及び/又は不透過性部分に配置されてよく、それにより、治療剤が解放され又はさもなければ材料をとおして進む経路を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図面の簡単な説明
【図1】図1は本発明の実施形態の斜視図を示す。
【図1A】図1Aは図1中の線Cで取った断面図を示す。
【図2】図2は本発明の別の実施形態の斜視図を示す。
【図2A】図2Aは図2中の線Dで取った断面図を示す。
【図3】図3は図2の実施形態の斜視図を示す。
【図4】図4はグラフである。
【図5】図5は本発明の実施形態を示す。
【図6】図6は本発明のデリバリー及びリトリーバルのための手段を示す。
【図7】図7は本発明の実施形態を示す。
【図8A】図8Aは本発明の実施形態を示す。
【図8B】図8Bは図8Aの線Aで取った断面図を示す。
【図9A】図9Aは本発明の実施形態を示す。
【図9B】図9Bは図9Aの線Bで取った断面図を示す。
【図10】図10は本発明の実施形態を示す。
【図11】図11は本発明の実施形態を示す。
【図12】図12は本発明の実施形態を示す。
【図13】図13は本発明の実施形態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
発明の詳細な説明
本発明は材料内に解放可能に含まれた治療剤組成物を有する材料に関する。この材料は所望の速度で治療剤組成物を解放するように構成されている。本発明は、また、その材料を取り込んだデバイスにも関する。好ましい実施形態において、材料及び/又は構造は、本発明の材料内に存在する治療剤組成物の移動を妨害し又はさもなければ阻害する。ある実施形態は、本発明からの治療剤組成物の解放速度を低減し又はさもなければ限定するが、本発明を通る治療剤組成物の移動を妨害せず、ブロックせず又はさもなければ阻害しない。
【0018】
治療剤が本発明から解放される速度は幾つかのファクターにより影響を受ける。そのファクターとしては、本発明の成分の化学組成、成分の物理的関係、本発明の全体としての形状、及び、本発明に提供されるあらゆる開口部が挙げられる。本発明の成分の化学組成には、治療剤の処方及び治療剤を含む材料、たとえば、質量分率、便益剤(expedients)の有無、及び、本発明での拡散係数の大きさが含まれる。
【0019】
治療剤に対して透過性である組成物及び/又は構造と、治療剤に対して不透過性である組成物及び/又は構造との組み合わせは本発明において使用され、それにより、治療剤が本発明をとおして移動しそして出ていくときに治療剤が移動する経路が確立される。結果として、治療剤は材料の不透過性部分でなく、透過性部分から優先的に溶出され又はさもなければ解放される。ある実施形態において、半透過性組成物及び/又は構造は本発明をとおした治療剤組成物の移動に対する部分バリア又は他の部分障害物として使用できる。
【0020】
本発明の顕著な利点は解放される治療剤組成物の合計百分率と同時に解放速度を制御することができる能力である。ある治療剤組成物は不安定であり、そしてある期間にわたって多量の又はさらに少量部分の組成物を本発明の内部に残留させることは望ましくない。より伝統的なアプローチでは、解放速度は治療剤組成物及びポリマーの混合物により制御される。本発明とは異なり、治療剤組成物は従来のデバイス内部に永久に又は望ましくない期間にわたって残留することがある。
【0021】
さらに、本発明は治療剤が本発明から解放される速度に影響を及ぼすことができる様々な形態を有することができる。その形態としては、フィルム、シート、ロッド、管腔空間を有するチューブ状形状、中空もしくは中実球体形状、ラミネート、ラップ及びその他の形状が挙げられる。
【0022】
本発明の材料としては、治療剤組成物、治療剤又は治療化合物、たとえば、小分子薬剤、大分子薬剤、薬剤(medicaments)、心臓血管薬、化学療法剤、抗菌剤、抗生物質、麻酔薬、止血薬、抗ヒスタミン薬、抗腫瘍剤、抗脂質、抗真菌剤(antifungals)、抗真菌薬(antimycotics)、解熱剤、血管拡張剤、高血圧剤、酸素フリーラジカルスカベンジャー、ビタミン、抗ウイルス剤、鎮痛剤、細胞増殖阻害薬、抗炎症剤、診断薬、可視化剤、血管造影剤、位相コントラスト剤(phase contrast agents)及び放射線不透過剤、又は、血栓の破壊を促進することを目的とした血栓溶解剤、血栓症を防止することを目的としたヘパリンなどの抗凝固剤及びそれらの組み合わせが挙げられる。治療剤組成物はリン酸デキサメタゾンナトリウム、酢酸デキサメタゾン、デキサメタゾン及び/又はジプロピオン酸ベクロメタゾンなどの抗炎症用ステロイドであることができる。
【0023】
なおも他の治療剤組成物としては、限定するわけではないが、抗再狭窄薬(antirestenotic drugs)、たとえば、限定するわけではないが、ピメクロリムス、サイトカラシン、ジクマロール、シクロスポリン、ラトランクリンA、メトトレキサート、タクロリムス、ハロフジノン、ミコフェノール酸、ゲニステイン、バチミスタト(batimistat)、デキサメタゾン、クドラフラボン(cudraflavone)、シンバスタチン、プレドニゾロン、ドキソルビシン、ブロモピルビン酸、カルベジロール、ミトキサントロン、トラニラスト、エトポシド、ヒルジン、トラピジル、マイトマイシンC、アブシキシマブ、シロスタゾール、イリノテカン、エストラジオール、ジアジクオン、ジピリダモール、メラトニン、コルヒチン、ニフェジピン、ビタミンE、パクリタキソール(paclitaxol)、ジルチアゼム、ビンブラスチン、ベラパミル、ビンクリスチン、ラパマイシン、アンギオペプチン(angiopeptin)、エベロリムス、熱ショックタンパク質、ゾタロリムス、ニトログリセリン及びプレドニゾンが挙げられる。
【0024】
本発明の好ましい実施形態において、治療剤化合物に対して透過性であるフィルム材料は治療剤化合物が混合されたコポリマーにより含浸され又は被覆される。好ましいフィルム材料は延伸ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)構造である。コポリマーは好ましくはテトラフルオロエチレン/ペルフルオロメチルビニルエーテル(TFE/PMVE)コポリマーである。得られた被覆されたフィルムは治療剤化合物に対して、より低い透過性となることができ、好ましくは不透過性である。ある実施形態において、フィルムの透過性は変化しないこともある。
【0025】
ある実施形態において、治療剤組成物、治療剤又は治療剤化合物に対して不透過性である材料は、その不透過性材料の箇所において、本発明をとおして又は本発明から外への治療剤又は治療剤化合物の移動を防止するための「キャッピング層」として治療剤含有被覆フィルム材料の少なくとも1つの表面上に配置される。「キャッピング層」のための材料は好ましくはシリコーン組成物などのポリマーから形成される。実施形態によって、キャッピング層材料は被覆フィルム材料の一部又はフィルム材料のすべてのいずれかに適用される。キャッピング層材料により覆われていない被覆フィルム材料の部分は、体液に暴露されたときに、治療剤組成物、治療剤又は治療剤化合物を優先的に溶出する。キャッピング層材料は、フィルム材料を基材に適用した後に、被覆フィルム材料上に適用されてよい。
【0026】
ある実施形態において、「キャッピング層」となる不透過性材料又は被覆フィルムはその中に少なくとも1つの開口部を有する。
【0027】
ある実施形態において、本発明はデバイス又はその他の構造体の形態で基材と組み合わされる。これらの実施形態において、被覆フィルム材料は本発明の下にある基材のすべて又は一部に適用される。被覆フィルム材料はテープ状に切断され、そして基材の周囲にテープをラッピングすることにより適用されうる。テープは基材の少なくとも一部の周囲を渦状、らせん状に及び/又は長手方向に巻かれる。渦状(らせん状)に巻かれたフィルムの層を接着させるために必要に応じて接着剤を使用してよい。もし、被覆フィルムが被覆フィルム構造物からの溶出を防止するキャッピング層により「キャッピング」されているならば、キャッピング層も接着剤として作用しうる。被覆フィルムは、被覆面が基材と対面して又は被覆面が基材とは離れるように向けて、基材に適用されてよい。基材としては、チューブ、ロッド、ペレット、又は、組み立てられたデバイスの部品となることができる基材を含む他の任意の三次元物体が挙げられる。基材は金属、ポリマーなどから作られてよい。基材は、本発明をとおして又は本発明から出てくる溶出経路を形成するように成形され又は変更されてよい。
【0028】
本明細書中に使用されるときに、用語「生体吸収性」とは材料の少なくとも一部が生体組織又は体液中で加水分解し、崩壊し又はさもなければ溶解する生理学的プロセスを指す。
【0029】
本明細書中に使用されるときに、用語「永久埋め込み物」とは、患者の寿命のすべて又はほとんどにおいて埋め込むことを目的としたメディカルデバイスを指す。
【0030】
本明細書中に使用されるときに、用語「半永久埋め込み物」とは患者の期待寿命の大半よりも短い期間、患者に埋め込むことを目的としたメディカルデバイスを指す。半永久埋め込み物はデバイスの除去又はデバイスに関連するその他の手順のために埋め込み後にしばしばアクセスされる。
【0031】
図1を参照すると、被覆フィルム(10)はフィルムに取り込まれた治療剤組成物、治療剤又は治療剤化合物(図示していない)を有する。被覆フィルム(10)は基材(18)上に適用される。キャッピング層(12)は被覆フィルム(10)の上に適用される。キャッピング層(12)は特定の治療剤組成物、治療剤又は治療剤化合物に対して不透過性である材料から作られているか、又は、特定の治療剤組成物、治療剤又は治療剤化合物に対して不透過性であるように構成される。
【0032】
この実施形態において、基材(18)は管腔空間(16)を有するチューブ状構造である。キャッピング層材料(12)は被覆フィルム材料(10)の一部のみを覆い、それにより、被覆フィルム材料の一部を基材(18)の縁又はリップの周囲で露出している。被覆フィルム材料(10)の露出部分は厚さ寸法(11)を有する。
【0033】
この実施形態を図1の線Cで取った断面図として図1Aにも例示し、それは基材材料(18)、管腔空間(16)、被覆フィルム材料(10)及びキャッピング層材料(12)を示す。
【0034】
実際上、図1に例示した実施形態は体組織又は体液と接触又は近接して配置される。一旦、体組織及び/又は体液と接触すると、被覆フィルム(10)内に含まれる治療剤組成物、治療剤又は治療剤化合物(図示していない)はキャッピング層材料(12)により覆われていない被覆フィルム材料の部分から優先的に溶出される。この実施形態において、たとえば、治療剤組成物、治療剤又は治療剤化合物は管腔空間(16)の開口部の周囲でキャップされていない又はさもなければ覆われていない縁(11)から溶出し又はさもなければ本発明から出ていく。被覆フィルム材料(10)中の治療剤組成物、治療剤又は治療剤化合物はキャッピング層材料(12)により覆われた被覆フィルム材料(10)の部分から拡散し又はさもなければ移行し、そして被覆フィルム材料(10)の覆われておらずそして露出した領域から本発明を出ていく。
【0035】
本発明の別の実施形態を図2に例示する。この実施形態において、被覆フィルム材料(10)はそのフィルム中に取り込まれた治療剤組成物、治療剤又は治療剤化合物(図示していない)を有する。被覆フィルム材料(10)は基材(18)上に適用される。キャッピング層材料(12)は被覆フィルム材料(10)の全外部表面上に適用される。キャッピング層(12)は特定の治療剤組成物、治療剤又は治療剤化合物に対して不透過性である材料から作られているか、又は、特定の治療剤組成物、治療剤又は治療剤化合物に対して不透過性であるように構成される。孔の形態の開口部(13)は基材18をとおして作られており、基材(18)の管腔空間(16)に対して被覆フィルム材料(10)を露出している。開口部(13)の上でかつ基材(18)と被覆フィルム材料(10)との間に多孔性材料を配置してよい。さらに、開口部(13)の上に配置したこの材料は治療剤組成物、治療剤又は治療剤化合物の解放を調節することができる。
【0036】
図2Aは図2の線Dで取った断面図であり、それは基材(18)、管腔空間(16)、被覆フィルム材料(10)、キャッピング層材料(12)及び開口部(13)を示す。
【0037】
実際上、図2に例示した実施形態は体組織又は体液と接触又は近接して配置される。一旦、体組織及び/又は体液と接触すると、被覆フィルム材料(10)中の治療剤組成物、治療剤又は治療剤化合物は開口部(13)をとおして優先的に溶出し、そして管腔空間(16)から周囲の体液及び/又は体組織に出ていく(図示していない)。被覆フィルム材料(10)中の治療剤組成物、治療剤又は治療剤化合物はキャッピング層材料(12)により覆われそして開口部(13)から離れた所にある被覆フィルム材料(10)の部分から開口部(13)へと移行できる。
【0038】
図3は図2に示す実施形態の斜視図であるが、図2に示すとおりの管腔空間(16)をカバー材料(17)が覆っている。場合により、開口部(20)はカバー材料(17)中に作られてよく、それをとおして、スクリューなどの組織固定手段(19)を含めることができる。さらなる組織固定手段としては適切なアンカー、とげ(barbs)、フック又は接着剤が挙げられる。組織固定手段は金属材料又はポリマー材料から作られることができる。金属材料又はポリマー材料は生体吸収性であっても又は非生体吸収性であってもよい。生体吸収性金属の例はマグネシウムである。生体吸収性ポリマーの例はPGAとして一般に知られているポリグリコール酸である。
【0039】
実際上、図3に示す実施形態は組織固定スクリュー(19)を用いて組織中に固定されそして被覆フィルム材料(10)中の治療剤組成物、治療剤又は治療剤化合物は開口部(13)から管腔空間(16)中に優先的に溶出され、そして開口部(20)から周囲の体組織及び/又は体液中に溶出される。図3に示す実施形態は下記に示すとおりの心臓及びその他の組織中への埋め込みのために使用されうる。たとえば、心臓リードにおいて、組織固定スクリュー(19)はしばしば右心室の隔壁中に配置される。
【0040】
図4は例1に記載される実施形態の解放薬物の累積質量の時間の関数としてのグラフを示す。
【0041】
図5は本発明の別の実施形態を示す。ハウジング(26)は組織結合スクリュー(28)などのハウジング(26)を組織に結合するための手段を含む本発明の治療剤溶出構造を含む。用途によって、ハウジング(26)は左心耳(30)などの組織領域又は解剖学的位置に結合されうる。結合は永久であっても、又は、ハウジング(26)が次いで除去されそして場合により交換される場合には半永久であってもよい。
【0042】
ハウジング(26)は例1に記載される実施形態において導入されうる。ハウジング(26)は金属材料又はポリマー材料から作られることができる。ハウジング(26)は中実であり、中空であり、又は、図7に示すとおりのパーホレーション(32)などの特徴を含む。
【0043】
1つの実施形態において、ハウジング(26)及び組織結合スクリュー(28)の両方は生体吸収性である材料から作られる。1つの実施形態において、全ハウジング(26)はその中に治療剤組成物、治療剤又は治療剤化合物が取り込まれた中実の生体吸収性材料である。時間の経過とともに、全ハウジング埋め込み物は治療剤を溶出しながら、加水分解し又はさもなければ溶解するであろう。なおも別の実施形態において、生体吸収性材料内部に取り込まれた治療剤組成物、治療剤又は治療剤化合物は組成及び濃度の両方が変化しうる。たとえば、ハウジング(26)は、治療剤組成物、治療剤又は治療剤化合物の初期溶出用量が非常に高く、生体吸収能力が変化する材料を用いることにより生じる可変生体吸収性の関数として効力が時間とともに低下していくように構成されうる。1つの実施形態において、このような可変溶出は、各層が異なる治療剤濃度を有し、又は、各層が異なる速度の生体吸収能力を有し、又は、それらの両方を有する多層の治療剤装填生体吸収性材料を有するハウジング(26)を構成することにより使用できる。
【0044】
溶出速度は、また、ハウジング(26)を変更することにより変化されうる。たとえば、ハウジング(26)は図7に示すとおりのパーホレーション(32)を含むことができる。パーホレーション(32)はハウジング(26)の内部領域からの溶出を可能にし、又は、ハウジング(26)の表面積を増加させることを可能にする。1つの実施形態において、溶出速度は図7に示すとおりの多孔性もしくは半透過性カバリング材料(34)によりハウジング(26)をオーバーラップし又は包むことにより制御されうる。多孔性延伸ポリテトラフルオロエチレン材料は生体適合性を示し、実質的に化学不活性である。材料をオーバーラップし又は包むための多孔性延伸ポリテトラフルオロエチレン材料は好ましい材料である。
【0045】
ある状況において、本発明の埋め込み型実施形態を回収し又は交換することが必要なことがある。回収は手掴みツールにより行うことができる。1つの実施形態において、磁性アタッチメントを用いて、埋め込みデバイスを回収し又は交換する(たとえば、図6を参照されたい)。磁石(36)はハウジング(26)及び結合されるカテーテル(38)の内部に埋め込まれ又は表面に配置される。磁石(36)は、磁石の間の引力を発揮させるように構成されている。一旦、十分な磁気力が確立されると、ハウジング(26)のその場での捕獲及び移動を行うことができる。本発明でシース(40)を用いることができる。シース(40)をハウジング(26)上を進行させ、全体の装置を回転させて、組織結合スクリュー(28)を解放し、埋め込み箇所から除去する。
【0046】
本発明の実施形態は、心臓ぺーシングもしくは心臓内除細動器(ICD)もしくは神経刺激リード又は他の生体組織に近接して配置される他の治療剤溶出デバイスのための治療剤溶出先端を含む種々の目的で構成されうる。一旦、介入もしくは外科的手段により所望の位置に配置されそして組織により包囲され又はアンカーにより組織に固定されたら、本発明は局所的に又は全身に薬剤を送達させることにより治療上の価値を有することができる。本明細書中では左心耳(30)埋め込み箇所を記載したが、本発明は、肝臓、腎臓、脳又は末梢血管系などの様々な他の用途に応用可能であるものと評価されるべきである。したがって、本発明の使用は心血管系に限定される必要はない。たとえば、抗ヒスタミン薬又は他のアレルギー症状緩和剤を装填した副鼻腔内の埋め込み物の実施形態も考えられる。
【0047】
図8Aは本発明の実施形態を示す。図8Aを参照とすると、治療剤解放性構造(40)は生体適合性材料、たとえば、被覆フィルム(10)、「キャッピング層」又は不透過性材料(12)、不透過性材料(12)をとおして延在している開口部(42)を含む。治療剤解放性構造(40)はいかなる寸法に構成されてもよいが、長さ約2cmで幅約0.8cmを有するように構成されうる。キャッピング層(12)はいかなる厚さであってもよい。約0.01mmの厚さを用いてよい。被覆フィルム(10)のすべてを包囲するように示しているが、キャッピング層(12)は被覆フィルム(10)の一部のみを包囲していてもよい。被覆フィルム(10)はいかなる厚さであってもよい。0.5mmの厚さを使用することができる。開口部(42)は被覆フィルム(10)の一部を覆うのを回避することにより形成されても、又は、当該技術において知られているとおりの手段によりキャッピング層(12)を切断することにより形成されてもよい。開口部(42)は開口部上に透過性材料のカバーを提供することにより解放をさらに調節するための拡散バリアとして作用することができる。開口部(42)はいかなる寸法及び形状であってもよい。円形形状を有し、直径が約1mmである開口部(42)を使用することができる。1つよりも多い開口部を使用することができる。開口部(42)は不透過性材料(12)のいずれの位置に配置されてもよい。
【0048】
治療剤が治療剤解放性構造(40)から解放される速度は、被覆フィルム(10)の量又は寸法が変更されるならば、又は、開口部(42)のサイズ又は位置が変更されるならば、変化するであろう。
【0049】
被覆フィルム(10)を使用する代わりに、ポリマーなどのマトリックス中に取り込まれたものを含む治療剤組成物、治療剤又は治療剤化合物も本発明の実施形態において使用されうることが理解されるであろう。
【0050】
この実施形態を図8A中の線Aで取った断面図として図8Bにも示し、被覆フィルム(10)及びキャッピング層材料(12)及び開口部(42)を示している。
【0051】
実際上、図8A〜8Bに示す実施形態は上記で議論したとおりの治療剤組成物、治療剤及又は治療剤化合物デリバリーのための様々なメディカルデバイスに応用でき又は生体内で使用されうる治療剤解放性構造又は材料(40)である。メディカルデバイスに応用するならば、開口部(42)の配置は体組織及び/又は体液と接触するように操作されうる。一旦、体組織及び/又は体液と接触すると、被覆フィルム(10)中に含まれる治療剤組成物、治療剤又は治療剤化合物(図示していない)はキャッピング層(12)の材料により覆われていない構造(40)の部分から優先的に溶出される。この実施形態において、たとえば、治療剤組成物、治療剤又は治療剤化合物は示された開口部(42)から溶出し又はさもなければ本発明から出ていく。被覆フィルム(10)中の治療剤組成物、治療剤又は治療剤化合物はキャッピング層(12)の材料によって覆われている被覆フィルム(10)の部分をとおして拡散し又はさもなければ移行し、そして被覆フィルム(10)の覆われていない、露出された領域から本発明を出ていく。
【0052】
図9A及び9Bは本発明の実施形態を示し、図9Bは図9A中の線Bで取った断面図である。図9A及び9Bを参照すると、治療剤解放性構造(50)は被覆フィルム(10)、「キャッピング層」又は不透過性材料(12)及びその不透過性材料(12)をとおして延在している開口部(42)を含む図8A及び8B中の実施形態に関して記載したように構成されている。被覆フィルム(10)中に取り込まれた特定の治療剤組成物、治療剤又は治療剤化合物に対して不透過性又は半透過性であることができるバリア材料(52)は被覆フィルム(10)内に配置されている。バリア材料(52)の高さを図9Bに、キャッピング層(12)の間の全垂直距離に延在しているものとして示しているが、この距離の一部分のみを延在するような寸法であってもよい。バリア材料(52)の幅も様々であってよく、バリア(52)の数も同様である。
【0053】
図9A(明瞭にするために上部キャッピング層(12)を除いている)において、バリア材料(52)は被覆フィルム(10)の1つの縁から第二の縁に向って延在しており、そしてその第二の縁から離れた距離を終端とするように示されている。この距離のみ又はバリア材料(52)の数又は寸法と組み合わせたこの距離は様々であってよく、そして開口部(42)で出ていく出口を示す矢印とともに点線として図9aに示すように、理論的分子経路により示されるとおり、被覆フィルム(10)をとおした治療剤の輸送経路もしくは溶出経路を適合するために使用できる。任意の方法でこの溶出経路を変更することにより、治療剤組成物、治療剤又は治療剤化合物の溶出速度を変更することができる。溶出経路は図10〜12にさらに例示されるとおりに、バリア材料(52)の向きを変えることにより変更できる。
【0054】
実際上、図9A〜9Bに示す実施形態は治療剤組成物、治療剤又は治療剤化合物のデリバリーのために生体内で使用されてよく、又は、上記のとおりのメディカルデバイスなどの基材に適用されてよい。
【0055】
図10はバリア材料(52)が治療剤解放性構造(60)の中心線から離れて配置され、そして被覆フィルム(10)の1つの縁から長手方向に一定距離で延在している本発明の実施形態を示す。バリア(52)は、また、前記縁から離れた位置にあってもよい。あらゆる向きのバリア材料(52)を用いてもよい。長手中央線から0でない角度の向きのバリア材料(52)を用いることができる。約5°の向きを用いることもできる。上記のとおり、あらゆる長さのバリア材料(52)を用いることができる。バリア材料(52)の末端と被覆フィルム(10)との間の間隔が約1mm残るバリア材料(52)の長さも使用できる。
【0056】
バリア材料(52)の形状、寸法及び位置によって、バリア(52)により分離された被覆フィルム(10)の部分は被覆フィルム(10)に混合され又はさもなければ取り込まれた治療剤化合物のリザーバとして作用しうる。一般に、被覆フィルム(10)の分離された部分の体積が大きいほど、その部分はよりリザーバとして作用することになる。体積が小さいほど、その部分はより溶出チャンネルとして作用することになる。リザーバとして作用するときに、被覆フィルム体積は異種の治療剤化合物を含むことができる。たとえば、図10において、バリア(52)の上方でかつ開口部(42)の近傍にある被覆フィルム(10)の部分は抗血栓剤を含むことができ、そしてバリア(52)の下方に位置する被覆フィルム(10)の下部部分は抗炎症剤を含むことができる。使用上、治療剤解放性構造(60)は血管閉塞部の最も近傍に配置されることができ、それで、開口部(42)の近傍にある抗血栓治療剤が溶出して、最初に閉塞部を溶解し、次いで、抗炎症剤が溶出して、病変部位で炎症を緩和する。
【0057】
図11は本発明の実施形態を示す。図11は上記に記載のような治療剤解放性構造(70)を示すが、バリア材料(52)は構造(70)の長手方向中央線に対して垂直に配置されており、図9A及び9Bに示したものより互いに近接している。この実施形態は以下の属性の溶出経路を示す。この実施形態はバリアがなく孔に近接した治療剤化合物の部分を突発的に解放し、次いで、バリアよりも上に含まれる治療剤化合物の大半をより長時間で解放する。図11に示す3つのバリアは治療剤化合物が通過する経路を大きく延ばしている。孔の近傍にバリアを移動させると、治療剤化合物の突発的な解放を低減し、より多くの治療剤化合物が後にやがて解放されることになる。バリアどうしを比較的に近接させると、バリア間で少量の治療剤化合物となり、効果的に2つのリザーバを形成する。図9Aに示すように、バリアをより離れた間隔とすると、4つのリザーバ系を形成することができる。
【0058】
図12は本発明の実施形態を示す。図12は上記のような治療剤解放性構造(80)を示すが、バリア材料(52)は構造(70)の長手方向中央線に対して平行に配置されそして互いに近接して配置されている。この実施形態は図9〜11に示されたものよりも長い経路を示す。この実施形態において、他の構造と比較して、最も長い時間治療剤化合物が解放される。上記のとおり、より早く又はより遅く解放される治療剤化合物の量は、それぞれ、孔からより近くに又は遠くにバリアを移動させることにより適合されうる。さらに遠くにバリアの間隔を開けると、治療剤リザーバとして作用する被覆フィルム(10)の領域のサイズを変更するであろう。
【0059】
図13は上記のような治療剤解放性構造(90)の断面を示すが、バリア(54)は、被覆フィルム(10)を除去した後に、対向したキャッピング層(12)の部分を結合させることにより形成されている。この構造は当該技術において知られた様々な方法により得ることができる。たとえば、被覆フィルム(10)を、アウトレット(42)を含むキャッピング層(12)の上に配置することができる。その後、被覆フィルム(10)の所望の部分をレーザなどにより除去する。その後、キャッピング層(12)を治療剤解放性構造(90)のすべての縁に追加し、そして、孔(42)を有するキャッピング層(12)と反対側の構造物の上部にキャッピング層(12)を追加する。その後、構造物(90)をダイに入れ、そのダイは対向するキャッピング層(12)の部分をプレスし、それらを結合させ、不透過性バリア(54)を形成する。圧力に加えて、キャリア層(12)の部分の結合性は熱の印加又は事前に除去された被覆フィルム(10)の領域への接着剤の塗布により高めることができる。不透過性バリア(54)の形状及び寸法は所望の溶出経路を得るために様々であることができることは理解されるであろう。
【実施例】
【0060】

例1
EP1545642B1に記載されるとおりのテトラフルオロエチレン/ペルフルオロメチルビニルエーテル(TFE/PMVE)のコポリマーをFluorinert FC-77 (3M, St Paul, MN)の0.12wt%溶液中で得た。この溶液に、適切な量のリン酸デキサメタゾンナトリウム(Pharmacia & Upjohn Company, Kalamazoo Michigan)を添加し、薬剤の0.12wt%溶液を製造した。溶液を音波処理し、完全な混合を確保した。
【0061】
厚さ約0.01mm及び幅0.8mmの延伸ポリテトラフルオロエチレン材料 (ePTFE)フィルムテープを薬物解放装置の製造に用いた。約8cm長さのePTFEフィルムテープを各末端にて接着テープ区分を用いてアルミホイルの平坦シート上に取り付けた。220KPaゲージ空気圧に設定されたエアブラシ(Badger 標準セット、モデル350 (Badger Air Brush Co., Franklin Park, IL))を用いて、ePTFEフィルムテープをTFE/PMVE及びリン酸デキサメタゾンナトリウム溶液によりスプレイ被覆した。スプレイ被覆は2〜3分間行い、コーティングを空気乾燥させ、そして被覆されたフィルムを、その後、再び被覆した。テープに加えられるコーティング質量が約1mg/1cm長さとなるまで、これを継続した。フィルムテープの反対面は未被覆のままとした。
【0062】
外径1.50mm、長さ3cmの金属チューブを得た。片面にエチレンフルオロエチレンペルフルオリドの熱接着層を有する延伸ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)を含む実質的に非多孔性である複合材フィルムの薄い層をチューブに適用し、1つの末端の先端から約0.8cm後退したところまで延在していた。この構造物をモデル心臓ぺーシングリード先端として用いた。0.8cm幅及び2cm長さの被覆フィルムテープのセグメントの末端をチューブの外側周囲に、薬物被覆面をチューブに対面させるようにして、その末端でシリコーン接着剤(MED-137, NuSil Technology, Carpinteria CA)を用いて取り付け、完全に硬化させた。硬化後に、スパチュラを用いて、被覆テープの被覆面上にシリコーン接着剤の薄い膜を広げ、そしてテープの被覆面をチューブに向けて包囲した。この包囲された被覆テープを、スパチュラにより適用されたシリコーンを用いて、その外側表面の一部をキャッピングし、被覆テープに包囲された金属チューブの開口部に近接して、幅約1mm以下の薄いストリップを被覆させなかった。この構造物を一晩硬化させた。
【0063】
そのように製造された構造物は理論薬物装填が約2mgであり、薬物解放量の決定のために試験した。構造物を3mlのPBSを含むバイアル中に入れ、そして37℃インキュベータ中に維持した。3mlのサンプルを様々な時点で取り出し、そしてバイアルを新鮮なPBSにより補充し、3mlの体積を維持した。薬物濃度をUV分光器にて242nmで測定した。図4に示すグラフは薬物であるリン酸デキサメタゾンナトリウムの溶出時間が延長されたことを示している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの表面を有する第一の生体適合性ポリマー材料及びその少なくとも一部の中に解放可能に取り込まれた治療剤、
ここで、前記第一の生体適合性ポリマー材料の一部は前記治療剤に対して不透過性である、及び、
前記少なくとも1つの表面の実質的にすべてを覆っている前記治療剤に対して不透過性である第二の生体適合性ポリマー材料、
を含む、治療剤解放性材料。
【請求項2】
前記第二の生体適合性ポリマー材料中に少なくとも1つの開口部をさらに含む、請求項1記載の治療剤解放性材料。
【請求項3】
前記治療剤解放性材料の下にある基材材料をさらに含む、請求項1記載の治療剤解放性材料。
【請求項4】
前記治療剤解放性材料の下にある基材材料をさらに含む、請求項2記載の治療剤解放性材料。
【請求項5】
前記第一の生体適合性ポリマー材料はフルオロポリマー組成物を含む、請求項1記載の治療剤解放性材料。
【請求項6】
前記フルオロポリマーは多孔性ポリテトラフルオロエチレンである、請求項5記載の治療剤解放性材料。
【請求項7】
前記第二の生体適合性ポリマー材料はシリコーン組成物である、請求項1記載の治療剤解放性材料。
【請求項8】
前記治療剤はリン酸デキサメタゾンナトリウムである、請求項1記載の治療剤解放性材料。
【請求項9】
少なくとも1つの表面を有する多孔性生体適合性ポリマー材料、
生体適合性フルオロポリマーコポリマーと解放可能に混合されておりかつ前記多孔性生体適合性ポリマー材料の孔中に取り込まれている治療剤、
ここで、前記多孔性生体適合性ポリマー材料の一部は前記治療剤に対して不透過性である、及び、
前記少なくとも1つの表面の実質的にすべてを覆っている前記治療剤に対して不透過性である非多孔性生体適合性ポリマー材料、
を含む、治療剤解放性材料。
【請求項10】
前記非多孔性生体適合性ポリマー材料中に少なくとも1つの開口部をさらに含む、請求項9記載の治療剤解放性材料。
【請求項11】
前記治療剤解放性材料の下にある基材材料をさらに含む、請求項9記載の治療剤解放性材料。
【請求項12】
前記治療剤解放性材料の下にある基材材料をさらに含む、請求項10記載の治療剤解放性材料。
【請求項13】
前記多孔性生体適合性ポリマー材料はフルオロポリマー組成物を含む、請求項9記載の治療剤解放性材料。
【請求項14】
前記多孔性フルオロポリマーは多孔性ポリテトラフルオロエチレンである、請求項13記載の治療剤解放性材料。
【請求項15】
前記非多孔性生体適合性ポリマー材料はシリコーン組成物である、請求項9記載の治療剤解放性材料。
【請求項16】
前記治療剤はリン酸デキサメタゾンナトリウムである、請求項9記載の治療剤解放性材料。
【請求項17】
少なくとも1つの表面を有するフィルムの形態の第一の生体適合性ポリマー材料及び前記フィルムの少なくとも一部の中に解放可能に取り込まれた治療剤、
ここで、前記第一の生体適合性ポリマー材料の一部は前記治療剤に対して不透過性である、及び、
前記フィルムの前記少なくとも1つの表面の実質的にすべてを覆っている前記治療剤に対して不透過性である第二の生体適合性ポリマー材料、
を含む、治療剤解放性材料。
【請求項18】
前記第二の生体適合性ポリマー材料中に少なくとも1つの開口部をさらに含む、請求項17記載の治療剤解放性材料。
【請求項19】
前記治療剤解放性材料の下にある基材材料をさらに含む、請求項17記載の治療剤解放性材料。
【請求項20】
前記基材は心臓ぺーシングリードの少なくとも一部である、請求項19記載の治療剤解放性材料。
【請求項21】
前記治療剤解放性材料は前記基材材料の周囲を少なくとも1回転巻かれている、請求項19記載の治療剤解放性材料。
【請求項22】
前記基材は心臓ぺーシングリードの少なくとも一部である、請求項21記載の治療剤解放性材料。
【請求項23】
前記治療剤解放性材料が巻かれたものはらせん状形態である、請求項21記載の治療剤解放性材料。
【請求項24】
前記基材は心臓ぺーシングリードの少なくとも一部である、請求項23記載の治療剤解放性材料。
【請求項25】
前記第一の生体適合性ポリマー材料はフルオロポリマー組成物を含む、請求項17記載の治療剤解放性材料。
【請求項26】
前記フルオロポリマーは多孔性ポリテトラフルオロエチレンである、請求項25記載の治療剤解放性材料。
【請求項27】
前記第二の生体適合性ポリマー材料はシリコーン組成物である、請求項17記載の治療剤解放性材料。
【請求項28】
前記治療剤はリン酸デキサメタゾンナトリウムである、請求項17記載の治療剤解放性材料。
【請求項29】
近位末端及び遠位末端を有する心臓ぺーシングリード要素、
前記近位末端での導電性コネクタ、
前記遠位末端にある電極、
前記コネクタを前記電極に接続する少なくともlつの導電性要素を含み、
前記心臓ぺーシング要素の少なくとも一部は治療剤解放性材料により覆われており、該治療剤解放性材料は少なくとも1つの表面を有する第一の生体適合性ポリマー材料及びその少なくとも一部の中に解放可能に取り込まれた治療剤、ここで、前記第一の生体適合性ポリマー材料の一部は前記治療剤に対して不透過性である、及び、前記少なくとも1つの表面の実質的にすべてを覆っている前記治療剤に対して不透過性である第二の生体適合性ポリマー材料を含む、心臓ぺーシングリード。
【請求項30】
前記第二の生体適合性ポリマー材料中に少なくとも1つの開口部をさらに含む、請求項29記載の治療剤解放性材料。
【請求項31】
前記第一の生体適合性ポリマー材料はフルオロポリマー組成物を含む、請求項29記載の治療剤解放性材料。
【請求項32】
前記フルオロポリマーは多孔性ポリテトラフルオロエチレンである、請求項31記載の治療剤解放性材料。
【請求項33】
前記第二の生体適合性ポリマー材料はシリコーン組成物である、請求項29記載の治療剤解放性材料。
【請求項34】
前記治療剤はリン酸デキサメタゾンナトリウムである、請求項29記載の治療剤解放性材料。
【請求項35】
近位末端及び遠位末端を有するリード要素、
前記近位末端での導電性コネクタ、
前記遠位末端にある電極、
前記コネクタを前記電極に接続する少なくともlつの導電性要素、
前記遠位末端にあるチューブ状リード先端部を含み、
前記心臓ぺーシング要素の少なくとも一部は治療剤解放性材料により覆われており、該治療剤解放性材料は少なくとも1つの表面を有する第一の生体適合性ポリマー材料及びその少なくとも一部の中に解放可能に取り込まれた治療剤、ここで、前記第一の生体適合性ポリマー材料の一部は前記治療剤に対して不透過性である、及び、前記少なくとも1つの表面の実質的にすべてを覆っている前記治療剤に対して不透過性である第二の生体適合性ポリマー材料を含む、導電性リード。
【請求項36】
前記第二の生体適合性ポリマー材料中に少なくとも1つの開口部をさらに含む、請求項35記載の治療剤解放性材料。
【請求項37】
前記第一の生体適合性ポリマー材料はフルオロポリマー組成物を含む、請求項35記載の治療剤解放性材料。
【請求項38】
前記フルオロポリマーは多孔性ポリテトラフルオロエチレンである、請求項37記載の治療剤解放性材料。
【請求項39】
前記第二の生体適合性ポリマー材料はシリコーン組成物である、請求項35記載の治療剤解放性材料。
【請求項40】
前記治療剤はリン酸デキサメタゾンナトリウムである、請求項35記載の治療剤解放性材料。

【図1】
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【図1A】
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【図2】
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【図2A】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8A】
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【図8B】
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【図9A】
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【図9B】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公表番号】特表2013−509973(P2013−509973A)
【公表日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−538089(P2012−538089)
【出願日】平成22年11月9日(2010.11.9)
【国際出願番号】PCT/US2010/056052
【国際公開番号】WO2011/057278
【国際公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【出願人】(598123677)ゴア エンタープライズ ホールディングス,インコーポレイティド (279)
【Fターム(参考)】