説明

薬物濫用の治療で使用するハプテン−キャリア結合体およびそれを調製する方法

【課題】インビボで抗ハプテン抗体を引き出すことができるハプテン−キャリア結合体の提供。
【解決手段】下記式で表されるハプテン−キャリア結合体。


(式中、A、B、C、D、EおよびFは、ニコチンの側鎖であり、これらは、独立して、少なくとも1個は、少なくとも1個のT細胞エピトープを含有する、コレラトキシンB(CTB)等のキャリアを表す)このハプテンが中毒薬物の場合には、ハプテン−キャリア結合体を含有する治療組成物は、薬物中毒の処置に特に有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、薬物濫用の処置に関する。さらに特定すると、本発明は、抗体応答を引き出す薬物/ハプテン-キャリア結合体を用いるか、および/または薬物/ハプテン−キャリア結合体に対する抗体を用いる、薬物濫用を処置する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
全世界(特に、米国)における薬物使用および濫用の横行は、流行病のレベルに達している。合法および違法の両方の薬物の過剰服用があり、それらの濫用は、その明らかな医学上および社会的帰結を伴って、社会の全ての階層に影響を与える重大な公共政策上の問題となっている。一部の使用者は、貧困および違法活動を伴った非常にリスクの高い集団の中で生活している。他の使用者は、それ自体、気晴らしのための使用者として分類できるが、(a)使用者を中毒にする薬物の性質、(b)その使用者が多量使用者となる傾向または(c)個人的な境遇、苦難、環境および入手可能性を含めた要因の組み合わせのために、危険な状態にある。薬物濫用(複数の薬物の濫用を含めて)の充分な治療には、画期的で独創的な介入プログラムが必要である。
【0003】
特に問題となっている3つの薬物中毒には、コカイン、ヘロインおよびニコチンがある。コカインは、コカ植物(Erythroxylon coca)の葉から誘導したアルカロイドである。米国だけでも、現在、5百万人を超えるコカインの常習使用者がおり、そのうちの少なくとも600,000人は、重度の中毒状態にあると分類されている(Millerら、(1989)N.Y.State J.Med.pp.390-395;およびCarrolら、(1994)Pharm.News、1;11-16)。この集団のうち、相当数の常習者は、積極的に治療を求めている。例えば、1990年では、380,000人が、コカイン中毒の治療を求めており、その数は増加している。その時点では、1年間で100,000人の救急治療室の入院患者が、コカインの使用に関与していると推定された。コカインに付随した凶悪犯罪、個人の生産性の損失、病気および死の累積的な影響は、国際的な問題である。
【0004】
コカイン中毒の処置に対して効果的な療法がないことは、新規な手法を開発しなければならないことを強く示唆している。適切な処置プログラムがないことの原因となっている別の要因には、コカイン濫用のパターンが、時と共に変わっていることがある。「1994 Chemical Approaches to the Treatment of Cocaine Abuse」との題名の論文(Carrollら、(1994)Pharm.News、Vol.1、No.2)では、Carrollらは、1980年代の半ば以来、コカインの塩酸塩(コーク、スノー、ブロー)の静脈内および鼻腔服用およびコカイン遊離塩基(クラック)の喫煙が一般的な投与の経路となっており、陶酔感の発生および精神運動の刺激(これらは、30〜60分間持続する)を起こすことを報告している。他の一部の濫用薬物とは異なり、コカインは数時間連続して摂取(take in brings)できる。この行動が中毒(addiction)に至り、ある場合には、有毒な結果(toxic consequence)となる(Carrollら、Pharm.News、上記)。
【0005】
濫用薬物には、極めて限られた処置しかなく、コカイン中毒に対しては、効果的で長期的な処置はない。処置には、そのオピオイドレセプターでアンタゴニストとして作用する薬物または薬物中毒に付随した渇望を減らす試みをし得る薬物の投与と組み合わせたカウンセリングが挙げられるが、これに限定されない。処置の1手法には、解毒がある。一時的な回復であっても、参加者の身体的、社会的および生理的な改善を伴う回復は、濫用の継続または進行的な加速およびそれに関連した悪い医学上および対人的の結果よりはましである(Wilsonら、Harrison's Principle of Internal Medicine Vol.2、12th Ed.、McGraw-Hill(1991)pp.2157-8)。さらに具体的には、コカイン中毒を処置する生理学的手法には、一般に、抗うつ薬、例えば、デシプラミンまたはフルオキセチン(これは、禁断症状の生理学的な局面の管理を助け得るが、一般には、コカインの生理学には直接影響しない)の使用が関与している(Klebler(1995)Clinical Neuropharmacology 18:96-109)。さらに、それらの有効性は、広範囲に変わる(Brookeら(1992)Drug Alcohol Depend.31:37-43)。ある研究では、デシプラミンは、自己投与を低下させた(Tella(1994)College on Problems of Drug Dependence Meeting Abstracts;Melloら(1990)J.Pharmacol.Exp.Ther.254:926-939;およびKlevenら(1990)Behaol.Pharmacol.1:365-373)が、処置後の中毒離脱割合は、70%を超えなかった(Kosten(1993)Problems of Drug Dependence,NIDA Res.Monogr.85)。ドーパミン作動性の伝達を助長する薬剤(例えば、ブロモクリプチン)の使用もあるが、このような薬剤の効果は、その毒性により、部分的に限定されている(Taylorら(1990)West.J.Med.152:573-577)。オピオイド中毒(例えば、ブプレノルフィン)をメタドンに代えることを目指した新しい薬剤もまた、そのドーパミン作動系との相互干渉に基づいて、使用されているが、限定された臨床研究情報だけが入手できるにすぎない(Fudulaら、(1991)NIDA Research Monograph、105:587-588)。ブプレノルフィンは、コカインの自己投与を低下させると報告されている(Carrollら、(1991)Psychopharmacology 106:439-446;Melloら(1989)Science 245:859-862;およびVelloら(1990)J.Pharmacol.Exp.Ther.254:926-939)。しかしながら、処置の後のコカイン離脱割合は、一般に、50%を超えない(Gastfriedら(1994)College on Problems of Drug Dependence Meeting Abstracts;およびSchttenfeldら(1993)Problems of Drug Dependence,NIDA,10Res.Monogr.311)。
【0006】
コカイン常用者を処置するのに使用されている現在の治療は、少なくとも4つの主な制約があり、これらが、非常に高い薬物回帰率につながっている。第一には、おそらく最も根本的には、コカイン濫用および中毒の原因となる神経化学的事象が複雑なことがある(Carrollら、(1994)上記)。結果として、単独で作用させる神経薬理学的な手法(例えば、ドーパミン摂取の阻害)は、中毒を克服するには充分とは思われない。第二に、コカイン中毒の処置に現在使用されている薬剤は、それ自体、著しい副作用があり、それらの有用性を制限している。第三に、この患者集団の間では、薬剤療法に従わせるのは困難である。現在の治療法には、健康管理プロバイダーへの頻繁な通院および/または患者の中毒癖を直すように設計した薬剤の自己投与が必要であり得る。これらの薬剤の多くは、コカインに付随する陶酔感を抑制するので、この薬剤を飲むには、強い抵抗がある(Carrollら、(1994)上記;Kosten(1993)Problems of Drug Dependence,NIDA Res.Monogr.132:85;Schttenfeldら(1993)Problems of Drug Dependence,NIDA,Res.Monogr.132:311)。第四に、薬理学療法で関与している複雑な化学作用のために、それらの多くは、現在使用されているか臨床試験中の他の治療法とは相容れないおそれがある。最後に、これらの薬物治療法研究の殆どは、密度の低い外来処置プログラムの状況で投与されており、コカイン依存症患者の適切な管理に必要と思われる集中的な外来処置または他の心理社会的な治療と組み合わされていない。(Rao(1995)Psychiatric Annals 25(6):363〜368)。
【0007】
ヘロインは、ケシから誘導されるオピオイド薬物である。それは、最も一般的に濫用されているオピオイド薬物であり、米国では、ヤミの市場で容易に入手できる。常用者に現在入手できるヘロインの品質は高く(純度45〜80%)、以前よりも高いレベルの身体的な依存を生じる。喫煙または鼻への吸い込みにより、通常、より強力な形態のヘロインが投与され、静脈内注射(これは、通常の投与形態である)を嫌っている人々には、常用開始がし易くなる。ヘロイン常用者の死亡率は高い。早期の死亡は、種々の状況(例えば、注射器道具一式の共用から生じる重度の細菌感染およびHIV)から生じる。米国でのヘロイン常用者数の正確な記録はないが、推定した過剰服用による死亡、逮捕された常用者および処置を受ける常用者に基づいた外挿の概算値は、750,000と百万の間になる。
【0008】
ヘロイン溶液の注射により、種々の快感(快活感、味覚および高揚感(絶頂感に匹敵する)を含めて)が急速に開始する。ヘロインは、6-モノアセチルモルフィン(6-MAM)に急速に加水分解され、次いで、モルフィンに加水分解される。ヘロインおよび6-MAMの両方は、非常に脂質溶解性であり、モルフィンより容易に血液−脳関門を通過する。45秒間から数分間続く初期状態の陶酔感があり、一定期間の静謐が続き、これは、投薬量に依存して、3〜5時間持続する。この後、常用者がイライラしたり攻撃的になる禁断症状が続き、一般的な「病気」の感じとなる。
【0009】
現在の処置法は、通常、禁断徴候および症状を処置する薬理学的な介在が関与している。長期間作用するオピオイド(例えば、メタドン)を投薬することにより、通常、解毒が開始する。他の手法には、高血圧薬であるクロニジンの使用があり、これは、禁断症状の多くを改善するが、特徴的な渇望および一般化された痛みを改善しない。殆どの中毒に関しては、高い割台の薬物回帰がある。メタドンによる患者の長期的管理および安定化は、現在までの最も成功した処置であり、これは、患者の自覚および協力が必要である。
【0010】
ニコチン(1-メチル-2-(3-ピリジル)ピロリジン)は、タバコの葉から誘導されたアルカロイドである。ニコチンの使用は、世界全体に広がっており、多くの形態(例えば、巻きタバコ、葉巻、パイプタバコおよび無煙(噛み)タバコ)で合法的に入手できる。ニコチンの中毒性および喫煙の危険は、多年にわたって知られているものの(Sladeら、(1995)JAMA 274(3):225-233)、巻きタバコの喫煙は、依然として、普及している。the Center for Disease Control and Preventionによれば、およそ5100万人のアメリカ人が喫煙し、毎年、420,000人が、喫煙に関連した疾患で死亡している。
【0011】
最も普及したニコチン送達系は、巻きタバコである。巻きタバコは、6〜11mgのニコチンを含み、喫煙者は、典型的には、そのうちの1〜3mgを吸収する。典型的な1日1箱の喫煙者は、毎日、20〜40mgのニコチンを吸収し、血漿濃度は、1ミリリットルあたり、25〜50ngに達する。ニコチンの血漿半減期は、およそ2時間である。主要な代謝物質であるコチニンの半減期は、19時間である(Henningfield(1995)The New England Journal of Medicine 333(18):1196-1203)。
【0012】
ニコチンは合法であり広く入手できるので、コカインやヘロインとは異なり、その使用に反対する圧力は比較的に低い。常習喫煙者の大部分は、禁煙したい希望を言っており、多くは、実際に、禁煙を試みているものの、毎年、喫煙者の僅かに2〜3%が非喫煙者となっている(Henningfield(1995)上記)。禁煙を試みた喫煙者の高い回帰率は、ニコチン依存性の強い影響を示している(O'Brienら、(1996)Lancet 347:237-240)。
【0013】
ニコチン中毒は、慢性的で再発性の疾患である。ニコチンは、最終的に生理学的な依存を生じるメソリンビック報酬系を標的にしている。ニコチンが、中枢および抹消神経系において、ニコチン様アセチルコリンレセプターのα−サブユニットと結合して、ドーパミン放出の増加を生じることを示唆する証拠がある。脳において、ニコチン様アセチルコリンレセプターの数が増加することは、ニコチンの生理学的な依存性を高めると考えられている(Balfour(1994)Addiction 89:1419-1423)。ニコチンのこれらの生理学的な効果は、生理学的中毒の強力な補強剤となる。ニコチン使用者の高揚した認識および改善した気分だけでなく、禁断に付随した好ましくない影響(例えば、禁断症状)は、喫煙を継続する強力な動機として作用する。
【0014】
ニコチン依存性に対して効果的な治療がないこと、および試みてそしてその使用をやめた人の低い成功率から、新しい療法が強く要望されていることが明らかである。現在、最も普及している2つの療法には、ニコチンポラクリレックス(「ニコチンガム」)および経皮送達系(「ニコチンパッチ」)がある。これらの「代替投薬法」は、一定期間にわたって、低量のニコチンを使用者に送達して、ニコチン使用者をこの薬物からゆっくりと引き離す作用をする。これらの方法は、禁断症状を減らし、以前に巻きタバコに依存していた使用者に一定の効果(例えば、好ましい気分および認識状態)を与えると思われる(Henningfield(1995)上記)。しかしながら、これらの方法は、低い浸透度、および動機のない禁煙者の回帰という欠点がある。さらに、ニコチンガムの使用者からは、否定的な影響(例えば、ロへの刺激、顎筋肉の痛み、消化不良、吐き気、しゃっくりおよび感覚異常)が報告されている。ニコチンパッチから報告された悪影響には、皮膚の反応(痒みまたは紅斑)、睡眠障害、胃腸障害、傾眠、神経質、眩量および発汗が挙げられる(Haxby(1995)Am.J.Health-Syst.Pharm.52:256-281)。
【0015】
薬物中毒を処置する実験的な診断手法および療法は、文献で示唆されているが、未だに実施されていない。例えば、薬物中毒の診断手法としてのワクチン接種は、原理としては、以前に記述されている。Boneseらは、モルフィンに対する免疫化後のアカゲザルによるヘロイン自己投与の変化を研究した(Boneseら(1974)Nature 252:708-710)。Bagasraらは、中毒を防止する手段として、コカイン-KLHワクチン接種を使用することを研究した(Immunophacol.(1992)23:173-179)が、結論的な結果は得られず、Bagasraが用いた方法は、未解決である(Gallacher(1994)Immunopharm.27:79-81)。明らかに、治療レジメンにおいて、結合体が効果的であるなら、インビボで循環している遊離のコカイン、ヘロインまたはニコチンを認識できる抗体を生じることができなければならない。Cerny(WO92/03163)は、薬物に対するワクチンおよび免疫血清を記述している。このワクチンは、抗体を生じるキャリアタンパク質に結合したハプテンから構成される。薬物に対する抗体産生、および薬物を摂取している人の解毒におけるこれらの抗体の使用もまた、開示されている。Carreraら、Nature 378:727-730(1995)は、ラットでの薬物の運動効果をブロックする抗コカイン抗体を誘発するコカイン-KLHワクチンの合成を開示している。Blinckoら、米国特許第5,256,409号は、デシプラミン/イミプラミン類の薬剤に由来の1種のハプテンに結合したキャリアタンパク質およびノルトリプチリン/アミトリプチリン類の薬剤に由来の他のハプテンを含有するワクチンを開示する。Liuら、米国特許第5,238,066号は、免疫応答を誘発するために、ハプテン−ポリマー固体支持体の複合体を使用することを開示している。
【0016】
薬物濫用を治療するためのモノクローナル抗体の受動投与は、先に記述されている(Killianら(1978)Pharmacol.Biochem.Behaviour 9:347-352;Pentelら(1991)Drug Met.Dispositions 19:24-28を参照せよ)。この手法では、選択された薬物に対してあらかじめ形成した抗体が、動物に受動投与される。これらのデータは、中毒治療に対する免疫的な手法の実行可能性を立証しているのに対して、長期的なヒトの治療戦略としての受動免疫化は、多くの重大な欠点がある。第一に、受動療法で使用する抗体が、非ヒト起源であるか、またはモノクローナル抗体なら、それらの調製物は、患者には、外来性タンパク質と認められ、外来性抗体に対する急速な免疫応答が起こり得る。この免疫応答は、受動投与した抗体を中和し、その有効性をブロックし、引き続く保護時間を著しく短くする。加えて、同じ抗体の再投与は、過敏応答を誘発するおそれがあるために、問題を生じ得る。これらの問題は、ワクチンで免疫化されたヒトドナーにおいて免疫イムノグロブリンを産生することにより、克服され得る。この手法は、実施例で詳細に述べる。第二に、受動投与された抗体は、循環系から比較的に急速に取り除かれる。インビボでの一定の抗体の半減期は、そのイソタイプに依存して、2.5日と23日の間である。それゆえ、この抗体を、免疫化により誘発されるよりもむしろ受動投与するとき、短時間の有効性が達成できるにすぎない。
【0017】
薬物中毒の他の免疫学的な手法は、患者内のコカイン分子の加水分解を助けることができる触媒抗体を使用することにある(Landryら、(1993)Scinece 259:1899-1901)。この触媒抗体は、キャリアタンパク質に結合したコカインの遷移状熊アナログを用いた実験動物の免疫化により、発生する。次いで、所望の触媒活性を有するモノクローナル抗体が選択される。この方法は、理論的には魅力的であるものの、それはまた、いくつかの重大な問題がある。触媒抗体は、受動投与しなければならず、それゆえ、受動抗体療法の全ての欠点の影響を受ける。遷移状態のアナログに対して発生させた抗体間での酵素活性は稀であり、ポリクローナル調製物では、活性は検出できないように思われるために、触媒抗体を発生させる活性免疫化は実現可能ではない。加えて、遺伝的に多様な個体では、このような触媒抗体の一般的なエステラーゼ様活性および活性免疫応答の制御されない性質のために、特に、ヒトの患者内で産生されたとき、これらが潜在的に毒性の分子となる。
【0018】
Yugawaら(EP 0613 899 A2)は、血液試料中のコカインまたはコカイン誘導体を検出する抗体を生じるためのコカイン誘導体を含有するコカイン−タンパク質結合体の使用を示唆している。Syvaの特許(米国特許第3,888,866号、第4,123,431号および第4,197,237号)は、免疫アッセイ用のコカイン抗体を生じる結合体を記述している。ベンゾイルエクゴニンおよびコカインから誘導されたジアゾニウム塩を用いるBSAに対する抗体が開示されている。結合体は、キャリアに結合させるコカインおよびノルコカインのパライミノエステル誘導体を用いて、作製される。Biosite(WO 93/12111)は、アミノ結合を導入して加水分解に対する安定性を高めた種々のコカイン誘導体のフェニル環のパラ位置を用いたコカインの結合体を開示している。Strahilevitzの特許(米国特許第4,620,977号;米国特許第4,813,924号;米国特許第4,834,973号;および米国特許第5,037,645号)は、病気の処置用の内因性物質および薬物のタンパク質結合体を用いて、免疫アッセイ、免疫透析および免疫吸着での使用だけでなく、精神活性ハプテンに対する依存性を防止することを開示している。
【0019】
Bjerkeら(1987)Journal of Immunological Methods 96:239-246は、ポリ-L-リジンに共有結合したコチニン4'-カルボン酸の結合体を用いて、生理的液体中のコチニンの存在の測定する際に使用するニコチン代謝物コチニンに対する抗体を発生させることを記述している。さらに、Abadら(1993)Anal.Chem.65:(22):3277-3231は、BSAに結合した3'-(ヒドロキシメチル)ニコチンヘミスクシネートを使用して、巻きタバコの煙の凝縮物中のニコチンを測定するのに用いられるELISAで使用するための、ニコチンに対する抗体を発生させることを記述している。しかしながら、いずれの参考文献も、ニコチン濫用に対するワクチンとして使用するためのニコチン−キャリア結合体を教示または示唆していない。
【0020】
薬物中毒(特に、コカイン、ヘロインおよびニコチン中毒)に対する効果的な治療法は、開発されていない。それゆえ、薬物中毒(特に、コカインおよびニコチン中毒)に対する長期間の治療手法であって、服従や自己投与について常用者個人に全面的には依存しない手法を開発する必要がある。
【発明の概要】
【0021】
発明の要旨
本発明は、上記欠点を克服し、薬物中毒を治療する方法を提供する。治療組成物(特に、ハプテンキャリア結合物)を用いて、本発明は、常用者において、抗薬物抗体の形態での免疫応答を引き出し、これは、ワクチン接種した個人において引き続いて薬物に晒されても、薬物を中和して、予想される生理学的な影響を(もし、なくさなくても)低下させる。本発明は、薬物/ハプテン−キャリア結合体(さらに特定すると、コカイン−タンパク質、ヘロイン−タンパク質またはニコチン−タンパク質結合体)での被検体のワクチン接種に基づいて、薬物中毒(特に、コカイン、ヘロインおよびニコチン中毒)の治療法を提供する。本発明の治療組成物は、少なくとも1種のハプテンおよび少なくとも1種のT細胞エピトープ含有キャリア(これは、結合してハプテンキャリアを形成すると、抗ハプテン抗体の産生を刺激できる)を含有する。ハプテンは、薬物または薬物誘導体(特に、コカイン、ヘロインまたはニコチン)であり得る。この薬物/ハプテン−キャリア結合体を含有する治療組成物を中毒個人に投与すると、薬物に特異的な抗薬物抗体が引き出される。治療免疫化レジメンは、充分に高い力価の抗薬物抗体を引き出して維持し、その結果、治療により提供される保護期間中に、それぞれ引き続いて薬物に晒されると、抗薬物抗体は、薬物の生理学的な影響を(もし、なくさなくても)低下させるために、充分な量の薬物の効力を中和する。また、これらの結合体を調製する新規な方法も提供される。受動免疫化の方法もまた提供され、ここで、被検体は、本発明のハプテン−キャリア結合体でワクチン接種したドナーで発生させた抗体で、処置される。
【0022】
本発明のこれらの特徴および他の特徴、局面および利点は、以下の図面、説明および添付の請求の範囲を考慮すると、より明白になり、そして理解される。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1A】図1aは、本発明の実施において使用される適切な化合物および結合体の理解を容易にするために同定されたハプテン−キャリア結合体の多数の可能な恣意的に標識された「分枝(branch)」の描写である。
【図1B】図1bは、本発明の実施において使用される適切な化合物および結合体の理解を容易にするために同定したハプテン−キャリア結合体の多数の任意標識した可能な恣意的に標識された「分枝」の描写であり、ここで、Q'は、変性T細胞エピトープ含有キャリア(例えば、変性タンパク質キャリア)である。
【図2】図2は、本発明の実施で有用な5個の試薬の構造の描写である。
【図3】図3は、本発明に教示に関連した結合および投与に適切な4個の別の濫用薬物の構造の描写である。
【図4】図4aは、自生(モノマーおよび五量体)および組み換えコレラトキシン-B(CTB)(モノマー)の相対分子量を示すゲルの描写である。 図4bは、3〜9のpH範囲にわたるCTBパラメータの安定性を示すゲルの描写である。 図4cは、五量体CTBを生じる周辺質(periplasmic)の発現により得られた35ピーク画分rCTB#32およびrCTB#53を示すWestern Blotゲルの図面である。
【図5】図5aは、ELISAを表わすグラフであり、ここで、抗CTB抗体は、rCTBがELISAプレート上でガングリオシドGMIに結合する能力を検出する。 図5bは、フローサイトメトリー結合アッセイを表わす走査であり、ここで、rCTBは、ガングリオシドGMIを発現する真核細胞に結合している。
【図6】図6aは、ニコチンの構造式の模式図である。 図6bは、本発明のニコチン結合体を調製する場合に、可変性の部位を表わすダイアグラムである。この可変性部位は、本発明の化合物および結合体を容易に指定するために、恣意的に割り当てられ、必ずしも反応部位ではない。これらの可変性部位は、図7で表されている。
【図7】図7は、本発明のニコチン結合体および中間体について、ニコチン分子から離れた可変性部位での「分枝」の描写である。本発明のニコチン結合体は、QがT細胞エピトープ含有キャリアである場合に、表わされる。
【図8】図8は、本発明の一部の結合体の調製に有用なニコチン代謝物の描写である。
【図9】図9a〜bは、ニワトリ卵リゾチームタンパク質(HEL)およびPS-55の結合体に結合している抗体についてのELISAでのマウス血清の試験結果を示す。図9aでは、マウスは、ニコチン−BSA結合体で免疫化されている。図9bでは、マウスは、ニコチン−CTB結合体で免疫化された。
【図10】図10は、遊離ニコチンおよびニコチン代謝物の濃度を変えて、ニコチンおよびノルニコチンを添加したときの、遊離ニコチンに対する抗血清の特異性についての競合ELISAにおける抗ニコチン抗血清の試験結果を示す。この抗血清は、マウスにて、ニコチン結合体PS-55BSAを注射することにより、調製された。ニコチン代謝物の認識は殆どまたは全くなく、このことは、抗血清内の抗ニコチン抗体がニコチンに特異的であることを立証した。ネガティブコントロールとして、麻酔剤であるリドカインを使用したが、抗体の結合について、競合できなかった。ニコチン結合体であるPS-55HELは、ポジティブコントロールとして使用され、そして抗体に対するその結合は、遊離ニコチンにより阻害された。
【図11】図11aは、ヘロインの構造式の模式ダイアグラムを示す。 図11bは、本発明のヘロイン結合体を調製するとき、可変性の部位を表わすダイアグラムである。可変性部位は、本発明の化合物および結合体を容易に指定するために、任意に割り当てられ、必ずしも反応部位ではない。これらの可変性部位は、図12で表されている。
【図12】図12は、本発明のヘロイン結合体および中間体について、ヘロイン分子から離れた可変性部位での「分枝」の描写である。本発明のヘロイン結合体は、QがT細胞エピトープ含有キャリアである場合に、表わされる。
【0024】
発明の詳細な説明
本明細書中で参照した特許および科学文献は、当業者に入手できる知見を確立している。本明細書中で引用した登録米国特許、PCT公報および他の公報の内容は、本明細書中で参考として援用されている。
【0025】
本発明は、薬物/ハプテン−キャリア結合体(さらに特定すると、ヘロイン−タンパク質結合体またはニコチン−タンパク質結合体)で中毒患者をワクチン接種することに基づいて、薬物中毒の治療法を提供する。本発明の治療組成物は、少なくとも1種のハプテンおよび少なくとも1種のT細胞エピトープ含有キャリア(これは、結合すると、抗ハプテン抗体の産生を刺激できるハプテン−キャリア結合体を形成する)を含有する。本明細書中で使用する「T細胞エピトープ」との用語は、T細胞レセプターによる認識の基本要素または最小単位を意味し、この場合、エピトープは、レセプター認識に必須のアミノ酸を含有する。T細胞エピトープのものに似せたアミノ酸配列であって、タンパク質アレルゲンに対するアレルギー応答を変えるものは、本発明の範囲内である。「ペプチド擬熊物」は、生体活性ペプチドから誘導し天然分子を模倣した化学構造として、定義できる。このハプテンは、ヘロイン、ニコチンのような薬物または薬物誘導体であり得る。
【0026】
ハプテン/薬物(またはその誘導体)を含有する治療組成物を中毒患者に投与すると、この薬物に特異的な抗薬物抗体が引き出される。治療免疫化レジメンは、充分に高い力価の抗薬物抗体を引き出して維持し、その結果、引き続いて薬物に晒されても、薬物の薬理学的な影響を(もし、なくさないなら)低下させるために、中和抗体が、充分な量の薬物と結合する。例えば、この治療組成物がヘロイン−キャリア結合体のとき、処置により、抗ヘロイン抗体応答を誘発し、それは、患者の血流または粘膜組織にて、ヘロインを低下させるかまたは中和することができ、それにより、この薬物の心理的な中毒性を阻害する。本発明では、遅延レベルまたは低レベルの濫用薬物が中枢神経系に達するので、常用者は、ヘロインの使用による快感を全く受けないかまたは受けることが少ない。ニコチン−キャリア結合体を投与したときには、この同じ作用機構は、抗ニコチン抗体を誘発し、ニコチンの使用による快感を消すかまたは低下させる。本発明の治療剤の投与からは、副作用が生じるとは思われない。例えば、本発明の濫用薬物は、小さくて一価であるので、抗体を架橋できない。従って、濫用薬物に晒した後も、免疫複合体およびそれに関連した病原体の形成が起こるとは考えられない。それは、現在および将来の薬理学療法に適合しており、そうなると予想される。さらに、効果的な中和は、長く持続する。例えば、病原体に対する抗体応答の中和は、数年間持続することが知られている。従って、本発明の治療組成物を用いて引き出した高力価の抗薬物抗体は、長時間(おそらく、少なくとも1年)維持できると予想される。この治療組成物の長期間の効果は、コンプライアンスの問題が少なくなったことと共に、現在の治療の問題である薬物回帰を少なくする。
【0027】
さらに、ヘロイン中毒に対する本発明の治療ワクチン接種手法は、現在使用されているか臨床試行されている他の療法と両立できる。事実、初期段階での併用治療は、最適な抗体力価を達成するのに必要な時間のために、非常に望ましい。
【0028】
同様に、ニコチン中毒に対する本発明の治療ワクチン接種手法は、ニコチンの禁断症状を最小にする他の療法と両立できる。例えば、本発明のニコチン−キャリア結合体は、クロニジン、バスピロンおよび/または抗うつ薬または鎮静剤と組み合わせて使用できる。この手法により産生したワクチンは、現在のニコチン代替療法(例えば、ガムおよびパッチ)と両立できる。抗ニコチン抗体は、産生に数週間かかるので、ニコチン代替療法を使用して、一定レベルの渇望制御を行う。
【0029】
以下は、本明細書中で使用する用語であり、それらの定義は、手引きのために提供される。本明細書中で使用する「ハプテン」とは、抗体と特異的に反応する低分子量有機化合物であって、それ自体は免疫応答を誘発できないが、T細胞エピトープ含有キャリアと複合体化したときに免疫原性となって、ハプテン−キャリア結合体を形成するものである。さらに、このハプテンは、ハプテン−キャリア結合体の特異性決定部分として特徴づけられ、すなわち、それは、その遊離状態にて、ハプテンに特異的な抗体と反応できる。免疫化を施していない中毒患者では、ハプテンに対する抗体は形成されていない。この治療組成物は、薬物中毒の処置を探している人にワクチン接種するために使用される。本発明では、ハプテンとの用語は、薬物、薬物の一部のアナログまたは薬物誘導体であるさらに特異的な薬物/ハプテンの概念を含む。この治療組成物または治療抗薬物ワクチンは、最初に投与すると、「所望の測定可能な結果」を生じる。初期には、この所望の測定可能な結果は、高力価の抗薬物抗体の産生である。力価とは、ELISAによる最大能力の半分の抗体検出に必要な血清希釈倍数として定義される。しかしながら、個人に適切な投薬レジメンの操作により、持続した所望の治療効果が得られ、維持される。「所望の治療効果」とは、薬物に引き続いて晒したときに、その薬物に特異的な抗薬物抗体により、治療的に適切な時間枠内で、この薬物の薬理学効果を低減するかまたはなくすのに充分な遊離薬物濫用のフラクションの中和である。所定の薬物に対する充分な抗体応答を得るのにどのぐらいの時間がかかるか、またはそれに対する抗体応答がどのぐらい持続するかの治療的に適切な時間枠の決定は、免疫化すべき患者、中和すべき濫用薬物および投与様式といった特徴を算定することにより、当業者に達成される。このおよび他のワクチン接種プロトコルをモデルとして用いると、当業者は、この免疫性または保護期間が数ヶ月から1年以上まで持続すると予想できる。
【0030】
「受動免疫化」はまた、本発明の新規な結合体を用いて調製した抗薬物抗体またはポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体フラグメント(例えば、Fab、Fv、(Fab')2はまたはFab')を無傷にするための投与または曝露を包含して開示されている。上で述べたように、独立療法として本発明の抗ヘロインまたは抗ニコチン抗体を用いたヒトの受動免疫化は、能動免疫化ほど有用になり得ない。受動免疫化は、初期の併用処置および/または補足的で補完的な処置(例えば、初期のワクチン投与後の一定期間であるが、身体自体の抗体産生前における)として、または死亡を防ぐ重大な状況(例えば、人が薬物を過剰服用したとき)にて、特に有用である。ある状況では、例えば、患者が免疫無防備状態にあるかまたは素早い処置を必要としているとき、受動療法だけで好ましい場合がある。
【0031】
本発明の薬物結合体および組成物はまた、予防薬としても使用できる。すなわち、この薬物結合体または組成物は、抗薬物抗体を発生させるために、薬物に晒す前の哺乳動物に投与できる。発生した抗薬物抗体は、この結合体または組成物の投与に続いて、導入した任意の薬物に結合させるために、哺乳動物中に存在させ、従って、薬物中毒になる可能性が最小にされるかまたは防止される。
【0032】
本発明の治療組成物、さらに特定すると、治療用抗薬物ワクチンは、薬物/ハプテンに特異的な充分に高力価の抗体の産生を引き出すことができる少なくとも1種の薬物/ハプテン−キャリア結合体を含有する組成物であり、その結果、引き続いて薬物/ハプテンでチャレンジすると、該抗体は薬物の中毒性を低減し得る。ハプテン−キャリア結合体に対して予想される免疫応答は、抗ハプテン抗体および抗キャリア抗体の両方の形成である。充分な量の坑薬物特異的抗体が引き出され維持されて、ワクチン接種後に導入した薬物に対する中和攻撃を仕掛けたときに、治療レベルに達する。本発明の治療レジメンは、初期のワクチン接種および任意の追加接種後の抗体の産生に充分な時間を与える。さらに、最適な抗薬物ワクチンは、抗薬物抗体の産生により、最適な治療レベルが達成できる、すなわち、インビボで、選択された薬物の引き続いたチャレンジに数ヶ月耐えるのに充分な高い力価で残留できるように、ハプテンとしての薬物とキャリアとの最適な組み合わせを含有する少なくとも1種の薬物/ハプテン−キャリア結合体を含有する。さらに特定すると、この抗体の力価は、個体に依存して、約2ヶ月から約1年以上、さらに一般的には、少なくとも3ヶ月にわたって、薬物に引き続いて晒したときに効果的な応答を与えるのに充分に高い状態にある。この最適な組成物は、ハプテン−キャリア結合体、賦形剤、および必要に応じて、アジュバントからなる。
【0033】
ヘロイン中毒の処置に使用するとき、本発明は、ハプテンがヘロインまたはヘロイン誘導体であるハプテン−キャリア結合体を規定し、これは、哺乳動物(特に、ヒト)を免疫化して、遊離の薬物を結合し脳内の報酬系への薬物の通過を防止し、それにより中毒薬物摂取行為を阻止できる抗ヘロイン抗体を引き出すために、使用できる。コカインおよびニコチンの両方に関して述べたように、抗ヘロイン抗体は、おそらく、血液−脳関門を通るヘロインの分配を制限し、それにより、その薬理学的な効果を低減する。
【0034】
ニコチンの処置で使用するとき、本発明は、ハプテンがニコチンまたはニコチン誘導体であるハプテン−キャリア結合体を規定し、これは、哺乳動物(特に、ヒト)を免疫化して、遊離の薬物を結合し脳内の報酬系への薬物の通過を防止し、それにより中毒薬物摂取行為(例えば、巻きタバコの喫煙)を阻止できる抗ニコチン抗体を引き出すために、使用できる。ニコチンは、脳内でニコチン様アセチルコリンレセプターのα−サブユニットと結合して、ドーパミン放出の増加を生じると考えられている。脳において、ニコチン様アセチルコリンレセプターの数が増加することは、ニコチンの生理学的な依存性を高めると考えられている。ヘロインに関して上述したように、抗ニコチン抗体は、おそらく、血液−脳関門を通るニコチンの脳への分配を制限し、それにより、その薬理学的な効果を低減する。
【0035】
例えば、ニコチン送達には、一定レベルの標準化が存在し、すなわち、各巻きタバコは、平均して9mgのニコチンを含有し、そのうちの1〜3mgは、喫煙中に効果的に分配される。さらに、ニコチンのピーク血漿濃度は、25〜50ng/mlであり、これは、コカインのそれ(0.3〜1μg/ml)よりも著しく低い。このことは、中程度に高い親和性の抗体が介在する理想的な機会を提供するはずである。
【0036】
本発明の治療用ハプテン−キャリア結合体組成物の初期ワクチン接種により、インビボにて、高い力価のハプテン特異的抗体が作られる。ワクチン接種した患者の血漿の定期的な検査は、個体の効果的な用量を決定するのに有用である。力価レベルは、定期的な追加免疫により増加し、そして維持される。この治療剤は、現在の薬物リハビリテーションプログラム(カウンセリングを含めて)と組み合わせて、使用されることが予想される。さらに、本発明の治療組成物は、単一薬物または数個の薬物に、同時にまたは順次に照準を合わせてもよく、また、他の療法と組み合わせて使用することもできる。例えば、本発明の治療用ハプテン−キャリア結合体組成物および方法は、全体的な治療効果を高めるために、通常の薬理学的な手法および先に述べた「短期間」受動免疫化と組み合わせて、好ましくない相互作用を生じることなく、使用される。
【0037】
本発明の治療用ハプテン−キャリア結合体組成物は、1種またはそれ以上のハプテン分子をT細胞エピトープ含有キャリアとカップリングして、T細胞(免疫原性)を刺激できるハプテン−キャリア結合体(これは、T細胞の増殖、および関連したB細胞を活性化して特異的な抗体産生を剌激するメディエーターの特徴的な放出に至る)を得ることにより、調製される。問題の抗体は、ハプテン−キャリア結合体(これはまた、ハプテン−キャリア複合体とも呼ばれる)のハプテン部分に特異的なものである。同じ薬物(交差免疫化)または複数の薬物(共免疫化)のいずれかに対して、結合体の組み合わせを含有する治療組成物が開示されている。複数の薬物の結合体のこのような共混合物は、多種薬物濫用の処置に特に有用である。
【0038】
本発明による結合体に適切な薬物を選択する際には、当業者は、高い抗体力価を引き出しそうな特性を有する薬物を選択する。しかしながら、選択された分子が、個体に内因性の分子と類似しているなら、このような分子に対して生じた抗体は、体内において、多くの異なる分子と交差反応して、望ましくない影響を与え得る。それゆえ、ハプテン(薬物/ハプテン)として選択できる薬物は、充分に外来性であって、ヒト体内で一般的に存在する分子に対する抗体を引き出すことを防止するのに充分な大きさでなければならない。これらの理由から、例えば、アルコールは、本発明の治療剤には適切ではない。この治療組成物に対して生じた抗体は、非常に特異的であり、血流または粘膜のいずれかまたは両方で、薬物の効力を中和するのに充分な量である。本発明を限定するものではないが、治療組成物に適切な薬物には、以下がある(重要性の順ではない):
幻覚剤(例えば、メスカリンおよびLSD);
カンナビノイド(例えば、THC);
覚醒剤(例えば、アンフェタミン、コカイン、フェンメトラジン、メチルフェニデート);
ニコチン;
鎮静剤(例えば、ノンバルビツレート(例えば、ブロマイド、クロラールハイドレートなど)、メタクワロン、バルビツレート、ジアゼパム、フルラゼパム、フェンサイクリジン、およびフルオキセチン);
アヘンおよびその誘導体(例えば、ヘロイン、メタドン、モルヒネ、メペリジン、コデイン、ペンタゾシン、およびプロポキシフェン);および
「デザイナー薬物」(例えば、「エクスタシー」)。
【0039】
図3は、本発明による結合に適切な4個の薬物の構造を示す。
【0040】
本発明のキャリアは、被験者のT細胞を刺激できる少なくとも1個のT細胞エピトープを含有する分子であり、これは、次に、B細胞が、結合体全体(ハプテン部分を含めて)の一部に対する持続的な抗体産生を開始して維持するのを助ける。それゆえ、それが免疫原生であるためにキャリアが選択されるので、異なる患者集団におけるこのワクチンの強い免疫応答が期待される。このキャリアは、ハプテンと同様に、このワクチンに対する強い免疫応答を引き出すために、充分に外来性でなければならない。保守的であるが必須ではない手法には、キャリア誘発エピトープ抑制の現象を回避するために、大部分の患者が晒されていないキャリアを使用することがある。しかしながら、たとえキャリア誘発エピトープ抑制が起こっても、それは、用量変更(Dijohnら(1989)Lancet 1415-1418)およびCTBの使用(stokら(1994)Vaccine 12:521-526)を含めた他のプロトコルの変更(Etlingerら(1990)Science 249:423-425)により克服されるので、管理可能である。患者が既に免疫のあるキャリアタンパク質を使用するワクチンは、市販されている。さらに、多数のリジンを含有するキャリアは、本発明の方法による結合に特に適切である。適切なキャリア分子は非常に多く、以下が挙げられるが、これらに限定されない:
細菌性トキシンまたは産生物(例えば、コレラトキシンB-(CTB)、ジフテリアトキシン、破傷風トキソイド、および百日咳トキシンおよび糸状血球凝集素、志賀トキシン、シュードモナスエキソトキシン);
レクチン(例えば、リシン-Bサブユニット、アブリンおよびスイトピーレクチン);
サブウイルス(例えば、レトロウイルス核タンパク質(レトロNP)、狂犬病リボ核タンパク質(狂犬病RNP)、植物ウイルス(例えば、TMV、ササゲおよびカリフラワーモザイクウイルス)、水泡性口内炎ウイルス−ヌクレオカプシドタンパク質(VSV-N)、痘そうウイルスおよびセムリキ森林ウイルスベクター;人工ウイルス(例えば、多抗原性ペプチド(MAP)、ミクロスフェア);
イーストウイルス様粒子(VLPs);
マラリアタンパク質抗原;
および他のこのようなタンパク質およびペプチドならびに上記の任意の改変体、誘導体またはアナログ。
【0041】
適切なキャリアの特徴を決定するために、タンパク質キャリアとしてウシ血清アルブミンを用いて、初期実験を行った。このタンパク質は、安価であって結合用の多数のリジンを含有するので、動物実験に理想的である。しかしながら、抗BSA抗体の産生は好ましくない応答を引き起こす可能性があるため、ヒトへのワクチン接種にはそれほど適切ではない。それゆえ、これらの実験結果を用いて、多数の候補キャリアに対して、上記規準を適用した。その結果は、本発明の実施に適切な上記キャリアのリストである。
【0042】
好ましい実施態様のキャリアには、タンパク質または分枝ペプチド(例えば、多抗原性ペプチド(MAP))または単一鎖ペプチドがある。理想的なキャリアは、この治療が使用される国でワクチン接種に一般的に用いられていないタンパク質またはペプチドであり、それにより、「キャリア誘発エピトープ抑制」の可能性が回避される。例えば、米国では、標準的な子供の免疫化には、ジフテリアおよび破傷風があるが、破傷風トキソイドおよびジフテリアトキソイドのようなタンパク質は、もし修飾されていなければ、適切なキャリアとしては、それほど望ましくない場合がある。さらに、このキャリアタンパク質は、個体が耐性のあるタンパク質であるべきではない。ヒトでは、これにより、未修飾ヒト血清アルブミンが除外される。さらに、多くの食物タンパク質は、キャリアとしての使用前に、注意深く選別すべきである。再度、ヒトでは、ウシ血清アルブミンは、牛肉が大部分の人の常食であるために、キャリアとしては、それほど望ましくない。さらに、このキャリアが固有の免疫原性/アジュバント活性を有する場合、非常に有利である。キャリアの免疫原性に対する要望と、抗ハプテン抗体を最大にする要望との間には、微妙なバランスをとらなければならない。さらに、好ましいキャリアなら、全身的な応答と曝露部位での応答の両方が可能である。これは、特に、粘膜を通って最も頻繁に投与されるヘロイン、コカインおよびニコチンについて、正しい。コカインまたはヘロインを喫煙している場合、応答速度は特に重要である。従って、コカイン、ヘロインおよびニコチンの場合には、好ましいキャリアは、全身的な応答を引き出すだけでなく、あらかじめ存在している粘膜の抗体応答も引き出す。このような粘膜応答の場合には、コカイン、ヘロインおよび/またはニコチンと抗体との反応は、それが血流に循環し始める前に、この薬物の効力をなくすのに充分に急速に起こる。
【0043】
1つのこのような好ましいキャリアには、コレラトキシンB(CTB)があり、これは、強力な全身的および粘膜の抗体応答を刺激できる高い免疫原性のタンパク質サブユニットである(Lycke(1992)J.Immunol.150:4810-4821;Holmgrenら(1994)Am.J.Trop.Med.Hyg.50:42-54;Silbartら(1988)J.Immun.Meth.109:103−112;Katzら(1993)Infection Immmun.61:1964−1971)。この組み合わせたIgAおよびIgG抗ハプテン応答は、鼻腔的にまたは吸入により投与されたヘロインまたはコカインをブロックする際に、そして口および肺に吸収されたコカインをブロックするのに、非常に望ましい。加えて、CTBは、コレラワクチンの臨床試行において、人への使用に安全であることが既に明らかとなっている(Holmgrenら、上記;Jertbornら(1994)Vaccine 12:1078-1082;「The Jordan Report,Accelerated Development of Vaccines」1993.、NIAID、1993)。
【0044】
他の有用なキャリアには、粘膜応答を高める能力があるもの、さらに特定すると、LTBファミリーの細菌トキシン、レトロウイルス核タンパク質(レトロNP)、狂犬病リボ核タンパク質(狂犬病RNP)、水泡性口内炎ウイルス−ヌクレオカプシドタンパク質(VSV-N)、組み換え痘そうウイルスサブユニットが挙げられる。
【0045】
さらに他の実施熊様では、アレルゲンの種々のタンパク質誘導体、ペプチド断片またはアナログが、キャリアとして使用される。これらのキャリアは、抗ハプテン抗体のB細胞開始に対して援助を与えることができるT細胞応答を引き出すために、選択される。アレルゲンタンパク質およびペプチドの例およびそれらを製造する方法は、1995年10月19日に公開されたWO 95/27786に開示されている。キャリアとして特に適切なアレルゲンは、Cryptomeria japonicaであり、さらに特定すると、組み換えCry j1であり、その配列は、僅かな変動とともに、公開されている。日本以外の国では、Cryptomeria japonicaは流行していない。従って、Cry j1アレルゲンは、一般に、適切なキャリア、すなわち、患者が以前に晒されていないキャリアの規準の1つに適合する。
【0046】
本発明の方法および組成物、さらに特定すると、以下の実施例で述べた方法を用いて、当業者は、選択された薬物/ハプテンと、本発明のハプテン−キャリア結合体を製造するために選択されたキャリアとを関連づける。
【0047】
本発明の1実施態様では、その治療組成物により誘発された抗体は、その薬物が肺から心臓を通って脳に移動するのにかかる時間以内に、作用する。その抗体応答を引き出す能力には、このキャリア分子の慎重な選択が必要である。
【0048】
コレラトキシンの組み換えBサブユニットの産生
コレラトキシンは、Vibrio choleraeにより産生したエンテロトキシンであり、5個の同一のBサブユニット(各サブユニットは、11.6KDa(103個のアミノ酸)の分子量を有する)および1個の27.2KDa(230個のアミノ酸)のAサブユニットからなる(Finkelstein(1988)Immunochem.Mol.Gen.Anal.Bac.Path.85−102)。結合サブユニットであるCTBは、その細胞表面上のガングリオシドGM1に結合する(Sixmaら(1991)Nature 351:371-375;Orlandiら(1993)J.Blol.Chem.268:17038-17044)。CTAは、この細胞に入りGタンパク質のADPリボシル化を触媒して、アデニレートシクラーゼを恒常的に活性化する酵素的サブユニットである(Finkelstein(1998)Immmuochem.Mol.Gen.Anal.Path.85-102)。このAサブユニットが存在しないと、コレラトキシンは毒性でなくなる。
【0049】
他の文献は、CTB五量体の高レベルの組み換え発現を開示している(L'hoirら(1990)Gene 89:47-52;Slosら(1994)Pretein Exp.Purif.5:518-526)。天然の(native)CTBは市販されているものの、CTAでの汚染を除くのは困難である。従って、組み換えCTBは、E.coliで発現され、いわば、その特徴付けのために開発された。コレラゲノイド構築物は、American Type Culture Collectlon(米国特許第4,666,837号に準じて)から購入した。組み換えCTBは、His6タグを含有する余剰N-末端配列を用いて、オリジナルベクター(pRTT10810)から発現プラスミド(pET11d、Novagen)へとクローン化し、そしてE.coli中で、25mg/リットルの培養物レベルまで発現した。このタンパク質は、標準的な方法を用いてNi2+カラムで精製し、そしてSDS-PAGEで分析した(図4a、bおよびcを参照のこと)。この組み換えCTBは、このアッセイではモノマー状であり、そのN-末端伸長のために、天然のCTBモノマーよりも長い。
【0050】
五量体組み換えCTBは、Pel bリーダー配列を含むようにPCRで改変されたcDNAを用いて、このHisタグを持つものおよび持たないものの両方を産生した。Hisタグを取り除くために、C末端停止コドンを挿入した。両方の構築物は、このpET22bベクター(Novagen)からE.coli中で発現した。このHisで標識したタンパク質は、上記のようなNi2+アフィニティクロマトグラフィで精製した(13mg/L)。標識していない組み換えCTBは、上記のガングリオシドGM1カラムアフィニティークロマトグラフィーにより精製した(Tayotら(1981)Eur.J.Biochem.113:249-258)。組み換えCTB五量体は、ELISAにて、ガングリオシドGM1に結合することが明らかとなり、ウェスタンブロットおよびELISAにて、五量体特異的な抗体と反応した。組み換えCTBはまた、他の原料(例えば、SBL Vaccin AB)から入手できる。
【0051】
CTBの五量体構造は、ガングリオシドGM1の結合に好ましくあり得る。この五量体は、その試料が煮沸されない限り、SDSに対して安定であり、五量体化は、SDS-PAGEにより評価可能となる。図4aは、天然のCTBが五量体であり、変性されたモノマーCTBとは容易に識別できることを立証している。五量体構造は、4〜9のpH範囲にわたって維持され(図4bを参照)、これにより、種々の結合化学反応が促進される。最初に発現された組み換えCTBは、モノマー状である。五量体CTBを得る1つの方法は、厳密に折り畳まれた五量体状CTBを発現するように調整を行うことによる。細胞質発現により、ずっと高いレベルのモノマー状CTBが得られることが分かっている。モノマー状CTBを五量体状CTBに折り畳む方法は、当業者に公知である(例えば、L'hoirら(1990)Gene 89:47-52を参照のこと)。モノマー状CTBを再び折り畳んで五量体状CTBを得る別の方法には、ELISAによりGM1ガングリオシドに結合できる五量体状組み換えCTBを得る周縁発現(periplasmic expression)がある。図5aおよび図5bは、この知見を支持するデータを示す。当業者は、五量体状CTBを得る記載されたいくつかの手法を見出すことができ、これらには、リーダーを用いた周縁発現(Slosら、前出;Sandezら(1989)Proc.Nat'l Acad.Sci.86:481-485;Lebensら(1993)BioTechnol.11:1574-1578)または翻訳後再折り畳み(L'hoirら、前出;Joblingら(1991)Mol.Microbial.5:1755−1767)が含まれる。
【0052】
他の有用なキャリアには、CTBよりも改良された粘膜応答を与えるコレラトキシンがある。酵素的に活性なAサブユニットアジュバントが活性を高めることは、報告されている(Liangら(1988)J.Immunol.141:1495-1501;Wilsonら(1993)Vaccine 11:113-118;Sniderら(1994)J.Immunol.153:647)。
【0053】
本発明の結合体を得る1局面には、ハプテンが遊離状態のハプテン(例えば、遊離ヘロインまたはニコチン)であると認められるように、その構造を充分に維持しつつ、それをキャリアに充分に結合または連結できるようにするために、ハプテンを修飾することを包含する。ワクチン接種した個体が、遊離ハプテン(ヘロインまたはニコチン)を認識する抗体を有することは、必須である。ラジオイムノアッセイおよび競合ELISAアッセイ実験(実施例でさらに詳細に説明されている)は、遊離ハプテンに対する抗体の力価を測定し得る。目的の抗体は、ハプテン特異的な抗体であり、ある実施態様では、ヘロイン特異的な抗体またはニコチン特異的な抗体である。好ましい実施態様を記述するために使用した原理および方法は、この開示を、種々の薬物中毒および毒性応答の処置に有用な広範囲のハプテン−キャリア結合体にまで拡張できることを認識すべきである。
【0054】
結合体
本発明の新規のニコチン−キャリア結合体の調製物は、ニコチンおよびニコチン代謝物から誘導される。図8は、ニコチンおよびその代謝物のいくつかの表示を示す。本発明の新規なヘロイン結合体の調製物は、ヘロインおよびヘロイン代謝物から誘導される。図11aおよび11bは、ヘロイン、およびヘロイン結合体の調製物に関する可変部位のいくつかの表示を示す。
【0055】
このハプテン−キャリア結合の長さおよび性質は、このハプテンが、それに対して最初に生じた抗体による最適認識を可能にするために、キャリアドメインから充分な距離をおいて配置されるようにする。リンカーの長さは、以下からなる群から選択された「分枝」内に戦略的に配置された-CH2-基の数を変えることにより最適化され、本明細書中の図1aおよび1bに示されている:

上記分枝に関して、nは、好ましくは、約2〜約20、さらに特定すると、約2〜約8、最も好ましくは、3〜5から選択された整数であり;Yは、好ましくは、S、OおよびNHからなる群から選択され;そしてQは、好ましくは以下からなる群から選択される:
(1)-H
(2)-OH
(3)-CH2
(4)-CH3
(4a)-OCH3
(5)-COOH
(6)ハロゲン
(7)タンパク質またはペプチドキャリア
(8)修飾タンパク質またはペプチドキャリア
(9)活性化エステル(例えば、2-ニトロ-4-スルホフェニルエステルおよびN-オキシスクシンイミジルエステル)
(10)キャリアまたは修飾キャリアに対して反応性の基(例えば、混合無水物、ハロゲン化アシル、アシルアジド、ハロゲン化アルキル、N-マレイミド、イミノエステル、イソシアネート、イソチオシアネート);または
(11)その「CJ」参照番号により同定された他の「分枝」。
【0056】
T細胞エピトープ含有キャリア(例えば、タンパク質またはペプチドキャリア)は、ハプテンとの結合を促進するために、当業者に公知の方法により(例えば、チオレーションにより)、修飾され得る。例えば、2-イミノチオラン(iminothiolane)(Traut's試薬)を用いて、またはスクシニル化によってなど。簡単のために、(CH2)nQi(ここで、Q=Hである)は、(CH3)、メチルまたはMeとして表わされ得るが、図1aおよび1bで示す「分枝」で同定されたモチーフに適合することが分かる。
【0057】
本明細書中で使用される市販の化合物のさらなる略語は、以下を含む:
BSA=ウシ血清アルブミン
DCC=ジシクロヘキシルカルボジイミド
15 DMF=N,N-ジメチルホルムアミド
EDC(またはEDAC)=N-エチル-N'-(3-(ジメチルアミノ)プロピル)カルボジイミドヒドロクロリド
EDTA=エチレンジアミン四酢酸ジナトリウム塩
HATU=0-(7-アザベンゾトリアゾール-1-イル)-1,1,3,3-テトラメチルウロニウムヘキサフルオロリン酸
NMM=N-メチルモルホリン
HBTh=2-(1H-ベンゾトリアゾール-1-イル)-1,1,3,3-テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート
TNTU=2-(5-ノルボルネン-2,3-ジカルボキシイミド)−1,1,3,3-テトラメチルウロニウムテトラフルオロボレート

ート
HOBt=N-ヒドロキシベンゾトリアゾール
【0058】
さらに、数個の有名な化合物のIUPAC命名法は、以下である:
ニコチン 1-メチル-2-(3-ピリジル)ピロリジン
コカイン N-メチル-2-(3-ピリジル)-5-ピロリジン
【0059】
反応
1つの実施態様において、結合体PS-54の前駆体は、塩化メチレン中、2当量のジイソプロピルエチルアミンの存在下で、ラセミ体のノルニコチンを無水コハク酸でアシル化することにより合成された。次いで、HATUを用いて、この反応の生成物を、キャリアタンパク質のリジン残基にカップリングして、結合体PS-54を得る(実施例1、方法B参照)。
【0060】
別の実施態様において、PS-55、PS-56、PS-57、およびPS-58の前駆体は、無水メタノール中、(S)-(-)-ニコチン中で、エチル3-ブロモブチレート、5-ブロモ吉草酸、6-ブロモヘキサン酸または8-ブロモオクタン酸で、それぞれピリジン窒素を選択的にアルキル化することにより、合成された(実施例2、方法A、B、C、およびD参照)。これらの反応の生成物を、HATUを用いてキャリアタンパク質と結合させて、結合体PS-55、PS-56、PS-57、およびPS-58を得た(実施例3、方法A参照)。
【0061】
【表1】

【0062】
これは、結合体の非限定的なリストである。他の結合体は、T細胞エピトープ含有キャリアにカップリングした1つを越えるハプテンで作製されている。好ましくは、1〜100個のハプテンがT細胞エピトープ含有キャリアにカップリングする。最も好ましくは、1〜70個のハプテンがT細胞エピトープ含有キャリアにカップリングする。
【0063】
化合物PS-54、PS-55、PS-56、PS-57、およびPS-58の合成方法が、実施例に開示される。開示された方法に従って、例えば、水性条件下で活性化剤を使用して、当業者は、任意の所望の化合物を合成し得る。
【0064】
誘導体化分子、例えばハプテンへの、タンパク質/ペプチドの架橋またはタンパク質の結合体化を容易にするために開発された、広範な範囲の化合物が存在する。これらは、カルボン酸由来の活性エステル(活性化化合物)、混合無水物、アシルハライド、アシルアジド、アルキルハライド、N-マレイミド、イミノエステル、イソシアネートおよびイソチオシアネート(これらは、当業者に公知である)を含むがこれらに限定されない。これらは、タンパク質分子の反応性基と共有結合を形成し得る。活性化基に依存して、反応性基は、タンパク質分子のリジン残基のアミノ基またはキャリアタンパク質中のチオール基または改変キャリアタンパク質分子である。これらは、反応した場合、アミド、アミン、チオエーテル、アミジンウレア、またはチオウレア結合形成を生じる。当業者は、例えば、一般的な参考文献(例えば、Chemistry of Protein Conjugation and Cross-Linking(Wong(1991)CRC Press,Inc.,Boca Raton,FL)において、さらに適切な活性化基を同定し得る。理想的には、結合体化は、リジン側鎖アミノ基を介する。ほとんどの試薬は、優先的にリジンと反応する。特に適切なキャリアは、CTBである。なぜならそれは、その未変性(native)の形態において1モノマーあたり9つのリジン残基を有するからである。複合体化した5量体化CTBは、その構造および活性を維持するかどうかを決定するために、GM1ガングリオシド結合が評価され得る。
【0065】
本出願人らは、組み替えCTBの量を発現させ、そして精製した。これらは、一旦最適化されると、大きい発酵バッチで生成される。組み替えタンパク質を発現させそして精製するプロセスは、当該分野で公知である。例えば、USSN 07/807,529を参照。例えば、CTBは、アフィニティークロマトグラフィー(Tayotら、(1981)Eur.J.Biochem.113:249〜258)により精製され得、ヘロインまたはニコチン誘導体に結合され、次いで、結合体は、さらに精製され得る。精製されたCTBおよびその結果得られる結合体は、CTBの5量体の純度についてそして保持(maintenance)について分析される。技術は、SDS-PAGE、未変性(native)PAGE、ゲル濾過クロマトグラフィー、ウエスタンブロッティング、直接およびGM1-捕獲ELISA、およびビオチン化CTBとの競合ELISAを含む。ハプテン化のレベルは、質量スペクトル分析、逆相HPLCにより、そしてハプテンの存在からもたらされるUV吸収の増加の分析により測定される。フルスケール(full-scale)処方のための調製において、結合体の溶解性および安定性の両方が最適化される。これらの分析の詳細が、実施例中に与えられる。
【0066】
CTBの5量体構造は、本発明を実施するための好適なキャリアであり、そしてGM1結合は、CTBの5量体が存在することを決定するための有効なアッセイであるが、本発明は、CTBの5量体の形態の使用に限定されない。本発明の使用のために操作(manipulate)され得る他のT細胞エピトープキャリア、ならびにCTBの他の形態(例えば、モノマー、ダイマーなど)は、本発明に含まれる。CTBの5量体の形態以外のキャリアが使用される場合、当業者は、適切なアッセイを使用して、必要なキャリアの存在および活性を決定する(例えば、GM1結合の使用によりCTBの5量体の形態の存在を決定する)。
【0067】
ハプテン化(haptenation)のレベルを変更するために、別のアプローチが採られる。1つの実施態様において、キャリアは、多価ヘロインまたはニコチン構築物(construct)によりハプテン化される。この考えは、複数の抗原性ペプチド(MAP)の概念(Luら、Mol.Immunol.、28:623〜630(1991))に基づいている。このシステムにおいて、複数の分枝状リジン残基は、ハプテン密度および結合価(valency)を最大化するために利用される。このアプローチの前提は、同じペプチドまたはタンパク質分子に結合した複数のハプテンのコピーが存在する場合には、免疫応答が増強されるということである。従って、キャリアCTB5量体上の1つまたは2つの部位のみに結合される必要がある多価のハプテンは、本明細書中に説明されるように調製される。このような複数の抗原性ハプテンのコアは、Tamに示唆された(Luら、前出)ように、分枝状のポリリジンコアである。化学的に反応性のハンドル(handle)は、保護Cys残基の包含により保存される。すべての利用可能なアミノ基のヘロインまたはニコチンハプテン化の後、Cysのスルフヒドリルは、アンマスキング(unmask)され、そしていくつかの任意の二官能スルフヒドリル/アミノ特異的架橋剤を有するタンパク質へのカップリングのために利用可能になる(Yoshitakeら(1979)Eur.J.Biochem.101:395〜399)。複数の樹木状構造がコアとして使用される。
【0068】
アジュバント
キャリアの効果をマスクしない任意のアジュバントが、本発明のヘロインおよびニコチン治療ワクチンに有用であると考えられる(Edelman(1980)Rev.Infect.Dis.2:370〜373を参照)。本出願人らの当初の実験は、コカイン中毒に対する治療ワクチンの実現可能性が強力なアジュバントCFAを使用することを実証することを目的としていた。しかし、CFAは、ヒトにおいては好適ではない。ヒトにおける使用について最近許可された有用なアジュバントは、みょうばん(alum)であり、水酸化アルミニウム(Spectrum Chem.Mtg.Corp.、New Brunswick、NJ)またはリン酸アルミニウム(spectrum)を含む。典型的に、ワクチンは、みょうばん上に吸着され、これは非常に限定された溶解性を有する。マウスモデルにおける予備的なデータは、みょうばんが強力な抗コカイン抗体応答を誘発可能であること、およびMF59(Chiron、Emyryville、CA)またはRIBIアジュバントもまた適切であることを示唆する。
【0069】
キャリアタンパク質としてのCTBによる有効な免疫化は、強力なアジュバントを必要としない。実施例に示されるように、高力価抗ニコチン抗体応答は、みょうばんをアジュバントとして用いるか、または任意の添加されるアジュバント非存在下でのCTB-ニコチン結合体での免疫化により誘発される。CTB以外のキャリアについて、当業者は、必要であれば、適切なアジュバントを決定し得る。
【0070】
賦形剤および補助剤
治療用組成物は、必要に応じて、1種以上の薬学的に受容可能な賦形剤を含み得る。その例としては、滅菌水、塩溶液(例えば、生理食塩水、リン酸ナトリウム、塩化ナトリウム)、アルコール、アラビアゴム、植物油、ベンジルアルコール、ポリエチレングリコール、ゼラチン、マンニトール、炭水化物、ステアリン酸マグネシウム、粘稠パラフィン、脂肪酸エステル、ヒドロキシメチルセルロースおよび緩衝液が挙げられるが、これらに限定されない。他の適切な賦形剤は、当業者に使用され得る。治療粗製物は、必要に応じて少なくとも1種の補助剤、例えば、分散媒体、コーティング(例えば脂質およびリポソーム)、界面活性剤(例えば、湿潤剤および乳化剤)、潤滑剤、保存剤(例えば、抗細菌剤および抗真菌剤)、安定剤および当業者に周知の他の試剤を含み得る。本発明の組成物はまた、さらなるアジュバント、試剤および/または不活性な薬理学的に受容可能な賦形剤を含み得、これらは、薬物の治療特性を増強するためにか、または別の投与形態(mode)を可能にするために添加され得る。
【0071】
上記のように生成された、高度に精製されたハプテンキャリア複合体は、ヒト治療に適切な本発明の治療組成物中に処方され得る。本発明の治療組成物が、注射(すなわち、皮下注射)により投与されるべき場合、高度に精製されたハプテンキャリア複合体が、薬学的に受容可能なpH(すなわち、約4〜9の範囲)において、水性溶液中に溶解可能であり、その結果組成物が流体でありそして容易な投与が存在することが好ましい。しかし、高度に精製されたハプテンキャリア結合体が水性溶液中の懸濁液中に存在する組成物を投与することが可能である。そしてこのような懸濁液は、本発明の範囲内である。組成物はまた必要に応じて、薬学的に受容可能な賦形剤、アジュバント、および補助剤または補充的活性化合物を含む。投与の形態に依存して、必要に応じた成分は、治療組成物の所望の特性、例えば、適切な流動性、望ましくない微生物の作用の防止、増強されたバイオアベイラビリティーまたは長期間の吸収を保証する。
【0072】
本発明の治療組成物は、無菌で、製造、貯蔵、分配および使用の条件下で安定であり、そして細菌および真菌などの微生物の汚染作用に対して保持されなければならない。組成物の統合性(integrity)を保持するための、本発明の治療組成物を製造するのに好適な手段は、組成物が凍結乾燥された粉末であって、賦形剤または補助剤、例えば無菌水中で、使用の直前に再構築される粉末の形態であり得るような結合体および薬学的な賦形剤の処方物を調製することである。無菌注射可能な溶液の調製のための無菌粉末の場合、調製の好適な方法は、真空乾燥、フリーズドライ、またはスピン(spin)乾燥であり、これらにより活性成分プラス任意の追加の所望の成分の粉末が、前の滅菌濾過されたそれらの溶液から得られる。
【0073】
本発明の活性化合物は、患者(例えば、ヒトを含む哺乳動物)に投与するための治療組成物を生産するための従来のGalen製薬学の方法に従って処理され得る。好適な投与の形態は、鼻腔内、気管内、経口、経皮および/または注射である。1つの特に適切な投与の形態の組み合わせは、最初の注射および鼻腔内ブーストを含む。
【0074】
非経口用途については、特に適切なのは、注射可能な、滅菌溶液であり、好ましくは油状もしくは水性の溶液、ならびに懸濁液、乳濁液またはインプラント(坐剤を含む)である。アンプルは、簡便な単位用量である。経腸用途については、特に適切なのは錠剤、ドラジェー、液体、懸濁液、滴下剤(drop)、坐剤、またはカプセルであり、経腸コーティング(enteric coating)を含み得る。シロップ、エリキシルなどは、甘味ビヒクルが採用される場合に使用され得る。
【0075】
除放性もしくは指定放出性(directed release)組成物が処方され得る。例えば、リポソームまたは活性化合物(結合体)が差動的に分解可能なコーティング、例えば、ミクロカプセル化、複合(multiple)コーティングなどで保護されるものである。新たな化合物をフリーズドライし、そして得られた凍結乾燥物を、例えば、注射のための生成物の調製のために使用することもまた可能である。
【0076】
局所的用途については、スプレー不可能な形態として、局所的用途に適合可能で、そして好ましくは水よりも大きい動的粘度を有するキャリアを含む粘稠から半固体もしくは固体形態が採用される。適切な処方物は、溶液、懸濁液、乳濁液、クリーム、軟膏などを含むがこれらに限定されない。これらは、所望であれば、滅菌されもしくは補助剤と混合される。局所的用途について適切なのは、スプレー可能なエーロゾル調製物であり、ここで、活性化合物は、好ましくは適切な賦形剤または補助剤と組み合わせてスクイーズボトル中にまたは加圧された揮発物(通常は気体状の噴霧剤)との混合物中にパッケージングされる。
【0077】
本発明の組成物および方法を通じて上昇した抗体は、150KDaから1,000KDaの範囲の分子量を有し得る。治療剤組成物中に最適化された結合体を含むワクチン接種後の被検体がフリーのヘロインまたはニコチンに曝される場合、フリーのヘロインまたはニコチンが、ヘロイン特異的もしくはニコチン特異的な抗体により標的化される。薬物の形態または構造の変化は、抗体がインビボで薬物を認識するのに必要がない。本発明を限定する意図はないが、ワクチン接種された個体がヘロインまたはニコチンに曝される際、抗薬物抗体は、ヘロインおよびニコチンの効果をブロックすることが考えられる。少なくとも3つのメカニズムが、活性をブロックするのに寄与していると考えられる。第1に、抗体は、血液脳関門を横切れない。従って、ヘロインまたはニコチンは、抗ヘロインもしくは抗ニコチン抗体に結合した場合、血液脳関門を横切らず、そしてオピオイドレセプターおよびドーパミン輸送体に対してそれぞれ効果を発揮することができないと考えられる。第2に、任意の特定の理論に限定されないが、抗体が、薬物のそのレセプターへの結合を、単純な立体障害により防止することが考えられる。このメカニズムは、薬物の非CNS効果のいくらか(例えば、心臓障害性)をブロックするのにおいて、そして非CNS標的を有する他の薬物に対する抗体の活性において効果的(operative)であることが期待される。第3に、ヘロインおよびニコチンの両方は、酵素的および非酵素的分解の両方による比較的に短いインビボでの半減期を有し、不活性な代謝物を生成する。ヘロインおよびニコチンは、特に、充分に小さい薬物であるので、その結果、それらが抗体を架橋し得る可能性が非常に低く、このため、いずれの薬物についても、生理学的に重要な免疫複合体形成が生じる可能性は非常に低い。
【0078】
粘膜の用途のまたさらなる実施態様は、本発明の実施に使用される。例えば、コポリマーマイクロスフェアは、粘膜免疫応答を誘発または増強するために使用される。これらの小さい、生分解性マイクロスフェアは、結合体をカプセル化し、そして保護し、そして粘膜免疫系による取り込みを容易にする。それらはまた経口免疫化のために最も広範に使用されるが、それらは、鼻腔内免疫化に有効であることが報告されている(Walker(1994)Vaccine 12:387〜399)。不活性なポリマー(例えば、直径1〜10μmのポリ(ラクチドーコーグリコリド)(PLG))が特にこの点において有用である(Holmgrenら、(1994)Am.J.Trop.Med.Hyg.50:42〜54;Serva(1994)Science 265:1522〜1524)。
【0079】
好適な結合体に加えて、異なる結合体との交差免疫が、抗体交差反応性を最小化するために行われる。マウスは、1つの結合体で初回刺激され、次いで、14日目に同じキャリアにカップリングした異なる結合体でブーストされる。ヘロインまたはニコチン結合体の両方を認識する抗体分泌B細胞のサブセットのみが、最大的に刺激され、そして拡大される。2つの結合体が、それらの薬物分子への結合ポイントにおいて異なるので、認識の特異性が上昇すると考えられる。誘発された抗血清の特異性が、次いで、競合ELISAにより確認される。
【0080】
またさらに、1種を越える結合体を含む治療組成物が、ポリクローナル抗体を刺激し、それにより引き続くチャレンジ(challenge)における抗体応答を増強する。
【0081】
用量
病原体に対する中和抗体応答は永年公知であり、少なくとも1年間保持される高力価抗ヘロイン抗体または抗ニコチン抗体応答を達成することが可能であるべきである。従来のワクチンで得られた値に基づくと、ヘロインまたはニコチン血漿濃度を中和するために必要な特定の抗体の濃度を達成することが可能であるべきである。マウスにおける薬物動態学的なデータ(データは示さず)は、生理学的に関連のある中和抗体濃度が達成され得ることを明確に証明している。最終的に、ヘロインを濫用する女性および/または喫煙する女性において母性抗体の胎盤を通過する能力、そして母性抗体の胎児を保護する能力は、治療的ヘロインおよび/またはニコチンワクチン注射のさらなる所望の効果を表す。当業者は今もなお幅広い集団にわたって効果的な治療に最適化することに常に挑戦しており、当業者は適切な治療用量を決定する際に種々の要因を慎重に考慮している。さらに、抗体応答は、実施例および他の抗体ベースのアッセイで記載されるように特定のELISAを用いてモニターされ得る。
【0082】
除去速度の遺伝的変動、他の薬物との相互作用、除去および分散における疾患誘発された変化、および他の要因が組合わさって、同じ用量を与えられた患者のワクチンレベルに対する幅広い範囲の応答を得る。臨床指示薬は所望の範囲内のいくつかの薬物の滴定を補助し、そして治療に対する応答の慎重な観察のための代用となる化学定量ではない。クリアランス、蓄積半減期、および定常状態血漿レベルは予測することが困難であるので、抗濫用薬物抗体産生の測定は最適な用量への指針として有用である。本発明の結合体/キャリアー/アジュバントは、循環中の遊離ヘロインまたは遊離ニコチンを最もよく結合し得る抗体応答を誘発する能力に関して評価される。
【0083】
抗体応答の誘発においてキャリアーおよびアジュバントの効果についてのさらなる詳細は、実施例に示される。従って、特定の場合において活性化合物の実際に好ましい量は、利用される特定の結合体、処方された特定の組成物、適用のモード、ならびに特定の部位および処置される生物体によって変動する。例えば、1つの実施態様において、適切なキャリアーを含む治療組成物は最初に非経口的に与えられ、そして粘膜から追加免疫される。本明細書中でより詳細に記載されるように、最適なハプテンおよびキャリアーの組み合わせを用いるこのタイプの免疫は、全身に主にIgGおよび局所的に主にIgAを生成するのに非常に効果的である。
【0084】
実施例に記載されるように、マウスのモデルは抗体応答の異なる特性(抗体力価を含む)、遊離ニコチンを認識する能力、ニコチン結合能力(capacity)、ニコチンに対するアフィニティ、抗体応答の特異性、抗体のアイソタイプ、抗体組織局在化、およびニコチン投与に続く抗体の生理学的効果を証明および測定するために使用されている。
【0085】
抗体力価
ワクチンの1次スクリーニングは、目的の結合体が高力価抗体応答を誘発するかどうかである。ELISAアッセイを用いて決定され得る抗体力価は当該分野で周知である。例えば、プレートはニコチン-HEL結合体で被覆され、広範に洗浄され、そして試験血清の希釈率を変動させながらインキュベートされる。プレートは再度洗浄され、そして酵素標識化抗マウスIgG2次抗体で展開される。力価は、最大応答の50%を与える血清の希釈率の逆数(reciprocal)として定義される。
【0086】
抗体力価は、抗体の濃度および抗体のアフィニティの両方に依存する。必要とする抗体力価を概算する際に、抗体の濃度およびアフィニティの両方が当業者によって考慮される。
【0087】
抗体アフィニティは、未結合抗体と未結合濫用薬物との平衡で抗体−薬物複合体の量を示す。従って:
Keq=[Ab+薬物複合体]/[Ab]×[薬物]
ここで[Ab]=非占有抗体結合部位のモル濃度;[薬物]=未結合薬物のモル濃度;
および[Ab+薬物複合体]=抗体−薬物複合体のモル濃度。
【0088】
抗体応答の特異性
中毒性薬物の活性をブロックするのに最も効果的であるために、誘発された抗体が、このような薬物の薬理学的に不活性な代謝物に最小のアフィニティを有さなければならない。薬物の薬理学的に不活性な代謝物への抗体の結合は、ワクチンの効力を減少させる。代謝物に関する抗血清の特異性は、競合ELISAおよび放射性標識化イムノアッセイで決定される。さらに、誘発された抗体が薬物の薬理学的に活性な代謝物および誘導体に結合する場合、ワクチンの有効性は増大する。
【0089】
さらに、中毒治療および他の医用手段で用いられる他の薬物と生じる抗体の相互作用は、最小化されるべきである。特に、ヘロインおよび多薬物濫用者(polydrug abusers)に一般に処方される薬物との交差反応が回避される。以下の薬物は、共処置用(co-treatment)として有用である:ブプレノルフィン、デシプラミン、ナロキソン、ハロペリドール、クロロプロマジン(chlorproazine)、マジンドールおよびブロモクリプチン、ならびに関連のあり得る他の薬物。
【0090】
ヘロインLD50における効果
高力価特定抗体応答を誘発する際に最も効果的であるこれらの結合体および免疫プロトコールは、さらにヘロインLD50をシフトさせるそれらの能力について評価される。このような実験において、ヘロイン免疫化およびコントロールキャリアー免疫化マウスは、以前に定義されたLD50付近の用量でヘロインを静脈内に注射される。10匹のマウスが各時点で使用され、そしてデータはCochran-Mantel-Haenzelχ二乗検定を用いて分析された。
【0091】
さらに、不全時間モデルは、ヘロインによって誘発された死までの時間(time-to-death)を分析するために使用される。抗ヘロイン抗体が(a)死亡(lethality)に必要とされるヘロインの用量および(b)死までの時間の両方を増大させる程度は、このモデルでの有効性の基準である。これらは抗体のインビボでの有効性の迅速でかつ厳密な試験を提供する。
【0092】
ヒトにおける生理学的効果の観察
ヘロイン濫用の発症の間の医学的注意を要する人は、浅い呼吸、瞳孔の収縮、徐脈、体温の低下および外部刺激に対する一般的応答の欠如が見られ得る。高レベルの過量では、症状はチアノーゼおよび死に至る。ヘロインの血中レベルに加えてこれらの要素全てが評価され、そしてワクチンでの活性免疫またはヒトへの抗体の受動的投与のいずれかの適用(administration)が考慮される場合、特定の判定基準が確立される。
【0093】
本発明の範囲を限定することを意図しないが、ここで本発明の組成物および方法は、ニコチンおよびヘロイン、ならびに特定の実施態様を参照して詳細に記載される。
【0094】
以下の実施例の多くは、ニコチンおよび抗ニコチン抗体を特に記載する。しかし、これらの実施例はヘロインに適用可能である。例えば、ヘロインの再分散(すなわち、脳内の減少量)のモニタリングは、トリチウム標識化ニコチン(NENから入手可能)を用いた免疫されたマウスの注射、次いで種々の時点での断頭により達成される。ヘロイン代謝およびクリアランスにおける抗ヘロイン抗体の効果は、3Hヘロイン注射マウスから採取された血漿のTLC分析またはHPLCのいずれかににより分析され得る。
【0095】
本明細書中で記載される実施例および実施態様は、例示のみの目的に関するものであり、そしてそれらを考慮して種々の改変が当業者によって提案されることが理解されるべきである。従って、以下の非限定的実施例は本発明の実施の指針のために提供される。
【0096】
〔実施例1〕
ニコチン結合体の調製
方法A 塩化メチレン中のノルニコチン(nornicotine)(50mmol)の溶液に、トリエチルアミン(75mmol)、次いで無水コハク酸(100mmol)を添加した。この溶液を18時間還流で加熱した。この反応混合物を順に10%水性塩酸、飽和重炭酸ナトリウム溶液、ブラインおよび水で洗浄した。乾燥(MgSO4)および減圧下での溶媒の除去の後、残渣をシリカゲルフラッシュクロマトグラフィーを用いて精製し、所望の生成物を得た。
【0097】
方法B 次いでスクシニル化ノルニコチンを、ニコチン結合体PS-54(図7)を合成するために使用した。DMF(0.1ml)中のスクシニル化ノルニコチン(5μm)の溶液に、ジイソプロピルエチルアミン(10μm)を添加し、次いでHATU(5.5μm)を添加した。10分後、この淡黄色の溶液を、0.1Mホウ酸ナトリウム緩衝液(pH8.8,0.9ml)中のHELまたはBSA(500μg)のいずれかの溶液に滴下し、そしてこの混合物を18時間周囲温度で撹拌した。結合体溶液のpHを0.1M水性塩酸の慎重な添加によってpH7.0に調節し、次いでPBSに対する透析によって精製した。
透析物を0.2μmフィルターを通じてろ過し、そしてハプテン化(haptenation)のレベルを質量スペクトル分析およびUV吸収によって測定した。
【0098】
ニコチン特異性抗体応答の誘発
低分子またはハプテン(例えばニコチン)に対する特異的な抗体応答を誘発するために、T細胞エピトープ含有キャリアー(例えばタンパク質キャリアー)にそれを結合することが必要である。このキャリアーはニコチン特異性B細胞による抗体産生の開始および維持に必要であるT細胞によって認識される。この実施例では、使用されるキャリアーはBSAであった。数種の異なるタイプのリンカーでニコチン分子の異なる部分に結合した構造的に異なるニコチン-BSA結合体のパネルを産生した(図6b)。異なる結合体のセットはニコチン分子の変化および状態の試験を可能にした。任意の所定のニコチン結合体は、遊離ハプテン(ニコチン)、キャリアー、または結合体のみ(かつニコチンそれ自体を認識しない)のいずれかを認識する可変量の抗体を誘発し得るので、結合体のスクリーニングを以下の実施例のように行った。
【0099】
4匹のBalb/c雌マウス(2〜3ヶ月齢)を、フロイント完全アジュバント中のニコチン-BSA結合体(50μg)、PS-55-BSA、で腹腔内に免疫化した。これらの動物は調査において抗原に対して十分に設計された再現性のある応答を有する。PS-55-BSAの2度目の接種を21日目に行い、そしてマウスを35日目に出血させた。血清をPS-55および雌鳥卵リゾチームタンパク質(HEL)の結合体に結合する抗体に関するELISAで試験し、そして図9aに示す。これらのデータは、このニコチン-BSA結合体が強い抗体応答を誘発することができたことを証明する。
【0100】
第2のグループの10匹のBalb/cbyj雌マウス(2〜3ヶ月齢)を、抗ニコチン抗血清の血清プールの調製のために免疫した。この実験において、キャリアーはCTBを使用した。マウスを、アルヒドロゲル(alhydrogel)中のPS-55-CTB(10μg)で筋肉内注射によって免疫し、そして同じもので3回追加免疫した。マウスを出血させ、そして血清を別々にプロセスした。最初に各動物からの血清を直接ニコチンELISAで試験し、抗ニコチン抗体を測定し、次いで競合ELISAで試験し、誘発された抗体が遊離ニコチンを認識し得るかどうかを決定した。
【0101】
各動物からの血清を抗ニコチン直接ELISAで試験し、以下のように産生された抗体を測定した。Immulon2 96ウェルELISAプレートを、1×PBSで希釈した10μg/mlの第2の結合体ニコチン(50μl)およびHEL.PS-55-HELで一晩4℃でコーティングした。プレートを室温で1時間PBS中の0.5%ゼラチンでブロックした。プレートを0.05%Tween-20(PBS-T)を含む1×PBSで3回洗浄した。血清サンプルをプレートに添加して、PS-55-HELコーティングしたプレートに対して1/300希釈で開始した。この血清を3倍希釈で希釈し、そして室温で2時間ブロックしたプレート上でインキュベートした。次いでプレートをPBS-Tで3回洗浄した。ビオチン化ヤギ抗マウスIgG(ロット番号J194-N855BまたはC)をPBS-T中で1/10,000に希釈し、そして100μlを各ウェルに添加し、室温で1時間インキュベートした。ストレプトアビジン-HRPを1/10,000に希釈し、そして30分間ウェルに添加し、次いでPBS-Tで洗浄した。プレートをPBS-Tで3回洗浄し、次いでウェルのそれぞれにTMB基質を添加することによって展開した。この反応を5分後に1Mリン酸で停止した。プレートをELISAリーダーを用いてO.D.450nmで判定した。次いで、直接ELISAで抗ニコチン抗体を産生した血清を競合ELISAで試験した。
【0102】
遊離ニコチンの認識
誘発された抗体が遊離ニコチン分子を認識し得るかどうかを決定するために、競合ELISAを行った。このアッセイで、遊離ニコチンは、血清中の抗体の結合に関してELISAプレートにコーティングされたPS-55 HELと競合する。ニコチンに対して高いアフィニティを有する抗体は、PS-55 HELに結合する抗体のほとんどを含み、次いで低濃度のニコチンは抗体が結合するのを効果的に阻害し得る。
【0103】
PS-55BSAを接種された上記の4匹のマウスのうち3匹に関して、PS-55 HELに結合する抗体が遊離ニコチンによって阻害された(データは示さず)。結合体のみに対して特異的な抗体の存在が、抗ニコチン抗体の作用を妨害することを予期されないことに注意のこと。これは、遊離ニコチンを認識するこれらの血清のそれぞれに抗体が存在することを示す。ニコチン、コチニン(cotinine)の主な代謝物はまた競合ELISAで試験され、そしてそれは非常に高い濃度以外ではいかなる血清中の抗体とも競合し得ない。誘発された抗体が遊離ニコチン分子を認識し得たことを証明するために、RIAを用いて[3H]-ニコチンへの特異的な結合を測定した。上記実験からの免疫血清を、血清サンプル中のIgGと結合する[3H]-ニコチンおよびタンパク質-G-接合セファロースビーズ(γ結合-Gセファロース、Pharmacla)でインキュベートした。抗体結合[3H]-ニコチンをビーズの遠心によって単離し、そしてビーズのシンチレーション計数によって検出した。4匹のマウスのうちの3匹からの血清は、遊離[3H]-ニコチンに顕著に結合した(データは示さず)。50倍過剰非標識化ニコチンを有するこれらの血清のプレインキュベーションは、これらの抗体への[3H]-ニコチンの結合を完全に阻害した。これらのデータは、ニコチン特異的抗体応答を誘発する合成されたニコチン-キャリアー結合体が、インビボでの脳へのニコチンの分布を防止し得るべきであることを証明する。
【0104】
PS-55-CTBを用いて免疫化した10匹のマウスの第2の群について、PS-55 HELに結合している抗体を、遊離のニコチンにより阻害した(図10)。50%ポイントの力価を表す、血清の1つの希釈物を用いた。Immulon 2 96ウェルELISAプレートを、1×PBSで希釈された10μg/ml PS-N-3.2HEL(50μl)を用いて、4℃にて一晩コーティングした。プレートを、室温にて、1時間、PBS中で0.5%ゼラチンを用いてブロックした。プレートを、0.05%のTween-20(PBS-T)を含む1×PBSを用いて、3回洗浄した。プレートを、種々の濃度の遊離ニコチン、ならびに代謝物、薬物、および関連する化合物の存在下で、室温にて2時間、抗血清を用いてインキュベートした。次いで、プレートを、PBS-Tで3回洗浄した。ビオチン化ヤギ抗マウスIgG(製造番号Jl94-N855BまたはC)を、PBS-T中で1/10,000に希釈し、そして100μlを各ウェルに添加し、そして室温で1時間インキュベートした。ストレプトアビジン-HRPを1/10,000に希釈し、そして30分間にわたってウェルに添加し、続いてPBS-Tで洗浄した。プレートを、PBS-Tを用いて3回洗浄し、次いで、TMB Substrateを各ウェルに添加することにより、展開した。反応を、1Mリン酸を用いて、5分後に停止させた。O.D.450nmにて、ELISAリーダーを用いて、プレートを読みとった。試験された各血清プールについての競合曲線を、図10に示す。競合剤濃度の増加をx軸に、そして450nmにおける吸収をy軸に、グラフで示す。
【0105】
図10に示されるように、ニコチン、コチニン、またはノルニコチンの代謝物に対する認識はわずかであるかまたはほとんど認識されなかった。麻酔薬リドカインをネガティブコントロールとして用い、そしてこれは抗体の結合と競合することができなかった。結合体自身はまた、競合剤として用いられ、そしてこれはこの抗体の結合と競合することができた。
【0106】
ニコチン活性のブロッキングにおいて効果が最大であるために、誘発された抗体は、ニコチンの代謝物に対して最小の親和性を有するべきである。より安定な代謝物への抗体の結合は、ワクチンの効力を低減する。抗血清のプールのスクリーニングにおいて、ニコチンのみが、結合体への抗体の結合を阻害することができた。この実験において、代謝物(コチニンおよびノルニコチン)および麻酔薬(リドカイン)について認識がわずかに見られたかあるいは見られなかった。従って、ニコチン-CTB結合体は、ニコチンを認識しかつ活性がより低い代謝物を認識しない抗体を誘発する。ニコチン-CTB結合体はまた、関連する構造を有する化合物およびニコチン中毒(addiction)を処置するのに現在用いられている薬物(データは示さない)を認識しない。
【0107】
ニコチン特異的抗体の特異性
ニコチンワクチンにより誘発される、抗ニコチン抗体の特異性を分析するために、ニコチン-CTB結合体で免疫化されたマウスからの血清を、競合ELISAで試験する。ニコチンの代謝物のパネルおよび関連する分子を、種々の濃度で試験する。抗体が代謝物について高い親和性を有する場合、低い濃度が、このアッセイを効果的に競合し得る。相対的反応性は、IC50として表され、これはELISAシグナルを50%低下させるインヒビター濃度である。以下の代謝物を、反応性について試験した:ニコチングルクロニド、コチニン、コチニングルクロニド、トランス-3'−ヒドロキシコチニン、トランス-3'-ヒドロキシコチニングルクロニド、ニコチン1'-N-オキシド、コチニンN-オキシド、およびノルニコチン。
【0108】
ニコチン分布の阻害における、ニコチン特異的抗体の効率
脳へのニコチン分布のインビボ阻害
ニコチン特異的抗体により引き起こされるニコチン組織分布における変化を評価するために、未処置の(免疫化されていない)ニコチン-CTB-免疫化マウスにおいて、コントロールのマウスと比較して3H-ニコチン分布を求める(follow)。免疫化マウスおよびコントロールの免疫化マウスに、0.08mg/kgの3H-ニコチンを静脈内注射し、次いで注射後1.0分において断頭する。続く組織および血漿ニコチン濃度の分析のために、脳および血液(血漿)を取り出す。血液を、EDTAを含む管に回収して、凝固を防ぐ。脳および血漿サンプルを、組織安定剤を含むシンチレーションバイアルに入れる;サンプルの消化を、3日にわたって室温で行う。サンプルを脱色し、そしてシンチレーションカクテルを各サンプルに添加する。氷酢酸を添加して、サンプルを浄化(clarify)する。サンプルをシンチレーションカウンタ内でカウントした後、データを組織のng/gまたはng/mlに変換する。ニコチン-CTB免疫化マウスの脳組織中のニコチン濃度は、3H-ニコチンの注射後、未処置のコントロールマウスの脳組織よりも顕著に低減される(データは示されない)。
【0109】
〔実施例2〕
方法A (S)-ニコチンのN'-酪酸付加物
アルゴン下、氷水温度において、無水メタノール(50ml)中の(S)-ニコチン(0.031モル)溶液に、4-ブロモ酪酸エチル(0.0341モル)を、10分間かけて滴下した。得られたオレンジ色の溶液を、室温まで加温し、そして18時間撹拌した。溶媒を減圧下で除去して、茶色の残渣を得、これをヘキサンを用いて沈殿させて、所望のエステルの分析的に純粋なサンプルを得た。
【0110】
エステル(36mg)を、メタノール(3ml)と1M水酸化ナトリウムとの溶液(5ml)に溶解させ、そして室温で18時間撹拌した。溶媒を、減圧下で除去し、そして残渣を10%塩酸中に溶解させ、そして酢酸エチルで抽出した。乾燥(MgSO4)後、溶媒を減圧下で除去し、そして所望の化合物を得た。
【0111】
方法B.(S)-ニコチンのN'-吉草酸付加物
アルゴン下、氷水温度において、無水メタノール(50ml)中の(S)-ニコチン(0.031モル)溶液に、1-ブロモ吉草酸(0.0341モル)を、10分間かけて滴下した。得られたオレンジ色の溶液を、室温まで加温し、そして18時間撹拌した。溶媒を減圧下で除去して、茶色の残渣を得、これをヘキサンを用いて沈殿させて、所望の化合物の分析的に純粋なサンプルを得た。
【0112】
方法C.(S)-ニコチンのN'-ヘキサン酸付加物
アルゴン下、氷水温度において、無水メタノール(50ml)中の(S)-ニコチン(0.031モル)溶液に、1-ブロモヘキサン酸(0.0341モル)を、10分間かけて滴下した。得られたオレンジ色の溶液を、室温まで加温し、そして18時間撹拌した。溶媒を減圧下で除去して、茶色の残渣を得、これをヘキサンを用いて沈殿させて、所望の化合物の分析的に純粋なサンプルを得た。
【0113】
方法D.(S)-ニコチンのN'-オクタン酸付加物
アルゴン下、氷水温度において、無水メタノール(50ml)中の(S)-ニコチン(0.031モル)溶液に、適切な1-ブロモオクタン酸(0.0341モル)を、10分間かけて滴下した。得られたオレンジ色の溶液を、室温まで加温し、そして18時間撹拌した。溶媒を減圧下で除去して、茶色の残渣を得、これをヘキサンを用いて沈殿させて、所望の化合物の分析的に純粋なサンプルを得た。
【0114】
〔実施例3〕
方法A PS-55、PS-56、PS-57およびPS-58の一般的調製
DMF(1.6ml)中のニコチンの適切なN'-アルカン酸アナログ(6.27×10-5moles)(実施例1から)の溶液に、DIEA(1.25×10-4moles)およびHATU(7.53×10-5moles)を加えた。室温で10分後、薄黄色溶液を、0.1M重炭酸トリウム、pH8.3(14.4ml)中のHELまたはBSA(16.5mg)のいずれかに加え、そして18時間攪拌した。結合体溶液を、4℃にて一晩、PBSに対する透析により精製した。結合体を、レーザー脱離質量スペクトル分析を用いて分析し、ハプテンの数を決定した。
【0115】
方法B PS-55の調製
DMF(0.4ml)中のニコチンのN'-酪酸付加物(39mg、1.56×10-4mole)(実施例2、方法Aから)の溶液に、DIEA(54ml、3.10×10-4mole)およびHATU(71mg、1.87×10-4mole)を加えた。室温で10分後、薄黄色溶液を、4mlの0.1Mホウ酸ナトリウム、0.15M塩化ナトリウム、pH8.5緩衝液中のrCTB(2mg、3.4×10-8moles[15.6×10-6molesのリジン])に滴下し、次いで1時間攪拌した。結合体を、4℃にて一晩、PBSに対する透析により精製した。結合体を、レーザー脱離質量スペクトル分析を用いて分析し、ハプテンの数を決定した。
【0116】
方法C PS-56の調製
DMF(0.4ml)中のニコチンのN'-吉草酸付加物(2mg)(実施例2、方法Bから)の溶液に、DIEA(2ml)およびHATU(2mg)を加えた。室温で10分後、薄黄色溶液を、4mlの0.1Mホウ酸ナトリウム、0.15M塩化ナトリウム、pH8.5緩衝液中のrCTB(2mg、3.4×10-8moles[15.6×10-6molesのリジン])に滴下し、次いで1時間攪拌した。結合体を、4℃にて一晩、PBSに対する透析により精製した。結合体を、レーザー脱離質量スペクトル分析を用いて分析し、ハプテンの数を決定した。
【0117】
方法D PS-57の調製
DMF(0.4ml)中のニコチンのN'-ヘキサン酸付加物(2mg)(実施例2、方法Cから)の溶液に、DIEA(2ml)およびHATU(2mg)を加えた。室温で10分後、薄黄色溶液を、4mlの0.1Mホウ酸ナトリウム、0.15M塩化ナトリウム、pH8.5緩衝液中のrCTB(2mg、3.4×10-8moles[15.6×10-6molesのリジン])に滴下し、次いで1時間攪拌した。結合体を、4℃にて一晩、PBSに対する透析により精製した。結合体を、レーザー脱離質量スペクトル分析を用いて分析し、ハプテンの数を決定した。
【0118】
方法E PS-58の調製
DMF(0.4ml)中のニコチンのN'-オクタン酸付加物(2mg)(実施例2、方法Dから)の溶液に、DIEA(2ml)およびHATU(2mg)を加えた。室温で10分後、薄黄色溶液を、4mlの0.1Mホウ酸ナトリウム、0.15M塩化ナトリウム、pH8.5緩衝液中のrCTB(2mg、3.4×10-8moles[15.6×10-6molesのリジン])に滴下し、次いで1時間攪拌した。結合体を、4℃にて一晩、PBSに対する透析により精製した。結合体を、レーザー脱離質量スペクトル分析を用いて分析し、ハプテンの数を決定した。
【0119】
方法F PS-60の調製
i)N−ピロリジン付加物の調製
メタノール中のノルニコチン(10mmol)の溶液に、エチル-5-ブロモバレレート(10mmol)を滴下する。TLCにより示されるように、出発物質の消費後、溶媒を減圧下で除去し、そして残渣を、シリカゲルフラッシュクロマトグラフィーを用いて精製し、所望のN-ピロリジン付加物を得る。
【0120】
ii)結合体の調製
エステル(15mmol)を5%水性メタノールに溶解し、これに、水酸化ナトリウム(15mmol)を加える。TLCにより示されるように、出発物質の消費後、1M水性塩酸を注意深く加えてpHを2とし、次いで酢酸エチルで抽出する。乾燥(MgSO4)および減圧下での溶媒の除去後、生成物を、シリカゲルフラッシュクロマトグラフィーを用いて精製し、所望の遊離酸を得る。
DMF(0.4ml)中の遊離酸(1.55×10-4mole)の溶液に、DIEA(3.1×10-4mole)続いてHATU(1.86×10-4molc)を加える。室温で10分後、薄黄色溶液を、4mlの0.1Mホウ酸ナトリウム、0.15M塩化ナトリウム、pH8.5緩衝液中のrCTB(2mg、3.4×10-8mole[15.5×10-6molesのリジン])に滴下する。混合物を室温で1時間維持し、中和し、次いで、4℃にてPBSに対して広範に透析し、PS-60を得る。
【0121】
方法G PS-51の調製
i)6-メチルニコチン酸メチルの調製
6-メチルニコチネート(0.375mol)を、メタノール(250ml)中の濃硫酸(25ml)の還流溶液に加え、そして還流温度で3時間攪拌する。次いで、メタノール(250ml)を加え、そして得られる混合物をさらに18時間加熱還流する。反応混合物を冷却し、そして減圧下で濃縮してスラリーを得、これを水(450ml)中の重炭酸ナトリウム(80g)の溶液に加える。混合物を減圧下で濃縮し、大部分のメタノールを除去する。得られる濁った混合物を、塩化メチレンで抽出し、乾燥(MgSO4)し、濾過し、そして減圧下で濃縮する。得られる粗生成物を、減圧下で蒸留により精製し、所望のエステルを得る。
【0122】
ii)6−メチルミオスミンの調製
ジエチルエーテル(500ml)中のジイソプロピルアミン(0.33mol)の溶液に、アルゴン下、-70℃にて、n-ブチルリチウム(1.6Mヘキサン溶液、0.247mol)を加える。調製したリチウムジイソプロピルアミン(LDA)に、N-(トリメチルシリル)ピロリジノン(0.265mol)を加え、そしてこの溶液を-70℃で15分間攪拌する。この溶液に、ジエチルエーテル(25ml)中の6-メチルニコチン酸メチル(0.165mol)を加え、そして混合物を一晩室温まで加温する。この後、混合物を氷浴中で冷却し、水(33ml)を加え、そしてエーテル層をデカントして取り除く。さらなるエーテルを加え、そしてデカント手順を2回繰り返す。水層に、濃塩酸を加え、そして得られる溶液を一晩還流する。酸性溶液をジエチルエーテルで洗浄し、減圧下で濃縮し、氷浴中で冷却し、そして50%水性水酸化カリウムで塩基性化する。水層をジエチルエーテル(3×150ml)で抽出し、乾燥(Na2SO4)し、減圧下で濃縮し、そして減圧下での蒸留により精製して所望の6-メチルミオスミンを得る。
【0123】
iii)6-メチルミオスミンの吉草酸エチル付加物の調製
乾燥トルエン中の6-メチルミオスミン(10mmol)の溶液に、ナトリウムアミド(15mmol)を加える。10分後、エチル-5-ブロモバレレート(20mmol)を加え、そしてTLCにより示されるように出発物質が消費されるまで、混合物を攪拌する。混合物を氷浴中で冷却し、乾燥エタノールでクエンチし、酢酸エチルで抽出し、乾燥(MgSO4)し、そして減圧下で濃縮する。シリカゲルフラッシュクロマトグラフィーを用いて精製し、所望の生成物を得る。
【0124】
iv)6-メチルノルニコチンの吉草酸付加物の調製
メタノール中の上記(iii)からの付加物(10mmol)の溶液に、シアノ水素化ホウ素ナトリウム(10mmol)、微量のブロモクレゾールグリーンインジケータ一および2NHCl/メタノール(溶液の色が青から黄色に変化し、黄色を保持するに十分な量)を加える。溶液を数時間攪拌し、その後、6N水性塩酸を加え、そして混合物を減圧下で濃縮する。重炭酸ナトリウム溶液での塩基性化、ジエチルエーテルでの抽出および乾燥(MgSO4)後、減圧下での蒸留を用いて物質を精製し、所望の化合物を得る。
【0125】
v)6-メチルニコチンの吉草酸付加体の調製
上記の(iv)由来のノルニコチン(10mmol)付加体のジエチルエーテル溶液に、ヨードメタン(20mmol)を加える。アルゴン下、効率的な(efficient)冷却管を使用して、出発物質が無くなる(consumed)(TLCにより示される)まで溶液を還流する。溶媒を減圧下で除去し、そして残渣をフラッシュクロマトグラフィーを使用して精製し、所望の化合物のラセミ混合物を得る。異性体をキラルHPLCを使用して分離し、所望の(S)-異性体を得る。
【0126】
vi) 結合体の調製
上記の(v)由来の6-メチルニコチン誘導体の(S)-異性体(1.53x10-5mole)のDMF溶液に、DIEA(3.06x10-5mole)、続いてHATU(1.86x10-5mole)を加える。周辺温度で10分後、この淡黄色溶液を、4mlの0.1Mほう酸ナトリウム、0.15M NaCl緩衝液(pH8.5)中のrCTB(2mg、3.40x10-8moleのタンパク質;1.53x10-6moleのリジン)に加える。周辺温度で1時間後、溶液を4℃でPBSに対して充分に(extensively)透析し、そしてハプテンの数を質量スペクトル分析を使用して分析した。
【0127】
方法H PS-52の調製
i) 5-メチルニコチン酸メチルの調製
5-メチルニコチン酸(0.375mol)を、濃硫酸(25ml)のメタノール(250ml)還流溶液に加え、そして3時間還流しながら撹拌する。次いで、メタノール(250ml)を加え、そして得られる混合物をさらに18時間加熱還流する。反応混合物を冷却し、そして減圧下で濃縮してスラリーにし、これを重炭酸ナトリウム(80g)の水(450ml)溶液に加える。混合物を減圧下で濃縮してほとんどのメタノールを除去する。得られた濁った混合物を塩化メチレンで抽出し、乾燥(MgSO4)し、濾過し、そして減圧下で濃縮する。得られる粗生成物を減圧下で蒸留することによって精製し、所望のエステルを得る。
【0128】
ii) 5-メチルミオスミンの調製
アルゴン下-70℃で、ジイソプロピルアミン(0.33mol)のジエチルエーテル(500ml)溶液にn-ブチルリチウム(0.247molの1.6Mヘキサン溶液)を加える。調製したリチウムジイソプロピルアミン(LDA)にN-(トリメチルシリル)ピロリジノン(0.265mol)を加え、そして溶液を-70℃で15分間撹拌した。この溶液に、ジエチルエーテル(25ml)中の6-メチルニコチン酸メチル(0.165mol)を加え、そして混合物を一晩かけて周辺温度まで昇温させる。この後、混合物を氷浴中で冷却し、水(33ml)を加え、そしてエーテル層をデカントして除く。さらにエーテルを加え、そしてデカントする手順を2回繰り返す。水層に濃塩酸を加え、そして得られる溶液を一晩還流する。酸性溶液をジエチルエーテルで洗い、減圧下で濃縮し、氷浴中で冷却し、そして50%水性水酸化カリウムで塩基性にする。水層をジエチルエーテル(3×150ml)で抽出し、乾燥(Na2SO4)し、減圧下で濃縮し、そして減圧下で蒸留することによって精製し、所望の5-メチルミオスミンを得る。
【0129】
iii) 5-メチルミオスミンの吉草酸エチル付加体の調製
5-メチルミオスミン(10mmol)の乾燥トルエン溶液にナトリウムアミド(15mmol)を加える。10分後、エチル-5-ブロモ吉草酸(20mmol)を加え、そして混合物を出発物質が無くなる(TLCにより示される)まで撹拌する。混合物を氷浴中で冷却し、乾燥エタノールでクエンチし、酢酸エチルで抽出し、乾燥(MgSO4)し、そして減圧下で濃縮する。シリカゲルフラッシュクロマトグラフィーを使用する精製により、所望の生成物を得る。
【0130】
iv) 5-メチルノルニコチンの吉草酸付加体の調製
上記の(iii)由来の付加体(10mmol)のメタノール溶液に、シアノ水素化ホウ素ナトリウム(10mmol)、微量のブロモクレゾールグリーン指示薬、および充分な2NHCl/メタノールを加え、これにより溶液の色は青から黄色に変化し、そして黄色のままである。溶液を数時間撹拌したままにし、その後6Nの水性塩酸を加え、そして混合物を減圧下で濃縮する。重炭酸ナトリウム溶液で塩基性にし、ジエチルエーテルで抽出し、そして乾燥(MgSO4)した後、物質を減圧下で蒸留することによって精製し、所望の化合物を得る。
【0131】
v) 5-メチルニコチンの吉草酸付加体の調製
上記の(iv)由来のノルニコチン(10mmol)付加体のジエチルエーテル溶液に、ヨードメタン(20mmol)を加える。アルゴン下、適切な冷却管を使用して、出発物質が無くなる(TLCにより示される)まで溶液を還流する。溶媒を減圧下で除去し、そして残渣をフラッシュクロマトグラフィーを使用して精製し、所望の化合物のラセミ混合物を得る。異性体をキラルHPLCを使用して分離し、所望の(S)-異性体を得る。
【0132】
vi) 結合体の調製
上記の(v)由来の5-メチルニコチン誘導体の(S)-異性体(1.53x10-5mole)のDMF溶液に、DIEA(3.06x10-5mole)、続いてHATU(1.86x10-5mole)を加える。周辺温度で10分後、この淡黄色溶液を、4mlの0.1Mほう酸ナトリウム、0.15M NaCl緩衝液(pH8.5)中のrCTB(2mg、3.40x10-8moleのタンパク質;1.53x10-6moleのリジン)に加える。周辺温度で1時間後、溶液を4℃でPBSに対して充分に透析し、そしてハプテンの数を質量スペクトル分析を使用して分析した。
【0133】
方法I PS-53の調製
i) 4-メチルニコチン酸メチルの調製
4-メチルニコチン酸(0.375mol)を、濃硫酸(25ml)のメタノール(250ml)還流溶液に加え、そして3時間還流しながら撹拌する。次いで、メタノール(250ml)を加え、そして得られる混合物をさらに18時間加熱還流する。反応混合物を冷却し、そして減圧下で濃縮してスラリーにし、これを重炭酸ナトリウム(80g)の水(450ml)溶液に加える。混合物を減圧下で濃縮してほとんどのメタノールを除去する。得られた濁った混合物を塩化メチレンで抽出し、乾燥(MgSO4)し、濾過し、そして減圧下で濃縮する。得られる粗生成物を減圧下で蒸留することによって精製し、所望のエステルを得る。
【0134】
ii) 4-メチルミオスミンの調製
アルゴン下-70℃で、ジイソプロピルアミン(0.33mol)のジエチルエーテル(500ml)溶液にn-ブチルリチウム(0.247molの1.6Mヘキサン溶液)を加える。調製したリチウムジイソプロピルアミン(LDA)にN-(トリメチルシリル)ピロリジノン(0.265mol)を加え、そして溶液を-70℃で15分間撹拌した。この溶液に、ジエチルエーテル(25ml)中の6-メチルニコチン酸メチル(0.165mol)を加え、そして混合物を一晩かけて周辺温度まで昇温させる。この後、混合物を氷浴中で冷却し、水(33ml)を加え、そしてエーテル層をデカントして除く。さらにエーテルを加え、そしてデカントする手順を2回繰り返す。水層に濃塩酸を加え、そして得られる溶液を一晩還流する。酸性溶液をジエチルエーテルで洗い、減圧下で濃縮し、氷浴中で冷却し、そして50%水性水酸化カリウムで塩基性にする。水層をジエチルエーテル(3×150ml)で抽出し、乾燥(Na2SO4)し、減圧下で濃縮し、そして減圧下で蒸留することによって精製し、所望の4−メチルミオスミンを得る。
【0135】
〔実施例4〕
ヘロイン結合体の調製
PS-61の調製
i) ノルヘロインの調製
0℃で、ヘロイン(10mmol)の水溶液に過マンガン酸カリウム(12mmol)を加える。出発物質が無くなった(consumption)(TLCにより示される)後、懸濁液を周辺温度まで昇温させる。次いで、二酸化マンガンを濾過により除去して、そして溶媒を減圧下で除去して所望の生成物としてノルヘロインを得る。
【0136】
ii) 結合体の前駆体の調製
ノルヘロイン(10mmol)のTHF溶液に5-ブロモ吉草酸エチル(20mmol)を滴下して加える。出発物質が無くなった(TLCにより示される)後、溶媒を減圧下で除去する。次いで、残渣をシリカゲル上でフラッシュクロマトグラフィーを用いて精製して所望のノルヘロインのエステル付加体を得る。
【0137】
iii) 結合体の調製
エステル(15mmol)を5%水性メタノールに溶解し、そしてこれに水酸化ナトリウム(15mmol)を加える。出発物質が無くなった(TLCにより示される)後、1Mの水性塩酸を注意深く加えることによって、pHをpH2にし、次いで酢酸エチルで抽出する。乾燥(Na2SO4)し、そして減圧下で溶媒を除去した後、生成物をシリカゲルフラッシュクロマトグラフィーを用いて精製して所望の遊離酸を得る。
遊離酸(1.55x10-4mole)のDMF(0.4ml)溶液に、DIEA(3.1x10-4mole)、続いてHATU(1.86x10-4mole)を加える。周辺温度で10分後、この淡黄色溶液を、4mlの0.1Mほう酸ナトリウム、0.15M塩化ナトリウム緩衝液(pH8.5)中のrCTB(2mg、3.4x10-8mole[15.5x10-6moleのリジン])に滴下して加える。混合物を1時間周辺温度に保ち、中和し、次いで溶液を4℃でPBSに対して充分に透析しPS-61を得る。結合体を、レーザー脱離質量スペクトル分析(laser desorption mass spectral analysis)を使用して分析して、ハプテンの数を測定した。
【0138】
〔実施例5〕
PS-62およびPS-63の調製
(i) 前駆体の調製
0℃で、ヘロイン(10mmol)の乾燥THF溶液にn-ブチルリチウム(1.5mmolの1.6Mヘキサン溶液)を滴下して加える。得られる混合物を2時間0℃に保ち、次いでTHF中の4-ブロモ酪酸エチル(22mmol)を10分にわたり滴下して加える。次いで、得られる混合物を、出発物質が無くなる(TLCにより示される)まで加熱する。この後、反応混合物を0℃まで冷却し、そして10%の水性塩酸を注意深く加える。2層を分離し、そして水層を酢酸エチルで抽出する。有機抽出物を合わせて、次いで1Mの水酸化ナトリウム水溶液、水、そしてブラインで続けて洗う。乾燥(MgSO4)後、減圧下で溶媒を除去し、そして残渣をシリカゲルフラッシュクロマトグラフィーを使用して精製して2種の生成物(芳香族アセテート基に対して、1つはオルトであり1つはメタである)を得る。
【0139】
ii)PS-62の調製
オルト付加体のエステル(5mmol)を5%水性メタノールに溶解し、そしてこれに水酸化ナトリウム(5mmol)を加える。出発物質が無くなった(TLCにより示される)後、1Mの水性塩酸を注意深く加えることによって、pHをpH2にし、次いで酢酸エチルで抽出する。乾燥(Na2SO4)し、そして減圧下で溶媒を除去した後、シリカゲルフラッシュクロマトグラフィーを用いて精製して所望の遊離酸を得る。
遊離酸(1.55x10-4mole)のDMF(0.4ml)溶液に、DIEA(3.1x10-4mole)、続いてHATU(1.86x10-4mole)を加える。周辺温度で10分後、この淡黄色溶液を、4mlの0.1Mほう酸ナトリウム、0.15M塩化ナトリウム緩衝液(pH8.5)中のrCTB(2mg、3.4x10-8mole[15.5x10-6moleのリジン])に滴下して加える。混合物を1時間周辺温度に保ち、中和し、次いで溶液を4℃でPBSに対して充分に透析しPS-62を得る。結合体を、レーザー脱離質量スペクトル分析(laser desorption mass spectral analysis)を使用して分析して、ハプテンの数を測定した。
【0140】
iii)PS-63の調製
メタ付加体のエステル(5mmol)を5%水性メタノールに溶解し、そしてこれに水酸化ナトリウム(5mmol)を加える。出発物質が無くなった(TLCにより示される)後、1Mの水性塩酸を注意深く加えることによって、pHをpH2にし、次いで酢酸エチルで抽出する。乾燥(Na2SO4)し、そして減圧下で溶媒を除去した後、生成物をシリカゲルフラッシュクロマトグラフィーを用いて精製して所望の遊離酸を得る。
遊離酸(1.55x10-4mole)のDMF(0.4ml)溶液に、DIEA(3.1x10-4mole)、続いてHATU(1.86x10-4mole)を加える。周辺温度で10分後、この淡黄色溶液を、4mlの0.1Mほう酸ナトリウム、0.15M塩化ナトリウム緩衝液(pH8.5)中のrCTB(2mg、3.4x10-8mole[15.5x10-6moleのリジン])に滴下して加える。混合物を1時間周辺温度に保ち、中和し、次いで溶液を4℃でPBSに対して充分に透析しPS-63を得る。結合体を、レーザー脱離質量スペクトル分析(laser desorption mass spectral analysis)を使用して分析して、ハプテンの数を測定した。
【0141】
〔実施例6〕
PS-64の調製
i) アセチル化コデインの調製
コデイン(10mmol)の塩化メチレン溶液に、トリメチルアミン(12mmol)、続いて無水酢酸(12mmol)を加える。出発物質が無くなった(TLCにより示される)後、溶媒を減圧下で除去し、そして残渣をシリカゲルフラッシュクロマトグラフィーを使用して精製して所望のアセチル化生成物を得る。
【0142】
ii) アセチル化コデインの脱メチル化
アセチル化生成物(10mmol)の塩化メチレン溶液に、三臭化ホウ素(12mmolの1.0M塩化メチレン溶液)を滴下して加えた。出発物質が無くなった(TLCにより示される)後、無水メタノールを注意深く加え、そして混合物を減圧下で濃縮する。
残渣をメタノールに溶解し、減圧下で再濃縮し、次いでシリカゲルフラッシュクロマトグラフィーを使用して精製して所望のアルコールを得る。
【0143】
iii) 脱メチル化アセチル化コデインのスクシニル化
アルコール(10mmol)の塩化メチレン溶液に、トリメチルアミン(20mmol)、続いて無水コハク酸(20mmol)を加える。得られる混合物を、出発物質が無くなる(consumed)(TLCにより示される)まで加熱還流する。この後、溶媒を減圧下で除去し、そして残渣をシリカゲルフラッシュクロマトグラフィーを使用して精製して所望のヘミスクシネートを得る。
【0144】
iv) PS-64の調製
ヘミスクシネート(1.55x10-4mole)のDMF(0.4ml)溶液に、DIEA(3.1x10-4mole)、続いてHATU(1.86x10-4mole)を加える。周辺温度で10分後、この淡黄色溶液を、4mlの0.1Mほう酸ナトリウム、0.15M塩化ナトリウム緩衝液(pH8.5)中のrCTB(2mg、3.4x10-8mole[15.5x10-6moleのリジン])に滴下して加える。混合物を周辺温度で1時間保ち、中和し、次いで4℃でPBSに対して充分に透析してPS-64を得る。結合体を、レーザー脱離質量スペクトル分析を使用して分析して、ハプテンの数を測定する。
【0145】
〔実施例7〕
CTBの機能(function)活性を検出するためのアッセイ
CTB単独での機能活性を試験するために、2つのアッセイを開発した。1つめは、CTBの細胞への結合を流動細胞計測法を使用して測定した。細胞をCTB、続いて市販の抗CTBヤギ抗血清およびフルオレセインイソチオシアネート(FITC)標識化抗ヤギ二次抗体とともにインキュベートした(図13)。天然の五量体CTBは細胞に結合して、蛍光強度の劇的な変化(shift)を引き起こした。モノマーのCTBは、このアッセイにおいて細胞に結合できなかった。2つめは、ELISAを、CTBがガングリオシドGMIへ結合する能力を測定するために設定した。ELISAプレートを、GM1-ガングリオシドでコートし、そして様々な(yarying)濃度のCTBとともにインキュベートした。結合を、抗-CTB抗体(またはコントロールとしての生理食塩水)、続いて酵素標識化二次抗体および基質との発生物を使用して検出した。このアッセイは、定量的なそして非常に感度の高い、五量体CTBがGMIガングリオシドヘ結合する能力の測定を提供した。これらのアッセイを、組換えおよびハプテン化CTB結合体の機能的活性を、インビボでの実験の前に観察するために使用する。
【0146】
〔実施例8〕
他の薬物との同時処置
ヘロイン濫用の処置について、スクリーニングを、二次薬物を用いる薬理学的治療が治療ワクチンの活性を増強するかどうかを決定するために行う。オピエートアンタゴニスト(例えば、ナロキソンおよびナルトレキソン)および他のアンタゴニスト(例えば、ナロルフィン、レバロルファン(levallo[han)、シクラゾシン(cyclazocine)、ブプレノルフィン、およびペンタゾシン)を用いる処置が、ヘロイン結合体を用いる処置と適合することが予想される。1つ以上の治療剤が免疫抑制性であり得、これにより高力価抗ヘロイン抗体応答の誘発を阻害することが可能である。この可能性を取り扱う(address)ために、ラットを、同時治療薬物の存在下または非存在下でヘロイン−キャリア結合体で免疫化し、そして抗体の力価を種々の時間で測定する。特に免疫抑制性であることが見いだされている同時治療薬物は不適合治療として除外される。このスクリーニング試験を、同時処置が考慮される任意の薬物について使用する。
【0147】
免疫抑制が見られない場合、2つのアプローチが交互作用するかどうかを決定するために更なるスクリーニングを行う。訓練、免疫化、および試験の後、ラットを薬物の存在下2つのモデルにおいて評価する。ラットに、異なる用量のヘロインを用いる期間の前に薬物を与える。コントロールのキャリア免疫化ラットを用いる最初の実験を、自己投与または薬物弁別系において運動を完全には消去しない薬物の用量を選択するために行う。データを評価して、治療ワクチンの作用が同時治療処置に加成的であるかどうかを決定する。
【0148】
〔実施例9〕
粘膜応答の誘発
コレラ毒素のBサブユニット(CTB)は、粘膜抗体応答の誘発を含むインタクトなコレラ毒素の活性を維持することが、多くの系において見いだされている。従ってこのキャリアは強い抗-ヘロインまたは抗-ニコチンIgA抗体応答を誘発するはずである。さらに、経口の初回刺激(priming)は強い全身性IgG抗体応答を誘発するはずである。
【0149】
気道で免疫応答を初回刺激するための効果的な方法は、抗原を直接その部位へ送達することである。抗原を、それ自身のアジュバントとして作用するCTBとともに生理食塩水に投与する。粘膜IgA表面への投与により初回刺激するCTBの能力を確証するために、最初の実験をキャリア単独で行う。マウスを、50μgのCTBまたはヘロイン-CTBもしくはニコチン-CTB結合体を用いて、3つの経路(経口、経鼻、または気管内)で初回刺激する。マウスの経口投与のために、ヘロイン-CTBもしくはニコチン-CTB結合体またはCTB単体のいずれか250μgを、ブラント23Gニードルを使用して、胃内に、または直接胃に与える(apply)。初回刺激の14日後、同じプロトコルを使用して、マウスを追加刺激する。経鼻投与は簡潔で普通の初回刺激の経路である。1匹のマウスにつき50μlの総量で、軽く麻酔したマウスの各鼻孔に抗原を与える。初回刺激の14日後、同じプロトコルを使用して、マウスを追加刺激する。経鼻投与は、鼻スプレーとしてヒト用途に容易に適応可能である。鼻ワクチン接種は生インフルエンザワクチンとともに首尾良く使用された(Walkerら(1994)Vaccine 12:387-399)。
【0150】
気管内免疫化は、抗原を気道下部に直接与え、これにより肺で免疫を高める。マウスを、ケタミンおよびキシラジンのカクテルで麻酔する。動物を、その口を開けた状態に固定して気管を露出させる装置に取り付ける;気管をファイバーオプティック光プローブを用いて可視化する。ブラント23ゲージニードルを使用して50μlの溶液を肺に送達する。初回刺激の14日後、同じ手順を使用して、マウスを追加刺激する。
【0151】
追加刺激後の種々の時点(14、21、または28日)で、動物をCO2窒息により屠殺し、そして鼻および気管支肺胞洗浄液を収集し、そして投与された結合体に対して特異的なIgAについてアッセイする。鼻洗浄液を、記載されたように、全部で1mlのPBSで4回鼻腔を洗うことにより得る(Tamuraら(1989)Vaccine 7:257-262)。気管支肺胞洗浄液を、記載されたように、手術により気管を露出し、0.5mlのPBSを肺に注入し、そして3回リンスすることにより得る(Nedrudら(1987)J.Immunol.139:3484-3492)。細胞を除去するための遠心分離に続いて、サンプルを、IgA-特異的二次抗体を使用するELISAによって、抗体特異的IgAについてアッセイする。ヘロイン特異的またはニコチン特異的IgGを、鼻および肺洗浄液で測定する。これは、IgGがしばしば両者で検出可能であり、そして肺において重要であることが報告されているからである(Cahillら(1993)FEMS Microbiol.Lett.107:211-216)。
【0152】
腸管洗浄液で、経口免疫化経路がヘロイン特異的またはニコチン特異的IgAを生成する能力を評価し、そして他の経路のヘロインまたはニコチンに特異的な血清Igを生成する能力と比較する。経口投与は投与の容易さのためにヒトにおいて特に好ましい。鼻腔内および気管内経路の投与は、それらのIgA応答を誘発する能力について、肺および鼻洗浄液の両方で直接比較される。どちらの経路が最も強力であると見いだされるにしても、それは残りの実験に好適でありそして使用される。2つの経路が同程度の効力を有する場合、その単純性から鼻免疫化が好適である。
【0153】
ヘロインまたはニコチンに対する最大の防御のために、全身性IgGおよび粘膜IgA応答はともに最大化され得る。従って、ミョウバン(またはある別のアジュバント)中のヘロイン-CTBまたはニコチン-CTB結合体を用いた全身性注入および結合体を用いた粘膜チャレンジ(challenge)の両方が、両方のコンパートメントを有効に初回刺激するのに好適である。3つの群を比較する。1つめは、マウスを全身的に初回刺激し、続いて14日後に粘膜チャレンジを与える。2つめは、マウスを粘膜で初回刺激し、続いて14日後に全身チャレンジを与える。3つめは、マウスを全身的および粘膜の両方で同時に初回刺激し、続いて14日後に同じ追加刺激を与える。コントロールマウスを粘膜のみで、または全身的にのみで初回刺激する。各場合において、チャレンジの効力をIgGおよびIgA抗体力価の両方の測定により決定する。
【0154】
粘膜抗ヘロインまたは抗ニコチン抗体の効力のインビボでの最初の測定として、粘膜に投与されたヘロインまたはニコチンについて、それぞれ薬物動態における変化を測定する。
【0155】
〔実施例10〕
マウスの免疫イムノグロブリンの受動輸送
実施例に記載の最適な免疫化レジメン(regimen)を使用して、ヘロイン結合体でマウスを免疫化する。種々の時間で、マウスを採血し、そして抗ヘロイン抗体の力価をELISAで評価する。約54,000またはそれ以上の抗体力価を持つ動物を屠殺し、そして心臓穿刺によって採血する。コントロールマウスをキャリアタンパク質単独で免疫化する。複数のマウス(少なくとも20)からの血清をプールし、そしてIgG画分を硫安塩析により単離する。透析して硫酸アンモニウムを除去した後、プールしたイムノグロブリン画分中のコカイン特異的抗体のレベルをELISAで定量する。種々の量のイムノグロブリンを未処置のマウスに腹腔内(i.p.)または静脈内注射(i.v.)で投与する。24時間後、被検体マウスを採血し、そして血清をアッセイしてコカイン特異的抗体のレベルを測定する。この方法を使用して、所定の力価を達成するために輸送されなければならない抗体の量を決定する。マウスの群に免疫イムノグロブリンを与え、そして種々の時点で採血して抗原特異的抗体のクリアランス速度を測定する。他のマウスの群に、実施例で記載したように放射能標識化ヘロインでチャレンジし、そしてヘロインの脳への分布を測定する。コントロールマウスにキャリア免疫化マウスからのIgGを与える。これらの実験は、受動輸送免疫イムノグロブリンの、ヘロインの脳内侵入を阻害する能力を実証する。
【0156】
〔実施例11〕
ヒトの免疫イムノグロブリンの受動輸送
ヒトドナーのプールを、実施例に記載の最適な免疫化レジメンを使用して、本発明の結合体を用いて免疫化する。種々の時点でドナーを静脈穿刺で採血し、そして抗ハプテン抗体の力価をELISAでアッセイする。複数のドナーからの超免疫血漿をプールし、そしてIgG画分を冷アルコール分画化により単離する。抗体調整物を、ヒト用途の超免疫抗体調整物の必要に応じて、緩衝化し、安定化し、保存し、そして標準化する。抗ハプテン抗体のレベルをELISAまたは他の抗体基準アッセイで標準化する。
【0157】
精製した抗体の適切な用量を20人の患者にハプテン−CTBワクチンと共にまたは無しで筋肉内または静脈内に(しかし、ワクチンと解剖学的に同じ部位にではない)投与する。適切な用量を、超免疫抗体調整物の注射後24時間でまたは他の適切な時点で、ELISAまたは他の抗体基準アッセイにより、試験患者群の中の被検体の血漿レベルをアッセイすることにより、および/またはヘロインもしくはニコチンの効果の阻害における異なる用量の有効性をアッセイすることにより決定する。
【0158】
受動輸送免疫イムノグロブリンは患者におけるヘロインもしくはニコチンの効果を阻害する。ヒトドナー、ポリクローナル抗体、およびドナープール中の多数のドナーの使用は、患者による輸送された抗体に対する免疫応答のチャンスを制限する。
【0159】
〔実施例12〕
rCTBの調製スケールでの精製
0.22Mリン酸塩、0.9%NaCl緩衝液(pH7.3)中の、V.cholerae由来のrCTB(SBL Vaccin ABから供給された)を20mMリン酸ナトリウム(pH6.5)中にダイアフィルトレートした。次いで、サンプルを、Pharmacia SP Sepharose Fast Flow樹脂上で、溶出緩衝液として緩衝液A(20mMリン酸ナトリウム(pH6.5))および緩衝液B(20mMリン酸ナトリウム(pH6.5)、1.0M NaCl)を用いて、陽イオン交換クロマトグラフィーを使用して精製した。精製した画分を、Daichi Silver Stainで染色してSDS-PAGEにより分析した。精製したサンプルを0.22ミクロンフィルターを通して濾過し、そして4℃で無菌で保管した。
【0160】
〔実施例13〕
方法A(分析) 逆相HPLC(RP HPLC)分析のためのサンプルを、以下の方法で調製した:100μlの結合体CTB-5.200に1.0mlの無水エタノールを加えて沈澱させ、そして-80℃で一晩凍結させた。結合体を4℃で20分間14000rpmで回転させ、次いでエタノールをデカントして除き、そしてペレットを風乾した。ペレットを、0.1%のトリフルオロ酢酸(TFA)を含む20%アセトニトリル25μlに再懸濁させ、そしてタンパク質濃度をPierce Micro BCAアッセイにより測定した。
結合体を、C18逆相カラム(Vydac No.2l8TP52l5狭孔(narrowbore))2.1x150mm;粒子サイズ5U;流速:200μl/分;緩衝液A:100%水0.1%TFA;緩衝液B:80%アセトニトリル、0.08%TFAを使用して分析した。勾配を16%で開始して50分の期間にわたり56%まで増加させ、60分において80%まで増加させ、そして10分そのままにした。
【0161】
方法B(半調製) 半調製スケールのRP HPLCのためのサンプルを、以下の方法で調製した:CTB-5.200凍結乾燥物(lyophile)の2つのバイアルを20%アセトニトリル0.1%TFAに再懸濁し、滅菌濾過し、そしてPierce Micro BCAにより定量した。それぞれ1.24mgの2つの注射液を、C18カラム(VydacNo.218TP1520)10x50mm、粒子サイズ:5U1;流速:1.8ml/分;緩衝液A:水中0.1%TFA;緩衝液B:80%アセトニトリル中0.08%TFAを使用して、半調製RP HPLC系で作成した。段階的な勾配を以下のように使用した:10分間20%B、40分間35%B、5分間55%B、5分間100%Bで洗い流すことで仕上げた。ピークを収集し、そしてただちに凍結乾燥した。
【0162】
〔実施例14〕
ハプテン化のレベル対免疫原性
薬物ハプテン対キャリアタンパク質の結合体における比は、結合体がハプテン特異的抗体の産生を刺激する能力を変化させ得る。結合化反応を変化させて、いくつかの異なるハプテン化のレベルを有するヘロイン-CTB結合体を生成する。ハプテン化の程度を結合体の質量分析の分析により計算する。結合体を、免疫原性実験における生物学的活性について、ハプテン化レベルについての質量スペクトル分析によりスクリーニングした。異なる比のハプテン化試薬を使用する異なる方法により作成された結合体を、キャリアタンパク質と比較した。ハプテン化のレベル対免疫原性の比較を作成する。
【0163】
等価物
当業者は、日常的実験にすぎない実験を使用して、本明細書中に記載の特定の物質および手順の多数の等価物を認識するか、または確かめ得る。そのような等価物は、本発明の範囲内であるとみなされ、そして以下の請求の範囲によって包含される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の構造を有するハプテン−キャリア結合体:
【化1】

ここで、A、B、C、D、EおよびFは、ニコチンの側鎖であり、これらは、独立して、化学部分からなる群から選択され、該化学部分は、以下のCJ参照番号により同定される:

ここで、Yは、イオウ(S)、酸素(O)またはアミン(NH)であり、ここで、nは、3〜20の整数であり、ここで、Qは、以下からなる群から選択される:H、OH、OCH3、CH2、CH3、COOH、ハロゲン、活性化エステル、ハロゲン化アシル、アシルアジド、ハロゲン化アルキル、N-マレイミド、イミノエステル、イソシアネート、イソチオシアネート、およびT細胞エピトープ含有キャリア;但し、A、B、C、D、EまたはFのうちの少なくとも1個におけるQは、少なくとも1個のT細胞エピトープを含有するキャリアを含み、該キャリアは、以下からなる群から選択される:コレラトキシンB(CTB)、ジフテリアトキシン、テタヌストキソイド、百日咳トキシン、百日咳糸状血球凝集素、志賀トキシン、リシンBサブユニット、アブリン、スイトピーレクチン、レトロウイルス核タンパク質(レトロNP)、狂犬病リボ核タンパク質(狂犬病RNP)、タバコモザイクウイルス(TMV)、ササゲ(cow pea)モザイクウイルス、カリフラワーモザイクウイルス、水泡性口内炎ウイルス−ヌクレオカプシドタンパク質(VSV-N)、組み換え痘そう(pox)ウイルスサブユニットおよびベクター、Semlikiフォレスト(forest)ウイルスベクター、シュードモナスエンドトキシン、多抗原性ペプチド(MAP)、イーストウイルス様粒子(VPLs);マラリアタンパク質抗原、およびマイクロスフェア。
【請求項2】
前記キャリアに、少なくとも2個のハプテンがカップリングした、請求項1に記載のハプテン−キャリア結合体。
【請求項3】
前記複数のハプテンが、同じである、請求項2に記載のハプテン−キャリア結合体。
【請求項4】
前記キャリアが、多価である、請求項2に記載のハプテン−キャリア結合体。
【請求項5】
前記キャリアが、コレラトキシンB(CTB)を含有する、請求項1に記載のハプテン−キャリア結合体。
【請求項6】
図7に示されたPS-51、PS-52、PS-53、PS-54、PS-55、PS-56、PS-57、PS-58、PS-59およびPS-60からなる群から選択されたハプテン−キャリア結合体。
【請求項7】
前記キャリアに、少なくとも2個のハプテンがカップリングした、請求項6に記載のハプテン−キャリア結合体。
【請求項8】
前記複数のハプテンが、同じである、請求項7に記載のハプテン−キャリア結合体。
【請求項9】
前記キャリアが、多価である、請求項7に記載のハプテン−キャリア結合体。
【請求項10】
少なくとも1種の請求項1に記載の結合体および薬学的に受容可能なキャリアを含有する治療組成物。
【請求項11】
さらに、アジュバントを含有する、請求項10に記載の治療組成物。
【請求項12】
少なくとも1種の請求項6に記載の結合体および薬学的に受容可能なキャリアを含有する治療組成物。
【請求項13】
さらに、アジュバントを含有する、請求項12に記載の治療組成物。
【請求項14】
前記アジュバントが、ミョウバン、MF59またはRIBIアジュバントである、請求項13に記載の治療組成物。
【請求項15】
前記組成物が、生理学的に受容可能なpHで、水溶液に溶解性である、請求項10に記載の治療組成物。
【請求項16】
哺乳動物におけるニコチンに対する薬物中毒を処置する方法であって、該方法は、薬物中毒の処置が必要な哺乳動物に対して、治療上効果的な量の請求項10に記載の治療組成物を投与する工程を包含する。
【請求項17】
哺乳動物におけるニコチンに対する薬物中毒を処置する方法であって、該方法は、薬物中毒の処置が必要な哺乳動物に対して、治療上効果的な量の請求項11に記載の組成物を投与する工程を包含する。
【請求項18】
哺乳動物におけるニコチンに対する薬物中毒を処置する方法であって、該方法は、薬物中毒の処置が必要な哺乳動物に対して、治療上効果的な量の請求項12に記載の治療組成物を投与する工程を包含する。
【請求項19】
哺乳動物におけるニコチンに対する薬物中毒を処置する方法であって、該方法は、薬物中毒の処置が必要な哺乳動物に対して、治療上効果的な量の請求項13に記載の治療組成物を投与する工程を包含する。
【請求項20】
哺乳動物における薬物中毒を処置する方法であって、該方法は、罹患した哺乳動物に、請求項1に記載のハプテン−キャリア結合体に特異的な抗体を投与する工程を包含する。
【請求項21】
前記抗体が、ポリクローナル抗体およびモノクローナル抗体からなる群から選択される、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記抗体が、請求項1に記載の結合体のハプテン部分に特異的である、請求項20に記載の方法。
【請求項23】
哺乳動物における薬物中毒を処置する方法であって、該方法は、罹患した哺乳動物に、請求項6に記載のハプテン−キャリア結合体のハプテン成分に特異的な抗体を投与する工程を包含する。
【請求項24】
請求項1に記載の結合体に応答して産生された抗体。
【請求項25】
ポリクローナル抗体およびモノクローナル抗体からなる群から選択された、請求項24に記載の抗体。
【請求項26】
請求項1に記載の結合体のハプテン部分に特異的である、請求項24に記載の抗体。
【請求項27】
前記組成物が、生理学的に受容可能なpHで、水溶液中の懸濁液である、請求項10に記載の治療組成物。
【請求項28】
哺乳動物における薬物に対する中毒を防止する方法であって、該方法は、以下を包含する:
(a)該哺乳動物に、効果的な量の請求項5に記載の結合体を投与する工程;
(b)所望の防止効果について、該哺乳動物をモニターする工程であって、ここで、抗薬物抗体の産生は、所望の防止効果の指標である。
【請求項29】
哺乳動物における薬物に対する中毒を防止する方法であって、該方法は、以下を包含する:
(a)該哺乳動物に、効果的な量の請求項10に記載の治療組成物を投与する工程;
(b)所望の防止効果について、該哺乳動物をモニターする工程であって、ここで、抗薬物抗体の産生は、所望の防止効果の指標である。
【請求項30】
前記投与が、経腸または非経口である、請求項14に記載の方法。
【請求項31】
前記投与が、経口または筋肉内である、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
PS-61、PS-62、PS-63およびPS-64からなる群から選択されたハプテン−キャリア結合体。
【請求項33】
前記キャリアに、少なくとも2個のハプテンがカップリングした、請求項32に記載のハプテン−キャリア結合体。
【請求項34】
前記複数のハプテンが、同じである、請求項33に記載のハプテン−キャリア結合体。
【請求項35】
前記キャリアが、多価である、請求項33に記載のハプテン−キャリア結合体。
【請求項36】
前記T細胞エピトープ含有キャリアが、T細胞エピトープ含有タンパク質、変性T細胞エピトープ含有タンパク質、T細胞エピトープ含有ペプチド、変性T細胞エピトープ含有ペプチド、T細胞エピトープ含有ペプチド擬態物、T細胞エピトープ含有多抗原性ペプチド(MAP)、およびCJの参照番号により同定されそして少なくとも1個のT細胞エピトープを含む化学部分の少なくとも1個からなる群から選択される、請求項32に記載の結合体。
【請求項37】
前記T細胞エピトープ含有キャリアが、コレラトキシンB(CTB)、ジフテリアトキシン、テタヌストキソイド、百日咳トキシン、百日咳糸状血球凝集素、志賀トキシン、リシンBサブユニット、アブリン、スイトピーレクチン、レトロウイルス核タンパク質(レトロNP)、狂犬病リボ核タンパク質(狂犬病RNP)、タバコモザイクウイルス(TMV)、ササゲモザイクウイルス、カリフラワーモザイクウイルス、水泡性口内炎ウイルス−ヌクレオカプシドタンパク質(VSV-N)、組み換え痘そうウイルスサブユニットおよびベクター、Semlikiフォレストウイルスベクター、シュードモナスエンドトキシン、多抗原性ペプチド(MAP)、イーストウイルス様粒子(VPLs);マラリアタンパク質抗原、およびマイクロスフェアからなる群から選択される、請求項36に記載の結合体。
【請求項38】
前記T細胞エピトープ含有キャリアが、コレラトキシンB(CTB)を含有する、請求項37に記載の結合体。
【請求項39】
前記T細胞エピトープ含有キャリアが、コレラトキシンB(CTB)、レトロウイルス核タンパク質(レトロNP)、狂犬病リボ核タンパク質(狂犬病RNP)、水泡性口内炎ウイルス−ヌクレオカプシドタンパク質(VSV-N)、組み換え痘そう(small pox)ウイルスサブユニットおよびベクター、ならびに多抗原性ペプチド(MAP)からなる群から選択される、請求項37に記載の結合体。
【請求項40】
MAPが、規定したT細胞エピトープ含有ペプチドを構成し、これが、さらに、該ペプチドのアミノ末端にて、多ハプテン化リジン分枝構造に結合している、請求項39に記載の結合体。
【請求項41】
少なくとも1個の請求項32に記載の結合体および薬理学的に受容可能な賦形剤を含有する、治療組成物。
【請求項42】
さらに、アジュバントを含有する、請求項41に記載の治療組成物。
【請求項43】
前記アジュバントが、ミョウバン、MF59またはRIBIアジュバントである、請求項42に記載の治療組成物。
【請求項44】
哺乳動物におけるヘロインに対する薬物中毒を処置する方法であって、該方法は、薬物中毒の処置が必要な哺乳動物に対して、治療上効果的な量の請求項41に記載の治療組成物を投与する工程を包含する。
【請求項45】
前記投与が、経腸または非経口である、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
請求項32に記載の結合体に応答して産生された抗体。
【請求項47】
ポリクローナル抗体およびモノクローナル抗体からなる群から選択された、請求項46に記載の抗体。
【請求項48】
哺乳動物におけるヘロインに対する中毒を処置する方法であって、該方法は、罹患した哺乳動物に、請求項32に記載の結合体のハプテン部分に特異的な抗体を投与する工程を包含する。
【請求項49】
前記抗体が、ポリクローナル抗体およびモノクローナル抗体からなる群から選択される、請求項48に記載の方法。

【図1A】
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【図1B】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7A】
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【図7B】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2009−280599(P2009−280599A)
【公開日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−171424(P2009−171424)
【出願日】平成21年7月22日(2009.7.22)
【分割の表示】特願平10−516754の分割
【原出願日】平成9年9月30日(1997.9.30)
【出願人】(509175436)ゼノバ リサーチ リミテッド (1)
【Fターム(参考)】