説明

薬物送達

制御放出及び/又は徐放性薬物製剤を提供するための薬物及び結晶性側鎖ポリマーの製剤

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2006年12月5日に出願された米国仮出願第60/873,234号の優先権及び利益を主張するものであり、その開示全体は、あらゆる目的のために参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、薬物送達用のポリマー系に関する。
【背景技術】
【0003】
公知の薬物送達用ポリマー系は多数存在する。所望の場所で、所望の時間に、所望の速度の送達を得ることは、継続的な課題である。所望の速度とは、例えば、比較的長期間にわたる安定した速度であってよく、及び/又は比較的短期間にわたる比較的迅速な速度であってよい(「ボーラス」送達)。
【発明の概要】
【0004】
本発明者らは、本発明により、本明細書中ではCYSCポリマー(結晶化可能側鎖ポリマーの略語)と呼ばれるある種のポリマーと薬物との結合を介して、薬物の有用な送達が得られることを発見した。
【0005】
薬物送達が記載されている文書には、例えば、米国特許第5,919,484号、米国特許第6,423,345号、米国特許出願公開第2005/0249799号、国際公開第2006/039152号、米国特許第6,951,642号、米国特許第6,656,385号、米国特許出願公開第2004/0236013号、米国特許第6,699,952号、米国特許第6,730,322号、米国特許第6,964,778号、米国特許第6,200,598号、米国特許第6,524,274号、米国特許出願公開第2004/0052746号、米国特許出願公開第2004/0208844号、国際公開第0187276号、国際公開第2004/052339、米国特許第6,469,133号、米国特許出願公開第2007/0142461号、米国特許出願公開第20010044514号、米国特許第4,830,855号、米国特許第4,558,690号、米国特許第6,887,960号、国際公開第99/36058、米国特許第6,951,642号、米国特許第6,576,254号、米国特許出願公開第2006/0167116号、JW Lee et al.,Journal of Polymer Science,Part B Vol 38 #6,823− 830、JS Wei et al.,Frontiers in Bioscience 10,supplement,2005,Sept 1,2005,3058−3067、CC Ng et al.,J Sex Reprod Med Vol 1,#1 Summer 2001,pp21−27、 S Davaran et al.,Journal of Controlled Release,58,#3,pages279−287(1999)、G Erdodi et al.,Macromol.Sympos.,Vol 227,2005/July 2005,pp265−273、Cheng et al.,Biomacromolecules,2006 May;7(5):1509−20、CJ Boudreaux et al.,Journal of Controlled Release 44,#2−3,1997 pp185−194、VP Torchilin et al.,Journal of Controlled Release Vol 73,#2,pages137−172(2001)、V Bulmus et al.,J Control Release 93,#2,2003 Dec 5,pp105−120、KM Scholsky et al.,J Controlled Release,3,87−108(1986)、Luppi et al,,Eur−J−Pharm−Biopharm.2003 Mar; 55(2):199−202が含まれる。それらの出版物、特許、及び特許広報の各々の開示全体は、あらゆる目的のために参照により本明細書中に組み込まれる。
【0006】
「CYSCポリマー」(結晶性側鎖ポリマーの略語)という用語は、本明細書中では、以下のポリマーとして定義される;
(1) 以下の部分を少なくとも1つ含むポリマー:
(i) 式
‐‐b―Cy‐‐
を有する部分、
(ii) 以下の反復単位の一部を形成する部分、:
(a) 上記ポリマーのポリマー骨格の少なくとも一部を提供する反復単位、
及び
(b) 下記(1)の式を有する反復単位
及び/又は
(iii) 下記の式(2)を有するポリマー骨格の末端単位の少なくとも一部を形成する部分
【0007】

【0008】
式中、YChは、CYSCポリマーの骨格の二価性部分形成部であり、
termは、CYSCポリマーの骨格の末端における一価性部分であり、
bは、Cy部分をポリマー骨格に連結させる結合又は部分であり、そして、
Cyは、CYSCポリマーに結晶化度を提供するために、他の部分(Cy部分であってもよい)と結合可能な一価性部分である;
並びに、
(B)少なくとも0℃の結晶融解温度、Tpを有し、Cy部分の結合に起因する少なくとも5J/gの融解熱(Tp及び融解熱は、以下で記述されるようにDSCで測定される)を有するポリマー。
本明細書中では、部分−b‐‐Cyは、‐‐Rc部分とも呼ばれ、つまりRc部分は、−b‐‐Cyと同義である。上記の式(2)の部分を含有するCYSCポリマーは、本明細書中では、エンドキャップ(ECC)ポリマー(end capped polymer)と呼ばれることがある。
【0009】
部分YCh、Yterm、b、及びCyは、任意の種類であってよく、複数の式(1)の部分、並びに/又は複数の式(2)の部分を含有するCYSCポリマーにおいては、YCh、Yterm、b、及びCyは、同一であってもよく又は異なっていてもよい。種々多様なそのような部分を下記に記載する。CYSCポリマーは、式(1)及び(2)の部分に加えて、異なる式を有する反復単位及び/又は末端単位を自由選択的に含有できる。単なる例として、YChは、
【0010】

部分であってよく、Ytermは‐‐CH―CH−部分であってよく、bは‐CO‐部分であってよく、Cyは、18個の炭素原子を含有するn‐アルキル部分であってよい。
【0011】
本明細書中で、式、−Y―又は−Y(bCy)―又は−Y(Rc)‐‐の部分を参照する場合、‐‐Y‐‐は、Ych又はYtermであってよい。
【0012】
CYSCポリマーに結合した薬物は、例えば、制御された速度で及び/又は所望の場所で送達することができ、速度及び/又は場所は、例えば、薬物及びCYSCポリマーの結合を改変させる化学的及び/又は物理的条件により影響を受ける。その条件とは、例えば、CYSCポリマーに化学変化(例えば、任意の種類の化学的結合の弱化又は生成、例えば酸化、還元、又は水和)、及び/又は物理的状態の変化(例えば、任意の種類の物理的結合の弱化又は生成、例えば内部的又は外部的加熱により引き起こされる、例えば融解又は結晶化に起因する粘性の変化)を起こさせる環境であり得、特定のpH域を有する環境、酵素の存在を含む。「制御された速度」という用語には、連続的で持続性の速度、増加又は低下する速度、連続的若しくは非連続的な放出、又は実質的に一定した速度の維持が含まれるが、それらに限定されない。薬物は、例えばゼロ次、一次、又は二次放出速度論で放出できる。
【0013】
本発明の種々の態様
(1)CYSCポリマー及びそれと結合した薬物を含む新規の組成物。幾つかの実施形態では、組成物は、CYSCポリマー及び薬物を含む医薬製剤(或いは本明細書中では「製剤」又は「薬物製剤」又は「剤形」と呼ばれる)であり、ここで製剤は、ヒト又は他の哺乳動物への投与に好適であるか、又はそのような製剤に変換できる組成物である。CYSCポリマー及び製剤は、例えば無菌若しくは滅菌可能であってよく、及び/又は生体適合性があってよい。
【0014】
(2)上記で定義された組成物からの薬物放出を制御するための新規な方法。この方法は、組成物の少なくとも一部、例えば組成物の露出表面で、薬物及びCYSCポリマー間の結合の強さに影響を与える(つまり、減少させるか、増加させるか、又は実質的に一定を維持する)条件に、組成物を供することを含み得る。
【0015】
(3)例えば、哺乳動物若しくは細胞の健康を増進又は維持するために、或いは哺乳動物又は細胞の診断を助けるために、CYSCポリマー及びそれと結合した薬物を利用する新規な方法。
【0016】
(4)CYSCポリマー及び薬物を哺乳動物又は細胞に投与することを含む、哺乳動物又は細胞を治療するための新規な方法であり、上記ポリマー及び薬物は投与前に互いに結合しているか、又は投与中若しくは投与後に互いに結合する。
【0017】
(5)(1)で定義された組成物を作製する新規な方法。組成物は、組成物が投与される前に作製されることが多いが、本発明は、CYSCポリマー及び薬物の同時投与又は順次投与の結果として、投与中に及び/又は哺乳動物若しくは細胞のin situで、組成物が作製又は改変される実施形態を含む。種々の実施形態では、組成物を作製する方法には、幾つかの実施形態では、具体的には液体(又は溶媒)の存在無しで、薬物及びCYSCポリマーを混合することが伴う。幾つかの実施形態では、CYSCポリマーは、その融解温度を超えた温度にあるが、薬物を損傷する可能性のある(薬物を変性させることにより、或いは実質的にその活性を低減させるか、又はその短期的若しくは長期的安定性を低減する可能性のある分解産物を生成する可能性のある何らかの方法で薬物に影響を与えることにより)温度より低い温度にある。他の実施形態では、混合は、液体の存在下で実行される(液体は、薬物及びポリマーの一方、又は他方、又は両方、又はそのどちら用でもない溶媒であってよい)。液体は、例えば、水、水性溶媒、非水性溶媒(例えば脂肪族、芳香族、又は脂肪族/芳香族混合の有機溶媒)、極性溶媒、又は無極性溶媒であり得る。CYSCポリマーは、比較的狭い温度範囲で、及び10から120℃の間の所望の温度(下記で説明するように示差走査熱量計(DSC)で測定するような)で融解するように設計できる。更に、比較的広範囲の分子量で、同様の溶解特徴を取得することが可能である。融点は、例えば、約30℃、約35℃、約37℃、約40℃、約45℃、約50℃、約55℃、約60℃、約65℃、約70℃、約75℃、又は約80℃であり得る。CYSCポリマー及び薬物を含む組成物の融点は、CYSCポリマーの融点とは異なることが多く、一般的にCYSCポリマーの融点より低いであろう。薬物が哺乳動物に投与される薬物である場合、組成物が哺乳動物の体温(例えば37℃超)を超えた融解温度を有することが望ましいことが多い。しかしながら、幾つかの実施形態では、組成物は、好ましくは、37℃より低い融解温度を有し、そのため組成物がいったん移植されると、非固体の稠度を維持する。
【0018】
多くのCYSCポリマーの比較的低い融点及び狭い溶融範囲は、高温及び/又は溶媒への曝露により悪影響を受ける薬物を含有する組成物を作製するのに特に有用である。例えば、多くのポリマーはそれ自体が、高温でのみ十分に流動的であるため、多くのポリマー−薬物組成物の調製には、高温又は溶媒の存在のいずれか又は両方が必要であることは周知である。高温は、多くの薬物及び他の薬物(例えば、それに限定されないが、タンパク質)の活性及び/又は安定性(短期的又は長期的)に有害であり得、多くの溶剤は、薬物、又は組成物が投与される哺乳動物若しくは細胞に対して有害な効果、例えば哺乳動物に対する毒性を有することが知られている。更に、薬物がそのような溶媒に曝露されると、曝露の直後又は長期的な在庫保存中のいずれかで薬物の効力又は純度の低減に帰着し得る、ある種の化学的又は物理的分解を誘導する場合がある。幾つかの実施形態では、本発明は、多くの場合溶媒を使用せずに、薬物とポリマーとの低温混合を可能にする。
【0019】
(6)CYSCポリマー及びそれと結合した薬物を含む組成物の新規な使用。
【0020】
(7)CYSCポリマー及び薬物を投与するための新規なデバイスであり、上記CYSCポリマー及び薬物が、(1)で定義された組成物の形態であるか、又は別々に投与されるデバイス。そのようなデバイスは、例えば、そのような組成物で又はそのような組成物を形成するための成分で被覆された基材、或いはそのような組成物から本質的になる、又はそのような組成物を含有する、又は投与前若しくは投与後にそのような組成物を形成する成分を含むデポーとして機能する貯蔵体を含み得る。
【0021】
(8)上記で定義された組成物又はデバイスの使用、例えば、持続的な様式で、例えば少なくとも12時間にわたる、少なくとも24時間にわたる、又は少なくとも42時間にわたるような延長された期間にわたって、対象に治療的有効量の薬物を送達するためのそのような組成物又はデバイスの使用。
【0022】
(9)上記で定義されたデバイスを作製するための新規な方法であって、CYSCポリマーが、基材、例えばポリマー基材又は金属基材により担持されている間に、薬物をCYSCポリマーに結合させることを含む方法。
【0023】
(10)上記で定義されたデバイスを作製するための新規な方法であって、(1)で定義された組成物と、又はin situでそのような組成物を形成する(投与後又は投与中に)成分と基材を接触させることを含む方法。
【0024】
(11)哺乳動物又は細胞の状態を治療するための薬剤の製造における、CYSCポリマー及びそれと結合した薬物を含む組成物の使用。
【0025】
(12)(i)薬物を含む組成物及び(ii)CYSCポリマーを含む組成物を哺乳動物又は細胞に別々に送達した後で哺乳動物又は細胞中で形成される、(1)で定義された組成物。
【0026】
(13)哺乳動物又は細胞に、(i)薬物を含む組成物及び(ii)CYSCポリマーを含む組成物を、同時に又は順次に投与することを含む方法。
【0027】
(14)上記の段落(1)〜(13)で使用するための、及び他の目的のための新規なCYSCポリマー。
【0028】
(15)組成物が最初に曝露された際に、例えば、中実性の造形組成物の表面を好適な有機溶媒又は無機溶媒、例えば水で洗浄することにより、薬物が組成物から送達される速度を低減する、(1)で定義された組成物を処理するための方法。
【0029】
本発明の種々の実施形態には下記が含まれる。
【0030】
1.上文で定義された薬物及びCYSCポリマーを含む医薬製剤。CYSCポリマーは、例えば、複数のY(Rc)部分を含み、少なくとも10J/gの融解熱を有し得る。CYSCポリマーは、例えば、1つ又は複数のRc部分を含み、このRc部分又は複数ある場合はRc部分の各々が、11から49個のメチレン部分を含有するポリメチレン部分を含む。CYSCポリマーは、例えば、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリアルキルメタクリレート、ポリ−Nアルキルメタクリルアミド、ポリアルキルアクリレート、ポリフルオロアクリレート、ポリ−N−アルキルアクリルアミド、ポリアルキルオキサゾリン、ポリアルキルビニルエーテル、ポリアルキル1,2−エポキシド、ポリアルキルグリシジルエーテル、ポリビニルエステル、ポリアクリルアミド、ポリメタクリルアミド、ポリマレイミド、ポリ−α−オレフィン、ポリ−p−アルキルスチレン、ポリアルキルビニルエーテル、ポリエーテル、ポリエステル、ポリウレタン、ポリシラン、ポリシロキサン、及びポリアルキルホスファゼンからなる群から選択できる。これらのCYSCポリマーは、14、16、18、20、22、30、40、又は50個の炭素原子を含有するn−アルキル部分を含むRc部分を例えば含み得る。例えば、CYSCポリマーは、ジメチルアミノエチルメタクリレート、ジエチルアミノエチルメタクリレート、t−ブチルアクリルアミド、ジメチルアミノプロピルメタクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、;N,N−ジアルキルアミノ(特にジメチルアミノ)(メタ)アクリレート;アンモニウム塩含有(メタ)アクリレート、例えば2−トリメチルアンモニウムメチルメタクリレートクロリド、メタクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウムクロリド、N,N−(ジエチル又はジメチル)アミノエチル(メタ)アクリレートメトサルフェート;N−ビニルピロリジノン;一級アミンとのマレイン酸無水物又はイタコン酸無水物の閉環反応産物のようなイミド;2−メタクリルオキシ−N−エチルモルホリン;n又はt−ブチルアクリルアミド;(メタ)クリルアミド;ジメチルアミノプロピルメタクリルアミド;2−t−ブチルアミノエチルメタクリレート;(メタ)アクリロニトリル;t−ブチルアミノエチル(メタ)アクリレート;アクリロイルモルホリン;N−(2−ヒドロキシエチル)アセトアミド,1−ピペリジノエチル(メタ)アクリレート、アクリル酸、メタクリル酸;イタコン酸無水物;イタコン酸;マレイン酸無水物;マレイン酸;フマル酸;フマル酸、マレイン酸、クロトン酸、及び2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸(「AMP」)のモノエステル及びモノアミド;ビニルスルホン酸、ビニルアセテート、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート;テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート;グリシジルメタクリレート;アルコキシアルキル(メタ)アクリレート、例えばメトキシエチル(メタ)アクリレート;1−アクリルオキシ2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロパン;メチロールメタクリレート;エトキシエチル(メタ)アクリレート;2−(2−エトキシエトキシ)エチルアクリレート;アセトアセトキシエチル(メタ)アクリレート;フェノキシエチル(メタ)アクリレート;(メタ)アクロレイン;アルコキシ又はヒドロキシル(ポリオキシアルキレン)アルキル(メタ)アクリレート、例えばメトキシ−又はヒドロキシポリオキシエチレン(メタ)アクリレート、アルコキシ−又はヒドロキシポリオキシプロピレン−ポリオキシエチレンアルキル(メタ)アクリレート、トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、ヘプタデカフルオロデシル(メタ)アクリレート、オクタフルオロペンチル(メタ)アクリレート、エイコサフルオロウンデシル(メタ)アクリレート、ヘキサデカフルオロノニル(メタ)アクリレート、テトラヒドロペルフルオロデシル(メタ)アクリレート;トリメチルシロキシエチル(メタ)アクリレート、3−アクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、及び3−アクリルオキシプロピルトリス(トリメチルシロキシ)シラン、モノメタクリルオキシモノトリメチルシロキシ末端化ポリエチレンオキシド、及びアルキル基が1〜8個の炭素原子を含有するモノメタクリルオキシプロピルアルキルポリジメチルシロキサンからなる群から選択される1つ又は複数のモノマーから誘導された単位を含む。CYSCポリマーは、例えば、以下で定義されるような式Z(Rz)の反復単位を含有でき、自由選択的にそのような反復単位は官能化された部分を含む。CYSCポリマーは、例えば、Tp−To<Tp0.7を示す。例えば、CYSCポリマーは、1,000ダルトンから100,000ダルトンの間のMn分子量を有し得る。CYSCポリマーは、例えば、38℃から60℃の間のTpを有し得る。CYSCポリマーは、例えば、加水分解的に不安定な結合を含み得る。CYSCポリマーには、例えば、無主鎖結晶化度がなくてよい。CYSCポリマーは、例えば、ブロックコポリマー又はグラフトコポリマー以外のポリマー、例えばランダムコポリマーであり得る。CYSCポリマーは、ヒドロゲルであってもよく、なくてもよい。薬物は、例えば、静電結合、水素結合、ファンデルワールス力、共有結合、及びエントロピー力から選択される1つ又は複数の結合により、ポリマーと結合できる。CYSCポリマーは、例えば、(i)1つ又は複数のRc部分を含み得、Rc部分又は複数ある場合はRc部分の各々が、11から49個のメチレン部分を含有するポリメチレン部分を含み、(ii)60℃以下の融解温度を有し得る。
【0031】
製剤は、例えば、少なくとも5重量%の薬物を含有できる。製剤は、例えば、抗疼痛剤、抗精神病薬、抗炎症薬、ホルモン、コレステロール降下薬、抗骨粗鬆症薬、抗血管形成剤、及び避妊薬からなる群から選択される薬物を含み得る。製剤は、例えば、リスペリドン又は薬理学的に活性なその誘導体、同族体、又は代謝産物を含み得る。製剤は、例えば、標的に特異的に結合するリガンドを含み得る。製剤は、例えば、対象内に移植された際に、in vivoで少なくとも30日の期間にわたって、治療的有効量の薬物を対象に連続的に放出するものであり得る。製剤は、例えば、in vitroで試験した際に(1LのPBS、pH7.2に37℃で溶出、100rpmで撹拌)、溶出の最初の168時間中の任意の24時間の期間にわたって平均された1日当たり50ミリグラム以下の平均放出速度で薬物を放出するものであり得る。製剤は、例えば、in vitroで試験した際に(1LのPBS、pH7.2に37℃で溶出、100rpmで撹拌)、溶出開始後の12時間から168時間までの期間中の任意の24時間の期間にわたって平均された1日当たり25ミリグラム以下の平均速度で薬物を放出するものであり得る。製剤は、例えば、in vitroで試験した際に(1LのPBS、pH7.2に37℃で溶出、100rpmで撹拌)、少なくとも30日の期間にわたって1日当たり1ミリグラムから60ミリグラムの間の薬物を連続して放出するものであり得る。製剤は、例えば、in vitroで試験した際に(1LのPBS、pH7.2に37℃で溶出、100rpmで撹拌)、溶出開始後の12時間から168時間までの期間中の任意の24時間の期間にわたって平均された1日当たり1ミリグラムから60ミリグラムの薬物を連続的に放出するものであり得る。製剤は、例えば、in vitroで試験した際に(1LのPBS、pH7.2に37℃で溶出、100rpmで撹拌)、24時間の期間にわたって、製剤中に存在する薬物の10重量%以下を放出するものであり得る。製剤は、例えば、in vitroで試験した際に(1LのPBS、pH7.2に37℃で溶出、100rpmで撹拌)、少なくとも30日の期間にわたって治療的用量の薬物を連続して放出し、24時間の平均薬物放出速度が、30日平均の1標準偏差内であるものであり得る。製剤は、例えば、対象内に移植された際に、in vivoで少なくとも30日の期間にわたって、治療的用量の薬物を連続的に放出するものであり得る。
【0032】
2.対象に薬物を投与するための方法であって、(1)対象に(1)で定義された製剤を投与すること、及び(2)少なくとも30日の期間にわたって対象に治療的有効量の薬物を連続的に放出することを含む方法。選択的に、製剤は、投与前に、液体、例えば液体緩衝液と接触させることにより前処理される。その処理は、例えば、少なくとも30分前であり得る。例えば、この方法は、対象内、例えば皮下に製剤の移植片を含み得る。幾つかの方法では、薬物はリスペリドンであり、治療的有効量は1日当たり1mgから60mgの間である。幾つかの方法では、薬物はジクロフェナクナトリウムであり、治療的有効量は1日当たり50mgから300mgの間である。例えば、この方法は、所定の時間に薬物を製剤から放出することを含み、ここで薬物は、以下の条件変化の1つ又は複数により製剤から放出される;
(i)製剤の加熱、
(ii)製剤の水和、
(iii)製剤の酵素への曝露、
(iv)製剤を取り囲む環境のpH変化。
ある実施形態では、製剤は、あるpHで又はそれより高いpHでのみ治療的用量の薬物を放出できる。例えば、製剤は、酸性pH(胃におけるような)の水性環境では薬物をほとんど又は全く放出しないが、pH6のようなあまり酸性でないpHで、或いはpH7、pH8、pH9、又はpH10若しくはそれより高いようなアルカリpHでは、治療的用量の薬物を放出できる。本出願は、胃の酸性環境により損傷されるであろうタンパク質又はペプチドのような酸不安定性薬物の経口送達のために特に有用である。
【0033】
本発明で使用されるCYSCポリマー及び薬物/CYSCポリマー組成物は、自由選択的に、以下の特徴の1つ又は可能であれば複数を有し得る。
(1)ポリマーは、15〜20モル%のメタクリル酸単位を含有しない。
(2)ポリマーは、20〜40モル%のメタクリル酸単位を含有しない。
(3)ポリマーは、15〜20モル%のアクリル酸又はアルキルアクリル酸単位を含有しない。
(4)ポリマーは、20〜40モル%のアクリル酸又はアルキルアクリル酸単位を含有しない。
(5)ポリマーは、18個の炭素原子を含有する側鎖を含有しない。
(6)ポリマーは、12〜18個の炭素原子を含有する側鎖を含有しない。
(7)ポリマーは、Cy部分に連結し、カルボキシル又はカルボキシル塩部分を含有する部分にも連結する炭素原子を含有しない。
(8)ポリマーは、80,000未満、好ましくは60,000未満の分子量を有する。
(9)ポリマーは、薄膜の形態ではない。
(10)ポリマーは、ランダムコポリマーではない。
(11)ポリマーは、熱可塑性エラストマーではない。
(12)ポリマーは、エラストマーではない。
(13)ポリマーは、無水物結合を介してポリマー骨格に結合されているCy部分を含有しない。
(14)ポリマーは、無水物結合を含有するCy部分を含有しない。
(15)ポリマーは、ビニルアミドから誘導された単位を含有しない。
(16)ポリマーは、Cy部分を含有する単位を40%を超えて含有する。
(17)ポリマーは、水に曝露された際に加水分解しない。
(18)ポリマーは、4を超えるpKaを有する。
(19)ポリマーは、薬物を含む内部封入物と、デバイスが投薬される外部容積との間に設置されるゲート膜(gating membrane)として使用されない。
(20)ポリマーは、架橋されていないか、或いはそうでなければ、例えばポリマーを、高融解ブロックを含有するブロックコポリマーの一部にすることにより、又は微小孔性膜、中空繊維、若しくは繊維性メッシュ内にポリマーを固定化することにより、非流動化されている。
(21)ポリマーは、エマルジョン重合により調製されていない。
(22)薬物は、皮膚に適用される組成物に使用するのに好適ではないであろう化合物である。
(23)薬物は、4−アセトアミドフェノールではない。
(24)薬物はニコチンではない。
(25)薬物はピロカルピンではない。
(26)組成物は、ポリマーの薄膜を薬物の水溶液に侵漬することにより生成されるのではない。
(27)組成物は、融解ポリマー中に薬物を分散させることにより生成される。
(28)組成物は、ポリマーが固体である間に、薬物をポリマーと共に粉砕することにより生成されるのではない。
(29)組成物は、45%未満の薬物を含有する。
(30)組成物は水を含有しない。
(31)組成物は油を含有しない。
(32)組成物は、油中水型エマルジョンではない。
(33)組成物は、水性エマルジョンではない。
(34)薬物が組成物から投薬される速度は、CYSCポリマーの温度の変動を制御することにより制御されるのではない。
(35)薬物は、ポリマーの融点より低い温度でCYSCポリマーから放出される。
(36)組成物は、哺乳動物のチャネルを遮断するために使用されるのではない。
【図面の簡単な説明】
【0034】
本発明は、更に下記で説明される実施例で取得された結果が、図によって要約されている添付の図面において例示される。
【0035】
下記の表は、表1A、1B、及び1Cにおける実施例番号と、本明細書の他所で参照された試料番号と間の相関を示す。
【0036】

【発明を実施するための形態】
【0037】
定義
本開示では、以下の定義を使用する。
【0038】
「医薬製剤」、「医薬組成物」、及び「薬物製剤」という用語は、(i)ヒト又は他の哺乳動物への投与に好適であるか、又はそのような投与に好適化するための処理、例えば滅菌ができる、かつ(ii)少なくとも1つの薬物及び少なくとも1つのCYSCポリマーを含む任意の組成物を意味する。更に、製剤は、薬物放出を改変又は改善し、その物理的及び/又は化学的安定性、剤形性能、加工、製造等を改善するために使用できる、医薬賦形剤、充填剤、担体物質等のような追加的な不活性成分を含むことができる。
【0039】
「薬物」、「治療の」、「治療剤」、又は「薬物」という用語は、ヒト又は他の哺乳動物において局所的に及び/又は全身的に、生物学的、生理学的、又は薬理学的に活性であり、診断用薬を含む任意の薬物を意味する。薬物の例は、メルクインデックス(Merck Index)及び医師用卓上参考書(Physicians Desk Reference)のような周知の参考文献に記載されており、薬物の例には、それらに限定はしないが、薬剤;ビタミン;ミネラル補給剤;疾患又は疾病の治療、予防、診断、治癒、又は緩和に使用される物質;身体の構造又は機能に影響を与える物質;生理的環境に置かれた後で、生物学的に活性化するか、又はより活性になるプロドラッグ、即ち、いったん前駆体化学物質の代謝により生成されると、生物学的に活性化するか、又はより活性になる薬物の生物学的活性代謝物が含まれ、本発明で使用できる様々なタイプの薬物は、本出願の下記においてより詳細に考察される。複数の薬物が、単一の製剤に含まれていてよい。本発明で使用するのに好適な薬物は、例えば、米国特許第6,297,337号明細書の11列、16行から12列、58行に、及び米国特許出願公開第2003/0224974号明細書の段落0045に開示されており、それらの開示全体は、あらゆる目的のために参照により本明細書中に組み込まれる。
【0040】
「哺乳動物又は細胞」という用語は、それらに制限されないが、ヒト及び他の哺乳動物、並びに哺乳動物の一部でない生体組織を包含する。
【0041】
「治療的有効量」という用語は、所望の治療効果を容易にするのに有効な治療剤の量、又は治療剤の送達速度を意味する。正確な所望の治療効果は、治療される状態、投与される製剤、及び当業者により理解される多様な他の要因により変動しよう。
【0042】
「診断用薬」という用語は、診断又は診断検査のために使用できる任意の化学的部分を意味する。例えば、診断用薬には、放射性同位元素を含有する造影剤(imaging agent)、例えばヨウ素、酵素、及び蛍光物質等を含有する対比剤(contrasting agent)が含まれる。
【0043】
「治療」という用語は、生理的状態を変更するためにある種の措置を個体に対して適用することを意味し、その措置が治癒的要素を含んでいるかどうかは問わない。
【0044】
薬物がin vivoで薬物製剤から放出されるであろう速度の指標としては、目的の送達部位又は器官(例えば丸剤では胃腸管的、又は移植片では皮下的)の予測生理的条件を模倣するように設計されたin vitro試験を使用することが可能である。そのようなin vitro試験の一例では、生理的pH及び生理的に適切な温度、例えば約25℃又は37℃;好ましくは32℃から37℃の間の生理的緩衝食塩水中に、剤形が配置される。放出された薬物の量及び薬物がin vitro試験で放出される時間は、単なるin vivo結果の指標であるだけだが、比較測定を行うためには有用である。
【0045】
薬物の「制御」放出とは、放出の量又は速度又はタイミングが事前に設定されているか又は所望の方法で変更されるような、事前に決定された方法又は調整可能な方法での薬物の放出を意味する。
【0046】
薬物の「徐放」とは、薬物の全てが最初に放出されないような、長期間、例えば数分、数時間、数日間にわたる放出を意味する。徐放の速度は、例えば、生理的条件下又はin vitro試験での、ある期間にわたる、剤形からのある所定量の薬物の放出を提供できる。
【0047】
「ボーラス」放出手段とは、一度に又は短期間の間に、大用量の薬物、例えば薬物の全てを放出することを意味する。ボーラス放出は、徐放の前に又は徐放の後で行うことができる。
【0048】
薬物の投与中に薬物送達の文脈で使用される場合、「バースト効果(burst effect)」という用語は、所望より高いレベル又は速度で、典型的には、治療的に有効なレベルを超過して、薬物がボーラスとして剤形から放出されることを意味する。例えば、バースト効果とは、約25℃又は37℃のような設定温度の生理的緩衝食塩水中に剤形が配置される際のような特定の実験条件下で、50%を超える薬物が剤形から放出されることと定義できる。一般的に、バーストの後には、急速な放出速度の低下が起こる。バースト効果は、特定の条件下における、ある定義された量の薬物の剤形からの放出により特徴付けることができる。例えば、バースト効果は、生理的条件下(通常の使用目的では、例えば丸剤の場合は胃腸管的、又は移植片の場合は皮下)、又は例えば上述された若しくは下記の実施例に説明されるような好適なin vitro試験における、負荷された薬物総量の定義された閾値量の定義された時間にわたる放出として定義できる。例えば、閾値量は、剤形に負荷された薬物総量の少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、又は少なくとも95%であってよく、定義された時間は、例えば30分、1時間、2時間、3時間、6時間、8時間、10時間、12時間、16時間、20時間、24時間、36時間、又は48時間であってよい。著しいバースト効果を示さない剤形とは、例えば、移植後3時間の期間にわたって、剤形に負荷された薬物総量の10%未満を放出する剤形であり得る。本発明のある実施形態では、剤形は、任意のバースト効果が移植前に費やされるように、移植に先立って前処理される。
【0049】
「制御放出デバイス」、「制御放出剤形」という用語及び類似の用語は、そこに含まれる薬物又は他の所望の物質の放出速度(例えば放出のタイミングの速度)が、デバイス又は剤形自体により、及び/又は使用環境により制御される任意の製剤又はデバイスを意味する。制御された薬物送達には、ある量の薬物を特定の時間で特定の標的部位に送達すること、例えば腫瘍部位に対する薬物のボーラス送達が含まれる。
【0050】
「薬物送達デバイス」のように薬物送達の文脈で使用される場合、「デバイス」という用語は、丸剤、カプセル剤、ゲル剤、デポー剤を含む薬物と、医療用の移植可能なデバイス(例えば、自己膨張型ステント、バルーン膨張可能なステント、薬物溶出型ステント、及びステントグラフトを含むステント、グラフト(例えば大動脈グラフト)、人工心臓弁、脳脊髄液シャント、ペースメーカー電極、心内膜リード(endocardial lead)、並びに生体分解可能な移植片等)と、外部的に操作されるデバイス(例えば、薬物を例えばカテーテル先端の加熱の結果として放出できるカテーテルを含む、薬物デバイス及びカテーテル)とを送達できる任意のデバイスを意味する。
【0051】
「剤形」という用語は、対象への投与に好適なように配合された薬物又はそのように処理された薬物又はそのように存在する薬物を意味する。剤形は、CYSCポリマー及び薬物を含み、1つ又は複数の他の添加剤、例えば薬学的に許容される賦形剤、担体、浸透増強剤、安定剤、緩衝剤、又は剤形の送達可能性及び/又は薬物の有効性を増強するために薬物及び/又はCYSCポリマーと物理的に結合した他の物質を含んでいてもよい。剤形は、例えば、液体、懸濁液、錠剤、丸剤、カプセル(マイクロカプセルを含む)のような固体、エマルジョン、ミセル、軟膏、ゲル、エマルジョン、デポー(皮下に移植されたデポーを含む)、又は移植デバイス、例えばステント等の被膜として投与できる。剤形は、例えば外部的に例えばパッチとして、又は一部外部的に適用され一部が移植されたデバイス、若しくは完全に移植されたデバイス、若しくは皮下注射されたデバイスとして適用できる。
【0052】
「結合」、「結合した」等の用語は、化学結合(例えば共有結合、イオン結合、及び水素結合を含む)及び/又はファンデルワールス力、及び/又は分子構造により提供される他の物理的な制約による極性及び無極性相互作用、及び物理的混合による相互作用を含む任意のタイプの相互作用を意味する。
【0053】
薬物送達の文脈で使用される場合、「パターン化された」又は「一時的な」とは、事前に選択された期間(例えば、ボーラス注入と関連する期間以外)にわたる、あるパターンでの、一般的には実質的に規則的なパターンでの薬物送達を意味する。「パターン化された」又は「一時的な」薬物送達には、増加していく、減少していく、実質的に一定の、又は拍動性の速度又は速度範囲(例えば、単位時間当たりの薬物の量、又は1単位時間の薬物製剤の容積)の薬物送達が含まれ、連続的若しくは実質的に連続的、又は長期にわたる送達が更に含まれる。
【0054】
「官能化された」という用語は、ポリマーを含む化学化合物に適用された場合、処理前には化合物に存在しなかった官能部分(つまり、更なる所望の化学反応を起こすであろう部分)を含有するように、又は例えば溶解度パラメーターの変化により証拠付けられるような化合物の極性が変更されるように、化合物が処理されることを意味する。
【0055】
「アルキル」という用語は、本明細書中で使用される場合、直鎖アルキル部分と、分岐アルキル部分と、シクロアルキル部分と、複数の直鎖アルキル、分岐アルキル、及びシクロアルキル部分から本質的になる部分とであるアルキル部分を含む。
【0056】
本明細書中では、割合、比率、及びパーセンテージは、そうでないと示されている場合を除いて重量による。温度は、摂氏温度(℃)である。ポリマーの分子量は、ダルトンであり、重量平均分子量(Mw)と記されていない限り数平均分子量(Mn)であり、Wyatt Technology社製のDAWN DSPレーザー光度計を使用して、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により光散乱検出法で測定される。ポリマーを定義する際に、本明細書では、「融点」(多くの場合、Tp又はTmと略される)、「融解開始温度」(多くの場合、Toと略される)、及び「融解熱」(ポリマーの結晶化度の尺度であり、J/gで表現され、多くの場合、ΔHと略される)という用語を使用する。Tp、To、及びΔHは、示差走査熱量計(以下、DSC)、例えばTA Instruments社製のQ100DSCを、10℃/分の温度変化速度で、例えば−10から150℃までで使用して決定される。Tpとはピーク融解温度であり、Toとは、DSCピークの基線と開始線とが交差する点における温度であり、開始線とは、Tpより下のDSC曲線の、最も傾きの大きい部分に対する接線として定義される。そうでないと記されていない限り、Tp、To、及びΔHは、2回目の熱サイクルで測定される。
【0057】
本明細書中で示された体積粘性は、センチポアズであり、サーモスタットで電子的に制御された熱ヒーターで例えば95℃に制御され、スピンドル(spindle)4及び7を使用した少量試料用アダプターを備えた、Brookfield社製LVT粘度計を使用して測定される。
【0058】
本明細書中で示された溶解度パラメーターは、D.W.Van Krevelen“Properties of Polymer”,Elsevier,1997,200−214に、特に214頁に記載されている方法を使用して計算され、Jl/2/cm3/2という単位で表される。
【0059】
下記のこの表は、本明細書中で使用される他の用語及び略語、並びにそれらに帰されるべき意味を設定する。
【0060】



【0061】
開示に関する一般的な表現
本明細書では、本発明の特定の特徴(例えば、構成要素、成分、エレメント、デバイス、装置、系、基、範囲、方法ステップ、試験結果等を含む)が参照される。本明細書中における本発明の開示は、そのような特定の特徴の適切な組み合わせを全て含むことが理解されるべきである。例えば、特定の特徴が、特定の実施形態又は特定の特許請求の範囲の文脈で開示される場合、その特徴は、他の特定の実施形態及び特許請求の範囲の文脈においても、及び一般的に本発明においても適切な程度まで使用できる。
【0062】
本明細書中で開示された実施形態は、例示的であり本発明を制限しない。他の実施形態が使用でき、変更がなされていてよい。
【0063】
本明細書中で使用される場合、単数形である「a」、「an」、及び「the」は、文脈がそうでないと明白に指示しない限り複数の参照を含む。したがって、例えば、「一部分」に対する参照は、複数のそのような部分等を含む。
【0064】
「含む」という用語及びその文法的等価用語は、本明細書中で使用される場合、具体的に特定された特徴に加えて、他の特徴が自由選択的に存在することを意味する。例えば、成分A、B、及びCを「含んでいる」(又は「含む」)組成物は、成分A、B、及びCのみを含有していてよく、又は成分A、B、及びCだけでなく1つ又は複数の他の成分も含有してよい。「から本質的になる」という用語及びその文法的等価用語は、本明細書中で使用される場合、具体的に特定された特徴に加えて、請求された発明を実質的に変更しない他の特徴が存在してもよいことを意味する。その後に数字が続く「少なくとも」という用語は、本明細書中で使用される場合、その数字で始まる範囲(定義される変数に依存して、上限を有する範囲であってよく又は上限を有しない範囲であってよい)の開始を示す。例えば、「少なくとも1つ」とは、1つ又は1つより多いことを意味し、「少なくとも80%」とは、80%又は80%より多いことを意味する。その後に数字が続く「多くとも」という用語は、本明細書中で使用される場合、その数で終わる範囲(定義される変数に依存して、その下限として1又は0を有する範囲であってよく、又は下限を有しない範囲であってもよい)の終わりを示す。例えば、「多くとも4」とは、4又は4未満を意味し、「多くとも40%」とは40%又は40%未満を意味する。本明細書において、「(第1の数字)から(第2の数字)」又は「(第1の数字)〜(第2の数字)」として範囲が示される場合、これは、その下限が第1の数字であり、その上限が第2の数字である範囲を意味する。例えば、「8個から20個までの炭素原子」又は「8個〜20個の炭素原子」とは、その下限が8個の炭素原子であり、その上限が20個の炭素原子である範囲を意味する。「複数の」、「多数の」、「複数」、及び「多数」という用語は、本明細書中で使用される場合、2又は2つを超える特徴を示す。
【0065】
複数の定義されたステップを含む方法が本明細書中で参照される場合、定義されたステップは、任意の順序で又は同時に実行可能であり(文脈によりその可能性が除外される場合を除く)、方法は、任意の定義されたステップの前に、2つの定義されたステップの間に、又は全ての定義されたステップの後に実行される1つ又は複数の他のステップを自由選択的に含むことができる(文脈によりその可能性が除外される場合を除く)。「第1の」及び「第2の」特徴が本明細書中で参照される場合、これは一般的に識別目的のために行われ、文脈によりそうでないことが要求されなければ、第1及び第2の特徴は、同一であってよく又は異なっていてよく、第1の特徴への参照は、第2の特徴が必ず存在することを意味しない(しかし、存在してよい)。「1つ(a)」又は「1つ(an)」の特徴が本明細書中で参照される場合、これは、複数のそのような特徴が存在する可能性を含む(文脈によりその可能性が除外される場合を除く)。例えば、1つのCYSCポリマー及び1つの薬物を含む組成物の場合、組成物は複数のCYSCポリマー及び/又は複数の薬物を含むことができる。「複数の」特徴が本明細書中で参照される場合、これは、複数の特徴が、同一の機能を提供するより少ない数又はより大きな数の特徴で置換される可能性を含む(文脈によりその可能性が除外される場合を除く)。本明細書中で示された数字は、それらの文脈及び表現に適切な許容度をもって解釈されるべきであり、例えば各数字は、当業者により従来から使用されている方法により測定できる正確性に依存する変動の影響下にある。
【0066】
本明細書は、本明細書と共に一般閲覧に公開されたそのような文書を含むがそれらに限定されない、本明細書中で参照された全文書及び本明細書と同時に提出された又は本出願と関連して過去に提出された全文書を参照により組み込む。
【0067】
CYSCポリマー
b部分
bとは、Cy部分を、最終の末端部分までのポリマー骨格の中間点に結合する結合又は二価性部分である。したがって、bは、例えば共有結合、又は二価性の有機部分(例えば、脂肪族、芳香族、脂肪族/芳香族の混合部分)若しくは無機部分である。b部分の例には、エステル、カルボニル、アミド、アミンオキシド、炭化水素(例えばフェニレン)、アミノ、エーテル、ポリオキシアルキレン、又はイオン性塩結合(例えば、カルボキシアルキルアンモニウム、スルホニウム、又はホスホニウムイオン対)が含まれる。
【0068】
Cy部分
特定のCYSCポリマーのCy部分(ポリマー骨格の中間の位置から及び/又はポリマー骨格の末端位置から垂下する側鎖を提供する)は、同一であってもよく又は異なっていてもよい。Cy部分は、結晶化度を提供するために、他のCy部分、例えば、同一ポリマー及び/又は異なるポリマー(CYSCポリマーであってもよく、又はなくてもよい)及び/又は非ポリマー性分子のどこか別の場所にある他のCy部分と相互作用可能であるようなものでなければならない。Cy部分間の相互作用は、一般的に、共有結合又はイオン結合を介してではなく、水素結合又はファンデルワールス力によるものである。
【0069】
Cy部分は、任意の種類、例えば脂肪族、例えばアルキル、又は脂肪族芳香族混合物、であり得る。CYSCポリマーは、DSCを用いて下記で定義された方法で試験された場合、ポリマーが、Cy部分の結晶化に起因する、少なくとも5J/gの融解熱及び付随する明確な融解温度を有するような部分を含有する。そのようなポリマーは公知であり、側鎖結晶性ポリマー(時には、SCCポリマー又はSCCPと略される)と呼ばれる。幾つかのSCCポリマーは、Cy部分の性質、量、及び分布が、少なくとも10、少なくとも20、少なくとも25、少なくとも30、少なくとも35、少なくとも40、又は少なくとも45、例えば5〜50、又は10〜50、又は10〜40、又は15〜35、又は20〜30J/gの融解熱をポリマーが有するようなCy部分を含有する。
【0070】
SCCポリマーに関する特許及び他の出版物には、J.Poly.Sci.60,19(1962);J.Poly.Sci,(Polymer Chemistry)7,3053(1969),9,1835,3349,3351,3367,10,1657,3347,18,2197,19,1871;J.Poly.Sci,Poly−Physics Ed 18 2197(1980);J.Poly.Sci,Macromol.Rev,8,117(1974);Macromolecules 12,94(1979),13,12,15,18,2141,19,611;JACS 75,3326(1953),76;6280;Polymer J 17,991(1985);及びPoly.Sci USSR 21,241(1979);米国特許第4,830,855号,第5,120,349号,第5,129,180号,第5,156,911号,第5,254,354号,第5,387,450号,第5,412,035号,第5,469,867号,第5,665,822号,第5,752,926号,第5,783,302号,第6,013,293号,第6,060,540号,第6,199,318号,第6,210,724号,第6,224,793号,第6,255,367号,第6,376,032号,第6,492,462号,第6,540,984号,第6,548,132号,第6,831,116号,第6,989,417号,及び第7,101,928号明細書;及び米国特許出願公開第2001/0018484号、第2002/0090425号、及び第2002/0127305号明細書が含まれる。それらの出版物、特許、及び特許広報の各々の開示全体は、あらゆる目的のために参照により本明細書中に組み込まれる。
【0071】
Cy部分は、互いに直接結合された少なくとも8個又は少なくとも12個の炭素原子、例えば12〜50個又は16〜30個の炭素原子の直鎖状の炭素鎖を含むことが多い。この部分は一般的に分岐していないが、分岐がこの部分の結晶化能力を妨げなければ、分岐していてよい。同様に、この部分は、置換されていなくてよく又は主にフッ素原子でのみ置換されていてよく、又はこの部分の結晶化能力を妨げない他の部分で置換されていてよい。
【0072】
Cyは、例えば、6から50個、例えば12から50個、好ましくは12から22個又は16から22個の実質的に直鎖状の炭素原子を含む部分、例えば少なくとも11個のメチレン部分、例えば11〜49個のメチレン部分及び末端のメチル部分を含む部分、又は少なくとも5個、例えば5から49個の直鎖状ペルフルオロ又は実質的にペルフルオロメチレン部分及び末端ペルフルオロメチル部分又は水素原子を含む部分であり得る。好適なCy部分の具体的な例には、C14、C16、C18、C20、C22、C30、C40、及びC50、特に、14、16、18、20、22、30、40、及び50個の炭素原子を含有するn‐アルキル部分、及び少なくとも8個の炭素原子を含有する部分的に又は完全にフッ素化されたn−アルキル基、及び類似の平均鎖長を有するCy部分の混合物が含まれる。
【0073】
CYSCポリマーにおける式―Y(b―Cy)‐‐の部分は全て同一であってよく、又はそれらは、Y、b、及びCyの1つ又は複数が互いに異なる複数の(つまり2つ又はそれより多くの)異なるタイプの部分であってよい。複数の異なるタイプの―Y(b―Cy)‐‐部分を含有する幾つかのCYSCポリマーでは、異なるタイプは、ポリマーの全体にわたって無作為に分布している。他のCYSCポリマーでは、異なるタイプは、ブロックコポリマー又はグラフトコポリマーでのように、少なくともポリマーの一部では所望の作為的様式で分布している。例えば、ポリマーは、1種類のみの式‐Y(Rc)‐の反復単位を含む少なくとも1つのポリマーブロック、及び式‐Y(Rc)‐の反復単位のみを含む第2のポリマーブロックを含み得る。或いは、ポリマーは、無作為に分布する複数の‐Y(Rc)‐及び‐Y(Rc)‐単位を含有する1つ又は複数の区間と、(i)別のタイプの式‐Y(Rc)‐‐の反復単位のみ、又は(ii)複数の無作為に分布した異なる式‐Y(Rc)‐‐の反復単位を含む少なくとも1つのポリマーブロックとを含むことができる。
【0074】
複数の異なるCy部分がある場合、それらは例えば、平均の長さが6から50個の直鎖状炭素原子を有していてよく、平均は、ポリマーのCy部分全て(又は、グラフト、コポリマーを含むブロックの場合には、ブロックのCy部分全て)の長さを全て加算し、Cy部分の数で除算することにより計算される。平均の長さは、例えば、+/‐3%、+/‐5%、又は+/‐10%、又はその間の任意の量の正確性を有し得る。
【0075】
ポリオキシアルキレン部分を含有するCy部分
幾つかの有用なCy部分には、ポリオキシアルキレン単位、例えばポリオキシエチレン単位が含まれる。そのようなCy部分は、例えば、アルコキシポリオキシアルキレン(メタ)クリレートから誘導でき、ここで、アルコキシ基のアルキル部分は、好ましくは、12から50個、好ましくは12から22個の炭素を含有するアルキル基、特にn‐アルキル基であり、ポリオキシアルキレン単位は、2から100個、例えば5から100個、好ましくは5から60個のオキシアルキレン単位、好ましくは2〜20個、例えば2〜4個のオキシアルキレン単位を含有するホモポリマー、ランダムコポリマー、又はブロックコポリマーである。そのようなモノマーの具体的な例には、セチルポリエトキシル化メタクリレート、ステアリルポリエトキシル化(メタ)アクリレート、ベヘニルポリエトキシル化(メタ)アクリレート、ラウリルポリエトキシル化(メタ)アクリレート、及びコレステロールポリエトキシル化(メタ)アクリルレート等が含まれる。例えば、上記と類似したアルキル基及びポリアルキレンオキシ基を有するヒドロキシポリアルキレンオキシアルキル(メタ)アクリレート、例えばヒドロキシポリエチレンオキシステアリルアクリレート、及びヒドロキシポリエチレンオキシセチルメタクリレート等に関しては、ポリオキシアルキレン単位は、アルキル側鎖部分に結合できる。
【0076】
CYSCポリマーに自由選択的に存在する他の部分
CYSCポリマーは、式‐‐Y(Rc)‐‐の部分から本質的になっていてよく、又は異なるタイプの他の反復単位も含有していてよい。他のそのような反復単位は、以下の式により表すことができ、
‐Z(Rz)‐
式中、Zはポリマー骨格の一部を形成する部分でり、Rzは、Rc部分でない一価性部分を表す。式‐Z(Rz)‐の反復単位は全てが同一であってよく、又はZに、若しくはRzに、若しくはZ及びRzの両方に、互いに異なる様々なタイプの反復単位が複数存在していてよい。式‐Z(Rz)‐の部分は、ポリマーの全体にわたって無作為に分布していてよく、又は少なくともポリマーの一部において所望の作為的様式で分布していてよい。
【0077】
CYSCポリマーにおけるZ(Rz)部分の存在は、一般的に融解温度を低下させ、CYSCポリマーの結晶化度を低減し、その程度は、Z(Rz)部分の割合及び分布、並びにZ(Rz)部分の性質に依存する。Z(Rz)部分は、CYSCポリマーの化学的特徴及び他の特徴にも寄与し、それらの存在は本目的のために役立ち得る。例えば、多数の有用なCYSCポリマーは、Cy部分が疎水性の特徴を提供し、Rz部分が親水性の特徴を提供する両親媒性の特徴を示す。
【0078】
CYSCポリマーのZ(Rz)部分は、任意の種類、例えば脂肪族、例えばアルキル、又は脂肪族芳香族混合物であり得る。Z(Rz)部分は、それを介して互いに及びY(Rc)部分に結合する任意の好適な結合基を含有できる。例えば、CYSCポリマーは、Z(Rz)部分を含む区間、及びポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリアルキルメタクリレート、ポリ‐N‐アルキルアクリルアミド、ポリアルキルオキサゾリン、ポリアルキルビニルエーテル、ポリアルキル1,2‐エポキシド、ポリアルキルグリシジルエーテル、ポリビニルエステル、ポリアクリルアミド、ポリメタクリルアミド、ポリマレイミド、ポリ‐α‐オレフィン、ポリ‐p‐アルキルスチレン、ポリアルキルビニルエーテル、ポリオレフィン、ポリエーテル、ポリウレタン、ポリシラン、ポリシロキサン、又はポリ(アルキルホスファゼン)である区間を含むことができる。
【0079】
Z(Rz)部分は全て同一であってよく、又は、例えば、ブロックの1つが本質的に1つのタイプのZ(Rz)のみを含み、別のブロックが本質的に別のタイプのZ(Rz)のみを含むブロックコポリマーにおけるように、無作為に分布した及び/又は所望の分布に配置された複数の異なるZ(Rz)部分があってよい。Z部分(複数の異なるタイプのZ部分が存在する場合、同一であっても又は異なっていてもよい)は、好適なモノマー、例えばアクリル、メタクリル、オレフィン、エポキシ、又はビニルポリマーの付加重合及び/又は縮合重合から誘導できる。
【0080】
Z及びRz間の結合は、Y及びRc間の結合について考察した項に記載された任意の結合であり得る。結合は、加水分解的に安定していてもよく、不安定でもよく、加水分解又は酵素切断に対して不安定であってもよい。
【0081】
Z(Rz)部分をそれから誘導できる好適なモノマーは、所望のRz部分を含有していてよく、及び/又はその幾つかの又は全てが、重合中又は重合後にRz部分に変換されるRz前駆体部分を含有していてよい。好適なモノマーは、例えば、アルキル(例えば2‐エチルヘキシル、ブチル、エチル、メチル)(メタ)アクリレート、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート(例えば、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート)、アルコキシアルキル(メタ)アクリレート(例えば、メトキシエチルアクリレート、エトキシエチルメタクリレート)、及びヒドロキシポリオキシアルキレン(メタ)アクリレート(例えば、エチレンオキシ単位が4〜50個である‐ヒドロキシポリオキシエチレンメタクリレート又はアクリレート)、他の(メタ)アクリレート(例えば、グリシダル(glycidal)メタクリレート、(アセトアセトキシ)エチルメタクリレート)、アクリルアミド及びメタクリルアミド;スチレン;モノアクリル酸官能化ポリスチレン;アルキルビニルエーテル、及びアルキルビニルエステル;並びに上記の全てにおいて、モノマー‐アルキル基が、Rc部分でないアルキル基、例えば、12個未満の、例えば1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、又は12個の炭素原子を含有するn‐アルキル部分(例えばビニルラウレート)であり;並びに極性モノマー、例えばアクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、ジメチルアミノエチルメタクリレート、ジエチルアミノエチルメタクリレート、t‐ブチルアクリルアミド、ジメチルアミノプロピルメタクリルアミド、N‐イソプロピルアクリルアミド、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、マレイン酸無水物、モノブチルフマレート、ビニルアセテート、N‐ビニルピロリドン、及びアミン基を含有するコモノマーである。
【0082】
ある実施形態では、Rzは、ポリオキシアルキレン、例えばポリオキシエチレン部分、例えば、Rc部分ではない終端基にZ部分を結合するポリオキシアルキレン部分を含んでいてよい。
【0083】
官能性Rz部分
Rz部分は、例えば、下記に列挙された化合物の一部を形成する官能基を含むがそれらに限定されない1つ又は複数の所望の官能基を含むことができる(それらの官能基の開示は、列挙された化合物の残りを形成する部分とは無関係である)。
【0084】
有用なRz部分には以下が含まれる。
【0085】
(1)窒素含有側鎖、例えば、下記に列挙されたモノマー及び特定のモノマーの群の重合から生じる部分。特定されたRz部分及び/又はそれに結合した官能基は、以下の他のモノマーの使用によっても取得できることを記しておく:N,N‐ジアルキルアミノ(特に、ジメチルアミノ)(メタ)アクリレート;アンモニウム塩含有(メタ)アクリレート、例えば2‐トリメチルアンモニウムメチルメタクリレートクロリド、メタクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウムクロリド、N,N‐(ジエチル又はジメチル)アミノエチル(メタ)アクリレートメトサルフェート;N‐ビニルピロリジノン;マレイン酸又はイタコン酸無水物の一級アミンとの閉環反応産物のようなイミド;2‐メタクリルオキシ‐N‐エチルモルホリン;n‐又はt‐ブチルアクリルアミド;(メタ)アクリルアミド;ジメチルアミノプロピルメタクリルアミド;2‐t‐ブチルアミノエチルメタクリレート;(メタ)アクリロニトリル;t‐ブチルアミノエチル(メタ)アクリレート;アクリロイルモルホリン;N‐(2‐ヒドロキシエチル)アセトアミド;1‐ピペリジノエチル(メタ)アクリレート;及び、アルキルアミン含有側鎖含有モノマーを酸化剤で反応させて、前駆体アルキルアミンのアミンオキシドをもたらすことにより得られるアミンオキシド含有モノマー。
【0086】
ある特定の実施形態では、本発明の製剤は、N‐ビニルピロリジノンから誘導されるRz側鎖を明確に除外する。
【0087】
(2)酸素含有側鎖、例えば、カルボキシル及びスルホン酸含有モノマー及びそれらの塩を含む、下記に列挙されたモノマー及び特定のモノマーの群の重合から生じる部分。特定されたRz部分及び/又はそれに結合した官能基は、以下の他のモノマーの使用によっても取得できることを記しておく。アクリル酸、メタクリル酸;イタコン酸無水物;イタコン酸;マレイン酸無水物;マレイン酸;フマル酸;フマル酸、マレイン酸、クロトン酸、及び2‐アクリルアミド‐2‐メチルプロパンスルホン酸(「AMP」)のモノエステル及びモノアミド;ビニルスルホン酸;ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、特にヒドロキシエチル、ヒドロキシプロピル、及びヒドロキシブチル(メタ)アクリレート;テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート;グリシジルメタクリレート;アルコキシアルキル(メタ)アクリレート、例えばメトキシエチル(メタ)アクリレート;ヒドロキシカプロラクトンアクリレート;1‐アクリルオキシ‐2‐ヒドロキシ‐3‐フェノキシプロパン;メチロールメタクリレート;エトキシエチル(メタ)アクリレート;2‐(2‐エトキシエトキシ)エチルアクリレート;アセトアセトキシエチル(メタ)アクリレート;フェノキシエチル(メタ)アクリレート;(メタ)アクロレイン;アルコキシ又はヒドロキシル(ポリオキシアルキレン)アルキル(メタ)アクリレート、例えばメトキシ‐又はヒドロキシポリオキシエチレン(メタ)アクリレート、例えばエチレンオキシ単位のモル数が、2から80まで、好ましくは6から50であるもの;アルコキシ‐又はヒドロキシポリオキシプロピレン‐ポリオキシエチレンアルキル(メタ)アクリレート、例えば、各オキシエチレン及びオキシプロピレン単位のブロックが、1/1から1/3の比率で存在し、それによって各ブロックのオキシアルキレン単位の量が5から100、好ましくは5から60単位であるもの。
【0088】
(3)フッ素含有側鎖、例えば、下記に列挙されたモノマー及び特定のモノマーの群の重合から生じる部分。特定されたRz部分及び/又はそれに結合した官能基は、以下の他のモノマーの使用によっても取得できることを記しておく:トリフルオロエチル(メタ)アクリレート;ヘプタデカフルオロデシル(メタ)アクリレート;オクタフルオロペンチル(メタ)アクリレート;エイコサフルオロウンデシル(メタ)アクリレート;ヘキサデカフルオロノニル(メタ)アクリレート;及びテトラヒドロペルフルオロデシル(メタ)アクリレート。
【0089】
(4)リン含有側鎖、例えば、下記に列挙されたモノマー及び類似のモノマーの重合から生じる部分。特定されたRz部分及び/又はそれに結合した官能基は、以下の他のモノマーの使用によっても取得できることを記しておく:2‐メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン;2‐アクリロイルオキシプロピルホスホリルコリン;及びステアリルフマリルエチルホスホリルコリン(stearyl fumaroylethyl phophoryl choline)。
【0090】
(5)ケイ素含有側鎖、例えば、下記に列挙されたモノマー及び特定のモノマーの群の重合から生じる部分。特定されたRz部分及び/又はそれに結合した官能基は、以下の他のモノマーの使用によっても取得できることを記しておく:シリルモノマー、例えばトリメチルシロキシエチル(メタ)アクリレート、3‐アクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、及び3‐アクリルオキシプロピルトリス(トリメチルシロキシ)シラン、モノメタクリルオキシモノトリメチルシロキシ末端化ポリエチレンオキシド、アルキル基が1〜8個の炭素原子、好ましくは1又は4個の炭素原子を含み、類似の物質が例えばGelest社からMCR‐M17及びMCR‐11等として販売されているモノメタクリルオキシプロピルアルキルポリジメチルシロキサン。
【0091】
(6)標的レセプター部位、例えば、標的細胞、例えば癌細胞上に差別的に過剰発現される受容体タンパク質に結合するリガンド基。リガンドは、物理的に混合できるだけでなく、CYSCポリマーの一部であり得る。リガンドについては、後で詳細に考察する。
【0092】
親水性Rz部分
幾つかのCYSCポリマーは、少なくとも幾つかのRz部分が親水性であるZ(Rz)部分を含み、その場合にはCYSCポリマーは、疎水性及び親水性の特徴を両方とも有する両親媒性コポリマーである。そのような両親媒性ポリマーを含む製剤は、ミセル又はエマルジョン又はリポソームを水中で形成でき、例えば疎水性コア内に疎水性薬物を含有できる。CYSCポリマーに親水性の特徴を与えるには、ポリオキシエチレンオキシド単位の包含(「ペグ化」)によるのが便利であることが多い。
【0093】
疎水性Rz部分
幾つかのCYSCポリマーは、全てのRz部分が疎水性であるZ(Rz)部分を含み、その場合には、CYSCポリマーは、疎水性の特徴のみを有するコポリマーになろう。
【0094】
Z(Rz)部分の割合
CYSCポリマーは、一般的には、ポリマーの重量に基いて95%未満の、特に70%未満の、殊に100%未満の、又は50%未満の、例えば5から25%の量のZ(Rz)部分を含有する(例えば5、7、10、15、17、20、23、又は25%)。
【0095】
製剤の特性及び調製に対するZ(Rz)部分の影響は、更に下記で考察する。
【0096】
Y(Rc)部分の割合
CYSCポリマーは、Y(Rc)部分からなるホモポリマー又はコポリマーであってよい。しかしながら、多数の有用なCYSCポリマーは、75%未満の、又は50%未満の、例えば1から75%、5から50%、15〜50%、15〜30%、又は10から25%のY(Rc)部分、例えば1%、3%、5%、7%、10%、15%、20%、25%、30%、40%、又は50%以下のY(Rc)部分を含有する。Y(Rc)部分の含有量の下限では、結晶化度を増強するために、Rc部分は好ましくは少なくとも18個の直鎖状炭素原子を含有し、及び/又はY(Rc)部分は、Y(Rc)部分から本質的になるグラフト鎖又はブロックとして存在する。
【0097】
CYSCポリマー骨格
CYSCポリマーの骨格は任意の種類であってよい。したがって、―Y‐‐部分、及びもし存在すれば、‐Y‐‐部分と同一であってもよく又は異なっていてもよい‐Z‐‐部分は、例えば、共有結合により又は他の元素若しくは元素の組み合わせを介して互いに直接結合する炭素原子を含んでいてよく、反復単位は、共有結合により互いに直接結合していてよく、又は1つ若しくは複数の原子を含む結合単位、例えばエステル(オルトエステルを含む)、アミド、エーテル、若しくはリン酸塩結合を含有していてよい。例えば、CYSCポリマーは、ポリアクリレート、ポリアルキルアクリレート、ポリフルオロアクリレート、ポリメタクリレート、ポリアルキルメタクリレート、ポリ‐N‐アルキルメタクリルアミド、ポリアルキルオキサゾリン、ポリアルキルビニルエーテル、ポリアルキル1、2‐エポキシド、ポリアルキルグリシジルエーテル、ポリビニルエステル、ポリアクリルアミド、ポリメタクリルアミド、ポリマレイミド、ポリ‐α‐オレフィン、ポリ‐p‐アルキルスチレン、ポリアルキルビニルエーテル、ポリオレフィン、ポリエーテル、ポリウレタン、ポリシラン、ポリシロキサン、又はポリ(アルキルホスファゼン)である区間であってよく、又はそうした区間を含んでいてよい。例えば、CYSCポリマーは、好適なモノマー、例えばアクリル、メタクリル、オレフィン、エポキシ、ビニル、又はケイ素含有モノマーの付加重合及び/又は縮合重合から誘導できる。
【0098】
CYSCポリマーの融解挙動
一般的に、CYSCポリマーの融解温度(Tp)は、Cy部分(複数可)の直鎖において互いに直接結合した炭素原子数に、主として依存する。その結晶化度がポリマー骨格の結晶化に依存するほとんどの他の結晶性ポリマーとは異なり、CYSCポリマーは、分子量の変化に伴う融解温度の変化を比較的少ししか示さない。他の条件が同じなら、Cy部分の直鎖の長さが長いほど、融解温度はより高い。例えば、n‐アルキル基が14、16、18、22、30、40、及び50個の炭素原子を含有するn‐アルキルアクリレートのホモポリマーは、それぞれ約20、36、49、60、71、76、96、及び102℃の融解温度を有する。対応するn‐アルキルメタクリレートのホモポリマーは、それぞれ約10、26、39、50、62、68、91、及び95℃の融解温度を有する。本発明に使用されるCYSCポリマーは、多くの場合、22から70℃、又は35から50℃、又は38から50℃、例えば37℃から42℃又は40℃から47℃の融解温度を有する。しかしながら、22℃より低い、例えば2℃と低い、又は70℃より高い融解温度を有するCYSCポリマーは、ある実施形態において有用であり得る。
【0099】
複数のY(Rc)部分からなるコポリマーの融解温度は、異なるY(Rc)部分の相対的な割合を反映する。Z(Rz)部分の存在は、一般的に、融解温度を下げ溶融範囲を広くする。
【0100】
長い直鎖状n‐アルキルアクリレート及びメタクリルレートのランダムコポリマーは、一般的に、n‐アルキル鎖ランダムコポリマーの長さに依存して、0から85℃の範囲の中間的な融解温度を有する。他のモノマー、例えばアクリル酸又はブチルアクリレートを有するランダムコポリマーは、典型的には幾らかより低融解温度を有する。より長鎖のモノマーは側鎖結晶性領域を崩壊させる能力がより大きいため、より長鎖のZ(Rz)コモノマーは、より短鎖のZ(Rz)コモノマーより、Tm低下に対してより大きな影響を与える。
【0101】
比較的少量のCy部分を含有するCYSCポリマーにおいては、結晶化度の程度は、ブロック又はグラフトにそれらの部分を組み込むことにより増強できる。
【0102】
ポリマーの融解熱は、その結晶化度の程度を反映する。原則として、他の条件が同じであれば、Z(Rz)部分の割合(もし存在すれば)が大きいほど、CYSCポリマーの融解熱はより低い。特定のY(Rc)及びZ(Rz)部分の特定の割合を含有するCYSCポリマーにおいては、少なくとも幾つかのY(Rc)部分が互いに隣接していれば、融解熱は一般的により大きいであろう。例えば、Y(Rc)及びZ(Rz)部分を含有するランダムコポリマーは、(i)実質的に全てのY(Rc)部分を含有する第1のブロック及び実質的に全てのZ(Rz)部分を含有する第2のブロックを含有するブロックコポリマー、又は(ii)グラフト鎖が全てY(Rc)部分から本質的になるグラフトコポリマーより低い結晶化度(したがってより低い融解熱)を有しよう。
【0103】
CYSCポリマーの融解の鋭さは、Tp‐Toの値を参照することにより定量化できる。例えば、CYSCポリマーは、Tp‐To<Tp0.7、例えば<Tp0.6、例えば15℃未満又は10℃未満又は5℃未満を示し得る。したがって、Tpが40℃の場合、Tp‐Toは、例えば13.2未満、例えば9.1未満であり得る。この狭い溶融範囲は、特に、Tpと実質的に無関係に分子量を制御する能力及びin vivo温度付近のTpを有するCYSCポリマーを選択する能力と組み合わせると、非常に有益であり得る。例えば、それにより、薬物を分解しない温度でCYSCポリマーを薬物と混合することが容易になり得る。
【0104】
その結晶化度が主要ポリマー骨格の結晶化に起因するポリマーと比較して、CYSCポリマーのTpは、ポリマーの分子量による影響を比較的少ししか受けない。したがって、ポリマーの反復単位を選択することにより、所望の温度(例えば2から105℃)において比較的狭い温度範囲で溶解し、所望の分子量を有するCYSCポリマーを作製することが可能である。加えて、下記で更に説明するように、CYSCポリマーは、所望の化学的及び物理的特性を有するように設計できる。その結果、CYSCポリマーは、薬物及び他の薬物の負荷及び送達に重要な有益性を提供する。これらの有益性には、例えば、所望の温度で、特に薬物に対していかなる悪影響も実質的に有しない温度で製剤を作製する能力と、粘性、接着性、疎水性、親水性、体積制御性、及び透過性、負荷、並びに放出の速度及び/又はパターンのような所望の特性を有する製剤を提供する能力とが含まれる。
【0105】
多くの場合、本発明に使用されるCYSCポリマーは、ポリマー骨格の結晶化に起因する結晶化度(「主鎖結晶化度」)を有しない。しかしながら、本発明の幾つかの実施形態では、CYSCポリマーは、主鎖結晶性ポリマーを改変して、Rc部分をポリマーの中間地点及び/又は末端地点に導入することにより得られたポリマーである。
【0106】
CYSCポリマーのタイプ
CYSCポリマーは、例えば、ランダムコポリマー、グラフトコポリマー、又はブロックコポリマー(熱可塑性エラストマーを含む)であってよく、又はコア‐シェルポリマーであってよい。非排他的な例は以下の通りである。
(a)ポリマーは、1つ又は複数のタイプの‐Y(Rc)‐部分及び1つ又は複数のタイプの‐Z(Rz)‐部分を含み、全ての部分は無作為に分布している。
(b)ポリマーは、(i)1つ又は複数の‐Z(Rz)‐部分から本質的になるポリマーブロックと、(ii)1つ又は複数のタイプの式‐Y(Rc)‐の反復単位、及び自由選択的に1つ又は複数のタイプの式‐Z(Rz)‐の反復単位とを含むブロックコポリマーである。
(c)ポリマーは、グラフトポリマー、例えば(i)1つ又は複数の‐Y(Rc)‐部分を含むか又はから本質的になる骨格と、各々が1つ又は複数の‐Z(Rz)‐部分を含むか又はから本質的なるグラフト側鎖とを含むポリマー、又は(ii)1つ又は複数の‐Z(Rz)‐部分を含むか又はから本質的になる骨格と、各々が1つ又は複数の‐Y(Rc)‐部分を含むか又はから本質的なるグラフト側鎖とを含むポリマーであり得る。
【0107】
本発明に使用できるCYSCポリマーには、n‐アルキルα‐オレフィンのアタクチック、シンジオタクチック、及びアイソタクチックなポリマー(例えば、それぞれ30°及び60℃のTpを有するC16オレフィンのアタクチック及びアイソタクチックなポリマー);n‐アルキルグリシジルエーテルのポリマー(例えば、C18アルキルグリシジルエーテルのポリマー);n‐アルキルビニルエーテルのポリマー(例えば、55℃のTpを有するC18アルキルビニルエーテルのポリマー);n‐アルキル‐α‐エポキシドのポリマー(例えば、60℃のTpを有するC18アルキルα‐エポキシドのポリマー);n‐アルキルオキシカルボニルアミド‐エチルメタクリレートのポリマー(例えば、それぞれ56℃、75℃、及び79℃のTpを有するC18IEMA、C22IEMA、及びC30IEMAのポリマー);n‐フルオロアルキルアクリレートのポリマー(例えば、それぞれ74℃及び88℃のTpを有するC8ヘキサデカフルオロアルキルアクリレートのポリマー及びC8〜12アルキルフルオロアクリレート混合物のポリマー)、n‐アルキルオキサゾリンのポリマー(例えば、155℃のTpを有するC16アルキルオキサゾリンのポリマー);ヒドロキシアルキルアクリレート又はメタクリレートをアルキルイソシアネートと反応させることにより得られるポリマー(例えば、ヒドロキシエチルアクリレートをC18又はC22アルキルイソシアネートと反応させることにより得られ、それぞれ78℃及び85℃のTpを有するポリマー);並びに、二官能性イソシアネート、ヒドロキシアルキルアクリレート、又はメタクリレートと第一級脂肪アルコールとを反応させることにより得られるポリマー(例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート、2‐ヒドロキシエチルアクリレートと、C18又はC22アルコールとを反応させることにより得られ、それぞれ103℃及び106℃のTpを有するポリマー)だけでなく、(メタ)アクリレートモノマーに変換でき、それぞれ約80、90、又は100℃で融解するホモポリマーに重合できる、Baker Petrolite社から販売されているUnilinアルコールのような、炭素原子が平均してC30又はC40又はC50である脂肪族アルコールの非常に長い鎖の混合物のコポリマーから形成されるアクリレート又はメタクリレートポリマーが含まれる。
【0108】
CYSCポリマーのCy部分は、Cy部分が、同一分子中の他のCy部分、又はCYSCポリマーの一部であってもよく若しくはなくてもよい異なる分子の他のCy部分と重なり合って、結晶性部位の分子間凝集体又は領域になることにより、結晶性の凝集体を形成する。重なり合いが大きいほど、結晶性凝集体はより強固である。
【0109】
CYSCポリマーの分子量
CYSCポリマーの分子量は、ポリマーと結合した薬物の組み込み及び/又は滞留及び/又は送達に影響を及ぼし得る。CYSCポリマーのMnは、例えば、500から1,000,000、例えば1,000から50,000、2000から40,000、2000から25,000、2000から30,000、又は3000から20,000ダルトンであり得る。幾つかの場合には、200,000未満の、又は100,000未満の、又は50,000未満の、又は30,000未満の、又は25,000未満の、又は20,000未満の、又は10,000未満の、又は5000未満の、又は2500未満の、又は1000ダルトン未満の、例えば1,000から20,000、全て1,000から10,000、又は2,000から20,000、又は3,000から5,000ダルトンの平均分子量(Mn)を有するCYSCポリマーを使用することが好ましい。他の場合では、1,000,000ダルトンを超える分子量を有するCYSCポリマーを使用することが適切な場合がある。幾つかの場合、例えばヒドロゲルでは、無限大の分子量が望ましい。CYSCポリマー部分の分子量は、例えば、実質的にTpを変化させずに、結合している官能性部分の反応性を最適化するように(例えば反応条件の選択及び連鎖移動剤の添加により)調節できる。更に、これらのポリマーの分子量を制御する能力は、製剤の混合及び加工を助けることができる。加えて、幾つかの場合では、無限大の分子量を本質的に有する架橋されたゲル及び架橋された中実性CYSCポリマーが望ましい。時には、その100%の形態において、適切な溶媒中で薬物と混合させて製剤をもたらし得る粉体であるゲルを有することが有益であり得る。経皮的な適用のような他の場合では、低分子量を有することが有益であり得る。
【0110】
幾つかの場合には、哺乳動物への薬物投与に使用されるCYSC物質は、患者の体内で非吸収性であるか、又は本質的に非吸収性であるべきであることが好ましい。これは、移植された適用物及び摂取製剤の両方にとってそうである。本発明により使用されるようなポリマーは、実質的に生理的に不活性である。例えば、高分子量、例えば10,000ダルトンを超えるMnのポリマー、荷電されているか若しくは架橋されているポリマー、又は生理的条件下で不溶性のポリマーは、細胞膜又は腸壁を横切るポリマーの輸送を排除又は著しく低減させる。したがって、幾つかの実施形態では、CYSCポリマー又はそれらの分解産物は、20,000未満の、又は15,000未満の、又はより好ましくは10,000ダルトン未満の分子量を有し、荷電していないか又は架橋されておらず、したがって体内から排出可能である。
【0111】
CYSCポリマーの溶解度パラメーター
ポリマー又はコポリマー内の種々のブロック若しくはグラフトの溶解度パラメーターは、ポリマーにおける特定の薬物の溶解度に影響を及ぼすことができ、それにより例えば、薬物貯蔵体としてのCYSCポリマーの能力及び有効性を向上できる。例えば、溶解度パラメーターの推定は、D.W.Van Krevelan氏による、題名が「Properties of Polymers」Elsevier社、2003年という本に見出すことができる。例えば、疎水性の結晶性側鎖ポリマーのLogP(LogP=有機相及び水相間の分配係数のLog)及び両親媒性の結晶性側鎖ポリマーのpKa(pKa=酸又は塩基の解離定数)は、溶媒和されたCYSCポリマー又は水和されたCYSCポリマーのTmに加えて重要である。分配係数P及びpKaは、特に生物学的な適用において、薬物の分布を推定するために使用できる。LogP及びpKaは、薬物製剤の物理的形態及び組成の最適化を助けることに加えて、CNS(中枢神経系)透過、経口吸収、腸吸収、結腸吸収、舌下吸収、及び経皮吸収に対する検討の助けとなる。LogP、pKa、及びTm特性を理解することは、薬物製剤用の薬物混合を助けるために、CYSCポリマーの疎水性及び親水性のグループ化の選択を助ける。また、CYSCポリマーを薬物と混合するために溶媒が使用される場合、これらの特性は適切な溶媒の選択を助ける。
【0112】
本発明の幾つかの実施形態は、以下の記述により要約される。
A.薬物及びCYSCホモポリマー又はコポリマーを含み、以下の特徴の1つ又は複数を有する医薬製剤:‐‐
(a)製剤は、少なくとも5重量%又は少なくとも10重量%、例えば5から30重量%の薬物を含有している;
(b)薬物は、静電結合、水素結合、共有結合、又はエントロピー力から選択される1つ又は複数の結合によりポリマーと結合している;
B.薬物が制御された様式で放出される、記述Aに記載の医薬製剤を使用する方法。
記述Bの方法は、自由選択的に以下の特徴の1つ又は複数を有する。
(a)薬物は長期間にわたって放出される;及び
(b)製剤に負荷された総薬物の80%以下、好ましくは50%以下、例えば30%以下が、対象への製剤の投与後6時間の期間にわたって製剤から放出される;
(c)製剤に負荷された総薬物の50%未満、又は10%未満が、対象への製剤の投与後1時間の期間にわたって、又は2時間の期間にわたって放出される;
(d)製剤に負荷された総薬物の少なくとも75%が、製剤の活性化の30分以内に放出される;
(e)薬物は、以下の条件変化の1つ又は複数により製剤から放出される
(i)製剤の加熱、
(ii)製剤の水和、
(iii)製剤の酵素への曝露、
(iv)製剤を取り囲む環境のpH変化。
【0113】
ある実施形態では、本発明の製剤は、ある種の特徴を明確に除外し、例えばある実施形態では、ポリマーは主鎖結晶化度を所有せず、又はポリマーはブロックコポリマーではなく及びグラフトコポリマーではなく、又はポリマーはヒドロゲルではなく、又はポリマーは加水分解的に安定しており、又はポリマーは無水物ではなく、又はポリマーは、Ra及びRbが任意の部分であってよい構造Ra‐CO‐O‐CO‐Rbを含有していない。
【0114】
直鎖脂肪族炭化水素の体内からの排泄
直鎖(脂肪族)炭化水素(医薬品等級の鉱油のような)は、腸に摂取された場合、糞便で体内から排泄される。石油炭化水素のように循環系に吸収又は導入される場合、本発明のポリマー性化合物は脂肪親和性である。したがって、それらは、脂肪組織(Rozman and Klaassen(1996)Absorption,distribution,and excretion of toxicants.In:Klaassen,C.D.,ed.Casarett & Doull’s Toxicology:The Basic Science of Poisons,Fifth Edition.New York,NY:Macmillan Publishing Company,pp91−112.)に、及びリンパ節(Kleinau S.,Dencker,L.and Klareskog,L.(1995)Oil−induced arthritis in da rats:Tissue distribution of arthritogenic 14C−labelled hexadecane Int.J.Immunopharmacol.17(5):393−397)に分布する傾向があるであろうし、血中及び尿中におけるそれらの脂溶性により最終的には排泄され得る。
【0115】
CYSCポリマーの調製
CYSCポリマーは、任意の方法、例えば、当業者に周知の技術、例えば従来の触媒を使用したエマルジョン、溶液、バルク、及び懸濁重合技術を使用して調製できる。所望の分子量を達成するためには、従来の添加剤及び触媒、例えばアゾ及び過酸化物触媒、チオール連鎖移動剤(例えば、アルキルメルカプタン、ヒドロキシエチルメルカプタン、ブチルメルカプトプロピオネート、及びメルカプト酢酸)、又はアリル連鎖移動剤若しくは調整剤(例えば、アルファ‐メチルスチレンを含む)を使用できる。重合のタイプは、多くの場合、投与されるCYSC製剤の形態により選択できる。例えば、ミセル又はエマルション形態が望ましい場合、エマルジョン重合が自由選択的には薬物の存在下で使用することができ、ヒドロゲル形態が好ましい場合、水性又はエマルジョン条件下での重合が使用でき、噴霧乾燥形態が好ましい場合、溶媒条件下での重合が使用できる。
【0116】
グラフトコポリマーを調製する方法には、Y(Rc)部分及び自由選択的にZ(Rz)部分を含む事前形成されたポリマーを準備することと、その後、事前形成されたポリマーの末端又は中間の反応性部位に好適なモノマー(Rc及び/又はRz部分を含有していてよい)をグラフトすることとが含まれる。ブロックコポリマーを調製する方法には、複数の事前形成されたポリマーを調整すること、ここで少なくとも1つの事前形成されたポリマーはY(Rc)部分及び自由選択的にZ(Rz)部分を含み、別の事前形成されたポリマーはZ(Rz)部分を含み、事前形成されたポリマー各々が、事前形成されたポリマーの末端に又は末端間に少なくとも1つの反応部位を有し、及び、その後事前形成されたポリマーを反応させて所望のCYSCポリマーを形成すること、が含まれる。
【0117】
例えば、CYSCポリマーは、ビニル型マクロモノマーを他のモノマーと共重合させ、又はCYSCポリマーを作製し、その後、官能化ポリマーを第2のブロック物質、例えばウレタンブロック、又はエポキシブロック、ポリエーテルブロック、ポリエステルブロック、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、若しくはポリテトラメチレンオキシドブロック、ポリシロキサンブロック、又はポリ(アルキル又はアルコキシ)シランブロックと反応させることにより調製できる。
【0118】
ある実施形態では、本発明の製剤に使用されるCYSCポリマーは、明確に架橋されていない。しかしながら、ヒドロゲル製剤のようなある実施形態では、CYSCポリマーは架橋されていてよい。
【0119】
架橋されたCYSCポリマーが望ましい場合、モノマー出発物質は、例えばヒドロゲル中の架橋密度を制御するために、架橋モノマーを含むことができる。架橋モノマー又は架橋反応物は、(a)ポリマーを所望の形状に調製し、次いでその後で治療用薬物を添加する場合、又は(b)ポリマーを別々に調製した後で、そのようなポリマーを治療用薬物と組み合わせ、その後最終的に架橋剤を添加して特定の形状に設定することを含む工程中の種々の時間に添加できる。
【0120】
ポリマーの混合物
単一のCYSCポリマー又はCYSCポリマーの混合物が使用できる。CYSCポリマー又はCYSCポリマー(複数)は、CYSCポリマーではない追加的ポリマーと混合することもできる。特定のCYSCポリマー又はCYSCポリマーの混合物、及び自由選択的に1つ又は複数の追加的ポリマーの選択基準は、本明細書中で更に考察されるように、薬物並びにその所望の負荷及び/又は送達に依存する。本発明の幾つかの実施形態では、実質的に異なる融解温度、例えば少なくとも2℃、又は少なくとも4℃、又は少なくとも6℃、又は少なくとも8℃、又は少なくとも10℃互いに異なる融解温度を有する複数のCYSCポリマーの混合物を含有する組成物が使用される。例えば、組成物は、37℃で融解する1つ又は複数のポリマー及び39℃で融解する他のポリマー及び41℃で融解する更なる他のポリマーを含有し得る。他の実施形態では、薬物‐ポリマー対のpKa又はpKbにより定義されるような一連のイオン強度を介して結合された薬物を有するポリマーの混合物が使用される。
【0121】
製剤
幾つかの製剤では、薬物の量は、組成物の総重量の少なくとも5%、少なくとも8%、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、又は少なくとも70%である。幾つかの製剤は、0.1%から5%の間の、例えば2%、3%、又は4%までの薬物を有し得る。
【0122】
本発明の多くの有用な特徴のうちの1つは、所望の負荷及び放出特徴を提供するように、特定の薬物を特定のCYSCポリマー又はCYSCポリマーの混合物と適合させる可能性である。多くの薬物の場合、疎水性側鎖及び自由選択的にRz部分により提供される親水性部分を含有し、したがって薬物と好ましく相互作用するCYSCポリマーを選択することは可能である。例えば、CYSCポリマーは、ファンデルワールス力、イオン結合、水素結合、リガンド結合、又は共有結合による薬物との結合部位を供給できる。共有結合は、例えば、アミノ若しくはカルボキシル結合、又は二価性有機若しくは無機部分、例えばエステル、カルボニル、アミド、炭化水素、アミノ、又はエーテル結合を介して形成できる。イオン結合は、例えば、イオン性塩結合(例えば、カルボキシアルキルアンモニウム、スルホニウム、又はホスホニウムイオン対)を介して形成できる。
【0123】
CYSCポリマーは、疎水性及び親水性部分の両方を有する両親媒性構造を含み得るため、エントロピーを考慮すると、親水性部分が、水性環境にある構造の外部に自身を配置し、疎水性の薬物分子が内部の疎水性環境内に保持される二次構造を生成する傾向があろう。薬物は疎水性であっても又は親水性であってもよく、ポリマーの疎水性又は親水性部分と結合できる。
【0124】
CYSCポリマーは疎水性側鎖部分を含み、その結果、疎水性薬物は疎水性部分と結合でき、したがって製剤を取り囲む水性環境から保護できる。疎水性の薬物には、例えば、アトルバスタチン、シンバスタチン、及びプラバスタチンのようなスタチン、セルトラリンのようなSSRI、ブデソニドのような抗炎症ステロイド、リスペリドン、及び多数の他の薬学的に重要な分子が含まれる。
【0125】
幾つかの実施形態では、CYSCポリマーは、イオン基を含む単位、例えばイオン性ビニルモノマーから誘導される単位を含む。イオン基は、ポリマー製剤の安定化に役立つか、又は体液中で製剤を解離させるのに役立つことがある。例えば、カルボキシレート官能基を含有するCYSCポリマーは、胃の酸性環境での薬物放出を低減又は排除できるが、小腸のアルカリ性環境で膨潤し、それにより腸上部に薬物を放出できる。他の実施形態では、例えば、同一CYSCポリマーの一部として共に組み込まれていてもよく、又は薬物と混合される別々のCYSCポリマーに存在してもよいペグ化されたモノマー、又はそれぞれ酸性若しくは他の非イオン性若しくはイオン性のモノマーが使用できる。薬物の投与経路は、多くの場合、CYSCポリマー中のイオン基又は水素結合基の数の望ましさを決定する際の要素であろう。例えば、小さなタンパク質又はポリペプチドは、安定した薬物製剤を作製するためにCYSCポリマーと混合し、その後経口投与できる。単独で経口投与されたタンパク質は、胃の強酸性環境に曝露されると破壊される場合がある。CYSCポリマーと混合すると、タンパク質は分解から保護されるであろう。或いは、トランスフェリンのような酸安定性の成分を添加できる。ある実施形態では、タンパク質は、有機酸のような吸収増強成分、例えばデオキシコール酸、ヒドロキシプロピル‐g‐シクロデキストリン、コール酸と複合体を形成できる。
【0126】
幾つかの実施形態では、Z(Rz)‐部分は、製剤の物理的な表面特性を増強することもできる。例えば、ポリオキシエチレン(メタ)アクリレート単位は、管類、カテーテル、プローブ、及び他の医療用デバイスに有益な潤滑性又は親水特性を提供できる。幾つかの実施形態では、Z(Rz)部分は、薬物の徐放又は送達にも役立ち得る。
【0127】
本発明の実施形態としては、哺乳動物又は細胞に対する薬物のより安定した送達又はゼロ次送達を提供するために、バースト(burst)を低減することが望ましい場合が多い。例えば、バーストの定義において記したが、投与に際して所望の治療的レベルを超えた製剤からの薬物の初期放出があり、それにより薬物が浪費及び多くの場合過剰服用され、そのため哺乳動物又は細胞に対する製剤中の薬物の理論的な長期的放出が低減されることが、薬物送達製剤において観察されることが多い。
【0128】
本発明者らは、本発明の多くの製剤がバースト効果の低減を示すことを見出した。更に、本発明者らは、投与前にCYSCポリマー薬物製剤を前処理することにより、薬物の「バースト」を更により低減できる。CYSC薬物製剤は、多くの場合CYSCポリマーが、低分子量であり、所望の薬物との混合を助けるRz官能性の選択により加工が容易に可能であるため、取り扱いが容易である。
【0129】
いったん薬物がCYSCポリマーと混合され、結晶性又は半結晶性物質として単離されると、CYSCポリマー及び薬物製剤は、ある期間周囲条件で、溶媒、緩衝液、又は他の水性若しくは水性及び有機溶媒溶液で処理できる。この処理の後、その結果生じるCYSCポリマー及び薬物製剤は、一般的に、遥かに低いバースト効果を示し、ある場合にはほとんどバースト効果を示さないであろう。この実施形態は、他の薬物送達ポリマーと比較して、本発明の好ましいCYSCポリマーの重要な利点である。
【0130】
幾つかの実施形態では、CYSCポリマー中のペグ化されたグループ化の存在は、ペグ化された薬物の血清半減期レベルを増加させることができ、ペグ化された薬物の免疫原性及び免疫認識を低減できる。ペグ化により提供され得る他の増強された特性には、生体接着特性及び抗血栓特性が含まれる。
【0131】
幾つかの実施形態では、Z(Rz)部分は、ポリマー製剤をより生体接着性にするのに役立ち得る。例えば、カルボン酸又はヒドロキシル部分は、ヘパリン及びヘパリン硫酸ができるように、粘膜表面又は腸表面への生体接着性を向上できる。ヒドロキシル又はアルコキシポリオキシエチレン部分は、薬物の生体接着性及び適合性に役立ち得る。
【0132】
本発明の幾つかの実施形態では、CYSCポリマーは、水素結合又はイオン結合又は共有結合のいずれかにより薬物と結合する部分を含有する。これらの部分は、CYSCポリマーがそれから誘導される低い割合のモノマー、例えば、1から50重量%(例えば1、3、5、7、10、15、20、25、30、35、若しくは40%未満、又は1〜5%から、1〜10%から、若しくは1〜20%から)、或いは高い割合、例えば50から95%若しくは75から95重量%、又はその間の任意の重量のCYSCポリマー(例えば、30、40、50、60、70、80、85、90、若しくは95%又は20〜40%から、30〜50%から、若しくは50〜80%から)を構成するコモノマーから誘導できる。
【0133】
水素結合又はイオン結合を提供するコモノマーの選択及び量は、好ましくは以下に基く:
a)コモノマー又はコモノマー(複数)における活性又は極性グループ化、及び薬物分子における相補的な活性又は極性グループ化の量(疎水性/親水性の特性)
b)薬物の親水性又は疎水性の特性
c)ポリマー製剤に混合される薬物の量(負荷)
d)ポリマー薬物貯蔵体で通常観察される「バースト効果」の制御及び低減
e)イオン的な、水素結合、リガンド結合を介する、又はファンデルワールス力を介する、結晶性側鎖ポリマーと薬物との相互作用により影響を受ける、持続性薬物送達の所望の制御(制御送達、持続性送達)
f)製剤から作製された剤形の投与方法(形態)
g)pH活性化された際の薬物の迅速な放出
【0134】
幾つかの実施形態では、Z(Rz)部分の存在は、CYSCポリマー及び薬物間の著しい数の化学量論のイオン性相互作用に帰着し、したがって高負荷の薬物を有する組成物を調製することが可能になる。
【0135】
幾つかの実施形態では、CYSCポリマーは、薬物と共有結合を形成できるZ(Rz)部分を含む。そのような実施形態では、CYSCポリマー及び薬物間の共有結合の程度は、製剤放出特徴を決定する際の重要な要素になろう。
【0136】
例えば、幾つかの経口投与される薬物では、薬物が胃の中で分解されるため、酸感受性の薬物を投与するのは難しい。同様に、酸感受性の薬物を直接胃内壁に投与するのは難しい。共有結合で強く結合した薬物‐ポリマー製剤を使用することにより、保護的な疎水性側鎖基が、共有結合を介してCYSCポリマーに強固に結合された薬物を取り囲んで保護し、薬物は胃の強酸環境に耐えることができる。いったん腸がアルカリ性環境になると、ポリマー製剤における酸性基の存在が、ポリマー製剤の膨潤を引き起こし、共有結合のエステル化又は他の溶解を可能にし、それにより薬物は小腸で放出されるであろう。1つのそのような実施形態では、共重合可能なモノマーは、薬物と共有結合で結合するために使用され、ポリマー製剤から薬物を最終的に放出することに役立つ。薬物をポリマーに結合させるためには、種々の共有結合が使用でき、その幾つかは酸不安定性であり、幾つかは塩基不安定性であり、幾つかは酵素切断に感受性がある。
【0137】
薬物をCYSCポリマーに共有結合で結合させるためには、任意の方法が使用できる。1つの例では、CYSCポリマーは、薬物と反応する反応性基を含有する。別の例では、薬物は、CYSC物質の調製にコモノマーとして使用できるように改変されている。例えば、薬物は、ビニル含有モノマー、例えば(A)(i)エステルをもたらすために薬物のヒドロキシル基と、若しくは(ii)アミドをもたらすために薬物のアミン基と反応させる酸性基を含有するビニルモノマー;又は(B)エステルアルコール結合をもたらすために酸含有薬物と反応させるグリシジル基を含有するビニルモノマー;又は(C)それぞれアミド‐酸若しくはエステル‐酸の共有結合をもたらすためにアミン若しくはヒドロキシル部分を含有する薬物と反応させる無水物基を含有するビニルモノマーと反応させることができる。改変された薬物は、少なくとも1つがCy部分を有する1つ又は複数の他のモノマーと、又はCy部分を含有するオリゴマー若しくはマクロマーと共重合され、CYSC製剤をもたらす。
【0138】
胃送達の場合のようなある実施形態では、製剤は、共有結合で結合された薬物が、低pHの条件下で又は胃酵素によりCYSCポリマーから放出されるようなものである。典型的な有効成分は、胃放出が腸放出より好ましいそれらの医薬作用剤、又は活性作用剤の放出速度の制御が全身性作用のために望ましいそれらの医薬作用剤である。例えば、胃への送達が好ましい薬物には、天然又は合成のプロスタグランジン及びプロスタグランジン類似体並びにプロスタサイクリン(例えば、ミソプロストール、エンイソプロスト(enisoprost)、エンプロスチル、イロプロスト、及びアルバノプロスチル)、消化性潰瘍治療用の任意の薬物、胃液分泌抑制薬、抗菌薬、消化管運動賦活調整薬、並びに細胞保護薬等が含まれる。典型的な抗菌薬には、ヘリコバクターピロリのような胃微生物の根絶に使用できるテトラサイクリン、メトロニダゾール、及びエリスロマイシンが含まれる。
【0139】
本発明の幾つかの実施形態では、薬物は、薬物の所望の生理作用、各薬物に関連する全身性副作用、特定の環境中での薬物の分解速度、及び医薬技術分野において周知の他の要因に依存して、酸性環境で放出するためのCYSCポリマーに結合される。そのような共有結合はpH感受性であってよく、約7までのpH値で切断が可能であるが、それより低いpHでは安定的であってよい。
【0140】
酸性条件の下で切断できる共有結合には、以下のタイプの結合:シリルエーテル及びエステル、アセタール、チオアセタール、イミン、アミン、カルボネート、並びにビニルエーテルが含まれる。そのような結合は、ポリマーのシリル官能基(又はリンカー基)と薬物の任意のヒドロキシル官能基との間で形成し得るため、ある実施形態では、シリルエーテル共有結合が好ましい。薬物は、共有結合でポリマー骨格に、又はポリマー骨格上の懸垂官能基に結合でき、例えば、約7より低いpHにおける共有結合の加水分解によりポリマーから放出できる。薬物は、例えば、約7より低いpH値では切断できるが、より高いpH値では切断できないpH感受性共有結合により、ポリマーに組み込むことができる。約7、8、9、又は10を超えるような、そのようなより高いpH値における薬物の放出は阻害される。
【0141】
幾つかの実施形態では、CYSCポリマーは、所望のpH値、例えば約1〜7のpH値で膨潤し、有効量の薬物放出を増強する。例えば、薬物は、ポリマーが酸環境に曝露されて膨潤すると、胃環境中への薬物放出が促進されるようなpH感受性のリンカーを介して、上述されたポリマーに共有結合で結合できる。関連する実施形態では、製剤は、約7までのpH値で薬物を放出し、7より高いpH値で有効成分の放出を抑制するために薬物放出を抑制する。
【0142】
或いは、幾つかの実施形態では、ポリマーは、薬物が低pHではポリマーに結合したままであり、高pHで放出を誘発させるように設計できる。
【0143】
改変された薬物がCYSCポリマーに組み込まれている製剤の調製の1つの例では、イブプロフェン(p‐i‐ブチルフェニルプロピオン酸)が、グリシジルメタクリレートとの反応により改変され、改変された薬物は、直鎖アルキルアクリレート(ステアリルアクリレート)及び追加的な共重合可能なモノマー、アクリル酸と共重合され、薬物製剤を含有するイブプロフェンCYSC酸をもたらす。結晶性固体として投与されるこの薬物製剤は、胃を迂回し、いったん腸上部で水和、膨潤、及び加水分解すると、この薬物を結腸に送達するためにイブプロフェンを放出するであろう。又は、イブプロフェンは、ステアリルアクリレート及びヒドロキシエチル(メタ)アクリレートの事前形成された結晶性コポリマーでエステル化できる。CYSC製剤を含有する類似のイブプロフェン酸は、イブプロフェンの結腸送達に利用可能であろう。
【0144】
別の例では、アクリロイルクロリドを薬物のヒドロキシル基又はアミン基と反応させて、薬物に共有結合で結合したビニル含有結合を提供する。その後、この薬物‐ビニルモノマーは、側鎖結晶性モノマーと反応させることができる。
【0145】
別の例では、ビニル無水物、例えばメタクリル酸無水物をヒドロキシル含有薬物と反応させて、ビニル無水物及び薬物間の共有結合性エステル結合を形成する。いったん改変された薬物が形成されると、側鎖結晶性モノマーは反応混合物に導入され、改変された薬物、側鎖結晶性モノマー、及び副産物メタクリル酸(ヒドロキシル含有薬物とビニル無水物との反応から形成される)間でコポリマーが形成される。この場合のメタクリル酸の反応副産物は、上記の例におけるアクリロイルクロリドの反応で得られる塩酸副産物より取り扱いが容易である。メタクリル酸副産物は、治療的薬物分子を含有するビニル基を有するコモノマーになる。このタイプの製剤は、単独で投与された場合に胃に損傷を与えるであろう経口投与用薬物に有用であろう。この製剤では、過剰量の共重合メタクリル酸の存在は、いったん製剤が胃を通って小腸に通過すれば、共有結合で結合された薬物の加水分解及び小腸での吸収のために、分子を水和するのに役立つであろう。例えば、PLGAポリマーは、PLGAのOH末端基とイブプロフェンのカルボン酸基との反応を介して、イブプロフェン(p‐i‐ブチルフェニルプロピオン酸)のような薬物で官能化できる。その後、この物質はコハク酸無水物でサクシニル化でき、残りのカルボン酸基は、ポリオール、例えばグリセリンでエステル化でき、その後ステアリン酸又はステアロイルクロリドでエンドキャップでき、薬物、この例ではイブプロフェンに共有結合で結合した生体内分解性CYSCポリマーを作製できる。又は、PLGAは、末端ヒドロキシル基でエステル化して、ポリオール、例えばグリセリンと反応できるPLGAステアレートを生成でき、その後、イブプロフェンでエステル化され、薬物、この場合もまたイブプロフェンに共有結合で結合した生体内分解性CYSCポリマーの別の形態をもたらすことができる。これらは、どのようにして生体内分解性CYSCポリマーを薬物に共有結合で結合させて、生体内分解性CYSCポリマープロドラッグを生成できるかを示す例である。共有結合で薬物に結合した類似のCYSC生体内分解性ポリマーを作製するためには、多くの可能性が存在する。
【0146】
幾つかの実施形態では、共有結合で結合された薬物は、酵素的に、例えばアクリレートエステル結合を全て加水分解するであろうエステラーゼ酵素によるエステル加水分解により、ポリマー担体から放出される。
【0147】
幾つかの実施形態では、CYSCポリマーは、生体系への、例えば膜を介する、又は細胞への、又は粘膜層を介する製剤の輸送に役立つ官能基、又は薬物を送達するための製剤の付着に役立つ官能基を含む。例えば、製剤は、生物学的利用能を増強し免疫原性を低減する粘膜付着剤部位、皮膚付着剤、又は大分子を含むことができ、例えばポリオキシアルキレンビニルモノマーは、PEG又はペグ化された基に結合できる。CYSCポリマーにおけるこれらのペグ化されたグループは、典型的には、コモノマー、[Z(Rz)]として導入されよう。
【0148】
幾つかの実施形態では、製剤は、標的組織上の標的受容体を標的とした製剤の付着を提供するためのリガンドを含む。リガンド分子は、薬物‐ポリマー製剤の形成中に又は形成後に製剤に添加できる。例えば、共重合可能なモノマーを含有する錯化分子、ケトエステル、又はジアミンは、重合によりCYSCポリマーに組み込むことができる。この錯化基は、製剤が調製される際にリガンドと相互作用できる。したがって、薬物‐ポリマー製剤は製造後に、例えば生検及び組織分析の後で所望の標的組織を標的にできる。
【0149】
胃送達についての幾つかの実施形態では、CYSCポリマーは、胃の過酷な酸性環境に感受性のある薬物を立体的に保護するのに役立つ、多数の相互作用するイオン結合基及び水素結合基を提供する。混合及び冷却後、結晶性側鎖は、タンパク質又はペプチドを疎水性側鎖に閉じ込め、それにより酸感受性の薬物に立体的保護を提供するだろう。いったん胃を通過すると、pHがより高い腸上部により、CYSCポリマーのイオン基が水和され、感受性のある薬物の腸管への放出が可能になるだろう。ポリマーは、膨潤、加水分解を含む種々の手段により、外部からの熱誘導による溶解により、又はこれらの手段の任意の組み合わせにより、薬物を放出又は露出できる。
【0150】
例えば、直鎖アルキルアクリレートモノマー及び酸含有モノマーから誘導されたCYSCポリマーは、アミン含有薬物、例えばセルトラリンと混合でき、冷却されて製剤を提供できる。冷却されると、ポリマー薬物イオン構造が結晶化する。いったん摂取されると、結晶性領域が、薬物を体液の成分との反応から保護する。この薬物は、その結晶形態では酸性の胃環境から保護されており、吸収に利用可能ではないだろうが、腸上部では、CYSCポリマーはCYSCポリマーにおける過剰量の酸性基で水和し、それにより腸上部での吸収にためにセルトラリンを放出するだろう。
【0151】
幾つかの実施形態では、CYSCポリマーは、ヒドロゲルの形態である。(他の実施形態では、本発明はヒドロゲルを明確に除外することに留意すべきである)。固体粉末ヒドロゲルは、固体粉末薬物と容易に混合でき、その後適用するために水和できるため、ヒドロゲルは幾つかの場合では好ましい。ヒドロゲルは、疎水性であってよく、又は両親媒性(つまり、疎水性且つ親水性)であってよく、ヒドロゲルは、イオン性であってよく又は非イオン性であってよい。例えば、N‐イソ‐プロピルアクリルアミドコモノマーから誘導される単位を含有するCYSCポリマーは、単独で、又はアクリル酸及び/若しくはメタクリル酸から誘導される単位と組み合わせてのいずれかで、疎水性(側鎖結晶性モノマーからの)及び親水性(N‐イソ‐プロピルアクリルアミド及びアクリル酸モノマーからの)の両方であり、疎水性薬物又は親水性薬物のいずれかと結合できる(疎水性部分及び親水性部分のパーセンテージに依存して)ヒドロゲルを形成できる。
【0152】
水を吸収すると、非イオン性ヒドロゲルは膨潤する。イオン性ヒドロゲルは、陰イオン性であっても又は陽イオン性であってもよく、pHの変化により異なる程度に膨潤させることができる。アルカリ性pHは、陰イオン性ゲルの膨潤を引き起こす(イオン基が高pHでイオン化されるため)一方で、低pHは、陽イオン性ゲルの膨潤を引き起こす。
【0153】
薬物が親水性の場合、薬物は、両親媒性CYSCポリマーヒドロゲルの親水性部分に吸収される。ヒドロゲルは、薬物と混合する際に、高pH若しくは低pHで、及び/又はCYSCポリマーの融解温度を超えた温度で膨潤するように設計できる。冷却後、薬物は、CYSCポリマーヒドロゲルに捕捉される。製剤は、送達後に加熱されると薬物を放出する。疎水性側鎖部分の温度スイッチ、側鎖の疎水性の特性、及びヒドロゲルの特性は、薬物送達に影響を及ぼす要因である。
【0154】
幾つかの実施形態では、CYSCポリマーは、少量の橋架剤、例えばエチレングリコールジメタクリレートと一緒に、SCCモノマー及び中性の親水性コモノマー、例えばヒドロキシエチルメタクリレートを含むモノマー成分の重合により調製された非イオン性ヒドロゲルの形態である。加えて、ポリオキシエチレングリコールメタクリレートモノマーが含まれていてもよく、したがって製剤にゲル構造を付加し、抗血栓特性を提供できる。このポリマーは両親媒性ポリマーでもある。そのようなものとして、それは、親水性若しくは疎水性のいずれか又は両方の薬物と適合性であり得る。側鎖結晶性モノマー及びヒドロゲル構造の量及びタイプは、特に温度を変化させるための外部刺激が提供される場合に、製剤中の薬物がどのように放出されるか、例えばどれくらい速く、どこで、及び何時を制御する要因であり得る。
【0155】
幾つかの実施形態では、製剤は、少量のメチレンビスアクリルアミドと一緒に、SCCモノマー、アクリルアミド、及びt‐ブチルアクリルアミドを重合させることにより調製された中性ヒドロゲルを含む。そのようなヒドロゲルは、親水性又は疎水性の薬物と結合できる。
【0156】
幾つかの実施形態では、製剤は、SCCモノマー、アクリル酸、及びアクリル酸又はメタクリル酸のブロックポリオキシエチレン/ポリオキシエチレン/ポリオキシプロピレンエステルの重合により調製されたヒドロゲルを含む。その結果生じる両親媒性CYSCポリマーは、オキシアルキレンエステルのブロック構造に依存し、異なる量の親水性若しくは疎水性薬物又は少量の両薬物を吸収しよう。SCCモノマーに由来するオキシアルキレンエステル及び疎水性物質の疎水性物質/親水性物質のバランスに依存して、これらの薬物は徐々に放出されることができる。
【0157】
ヒドロゲルを使用する実施形態では、SCCモノマーから誘導された単位は、本発明の製剤への取り込みと、本発明の製剤からのその後の薬物送達とを調節するための強力な手段を提供する。加えて、ゲル又はヒドロゲル構造は、所望の位置への薬物放出を調節するのに役立ち得る。例えば、アクリル酸から誘導された単位を含有するpH感受性のヒドロゲルは、タンパク質の負荷を容易にしよう。タンパク質及び酸性ヒドロゲルの製剤は、胃においてはタンパク質を保護するが、小腸においては膨潤して低pH感受性のタンパク質を放出し、アルカリ性環境は、例えば共重合アクリル酸から誘導された単位との相互作用により、ヒドロゲルの水和及び膨潤を引き起こす。ヒドロゲルは膜のように機能するため、ヒドロゲルの膨潤は薬物放出を調節でき、それにより通常の「バースト効果」を克服し、タンパク質を徐々にではあるが計画的に放出することが可能になる。
【0158】
幾つかの実施形態では、製剤は、対応する非架橋CYSCポリマーの融解又は膨潤を引き起こすであろう条件、例えばそのTpを超えた条件下でさえ、少なくとも部分的にその形状を保持するため、対応する非架橋ポリマーより長期間薬物を保持する傾向があるだろう架橋CYSCポリマーを含有する。他の実施形態では、融解温度を超えた温度で流れ得ないように、支持体に架橋又は固定化されているCYSCポリマーが明確に除外される。
【0159】
製剤が経口投与される場合、CYSCポリマーの分子量は、好ましくは、腸壁を横切る吸収を制限又は回避するのに十分なほど大きい。例えば、高分子量、例えば1,000〜160,000Mnのポリマー、及び/又は荷電されているか若しくは架橋されているポリマー、及び/又は生理的条件下で不溶性のポリマーは、腸壁を横切るポリマーの輸送を排除又は著しく低減させる。CYSCポリマー担体は、薬物を放出した後、胃腸管を通過して排泄されよう。
【0160】
CYSCポリマーは、実質的に生理的に不活性であることが一般的に好ましい。
【0161】
幾つかの実施形態では、製剤は、生体内分解性ポリマー、例えばPLA又はPLGAを含むか又はそれに固定されている。例えば、移植された適用物には、CYSC製剤が生体内分解性ポリマーに結合されているか又はその内部に含有されている機械的に中実性の移植片が使用できる。
【0162】
幾つかの実施形態では、製剤は静脈内に送達される。そのような実施形態では、CYSCポリマーを生体内分解性ポリマー、例えば天然分子の部分と混合することが望ましい場合がある。1つのそのような実施形態では、ポリ乳酸及び/又はポリグリコール酸は、薬物と結合させる前に、共有結合反応によりCYSCポリマーにグラフトできる。別のそのような実施形態では、直鎖結晶性部分を提供するであろう、例えば所望の分子量の高度に結晶性の生体内分解性ポリマー、例えばポリカプロラクトンポリマーは、薬物と結合させる前に、CYSCポリマーと物理的に混合される。
【0163】
幾つかの実施形態では、CYSCポリマーは、架橋多官能性モノマーのモノマー混合物への封入によりもたらされるゲル構造を有する。そのようなモノマーは、他のタイプの重合では取り扱いが難しい粘性に帰着するため、最適にはエマルション重合で使用される。典型的な架橋モノマーは、エチレングリコールジメタクリレート、ブチレングリコールジメタクリレート、及びトリメチロールプロパントリアクリレートヘキサンジオールジアクリレート等である。これらの架橋モノマーは、一般的にほんの少量で、0.1%から5%又は0.2から2%のような、例えば0.5%未満又は1%未満で使用される。
【0164】
本発明の製剤は、薬物送達媒体としての製剤の価値に実質的な悪影響を有しない任意の他の物質を含有、又はそうした物質で被覆、又はそうした物質上に被覆できる。そのような物質は、多数当業者に周知である。幾つかの実施形態では、製剤は、結合剤(例えばメチルセルロース);充填剤(例えばコーンスターチ、スクロース);滑沢剤(例えばステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム、コロイド状シリカ);及び崩壊剤(例えばデンプングリコール酸ナトリウム(sodium starch glycolate)、アルギン酸)のような賦形剤を含む錠剤、丸剤、又はカプセル剤を例えば製造するために、医薬品産業で一般的に使用される添加剤を含む。粒子又は錠剤の形態をしている製剤は、その上に被覆、例えばヒドロキシプロピルメチルセルロース並びにアクリル酸ポリマー及びコポリマーのような物質の被覆を有することができる。ある実施形態では、除草剤及び殺虫剤として有用な成分を含有する製剤が明確に除外される。
【0165】
本発明の幾つかの実施形態では、CYSCポリマーは、エマルジョンの形態である。エマルジョン中の粒子の平均径(及び好ましくは実質的に全ての粒子の最大サイズ)は、好ましくは1200nm未満、例えば800nm未満又は500nm未満、例えば200nm未満又は100nm未満(0.1μ)である。多くの実施形態では、エマルジョン粒子の径は、50〜200nm、又は50〜500nm、又は100〜1000nmである。そのようなエマルジョンは、米国特許第6,199,318号明細書及び第6,540、984号明細書に記載されている技術を使用して調製でき、それらの開示全体はあらゆる目的のために参照により本明細書中に組み込まれる。エマルジョンは、例えば、一般的には静脈内に、しかし幾つかの実施形態では筋肉内に又は他の組織に注射される組成物に有用である。一般的には、注射可能なエマルジョン粒子は、800nm未満の直径を有する。
【0166】
エマルジョンポリマーは、薬物と混合する前に、及び他の場合では薬物の存在下で作製できる。幾つかの場合、CYSCポリマー内に固定化された薬物を含有する粒子のエマルジョンは、(a)多様な界面活性剤及び乳化剤を使用して、ポリマー及び薬物の混合物を水中で乳化させることと、(b)多様な界面活性剤及び乳化剤を使用して、ポリマー‐薬物抱合体(ポリマー‐薬物抱合体とは、薬物が、共有結合、イオン結合、又は水素結合を介してポリマーに化学的に結合されていることと定義される)を水中で乳化させることと、(c)事前に形成されたポリマーを事前に乳化させ、その後、薬物が疎水性粒子に進入し易くなるような好ましい分配係数を有し、共役結合、イオン性、又は水素を介して結合されていないか又は結合されているかのいずれかである治療薬を添加することと、(d)エマルジョン重合により安定した水性ポリマーを調製し、その後(c)のように薬物を添加することとを含む、多数の経路により形成できる。
【0167】
幾つかの実施形態では、製剤は、CYSCポリマーだけでなく、主鎖結晶性ポリマーであってよい別のタイプのポリマーも含む。例えば、CYSCポリマーは、非結晶性若しくは主鎖結晶性ラクチド又はグリコリド及びラクチド結晶性主鎖PLGAポリマーの混合物と、又はポリ(イプシロン‐カプロラクトン(PCL)、ポリ(ジオキサノン‐ポリエーテルエステル)、ポリヒドロキシブチレート(PHB)、ポリヒドロキシバレレート(PHV)、及びポリヒドロキシアルカノエート(PHA)、並びに3‐HP‐3‐ヒドロキシプロピオン酸からのポリエステルと混合できる。
【0168】
また、製剤の希釈剤として、糖、加水分解されたデンプン、ヒアルロナン(ヒアルロン酸又はヒアルロナートとも呼ばれる)、キタン(chitan)、又はキトサンのような、天然ポリマー又はそれらの加水分解産物若しくは分解産物が使用できる。
【0169】
薬物‐ポリマー製剤の作製
ある実施形態では、製剤は、CYSCポリマーを融解し、薬物を溶融ポリマーと混合し、混合物をその融点下に冷却して製剤の結晶化及び凝固を引き起こすことにより調製される。幾つかの実施形態では、薬物及びポリマーの混合を助けるために溶媒を使用できるが、他の実施形態では、使用されるCYSCポリマーの融点が低いため、溶媒は必要とされない。凝固前に、担体、充填剤、賦形剤、染料、着色料、着香料、崩壊剤、安定化剤、及び他の物質を、混合物に添加できる。製剤は、ポリマーがまだ融解しているか、又は目的物が例えば棒状、楕円形、他の形態、及び錠剤等に凝固したかのいずれかの間に、公知の手順を使用して加工することもできる。CYSCポリマーは、薬物を損傷するだろう温度又はpHに薬物が曝露するであろう危険性がほとんどない又は全くないようなTp及び溶融範囲を有するように選択できる。
【0170】
幾つかのCYCSポリマーは、容易に混合を可能にするのに必要な粘性を達成するために溶媒を使用する必要がないように、十分に定義された低融解温度を有する。したがって、本発明は、そのような曝露により損傷を受け得る、例えば変性され得る又は部分的に若しくは完全に不活性化され得る他の薬物、例えば、CYSCポリマーのTpより15℃を超えた又は30℃を超えた、例えば50℃を超えた又は65℃を超えた温度より高い温度に曝露されることにより損傷を受ける薬物及び他の薬物の製剤に特に有用である。本製剤に使用されるポリマー(又はポリマー混合物)の融解温度は、例えば、約(或いは以下)30℃、約35℃、約37℃、約40℃、約42℃、約45℃、約50℃、約55℃、約60℃、約65℃、約70℃、約75℃、約80℃、又は他の所望の温度であり得る。ポリマーは、例えば、35℃から65℃まで、40℃から65℃、45℃から60℃、40℃から60℃、50℃から65℃の融解温度範囲、又は上記の温度の任意の2つの温度間若しくは2つの温度以内の他の範囲を有することができる。一般的に、ポリマー‐薬物組成物は、対象の体温(例えば37℃)の融解温度を超えた融解温度を有するであろうことが望ましい。しかしながら、幾つかの実施形態では、ポリマー‐薬物組成物は、剤形がいったん移植されると非固体の稠度を維持するように、37℃を超えた融解温度を有することが望ましい。
【0171】
ある代替的な実施例では、薬物及び融解ポリマーの混合物は、冷水中に急速に分散されるか又はチャンバー内に噴霧乾燥され、それによりポリマー製剤は、単離可能な形態にそれぞれ沈殿するか又は乾燥する。ミクロスフェア及びマイクロカプセルは、このようにして形成できる。しかしながら、幾つかの好ましい実施形態では、本発明の薬物製剤は、ミクロスフェア及びマイクロカプセルを特に除外する。
【0172】
薬物送達における使用が既に公知であるポリマーの多くは、薬物及びポリマーの混合物を生成するために、溶媒及び/又は高温の使用を必要とする。他の幾つかの公知の薬物送達系は、薬物とヒドロゲルとの混合物を生成するために、イオン条件の使用を必要とするヒドロゲル系を使用する。そのような温度及び/又は溶媒条件及び/又はイオン条件は、薬物を完全に又は部分的に不活性化するか又は変性させる場合がある。本発明においては、低融解温度を有するCYSCポリマーを選択することにより、CYSCポリマーは、それが望ましい場合、「未希釈で」又は100%の純粋な形態で、薬物と容易に混合でき、溶媒を使用する必要がなく、又は感受性のある薬物を損傷する又は不活性化する可能性のある過度の熱又は通常ではないイオン基を加える必要がない。
【0173】
薬物負荷&放出
好ましい実施形態では、本発明は、高薬物負荷、低バースト効果、及び特定の薬物に所望の特徴を提供するために調整されたCYSCポリマー製剤からの薬物の徐放、のうちの1つ又は複数を提供する。
【0174】
総薬物負荷とは、製剤の中に存在する薬物の量(通常は重量パーセントとして表される)である。薬物は、化学的に及び/又は物理的にCYSCポリマーと結合させることができ、例えば製剤に物理的に封入できる。ポリマーと薬物との結合は、共有結合及び/又はイオン結合及び/又は水素結合及び/又はファンデルワールス力及び/又は疎水的相互作用を介してであってよい。
【0175】
従来の薬物製剤は、一般的に、5%重量未満の薬物を含有する。非晶性であるPLGA(共ポリ乳酸‐共ポリグリコール酸)及び単純なアクリルコポリマーのような、徐放性製剤に使用される従来のポリマーは、約1%から5%の間の比較的低い薬物負荷を有する。対照的に、本発明の好ましい実施形態は、製剤に高薬物負荷を提供する。幾つかの実施形態では、本発明の製剤は、少なくとも1重量%の薬物を含有する。例えば、製剤は、少なくとも1%、少なくとも2%、少なくとも5%、少なくとも7%、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも17%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも60%、又は少なくとも70%、例えば1〜20%、5〜30%、10〜30%、10〜50%、20〜30%、又は20〜50重量%の薬物を含有できる。好ましい実施形態では、製剤は、少なくとも10重量%の薬物を含有し、一般的には10%から30重量%の間の薬物を含有する。他の実施形態では、製剤は、1%未満の薬物を含有できる。高薬物負荷は、徐放性製剤に特に有用である。幾つかの実施形態では、本発明は、高薬物負荷をバースト効果の低減と組み合わせる。
【0176】
特定の薬物のために薬物負荷及び放出特性を調整することは、例えば、(a)薬物分子をCYSCポリマーにイオン的に又は共有結合で結合させること、及び/又は(b)結晶性の疎水性領域に薬物分子を捕捉すること、及び/又は(c)親水性領域の薬物分子が外部に到達するために進んでいかなければならない、結晶性領域の周りの蛇行性経路を提示すること、及び/又は(d)結晶性領域が優先的に製剤の外部にあることを確実にすることに関する所望の特徴の組み合わせを有するポリマーを選択すること、により達成できる。結晶性領域を優先的に外部に配置する方法には、例えば、回転盤を使用して空気中で粒子を形成し疎水性側鎖が低エネルギー界面に到ることを可能にすること、又は疎水性側鎖を低エネルギー界面にこれもまた引き付けるであろう疎水性溶媒中で粒子を形成すること、又は実際に事前形成された粒子を被覆することが含まれる。
【0177】
CYSCポリマー製剤の薬物負荷及び放出特性は、ポリマー中の薬物の溶解度を変化させ、薬物がCYSCポリマーと相互作用するための結合部位を提供することにより制御できる。例えば、薬物がタンパク質又はポリペプチドである場合、CYSCポリマーのイオン基は、好ましくは、タンパク質又はポリペプチドの側鎖のカルボキシル基又はアミド基とイオン的に又は水素結合を介して自然に結合するそれらの陽イオン基又は陰イオン基から選択される。そのようなイオン基は、CYSCポリマーの好適な陽イオン性又は陰イオン性コモノマー形成部分から誘導でき、又はその後、例えば結晶性側鎖ポリマーに共重合された第三級アミンコモノマーの四級化により、事前形成されたポリマー上に調製できる。結晶性側鎖コポリマー上の第三級アミン官能基の四級化は、メチル若しくは他の幾つかのアルキルクロリドで、又はジメチル若しくは他のジアルキルスルフェート処理でt‐アミンを処理し、第四級アンモニウム塩を形成することにより行うことができる。
【0178】
より疎水性の高い薬物は、水素結合可能な基又はイオン基を含有するモノマーをより低い濃度で有してよい。しかし、イオン基を含有又は水素結合能力を含有し、より疎水性の高い薬物分子が、治療的分子と強力なイオン結合又は水素結合を形成することを可能にする疎水性モノマーは多数存在する。
【0179】
徐放性製剤の場合には、数日、数週、又は数か月もの治療的用量が必要であり得る。本発明の製剤(被覆ステント又は中実性移植片又はポリマー薬物デポー剤のような移植薬物製剤又はデバイス等)は、少なくとも5時間、少なくとも12時間、少なくとも24時間、少なくとも36時間、少なくとも72時間、又は少なくとも100時間の治療的に有効な薬物送達を提供できる。ある実施形態では、本発明の製剤は、少なくとも1週間又は少なくとも2週間、3週間又は少なくとも1か月間又は3か月分の治療的に有効な薬物送達を対象に提供できる。
【0180】
本発明の幾つかの使用においては、薬物及びCYSCポリマー間の相互作用は、周囲の生理的環境に対するポリマーからの薬物放出を遅延させる。例えば、疎水性薬物を有する結晶性側鎖ポリマーの疎水性側鎖の相互作用は、CYSCポリマーと薬物との解離を遅延させるであろう。薬物が親水性の場合、薬物は、CYSCポリマーの疎水性側鎖と強く結合する傾向があり、それほど疎水性でない(例えば、水性)環境への放出を遅延させるであろう。CYSCポリマーの側鎖は溶融温度に影響を及ぼし、いったん溶解するとある程度可塑剤(つまり結合された可塑剤)のように作用する。ポリマーの分子量も、薬物放出に影響を及ぼす(例えば、低分子量のポリマーと比べて、分子量は架橋されたゲルからの薬物拡散に影響を及ぼす)。これらの要因は、ポリマー薬物製剤からの薬物放出速度の制御に重要である。CYSCポリマーがイオン結合又は水素結合により薬物と結合していれば、薬物は、よりゆっくりと放出されよう。
【0181】
意外にも、CYSCポリマーの結晶化度が、薬物負荷及び放出の重要な要因であることが発見された。
【0182】
本発明の薬物製剤は、制御放出及び/又は徐放を提供するように、特に設計できる。例えば、本発明の薬物製剤は、ある定義された状況下で特定の期間にわたって、ある量以下の薬物を放出するように設計できる。負荷及び放出の速度は、特定の薬物‐ポリマー対に依存するだろう。例えば、薬物製剤の単回用量は、1時間、又は代替的には3時間、6時間、12時間、18時間、24時間、36時間、48時間、72時間の期間にわたって、剤形に負荷された総薬物の5%以下、又は代替的には1%、3%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、又は70%以下を、又は先述の数の任意の組み合わせで放出できる。
【0183】
放出された薬物の速度は、治療的投与の主要期間中、例えば治療的投与期間の99%又は95%又は90%又は80%又は75%にわたって、又は移植期間により定義された期間にわたって、およそゼロ次であり得る。治療的投与の主要期間(例えば、薬物放出が治療上有効なレベルを下回る前に、治療的投与が、投与後少なくとも12時間生じている期間中)にわたる薬物放出の最大変動量は、その期間の平均放出速度の50%(又は40%又は30%又は20%又は10%)以下であり得る。
【0184】
薬物の血漿中濃度は、血液からの薬物の浄化速度と釣り合った血液中への放出速度と関連するだろう(薬物半減期濃度)。持続的な薬物送達の目標は、望ましい長期間にわたって薬物の治療的血漿中濃度を達成することである。所望の治療的血漿中濃度は、それより低いと薬物の効果がなく、それより高いと薬物が有毒であるか又は代替的には追加的な薬効を有しない治療的濃度域内の濃度であろう。
【0185】
本発明の典型的な実施形態では、血漿中濃度で測定されるような(しかし代替的には臨床測定で測定されるような)薬物の治療的用量は、少なくとも1時間から少なくとも12か月にまで及ぶ期間にわたって放出されるだろう。徐放に好適な典型的な薬物には、例えば、抗疼痛剤(例えばモルヒネ類似体)、抗精神病薬(例えばリスペリドン)、抗炎症剤(例えばステロイド又はNSAID)、コレステロール降下薬(例えばスタチン)、骨粗鬆症薬(ビスホスホネート)、抗血管形成剤(例えば抗VEGF)、及び避妊薬が含まれる。避妊薬及び骨粗鬆症薬のようなある種の薬物の場合には、徐放は、1年を超える期間にわたって、例えば少なくとも2、3、4、又は5年にわたることが望ましい場合がある。先行する製剤(ノルプラント)は、3年の期間にわたって治療的用量の避妊薬を送達するために使用されている。長期間の徐放性製剤は、一般的には、体内に、例えば皮下に移植するために製剤されるだろう。
【0186】
ある期間にわたって放出された薬物の量(重量)は、薬物の治療上有効な血漿中濃度、薬物の効力、及び種々の目的組織における滞留時間及び浄化速度を含む薬物動態にもちろん関連しよう。使用の際には、本発明の医薬組成物からの薬物放出速度は、移植後の最初の6(又は12又は24又は36)時間中、例えば、毎時10ng以下、又は代替的には50ng、100ng、500ng、1000ng、2500ng、若しくは5000ng以下、或いは他の実施形態では、毎時10μg、50μg又は100μg又は500μg又は1000μg以下であり得る。もちろん、所望の薬物放出速度は、薬物の効力、治療濃度域、及び半減期に依存しよう。例えば、リスペリドンは、約15ng/mlから約100ng/mlまでの血清中濃度を提供するように、ある期間にわたって放出されてよい。約4mg/日の放出(又は他の研究では、1mg/日から60mg/日の間)が、リスペリドンの適切な治療的血清中レベルを提供することが見出されている。
【0187】
in vivoでは、薬物が製剤から放される際には、薬物は、例えば腸管腔、胃液、皮下組織、血液、筋肉、結腸腔、体腔、又は任意の周囲組織及び/若しくは間質腔であり得る周辺環境に放出される。放出速度は、実際には測定が必ずしも容易だとは限らず、本発明は、米国薬局方に記載されている方法等の標準的方法の使用によるような、本発明の製剤からの薬物放出速度をin vitroで決定する方法を含む。1つのそのような方法では、37±0.5℃に維持され、パドル型溶出装置(Electrolab社、ムンバイ、インドから取得できるような)の使用により100rpmで撹拌された大容積(通常は約1リットル)のリン酸緩衝液、pH7.2が使用される。薬物放出研究は一般的に三重反復で行われ、平均値が計算される。多くの標準的方法が周知であり、放出速度が本明細書中で記載及び考察される場合、そのような放出速度は、これらの標準的方法により計算及び比較できる。
【0188】
幾つかの実施形態では、製剤は、製剤に負荷された総薬物の20%未満、又は15%未満、又は10%未満(又は他の実施形態では、1%、3%、5%、又は7%未満)が、実質的により大きな放出速度を誘発する特定の条件により製剤が活性化される前に、製剤から放出されるようなものである。そのような放出誘発要因には、例えば、pHの変化、及び/又は水和によるポリマーの膨潤、及び/又は酵素との接触、及び/又は製剤の加熱が含まれる。そのような加熱は、例えば、上述された手段の1つを使用する。特定の条件に続いて直ちに、製剤は、ボーラスとして急速に、又はある期間にわたって徐々に薬物を放出できる。例えば、製剤は、負荷された総薬物の少なくとも50%(又は30%、60%、若しくは75%)を、活性化後の1、3、5、7、10、20、30、45、60、120、又は360分以下の期間にわたって放出してよい。ボーラス放出が必要とされる実施形態では、実質的に全ての薬物は、1、2、又は3分以下のようなごく短期間で、又はより長い放出が望ましい他の実施形態では30分以内の期間にわたって放出されてよい。
【0189】
幾つかの実施形態では、体内に投与でき、輸送中に薬物をほとんど又は全く放出せずに標的疾患部位へと輸送できるが、CYSCポリマーをその部位で溶解させる標的放射により薬物放出をその部位で誘発できる製剤を提供するために、CYSCポリマーの急速な融解特徴が使用される。このようにして、必要な時に標的部位で大用量の薬物を特異的に送達できる。これは、部位特異的な様式で及び全身的にではなく送達されるのが最適である毒性薬物を扱う場合に、特に有用である。部位特異的な送達は、必要とされる用量も低減する。そのような薬物には、化学療法薬のような細胞毒性薬が含まれる。例えば、外部放射線源は、放射線、例えば赤外線(IR)又は類似の波長の放射線の集束ビームであり得る。例えば、放射線源は、約400〜1500nm、例えば500〜1200nm又は700〜1100nmの波長を有していてよい。この熱誘導放出機序は、製剤が薬物放出に先立って特定部位を標的とする実施形態において特に有益であり得る。そのような実施形態には、腫瘍組織を標的とする製剤が含まれ、それにより、加熱されると化学療法薬が局所的に放出され、標的部位における薬物の濃縮ボーラスを提供するが、全身性の曝露を最小限にする。
【0190】
例えば、カルボプラチンのような化学療法薬は、CYSCポリマーと、特定のタイプの腫物細胞、例えば結腸癌細胞の表面上で差別的に発現される細胞表面受容体に選択的に結合する抗体又は葉酸塩のような標的指向性リガンドとを用いて製剤することができる。製剤は、例えば、エマルジョンとして製剤され経口で送達できる。エマルジョンは、胃及び腸から結腸を通り抜け、そこで腫瘍組織に優先的に付着するであろう。過剰な製剤は排泄されるであろう。腫瘍部位を標的とし、付着した製剤を加熱して標的部位で高濃度のカルボプラチンを放出させるためには、赤外線(IR)供給源が使用されよう。製剤が加熱されるまで、薬物は製剤からほとんど又は全く放出されないであろう。この投与方法は、全身的に送達される薬物の量を低減し、それにより正常細胞に対する毒性薬物の損傷効果を低減する。ある実施形態では、放射線により加熱できる物質、例えばカーボンナノチューブを製剤に混合してよい。類似の実施形態では、循環により到達可能なあらゆる場所で薬物製剤が特異的に標的に結合する、液体製剤又はエマルジョン製剤の静脈送達が使用できる。
【0191】
薬物の初期バースト放出は多くの場合(しかし常にではない)望ましくなく、本発明は、薬物とポリマー担体物質の結晶性側鎖との間の相互作用により、バースト効果の低減を提供する。ある実施形態では、本発明の製剤は、薬物の初期放出が治療濃度域の上限閾値を超過しないように薬物を放出する。他の実施形態では、薬物の初期放出は、1時間以内(又は代替的には2、3、4、5、若しくは6時間以内)の間、上限治療濃度域閾値を超過する。ある実施形態では、本発明の製剤は、薬物の最大初期放出が、薬物の平均放出速度(投与後の3〜12時間の期間にわたって測定された平均速度)を50%超えて超過しないように、薬物を放出する。或いは、薬物の最大初期放出は、投与後の6〜24時間又は1〜12時間又は12〜48時間からの期間にわたって測定されるような薬物放出の平均速度を、20%又は30%又は40%又は70%又は100%を超えて超過しない。
【0192】
一般的には、本発明の製剤は、許容できるバースト効果及び徐放を提供するために対象に直接移植することができる。しかし、幾つかの製剤の場合、特に治療濃度域の上限が狭い幾つかの特に毒性の強い薬物での製剤の場合、in vivoでのバースト効果を低減するために、製剤の前処理を行うことができる。前処理は、移植前にある期間の間、生体適合性の液体又は溶出緩衝液、例えばリン酸塩緩衝食塩水(PBS)又は水に、製剤を浸漬することを単に伴っていてよい。そのような実施形態では、中実性ポリマー製剤は、包装から取り出され、例えば30分間から1時間の間、溶出緩衝液中に配置されるであろう。幾つかの実施形態では、より長い浸漬時間、例えば終夜が望ましい場合がある。浸漬は、任意の期間、例えば1、3、6、9、12、24、又は46時間まで(又は代替的には以下)の間継続してよい。この浸漬期間は、製剤がその液体環境と平衡化することを可能にし、ある程度の水和を(水和が生じる場合は)提供して、そのため表面に移動した薬物、又は対象に移植された際にバースト放出をもたらすであろう任意の薬物が、今や浸漬期間中に放出されるだろう。浸漬期間の後、製剤は対象に移植され、治療濃度域内の薬物の徐放を提供するであろう。
【0193】
1つの特定の実施形態では、製剤はキットの一部として提供され、キットは、第1のチャンバーに製剤及び第2のチャンバーに液体(溶出緩衝液、例えばPBS)を有する2チャンバーのブリスター包装を含み、作業者は、第1及び第2のチャンバー間の密封を破り、液体と製剤を接触させることを可能にできる。製剤は、ある期間、例えば30分から2時間までの間、液体中で前処理し、あらゆるバーストが消散することを可能にする。その後、製剤は包装から無菌的に取り出され、受容対象に移植され、例えば単純なトロカールの使用により皮下に移植される。
【0194】
薬物放出
温度又はpHの変化を使用して、所望の時間及び/又は場所で薬物放出を誘導できる。幾つかの実施形態では、例えば体温から体温を超える温度、しかし製剤の周囲の哺乳動物又は細胞を損傷するであろう温度より低い温度への、哺乳動物又は細胞のin situにおける製剤温度のわずかな上昇が、CYSCポリマーの溶解を引き起こし、その結果CYSCポリマーは結晶性から非結晶性構造に変化する。結晶化度の喪失と、ヒドロゲルの場合は容積の喪失との組み合わせは、薬物送達に有用な要因である。
【0195】
集束した赤外線放射は、例えば、体内の標的を選択的に加熱するために体外から照射できる。幾つかの実施形態では、製剤は、検出可能な薬物を放出させずに患者内の特定の場所に送達できる。IRビームは、所望の時間に及び所望の場所で標的を加熱するために使用でき、所望の場所及び時間に薬物のボーラス放出を引き起こす。1つのそのような実施形態では、標的に特異的に結合するリガンドを含む製剤が使用される。そのようなリガンドは例えば抗体であってよく、本明細書中で更に考察される。製剤は、例えば静脈内で患者に送達され、リガンドは、製剤が癌組織のような標的に結合して蓄積することを可能にし、集束されたIRビームが標的組織に照射され、それにより薬物のボーラスを放出する。
【0196】
ヒト体内又は他の哺乳動物若しくは細胞の内部において、CYSCポリマーと結合した薬物の放出を促進する別の方法は、例えば温湿布、熱水、熱い接触棒、熱いパッド、赤外線放射、及び近赤外線放射による浸透性熱の1つ又は複数により、及び/又は製剤内に熱を発生させることにより、CYSCポリマーに熱を供給することである。例えば、製剤は、特定の波長範囲の電磁放射線に曝露した際に、熱を発生させるであろう成分を含むことができる。そのような成分には、例えば、炭素繊維のナノチューブ、又は約700〜1100nmの範囲の近IR光を吸収する粒子、銀粒子、若しくは金粒子が含まれる。
【0197】
種々の他の実施形態では、経皮的製剤を皮膚に適用することができ、化学的又は電気的な手段によって、又は手で擦って摩擦熱を起こすような物理的手段によってでさえ熱を発生させることができ、薬物のボーラス放出を提供できる。そのような実施形態は、更に本明細書中で記述される。
【0198】
製剤は、薬物放出を誘発するための遠隔制御放出機構、例えば、インターネット又は病院のイントラネットのようなコンピュータネットワークで伝達されるラジオ波信号の使用により、作業者が薬物を放出することを可能にする電気機械的機構を含むことができる。そのような機構では、例えば、ソレノイド、電磁的ゲート、又は他のマイクロ流体流量制御機構が使用できる。そのような機構は、マイクロ流体及びMEMS産業において周知である。製剤を加熱し、したがって薬物のボーラスを放出するために、遠隔操作された加熱エレメントが装備されていてよい。
【0199】
幾つかの実施形態では、治療的有効量の薬物は所定の時間で放出でき、そこでは以下の条件変化、(i)製剤の加熱、(ii)製剤の水和、(iii)製剤の酵素への曝露、又は(iv)製剤を取り囲む環境のpHの変化のうちの1つ又は複数により、薬物が製剤から放出される。
【0200】
製剤の投与方法及び本発明の製剤を使用して治療され得る疾患
本発明の製剤は、種々の方法で投与できる。典型的なタイプの投与には、摂取、注射、非経口投与、経口、皮下、経皮、経粘膜、くも膜下腔内、筋肉内、吸入、及び皮膚への適用が含まれる。本発明の組成物及びデバイスには、トローチ剤、カプセル剤、錠剤、丸剤、ペッサリー、洗浄剤、坐剤、吸入可能な散剤、クリーム剤、液剤、懸濁剤、経口懸濁液、エマルジョン剤、ミセル系、ナノ粒子、小胞、ナノカプセル、マイクロカプセル、微粒子、ミクロスフェア、微粒子、粒子、ヒドロゲル、丸剤、舌下錠剤を含む錠剤、デポー剤、及び注射剤を含む錠剤が含まれる。ヒドロゲルは、ヒドロゲル/薬物混合物を水和するために、溶媒中で散剤として薬物と混合できるという点で好ましい形態であることがある。
【0201】
適用の好ましい製剤及び経路は、薬物及び所望の適用に依存するだろう。徐放性製剤は、所望の放出期間の間、体内に又は体表に滞在する必要があり、したがってそのような製剤は、例えば経皮的又は径粘膜的な移植片、移植デバイス、及びパッチであろう。丸剤、カプセル剤、及びシロップ剤は、酸分解に耐性のある径口/胃腸製剤に典型的である。ポリペプチド及びタンパク質は、酸又は過酷な環境に対して感受性であるため、懸濁剤又は液剤として注射により投与される場合が多い。他の薬物の局所適用は、典型的には懸濁剤又はクリーム剤の形態であろう。
【0202】
本発明の製剤により治療され得る疾患には、心臓病、心臓血管疾患、腫瘍性疾患、炎症及び関節炎のような炎症過程に関連した全ての疾患、狼瘡のような自己免疫疾患、アレルギー、感染症(ウイルス性、細菌性、真菌性、原生動物性、及びプリオン性)、糖尿病のような内分泌疾患、臨床的に重要であっても又はなくともよい肥満並びに体重関連の疾患及び障害の全ての形態、高血圧、精神病、不安症、うつ病又は任意の心理学的疾患、依存症、勃起不全又は任意の性機能不全、高コレステロールのような血中脂質疾患、アルツハイマー病、脱毛症、プロペシア、疥癬、失禁、疼痛、メニエール病、片頭痛、耳鳴、骨粗鬆症、不妊問題、並びに薬物の投与が正当化される哺乳動物又は細胞の任意の他の疾患が含まれるが、それらに制限されない。
【0203】
本発明により処理され得る哺乳動物又は細胞には、例えば、ウシ、霊長類、ウマ、ヒツジ、ブタ、イヌ、及びネコを含むヒト及び他の哺乳動物が含まれ、鳥類、魚類、有蹄動物、ウシ、霊長類、ウマ、ヒツジ、ブタ、イヌ、及びネコ動物も含まれる。
【0204】
本発明で使用されるデバイス
被覆デバイス、人工器官、移植デバイス、丸剤、デポー、及びパッチを含む種々のデバイスが、本発明の製剤を使用して作製できる。幾つかの実施形態では、本発明の製剤は、移植可能な医療デバイスを被覆している。そのような移植デバイスには、ステント、ペースメーカー、カテーテル、スクリュー、ステープル、縫合糸、人工器官等が含まれる。そのようなデバイスは、浸漬、塗布、噴霧、ミスチング(misting)、ローリング(rolling)、又は他の方法により、製剤をデバイスの内部又は外部に適用することにより作製できる。幾つかの方法では、製剤をその融解温度を超えて加熱し、デバイスに適用し、その後乾燥させて中実性被膜を形成させる。
【0205】
別の態様では、デバイスは、例えば皮下注射により対象の組織に投与できる固体、液体、及びゼラチン状デポーのような移植デポーである。幾つかの実施形態では、製剤はその融解温度を超えて加熱され、所望の場所、例えば皮下に注射され(又はそうでなければ流入され)、そこで製剤は冷却され、その後in situで薬物を放出するであろうデポーを形成する。幾つかのそのような実施形態では、最小限の不快感又は組織損傷で製剤を移植することができるように、Tpは、体温よりわずかに高いだけであり、例えば55℃未満、好ましくは48℃未満である。いったん移植されると、製剤は冷却され結晶化する。そのような適用は、梗塞心臓の切除区域内、骨組織内、又は皮膚下のような腔の内部形状に適合するように成型する移植片デバイスの提供に特に有用であり得る。
【0206】
幾つかの実施形態、例えば幾つかのデポー実施形態では、製剤は、非ポリマー性物質、例えばスクロースアセテートイソブチレート(SAIB)、及び周囲生理的条件下で未希釈では結晶化しない、37℃で少なくとも5,000センチポアズの粘性を有する非水溶性液状物質、例えば、これによりあらゆる目的のためにその全体が参照により組み込まれる米国特許第6,992,065号(Okumu)に記載のものを含む。好ましくは高度に疎水性であるそのような物質、例えばSAIBは、薬物負荷を増強及び/又は薬物放出特性を改変できる。幾つかの実施形態では、この物質は、CYSCポリマーと物理的に混合され、他の実施形態では、CYSCポリマーとして使用でき又はCYSCポリマーに組み込むことができる。
【0207】
幾つかの実施形態では、デバイスは、製剤が蛍光透視又はX線により画像化できるように、放射線不透過性の染料又は他のマーカーを含有する製剤を含む。バリウム、銀、及び金のような、多数の放射線不透過性物質が一般的に公知であり、使用されている。
【0208】
本発明で使用される薬物及び診断薬、担体及び賦形剤
任意の所望の薬物を、求められる特定の適用に依存して、本発明のCYSCポリマー製剤に組み込むことができる。CYSCポリマーには、1つ又は複数の親水性又は疎水性の薬物、例えば低分子、ポリペプチド、タンパク質、炭水化物、ポリヌクレオチド、ヌクレオシド、siRNA、イムノグロブリンのFc又はそのFab部分、環式化合物、アルカロイド、ベータラクタム、又は他の抗生物質を負荷できる。薬物は、神経伝達物質のアゴニスト又はアンタゴニスト、抗精神病剤(例えばフルフェナジンマレイン酸塩、クロルプロマジン、クロルプロマジンハイベンゾエート(chlorpromazine hibenzoate)、スルピリド、カルピプラミン塩酸塩、カルピプラミンマレイン酸塩、クロカプラミン塩酸塩、モサプラミン塩酸塩、リスペリドン(又はベンジソキサゾール及び/若しくはピペリジンの官能基を含有する任意の化合物)、クロザピン、オランザピン、及びセルチンドール);又はSSRIであってよく、或いは薬物は、リンホカイン、モノカイン、ケモカイン、インターロイキン、プロスタグランジン等のようなサイトカイン等の細胞シグナル伝達分子、スタチン、Cox‐2阻害剤、SSRI、カルシウムチャネル遮断薬、向精神薬、ビスホスホネート、抗増殖剤、有糸分裂阻害剤、血管形成因子、抗血管形成因子、ラパマイシン若しくは誘導体のような低分子、又はほとんどあらゆる他のタイプの薬物を含むことができる。特定の薬物及び薬物クラスには、イブプロフェン、ウラシル(例えば5‐フルオロウラシル)、ステロイド及びステロイドのエステル又は他のホルモン(例えば、エストロゲン、プロゲステロン、テストステロン、アンドロステロン、コレステロール、ノルエチンドロン、ジゴキシゲニン、コール酸、デオキシコール酸、及びケノデオキシコール酸)、ホウ素含有化合物(例えば、カルボラン)、化学療法用ヌクレオチド、薬物(例えば、抗生物質、抗ウイルス薬、抗真菌剤)、エンジイン(例えば、カリチアマイシン、エスペラミシン、ダイネミシン(dynemicin)、ネオカルチノスタチン発色団、ケダルシジン(kedarcidin)発色団)、重金属錯体(例えば、シスプラチン、カルボプラチン)、ホルモンアンタゴニスト(例えば、タモキシフェン)、非特異的(非抗体)タンパク質(例えば、糖オリゴマー、インスリン)、ポリヌクレオチド及びオリゴヌクレオチド(例えば、mRNA配列)、放射性核種、トキシン(例えば、リシン、及び転写に基づく医薬品が含まれる。ある実施形態では、薬物は、ボツリヌストキシン(「ボトックス」)のような細菌トキシンであってよく、又はそれを含有してよい。
【0209】

【0210】
CYSCポリマーは、タンパク質の変性点より十分低いTp(60℃)を有し得るため、種々のタンパク薬物、例えば成長ホルモン若しくは性ホルモンのようなホルモン、分泌タンパク質、アルファグルコシダーゼ、エリトロポイエチン、抗体薬物抱合体、Fc融合タンパク質、インターフェロン、抗CD20治療薬、抗血友病因子VIII、IX、若しくはX、インスリン、又はカルシトニンと混合できる。任意の熱不安定性の薬物について同じことが言え、薬物の生物学的活性を保持したままで簡単に混合することを可能にする。
【0211】
幾つかの実施形態では、腫瘍性細胞を死滅させるために使用される他の化学療法剤が、製剤に組み込まれる。そのような化学療法剤には以下のものが含まれる:1)癌細胞のDNAを破壊するアルキル化薬。例えばブスルファン、シクロホスファミド、及びメルファラン。2)DNA修復に必要とされる癌細胞の酵素を阻害するニトロソ尿素。例えば、カルマスティン及びロムスチン。3)癌細胞のDNA及びRNAの両方に干渉する代謝拮抗物質。例えば、5‐フルオロウラシル、メトトレキセート、及びフルダラビン。4)その細胞膜を変化させることに加えて癌細胞のDNAに干渉する抗腫瘍抗生物質。例えば、ブレオマイシン、ドキソルビシン、及びイダルビシンは、抗腫瘍抗生物質の例である。5)癌細胞におけるタンパク質合成に必要な酵素を阻害する有糸分裂阻害剤。例えば、ドセタセル、エトポシド、及びビノレルビン。6)放射性放出物の発生により癌細胞を破壊する放射性同位体。例えば、インジウム‐111(111In)、イットリウム‐90(90Y)。これら及び/又は他のタイプの化学療法剤を、本発明の製剤に組み込むことができる。
【0212】
周知の徐放適用に用いられる薬物には、例えば、抗疼痛剤(例えばモルヒネ類似体)、抗精神病薬(例えばリスペリドン)、抗炎症剤(例えば、ステロイド又はブデソニドのようなNSAID)、ホルモン(例えば、テストステロン又はプロゲステロン)、コレステロール降下薬(例えば、スタチン)、骨粗鬆症薬(ビホスホネート)、抗血管形成剤(例えば、抗VEGF)、及び避妊薬が含まれる。
【0213】
本明細書中に記載された任意の薬物の任意の誘導体(それらに限定されないが、任意の薬理学的に活性な代謝物、又は類似体、アゴニスト、誘導体、変異体、同族体、若しくは異性体を含むとして本明細書中で定義される)も等しく使用でき、記載された任意の製剤はそのような誘導体を含む製剤を包含することが意図される。
【0214】
リガンド標的ポリマー薬物送達
ある実施形態では、結晶性側鎖ポリマーは、標的受容体分子に特異的に結合するリガンドを組み込む。標的受容体分子は、癌細胞のような特定のタイプの標的細胞の表面に存在する。リガンドは、モノマーに共有結合で結合された受容体を保持するコモノマーの共重合により、ポリマー製剤に組み込むことができる。或いは、リガンドは、単純な物理的混合物としてか、又はイオン結合、水素結合、ファンデルワールス力、若しくは疎水性/親水性相互作用のいずれかにより、リガンドがポリマーと結合することを可能にする混合のような、共有結合を伴わない任意の他の手段により本発明の製剤に組み込むことができる。リガンドは、標的の細胞表面上に発現される分子に、例えば、標的細胞、例えば癌細胞上で差別的に過剰発現される受容体タンパク質に特異的に結合する。
【0215】
例えば、多数のタイプの細胞は、細胞表面上に多数の葉酸受容体を発現し、非癌細胞の場合より多く発現する。葉酸又は葉酸塩の誘導体若しくは部分は、製剤の調製中に物理的に混合できるか、又は製剤の結晶化又は析出の後に形成される粒子の外部に付加できる。葉酸塩分子は、標的癌細胞上の葉酸受容体と特異的に結合する。化学療法剤、例えばカルボプラチン、シスプラチン、又はタキソールは、CYSCポリマーと混合できるか、又は水素結合若しくはその他によりCYSCポリマーと結合させることができ、その後特定の細胞標的に送達できる。
【0216】
このリガンド標的ポリマー薬物送達系は、幾つかの異なるクラスの任意の数の公知の標的癌治療剤を送達するために使用できる。例えば、低分子薬は、癌細胞増殖に関与する特定の酵素及び成長因子受容体(GFR)を遮断するために使用できる。これらの薬物は、シグナル伝達阻害剤として作用する。本発明で使用できる1つのそのような薬物は、消化管間質腫瘍及びある種の慢性骨髄性白血病を治療するためのグリベック(登録商標)(STI‐571又はイマチニブメシレート)である。本発明で使用できる別の薬物は、進行性非小細胞肺癌を治療するために使用されるイレッサ(登録商標)(ZD1839)である。この薬物は、多数のタイプの癌細胞により過剰生産される上皮成長因子受容体(EGFR)を標的とする。
【0217】
アポトーシス誘導薬も、本発明の製剤に組み込むことができる。1つのそのような薬物は、多発性骨髄腫を治療するために使用されるベルケイド(登録商標)である。ベルケイドは、細胞機能及び増殖の調節を助けるプロテアソームを遮断する。他のアポトーシス誘導薬には、白血病、非ホジキンリンパ腫、及び固形腫瘍を治療するためのゲナセンス(Genasense)(商標)が含まれる。ゲナセンスは、腫瘍細胞の生存を促進するBCL‐2の産生を遮断する。
【0218】
他の考え得る薬物には、ハーセプチン(登録商標)(トラスツズマブ)のような成長因子受容体に結合するモノクローナル抗体が含まれる。
【0219】
幾つかの実施形態では、製剤は、SCCモノマー、ヒドロキシエチルメタクリレート、及びジメチルアミノエチルメタクリレートの混合物から誘導される、わずかに塩基性/中性のCYSCポリマーと、薬物、例えば抗癌薬、例えばメトトレキセートとを含む。1つのそのような実施形態では、葉酸は、製剤の調製中にCYSCポリマー及び薬物と混合されるか、又は葉酸を薬物製剤粒子の表面に濃縮するために、製剤の単離後に製剤に付加される。癌細胞は、細胞膜上により多くの葉酸受容体部位を有し、製剤の投与後に製剤が癌細胞部位に濃縮することを可能する。外部からの熱刺激に曝露されると、封入されている又は結合されているメトトレキセートは、CYSCポリマーが結晶性から非結晶性構造に遷移するに従って放出される。或いは、薬物放出は、熱以外の手段により、例えば、水和、膨潤、浸透圧的放逐、及びポリマーの透過性の増加の1つ又は複数により刺激できる。
【0220】
多数の他の腫瘍特異的な標的を下記で考察する。下記に記載するリガンドの多くは、小さなタンパク質(約30〜50個のアミノ酸残基)であるか、又はほんの少数の残基の小さな活性部位(多くの場合3〜7個のアミノ酸)を有するかのいずれかであり、本発明で使用されるようなCYSCポリマーに、例えば共有結合で結合させることができる。
【0221】
上皮成長因子受容体(EGFR)は、大多数の結腸直腸癌で過剰発現される。また、ガストリン、CCK、セクレチン、グルカゴン、ソマトスタチン、及びそれらの同族Gタンパク質共役受容体(GPCR)のような胃腸(GI)ペプチドホルモンが、腸で発現される。EGFR、GIホルモン、又は任意の関連タンパク質は、EGRF若しくはGIホルモン又はその相同タンパク質若しくは部分に特異的に結合する、特異的抗体のようなリガンドを、ポリマー‐薬物製剤に提供することにより、特異的標的として使用できる。
【0222】
皮膚T細胞リンパ腫、慢性リンパ性白血病、及びB細胞非ホジキンリンパ腫を含む多数の白血病及びリンパ腫は、インターロイキン2受容体(IL‐2R)受容体を発現する。インターロイキン2受容体を標的とする抗体又は他のリガンド(例えば、DAB389IL‐2、オンタック(ONTAK)(商標)、Seragen Inc社、サンディエゴ、カリフォルニア州)は、本発明のポリマー‐薬物製剤を標的とするために使用できる。
【0223】
CD33、即ち急性前骨髄細胞白血病(APL)で高度に発現される細胞表面抗原、に対するモノクローナル抗体は、APL腫瘍細胞に対する標的指向性リガンドとして本発明で使用できる。
【0224】
リツキシマブは、悪性B細胞の表面上に発現されるCD20と結合する、抗癌性モノクローナル抗体である。リツキシマブは、標的指向性リガンドとして本発明で使用できる。
【0225】
OPG又はRANKLと結合する抗体及び他のリガンドは、多発性骨髄腫腫瘍細胞に対する標的指向性リガンドとして本発明で使用できる。
【0226】
正常及び悪性の男性及び女性生殖組織における、葉酸受容体(FR)アイソフォーム、アルファ及びベータの発現パターンは、十分に研究されている。葉酸受容体に結合する葉酸塩、葉酸塩の類似体、及び他のリガンドは、種々の腫瘍組織に対する特異的及び/又は優先的な標的指向性を提供するために、本発明の製剤に組み込むことができる。
【0227】
前立腺特異的膜抗原(PSMA)は、前立腺癌(PCa)細胞で主に発現されるメタロペプチダーゼである。PSMAに結合するリガンドは、前立腺腫瘍組織に対する特異的及び/又は優先的な標的指向性を提供するために、本発明の製剤に組み込むことができる。
【0228】
インスリンに類似した活性を有する2つのタンパク質ホルモンは、インスリン様増殖因子I(IGF‐I)及びIGF‐IIと名付けられている。同様に、インスリン、IGF‐I、及びIGF‐IIに異なる親和性で結合する2つの受容体、インスリン様増殖因子1受容体(IGF1R)及びIGF2Rが存在する。IGF2Rは、IGF‐IIを含む、乳癌生物学に関連する多数のタンパク質に対する細胞表面受容体として機能する。本発明により使用されるようなポリマーに結合された糖部分及び/又はポリサッカリドを使用して、IGF2Rを標的にできる。
【0229】
2つの構造的に関連した受容体である卵巣癌Gタンパク質共役受容体1(OGR1)及びGPR4は、SPCに対する高親和性分子標的である。リン脂質に対する腫瘍上のそのような受容体は、リゾホスファチド酸(LPA)、スフィンゴシルホスフォリルコリン(SPC)、及び/又はホスファチジン酸(PA)と結合した、本発明により使用されるようなポリマーの理想的な標的であろう。これらの標的に結合するリン脂質のようなリガンドは、卵巣及び他の腫瘍組織に対する特異的及び/又は優先的な標的指向性を提供するために、本発明の製剤に組み込むことができる。
【0230】
別の特異的な標的分子は、線維芽細胞増殖因子(FGF)である。活性化FGFは、ドッキングタンパク質である線維芽細胞増殖因子受容体基質2(FRS2α)のリン酸化に帰着するキナーゼカスケードを開始させる。FRS2ドメインの部分の抗FGF抗体は、腫瘍を標的とするためのリガンドとして機能できる。
【0231】
プログラム細胞死受容体リガンド1(PD‐L1)は、多数の癌に豊富に存在する。抗体又はIFN‐ガンマ又は関連分子のような、PD‐L1に結合するリガンドは、癌細胞及び組織に対する特異的及び/又は優先的な標的指向性を提供できる。
【0232】
ウロキナーゼ型プラスミノーゲン活性化因子(uPA)に対する、糖脂質が係留された受容体は、多数のヒト癌において浸潤性腫瘍‐間質微小環境で過剰発現される。抗体のような、uPAに結合するリガンドは、癌細胞に対する特異的及び/又は優先的な標的指向性を提供するために、本発明の製剤に組み込むことができる。
【0233】
CXCR4は、癌幹細胞の表面上に発現される、アルファケモカイン間質細胞由来因子1(SDF1)に対する天然の受容体である、7回膜貫通型タンパク質である。SDF1‐CXCR4軸は、SDF1を高度に発現する器官(例えば、リンパ節、肺、肝臓、及び骨)へのそれらの輸送/転移を指図することにも関与する。受容体相互作用領域と相同的なSDF1の領域は、癌細胞への特異的な標的指向性を提供するために、特に腫瘍細胞の転移を治療又は予防するために、本発明の製剤に組み込むことができる。
【0234】
Notchシグナル伝達は、膵臓癌に先行する前悪性化生性変化に寄与し、それは他の形態の化生にも関与する可能性が高い。Notch受容体リガンドは、膵臓癌及び他の癌細胞に対する特異的な標的指向性を供給するために、本発明の製剤に組み込むことができる。
【0235】
加えて、他のタイプのリガンドを、受容体タンパク質キナーゼ、Gタンパク質共役受容体、核内受容体、リガンド開口型受容体イオンチャネル、マクロファージスカベンジャー受容体、T細胞受容体、ネトリン受容体、VPS10ドメイン含有受容体、テトラスパン(Tetraspan)ファミリータンパク質、イオンチャネル、ABC輸送体、セマフォリン及びニューロピリン、細胞間情報伝達関連膜タンパク質、並びに表在性及び係留膜タンパク質を認識するリガンドを含む本発明の製剤に組み込むことができる。
【0236】
上記の場合の多くにおいて、リガンドは、癌関連標的分子に特異的に結合する抗体又は抗体の部分(Fab部分又はその断片のような)であり得る。抗体は、ポリクローナルであってよく又はモノクローナルであってよく、多くの場合ヒト化されていてよい。そのような抗体は、標準的な周知の方法により産生できる。腫瘍関連抗原に特異的に結合するモノクローナル抗体(MAb)は、腫瘍に対するトキシン、放射性ヌクレオチド、及び化学療法剤抱合体を標的にする試みに使用されてきた。現在まで、腫瘍細胞に対して細胞融解活性を誘導する多様なモノクローナル抗体が開発されている。例えば、P185の細胞外ドメインである成長因子受容体(HER2)に対する、ヒト化型のモノクローナル抗体MuMAb4D5は、ヒト乳癌を治療するために使用されている。また、リンパ腫関連のB細胞を含む末梢B細胞の急速な枯渇を引き起こすCD20に対するキメラ抗体は、低悪性度のB細胞非ホジキンリンパ腫を治療するために使用されている。開発中又は臨床試験中である他のヒト化及びキメラ抗体には、ほとんどのタイプの骨髄性白血病細胞上で発現されるCD33に結合する抗CD33抗体が含まれる。別の抗体は、白血球抗原CD45に対するキメラ抗体である(cHuLym3)。本発明の本製剤は、本明細書中で言及された抗体及びリガンドを含む任意の種類の任意の標的特異的リガンド、並びにその任意の誘導体及び同族体を組み込むことができる。
【0237】
発明の幾つかの利点
本発明の実施形態は、好ましいCYSCポリマーが、化学的及び/又は物理的な結合を介して広範な薬物と結合するように選択できる、所望のバランスの疎水性及び/又は親水性部分を含むことができるという事実にとりわけ起因する利点を有し、したがって多種多様な方法で哺乳動物又は細胞に送達できる製剤を提供する。CYSCは、急激で比較的低い融点を有することができ、所望の分子量を有することができ、哺乳動物又は細胞に対していかなる悪影響も示さず、及びCYSCポリマーと混合された薬物が哺乳動物又は細胞に送達された後で、哺乳動物又は細胞から排除することができる。利点には、1)好ましいCYSCポリマーが、薬物と容易に混合及び加工できること;2)好ましいCYSCポリマーは、所望の混合、負荷、及び送達必要条件、例えば最大限の薬物負荷、最小限のバースト効果、治療的に有効なレベルの薬物の持続的送達、哺乳動物又は細胞の選択部分への、自由選択的には摂取又は適用後の選択された時間後の薬物送達に適合する製剤を提供できることが含まれる。
【0238】
精神活性剤(抗精神病剤)リスペリドン、(4‐[2‐[4‐(6‐フルオロベンゾ[d]イソオキサゾール‐3‐イル)‐1‐ピペリジル]エチル]‐3‐メチル‐2,6‐ジアザビシクロ[4.4.0]デカ‐1,3‐ジエン‐5‐オン)を含有する製剤の特定の1つの例は以下の通りである。リスペリドンは、CYSCポリマーと物理的に混合されてよく、又は免疫学的な遮蔽、半減期の増加、及び生物学的利用能の向上を提供するために、例えば界面活性剤、PEG、ヒト(又はウシ等)血清アルブミン、又はタンパク質等と事前に結合されていてもよい。製剤は、例えばトロカールによる皮膚下又は筋肉内への導入、又は製剤の融解温度上での注射による導入に好適な造形中実性移植片へと形成できる。約4mg/日のリスペリドン用量が、多数の患者の精神病エピソードを予防するのに十分であると考えられている。しかしながら、耐性及び有効性は個人間で大きく異なる場合がある。したがって、本発明は、1日から200日の期間にわたって1mg/日から60mg/日までを供給するように製剤されていてよい。移植剤形の利点は、服薬遵守の増加であり、精神病では主要な課題である。1つの実施形態では、ポリマーのTmを超えた温度で、例えば42℃から60℃の間で、粉末形態の薬物をCYSCポリマーと混合することにより、少なくとも50mgのリスペリドンが、単一の移植可能な剤形に製剤される。溶媒は必要ではない。混合物は冷却され、中実性の細長い又はほぼ球状の移植片が形作られる。他の実施形態では、単一の移植片可能な剤形に製剤されたリスペリドンの量は、少なくとも100mg、又は少なくとも200mg、又は少なくとも500mg、又は少なくとも1000mg、又は少なくとも1500mg、又は少なくとも2000mgである。幾つかの剤形では、薬物の総量は、3、4、又は5グラムまでであり得る。
【0239】
リスペリドン移植片は、トロカールを使用して対象に皮下的に導入される。移植片は、少なくとも5、10、15、20、25、30、40、60、又は90日の期間にわたって、1日当たり1から60mgの間の平均速度(例えば、1、2、3、4、5、7、10、20、40、80、120、200、又は300mg以下)でリスペリドンを放出する。1つの典型的な実施形態では、移植は、少なくとも7日の期間にわたって1日当たり4から12mgの間の平均速度でリスペリドンを放出する。この期間中、所望の治療効果は、少なくともその時間の75%の間提供される。その後、移植片は除去されるか、又はそのままにされ時間と共に分解される。薬物のより大きなボーラスが所望の場合、移植片の上の皮膚局部を、任意の便利な手段により加熱できる。
【0240】
他の実施形態では、移植片は、少なくとも7日、又は少なくとも14、21、30、45、60、若しくは90日の期間にわたって、1日当たり1から20mg、又は1日当たり3から100mg、又は1日当たり4から30mgの間の平均速度でリスペリドンを放出する。
【0241】
ある関連実施形態では、リスペリドンは、界面活性剤、PEG、ヒト血清アルブミン、又はタンパク質と事前に結合されていてよい。別の実施形態では、CYSCポリマーは、例えば6から50個の間のモノマー単位の平均長を有する側鎖を含む。別の実施形態では、CYSCポリマーは、約12から50個の間のアルキルエステルアクリレート又はメタクリレートモノマー単位の平均長を有する側鎖を有する。
【0242】
別の実施形態では、結晶性ポリマーに対する薬物の比率は、5重量%から30重量%の間、又は少なくとも5重量%、少なくとも10重量%、少なくとも15重量%、少なくとも20重量%、少なくとも25重量%、少なくとも30重量%、少なくとも35重量%、少なくとも40重量%、若しくは少なくとも50重量%である。ある実施形態では、リスペリドンは、ポリマーと物理的に混合されており、共有結合又はイオン結合は、薬物及びポリマー間で形成されていない。幾つかの実施形態では、薬物は、水素結合及び/又はファンデルワールス力を介してポリマーと結合する。種々の代替的な実施形態では、リスペリドンは、静電結合により、水素結合、ファンデルワールス力、又はこれらの効果の1つ又は複数の組み合わせにより、CYSCポリマーと結合されている。この典型的な実施形態は、任意の数の薬物に応用できる。
【0243】
疼痛を制御するための薬物を放出するように設計された別の実施形態では、製剤の薬物は、オピオイド、オピオイドアンタゴニスト、合成オピオイド、モルヒネ、フェンタニル若しくはスフェンタニル(sufentanyl)、又は末梢若しくは中枢神経性対受容体(peripheral or central nervous pair receptor)に作用する任意のタイプの局所的若しくは全身性の鎮痛剤であり得る。そのような実施形態では、ポリマーは、少なくとも3、少なくとも6、又は少なくとも12時間のような長い時間疼痛を治療するために、ある期間にわたって薬物が放出されるように、皮膚の下に移植することができる。製剤は、径口製剤、経皮製剤、又はデポーでもあり得る。
【0244】
幾つかの実施形態では、製剤は、パッチのような経皮的な薬物送達デバイスの一部であり、CYSCポリマーに混合された薬物は、皮膚に対して設置されたパッチから放出される。製剤は、薬物をある期間にわたって一定的に又は増加して又は減少して放出するように作製でき、又は熱のような刺激に応答して間欠性ボーラスで薬物を放出するように作製できる。持続性送達の場合、薬物は、ボーラスとして直ちに放出されるだけでなく、一般的にはシグモイド形のパターンで時間と共に放出され、例えば、少なくとも1、少なくとも3、少なくとも6、又は少なくとも12、24、36、若しくは48時間にわたるような所望の時間にわたって疼痛を処理するために所望の治療的送達を提供するだろう。他の実施形態では、薬物は、少なくともある所望の時間にわたって(例えば、少なくとも1、少なくとも3、少なくとも6、又は少なくとも12、24、36、又は72時間にわたって)、ほぼ一次速度論で送達できる。そのような実施形態では、薬物はポリマーから放出され、ポリマーは皮膚を横切って輸送されない。
【0245】
薬物放出は、デバイスに熱を加えることにより誘導又は増加させることができる。デバイスは、分離型の加熱デバイスにより、又は一体型の加熱ユニットにより加熱できる。製剤から放出された薬物の量は、加熱期間及びデバイスの温度に依存するだろう。熱誘導薬物放出は、直接的又は遠隔的のいずれかで医師により、又は患者により制御することができる。これは、必要な場合に疼痛及び他の状態を治療するための、制御された薬物の自己投与を提供する。製剤から放出された薬物は、皮膚の表面上に放出されてよく、その後種々の手段により皮膚を透過するだろう。一般的に、経皮送達は皮膚膜を横切る受動拡散に依存するが、皮膚の最外層の特性を変質させる水、エタノール(EtOH)、及び1‐メントール(LM)のような溶媒又は増強剤の使用によっても、又は皮膚を通して薬物を「押す」電気的技術若しくは熱技術を使用してでも、透過は改善できる。任意のそのような手段は、ポリマーと混合して又はポリマーとは別々にのいずれかで、本発明において使用できる。フェンタニルのようなオピオイドの送達速度は、経皮パッチの適用後、例えば、約1.0から1000ng/cm/時間にまでに及んでよい。
【0246】
経皮製剤は、CYSCポリマーを薬物及び自由選択的には粘着性成分と共に混合し、柔軟性のある薄膜中又は薄膜上に生成された製剤を保持してパッチを生産することにより作製できる。柔軟性のある不透過性薄膜がパッチの裏側を形成し、皮膚に適用される製剤側は、取り外し可能なカバーで覆うことができ、それは皮膚への適用に先立って取り外される。適用の際にパッチが皮膚に対して密封を形成し、環境から製剤を隔離するように、製剤側は、一般的にパッチの周囲に少なくとも幾らか粘着性部分を含む。そのような実施形態は、薬物が貯蔵体に維持されており、薬物送達を可能にするためにその透過性を変化させることができるポリマー膜により皮膚から分離されている「ゲート(gating)」デバイスを除外する。本発明は、ポリマー薄膜により皮膚から分離された薬物貯蔵体を含まない。本発明では、薬物は、CYSCポリマーと一緒に一体的に混合され、薬物‐ポリマー製剤を形成する。熱は、化学的又は電気的な手段によって、又は手で擦って摩擦誘導熱を発生させるような物理的手段によってでさえも、発生させることができる。加熱エレメントは、電気的な熱発生回路の起動を制御するラジオ波信号の使用によるような許可の無い起動を防止する制御(保護)エレメントに機能的に接続できる。
【0247】

【実施例】
【0248】
本発明は、以下の実施例において例示される。実施例の多くは、下記の表1A、1B、及び1Cに要約されている。表1A、1B、及び1Cの詳細な説明は、表の後に続く。
【0249】

【0250】

【0251】

【0252】

【0253】

【0254】

【0255】
実施例に記載されたCYSCポリマーは、約80℃で3時間、窒素ブランケット下で0.1%AIBNと共に、IPA中でモノマーを溶液重合することにより調製した。BMP(6%)を使用して、10,000より下に、例えばおよそ5000に分子量を制御した。高温、減圧下でIPAを除去した。減圧段階の最後で、内部温度は120〜130℃に達し、実施例3A以外の全ての実施例において、0.5gのTrigonoxを添加した。120〜130℃で少なくとも1時間、その後減圧下で1時間、反応を継続させた。実施例7Aにおいては、ポリマー成分の1つはDMAEAquatであり、ポリマーは、MiBK中で1/1のモル比で硫酸ジメチルと反応させ(50〜55℃、3時間)、その後に高温、減圧下でMiBKを除去することで実施例5Aのアミンポリマーを第四級アンモニウム塩に変換することにより調製した。同様に、DMAEMAquatを含有する実施例8Aのポリマーは、実施例6のアミンポリマーを第四級アンモニウム塩に変換することにより調製した。
【0256】
表1A、1B、及び1Cは、20のCYSCポリマー、1A〜20Aの調製及び試験を要約している。ポリマーは、表1A、1B、及び1Cの1行目に示されたモノマー及びそれらのモル量を使用して、上述された手順により調製した。
【0257】
表1A、1B、及び1Cの2、3、及び4行目は、20のポリマーの各々について、Mw及びMnの値、並びにDSC試験結果を示す。5行目及び6行目は、それぞれ70℃及び室温(RT)における、10%負荷での、種々の極性を有する4つの溶媒中のポリマーの挙動を示す。溶媒の溶解度パラメーターは、表中の括弧内に示す。典型的な手順は、0.5gのポリマー及び4.5gの溶媒を20mlのバイアルに量り、その後10から15分間70℃の乾燥器中で加熱することであった。暖かい間に、混合物を手で振とうした。5、6、及び7行目(実施例1B〜20B)は、それぞれ、(5行目)ポリマーが70℃で溶解したかどうか、(6行目)室温に冷却した後で均一なゲルを形成したかどうか、及び(7行目)CYSCポリマーの算出された溶解度パラメーターを示す。
【0258】
表1A、1B、及び1Cの8及び9行目(実施例1C〜20C)は、ポリマーをジクロフェナクナトリウム(dcl)と混合した結果を示す。混合物は、70℃において、dcl/ポリマー/IPA=1/10/35の比率で、dclをポリマーとIPA中で混合し、その後70℃の乾燥器中でIPAを気化させることにより、9.1%の薬物負荷で調製した。乾燥混合物は、70℃、減圧下で残留IPAを除去することにより取得した。8行目に記したように、混合物は、実施例1A、5A、16A、17A、及び18Aのポリマーを使用した場合以外は均一であった。9行目は、均一混合物のDSC試験の結果を示す。これらの15の均一混合物及びその後の実施例における他の混合物の各々の典型的な放出試料は、0.5グラムの薬物/ポリマー混合物をバイアルに負荷し、60〜70℃に暖め、混合物が流動して共に融合することが可能となることにより、20mlのシンチレーションバイアル(28×61mm=ODxH)に薄くて平たい円板として調製した。これにより、冷却後に、滑らかで均一な表面を有する中実性の薄い円板がもたらされた。
【0259】
10行目(実施例1D〜20D)は、10/50/50でdcl、CYSCポリマー、及びNMPを含有するゲル混合物を調製した結果を示す。上記ポリマーのうち8つは、RTで均一なゲルを形成した。
【0260】
11行目(実施例1E〜20E)は、10/10/90の比率で、dcl(9.1%)、CYSCポリマー、NMPを含有する混合物を調製した結果を示す。20のポリマーのうち6つ(8A、11A、12A、13A、14A、及び20A)が、RTで均一なゲルを形成した。実施例1D〜20D及び1E〜20Eは、放出速度に対するNMPの効果を実証する。
【0261】
12行目及び13行目(実施例1F〜20F)は、実施例1Cから20Cで均一な混合物を形成した15のポリマーを使用し、実施例1Cから20Cと同一の工程を使用して、10%を超えるdclを含有する組成物を調製した結果を示す。16.7%及び23.1%の負荷の場合、dcl/CYSCポリマー/IPAの混合物は、それぞれ2/10/70及び3/10/100の比率で70℃で調製した。IPAを除去した後、16.7%の場合、試験されたCYSCポリマーは全てdclと混和性であり、23.1%の場合、それらのうち12がdclと混和性だった。ポリマー6A、7A、及び15Aは混和性ではなく、均一混合物を産出しなかった。
【0262】
実施例2F1〜2F7
実施例2Aのポリマーを使用し、下記の表F1に示されたように、実施例Cl〜Cと同一の工程を使用して、37.5%までのdcl負荷を有する均一な乾燥混合物を生成した。
【0263】

【0264】
実施例1G〜20G
実施例1C〜20Cと同一の工程を使用し、表Glに示された量(グラムで)を使用して、ポリマー2A及び3A、ポリマー2A及び4A、ポリマー2A及び19A、並びにポリマー2A及び20Aをそれぞれdclと混合させることにより、4つの混合物を調製した。乾燥混合物Gl、G2、及びG4は均一だった。
【0265】

【0266】
実施例1H〜20H
表H1は、4つのCYSCポリマー、1H〜4Hの調製及び試験を要約している。ポリマーは、表H1の1行目に示されたモノマー及びそのモル量を使用して、上述された手順により調製した。ポリマーのMw、Mn、及びDSC特徴は、表H1の2、3、及び4行目に示されている。これらのポリマーとdclとの均一な混合は、実施例1C〜20Cと同じ方法で調製した。
【0267】

【0268】
表1A、1B、及び1Cの14行目(実施例1I〜20I)は、実施例1C〜20C(IPAが使用された)で均一な混合物を産出しなかった5つのポリマー(1A、5A、16A、17A、及び18A)の各々と、dclとの均一な混合物の調製を要約する。均一な2相混合物は、ホモジナイザーを1分間バイアル中で使用して、1/10の重量比でdclを溶融ポリマーに50〜70℃で混合することにより調製した。冷却段階中は、バイアル中の混合物が凝固するまで、バイアルを回転させ続けた。
【0269】
表1A、1B、及び1Cの15行目(例実施1J〜20J)は、1/10/40のrisp/ポリマー/IPAの比率で、risp、ポリマー、及びIPAを70℃で混合し、その後70℃の乾燥器中でIPAを除去することによる、rispと実施例1A〜20Aのポリマーとの混合物の調製を要約する。乾燥混合物は、70℃、減圧下で残留IPAを除去することにより取得した。20の混合物のうちの5つだけが均一だった。均一な混合物において、ポリマーは、2A、3A、4A、19A、及び20Aであり、全てカルボン酸部分を含有していた。16行目は、均一な混合物のDSC特徴を報告する。
【0270】
表1A、1B、及び1Cの17行目(例実施1K〜20K)は、rispと実施例1A〜20Aのポリマーとの混合物の調製を要約する。混合物は、16.7%のリスペリドンを含有しており、5つのポリマー(2A、3A、4A、19A、及び20A)の各々とリスペリドンとを、IPA中でrisp/ポリマー/IPA=2/10/80の比率で70℃で混合し、その後70℃の乾燥器中でIPAを除去することにより調製した。最終乾燥混合物は、70℃、減圧下で残留IPAを除去することにより取得した。ポリマー3Aだけが、16.7%の負荷で均一な混合物を産出した。下記の表K1に要約されているように、ポリマー3A及び広範囲のリスペリドン負荷を含有する組成物は、実施例1J〜20Jと同一の工程を使用して調製した。その結果生じた混合物は全て均一であった。負荷が25%より高かった場合、混合物はより粘性であり、70℃より高い温度を使用して円板を調製した。
【0271】

【0272】
実施例1L〜4L
実施例1J〜20Jと同一の工程を使用し、表Llに示された量(グラムで)を使用して、ポリマー2A及び3A、ポリマー2A及び4A、ポリマー2A及び19A、並びにポリマー2A及び20Aをそれぞれrispと混合させることにより、4つの混合物を調製した。乾燥混合物Ll、L2、及びL4は均一だった。乾燥混合物L3は均一ではなかった。
【0273】

【0274】
実施例1M〜20M
9.1%負荷のリスペリドンとポリマー1H、2H、3H、及び4Hとの均一な混合物は、実施例1J〜20Jと同じ方法で調製した。
【0275】
表1A、1B、及び1Cの18行目(実施例1N〜20N)は、ホモジナイザーを1分間バイアル中で使用して、50〜70℃でリスペリドン粉末(0.5g)を溶融ポリマー(5g)に混合することによる、rispと4つのポリマー(1A、5A、16A、及び18A)の各々との均一な2相混合物の調製を要約する。冷却段階中は、バイアル中の混合物が凝固するまで、バイアルを回転させ続けた。リスペリドンは、これらの4つのポリマーと混和性ではなかったため、不連続相としてCYSCポリマー中で均一に分散するようになった。
【0276】
実施例1O〜20O
実施例1J〜20Jからの5つの混合物(2J、3J、4J、19J、及び20J)は、手による粉砕工程にかけて粉末を生じさせ、その後450ミクロンのろ過網を介して通過させた。混合物19Jは、粘着性であり、凝塊を形成した。これらの粒子からのリスペリドン放出用の試験体は、0.5グラムの粉末を、ワインボトル形状のワイヤーメッシュ(1リニアインチ当たり200×200のワイヤー、約75ミクロンの開口部)に局限化させることにより準備した。その結果生じた物体を20mlのバイアルの底に配置し、放出試験用に準備した。
【0277】
実施例1P〜20P
実施例1J〜20Jからの均一な混合物2Jは、0.05グラムの混合物を底部に負荷して70℃の乾燥器中で暖め、混合物が流動して共に融合し、冷却後に均一な表面を有する非常に薄い円板に帰着させることにより、20mlのシンチレーションバイアル(28×61mm=ODxH)中の薄くて平たい円板として調製した。そのような薄い円板は、リスペリドン放出を迅速化すると共に、放出速度に対する温度誘発の効果を精査するために調製した。いったん温度誘発条件を確立した後で、実施例1J〜20Jと同一の方法を使用して0.5g規模の円板を調製し、実施例1P〜20Pで確立された条件を使用して、動的な温度誘発放出試験を実施した。
【0278】
実施例20Q
ポリマー20Aをウシ血清アルブミン(BSA、画分V、99%、Aldrich社製、66,000ダルトン)と混合することにより、均一な2相混合物を取得した。ホモジナイザーを1分間バイアル中で使用して、BSAを50〜70℃で溶融ポリマーに混合した。冷却段階中は、バイアル中の混合物が凝固するまで、バイアルを回転させ続けた。BSAは、ポリマー20Aと分子レベルでは混和性ではなかったため、不連続相としてCYSCポリマー中で均一に分散するようになった。
【0279】
実施例20R
実施例20Qの手順に従ったが、BSAはリュープロレリンパウダーに置き換えられており、リュープロレリンは、BSAのように分子レベルでポリマーと混和性でなく、不連続相としてCYSCポリマー中に均一に分散した。
【0280】
表1A、1B、及び1Cの19行目及び20行目(実施例1S〜20S)は、実施例1J〜20Jと同一の方法を使用した、プラバスタチンナトリウム(9.1%)と実施例1A〜20Aのポリマーとの混合物の調製を要約する。いずれの混合物にも相分離はなかった。混合物のDSC特徴は、20行目に示されている。
【0281】
表1A、1B、及び1Cの21行目及び22行目(実施例1T〜20T)は、実施例1J〜20Jと同一の方法を使用した、デキサメタゾン(9.1%)と実施例1A〜20Aのポリマーとの混合物の調製を要約する。ポリマー3A及び19Aを含有する混合物だけが、いずれの混合物においても相分離を示さなかった。それらの混合物のDSC特徴は、22行目に示されている。
【0282】
表1A、1B、及び1Cの23行目及び24行目(実施例1T〜20T)は、デキサメタゾン(9.1%)を含有する混合物の調製を要約する。実施例1N〜20Nと同一の方法の使用して、ポリマー2A、4A、7A、10A、17A、18A、及び20Aの各々と、デキサメタゾン粉末とを混合することにより、均一な2相混合物を調製した。デキサメタゾンは、ホモジナイザーを1分間バイアル中で使用して、50〜70℃で1/10の重量比で溶融ポリマーに添加した。冷却段階中は、バイアル中の混合物が凝固するまで、バイアルを回転させ続けた。デキサメタゾンは、これら7つのポリマーと分子レベルで混和性ではなかったため、不連続相としてCYSCポリマー中で均一に分散するようになった。混合物のDSC特徴は、24行目に示されている。
【0283】
実施例2U、3U、4U、及び20U
ポリマー2U、3U、4U、及び20Uは、それぞれポリマー2A、3A、4A、及び20Aと同じ成分を含有しており、残留モノマーを除去するための追加的な後処理を除いて同じ方法で調製した。ポリマー2U及び4Uの場合、IPAを除去する前に追加的な0.25%AIBNを使用し、その後メタノールで2回洗浄した。ポリマー4Uの場合、追加的な0.25%AIBN、0.5%L575、及び0.5%T42Sを使用して残留モノマーを低減させた。ポリマー20Uの場合、IPAを除去する前に追加的な0.25%AIBNを使用し、その後DI水で2回洗浄した。ポリマーのMw、Mn、及びDSC特徴は、表U1に示されている。
【0284】

【0285】
実施例2V、3V、4V、及び20V
実施例1J〜20Jに記載の方法を使用して、ポリマー2U、3U、4U、及び20Uを、9.1%のリスペリドンを含有する円筒状の物体(直径6mm、長さ20mm)に変換した。物体は、25KGyを超えるコバルト放射により殺菌した。
【0286】
表1A、1B、及び1Cの25行目及び26行目(実施例1W〜20W)は、タクロリムス(9.1%)と実施例1A〜20Aのポリマーとの混合物の調製を要約する。混合物は、50〜70℃で1/10/40の比率でタクロリムスをポリマーとIPA中で混合し、その後70℃の乾燥器中でIPAを除去することにより調製した。最終乾燥混合物は、70℃、減圧下で残留IPAを除去することにより取得した。乾燥混合物は全て均一であった。乾燥混合物のDSC特徴は、26行目に示されている。
【0287】
実施例1X〜20X
動物実験の記述(in vivoで、Steliosから)。
【0288】
実施例1Y〜20Y
ポリマー#4及び#20からのバースト除去の記述(ジョンによる)。
【0289】
実施例21〜40
対照としての、ポリマー1A〜20AのC12A類似体の調製
表Ex21〜40中の全てのC12A類似体は、実施例1A〜20Aと同一の工程を使用して調製した。全て、室温において非結晶性のポリマーである。これらのポリマーは、側鎖結晶化度の薬物放出速度に対する効果を研究するために、ポリマー1A〜20Aに対する対照として使用した。
【0290】

【0291】
実施例21A〜40A
ポリマー1A〜20AのC12Aポリマー類似体と9.1%のジクロフェナクナトリウムとの均一な混合物の調製
薬物とポリマー31から40との混合物は、50〜70℃で、ジクロフェナクナトリウム/ポリマー/IPA=1/10/35(重量/重量/重量)の比率で、ジクロフェナクナトリウムをポリマーとイソプロピルアルコール(IPA)中で混合し、その後70℃の乾燥器中でIPAを気化させることにより、9.1%の薬物負荷で調製した。最終乾燥薬物/ポリマー混合物は、70℃、減圧下で残留IPAを除去することにより取得した。実施例31〜40におけるポリマーとジクロフェナクナトリウムとの20の混合物のうちの8つが、均一な混合物を産出したことが見出された。ジクロフェナクナトリウムとの均一な混合物を産出したポリマーは、#22、#24、#26、#27、#28、#29、#33、及び#35であった。均一な薬物/ポリマー混合物は非結晶性のままだったことが観察された。
【0292】
実施例41〜51
対照としての11の市販ポリマーと、9.1%のジクロフェナクナトリウムとの均一な混合物(PLGA及びプルロニックポリマーを含む)の調製
表Ex41〜51aの種々の市販ポリマーは、Aldrich Chemical社から購入し、ジクロフェナクナトリウムの制御放出と関係したCYSCポリマーに対する対照として使用した。実施例41から48におけるこれらのポリマーは全て水溶性であった。実施例42及び48のポリマーは、主鎖結晶性ポリマーであるPLGAポリマーである。実施例41から48の混合物は全て、実施例1C〜20Cと同じ方法で調製し、その結果生じた乾燥混合物は均一であった。リスペリドンは、両タイプのPLGAポリマー(#42及び#48)と混和性ではない。
【0293】
プルロニックF127、F68、及びF38も、BASF Corporation社製のリスペリドンの制御放出と関係したCYSCポリマーに対する対照として獲得した。これらのポリマーもまた、10℃/分のDSCによる2回目の加熱に基づき、それぞれ56℃、54℃、及び49℃の融解温度を有する主鎖結晶性ポリマーである。表Ex41〜51bの混合物も1C〜20Cと同じ方法で調製し、均一であった。ジクロフェナクナトリウムは、3つのポリマー(#49、#50、及び#51)全てと混和性ではない。
【0294】

【0295】

【0296】
実施例52〜67
実施例1C〜20Cからのジクロフェナクの徐放/制御放出
ジクロフェナクナトリウムに関する典型的な放出試験は、ポリマー/薬物円板を5グラムのpH=7.4の緩衝液で覆い、それを、1分、2時間、6時間、毎日、毎週の、又は必要に応じた計画的なサンプリング時間で取り除き、5グラムの新しい緩衝液と置換することにより実施した。試料溶液に放出されたジクロフェナクナトリウムの量は、λ=276.93nmでの吸光信号を使用することにより確立された検量線に対するUV‐Visにより測定した。
【0297】
実施例1Aから20Aにおける均一な15の混合物は全て、リン酸緩衝液(50mMのイオン強度、pH7.4、150mMNaClで等張化され、0.01%w/vのツイーン20を含有する)での放出試験に供した。下記では、緩衝液を調製するために使用された手順を説明する。100mlのDI水に、0.16gのリン酸一ナトリウム一水和物及び1.04gのリン酸二ナトリウムを添加し、その後それぞれ0.9%及び0.01%w/vの終濃度にNaCl及びツイーン20を添加した。pH値は、必要に応じて0.1NのHCl又は0.1NのNaOHで、7.4に調整した。
【0298】
実施例52から67は、実施例1C〜20Cにおける15の均一な混合物を使用したジクロフェナクナトリウムの制御放出特性を表し、330‐91‐XXと表示され、ここで番号XXは実施例1C〜20Cにおける番号に対応する。図C1、C2、及びC3は、7.4のpHを有する緩衝液中でのジクロフェナクナトリウムの累積放出を示す。
【0299】
実施例68から75
実施例1D〜20Dからのジクロフェナクの徐放/制御放出
実施例68から75は、実施例1D〜20Dにおける8つの均一な混合物を使用したジクロフェナクナトリウムの制御放出特性を表し、330‐108‐XXと表示され、ここで番号XXは実施例1D〜20Dにおける番号に対応する。図D1は、ジクロフェナクナトリウムの累積放出を示す。
【0300】
実施例76から81
実施例1E〜20Eからのジクロフェナクの徐放/制御放出
実施例76から81は、実施例1E〜20Eにおける6つの均一な混合物を使用したジクロフェナクナトリウムの制御放出特性を表し、330‐109‐XXと表示され、ここで番号XXは実施例1E〜20Eにおける番号に対応する。図Elは、ジクロフェナクナトリウムの累積放出を示す。徐放性は、大量のNMPを添加したため、実施例76〜81においてはもはや存在しない。
【0301】
実施例82〜115
実施例1F〜20Fからのジクロフェナクの徐放/制御放出
実施例82から115は、実施例1F〜20Fにおける全ての均一な混合物を使用したジクロフェナクナトリウムの制御放出特性を表し、16.7%及び23.1%の負荷の場合、332‐23‐XX及び332‐24‐XXと表示され、ここで番号XXは、実施例1A〜20A及び336‐R4‐Yにおけるポリマー番号に対応し、ここで番号Yは表F1における番号に対応する。図F1、F2、及びF3は、16.7%負荷のジクロフェナクナトリウムの累積放出を示す。図F4及びF5は、23.1%負荷のジクロフェナクナトリウムの累積放出を示す。図F6は、37.5%までのジクロフェナクナトリウムのポリマー2Aからの放出特性を要約する。図F6では、放出識別番号336‐R4‐1から‐336‐R4‐7は、表F1の2F1から2F7に対応する。
【0302】
実施例116から118
実施例G1〜G4からのジクロフェナクの徐放/制御放出
実施例116〜118は、実施例G1〜G4における3つの均一な混合物を使用したジクロフェナクナトリウムの制御放出特性を表し、336‐7‐Xと表示され、ここで番号Xは表G1における番号に対応する。図Glは、2Aと、3A、4A、及び20Aとの混合物からの、並びに比較として単一ポリマー2A、3A、4A、及び20Aからのジクロフェナクナトリウムの放出特性を要約する。
【0303】
実施例119〜122
実施例H1〜H4からのジクロフェナクの徐放/制御放出
実施例119〜122は、実施例H1〜H4の4つの均一な混合物を使用したジクロフェナクナトリウムの制御放出特性を表し、336‐8R8‐Xと表示され、ここで番号Xは表H1における番号に対応する。図H1は、Tmがより高いポリマーからのジクロフェナクナトリウムの放出特性を要約する。
【0304】
実施例123〜127
実施例1I〜20Iからのジクロフェナクの徐放/制御放出
実施例123〜127は、実施例1I〜20Iにおける表1A、1B、及び1Cの5つの2相混合物を使用したジクロフェナクナトリウムの制御放出特性を表し、336‐2R2‐Xと表示され、ここで番号Xは表A1におけるポリマー番号に対応する。図I1は、ジクロフェナクナトリウムの放出特性を要約する。
【0305】
実施例128〜132
実施例1J〜20Jからのリスペリドンの徐放/制御放出
リスペリドンに関する典型的な放出試験は、ポリマー/薬物円板を12.6グラムのpH=5.5の緩衝液で覆い、それを、1分、2時間、6時間、毎日、毎週の、又は必要に応じた計画的なサンプリング時間で取り除き、12.6グラムの新しい緩衝液と置換することにより実施した。試料溶液に放出されたリスペドリンの量は、λ=276.93nmでの吸光信号を使用することにより確立された検量線に対するUV‐Visにより測定した。
【0306】
実施例1Jから20Jにおける5つの均一な混合物は全て、リン酸緩衝液(50mMのイオン強度、pH5.5、150mMNaClで等張化され、0.01%w/vのツイーン20を含有する)での放出試験に供した。下記では、緩衝液を調製するために使用された手順を説明する。100mlのDI水に、0.16gのリン酸一ナトリウム一水和物及び1.04gのリン酸二ナトリウムを添加し、その後NaCl及びツイーン20を添加して、それぞれ0.9%及び0.01%w/vの終濃度にした。pHは、必要に応じて0.1NのHClで5.5に調整した。
【0307】
実施例128から132は、実施例1J〜20Jにおける5つの均一な混合物を使用したリスペリドンの制御放出特性を表し、330‐117‐XXと表示され、ここで番号XXは表1A、1B、及び1Cにおける番号に対応する。図Jlは、5つのポリマーにおける、9.1%リスペリドン混合物からのリスペリドンの放出特性を示す。
【0308】
実施例133〜139
実施例1K〜20Kからのリスペリドンの徐放/制御放出
実施例133から139は、実施例1K〜20Kにおける7つの均一な混合物を使用したリスペリドンの制御放出特性を表し、336‐5‐Xと表示され、ここで番号Xは表K1の番号3K1から3K7に対応する。図Klは、37.5%までのリスペリドンのポリマー3Aからの累積放出を示す。
【0309】
実施例140〜142
実施例L1〜L4からのリスペリドンの徐放/制御放出
実施例140〜142は、実施例1L〜20Lにおける3つの均一な混合物を使用したリスペリドンの制御放出特性を表し、336‐R6‐Xと表示され、ここで番号Xは表L1の番号L1からL4に対応する。図Llは、2Aと、3A、4A、及び20Aとの混合物からの、並びに比較として単一ポリマー2A、3A、4A、及び20Aからのリスペドリンの放出特性を要約する。
【0310】
実施例143〜146
実施例1M〜20Mからのリスペリドンの徐放/制御放出
実施例143〜146は、実施例1M〜20Mにおける表H1の4つの均一な混合物H1からH4を使用したリスペリドンの制御放出特性を表し、336‐R9‐Xと表示され、ここで番号Xは表H1のポリマー番号H1からH4に対応する。図M1は、Tmがより高いポリマーからのリスペドリンの放出特性を要約する。
【0311】
実施例147〜150
実施例1N〜20Nからのリスペリドンの徐放/制御放出
実施例147〜150は、実施例1N〜20Nにおける4つの2相混合物を使用したリスペリドンの制御放出特性を表し、336‐3R3‐Xと表示され、ここで番号Xは表1A、1B、及び1Cにおける番号に対応する。図N1は、4つのポリマーからのリスペドリンの放出特性を要約する。
【0312】
実施例151〜154
実施例1O〜20Oからのリスペリドンの徐放/制御放出
実施例151〜154は、実施例1O〜20Oにおける粉末形態のポリマー2A、3A、4A、及び20Aからのリスペリドンの制御放出特性を表し、335‐31‐XXと表示され、ここで番号XXは表1A、1B、及び1Cのポリマー識別番号の番号に対応する。図O1は、4つのポリマーからのリスペドリンの放出特性を要約する。
【0313】
実施例155〜156
実施例1P〜20Pのポリマー2Aからの静的温度で誘発されたリスペリドンの放出
実施例155から156は、37℃及び60℃での、0.05グラム規模の薄い円板としての実施例1P〜20Pにおけるポリマー2Aからのリスペリドンの制御放出特性を表す。放出識別番号は、37℃及び60℃で、それぞれ330‐135‐2及び332‐3‐2と表示される。図Plは、37℃及び60℃での、0.05グラム規模の薄い円板としてのポリマー2Aからのリスペリドンの放出特性を要約する。
【0314】
実施例157〜163
実施例1P〜20Pのポリマー2Aからの動的温度で誘発されたリスペリドンの放出
実施例157及び163は、選択された時間及び/又は日数の、37℃及び60℃恒温槽での、実施例155〜156より厚い0.5グラム規模の円板としての実施例1P〜20Pにおけるポリマー2Aからのリスペリドンの制御放出特性を表す。
【0315】
図P2は、pH5.5の緩衝液中の0.5グラムの厚い円板を、毎日0、5、15、30、及び60分間(0=温度スイッチがオフ、5、15、30、及び60分=それぞれ5、15、30、及び30分間、温度スイッチがオン)60℃の恒温槽に、及び残りの時間は37℃で曝露させることによる、ポリマー2Aからの温度で誘発されたリスペリドンの放出特性の1つの型を要約する。放出識別番号は、332‐27‐XXと表示された。
【0316】
図P3は、pH5.5の緩衝液中の0.5グラムの厚い円板を、1日おきに0分間(温度スイッチがオフ位置)及び60分間(温度スイッチがオン位置)60℃の恒温槽に、及び残りの時間は37℃で曝露させることによる、ポリマー2Aからの温度で誘発されたリスペリドンの放出特性の別の型を要約する。放出識別番号は、332‐45‐1、2、3と表示された。
【0317】
図P4は、pH5.5の緩衝液中の0.5グラムの厚い円板を、2日おきに0分間(温度スイッチがオフ位置)及び60分間(温度スイッチがオン位置)60℃の恒温槽に、及び残りの時間は37℃で曝露させることによる、ポリマー2Aからの温度で誘発されたリスペリドンの放出特性の第3の型を要約する。放出識別番号は、332‐45‐4、5、6と表示された。
【0318】
実施例164〜166
実施例20Qからの静的pHで誘発されたBSAの放出
実施例164〜166は、pH=7.4、5.5、及び2.5を有する37℃の緩衝液中における、ポリマー20A(実施例1Q〜20Qにおける実施例20Q)からのBSAの制御放出特性を表す。図Q1は、37℃のこれらの緩衝液中における、ポリマー20Aからの静的pHで誘発されたBSAの放出特性を要約する。放出識別番号は、pH7.4、5.5、及び2.5緩衝液中での放出について、それぞれ334‐19‐20、334‐20‐20、及び334‐21‐20と表示される。
【0319】
実施例167
実施例20Qからの動的pHで誘発されたBSAの放出
実施例167は、最初の3時間はpH=2.5の37℃緩衝液、及び残りの時間はpH=7.4の37℃緩衝液中における、ポリマー20A(実施例1Q〜20Qにおける実施例20Q)からのBSAの制御放出特性を表す。図Q2は、37℃の動的pH緩衝液中における、ポリマー20Aからの動的pHで誘発されたBSAの放出特性を要約する。放出識別番号は、334‐52‐20と表示された。
【0320】
実施例168〜173
実施例20Rからの静的及び動的pHで誘発されたリュープロレリンの放出
実施例168〜173は、静的pHで誘発された放出の場合、37℃のpH=2.5及び7.4の緩衝液中、動的pHで誘発された放出の場合、pH=2.5及び7.5の組み合わせで(最初の3時間はpH=2.5で、及び残りの時間はpH=7.4で)の、ポリマー20Aからのリュープロレリンの制御放出特性を表す。図R1は、37℃における、ポリマー20Aからの静的及び動的pHで誘発されたリュープロレリンの放出特性を要約する。
【0321】
実施例174〜179
実施例1S〜20Sからのプラバスタチンナトリウムの徐放/制御放出
実施例174から179は、pH=7.4を有する37℃の緩衝液中における、選択されたポリマー1A、2A、3A、4A、19A、及び20Aからのプラバスタチンナトリウムの制御放出特性を表す。図S1は、pH=7.4を有する37℃の緩衝液中における、実施例1R、2R、3R、4R、19R、及び20Rからのプラバスタチンの放出特性を要約する。放出識別番号は336‐1‐Xと表示され、ここで番号Xは、表1A、1B、及び1Cの実施例識別番号に対応する。放出及びサンプリング条件は、実施例1C〜20Cと同一である。試料溶液に放出されたプラバスタチンナトリウムの量は、λ=238.5nmでの吸光信号を使用することにより確立された検量線に対するUV‐Visにより測定した。
【0322】
実施例180〜181
実施例1T〜20Tからのデキサメタゾンの徐放/制御放出
実施例180から181は、pH=7.4を有する37℃の緩衝液中における、ポリマー3A及び19Aからのデキサメタゾンの制御放出特性を表す。図T1は、pH=7.4を有する37℃の緩衝液中における、ポリマー3R及び19Rからのプラバスタチンの放出特性を要約する。放出識別番号は336‐35‐XXと表示され、ここで番号XXは、表1A、1B、及び1Cの実施例識別番号に対応する。放出及びサンプリング条件は、実施例1C〜20Cと同一である。試料溶液に放出されたデキサメタゾンの量は、λ=242nmでの吸光信号を使用することにより確立された検量線に対するUV‐Visにより測定した。
【0323】
実施例182〜188
実施例1T〜20T(均一な2相混合物)からのデキサメタゾンの徐放/制御放出
実施例182から188は、pH=7.4を有する37℃の緩衝液中における、ポリマー2A,4A、7A、10A、17A、18A、及び20Aからのデキサメタゾンの制御放出特性を表す。図T2は、pH=7.4を有する37℃の緩衝液中における、ポリマー2A,4A、7A、10A、17A、18A、及び20Aからのプラバスタチンの放出特性を要約する。放出識別番号は336‐35‐XXと表示され、ここで番号XXは、表1A、1B、及び1Cの実施例識別番号に対応する。放出及びサンプリング条件は、実施例1C〜20Cと同一である。試料溶液に放出されたデキサメタゾンの量は、λ=242nmでの吸光信号を使用することにより確立された検量線に対するUV‐Visにより測定した。
【0324】
実施例189〜196
実施例21A〜40A(対照としてのポリマー1A〜20AのC12A類似体)からのジクロフェナクの徐放/制御放出
実施例189から196は、実施例21A〜40Aにおける8つの均一な混合物を使用したジクロフェナクナトリウムの制御放出特性を表し、332‐7‐XXと表示され、ここで番号XXは、表Ex21〜40のポリマー識別番号に対応する。図Ex21A〜40Aは、実施例21A〜40Aからのジクロフェナクナトリウムの累積放出を示す。
【0325】
実施例197〜207
実施例41〜51(対照としての市販ポリマー)からのジクロフェナクナトリウム及びリスペリドンの徐放/制御放出
実施例197〜204は、実施例41〜51における4つの均一な混合物を使用したジクロフェナクナトリウムの制御放出特性を表し、332‐4‐XXと表示され、ここで番号XXは、図Ex41〜51aに示されたポリマー識別番号に対応する。図Ex41〜51aは、7.4のpHを有する緩衝液中におけるジクロフェナクナトリウムの累積放出を示す。典型的な放出試験は、ポリマー/薬物円板を5グラムの緩衝液で覆い、それを、1分、2時間、6時間、毎日、毎週の、又は必要に応じた計画的なサンプリング時間で取り除き、5グラムの新しい緩衝液で置換することにより実施した。試料溶液に放出されたジクロフェナクナトリウムの量は、λ=276.93nmでの吸光信号を使用することにより確立された検量線に対するUV‐Visにより測定した。
【0326】
実施例205〜207は、実施例41〜51における3つの均一な混合物を使用したリスペリドンの制御放出特性を表し、332‐75‐Xと表示され、ここで番号Xは、図Ex41〜51bに示されたポリマー識別番号に対応する。図Ex41〜51bは、5.5のpHを有する緩衝液中におけるリスペドリンの累積放出を示す。典型的な放出試験は、ポリマー/薬物円板を12.6グラムの緩衝液で覆い、それを、1分、2時間、6時間、毎日、毎週の、又は必要に応じた計画的なサンプリング時間で取り除き、12.6グラムの新しい緩衝液で置換することにより実施した。試料溶液に放出されたリスペドリンの量は、λ=276.93nmでの吸光信号を使用することにより確立された検量線に対するUV‐Visにより測定した。
【0327】
実施例208〜212
実施例1Y〜20YからのリスペリドンのIn Vivo徐放/制御放出
実施例206〜210は、リスペリドンのin vivo放出特性を表し、図Y1からY5に示されている。図Y1は、in vivo対照制御放出特性を示す。図Y2からY5は、識別されたポリマーの各々からのin vivoリスペリドン放出を示す。
【0328】
実施例213
リスペリドンを負荷したインテリマー(Intelimer)ポリマーの前臨床評価
方法:本発明のポリマーの徐放特性を、健康なスピローグ‐ドーリーラット(Sprague‐Dawley rat)皮下(SC)移植モデルで評価した。移植片を下記に記載したように調製し、リスペリドンで負荷した。手短かに言えば、4つの異なるタイプの移植片:群#2(336‐19‐2)、群#4(336‐19‐3)、群#3(336‐19‐4)、及び群#20(336‐19‐20)を調製して評価した。加えて、薬物物質を欠いている移植片:群#6(336‐20‐2)及び群#7(336‐20‐20)も同様に調製して評価した。計10の各移植片試験体の複製を準備し、それらのうちの4つを1動物当たり単回の移植用に無作為に選択した。全ての系は、移植の完了前後に室温で保管した。
【0329】
対照物体としてリスペリドンの水溶液を使用した。リスペリドン溶液は、0.01%w/vのトウィーン80を含有するリン酸緩衝液pH5.5中に0.27mg/mLの薬物濃度で調製し、0.45ミクロンのポリカーボネート膜を介してろ過した。溶液は、追加的な希釈なしでSCに0.2mg/kgで注射した。
【0330】
研究開始時に体重がおよそ300gであり、頚静脈にカニューレが挿入された(JVC)雄のスピローグドーリーラット(Hilltop Lab Animals社、スコットデール、ペンシルバニア州)だけの7つの群(群1はN=6、及び他の6群はN=4)を特徴付けた。Landec社製デバイスの外科的移植を浅麻酔下のラットに実施した。移植片を、PBS溶液pH 7.4で単回すすぎで短時間すすぎ、ラットのSC空間に挿入した。
【0331】

【0332】
血液(0.3ml)試料を、上記の表に記載されているような規定時間間隔で収集し、抗凝血剤としてEDTAを有するラベルが張られたMicrotainer(登録商標)管に配置した。ヘパリン血液試料を遠心分離し、ラベルが張られたエッペンドルフ(登録商標)チューブに移動させ、‐80℃で凍結させ、リスペリドン及び9‐ヒドロキシ‐リスペリドン用の有効なLC‐MSアッセイにより分析した。研究終了時に、試験施設の標準実施要領に従って動物を安楽死させ、その後心臓穿刺により終末時出血させた。デバイスを移植したラットは肉眼剖検を受け、その一方で確立された尺度を使用して、過敏、紅斑、浮腫について組織を肉眼で数値化した。
【0333】
結果:下記のグラフに示された結果は、親化合物及び活性代謝物(9‐ヒドロキシ‐リスペリドン)の両方を含む、血漿中の総リスペリドンを表す。

【図C1】

【図C2】

【図C3】

【図D1】

【図E1】

【図F1】

【図F2】

【図F3】

【図F4】

【図F5】

【図F6】

【図G1】

【図H1】

【図I1】

【図J1】

【図K1】

【図L1】

【図M1】

【図N1】

【図O1】

【図P1】

【図P2】

【図P3】

【図P4】

【図Q1】

【図Q2】

【図R1】

【図S1】

【図T1】

【図T2】

【図Ex21A−40A】

【図Ex41−51a】

【図Ex41−51b】

【図Y1】

【図Y2】

【図Y3a】

【図Y3b】

【図Y4】

【図Y5a】

【図Y5b】

【図AP1】

【図AP2】

【図AP3】

【図213A】

【図213B】

【図213C】

【図213D】

【図213E】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
上文で定義された薬物及びCYSCポリマーを少なくとも1つ含む医薬製剤。
【請求項2】
前記CYSCポリマーが複数のY(Rc)ラジカルを含み、少なくとも7J/gの融解熱を有する、請求項1に記載の製剤。
【請求項3】
少なくとも2重量%の前記薬物を含有する、請求項1に記載の製剤。
【請求項4】
前記CYSCポリマーが、1つ又は複数のRc部分を含み、前記部分または前記部分が複数ある場合は前記部分のそれぞれが、11から49個のメチレン部分を含む、請求項1に記載の製剤。
【請求項5】
前記CYSCポリマーが、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリアルキルメタクリレート、ポリ‐N‐アルキルメタクリルアミド、ポリアルキルアクリレート、ポリフルオロアクリレート、ポリ‐N‐アルキルアクリルアミド、ポリアルキルオキサゾリン、ポリアルキルビニルエーテル、ポリアルキル1,2‐エポキシド、ポリアルキルグリシジルエーテル、ポリビニルエステル、ポリアクリルアミド、ポリメタクリルアミド、ポリマレイミド、ポリ‐α‐オレフィン、ポリ‐p‐アルキルスチレン、ポリアルキルビニルエーテル、ポリエーテル、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリリン酸塩、ポリウレタン、ポリシラン、ポリシロキサン、及びポリアルキルホスファゼンからなる群から選択される、請求項1に記載の製剤。
【請求項6】
前記ポリマーがTp‐To<Tp0.7を有する、請求項1に記載の製剤。
【請求項7】
前記薬物が、静電結合、水素結合、ファンデルワールス力、共有結合、及びエントロピー力から選択される1つ又は複数の結合により、前記ポリマーと結合されている、請求項1に記載の製剤。
【請求項8】
Rcが、14から50個の間の炭素原子を含有するn‐アルキル部分を含む、請求項4に記載の製剤。
【請求項9】
前記CYSCポリマーが、1,000ダルトンから50,000ダルトンの間のMn分子量を有する、請求項1に記載の製剤。
【請求項10】
前記CYSCポリマーが、38℃から60℃の間のTpを有する、請求項1に記載の製剤。
【請求項11】
前記ポリマーが、ジメチルアミノエチルメタクリレート、ジエチルアミノエチルメタクリレート、t‐ブチルアクリルアミド、ジメチルアミノプロピルメタクリルアミド、N‐イソプロピルアクリルアミド、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、N,N‐ジアルキルアミノ(特にジメチルアミノ)(メタ)アクリレート;アンモニウム塩含有(メタ)アクリレート、例えば2‐トリメチルアンモニウムメチルメタクリレートクロリド、メタクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウムクロリド、N,N‐(ジエチル又はジメチル)アミノエチル(メタ)アクリレートメトサルフェート;N‐ビニルピロリジノン;一級アミンとのマレイン酸無水物又はイタコン酸無水物の閉環反応産物のようなイミド;2‐メタクリルオキシ‐N‐エチルモルホリン;n又はt‐ブチルアクリルアミド;(メタ)クリルアミド;ジメチルアミノプロピルメタクリルアミド;2‐t‐ブチルアミノエチルメタクリレート;(メタ)アクリロニトリル;t‐ブチルアミノエチル(メタ)アクリレート;アクリロイルモルホリン;N‐(2‐ヒドロキシエチル)アセトアミド,1‐ピペリジノエチル(メタ)アクリレート、アクリル酸、メタクリル酸;イタコン酸無水物;イタコン酸;マレイン酸無水物;マレイン酸;フマル酸;フマル酸、マレイン酸、クロトン酸、及び2‐アクリルアミド‐2‐メチルプロパンスルホン酸(「AMP」)のモノエステル及びモノアミド;ビニルスルホン酸、ビニルアセテート、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート;テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート;グリシジルメタクリレート;アルコキシアルキル(メタ)アクリレート、例えばメトキシエチル(メタ)アクリレート;l‐アクリルオキシ‐2‐ヒドロキシ‐3‐フェノキシプロパン;メチロールメタクリレート;エトキシエチル(メタ)アクリレート;2‐(2‐エトキシエトキシ)エチルアクリレート;アセトアセトキシエチル(メタ)アクリレート;フェノキシエチル(メタ)アクリレート;(メタ)アクロレイン;アルコキシ又はヒドロキシル(ポリオキシアルキレン)アルキル(メタ)アクリレート、例えばメトキシ‐又はヒドロキシポリオキシエチレン(メタ)アクリレート、アルコキシ‐又はヒドロキシポリオキシプロピレン‐ポリオキシエチレンアルキル(メタ)アクリレート、トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、ヘプタデカフルオロデシル(メタ)アクリレート、オクタフルオロペンチル(メタ)アクリレート、エイコサフルオロウンデシル(メタ)アクリレート、ヘキサデカフルオロノニル(メタ)アクリレート、テトラヒドロペルフルオロデシル(メタ)アクリレート;トリメチルシロキシエチル(メタ)アクリレート、3‐アクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、及び3‐アクリルオキシプロピルトリス(トリメチルシロキシ)シラン、モノメタクリルオキシモノトリメチルシロキシ末端化ポリエチレンオキシド、及びモノメタクリルオキシプロピルアルキルポリジメチルシロキサンからなる群から選択される1つ又は複数のモノマーから誘導される単位を含む、請求項1に記載の製剤。
【請求項12】
前記ポリマーが加水分解的に安定している、請求項1に記載の製剤。
【請求項13】
前記ポリマーが主鎖結晶化度を所有しない、請求項1に記載の製剤。
【請求項14】
前記ポリマーが、ブロックコポリマーでなく、グラフトコポリマーでない、請求項1に記載の製剤。
【請求項15】
前記ポリマーがヒドロゲルではない、請求項1に記載の製剤。
【請求項16】
前記CYSCポリマーがランダムコポリマーである、請求項1に記載の製剤。
【請求項17】
前記ポリマーが、少なくとも幾つかのラジカルが官能化にされているY(Rc)及びZ(Rz)ラジカルの両方を含むランダムコポリマーである、請求項1に記載の製剤。
【請求項18】
前記薬物が、抗疼痛剤、抗精神病薬、抗炎症薬、ホルモン、コレステロール降下薬、抗骨粗鬆症薬、抗血管形成剤、及び避妊薬からなる群から選択される薬物である、請求項1に記載の製剤。
【請求項19】
前記製剤が、対象内に移植された際に、in vivoで少なくとも30日の期間にわたって治療的有効量の薬物を前記対象に連続的に放出する、請求項18に記載の製剤。
【請求項20】
前記薬物が、リスペリドン又は薬理学的に活性のあるその誘導体、同族体、又は代謝産物である、請求項18に記載の製剤。
【請求項21】
前記製剤からの薬物の平均放出速度が、in vitroで(1LのPBS、pH7.2に37℃で溶出、100rpmで撹拌)、溶出の最初の168時間中の任意の24時間の期間にわたって平均された1日当たり20ミリグラムを超えない、請求項20に記載の製剤。
【請求項22】
前記製剤からの薬物の平均放出速度が、in vitroで(1LのPBS、pH7.2に37℃で溶出、100rpmで撹拌)、溶出の開始後12時間から168時間までの期間中の任意の24時間の期間にわたって平均された1日当たり20ミリグラムを超えない、請求項20に記載の製剤。
【請求項23】
前記製剤が、in vitroで(1LのPBS、pH7.2に37℃で溶出、100rpmで撹拌)、少なくとも30日の期間にわたって1日当たり0.1ミリグラムから20ミリグラムの間を連続して放出する、請求項20に記載の製剤。
【請求項24】
前記製剤が、in vitroで(1LのPBS、pH7.2に37℃で溶出、100rpmで撹拌)、溶出の開始後12時間から168時間までの期間中の任意の24時間の期間にわたって平均された1日当たり0.1ミリグラムから20ミリグラムの間を放出する、請求項20に記載の製剤。
【請求項25】
前記製剤に負荷された総薬物の20重量%以下が、in vitroで(ILのPBS、pH7.2に37℃で溶出、100rpmで撹拌)、24時間の期間にわたって前記医薬組成物から放出される、請求項1の製剤。
【請求項26】
前記製剤が、対象内に移植された際に、in vivoで少なくとも30日の期間にわたって、治療量の薬物を前記対象に連続的に放出する、請求項1に記載の製剤。
【請求項27】
対象に薬物を投与するための方法であって、(1)前記対象に請求項1に記載の製剤を投与することと、(2)少なくとも30日の期間にわたって前記対象に治療的有効量の薬物を連続的に放出することとを含む方法。
【請求項28】
前記製剤を液体と接触させることによる前記製剤の前処理を含む、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記投与が前記対象内に前記製剤を移植することを含む、請求項27に記載の方法。
【請求項30】
前記移植が皮下のである、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記薬物が、抗疼痛剤、抗精神病薬、抗炎症剤、ホルモン、コレステロール降下薬、抗骨粗鬆症薬、抗血管形成剤、及び避妊薬からなる群から選択され、請求項1に記載の製剤が、少なくとも5重量%の前記薬物を含有する、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記薬物がリスペリドンである、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記製剤が、少なくとも5重量%の前記薬物を含有し、前記CYSCポリマーが、1つ又は複数のRc部分を含み、前記部分または前記部分が複数ある場合は前記部分のそれぞれが、11から49個のメチレン部分を含む、請求項27に記載の方法。
【請求項34】
前記ポリマーが、ジメチルアミノエチルメタクリレート、ジエチルアミノエチルメタクリレート、t‐ブチルアクリルアミド、ジメチルアミノプロピルメタクリルアミド、N‐イソプロピルアクリルアミド、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、N,N‐ジアルキルアミノ(特にジメチルアミノ)(メタ)アクリレート;アンモニウム塩含有(メタ)アクリレート、例えば2‐トリメチルアンモニウムメチルメタクリレートクロリド、メタクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウムクロリド、N,N‐(ジエチル又はジメチル)アミノエチル(メタ)アクリレートメトサルフェート;N‐ビニルピロリジノン;一級アミンとのマレイン酸無水物又はイタコン酸無水物の閉環反応産物のようなイミド;2‐メタクリルオキシ‐N‐エチルモルホリン;n又はt‐ブチルアクリルアミド;(メタ)アクリルアミド;ジメチルアミノプロピルメタクリルアミド;2‐t‐ブチルアミノエチルメタクリレート;(メタ)アクリロニトリル;t‐ブチルアミノエチル(メタ)アクリレート;アクリロイルモルホリン;N‐(2‐ヒドロキシエチル)アセトアミド,1‐ピペリジノエチル(メタ)アクリレート、アクリル酸、メタクリル酸;イタコン酸無水物;イタコン酸;マレイン酸無水物;マレイン酸;フマル酸;フマル酸、マレイン酸、クロトン酸、及び2‐アクリルアミド‐2‐メチルプロパンスルホン酸(「AMP」)のモノエステル及びモノアミド;ビニルスルホン酸、ビニルアセテート、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート;テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート;グリシジルメタクリレート;アルコキシアルキル(メタ)アクリレート、例えばメトキシエチル(メタ)アクリレート;l‐アクリルオキシ‐2‐ヒドロキシ‐3‐フェノキシプロパン;メチロールメタクリレート;エトキシエチル(メタ)アクリレート;2‐(2‐エトキシエトキシ)エチルアクリレート;アセトアセトキシエチル(メタ)アクリレート;フェノキシエチル(メタ)アクリレート;(メタ)アクロレイン;アルコキシ又はヒドロキシル(ポリオキシアルキレン)アルキル(メタ)アクリレート、例えばメトキシ‐又はヒドロキシポリオキシエチレン(メタ)アクリレート、アルコキシ‐又はヒドロキシポリオキシプロピレン‐ポリオキシエチレンアルキル(メタ)アクリレート、トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、ヘプタデカフルオロデシル(メタ)アクリレート、オクタフルオロペンチル(メタ)アクリレート、エイコサフルオロウンデシル(メタ)アクリレート、ヘキサデカフルオロノニル(メタ)アクリレート、テトラヒドロペルフルオロデシル(メタ)アクリレート;トリメチルシロキシエチル(メタ)アクリレート、3‐アクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、及び3‐アクリルオキシプロピルトリス(トリメチルシロキシ)シラン、モノメタクリルオキシモノトリメチルシロキシ末端化ポリエチレンオキシド、及びアルキル基が1〜8個の炭素原子を含有するモノメタクリルオキシプロピルアルキルポリジメチルシロキサン、からなる群から選択される1つ又は複数のモノマーから誘導される単位を含む、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記薬物がリスペリドンであり、前記治療的有効量が1日当たり1mgから60mgの間である、請求項27に記載の方法。
【請求項36】
前記薬物がジクロフェナクナトリウムであり、前記治療的有効量が1日当たり50mgから300mgの間である、請求項27に記載の方法。
【請求項37】
前記CYSCポリマーが、少なくとも幾つかのラジカルが官能化にされているY(Rc)及びZ(Rz)ラジカルの両方を含むランダムコポリマーである、請求項27に記載の方法。
【請求項38】
対象に薬物を投与するための方法であって、(1)前記対象に請求項1に記載の製剤を投与することと、(2)治療的有効量の前記薬物を前記製剤から放出することとを含む方法。
【請求項39】
前記製剤が、液体、懸濁液、エマルジョン、ナノ粒子、ゲル、デポーの形態であるか、又は移植可能なデバイスの一部を形成する、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
前記製剤が注射可能な製剤である、請求項40に記載の方法。
【請求項41】
治療的有効量の前記薬物が、少なくとも7日の期間にわたって前記製剤から放出される、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
前記CYSCポリマー及び前記薬物をin situで組み合わせることにより、前記製剤が形成される、請求項38に記載の方法。
【請求項43】
前記製剤が複数の異なるCYSCポリマーを含む、請求項38に記載の方法。
【請求項44】
対象に薬物を投与するための方法であって、(1)前記対象に請求項1に記載の製剤を投与することと、(2)治療的有効量の前記薬物を所定の時間で放出することとを含み、前記薬物が、以下の条件変化;
(i)前記製剤の加熱、
(ii)前記製剤の水和、
(iii)前記製剤の酵素への曝露、
(iv)前記製剤を取り囲む環境のpH変化
の1つ又は複数により、前記製剤から放出される方法。
【請求項45】
前記薬物が酸不安定性の薬物であり、前記薬物が経口で投与され、pHが6を超える場合の条件下で、治療的有効量の前記薬物が前記製剤から放出される、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
前記薬物がペプチド又はタンパク質である、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
前記CYSCポリマーがその融解温度を超えるまで加熱されるように前記製剤を熱に曝露させることにより、治療的有効量の前記薬物が放出される、請求項44に記載の方法。
【請求項48】
前記製剤が、標的に特異的に結合するリガンドを更に含む、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
安定した医薬製剤を作製するための方法であって、薬物が前記医薬組成物の総重量の少なくとも5%に相当するように、(1)CYSCポリマーをその融点を超えるまで加熱することと、(2)前記薬物を前記溶解CYSCポリマーと混合することと、(3)前記混合物を冷却することとを含む方法。
【請求項50】
前記CYSCポリマーが、1つ又は複数のRc部分を含み、前記部分または前記部分が複数ある場合は前記部分のそれぞれが、11から49個のメチレン部分を含むポリメチレン部分を含み、かつ前記CYSCポリマーが60℃以下の融解温度を有する、請求項49に記載の方法。
【請求項51】
前記薬物が溶媒として機能する場合は前記薬物以外の溶媒が、前記混合物に添加されない、請求項50に記載の方法。
【請求項52】
前記ポリマーが、ジメチルアミノエチルメタクリレート、ジエチルアミノエチルメタクリレート、t‐ブチルアクリルアミド、ジメチルアミノプロピルメタクリルアミド、N‐イソプロピルアクリルアミド、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、N,N‐ジアルキルアミノ(特にジメチルアミノ)(メタ)アクリレート;アンモニウム塩含有(メタ)アクリレート、例えば2‐トリメチルアンモニウムメチルメタクリレートクロリド、メタクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウムクロリド、N,N‐(ジエチル又はジメチル)アミノエチル(メタ)アクリレートメトサルフェート;N‐ビニルピロリジノン;一級アミンとのマレイン酸無水物又はイタコン酸無水物の閉環反応産物のようなイミド;2‐メタクリルオキシN‐エチルモルホリン;n又はt‐ブチルアクリルアミド;(メタ)アクリルアミド;ジメチルアミノプロピルメタクリルアミド;2‐t‐ブチルアミノエチルメタクリレート;(メタ)アクリロニトリル;t‐ブチルアミノエチル(メタ)アクリレート;アクリロイルモルホリン;N‐(2‐ヒドロキシエチル)アセトアミド、1‐ピペリジノエチル(メタ)アクリレート、アクリル酸、メタクリル酸;イタコン酸無水物;イタコン酸;マレイン酸無水物;マレイン酸;フマル酸;フマル酸、マレイン酸、クロトン酸、及び2‐アクリルアミド‐2‐メチルプロパンスルホン酸(「AMP」)のモノエステル及びモノアミド;ビニルスルホン酸、ビニルアセテート、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート;テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート;グリシジルメタクリレート;アルコキシアルキル(メタ)アクリレート、例えばメトキシエチル(メタ)アクリレート;l‐アクリルオキシ‐2‐ヒドロキシ‐3‐フェノキシプロパン;メチロールメタクリレート;エトキシエチル(メタ)アクリレート;2‐(2‐エトキシエトキシ)エチルアクリレート;アセトアセトキシエチル(メタ)アクリレート;フェノキシエチル(メタ)アクリレート;(メタ)アクロレイン;アルコキシ又はヒドロキシル(ポリオキシアルキレン)アルキル(メタ)アクリレート、例えばメトキシ‐又はヒドロキシポリオキシエチレン(メタ)アクリレート、アルコキシ‐又はヒドロキシポリオキシプロピレン‐ポリオキシエチレンアルキル(メタ)アクリレート、トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、ヘプタデカフルオロデシル(メタ)アクリレート、オクタフルオロペンチル(メタ)アクリレート、エイコサフルオロウンデシル(メタ)アクリレート、ヘキサデカフルオロノニル(メタ)アクリレート、テトラヒドロペルフルオロデシル(メタ)アクリレート;トリメチルシロキシエチル(メタ)アクリレート、3‐アクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、及び3‐アクリルオキシプロピルトリス(トリメチルシロキシ)シラン、モノメタクリルオキシモノトリメチルシロキシ末端化ポリエチレンオキシド、及びアルキル基が1〜8個の炭素原子を含有するモノメタクリルオキシプロピルアルキルポリジメチルシロキサンからなる群から選択される、1つ又は複数のモノマーから誘導される単位を含む、請求項51に記載の方法。
【請求項53】
前記CYSCポリマーが主鎖結晶化度を所有しない、請求項49に記載の方法。
【請求項54】
各々が異なる融解温度を有する少なくとも2つの異なるCYSCポリマーを含む、請求項1に記載の製剤。
【請求項55】
少なくとも10重量%の前記薬物を含有する、請求項1に記載の製剤。
【請求項56】
前記製剤が経口製剤である、請求項1に記載の製剤。
【請求項57】
前記薬物がペプチド又はタンパク質である、請求項56に記載の製剤。
【請求項58】
pHが6を超える場合の条件下で、治療的有効量の前記薬物が前記製剤から放出される、請求項57に記載の製剤。
【請求項59】
前記製剤が注射可能である、請求項1に記載の製剤。
【請求項60】
前記製剤が、液体、懸濁液、エマルジョン、ナノ粒子、ゲル、又はデポーの形態である、請求項59に記載の製剤。
【請求項61】
前記製剤が、対象内に注射された際に、少なくとも7日の期間にわたって治療的有効量の前記薬物を放出する、請求項62に記載の製剤。
【請求項62】
使用の際に、前記CYSCポリマーがその融解温度を超えるまで加熱されるように前記製剤を熱に曝露させることにより、治療的有効量の前記薬物が放出される、請求項1に記載の製剤。
【請求項63】
前記製剤が、標的に特異的に結合するリガンドを更に含む、請求項62に記載の製剤。


【公表番号】特表2010−511713(P2010−511713A)
【公表日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−540276(P2009−540276)
【出願日】平成19年12月4日(2007.12.4)
【国際出願番号】PCT/US2007/024909
【国際公開番号】WO2008/070118
【国際公開日】平成20年6月12日(2008.6.12)
【出願人】(398040734)ランデック コーポレイション (3)
【Fターム(参考)】