説明

薬物選択及び投薬の最適化及び個別化

【課題】患者の遺伝子情報、患者の非遺伝的宿主因子、及び候補薬物特性を組み合わせて薬物投薬量及び化合物選択を最適化して個別化する方法を提供する。
【解決手段】本発明は、個々の患者に対する投薬計画又は化合物選択を目標とする集団モデル、方法、及びアルゴリズムであり、関連の1つ以上の化合物に対する薬剤代謝酵素をコードする遺伝子の遺伝子型情報を組み入れた集団モデルを利用する。本方法により、薬剤代謝酵素、特にチトクロムP450遺伝子をコードする1つ又はそれよりも多くの遺伝子に対する遺伝子型情報を患者データと統合することができ、遺伝子型情報と、1つ又はそれよりも多くの化合物が1つ又はそれよりも多くの薬剤代謝酵素に及ぼす効果とを統合することができる。本方法は、患者から得られる薬剤代謝データを個々の患者に対して関連の化合物の投薬量計画推奨を生成する処理に反復的にフィードバックすることを可能にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
本出願は、2005年11月29日出願の米国特許仮出願出願番号第60/740、430号及び2006年3月16日出願の米国特許仮出願出願番号第60/783、118号の恩典を主張しており、その開示内容は、引用により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、患者の遺伝子情報、患者の非遺伝的宿主因子、及び候補薬物特性を組み合わせて薬物投薬量及び化合物選択を最適化して個別化する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
強力で多くの場合に毒性のある薬物を用いる療法で最も重要であるが未解決の問題の1つは、薬剤用量、血中濃度、他の身体区画の代謝物濃度、及び治療的薬剤効果及び毒性薬剤効果の間の重要な機構的関係及び変動を説明し、理解し、定量化することができないことである。薬剤作用及び患者間の変動の定義は、大体は、平均最大及び最小薬剤投薬要件の短絡的であまり情報価値のない説明に限定されており、これでは、各患者に対する療法の真の個別化が不可能である。
【0004】
一部の薬剤では、選択した薬物動態パラメータの測定可能な変動の90%を超えるものが遺伝的であると示されている。従来的に、薬物動態(PK)分析では、時間の経過に伴い一連の濃度を測定する。クリアランス及び分配容積のような望ましいパラメータの推定値を得るために、構造モデルを定めてデータに適合させる。モデルは、観察濃度とモデル予想濃度の間の差を最小にする最小二乗アルゴリズムを用いて個別データに当て嵌める。簡単にするために、観察濃度と予想濃度の間の差は、偶然誤差により引き起こされると仮定する。この従来的な種類の分析を用い、各被験者に対してモデルを形成し、次に、個体にわたって個々のパラメータをまとめる。しかし、サンプル平均及びサンプルの標準偏差の不正確さは、予期するものよりも大きいことが多く、これらのパラメータの変動の推定は、十分には特徴付けられていない。
【0005】
FDAは、療法に対する応答の個体間変動に遺伝子が寄与することの重要性を認識している。FDAに送られる新しい薬剤用途の数は有意に増大しており、これには、薬理遺伝子情報が含まれる(Wendy Chou、Ph.D./FDA2003年4月3日)。2つの添付文書がこの傾向を反映している。神経精神医学的病状に用いられるチオリダジン(メラリル)は、CYP2D6代謝不良の患者には禁忌であり、この警告は、添付文書の2箇所で詳細に述べられている。同様に、アトモキセチン(ストラテラ、ADHDに用いられる薬物)の添付文書の複数の箇所には、薬剤代謝の遺伝子多型と有害薬剤反応の間の関連が述べられている。
【0006】
ある一定の民族グループでは、青年期人口の10%ほど多くが、多くの抗うつ薬物の代謝不良に関連するCYP2D6ハプロタイプを有する。Wong他(2001)Ann.Acad.Med.Singapore、第29巻:401〜406頁を参照されたい。これらの個体の臨床ゲノム試験は、その治療及び予後を明らかに示唆している。極端な症例では、代謝不良であるが、それが特定されていない小児で悲劇的な結果となった。これらの否定的な症例の報告には、CYP2D6代謝不良であると認識されていなかった9歳の男児の死亡の報告が含まれている。この小児のフルオキセチンでの治療は、複数の症状が出現したにも関わらず、これらの症状が非常に高いフルオキセチンの血漿レベルと関連すると認識されていなかったために継続されたものである。Sallee他(2000年)J.ChildAdol.Psychiatry、第10(1)巻:27〜34頁を参照されたい。
【0007】
有害薬剤反応は、入院患者の28%及び小児の入院患者の17%に起こる。PhillipsによるJAMAでの報告では、27の薬剤が、有害薬剤反応レポートに最も頻繁に登場した。これらの薬剤の59パーセント(16/27)は、代謝不良者の遺伝子型を有する少なくとも1つの酵素により代謝された。37パーセント(11/27)は、CYP2D6により代謝され、これは、詳細には中枢神経系に作用する薬剤であった。有害薬剤反応に関連する罹患率及び死亡率の年間費用は、$177、000、000ドル(2000年のドル)である。明らかに、薬剤毒性は、直接薬物有害反応の結果、年間100、000人が死亡し、2、000、000人が永久的機能障害又は長期入院を受ける重大な健康問題である。
【0008】
殆どの薬物の応答には有意な個体間変動が存在するが、薬物選択及び滴定は、通常は、個別化されず、経験的である。医者がこの個体間変動の原因である遺伝子的及び非遺伝的宿主因子を治療計画に組み込まない主な理由は、患者の特性を臨床的推奨に変換する利用可能で使いやすいアルゴリズムが存在しないことである。従って、当業技術では、有益、費用節約的、かつ有効な薬物動態用量の個別化技術が必要とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許仮出願出願番号第60/740、430号
【特許文献2】米国特許仮出願出願番号第60/783、118号
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】Wendy Chou、Ph.D./FDA2003年4月3日
【非特許文献2】Wong他(2001)Ann.Acad.Med.Singapore、第29巻:401〜406頁
【非特許文献3】Sallee他(2000年)J.ChildAdol.Psychiatry、第10(1)巻:27〜34頁
【非特許文献4】2005年医薬品集「Thomson Healthcare」第59版
【非特許文献5】Sachse他(1999年)「Br.J.Clin.Pharmacol.」、第47巻:445〜449頁
【非特許文献6】Theanu他(1999年)「J.Pharmacol.Exp.Ther.」、第290巻:635〜640頁
【非特許文献7】Innis他編(1990年)「PCRプロトコル:方法及び応用のへのガイド」(Academic Press、ニューヨーク)
【非特許文献8】Innis及びGelfand編(1995年)「PCR指針」(Academic Press、ニューヨーク)
【非特許文献9】Innis及びGelfand編(1999年)「PCR方法の手引き」(Academic Press、ニューヨーク)
【非特許文献10】Dieffenbach、C.及びDveksler、G.編「PCRプライマー:実験室のための手引き」、「Cold Spring Harbor Laboratory Press」、1995年
【非特許文献11】「TaKaRa LA PCRガイド」、宝酒造株式会社
【非特許文献12】Lewis(1992年)「Genetic Engineering News」、第12(9)巻:1頁
【非特許文献13】Guatelli他(1990年)「Proc.Natl.Acad.Sd.USA」、第87巻:1874〜1878頁
【非特許文献14】Weiss(1991年)「Science」第254巻:12921293頁
【非特許文献15】Stoneking他、1991年、「Am.J.Hmn.Genet.」、第48巻:370〜382頁
【非特許文献16】Prince他、2001年、「Genome Res.」、第11(1)巻:152〜162頁
【非特許文献17】Myakishev他、2001年、「Genome」、第11(1)巻:163〜169頁
【非特許文献18】Ausubel他編(1995年)「分子生物学の現在のプロトコル」(Greene Publishing and Wiley−Interscience、ニューヨーク)
【非特許文献19】Kirchheiner「Acta Psychiatr Scand」、2001年、第104巻:173〜192頁
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、一般的に、哺乳類、特にヒトの遺伝子型に基づく疾患に対して適切な薬物及び治療計画を識別する分野に関する。本発明は、更に、薬剤療法を含む療法に応答する患者間変動の遺伝子機構に関する。より詳細には、本発明は、薬剤療法の有効性及び安全性を最適化するために遺伝子配列の相違を利用することを説明する。本発明は、薬剤療法に同様に応答する患者集団の部分集合を識別するためのコンピュータ化された方法及び/又はコンピュータ支援の方法に関する。
【0012】
本発明は、個々の被験者又は患者に対して薬剤療法、詳細には投薬計画及び化合物を選択することを目標とするコンピュータ化した方法及び/又はコンピュータ支援方法を提供する。本方法は、薬剤選択及び滴定に遺伝子及び非遺伝的因子を組み込むものである。本発明は、集団モデル、遺伝子型情報、及び臨床情報を用いて、特定の患者に対する投薬計画を推奨するための計算アルゴリズムを提供する。本発明の方法により、患者情報及び臨床データを反復的に統合することができる。本発明の方法は、適時的で分かりやすく実行することが容易な推奨を与える。更に、本発明では、潜在的に臨床薬理学専門家により更に深く診断されることを必要とする患者を事前識別する。
【0013】
従って、本発明の第1の態様は、患者の投薬計画を選択するコンピュータ化した方法及び/又はコンピュータ支援方法を提供することであり、本方法は、(a)患者データを患者関連遺伝子型情報と統合する段階と、(b)患者の薬剤濃度プロフィールを生成する段階と、(c)薬剤濃度プロフィールをターゲット薬剤濃度プロフィールと統合する段階と、(d)被験者のターゲット薬剤濃度プロフィールになる可能性が高い第1の化合物の投薬計画を生成する段階とを含む。更に詳細な実施形態では、本方法は、生物学的サンプルを準備する段階と、(y)生物学的サンプル中の生物マーカをモニタする段階と、(z)生物マーカ値を薬剤濃度プロフィール情報と統合する段階とを更に含む。代替的に又はこれに加えて、患者データは、患者個体群統計データ及び臨床データを含むことができる。代替的に又はこれに加えて、臨床データは、第1の化合物の代謝を調節することができる第2の化合物に関する情報を含むことができる。代替的に又はこれに加えて、第1の化合物は、神経精神医学的薬物とすることができる。代替的に又はこれに加えて、本方法は、関連の1つ又はそれよりも多くの遺伝子座での患者の遺伝子型を判断する段階を更に含むことができる。
【0014】
本発明の第2の目的は、患者の投薬計画を選択するためのコンピュータ化した方法及び/又はコンピュータ支援方法を提供することであり、本方法は、(a)患者のデータを得る段階と、(b)患者関連の遺伝子型情報を得る段階と、(c)患者データを患者関連遺伝子型情報に統合する段階と、(d)患者の薬剤濃度プロフィールを生成する段階と、(e)薬剤濃度プロフィール及びターゲット薬剤濃度プロフィールを統合する段階と、(f)被験者でターゲット薬剤濃度プロフィールになる可能性が高い化合物の投薬計画を生成する段階と、(g)患者から生物学的サンプルを得る段階と、(h)生物学的サンプル中の生物マーカをモニタする段階と、(i)生物マーカ値を薬剤濃度プロフィール情報に統合する段階と、(j)患者の第2の薬剤濃度プロフィールを生成する段階と、(k)第2のターゲット薬剤濃度プロフィールを生成する段階と、(l)第2のターゲット薬剤濃度プロフィールになる可能性が高い化合物の第2の投薬計画を生成する段階とを含む。更に、本方法は、(f)から(l)までの処理の少なくとも2回目を行う段階を更に含むことができる。代替的に又はこれに加えて、本方法は、患者の集団モデルを選択する段階を更に含むことができる。代替的に又はこれに加えて、本方法は、患者が指定応答する確率の値を生成する段階を更に含むことができる。
【0015】
本発明の第3の態様は、患者の投薬計画を選択するコンピュータ化した方法及び/又はコンピュータ支援方法を提供することであり、本方法は、(a)複数の遺伝子型に対して薬剤相互作用統計的集団モデルを生成する段階と、(b)患者関連遺伝子型情報を得る段階と、(c)遺伝子型情報を集団モデルに適用することによって投薬計画を確立する段階とを含む。更に、集団モデルを生成する段階は、ベイズアルゴリズムの使用を含むことができる。代替的に又はこれに加えて、薬剤相互作用集団モデルは、遺伝子型及び非遺伝子情報の組合せに対して定めることができる。
【0016】
本発明の第4の態様は、患者に対して1つ又はそれよりも多くの薬剤を選択するためのコンピュータ化した方法及び/又はコンピュータ支援方法を提供することであり、これは、表現型を識別する段階と、識別した表現型に基づいて第1の複数の可能な薬物を準備する段階と、患者特異的遺伝子因子、非遺伝的患者因子、及び薬剤特異的因子に少なくとも部分的に基づいて、第1の複数の薬物から薬物のランク付けリスト又は予測指標を計算する段階とを含む。更に、計算する段階では、1つ又はそれよりも多くの前臨床毒性変数、1つ又はそれよりも多くの薬物動態変数、1つ又はそれよりも多くの臨床有効性変数、1つ又はそれよりも多くの臨床毒性変数、1つ又はそれよりも多くの臨床安全問題、及び/又は1つ又はそれよりも多くの使い易さ/遵守変数を考慮することができる。更に、計算する段階では、以下の変数、すなわち、TI(治療指数−(50%致死量/50%治療量)比=薬剤の固有毒性の尺度)、F(生物学的利用能=無傷薬剤として体循環に到達する用量の分画)、fu(薬剤が血漿又は血液に結合される範囲は、非結合分画=[非結合薬剤濃度/[総薬剤濃度]と呼ばれる)、f−BIND−T(薬剤特異的な流出輸送体「T」に対する基質である薬剤の分画)、MET−L(線形代謝の薬剤)、f−MET−E(薬剤代謝酵素「E」により代謝された薬剤の分画)、PEX(機能多型「X」を有する薬剤代謝酵素「E」のパーセント)、CLcr(クレアチニンクリアランス=クレアチニンが取り除かれた血液の容積/単位時間=(リットル/時))、IDR(特異体質反応率)、FORM(剤形)、FREQ(毎日の薬剤投与の頻度)、「MAT ED」(母親の教育レベル)、SES(社会経済階級)、及びTRANS(診療所への往復の移動手段)のうちの1つ又はそれよりも多くが、線形的に寄与する可能性があると考えられる。代替的に又はこれに加えて、計算する段階では、以下の変数、すなわち、ATA(特定の患者の機能的非野生型輸送体多型の数)、MET−NonL(非線形代謝の薬剤)、AEA(特定の患者の機能的野生型薬剤代謝酵素多型の数)、MED−IND(代謝酵素を誘導する薬物の同時使用)、MED−INH(代謝酵素を阻害する薬物の同時使用)、DIET−IND(代謝酵素を誘導する栄養補助食品の同時使用)、DIET−INH(代謝酵素を阻害する栄養補助食品の同時使用)、NNT−EFF(治療が必要な数=1つの望ましい結果に到るように治療することが必要な患者の数)、META−EEF(神経精神医学的障害を治療するのに用いられる薬物に関わる臨床試験の有効性メタアナリシスから得られる結果)、NNT−TOX(治療が必要な数=1つの毒性の結果を有するため治療されることが必要な患者の数)、及びMETA−TOX(神経精神医学的障害を治療するのに用いられる薬物に関わる臨床試験の毒性メタアナリシスから得られる結果)のうちの1つ又はそれよりも多くが、指標関数的に寄与する可能性があると考えられる。
【0017】
本発明の第4の態様の別の代替的な詳細な実施形態では、計算する段階は、疾病特異的根拠ベース医療データ、薬剤特異的基本薬理学特性、患者特異的高度薬理学原理、及び/又は患者特異的環境及び遺伝子因子を統合して可能な薬物のランクを生成するために線形代数計算的科学を含むことができる。それに加えて又は代替的に、計算する段階は、各可能な薬物に、対応する複数の因子に対して可能な薬物を用いることの好ましさに対応する計算値を割り当てることができる。更に、複数の因子は、複数の以下のカテゴリ、すなわち、疾病特異的な根拠ベース医療データ、薬剤特異的な基本薬理学特性、患者特異的な高度薬理学原理、患者特異的環境、及び患者特異的遺伝子因子からの因子を含むことができる。代替的に又はこれに加えて、複数の計算値は、好ましい因子には正の値、好ましくない因子には負の値を含むことができ、計算する段階は、計算値を加えてスコアを判断する段階を含む。代替的に又はこれに加えて、複数の計算値は、好ましい因子に正の値、好ましくない因子に負の値、及びこのような因子の相対的重要度に対応する重みを含むことができ、計算する段階は、重み付き計算値を加えてスコアを判断する段階を含む。
【0018】
本発明の更に別の代替的な詳細な実施形態では、コンピュータ化した方法は、患者が予定された療法又は処方を遵守する予想尤度に対応する遵守スコアを生成する段階を更に含むことができる。
【0019】
本発明の第5の態様は、患者に対する薬物の開始用量を選択するコンピュータ化した方法及び/又はコンピュータ支援方法を提供することであり、これは、所定の薬物に対して、患者がその薬物に対して高代謝者であるか、中代謝者であるか、又は低代謝者であるかを判断する段階と、所定の集団に対する通常の薬剤用量(Dpop)、所定の集団の高代謝者の頻度(fEM)、所定の集団の中代謝者の頻度(fIM)、及び/又は一般的な集団の低代謝者の頻度(fPM)に少なくとも部分的に基づいて開始用量を計算する段階と、患者の遺伝子情報に少なくとも部分的に基づいて薬物に対する最小用量調節単位を判断する段階とを含む。更に、患者が薬物の高代謝者、薬物の中代謝者、又は薬物の低代謝者とすることができるかを判断する段階は、患者の遺伝子情報に少なくとも部分的に基づいている。代替的に又はこれに加えて、(a)高代謝者DEMに対する通常の薬剤用量のパーセントDpopは、
EM=100/(fEM+fIM・S+fPM・R)
であり、ここで、Sは、高代謝者部分母集団に対する「時間濃度曲線下の面積」を中代謝者部分母集団に対する「時間濃度曲線下の面積」で割ったものであり、Rは、高代謝者部分母集団に対する「時間濃度曲線下の面積」を低代謝者部分母集団に対する「時間濃度曲線下の面積」で割ったものであり、(b)低代謝者DPMに対する通常の薬剤用量のパーセントDpopは、
PM=R・DEM
であり、(c)中代謝者DIMに対する通常の薬剤用量のパーセントDpopは、
IM=S・DEM
である。代替的に又はこれに加えて、薬物に対する最小用量調節単位は、非機能性対立遺伝子の数、DEM、DIM、及び/又はDPMに少なくとも部分的に基づくと考えられる。
【0020】
本発明の第6の態様は、患者に1つ又はそれよりも多くの薬剤を選択するためのコンピュータ化した方法及び/又はコンピュータ支援方法を提供することであり、それは、表現型を識別する段階と、患者の診断に基づいて第1の複数の可能な薬物を準備する段階と、患者特異的遺伝子因子、非遺伝的患者因子、及び薬剤特異的因子に少なくとも部分的に基づいて、第1の複数の薬物から薬物のランクリスト又は予測指標を計算する段階とを含む。更に、計算する段階は、疾病特異的根拠ベース医療データ、薬剤特異的基本薬理学特性、患者特異的高度薬理学原理、及び/又は患者特異的環境及び遺伝子因子を統合して可能な薬物のランクを生成するために線形代数計算的科学を含むことができる。代替的に又はこれに加えて、計算する段階は、各可能な薬物に、対応する複数の因子に対して可能な薬物を用いることの好ましさに対応する計算値を割り当てるが、この複数の因子は、複数の以下のカテゴリ、すなわち、疾病特異的根拠ベース医療データ、薬剤特異的基本薬理学特性、患者特異的高度薬理学原理、患者特異的環境、及び患者特異的遺伝子因子からの因子を含むことができる。代替的に又はこれに加えて、複数の計算値は、好ましい因子には正の値、好ましくない因子には負の値を含み、計算する段階は、計算値を加えてスコアを判断する段階を含むが、ここで、複数の計算値は、好ましい因子に正の値、好ましくない因子に負の値、及びこのような因子の相対的重要度に対応する重みを含むことができ、計算する段階は、重み付き計算値を加えてスコアを判断する段階を含む。
【0021】
本発明の第6の態様の別の詳細な実施形態では、本方法は、患者が予定療法又は処方を遵守する予測尤度に対応する遵守スコアを生成する段階を含むことができる。
【0022】
本発明第7の態様は、上述のコンピュータ実行方法のいずれか又は全てを行うように設計してプログラムされたコンピュータ、コンピュータシステム、又はコンピュータ化ツールを提供することである。更に、コンピュータ、コンピュータシステム、又はコンピュータ化ツールは、使用者から上述の因子のいずれかのような適切なデータを収集するためのグラフィカルユーザインタフェースを備えることができる。代替的に又はそれに加えて、コンピュータ、コンピュータシステム、又はコンピュータ化ツールは、レポート、分析、推奨、又は上述の方法のいずれかから得られるあらゆる他の出力を供給するためにグラフィカルユーザインタフェース(又は、印刷出力のようなあらゆる他の公知のコンピュータ出力)を備えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】個々の患者に投薬計画を選択する方法に関わる処理を示す概略図である。
【図2a】パネルAが、リスペリドン濃度時間プロフィールの例示的な薬物動態モデルに基づくシミュレーションを示し、実線が、各投薬計画で本発明の方法により予測した患者の化合物濃度を示し、破線が、この例では3と10ng/mLの間に任意に選択された治療的範囲を示し、観察された生物マーカ値が実線の円又は三角で示されている、特定の患者の3つの異なる投薬計画に対するリスペリドン薬物動態プロフィールを示す図である。
【図2b】パネルBが、投薬計画を変更した後のリスペリドン濃度時間プロフィールの例示的な薬物動態モデルに基づくシミュレーションを示し、実線が、各投薬計画で本発明の方法により予測した患者の化合物濃度を示し、破線が、この例では3と10ng/mLの間に任意に選択された治療的範囲を示し、観察された生物マーカ値が実線の円又は三角で示されている、特定の患者の3つの異なる投薬計画に対するリスペリドン薬物動態プロフィールを示す図である。
【図2c】パネルCが、第3の投薬計画でのリスペリドン濃度時間プロフィールの例示的な薬物動態モデルに基づくシミュレーションを示し、実線が、各投薬計画で本発明の方法により予測した患者の化合物濃度を示し、破線が、この例では3と10ng/mLの間に任意に選択された治療的範囲を示し、観察された生物マーカ値が実線の円又は三角で示されている、特定の患者の3つの異なる投薬計画に対するリスペリドン薬物動態プロフィールを示す図である。
【図3】本発明の例示的な実施形態で用いるための疾病マトリックスの例示的(非常に小さな)セグメントを示す図である。
【図4】本発明の例示的なコンピュータ実装方法の段階を示すスクリーンショットである。
【図5】本発明の例示的なコンピュータ実装方法の別の段階を示すスクリーンショットである。
【図6】本発明の例示的なコンピュータ実装方法の別の段階を示すスクリーンショットである。
【図7】本発明の例示的なコンピュータ実装方法の別の段階を示すスクリーンショットである。
【図8】本発明の例示的なコンピュータ実装方法の別の段階を示すスクリーンショットである。
【図9】本発明の例示的なコンピュータ実装方法の別の段階を示すスクリーンショットである。
【図10】本発明の例示的なコンピュータ実装方法の別の段階を示すスクリーンショットである。
【図11】本発明の例示的なコンピュータ実装方法の別の段階を示すスクリーンショットである。
【図12】本発明の例示的なコンピュータ実装方法の別の段階を示すスクリーンショットである。
【図13】本発明の例示的なコンピュータ実装方法の別の段階を示すスクリーンショットである。
【図14】本発明の例示的なコンピュータ実装方法により生成された出力レポート/分析を示すスクリーンショットである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
薬剤作用及び患者間変動の多くの場合に複雑な関係を定義して説明することは、歴史的に非常に困難であった。これらの変数の薬物動態(PK)及び薬力学(PD)モデルを開発すると、薬剤作用と患者変動の間の関係を定義して説明する方法が得られる。更に、薬剤又は化合物作用(効果)は、作用部位での薬剤濃度に直接関連する。通常は、所定の薬剤の効果とその血中濃度との間には、与えた薬剤の用量と効果との間よりも良好な関係がある。
【0025】
本発明は、薬剤作用及び患者間変動の薬物動態及び薬力学モデルを組み入れた様々な化合物に対する集団モデルを提供する。本発明はまた、本発明の1つ又はそれよりも多くの集団モデルを用いて特定の化合物に対する投薬計画を予測するか又は化合物に対する患者応答を予測するコンピュータ化した方法及び/又はコンピュータ支援方法(ソフトウエアアルゴリズムを含む)を提供する。本発明のコンピュータ化した方法及び/又はコンピュータ支援方法(ソフトウエアアルゴリズムを含む)は、被験者が関連の化合物を代謝する機能に関する予測を生成する。本発明のコンピュータ化した方法及び/又はコンピュータ支援方法(ソフトウエアアルゴリズムを含む)は、少なくとも1つの適切な生物マーカをモニタすることから得られたデータを組み入れた投薬計画又は化合物に対する患者の応答を反復的に評価する。多くの場合、被験者は、2つ又はそれよりも多くの薬物を受け取る。これらの付加的な薬物は、関連の化合物を代謝する被験者の機能に影響を及ぼす可能性がある。従って、一実施形態では、本発明のコンピュータ化した方法及び/又はコンピュータ支援方法(ソフトウエアアルゴリズムを含む)は、そのような付加的な化合物又は各化合物及びそのような付加的な化合物が関連の化合物を代謝する被験者の機能に及ぼす影響に関する情報を統合するための手段を提供する。
【0026】
「化合物」には、以下に限定されるものではないが、薬剤、薬物、物質、治療的に有効な物質、神経精神医学的薬物、神経伝達物質阻害剤、神経伝達物質受容体修飾因子、Gタンパク質、Gタンパク質受容体阻害剤、ACE阻害剤、ホルモン受容体修飾因子、アルコール、逆転写酵素阻害剤、核酸分子、アルドステロン拮抗薬、ポリペプチド、ペプチド、ペプチド模倣薬、糖タンパク質、転写因子、小分子、ケモカイン受容体、アンチセンスヌクレオチド配列、ケモカイン受容体リガンド、脂質、抗体、受容体阻害剤、リガンド、ステロール、ステロイド、ホルモン、ケモカイン受容体作動薬、ケモカイン受容体拮抗薬、作動薬、拮抗薬、イオンチャンネル修飾因子、利尿剤、酵素、酵素阻害剤、炭水化物、脱アミノ酵素、脱アミノ酵素阻害剤、ホルモン、脱リン酸酵素、ラクトン、及び血管拡張剤が含まれる。化合物は、更に、薬剤的に許容可能な担体を含むことができる。
【0027】
神経精神医学的薬物には、以下に限定されるものではないが、抗うつ剤、気分高揚剤、ノルエピネフリン再取り込み阻害剤、三級アミン三環系、アミトリプチリン、クロミプラミン、ドクサピン、イミプラミン、二級アミン三環系アモキサピン、デシプラミン、マプロチリン、プロトリプチリン、ノルトリプチリン、選択的セロトニン再取り込み阻害剤(SSRI)、フルオキセチン、フルボキサミン、パロキセチン、セルトラリン、シタロプラム、エスシタロプラム、ベンラファキシン、異型抗うつ剤、ブプロピオン、ネファゾドン、トラゾドン、ノルアドレナリン作動性及び特異的セロトニン作動性抗うつ剤、ミルタザピン、モノアミンオキシダーゼ阻害剤、フェネルジン、トラニルシプロミン、セレギリン、抗精神病剤、三環系フェノサイアジン、クロルプロマジン、トリフルプロマジン、チオリダジン、メソリダジン、フルフェナジン、トリフルオペラジン、チオキサンテン、クロルプロチキセン、クロペンチキソール、フルペンチキソール、ピフルチキソール、チオチキセン、ジベンゼピン、ロクサピン、クロザピン、クロチアピン、メチアピン、ゾタピン、フルペラピン、オランザピン、ブチロフェノン、ハロペリドール、ジフェニルブチルピペリジン、フルスピリレン、ペンフルリドール、ピモジド、ハロペリドールデカノエート、インドロン、神経遮断薬、抗不安薬/鎮静剤、ベンゾジアゼピン、クロルジアゼポキシド、ジアゼパム、オキサゼパム、クロラゼペート、ロラゼパム、プラゼパム、アルプラゾラム、及びハラゼパム、気分安定剤、リチウム塩、バルプロ酸、注意欠陥多動性障害剤、デキストロアンフェタミン、メチルフェニデート、ペモリン、及びアトモキセチン、抗痙攣薬、フェノバルビタール、フェニトイン、カルバマゼピン、バルプロ酸、フェルバメート、ガバペンチン、チアガビン、ラモトリジン、トピラメート、ゾニサミド、オクスカルバゼピン、レベチラセタム、プレガバリン、エトトイン、及びペガノン、頭痛薬、イブプロフェン、アスピリン/アセトメタフェン/カフェイン、ジクロフェナク、ケトプロフェン、ケトロラック、フルルビプロフェン、メクロフェナメート、ナプロキセン、酒石酸エルゴタミン、ジヒドロエルゴタミン、エルゴタミン、アセトメタフェン/イソメテプテンムケート/ジクロラルフェナゾン、コハク酸スマトリプタン、ゾルミトリプタン、リザトリプタン、塩酸ナラトリプタン、アルモトリプタン、フロバトリプタン、エレトリプタン、ジクロフェナク、フェノプロフェン、フルルビプロフェン、ケパプロフェン、ナプロキセンナトリウム、アミトリプチリン、デシプラミン、ドクサピン、イミプラミン、ノルトリプチリン、フルオキセチン、パロキセチン、セルトラリン、ベンラファキシン、トラゾドン、ブプロピオン、アテノロール、メトプロロール、ナドロール、プロプラノロール、チモロール、ジルチアゼム、ニカルジピン、ニフェジピン、ニモジピン、ベラパミル、ジバルプロエックスナトリウム、ガバペンチン、バルプロ酸、及びトピラメート、及び痴呆薬、タクリン、ドネペジル、ガランタミン、ガランサミン、リバスチグミン、及びメマンチンが含まれる。
【0028】
「薬剤」とは、疾病又は病状を治療、防止、又は制御するためにヒトに投与される化学成分、生物学的産物、又は化学成分又は生物学的産物の組合せを意図している。「薬剤」という用語は、以下に限定されるものではないが、「連邦食品医薬品局」、「欧州医薬品審査庁」のような政府の規制官庁により医薬品として販売することが認可されている物質、政府の規制官庁の認可を必要としない物質、通常は、ビタミン、天然産物として特徴付けられる物質を含む食品添加物又はサプリメント、及び天然物質又は精製されるか部分的に精製された天然産物を含む完全に又は不完全に特徴付けられる化学成分の混合物を含むことができる。本発明の方法は、本明細書においてその全内容が引用により組み込まれている、2005年医薬品集「Thomson Healthcare」第59版の薬剤又は化合物のいずれと用いるのにも適することは理解されるものとする。
【0029】
本発明のコンピュータ化した方法及び/又はコンピュータ支援方法(ソフトウエアアルゴリズムを含む)は、被験者又は患者関連遺伝子型情報を用いる。「遺伝子型」という用語は、被験者又は患者のゲノムDNAに存在する対立遺伝子を意味し、対立遺伝子は、核酸配列の特殊な部位に存在する特殊なヌクレオチドにより定めることができる。多くの場合、遺伝子型は、ヒトの集団で様々であることが公知の単一の多型部位に存在するヌクレオチドである。「遺伝子型情報」とは、関連の遺伝子又は遺伝子座の遺伝子構造の相違又は変質に関する情報を意図している。遺伝子型情報は、所定の対立遺伝子の存在又は非存在を示すことができる。「関連の遺伝子座」は、関連の遺伝子、対立遺伝子、又は多型とすることができる。関連の遺伝子又は遺伝子座には、a)薬物特異的代謝酵素、b)薬物特異的輸送体、c)薬物特異的受容体、d)問題の薬物と相互作用する他の薬剤に影響を及ぼす酵素、輸送体又は受容体、又はe)問題の薬物の活性に影響を及ぼす身体機能をコードする遺伝子が含まれる。本発明の実施形態では、関連の遺伝子座には、以下に限定されるものではないが、5つのチトクロムP450遺伝子、セロトニン輸送体遺伝子、ドーパミン輸送体遺伝子、及びドーパミン受容体遺伝子が含まれる。5つのチトクロムP450遺伝子は、CYP2D6、CYP1A2、CYP2C19、CYP2C9、及びCYP2E1をコードすることができる。特定の関連の対立遺伝子には、以下に限定されるものではないが、CYP1A2*1A又は1A2*3対立遺伝子、CYP2C19*1A、2C19*1B、又は2C19*2A対立遺伝子、及びCYP2D6*1A、2D6*2、2D6*2N、2D6*3、2D6*4、2D6*5、2D6*6、2D6*7、2D6*8、2D6*10、2D6*12、又は2D6*17対立遺伝子が含まれる。セロトニン受容体遺伝子は、セロトニン受容体1A、1B、1D、2A、又は2Cをコードし、ドーパミン受容体遺伝子は、ドーパミン受容体D1、D2、D3、D4、D5、及びD6をコードする。更に、セロトニン輸送遺伝子も、遺伝子型の重要な部分である。表1及び表2に、関連の付加的な遺伝子、対立遺伝子、多型、及び遺伝子座を示している。
【0030】
(表1)

【0031】
(表1続き)

【0032】
(表1続き)

【0033】
(表2)

【0034】
(表2続き)

【0035】
本発明の実施形態では、コンピュータ化した方法及び/又はコンピュータ支援方法(ソフトウエアアルゴリズムを含む)を用いて、神経精神医学的薬物が必要な患者の投薬計画を選択する。神経精神医学的パネルの主な遺伝子はCYP2D6である。CYP2D6の基質は、一般的に、陽イオン結合部位が酸化される炭素原子から離れて位置する弱塩基である。より詳細には、CYP2D6の基質は、アミトリプチリン、ノルトリプチリン、ハロペリドール、及びデシプラミンを含む。個体によっては、修正CYP2D6遺伝子配列を有し、その結果、触媒活性に欠ける酵素が合成されるか、又は酵素の触媒活性が減少することになる。これらの個体は、SSRI及び三環系抗うつ剤(TCA)の代謝が不良である。更に、機能的CYP2D6遺伝子の重複/増殖も観察され、それにより、SSRI及び他の薬剤が超高速に代謝される。不活化多型、欠失、又は重複を持たない個体は、高薬剤代謝者の表現型を有し、CYF2D6*1と呼ばれる。CYP2D6*3及び*4対立遺伝子は、低代謝者表現型とされることになる総欠損症のほぼ70%を占める。CYP2D6*3(2549A>del)に介入する多型は、mRNAにフレームシフトを生じる。CYP2D6*4対立遺伝子(1846G>A)に伴う多型は、mRNAスプライシングを破壊する。これらの変化により、触媒活性に欠けるCYP2D6の切断型が生じる。他の低代謝者は、CYP2D6*5、*10、及び*17である。CYP2D6*5は、完全な遺伝子欠失によるものである。CYF2D6*10及び*17の多型は、CYP2D6酵素にアミノ酸置換が生じ、これが、酵素活性を低減する。これらの多型の全ては、常染色体共優性形質である。これらの多型に対するホモ接合又はコンパウンドヘテロ接合の個体のみが、低代謝者である。1つの正常遺伝子及び1つの多型遺伝子を有するヘテロ接合の個体は、高(正常)代謝者と低代謝者の間の中間の代謝を有することになる。重複/増殖対立遺伝子に対してヘテロ接合の個体は、超高速代謝者である。
【0036】
CYP1A2は、クロザピン及びイミプラミンを含む多くの芳香及び複素環アニリンを代謝する。CYP1A2*IF対立遺伝子は、誘導能が高いか又は活性が増大した産物になる可能性がある。(Sachse他(1999年)「Br.J.Clin.Pharmacol.」、第47巻:445〜449頁参照)。更に、CYP2C19は、イミプラミン、シタロプラム、及びジアゼパムを含む多くの基質も代謝する。CYP2C19*2A、*2B、*3、*4、*5A、*5B、*6、*7、及び’:’8対立遺伝子は、活性が殆ど又は全くない産物をコードする。Theanu他(1999年)「J.Pharmacol.Exp.Ther.」、第290巻:635〜640頁を参照されたい。
【0037】
CYP1A1は、反応代謝物が肝臓外で生成されることによって毒性又はアレルギー反応を伴う可能性がある。CYP3A4は、アルプラゾラムを含む様々な基質を代謝する。CYP1B1は、反応代謝物が肝臓外で生成されることによって毒性又はアレルギー反応を伴う可能性があり、ステロイドホルモン(例えば、17−エストラジオール)も代謝する。CYP2A6及びCYP2B6に対する基質には、それぞれバルプロ酸及びブプロピオンを含む。CYP2C9に対する基質には、タイレノール及びアンタビュース(ジスルフィラム)を含む。CYP2E1に対する基質には、フェニトイン及びカルバマゼピンを含む。1つ又はそれよりも多くのチトクロムP450酵素の活性が低下すると、1つ又はそれよりも多くの他のチトクロムP450酵素に影響を及ぼす可能性がある。
【0038】
遺伝子型情報を判断する方法は、当業技術で公知である。本発明を実施する際には、当業技術で公知の遺伝子型を判断するあらゆる方法により得られる遺伝子型情報を用いることができる。本発明の方法には、当業技術で公知の遺伝子型を判断するあらゆる手段を用いることができる。
【0039】
一般的に、遺伝子型を判断するには、ゲノムDNAが用いられるが、場合によってはスクリーニングする方法としてmRNA分析が用いられている。「QIAamp@組織キット」(Qiagen、カリフォルニア州チャッツワース)、「Wizard@ゲノムDNA精製キット(Promega)、及び「A.S.A.P.TMゲノムDNA単離lat(Boehringer Mannheim、インディアナ州インディアナポリス)のような慣例の市販の方法を用いて、血液又は組織サンプルからゲノムDNAを抽出することができる。
【0040】
一般的に、遺伝子型が判断される前に、関連の遺伝子座を含むDNAセグメントの酵素的増幅を行う。一般的な種類の酵素的増幅は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)である。PCRの公知の方法には、以下に限定されるものではないが、対のプライマー、入れ子状態のプライマー、単一の特異的プライマー、変性プライマー、遺伝子特異的プライマー、ベクトル特異的プライマー、及び部分不適性プライマーなどを用いる方法が含まれる。PCRの公知の方法には、以下に限定されるものではないが、極限微生物からのDNAポリメラーゼ、修正DNAポリメラーゼ、及び長期PCRを用いる方法が含まれる。本発明の方法では、高フィデリティーPCR反応条件を用いることが好ましいことは理解される。Innis他編(1990年)「PCRプロトコル:方法及び応用のへのガイド」(Academic Press、ニューヨーク)、Innis及びGelfand編(1995年)「PCR指針」(Academic Press、ニューヨーク)、Innis及びGelfand編(1999年)「PCR方法の手引き」(Academic Press、ニューヨーク)、及びDieffenbach、C.及びDveksler、G.編「PCRプライマー:実験室のための手引き」、「Cold Spring Harbor Laboratory Press」、1995年も参照されたい。長期PCR増殖法には、「TaKaRa LA PCRガイド」、宝酒造株式会社に説明されているような方法が含まれる。
【0041】
テンプレート源としてRNAを用いる場合には、逆転写酵素を用いて相補的DNA(cDNA)ストランドを合成することができる。更に、リガーゼ連鎖反応、ストランド変位増殖、3SR、又は核酸配列に基づく増殖を用いて、単離核酸を得ることができる。例えば、Lewis(1992年)「Genetic Engineering News」、第12(9)巻:1頁、Guatelli他(1990年)「Proc.Natl.Acad.Sd.USA」、第87巻:1874〜1878頁、及びWeiss(1991年)「Science」第254巻:12921293頁を参照されたい。
【0042】
遺伝子型を判断する方法には、以下に限定されるものではないが、直接ヌクレオチドシークエンシング、ダイプライマーシークエンシング、対立遺伝子特異的ハイブリッド形成、対立遺伝子特異的制限消化、不一致切断反応、MS−PCR、対立遺伝子特異的PCR、及びチトクロムP450変異体を検出するためのもののような市販のキット(TAG−ITTMキットは、「Tm Biosciences Corporation」(オンタリオ州トロント)から入手可能である)が含まれる。Stoneking他、1991年、「Am.J.Hmn.Genet.」、第48巻:370〜382頁、Prince他、2001年、「Genome Res.」、第11(1)巻:152〜162頁、及びMyakishev他、2001年、「Genome」、第11(1)巻:163〜169頁を参照されたい。
【0043】
遺伝子型を判断する付加的な方法には、以下に限定されるものではないが、関連の遺伝子座の1つに対応する核酸配列又はこのような遺伝子座の産物にプローブで接触する段階を含む方法が含まれる。プローブは、例えば、差別的結合又はハイブリッド形成により、遺伝子又は遺伝子産物の特定の形、又は特定の相違又は各相違の存在を区別することができる。従って、例示的なプローブには、核酸ハイブリッド形成プローブ、ペプチド核酸プローブ、ヌクレオチドを含有し、ヌクレオチド類似体、及びモノクローナル抗体のような抗体の少なくとも1つも含むプローブ、及び他のプローブが含まれる。当業者は、特定の特異性を備えるプローブの準備には精通している。当業者は、塩濃度、pH、温度の変化、及び塩基対合の差別的親和性に影響を及ぼす様々な物質の添加を含む様々な変数を調節し、遺伝子の変異体形間の区別を最適化することができることを認識するであろう(Ausubel他編(1995年)「分子生物学の現在のプロトコル」(Greene Publishing and Wiley−Interscience、ニューヨーク)参照)。
【0044】
本発明の例示的なコンピュータ化した方法及び/又はコンピュータ支援方法(ソフトウエアアルゴリズムを含む)は、次の理論的根拠を用いることができる。化合物、特に神経精神医学的薬剤の薬物動態特性は、化合物の薬力学特性以上に化合物の初期用量に影響を及ぼす。化合物の薬物動態プロフィールは、その吸収、分配、代謝、及び排泄の動的総和である。酵素活性に影響を及ぼす薬剤代謝酵素(DME)の遺伝子差は、殆どの化合物の薬物動態変動の主要要素を構成する。DMEは、以下に限定されるものではないが、a)薬物特異的代謝酵素、b)薬物特異的輸送体、c)薬物特異的受容体、d)問題の薬物と相互作用する他の薬剤に影響を及ぼす酵素、輸送体、又は受容体、又はe)問題の薬物の活性に影響を及ぼす身体機能を含む。殆どの化合物の吸収、分配、及び排泄特性は、DME活性の遺伝子の変動とは関係がない。特定のDME多型は、再現性があり、予測可能で均一な手法で殆どの化合物の代謝に影響を及ぼす。一般的に、特定のDMEの検出可能な多型は、何も影響を及ぼさないか又は酵素活性を低減することになるかのいずれかである。従って、被験者は、以下のいずれかであることになる。
【0045】
1.2つの機能的対立遺伝子(野生型、正常、又は高代謝者)を有するか、
2.1つの機能的対立遺伝子(中代謝者)を有するか、又は
3.機能的対立遺伝子(低代謝者)を持たない。
【0046】
更に、CYP2D6のようなある一定の遺伝子に対しては、遺伝子の複数の複写が存在する可能性がある。このような場合には、特定の遺伝子に2つを超える機能的対立遺伝子が存在することは、超高速代謝者の状態と相関する。
【0047】
多くの場合に、2つ又はそれよりも多くのDMEは、直列又は並列のいずれかで働き、特定の化合物を代謝する。各DMEに対する遺伝子の変動の影響は、独立に及び組み合わせて判断することができる。本発明は、順次又は同時に機能するDME又は各DMEの各々に対する遺伝子の変動の影響を組み合わせるか又は統合する方法を提供する。本発明の方法は、ベイズの集団薬物動態モデル化及び分析を用いて、特定の化合物の代謝に関する複数のDMEの効果を統合して予測する。
【0048】
また、2つ又はそれよりも多くの化合物を同時に用いると、被験者のDME活性に影響を及ぼす可能性がある。ここでもまた、各DMEに対する遺伝子の変動の効果は、各化合物と独立に判断することができる。本発明のコンピュータ化した方法及び/又はコンピュータ支援方法(ソフトウエアアルゴリズムを含む)は、ベイズの集団薬物動態モデル化及び分析を用いて、1つ又はそれよりも多くのDMEに関する複数の化合物の効果を統合して予測する。本発明の方法により、1つ又はそれよりも多くのDME及び1つ又はそれよりも多くの化合物の遺伝子の変動に関する情報を統合し、時間濃度曲線下の面積(AUC)値を生成することが可能になる。AUC値は、患者に到達可能な特定の化合物の量を反映しており、臨床的に重要な変数である。
【0049】
AUC値は、薬剤用量及び患者特異的薬物動態により判断される。本発明以前には、診療は、薬剤用量を一定に維持する「万物同サイズ」手法を用いていた。「万物同サイズ」手法では、患者間の薬物動態の変動により、AUCに変動が生じ、その結果、副作用又は変数有効性レベルのような患者間臨床変動が生じる。従って、本発明の方法は、患者に同様のAUC値を与える化合物投薬計画を選択するための手段を提供する。本発明の方法は、含まれる遺伝子の異型の数、各遺伝子の異型の集団頻度、及び各遺伝子の異型に対するAUCデータを統合する。本発明の方法は、異種の集団を複数の同種の部分母集団に変換する。このような同種の部分母集団、適切な投薬計画、及び適切な化合物は、本発明の集団プロフィールにおいて説明することができる。
【0050】
「投薬計画」は、「投薬量レベル」及び「投与頻度」を含む因子の組合せを意図している。最適化した投薬計画により、薬理学的有効性と有害作用の間に治療的に合理的な均衡が得られる。「投与頻度」とは、指定の期間にどれだけ頻繁に治療が投与されたか、例えば、1回、2回、又は3回/日、1日おき、1週おきなどを意味する。関連の化合物又は各化合物に対しては、投与頻度は、過剰に有害な作用を起こすことなく薬理学的に有効な平均又はピーク血清レベルが達成されるように選択する。従って、薬剤の血清レベルは、高い時間率にわたって濃度の治療的ウィンドウ内に入るように維持することが望ましい。
【0051】
本発明の例示的なソフトウエアプログラムは、ベイズの方法を用いる。ベイズの方法により、個別のPKパラメータ推定、サンプルの大きさ(例えば、1つのサンプル)、及びランダムサンプルに対して薬剤測定数を低減することができる。治療的薬剤モニタリングデータは、適切に適用されると、臨床的に関連する薬剤間相互作用を検出して定量化するのに用いることもできる。これらの方法は、公開された範囲未満、範囲内、又は範囲を超えるものとして単純に報告された結果に基づく方法よりも更に有益であり、費用節約的で信頼することができる。
【0052】
「簡潔性指標」と呼ばれる予測指標の判断
定義:
以下の省略形及び定義は、簡潔性指標の構築に用いられることになり、変数は、共通のテーマにより分類する。
【0053】
前臨床毒性変数
1.TD50=「50%治療的用量」と呼ばれる=治療した動物の50%が望ましい治療的結果を達成する薬物の用量
2.LD50=「50%致死用量」と呼ばれる=治療した動物の50%が死亡する薬物の用量
3.TI=治療指数と呼ばれる=LD50/TD50の比率=薬剤の固有毒性の尺度
薬物動態変数
4.F=生物学的利用能=無傷薬剤として体循環に到達する用量の分画
5.fu=薬剤が血漿又は血液に結合される範囲は、非結合の分画と呼ばれる=[非結合薬剤濃度]/[総薬剤濃度]
6.f−BEMD−T=薬剤特異的流出輸送体「T」の基質である薬剤の分画
7.PTX=機能的多型「X」を備える輸送体「T」のパーセント
8.ATA=特定の患者に対する機能的非野生型輸送体多型の数
9.MET−NonL=非線形代謝の薬剤
10.MET−L=線形代謝の薬剤
11.f−MET−E=薬剤代謝酵素「E」で代謝される薬剤の分画
12.PEX=機能的多型「X」を備える薬剤代謝酵素「E」のパーセント
13.AEA=特定の患者に対する機能的非野生型薬剤代謝酵素多型の数
14.AUC=血漿薬剤濃度−時間曲線下の総面積=mg*hour/L
15.CL=クリアランス=薬剤が除去される血液の容積/単位時間=(リットル/時)、CL=用量/AUC
16.CLcr=クレアチニンクリアランス=クレアチニンが除去される血液の容積/単位時間=(リットル/時)
17.MED−MD=代謝酵素を誘導する薬物の同時使用
18.MED−INH=代謝酵素を阻害する薬物の同時使用
19.DIET−IND=代謝酵素を誘導する栄養補助食品の同時使用
20.DIET−INH=代謝酵素を阻害する栄養補助食品の同時使用
臨床有効性変数
21.NNT−EFF=治療が必要な数=1つの望ましい結果に到達するために治療することが必要な患者数
22.OR=オッズ比=対合の程度の尺度、例えば、対照中で望ましい結果に到達しない見込みに比較した治療例中で望ましい結果に到達する見込み
23.META−EFF=神経精神医学的障害を治療するのに用いられる薬物に関わる臨床試験の有効性メタアナリシスの結果
臨床毒性変数
24.NNT−TOX=治療が必要な数=1つの毒性の結果を有するため治療が必要な患者数
25.OR=オッズ比=対合の程度の尺度、例えば、対照中で薬剤毒性に到達しない見込みに比較した治療例中で薬剤毒性に到達する見込み
26.META−TOX=神経精神医学的障害を治療するのに用いられる薬物に関わる臨床試験の毒性メタアナリシスの結果
臨床安全性問題
27.IDR=特異体質反応の速度
使用容易さ/遵守変数
28.FORM=剤形
29.FREQ=毎日の薬剤投与の頻度
30.「MAT ED」=母親教育レベル
31.SES=社会経済的階級
32.TRANS=診療所へ/からの移動手段
個々の患者に最も適切な薬物のランクを判断するのにアルゴリズムを用いることができる。アルゴリズムの設計には、最初に表現型を識別する必要があり、それにより、可能な薬物の母集団の予備の識別が得られる。アルゴリズムの次の段階では、ターゲット遺伝子分析の結果を順次入力することができる。予測指標(「簡潔性指標」と呼ばれる)を生成するアルゴリズムは、以下の原理を用いて上述の因子と組み合わせる。
【0054】
1.各因子は、妥当性確認処理中に判断された重み付け及びスケール変数に基づいて差別的に寄与する。
【0055】
2.以下の変数:TI、F、fa、f−BIND−T、MET−L、f−MET−E、PEX、CLorIDR、FORM、FREQ、「MAT ED」、SES、TRANSは、最終的なランク付けスコアに線形的に寄与する。
【0056】
3.以下の変数:ATA、MET−NonL、AEA、MED−IND、MED−INH、DIET−IND、DIET−INH、NNT−EFF、META−EEF、NNT−TOX、META−TOXは、最終的なランク付けスコアに指標関数的に寄与する。
【0057】
アルゴリズムは、上述の患者特異的遺伝子因子、非遺伝的患者因子、及び薬剤特異的因子に基づいて薬物のランク付けリストを生成する。「簡潔性指標」と呼ばれるこのような予測指標を判断するための例示的なソフトウエアツールを以下に詳細に説明する。
【0058】
初期開始用量の判断
初期開始用量を判断するのに以下の省略形及び定義を用いることにする。
【0059】
省略形:
pop=一般集団に対する認知される通常の薬剤投薬量
高代謝者
EM=高代謝者
EM=一般集団の高代謝者の頻度
EM=高代謝者部分母集団に対する薬剤投薬量
AUCEM=高代謝者部分母集団に対する「時間濃度曲線下の面積」
中代謝者
IM=中代謝者
IM=一般集団の中代謝者の頻度
DM=中代謝者部分母集団に対する薬剤投薬量
AUCIM=中代謝者部分母集団に対する「時間濃度曲線下の面積」
低代謝者
PM=低代謝者
PM=一般集団の低代謝者の頻度
PM=低代謝者部分母集団に対する薬剤投薬量
AUCPM=低代謝者部分母集団に対する「時間濃度曲線下の面積」
以下の節では、より均一なサブグループに対する投薬を判断する方法を説明する。投薬の結果は、臨床医の通常の不均一な全グループ投薬量の分画として表される。
【0060】
特定の多型DME(全ての他の関連する多型DMEが正常な活性を有すると仮定する)のいずれか1つに対して、集団に見られる通常の薬剤用量は、式1で表される各遺伝子的に異なる部分母集団の薬剤投薬量の重み付き総和である。(Kirchheiner「Acta Psychiatr Scand」、2001年、第104巻:173〜192頁を参照されたい。しかし、著者は、178頁の式1と式2の間の番号のない式で誤っていることに注意されたい。)
pop=fEM*DEM+fIM*DIM+fPM*DPM (式1)
目的を患者の3つ全ての部分母集団に対して同じAUCを維持することであると仮定すると、以下の部分母集団投薬関係が成り立つ。
PM=DEM*(AUCEM/AUCPM)、又はDPM=DEM*R、R=(AUCEM/AUCPM)の場合 (式2)
IM=DEM*(AUCEM/AUCIM)、又はDIM=DEM*S、S=(AUCEM/AUCPM)の場合 (式3)
式2及び式3を式1に代入し、次に、式を整理し、集団用量に比較した各部分集合に必要なパーセント用量調節について解く。
EM(%)=100/(fEM+fIM*S+fPM*R) (式4)
PM(%)=R*DEM (式5)
IM(%)=S*DEM (式6)
式4、式5、及び式6は、より均一なサブグループに対する投薬を判断する方法及び投薬の結果を臨床医の通常の不均一な全グループ投薬量の分画として表す方法を示している。
【0061】
「最小用量調節単位」の判断
DME活性の様々な遺伝子の累積効果又は環境に基づく変質により、その後の薬剤投薬要件の患者間変動を生じることになる。変動が十分に大きければ、「万物同サイズ」投薬手法により、顕著な毒性が引き起こされる患者もいれば、有効性に欠けることになる患者もいる可能性がある。この状況では、臨床医は、その薬剤処方又は薬剤投薬挙動を変更する。本発明者は、この患者間変動を補償するために臨床医が用いる最小の臨床に関する投薬変更を「最小用量調節単位」(MDA単位)と定める。
【0062】
神経精神医学的薬剤に対するMDA単位は20%である。これは、投薬の変化が20%又はそれよりも多ければ特定の情報に応答して臨床医が神経精神医学的薬物の投薬を変更することを意味する。神経精神医学的薬物の投薬に単独又は組合せのいずれかで<20%の変化を示唆する摂動は、通常無視される。
【0063】
MDA単位は、加算的であり、従って、遺伝子多型から1MDA単位及び薬剤相互作用から1MDA単位の患者は、用量を40%低減する必要がある。
【0064】
例:前節の方法により、3つのサブグループ(高、低、及び中代謝者)の各々に対する個別化された初期薬剤用量推奨がもたらされる。各サブグループは、特定のDMEに対して特定の数の機能的対立遺伝子を表す(高代謝者は、2つの機能的対立遺伝子、中代謝者は、1つの機能的対立遺伝子、及び低代謝者は、0の機能的対立遺伝子を有する)。得られる投薬推奨は、臨床医の通常の開始用量のパーセントとして表される。これらの新しい投薬推奨を用いて非機能的対立遺伝子の数が増大する効果を調べることは可能である。例えば、DRX%は、臨床医の通常の開始用量のパーセントとして表されるサブグループXに対する投薬推奨であり、以下が真である。
【0065】
請求項1の非機能的対立遺伝子の効果=(DREM%−DRIM%)/DREM
2つの非機能的対立遺伝子の効果=(DREM%−DRPM%)/DREM
以下は、これをCYP2D6、CYP2C19、及びCYP2C9に対して検査したスプレッドシート(表3)である。以下の一覧表は、次のことを明らかにしている。
【0066】
a.各付加的な非機能的対立遺伝子が少なくとも20%投薬推奨を変更させたことは明らかである。
【0067】
b.これらの3つのCYP450遺伝子にわたって一定であるように見える「遺伝子用量」−「投薬減少」関係がある。この手法を用いて、その後のDM遺伝子の重要性を固定化し、その効果をMDA単位で定量することができる。
【0068】
c.2D6及び2C19は、1MDA単位/非機能的対立遺伝子を有する。
【0069】
d.2C9は、2MDA単位/非機能的対立遺伝子を有する。これは、2C9により代謝された薬剤が、投薬量必要性に非常に大きな変動を有することを意味する。それにより、これらの薬剤(ワーファリン、フェニトイン)に関する臨床的印象が確認される。
【0070】
(表3)

【0071】
(表3続き)

【0072】
(表)

【0073】
(表)

【0074】
(表)

【0075】
(表4)

【0076】
最終投薬量要件の判断
一部の薬剤では、薬物動態遺伝子の変動は殆どないが、場合によっては薬剤の受容体に臨床的に関連する薬力学的遺伝子の変動がある。これらの薬物に対しては、遺伝子試験の影響は、初期必要投薬量の代わりに最終的な必要投薬量に反映されることになる。
【0077】
遺伝子−薬力学効果を明らかにする研究は、上述の簡潔性指標を誘導するのに用いられる計算を符号化するソフトウエアで捕捉されることになる。本発明は、この情報を組み入れ、可能な薬剤候補の簡潔性指標のランクだけでなく、望む効果を達成するために、予想よりも多く投薬を必要とする候補も報告することになる。
【0078】
集団モデル
集団薬物動態モデル化の目的は、研究中の集団の薬物動態パラメータの統計的分布を示し、患者の個体内及び個体間変動の可能な供給源を識別することである。集団モデル化は、個体群統計学パラメータ(例えば、年齢、体重、及び性別)、病態生理学的病状(例えば、クレアチニンクリアランスにより反映される)及び遺伝薬理学的変動が、どの程度まで用量−濃度関係に影響を及ぼすことができるかを研究するための強力なツールである。集団薬物動態分析は、頑強であり、低密度のデータ(治療的薬剤モニタリングデータ等)を処理することができ、集団内での薬剤のPK挙動を完全に説明するように設計される。本発明の「集団モデル」は、所定の集団での少なくとも1つの薬物動態パラメータの統計的分布を説明し、特定の化合物又は物質に関して患者の変動の少なくとも1つの可能な供給源を識別する。本発明の集団モデルは、更に、被験者変動、モデル誤指定、及び特定の化合物に対する測定誤差内で被験者の変動と残りの変動との間のパラメータの分散と共に平均パラメータ推定を提供することができる。
【0079】
本発明の実施形態は、使用者が入力したターゲットの範囲に基づいて薬物濃度−時間プロフィールを予測し、投薬計画を選択するためのいくつかの新しい集団モデルを提供する(実施例を参照)。本発明のコンピュータ化した方法及び/又はコンピュータ支援方法(ソフトウエアアルゴリズムを含む)は、以下に限定されるものではないが、本発明の新しい集団モデル及び外部的に生成した集団モデルのような集団モデルを用いる。一実施形態では、このような外部的に生成した集団モデルは、本発明のソフトウエアにプログラムすることができるような方法で調節又は再編成される。
【0080】
様々な実施形態では、本発明のコンピュータ化した方法及び/又はコンピュータ支援方法(ソフトウエアアルゴリズムを含む)は、生物マーカをモニタする段階を含む。「生物マーカ」は、被験者の外来性の化合物の濃度又は特定の活性を示す患者に存在するあらゆる分子又は化学種を意図している。生物マーカには、以下に限定されるものではないが、化合物、化合物の代謝物、化合物の活性代謝物、関連の化合物を投与することによって誘導又は変化させられた分子、及び関連の化合物に露出された後に細胞学的、細胞、又は細胞内位置濃度プロフィールを変化させる分子が含まれる。生物マーカをモニタする方法は、当業技術で公知であり、これには、以下に限定されるものではないが、治療的薬剤モニタリングが含まれる。本発明を実施するには、当業技術で公知の示された生物マーカに適切な生物マーカをモニタするあらゆる方法が有用である。
【0081】
本発明の例示的なコンピュータ化した方法及び/又はコンピュータ支援方法(ソフトウエアアルゴリズムを含む)は、治療的薬剤のモニタリング(TDM)により生成されたデータを用いる。TDMは、患者の投薬計画を最適化するために、以下に限定されるものではないが、血液(又は血漿、又は血清)のような生物学的サンプル中の所定の薬剤又はその活性代謝物の1つ又はそれよりも多くの濃度を測定する処理である。本発明は、当業技術で公知の生物学的サンプル中の所定の薬剤又はその活性代謝物の1つ又はそれよりも多くの濃度を測定するあらゆる手段を含む。「生物学的サンプル」とは、被験者から収集されたサンプルを意図し、これには、以下に限定されるものではないが、組織、細胞、粘膜、体液、擦過物、毛髪、細胞可溶化物、血液、血漿、血清、及び分泌物が含まれる。血液サンプルのような生物学的サンプルは、当業者に公知のあらゆる方法により得ることができる。
【0082】
以下の実施例は、説明のために示すものであり、制限するものではない。
【実施例1】
【0083】
実験
実施例1:自閉症患者の化合物投薬量の最適化
11歳の自閉症の少年に1日2回0.5mgでリスペリドン(Risperdal(登録商標))療法を開始した。患者の談話心迫及び気分の変わりやすさは時間が経過しても改善しなかった。有効性が不足しているのは、適用範囲が不十分であるか又は非遵守のためである可能性があると考えられる。患者の投薬計画は、本発明の方法により分析した。
【0084】
段階1.用量適切性分析
患者個体群統計データ(年齢、性別、体重)及びリスペリドン用量及び投与回数をプログラムに入力した。集団モデルを選択した。選択した集団モデルは、小児精神医学患者のデータに基づくリスペリドンモデルであった。リスペリドンは、CYP2D6で代謝されるために3つのモデル、すなわち、高代謝者モデル(EMモデル)、中代謝者モデル(IMモデル)、及び低代謝者モデル(PMモデル)が存在する。
【0085】
患者の遺伝子型を判断すると、CYP2D6*1/*1であることが分った。この遺伝子型は、前記高代謝者(EMモデル)に適合する。患者のデータ及び遺伝子型は、本発明のアルゴリズムにより分析し、その患者の薬剤濃度プロフィールを生成した。この患者のデータに基づくリスペリドン濃度時間プロフィールの例示的な薬物動態モデルに基づくシミュレーションを図2aに示している。平均濃度は、ほぼ〜2ng/mLであると予測した。この情報は、ターゲット薬剤濃度プロフィール又は治療的値と統合される。リスペリドンに対する治療的値は、3と10ng/mLの間の範囲である。患者の薬剤濃度プロフィール及びターゲット薬剤濃度プロフィールを比較すると、患者が遵守した場合には、用量が低すぎる可能性があることを示している。アルゴリズムは、2つの推奨を生成した。すなわち、用量を増大することができること、及び生物マーカをモニタする必要があることである。
【0086】
段階2.推奨された投薬量領域の生物マーカ評価の統合
リスペリドン用量は、1mgに増大し、1日に2回(朝夕)与えた。更に、生物マーカ評価が行われた。薬剤レベルを指示し、治療的薬剤モニタリングが行われた。用量投与前レベル及び2つの用量投薬後レベル(投薬後1時間)及び(投薬後4時間)を測定した。これらのデータは、ソフトウエアプログラムに入力した。ソフトウエアプログラムは、新しい患者特異的情報(すなわち、薬剤レベル)と組み合わせたモデルからの演繹的情報に基づいてベイズの再計算が行われた。このベイズの更新の例示的な結果を図2bに示している。濃度は、投薬間隔の大部分でターゲットの範囲に含まれていなかった。患者の応答に応じて、これは、更に用量を増大させることを可能にするであろう。更に、薬物動態シミュレーションは、この患者では薬剤が身体から幾分急速に排除されることを示している。ソフトウエアプログラムは、いくつかの推奨を生成した。ターゲット濃度を維持するために、投薬の頻度を高くすることを考慮すべきである。この患者に対するベイズ薬物動態推定に基づいて上述の選択したターゲット範囲を考えると、判断基準に最も一致する投薬計画は、1.5mgを8時間毎に投薬することになる。例示的なモデルに基づくプロフィール及びその後のベイズの個別化処理を図2cに示している。
【0087】
本発明による上述の方法は、パーソナルコンピュータ、クライアント/サーバシステム、又はローカルエリアネットワークのようなコンピュータシステムで実行することができる。コンピュータシステムは、携帯型とすることができ、以下に限定されるものではないが、ラップトップコンピュータ又は手持ち型コンピュータが含まれる。更に、コンピュータは、様々な市販のソフトウエア製品を実行することができる汎用システムとすることができ、又は本発明の主題である薬剤識別及び選択アルゴリズムのみを実行するように特に設計することができる。コンピュータシステムは、ディスプレイユニット、主処理装置、及び1つ又はそれよりも多くの入力/出力装置を含むことができる。1つ又はそれよりも多くの入力/出力装置は、タッチスクリーン、キーボード、マウス、及びプリンタを含むことができる。この装置は、ユニバーサルシリアルバス(USB)、限定ではないが赤外線及びRFプロトコルを含む無線、シリアルポート、及びパラレルポートのような様々な外部通信インタフェースを含むことができる。ディスプレイユニットは、ブラウン管又は液晶ディスプレイのようなあらゆる典型的な表示装置とすることができる。
【0088】
主処理装置は、更に、互いに相互接続したメモリの基本処理ユニット(CPU)及び固定記憶装置を含むことができる。CPUは、コンピュータの作動を制御することができ、かつ本発明の実施形態の段階を実行する1つ又はそれよりも多くのソフトウエアアプリケーションを実行することができる。ソフトウエアアプリケーションは、固定記憶装置に永久的に記憶することができ、それは、電源がオフにされてもソフトウエアアプリケーションを記憶し、その後、CPUが特定のソフトウエアアプリケーションを実行する準備ができるとメモリにロードする。固定記憶装置は、ハードディスクドライブ、最適ドライブ、又はテープドライブ等とすることができる。メモリは、ランダムアクセスメモリ(RAM)又は読取専用メモリ(ROM)などを含むことができる。
【0089】
例示的な簡潔性指標ソフトウエアツール
上に紹介したように、薬剤予測指標(簡潔性指標)を構成するのに用いられるアルゴリズムは、疾病表現型(例えば、てんかん、鬱等)の初期識別を用い、これは、その病状に対して可能な薬物の母集団を予備識別するものである。簡潔性指標を生成するための例示的なソフトウエアツールは、線形代数計算科学を用いて、疾病特異的根拠ベース医療データ、薬剤特異的基本薬理学特性、患者特異的高度薬理学原理、及び患者特異的環境の及び遺伝子因子を統合し、これらの因子に基づいて個別の患者に対して可能な薬物のランク付けを生成する。各疾病表現型に対する別々のアルゴリズムが存在するが、アルゴリズムは同時に実行することができる。更に、例示的な実施形態では、最終的なランク付けスコアを生成するのに用いられる3つの成分、すなわち、疾病マトリックス、患者ベクトル、及び重み付けベクトルが存在する。上述の5つの因子及び3つの成分の各々は、以下のように定義され、その後、サンプル出力を有する実施例が続く。出力は、薬剤予測指標及び遵守スコアの療法を含む。
【0090】
定義:
疾病特異的根拠ベース医療データ
疾病特異的根拠ベース医療データは、有効である可能性がある薬物に対する疾病特異的有効性及び耐容性データから成る。この疾病特異的有効性及び耐容性データは、年齢又は疾病サブグループに対して存在する場合があり、各年齢又は疾病サブグループは、別々に考えられる。例えば、てんかんでは、データに基づく根拠は、4つの疾病サブグループ(部分起始発作、全汎強直間代発作、欠伸発作、及びミオクローヌス発作)と共に5つの年齢グループに対して存在する(新生児、乳児、小児、大人、及び老人)。この実施例では、全ての年齢−発作型の組合せを含む最大20の別々の根拠ベースのデータの組が存在すると考えられる。
【0091】
根拠ベースの手法の第1の段階は、あらゆる可能な治療的モダリティ(医学的、外科的、又は食餌性)の有効性及び耐容性に関する全ての関連する科学的情報を識別することである。論文は、以下に限定されるものではないが、医学文献の電子文献検索、主要医学雑誌の人手による検索、無作為化管理下試験のCochraneライブラリ、及び電子文献検索で識別された全ての研究の参考文献リストを含む複数の方法で識別される。これらの論文には、以下に限定されるものではないが、無作為化管理下試験、非無作為化管理下試験、症例シリーズ、症例レポート、及び専門家の意見を含むことができる。補足的データは、個別の薬剤の添付文書に見られる。
【0092】
各論文のデータは、薬剤特異的有効性及び耐容性データに対して評価される。それを専門にする国際科学機構により用いられる等級付けシステムを用いて分析を行う。それを専門にする国際科学機構が存在しない場合には、デフォルトの等級付けシステムは、米国神経学会の評価システムである。根拠ベースの分析が完了すると、各可能な薬剤に対する有効性及び耐容性データ(年齢及び疾病サブグループにより層化される)は、1+〜−1の目盛を用いて次の表5に従ってまとめられる。
【0093】
(表5)

薬剤特異的基本薬理学特性
薬剤特異的基本薬理学特性は、3つのカテゴリ、すなわち、前臨床毒性、基本臨床薬物動態変数、及び薬剤安全性で評価する。前臨床毒性カテゴリの例は、薬剤の治療指数である。これは、LD50/TD50の比であると定められ、ここで、TD50は、試験した動物の50%が望ましい治療結果を達成する薬物の用量であり、LD50は、試験した動物の50%が死亡することになる薬物の用量である。基本臨床薬物動態変数には、限定ではないが以下のものが含まれる。
【0094】
i)薬剤の生物学的利用能(無傷薬剤として体循環に到達する用量の分画)、
ii)非結合で循環する薬剤の分画(薬剤が血漿又は血液に結合される範囲であると定められる=[非結合薬剤濃度]/[総薬剤濃度])、
iii)薬剤が受ける代謝の種類(線形又は非線形)、
iv)薬剤が受ける排除の種類(例えば、腎臓で排出されるか又は肝臓で代謝される薬剤のパーセント)、及び
v)薬剤の半減期
薬剤安全性には、以下に限定されるものではないが、生命に関わる副作用(特異体質反応)の危険性及び催奇形性の危険性が含まれる。考察中の各薬剤に対しては、3つのカテゴリの各変数は、+1(最も好ましい)から−1(最も好ましくない)までの目盛でスコア付けされる。
【0095】
患者特異的高度薬理学因子
患者特異的高度薬理学因子には、i)双方向性薬物動態又は薬力学薬剤−薬剤相互作用、及びii)双方向性薬力学薬剤−疾病相互作用が含まれる。薬物動態薬剤−薬剤相互作用は、薬剤の1つが、他の薬剤の代謝に>20%関連する特定の酵素の活性を誘発するか又は阻害するかのいずれかであることを示す相互作用が文献に示されている場合には、恐らく臨床的に有意であると考えられる。分析では、分析時に実際に摂取された併用薬物のみを考慮する。薬剤−疾病相互作用では、「疾病」という用語は、単一の臓器の機能障害(例えば、腎不全)から全身疾患(例えば、全身性エリテマトーデス)までの範囲の健康が損なわれた状態を意味する。薬剤−薬剤又は薬剤−疾病相互作用可能性は、+1(最も好ましい)から−1(最も好ましくない)までの目盛で評価される。
【0096】
実施例を用いて明らかにすると、特定の患者において、薬剤Aを疾病Dに用いることを評価すると仮定する。患者は、現在、経口避妊薬、高コレステロール血漿のためのアスタチンを摂取しており、過体重である。この患者の薬剤Aの「患者特異的高度薬理学因子」を評価するために、評価する8つの可能な薬剤−薬剤相互作用及び4つの可能な薬剤−疾病相互作用、すなわち、i)経口避妊薬に及ぼす薬剤Aの薬物動態の効果、ii)薬剤Aに及ぼす経口避妊薬の薬物動態の効果、iii)スタチン薬物に及ぼす薬剤Aの薬物動態の効果、iv)薬剤Aに及ぼすスタチン薬物の薬物動態の効果、v)〜viii)上述のものと同じ4つの組合せであるが、薬剤間の薬力学相互作用を調べる、ix)高コレステロール血症薬に及ぼす薬剤Aの薬力学の効果、x)薬剤Aに及ぼす高コレステロール血症薬の薬力学の効果、xi)体重に及ぼす薬剤Aの薬力学の効果、xii)薬剤Aに及ぼす体重の薬力学の効果が存在する。薬剤Aが、i)スタチンの薬物動態に及ぼす臨床的に有意な負の効果を有し、かつii)体重増加を引き起こす場合、薬剤Aは、これらの2つの評価に対して−1のスコア及び残りの10の評価に対して0のスコアを受け取ることになる。本方法を考察中の各薬剤(例えば、薬剤B、C、...、その他)に対して繰り返す。
【0097】
患者特異的環境因子
患者特異的環境因子は、一方向性の薬物動態又は薬力学、薬剤−環境相互作用に関わる。一方向性とは、薬剤に及ぼす環境要因の効果を意味する。薬物動態薬剤−環境相互作用は、環境要因が薬剤の代謝に関連する特定の酵素の活性を>20%誘発するか又は阻害するかのいずれかであることを示す相互作用が文献に示されている場合には、臨床的に有意である可能性があると考えられる。薬力学薬剤−環境相互作用は、環境因子が(正又は負のいずれかに)薬剤の作用を>20%変化させることを示す相互作用が文献に示されている場合には、臨床的に有意である可能性があると考えられる。分析では、分析時に生じる環境因子のみを考慮する。薬剤−環境相互作用では、「環境」という用語は、食物(グレープフルーツジュース)からハーブ/ビタミンサプリメント(例えば、セントジョーンズ麦汁)までの範囲の露出から、自発的な毒性への露出(例えば、喫煙又はアルコール)、更に自発的でない毒性への露出(副流煙、殺虫剤)までの全ての形を意味する。薬剤環境相互作用可能性は、+1(最も好ましい)から−1(最も好ましくない)までの目盛で評価される。
【0098】
患者特異的遺伝子因子
患者特異的遺伝子因子は、一方向の薬物動態又は薬力学、薬剤−遺伝子相互作用に関わる。一方向とは、薬剤の薬物動態又は薬力学作用に及ぼす遺伝子変動の効果を意味する。薬物動態薬剤−遺伝子相互作用は、遺伝子因子が薬剤の代謝に関連する特定の酵素の活性を>20%増大させるか又は低減するかのいずれかであることを示す相互作用が文献に示されている場合には、臨床的に有意である可能性があると考えられる。薬力学薬剤−遺伝子相互作用は、遺伝子因子が(正又は負のいずれかに)薬剤の作用を>20%変化させることを示す相互作用が文献に示されている場合には、臨床的に有意である可能性があると考えられる。薬剤−遺伝子相互作用では、「遺伝子」という用語は、DNA変動、mRNA変動、タンパク質変性、又は代謝物変性を含む遺伝子変動の全ての形を意味する。薬剤−遺伝子相互作用可能性は、+1(最も好ましい)から−1(最も好ましくない)までの目盛で評価する。
【0099】
疾病マトリックス
疾病マトリックスの例示的な(非常に小さな)セグメントを図3に提供する。疾病マトリックスは、互いに異なる治療モダリティ(例えば、薬物、療法、手術、食餌計画、その他)に対する列の見出しを含み、行は、上に挙げた5つのカテゴリ、すなわち、疾病特異的根拠ベース医療データ、薬剤特異的基本薬理学特性、患者特異的高度薬理学原理、患者特異的環境、及び患者特異的遺伝子因子から得た互いに異なる因子である。マトリックス内の各セルの値は、+1(好ましい性質/結果)から−1(好ましくない性質/結果)の範囲である。
【0100】
図3の例示的疾病マトリックスセグメントを参照すると、第1の列10は、特定の治療及び/又は薬剤のリストに対して評価される特定の因子を列記しており、列12は、特定の因子に対するカテゴリを与え、列14〜20は、特定の因子が特定の薬剤又は治療に関連する特定の疾病マトリックス値を与える。例えば、行8の因子である「薬物動態(代謝)」は、「基本薬理学」カテゴリに列記され、提案される薬剤又は治療によって大きく分散するマトリックス値又はスコアを有し、カルバマゼピンのマトリックス値は−0.5、フェノバルビタールのマトリックス値は1.0、フェニトインのマトリックス値は−1.0、トピラメートのマトリックス値は1.0である。別の例として、行23の因子である「患者はCYP2C9低代謝者である」は、「遺伝子因子」カテゴリに列記され、これも、提案される薬剤又は治療によってマトリックススコアが分散し、カルバマゼピンのマトリックス値は−0.3、フェノバルビタールのマトリックス値は−1.0、フェニトインのマトリックス値は−1.0、トピラメートのマトリックス値は0.0である。
【0101】
患者ベクトル列(マトリックス)
患者ベクトルは、各個人の患者に対して構成される。例示的な実施形態では、患者ベクトルは、疾病マトリックスの列(図3には示さず)である。任意的に、患者ベクトルは、1×Nマトリックスとすることができ、ここで、Nは、上に列記した5つのカテゴリ、すなわち、疾病特異的根拠ベース医療データ、薬剤特異的基本薬理学特性、患者特異的高度薬理学原理、患者特異的環境、及び患者特異的遺伝子因子から取ったその特定の疾病アルゴリズムに対する互いに異なる因子の数である。患者ベクトルの項目は、考察される変数の各々に対する一連のイエス/ノー/不明の質問の応答により判断される。質問は、イエス/ノー質問であり、マトリックスは、0(ノー)、0.5(不明)、又は1(イエス)を入力する。
【0102】
重み付けベクトル
各疾病マトリックスに対して重み付けベクトルが構成される。例示的な実施形態では、重み付けベクトルは、疾病マトリックスの列(図3には図示せず)である。任意的に、重み付けベクトルは、1×Nマトリックスであり、ここで、Nは、上に列記した5つのカテゴリ、すなわち、疾病特異的根拠ベース医療データ、薬剤特異的基本薬理学特性、患者特異的高度薬理学原理、患者特異的環境、及び患者特異的遺伝子因子から取ったその特定の疾病アルゴリズムに対する互いに異なる因子の数である。重み付けベクトルの値は、監視下のシステム(例えば、専門家システム)又は非監視下のシステム(例えば、ニューラルネットワーク又は人工知能システム)のいずれかにより判断される。重み付けは、通常は、疾病アルゴリズムの異なる因子に対しては異なる。例えば、図3に戻ると、行2の「部分発作を起こした小児が療法を開始する」の重みは、クレーム1000であり、行13の「患者が片頭痛/頭痛を有する」の重みは、クレーム150であり、行23の「患者はCYP2C9低代謝者である」の重みは、250である。
【0103】
アルゴリズム出力
アルゴリズムの主要出力は、最も成功しそうである(最高スコア)から最も成功しそうもない(最低スコア)の範囲のその特定の疾病に対する全ての可能な療法(薬物、手術、又は食餌)のランク付けである。各薬剤のスコアは、疾病マトリックス内の患者ベクトル、重み付けベクトル、及び特定の薬剤の列の値の積である。薬剤に対する投薬は、上述のアルゴリズムにより判断される。例示的な実施形態では、出力表示は、評価のために、寄与する上位5つの因子と、このスコアから3因子低減された最下位のものとを含む。上述のランク付けは、患者が提案された治療計画を遵守することになる尤度を反映する遵守スコアである。この数の判断及び解釈は、遵守スコアの節に説明する。
【0104】
遵守スコア
遵守スコアは、簡潔性指標と同様の手法で判断される。すなわち、スコアは、「遵守マトリックス」、患者ベクトル、及び重み付けベクトルの積である。各疾病に対して、可能な遵守問題は、一連のほぼ10のイエス/ノー/不明の質問を用いて評価される。全ての質問に不明と答えられた場合には、遵守スコアは50%になり、患者が治療計画を遵守する50%の見込みがあることが示唆される。「ノー」と答えられる質問が多ければ、遵守スコアが高くなり、患者が処方された治療計画を遵守する見込みが大きくなる。「イエス」と答えられる質問が多ければ、遵守スコアが低くなり、患者が処方された治療計画を遵守しない見込みが大きくなる。
【0105】
患者の例:
・病歴:患者は7歳男児であり、頻繁に無応答、顔面れん縮、及びその後に強度の倦怠感を伴う30〜60秒続く凝視するエピソードが起こる。この患者は、現象が起こる数分前に口内に奇妙な味が生じる。このような現象は、過去1年以内に約10回起こり、先月3回起こった。患者は、うつ、ADHD、又は不安症ではないが、頻繁に片頭痛が起こる。患者は、現在、感染症にエリスロマイシンを服用しているが、慢性薬物は服用していない。てんかんの家族歴はない。患者は、グレープフルーツジュースを飲むことを好む。家族は、保険を有しており、移動手段に問題はなく、認識可能なストレス要因もない。
【0106】
・身体検査:患者が非常に過体重であることを除けば、詳細にわたって正常である。
【0107】
・臨床試験:EEGは、正常な背景及び側頭葉に焦点性放電を示している。脳のMRIは正常である。遺伝薬理学試験では、CYP2C9により代謝される薬剤に対して代謝が不良になるCYP2C9多型が示されている。
【0108】
・診断:部分起始発作を特徴とする新しく診断された特発性部分てんかん。
【0109】
・必要事項:この特定の患者に対して最良の抗てんかん薬物を判断すること。
【0110】
段階1:図4に見られるように、アルゴリズムプログラム「疾病を選択する」にログオンにすると、画面が生じ、臨床医は、フィールド22内で患者の診断がてんかんであることを選択するが、フィールド24内では患者の診断はうつではないことを選択することになる。
【0111】
段階2:図5に見られるように、次の段階「年齢、性別、及び思春期状態を入力する」では、別の画面が生じ、臨床医は、フィールド26には、患者は2歳と18歳との間であることを選択し、フィールド28には、患者が男性であること、フィールド30には、患者が思春期前であることを選択することになる。
【0112】
段階3:図6に見られるように、次の段階「てんかんの種類及び薬物を開始するか又は治療中であるかを選択する」では、別の画面が生じ、臨床医は、フィールド32に、患者が部分発作を起こし、以前に治療されていない小児であると選択することになり、フィールド34からフィールド50は選択しない。
【0113】
段階4:図7に見られるように、次の段階「同時罹患病状を入力する」では、別の画面が生じ、臨床医は、フィールド52に、患者が過体重であると選択し、フィールド54に、患者が片頭痛又は頭痛を有すると選択することになる。フィールド56からフィールド62は選択しない。
【0114】
段階5:図8に見られるように、次の段階「EEG及びMRI試験の結果を入力する」では、別の画面が生じ、臨床医は、フィールド64に、患者のEEGにてんかん様放電を有する異常があると選択し、フィールド66に、患者のMRI/CTで正常な皮質構造が示されていると選択することになる。
【0115】
段階6:図9に見られるように、次の段階「併用薬物を入力する」では、別の画面が生じ、臨床医は、フィールド68に、患者が抗生物質、抗ウイルス剤、抗真菌剤、駆虫薬、又は抗TB薬物を摂取していると選択することになる。フィールド70からフィールド88は選択しない。
【0116】
段階7:図10に見られるように、次の段階「併用薬物を入力する段階」が継続され、臨床医が、患者が摂取している特定の抗生物質、抗ウイルス剤、抗真菌剤、駆虫薬、又は抗TB薬物を識別するための別の画面が生じることになる。この例では、臨床医は、フィールド104に、患者がエリスロマイシンを摂取していると選択する。フィールド90からフィールド102及びフィールド106からフィールド114は選択しない。
【0117】
段階8:図11に見られるように、次の段階「環境因子を入力する」では、別の画面が生じ、臨床医は、フィールド118に、患者がグレープフルーツジュースを飲むと選択することになる。フィールド116及びフィールド120からフィールド120は、患者が喫煙せずアルコールも緑茶も飲まないために選択しない。
【0118】
段階9:図12に見られるように、次の段階「遺伝子因子を入力する」では、別の画面が生じ、臨床医は、フィールド126に、患者がCYP2C9低代謝であると選択することになる。当業者には理解されるように、このような遺伝子データは、患者の遺伝子データを分析するシステムの助けを借りて自動的に入力することができる。
【0119】
段階10:図13に見られるように、次の段階「遵守変数を入力する」では、別の画面が生じ、臨床医は、列記した変数が存在するか否か又は不明かを選択することになる。この例では、全ての列記した変数は、不明と選択されたフィールド134及びフィールド146を除き、フィールド132、フィールド136からフィールド144、及びフィールド148からフィールド150で存在しないと選択される。
【0120】
段階11:図14に見られるように、次の段階では、先の入力に基づいて、疾病マトリックスアルゴリズムの出力を臨床医に与える。この例示的な出力に見られるように、列152は、患者を治療するのに推奨される薬剤を列記し、列154は、列記された各薬剤のスコアを示し、列156は、臨床医が薬剤を処方するために選択することができるフィールドであり、列158は、患者への推奨投薬量を示し、列160は、スコアを生成するのに最も関連のある5つの特徴を示す列記した各薬剤に対する棒グラフ表示であり(特徴は、右側の箱161に定義/説明される)、フィールド162は、患者の遵守パーセント推定を示している。この例では、アルゴリズムにより、この患者にはトピラメートが推奨され、スコアは2850であり、推奨された投薬量は列記された投薬量のクレーム100%である。患者は、薬剤治療を遵守する見込みが90%であると計算される。
【0121】
結論
例示的な実施形態を参照して本発明を説明したが、本明細書で説明した例示的実施形態を説明するあらゆる制限事項又は要素は、そのような制限事項又は要素が特許請求の範囲に明確に列記されていなくても、特許請求の範囲の意味に組み込まれることは理解されるものとする。同様に、本発明は、特許請求の範囲によって規定されており、本明細書で明確に説明されてなくても本発明の固有及び/又は予想外の利点が存在する可能性があるので、あらゆる特許請求の範囲に含まれるために本明細書に開示された本発明の特定の利点又は目的のいずれか又は全てを満たす必要はないことは理解されるものとする。
【0122】
最後に、当業者には公知のように、上述の方法、アルゴリズム、又は処理のいずれかを行うように設計するか、プログラムするか、又は他の方法で構成されたあらゆるコンピュータ、コンピュータシステム、及び/又はコンピュータ化されたツールを提供することも本発明の範囲に含まれることは理解されるものとする。
【0123】
本明細書で示した全ての文献、特許、及び特許出願は、本発明に関連する当業者のレベルを示すものである。全ての文献、特許、及び特許出願は、各個々の文献又は特許出願が具体的にかつ個々に引用により組み込まれるのと同じ程度に引用により本明細書に組み込まれている。
【符号の説明】
【0124】
PK 薬物動態

【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者に対して投薬計画を選択するコンピュータ化した方法及び/又はコンピュータ支援方法であって、
(a)患者データを患者関連遺伝子型情報と統合する段階、
(b)患者に対する薬剤濃度プロフィールを生成する段階、
(c)前記薬剤濃度プロフィールとターゲット薬剤濃度プロフィールとを統合する段階、及び
(d)被験者に前記ターゲット薬剤濃度プロフィールをもたらす可能性が高い第1の化合物に対する投薬計画を準備する段階、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
(a)生物学的サンプルを準備する段階、
(b)前記生物学的サンプル中の生物マーカをモニタする段階、及び
(c)前記生物マーカの値を前記薬剤濃度プロフィールの情報と統合する段階、
を更に含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記患者データは、患者個体群統計データ及び臨床データを含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記臨床データは、第2の化合物に関する情報を含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記第2の化合物は、前記第1の化合物の代謝を調節することを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記第1の化合物は、神経精神医学的薬物であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項7】
関連の1つ又はそれよりも多くの遺伝子座で患者の遺伝子型を判断する段階を含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項8】
患者のための投薬計画を選択するコンピュータ化した方法及び/又はコンピュータ支援方法であって、
(a)患者データを得る段階、
(b)患者関連遺伝子型情報を得る段階、
(c)前記患者データを前記患者関連遺伝子型情報と統合する段階、
(d)患者に対する薬剤濃度プロフィールを生成する段階、
(e)前記薬剤濃度プロフィールとターゲット薬剤濃度プロフィールとを統合する段階、
(f)被験者に前記ターゲット薬剤濃度プロフィールをもたらす可能性が高い化合物に対する投薬計画を準備する段階、
(g)前記患者から生物学的サンプルを準備する段階、
(h)前記生物学的サンプル中の生物マーカをモニタする段階、
(i)前記生物マーカの値を前記薬剤濃度プロフィールの情報と統合する段階、
(j)前記患者に対する第2の薬剤濃度プロフィールを生成する段階、
(k)第2のターゲット薬剤濃度プロフィールを供給する段階、
(1)前記第2のターゲット薬剤濃度プロフィールをもたらす可能性が高い前記化合物
に対する第2の投薬計画を準備する段階、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項9】
(f)から(l)の処理の少なくとも2回目を実行する段階を更に含むことを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記患者に対する集団モデルを選択する段階を含むことを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記患者による指定応答に対する確率値を生成する段階を含むことを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項12】
患者に対する投薬計画を選択するコンピュータ化した方法及び/又はコンピュータ支援方法であって、
(a)複数の遺伝子型に対する薬剤相互作用の統計的集団モデルを生成する段階、
(b)患者関連遺伝子型情報を得る段階、
(c)前記遺伝子型情報を前記集団モデルに適用することによって投薬計画を確立する段階、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項13】
集団モデルを生成する前記段階は、ベイズアルゴリズムの使用を含むことを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項14】
薬剤相互作用の前記集団モデルは、遺伝子型と非遺伝子情報との組合せに対して定義されることを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項15】
患者に対する1つ又はそれよりも多くの薬剤を選択するコンピュータ化した方法及び/又はコンピュータ支援方法であって、
表現型を識別する段階と、
患者の診断に基づいて第1の複数の可能な薬物を準備する段階と、
少なくとも部分的に患者特異的遺伝子因子、非遺伝的患者因子、及び薬剤特異的因子に基づいて、前記第1の複数の薬物から薬物のランク付けリスト又は予測指標を計算する段階と、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項16】
前記計算する段階は、疾病特異的根拠ベース医療データ、薬剤特異的基本薬理学特性、患者特異的高度薬理学原理、及び/又は患者特異的環境と遺伝子因子とを統合して可能な薬物のランク付けを生成する線形代数計算科学を伴うことを特徴とする請求項15に記載のコンピュータ化した方法。
【請求項17】
前記計算する段階は、対応する複数の因子に対して前記可能な薬物を利用する好ましさに対応する計算値を各可能な薬物に対して割り当てることを特徴とする請求項15又は請求項16に記載のコンピュータ化した方法。
【請求項18】
前記複数の因子は、複数の以下のカテゴリ:疾病特異的根拠ベース医療データ、薬剤特異的基本薬理学特性、患者特異的高度薬理学原理、患者特異的環境、及び患者特異的遺伝子因子からの因子を含むことを特徴とする請求項17に記載のコンピュータ化した方法。
【請求項19】
前記複数の計算値は、好ましい因子に正の値及び好ましくない因子に負の値を含み、前記計算する段階は、該計算値を加えてスコアを判断する段階を伴うことを特徴とする請求項17又は請求項18に記載のコンピュータ化した方法。
【請求項20】
前記複数の計算値は、好ましい因子に正の値、及び好ましくない因子に負の値、及びこのような因子の相対的重要度に対応する重みを含み、前記計算する段階は、該重み付けした計算値を加えてスコアを判断する段階を伴うことを特徴とする請求項17又は請求項18に記載のコンピュータ化した方法。
【請求項21】
前記患者が、予定された療法又は処方を遵守することになる予測尤度に対応する遵守スコアを生成する段階を更に含むことを特徴とする請求項15に記載のコンピュータ化した方法。
【請求項22】
前記因子は、対話式コンピュータ化ツールを利用して得られることを特徴とする請求項15、請求項16、請求項17、請求項18、請求項19、請求項20、又は請求項21に記載のコンピュータ化した方法。
【請求項23】
前記対話式コンピュータ化ツールは、階層的質問及び回答セッションを利用して因子を収集することを特徴とする請求項22に記載のコンピュータ化した方法。

【図1】
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【図2a】
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【図2b】
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【図2c】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2012−123837(P2012−123837A)
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−54497(P2012−54497)
【出願日】平成24年3月12日(2012.3.12)
【分割の表示】特願2008−543404(P2008−543404)の分割
【原出願日】平成18年11月28日(2006.11.28)
【出願人】(505006747)チルドレンズ ホスピタル メディカル センター (3)
【Fターム(参考)】