説明

薬理シャペロンを用いたリソソーム蓄積症治療のための投薬計画

本発明は、治療が必要な対象に対し薬理シャペロンを投与するための投薬計画を提供する。この投薬計画は、リソソーム蓄積障害などの不適切なタンパク質の誤った折畳みによって引き起こされる障害を治療するために使用可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2007年4月26日出願の米国仮特許出願第60/914,288号明細書、2007年12月18日出願の米国仮特許出願第61/014,744号明細書、および2008年2月12日出願の米国仮特許出願第61/028,105号明細書の利益を主張する。これらの出願の各々の内容は、その全体が参照により本明細書に援用される。
【0002】
本発明は、リソソーム蓄積症治療のための薬理シャペロンとして小分子競合阻害物質を使用するための投薬計画およびその論理的根拠を提供する。
【背景技術】
【0003】
人体内では細胞機能のほぼすべての面にタンパク質が関与している。タンパク質は、適切に機能するために、折畳まれ、特異的な3次元形状へと捩じられるアミノ酸の線形文字列である。一部のヒト疾患は、タンパク質の安定性を低下させ、それが適切に折畳まれるのを妨げ得るタンパク質のアミノ酸配列の変化を引き起こす突然変異の結果としてもたらされる。安定性がさらに低いかまたは誤って折畳まれたタンパク質の産生に導く遺伝的突然変異の大部分は、ミスセンス突然変異と呼ばれる。これらの突然変異によって、タンパク質内の単一のアミノ酸と別のアミノ酸の置換が起きる。このエラーのため、ミスセンス突然変異は生物活性レベルが低下したタンパク質を生じることが多い。ミスセンス突然変異に加えて、生物活性が低下したタンパク質を生じる可能性のあるその他のタイプの突然変異も存在する。
【0004】
タンパク質は一般に、小胞体またはERとして公知の特定の細胞領域内で折畳まれる。細胞は、タンパク質輸送と一般に呼ばれているプロセスである、ERから細胞内の適切な目的地までの移動の前に、タンパク質がその正確な3次元形状へと確実に折畳まれるようにする品質制御機構を有している。誤って折畳まれたタンパク質は、当初ER内に保持された後に該品質制御機構によって除去される場合がある。場合によっては、誤って折畳まれたタンパク質は除去される前にER内に蓄積し得る。
【0005】
誤って折畳まれたタンパク質のER内での保持はその適切な輸送を中断し、結果として生じた低下した生物活性によって細胞機能障害、そして最終的には疾病に導かれ得る。さらに、誤って折畳まれたタンパク質のER内での蓄積は、細胞に対しさまざまなタイプのストレスを導くかもしれず、これも同様に細胞機能不全および疾病に寄与する可能性がある。
【0006】
リソソーム蓄積症(LSD)は、リソソーム酵素をコードする遺伝子内の突然変異に起因するリソソーム酵素の欠損によって特徴付けられる。その結果、脂質、炭水化物および多糖類を含むこれらの酵素の基質が病的に蓄積される。これまでに知られているLSDは約50あり、これにはゴーシェ病、ファブリー病、ポンペ病、テイ・サックス病およびムコ多糖症(MPS)が含まれる。大部分のLSDは常染色体劣性形質として受け継がれるが、ファブリー病およびMPSIIを有する男性は、疾病遺伝子がX染色体上にコードされることから、半接合体である。大部分のLSDについて、対症的管理の域を超えて利用できる治療は全く存在しない。ゴーシェ、ファブリー、ポンペおよびMPSIおよびVIを含めたいくつかのLSDについて、組換え型酵素を用いた酵素補充療法(ERT)が利用可能である。ゴーシェ病については、限定的な状況下で、基質還元療法(SRT)も利用可能である。SRTでは、グルコシルセラミド(GD基質)の合成に必要とされる酵素の小分子阻害物質が利用される。SRTの最終目的は、基質の生産を削減し、病的蓄積を削減することにある。
【0007】
各LSDに関連して数多くの異なる突然変異体遺伝子型が存在するが、最も一般的な突然変異のいくつかを含めた突然変異の一部は、比較的安定性の低い酵素の産生を導く可能性のあるミスセンス突然変異である。これらの比較的安定性の低い酵素は時としてER関連分解経路によって早期に分解される。その結果、リソソーム内の酵素が欠損し、基質が病的に蓄積する。かかる突然変異酵素は、時として関係する技術分野で「折畳み突然変異体」または「立体構造突然変異体」と呼ばれる。
【0008】
LSDと関連する酵素の小分子阻害物質の結合が突然変異酵素および対応する野生型酵素の両方の安定性を増大させ得る、ということが以前に示された(全て参照により本明細書に援用されている特許文献1、特許文献2、特許文献3、特許文献4、特許文献5および特許文献6を参照のこと)。特に、いくつかの標的リソソーム酵素のための特異的な選択性競合阻害物質であるグルコースおよびガラクトースの小分子誘導体の投与は、試験管内で細胞内の酵素の安定性を効果的に増大させて、リソソームへの酵素の輸送を増大させることが発見された。したがって、リソソーム内の酵素量を増大させることにより、酵素基質の加水分解が増大するものと予想される。この戦略の背後にある原初の理論は次のようなものであった。すなわち、突然変異酵素タンパク質はER内で不安定であることから(非特許文献1)、酵素タンパク質は正常な輸送経路(ER→ゴルジ体→エンドソーム→リソソーム)内で遅延され、早期に分解される。したがって、突然変異酵素に結合しその安定性を増大させる化合物は、酵素のための「シャペロン」として役立ち、ERから退出してリソソームまで移動できる量を増大させ得る。さらに、一部の野生型タンパク質の折畳みおよび輸送は不完全であり、一部の野生型タンパク質の最高70%が場合によってはその最終的細胞部位に到着する前に分解されていることから、野生型酵素を安定化させかつERを退出しリソソームまで輸送され得る酵素の量を増大させるためにシャペロンを使用することが可能である。
【0009】
一部の酵素阻害物質は酵素の触媒中心(「活性部位」)に特異的に結合し、その結果として試験管内で酵素立体構造を安定化させるものとして知られていることから、幾分か逆説的ではあるが、これらの阻害物質は、ERからの退出、リソソームへの輸送、加水分解活性の回復を助けることのできる有効なシャペロンであることが提案された。これらの特異的薬理シャペロンは、酵素の活性部位の中に特異的に結合したことから、「活性部位特異的シャペロン(ASSC)」または「特異的薬理シャペロン」と呼称された。小分子は経口投与が可能で、タンパク質に基づく療法と比べて優れた生体内分布を有し得ることから、薬理シャペロン療法はERTを超える潜在的な利点を有する。
【0010】
現在、ファブリー病、ゴーシェ病およびポンペ病について、3つの薬理シャペロンがヒト臨床試験中である。シャペロンはこれらの疾病において欠損している酵素の競合阻害物質であることから、細胞酵素活性を純増させるもののすでに欠損している酵素を持続的に阻害する結果とならない適切な投薬計画を策定しなければならない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】米国特許第6,274,597号明細書
【特許文献2】米国特許第6,583,158号明細書
【特許文献3】米国特許第6,589,964号明細書
【特許文献4】米国特許第6,599,919号明細書
【特許文献5】米国特許第6,916,829号明細書
【特許文献6】米国特許第7,141,582号明細書
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】Ishii et al., Biochem. Biophys. Res. Comm. 1996; 220: 812-815)
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、誤って折畳まれたタンパク質に関連する疾病(例えば、リソソーム蓄積傷害)および本明細書中に記載されている薬理シャペロンで治療できるまたは改善できる疾病を治療するための、特異的薬理シャペロンを投与するための投薬計画を提供する。
【0014】
具体的実施形態においては、投薬計画は、ゴーシェ病の治療のための患者に対するイソファゴミンまたはその薬理学的に許容できる塩の投与のために提供する。
【0015】
1つの実施形態においては、約4日〜約10日間1日1回約75mg〜約300mgの薬理シャペロン(例えば、イソファゴミン)が経口投与され、その後、約3日〜約8日おきに1回約75〜225mgの薬理シャペロンの維持用量が経口投与される。
【0016】
さらなる実施形態では、投与される薬理シャペロンの日用量は、約125〜225mg/日(例えば、約150mg/日)であり、約5日〜約8日間(例えば、約7日間)投与される。
【0017】
さらなる実施形態においては、投与される薬理シャペロン(例えば、イソファゴミン)の維持用量は約125mg〜約175mgであり、約4〜7日おきに投与される。さらにもう1つの実施形態においては、投与される維持用量は約150mgであり、これは4日おきに投与される。代替的な一実施形態においては、投与される維持用量は約150mgであり、この用量は7日おきに投与される。
【0018】
具体的な一実施形態においては、本発明は、約7日間、1日1回、約150mgのイソファゴミンを経口投与し、その後7日おきに約1回、約150mgのイソファゴミンの維持用量を経口投与することによる、ゴーシェ病の治療のために患者に対しイソファゴミンまたは薬理学的に許容できる塩を投与する方法を提供する。
【0019】
本発明は同様に、約2〜3日おきに約75mg〜約300mgの間を経口投与することによる、ゴーシェ病の治療のために治療が必要な患者に対しイソファゴミンまたは薬理学的に許容できる塩を投与する方法も提供する。
【0020】
一実施形態においては、投与されるイソファゴミンの用量は、約125mg〜約225mgの間である。別の実施形態においては、投与されるイソファゴミンの用量は約150mgである。具体的な一実施形態においては、約150mgの酒石酸イソファゴミンが約3日おきに投与される。
【0021】
本発明の特定の一実施形態において、投与されるイソファゴミン塩は酒石酸イソファゴミンである。
【0022】
一実施形態においては、約75〜約300mgの薬理シャペロンが約4日〜約10日間、1日1回、経口投与され、次に約1日〜約10日間薬理シャペロンが投与されない最初の休薬期間が続き、その後約1日〜約8日おきに1回、約75〜300mgの薬理シャペロンの維持用量が投与され、次に約1日〜約10日間薬理シャペロンが投与されない第2の休薬期間が続く。
【0023】
さらなる実施形態においては、投与される日用量は約125〜225mg/日であり、約5日〜約8日間投与される。さらにもう1つの実施形態において、投与される日用量は約225mg/日であり、約7日間投与される。
【0024】
さらなる実施形態においては、薬理シャペロンが投与されない最初の休薬期間は約2日〜約8日である。具体的実施形態においては、薬理シャペロンが投与されない最初の休薬期間は約7日である。
【0025】
さらなる実施形態において、投与される維持用量は約125mg〜約275mgであり、約4〜7日間、1日1回投与される。さらにもう1つの実施形態において、投与される維持用量は約225mgであり、この用量は約3日間、1日1回投与される。
【0026】
一変形実施形態において、いかなる維持用量も投与されない。
【0027】
さらなる実施形態においては、薬理シャペロンが投与されない第2の休薬期間は約2日〜約8日である。具体的実施形態においては、薬理シャペロンが投与されない第2の休薬期間は約4日である。一変形実施形態では、いかなる薬理シャペロンも投与されない第2の休薬期間は存在しない。
【0028】
さらなる実施形態において、日用量および最初の休薬期間は、約1週間〜約30週間、または約5週間〜約25週間の期間にわたり行われる。
【0029】
さらなる実施形態において、日用量および最初の休薬期間は約5週間〜約25週間の期間にわたり行われる。
【0030】
具体的な実施形態において、日用量および最初の休薬期間は、約24週間の期間にわたり行われる。
【0031】
一変形実施形態において、日用量および最初の休薬期間は、約2週間の期間にわたり行われる。
【0032】
さらなる実施形態において、維持用量および第2の休薬期間は約1週間〜約30週間の期間にわたり行われる。
【0033】
さらなる実施形態において、日用量および最初の休薬期間は、約5週間〜約25週間の期間にわたり行われる。
【0034】
具体的実施形態において、維持用量および第2の休薬期間は、約22週間の期間にわたり行われる。
【0035】
さらにもう1つの実施形態において、患者は、薬理シャペロン投与前後の約0.5〜約24時間の間または約1時間〜約12時間(例えば、約2時間)の期間、食物を一切摂取しない(すなわち絶食する)。
【0036】
さらなる実施形態において、薬理シャペロンはイソファゴミンまたはその薬理学的に許容できる塩(例えば、酒石酸イソファゴミン)である。
【0037】
具体的な一実施形態において、本発明は、約7日間、1日1回、約225mgのイソファゴミンまたは薬理学的に許容できる塩を経口投与し、次に約7日間イソファゴミンまたは薬理学的に許容できる塩が一切投与されない最初の休薬期間が続き、その後、約3日間、1日1回、約225mgのイソファゴミンまたは薬理学的に許容できる塩の維持用量を経口投与し、次に約4日間イソファゴミンまたは薬理学的に許容できる塩が全く投与されない第2の休薬期間が続くことによる、ゴーシェ病の治療のために患者に対してイソファゴミンまたは薬理学的に許容できる塩を投与する方法であって、維持用量および第2の休薬期間が22週間の期間反復する方法を提供する。
【0038】
別の具体的実施形態において、本発明は、約7日間、1日1回、約225mgのイソファゴミンまたは薬理学的に許容できる塩を経口投与し、次に約7日間イソファゴミンまたは薬理学的に許容できる塩が一切投与されない休薬期間が続くことによる、ゴーシェ病の治療のために患者に対してイソファゴミンまたは薬理学的に許容できる塩を投与する方法であって、日用量の投与および休薬期間が24週間の期間反復する方法を提供する。
【0039】
本発明の特定の一実施形態において、投与されるイソファゴミン塩は酒石酸イソファゴミンである。
【0040】
本発明は同様に、ファブリー病の治療のための1−デオキシガラクトノジリマイシンの投与を目的とする具体的な投薬計画も提供する。
【0041】
本発明の一実施形態において、DGJ塩酸塩は、約4日〜約10日間、または約5日〜約8日間、または約7日間、毎日経口投与され、その後約2日おき〜約3日おきに維持用量が投与される。
【0042】
この実施形態において、日用量は1日約200mg〜約500mg、または1日約250mg〜約300mg、または1日約250mgの範囲内である。
【0043】
以上の実施形態において、2〜3日おきに投与される維持用量は、約75mg〜約225mgまたは約100mg〜約200mgの範囲内にあり、または具体的実施形態において約150mgである。
【0044】
別の実施形態において、1−デオキシガラクトノジリマイシンは、約4〜約14日間または約5〜約10日間、また特定の実施形態において約7日間毎日、1日約200mg〜約500mg、または1日約250mg〜約300mgの範囲内または1日約250mgの用量で投与される。
【0045】
4〜14日の期間の後、1日あたり約25〜50mgの範囲内または約25mgの維持日用量が投与される。
【0046】
別の実施形態において、約2〜3日おきの間隔投薬が企図されている。この実施形態では、約50mg〜約300mgの間の1−デオキシガラクトノジリマイシンが各々の間隔で、または約125mg〜約225mgが各々の間隔で、または約150mgが各々の間隔で投与される。具体的実施形態において、DGJ塩酸塩が2日おきに50mg、150mgまたは250mgで投与される。
【0047】
さらなる実施形態において、1−デオキシガラクトノジリマイシンは2週間、1日あたり50mgが経口投与され、その後2週間、1日あたり200mgが投与され、その後2週間、1日あたり500mgが投与され、その後治療の持続期間中、1日あたり50mgが投与される。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】健常なヒトボランティアに対する酒石酸イソファゴミン投与後の血漿PK結果を示す。
【図2】健常なヒトボランティアに対する酒石酸イソファゴミン投与後の薬力学的結果を示す。
【図3A】150mgのIFGを毎日投与した後28日間にわたるEC50およびIC50より高いおよび低い薬物血漿濃度のコンピュータ内モデリングの結果を示す。
【図3B】25mgのIFGを毎日投与した後28日間にわたるEC50およびIC50より高いおよび低い薬物血漿濃度のコンピュータ内モデリングの結果を示す。
【図3C】150mgのIFGを4日おきに投与した後28日間にわたるEC50およびIC50より高いおよび低い薬物血漿濃度のコンピュータ内モデリングの結果を示す。
【図4】5日間異なる濃度のIFGで治療した後の細胞溶解物内で人工的基質を用いて測定されたGCase活性の試験管内増加を示す。
【図4A】5日間異なる濃度のIFGで治療した後の細胞溶解物内で人工的基質を用いて測定された線維芽細胞内のGCase活性の試験管内増加を示す。
【図4B】5日間異なる濃度のIFGで治療した後の細胞溶解物内で人工的基質を用いて測定されたリンパ芽球内のGCase活性の試験管内増加を示す。
【図4C】5日間異なる濃度のIFGで治療した後の細胞溶解物内で人工的基質を用いて測定されたマクロファージ内のGCase活性の試験管内増加を示す。
【図5A】2日または3日おきに150mgのIFGを投与した後のGCase蓄積速度のコンピュータ内モデリングの結果を示す。
【図5B】7日間毎日150mgのIFGを投与し次に3日または4日おきに150mgを投与した後の推定血漿PK結果を示す。
【図5C】3日おきに150mgのIFGを毎日投与しその後4日間「無投薬」にした予想結果を示し、同様に4日おきに150mgのIGFを毎日投与しその後3日間「無投薬」にした予想結果も示す。
【図6】1日おきに150mgのDGJを投与した後のそれぞれEC50およびIC50より高いおよび低い薬物血漿濃度のコンピュータ内モデリングの結果を示す。
【図7】2つの具体的投薬計画にしたがってDGJで治療された11人のファブリー病患者からの結果を示す。
【図8】実施例6内に記載されている4つの投薬計画を要約した表である。
【図9】特定のミスセンス突然変異を有する男性患者8人についての白血球内α−GAL活性のグラフである。
【図10】特定のミスセンス突然変異を有する男性患者9人についての白血球内α−GAL活性のグラフである。
【図11】実施例6に記載されている投薬計画についての応答の要約である。
【図12】実施例6中で指定された3つのグループについての白血球内α−GAL活性増加を実証するグラフである。
【図13】実施例6中で指定された3つのグループについての腎組織内α−GAL活性増加を実証するグラフである。
【図14】実施例6に記載されている通りのベースラインからの尿中GL−3変化を要約した表である。
【図15A】実施例6に記載されている通りの特定の細胞型におけるGL−3組織学を要約する表である。
【図15B】実施例6に記載されている通りの特定の細胞型におけるGL−3組織学を要約する表である。
【図16】実施例6に記載されている通りのGL−3腎生検を要約した表である。
【図17A】実施例6に記載されている通りの48週目以降におけるeGFRレベルを実証するグラフである。
【図17B】実施例6に記載されている通りの48週目以降におけるeGFRレベルを実証するグラフである。
【図18】実施例6に記載されている通りの駆出率を実証するグラフである。
【図19】自己申告されたファブリー症候を要約した表である
【図20】実施例6に記載されている通りの女性患者についてのベースラインからの尿GL−3変化を要約した表である。
【図21】女性における腎生検GL−3データを要約した表である。
【図22】女性の自己申告のファブリー症候を要約した表である。
【図23】実施例7に記載されている通りの正常なマウスGAA活性に対するDNJの効果を実証する表である。
【図24】実施例8に記載されている通りの皮膚、心臓および腎臓におけるFLAおよびGL−3結果を実証するグラフである。
【図25】実施例8に記載されている通りの尿細管断面および心臓断面の写真である。
【図26】実施例8に記載されている通りのさまざまなミスセンス突然変異についてのGLAに対するDGJの効果のグラフである。
【図27】実施例9に記載されている通りの大腿骨および骨髄中のGcaseレベルを実証するグラフである。
【図28】実施例10に記載されている通りのさまざまな組織内における経時的な酒石酸IFGを実証するグラフである。
【図29】実施例11に記載されている投薬計画にしたがってDGJを4週間投与した後のラットの皮膚、腎臓、心臓および血漿試料中のGL−3の量を比較するグラフである。
【図30】GL−3の減少を視覚的に利用することを目的とした、実施例11に記載されている投薬計画にしたがってDGJを4週間投与した後に免疫組織学的染色を受けた皮膚、心臓および腎臓試料の写真である。
【図31】実施例12に記載されている投薬計画にしたがってDGJを4週間投与した後のラットの皮膚、心臓および腎臓試料内のGLAおよびGL−3レベルのグラフである。
【図32】実施例13に記載されている通りのDGJの使用中止後0日目から7日目のラットの皮膚、心臓および腎臓資料中のGLA活性のグラフである。
【図33】50mgおよび150mgのDGJを1日2回7日間投与している間、および実施例14に記載されている通りの7日間の休薬期間中の、健常な雄におけるGLA活性のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0049】
本発明は、1つ以上の誤って折畳まれたタンパク質に関連するまたはこれによって引き起こされる疾病、例えば、リソソーム蓄積障害の治療のための、特異的薬理シャペロンの投与を目的とする投薬計画を提供する。本出願で記述されている投薬計画は、パーキンソン病およびアルツハイマー病を含めた(ただしこれらに限定されない)薬理シャペロンの使用により、治療または改善され得るあらゆる疾病または身体条件を治療するためにも使用してよい。例えば、イソファゴミンおよび1−デオキシガラクトノジリマイシンの具体的な投薬計画がそれぞれゴーシェ病およびファブリー病の治療のために提供され、薬理シャペロンが実行可能な1つの治療選択肢であるその他の疾病向けの投薬計画を予測するために使用可能なコンピュータ内(in silico)モデルが提供されている。
【0050】
定義
「ゴーシェ病」とは、1型、2型、および3型ゴーシェ病を意味する。
【0051】
「ファブリー病」とは、古典的ファブリー病、遅発性ファブリー病を意味し、およびα−ガラクトシダーゼAをコードする遺伝子内に突然変異を有する半接合の女性を意味する。
【0052】
「ポンペ病」または「グリコーゲン蓄積症II型」には、幼児期発症、非古典的幼児期発症および成人発症型疾患が含まれる。
【0053】
本明細書中で使用される「薬理シャペロン」または時として「特異的薬理シャペロン」(「SPC」)という用語は、1つのタンパク質、例えば、酵素に特異的に結合し、(i)タンパク質の安定した分子立体構造を誘発し;(ii)ERから別の細胞位置、好ましくは未変性細胞位置までのタンパク質の輸送を促進する、すなわちタンパク質のER関連分解を防止する;(iii)不安定なタンパク質の凝集を防止する;(iv)タンパク質に対し少なくとも部分的な野生型機能および/または活性を回復させるまたは増大させる;かつ/またはタンパク質を収容する細胞の表現型または機能を改善する、という効果のうちの1つ以上を有する分子を意味する。したがって、薬理シャペロンは、標的タンパク質に結合し、タンパク質の安定化、輸送、非凝集化をもたらし、かつ/またはタンパク質の活性を増大させる分子である。本明細書で使用される通り、この用語はBiPなどの内因性シャペロンを意味せず、「化学シャペロン」と呼ばれることもあるグリセロール、DMSOまたは重水などの非特異的シャペロン活性を実証した非特異的作用物質も意味しない(Welch et al.,Cell Stress and Chaperones 1996; 1(2):109-115; Welch et al., Journal of Bioenergetics and Biomembranes 1997; 29(5):491-502; U.S. Patent No. 5,900,360; U.S. Patent No. 6,270,954; and U.S. Patent No. 6,541,195を参照のこと)。
【0054】
さまざまな実施形態において、「薬理シャペロン」または「特異的薬理シャペロン」(「SPC」)には、酵素またはその他のタンパク質に対して競合的に結合する活性部位特異的シャペロンのみが含まれる。しかしながら、別段の記述がないかぎり、「薬理シャペロン」または「特異的薬理シャペロン」(「SPC」)は、活性部位に加えて部域内で酵素を結合するシャペロンを包含し、かつ競合的および非競合的の両方の形で結合するシャペロンも包含するものと理解される。
【0055】
別段の規定のないかぎり、薬理シャペロンの投与に対するすべての言及は、経口投与を意味するものとする。薬理シャペロンの投与量に対するすべての言及は、薬理シャペロンの経口投与量を意味するものとする。
【0056】
本明細書で使用される「タンパク質活性を増強させる」または「タンパク質活性を増大させる」という用語は、そのタンパク質に特異的な薬理シャペロンと接触させられた細胞内の安定した立体構造をとるポリペプチドの量を、そのタンパク質に特異的な薬理シャペロンと接触させられていない細胞(好ましくは、例えば、より早い時期にある、同じ細胞型または同じ細胞)内の量と比べて増大させることを意味する。一実施形態において、細胞は、ER内のポリペプチドの折畳みおよび/またはプロセッシングに関して欠損しているポリペプチドをコードする突然変異ポリヌクレオチドを発現しない。別の実施形態において、細胞は、立体構造突然変異体などの、ポリペプチドをコードする突然変異ポリヌクレオチドを発現しない。したがって、上述の用語は、そのタンパク質に特異的な薬理シャペロンと接触させられた細胞内の未変性位置までの野生型ポリペプチドの輸送効率を、そのタンパク質に特異的な薬理シャペロンと接触させられていない細胞(好ましくは、対照としての、例えば、より早い時期にある、同じ細胞または同じく細胞型)内の野生型ポリペプチドの輸送効率と比べて増大させることも同様に意味する。
【0057】
「Vmax」という用語は、酵素触媒反応の最大初期速度、すなわち、飽和基質レベルにおける速度を意味する。「Km」という用語は、Vmaxの1/2を達成するのに必要とされる基質濃度である。
【0058】
「AUC」という用語は、所与の薬物に対する身体の経時的総曝露量を評価するための数学的計算を表わす。投薬後の血中濃度をプロットするグラフにおいては、薬物濃度変数がy軸にあり、時間がx軸にある。指定された時間的間隔についてのx軸と薬物濃度曲線の間の面積がAUCである。AUCは、投薬予定を立てる指針としておよび体内の異なる薬物アベイラビリティーを比較するために使用される。
【0059】
「Cmax」という用語は、投薬後に達成された最大血漿濃度を表わす。
【0060】
「Tmax」という用語は、最大血漿濃度(Cmax)に至るまでの時間を表わす。
【0061】
「Ki」という用語は、酵素−阻害物質複合体の解離定数、すなわち最大酵素活性の2分の1を阻害するのに必要とされる濃度を意味する。低いKiは、酵素に対する薬物の高い結合親和力が存在することを意味する。
【0062】
「EC50」という用語は、ベースラインと最大値の間の中間で所望の応答を誘発する一薬物の濃度、すなわち、その最大効果の50%が見られる濃度を意味する。本発明によると、EC50は、1組の具体的条件下で、観察された最大の酵素活性増加の半分が発生する濃度である。
【0063】
「IC50」という用語は、細胞中における50%の試験管内(in vitro)の酵素阻害に必要とされる一薬物の濃度を表している。
【0064】
「治療上有効な用量」および「有効量」という用語は、治療応答を得るのに充分である特異的薬理シャペロンの量を意味する。治療応答とは、前述の症候および代理臨床マーカーを含む療法に対する有効な応答としてユーザー(例えば、臨床医)が認識するあらゆる応答であってよい。したがって治療応答は、一般的に、例えば、ゴーシェ病などの疾患または障害について当該技術分野において公知のものといった、例えば、ゴーシェ病などの疾患または障害の1つ以上の症候の改善である。
【0065】
ゴーシェ病のための代理マーカーの改善の限定的意味のない例は、参照により本明細書に援用されている米国特許出願第60/911,699号明細書の中で開示されており、GCaseレベルまたは活性の増大;ERからリソソームへのGCaseの輸送の増大;脂質をもったマクロファージ(「ゴーシェマクロファージ」)の存在の減少;キトトリオシダーゼのレベルの低下;肝臓酵素のレベルの低下;肺ケモカインPARC/CCL18のレベルの低下;血漿α−シヌクラインのレベルの低下;アンギオテンシン変換酵素(ACE)および総酸性ホスファターゼのレベルの低下;脾腫および肝腫張の減少、(骨減少症、渙散性病変、病的骨折、慢性骨痛、急性骨クリーゼ、骨梗塞、骨壊死および骨格変形を含めた)骨合併症の改善、貧血症、血小板減少症、白血球減少症、高ガンマグロブリン血症などの免疫学的欠陥の改善、脾臓内のTリンパ球の量の増加、B細胞過剰増殖および形質細胞増加症の減少、TNF−α、IL−1β、IL−6、IL−8、IL−17、MIP−1αおよびVEGFを含めた炎症性サイトカインのレベルの低下、好中球定化性の改善;肺高血圧の減少;および骨特異的アルカリホスファターゼのレベルの低下、神経学的症候、例えば、水平注視、ミオクローヌス運動、角膜混濁、運動失調、認知症、痙性の改善;発作、聴覚障害;認識機能障害および神経変性の改善が含まれる。
【0066】
ファブリー病のための代理マーカーの改善の限定的意味のない例としては、細胞(例えば、線維芽細胞)および組織内のα−GALのレベルまたは活性の増大;GL−3蓄積の減少;ホモシステインおよび血管細胞接着分子−1(VCAM−1)の血漿濃度の減少;心筋細胞および弁線維芽細胞内部のGL−3蓄積の減少;(特に左心室の)心臓肥大の削減、弁閉鎖不全および不整脈の改善;タンパク尿の改善;CTH、ラクトシルセラミド、セラミドといった脂質の尿中濃度の低下、およびグルコシルセラミドおよびスフィンゴミエリンの尿中濃度の上昇(Fuller et al.,Clinical Chemistry. 2005; 51: 688-694);糸球体上皮細胞中の積層封入体(ゼブラ小体)の不在;腎機能の改善;発汗低下の緩和;角化血管腫の不在;および高周波感音難聴、進行性難聴、突発性難聴または耳鳴りなどの聴覚異常の改善がある。神経学的症候の改善としては、一過性脳虚血発作(TIA)または卒中の予防;および肢端感覚異常(末端部のほてりまたはうずき)として現われる神経因性疼痛の改善が含まれる。
【0067】
ポンペ病のための代理マーカーの改善の限定的意味のない例としては、α−グルコシダーゼの増加、グリコーゲン蓄積の減少、低血圧症の減少、運動耐容性を含めた筋肉機能および可動性の改善、巨大舌の減少、心肥大および肝脾腫大症の縮小、呼吸機能の改善、嚥下、吸込みまたは摂食の改善、および睡眠時無呼吸の改善が含まれる。
【0068】
「薬学的に許容できる」という語句は、生理学的に許容可能であり、ヒトに投与された場合に典型的には、望ましくない反応を生成しない分子的実体および組成物を意味する。好ましくは、本明細書で使用されている「薬学的に許容できる」という用語は、連邦または州政府の規制機関により承認されていることまたは、動物、より詳細にはヒトにおける使用のために米国薬局方またはその他の一般的に認知された薬局方の中に列挙されていることを意味する。「担体」という用語は、化合物を投与する場合に用いられる希釈剤、アジュバント、賦形剤またはビヒクルを意味する。かかる薬学的担体は、水および油などの無菌の液体であり得る。特に注射用溶液用の担体として、好ましくは、水または水溶液食塩溶液およびデキストロースおよびグリセロール水溶液が利用される。適切な薬学的担体は、"Remington's Pharmaceutical Sciences" by E.W. Martin, 18th Editionの中に記載されている。
【0069】
イソファゴミン(IFG)は、化合物(2R,3R,4R)−5−(ヒドロキシメチル)−ピペリジン−3,4−ジオールを意味する。イソファゴミンは、米国特許第5,863,903号明細書および5,844,102号明細書の中に記載されている。酒石酸イソファゴミンは、最近になって、参照により本明細書に援用されている米国特許出願第11/752,658号明細書中に記載され、CAS番号919364−56−0が割当てられた。イソファゴミンを、さまざまな有機および無機酸で作られたその他の酸付加塩の形で調製してもよい。かかる塩には、塩化水素、臭化水素、メタンスルホン酸、硫酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、シュウ酸、マレイン酸、ベンゼンスルホン酸、トルエンスルホン酸およびさまざまなその他の酸を用いて形成されるもの(例えば、硝酸塩、リン酸塩、ホウ酸塩、クエン酸塩、安息香酸塩、アスコルビン酸塩、サリチル酸塩など)が含まれる。かかる塩は、当業者にとって公知の通りに形成され得る。イソファゴミンは同様に、ナトリウム、カリウムおよびリチウムなどのアルカリ金属を用いて、カルシウムおよびマグネシウムなどのアルカリ土類金属を用いて、ジシクロヘキシルアミン、トリブチルアミン、ピリジンなどの有機塩基およびアルギニン、リジンなどのアミノ酸と共に結晶を形成してもよい。かかる結晶は、当業者にとって公知の通りに形成され得る。
【0070】
ゴーシェ病のためのその他の潜在的シャペロンは、共に2004年11月12日出願の係属中の米国特許出願第10/988,428号明細書および10/988,427号明細書中に記述されている。かかる化合物には、グルコイミダゾール(5R,6R,7S,8S)−5−ヒドロキシメチル−5,6,7,8−テトラヒドロイミダゾ[1,2a]ピリジン−6,7,8−トリオール)が含まれる。
【0071】
「1−デオキシガラクトノジリマイシン」(DGJ)は、(2R,3S,4R,5S)−2−(ヒドロキシメチル)ピペルジン−3,4,5−トリオールを意味する。この用語は、遊離塩基と任意の塩形態の両方を含む。DGJの塩酸塩は塩酸ミガラスタットとして知られている。α−GALについてのその他のシャペロンは、Fanらに対する米国特許第6,274,597号明細書、6,774,135号明細書および6,599,919号明細書の中で記述されており、α−3,4−ジ−エピ−ホモノジリマイシン、4−エピ−ファゴミン、およびα−アロ−ホモノジリマイシン、N−メチル−デオキシガラクトノジリマイシン、β−1−C−ブチル−デオキシガラクトノジリマイシン、およびα−ガラクト−ホモノジリマイシン、カリステジンA、カリステジンB、N−メチル−カリステジンA、およびN−メチル−カリステジンBを含む。
【0072】
「1−デオキシノジリマイシン」(DNJ)は、(2R,3R,4R,5S)−2−(ヒドロキシメチル)ピペリジン−3,4,5−トリオールを意味する。この用語には、遊離塩基および任意の塩形態の両方、特に塩酸塩が含まれる。
【0073】
「実質的に等しい長さ」という用語は、所与の期間の少なくとも±1日以内である期間を意味する。例えば、3日とは、4日に比べ実質的に等しい長さであり、逆も同様である。かくして、3日間の毎日の投薬および4日の休薬期間を求める以下の実施形態は、一定期間中の毎日の投薬とそれに続く実質的に等しい長さの休薬期間の一例とみなされる。
【0074】
実質的に等しい長さは、等しい持続時間も包含する。かくして、7日間は、7日と実質的に等しい長さである。かくして、7日間の毎日の投薬と7日間の休薬期間を求める以下の実施形態は、一定の期間の毎日の投薬とそれに続く実質的に等しい長さの休薬期間の一例とみなされる。
【0075】
本出願中に記載されている投薬計画は主としてリソソーム蓄積症に関して記述されているが、誤って折畳まれたタンパク質により引き起こされるかまたは悪化させられるその他の身体条件を本明細書中に記載された投薬計画を用いて治療してもよいということがわかる。同様に、限定的な意味なくアルツハイマー病およびパーキンソン病を含めた本出願中に記載されている薬理シャペロンによって治療または改善され得るあらゆる疾病または身体条件を、本出願の投薬計画を用いて治療してよい。
【0076】
「約」および「およそ」という用語は、一般に、測定の性質または精度から許容可能な程度の測定数量についての誤差を意味する。典型的には、例示的な誤差の程度は所与の値または値範囲の20パーセント(%)以内、好ましくは10%以内、そしてより好ましくは5%以内である。或いは、特に生体系において、「約」および「およそ」という用語は、所与の値の好ましくは5倍、より好ましくは2倍という範囲内にある平均値を意味し得る。本明細書中で示されている数値的数量は、特に明記しないかぎり近似であり、これは、明示的に記載されていない場合に「約」または「およそ」という用語が暗示され得る、ということを意味している。
【0077】
ゴーシェ病
ゴーシェ病(GD)は、主要代謝酵素β−グルコセレブロシダーゼ(GCase)の活性低下によって引き起こされるリソソーム蓄積障害である。GCase活性の低下により、肝臓、骨髄および脾臓の細胞、特にマクロファージ内のリソソームの内部にグルコセレブロシドと呼ばれるスフィンゴ糖脂質が蓄積されることになる。GD患者は、血液学的徴候、例えば、貧血症および血小板減少症ならびに肝脾腫大症、骨格機能障害、そして場合によっては神経学的機能障害を示す。症候、重症度、そして発症年令は、一部には疾病に内在する突然変異に左右される。GBA遺伝子内において200超の突然変異が同定されているが、大部分の患者において発見されている突然変異は4つである。これらの突然変異のうちの2つ、すなわちN370SおよびL444Pは、ゴーシェ集団の90%超において発見されるアミノ酸置換である。他の2つの突然変異(84insGおよびIVS2)は、それぞれDNAの挿入および欠失突然変異である。
【0078】
臨床的観点から見て、GDは3つの亜型すなわち、1型(非神経障害性)、2型(小児急性神経障害性)、および3型(亜急性神経障害性)に分類された。1型疾患は、N370S突然変異に関連することが極めて多く、3型疾患は、L444P突然変異を担持する患者に存在することが非常に多い。最も一般的な亜型である1型ゴーシェ病を患う患者は、広範囲の症候を示す。これらの症候には、脾腫、肝腫張、貧血症、血小板減少症、(骨減少症、渙散性病変、病的骨折、慢性骨痛、急性骨クリーゼ、骨梗塞、骨壊死および骨格変形を含めた)骨合併症、そして少数の患者においては間質性肺疾患および肺高血圧が含まれる。2型GDは幼年期に出現し、広範囲内臓障害を伴う急速な神経変性経過を特徴とする。発育障害および咽頭けいれんを原因とする喘鳴が一般に観察され、進行性精神運動変性を原因として生後2〜3年以内に死亡する。3型GDは、就学年令前後に現われ、異常な眼球運動、運動失調、発作および認知症などの神経学的症候に加えて内臓障害および骨障害を特徴とする。神経学的症候は通常、後年に現われ、患者は多くの場合30才代または40才代まで生き延びる。3つの型の間の最も顕著な差異は、1型には存在せず2型と3型には存在する神経学的障害である。疾病の進行速度は1型において緩慢、2型において急速、そして3.5型においては中庸である。
【0079】
GDのための現行の治療選択肢には、酵素補充療法(ERT)および基質還元療法(SRT)が含まれる。これらの療法は、主要な血液学的欠陥に対応し、大部分の患者において臓器体積を削減することが示されてきた。しかしながら、いずれも、ゴーシェ病の神経学的症候または骨格症候を治療するものとして承認されていない。
【0080】
ラットとサルにおいて実施された非臨床毒物試験は、薬理シャペロン酒石酸イソファゴミン(IFG)を用いた反復的投薬が一般に安全でかつ優れた耐容性を有することを示した。IFGは、ミスセンス突然変異の結果として折畳み安定性の低いGCaseの選択的薬理シャペロンとして機能するイミノ糖である。現行のデータは、IFGが小胞体内のGCaseの突然変異体形態を安定化させ、リソソームへの酵素の適切な輸送を促進することによって作用し得るということを示唆している(Steet et al.,PNAS 2006; 103: 13813-18; Lieberman et al., Nature Chem Biol. 2007.;3(2):101-7)。リソソーム中では、薬理シャペロンが酵素から解離した場合に、酵素はGCase基質であるグルコシルセラミド(GlcCer)の破壊の触媒としてのその正常な機能を実施することができる。試験により、IFGを用いた治療が、試験管内でのGCase全細胞酵素レベルを増大させ、GD患者の線維芽細胞内でリソソームへのGCase輸送を増大させ、かつ組織GCase活性を増大させ、GDのマウスモデル内でキチナーゼおよび免疫グロブリンG(IgG)の血漿レベルを低下させる、ということが示された。これらの結果は、患者における早期臨床試験の結果と共に、GBA遺伝子内のミスセンス突然変異の結果としてのGDを患う患者における酒石酸IFGの使用を強力に支持するものである。
【0081】
ファブリー病
ファブリー病は、リソソーム酵素α−ガラクトシダーゼA(α−GAL)の欠損の結果としてのリソソーム蓄積障害である。症候は、腎不全そして心臓発作および卒中の危険性の増大を含め、重篤で衰弱性のものであり得る。ファブリー病患者におけるα−GALの欠損は、遺伝性の遺伝子突然変異によって引き起こされる。これらの突然変異のいくつかは、α−GALのアミノ酸配列の変化を引き起こし、その結果、その正しい3次元形状へ折畳まれない安定性の低いα−GALが生産される可能性がある。患者の細胞内で生産されるα−GALは、多くの場合、生物活性レベルに対する潜在力を多少保持しているものの、細胞の品質管理機序は、小胞体つまりER内の誤って折畳まれたα−GALが分解および除去のため細胞の別の部分まで最終的に移動させられるまでそれらを認識し保持する。したがって、α−GALは、通常GL−3を破壊することになるリソソームまで移動することがほとんどまたは全く無い。このため、細胞内にGL−3が蓄積することになり、これがファブリー病の症候の原因であると考えられている。さらに、ER内の誤って折畳まれたα−GAL酵素の蓄積は、細胞に対するストレスおよび炎症様の応答を導き、これが細胞の機能不全および疾病に寄与し得る。
【0082】
ファブリー病の臨床的徴候は、広い重症度範囲にわたり、患者の残留α−GALレベルとおおまかな相関関係を有する。現在治療されている患者の大部分は、古典的ファブリー病患者と呼ばれ、その大部分が男性である。これらの患者は、腎臓、心臓および脳を含めたさまざまな臓器の疾患を経験しており、疾患の症候は最初に青春期に現われ、典型的には40才または50才代で死亡するまで重症度が進行する。近年の数多くの研究が、通常は最初に成人期に現われる心機能または腎機能障害および卒中などの一連のファブリー病症候を有する未診断の男女が数多く存在するということを示唆している。遅発性ファブリー病と呼ばれるこのタイプのファブリー病を患う個体は、古典的ファブリー病患者の比べて高い残留α−GALレベルを有する傾向にある。遅発性ファブリー病を患う個体は典型的に、当初成人期に疾患症候を経験し、多くの場合、左心室の肥大または進行性腎不全などの単一の臓器に集中した疾患症候を有する。さらに、遅発性ファブリー病は同様に、原因不明の卒中の形でも存在し得る。
【0083】
GCaseに対するIFGと同様、DGJはα−GALの活性部位内に結合し、その活性を試験管内および生体内で増大させることが示されてきた(実施例5を参照のこと)。
【0084】
薬理シャペロンについての投薬上の考慮事項
本発明によると、試験管内および生体内評価によって同定されるある種の観察可能な因子に左右される単純化されたモデルを用いて、投薬が決定される。かかる因子には、血漿および組織内の候補薬理シャペロンの薬物動態、リソソーム内の酵素蓄積速度;酵素代謝回転(リソソーム内の半減期);および試験管内で決定される酵素に対する薬物の結合親和力が含まれる。投薬計画をモデリングするために以上のパラメータを使用する論理的根拠は、以下で記述するように動物における前臨床試験、およびヒトにおける第I相および第II相試験ならびに試験管内試験の後に酒石酸イソファゴミンを用いて決定された。
【0085】
【表1】

【0086】
酒石酸IFGの薬物動態学および薬物力学。
GCaseのための候補シャペロンであるIFGの安全性を評価するための健常な成人の対象における第I相試験においては、最高300mgの単回用量および7日間最高225mg/日の反復用量が、無作為化2重盲検プラセボ対照試験において経口投与された。複数回用量試験においては、8人の対象(1コホートあたり6人が被験薬、2人がプラセボ)からなる3つのコホートが、7日間の無治療安全性評価期間を伴って、7日間25、75または225mgのIFGまたはプラセボの1日経口用量を受けた。1日目の初期薬物投与の前、(5、6および7日目の)第5、6、7の用量(Cminの決定用)の前そして第1(1日目)および第7(7日目)の用量後0.5、1、1.5、2、3、4、5、6、8、10、12、15、18および24時間の時点で、薬物動態分析の目的で血液試料を収集した。さらに、最後の用量(9日目)の48時間後に単一の血液試料を収集し、IFGの存在について検定した。さらに、薬物力学的測定のためすなわちWBC GCaseレベルの分析のために、1日目、3日目、5日目および7日目の投薬の前および9日目、14日目および21日目の再受診の際に、血液試料を収集した。
【0087】
複数回用量試験では、7日間の経口投与の後、薬物動態挙動は、用量に伴って線形であることがわかり、予想外のIFG蓄積はなかった。平均血漿レベル(Tmax)は、約3.4時間でピークに達し(SEM:0.6時間)、血漿除去半減期は約14時間であった(SEM:2時間)(図1)。
【0088】
重要なことに、IFGを受けた健常な対象は、ほとんどの場合、治療7日目をピークとして7日間の治療期間中、白血球内のGCaseレベルの用量依存性増加を示し、その後、薬物の除去時から酵素レベルがより漸進的に減少し、最後の用量から14日目までにほぼベースラインレベルまでの復帰を示した(図2)。達成された酵素レベルの最大の増加は、ベースラインレベルのおよそ3.5倍であった。7日間でGCase蓄積の最大速度に達した最低の日用量は約75mgであった。
【0089】
上述の複数回用量試験および試験管内細胞ベース検定(健常なヒトの皮膚線維芽細胞)からの結果に基づき、IFGのPKおよびPD特性に関し以下の観察がなされた。
【0090】
【表2】

【0091】
高い酵素レベルの長期維持
IFGなどの薬理シャペロンは意図された標的酵素の強力な阻害物質であることから、標的酵素が持続的に阻害されるのを防止するために「ピーク」と「トラフ」が関与する投薬計画が必要となるということが仮定された。したがって、日用量投薬に対立するものとしての非日用量投薬が必要になると思われ、この場合の最終目的は、当初(細胞酵素活性検定により試験管内で決定される)細胞EC50より高い薬物の血漿濃度を一定期間中達成して、リソソームに輸送される酵素の量を最大にし、その後(5.2というリソソームpHで細胞溶解物を用いて試験管内で決定される)IC50より低く薬物の濃度が下降する一定期間が続くようにすることにある。したがって、(i)EC50より高い血漿濃度を達成すると共に(ii)血漿濃度をIC50より低く下降させるような投薬計画を推定するために一部のPKおよびPDパラメータを使用できる単純なモデルが考案された。
【0092】
簡単に言うと、IFGの指数関数的末端除去半減期に基づく、異なる投薬計画を用いて経時的血漿濃度を推定するために、上述のパラメータが使用された。これに続いて、結果として得られた血漿濃度がEC50を超えるかまたはIC50を下回るか否かそしてそれはどれほどの時間持続するのかが判定された。
【0093】
IC50およびEC50についての考慮事項
以上のことに基づき、150mgのIFGが1日1回投与された投薬計画の結果として、血漿濃度はGCaseについての観察されたEC50に到達するかまたはこれを超え、かくして有意な期間シャペロニング(ERからリソソームまでの輸送)が促進されることが判定された。しかしながら、この日用量では、蓄積された基質の最大代謝回転のために必要とされるIC50未満までのGCaseの血漿濃度下降は予想されない(図3A)。したがって、この投薬計画は、基質のクリアランスを可能にし得ないことから、試験管内で最適な応答を提供しない可能性がある。
【0094】
用量(Cmax)についての考慮事項
(28日間)1日1回IFGの用量を25mgまで低下させることで、EC50を超える時間が削減されると予想されるが、それでもIC50を下回る濃度は得られない(図3B)。したがって、濃度が一定期間IC50未満に低く下降できるようにしながらEC50を超える時間を最大限にするためには、用量が高くなるのに合わせてより長い間隔を用いるべきであるということが提案された。
【0095】
投薬間隔についての考慮事項
以上のことを考えると、4日おきに150mgのIFGを(28日間)投与すると、ほぼ等しい期間にわたりEC50を超える血漿濃度およびIC50を下回る血漿濃度が得られるものと予測される(図3C)。経験的に、ゴーシェ病患者由来の線維芽細胞、リンパ芽球およびマクロファージ内の最大シャペロニング(Emax)が約10〜100μMのIFG範囲内で発生と判定された(図4)。したがって「EC50を超える」時限中のGCase蓄積速度は、CmaxがEmaxに近づくにつれて増大することが予想される。
【0096】
初期酵素集積期
したがって、単純化したモデルを用いて、初期期間中に1日用量のIFGを投与することでリソソームへのGCase輸送量を最大限にするという最終目的が達成されること、すなわちこの用量によりEC50を超えるシャペロンの血漿濃度が得られることが発見された。この期間中、この用量は、酵素に対する特異的結合を可能にし、その安定性を増大し、酵素からリソソームまでの輸送および局在化を誘発する。この初期用量を、「初期酵素集積期」と呼ぶ。
【0097】
IFGがGCaseの合成速度に対しいかなる効果ももたないと仮定して、ERからリソソームまで輸送された酵素の量とリソソーム内のその代謝回転速度に起因して失われた酵素の量の間の差異により、GCaseの蓄積すなわち「集積」速度が決定される。その結果リソソーム中のGCaseレベルは、リソソームまで輸送されたGCaseの量が代謝回転に起因して失われた酵素の量を超えない場合に増大し、一方GCaseのリソソームレベルは、リソソームまで輸送された酵素の量が代謝回転に起因して失われた酵素の量に置き換わるのに充分でない場合に減少する。リソソームに輸送されたGCaseの量は(ER中の)IFGの濃度に左右されることから、リソソームGCaseレベルの純変化は、IFG濃度の関数となる。血漿および組織内でGCaseの蓄積を引き起こすのに充分な濃度が達成される場合、蓄積速度は、ピーク(時として組織、細胞およびER内への進入に関連する時間のずれに起因してCmaxの後)の間その最大値にあり、トラフ(時としてCminの後)の間最小値にある。したがって用量CmaxとCminの間の時間は、任意の所与の投薬間隔についてのGCaseレベルの純変化を決定する。
【0098】
本発明者らのモデルは、ピーク中の輸送およびトラフの間の基質代謝回転を最大にする投薬計画が結果として、ピークとトラフの両方の間の輸送に有利に作用する投薬計画よりも低いGCase蓄積レベルをもたらすことを予測している。したがって所与の用量について、GCaseの蓄積速度は、用量間の間隔が短縮されるにつれて増大し、投薬間隔の長さが一定に保たれた場合、用量が増大するにつれて蓄積速度も同様に増大する(Cmax<Emaxの場合)。このことを考慮に入れて、本発明者らのモデルは、投薬間隔全体を通して輸送に有利に作用する投薬計画を投与することにより比較的短い期間(1〜2週間)で酵素レベルを集積させることができる、輸送および基質代謝回転を交互に最大化するピークとトラフを提供する投薬計画へと切り換えることによって、高くなったGCaseレベルを維持することができる、ということを予測する。
【0099】
或いは、初期「集積」期(長さ数日)を反復し、「無投薬」期(これも長さ数日)でこれを分離することも可能である。
【0100】
以上のことは、野生GCase酵素とIFGの相互作用に基づいて計算されたものである、ということに留意すべきである。しかしながら、ゴーシェ病を患う患者は、野生型酵素を有しておらず、かくして酵素代謝回転速度、酵素活性の残留レベル、酵素に対するIFGの相対的親和力そして最大蓄積速度を生成する用量は、各々の突然変異について野生型のものとは異なる。例えば、ゴーシェ病において最も一般的な突然変異はN370Sである。この突然変異体は、野生型に比べて低いIFG親和力を有するが、半減期は野生型のものに類似している(Steet et al., PNAS 2006)。したがって、N370S代謝回転速度およびGCase最大蓄積速度を生み出す用量は、野生型酵素と比べたPKおよびPDパラメータの差に基づいて推定可能である。
【0101】
【表3】

【0102】
以上のことから、N370S突然変異を有するゴーシェ病患者に対して投与すべきIFGについてのいくつかの投薬計画が(上述のパラメータを用いて)コンピュータ内でモデリングされた。具体的には、投薬計画は以下の通りであった:
1. 初期酵素集積期無しの2つの異なる維持投薬計画
a. 3日おきに150mgのIFG投与(図5A)、
b. 4日おきに150mgのIFG投与(図5A)、
2. 初期酵素集積期とそれに続く2つの異なる維持投薬計画
a. 7日間毎日150mgのIFG投与とそれに続く4日おきに150mgのIFG投与(図5B)、
b. 7日間毎日150mgのIFG投与とそれに続く7日おきに150mgのIFG投与(図5B)、
3. 「無投薬」期により分離された反復的酵素集積期
a. 4日間毎日150mgのIFG投与とそれに続くIFG投与無しの3日間(図5C)、
b. 3日間毎日150mgのIFG投与とそれに続くIFG投与無しの4日間(図5C)。
【0103】
結果は図5に表示されている。初期酵素集積期無しの2日おきの投薬により、持続可能な最大GCase活性までの増大が得られるが、より長い時間にわたるものと推定されている。これは、薬理シャペロンを毎日投与することで有害な副作用を示し初期酵素集積期に耐容できない人にとって有益であるかもしれない。
【0104】
第2の投薬計画は、初期酵素集積期中にリソソーム内のGCaseの蓄積速度を増大させ、この速度は維持期の間約50日にわたり維持されるかまたは漸進的に低減するものと予想されている。この場合リソソーム内のGCaseの再蓄積すなわち最大シャペロニングを可能にするために約35〜40日おきに後続する酵素集積期を企図する必要があるかもしれない。
【0105】
第3の投薬計画は、反復的酵素集積期(3〜4日)の間にリソソーム内のGCase蓄積速度を増大させる一方で、介在する「無投薬」期(3〜4日)の間にシャペロンの解離および基質還元のための最大酵素活性期間を可能にすることが予想される。
【0106】
当業者であればわかるように、異なる突然変異を有する患者の治療に向けた用量および投薬間隔の最適化は、次のような突然変異酵素の特異的特性によって決定される:
1. 突然変異酵素の半減期:一部の突然変異では、N370S GCaseよりも短い半減期を有し得る酵素が得られることから、これらの突然変異体にはさらに短い投薬間隔が必要とされるかもしれない。
2. シャペロンの組織半減期:血漿半減期よりも長い組織半減期を有するシャペロンについては、各用量間により長い間隔が必要とされるかもしれない。
3. EC50/IC50:異なる突然変異酵素は、IFGに対する親和力が低減している可能性があり、したがって用量の増加(必要に応じてEC50およびIC50を調整すること)が必要であるかもしれない。
4. 突然変異体のタイプ:数多くの患者が2つの異なる突然変異対立遺伝子(複合へテロ接合体)を有する可能性がある。両方の突然変異がIFGに対し応答性をもつと考えられる場合には、両方の突然変異にとって最適である投薬計画を選択すべきである。用量の最適化は、最高のEC50に基づいていなければならず、一方投薬間隔または無投薬期の長さを選択する場合には最短の半減期を考慮に入れるべきである。さらに最適化の優先度は、GCase活性の合計増加に対し最大の寄与を提供すると予想されている突然変異体に与えられるべきである。
【0107】
ファブリー病のためのモデル投薬計画に適用される論理的根拠
上述のモデルは、その他の酵素のためのその他の特異的薬理シャペロンのための投薬計画を推定する上でも容易に応用可能である。先に記した通り、1−デオキシガラクトノジリマイシン塩酸塩(DGJ)をファブリー病治療のためのα−ガラクトシダーゼA(α−GalA)用シャペロンとして使用することは臨床的試験において評価されつつある。
【0108】
複数回用量第I相試験が実施され、これは、8人の対象からなる2つのグループに分けられた合計16人の健常なボランティアで構成されていた。各グループ内の6人の対象がDGJを受け、2人はプラセボを受けた。1つのグループ内の全ての対象がプラセボまたは50mgを1日2回7日間受け、もう一方のグループ内の全ての対象はプラセボまたは150mgを1日2回7日間受けた。対象は、試験の開始時点、7日間の治療後の7日目(Day7)、そして7日間の休薬期間後の14日目(Day14)に評価された。
【0109】
複数回用量第I相試験からのデータは、7日間DGJの投与を受けた健常なボランティアの白血球中のα−GALレベルの用量依存的増加を示した。最高の用量レベルでα−GALレベルのおよそ2倍の増加が存在し、この増加は、最後の用量から少なくとも7日間維持された。
【0110】
DGJおよび野生型α−GALを用いた試験管内および生体内での動物および第I相試験の結果は、(150mgのDGJ塩酸塩を経口投与した後に)次のPKおよびPD情報を生成した:
【0111】
【表4】

【0112】
DGJはIFGよりもはるかに短い血漿半減期を有することから、最適維持用量は、初期酵素集積期後のIFGのものよりも短くなる可能性が高い。一例として、28日間1日おきに150mgのDGJを投与するとその用量が投与される日に約16時間の間血漿濃度がEC50を超え、残りの8時間の間IC50を下回ると予測されている(図6)。薬物が一切投与されない2日目には、血漿濃度は、再び薬物が投与される翌日になるまで、IC50を下回ると予想される(図6)。このパターンは、治療期間全体にわたり続行する。
【0113】
ゴーシェ病、ファブリー病およびポンペ病のための具体的投薬計画
以下の投薬計画は、ゴーシェ病、ファブリー病およびポンペ病向けに具体的に提供されているが、これらを、以下で記述する薬理シャペロンでの治療に適しているあらゆるリソソーム蓄積障害の治療のために使用することも可能である。
【0114】
ゴーシェ病
本発明の一実施形態においては、初期酵素集積(投入)期または薬理シャペロン(例えば、酒石酸IFG)が毎日経口投与される投薬計画の第1期は、約4日〜約10日間、または約5日〜約8日間または約7日間である。
【0115】
この実施形態においては、日用量は薬理シャペロン(例えば、酒石酸IFG)1日あたり約75mg〜約300mg、または約125mg〜約225mgの範囲内かまたは約150mgである。或いは、薬理シャペロン225mgという1日用量を投与することもできる。
【0116】
第1期の完了後、維持期が開始される。
【0117】
1つの変形実施形態において、第1期の後で維持期の前に最初の休薬期間が実施される。
【0118】
1つの実施形態において、最初の休薬期間の間、第1期由来の薬理シャペロンの投与は約1〜10日の間の期間中または約2〜8日、または約7日間停止される。
【0119】
別の実施形態において、第1期および休薬期間は、約1週間〜約30週間の期間中、または約2週間〜約25週間、または約2週間、または約24週間持続し得る。
【0120】
1つの実施形態において、維持期の間の投薬間隔は、約2日おき〜約8日おきである。別の実施形態においては、この間隔は約4日おき〜約7日おきである。第3の実施形態では、この間隔は約7日おきである。
【0121】
これらの実施形態において、維持期の間に投与される用量(維持用量)は約75mg〜約300mgの範囲内であるかまたは1つの態様では一用量あたり約150mgの薬理シャペロン(例えば、酒石酸IFG)、または別の態様においては、一用量あたり225mgである。これらの投薬量は上述の間隔毎に1回投与される。
【0122】
或いは、維持期は、一定の期間にわたる毎日の投与からなる。1つの実施形態においては、維持期は1〜8日、または約4〜7日、または約3日、または約7日の期間そしてそれに続く実質的に等しい長さの第2の「休薬期間」であり得る。例えば、維持期は、約75mg〜約300mgまたは約125mg〜約275mgまたは225mgの薬理シャペロン(例えば、酒石酸IFG)の1日3回の投薬量とそれに続く約1〜10日の間、または約2〜8日の間、または4日間の休薬期間つまり薬理シャペロンが一切投与されない期間で構成されていてよい。
【0123】
さらなる実施形態において、維持期および休薬期間は、約1週と約30週の間または約2週間と約25週間の間、または約22週間の期間持続し得る。
【0124】
もう1つの変形実施形態において、維持期および第2の休薬期間が一切存在しない可能性がある。
【0125】
別の実施形態において、患者は、約0.5時間と約24時間の間または約1時間と約12時間の間または約2時間の期間の薬理シャペロンの投与の前後に、全く食物を摂取しない(すなわち「絶食する」)。
【0126】
1つの具体的例において、150mgの酒石酸IFGが7日間毎日投与される(酵素集積期)。この7日間の後、3日間毎日225mgの酒石酸IFGが投与され(投薬3日)、その後4日間の休薬期間が続く(休薬4日)。この投薬3日/休薬4日の投薬計画は無期限に反復される。
【0127】
別の具体的例において、150mgの酒石酸IFGが7日間毎日投与される。この7日間の後、7日間毎日225mgが投与され(投薬7日)、その後7日間の休薬期間が続く(休薬7日)。この投薬7日/休薬7日の投薬計画は、無期限に反復される。
【0128】
別の具体的例では、225mgの酒石酸IFGが7日間毎日投与され(投薬7日)、その後7日間の休薬期間が続く(休薬7日)。この投薬7日/休薬7日の投薬計画は24週間反復される。
【0129】
別の具体的例において、225mgの酒石酸IFGが7日間毎日投与され(投薬7日)、その後7日間の休薬期間が続く(休薬7日)。次に225mgの酒石酸IFGが維持期の間3日間毎日投与され(投薬3日)、その後4日間の第2の休薬期間が続く(休薬4日)。投薬3日/休薬4日の投薬計画は22週間反復される。
【0130】
本発明の別の態様においては、初期酵素集積期の間に投与される用量の後、低い血漿濃度を持続させることが望ましいかもしれない。この実施形態においては、酵素レベルの上昇を得ることのできる用量と、それに続く、酵素がひとたびリソソーム内にある場合にシャペロンの解離を可能にするのと同時にERを退出する酵素のレベルを高く持続させることのできる維持用量向けの低い日用量とで、初期酵素集積期が想定されている。
【0131】
この実施形態では、初期酵素集積期、または薬理シャペロン(例えば、酒石酸IFG)が毎日経口投与される投薬計画の第1期は、約4日〜約14日、または約5日〜約10日、または約7日間であり、投入用量は1日あたり約75mg〜約300mg、または約125mg〜約225mg、または約150mgである。
【0132】
第1期の完了の後、維持期が開始され、そこでは、日用量は薬理シャペロン(例えば、酒石酸IFG)約25〜50mgまたは約25mgに削減される。
【0133】
本発明の第3の態様において、約2〜3日おきの間隔投薬が企図されている。この実施形態においては、約75mg〜約300mgの間の薬理シャペロン(例えば、酒石酸IFG)が各間隔で投与されるか、または約125mg〜約225mgが各間隔で投与されるかまたは約150mgが各間隔で投与される。
【0134】
以上の実施形態の全てについて、維持期中の間隔が2日ではなく3日である場合、より高い用量を投与するのがさらに有効である。
【0135】
或いは、投薬計画は具体的な期間全体にわたり一定量の薬理シャペロンを投与することからなり得る。例えば、一定量の薬理シャペロンを1日2回、1日1回、3日おきに1回、4日おきに1回、毎週1回、2週間に1回、または一ヵ月に1回投与してもよい。このサイクルは無期限に反復されてよい。
【0136】
一実施形態において、約10mg〜約200mgの薬理シャペロン(例えば、酒石酸IFG)が毎日投与される。例えば、10mg、または25mg、または50mg、または75mg、または100mgまたは125mgまたは150mgまたは175mgまたは200mgの薬理シャペロン(例えば、酒石酸IFG)が毎日投与される。
【0137】
具体的な一実施形態において、1日25mgの酒石酸IFGが投与される。別の具体的実施形態では、1日150mgの酒石酸IFGが投与される。
【0138】
代替的な一実施形態において、約10mg〜約400mgの薬理シャペロン(例えば、酒石酸IFG)が3日おきに1回、4日おきに1回、或いは一週間に1回投与される。例えば、10mg、または25mgまたは50mg、または75mg、または100mgまたは125mgまたは150mgまたは175mg、200mg、250mg、300mg、350mg、または400mgの薬理シャペロン(例えば、酒石酸IFG)が、3日おきに1回、4日おきに1回、または一週間に1回投与される。
【0139】
具体的な一実施形態において、150mgの酒石酸IFGが4日に1回経口投与される。別の実施形態においては、1日あたり150mgの酒石酸IFGが1週間に1回経口投与される。
【0140】
ファブリー病
本発明の一実施形態において、初期酵素集積(投入)相、または薬理シャペロン(例えば、DGJ塩酸塩)が毎日経口投与される投薬計画の第1期は、約4日〜約10日、または約5日〜約8日、または約7日間である。
【0141】
この実施形態において、第1期の間の薬理シャペロン(例えば、DGJ塩酸塩)の日用量は、1日あたり約200mg〜約500mg、または1日あたり約250mg〜約300mgの範囲内、または1日あたり約250mgである。これらのレベルは、逐次漸増的に徐々に達成されてよい。例えば、薬理シャペロン(例えば、DGJ塩酸塩)の用量は、一定期間(例えば、2週間)25mgで開始され、その後一定期間(例えば、2週間)100mgまで増量され、その後、残る集積期の間に投与される最高の用量まで増量されてよい。
【0142】
或いは、集積期の間に投与される最大量を最初に、すなわち逐次漸増投薬量無しで投与してもよい。
【0143】
第1期の完了後、維持期が開始される。一実施形態において、維持期の期間中の投薬間隔は、約2日おき〜約3日おきである。別の実施形態では、この間隔は約2日おきからである。
【0144】
これらの実施形態において、維持用量は一用量あたり約75mg〜約225mg、または一用量あたり約100mg〜約200mgの範囲内にあり、具体的実施形態では一用量あたり約150mgである。
【0145】
別の実施形態において、初期酵素集積期の後、定常状態の低い血漿濃度を持続させることが望ましいかもしれない。この実施形態において、酵素レベルの最大の上昇を得ることのできる用量と、それに続いて、酵素がひとたびリソソーム内にある場合にシャペロンの解離を可能にするのと同時にERを退出する酵素のレベルを高く持続させることのできるはるかに低い日用量とで、初期酵素集積期が想定されている。
【0146】
この実施形態では、初期酵素集積期、または薬理シャペロン(例えば、DGJ塩酸塩)が毎日経口投与される投薬計画の第1期は、約4日〜約14日、または約5日〜約10日、または具体的な実施形態においては約7日間であり、薬理シャペロン(例えば、DGJ塩酸塩)の投入用量は1日あたり約200mg〜約500mg、または約250mg〜約300mg、または約250mgであってよい。
【0147】
或いは、第1期は、約2週間〜約12週間の期間、約4週間〜約8週間(例えば、約6週間)持続してよい。薬理シャペロン(例えば、DGJ塩酸塩)の投入用量は、1日あたり約200mg〜約500mg、または1日あたり約250mg〜約300mgの範囲内、または1日あたり約250mgであってよい。
【0148】
上述の通り、集積期中のこれらの投薬量は逐次漸増的に達成されてもよいし、または集積期中に投与される最大量を最初に投与してもよい。
【0149】
第1期の完了後、日用量の削減が開始される。この実施形態においては、日用量は約25〜50mgまで、または約25mgまで削減される。これが維持用量である。
【0150】
具体的な一実施形態において、集積期は、DGJ塩酸塩が25mg/日で2週間、100mg/日で2週間、そして250mg/日で2週間の経口投与、それに続くDGJ塩酸塩が25mg/日での期間(例えば、24週間)、とそれに続く50mg/日の経口投与の一定期間(例えば、66週間)で構成されている。
【0151】
本発明の第3の態様において、約2〜3日おきの間隔投薬が企図されている。この実施形態において、約25mg〜約300mgの間の薬理シャペロン(例えば、DGJ塩酸塩)が各間隔で投与されるか、または約125mg〜約225mgが各間隔で投与されるかまたは約150mgが各間隔で投与される。具体的実施形態において、DGJ塩酸塩は2日おきに50mg、150mgまたは250mgで投与される。
【0152】
以上の実施形態の全てについて、間隔が2日ではなく3日である場合、より高い間隔投薬を投与するのがさらに有効である。
【0153】
上述のIFGの場合と同様に、患者が初期酵素集積期中に投与される用量を耐容できず、この期の無い間隔投薬ではEC50以上の血漿濃度を達成できない場合、より漸進的な「投入」期間とそれに続く低い維持日用量が適切であるかもしれない。例えば、一実施形態において、DGJは、2週間1日あたり50mg投与され、その後2週間1日あたり200mg投与され、その後2週間1日あたり500mg投与され、かつその後治療の持続期間中1日あたり50mg投与される。
【0154】
さまざまな実施形態において、酵素集積期の間、投薬量を上昇させてよい。例えば、1日毎について、25、100および250mgの逐次漸増投薬量を、すなわち1日目に25mg、2日目に100mgそして3日目に250mgを投与してよい。かかる実施形態は、酵素集積期の間に対象をより高い投薬量にゆっくりと順応させるために使用してよい。或いは、酵素集積期中の投薬量は、この相の持続時間全体を通して恒常であってもよい。
【0155】
一実施形態において、1〜7日の期間中、1日1回、1日あたり約75mg〜約800mgの薬理シャペロンまたは約125mg〜約600mg、または約250mgまたは500mgが投与され、その後、等しいまたは実質的に等しい長さの休薬期間が続く。例えば、投薬計画は、薬理シャペロン(例えば、DGJまたはDGJ塩酸塩)の1日投薬量を受ける連続3日間とそれに続く投薬量を受けない連続4日間;または1日投薬量を受ける連続4日間とそれに続く投薬量を受けない連続3日間で構成されていてよい。
【0156】
具体的な一例において、ファブリー病のための投薬計画は、連続3日間1日1回250mgまたは500mgのDGJ塩酸塩の経口投与とそれに続く薬理シャペロン(すなわち、DGJ塩酸塩)を摂取しない4日間を必要とする可能性がある。或いは、投薬計画は、連続7日間1日1回250または500mgの薬理シャペロン(例えば、DGJまたはDGJ塩酸塩)とそれに続く薬理シャペロンを摂取しない7日間で構成されていてよい。
【0157】
或いは、1〜7日間1日あたり約75mg〜約300mg、または約125mg〜約225mg、または150mgを投与し、その後長さが不等な休薬期間が続いてもよい。例えば、投薬計画は、投薬量を受ける1日とそれに続く投薬量を受けない連続6日間;1日投薬量を受ける連続2日間とそれに続く投薬量を受けない連続5日間;1日投薬量を受ける連続5日間とそれに続く投薬量を受けない連続2日間;または1日投薬量を受ける連続6日間とそれに続く投薬量を受けない1日を必要とする可能性がある。
【0158】
ポンペ病
一実施形態において、1〜7日の期間中1日1回1日あたり約1000mg〜約8000mgの薬理シャペロン(例えば、DNJ)、または約2000mg〜約6000mg、または2500mgまたは5000mgの薬理シャペロンが経口投与され、その後等しいまたは実質的に等しい長さの休薬期間が続く。例えば、投薬計画は、3日または4日の「投薬」(薬理シャペロンの毎日投与)とそれに続く4日または3日の「休薬」(薬理シャペロンの投与無し)で構成されていてよい。或いは、投薬計画は、投薬7日と休薬7日で構成されてもよい。
【0159】
具体的な一実施形態において、2500mgのDNJ(その薬学的に許容できる塩を含む)が連続3日間毎日経口投与され、その後薬理シャペロンを投与しない連続4日間が続く。一変形実施形態において、5000mgのDNJ(その薬学的に許容できる塩を含む)が連続3日間毎日経口投与され、その後薬理シャペロンを投与しない連続4日間が続く。一変形実施形態において、5000mgのDNJ(その薬学的に許容できる塩を含む)が、連続7日間毎日経口投与され、その後薬理シャペロンを投与しない連続7日間が続く。
【0160】
上述の投薬量は、逐次漸増的に達成してもよい。例えば、最初のサイクル(すなわち、最初の3日または最初の7日)における投薬量は、500mg、第2のサイクル中は1000mg、第3のサイクル中は2500mg、そして第4のサイクル中は5000mgであってよい。
【0161】
当業者であれば、各々の酵素および候補シャペロンについて具体的なPKおよびPDに基づいて、その他のリソソーム蓄積症を治療するためリソソーム酵素の競合阻害物質であるその他の薬理シャペロン用の適切な投薬計画を推定するのにこの戦略を応用することができる。
【0162】
調合および投与
イソファゴミンは、例えば、錠剤、カプセルまたは液剤の形での経口投与または注射用無菌水溶液の形での投与を含めたあらゆる投与経路に適した形で投与可能である。それは、任意には即効、遅延、修正、持続、パルス型、または制御型放出の用途のため任意には着香および着色剤を伴って錠剤、カプセル、胚珠剤(ovule)、エリキシル剤、溶液または懸濁液、ジェル、シロップ、うがい薬または使用前に水またはその他の適切なビヒクルを用いて構成するための乾燥粉末の形で経口投与され得る。錠剤、カプセル、口中錠、トローチ、丸薬、ボーラス剤、粉末、ペースト、顆粒、弾丸状カプセル、またはプレミックス調合物などの固体組成物も使用してよい。経口用途向けの固体または液体組成物は、当該技術分野において周知の方法にしたがって調製可能である。かかる組成物は同様に、固体または液体形態でありうる1つ以上の薬学的に許容できる担体および賦形剤も含有していてよい。化合物を経口投与向けに調合する場合、錠剤またはカプセルは、結合剤(例えば、アルファ化トウモロコシデンプン、ポリビニルピロリドンまたはヒドロキシプロピルメチルセルロース);充填剤(例えば、ラクトース、微結晶性セルロースまたはリン酸水素カルシウム);潤滑剤(例えば、ステアリン酸マグネシウム、タルクまたはシリカ);崩壊剤(例えば、ジャガイモデンプンまたはデンプングリコール酸ナトリウム);または湿潤剤(例えば、ラウリル硫酸ナトリウム)などの薬学的に許容できる賦形剤を用いて従来の手段により調製可能である。錠剤は、当該技術分野において周知の方法によりコーティングされてよい。
【0163】
薬学的に許容できる賦形剤には、微結晶性セルロース、ラクトース、クエン酸ナトリウム、炭酸カルシウム、第二リン酸カルシウムおよびグリシン、崩壊剤、例えば、デンプン(好ましくはトウモロコシ、ジャガイモまたはタピオカデンプン)、グリコール酸ナトリウムデンプン、クロスカルメロースナトリウムおよび一部の複合ケイ酸塩、および造粒結合剤、例えば、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルエチルセルロース(HPMC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、スクロース、ゼラチン、およびアカシアも含まれる。さらに、潤滑剤、例えば、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、ベヘン酸グリセリルおよびタルクが含まれてもよい。
【0164】
ゼラチンカプセル中の充填材として類似のタイプの固体組成物も利用してよい。この点において好ましい賦形剤としては、ラクトース、デンプン、セルロース、乳糖または高分子量のポリエチレングリコールが含まれる。水溶液および/またはエリキシル剤のためには、作用物質をさまざまな乳化剤および/または懸濁剤および希釈剤、例えば、水、エタノール、プロピレングリコールおよびグリセリンおよびそれらの組合せと組合せてよい。
【0165】
経口投与のための液体調製物は、例えば、溶液、シロップまたは懸濁液などの形をとっていてもよいし、または使用前に水または別の適切なビヒクル(例えば、エタノールまたはグリセロール、プロピレングリコールおよびポリエチレングリコールなどのポリオール、それらの好適な混合物、ならびに植物油)と共に構成するための乾燥製品としての形態をとっていてもよい。このような液体調製物は、懸濁剤(例えば、水、ソルビトールシロップ、セルロース誘導体または硬化食用油);乳化剤(例えば、レシチンまたはアカシア);非水性ビヒクル(例えば、アーモンドオイル、油性エステル、エチルアルコールまたは分留植物油);および防腐剤(例えば、メチルまたはプロピル−p−ヒドロキシベンゾエートまたはソルビン酸)などの薬学的に許容できる添加剤を用いて、従来の手段によって調製されてよい。経口投与向けの調製物は、セラミド特異的グルコシルトランスフェラーゼ阻害物質の制御放出または持続放出を提供するように適切に調合され得る。
【0166】
適切な流動性は、例えば、レシチンなどのコーティングの使用、分散の場合には所要粒径の維持、および界面活性剤の使用などによって維持可能である。微生物の作用の予防は、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、ベンジルアルコール、ソルビン酸などといったさまざまな抗細菌および抗真菌剤により得ることができる。多くの場合において、例えば、糖または塩化ナトリウムなどの等張剤を含み入れることが合理的である。注射用組成物の長時間吸収は、例えば、モノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチンといった吸収を遅延させる剤の組成物で使用することによって得ることができる。
【0167】
非経口/注射可能(例えば、静脈内ボーラス注入または輸液によるかまたは筋内、皮下または髄腔内経路を介した)用途に適したイソファゴミンの医薬調合物には、一般に、無菌水溶液または無菌注射用溶液または分散の即席調合用の分散または無菌粉末が含まれる。酒石酸イソファゴミンは、必要に応じて防腐剤を加えて、単位用量形態、アンプルまたはその他の単位用量の容器または複数回用量の容器の形態をとっていてもよい。注射用組成物は、油性または水性ビヒクル中の懸濁液、溶液またはエマルジョンの形をとってよく、懸濁剤、安定剤、可溶化剤および/または分散剤などの調合剤を含有していてよい。或いは、活性成分は、使用前に例えば無菌で発熱物質を含まない水といった適切なビヒクルで再構成するための無菌粉末形態であってもよい。全ての場合において、形態は無菌でなくてはならず、容易に注射針を通過する流動性を有していなければならない。それは、製造および保管条件下で安定していなければならず、細菌および真菌などの微生物の汚染作用に対して保護されていなければならない。無菌条件下での適切な非経口調合物の調製は、当業者にとって周知である標準的な薬学的技術により容易に達成される。
【0168】
無菌注射溶液は、必要に応じて以上で列挙したその他の成分のさまざまなものと共に適切な溶媒中に所要量でイソファゴミンを取込み、その後ろ過または最終滅菌を行なうことによって調製される。一般に、分散剤は、以上に列挙したその他の所要成分および基本的分散媒質を含有する無菌ビヒクル中にさまざまな滅菌済み活性成分を取込むことによって調製される。無菌注射用溶液の調製のための無菌粉末の場合、好ましい調製方法は、事前に滅菌ろ過した溶液から、活性成分に任意の付加的な所望の成分が加わった粉末を生成する真空乾燥および凍結乾燥技術である。
【0169】
防腐剤、安定剤、染料さらには着香剤を、医薬組成物中に提供してもよい。防腐剤の例としては、安息香酸ナトリウム、アスコルビン酸およびp−ヒドロキシ安息香酸エステルが含まれる。酸化防止剤および懸濁剤も使用してよい。
【0170】
製剤中に含み入れてよいさらなる薬学的に許容できる担体は、緩衝液、例えば、クエン酸塩緩衝液、リン酸塩緩衝液、酢酸塩緩衝液、および重炭酸塩緩衝液、アミノ酸、尿素、アルコール、アスコルビン酸、リン脂質、タンパク質、例えば、血清アルブミン、コラーゲンおよびゼラチン;塩、例えば、EDTAまたはEGTAおよび塩化ナトリウム;リポソーム;ポリビニルピロリドン;糖、例えば、デキストラン、マンニトール、ソルビトール、およびグリセロール;プロピレングリコールおよびポリエチレングリコール(例えば、PEG−4000、PEG−6000);グリセロール、グリシンまたはその他のアミノ酸および脂質である。製剤と共に使用するための緩衝系としては、クエン酸塩、酢酸塩、重炭酸塩、およびリン酸塩緩衝液が含まれる。リン酸塩緩衝液が好ましい実施形態である。
【0171】
調合物は同様に、非イオン洗浄剤も含有し得る。好ましい非イオン洗浄剤としては、ポリソルベート20、ポリソルベート80、トリトンX−100、トリトンX−114、ノニデットP−40、オクチル−α−グルコシド、オクチル−β−グルコシド、ブリッジ35、プルロニック、およびトゥイーン20が含まれる。
【0172】
投与(送出)経路としては、経口(例えば、錠剤、カプセルとしてかまたは摂取可能溶液として)、局所、粘膜(例えば、吸入用の鼻腔用スプレーまたはエアロゾルとして)、鼻腔、非経口(例えば、注射剤形)、胃腸、髄腔内、腹腔内、筋内、静脈内、子宮内、眼内、皮内、頭蓋内、気管内、腔内、脳室内、脳内、皮下、眼科的(硝子体内または前房内)、経皮、直腸、口腔、硬膜外および舌下のうちの1つ以上が含まれるが、これらに限定されるわけではない。
【0173】
イソファゴミンの上述の非経口製剤の投与は、調製物の定期的なボーラス注入によるものであってよく、または、体外貯蔵器(例えば、静注用バッグ)または体内貯蔵器(例えば、生体侵食性移植片)からの静脈内または腹腔内投与によって投与されてよい。例えば、各々参照により本明細書に援用されている米国特許第4,407,957号明細書および同第5,798,113号明細書を参照のこと。肺内送達の方法および器具は、例えば、各々参照により本明細書に援用されている米国特許第5,654,007号明細書、同第5,780,014号明細書および同第5,814,607号明細書の中に記載されている。その他の有用な非経口送達系としては、エチレン酢酸ビニルコポリマー粒子、浸透圧ポンプ、移植可能な輸液系、ポンプ送達、カプセル化細胞送達、リポソーム送達、針送達型注射、無針注射、ネブライザ、エアロゾル化装置、電気穿孔、および経皮パッチが含まれる。無針注射装置は、参照により本明細書に援用されている米国特許第5,879,327号明細書;同第5,520,639号明細書;同第5,846,233号明細書および同第5,704,911号明細書の中に記載されている。上述の製剤のいずれもこれらの方法を用いて投与可能である。さらに、詰め替え可能なペン型注射器および無針注射装置などの患者に便利なように設計されたさまざまな装置を本明細書中で論述されている本発明の製剤について使用してよい。
【0174】
具体的な一実施形態において、酒石酸イソファゴミンは、賦形剤としてラクトースおよびステアリン酸マグネシウムを伴う粉末充填型カプセルとして投与される。
【0175】
併用療法
医薬組成物は、候補化合物(薬理シャペロン)と組合せてその他の生物活性ある物質を含んでいてよく、またはその他の生物活性物質と組合せて投与されてもよい、かかる併用療法としては、Cerezyme(登録商標)、Fabrazyme(登録商標)、Aldurazyme(登録商標)、Myozyme(登録商標)およびReplagal(登録商標)などの補充酵素との組合せ;Zavesca(登録商標)または参照により本明細書に援用されている米国特許第6,916,802号明細書および6,051,598号明細書などに開示されている分子などの基質還元療法(基質抑制療法としても公知である)との組合せ;およびGCaseのための遺伝子を含む遺伝子療法ベクターまたは細胞との組合せが含まれるが、これらに限定されるわけではない。
【実施例】
【0176】
実施例1:酒石酸イソファゴミンを用いたゴーシェ病の治療のための投薬計画
試験の主要な目標は、1型GDを患う患者における経口投与型酒石酸IFGの2つの投薬計画の安全性、耐容性および薬力学を評価することにある。以上で記した通り、1型GDにおいて一般的な突然変異はN370Sである。
【0177】
これは、酒石酸イソファゴミンの安全性および耐容性を査定するための第2相無作為化2用量グループ非盲検試験である。試験は、18才〜65才の間の年令の1型GDを患う未治療患者において実施される。およそ16人の患者が登録される。
【0178】
この試験は、7日のスクリーニング期間とそれに続く対象適格判定無作為化、24週の治療期間とそれに続く14日のフォローアップ期間で構成される。
【0179】
来診は、7日目(±3日)、1日目(±3日)、7日目(±3日)、14日目(±3日)、28日目(±3日)、56日目(±3日)、84日目(±3日)、112日目(±3日)、140日目(±3日)、168日目(±3日)、および182日目(±3日)に予定される。1日目以降で試験完了前に試験から対象が撤退する場合、その対象には168日目(来診10)に予定されている全ての手順を受けるように促される。
【0180】
1日目に患者を等しい割合で以下の2つのグループのうちの一方に無作為化する:
1. 酒石酸イソファゴミン、1週間毎日経口で150mgとその後23週間4日おきに150mg
2. 酒石酸イソファゴミン、1週間毎日経口で150mgとその後23週間7日おきに150mg。
【0181】
酒石酸IFGは、25mgのカプセルで投与される。食物効果が予想されることから、薬物投与の前後2時間、患者は食物を摂取しない。
【0182】
試験の二次的目標は、1型ゴーシェ病を患う未治療患者において経口投与された酒石酸イソファゴミンの2つの用量グループの薬力学的効果を査定することにある。評価される二次的評価項目は以下の通りである:
・ 白血球中のβ−グルコセレブロシダーゼ(GCase)レベル
・ 白血球中のグルコセレブロシド(GlcCer)レベル
・ 血漿中のα−シヌクラインレベル
・ 血漿中の血漿(BAP)活性中の骨特異的アルカリホスファターゼ活性
・ 血漿中のキトトリオシダーゼ活性
・ 血漿中のインターロイキン8レベル
・ 血漿中のインターロイキン17レベル
・ 血漿中のマクロファージ炎症性タンパク質1α(MIP−1α)レベル
・ 血漿中の肺および活性化調節ケモカイン(PARC)活性
・ 血漿中の酒石酸塩耐性酸ホスファターゼ5b(TRACP5b)活性、
・ 血漿中の血管内皮成長因子(VEGF)レベル、
・ ベースラインからの肝臓体積変化、
・ ベースラインからの脾臓体積変化、
・ ベースラインからのヘモグロビンレベルの変化、
・ ベースラインからのヘマトクリットレベルの変化、
・ ベースラインからの血小板数の変化、
・ ベースラインからの左または右大腿骨の骨ミネラル密度の変化、
・ ベースラインからの脊椎の骨ミネラル密度の変化、
・ ベースラインからの左または右大腿骨のX線写真所見の変化
・ ベースラインからの脊椎のX線写真所見の変化。
【0183】
ベースライン後の薬力学パラメータを、95%の信頼性レベルで対応ある両側t検定手順によりベースライン値と比較する。薬力学パラメータの値に対する治療の効果を判定するために、分散モデルの反復的測定分析を行なう。この分析モデルでは、遺伝子型および遺伝子型内部の対象が無作為効果であり、治療、来診および来診と治療(visit−by−treatment)の相互作用が固定効果であり、ベースライン値が共変量である。異なる時点間の共分散構造をモデリングするために、自己回帰モデルを使用する。治療の比較は、5%の有意性レベルで査定される。さらに、治療の差異についての95%信頼区間が設けられる。
【0184】
IFGを用いたこれらの投入/間隔投薬計画の一方または両方が、ゴーシェ病を治療するために治療上有効であると予想される。この投薬計画に応答するものと予想された一部の遺伝子型としてはN370S/N370S、N370S/L444P、N370S/84insG、N370S/R163X、N370S/Y212H、L444P/del136T、L444P/F216Y、L444P/L174F、G202R/R463C、L444P/L444P、およびK79N/錯体Bエクソン9/10(タイプ3GD)が含まれるが、これらに限定されるわけではない。
【0185】
実施例2:酒石酸イソファゴミンを用いたゴーシェ病治療のための投薬計画
試験の主要な目標は、1型GDを患う患者における経口投与型酒石酸IFGの1つの投薬計画の安全性、耐容性および薬力学を評価することにある。
【0186】
これは、酒石酸イソファゴミンの安全性および耐容性を査定するための第2相無作為化2用量グループ非盲検試験である。試験は、18才〜65才の間の年令の1型GDを患う患者において実施される。およそ16人の患者が登録される。
【0187】
来診は、7日目(±3日)、1日目(±3日)、7日目(±3日)、14日目(±3日)、28日目(±3日)、56日目(±3日)、84日目(±3日)、112日目(±3日)、140日目(±3日)、168日目(±3日)、および182日目(±3日)に予定される。1日目以降で試験完了前に試験から対象が撤退する場合、その対象には168日目(来診10)に予定されている全ての手順を受けるように促される。
【0188】
この試験は、7日のスクリーニング期間とそれに続く対象適格判定無作為化、24週の治療期間とそれに続く14日のフォローアップ期間で構成される。
【0189】
1日目に対象を、プラセボグループまたは全治療期間にわたり3日おきに経口で150mgの酒石酸イソファゴミンのグループに等しい割合で無作為化する。酒石酸IFGは、25mg入りカプセルで投与される。食物効果が予想されることから、患者は、薬物投与の前後2時間絶食する。
【0190】
二次的目標の評価は、実施例1について以上で概説した通りに実施される。
【0191】
この投薬計画はゴーシェ病を治療するために治療上有効であるものと予想される。
【0192】
実施例3:安全性、耐容性および薬物動態およびα−ガラクトシダーゼA酵素活性に対する影響を評価するための単回用量DGJの投与
この実施例は、健常なボランティアにおける安全性、耐容性、薬物動態およびα−ガラクトシダーゼA(α−GAL)酵素活性に対するDGJの影響を評価するためのDGJの1日2回の経口用量の無作為化された2重盲検プラセボ対照第Ib相試験について記述している。
【0193】
試験の設計および持続時間
この試験は、経口投与後のDGJの経口投与後のDGJの安全性、耐容性、薬物動態およびα−GAL酵素活性に対する影響を評価するためのヒト初回投与、単一施設、第Ib相、無作為化、2重盲検、1日2回用量、プラセボ対照試験であった。この試験では、7日間の追訪を伴って連続7日間経口投与された、50または150mg1日2回の用量をDGJまたはプラセボを受けた8人の対象(6人が被験薬で2人がプラセボ)からなる2つのグループをテストした。対象は、投薬の14時間前から投薬終了24時間後まで、治療施設内に収容された。食事を予定表により制御し、薬物投与後4時間は対象が自由に行動できるようにした。
【0194】
薬物動態パラメータを1日目と7日目の血漿中DGJについて計算した。さらに、尿中に排泄された(投薬から12時間後)DGJの累積百分率を計算した。投薬開始前、そして試験開始後100時間、150時間そして336時間目にも、白血球(WBC)中のα−GAL活性を計算した。
【0195】
試験対象集団
対象は、一般社会人からなり、施設に収容されたことのない19才以上50才以下の年令の健常な非喫煙男性ボランティアであった。
【0196】
安全性および耐容性の査定
バイタルサイン、臨床検査パラメータ(血清化学、血液学および尿検査)、ECG、身体検査を評価することによっておよび治療期間中の有害事象を記録することによって安全性を判定した。
【0197】
薬物動態試料採取
投薬の前およびその後0.25、0.5、0.75、1、1.5、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11および12時間の時点でEDTAの入った血液収集試験管内に血液試料(各10mL)を収集した。血液試料を氷浴中で冷却し、可能なかぎり早く冷却下で遠心分離した。血漿試料を2つのアリコートに分割し、検定中20±10℃で保管した。試験の終了時に、全ての試料を分析のためMDS Pharma Services Analytical Laboratories(Lincoln)に移送した。1日目と7日目にDGJ投与後の最初の12時間の腎クリアランスを判定するためにDGJを分析する目的で各対象から完全な尿排出量を収集した。
【0198】
WBCα−GAL酵素活性試料採取
投薬前およびその後100時間、150時間および336時間の時点で抽出されたEDTAおよびWBCを含有する血液収集試験管内に、血液試料(各10mL)を収集した。上述の通りに試料を処理し、Desnick, R.J. (ed) Enzyme therapy in genetic diseases. Vol 2. Alan R Liss, New York, pp 17-32.の中で記述されている通りに、WBCα−GAL酵素活性レベルを決定した。統計的分析。臨床検査評価、身体検査、有害事象、ECG監視およびバイタルサイン査定を含む安全性データを、治療グループおよび収集時点別にまとめた。定量的安全性データならびにベースラインとの差異について、記述統計データ(算術平均、標準偏差、中央値、最小および最大値)を計算した。定性的安全性データの分類のために、頻度計数値をコンパイルした。さらに、正常範囲外シフトを記載したシフト表を、臨床検査結果について提供した。身体検査の結果およびECGについても、正常−異常シフト表を提示した。
【0199】
MedDRA7.0バージョンディクショナリを用いて有害事象をコード化し、有害事象を報告している対象の数および報告された有害事象の数について治療別にまとめた。報告者用語、コード化された用語、治療グループ、重症度そして治療との関係を含めた対象別有害事象データリストを提供した。治療別に、併用薬および病歴を列挙した。
【0200】
記述統計データ(算術平均、標準偏差、変動係数、試料サイズ、最小値、最大値および中央値)を用いて、治療グループ別に薬物動態パラメータをまとめた。
【0201】
結果
プラセボで治療された対象はいずれもAEを有さず、50mg1日2回または150mg1日2回のDGJを受けたいかなる対象もAEを示さなかった。50mg1日2回および150mg1日2回で用量が投与された場合、健常な男性対象のこのグループにとって、DGJは安全で充分な耐容性があると思われた。
【0202】
臨床試験において正常範囲からの偏差が投薬後に発生したが、いずれも臨床的に有意であるとは判断されなかった。試験全体を通して調査されたいずれのパラメータにも、臨床的に関連性ある平均データシフトは全く存在しなかった。いずれのバイタルサイン、ECGまたは身体検査パラメータにも、臨床的に関連性ある異常は全く発生しなかった。
【0203】
薬物動態評価
以下の表は、試験中に得られた薬物動態データをまとめている。
【0204】
【表5】

【0205】
DGJの薬物動態特性は全ての対象および全ての用量レベルにおいて充分に示された。平均して、全ての用量レベルについておよそ3時間でピーク濃度が発生した。DGJのCmaxは、用量を50mgから150mgまで増大させた場合に用量に比例して増加した。
【0206】
平均除去半減期(t1/2)は、1日目の50mgと150mgの用量レベルにおいて同程度であった(2.5時間対2.4時間)。
【0207】
投薬後12時間の期間にわたって排泄されたDGJの平均百分率は、1日目でそれぞれ50mgおよび150mgの用量レベルで16%と42%であり、7日目にはそれぞれ48%と60%まで増大した。
【0208】
α−ガラクトシダーゼA(α−GAL)酵素活性
試験中に得たα−GAL酵素活性データは、図1に示されている。DGJは、50mg1日2回又は150mg1日2回の投薬量で対象におけるWBCα−GAL酵素活性を阻害しなかった。その上、DGJは、健常なボランティアにおけるWBCα−GAL活性増加の用量依存的傾向を作り出した。α−GAL酵素レベルは、プラセボ、50mg1日2回のDGJおよび150mg1日2回のDGJが投与された対象のWBCで測定した。プラセボは、WBCα−GAL酵素レベルに全く影響を及ぼさなかった。プラセボに応答した酵素レベルの変動は、臨床的に有意なものではなかった。50mg1日2回および150mg1日2回のDGJは共に、正規化されたWBCα−GAL酵素レベルを増加させた。50mg1日2回のDGJに応答して、WBCα−GAL酵素活性は、それぞれ投薬後100時間、150時間および336時間で投薬前レベルの120%、130%および145%まで増大した。150mg1日2回のDGJに応答して、WBCα−GAL酵素活性は、それぞれ投薬後100時間、150時間および336時間で、投薬前レベルの150%、185%および185%まで増大した。
【0209】
実施例4:DGJ塩酸塩を用いたファブリー病治療のための投薬計画
この実施例は、ファブリー病患者の治療のために企図されているDGJを用いた投薬計画について記述している。
【0210】
登録患者
(遺伝子型によって確認された)α−GAL中の公知のミスセンス突然変異を有するファブリー病患者;最高6ヵ月間ERTを中止する意志のある、現在ERT(Fabrazyme(登録商標))を受けている患者;またはこれまでERT治療を受けたことのない新たに診断された患者。
【0211】
試験の設計
患者には、250mg/日の用量で7日間DGJ塩酸塩またはプラセボを経口投与する。これが初期酵素集積期である。第1期の完了後、維持期が開始され、1日おきに150mgの維持用量でDGJまたはプラセボを投与する。
【0212】
GL−3沈着物
ベースライン、3ヵ月および6ヵ月の時点で、皮膚、腎臓および心臓の生検を実施し、皮膚線維芽細胞、心筋細胞およびさまざまな腎細胞内のGL−3沈着物について評価する。GL−3のクリアランスが全ての細胞において観察されることが予想されている。従来のERTによる治療では心筋細胞または腎有足細胞または皮膚組織内のクリアランスは、示されなかった(ただし、ERT6ヵ月目および18ヵ月目での尿沈渣の変化は、酵素補充により腎組織内のスフィンゴ糖脂質の蓄積のクリアランスがあったことを示唆していた:Clin Chim Acta. 2005;360(1-2):103-7))。
【0213】
α−GAL活性
さらに、生検から得た分画された組織内および(ベースラインでおよび毎月収集される血液からの)血液白血球および血漿内で、α−GAL活性を査定する。単独療法としてまたはERTと組合せたDGJ治療は、白血球、線維芽細胞および血漿中で、ベースラインよりも約2倍〜約10倍、α−GAL活性を増大させるものと予想されている。同様に、ERT治療で実証されなかったα−GAL活性の増加が組織内で観察されることも予想されている。
【0214】
尿検査
α−GALおよびGL−3についてベースラインおよび毎月、尿と尿沈渣を分析する。さらに、CTH、ラクトシルセラミド、セラミドなどのその他の脂質の異常な存在およびグルコシルセラミドおよびスフィンゴミエリンの異常な減少または不在も同様に評価される。
【0215】
腎疾患の状態を監視するためにアルブミン(タンパク尿)およびクレアチンを含めたタンパク質の存在についても、尿を分析する。
【0216】
DGJ治療はタンパク尿を減少させ、GL−3沈渣を減少させると予想されている。
【0217】
心臓解析
心臓形態(例えば、左心室肥大)および心臓機能(例えば、うっ血性心不全、虚血、梗塞、不整脈)を査定するために、上述の生検に加えて、ひずみ速度評価を伴うMRIおよび心エコー図を、ベースライン、3ヵ月目および6ヵ月目に実施する。その他の治療では、左心室肥大の直接的減少または左心室駆出の増大が実証されたことはない。(腎不全に関連する)高血圧が出血性脳卒中のリスクを増大し得ることから、高血圧も同様に評価した。
【0218】
あらゆる導通異常、不整脈、脚ブロックまたは頻脈または徐脈の改善を分析するため、ベースラインおよび診察毎に、心電図を実施する。以前の治療は、これらの症候を呈する患者において改善を示さなかった。
【0219】
腎臓解析
GL−3のクリアランスについて光学顕微鏡および電子顕微鏡を用いて、腎有足細胞を評価する。
【0220】
脳解析
虚血性卒中の原因となり得る虚血領域の削減について査定するため、ベースラインおよび試験の終了時点で、MRIおよびMRAを実施する。DGJによるGL−3集積の削減は、卒中の罹患率を低減させることが予想されている。補充酵素は、血液脳関門を横断できないことから、ERTで脳虚血の改善が達成されたことは全く無い。
【0221】
眼科
眼科検査は、白内障などの角膜および水晶体混濁の減少を査定するために実施される。
【0222】
神経因性疼痛
肢端感覚異常の減少を評価するために、ベースラインにおいておよび毎月の診察毎に患者に対し主観的な患者アンケート調査を行なう。これは、末梢神経細胞の微小血管系内のGL−3クリアランスの証拠であり得る。
【0223】
神経障害
末梢神経障害を評価するためには、定量的官能試験(CASE試験)を使用する。
【0224】
発汗減少
エクリン汗腺に連結されている小神経線維を査定する定量的発汗刺激性軸索反射試験(QSART)を用いて、汗腺を評価する。汗腺の改善は発汗増加と相関関係を有するはずであり、同様に、末梢神経細胞の微小血管系内のGL−3クリアランスの証拠でもあり得る。この分析は、ベースラインおよび3ヵ月目および6ヵ月目で実施される。
【0225】
この投薬計画はファブリー病を治療するために治療上有効であるものと予想される。DGJでの治療に応答することが予想されるいくつかの特異的ミスセンス突然変異としては、L32P、N34S、T41L、M51K、E59K、E66Q、I91T、A97V、R100K、R112C、R112H、F113L、G132R、A143T、G144V、S148N、D170V、C172Y、G183D、P205T、Y207S、Y207C、N215S、R227X、R227Q、A228P、S235C、D244N、P259R、N263S、N264A、G271C、S276G、Q279E、M284T、W287C、I289F、F295C、M296I、M296V、L300P、R301Q、V316E、N320Y、G325D、G328A、R342Q、R356W、E358A、E358K、R363C、R363H、およびP409Aが含まれるが、これらに限定されるわけではない。
【0226】
実施例5:DGJ塩酸塩を用いたファブリー病治療のための投薬計画
この実施例は、ファブリー病患者におけるDGJの第II相試験について記述している。
【0227】
患者の登録
公知のα−GAL内ミスセンス突然変異(遺伝子型によって確認されたもの)を有するファブリー病患者;現在ERT(Fabrazyme(登録商標))を受けており、最高6ヵ月間ERTを中止する意志のある患者;またはERTでの治療を全く受けたことのない新たに診断された患者。
【0228】
試験の設計
試験内の8人の患者に6週間にわたり1日2回25、100そして250mgという逐次漸増用量を与え、その後試験の残りの期間について50mg/日の用量を与えた。試験内の3人の患者に、全試験期間にわたり1日おきに150mgのDGJを与えた。
【0229】
実施例4について記述されたものと同じ代理マーカーの一部を試験の間監視する。
【0230】
結果
α−GAL活性
少なくとも12週間DGJで治療した最初の11人の患者から得られるデータは、DGJが、11人の患者のうちの10人においてファブリー病で欠損している酵素の活性の増加を導くということを示唆している。試験中の8人の患者が、6週間にわたって25、100そして次に250mg1日2回の逐次漸増用量を受け、その後試験の残りの期間50mg/日を受けた(黒丸で表わされている)(図7)。試験中、3人の患者は、試験全体を通して1日おきに150mgのDGJを受けた(黒丸で表わされている)。表中の正常の百分率を計算する目的で、複数回用量第I相試験の15人の健常なボランティアの白血球中のα−GALのレベルの平均を使用し正常なα−GALのレベルを導出した。11人の患者は、10の異なる遺伝子突然変異を示し、ゼロから正常の30%までの範囲にあるα−GALのベースラインレベルを有していた。
【0231】
GL−3レベル
腎臓のGL−3レベルは第三者専門機関によって電子顕微鏡検査法を用いて査定された。これまで2人の患者について入手されたデータは、12週間の治療の後1人の患者の腎臓の多数の細胞型においてGL−3の減少が見られることを示した(メサンギウム細胞および糸球体内皮および遠位尿細管の細胞)。2人目の患者は、24週間の治療後に同じ腎細胞型の中でGL−3レベルの減少を示したが、これらの減少は、患者のベースラインにおけるGL−3のレベルが比較的低いことから、それ単独で決定的なものではなかった。両方の患者共、間質毛細血管の細胞を含めたその他の腎細胞型の中のGL−3レベルの減少を示したが、これらの減少は治療後でさえ1単位未満であった。これらの初期結果は、欠陥あるヒトα−GALを生産するマウスに対するAmigalの経口投与後に観察されたGL−3の減少と一貫性を有するものである。
【0232】
光学および電子顕微鏡法によって査定される通りのベースラインでのおよび治療後の皮膚GL−3レベルが、10人の患者について入手できた。7人の患者が、治療前後の両方において正常または正常に近い皮膚GL−3レベルを有していた。その他の3人の患者についての結果は、経時的な変動を伴って、一部の皮膚細胞型におけるGL−3の減少とその他の皮膚細胞型におけるGL−3の増加の証拠を示していたことから、解釈が困難であった。
【0233】
実施例6
DGJ塩酸塩を用いたファブリー病治療のための投薬計画
この実施例は、ファブリー病患者におけるDGJ(1−デオキシガラクトノジリマイシンの試験について記述する。
【0234】
患者の登録
α−GAL内に公知のミスセンス突然変異を伴う(遺伝子型で確認)18人の男性および9人の女性ファブリー病患者が登録された。(男性患者の1人は試験を完了しなかった)。これらの患者のうち13人がERTの治療を受けておらず、一方14人は以前にERT(Fabrazyme(登録商標))を受けていたが、試験に先立ち21〜274日間ERTを中断していた。この試験に登録した患者のファブリー病は、ファブリー遺伝子内の以下のミスセンス突然変異の1つによって引き起こされた:A143T、T411、A97V、M51K、G328A、S276G、L300P、L415P、P259R、R301Q、N215S、P205T、F295C、C94S、またはR112C。
【0235】
試験の設計
試験内の9人の男性(1人の男性は試験を完了しなかった)に、6週間(各投薬レベルで2週間)1日2回25、100そして次に250mgの逐次漸増用量を与え、その後1日2回25mgを6週間与えるかまたは試験の残りの期間50mg/日を与えた(グループA)。4人の男性患者に12週間単回150mgのQ.O.Dを与え(グループB)、一方5人の男性患者に24週間150mgのQ.O.D.を与えた(グループC)。最後に9人の女性患者を無作為化し、12週間50、150または250mgのQ.O.Dという3つの投薬量のうちの1つを与えた(グループD)(図8)。
【0236】
α−GAL活性
患者の白血球(leukocytes)(白血球(white blood cells;WBC)中のα−Galの酵素活性を、15人の健常なボランティアの白血球中の平均α−Gal活性の百分率として測定した。生検材料から得た分割組織中、および白血球および血漿(ベースラインでそして毎月収集する血液由来のもの)の中でα−GAL活性を査定した。
【0237】
GL−3被着物
ベースライン、治療後12週間および24週間目に腎正検を行ない、さまざまな腎細胞の中のGL−3被着物について評価した。組織内のGL−3の存在を組織学的にならびに質量分析法を使用して検査した。腎生検材料の光学顕微鏡分析を実施し、そこでは、参照により本明細書に援用されているKidney International, Vol. 62 (2002), pp. 1933-1946内で実施されている分類分析に類似した形で、組織内のGL−3の蓄積を分類した。細胞は、GL−3蓄積(「0」)無し;軽度GL−3蓄積有り(「1」);中度GL−3蓄積有り(「2」);または重度GL−3蓄積有り(「3」)として分類された。
【0238】
尿検査
尿は、GL−3についてベースラインで、および2〜6週間おきに周期的に分析された。
【0239】
心臓分析
上述の生検に加えて、ひずみ速度評価を伴うMRI、心電図および心エコー図をベースラインにおいて、そして試験全体を通して周期的に実施し、心臓形態(例えば、左心室肥大)および心機能(例えば、駆出率および伝導/調律異常)を査定した。
【0240】
腎臓分析
糸球体ろ過率(GFR)を用いて、腎機能を評価した。
【0241】
神経障害性疼痛
特に肢端感覚異常の減少を評価するための12週間または24週間の治療の終了時における症候の患者自己申告変化。これは、末梢神経細胞の微小血管系内のGL−3のクリアランスの証拠となり得る。
【0242】
結果
男性患者
α−GAL活性
グループAのプロトコルによる治療を受ける8人の男性患者からのα−Gal活性データが図9に示されている。患者は、治療後に正常なα−GA1活性の3%超であった酵素活性の絶対的増加を示し、さらに、かかる増加が突然変異体の治療前α−GAL活性レベルに比べて33%を超えた場合、患者を「高度」応答者として分類した。同じく突然変異体の治療前α−GAL活性レベルに比べて33%よりも大きい、正常なα−GAL活性の1〜3%より大きい絶対増加を示した場合に、患者を「中度」の応答者として分類した。
【0243】
プロトコルグループBおよびグループCに従った治療を受けた9人の男性患者からのデータが、図10に示されている。「高度」応答者は、治療12週目までに正常な酵素活性の約8%に対するα−Gal活性の増加を特徴としていた。「中度」応答者は、治療後24週目までに正常な酵素活性の約1.5%までのα−Gal活性の増加を示した患者であった。「非」応答者は、治療中正常な酵素活性の1%を超えるα−Gal活性の増加を示したことのない患者であった。
【0244】
試験には11人の「高度」応答者が存在し、一方4人の患者は「中度」応答者であり、2人の患者は「非」応答者であった。「高度」応答者のうち、6人の患者は、試験の開始前に正常な酵素活性の3%を超える残留α−Gal活性を有しており、一方高度応答者のうち5人および中度および非応答者の全てが、正常レベルの3%未満の残留α−Gal活性を示した(図11)。
【0245】
図12および13に示されている通り、11人の「高度」応答者は、各患者の治療前後の活性レベルを比較した場合、WBCα−Gal活性の平均630%の増加を示した。高度応答者のうち6人は同様に、腎臓α−Gal活性の平均1090%の増加を示した。4人の「中度」応答者は全て、治療中に白血球α−Gal活性の平均170%の増加を示し、1人の「中度」応答者は平均100%の腎臓α−Gal活性の増加を示した。「非」応答者はいずれも、治療後に白血球または腎臓のα−Gal活性のいずれにおいても全体的増加を全く示さなかった。
【0246】
GL−3の尿検査
治療を受けた患者の尿中のGL−3は、主として腎臓から流出した尿細管細胞から得られたものである。高いGL−3レベルが全てのファブリー病患者において検出可能である。「高度」応答者としての特徴を示す男性患者において、患者は治療後尿中GL−3レベルの38%の平均減少を示し、11人の高度応答者のうちの8人に10%超の減少が見られた。「中度」応答者および「非」応答者は両者共治療後尿中GL−3の全体的増加を示したが、中度グループ内の1人の患者は、治療後10%超のGL−3レベルの減少を示した(図14)。
【0247】
腎臓分析
組織学的分析および質量分光分析を用いて腎臓GL−3レベルを査定した。腎生検材料を、「高度」応答者のうち4人、「中度」応答者のうちの2人、そして「非」応答者のうちの2人において検査した。間質毛細管、遠位尿細管および有足細胞という3つの異なる腎細胞型において、GL−3の蓄積を検査した。高度応答者に関しては、1人の患者は、間質毛細管GL−3の減少を示し、1人の患者には、間質毛細管GL−3の検出不能の変化が見られ、1つの患者には間質毛細管GL−3の変化が全く見られなかった。遠位尿細管に関しては、高度応答者のうち3人にGL−3の減少が見られ、1人の高度応答者にGL−3の増加が見られた。有足細胞の治療後のGL−3レベルについては、4人の高度応答者全員にGL−3レベルの変化が全く見られなかった(図15Aを参照)。
【0248】
腎生検材料の全体的GL−3レベルに関しては、高度応答者のうちの2人は治療後GL−3の減少を示し、一方2人の高度応答者はGL−3レベルの変化を全く示さなかった。中度応答者については、2人の患者がGL−3レベルの減少を示した。1人の非応答者が、GL−3レベルの減少を示し、一方1人の非応答患者がGL−3の増加を示した(図15B参照)。
【0249】
さらに、尿検査においてわかったように、腎生検材料の質量分光分析から、高度応答者に治療後腎GL−3レベルの平均減少(28%)が見られ、高度応答者のうち3人が10%超の減少を示すことが明らかになった(図16)。
【0250】
腎機能は、糸球体ろ過率(GFR)を用いて測定された(年令、性別および人種について調整された血清クレアチニンを用いてGFRを推定するために、MDRD等式を使用した)。全ファブリー病患者のおよそ半数が異常に低いGFR(90ml/分/1.73m未満)を有している。自然史を研究すると、ファブリー病患者が、年令および腎臓疾患病期に応じて1年に約5〜15単位の速度でGFRの漸進的減退を示すということが示唆されている。図17A−Bに示されているように、高度応答者は平均eGERを全治療手順の間90〜120ml/分/1.73mの正常なeGFR範囲内に維持した(図17A)が、一方未治療の個体の予測平均eGFRは、90ml/分/1.73mより低く減退し続けるものと見込まれている(図17B)。
【0251】
心機能
治療に先立ち、全ての患者のうち約半数が、治療に先立つベースラインにおいておよび治療後の最後の来診(最後の来診は試験が始まってから12〜24週後であった)においてFCGを介して査定された通り伝導/リズム異常を有していた(データ示さず)。「高度」応答者のうち3人が、治療に先立ち異常に高い左心室質量を有していた。これらの患者のうち1人が12週間の治療後に左心室質量の8%の減少を示し、一方2人が48週間の治療後も左心室質量の変化を全く示さなかった(データ示さず)。左心室質量の減少および維持は両方共、ファブリー病患者が典型的には経時的に左心室質量の増大を示すことから、興味深いことである。その上、高度応答者のうちの3人は、治療の前に異常な駆出率を提示していたが、患者の2人は治療後に正常範囲(>55%)内の駆出率を示した(図18)。
【0252】
自己申告分析
患者は、12週または24週の治療期間の終了時に、そして延長12週おきに、ファブリー病に関連する肢端感覚異常などの症候の変化を自己申告した。「高度」応答者のうち7人は、胃腸機能の改善および疼痛の軽減;歩行、運転および睡眠の能力の増大;および発汗の改善を申告した。高度応答者のうちの2人は、ファブリー症候の変化を全く申告しなかった。「中度」および「非」応答者のうち、1人は疼痛の持続と共に発汗の増大を申告し、3人はファブリー症候の変化を全く申告しなかった(図19)。
【0253】
女性患者
女性の細胞内のX染色体が不活性であるため、突然変異ファブリー遺伝子を発現する組織試料内の罹患した細胞の表現型は、試料中の健常な細胞により隠される。したがって、罹患した細胞内で予想される酵素応答を査定するため、女性患者が示した各々の突然変異を構築し、試験管内でテストした。かくして、試験管内分析に基づいて、異なる突然変異を「予想される高度応答者」および「予想される非応答者」として分類した。患者のうち5人は予想される高度応答者として分類され、一方4人の患者は予想される非応答者として分類された(データ示さず)。
【0254】
α−GAL活性
試験において治療された女性患者9人は全員、グループDの治療プロトコルによる治療の後WBC α−Gal活性の増加を示した(治療前のベースライン酵素レベルに比べ146%の平均的増加)(データ示さず)。
【0255】
GL−3の尿検査
「予想される高度」応答者として特徴づけされた女性患者においては、患者は、治療の後尿中GL−3レベルの20%の平均減少を示し、一方5人の予想される高度応答者のうちの3人に10%超の減少が見られた。「非」応答者は治療後尿中GL−3レベルの全体的増加を示したが、1人の患者は、治療後10%超のGL−3減少を示した(図20)。
【0256】
腎臓分析
尿検査において観察された結果と同様、「予想される高度」応答者からの腎生検材料の質量分光分析は、治療後、腎臓GL−3レベルの平均減少(20%)を示し、ここで5人の予想される高度応答者のうち2人は、治療後10%超の減少を提示した(図21)。
【0257】
自己申告分析
患者は、12週または24週の治療期間の終了時に、そして延長12週おきに、ファブリー病に関連する肢端感覚異常などの症候の変化を自己申告した。「予想される高度」応答者のうち4人は、疼痛の軽減;歩行、運転および睡眠の能力の増大;および発汗の改善を申告した。予想される高度応答者のうちの1人は、ファブリー症候の変化を全く申告しなかった。「非」応答者のうち、1人は疼痛の軽減を申告し、一方3人はファブリー症候の変化を全く申告しないか、または不安症、うつ病または睡眠困難といった症候の出現を申告した(図22)。
【0258】
実施例7:1−デオキシノジリマイシンを用いたポンペ病の治療
マウスに対して100mg/kgの1−デオキシノジリマイシンを28日間無制限に投与する。心臓内のα−グルコシダーゼ活性(GAA)が、全組織溶解物(左)についてかつ免疫沈降GAAに基づいて(右)図23に示されている。このデータは1−デオキシノジリマイシンに応答した腓腹筋分析からの予備結果と類似であるように思われる。
【0259】
1−デオキシノジリマイシンは、将来の臨床試験において利用されるレベルよりもはるかに高いと現段階で考えられている用量で、ラットおよびサルにおける短期安全性試験において充分に耐容性があることが示された。例えば、1−デオキシノジリマイシンは最高600mgの単回用量で安全かつ充分な耐容性を示すように思われる。2週間1日最高2グラムの反復用量。薬物を投与された患者における全ての有害事象は、重症度が軽度または中度であり、試験薬物に確実に関係するまたはおそらく関係するとみなされるものは全くなかった。1−デオキシノジリマイシンは、およそ4〜8時間の血漿中最終半減期で高い経口生物学的利用能を有すると考えられている。
【0260】
1−デオキシノジリマイシンに対するGAA応答が、単離されたばかりの白血球において判定される。GAA応答は、患者由来の細胞系列、皮膚線維芽細胞およびEBVで形質転換されたリンパ芽球においても判定される。遺伝子型情報を確認するためには、DNA配列決定を実施する。患者体内の尿中血糖類レベルも査定される。臨床試験において監視するべく疾病の潜在的マーカーを同定するために、血漿サイトカインおよびケモカインが測定される。
【0261】
実施例8:DGJ(1−デオキシガラクトノジリマイシン塩酸塩)がα−ガラクトシダーゼA(α−GAL)の活性を増加させる。
この実施例は、ミスセンスファブリー突然変異を発現するDGJ(1−デオキシガラクトノジリマイシン)遺伝子導入マウスの試験について記述する。この実施例は同様に、さまざまなファブリーミスセンス突然変異を発現する細胞系列に対するDGJの影響の試験についても記述する。
【0262】
R301Qファブリーミスセンス突然変異を発現する遺伝子導入マウスに、4週間100mg/kgの割合で無制限にDGJを投与した。DGJでの治療の後、治療を受けた動物の皮膚、肝臓および腎臓から生検材料を採取した。GL−3の濃度と同様、組織生検材料中のα−GAL発現を測定した。図24に示されているように、DGJでの治療の後、皮膚、心臓および腎臓内でα−GAL発現が増大した。さらに、試料採取した組織内のGL−3の濃度は、DGJ治療の後減少した。その上、図25に示されている通り、腎管切片および心臓切片の組織学検査は、GL−3凝集体の存在がDGJでの治療後に削減されることを示した。
【0263】
細胞系列は、75ファブリーミスセンス突然変異の1つを発現するように構築された。DGJを各細胞系列に投与し、DGJが突然変異酵素の活性を増加させたか否かを判定するためにα−GAL活性を測定した。図26に示されている通り、DGJは、75のうち47の細胞系列(63%)においてα−GAL活性を増強させた。さらに「古典的」ファブリー病に関連するファブリーミスセンス突然変異を発現する57の細胞系列のうち、34の細胞系列(60%)が治療後酵素活性の増加を示した。75のうち20の細胞系列が遅発性ファブリー病に対応するミスセンス突然変異を発現した。これら20の細胞系列のうち、19(95%)が治療後のα−GAL活性の増加を示した。
【0264】
実施例9:正常なマウスにおける骨および骨髄内の酒石酸イソファゴミンによるGCase応答
正常なマウスに対して、100mg/kgの酒石酸イソファゴミンの単回用量を投与した。試験グループおよび未治療の対照グループの両方について、大腿骨内および骨髄でGCase活性(F460/μgのタンパク質)を測定した。結果は図27に示されている。
【0265】
実施例10:ラットにおける薬物動態/組織分布
イソファゴミン600mg/kgの単回用量を経口(PO)強制飼養を介してラットに投与した。血漿、肝臓、脾臓および脳組織中のイソファゴミン濃度(μM)を、投薬時点(t=0)から投薬後48時間に至るまで規則的時間間隔をおいて逐次漸増させた。結果は図28に示されている。
【0266】
全ての組織は、15分以内で約400μMのGCase増強EC50を上回るイソファゴミンレベルを達成した。イソファゴミンレベルは肝臓および血漿中で48時間後にGCASE Ki値を下回るまで低下している;脾臓および脳組織は、より低速のクリアランスを示した。
【0267】
実施例11:雄のHR301Q GLA Tg/KOマウスにおけるDGJ投薬計画の比較
8週令の雄hR301Q GLA Tg/KOマウスを、毎日(休薬期間無し)または「比較的低い頻度で」(投薬4日/休薬3日)、飲料水に入れた300mg/kgのDGJを用いて4週間治療した。皮膚、心臓、腎臓および血漿から溶解物を調製した。LC/MS/MS(組織重量1gあたりのmg単位または血漿1mLあたりのmg単位で表現)により、GL−3レベルを測定した。結果は、図29に示されている。LC−MS/MSデータは、組織ならびに血漿中のDGJ投薬頻度が比較的低い状態で、GL−3レベルのより大きな削減を示した(p<0.05対未治療;#p<0.05毎日対より低頻度、t検定)。各棒は、1グループあたり10〜16匹のマウスの平均±SEMを表わす。
【0268】
モノクローナル抗GL−3抗体を用いた免疫組織化学染色(核はメチルグリーンで対比染色)も実施した。結果は、図30に示されており、皮膚(血管壁の平滑筋細胞および線維芽細胞)、心臓(血管壁の平滑筋細胞)および腎臓(遠位尿細管上皮細胞)内において暗赤色/褐色斑点(黒色矢印)としてGL−3シグナルを示す。毎日および「比較的低頻度」の両方のDGJ治療が、各組織内のGL−3信号の量および強度を削減した(20分の1)。LC−MS/MSと同様に、比較的低頻度のDGJ投薬で、各組織内により大きいGL−3の削減が見られた。示されているデータは、1グループあたり7〜8匹のマウスからの代表的写真である。
【0269】
実施例12:雄のHR301Q GLA Tg/KOマウスにおけるDGJ投薬量の比較
8週令の雄のhR301Q GLA Tg/KOマウスを4週間、飲料水中のDGJ3、10、30、100または300mg/kg/日で治療した。皮膚、心臓および腎臓由来の組織溶解物を調製し、GLA活性(基質として4−MUGを使用、1時間タンパク質1mgあたりのnmol数で表現)、GLAタンパク質(抗ヒトGLA抗体での50mgの組織溶解物の免疫ブロット法を使用)そしてGL−3レベル(LC−MS/MSを使用、組織重量1gあたりのmg単位で表現)についてテストした。結果は図31に示されている。DGJ治療の後、GLA活性(p<0.05対未治療、ANOVA)およびGLAタンパク質(挿入図、GLAは約45KDのバンドとして延在)の有意かつ用量依存性の増大およびGL−3レベル(p<0.05対未治療ANOVA)の有意な減少が見られた。ウエスタンブロット内の各レーンは、各グループに属する1匹のマウスを表わす。
【0270】
実施例13:雄のHR301Q GLA Tg/KOマウスにおけるDGJおよび上昇したHR301Q GLAの半減期の判定
4週間100mg/kg/日のDGJ(飲料水)をhR301Q GLA Tg/KOの雄マウスに投薬し、その後7日の休薬期間(飲料水中にDGJ無し)を設けることにより、上昇したhR301Q GLAおよびDGJの半減期を推定した。DGLの使用中止後0、1、3、5および7日目にマウスを安楽死させ、4−MUGを用いてGLAレベル(皮膚、心臓および腎臓内、実線)を測定した。同時に、LC−MS/MCにより、DGJ濃度を測定した(皮膚、心臓および腎臓内、破線)。結果は図32に示されている。
【0271】
指数関数的減衰曲線を用いて、上昇した組織hR301Q GLAレベルの半減期を2〜2.5日として推定し、一方、DGJの半減期は6〜7時間で推定した。各データ点は、1グループあたり6〜7匹のマウスの平均±SEMを表わす。
【0272】
実施例14:雄のHR301Q GLA Tg/KOマウスにおけるDGJおよび高まったHR301Q GLAの半減期の判定
健常な男性ボランティアに対してDGJを経口投与(7日間1日2回50mgおよび150mg;治療グループはn=6、全てのプラセボはn=4)したところ、白血球溶解物中で4−MUGによって測定される通りGLAレベルが増大する結果となった。DGJは経口的に利用可能であり、全ての用量で一般的に充分耐容され、いずれの治療グループにおいても、重大な有害事象は全く発生しなかった。データを、各グループの投薬前値に正規化した(投薬前値は、それぞれプラセボ、50mgおよび150mgについて1時間タンパク質1mgあたり24.6、23.3および14.1nmolesである)。結果は図33に示されている。
【0273】
本発明は、本明細書中に記載された具体的実施形態によってその範囲が限定されるものではない。実際、以上の記述および添付図面から当業者には、本明細書に記載されているものに加えて本発明のさまざまな修正が明らかになる。かかる修正は、添付の特許請求の範囲内に包含されるものである。
【0274】
さらに、全ての値は近似値であり、説明のために提供されるものであることを理解されたい。
【0275】
本出願全体を通して特許、特許出願、公報、製品関連文書およびプロトコルが引用されているが、その開示は、あらゆる目的のために全体が参照により本明細書に援用されている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
タンパク質の誤った折畳みに関連する疾患の治療のために、治療が必要な患者に対し薬理シャペロンを投与する方法であって、約4日〜約10日間1日1回約75〜300mgの日用量を経口投与するステップと、それに続いて約3日〜約8日おきに1回約75〜225mgの維持用量を経口投与するステップとを含む方法。
【請求項2】
投与される日用量が約125〜225mgである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
日用量が約5日〜約8日間1日1回投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
投与される維持用量が、約125mg〜約175mgである、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
維持用量が約4日〜約7日おきに1回投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
投与される日用量が約150mgである、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
日用量が約7日間1日1回投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
投与される維持用量が約150mgである、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
維持用量が約4日おきに1回投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
維持用量が約7日おきに1回投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
ゴーシェ病の治療のために治療が必要な患者に対してイソファゴミンまたはその薬理学的に許容できる塩を投与する方法であって、約5日〜約8日間1日1回約125〜225mgの日用量を経口投与するステップと、それに続いて約4〜7日おきに1回約125〜175mgの維持用量を経口投与するステップとを含む方法。
【請求項12】
ゴーシェ病の治療のために治療が必要な患者に対してイソファゴミンまたはその薬理学的に許容できる塩を投与する方法であって、約7日間1日1回約150mgの日用量を経口投与するステップと、それに続いて約4日おきに1回約150mgの維持用量を経口投与するステップとを含む方法。
【請求項13】
ゴーシェ病の治療のために治療が必要な患者に対してイソファゴミンまたはその薬理学的に許容できる塩を投与する方法であって、約7日間1日1回約150mgの日用量を経口投与するステップと、それに続いて約7日おきに1回約150mgの維持用量を経口投与するステップとを含む方法。
【請求項14】
ゴーシェ病の治療のために治療が必要な患者に対してイソファゴミンまたはその薬理学的に許容できる塩を投与する方法であって、約4日〜約14日間1日1回約75〜300mgの最初の日用量を経口投与するステップと、それに続いて1日に約25〜約50mgの間の維持日用量を経口投与するステップとを含む方法。
【請求項15】
投与される最初の日用量が約125〜225mgである請求項14に記載の方法。
【請求項16】
最初の日用量が、約5日〜約10日間1日1回投与される、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
投与される最初の日用量が約150mgである、請求項14に記載の方法。
【請求項18】
維持日用量が約7日間1日1回投与される、請求項14に記載の方法。
【請求項19】
維持日用量が約25mgである、請求項14に記載の方法。
【請求項20】
ゴーシェ病の治療のために治療が必要な患者に対してイソファゴミンまたはその薬理学的に許容できる塩を投与する方法であって、約2〜3日おきに約75〜約300mgの間の用量を経口投与するステップを含む方法。
【請求項21】
投与されるイソファゴミン用量が約125mg〜約225mgの間である、請求項24に記載の方法。
【請求項22】
投与されるイソファゴミンの用量が約150mgである、請求項24に記載の方法。
【請求項23】
ゴーシェ病の治療のために治療が必要な患者に対してイソファゴミンまたはその薬理学的に許容できる塩を投与する方法であって、約5日〜約10日間1日1回約125〜225mgの最初の日用量を経口投与するステップと、それに続いて約25〜約50mgの間の維持日用量を経口投与するステップとを含む方法。
【請求項24】
ゴーシェ病の治療のために治療が必要な患者に対してイソファゴミンまたはその薬理学的に許容できる塩を投与する方法であって、約7日間1日1回約150mgの最初の日用量を経口投与するステップと、それに続いて約25〜約50mgの間の維持日用量を経口投与するステップとを含む方法。
【請求項25】
ゴーシェ病の治療のために治療が必要な患者に対してイソファゴミンまたはその薬理学的に許容できる塩を投与する方法であって、約3日おきに150mgの用量を経口投与するステップを含む方法。
【請求項26】
投与されるイソファゴミン塩が酒石酸イソファゴミンである、請求項1に記載の方法。
【請求項27】
投与されるイソファゴミン塩が酒石酸イソファゴミンである、請求項14に記載の方法。
【請求項28】
投与されるイソファゴミン塩が酒石酸イソファゴミンである、請求項20に記載の方法。
【請求項29】
投与されるイソファゴミン塩が酒石酸イソファゴミンである、請求項23に記載の方法。
【請求項30】
投与されるイソファゴミン塩が酒石酸イソファゴミンである、請求項24に記載の方法。
【請求項31】
投与されるイソファゴミン塩が酒石酸イソファゴミンである、請求項25に記載の方法。
【請求項32】
ファブリー病の治療のために、治療が必要な患者に対し1−デオキシガラクトノジリマイシンまたはその薬理学的に許容できる塩を投与する方法であって、約4日〜約10日間1日1回約200〜約500mgの日用量を経口投与するステップと、それに続いて約2日〜約3日おきに1回約75〜225mgの維持用量を経口投与するステップとを含む方法。
【請求項33】
投与される日用量が約250〜300mgである、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
日用量が約5日〜約8日間1日1回投与される、請求項32に記載の方法。
【請求項35】
投与される維持用量が、約75mg〜約225mgである、請求項32に記載の方法。
【請求項36】
投与される日用量が約250mgである、請求項32に記載の方法。
【請求項37】
日用量が約7日間1日1回投与される、請求項32に記載の方法。
【請求項38】
投与される維持用量が、約100〜200mgである、請求項32に記載の方法。
【請求項39】
維持用量が、約2日おきに1回投与される、請求項32に記載の方法。
【請求項40】
投与される維持用量が約150mgである、請求項32に記載の方法。
【請求項41】
ゴーシェ病の治療のために治療が必要な患者に対してイソファゴミンまたはその薬理学的に許容できる塩を投与する方法であって、約4日〜約10日間1日1回約75〜300mgの日用量を経口投与するステップと、それに続いて約2〜8日の期間1日1回約75〜350mgの維持用量を経口投与し、その後実質的に等しい長さの休薬期間が続くステップとを含む方法。
【請求項42】
約100〜約200mgの用量が約7日間1日1回経口投与され、その後3日間1日1回約200〜250mgの維持用量が経口投与され、次に実質的に等しい長さの休薬期間が続く、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
約150mgの用量が約7日間1日1回経口投与され、その後3日間1日1回約225mgの維持用量が経口投与され、次に実質的に等しい長さの休薬期間が続く、請求項41に記載の方法。
【請求項44】
約100〜約200mgの用量が約7日間1日1回経口投与され、その後7日間1日1回約200〜250mgの維持用量が経口投与され、次に実質的に等しい長さの休薬期間が続く、請求項41に記載の方法。
【請求項45】
約150mgの用量が約7日間1日1回経口投与され、その後7日間1日1回約225mgの維持用量が経口投与され、次に実質的に等しい長さの休薬期間が続く、請求項41に記載の方法。
【請求項46】
ファブリー病の治療のために、治療が必要な患者に対し1−デオキシガラクトノジリマイシンまたはその薬理学的に許容できる塩を投与する方法であって、約5日〜約8日間1日1回約250〜300mgの最初の日用量を経口投与するステップと、それに続いて2〜3日おきに約1回約100〜200mgの維持用量を経口投与するステップとを含む方法。
【請求項47】
ファブリー病の治療のために、治療が必要な患者に対し1−デオキシガラクトノジリマイシンまたはその薬理学的に許容できる塩を投与する方法であって、約7日間1日1回約250mgの最初の日用量を経口投与するステップと、それに続いて2日おきに約1回約150mgの維持用量を経口投与するステップとを含む方法。
【請求項48】
ファブリー病の治療のために、治療が必要な患者に対し1−デオキシガラクトノジリマイシンまたはその薬理学的に許容できる塩を投与する方法であって、約7日間1日1回約250mgの最初の日用量を経口投与するステップと、それに続いて毎日約1回約25〜50mgの維持用量を経口投与するステップとを含む方法。
【請求項49】
ファブリー病の治療のために、治療が必要な患者に対し1−デオキシガラクトノジリマイシンまたはその薬理学的に許容できる塩を投与する方法であって、約2〜3日おきに約50〜300mgの間の1−デオキシガラクトノジリマイシンを経口投与するステップを含む方法。
【請求項50】
2〜3日おきに約125〜約225mgの1−デオキシガラクトノジリマイシンが投与される、請求項49に記載の方法。
【請求項51】
約50mg、150mgまたは250mgの1−デオキシガラクトノジリマイシンが2日おきに投与される、請求項49に記載の方法。
【請求項52】
ファブリー病の治療のために治療が必要な患者に対し1−デオキシガラクトノジリマイシンまたはその薬理学的に許容できる塩を投与する方法であって、約2〜8日の期間1日1回約100〜1000mgの日用量を経口投与し、その後実質的に等しい長さの休薬期間が続くステップを含む方法。
【請求項53】
日用量が約150〜600mgである、請求項52に記載の方法。
【請求項54】
日用量が約250mgである、請求項52に記載の方法。
【請求項55】
日用量が約500mgである、請求項54に記載の方法。
【請求項56】
日用量が3日間投与される、請求項52〜55のいずれか一項に記載の方法。
【請求項57】
投与される1−デオキシガラクトノジリマイシン塩が1−デオキシガラクトノジリマイシン塩酸塩である、請求項46〜56のいずれか一項に記載の方法。
【請求項58】
特異的薬理シャペロンを用いたリソソーム蓄積症治療のための投薬計画であって、特異的薬理シャペロンが、この疾病において欠損している酵素に対する競合阻害物質であり、リソソーム内の酵素蓄積速度が最大になる血漿濃度を提供する最初の日用量を一定の期間投与するステップと、それに続いてリソソーム内の阻害物質の解離を可能にする維持用量を残りの治療期間中、間隔をとって投与するステップとを含む投薬計画。
【請求項59】
最初の日用量が、一定期間にわたりEC50を超える血漿濃度を提供するものである、請求項58に記載の方法。
【請求項60】
維持用量が、一定期間にわたりIC50を下回る血漿濃度を提供するものである、請求項58に記載の方法。
【請求項61】
最初の日用量が1日用量である請求項58に記載の方法。
【請求項62】
維持用量が1日用量でない、請求項58に記載の方法。
【請求項63】
1−デオキシガラクトノジリマイシンまたはその薬学的に許容できる塩を有効量投与するステップを含む、A143Tミスセンス突然変異を有する対象におけるファブリー病の治療方法。
【請求項64】
1−デオキシガラクトノジリマイシンまたはその薬学的に許容できる塩を有効量投与するステップを含む、T41Iミスセンス突然変異を有する対象におけるファブリー病の治療方法。
【請求項65】
1−デオキシガラクトノジリマイシンまたはその薬学的に許容できる塩を有効量投与するステップを含む、A97Vミスセンス突然変異を有する対象におけるファブリー病の治療方法。
【請求項66】
1−デオキシガラクトノジリマイシンまたはその薬学的に許容できる塩を有効量投与するステップを含む、M51Kミスセンス突然変異を有する対象におけるファブリー病の治療方法。
【請求項67】
1−デオキシガラクトノジリマイシンまたはその薬学的に許容できる塩を有効量投与するステップを含む、G328Aミスセンス突然変異を有する対象におけるファブリー病の治療方法。
【請求項68】
1−デオキシガラクトノジリマイシンまたはその薬学的に許容できる塩を有効量投与するステップを含む、S276Gミスセンス突然変異を有する対象におけるファブリー病の治療方法。
【請求項69】
1−デオキシガラクトノジリマイシンまたはその薬学的に許容できる塩を有効量投与するステップを含む、L300Pミスセンス突然変異を有する対象におけるファブリー病の治療方法。
【請求項70】
1−デオキシガラクトノジリマイシンまたはその薬学的に許容できる塩を有効量投与するステップを含む、R259Rミスセンス突然変異を有する対象におけるファブリー病の治療方法。
【請求項71】
1−デオキシガラクトノジリマイシンまたはその薬学的に許容できる塩を有効量投与するステップを含む、R301Qミスセンス突然変異を有する対象におけるファブリー病の治療方法。
【請求項72】
1−デオキシガラクトノジリマイシンまたはその薬学的に許容できる塩を有効量投与するステップを含む、N215Sミスセンス突然変異を有する対象におけるファブリー病の治療方法。
【請求項73】
1−デオキシガラクトノジリマイシンまたはその薬学的に許容できる塩を有効量投与するステップを含む、P205Tミスセンス突然変異を有する対象におけるファブリー病の治療方法。
【請求項74】
1−デオキシガラクトノジリマイシンまたはその薬学的に許容できる塩を有効量投与するステップを含む、F259Cミスセンス突然変異を有する対象におけるファブリー病の治療方法。
【請求項75】
1−デオキシガラクトノジリマイシンまたはその薬学的に許容できる塩を有効量投与するステップを含む、R112Cミスセンス突然変異を有する対象におけるファブリー病の治療方法。
【請求項76】
1−デオキシガラクトノジリマイシンまたはその薬学的に許容できる塩を有効量投与するステップを含む、R112Hミスセンス突然変異を有する対象におけるファブリー病の治療方法。
【請求項77】
1−デオキシガラクトノジリマイシンまたはその薬学的に許容できる塩を有効量投与するステップを含む、N215Sミスセンス突然変異を有する対象におけるファブリー病の治療方法。
【請求項78】
1−デオキシガラクトノジリマイシンまたはその薬学的に許容できる塩を有効量投与するステップを含む、P409Aミスセンス突然変異を有する対象におけるファブリー病の治療方法。
【請求項79】
1−デオキシガラクトノジリマイシンまたはその薬学的に許容できる塩を有効量投与するステップを含む、M296Iミスセンス突然変異を有する対象におけるファブリー病の治療方法。
【請求項80】
1−デオキシガラクトノジリマイシンまたはその薬学的に許容できる塩を有効量投与するステップを含む、S235Cミスセンス突然変異を有する対象におけるファブリー病の治療方法。
【請求項81】
1−デオキシガラクトノジリマイシンが送達される、請求項57〜74のいずれか一項に記載の方法。
【請求項82】
1−デオキシガラクトノジリマイシン塩酸塩が投与される、請求項57〜74のいずれか一項に記載の方法。
【請求項83】
1−デオキシガラクトノジリマイシンまたはその薬学的に許容できる塩が、本出願の明細書または請求項中に記載されている投薬量計画を介して投与される、請求項57〜74のいずれか一項に記載の方法。
【請求項84】
ポンペ病治療のために治療が必要な患者に対し1−デオキシノジリマイシンまたはその薬理学的に許容できる塩を投与する方法であって、約2〜8日の期間1日1回約1000〜10000mgの日用量を経口投与し、その後実質的に等しい長さの休薬期間が続くステップを含む方法。
【請求項85】
日用量が約2000〜6000mgである、請求項78に記載の方法。
【請求項86】
日用量が約2500mgである、請求項78に記載の方法。
【請求項87】
日用量が約5000mgである、請求項78に記載の方法。
【請求項88】
日用量が3日間投与される、請求項78〜82のいずれか一項に記載の方法。
【請求項89】
日用量が7日間投与される、請求項78〜82のいずれか一項に記載の方法。
【請求項90】
誤って折畳まれたタンパク質に関連する疾患の治療のために、治療が必要な患者に対し薬理シャペロンを投与する方法であって、約1〜7日間1日1回約75〜300mgの最初の日用量を経口投与し、その後は、用量が一切投与されない約1〜10日の最初の休薬期間が続くステップと、それに続いて約1〜10日間1日1回約75〜300mgの間の維持日用量を経口投与し、その後に用量が一切投与されない1〜8日の間の第2の休薬期間が続くステップとを含む方法。
【請求項91】
投与される日用量が約125〜225mgである、請求項85に記載の方法。
【請求項92】
投与される日用量が約225mgである、請求項85に記載の方法。
【請求項93】
日用量が約5〜8日間1日1回投与される、請求項85に記載の方法。
【請求項94】
日用量が約7日間1日1回投与される、請求項85に記載の方法。
【請求項95】
最初の休薬期間が約2〜8日である、請求項85に記載の方法。
【請求項96】
最初の休薬期間が約7日である、請求項85に記載の方法。
【請求項97】
投与される維持用量が約125〜275mgである、請求項85に記載の方法。
【請求項98】
投与される維持用量が約225mgである、請求項85に記載の方法。
【請求項99】
維持用量が約4〜7日間1日1回投与される、請求項85に記載の方法。
【請求項100】
維持用量が約3日間1日1回投与される、請求項85に記載の方法。
【請求項101】
第2の休薬期間が約2〜8日である、請求項85に記載の方法。
【請求項102】
第2の休薬期間が約4日である、請求項85に記載の方法。
【請求項103】
維持用量および第2の休薬期間が約1週間〜約30週間の間の期間にわたって反復される、請求項85に記載の方法。
【請求項104】
維持用量および第2の休薬期間が、約22週間の期間にわたり反復される、請求項85に記載の方法。
【請求項105】
誤って折畳まれたタンパク質に関連する疾患の治療のために、治療が必要な患者に対し薬理シャペロンを投与する方法であって、約1〜7日間1日1回約75〜300mgの最初の日用量を経口投与し、その後に用量が一切投与されない約1〜10日の休薬期間が続くステップを含む方法。
【請求項106】
投与される日用量が約125〜225mgである、請求項100に記載の方法。
【請求項107】
投与される日用量が約225mgである、請求項100に記載の方法。
【請求項108】
日用量が約5〜8日間1日1回投与される、請求項98に記載の方法。
【請求項109】
日用量が約7日間1日1回投与される、請求項100に記載の方法。
【請求項110】
休薬期間が約2〜8日である、請求項98に記載の方法。
【請求項111】
休薬期間が約7日である、請求項100に記載の方法。
【請求項112】
日用量と休薬期間が約1週間〜約30週間の間の期間にわたり反復される、請求項100に記載の方法。
【請求項113】
日用量と休薬期間が約24週間の期間にわたり反復される、請求項100に記載の方法。
【請求項114】
患者が、投薬量の投与の前後約0.5〜24時間の間の期間、食物を摂取しない、請求項1〜108のいずれか一項に記載の方法。
【請求項115】
患者が、投薬量の投与の前後約1〜12時間の間の期間、食物を摂取しない、請求項1〜109のいずれか一項に記載の方法。
【請求項116】
患者が、投薬量投与の前後約2時間の期間、食物を摂取しない、請求項1〜110のいずれか一項に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3B】
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【図3C】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15A】
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【図15B】
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【図16】
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【図17A】
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【図17B】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26−1】
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【図26−2】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【公表番号】特表2010−525084(P2010−525084A)
【公表日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−506557(P2010−506557)
【出願日】平成20年4月28日(2008.4.28)
【国際出願番号】PCT/US2008/061764
【国際公開番号】WO2008/134628
【国際公開日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【出願人】(507170099)アミカス セラピューティックス インコーポレイテッド (21)
【Fターム(参考)】