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薬理シャペロンを用いてガングリオシドの活性を増大させて、アルツハイマー病を治療するための方法
説明

薬理シャペロンを用いてガングリオシドの活性を増大させて、アルツハイマー病を治療するための方法

本発明は、薬理シャペロンを用いて、ガングリオシド異化に関与するガングリオシダーゼおよび/またはシアリダーゼ酵素の活性を増大させることによってアルツハイマー病を有する個体を治療するための方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2009年10月19日に出願された米国仮特許出願第61/252,799号明細書の恩典を主張するものであり、その内容は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、薬理シャペロンを用いて、ガングリオシド異化に関与するガングリオシダーゼおよび/またはシアリダーゼ酵素の活性を増大させることによってアルツハイマー病を有する個体を治療するための方法に関する。
【背景技術】
【0003】
アルツハイマー病は、最も大きい社会経済的な医療負担の1つである。アルツハイマー病は進行性認知症を特徴とし、組織病理学的には神経原線維のもつれ(NFT)および老人(neuritic)(老人(senile))斑の存在を特徴とする。斑はアミロイド(Aβ)と呼ばれるタンパク質からなり、もつれはタウと呼ばれるタンパク質でできている。
【0004】
アミロイド斑とNFTは両方ともアルツハイマー病の顕著な特徴である。APPおよびプレセニリンの突然変異は早発性形態のアルツハイマー病を引き起こし、APPのプロセッシングが孤発性ADの発病に重要な役割も果たし得るという仮説を裏付けている。さらに、「アミロイド仮説」では、ある毒性形態のAβの蓄積が脳に害を及ぼすと予想されている。APPは、α−およびβ−セクレターゼ経路によってプロセッシングされ得る。これまで、この疾患の進行を遅延させるAD治療を開発しようとするほとんどの研究努力は、Aβペプチドを形成させるγ−セクレターゼおよびβ−セクレターゼの阻害ならびにAPP代謝の阻害または神経保護的sAPPαペプチドの産生を増大させると同時にAβ産生を低下させるα−セクレターゼプロセッシングの活性化に焦点を当てている。インビボでのβ−セクレターゼ活性の減少と、脳でのAβペプチドの低下との間には非線形の関係性があるように見えることも一因となって、特異的なβ−セクレターゼ阻害剤の開発は困難である。さらなる困難は、ほとんどの阻害剤がわずかしか脳に透過しないことである。γ−セクレターゼ阻害剤はさらに、notch阻害と関連する重篤なGI副作用に悩まされる。なぜなら、γ−セクレターゼは、APPの他に、notch受容体をはじめとする他の多くの基質をプロセッシングするからである。さらに、γ−セクレターゼ活性の欠損は、神経変性を引き起こすことが示されており、プレセニリン1(γ−セクレターゼ複合体の活性部位を含むγ−セクレターゼ複合体の構成要素)の突然変異によって引き起こされる常染色体優性の早発性アルツハイマー病と関連する可能性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
アルツハイマー病(AD)の治療を目的とした努力の大半は、ADの症状を軽減することに焦点をあてている。特に、AD患者の前脳の罹患したニューロンにおける低濃度のコリンアセチルトランスフェラーゼの同定は、シナプス間隙でのアセチルコリンの加水分解を阻害し、シナプスにおけるアセチルコリンのレベルを延長することを目的とした治療につながった。この戦略は、神経伝達物質レベルの少なくとも一部の修正をもたらすが、治療的利益は少ない。
【0006】
さらに、ADはタウオパシーに分類される。タウオパシーは、その凝集および神経原線維のもつれ(NFT)の形成を促進するタウの異常な過剰リン酸化によって引き起こされる。タウおよびAPPの突然変異は両方とも認知症を引き起こすので、一方または両方がADの疾患進行の一因となり得る。APPのプロセッシングの変化をもたらす突然変異がADを引き起こすことが十分に理解されている。現在、アルツハイマー病の進行を遅らせるための認可された治療法はない。したがって、より有益なAD治療が今も必要とされている。開発中のほとんどの治療法は、APP代謝を変化させること(例えば、β−セクレターゼおよびγ−セクレターゼ阻害)またはタウ凝集を阻止することに焦点を当てているが、本発明は、1種以上のガングリオシダーゼおよび/またはシアリダーゼに結合し、それにより、sAPPαの産生を増大させ、Aβおよび過剰リン酸化タウの産生を低下させる薬理シャペロンを用いる治療を提供するものである。
【0007】
本明細書における引用は全て、その全体が参照により組み込まれる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、特定のガングリオシドの異化に関与する1種以上のガングリオシダーゼおよび/またはシアリダーゼ酵素の活性を増大させることによってガングリオシドレベルを低下させる薬理シャペロンを投与することにより、アルツハイマー病を治療するための方法に関する。
【0009】
一実施形態によれば、個体のアルツハイマー病を治療するための方法であって、個体に有効量の薬理シャペロンを投与することを含む方法を提供する。別の実施形態では、薬理シャペロンは、1種以上のガングリオシダーゼおよび/もしくはシアリダーゼ酵素またはグルコセレブロシダーゼに結合する。さらなる実施形態では、薬理シャペロンは、突然変異体および/または野生型ガングリオシダーゼおよび/またはシアリダーゼ活性を増大させる。
【0010】
一実施形態では、脳アミロイド血管症を治療するための方法を提供する。別の実施形態では、CAAは、APPの突然変異によって引き起こされる家族性CAAである。
【0011】
本発明はまた、特定のガングリオシドの異化に関与する1種以上のガングリオシダーゼおよび/もしくはシアリダーゼ酵素の活性を増大させるかまたはグルコセレブロシダーゼの活性を増大させる薬理シャペロンを投与することにより、アルツハイマー病、進行性核上麻痺、大脳皮質基底核変性症および前頭側頭葉変性症などの疾患を含む、タウタンパク質の病的凝集に起因する状態を治療するための方法に関する。
【0012】
本発明は、薬理シャペロンとして知られる化合物と、これらの化合物を用いて、アルツハイマー病を発症するリスクがあるかまたはアルツハイマー病であると診断された患者のアルツハイマー病を予防および/または治療する方法であって、それを必要とする患者に、本明細書に示すような式I、IIおよびIIIから選択される化合物、ならびに実施例で特定される化合物を投与することを含む方法とを提供する。
【0013】
一実施形態では、薬理シャペロンは、2−アセトアミド−1,2−ジデオキシノジリマイシンまたは医薬として許容されるその塩、溶媒和物、もしくはプロドラッグである。一実施形態では、薬理シャペロンは、5−(フルオロメチル)ピペルジン−3,4−ジオールまたは医薬として許容されるその塩、溶媒和物、もしくはプロドラッグである。一実施形態では、薬理シャペロンは、(3R,4R,5R)−5−(フルオロメチル)ピペルジン−3,4−ジオールまたは医薬として許容されるその塩、溶媒和物、もしくはプロドラッグを含む。一実施形態では、薬理シャペロンは、(3R,4R,5R)−5−(フルオロメチル)ピペルジン−3,4−ジオール塩酸塩を含む。一実施形態では、本方法は、5−(クロロメチル)ピペルジン−3,4−ジオールまたは医薬として許容されるその塩、溶媒和物、もしくはプロドラッグを投与することを含む。一実施形態では、本方法は、(3R,4R,5S)−5−(クロロメチル)ピペルジン−3,4−ジオールまたは医薬として許容されるその塩、溶媒和物、もしくはプロドラッグを投与することを含む。一実施形態では、本方法は、(3R,4R,5S)−5−(クロロメチル)ピペルジン−3,4−ジオールを投与することを含む。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】APPプロセッシングの概略図を示す。
【図2】β−ヘキソサミニダーゼ活性が欠損したマウスの脳におけるAPP代謝およびタウリン酸化の変化の証拠を示す。
【図3】サンドホフ患者由来の線維芽細胞が、対照線維芽細胞と比べて、より多いsAPPβおよびAβとより少ないsAPPαとを分泌し、かつタウ過剰リン酸化を示すことを示す。
【図4】薬理シャペロンのNGTおよびAdDNJで処理したN2Aマウス神経芽細胞腫における内在性の野生型β−ヘキソサミニダーゼレベルおよびsAPPα切断の増加を示す。
【図5】薬理シャペロンNGTで処理したC57BL6マウスの脳における内在性の野生型β−ヘキソサミニダーゼ活性に対する用量およびウォッシュアウトの効果ならびに脳および血漿における対応する薬物レベルを示す。
【図6】C57BL6マウスの脳における内在性の野生型β−ヘキソサミニダーゼ活性レベルおよびsAPPαレベルに対する薬理シャペロンNGTの効果の経時変化を示す。
【図7】薬理シャペロンNB−DANAによる線維芽細胞におけるノイラミニダーゼ1レベルの増強を示す。
【図8】薬理シャペロンのザナミビルによるSHSY−5Y神経芽細胞種におけるノイラミニダーゼ3レベルの増加を示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
Aβは、全ての生体液中に見られ、より大きなI型膜タンパク質であるアミロイド前駆体タンパク質(APP)の酵素的切断によって生じる38〜43アミノ酸の疎水性ペプチドである。APPプロセッシングを示している図1を参照されたい。家族性AD患者の連鎖研究によって、APPとAPPの異常代謝および凝集型のAβの産生増大に関連するプレセニリンという2つの遺伝子にいくつかの突然変異が同定された。Aβが、アルツハイマー病の病理に大きな役割を果たし得る毒性のあるオリゴマーを形成すると考えられている(Shankar et al.,2008)。
【0016】
ガングリオシドは、脳の神経毒性型Aβ(すなわち、オリゴマー)の生成を促進する。ガングリオシドは、細胞膜の外葉に見られるシアル酸含有スフィンゴ糖脂質であり、ニューロンの細胞表面に特に多く存在する。ガングリオシドは、クラスターとなって存在することや、形質膜の表面でマイクロドメインを形成することが知られている。この特殊な局在のために、ガングリオシドは、糖タンパク質、ペプチドホルモン、および増殖因子をはじめとする種々のバイオエフェクターと相互作用することができる。さらに、ガングリオシド(例えば、GM1ガングリオシド)は、細胞分化を促進し、ニューロン発生の損失を防止し、かつニューロン損傷のインビトロおよびインビボのモデルで神経保護的役割を果たすことができる。
【0017】
ガングリオシドは神経系に最も多く存在し、シグナル伝達の仲介、細胞接着および細胞分化をはじめとする種々の機能に関与する。200を超えるガングリオシドが同定されているが、ニューロンのガングリオシドの大部分は、1種以上のガングリオシダーゼおよび/またはシアリダーゼによって異化される。
【0018】
α−セクレターゼ活性の産物である可溶性APPα(sAPPα)とβ−セクレターゼ活性の産物である可溶性APPβ(sAPPβ)は、sAPPαにAβの最初の16残基が含まれることが異なっている。α−セクレターゼによるAPPの切断はAβドメインを2つに切断するので、この反応の産物はアミロイドを生じさせることができない。したがって、α−セクレターゼ活性の活性化または上方調節は、毒性のあるAβオリゴマーおよびアミロイド斑の形成を妨げるかまたは低下させると同時に、神経栄養性でかつ神経保護的なsAPPαの切断を増大させると仮定されている。興味深いことに、スフィンゴ糖脂質およびガングリオシドの合成を阻害することによって、sAPPαの切断が活性化されることが示されている(Sawamura et al.,2004)。
【0019】
APPの突然変異は、家族性アルツハイマー病および/または脳アミロイド血管症(CAA)も引き起こす。ガングリオシドGM2、GM3およびGD3は、脳で部位特異的に発現するので、局所的なAβ沈着を調節することができる。(Yamamoto et al.,2006)は、オランダ型およびイタリア型Aβの遺伝性変異体の会合とフラマン型Aβの遺伝性変異体の会合が、それぞれ、GM3ガングリオシドとGD3ガングリオシドによって加速されることを示した。特に、オランダ型およびイタリア型Aβが沈着する脳の血管壁を構成する脳血管平滑筋細胞は、主にGM2およびGM3を発現する(Yamamoto et al.,2006)。したがって、遺伝性Aβ変異体の会合は、脳における特定のガングリオシドの存在などの、局所的な環境因子によって加速される可能性がある。
【0020】
本発明は、薬理シャペロンとして知られる化合物と、これらの化合物を用いて、アルツハイマー病を発症する危険性があるかまたはアルツハイマー病であると診断された患者のアルツハイマー病を予防および/または治療するための方法であって、それを必要とする患者に、式I:
【化1】

(式中:
はC(R)(R)(R)であり;
は、水素、−OHまたはハロゲンであり;
は、水素、−OH、ハロゲンまたはC1−8アルキルであり;
は、ハロゲン、C1−8アルキル、置換C1−8アルキル、アリール、置換アリール、アルキルシクロアルキルまたは置換アルキルシクロアルキルであり;
およびRは、それらが結合している炭素と結合して、好ましくはハロゲンと、より好ましくは1以上のフッ素原子と任意に置換し得るシクロアルキル環を形成することができ;
は、水素、C1−8アルキル、置換C1−8アルキル、アリールアルキル、置換アリールアルキル、アルキルアリール、または置換アルキルアリールであり;
Zは任意であり、存在するとき、Zは−(CH1−8−、−C(=O)−、−S(=O)NH−、−S(=O)−、−C(=S)NH−、−S(=O)−CH、C(=O)−NH−、−S(=O)−NR10、−C(=O)C1−8アルキルまたは−C(=O)CH(NH)CHであり;
は、水素、C1−8アルキルまたは置換C1−8アルキルであり;
10は、水素、C1−8アルキルまたは置換C1−8アルキルであり;
は、水素、C1−8アルキル、置換C1−8アルキル、アリール、置換アリール、C1−8アルケニル、置換C1−8アルケニル、アリールアルキル、置換アリールアルキル、アルキルアリール、置換アルキルアリール、アミノアリールアルキルまたは置換アミノアリールアルキルであり;
は、−OHまたはハロゲンであり;かつ
は、水素、ハロゲンまたはC1−8アルキルであり、
ただし、Rがハロゲンであり、Zが存在せず、Rが−OHであり、R、RおよびRが水素であるとき、RとRは両方とも、水素であることはできない)
の化合物を含む有効量の薬理シャペロンを投与することを含む方法とを提供する。
【0021】
本発明は、薬理シャペロンとして知られる化合物と、これらの化合物を用いて、アルツハイマー病を発症する危険性があるかまたはアルツハイマー病であると診断された患者のアルツハイマー病を予防および/または治療するための方法であって、それを必要とする患者に、式II:
【化2】

(式中:
はC(R)(R)(R)であり;
は、水素、−OHまたはハロゲンであり;
は、水素、−OH、ハロゲンまたは−CHであり;
は、ハロゲン、−CH、フェニル、フルオロフェニル、メチルフェニル、シクロヘキシルメチルであり、ここで、Rがハロゲンであるとき、RとRは両方とも、水素であることはできず;
およびRは、それらが結合している炭素と結合して、1以上のハロゲン原子と任意に置換し得るシクロアルキル環を形成することができ;
は、水素、フェニルアルキルまたは置換フェニルアルキルであり;
Zは任意であり、存在するとき、Zは、−(CH)−、−C(=O)−、−S(=O)NH−、−S(=O)−、−S(=O)−CH、C(=O)−NH−、−S(=O)NR10、−C(=S)−NH−または−C(=O)−CHであり;
は、水素またはCHであり;
10は、水素またはCHであり;
は、水素またはアミノフェニルアルキルであり;
は、−OHまたはハロゲンであり;かつ
は水素、ハロゲンまたは−CHであり、
ただし、Rがハロゲンであり、Zが存在せず、Rが−OHであり、R、RおよびRが水素であるとき、RとRは両方とも、水素であることはできない)
の化合物を含む有効量の薬理シャペロンを投与することを含む方法とを提供する。
【0022】
本発明はさらに、薬理シャペロンとして知られる化合物と、これらの化合物を用いて、アルツハイマー病を発症する危険性があるかまたはアルツハイマー病であると診断された患者のアルツハイマー病を予防および/または治療するための方法であって、それを必要とする患者に、式III:
【化3】

(式中:
はC(R)(R)(R)であり;
は、水素、−OHまたはハロゲンであり;
は、水素、−OH、ハロゲンまたは−CHであり;
は、ハロゲン、−CH、フェニル、フルオロフェニル、メチルフェニル、シクロヘキシルメチルであり、ここで、Rがハロゲンであるとき、RとRは両方とも、水素であることはできず;
およびRは、それらが結合している炭素と結合して、1以上のハロゲン原子と任意に置換し得るシクロアルキル環を形成することができ;
は、−OHまたはハロゲンであり;かつ
は水素、ハロゲンまたは−CHであり、
ただし、Rがハロゲンであり、Rが−OHであり、かつR、RおよびRが水素であるとき、RおよびRは両方とも、水素であることはできない)
の化合物を含む有効量の薬理シャペロンを投与することを含む方法とを提供する。
【0023】
、RおよびRは、不安定な分子が生じるようには選択されないことが当業者によって理解される。
【0024】
本発明を説明するために用いられる様々な用語の定義を以下に記載する。これらの定義は、特定の例で別途限定されない限り、これらの用語が、個別にまたはより大きい群の一部として本明細書の全体を通して用いられるように、これらの用語に適用される。
【0025】
「アルキル」という用語は、1〜20個の炭素原子、好ましくは1〜8個の炭素原子、より好ましくは1〜6個の炭素原子の直鎖または分枝鎖の非置換炭化水素基を指す。「低級アルキル」という表現は、1〜4個の炭素原子の非置換アルキル基を指す。
【0026】
「置換アルキル」という用語は、例えば、1〜4個の置換基、例えば、ハロ、ヒドロキシ、アルコキシ、オキソ、アルカノイル、アリールオキシ、アルカノイルオキシ、アミノ、アルキルアミノ、アリールアミノ、アラルキルアミノ、2つのアミノ置換基が、アルキル、アリールもしくはアラルキルから選択される二置換アミン;アルカノイルアミノ、アロイルアミノ、アラルカノイルアミノ、置換アルカノイルアミノ、置換アリールアミノ、置換アラルカノイルアミノ、チオール、アルキルチオ、アリールチオ、アラルキルチオ、アルキルチオノ、アリールチオノ、アラルキルチオノ、アルキルスルホニル、アリールスルホニル、アラルキルスルホニル、スルホンアミド、例えば、SONH、置換スルホンアミド、ニトロ、シアノ、カルボキシ、カルバミル、例えば、CONH、置換カルバミル、例えば、CONHアルキル、CONHアリール、CONHアラルキルまたはアルキル、アリールもしくはアラルキルから選択される2つの置換基が窒素上にある場合;アルコキシカルボニル、アリール、置換アリール、グアニジノおよびヘテロシクロ、例えば、インドリル、イミダゾリル、フリル、チエニル、チアゾリル、ピロリジル、ピリジル、ピリミジルなどで置換されたアルキル基を指す。上に記載されている場合、置換基がさらに置換されている場合、それは、アルキル、アルコキシ、アリールまたはアラルキルと置換されている。
【0027】
「ハロゲン」または「ハロ」という用語は、フッ素、塩素、臭素およびヨウ素を指す。
【0028】
「アリール」という用語は、環部分に6〜12個の炭素原子を有する単環式または二環式芳香族炭化水素基、例えば、フェニル、ナフチル、ビフェニルおよびジフェニル基を指し、これらの基は各々、置換されていてもよい。
【0029】
「アラルキル」という用語は、アルキル基を介して直接結合したアリール基、例えば、ベンジルを指す。同様に、「アルキルアリール」という用語は、アリール基を介して直接結合したアルキル基、例えば、メチルベンジルを指す。
【0030】
「置換アリール」という用語は、例えば、1〜4個の置換基、例えば、アルキル、置換アルキル、ハロ、トリフルオロメトキシ、トリフルオロメチル、ヒドロキシ、アルコキシ、アルカノイル、アルカノイルオキシ、アミノ、アルキルアミノ、アラルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アルカノイルアミノ、チオール、アルキルチオ、ウレイド、ニトロ、シアノ、カルボキシ、カルボキシアルキル、カルバミル、アルコキシカルボニル、アルキルチオノ、アリールチオノ、アリールスルホニルアミン、スルホン酸、アルキスルホニル、スルホンアミド、アリールオキシなどで置換されたアリール基を指す。置換基は、ヒドロキシ、アルキル、アルコキシ、アリール、置換アリール、置換アルキルまたはアラルキルでさらに置換されていてもよい。いくつかの実施形態では、置換アリールは、フェニルアルキルまたは置換フェニルアルキルである。いくつかの実施形態では、置換フェニルアルキルは、ハロゲン、アルコキシまたはアルキルと置換されていることが好ましい。
【0031】
「ヘテロアリール」という用語は、例えば、少なくとも1つのヘテロ原子と、少なくとも1つの炭素原子含有環、例えば、ピリジン、テトラゾール、インダゾールとを有する4〜7員単環式、7〜11員二環式、または10〜15員三環式環系である、任意に置換された芳香族基を指す。
【0032】
「アルケニル」という用語は、1〜4個の二重結合を有する、2〜20個の炭素原子、好ましくは2〜15個の炭素原子、および最も好ましくは2〜8個の炭素原子の直鎖または分枝鎖炭化水素基を指す。
【0033】
「置換アルケニル」という用語は、例えば、1個または2個の置換基、例えば、ハロ、ヒドロキシ、アルコキシ、アルカノイル、アルカノイルオキシ、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アルカノイルアミノ、チオール、アルキルチオ、アルキルチオノ、アルキルスルホニル、スルホンアミド、ニトロ、シアノ、カルボキシ、カルバミル、置換カルバミル、グアニジノ、インドリル、イミダゾリル、フリル、チエニル、チアゾリル、ピロリジル、ピリジル、ピリミジルなどで置換されたアルケニル基を指す。
【0034】
「アルキニル」という用語は、1〜4個の三重結合を有する、2〜20個の炭素原子、好ましくは2〜15個の炭素原子、および最も好ましくは2〜8個の炭素原子の直鎖または分枝鎖炭化水素基を指す。
【0035】
「置換アルキニル」という用語は、例えば、置換基、例えば、ハロ、ヒドロキシ、アルコキシ、アルカノイル、アルカノイルオキシ、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アルカノイルアミノ、チオール、アルキルチオ、アルキルチオノ、アルキルスルホニル、スルホンアミド、ニトロ、シアノ、カルボキシ、カルバミル、置換カルバミル、グアニジノおよびヘテロシクロ、例えば、イミダゾリル、フリル、チエニル、チアゾリル、ピロリジル、ピリジル、ピリミジルなどで置換されたアルキニル基を指す。
【0036】
「シクロアルキル」という用語は、不飽和C3−C7炭素環式環とさらに縮合し得る、1〜3個の環および環1個当たり3〜7個の炭素を含有することが好ましい任意に置換された飽和環式炭化水素環系を指す。例示的な基としては、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロクチル、シクロデシル、シクロドデシル、およびアダマンチルが挙げられる。例示的な置換基としては、上で記載したような1以上のアルキル基、または上でアルキル置換基として記載した1以上の基が挙げられる。
【0037】
「複素環」、「複素環式」および「ヘテロシクロ」という用語は、例えば、少なくとも1つの炭素原子含有環に少なくとも1つのヘテロ原子を有する4〜7員単環式、7〜11員二環式、または10〜15員三環式環系である、任意に置換された完全飽和または不飽和の芳香族または非芳香族環式基を指す。ヘテロ原子を含有する複素環式基の各々の環は、窒素原子、酸素原子および硫黄原子から選択される1個、2個または3個のヘテロ原子を有していてもよく、その場合、窒素および硫黄ヘテロ原子は任意に酸化されていてもよく、かつ窒素ヘテロ原子は任意に四級化されていてもよい。複素環式基は、任意のヘテロ原子または炭素原子に結合していてもよい。
【0038】
例示的な単環式複素環式基としては、ピロリジニル、ピロリル、インドリル、ピラゾリル、オキセタニル、ピラゾリニル、イミダゾリル、イミダゾリニル、イミダゾリジニル、オキサゾリル、オキサゾリジニル、イソキサゾリニル、イソキサゾリル、チアゾリル、イソチアゾリジニル、フリル、テトラヒドロフリル、チエニル、オキサジアゾリル、ピペリジニル、ピペラジニル、2−オキソピペラジニル、2−オキソピペリジニル、2−オキソピロリジニル、2−オキサアゼピニル、アゼピニル、4−ピペリドニル、ピリジル、N−オキソ−ピリジル、ピラジニル、ピリミジニル、ピリダジニル、テトラヒドロピラニル、モルホリニル、チアモルホリニル、チアモルホリニルスルホキシド、チアモルホリニルスルホン、1,3−ジオキソランおよびテトラヒドロ−1,1−ジオキソチエニル、ジオキサニル、イソチアゾリジニル、チエタニル、チイラニル、トリアジニル、ならびにトリアゾリルなどが挙げられる。
【0039】
例示的な二環式複素環式基としては、2,3−ジヒドロ−2−オキソ−1H−インドリル、ベンゾチアゾリル、ベンゾオキサゾリル、ベンゾチエニル、キヌクリジニル、キノリニル、キノリニル−N−オキシド、テトラヒドロイソキノリニル、イソキノリニル、ベンズイミダゾリル、ベンゾピラニル、インドリジニル、ベンゾフリル、クロモニル、クマリニル、シンノリニル、キノキサリニル、インダゾリル、ピロロピリジル、フロピリジニル(例えば、フロ[2,3−c]ピリジニル、フロ[3,1−b]ピリジニル]またはフロ[2,3−b]ピリジニル)、ジヒドロイソインドリル、ジヒドロキナゾリニル(例えば、3,4−ジヒドロ−4−オキソ−キナゾリニル)、ベンズイソチアゾリル、ベンズイソキサゾリル、ベンゾジアジニル、ベンゾフラザニル、ベンゾチオピラニル、ベンゾトリアゾリル、ベンズピラゾリル、ジヒドロベンゾフリル、ジヒドロベンゾチエニル、ジヒドロベンゾチオピラニル、ジヒドロベンゾチオピラニルスルホン、ジヒドロベンゾピラニル、インドリニル、イソクロマニル、イソインドリニル、ナフチリジニル、フタルアジニル、ピペロニル、プリニル、ピリドピリジル、キナゾリニル、テトラヒドロキノリニル、チエノフリル、チエノピリジル、チエノチエニルなどが挙げられる。
【0040】
例示的な置換基としては、上で記載したような1以上のアルキルまたはアラルキル基または上でアルキル置換基として記載した1以上の基が挙げられる。
【0041】
より小さいヘテロシクロ、例えば、エポキシドおよびアジリジンも挙げられる。
【0042】
「ヘテロ原子」という用語は、酸素、硫黄および窒素を含むものとする。
【0043】
式I、IIおよびIIIの化合物は、同じく本発明の範囲内にある塩を形成することができる。医薬として許容される(すなわち、無毒で、生理的に許容される)塩が好ましいが、例えば、本発明の化合物を単離または精製する際に他の塩も有用である。
【0044】
本発明は、個体に有効量の薬理シャペロンを投与することによって、個体のアルツハイマー病を治療するための方法に関する。表1もしくは2に記載のシャペロンまたはそれらの任意の変異体、誘導体もしくは類似体を含むが、これらに限定されない、多くの薬理シャペロンをアルツハイマー病の治療に用いることができる。
【0045】
本発明はまた、β−ヘキソサミニダーゼA、β−ヘキソサミニダーゼB、β−ヘキソサミニダーゼS、ノイラミニダーゼ−1、ノイラミニダーゼ−2、ノイラミニダーゼ−3、ノイラミニダーゼ−4およびグルコセレブロシダーゼの酵素活性を含むが、これらに限定されない、アルツハイマー病と関連する酵素活性に欠損がある個体を治療することに関する。
【0046】
本発明の一実施形態では、薬理シャペロンは、1種以上のガングリオシダーゼおよび/またはシアリダーゼ酵素に結合する。薬理シャペロンは、アルツハイマー病と関連するかまたはアルツハイマー病もしくはタウタンパク質の蓄積と関連する任意の疾患の顕著な特徴と関連する、ガングリオシダーゼおよび/もしくはシアリダーゼ酵素、またはグルコセレブロシダーゼに結合することができる。ガングリオシダーゼとしては、例えば、β−ヘキソサミニダーゼA、β−ヘキソサミニダーゼB、ノイラミニダーゼ−2、ノイラミニダーゼ−3、ノイラミニダーゼ−4およびグルコセレブロシダーゼまたはアルツハイマー病もしくはタウタンパク質の蓄積と関連する任意の疾患と関連する任意の他のガングリオシダーゼを挙げることができる。シアリダーゼとしては、ノイラミニダーゼ−1およびノイラミニダーゼ−4またはアルツハイマー病もしくはタウタンパク質の蓄積と関連する任意の疾患と関連する任意の他のシアリダーゼを挙げることができる。
【0047】
別の実施形態では、薬理シャペロンは、小胞体(ER)から酵素がその酵素機能を果たす細胞内の酵素最終地へのガングリオシダーゼおよび/またはシアリダーゼの輸送を増大させる。ノイラミニダーゼ1、β−ヘキソサミニダーゼAおよびβ−ヘキソサミニダーゼBの場合、薬理シャペロンは、ERからリソソームへの酵素の輸送を増大させる。ノイラミニダーゼ2の場合、薬理シャペロンは、ERから細胞質への酵素の輸送を増大させる。ノイラミニダーゼ3の場合、薬理シャペロンは、ERからエンドソームおよび形質膜への酵素の輸送を増大させる。ノイラミニダーゼ4の場合、薬理シャペロンは、ERからリソソームおよびミトコンドリアへの酵素の輸送を増大させる。グルコセレブロシダーゼの場合、薬理シャペロンは、ERからリソソームへの酵素の輸送を増大させる。薬理シャペロンは、突然変異体および/または野生型ガングリオシダーゼおよび/またはシアリダーゼの活性を増大させることができる。さらに、ガングリオシダーゼまたはシアリダーゼは、1種以上のガングリオシドを異化することができる。酵素の活性は、最大5%増大させることができる。酵素の活性は、最大10%、20%、40%、50%よりも大きく、ほぼ100%または100%よりもさらに大きく増大させることもできる。
【0048】
一実施形態では、酵素はβ−ヘキソサミニダーゼAであり、異化されるガングリオシドはGM2である。別の実施形態では、酵素はβ−ヘキソサミニダーゼBであり、異化されるガングリオシドはGA2およびGM2である。別の実施形態では、酵素はβ−ヘキサミニダーゼSであり、異化される産物は硫酸化ガングリオシド、硫酸化スフィンゴ糖脂質、硫酸化グリコシルアミノグリカン、硫酸化オリゴ糖およびデルマタン硫酸である。別の実施形態では、酵素は、ノイラミニダーゼ2、ノイラミニダーゼ3およびノイラミニダーゼ4であり、異化されるガングリオシドはシアル酸含有ガングリオシドである。別の実施形態では、酵素はノイラミニダーゼ1であり、異化される基質は、末端シアル酸を有する糖タンパク質およびオリゴ糖である。別の実施形態では、酵素はグルコセレブロシダーゼであり、異化されるスフィンゴ糖脂質はグルコシルセラミドである。グルコセレブロシドは、ガングリオシド合成の文脈ではガングリオシドの前駆体であり、ガングリオシド異化の文脈ではガングリオシドの産物である。グルコセレブロシドは、ガングリオシドをはじめとする全スフィンゴ糖脂質の合成の第一段階であり、かつそれは、ガングリオシドおよび他のスフィンゴ糖脂質の異化の最終段階である。
【0049】
本発明の一態様では、薬理シャペロンは、N−アセチルグルコサミンチアゾリン(NGT)である。別の態様では、薬理シャペロンは、N−ブチル−デオキシガラクトノジリマイシン(NB−DGJ)である。別の態様では、薬理シャペロンは、4−エピ−イソファゴミン(4−エピ−IFG)である。別の態様では、薬理シャペロンは、2−アセトアミド−2−デオキシノジリマイシン(AdDNJ)である。別の態様では、薬理シャペロンは、ザナミビル、5−(アセチルアミノ)−4−[(アミノイミノメチル)−アミノ]−2,6−アンヒドロ−3,4,5−トリデオキシ−D−グリセロ−D−ガラクト−ノン−2−エノン酸である。
【0050】
本発明の一態様では、薬理シャペロンNB−DGJは、スフィンゴ糖脂質およびガングリオシドの合成の第一段階を触媒する酵素であるグルコシルセラミドシンターゼを阻害することによってガングリオシドの合成を低下させるようにも機能する。NB−DGJは、SRTとしても機能することができる薬理シャペロンである。他の薬理シャペロンもこの二重の機能を有する。
【0051】
本発明の別の態様では、薬理シャペロンは、グルコシルセラミドシンターゼの阻害剤であるN−ブチルデオキシノジリマイシン(NB−DNJ)と組み合わせることができる。薬理シャペロンとNB−DNJは、毎日、週に1回、週に2回、週に3回、週に4日、週に5日、もしくはそれよりもさらに少ないもしくは多い頻度で、または必要なときに、同時に投与することができる。1種以上の薬理シャペロンとNB−DNJとを、別々に投与するか、または同時にかつ各々週に1回、週に2回、週に3回、もしくは週に4回、もしくは週にそれより多くの回数、もしくは必要なときに、投与することもできる。
【0052】
限定するものではないが、表1および2に記載されているものを含む、多くの異なる薬理シャペロンを用いて、アルツハイマー病を治療することができる。1種以上のガングリオシダーゼまたはシアリダーゼ酵素の活性を増大させるさらなる薬理シャペロン、ならびに表1および2に記載されている化合物の多くについての化学構造は、Tropak et al.,The Journal of Biol.Chem.279(14),13478−13487(2004)に見ることができる。
【0053】
【表1】

【0054】
【表2】

【0055】
【表3】

【0056】
【表4】

【0057】
【表5】

【0058】
【表6】

【0059】
【表7】

【0060】
【表8】

【0061】
【表9】

【0062】
【表10】

【0063】
【表11】

【0064】
【表12】

【0065】
【表13】

【0066】
【表14】

【0067】
化学的プロセス
本発明の組成物は、以下のスキームの1つまたは複数に従って作製することができる。
【0068】
プロセススキーム1:
【化4】

((2S,3S,4aR,8R,8aR)−2,3−ジメトキシ−2,3−ジメチルオクタヒドロ−[1,4]ジオキシノ[2,3−c]ピリジン−8−イル)メタノール塩酸塩(2)。1(20.0g、55.0mmol)のMeOH(500mL)溶液をPd(OH)2(4〜6g)およびギ酸アンモニウム(14g、220mmol)と合わせ、混合物を50〜55℃で加熱した。さらなる量(3×100.0mmol)のギ酸アンモニウムを次の8時間かけて添加した。最後の添加の後、反応混合物をさらに撹拌し、50〜55℃でさらに16時間加熱した。触媒を濾過により除去し、濾液を真空中で蒸発させた。粗生成物をアセトン(150mL)に溶解させ、濾過し、2−PrOH中のHClを添加した。氷浴にてシーディング(seeding)し、次いで、冷却した後、生成物を白色の結晶固体として回収した(11.0g、71%)。1H NMR(DMSO−d6)9.45(s,2H),4.80(t,1H,ex),3.85(m,1H),3.0−3.75(m,11H),2.8(q,2H),1.95(m,1H),1.2(2,6H)。
【0069】
((2S,3S,4aR,8R,8aR)−6−ベンジル−2,3−ジメトキシ−2,3−ジメチルオクタヒドロ−[1,4]ジオキシノ[2,3−c]ピリジン−8−イル)メタノール(3)。2(14.85g、50.0mmol)のDMF(200mL)溶液に、K2CO3(17.25g、125mmol)を添加し、混合物を40℃で約4時間撹拌した。この時点で、BnCl(5.7mL、50.0mmol)を一度に添加し、反応液を40℃で一晩撹拌した。溶媒を真空中で蒸発させ、残渣を水(600mL)に懸濁し、HClを添加して、残渣を溶解させた。溶液をEt2Oで洗浄した後、Na2CO3で塩基性化した。溶液をEtOAcで抽出し(2回)、合わせた抽出物を水、次にブラインで洗浄し、その後、MgSO4上で乾燥させた。溶液を濾過し、濾液を真空中で蒸発させると、表題化合物(17.2g、>95%)が無色から非常に淡い黄色の粘性油として得られた。これをさらに精製することなく用いた。1H NMR(CDCl3)7.3(m,5H),3.6−3.8(m,2H),3.5(s,3H),3.4(t,1H),3.26(s,3H),3.268(s,3H),2.9(m,2H),2.2(br s,1H),2.05(m,1H),1.85(t,1H),1.28(s,3H),1.26(s,3H)。
【0070】
((2S,3S,4aR,8R,8aR)−6−ベンジル−2,3−ジメトキシ−2,3−ジメチルオクタヒドロ−[1,4]ジオキシノ[2,3−c]ピリジン−8−イル)カルボキシアルデヒド(一般的手順A)(4)。−78℃に冷却したDMSO(7.3g、96.9mmol)のCH2Cl2(150mL)溶液に、塩化オキサリル(6.1mL、72.8mmol)のCH2Cl2溶液を少しずつ添加した。添加が終了した後、反応混合物をさらに30分間撹拌し、その時点で3(17.0g、48.4mmol)のCH2Cl2溶液を少しずつ添加した。添加が終了した後、反応液を−78℃で1時間撹拌し、その後、ジイソプロピルエチルアミン(34.4mL、193mmol)を少しずつ添加した。この添加が終了した後、冷却浴を除去し、飽和NaHCO3を添加してから反応混合物を0℃まで温めておいた。混合物を少量のさらなるCH2Cl2で希釈した後、有機層を分離し、MgSO4上で乾燥させた。濾過後、溶媒を真空中で蒸発させ、粗生成物をシリカゲルクロマトグラフィー(Hex/EtOAc)で精製すると、表題化合物(12.7g、75%)が粘性油として得られた。1H NMR(CDCl3)9.73(s,1H),7.2(m,5H),3.75(m,2H),3.5(q,2H),3.2(2s,6H),2.7−3.0(m,3H),2.05(m,2H),1.25(2s,6H)。
【0071】
((2S,3S,4aR,8S,8aR)−6−ベンジル−8,8−ジフルオロメチル−2,3−ジメトキシ−2,3−ジメチルオクタヒドロ−[1,4]ジオキシノ[2,3−c]ピリジン塩酸塩(一般的手順B)(5)。−15℃に冷却したDAST(1.4mL、10.3mmol)のCH2Cl2(50mL)溶液に、4(2.4g、6.9mmol)の溶液を少しずつ添加した。10分後、氷浴を除去し、反応液を室温で一晩撹拌した。この時点で反応混合物を氷浴にて再び冷却し、反応液を飽和NaHCO3の添加(これによってわずかに発熱するので最初は少しずつ)によってクエンチした。有機層を分離し、Na2SO4上で乾燥させ、濾過し、溶媒を真空中で蒸発させると、黄色い油が得られた。残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(Hex/EtOAc)で精製すると、表題化合物(1.6g、62%)が無色の油として得られた。1H NMR(CDCl3)7.2(m,5H),6.0(dt,1H),3.75(m,1H),3.55(m,3H),3.2(2s,6H),2.95(m,1H),2.85(m,1H),2.3(m,2H),1.5(br s,1H),1.2(2s,6H)。
【0072】
(3R,4R,5S)−5−(ジフルオロメチル)ピペルジン3,4−ジオール塩酸塩(一般的手順C)(6)。化合物5(1.6g、4.3mmol)をEtOH/H2O/HCl(40mL/40mL/5mL)の混合物中で還流加熱し、出発材料がもはや検出できなくなるまで反応をHPLCでモニタリングした。溶媒を真空中で蒸発させた後、EtOHで2回共蒸発させた。残渣をMeOHに溶解させ、Pd(OH)2上で水素添加した。終了したら、触媒を濾過により除去し、濾液を真空中で蒸発させた。残渣をEtOH(50mL)から再結晶化させると、表題化合物(0.55g、66%)が白色の固体として得られた(mp 168〜170℃)。1H NMR(D2O)6.15(dt,1H),4.3−4.8(m,2H),3.0(t,1H),2.85(t,1H),2.3(m,1H)。
【0073】
【化5】

(R)および(S)−1−((2S,3S,4aR,8R,8aR)−6−ベンジル−2,3−ジメトキシ−2,3−ジメチルオクタヒドロ−[1,4]ジオキシノ[2,3−c]ピリジン−8−イル)エタノール 一般的手順D(15/16)。4(7.0g、20.0mmol)の無水THF(100mL)溶液に、MeMgBr(20.0mL、3:1のTHF/トルエン中1.4M)を添加し、反応液を室温で一晩撹拌した。反応液を飽和NH4Clでクエンチし、混合物をEtOAcで抽出した(2回)。合わせた抽出物をブラインで洗浄し、Na2SO4上で乾燥させ、濾液を真空中で蒸発させた。残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(ヘキサン/2−PrOH)で精製すると、主要異性体(15)(1.6g、24.6%)が得られた。1H NMR(CDCl3).7.3(m,5H),4.15(m,1H),3.5−3.9(m,3H),3.3(2s,6H),2.85(m,2H),2.0(2m,4H),1.3(2s,6H),1.2(d,3H)。少量異性体(16)も単離した(0.55g、7.5%)7.3(m,5H),3.75(m,2H),3.5(m,2H),3.2(2s,6H),2.8(m,2H),2.0(t,1H),1.75(m,2H),1.2(2s,6H),1.0(d,3H)。
【0074】
(3R,4R,5R)−5((R)−1−ヒドロキシエチル)ピペルジン3,4−ジオール(17)。化合物15(0.55g、1.5mmol)を、出発材料がHPLCでもはや検出できなくなるまで、9/1のTFA:H2O(20mL)の混合物中で撹拌した。揮発性物質を除去し、残渣をEtOHで2〜3回共蒸発させた後、EtOHに溶解させ、固体K2CO3で処理した。固体を濾過した後、濾液を真空中で蒸発させ、残渣をHCl塩に変換し、Pd(OH)2上で水素添加した。触媒を濾過し、濾液を真空中で蒸発させた。粗生成物を、0.1NのNH4OHで溶出するイオン交換樹脂(Dowex 50WX8−200)を用いて精製した。適当な画分を合わせ、凍結乾燥させると、表題化合物(0.12g、50%)が得られた。1H NMR(D2O)4.2(q,1H),3.65(m,1H),3.45(m,3H),2.8(m,2H),1.65(m,1H),1.15(d,3H)。
【0075】
(3R,4R,5R)−5((S)−1−ヒドロキシエチル)ピペルジン3,4−ジオール(10)。化合物16(0.34g、0.93mmol)を上記のように脱保護すると、表題化合物(0.11g、75%)が得られた。1H NMR(D2O)4.15(m,2H),3.5(m,1H),3.35(t,1H),3.15(m,2H),1.8(m,1H),1.1(d,3H)。
【0076】
((2S,3S,4aR,8R,8aR)−6−ベンジル−8(S)−(1フルオロエチル)−2,3−ジメトキシ−2,3−ジメチルオクタヒドロ−[1,4]ジオキシノ[2,3−c]ピリジン(11)。化合物15(1.8g、5.0mmol)を一般的手順Bを用いてフッ素化した。シリカゲルクロマトグラフィー(Hex/EtOAc)によって、表題化合物(0.42g、23%)が得られた。1H NMR(CDCl3)7.25(m,5H),4.7−4.9(dq,1H),3.75(m,2H),3.4(m,2H),3.2(2s,6H),2.8(m,2H),2.0(m,3H),1.35(dd,3H),1.2(2s,6H)。
【0077】
(3R,4R,5R)−5((S)−1−フルオロエチル)ピペルジン3,4−ジオール塩酸塩(13)。化合物11(0.42g、1.14mmol)を一般的手順Cに記載したように脱保護した。触媒を除去した後、濾液を真空中で蒸発させ、その後、EtOHで共蒸発させた(2回)。得られた残渣をアセトンで粉砕すると、表題化合物(0.20g、88%)が白色の固体として得られた。1H NMR(DMSO−d6)9.0(br s,2H),5.6(d,1H,ex),5.4(d,1H,ex),5.0−5.2(dq,1H),3.55(m,1H),3.2(m,2H),2.9(t,1H),2.7(t,1H),2.2(m,1H),1.3(dd,3H)。
【0078】
((2S,3S,4aR,8R,8aR)−6−ベンジル−8(R)−(1フルオロエチル)2,3−ジメトキシ−2,3−ジメチルオクタヒドロ−[1,4]ジオキシノ[2,3−c]ピリジン(12)。化合物16(0.55g、1.5mmol)を一般的手順Bを用いてフッ素化すると、表題化合物(0.22g、40%)が得られた。H NMR(CDCl)7.3(m,5H),5.0(dq,1H),3.8(m,1H),3.5−3.75(m,3H),3.3(2s,6H),3.0(d,1H),2.9(m,1H),2.1(m,2H),1.85(m,1H),1.3(2s,6H)。
【0079】
(3R,4R,5R)−5((R)−(1−フルオロエチル)ピペルジン3,4−ジオール塩酸塩(14)。化合物12(0.22g、0.6mmol)一般的手順Cに記載したように脱保護した。触媒を除去した後、濾液を真空中で蒸発させ、その後、EtOHで共蒸発させた(2回)。得られた残渣をアセトンで粉砕すると、表題化合物(0.08g、67%)が白色の固体として得られた。1H NMR(D2O)5.1(dq,1H),3.5(m,4H),2.8(m,2H),1.8(m,1H),1.3(dd,3H)。
【0080】
プロセススキーム2:
【化6】

(2S,3S,4aR,8R,8aR)−2,3−ジメトキシ−2,3−ジメチルオクタヒドロ−[1,4]ジオキシノ[2,3−c]ピリジン−8−イル)メタノール塩酸塩(2)。1(20.0g、55.0mmol)のMeOH(500mL)溶液をPd(OH)(4〜6g)およびギ酸アンモニウム(14g、220mmol)と合わせ、混合物を50〜55℃で加熱した。さらなる量(3×100.0mmol)のギ酸アンモニウムを次の8時間かけて添加した。最後の添加の後、反応混合物をさらに撹拌し、50〜55℃でさらに16時間加熱した。触媒を濾過により除去し、濾液を真空中で蒸発させた。粗生成物をアセトン(150mL)に溶解させ、濾過し、2−PrOH中のHClを添加した。氷浴にてシーディング(seeding)し、次いで、冷却した後、生成物を白色の結晶固体(11.0g、71%)として回収した。H NMR(DMSO−d)9.45(s,2H),4.80(t,1H,ex),3.85(m,1H),3.0−3.75(m,11H),2.8(q,2H),1.95(m,1H),1.2(2,6H)。
【0081】
((2S,3S,4aR,8R,8aR)−6−ベンジル−2,3−ジメトキシ−2,3−ジメチルオクタヒドロ−[1,4]ジオキシノ[2,3−c]ピリジン−8−イル)メタノール(3)。2(14.85g、50.0mmol)のDMF(200mL)溶液に、KCO(17.25g、125mmol)を添加し、混合物を40℃で約4時間撹拌した。この時点で、BnCl(5.7mL、50.0mmol)を一度に添加し、反応液を40℃で一晩撹拌した。溶媒を真空中で蒸発させ、残渣を水(600mL)に懸濁し、HClを添加して、残渣を溶解させた。溶液をEtOで洗浄した後、NaCOで塩基性化した。溶液をEtOAcで抽出し(2回)、合わせた抽出物を水、次にブラインで洗浄し、その後、MgSO上で乾燥させた。溶液を濾過し、濾液を真空中で蒸発させると、表題化合物(17.2g、>95%)が無色から非常に淡い黄色の粘性油として得られた。これをさらに精製することなく用いた。H NMR(CDCl)7.3(m,5H),3.6−3.8(m,2H),3.5(s,3H),3.4(t,1H),3.26(s,3H),3.268(s,3H),2.9(m,2H),2.2(br s,1H),2.05(m,1H),1.85(t,1H),1.28(s,3H),1.26(s,3H)。
【0082】
((2S,3S,4aR,8R,8aR)−6−ベンジル−2,3−ジメトキシ−2,3−ジメチルオクタヒドロ−[1,4]ジオキシノ[2,3−c]ピリジン−8−イル)カルボキシアルデヒド(一般的手順A)(4)。−78℃に冷却したDMSO(7.3g、96.9mmol)のCHCl(150mL)溶液を塩化オキサリル(6.1mL、72.8mmol)のCHCl溶液に少しずつ添加した。添加が終了した後、反応混合物をさらに30分間撹拌し、その時点で、3(17.0g、48.4mmol)のCHCl溶液を少しずつ添加した。添加が終了した後、反応液を−78℃で1時間撹拌し、その後、ジイソプロピルエチルアミン(34.4mL、193mmol)を少しずつ添加した。この添加が終了した後、冷却浴を除去し、飽和NaHCOを添加してから反応混合物を0℃まで温めておいた。混合物を少量のさらなるCHClで希釈した後、有機層を分離し、MgSO上で乾燥させた。濾過後、溶媒を真空中で蒸発させ、粗生成物をシリカゲルクロマトグラフィー(Hex/EtOAc)で精製すると、表題化合物(12.7g、75%)が粘性油として得られた。H NMR(CDCl)9.73(s,1H),7.2(m,5H),3.75(m,2H),3.5(q,2H),3.2(2s,6H),2.7−3.0(m,3H),2.05(m,2H),1.25(2s,6H)。
【0083】
((2S,3S,4aR,8S,8aR)−6−ベンジル−8,8−ジフルオロメチル−2,3−ジメトキシ−2,3−ジメチルオクタヒドロ−[1,4]ジオキシノ[2,3−c]ピリジン塩酸塩(一般的手順B)(5)。−15℃に冷却したDAST(1.4mL、10.3mmol)のCHCl(50mL)溶液に、4(2.4g、6.9mmol)の溶液を少しずつ添加した。10分後、氷浴を除去し、反応液を室温で一晩撹拌した。この時点で反応混合物を氷浴にて再び冷却し、反応液を飽和NaHCOの添加(これによってわずかに発熱するので最初は少しずつ)によってクエンチした。有機層を分離し、NaSO上で乾燥させ、濾過し、溶媒を真空中で蒸発させると、黄色い油が得られた。残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(Hex/EtOAc)で精製すると、表題化合物(1.6g、62%)が無色の油として得られた。H NMR(CDCl)7.2(m,5H),6.0(dt,1H),3.75(m,1H),3.55(m,3H),3.2(2s,6H),2.95(m,1H),2.85(m,1H),2.3(m,2H),1.5(br s,1H),1.2(2s,6H)。
【0084】
(3R,4R,5S)−5−(ジフルオロメチル)ピペルジン3,4−ジオール塩酸塩(一般的手順C)(6)。化合物5(1.6g、4.3mmol)をEtOH/HO/HCl(40mL/40mL/5mL)の混合物中で還流加熱した。出発材料がもはや検出できなくなるまで反応をHPLCでモニタリングした。溶媒を真空中で蒸発させた後、EtOHで2回共蒸発させた。残渣をMeOHに溶解させ、Pd(OH)上で水素添加した。終了したら、触媒を濾過により除去し、濾液を真空中で蒸発させた。残渣をEtOH(50mL)から再結晶化させると、表題化合物(0.55g、66%)が白色の固体として得られた(mp 168〜170℃)。H NMR(DO)6.15(dt,1H),4.3−4.8(m,2H),3.0(t,1H),2.85(t,1H),2.3(m,1H)。
【0085】
【化7】

(3R,4R,5S)−1.ブチル−5−(ジフルオロメチル)ピペルジン3,4−ジオール(一般的手順D)(7a;R=Bu)。6(0.30g、1.4mmol)、KCO(0.48g、3.5mmol)およびBuBr(0.20g、1.4mmol)の混合物をDMF(10mL)中で合わせ、60℃で一晩加熱した。溶媒を真空中で蒸発させ、残渣をEtOAcに溶解させ、水、次にブラインで洗浄し、NaSO上で乾燥させた。濾過後、濾液を真空中で蒸発させると、粗生成物が得られた。これをクロマトグラフィー(CHCl/(9:1)MeOH/NHOH)で精製すると、表題化合物(0.25g、80%)が無色のシロップとして得られた。MH=224。H NMR(DMSO−d)6.2(t,1H,J=57Hz),5.13(d,1H,ex),4.91(d,1H,ex),3.3(m,1H),3.1(m,1H),2.9(m,2H),2.3(m,2H),1.95(m,2H),1.75(t,1H),1.2−1.5(2m,4H),0.9(t,3H)。
【0086】
(3R,4R,5S)−1.アリル−5−(ジフルオロメチル)ピペルジン3,4−ジオール(7b;R=アリル)。一般的手順Dに従い、臭化アリル(0.17g、1.4mmol)を用いると、表題化合物が白色の固体(0.22g、76%)として得られた。MH=208。H NMR(DMSO−d)6.2(t,1H,J=57Hz),5.8(m,1H),5.2(m,3H),4.92(d,1H),3.3(m,1H),3.1(1H),2.95(d,2H),2.85(d,2H),1.9(br m,2H),1.75(t,1H)。
【0087】
(3R,4R,5S)−5−(ジフルオロメチル)−1−(4−フルオロベンジル)ピペルジン3,4−ジオール(7c;R=4−フルオロベンジル)。反応を室温で行ない、4−フルオロベンジルブロミド(0.26g、1.4mmol)を用いることを除いて一般的手順Dに従うと、表題化合物が白色の固体(0.22g、56%)として得られた。MH=276。H NMR(DMSO−d)7.4(m,2H),7.15(m,2H),6.2(t,1H,J=57Hz),5.2(d,1H,ex),4.9(d,1H,ex),3.5(q,2H),3.3(m,1H),3.1(m,1H),2.8(m,2H),2.0(m,2H),1.8(t,1H)。
【0088】
(3R,4R,5S)−5−(ジフルオロメチル)−1−(4−メチルベンジル)ピペルジン3,4−ジオール(7d;R=4−メチルベンジル)。反応を室温で行ない、4−メチルベンジルブロミド(0.26g、1.4mmol)を用いることを除いて一般的手順Dに従うと、表題化合物が白色の固体(0.30,81%)として得られた。MH=272。H NMR(DMSO−d)7.2(m,4H),6.2(t,1H,J=57Hz),5.2(d,1H,ex),4.9(d,1H,ex),3.5(q,2H),3.3(1H),3.05(m,1H),2.8(m,2H),2.5(s,3H),1.95(m,2H),1.8(t,1H)。
【0089】
(3R,4R,5S)−5−(ジフルオロメチル)−1−(4−メトキシベンジル)ピペルジン3,4−ジオール(7e;R=4−メトキシベンジル)。反応を室温で行ない、4−メトキシベンジルクロリド(0.26g、1.4mmol)を用いることを除いて一般的手順Dに従うと、表題化合物が無色のシロップ(0.19g、49%)として得られた。MH=288。H NMR(DMSO−d)7.3(m,1H),6.85(m,3H)6.2(t,1H,J=57Hz),5.2(d,1H,ex),4.9(d,1H,ex),3.75(s,3H),3.5(q,2H),3.4(m,1H),3.1(m,1H),2.85(m,2H),1.95(m,2H),1.8(t,1H)。
【0090】
【化8】

1−((3S,4R,5R)−3−(ジフルオロメチル)−4,5−ジヒドロキシピペルジン−1−イル)ペンタン−1−オン(8a;Z=CO;R=ブチル)。反応を室温で行ない、塩化ペンタノイル(0.17g、1.4mmol)を用いることを除いて一般的手順Dに従うと、表題化合物が白色の固体(0.26g、71%)として得られた。MH=252。H NMR(DMSO−d)5.9−6.5(dt,1H),5.35(m,1H,ex),5.25(m,1H),ex),4.2(dd,1H),3.75(dd,1H),3.35(m,2H),3.1(m,1H),2.85(m,1H),2.3(t,2H),1.9br m,1H),1.4(m,2H),1.25(m,2H),0.85(t,3H)。
【0091】
(3R,4R,5S)−5−(ジフルオロメチル)−1−(メタンスルホニル)ピペルジン3,4−ジオール(8b;Z=SO;R=Me)。反応を室温で行ない、塩化メタンスルホニル(0.16g、1.4mmol)を用いることを除いて一般的手順Dに従うと、表題化合物が白色の固体(0.17g、51%)として得られた。H NMR(DMSO−d)6.2(t,1H,J=53Hz),5.43(d,1H,ex),5.38(d,1H,ex),3.2−3.7(m,4H),2.95(s,3H),2.85(m,1H),2.7(t,1H),2.1(br s,1H)。(3R,4R,5S)−5−(ジフルオロメチル)−1−トシルピペルジン3,4−ジオール(8b;Z=SO;R=Ph)。反応を室温で行ない、塩化トルエンスルホニル(0.26、1.4mmol)を用いることを除いて一般的手順Dに従うと、表題化合物が白色の固体(0.35g、67%)として得られた。H NMR(DMSO−d)7.6(d,2H),7.45(d,2H),6.25(t,1H,J=53Hz),5.4(2d,2H,ex),3.3−3.55(m,4H),3.2(m,1H),2.5(m,3H),2.4(t,1H),2.1(m,1H)。
【0092】
【化9】

(3S,4R,5R)−3−(ジフルオロメチル)−4,5−ジヒドロキシ−N−プロピルピペルジン−1−カルボキサミド(一般的手順E)(9a;X=O;R=プロピル)。6(フリーベース)(0.29g、1.2mmol)の無水DMF(5mL)溶液に、プロピルイソシアネート(0.10g、1.2mmol)を添加し、反応液を室温で一晩撹拌した。溶媒を真空中で蒸発させ、残渣をクロマトグラフィー(CHCl/MeOH)で精製すると、表題化合物が白色の固体(0.14g、48%)として得られた。MH=253。H NMR(DMSO−d)6.7(t,1H),6.22(t,1H,J=53Hz),5.25(d,1H,ex),5.15(d,1H,ex),4.05(d,1H),3.9(d,1H),3.3(m,2H),3.0(q,2H),2.5(m,1H),1.8(br d,1H),1.4(m,2H),0.85(t,3H)。
【0093】
(3S,4R,5R)−3−(ジフルオロメチル)−4,5−ジヒドロキシ−N−フェニルピペルジン−1−カルボキサミド(9b;X=O;R=フェニル)。一般的手順Eに従い、フェニルイソシアネート(0.14g、1.2mmol)を用いると、表題化合物が白色の固体(0.21g、62%)として得られた。MH=287。H NMR(DMSO−d)8.7(s,1H),7.45(d,2H),7.3(t,2H),6.95(t,1H),6.3(t,1H,J=53Hz),5.35(d,1H),5.25(d,1H),4.1(t,2H),3.3(m,2H),2.85(t,1H),2.75(t,1H),1.95(br d,1H)。
【0094】
(3S,4R,5R)−3−(ジフルオロメチル)−4,5−ジヒドロキシ−N−ブチルピペルジン−1−カルボキサミド(9c;X=O;R=ブチル)。一般的手順Eに従い、ブチルイソシアネート(0.12g、1.2mmol)を用いると、表題化合物が白色の固体(0.24g、76%)として得られた。MH=267。H NMR(DMSO−d)6.6(t,1H),6.2(t,1H,J=53Hz),5.25(d,1H),5.1(d,1H),4.05(d,1H),3.9(d,1H),3.35(m,2H),3.05(q,2H),2.65(t,1H),2.45(m,1H),1.8(br d,1H),1.2−1.4(2m,4H),0.85(t,3H)。
【0095】
(3S,4R,5R)−3−(ジフルオロメチル)−4,5−ジヒドロキシ−N−ブチルピペルジン−1−カルブチオアミド(9d;X=S;R=ブチル)。一般的手順Eに従い、ブチルイソチオシアネート(0.14g、1.2mmol)を用いると、表題化合物が無色のシロップ(0.21g、63%)として得られた。MH=283。H NMR(DMSO−d)7.85(t,1H),6.25(t,1H),5.35(2d,2H),4.8(d,1H),4.45(d,1H),3.45(m,2H),3.25(m,1H),3.05(t,1H),2.8(t,1H),1.85(br d,1H),1.4(m,2H),1.35(m,2H),1.1(m,1H),0.95(t,3H)。
【0096】
(3S,4R,5R)−3−(ジフルオロメチル)−4,5−ジヒドロキシ−N−フェニルピペルジン−1−カルブチオアミド(9e;X=S;R=フェニル)。一般的手順Eに従い、フェニルイソチオシアネート(0.16g、1.2mmol)を用いると、表題化合物が白色の固体(0.31g、86%)として得られた。MH=303。H NMR(DMSO−d)9.5(s,1H),7.3(m,4H),7.1(t,1H),6.35(t,1H),5.35(2d,2H),4.85(d,1H),4.55(d,1H),3.45(m,2H),3.2(t,1H),3.0(t,1H),2.05(br d,1H)。
【0097】
本発明の化合物は、以下の一般スキームを用いて当業者が作製することもできる:
【化10】

【化11】

【化12】

【化13】

【化14】

【0098】
本発明によれば、治療されるべき個体は、早発性の家族性アルツハイマー病を含む、任意の形態のアルツハイマー病を有していてもよい。個体は、アルツハイマー病のリスク因子を有していてもよく、またはアルツハイマー病を発症するリスクがあってもよい。個体は、既にアルツハイマー病であると診断されていてもよい。さらに、個体は、診断されてはいないが、本疾患の顕著な特徴を示していてもよい。個体は、進行性核上麻痺、大脳皮質基底核変性症および/もしくは前頭側頭葉変性症(ピック病)を有していてもよく、またはこれらを発症するリスクがあってもよい。さらなる実施形態では、アルツハイマー病は、ダウン症によって引き起こされるか、またはダウン症と関連がある。
【0099】
さらに、特許請求された治療は、1種以上の薬理シャペロンの組合せを含むことができ、かつ他の既知のアルツハイマー治療またはタウタンパク質の病的凝集に関連するかもしくはそれに起因する任意の状態と組み合わせることもできる。治療は、1種、2種、3種もしくはそれより多くの薬理シャペロンの組合せまたは1種、2種、3種もしくはそれより多くのシャペロンと1種以上のグルコシルセラミドシンターゼ阻害剤との組合せを含むこともできる。併用療法は、1種以上のシャペロンと1種以上のグルコシルセラミドシンターゼ阻害剤とを含み、ガングリオシド活性を増大させ、かつグルコシルセラミドシンターゼ活性を減少させることができる。治療は、1種、2種、3種またはそれより多くの理学的シャペロンと1種以上のO−GlcNAcアーゼ(OGA)阻害剤との組合せを含むこともできる。薬理シャペロンの組合せの例としては、例えば、以下のものを挙げることができる:
NGT、ザナミビル
AdDNJ、ザナミビル
【0100】
薬理シャペロンと基質補充療法(SRT)の組合せの例としては、例えば、以下のものを挙げることができる:
NGT、NB−DNJ
NGT、NB−DGJ
NGT、ザナミビル、NB−DGJ
NGT、ザナミビル、NB−DNJ
NB−DNJ、ザマミビル
NB−DGJ、ザナミビル
AdDNJ、NB−DNJ
AdDNJ、NB−DGJ
AdDNJ、ザナミビル、NB−DNJ
AdDNJ、ザナミビル、NB−DGJ
【0101】
本発明はまた、前頭側頭認知症、進行性核上麻痺、大脳皮質基底核変性症および前頭側頭葉変性症などの、タウタンパク質の病的凝集に起因する状態の治療のための方法に関する。
【0102】
NGTは、表1に記載されている薬理シャペロンのうちの1つである。NGTは、患者由来細胞の突然変異体β−ヘキソサミニダーゼ活性およびC57BL6マウスの内在性の野生型β−ヘキソサミニダーゼ活性を増大させる。NGTは、血液脳関門透過を含む優れたインビボPK特性を有し、β−ヘキソサミニダーゼに選択的で、かつ良好な忍容性を示す。NGTは、安定で、水溶性で、かつ経口バイオアベイラビリティが良好である。それは、選択的に、C57BL6マウスの脳の野生型β−ヘキソサミニダーゼ活性のレベルを増大させ、かつ神経栄養性sAPPαのレベルを増大させる(図5および6)。
【0103】
n−ブチル−2−デオキシ−2,3−デヒドロ−N−アセチルノイラミン酸もまた、表1に記載されている薬理シャペロンである。n−ブチル−2−デオキシ−2,3−デヒドロ−N−アセチルノイラミン酸は、健康対照に由来する線維芽細胞の野生型ノイラミニダーゼ1活性を選択的に増大させる(図7)。
【0104】
研究により、β−ヘキソサミニダーゼ欠損マウスにはアミロイド様沈着とpThr231−タウ免疫反応性があることが示されている。インビトロ研究により、精製ガングリオシドがAβオリゴマー化および原線維形成を誘導することができることが示されている。GLB1 KOマウスは、脳全体にGM1およびGA1ガングリオシドを蓄積する。Sango,et al.,Nat.Genet.11(2):170−176(1995)。一方、HEXB KOマウスは、脳および脊髄全体のニューロンにGM2およびGA2ガングリオシドを蓄積する。Hahn,et al.,Hum.Mol.Genet.6(2):205−211(1997)。4カ月齢のHEXB KOマウスの脳および脊髄の予備的なIHC解析によって、抗齧歯類Aβと免疫反応する沈着の存在が明らかになった。そのようなAβ免疫反応性沈着は、年齢をマッチさせた野生型対照マウスの脳および脊髄には見られなかった。
【0105】
NGTは、細胞培養物およびC57BL6マウスの脳の内在性の野生型β−ヘキソサミニダーゼ活性を増大させることができる。酵素β−ヘキソサミニダーゼは、ガングリオシドの異化に必要とされるいくつかの酵素のうちの1つであり、その欠損は、サンドホフ病として知られる貯蔵障害を引き起こす。脳全体のニューロンにGA2およびGM2ガングリオシドを蓄積するサンドホフ病のマウスモデル(HEXB KO)もまた、pThr231−タウ(NFTの主要成分)免疫反応性と、マウスAβエピトープに対する抗体と免疫反応性がある沈着とを蓄積する。サンドホフ病患者に由来する線維芽細胞におけるpThr231−タウ蓄積、ならびにsAPPβおよびAβ40分泌の増大は、β−ヘキソサミニダーゼ活性の欠損が、インビボとインビトロの両方でAPPプロセッシングの変化をもたらし得ることを示している。
【0106】
脳のガングリオシドの構造および代謝は、Ariga,et al.ASBMB,2008,49:1157−1175に見ることができる。
【化15】

【0107】
定義
本明細書で用いられる用語は一般に、本発明の文脈の中でおよび各用語が使用される具体的文脈の中で当技術分野におけるその通常の意味を有する。一部の用語は、本発明ならびに本発明の作製および使用方法を説明する上で実施者に対するさらなる指針を提供するために、以下でまたは本明細書の他の箇所で論じられる。
【0108】
本明細書で使用する場合、「薬理シャペロン」または場合により「特異的薬理シャペロン」(「SPC」)という用語は、1種以上のガングリオシダーゼおよび/もしくはシアリダーゼ、またはグルコセレブロシダーゼに特異的に結合し、(i)タンパク質の安定な分子構造の形成を増強する;(ii)ERから別の細胞位置、好ましくは本来の細胞位置へのタンパク質の適切な輸送を増強する、すなわち、タンパク質のER関連分解を防止する;(iii)構造的に不安定な、すなわち、ミスフォールディングしたタンパク質の凝集を防止する;(iv)タンパク質の少なくとも一部の野生型機能、安定性、および/もしくは活性を回復させるかもしくは増強する;ならびに/または(v)細胞の表現型もしくは機能を改善する、という効果のうちの1つ以上を有する分子を指す。したがって、ガングリオシダーゼまたはシアリダーゼの薬理シャペロンとは、1種以上のガングリオシダーゼおよび/またはシアリダーゼに結合し、適切なフォールディング、輸送、非凝集、ならびにガングリオシダーゼおよび/またはシアリダーゼの活性の増大をもたらす分子である。これには、タンパク質の安定性を増強する特異的結合分子、例えば、活性部位特異的シャペロン、阻害剤、アロステリックバインダー、非活性部位バインダーが含まれる。グルコセレブロシダーゼの薬理シャペロンは、同じ効果を有する。
【0109】
「薬理シャペロン」(PC)という用語は、標的タンパク質に選択的に結合し、それを安定化して適切なフォールディングを促進し、早期分解を低下させ、ER輸出の効率を増大させる小分子を指す。これらの小分子は、タンパク質が合成される場所(ER)からその意図される場所(例えば、リソソームまたは細胞表面)に至るのを助けるので「シャペロン」と呼ばれる。これらの分子は、タンパク質標的に結合して、それを安定化し、適切な輸送の回復を助けた後、解離する可逆的バインダーであり、そのため、タンパク質はその適切な機能を実行することができる。「薬理学的」修飾因子は、分子の特異性を意味する。これらの分子は、意図される単一のタンパク質標的のみと相互作用して、それのみを安定化するように設計され、PCは、通常、複数のタンパク質または細胞プロセス、例えば、タンパク質輸送、ER品質管理、プロテアソーム機能、もしくは生物学的シャペロン(例えば、熱ショックタンパク質)の活性に影響を及ぼさない。このアプローチは、特定のタンパク質(突然変異体または野生型)の機能を増大させることによって治療的利益がもたらされると予想される疾患に広く適用できる。
【0110】
不正確にフォールディングしたタンパク質の保持および早期分解は、突然変異体タンパク質に限られたものではない。全ての新たに合成されるタンパク質の大部分(最大30%)は、プロテアソームによる早期分解の標的とされることが示されている。その後の研究により、薬理シャペロンは、タンパク質のフォールディング、安定性およびER輸出を促進することによって、多くの野生型タンパク質の細胞レベルを増大させることができることが示されている。
【0111】
分子シャペロンはタンパク質の構造を安定化する。ヒトの体内で、タンパク質は、細胞機能のほとんど全ての局面に関与している。ある種のヒト疾患は、その安定性を低下させ、それが適切にフォールディングするのを妨げ得るタンパク質のアミノ酸配列の変化を引き起こす突然変異に起因する。安定性が低いまたはミスフォールディングしたタンパク質の産生をもたらす遺伝子突然変異の大部分は、ミスセンス突然変異と呼ばれる。これらの突然変異は、タンパク質中の単一アミノ酸の、別のアミノ酸への置換をもたらす。こうしたエラーのために、ミスセンス突然変異は、生物学的活性のレベルが低下したタンパク質を生じさせることが多い。ミスセンス突然変異の他に、生物学的活性が低下したタンパク質を生じさせ得る他の種類の突然変異もある。
【0112】
タンパク質は、通常、小胞体、またはERとして知られる細胞の特定の領域でフォールディングする。細胞は、タンパク質が、その正確な3次元形状にフォールディングした後、一般にタンパク質輸送と呼ばれるプロセスである、ERから細胞内の適切な目的地への移動を可能にすることを保証する品質管理機構を有する。ミスフォールドしたおよび/または不安定なタンパク質は、最初にERに保持された後、品質管理機構によって排除されることが多い。場合によっては、ミスフォールドしたタンパク質は、排除される前にERに蓄積することがある。
【0113】
ERでのミスフォールドしたタンパク質の保持は、その適切な輸送を妨害し、その結果として生じる生物学的活性の低下は、細胞機能の障害、そして最終的には、疾患を引き起こすことがある。さらに、ERでのミスフォールドしたタンパク質の蓄積は、細胞機能不全や疾患の一因ともなり得る、細胞に対する様々な種類のストレスをもたらす可能性がある。
【0114】
内在性分子シャペロンは、ほとんど全ての種類の細胞および大半の細胞コンパートメントに存在する。タンパク質の輸送に関与し、細胞が熱ショックやグルコース飢餓などのストレス下で生存するのを可能にするものもある。内在性シャペロン(分子シャペロン)の中で、BiP(免疫グロブリン重鎖結合タンパク質、Grp78)は最も良く特徴付けられているERシャペロンである。他のシャペロンと同様に、BiPは、その成熟を通してずっとER内で多くの分泌タンパク質および膜タンパク質と相互作用する。新たに始まったタンパク質フォールディングが順調に進行する場合、この相互作用は、通常弱く、長続きしない。ひとたび本来のタンパク質構造が達成されれば、分子シャペロンはもはやタンパク質と相互作用しない。フォールディングできないか、会合できないか、または適切にグリコシル化できないタンパク質へのBiP結合は安定したものとなり、通常、ER関連分解経路によるタンパク質の分解をもたらす。このプロセスは、ERでの「品質管理」システムとしての機能を果たし、適切にフォールディングおよび会合したタンパク質だけがERから外へ輸送されてさらに成熟し、不適切にフォールディングしたタンパク質、または不安定なタンパク質は保持されて、後に分解されることを保証している。熱力学的タンパク質フォールディングプロセスとER品質管理システムの効率の悪さの複合作用のために、いくつかの野生型タンパク質のごく一部だけが安定な構造へとフォールディングされるようになって、ERから脱出するのに成功する。
【0115】
特異的な酵素阻害剤に由来する薬理シャペロンは突然変異体酵素を救済し、野生型酵素を増強する。リソソーム蓄積症(LSD)と関連する酵素の低分子阻害剤の結合は、例えば、突然変異体酵素と対応する野生型酵素の両方の安定性を増大させることができる(全て参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第6,274,597号明細書;同第6,583,158号明細書;同第6,589,964号明細書;同第6,599,919号明細書;同第6,916,829号明細書;および同第7,141,582号明細書を参照されたい)。特に、いくつかの標的リソソーム酵素の特異的で、選択的な競合阻害剤である、グルコースおよびガラクトースの低分子誘導体の投与が、インビトロで細胞の酵素の安定性を効果的に増大させ、それにより、酵素のリソソームへの輸送を増大させることが発見された。したがって、リソソームの酵素の量を増大させることにより、酵素基質の加水分解が増大すると考えられる。突然変異体酵素タンパク質はER中で不安定であるので、酵素タンパク質は、通常の輸送経路(ER→ゴルジ装置→エンドソーム→リソソーム)の中で遅延し、早期に分解される。したがって、突然変異体酵素に結合し、その安定性を増大させる特定の化合物は、その酵素の「シャペロン」としての役割を果たし、ERから脱出してリソソームに移ることができる量を増大させることができる。
【0116】
いくつかの酵素阻害剤は、酵素の触媒中心(「活性部位」)に特異的に結合し、インビトロでの酵素構造の安定化をもたらすことが知られているので、これらの阻害剤は、いささか逆説的ではあるが、ERからの脱出、リソソームへの輸送、加水分解活性の回復を助けることができる効果的なシャペロンであると提案された。これらの特異的薬理シャペロンは、酵素の活性部位に特異的に結合するので、「活性部位特異的シャペロン(ASSC)」または「特異的薬理シャペロン」と命名された。低分子は経口投与することができ、かつタンパク質ベースの治療と比べて優れた生体分布を有し得るので、薬理シャペロン療法は、酵素補充療法(ERT)に優る潜在的な利点を有する。
【0117】
突然変異体酵素を救済するのに加えて、薬理シャペロンは、野生型酵素のER分泌および活性を増強する。したがって、フォールディング時に酵素の安定な分子構造を誘導する化合物は、酵素を適切な構造に安定化して、ERから脱出させる「シャペロン」としての役割を果たす。ガングリオシダーゼおよび/またはシアリダーゼの薬理シャペロンとしては、表1および2に示されているものが挙げられるが、これらに限定されない。本明細書で使用される用語に対するさらなる指針を以下に示す。
【0118】
「ガングリオシド」または「シアロガングリシド」という用語は、N−アシルスフィンゴシンと1以上のN−アセチルノイラミン酸(シアル酸、NeuAc)残基を有するオリゴ糖鎖とからなるスフィンゴ糖脂質を指す。
【0119】
「アシアロガングリオシド」という用語は、N−アセチルノイラミン酸(シアル酸、NeuAc)残基を含まないガングリオシドを指し、これには、LacCer、GA2およびGA1(Ariga et al.)が含まれる。
【0120】
「ガングリオシダーゼ」という用語は、ガングリオシドおよびアシアロガングリオシドの非還元末端単位から順次、個々のN−アセチルノイラミン酸(シアル酸、NeuAc)および糖残基を除去するシアリダーゼおよびエキソグリコヒドロラーゼを指す。この分解は、主に、エンドサイトーシス−エンドソーム−リソソーム経路を通じて起こる。ガングリオシダーゼの例としては、シアリダーゼ2(ノイラミニダーゼ2;NEU2)、シアリダーゼ3(ノイラミニダーゼ3;NEU3)、シアリダーゼ4(ノイラミニダーゼ4;NEU4)、β−ガラクトシダーゼ(GLB1)、β−ヘキソサミニダーゼA(HEXA/HEXB)、β−ヘキソサミニダーゼB(HEXB)、およびβ−ヘキソサミニダーゼS(HEXS)が挙げられる。
【0121】
「シアリダーゼ」という用語は、ガングリオシド、オリゴ糖および糖タンパク質の非還元末端単位から個々のN−アセチルノイラミン酸(シアル酸、NeuAc)残基を除去する酵素を指す。「シアリダーゼ」という用語は、エンドソーム−リソソーム経路でガングリオシドから個々のN−アセチルノイラミン酸残基を除去する酵素シアリダーゼ2(ノイラミニダーゼ2)、シアリダーゼ3(ノイラミニダーゼ3)およびシアリダーゼ4(ノイラミニダーゼ4)、ならびにオリゴ糖および糖タンパク質から個々のN−アセチルノイラミン酸残基を除去するシアリダーゼ1を含む。ガングリオシド上のN−アセチルノイラミン酸残基は、Aβ結合親和性を増大させ、β−シート構造を誘導する傾向を高めることが示されている。最近、APP/PSENマウス(APPswe+PSEN1ΔE9)でジシアロガングリオシドシンターゼ(GD3S)をノックアウトすると、Aβの蓄積とその後のAPP/PSENマウスに特有の記憶障害の発症の両方が抑制されることが報告された。Bernardo,et al.,Neurobiology of Aging.In Press,Corrected Proof,“Elimination of GD3 synthase improves memory and reduces amyloid−[beta] plaque load in transgenic mice.”GD3Sは、α−2,8結合を介してシアル酸とシアル酸を連結し、b系列およびc系列のガングリオシド(表3)の合成に必要とされる。これらの結果は、ガングリオシド上のシアル酸含有量を減少させることが、ADを治療する上で有益であり得ることを示唆している。
【0122】
リソソーム酵素「β−ガラクトシダーゼ」は、アシアロガングリオシドおよびシアロガングリオシドの非還元末端からβ1,3−ガラクトースを除去するエキソヒドロラーゼである。β−ガラクトシダーゼGLB1をコードする遺伝子の突然変異は、β−ガラクトシダーゼ活性の欠損ならびにGA1およびGM1ガングリオシドの蓄積が原因で生じるリソソーム貯蔵障害のGM1ガングリオシドーシスを引き起こす。Beutler,E.et al.,Biol.Chem.247(22):7195−200(1972)。GM1ガングリオシドは、細胞培養物でのAβの生成および会合を促進するマイクロドメインの主要構成要素であり、GM1(GAβ)に結合したAβは、AD病理の初期段階を示す脳に見出されている。
【0123】
リソソーム酵素β−ヘキソサミニダーゼAおよびBは、アシアロガングリオシドおよびシアロガングリオシドの非還元末端からβ結合N−アセチルガラクトサミン(GalNAc)を加水分解する。GM1ガングリオシドが最も注目を集めているが、他のa系列ガングリオシド(GD1A、GM2およびGM3)もインビトロでAβに結合し、その会合を促進する。
【0124】
β−ヘキソサミニダーゼの2つのアイソザイム、HEXAおよびHEXBが存在する。HEXAがα−サブユニットとβ−サブユニット(αβ)からなるのに対し、HEXBは2つのβ−サブユニット(ββ)からなる。HEXAは、HEXAのα−サブユニットをコードし、HEXBはHEXAおよびHEXBのβ−サブユニットをコードする。HEXAの突然変異は、HEXA活性の欠損およびGM2の蓄積が原因で生じるリソソーム貯蔵障害のテイ・サックス病を引き起こす。HEXBの突然変異は、HEXAおよびHEXB活性の欠損ならびにGM2およびGA2の蓄積が原因で生じるリソソーム貯蔵障害のサンドホフ病を引き起こす。
【0125】
β−ガラクトシダーゼ活性が欠損したマウス(GLB1 KO)およびβ−ヘキソサミニダーゼ活性が欠損したマウス(HEXB KO)は、脳全体のニューロンにガングリオシドを蓄積する。pThr231−タウと特異的mAbとの免疫反応性の蓄積、およびβ−ヘキソサミニダーゼ欠損マウスにおける、マウスAβエピトープに対する抗体と免疫反応性がある物質の沈着。
【0126】
HEXB KOマウスは、抗齧歯類Aβと免疫反応するアミロイド様沈着の存在を明らかにした。同様の免疫反応性はNEU1 KOマウスの脳全体で認められたが(表3)、そのようなAβ免疫反応性沈着は、年齢をマッチさせた野生型対照マウスの脳および脊髄では見られなかった(表3)。HEXB KOマウスもまた、脳および脊髄全体で、Thr231でリン酸化されたタウに特異的な抗血清AT180との免疫反応性の増大を示した。顕著なAT180免疫反応性は、年齢をマッチさせた野生型マウスの脳または脊髄では認められなかった。P(Thr231)−タウ蓄積、sAPPαの減少、ならびにsAPPβおよびAβ分泌の増加は、サンドホフ病患者に由来する線維芽細胞でも認められ(図3)、β−ヘキソサミニダーゼ活性の欠陥が、インビボとインビトロの両方でAPPプロセッシングおよびタウリン酸化の変化をもたらし得ることが示された。
【0127】
表3.ノイラミニダーゼ1またはβ−ヘキソサミニダーゼが欠損したマウスの脳でのスフィンゴ糖脂質およびタンパク質の一次的および二次的蓄積。免疫反応性は年齢をマッチさせた対照では検出されなかった。
【0128】
【表15】

【0129】
表3にまとめたデータの作成方法:4カ月齢のHEXB−/−マウスおよび年齢をマッチさせた対照の脳をパラフィンブロックに包埋し、5μmのスライス厚にして冠状面で連続的に切断した。4カ月齢のNEU1−/−および年齢をマッチさせた対照マウスに生理的(0.9%)食塩水を経心的に灌流させ、脳を速やかに摘出し、半分に切断した。全てのマウスの右半球を新たに作製した4%パラホルムアルデヒド/PBS(pH7.4)にて室温で1時間浸漬固定した。次に、凍結保護を保証するために、脳をPBS溶液中の15%スクロースに24時間移した。翌日、脳を液体イソペンタン中で凍結させ、組織学的検査に使用するまで−80℃で保存した。組織学的検査用に右半球を選び、5つの異なる矢状層から得られる脳半球当たり5つのスライスを凍結切断し、免疫組織化学的に染色した。抗齧歯類Aβ(Abcam(登録商標)、ab14220)または抗pThr231−タウ(Thermo Scientific、AT180)(HistoGreen(Linaris(登録商標)を用いて発色させる)を用いたIHCの後に、アミロイド様およびpThr231−タウ様免疫反応性を定性的に評価した。齧歯類アミロイド検出スライスを、スチーマーにて95℃で15分間、クエン酸塩バッファーで前処理して、抗原を脱マスキング(demask)し、その後、1:500のポリクローナルウサギ抗β−アミロイド一次(Abcam(登録商標)、ab14220)とともに室温で1時間インキュベートし、次に、ビオチン化ウサギIgG検出抗体を用いて標的化した後、HistoGreen(Linaris(登録商標))で発色させた。PHF−TAU(AT180)の検出のために、パラフィンスライスを、スチーマーにて95℃で15分間、クエン酸塩バッファーで前処理して、抗原を脱マスキングし、その後、抗ヒトPHF−タウモノクローナル抗体(MOM希釈剤;Pierce Endogen(登録商標)、カタログ番号MN1040に1:100希釈)とともに室温で1時間インキュベートし、次に、ビオチン化マウスIgG検出抗体を用いて標的化した後、HistoGreen(Linaris(登録商標))で発色させた。クエン酸塩バッファーによる凍結切断スライスの前処理は省略した。
【0130】
【表16】

【0131】
本明細書で使用する場合、「特異的に結合する」という用語は、薬理シャペロンと、ガングリオシダーゼおよび/もしくはシアリダーゼ、またはグルコセレブロシダーゼとの相互作用、特に、薬理シャペロンと接触するときに直接関与する、ガングリオシダーゼおよび/もしくはシアリダーゼ、またはグルコセレブロシダーゼのアミノ酸残基との相互作用を指す。薬理シャペロンは、標的タンパク質、例えば、β−ヘキソサミニダーゼBと特異的に結合して、この酵素に対するシャペロン効果を発揮し、かつ関連タンパク質または無関係なタンパク質の一般群に対するシャペロン効果を発揮しない。任意の所与の薬理シャペロンと相互作用するβ−ヘキソサミニダーゼのアミノ酸残基は、タンパク質の「活性部位」にある場合もあるし、タンパク質の「活性部位」にない場合もある。特異的結合は、ルーチンの結合アッセイ(例えば、阻害、熱安定性)によって、または構造研究、例えば、共結晶化、NMRなどによって評価することができる。
【0132】
本明細書で使用する場合、「安定性を増強する」または「安定性を増大させる」という用語は、インビトロで、または薬理シャペロンと接触していないガングリオシダーゼおよび/もしくはシアリダーゼ(好ましくは、例えば、それより前の同じ細胞型または同じ細胞のもの)、もしくはグルコセレブロシダーゼと比べて、ガングリオシダーゼおよび/もしくはシアリダーゼ、もしくはグルコセレブロシダーゼに特異的な薬理シャペロンと接触した細胞内で、不可逆的な不活化に対する酵素耐性を増大させることを指す。タンパク質安定性を増大させると、ERでのタンパク質の半減期およびERから輸送される機能的タンパク質の量が増大する。本発明の一態様では、野生型ガングリオシダーゼもしくはシアリダーゼ、またはグルコセレブロシダーゼの安定性を増強するかまたは増大させる。本発明の別の態様では、突然変異体ガングリオシダーゼもしくはシアリダーゼまたはグルコセレブロシダーゼの構造安定性を増強するかまたは増大させる。
【0133】
本明細書で使用する場合、「輸送を増強する」または「輸送を増大させる」という用語は、ガングリオシダーゼおよび/もしくはシアリダーゼまたはグルコセレブロシダーゼに特異的な薬理シャペロンと接触していない(好ましくは、例えば、それより前の同じ細胞型または同じ細胞)の細胞におけるガングリオシダーゼおよび/もしくはシアリダーゼまたはグルコセレブロシダーゼの輸送効率と比べて、1種以上のガングリオシダーゼおよび/もしくはシアリダーゼまたはグルコセレブロシダーゼに特異的な薬理シャペロンと接触した細胞の細胞質(シアリダーゼ 2)またはエンドソームおよびリソソームへのガングリオシダーゼおよび/もしくはシアリダーゼまたはグルコセレブロシダーゼの輸送効率を増大させることを指す。
【0134】
本明細書で使用する場合、「活性を増強する」または「活性を増大させる」という用語は、1種以上のガングリオシダーゼおよび/もしくはシアリダーゼまたはグルコセレブロシダーゼに特異的な薬理シャペロンと接触していない(好ましくは、例えば、それより前の同じ細胞型または同じ細胞)の細胞におけるガングリオシダーゼおよび/もしくはシアリダーゼまたはグルコセレブロシダーゼの活性と比べて、1種以上のガングリオシダーゼおよび/もしくはシアリダーゼまたはグルコセレブロシダーゼに特異的な薬理シャペロンと接触した細胞における、本明細書に記載されているような、ガングリオシダーゼおよび/もしくはシアリダーゼまたはグルコセレブロシダーゼの活性を増大させることを指す。本発明の薬理シャペロンは、細胞内の酵素の総量を増大させることによって、および/または酵素の比活性を増大させることによって酵素活性を増大させることもできる。
【0135】
「比活性」という用語は、酵素が、単位時間で、酵素調製中のタンパク質1ミリグラム当たりに変換する基質の量を指す。
【0136】
本明細書で使用する場合、「レベルを増強する」または「レベルを増大させる」という用語は、1種以上のガングリオシダーゼおよび/もしくはシアリダーゼまたはグルコセレブロシダーゼに特異的な薬理シャペロンと接触していない(好ましくは、例えば、それより前の同じ細胞型または同じ細胞)の細胞におけるガングリオシダーゼおよび/もしくはシアリダーゼまたはグルコセレブロシダーゼのレベルと比べて、1種以上のガングリオシダーゼおよび/もしくはシアリダーゼまたはグルコセレブロシダーゼに特異的な薬理シャペロンと接触した細胞における1種以上のガングリオシダーゼおよび/もしくはシアリダーゼまたはグルコセレブロシダーゼのレベルを増大させることを指す。
【0137】
「適切な構造を安定化する」という用語は、その意図される機能を果たす野生型ガングリオシダーゼおよび/もしくはシアリダーゼまたはグルコセレブロシダーゼの構造と機能的に同一の突然変異型または野生型ガングリオシダーゼおよび/もしくはシアリダーゼまたはグルコセレブロシダーゼ酵素の構造を誘導または安定化するガングリオシダーゼおよび/もしくはシアリダーゼまたはグルコセレブロシダーゼの薬理シャペロンの能力を指す。
【0138】
「機能的に同一の」という用語は、構造にわずかなばらつきはあり得るが(ほとんど全てのタンパク質はその生理的状態において若干の構造的柔軟性を示す)、構造的柔軟性が、野生型タンパク質よりも大きい程度にまたは小さい程度に、(1)タンパク質凝集、(2)小胞体関連分解経路による排除、(3)タンパク質機能の障害、例えば、APP代謝活性、および/または(4)細胞内での不適切な輸送、例えば、細胞質への局在化を生じさせないことを指す。
【0139】
「安定な分子構造」という用語は、細胞内の少なくとも一部の野生型機能を提供するかまたは野生型機能を増強する薬理シャペロンによって誘導される、タンパク質、すなわち、ガングリオシダーゼおよび/もしくはシアリダーゼまたはグルコセレブロシダーゼの構造を指す。例えば、ガングリオシダーゼおよび/もしくはシアリダーゼまたはグルコセレブロシダーゼの安定な分子構造は、ガングリオシダーゼおよび/もしくはシアリダーゼまたはグルコセレブロシダーゼが、ミスフォールドして分解されることなく、かつ/またはその意図される機能を発揮せずに終わることなく、ERを離れ、細胞質に輸送される場合の構造である。さらに、突然変異型ガングリオシダーゼおよび/もしくはシアリダーゼまたはグルコセレブロシダーゼの安定な分子構造は、完全なまたは部分的な活性を有することもできる。しかしながら、安定な分子構造が野生型タンパク質の機能的属性の全てを有する必要はない。
【0140】
「活性」という用語は、細胞内の野生型ガングリオシダーゼおよび/もしくはシアリダーゼまたはグルコセレブロシダーゼの通常の意図される生理機能を指す。例えば、ガングリオシダーゼおよび/またはシアリダーゼ活性にはガングリオシドの異化が含まれ、グルコセレブロシダーゼ活性にはスフィンゴ糖脂質グルコシルセラミドの異化が含まれる。そのような機能性は、機能性を立証することが知られている任意の手段によって試験することができる。
【0141】
「ガングリオシド異化」という用語は、シアリダーゼおよびエキソグリコヒドロラーゼによってアシアロガングリオシドおよびシアロガングリオシドの非還元末端単位から順次、個々のシアル酸および糖残基を除去して、セラミドを形成させることを指す。この分解は、細胞質に局在するシアリダーゼ2を除いて、主にエンドサイトーシス−エンドソーム−リソソーム経路を通じて起こる。
【0142】
1つの非限定的な実施形態では、ガングリオシダーゼおよび/もしくはシアリダーゼ、またはグルコセレブロシダーゼポリペプチドは、野生型ガングリオシダーゼおよび/もしくはシアリダーゼまたはグルコセレブロシダーゼをコードする核酸分子との50%、60%、70%、80%および最大100%の相同性を示す任意の核酸分子、ならびにこれらの配列に標準的な条件の下でハイブリダイズする任意の配列によってコードされていてもよい。別の非限定的な実施形態では、ERでの機能的な構造を達成し、細胞内での適切な局在化を達成し、かつ野生型活性を示す能力を有する(前述のポリペプチド配列と同じ機能特性および結合親和性を有する)ガングリオシダーゼおよび/もしくはシアリダーゼまたはグルコセレブロシダーゼポリペプチドをコードする任意の他のヌクレオチド配列、例えば、正常個体のアレル変異体。
【0143】
本明細書で使用する場合、「突然変異体」ガングリオシダーゼおよび/もしくはシアリダーゼまたはグルコセレブロシダーゼという用語は、ガングリオシダーゼおよび/もしくはシアリダーゼまたはグルコセレブロシダーゼアミノ酸配列の変化を生じさせる遺伝子突然変異を含む遺伝子から翻訳されるガングリオシダーゼおよび/もしくはシアリダーゼまたはグルコセレブロシダーゼポリペプチドを指す。一実施形態では、突然変異は、野生型ガングリオシダーゼおよび/もしくはシアリダーゼもしくはグルコセレブロシダーゼと比較したとき、ERに通常存在する条件下で本来の構造を達成しないか、または野生型ガングリオシダーゼおよび/もしくはシアリダーゼもしくはグルコセレブロシダーゼと比較したときに、安定性もしくは活性の低下を示すガングリオシダーゼおよび/もしくはシアリダーゼまたはグルコセレブロシダーゼタンパク質を生じさせる。この種の突然変異は、本明細書では「構造突然変異」呼ばれ、そのような突然変異を有するタンパク質は、「構造突然変異体」と呼ばれる。この構造の達成がうまく行かないと、ガングリオシダーゼおよび/もしくはシアリダーゼまたはグルコセレブロシダーゼタンパク質は分解されるか、または凝集し、タンパク質輸送系の通常の経路を通した、細胞内のその本来の位置へのまたは細胞外環境への輸送は行なわれない。いくつかの実施形態では、突然変異は、あまり効率的でないタンパク質発現をもたらす、ガングリオシダーゼおよび/もしくはシアリダーゼまたはグルコセレブロシダーゼをコードする遺伝子の非コード部分に生じる場合があり、これには、例えば、転写効率、スプライシング効率、mRNA安定性などに影響を及ぼす突然変異がある。ガングリオシダーゼおよび/もしくはシアリダーゼまたはグルコセレブロシダーゼの野生型および構造突然変異体変異体の発現レベルを増強することにより、ガングリオシダーゼおよび/もしくはシアリダーゼまたはグルコセレブロシダーゼの薬理シャペロンの投与は、そのような非効率なタンパク質発現に起因する欠損を改善することができる。
【0144】
ある種の試験は、その実際のインビボ活性に相当したり、相当しなかったりするが、それでもタンパク質機能性の適切な代替物となるタンパク質の属性を評価することができ、そのような試験での野生型の挙動は、本発明のタンパク質フォールディング救済または増強技術を裏付ける証拠を示す。本発明によるそのような活性の一つは、機能的ガングリオシダーゼおよび/またはシアリダーゼの、小胞体から細胞質への適切な輸送である。
【0145】
「内在性発現」および「内在性に発現される」という用語は、ガングリオシダーゼおよび/もしくはシアリダーゼまたはグルコセレブロシダーゼ欠損、ドミナントネガティブ突然変異体の過剰発現、または他の欠陥、例えば、その発現、活性、もしくは安定性を変化させる、例えば、阻害するガングリオシダーゼおよび/もしくはシアリダーゼもしくはグルコセレブロシダーゼ核酸もしくはポリペプチド配列の突然変異と関連する疾患もしくは障害を有さないかまたはそれらを有することが疑われない個体の細胞におけるガングリオシダーゼおよび/もしくはシアリダーゼまたはグルコセレブロシダーゼの通常の生理的発現を指す。この用語はまた、ガングリオシダーゼおよび/もしくはシアリダーゼまたはグルコセレブロシダーゼが健康個体で通常発現される細胞または細胞型におけるそれらの発現を指し、ガングリオシダーゼおよび/もしくはシアリダーゼまたはグルコセレブロシダーゼが健康個体で発現されない細胞または細胞型、例えば、腫瘍細胞におけるガングリオシダーゼおよび/もしくはシアリダーゼまたはグルコセレブロシダーゼの発現を含まない。
【0146】
本明細書で使用する場合、「上昇したガングリオシド」は、脳のガングリオシドレベルが増大している個体、患者または患者集団を指す。ガングリオシドレベルは、細胞全体の膜、また同様にマイクロドメイン内で上昇していてもよい。「マイクロドメイン」または「脂質ラフト」という用語は、コレステロール、スフィンゴ糖脂質およびガングリオシドが濃縮された、細胞膜に見られる洗剤耐性領域を指す。本発明の一態様では、薬理シャペロンは、脳のガングリオシドを異化することが知られている酵素の活性を増大させることによって、マイクロドメインまたは脂質ラフトのガングリオシドレベルを減少させるために用いられる。
【0147】
本明細書で使用する場合、「輸送効率」という用語は、小胞体から外に出て、細胞内、細胞膜内のその本来の位置へ、または細胞外環境へと輸送されるタンパク質の能力を指す。
【0148】
酵素の「競合的阻害剤」は、酵素基質の化学構造および分子形状が構造的に類似していて、基質とほぼ同じ部位で酵素と結合する化合物を指すことができる。したがって、この阻害剤は、基質分子と同じ活性部位を競合し、それによりKmを増大させる。競合的阻害は一般に、阻害剤を追いやるほどの十分な基質分子が利用可能な場合は可逆的である、すなわち、競合的阻害剤は可逆的に結合することができる。したがって、酵素阻害の量は、阻害剤濃度、基質濃度、および阻害剤と基質の活性部位に対する相対的親和性によって決まる。
【0149】
非古典的な競合的阻害は、阻害剤が酵素の活性部位から離れたところで結合し、基質がもはやそれに結合することができないような酵素の構造変化を起こす場合に起こる。非古典的な競合的阻害では、活性部位での基質の結合によって、離れた部位での阻害剤の結合が妨げられるし、逆もまた同様である。これには、アロステリック阻害が含まれる。
【0150】
酵素の「線形混合型阻害剤」は、基質が結合するのを可能にするが、その親和性を低下させ、その結果、Kmを増大させ、Vmaxを低下させるタイプの競合阻害剤である。
【0151】
「非競合的阻害剤」は、酵素との強い結合を形成し、過剰な基質の添加によって追いやることができない化合物を指す。すなわち、非競合的阻害剤は、不可逆的であることができる。非競合的阻害剤は、酵素またはタンパク質の活性部位、その近く、またはそこから離れた部位で結合することができ、酵素に関して、Kmに対する効果はないが、Vmaxを減少させる。非競合的阻害は、阻害剤が酵素−基質(ES)複合体だけに結合する状況を指す。酵素は阻害剤が結合すると不活性になる。これは、基質の非存在下で酵素に結合することができる非古典的競合的阻害剤とは異なる。
【0152】
「Vmax」という用語は、酵素触媒反応の最大初期速度、すなわち、飽和基質レベルでの速度を指す。「Km」という用語は、Vmaxの二分の一を達成するのに必要な基質濃度である。
【0153】
酵素「エンハンサー」は、ガングリオシダーゼおよび/またはシアリダーゼに結合し、酵素反応速度を増大させる化合物である。
【0154】
「治療有効用量」および「有効量」という用語は、適切な細胞位置で既に発現されたタンパク質を阻害することなく(アンタゴニストの場合)、または適切な細胞位置からのタンパク質のリガンド媒介性受容体内在化を誘発することなく(アゴニストの場合)、ERでの(機能的構造を可能にする)タンパク質プロセッシングを増強し、標的タンパク質の活性を増強し、それにより、対象における治療応答を生じさせるのに十分な量を指す。治療応答は、使用者(例えば、臨床医)が有効な治療応答と認識する任意の応答であることができ、これには、前述の症状および代用臨床マーカーが含まれる。したがって、治療応答は、一般に、疾患または障害、例えば、アルツハイマー病の1以上の症状の改善または阻害である。
【0155】
「医薬として許容される」という語句は、ヒトに投与したときに、生理的に耐えられ、かつ通常は有害反応を起こさない分子実体および組成物を指す。好ましくは、本明細書で使用する場合、「医薬として許容される」という用語は、連邦政府もしくは州政府の規制当局によって認可されているか、または動物、より具体的にはヒトでの使用について米国薬局方もしくは他の一般に認められている薬局方に記載されていることを意味する。「担体」という用語は、それとともに化合物を投与する希釈剤、補助剤、賦形剤、または任意のビヒクルを指す。そのような医薬担体は、例えば、水および油などの滅菌液であることができる。水または水溶液の生理食塩水溶液および水性デキストロースおよびグリセロール溶液は、特に注射溶液用の担体として利用されることが好ましい。好適な医薬担体は、E.W.Martin著、「Remington’s Pharmaceutical Sciences」、第18版、または他の版に記載されている。
【0156】
「約」および「およそ」という用語は、一般に、測定の性質または精度を考慮して、測定された量についての許容される誤差の程度を意味するものとする。通常、例示的な誤差の程度は、所与の値または値の範囲の20パーセント(%)以内、好ましくは10%以内、およびより好ましくは5%以内である。あるいは、および特に生物系では、「約」および「およそ」という用語は、所与の値の1桁以内、好ましくは5倍以内、およびより好ましくは2倍以内の値を意味することができる。本明細書に示される数量は、特に記載されない限り、近似であり、明示的に記載されていない場合に「約」または「およそ」という用語が暗示され得ることを意味する。
【0157】
本明細書で使用する場合、「単離された」という用語は、言及された材料が、それが通常見られる環境から取り除かれていることを意味する。したがって、単離された生物学的材料は、細胞成分、すなわち、その材料が見られるかまたは産生される細胞の成分を含まないことがあり得る。核酸分子の場合、単離された核酸には、PCR産物、ゲル上のmRNAバンド、cDNA、または制限断片が含まれる。別の実施形態では、単離された核酸は、それが見られる染色体から切り出されていることが好ましく、かつ染色体に見られるとき、単離された核酸分子によって含まれる遺伝子の上流または下流に位置する、非調節性、非コード領域、または他の遺伝子に、もはや接続していないことがより好ましい。また別の実施形態では、単離された核酸は、1以上のイントロンを欠く。単離された核酸には、プラスミド、コスミド、人工染色体などに挿入された配列が含まれる。したがって、特定の実施形態では、組換え核酸は単離された核酸である。単離されたタンパク質は、それが細胞内で会合している他のタンパク質もしくは核酸、もしくは両方と、またはそれが膜結合型タンパク質である場合、細胞膜と会合していてもよい。単離されたオルガネラ、細胞、または組織は、生物内でそれが見られる解剖学的部位から取り除かれている。単離された材料は、精製されていてもよいが、そうである必要はない。
【0158】
本明細書で使用される「精製された」という用語は、無関係な材料、すなわち、夾雑物を減少させるかまたは排除する条件下で単離されたガングリオシダーゼおよび/またはシアリダーゼの核酸またはポリペプチドなどの材料を指す。例えば、精製されたタンパク質は、それが細胞内で会合している他のタンパク質または核酸を実質的に含まないことが好ましい。本明細書で使用する場合、「実質的に含まない」という用語は、材料の分析的実験の文脈で、操作上用いられる。好ましくは、夾雑物を実質的に含まない精製された材料は、少なくとも50%純粋であり、より好ましくは、少なくとも90%純粋であり、より好ましくは、さらに少なくとも99%純粋である。純度は、従来の手段、例えば、クロマトグラフィー、ゲル電気泳動法、イムノアッセイ、組成分析、生物学的アッセイ、および当技術分野で公知の他の方法によって評価することができる。
【0159】
「タウオパシー」という用語は、ヒトの脳で神経原線維のもつれ(NFT)を形成させるタウタンパク質の病的凝集によって生じる任意の状態を指し、これには、(限定するものではないが)前頭側頭認知症、アルツハイマー病、進行性核上麻痺、大脳皮質基底核変性症および前頭側頭葉変性症(ピック病)などの疾患が含まれる。
【0160】
「アルツハイマー病」または「AD」という用語は、緩徐進行性認知症や肉眼的皮質性小脳萎縮症を特徴とする状態を指す。β−アミロイド老人斑、ニューロン内の神経原線維のもつれ、およびアミロイド血管症の存在は、ADの顕著な特徴であり、死体の検死時に観察される。ADは、家族性発現する遺伝性のものである場合もあるし、孤発性のものである場合もある。本明細書では、ADは、表現型発現に基づいて、家族性、孤発性、ならびにそれらの中間およびサブグループを含む。家族性ADが一般に早発性(65歳より前)であるのに対し、孤発性ADは一般に遅発性(65歳以降)である。非限定的な実施形態では、家族性ADは、プレセニリン1(ヒトプレセニリン1、ジェンバンク受託番号NM_000021、NM_007318、およびNM_007319;マウスプレセニリン1、ジェンバンク受託番号NM_008943;ならびにラットプレセニリン1、ジェンバンク受託番号NM_019163)、プレセニリン2(ヒトプレセニリン2、ジェンバンク受託番号NM_000447、およびNM_012486;マウスプレセニリン2、ジェンバンク受託番号NM_011183;ならびにラットプレセニリン2、ジェンバンク受託番号NM_031087)、およびアミロイド前駆体タンパク質(APP)(ヒトAPP、ジェンバンク受託番号NM_201414、NM_201413、およびNM_000484;マウスAPP、ジェンバンク受託番号NM_007471;ならびにラットAPP、ジェンバンク受託番号NM_019288)を含む群から選択される1以上の遺伝子の突然変異と関連することができる。孤発性ADは、直接試験することはできないが、特定のリスク因子が、孤発性ADの発症に対する個体の感受性を増大させる可能性がある。1つの非限定的な実施形態では、アポリポタンパク質E(APOE)(ヒトAPOE、ジェンバンク受託番号NM_000041;マウスAPOE、ジェンバンク受託番号NM_009696;およびラットAPOE、ジェンバンク受託番号NM_138828)の少なくとも1コピーのe4アレルを有する個体は、遅発性の孤発性ADを発症するリスクがある。
【0161】
この用語は、21トリソミー、すなわち、ダウン症(DS)を有し、アルツハイマー病(AD)の特徴的病変である、脳アミロイド(Aβ)斑および神経原線維のもつれ(NFT)をはじめとする、ADの臨床的および神経病理学的な特徴と同一の認知症を(20代または30代で)発症する個体も含む。最近の研究により、Aβ42は、ダウン症脳に沈着するこのタンパク質の最初期の形態であり、12歳ぐらいの対象に見ることができること、および可溶性Aβは、Aβ斑の形成のずっと前、早くも妊娠21週にはDS対象の脳で検出することができることが示されている。Gyure et al.,Archives of Pathology and Laboratory Medicine 125:489−492(2000)。
【0162】
本発明の目的のために、「神経学的障害」は、アミロイド前駆体タンパク質のβ−アミロイド原性プロセッシングと関連する任意の中枢神経系(CNS)または末梢神経系(PNS)疾患を指す。これは、ニューロンの損失、ニューロンの変性、ニューロンの脱髄、グリオーシス(すなわち、アストログリオーシス)、またはニューロンもしくはニューロン外への異常タンパク質もしくは毒素(例えば、アミロイド−β)の蓄積を含むが、これらに限定されない、ニューロンまたはグリア細胞の欠陥を引き起こすことができる。
【0163】
1つの例示的な神経学的障害は、コンゴーレッド親和性血管障害とも呼ばれる脳アミロイド血管症(CAA)である。この障害は、アルツハイマー病に関連するのと同じアミロイドタンパク質であるアミロイド−β(Aβ)が、脳の軟髄膜および浅大脳皮質血管の壁に沈着する血管障害の形態である。アミロイド沈着によって、これらの血管に障害が生じやすくなり、出血性脳卒中のリスクが増大する。それは、アルツハイマー病の認知症に関連するのと同じアミロイドタンパク質であるので、そのような脳出血は、アルツハイマー病に罹患している人に多く見られるが、これは、認知症の既往歴のない人にも起こることがある。脳内の出血は、通常、特定の葉に限定され、これは、出血性脳卒中(または脳出血)のより一般的な原因である高血圧(高血圧症)の結果として起こる脳出血と比較すると、若干異なっている。CAAは、一過性脳虚血発作、くも膜下出血、ダウン症、照射後壊死、多発性硬化症、白質脳症、海綿状脳症、およびボクサー認知症とも関連する。
【0164】
「個体」、「患者」または「患者集団」という用語は、アルツハイマー病を有するか、またはアルツハイマー病を発症するリスクがあると診断された人を指す。例えば、個体は、家族性ADであるか、またはそれを発症するリスクがあると診断される。別の例では、個体は、孤発性ADを有するか、またはそれを発症するリスクがあると診断される。ADの診断は、個体が示す遺伝型または表現型の特徴に基づいて行なうことができる。例えば、プレセニリン1、プレセニリン2、またはAPPの突然変異体変異体を有する個体は、家族性ADを発症するリスクがある。別の非限定的な例では、APOEのE4変異体を有する個体は、孤発性ADを発症するリスクがある。
【0165】
個体は、ADと関連する表現型を示すことによって、ADを有するか、またはADを発症するリスクがあると診断され得る。ADと関連する表現型は、認知に関するものであっても、精神医学的なものであってもよい。認知に関する表現型の例としては、記憶喪失、失語、失行および失認が挙げられるが、これらに限定されない。精神医学的症状の例としては、人格変化、鬱状態、幻覚および妄想が挙げられるが、これらに限定されない。1つの非限定的な例として、Diagnostic and Statistical Manual of Mental disorders,第4版(DSM−IV−TR)(American Psychiatric Associationにより出版)は、アルツハイマー病型の認知症に関する以下の基準の組を含んでいる:
A.複数の認知障害の発症が、記憶障害と失語、失行、失認および実行機能障害の1つまたは複数の両方によって明らかになること;
B.認知障害が、病前の機能からの低下を示し、社会的または職業的機能の著しい障害を引き起こすこと;
C.その経過が、緩やかな発症と持続的な低下を特徴とすること;
D.認知障害が、記憶や認知に進行性の障害を引き起こす他の中枢神経系疾患、全身性疾患、または物質誘発性の疾患によるものでないこと;および
E.障害が、別の精神障害ではうまく説明されないこと。
【0166】
別の非限定的な例は、以下のような、アルツハイマー病に関する国立神経障害・脳卒中研究所−アルツハイマー病・関連障害協会(The National Institute of Neurological and Communicative Disorders and Stroke−Alzheimer’s Disease and Related Disorder Association)(NINDS−ADRDA)基準である:
A.確実なアルツハイマー病:ほぼ確実なアルツハイマー病の基準を満たし、剖検または生検によるアルツハイマー病の組織病理学的な証拠がある
B.ほぼ確実なアルツハイマー病:臨床的および神経心理学的検査で確認され、かつ以下を含む認知症
(a)記憶を含む認知の2以上の領域で進行性の障害がある
(b)40〜90歳で発症する
(c)せん妄を含む認知症症候群を生じさせることができる全身疾患または他の脳疾患が存在しない
C.疑いのあるアルツハイマー病:発症、提示、または進行が非定型であり、原因が不明の認知症症候群;認知症を生じさせることができる任意の合併疾患が原因であるとは考えられない
D.可能性の低いアルツハイマー病:以下のいずれかを有する認知症症候群:突然発症、局所的な神経学的兆候、または病気の早い段階での発作もしくは歩行困難。
【0167】
ADの表現型発現は、例えば、アミロイド−β斑の直接的(イメージング)検出または間接的(生化学的)検出による、物理的なものであることもできる。末梢血中のアミロイド−β(1−40)の定量は、線形イオントラップタンデム質量分析法と併用する高速液体クロマトグラフィーを用いて実証されている(Du et al.,J Biomol Tech.16(4):356−63(2005)。蛍光相関分光法によるアルツハイマー病患者の脳脊髄液中での単一のβ−アミロイドタンパク質凝集の検出も記載されている(Pitschke et al.,Nature Medicine 4:832−834(1998)。米国特許第5,593,846号明細書には、可溶性アミロイド−βを検出するための方法が記載されている。抗体を用いるアミロイド−βペプチドおよび終末糖化産物受容体(RAGE)の間接的な検出も記載されている。最近、発色性基質を用いた脳脊髄液中のBACE−1活性の増大の生化学的検出も、ADの診断または予後指標であると仮定されている(Verheijen et al.,Clin Chem.Apr 13[Epub.](2006)。
【0168】
β−アミロイドのインビボイメージングは、放射性ヨウ素標識フラボン誘導体を造影剤として用いて(Ono et al.,J Med Chem.48(23):7253−60(2005))、および(125I−PUT−A 1−40を生じる)40残基の放射性ヨウ素標識Aペプチドにコンジュゲートされたプトレセイン(これは、血液脳関門を越えて、αβ斑に結合することが示された)などのアミロイド結合色素を用いて達成することができる(Wengenack et al.,Nature Biotechnology.18(8):868−72(2000))。β−アミロイドのイメージングは、スチルベンSB−13および(PIBとしても知られる)ベンゾチアゾール6−OH−BTA−1を用いても示された。Nicholaas et al.,Am J Geriatr Psychiatry,12:584−595(2004)。
【実施例】
【0169】
図1は、APPのプロセッシングを表し、成熟APPが、sAPPαおよびC83を生成させるα−セクレターゼ経路(左)ならびにsAPPβおよびC99を生成させるβ−セクレターゼ経路(右)という2つの競合する経路によってどのように代謝されるかを示している。カルボキシ末端断片のC83およびC99は、APP細胞内ドメイン(AICD)ならびに分泌ペプチドp3(左)およびAβ(右)を生成させるγ−セクレターゼの基質である。Aβペプチドは、オリゴマー化し、斑を形成し、タウ過剰リン酸化を促進することができるのに対し、sAPPαは、神経突起伸長、シナプス形成を促進し、CDK5活性化と関連するタウ過剰リン酸化を抑制する。
【0170】
図2に示すデータは以下のように作成された。HEXB+/+マウス(約4.5カ月齢)、HEXB+/−マウス(約4.5カ月齢)およびHEXB−/−マウス(約4.5カ月齢)由来の脳組織を細かく刻み、10×容量(1ml/100mg組織)の冷たい組織ホモジナイゼーションバッファー(THB:250mMのスクロース、50mMのTris pH7.5、1mMのEDTA+プロテアーゼ阻害剤)とともに混合した。次に、脳組織をローターステーターホモジナイザーを用いてホモジナイズした。脳ホモジネートをきれいな超遠心分離チューブに移し、予め冷却したRP70−ATローターに入れ、50,000rpm(約100,000g)にて4℃で1時間遠心分離した。可溶性画分(上清)を、22C11抗体(Millipore)を用いるイムノブロットによってsAPPのレベルを決定するために用いた。Aβ40およびAβ42レベルの測定のために、可溶性画分(上清)をジエチルアミン(DEA)で抽出した。DEAホモジネートを50,000rpm(約100,000g)にて4℃で1時間遠心分離し、0.1×容量の0.5MのTris pH7を添加して、上清を中和した。次に、中和したDEA抽出物をELISAキット(Wako)によるAβ40およびAβ42レベルの測定に用いた。膜画分を得るために、RIPAバッファー(1%のTX100、0.5%のタウロデオキシコレート、および0.1%のSDSを含むTBS+プロテアーゼ阻害剤)を超遠心分離チューブ中の膜ペレットに添加した。膜を氷上で30分間インキュベートしてRIPAバッファー中で可溶化した。RIPAで可溶化した膜を25,000rpmにて4℃で15分間の遠心分離によって得た。APP、α−CTFおよびβ−CTFのレベルを決定するために、膜画分をポリクローナルAPP−CT抗体(Covance)を用いてイムノブロットした。タウレベルの解析のために、膜画分を上記のように調製し、p−タウ(Thr231)のレベルを決定するためにAT180抗体(Thermo Scientific)を用い、p−タウ(Ser 202)のレベルを決定するためにAT8抗体(Thermo Scientific)を用い、総タウのレベルを決定するために総タウ抗体(Thermo Scientific)を用いてイムノブロットした。膜画分中のp−タウ(Thr181)のレベルは、製造元の奨励するプロトコルに従ってELISA(Invitrogen)アッセイを行なうことにより決定した。組織学的解析のために、HEXB KOマウス由来の脳の皮質をパラフィンブロックに包埋した。Aβ42を特異的に認識する抗体FC3542(Calbiochem)を用いるかまたはp−タウ(Thr202)を特異的に認識するAT8抗体(Thermo Scientific)を用いるIHCの後に、アミロイドおよびpThr231−タウ様免疫反応性を定性的に評価した。
【0171】
図2に示すように、サンドホフHEXBノックアウトマウス(HEXB−/−)およびサンドホフHEXBヘテロ接合マウス(HEXB+/−)は、アミロイド前駆体タンパク質(APP)由来のC末端断片(CTF)およびAβペプチドを蓄積し、リン酸化タウのレベルが増大している。図2A)は、ウェスタンブロットの正規化したデンシトメトリーにより、4カ月齢のHEXB−/−およびHEXB+/−マウス(n=4)由来の全脳ホモジネートにおけるCTFおよびAβレベルの増大が示されることを表す。図2B)は、組織学的解析により、HEXB−/−マウスの皮質におけるニューロン内Aβ42の蓄積が示されることを示す。図2C)は、ELISA(p−タウ[Thr181])とウェスタンブロット(p−タウ[Thr231]およびp−タウ[Ser202]、総タウ)の正規化したデンシトメトリーとにより、年齢をマッチさせたHEXB+/+マウスと比べて、HEXB−/−およびHEXB+/−マウスにおけるp−タウレベルの上昇は示されるが、総タウレベルに有意差が示されないことを表す。図2D)は、組織学的解析により、HEXB−/−マウスの髄質および脊髄におけるp−タウ(202)の蓄積(データは示さない)が示されることを示す。
【0172】
図3に示すデータは以下のように作成された。野生型(健康)線維芽細胞株(CRL2076;Coriell)およびサンドホフ患者由来の線維芽細胞株(GM11707;Coriell)をDMEM(+10%FBS)増殖培地中で一晩培養し、その後、無血清培地中で一晩インキュベートした。分泌タンパク質を増殖培地のTCA沈殿(12.5%)により回収し、6E10抗体(Covance)を用いるイムノブロッティングにより解析して、sAPPαのレベルを決定した。分泌されたsAPPβのレベルを決定するために、線維芽細胞(CRL2076&GM11707)をDMEM(+10%FBS)増殖培地中で5日間培養し、その後、APP(1G6;Covance)に対するビオチン化モノクローナル抗体を用いて免疫沈降し、sAPPβ(Covance)に対する親和性精製したポリクローナル抗体を用いてイムノブロットした。培地中に分泌されたAβ40のレベルを測定するために、線維芽細胞(CRL2076&GM11707)をDMEM(+10%FBS)増殖培地中で一晩培養し(3ウェル/試料;1ml培地/ウェル)、その後、無血清培地中で一晩インキュベートした。3ウェル/試料を合わせ、0.3mlのメタノール、30μlの10%TFA(トリフルオロ酢酸)と混合した。Sepak C18カラム(Waters)を用いて試料を予め濃縮し、その後、ELISAアッセイ(Covance)で用いて、Aβ40のレベルを決定した。全長APPのレベルを決定するために、線維芽細胞(CRL2076&GM11707)をDMEM(+10%FBS)増殖培地中で一晩培養した。細胞を剥離し、遠心分離で回収し、細胞ペレットをRIPAバッファー(1%のTX100、0.5%のタウロデオキシコレート、および0.1%のSDSを含むTBS+プロテアーゼ阻害剤)を用いて可溶化した。細胞ライセートをAPP−CT抗体(Covance)を用いてイムノブロットして、全長APPのレベルを決定した。ADAM10のレベルを決定するために、線維芽細胞(CRL2076&GM11707)をDMEM(+10%FBS)増殖培地中で一晩培養した。細胞を剥離し、遠心分離で回収し、細胞ペレットをRIPAバッファー(1%のTX100、0.5%のタウロデオキシコレート、および0.1%のSDSを含むTBS+プロテアーゼ阻害剤)を用いて可溶化した。細胞ライセートをADAM10に特異的なウサギポリクローナル抗体(Abcam)を用いてイムノブロットした。BACE1のレベルを決定するために、線維芽細胞(CRL2076&GM11707)をDMEM(+10%FBS)増殖培地中で一晩培養した。細胞を剥離し、遠心分離で回収し、細胞ペレットをRIPAバッファー(1%のTX100、0.5%のタウロデオキシコレート、および0.1%のSDSを含むTBS+プロテアーゼ阻害剤)を用いて可溶化した。細胞ライセートをBACE1に特異的なウサギポリクローナル抗体(Abcam)を用いてイムノブロットした。pThr231−タウのレベルを決定するために、線維芽細胞(CRL2076&GM11707)をDMEM(+10%FBS)増殖培地中で一晩培養した。細胞を剥離し、遠心分離で回収し、細胞ペレットをRIPAバッファー(1%のTX100、0.5%のタウロデオキシコレート、および0.1%のSDSを含むTBS+プロテアーゼ阻害剤)を用いて可溶化した。細胞ライセートをpThr231−タウに特異的なマウスモノクローナル抗体(AT180;Thermo Scientific)を用いてイムノブロットした。健康な線維芽細胞(CRL2076;Coriell)を0、100または1000μMのN−ブチル−デオキシガラクトノジリマイシン(NB−DGJ)で5日間処理し、その後、無血清培地中で一晩インキュベートした。分泌タンパク質を増殖培地のTCA沈殿(12.5%)により回収し、6E10抗体(Covance)を用いるイムノブロッティングにより解析して、sAPPαのレベルを決定した。
【0173】
図3に示すように、サンドホフ患者由来の線維芽細胞は、対照線維芽細胞と比較してより多くのsAPPβおよびAβと、より少ないsAPPαとを分泌し、かつタウ過剰リン酸化を示す。以下の抗体:sAPPαおよび全長APPの検出用の6E10;全長APPの検出用のAPP(CT)ポリクローナル(ProSci Inc.);ウサギポリクローナル抗ADAM10(Calbiochem);ウサギポリクローナル抗BACE1(Abcam、ab23796);pThr231−タウに特異的なmAbであるAT180(Thermo Scientific);ならびにヒトタウに特異的なmAbであるHT7(Thermo Scientific)を用いた、健康対照およびサンドホフ患者に由来する線維芽細胞におけるsAPPα(A)、sAPPβ(B)、Aβ(C)、ADAM10(D)、BACE1(E)、全長APP(F)およびpThr231−タウ(G)のレベルを比較するウェスタンブロット。薬理シャペロンのN−ブチル−デオキシガラクトノジリマイシンによるサンドホフ線維芽細胞(5日)の処理は、sAPPαの産生を35〜40%増大させ(H)、ガングリオシドレベルの低下が、正常なAPPプロセッシングを少なくとも一部回復させることができることを示している。サンドホフ線維芽細胞は、対照線維芽細胞と比較してより少ないsAPPαを培地中に分泌したが、ADAM10およびBACE1レベルは対照と同様であった。線維芽細胞を無血清DMEM中で20時間増殖させ、C18 Sep−Pakカラム(Waters,Inc.)を用いて濃縮した後、上清Aβ40の濃度をELISA(Covance BetaMark x−40)で測定した。Aβ40の濃度を、上清が得られた線維芽細胞ライセート由来の総タンパク質に対して正規化する(BCA,Pierce)。
【0174】
図4に示すデータは以下のように作成された。N2Aマウス神経芽細胞腫を化合物なしまたは10μMのAdDNJ、10μMのNGTもしくは10μMのDGJのいずれかで3日間処理した。細胞を剥離し、遠心分離で回収し、細胞ペレットをRIPAバッファー(1%のTX100、0.5%のタウロデオキシコレート、および0.1%のSDSを含むTBS+プロテアーゼ阻害剤)を用いて可溶化した。細胞ライセートをHexBに特異的なウサギポリクローナル抗体(Abcam)を用いてイムノブロットした。sAPPαのレベルを、22C11抗体(Millipore)を用いて、増殖培地のごく一部(30μl)をイムノブロットすることにより決定した。
【0175】
図4に示すように、β−ヘキソサミニダーゼ(β−Hex)標的化薬理シャペロンのN−アセチル−グルコサミン−チアゾリン(NGT)および2−アセトアミド−1,2−ジデオキシノジリマイシン(AdDNJ)は、野生型β−Hexの細胞レベルを増大させ、かつ神経栄養性sAPPαの切断を増大させる。図4A)10μMのNGTおよびAdDNJによるN2Aマウス神経芽細胞腫の処理は、野生型β−Hexの細胞レベルを増大させたが、酸α−ガラクトシダーゼというリソソーム酵素の薬理シャペロンであるデオキシガラクトノジリマイシン(DGJ)は、β−Hexレベルに影響がなかった。図4B)10μMのNGTおよびAdDNJによるN2Aマウス神経芽細胞腫の処理は、神経栄養性sAPPαの切断も増大させた。
【0176】
図5に示すデータは以下のように作成された。用量応答研究のために、C57BL6マウスを0、3mg/Kg、10mg/Kg、30mg/Kg、100mg/Kgまたは300mg/KgのNGT(飲用水)で7日間処置した。投与後、マウスを屠殺し、酵素活性測定用に脳組織を回収した。脳組織をスライスして20〜30mgのアリコートにし、各アリコートを溶解バッファー(82.4mMの第二リン酸ナトリウム、58.8mMのクエン酸、0.25%のタウロコール酸ナトリウム塩水和物、0.5%のTX−100)中でホモジナイズした。脳組織ホモジネートを25,000rpmにて4℃で15分間遠心分離した。得られた上清(脳ライセート)は、蛍光基質4−メチルウンベリフェリルN−アセチル−β−D−グルコサミニド(Sigma)を用いて、総β−ヘキソサミニダーゼ活性を測定するために用いた。ウォッシュアウト研究のために、C57BL6マウスを100mg/KgのNGT(飲用水)で7日間処置し、その後、1、2、3、5および7日のウォッシュアウト(薬物投与なし)を置いた。ウォッシュアウト段階の後、マウスを屠殺し、酵素活性測定のために脳組織を回収した。脳組織をスライスして20〜30mgのアリコートにし、各アリコートを溶解バッファー(82.4mMの第二リン酸ナトリウム、58.8mMのクエン酸、0.25%のタウロコール酸ナトリウム塩水和物、0.5%のTX−100)中でホモジナイズした。脳組織ホモジネートを25,000rpmにて4℃で15分間遠心分離した。得られた上清(脳ライセート)は、蛍光基質4−メチルウンベリフェリルN−アセチル−β−D−グルコサミニド(Sigma)を用いて、総β−ヘキソサミニダーゼ活性を測定するために用いた。NGTの脳および血漿レベルをLC−MSMSで測定した。
【0177】
図5に示すように、薬理シャペロンのN−アセチル−グルコサミン−チアゾリン(NGT)は、C57BL6マウスで野生型の内在性β−ヘキソサミニダーゼ活性を選択的に増大させる。シャペロンのN−アセチル−グルコサミン−チアゾリンは経口的に利用可能であり、脳を透過し、C57BL6マウスの脳で内在性β−ヘキソサミニダーゼ活性を選択的に増大させる。NGT処置(A)は、C57BL6の脳で野生型β−ヘキソサミニダーゼ活性の用量依存的増加を示し、β−ヘキソサミニダーゼ活性は、薬物を中止した後、最大1週間、未処置レベルを超えて上昇し続けた(B)。3、10、30、100または300mg/kgのN−アセチル−グルコサミン−チアゾリンの不断投与後の血漿レベル(C)および脳レベル(D)。
【0178】
図6に示すデータは以下のように作成された。NGTを飲用水を介して野生型C57BL6マウスに30および100mg/Kgで毎日投与した。2日目、4日目、6日目、8日目および15日目(それぞれ、1日間、3日間、5日間、7日間および14日間の投与に相当する)に動物を屠殺した。このタイムコース実験の各時点について、NGTが投与されないマウスの群(未処置対照)もあった。投与後、マウスを屠殺し、酵素活性測定用に脳組織を回収した。脳組織をスライスして20〜30mgのアリコートにし、各アリコートを溶解バッファー(82.4mMの第二リン酸ナトリウム、58.8mMのクエン酸、0.25%のタウロコール酸ナトリウム塩水和物、0.5%のTX−100)中でホモジナイズした。脳組織ホモジネートを25,000rpmにて4℃で15分間遠心分離した。得られた上清(脳ライセート)は、蛍光基質4−メチルウンベリフェリルN−アセチル−β−D−グルコサミニド(Sigma)を用いて、総β−ヘキソサミニダーゼ活性を測定するために用いた。タイムコース実験からの脳試料中のsAPPのレベルを決定するために、40〜50mgの脳組織を細かく刻み、10×容量(1ml/100mg組織)の冷たい組織ホモジナイゼーションバッファー(THB:250mMのスクロース、50mMのTris pH7.5、1mMのEDTA+プロテアーゼ阻害剤)とともに混合した。次に、脳組織をローターステーターホモジナイザーを用いてホモジナイズした。脳ホモジネートをきれいな超遠心分離チューブに移し、予め冷却したRP70−ATローターに入れ、50,000rpm(約100,000g)にて4℃で1時間遠心分離した。可溶性画分(上清)を、22C11抗体(Millipore)を用いるイムノブロットによってsAPPのレベルを決定するために用いた。
【0179】
図6に示すように、薬理シャペロンのN−アセチル−グルコサミン−チアゾリン(NGT)は、C57BL6マウスで野生型の内在性β−ヘキソサミニダーゼ活性を選択的に増大させる。シャペロンのN−アセチル−グルコサミン−チアゾリンは経口的に利用可能であり、脳を透過し、C57BL6マウスの脳で内在性β−ヘキソサミニダーゼ活性を選択的に増大させる。NGT処置は、処置して7日以内に、C57BL6マウスの脳で野生型β−ヘキソサミニダーゼ活性(A)および神経栄養性sAPPαレベル(B)を約3倍増大させた。NGTによる処置は、全長APPレベルまたは遺伝子発現には影響がなかった(図示せず)。
【0180】
図7に示すデータは以下のように作成された。健康対照線維芽細胞をNB−DANAまたはIFGのいずれかで5日間処理した。細胞を剥離し、遠心分離で回収し、細胞ペレットをRIPAバッファー(1%のTX100、0.5%のタウロデオキシコレート、および0.1%のSDSを含むTBS+プロテアーゼ阻害剤)を用いて可溶化した。細胞ライセートをNeu1に特異的なポリクローナル抗体(Novus)を用いてイムノブロットした。
【0181】
図7に示すように、薬理シャペロンのn−ブチル−2−デオキシ−2,3−デヒドロ−N−アセチルノイラミン酸(NB−DANA)は、健康個体に由来する線維芽細胞で野生型の内在性ノイラミニダーゼ−1レベルを選択的に増大させる。(A)薬理シャペロンのNB−DANAは、野生型の内在性ノイラミニダーゼ1レベルを最大2倍増大させた。(B)グルコセレブロシダーゼの薬理シャペロンであるイソファゴミン(IFG)は、線維芽細胞で野生型ノイラミニダーゼ1レベルを増大させない。健康個体に由来する線維芽細胞をNB−DANAまたはIFGで5日間処理し、基質のNANA−4−MUを用いて細胞ライセートで酵素活性を測定した。酵素活性は、1時間でタンパク質1mg当たりに産生された4−MUのnmolとして表した。
【0182】
図8に示すように、薬理シャペロンのザナミビルは、SHSY−5Y神経芽細胞で野生型の内在性ノイラミニダーゼ3(Neu3)レベルを増大させる。図8に示すデータは以下のように作成された。SHSY−5Y細胞を表示したような増加用量のザナミビルまたはビヒクル(PBS)で72時間処理した。処理して72時間後に細胞を回収し、TBS+2%CHAPS中で溶解させ、不溶性物質を40C(20,000×rpm、10分;エッペンドルフ遠心分離機)での遠心分離によって除去した。上清を取り除き、タンパク質をBCAで測定した。等量のタンパク質を4−12%のNuPageゲルに充填し、電気泳動で分離した。タンパク質をPVDFメンブレンに転写し、このメンブレンをNeu3に対するポリクローナル抗体でプロービングした。Neu3陽性バンドをデンシトメトリーで定量した。ブロットをストリッピングし、タンパク質量対照としてのチューブリンに対するモノクローナル抗体でリプロービングした。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
個体におけるアルツハイマー病の治療のための方法であって、前記個体に有効量の薬理シャペロンを投与することを含む、方法。
【請求項2】
前記個体が、β−ヘキソサミニダーゼA、β−ヘキソサミニダーゼB、β−ヘキソサミニダーゼS、ノイラミニダーゼ−1、ノイラミニダーゼ−2、ノイラミニダーゼ−3、ノイラミニダーゼ−4およびグルコセレブロシダーゼからなる群から選択される酵素活性を欠損している、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記薬理シャペロンが、ガングリオシダーゼ、シアリダーゼおよびグルコセレブロシダーゼからなる群から選択される酵素に結合する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記ガングリオシダーゼが、β−ヘキソサミニダーゼA、β−ヘキソサミニダーゼB、β−ヘキソサミニダーゼS、ノイラミニダーゼ−2、ノイラミニダーゼ−3、およびノイラミニダーゼ−4からなる群から選択される、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記シアリダーゼが、ノイラミニダーゼ−1およびノイラミニダーゼ4からなる群から選択される、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
前記ガングリオシダーゼがβ−ヘキソサミニダーゼBである、請求項3に記載の方法。
【請求項7】
前記薬理シャペロンがグルコセレブロシダーゼに結合する、請求項3に記載の方法。
【請求項8】
前記薬理シャペロンが、ガングリオシダーゼ、シアリダーゼおよびグルコセレブロシダーゼからなる群から選択される酵素の、小胞体からリソソームおよびミトコンドリアへの、小胞体から細胞質へのまたは小胞体からエンドソームおよび形質膜への輸送を増大させる、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記薬理シャペロンが、ガングリオシダーゼ、シアリダーゼおよびグルコセレブロシダーゼからなる群から選択される酵素の突然変異体および/または野生型活性を増大させる、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記ガングリオシダーゼまたはシアリダーゼがガングリオシドを異化する、請求項3に記載の方法。
【請求項11】
グルコセレブロシダーゼがグルコシルセラミドを異化する、請求項3に記載の方法。
【請求項12】
前記ガングリオシダーゼがβ−ヘキソサミニダーゼBであり、前記ガングリオシドがGA2およびGM2である、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記薬理シャペロンが2−アセトアミド−1,2−ジデオキシノジリマイシンである、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記薬理シャペロンが4−エピ−イソファゴミンである、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
アルツハイマー病が早発性の家族性アルツハイマー病である、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
アルツハイマー病がダウン症によって引き起こされる、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
個体におけるタウタンパク質の病的凝集に起因する状態の治療のための方法であって、前記個体に有効量の薬理シャペロンを投与することを含む、方法。
【請求項18】
前記状態が、前頭側頭認知症、アルツハイマー病、進行性核上麻痺、大脳皮質基底核変性症および前頭側頭葉変性症からなる群から選択される、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
個体における脳アミロイド血管症の治療のための方法であって、前記個体に有効量の薬理シャペロンを投与することを含む、方法。
【請求項20】
前記薬理シャペロンが2−アセトアミド−1,2−ジデオキシノジリマイシンである、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
脳アミロイド血管症が家族性脳アミロイド血管症である、請求項19に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2013−508371(P2013−508371A)
【公表日】平成25年3月7日(2013.3.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−535238(P2012−535238)
【出願日】平成22年10月12日(2010.10.12)
【国際出願番号】PCT/US2010/052351
【国際公開番号】WO2011/049787
【国際公開日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【出願人】(507170099)アミカス セラピューティックス インコーポレイテッド (21)
【Fターム(参考)】