説明

薬理活性のある化合物の細胞内送達のためのカチオン脂質として有用な、L−カルニチンまたはアルカノイルL−カルニチンのエステル

【課題】抗癌、抗脈管形成、抗ウイルス、抗細菌、抗真菌、抗原生動物剤、心血管系で活性のある化合物および免疫原性ペプチドなどの薬理活性化合物の細胞内送達に適し、その膜貫通輸送を促進するのに、または特定の細胞膜部位(レセプター)との相互作用を促進するのに適したカチオン脂質を用いたリポソームの提供。
【解決手段】薬理活性化合物の細胞内送達のためのカチオン脂質が、下記一般式(II)で表されるアルカノイルL-カルニチンのエステル。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に開示する発明は、一群の新規なL-カルニチンおよびアシルL-カルニチンのエステルおよび、薬理活性化合物の細胞内送達に適し、その膜貫通輸送を促進するのに、または特定の細胞膜部位(レセプター)との相互作用を促進するのに適したカチオン脂質としての、その使用に関する。
本明細書に記載する発明はさらに、前記の新規化合物と同じ目的に有用なL-カルニチンとアシルL-カルニチンの公知エステルにも関する。
本明細書中、「細胞内送達」の用語が示すものは、治療活性(遺伝子送達)を有する天然起源の、または改変されたポリヌクレオチドまたはプラスミドによる細胞の感染または、薬物または免疫原性ペプチドの細胞内への導入である。
【背景技術】
【0002】
例えばポリペプチドおよびタンパク質または薬物のような薬理活性物質の多くは、亜細胞または分子レベルで細胞機能に影響を与えることによりその効力を発揮させるために、細胞へ貫通させる必要がある。これらの分子に対して、細胞膜は選択的不浸透性のバリアを構成する。細胞膜は実際、保護的機能を果たし、毒性がある可能性のある物質の侵入を妨げるが、治療活性を有する化合物の通過も妨げる。細胞膜の複合体組成物には、リン脂質、糖脂質およびタンパク質が含まれ、その機能はCa++および他のイオン、ATP、微細繊維、微小管、酵素および、Ca++に結合するタンパク質のような細胞質成分により影響を受ける。細胞の構造および細胞質成分と、外からのシグナルに対する応答との間の相互作用が、種々の異なる細胞型により、およびそれらの間で示されている選択性の原因である。膜のバリア作用は、複合体中の物質を、天然由来の膜脂質の脂質製剤と組み合わせることにより克服することができる。これらの脂質は膜と融合することができ、かつ、それらと結合した物質を細胞中に放出することができる。脂質複合体は膜との融合により細胞内輸送を促進することができるだけでなく、膜と細胞中に貫通させなければならない分子の間の電荷の反発を減じることもできる。両親媒性脂質、例えば膜リン脂質は、水系中で脂質ビヒクルまたはリポソームを形成する。
【0003】
リポソームは、水性容積物を、脂質分子(たいていリン脂質)から成る1またはそれ以上の膜で完全に封入する小胞である。親水性頭部と一対の炭素鎖(疎水性尾部)から成るリン脂質は、生物膜の主要成分である。水溶液中で疎水性尾部が自己会合して水を排除し、一方、親水性頭部は媒質と相互作用して様々な直径を有する小胞群を形成する。脂質は概して、双イオン性、中性またはアニオン性である。これらの小胞は、薬物、小分子、タンパク質、ヌクレオチドおよびプラスミドのキャリアとして用いることができる。
【0004】
近年、合成脂質から調製される、陽性に荷電した小胞の一クラスであるカチオンリポソームが、遺伝物質の細胞内への輸送にとりわけ用いられている。DNAの陰性電荷がカチオン脂質の陽性電荷と相互作用して、安定なDNA-リポソーム複合体を形成することができる。この技術は単純で融通がきくため、リポソームは遺伝子治療において、ヒトの患者に遺伝子を送達するための重要なビヒクルとなっている。現在のところ、遺伝子治療に用いられ、NIH・Recombinant・Advisory・Committeeにより認可されているベクターのほとんどはウイルスおよび合成系に含まれる。
【0005】
ウイルスの感染には、特定の細胞を攻撃し、DNAを核に輸送することを可能とするための一連の複雑なメカニズムが関与している。遺伝子治療のためのウイルスベクターの使用に関する原理は、ウイルス遺伝子を治療機能をコードする遺伝子に、ウイルス粒子を細胞に感染させる能力を阻害することなく置きかえることができることに基づく。ウイルス治療の限界は、免疫原性、細胞変性性および組換え原性(recombinogenic)の可能性があるウイルス分子を用いて行わなければならないところにある。
【0006】
遺伝子治療にカチオン脂質を使用することには大きな期待が持たれている。これらのベクターは、生物起源のものと比較して、より安全で毒性が少なく、大きいサイズの遺伝子を導入することができるために、大きな可能性を有する。しかし、生物タイプのベクターと比較して、それらは細胞内遺伝子転写収率が低い。しかし、そのような感染系の使用が研究の初期段階にあることは心にとどめておくべきである。カチオン脂質は、DNA-脂質複合体の形成、細胞-複合体相互作用、膜との融合、細胞内へのDNAの放出および転写に非常に重要な役割を果たす。
【0007】
カチオンリポソームのインビボ適用に関して、重要な例がある。遺伝子治療に関する最初の臨床試験は、ヒトリポソーム複合HLA-B7遺伝子を含む発現ベクターをメラノーマの治療に導入することにより行われた。他の重要な適用は、リポソーム複合発現ベクターSV40C-FTRの、肺経路による、または鼻腔内スプレーとしての投与を用いる肺嚢胞性繊維症の治療に関する。遺伝子治療におけるリポソームの使用に関連する他の臨床試験が、現在進行中である。
【0008】
4つの構成成分:陽性に荷電したカチオン頭部、スペーサー、アンカー脂質およびリンカー結合が、カチオン脂質の構造中に一般に認められる。
カチオン頭部によって、カチオンリポソームとDNA、DNA-リポソーム複合体と細胞膜および他の細胞成分との間の相互作用が生じる。これは、(電荷数に依存して)様々に置換することができるモノ-またはポリカチオン基から成る。
スペーサーは、カチオン頭部を疎水性尾部から分け、DNAリン脂質のカチオン頭部と陰性電荷間の最適の接触を確保することに関与する分子の部分である。
【0009】
アンカー脂質は、該分子の非極性炭化水素部分であり、二重脂質層の物理特性、例えばその硬さおよび膜脂質との交換比等を決定する。
「リンカー結合」が示すものは、炭化水素鎖と分子の残りの部分の間の結合である。この結合によりカチオン脂質の化学的安定性および生物分解性が決定される。
近年、脂質の使用が化粧品分野で確実に増加してきている。この分野でリポソームが成功を収めたのは、これらの化合物が皮膚で非常に良好な耐性を示すという事実のためである。それらは活性成分のためのビヒクルとして、および、活性成分の吸収を促す化合物としての両方として用いられている。
【0010】
リポソームの調製および使用に関する数多くの化学文献および特許文献があるが、遺伝子送達に有用なカルニチン誘導体の使用を開示する例はほとんどなく、薬物送達に関しては、本明細書に開示する発明によるものとほんの少し類似する化合物の調製に関する公知技術を開示する有用な文献はない。
特許出願EP0279887は、カルニチン、即ち、ホスファチジルカルニチンの、他のリン脂質および脂質(コレステロール、ホスファチジルコリン、ホスファチジルセリン)と組み合わせた、リポソームの調製のための使用を開示する。
【0011】
リポソームの調製に関して提供される例では、抗高血圧、抗アンギナおよび抗不整脈剤として活性であることが知られている薬物、プロプラノルオールと組み合わせたホスファチジルコリンのリポソームが製造されている。ここでは、カルニチン誘導体はカルニチンの顕著な心筋親和性のために用いられている。この親和性により、リポソームが所望の標的部位に達成する前に肝臓で代謝されるのが回避される。
ホスファチジルカルニチンの存在により、リポソームが腸のリパーゼに耐性となるため、リポソームを経口投与することも可能となる。
【0012】
J. Med. Chem. 1998 Jun 18, 41(13): 2207-15では、遺伝子送達に有用な多くのL-カルニチンのエステルが開示されているが、それらは薬物送達に有用な薬剤としては開示あるいは推薦されていない。
EP559625B1は、選択的胃腸管筋肉弛緩活性を有する多くのL-カルニチンおよびアシルL-カルニチンのエステルを開示する。
近年、分子生物学者は、ヒトの患者で遺伝子疾患を引き起こす、染色体レベルでの多くの欠損を同定した。
現代医薬の重要分野は、遺伝子に基づくこれらの遺伝性疾患を、遺伝子治療プロトコルを用いて治療することに関連している。
すでに記載したように、カチオン脂質は特に、膜貫通輸送を促進し、特定の細胞膜部位(レセプター)とのその相互作用を促す薬理活性化合物の細胞内送達に用いられる。
【0013】
これらのベクターは生物起源のものと比較して、より安全で毒性が少なく、さらに大きなサイズの遺伝子を導入することができるので、大きな潜在能力を有する。しかし、生物タイプのベクターと比較して、それらは細胞内遺伝子転写収率が低い。
さらに、常套のカチオン脂質が介在する遺伝子輸送には、プラスミドDNAとカチオン脂質が分けられていることが必要であり、遺伝子輸送の直前にそれらが混合される必要がある。
これらのポリヌクレオチド複合体を安定化させる試みは、有望な結果をほとんど生みそうになく、実際、それらはごく短期間しか安定性を保たない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
それゆえ、遺伝子治療または遺伝子送達および薬物送達の分野では、適当な期間後も活性である安定な、再現可能な部位特異的システムの必要性が強く認識されている。
【課題を解決するための手段】
【0015】
薬理活性化合物の細胞内送達を促進するのに強い活性のあるカチオン脂質の一クラスに、L-カルニチンおよびアシルL-カルニチンの新規エステルが含まれることが、今回見出された。
【0016】
これらの新規化合物は安定であり、標的器官に到達することに関して部位特異的であるため、高度に選択的である。
この特性により、これら新規化合物が、活性化合物が薬理活性を発揮することができる部位へそれら活性化合物を送達するのに特に有用なものとなる。
【0017】
以下に記載する本発明による化合物は、一般式(I)
【化1】

(式中、nは1〜3の整数;
Rは、水素または、直鎖または分枝鎖の、2-6の炭素原子を有するアルカノイル;
およびRは、同一または異なっていてよく、3-20の炭素原子を有する飽和または不飽和の直鎖アシル鎖;
は薬理学上許容される酸のアニオンである)
を有する化合物である。
【0018】
Rの例は、アセチル、プロピオニル、ブチリル、バレリルおよびイソバレリルである。
とRの例は、ヘキサノイル、ウンデカノイル、ミリストイル、パルミトイルまたはオレオイルである。
本発明による化合物の好ましい例は、
L-カルニチンブロマイドと2-ヒドロキシアセチル-1,3-ジパルミトイルグリセロールのエステル(ST770)、
アセチルL-カルニチンブロマイドと2-ヒドロキシアセチル-1,3-ジパルミトイルグリセロールのエステル(ST771)、
プロピオニルL-カルニチンブロマイドと2-ヒドロキシアセチル-1,3-ジパルミトイルグリセロールのエステル(ST772)、
イソブチリルL-カルニチンブロマイドと2-ヒドロキシアセチル-1,3-ジパルミトイルグリセロールのエステル(ST773)、
イソバレリルL-カルニチンブロマイドと2-ヒドロキシアセチル-1,3-ジパルミトイルグリセロールのエステル(ST774)、
L-カルニチンブロマイドと1,3-ジヘキサノイル-2-ヒドロキシアセチルグリセロールのエステル(ST810)、
アセチルL-カルニチンブロマイドと1,3-ジヘキサノイル-2-ヒドロキシアセチルグリセロールのエステル(ST809)、
プロピオニルL-カルニチンブロマイドと1,3-ジヘキサノイル-2-ヒドロキシアセチルグリセロールのエステル(ST808)
である。
【0019】
薬理学上許容される酸のアニオンが意味するものは、有害な毒性または副作用を引き起こさない酸のあらゆるアニオンである。
これらの酸は、薬理学者および、製薬技術の専門家に周知である。
【0020】
これらのアニオンの例は、掲載するものに限定されないが、クロライド、ブロマイド、ヨーダイド、アスパルテート、酸アスパルテート、シトレート、酸シトレート、タートレート、酸タートレート、ホスフェート、酸ホスフェート、フマレート、酸フマレート、グリセロホスフェート、グルコースホスフェート、ラクテート、マレエート、酸マレエート、ムケート、オロテート、オキサレート、酸オキサレート、スルフェート、酸スルフェート、トリクロロアセテート、トリフルオロアセテート、メタンスルホネート、パモエートおよび酸パモエートである。
【0021】
リポソームの形態の式(I)の化合物は、ワクチンとして有用なペプチドまたはタンパク質をコードしている、遺伝子治療に有用な、天然由来のまたは改変されたプラスミドまたはヌクレオチドの送達と、例えば抗癌剤、抗ウイルス剤、抗細菌剤、抗真菌剤、抗原生動物剤の、心血管系疾患の治療に有用な薬物、または免疫原性ペプチドおよび治療に有用な他の薬物などの薬物の一般的な送達の両方に有用な薬物である。
【0022】
式(I)の化合物を含むリポソームは、当業者に周知の常套法を用いて調製される。例えば、Allen T.M. Drugs 56, 747-56 (1998)を参照されたい。本発明によるリポソームは、リポソーム技術の実施において周知の他の化合物を用いても調製することができる。本発明の一態様では、リポソームはヘルパー脂質を含む(この用語は当業者にはよく理解される)。ヘルパー脂質の例としては、コレステロール、1-パルミトイル-2-オレオイルホスファチジルコリンまたはジオレイルホスファチジルコリンが挙げられる。
【0023】
本発明によるリポソームは、組成物として適切に提供される。薬理活性化合物の送達に関係する態様において、該組成物は、医薬上許容されるビヒクルおよび/または賦形剤を含んでいてよい医薬組成物として理解される。
リポソームの形態の式(I)の化合物は、リポソームそれ自体を美容活性剤として含む化粧用組成物の調製にも、および、美容活性を有する物質、例えば水和剤、栄養剤、洗顔のための物質、抗皺剤、抗小胞炎剤および抗-伸展線剤の送達のための化粧用組成物の調製にも有用であり得る。
【0024】
式(I)の化合物を含むリポソームは、経口または非経口、静脈内、筋肉内、皮下、経皮にて、または鼻腔または口内スプレーの形態で投与することができる。
本明細書中に開示する発明はさらに、別の使用がすでに知られている一般式(II)を有する更なるカチオン脂質にも関する(前記のEP559625)。
本発明に従い、式(II)の化合物は、薬物送達において強い活性を有し、前記の式(I)の化合物のものに匹敵するほど、安定で、標的器官に関して選択的であるという特徴を示すリポソームの調製に有用なL-カルニチンのエステルである。同じ有利な特性は、化粧品の場合に適用することができる。
【0025】
これらの化合物は一般式(II):
【化2】

(式中、
は飽和または不飽和の、4-26の炭素原子を有する直鎖または分枝鎖アシル鎖、
は飽和または不飽和の、4-26の炭素原子を有する直鎖または分枝鎖アルキル鎖、および、
は薬理学上許容される酸のアニオンである)
を有する。
【0026】
の好ましい例は、ノナノイル、ドデカノイル、ミリストイル、パルミトイル、ステアロイルまたはオレオイルである。
の好ましい例は、ノニル、ウンデシル、テトラデシル、ヘキサデシルまたはオレイルである。
【0027】
本明細書中に記載する発明による式(II)の特定化合物の例は、
パルミトイルL-カルニチンクロライドウンデシルエステル(ST983)、
ステアロイルL-カルニチンクロライドウンデシルエステル(ST1055)、
ステアロイルL-カルニチンクロライドテトラデシルエステル(ST1351)、
パルミトイルL-カルニチンクロライドテトラデシルエステル(ST1379)、
ミリストイルL-カルニチンクロライドテトラデシルエステル(ST1380)、
パルミトイルL-カルニチンブロマイドヘキサデシルエステル(ST1390)、
オレイルL-カルニチンクロライドオレイルエステル(ST1392)
である。
【0028】
式(II)の多くの化合物、すなわち、ST1380、ST1390およびST1392は公知であり、前記のJ.Med. Chem. 1998 Jun 18; 41(13): 2207-15に、治療活性を有する、細胞感染のためのリポソームの調製に有用な薬剤として開示されているが、薬物送達のためのリポソームの調製に有用な薬剤としては開示されていない。
平均的な経験のある、医薬製剤分野の技術者は、リポソーム-薬物複合体の調製において遭遇する難点をよく知るが、実際、遺伝子送達に有用なリポソームを薬物送達に用いることができるかどうかを演繹的に確認することは、薬物を結合させることができ、かつ治療活性を発揮させなければならない器官に薬物を選択的に送達するリポソームを得るのに克服されなければならない多くの問題のために、不可能である。
【0029】
リポソームの形態の式(II)の化合物は、薬物、例えば抗癌、抗脈管形成、抗ウイルス、抗細菌、抗真菌、抗原生生物剤または、心血管疾患に治療に有用な薬物、または免疫原性ペプチド、および治療に有用な他の薬物の送達に有用な薬剤である。
リポソームの形態の式(II)の化合物はさらに、それ自体を美容剤としての化粧用組成物の調製にまたは、美容活性を有する物質、例えば水和剤、栄養剤、洗顔剤および抗皺剤、抗小胞炎剤および抗-伸展線剤の送達のための化粧用組成物の調製に有用である。
該リポソームは、式(II)の化合物を含むリポソームの場合のように、ヘルパー脂質を含んでいてよい。
【0030】
式(II)の化合物を含むリポソームは、経口または非経口、静脈内、筋肉内、皮下、経皮にてまたは、鼻腔あるいは口内スプレーの形態で投与することができる。
本明細書に開示する発明はさらに、別の使用が既に公知の(前記EP559625)、一般式(III)を有する更なるカチオン脂質に関する。
本発明に従い式(III)の化合物は、薬物送達を促進する強い活性を有し、かつ、標的器官に到達したとき、前記式(I)の化合物のものに匹敵する程安定で選択的であるという特徴を示すリポソームの調製に有用な、L-カルニチンのエステルである。
【0031】
これらの化合物は、一般式(III)
【化3】

(式中、
は飽和または不飽和の、4-26の炭素原子を有する直鎖または分枝鎖アシル鎖、
は飽和または不飽和の、4-26の炭素原子を有する直鎖または分枝鎖アルキル鎖、
は、薬理学上許容される酸のアニオンである。
ただし、Rがステアロイルのとき、Rはステアリールではなく、
がオレオイルのとき、Rはステアリールではなく、
がパルミトイルのとき、Rはパルミチルではなく、
がミリストイルのとき、Rはミリスチルではなく、
がラウロイルのとき、Rはラウリルではなく、
がオレオイルのとき、Rはオレイルではない。)
を有する。
【0032】
請求項に記載しなかったリポソーム形態の化合物が、J. Med. Chem. 1988, 41, 2207-2215に、もっぱら遺伝子送達に関して開示されている。
の好ましい例は、ノナノイル、ドデカノイル、ミリストイル、パルミトイル、ステアロイルまたはオレオイルである。
の好ましい例は、ノニル、ウンデシル、テトラデシル、ヘキサデシルまたはオレイルである。
【0033】
本明細書中に記載する本発明による式(III)の化合物の好ましい例は、
パルミトイルL-カルニチンクロライドウンデシルエステル(ST983);
ステアロイルL-カルニチンクロライドウンデシルエステル(ST1055);
ステアロイルL-カルニチンクロライドテトラデシルエステル(ST1351);
パルミトイルL-カルニチンクロライドテトラデシルエステル(ST1379)である。
【0034】
式(III)の化合物は、遺伝子治療に有用な天然由来の、あるいは改変されたプラスミドまたはヌクレオチドまたは、ワクチンとして有用なペプチドまたはタンパク質をコードするそれらのプラスミドまたはヌクレオチドの送達に有用な薬剤である。
式(III)の化合物は、経口または非経口、静脈内、筋肉内、皮下、経皮にて、または鼻腔または口内スプレーの形態で投与することができる。
【0035】
本発明による式(I)の化合物の調製法を、次の反応図に示すが、この図は一般式(I)の化合物全てに当てはまると考える。全ての必要な試薬が市場入手可能であり、または文献中に開示されており、反応条件は、本発明の全範囲に一般に適用でき、所望により、いずれの変更も一般的に共通に知られている範囲内で正規になし得るため、当業者は、R、RおよびRで示した基のすべてを容易に得ることができる。
【0036】
【化4】

【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】ヒーラー細胞におけるST772リポソームのプラスミドDNA感染効率を示す。
【図2】ヒーラー細胞におけるST772リポソームのプラスミドDNA感染効率を示す。
【図3】リポソームAおよびBは共に、DMSO中の遊離CPT184よりも高いCPT184の蓄積レベルを示した。
【実施例】
【0038】
前記反応図1を参考に、本発明による式(I)の化合物の調製法を以下に示す。
実施例1 プロピオニルL-カルニチンブロマイドと2-ヒドロキシアセチル1,3ジパルミトイルグリセロールのエステル(ST772)の調製
a)1,3-ジヒドロキシプロパン-2-オン1,3-ジパルミテート(1)の調製
ジヒドロアセトン(7g、0.078モル)を300mLの無水クロロホルムに0℃(外部温度)にて無水窒素流下で溶解した。
こうして得られた溶液に、パルミトイルクロライド(44g、0.16モル)と無水ピリジン(15mL)を滴下した。
生じた混合液を、その温度を室温まで上昇させ、24時間攪拌下に置いた。
【0039】
次いで混合液を次の順序で、300mLの0.5%塩酸水溶液、300mLの5%重炭酸ナトリウム水溶液および最後に300mLの水を用いて抽出した。
分離した有機相を無水硫酸ナトリウム上で脱水し、セルロースフィルター上で濾過し、乾燥状態まで濃縮して粗生成物(1)を得た。
純粋な生成物(1)を500mLのエチルアルコールからの結晶化により得た。
30.4gの生成物(1)を得た。
【0040】
収率73%。
m.p.=80-81℃
H1NMR(CDCl3): 0.9(6H, t, CH3CH2-); 1.3(48H, m, (CH2)n=24); 1.55(4H, m, -OCOCH2CH2-); 2.4(4H, t, -OCOCH2-); 4.7(4H, s, -OCCH2-).
【0041】
b)1,2,3-トリヒドロキシプロパン-1,3-ジパルミテート(2)の調製
テトラヒドロフラン(125mL)およびトルエン(25mL)中に溶解した生成物(1)(5g、9mmol)に、水(7.5mL)を攪拌下でゆっくりと添加した。
得られた乳白色の懸濁液の温度を5℃(外部の温度)まで上昇させ、ホウ水素化ナトリウム(500mg、13mmol)を少しずつ添加した。懸濁液を攪拌下、30分間5℃に置いた。
氷酢酸を次いでゆっくりと、過剰のホウ水素化ナトリウムの分解により生じる泡立ちが止むまでゆっくりと添加し、最終的に溶液を得た。
クロロホルム(100mL)を溶液に添加し、二相系の形成を得た。
CHClから成る低い方の有機相を分離し、次の順序で水(25mL)、重炭酸ナトリウム(25mLの10%水溶液)および水(25mL)を用いて抽出した。
【0042】
(2)を含む有機溶液を硫酸ナトリウム上で脱水し、濾過し、乾燥状態まで濃縮して、ワックス様の生成物を得た。
生成物(2)を、ワックス様粗生成物のアセトン結晶化により得た。
4.8gの生成物(2)を得た。
収率94%。
m.p.=71-72℃。
H1NMR(CDCl3): 0.9(6H, t, CH3CH2-); 1.3(48H, m, (CH2)n=24); 1.55(4H, m, -OCOCH2CH2-); 2.4(4H, t, -OCOCH2-); 4.2(5H, m, -CHCH2O-).
【0043】
c)1,3-ジパルミトイル-2-ブロモアセチルグリセロール(3)の調製
生成物(2)(2.5g、4.4mmol)を無水クロロホルム(50mL)に攪拌下、0℃(外部温度)で溶解した。
こうして得られた溶液に、ゆっくりとピリジン(0.42ml)を添加し、ブロモアセチルクロライド(0.43mL、5.2mmol)を含む3mlのクロロホルム溶液を滴下した。
反応混合液を30分間0℃(外部温度)に保ち、かつ、30分間室温に保った。
【0044】
反応混合液を次いで次の順序で、1%塩酸水溶液(約50mL)、5%重炭酸ナトリウム水溶液(約50mL)および水を用いて処理した。
反応混合液を(硫酸ナトリウムで)脱水し、乾燥状態まで濃縮した後、生成物(3)をアセトンの結晶化により精製した。
【0045】
2.5gの生成物(3)を得た。
収率89%。
m.p.=49-47℃。
H1NMR(CDCl3): 0.9(6H, t, CH3CH2-); 1.3(48H, m, (CH2)n=24); 1.55(4H, m, -OCOCH2CH2-); 2.4(4H, t, -OCOCH2-); 3.9(2H, s, -OCH2COO-) 4.2-4.4(5H, m, -CHCH2O-); 5.25(1H, m, CHCH2O-).
【0046】
d)L-プロピオニルカルニチンブロマイドと2-ヒドロキシアセチル-1,3-ジパルミトイルグリセロールのエステル(4)の調製
予め40℃にて真空乾燥させたL-プロピオニルカルニチン分子内塩(0.95g、4.4mmol)を無水ジメチルホルムアミド(約20mL)に懸濁した。
生成物(3)(3g、4.7mmol)を懸濁液に少しずつ添加した。懸濁液をゆっくりと38℃まで加熱し、溶液が得られるまでこの条件下に置いた。
10分後から、溶液を30分間0℃に保った。沈殿を得、これを濾過し、エチルエーテルで洗浄し、クロロホルム(100mL)に溶解した。得られた乳白色溶液(30mL)をセライト上で濾過し、濃縮した。この後者の溶液に、ヘキサン(100mL)を添加し、得られた生成物(4)の沈殿を濾過し、35℃にて真空乾燥させた。
3.19gの標題化合物を得た。
収率80%。
【0047】
m.p.=127-128℃。
[α]25=−3.9(C=1%クロロホルム)。
4788BrNO10の元素分析
【0048】
【表1】

【0049】
H1 NMR(CDCl3) :0.9-0.95(6H,t, CH3CH2CH2-); 1.1-1.2(3H,t, CH3CH2CO); 1.2-1.4(24H, m, CH2n=24); 1.5-1.6(4H, m, -OCCH2CH2-); 2.3-2.4(4H, t, -OCCH2CH2-); 2.4-2.45(4H, d.d., -CHCH2O-); 2.95(2H, d, -CH2COOCH2COO-); 3.5(9H, s, N(CH3)3); 4.2(4H, m, -CH2OCOCH2-); 4.35(2H,m, -CH2N-); 4,65(2H,d,d, -OCH2CO-); 5.25(1H,m, -OCH2CHCH2O-); 5.75(1H, m, -CHCH2N-).
【0050】
実施例2-7
以下の化合物を前記実施例と同じ方法で調製した。
L-カルニチンブロマイドと2-ヒドロキシアセチル-1,3-ジパルミトイルグリセロールのエステル(ST770)、
アセチルL-カルニチンブロマイドと2-ヒドロキシアセチル-1,3ジパルミトイルグリセロールのエステル(ST771)、
イソブチリルL-カルニチンブロマイドと2-ヒドロキシアセチル-1,3-ジパルミトイルグリセロールのエステル(ST773)、
イソバレリルL-カルニチンブロマイドと2-ヒドロキシアセチル-1,3-ジパルミトイルグリセロールのエステル(ST774)、
L-カルニチンブロマイドと1,3-ジヘキサノイル-2-ヒドロキシアセチルグリセロールのエステル(ST810)、
アセチルL-カルニチンブロマイドと1,3-ジヘキサノイル-2-ヒドロキサセチルグリセロールのエステル(ST809)、
1,3-ジヘキサノイル-2-ヒドロキシアセチルグリセロールとのプロピオニルL-カルニチンブロマイドエステル(ST808)。
【0051】
本明細書中に開示する発明の一つの好ましい態様は、抗癌剤を含むリポソームおよび特に、カンプトテシン(例えばWO97/31003に開示されているもの)のためのビヒクルとして作用するリポソームの調製から成る。より好ましい態様では、本明細書に開示する発明により、一般式(IV):
【化5】

(式中、Rは-C(R11)=N-O(n)10基であり、R10は水素または、直鎖あるいは分枝鎖のC-CアルキルまたはC-Cアルケニル基、またはC-C10シクロアルキル基、または直鎖または分枝鎖の(C-C10)シクロアルキル-(C-C)アルキル基、またはC-C14アリール、または直鎖または分枝鎖(C-C14)アリール-(C-C)アルキル基、または複素環式または直鎖あるいは分枝鎖複素環式-(C-C)アルキル基であり、該複素環式基は、(C-C)アルキル基で置換されていてよい窒素、および/または酸素および/または硫黄の原子から選択される少なくとも一つのヘテロ原子を含み、該アルキル、アルケニル、シクロアルキル、アリール、アリール-アルキル、複素環式または複素環アルキル基は、ハロゲン、ヒドロキシ、C-Cアルキル、C-Cアルコキシ、フェニル、シアノ、ニトロ、-NR1213(R12およびR13は同一または異なっていてよく、水素、直鎖または分枝鎖(C-C)アルキル、-COOH基またはその医薬上許容されるエステルの一つである)、または-CONR1415基(R14およびR15は同一または異なっていてよく、水素、直鎖または分枝鎖(C-C)アルキルである)から選択される他の基で置換されていてよい。または、
10は、ハロゲン、ヒドロキシ、直鎖または分枝鎖C-Cアルキル、直鎖または分枝鎖C-Cアルコキシ、フェニル、シアノ、ニトロ、-NR1617(R16およびR17は同一または異なっていてよく、水素、直鎖または分枝鎖C-Cアルキルである)から選択される1またはそれ以上の基で置換されていてよいC-C10アロイル基である。
【0052】
10はポリアミノアルキル基、または、
10はグリコシル基、
nは0または1、
11は、水素、直鎖または分枝鎖C-Cアルキル、直鎖または分枝鎖C-Cアルケニル、C-C10シクロアルキル、直鎖または分枝鎖(C-C10)シクロアルキル-(C-C)アルキル、C-C14アリール、直鎖または分枝鎖(C-C14)アリール-(C-C)アルキルである、
およびRは同一または異なっていてよく、水素、ヒドロキシ、直鎖または分枝鎖C-Cアルコキシである)
を有するカンプトテシン、そのN-オキシド、単一異性体、特に、-C(R11)=N-O(n)10基のシンおよびアンチ異性体、その可能なエナンチオマー、ジアステレオ異性体および関連混合物、その医薬上許容される塩およびその活性代謝物を送達するためのリポソームが提供される。
【0053】
式(IV)の化合物は、1999年3月9日出願のヨーロッパ特許出願No.99830124.6に開示されている。
nが1であり、R10がアロイルを除いて前に定義するものである式(IV)の化合物に関して、これらの化合物は、カンプトテシン7-アルデヒド(式IVa、R11は水素)またはカンプトテシン7-ケト(式IVa、R11は水素以外である)から出発して調製することができる。
【0054】
【化6】

(式中、Rは、-(CR11)=O基であり、および、R11は式(IV)で定義するものであり、RおよびRは式(IV)で定義するものである。)式(IVa)の化合物を式(Va)の化合物R10O-NH(R10は前記のものである)と反応させ、式(I)(式中、Rは-C(R11)=N-O-R10基であり、R10はアロイルを除いて式(IV)で定義するものである)の化合物を得る。
【0055】
反応は、オキシムの通常の形成を含む方法である、当業者に公知の常套法を用いて行うことができる。好ましくは、カンプトテシン7-アルデヒドまたは7-ケトのヒドロキシルアミンに対するモル比は、1:3〜3:1の範囲内にあるべきである。関連するヒドロキシルアミン塩を用いることもできる。反応は塩基(例えば、炭酸カリウムのような無機塩基)または有機塩基(トリエチルアミンまたはジアザビシクロノナンなど)の存在下、極性溶媒、好ましくはメタノールまたはエタノールを用いて行い、該反応は、室温から溶媒の沸点の範囲の温度で、任意に脱水剤(例えば硫酸ナトリウムまたはマグネシウム、モレキュラーシーブ)の存在下で行う。所望の場合、反応は触媒、例えばルイス酸の存在下で行うこともできる。
【0056】
別に、前記化合物は、(Sawada et al Chem. Pharm. Bull. 39, 2574(1991)に開示されるようにして得られた)カンプトテシン7-アルデヒドまたは7-ケトのオキシムから、または対応する7-アシルカンプトテシンから、R10-Xハロゲン化物(Xは好ましくはヨウ素である)を極性溶媒(例えばテトラヒドロフランまたはアルコール)中、塩基(例えば水素化ナトリウムまたは炭酸カリウム)の存在下で用いる反応により調製することができる。
【0057】
nが1であり、R10が式(IV)に定義するアロイルである式(IV)の化合物に関し、これらの化合物は、カンプトテシン7-オキシム(この調製に関しては前の段落に記載してある)から出発して、R10-COClアシルクロライドを極性溶媒中、塩基(好ましくはピリジン)の存在下で、またはそれを直接ピリジン中で用いて調製することができる(Cho et al. J. Org. Chem. 62, 2230(1997)に開示されている)。
【0058】
nが0であり、R10がアロイル基を除いて前に定義するものである式(IV)の化合物に関し、該化合物はカンプトテシン7-アルデヒド(式IVa、R11は水素である)またはカンプトテシン7-ケト(式IVa、R11は水素以外である)から出発して調製することができる。
【0059】
【化7】

(式中、Rは-C(R11)=O基であり、R11は式(IV)で定義するものであり、RおよびRは式(IV)で定義するものである)。式(IVa)の化合物を式(Vb)の化合物R10-NH(R10は前に定義したものである)と反応させて、式(IV)(式中Rは-C(R11)=N-R10基であり、R10はアロイルを除いて式(IV)で定義するものである)の化合物を得る。反応は、製薬技術の専門家に公知の常套法(当該工程はイミンの通常の形成から成る)を用いて行うことができる。好ましくは、カンプトテシン7-アルデヒドまたは7-ケトのイミンに対するモル比は1:3〜3:1の範囲内であるべきである。関連するアミンの塩を用いることもできる。反応は塩基、例えば無機塩基(炭酸カリウムなど)または有機塩基(トリエチルアミンまたはジアザビシクロノナンなど)の存在下で、極性溶媒(好ましくはメタノールまたはエタノール)を用いて行い、当該反応は、室温から溶媒の沸点の範囲の温度で、任意に脱水剤(例えば硫酸ナトリウムまたはマグネシウム、モレキュラーシーブ)の存在下で行う。所望の場合、反応は触媒、例えばMoretti and Torre, Synthesis, 1970, 141;または、Kobayashi et al, Synlett, 1977, 115に開示されているようなルイス酸などの存在下で行うこともできる。
【0060】
カンプトテシン7-アルデヒドおよびカンプトテシン7-オキシムは、ヨーロッパ特許出願EP0056692および、Sawada et al, Chem. Pharm. Bull. 39, 2574(1991)による前に引用した文献に開示されている。
式(IV)の化合物のN-オキシドは、公知の複素環式芳香族窒素酸化法に従い、好ましくは酢酸またはトリフルオロ酢酸および過酸化水素を用いる酸化または有機ペルオキシ酸を用いる反応(A. Albini and S. Pietra, Heterocyclic N-oxides, CRC, 1991)により調製する。
【0061】
異なる式Vの反応物に存在するR10の種々の意義に関して、これらの反応物は市場入手可能であり、または、当該分野の専門家が、当該事項に関する彼ら自身の知識を補充するものとして信頼することができる文献から知ることができる方法に従い調製することができる。
医薬上許容される塩は当該文献に開示される常套法を用いて得られ、更なる開示は必要でない。
【0062】
実施例8 7-ベンジルオキシイミノメチルカンプトテシン(CPT172)
500mg(1.33mmol)の7-ホルミルカンプトテシンを100mlのエタノールに溶解する。15mlのピリジンおよび638mg(4mmol)のO-ベンジルヒドロキシルアミンヒドロクロライドを添加する。溶液を5時間還流する。溶媒を真空蒸発させ、こうして得られた残存物をシリカゲル上、ヘキサン/酢酸エチルの4:6混合物を溶離剤として用いるフラッシュクロマトグラフィーにより精製する。
収率;65%。
m.p.:200−205℃dec。
【0063】
得られた生成物は、2つのシンおよびアンチ異性体のおよそ8:2の混合物から成る(異性体A:Rf0.32;異性体B、Rf0.19、メルク60F254シリカゲル上;溶離剤:ヘキサン:酢酸エチル3:7)。
HPLC:分析はローダインインジェクター(20μl白金匙)を有する4つ組ポンプ(HP1050)とHPLC-ChemStationプログラムで操作するダイオードアレイ検出器(HP1050)を備えた装置上で行った。スペクトル取得は200〜600nmで行い、クロマトグラムは360と400nmで記録した。
【0064】
C18逆相カラム(RaininC18:25×0.4cm、Varian)を、RP18プレカラムと共に用いた。分析は、アセトニトリル:水30:70から出発してアセトニトリル100%までの、20分間、1ml/分の流速での線形溶離勾配を用いて行った。保持時間は異性体Bに関しては12.51分、異性体Aに関しては14.48分であった。
1H-NMR (300 MHz; DMSO-d6): δ: 0.88 (t, H3-18A+H3-18B), 1.87 8m, (H2-19A+H2-19B), 5.18 (s, H2-5B), 5.21 (8s, H2-Ph B), 5.30 (H2-Ph A), 5.40 (s, H2-5A), 5.45 (s, H2-17A+H2-17B), 6.53 (s, -OH A+-OH B), 7.3-7,6 (m, Ar A+ Ar B+H-14A+ H-14B), 7.75 (m, H-11A+H-11B), 7.85-7-95 (m, H10A+H-10B), 7.98 (dd, H-12B), 8.18-8.27 (m, H-12A+H9-B), 8.45 (s, CH=N B), 8.59 (dd, H-9A), 9.38 (s, CH=N A).
Mass m/z 481 (M+ 100) 374 (30)330(70)300(30)273(20)243(20)91(34).
【0065】
実施例9 7-ブトキシイミノメチルカンプトテシン(CPT184)
400mg(1.06mmol)の7-ホルミルカンプトテシンを80mlのエタノールに溶解する。12mlのピリジンおよび400mg(3.18mmol)のO-t-ブチルヒドロキシルアミンヒドロクロライドを添加する。溶液を4時間還流する。溶媒を真空蒸発させ、こうして得られた残存物をシリカゲル上、ヘキサン/酢酸エチルの4:6混合物を溶離剤として用いるフラッシュクロマトグラフィーにより精製する。
322mg(0.72mmol)の黄色固体を得る。
収率68%。
m.p.250℃dec。
【0066】
得られた生成物は、2つのシンおよびアンチ異性体の約8:2の混合物(異性体A:Rf0.31、異性体B、Rf0.24、メルク60F254シリカゲル;溶離剤:ヘキサン:酢酸エチル3:7)から成る。
HPLC:分析は、ローダインインジェクター(20μl白金匙)を有する4つ組ポンプ(HP1050)とHPLC-ChemStationプログラムで操作するダイオードアレイ検出器(HP1050)を備えた装置上で行った。スペクトル取得は200〜600nmで行い、クロマトグラムは360と400nmで記録した。
【0067】
C18逆相カラム(RaininC18;25×0.4cm、Varian)をRP18プレカラムと共に用いた。分析はアセトニトリル:水30:70から出発してアセトニトリル100%まで、20分間、1ml/分の流速で用いる線形溶離勾配を用いて行った。保持時間は異性体Bに関しては12.92分および、異性体Aに関しては14.61分であった。
【0068】
1H-NMR (300 MHz; DMSO-d6): δ: 0.88 (t, H3-18A+H3-18B), 1.30 (s, t-but.B), 1.47 (s, t-but.A) 1.87 (m, H2-19A+H2-19B) 5.18 (s, H2-5 B), 5.37 (H2-5 A), 5.42 (s, H2-17A+H2-17B), 6.54 (s, -OH A+-OH B), 7.35 (s H-14A), 7.36 (s, H-14B) 7.69-7.83 (m, H-11A+H-11B), 7.85-7.98 (m, H-10A+H-10B), 8.07 (dd, H-9B), 8.16-8.27 (m, H-9A+H-12B) 8.40 (s, CH B), 8.62 (dd, H-12A), 9.31 (s, CH A).
Mass m/z 448 (M+ 28) 391 (40)374(100)362(40)330(34)57(17).
【0069】
リポソームの調製
本発明による化合物は、多層リポソーム(MLV)および単層リポソーム(SUV)を、共に乾燥粉末形態で、および水溶液中の懸濁物として調製するのに用いることができる。
実施例1-7に開示するように調製した本発明による化合物を、以下の方法に従いリポソームを調製するのに用いる。適量の化合物をクロロホルム中に溶解し、該溶液を乾燥状態までロータリーエバポレーター中で、脂質層が得られるまで真空濃縮する。脂質層を、最終的に残っている微量の溶媒が除去されるまで高真空下で乾燥させ、次いでtert-ブチルアルコールまたは水で溶解する。こうして得られた溶液を凍結乾燥し、軟質の乾燥粉末を得た。
【0070】
粉末を適量の水溶液で水和し、使用する化合物から成るリポソームを得、これを次いでポリヌクレオチドまたは所望の薬物と結合させる。
リポソームの調製の別の方法は、本発明による化合物から成る脂質層を溶媒中で、適当な不活性支持体(例えばソルビトール、マンニトールまたは他の薬理学上許容される炭水化物など)の上に吸着させることから成る。混合物を真空乾燥させ、固体を得、これは使用前に容易かつ非常に迅速に水和できる。
乾燥粉末の形態の調製物は、長期間安定であり、使用しやすいという利点を示す。
【0071】
さらに、本発明による化合物を以下の方法に従い、DNAまたは所望の薬物を結合させた、乾燥粉末形態のリポソームを調製するのに用いることができる。本発明による化合物をtert-ブチルアルコール中に、または水で溶解し、こうして得られた溶液をDNAまたは所望の薬物を混合し、当該混合物を凍結乾燥し、プロリポソーム-DNAまたはプロリポソーム-薬物として定義することができる複合物を軟質の乾燥粉末形態で得る。
【0072】
こうして得られた粉末(プロリポソーム)を、エアゾルにより投与することができる、または、別に、水または適当なバッファー溶液で復元した場合に非経口または経口投与することができる医薬組成物の調製に用いることができる。
DNAまたは薬物と結合させた固体形態のリポソームは、ソルビトール、マンニトールまたは他の炭水化物のような不活性支持体上に、前記の方法を用いる脂質層を吸着させる方法を用いても得ることができる。
【0073】
リポソームの形成に関する試験
リポソームの形成を、以下の方法に従い、水溶性色素を用いる比色法を用いて試験した。水溶性色素ArsenazoIIIの水溶液を得た(m.w.=776.37;2.3mg/mL)。
この溶液を水の代わりに用いて前記の調製から生じる脂質層を水和した。
色素を内包するリポソームを含む懸濁液の一部を水で100倍に希釈した。
【0074】
2mLのリポソーム懸濁液を用いて660nmでの第一光学濃度示数を得た。この示数はブランクとして定義した等量のサンプルに対して得た。200μlのCaCl溶液(15mg/mL;100mM)を第一サンプルに添加し、光学濃度を、200μlの水を添加したブランクに対して660nmで測定した。得られた吸収値は示数2として示された。サンプルには100μlのトライトンX−100(5%v/v;0.26%終濃度)溶液を、ブランクには200μlの水を添加し、660nmでの光学濃度示数は、示数3と定義される光学濃度値であった。内包される色素の割合を算出するために、以下の式を用いた。
【0075】
【化8】

【0076】
内包される色素の割合により、リポソーム形成の基準が提供され、平均は約40%である。リポソームサイズの検査をレーザー光スキャニングを用いて行い、ポジティブな結果を得た。
【0077】
リポソームの調製に関する実施例
以下の形態でのパルミトイルL−カルニチンクロライドウンデシルエステル(ST983)の調製
a)凍結乾燥粉末
65mg、0.11mmolのパルミトイルL−カルニチンクロライドウンデシルエステルを20mLのクロロホルムに、100mLのフラスコ中で溶解した。
該溶液を、脂質層が得られるまで蒸発させ、これを3時間真空乾燥させた。こうして得られた生成物をtert−ブチルアルコールに溶解し、この溶液を迅速に−70℃まで液体窒素を用いて冷却し、24時間凍結乾燥させた。
スポンジ状の軟質白色固体を得た。
【0078】
b)吸着粉末
143mg、0.231mmolのパルミトイルL−カルニチンクロライドウンデシルエステルを10mLのクロロホルムに溶解した。こうして得られた溶液を少量ずつ、750mgのソルビトールを含む100mLのフラスコに注いだ。クロロホルム溶液を何回もに分けて添加した添加の終わりに、クロロホルムを迅速に蒸発させた。
こうして得られた溶液を3時間真空乾燥させた。
893mgの固体の白色生成物を得た。
使用前に当該生成物を迅速に適容量の水で水和し、等張性溶液を得た。
【0079】
c)MLV懸濁液
65mg、0.11mmolのパルミトイルL−カルニチンクロライドウンデシルエステルを20mLのクロロホルムに、100mLのフラスコ中で溶解した。 こうして得られた溶液を、脂質層が得られるまで蒸発させ、次いでこれを3時間真空乾燥させた。
脂質層を10mLの水で、30℃にて3時間水和し、MLV懸濁液を得た。
適当に希釈したMLV懸濁液をポリヌクレオチドまたは薬物と結合させ、生物アッセイに用いた。
【0080】
e)SUV懸濁液
65mg、0.11mmolのパルミトイルL−カルニチンクロライドウンデシルエステルを20mLのクロロホルムに、100mLのフラスコ中で溶解した。
こうして得られた溶液を、脂質層が得られるまで蒸発させ、これを次いで3時間真空乾燥させた。
脂質層を10mLの水で、30℃にて3時間水和し、MLV懸濁液を得た。
MLV懸濁液を10回、200nmのサイズの穴を有するポリカルボネートフィルターに通した。こうして得られた単層リポソーム懸濁液をポリヌクレオチドまたは薬物と結合させ、生物アッセイに用いた。
【0081】
f)リポソームの物理的安定性に関する試験
リポソーム懸濁液の物理的安定性を30日間濁度計を用いて試験した。
600nmにて所定の間隔で、各被検懸濁液に関して吸光度測定を行った。0時間にて測定した平均吸光値は、試験した全製剤に関して一定であった。
考慮した分子は考慮した時間中、妥当な値を示した。
【0082】
MLVおよびSUVリポソーム懸濁液は、本発明による化合物をヘルパー脂質(例えば、コレステロール、1-パルミトイル-2-オレイルホスファチジルコリン(POPC)またはジオレイルホスファチジルコリン(DOPE)など)と結合させて調製することができる。
化合物は、安定な膜を有するリポソームを得るために、ヘルパー脂質と結合させる。これ以下、リポソームの調製を開示するセクションに、調製に関する例を示すが、そこでは本発明による化合物は、コレステロールまたはPOPCのようなヘルパー脂質と結合させる。
【0083】
薬物送達のためのリポソームの調製に関する実施例
実施例10 タキソール-ST983MLVリポソーム(1:40)の調製
20mg、0.0234mmolのタキソールおよび556mg、0.9417mmolのST983を20mLのクロロホルムに溶解した。
溶液を、脂質層がガラスフラスコの表面上に得られるまで濃縮した。最終的に残った微量のクロロホルムを真空ポンプを用いて除去した後、20mLのtert-ブチルアルコールを脂質層に添加し、こうして得られた溶液を19のフラクションに細別し、これをすぐ、液体窒素で−70℃で凍結させ、24時間凍結乾燥させた。固体の各フラクションはタキソール(1.05mg)およびST983(29.2mg)を含んでいた。
【0084】
目的のリポソーム懸濁液を得るために、使用時に水(450μl)または他の塩水溶液で凍結乾燥生成物を水和し、10分間攪拌し、30分間静置して、膨張(水和)工程を完了させた。
MLVリポソームを得た。
【0085】
調製物の物理的安定性に関する試験
調製物の物理的安定性を、TDC(時間駆動曲線)を800nm、20℃にて20時間記録する濁度計を用いて試験した。
調製物の安定性を示す一定の濁度傾向が記録され、沈殿現象はなかった。
【0086】
調製物中のタキソールの化学的安定性に関する試験
タキソールの化学的安定性をHPLCにより試験した。
クロマトグラフィー条件は以下のようであった。
カラム:μBondapack・C-18
溶離剤:アセトニトリル:水70:30
検出器UV-VIS:227nm
流速:1mL/分
保持時間:4.5分
スタンダードに対して測定したタキソール濃度は2.13mg/mLであった。
内包されるタキソールの割合は98%であった。
【0087】
実施例11 ST983SUVリポソームの調製
20mg、0.0234mmolのタキソールと556mg、0.9417mmolのST983を20mLのクロロホルムに溶解した。
該溶液を、脂質層がガラスフラスコの表面上に得られるまで濃縮した。
最終的に残る微量のクロロホルムを高真空ポンプを用いて除去した後、20mLのtert-ブチルアルコールを脂質層に添加し、こうして得られた溶液を19のフラクションに細分し、これらをすぐに液体窒素で−70℃にて凍結し、24時間凍結乾燥した。固体の各フラクションはタキソール(1.05mg)とST983(29.2mg)を含んでいた。
最終目的のSUVリポソーム懸濁液を得るために、PBS溶液(1mL)で水和した凍結乾燥生成物を20分間0℃で超音波処理した。
400nmの濾紙上で濾過を次いで行い、ソニケータープローブにより放出された微量のチタンを除いた。
【0088】
調製物の物理的安定性に関する試験
調製物の物理的安定性を、TDC(時間駆動曲線)を800nmで、20℃にて20時間記録する濁度計を用いて試験した。
調製物の安定性の指標である一定の濁度傾向が記録され、沈殿現象は認められなかった。
【0089】
調製物中のタキソールの化学的安定性に関する試験
タキソールの化学的安定性を、HPLCにより試験した。
クロマトグラフィー条件は以下のようであった。
カラム:μBondapack・C−18
溶離剤:アセトニトリル:水70:30
検出器UV-VIS:227nm
流速:1mL/分
保持時間:4.5分
SUVリポソーム懸濁液のHPLC分析は、対応するMLVリポソーム懸濁液と同じ結果を生じ、この場合にも、内包されるタキソールの割合は98%であった。
24時間後に繰り返したHPLC分析により、タキソール以外の新たなピークは明らかにされず、該活性成分の安定性が示唆される。
【0090】
実施例12 タキソール-ST893コレステロールリポソーム(1:15)の調製
このタイプのリポソームを、もっと安定な膜を有する複合体を得るために調製した。
6mg、0.0101mmolのタキソール、62.2mg、0.105mmolのST983および40mgのコレステロールを10mLのクロロホルムに溶解した。
こうして得られた溶液を、脂質層がガラスフラスコの表面上に得られるまで濃縮した。
【0091】
最終的に残る微量のクロロホルムを高真空ポンプで除去した後、6.3mLのtert-ブチルアルコールを脂質層に添加し、こうして得られた溶液を5フラクションに細分し、これをすぐに‐70℃にて液体窒素で凍結し、24時間凍結乾燥させた。固体の各フラクションはタキソール(1.2mg)、ST983(12.44mg)およびコレステロール(8mg)を含んでいた。
最終目的のリポソーム懸濁液を得るために、凍結乾燥した生成物を使用時に水(1000mL)または他の塩水溶液で水和し、10分間攪拌し、30分間静置して、膨張(水和)工程を完遂した。
MLVリポソームを得た。
【0092】
調製物の物理的安定性に関する試験
調製物の物理的安定性を、TDC(時間駆動曲線)を800nm、20℃にて6時間記録する濁度計を用いて試験した。
調製物の安定性の指標である一定の濁度傾向が記録され、沈殿現象は見られなかった。
【0093】
実施例13 タキソール‐ST772SUVリポソーム(1:70)の調製
20mg、0.0234mmolのタキソールと1485mg、1.638mmolのST772を20mLのクロロホルムに溶解した。
該溶液を脂質層がガラスフラスコの表面上に得られるまで濃縮した。
最終的に残る微量のクロロホルムを高真空ポンプで除去した後、20mLのtert-ブチルアルコールを脂質層に添加した。透明の溶液を得るために、60℃まで加熱しなければならなかった。該溶液を即座に液体窒素で-70℃にて凍結し、24時間凍結乾燥した。
最終目的であるSUVリポソーム懸濁液を得るために、PBS溶液(20mL)で水和した凍結乾燥生成物を20分間0℃で超音波処理した。
濾過を次いで400nmフィルター上で行い、ソニケータープローブにより放出された微量のチタンを除去した。
【0094】
調製物の物理的安定性に関する試験
調製物の物理的安定性を、TDC(時間駆動曲線)を800nm、20℃にて6時間記録する濁度計を用いて試験した。
調製物の安定性の指標である一定の濁度傾向が記録され、沈殿現象はなかった。
【0095】
実施例14 CPT83-ST983MLVリポソーム(1:40)の調製
6.3mg、0.0168mmolのCPT83(WO97/31003に開示される7-カルボニトリルカンプトテシン)および400mg、0.0667mmolのST983を20mLのクロロホルムに溶解した。
該溶液を、脂質層がガラスフラスコの表面上に得られるまで濃縮した。
最終的に残っている微量のクロロホルムを真空ポンプを用いて除去した後、26mLのtert-ブチルアルコールを脂質層に添加し、こうして得られた溶液を12のフラクションに細分し、これを即座に液体窒素で‐70℃にて凍結し、24時間凍結乾燥した。固体の各フラクションはCPT83(0.525mg)およびST983(33.33mg)を含んでいた。
【0096】
最終目的であるリポソーム懸濁液を得るために、凍結乾燥生成物を使用時に水(1000μL)または他の塩水溶液で水和し、10分間攪拌した。
MLVリポソームを得た。
【0097】
調製物の物理的安定性に関する試験
調製物の物理的安定性を、TDC(時間駆動曲線)を800nmにて、20℃にて20時間記録する濁度計を用いて試験した。
調製物の安定性の指標である一定の濁度傾向が記録され、沈殿現象は見られなかった。
【0098】
調製物中のCPT83の化学安定性に関する試験
CPT83の化学的安定性をHPLCにより試験した。
クロマトグラフィー条件は以下のようであった。
カラム:Supelcosil・LC-ABZ
溶離剤:リン酸バッファー20mM:メタノール40:60、pH=7.3
検出器UV-VIS:360nm
流速:1mL/分
保持時間:4.033分
標準に対して決定したCPT83濃度は0.502mg/mLであった。
内包されるCPT83の割合は99%であった。
【0099】
実施例15 CPT83-ST983SUVリポソーム(1:40)の調製
6.3mg、0.0168mmolのCPT83および400mg、0.667mmolのST983を20mLのクロロホルムに溶解した。
脂質層がガラスフラスコの表面上に得られるまで該溶液を濃縮した。
最終的に残る微量のクロロホルムを高真空ポンプで除去した後、26mLのtert-ブチルアルコールを脂質層に添加し、こうして得られた溶液を12のフラクションに細分し、これを即座に液体窒素で‐70℃にて凍結し、24時間凍結乾燥した。固体の各フラクションはCPT83(0.525mg)およびST983(33.33mg)を含んでいた。
最終目的であるSUVリポソーム懸濁液を得るために、水(1000μL)で水和した凍結乾燥生成物を40分間0℃にて超音波処理した。
次いで濾過を400nmのフィルター上で行い、ソニケータープローブにより放出された微量のチタンを除去した。
【0100】
調製物中のCPT83の化学的安定性に関する試験
HPLCにより、CPT83の化学的安定性を試験した。
クロマトグラフィー条件は以下のようであった。
カラム:SupelcosilLC-ABZ
溶離剤:リン酸バッファー20mM:メタノール40:60、pH=7.3
ディテクターUV-VIS:360nm
流速:1ml/分
保持時間:4.033分
基準に対して決定したCPT83濃度は0.3mg/mLであった。
内包されるCPT83の割合は59%であった。
24時間後に反復したHPLC分析でCPT83のピーク以外の新規なピークは現れず、該化合物の安定性が示唆される。
【0101】
調製物の物理的安定性に関する試験
調製物の物理的安定性を、TDC(時間駆動曲線)を600nmで、20度で20時間記録する濁度計を用いて試験した。
調製物の物理的安定性の指標である一定の濁度傾向が記録され、沈殿現象は見られなかった。
【0102】
実施例16 CPT184-ST983MLVリポソーム(1:40)の調製
7.29mg、0.0168mmolのCPT184および400mg、0.677mmolのST983を20mLのクロロホルムに溶解した。
脂質層がガラスフラスコの表面上に得られるまで該溶液を濃縮した。
最終的に残る微量のクロロホルムを真空ポンプを用いて除去した後、26mLのtert-ブチルアルコールを脂質層に添加し、こうして得られた溶液を12のフラクションに細分し、これを即座に液体窒素で-70℃にて凍結し、24時間凍結乾燥した。固体の各フラクションはCPT184(0.607mg)とST983(33.33mg)を含んでいた。
最終目的のリポソーム懸濁液を得るために凍結乾燥生成物を使用時に水(1000μl)または他の塩水溶液で水和し、10分間攪拌した。
MLVリポソームを得た。
【0103】
調製物の物理的安定性に関する試験
調製物の物理的安定性を、TDC(時間駆動曲線)を600nmにて、20℃で20時間記録する濁度計を用いて試験した。
調製物の安定性の指標である一定の濁度傾向が記録され、沈殿現象は見られなかった。
【0104】
調製物中のCPT184の化学的安定性に関する試験
CPT184の化学的安定性をHPLCにより試験した。
クロマトグラフィー条件は以下のようであった。
カラム:Supelcosil・LC-ABZ
溶離剤:リン酸バッファー20mM:メタノール40:60、pH=7.3
ディテクターUV-VIS:360nm
流速:1mL/分
保持時間:25.5分
基準に対して決定したCPT184濃度は0.600mg/mLであった。
内包されるCPT184の割合は99%であった。
【0105】
実施例17 CPT184-ST983SUVリポソーム(1:40)の調製
7.29mg、0.0168mmolのCPT184および400mg、0.667mmolのST983を20mLのクロロホルムに溶解した。
該溶液を、脂質層がガラスフラスコの表面上に得られるまで濃縮した。
最終的に残っている微量のクロロホルムを高真空ポンプを用いて除去した後、26mLのtert−ブチルアルコールを脂質層に添加し、こうして得られた溶液を12のフラクションに細分し、これらを即座に液体窒素で‐70℃にて凍結し、24時間凍結乾燥させた。固体の各フラクションはCPT184(0.607mg)およびST983(33.33mg)を含んでいた。
最終目的であるSUVリポソーム懸濁液を得るために、水(1000μL)で水和した凍結乾燥生成物を40分間0℃で超音波処理した。
濾過を次いで400nmの濾紙上で行い、ソニケータープローブにより放出された微量のチタンを除去した。
【0106】
調製物中のCPT184の化学的安定性に関する試験
CPT184の化学的安定性をHPLCにより試験した。
クロマトグラフィー条件は以下のようであった。
カラム:Supelcosil・LC−ABZ
溶離剤:リン酸バッファー20mM:メタノール40:60、pH=7.3
ディテクターUV−VIS:360nm
流速:1mL/分
保持時間:25.5分
基準に対して測定したCPT184濃度は0.36mg/mLであった。
内包されるCPT184の割合は70%であった。
24時間後に反復したHPLC分析ではCPT184のピーク以外の新規なピークは現れず、活性成分の安定性が示唆される。
【0107】
調製物の物理的安定性に関する試験
調製物の物理的安定性を、TDC(時間駆動曲線)を600nmで、20℃にて20時間記録する濁度計を用いて試験した。
調製物の安定性の指標である一定の濁度傾向が記録され、沈殿現象は見られなかった。
以下の実施例で、リポソームをヘルパー脂質および/または凍結防止剤を用いて調製した。
【0108】
実施例18 CPT184-ST983リポソームの調製
2lフラスコ中、100mlのメチルクロロホルムを20mgのCPT184および600mgのST983に添加し、混合液を溶解が完遂するまで少しだけ温めた。得られた溶液を脂質層が得られるまでロータベイパー中で濃縮し、これをさらに2時間高真空ポンプにて乾燥させた。脂質層をラクトース溶液(6g/300ml水)で45℃にて水和し、ロータベイパー中2時間攪拌下に置いた。懸濁液を次いで2時間超音波処理し、各サイクルを1時間半続けた。次いで生成物を200nmフィルターで濾過し、凍結乾燥した。
【0109】
調製物中のCPT184の化学安定性に関する試験
CPT184の化学的安定性をHPLCで確認した。
生成物は24時間の試験中、安定していた。
【0110】
調製物の物理的安定性に関する試験
調製物の物理的安定性を、濁度計を用いて試験した。生成物は24時間の試験中安定であった。粒子のサイズも安定していた(100nmの平均値)。
【0111】
実施例19 CPT184-ST983リポソームの調製
1mlのリポソーム製剤(POPC-1-パルミトイル-2-オレオイルホスファチジルコリン5mM;ST983 1.25mM;CPT184 0.25およびトレハロース150mM)のために、以下の方法を用いた。
0.11mg、0.25μモルのCPT184を250μLの酢酸エチルに溶解し、3.79mg、4.89μモルのPOPCを100μLのエタノールに溶解し、0.74mg、1.25μモルのST983を100μLのエタノールに溶解した。3溶液を混合し、かき混ぜた。溶媒をローターベイパーを室温で80mバールで用いて蒸発させた。脂質膜を2時間暗中で乾燥させた。脂質層を1mlの150mMのD(+)-トレハロース二水和物(Fluka、HPLC99%)溶液中に懸濁し、0.22nmフィルターを通して滅菌し、2分間かき混ぜた。懸濁液を200nmのポリカルボネートフィルターに21回通した。通過させたリポソーム懸濁液を液体窒素中で凍結し、二晩凍結乾燥させた。白色固体を得た。
【0112】
実施例20 CPT184-ST983リポソームの調製
トレハロース500mMを用いる以外は実施例19と同じ方法を用いた。
ST983リポソーム-抗癌剤複合体の抗癌活性
これ以下に見られるように、ST983リポソームは肺レベルで際立った蓄積を示した。この部位特異的な特徴は、肺癌のネズミモデルにおける使用に適している。
この実験で用いた抗癌剤はタキソールであった。
【0113】
腫瘍をインビボで誘導するために、非麻酔Balb/cマウスに、0.1mlのRPMI-1640(シグマ)中3×10細胞のネズミ肺癌M109の注射を、右後ろ足の大腿骨四等筋に施した。
腫瘍の移植10日後、リポソーム‐タキソール複合体をリン酸緩衝塩水溶液(PBS、SIGMA、P-4417)で希釈し、ST9832.5mg/mLおよび、タキソール75μg/mLの濃度で静脈注射した。
コントロールとして用いたタキソール(paclitaxel INDENA)はクレモフォアビヒクルEL(BASF)に20mg/mLの濃度で溶解し、+4℃にてその後の24時間、光を遮断して貯蔵した。使用時にリン酸緩衝塩水溶液(PBS、SIGMA)で希釈し、ST983リポソームで輸送されるタキソールに関して記載したものと同じ体積および濃度条件で静脈注射した。
【0114】
クレモフォアは、エチルアルコールで1:1に希釈することにより調製した。
腫瘍の接種後10日から始め、7日間連続投与した。接種後17日まで動物を観察下に起き、頚部脱臼により屠殺し、その肺を腫瘍転移数を測定するために取り出した。腫瘍の転移を検出するための肺の染色を、肺を10日間、71%飽和ピクリン酸溶液、4.8%の氷酢酸(メルク)および24%10%ホルムアルデヒド(フルカ)から成る5mlのBouinの溶液中でインキュベートすることにより行った。Bouinの溶液中でのインキュベーション期間の終了時、腫瘍転移数を計測した。
非処置のコントロールマウスと比較して、クレモフォア輸送性タキソールにより、肺の腫瘍転移数を減じる効果は示されなかった(後者は非処置のコントロールのものよりも腫瘍は小さかった。)が、一方、ST983リポソームと結合させたタキソールは、肺の腫瘍転移数とそのサイズの両方に関して有意な低下を示した。
肺の腫瘍転移数に関するデータの統計学的分析を、Mann−Whitney非パラメトリック試験を非対データに関して用いて行った。
得られた結果を以下の表1に示す。
【0115】
【表2】

【0116】
インビトロ細胞毒性試験
毒性アッセイを、96ウェルのプレート中のヒーラーおよびM109細胞に関して行った。培養後1日目に、細胞を被検分子でその後の48時間処置した。細胞を次いでPBSで洗浄し、通常の生育条件下に48時間置いた。生育培地の除去後、細胞を16%のTCAと共に氷上でインキュベートし、3回HO中で洗浄し、30分間1%酢酸中のスルホールホダミンB(SRB)で処置し、3回1%酢酸のみで洗浄し、20分間TRIS10mM、pH10.5中でインキュベートし、最後に540nmで記録を行った。
【0117】
CPT83を用いる細胞毒性試験
リポソームと結合させた抗癌剤の細胞毒性を有効活性の予備的指標として評価するために、CPT83を用いるインビトロ細胞毒性試験を行った。
CPT83を輸送するリポソームの能力をインビトロで評価するために、M109細胞において、前記のスルホールホダミンB試験を用いた。
加えて、ジメチル‐スルホキシド(DMSO)中に溶解したCPT83の細胞毒性も、ST983リポソームと結合させた同じ分子の細胞毒性と比較して評価した。
リポソーム-CPT83複合体を細胞毒性アッセイにおいて、以下の表2.1、2.2および3.3に示す濃度で、SUVおよびMLV形態の両方で用いた。用いたリポソーム:CPT83のモル比は40:1であった。
以下の表2.1、2.2および2.3に示す、両SUVおよびMLV形態のST983-CPT83複合体の平均細胞毒性値は、ST983リポソームがDMSOとほとんど同じ様式でCPT83を輸送することができ、同じ大きさのオーダーの細胞毒性レベルを示すことを示唆する。
【0118】
【表3】

表に示す値は540nmでの光学濃度示数を示す。
【0119】
【表4】

表に示す値は540nmでの光学濃度示数を示す。
【0120】
【表5】

表に示す値は540nmでの光学濃度示数を示す。
【0121】
ST983リポソーム-CPT184複合体の生物活性
実施例18のリポソーム(以下、リポソームAと呼ぶ)および実施例20のリポソーム(以下、リポソームBと呼ぶ)の生物活性を試験した。
【0122】
健康なマウスにおける細胞毒性
遊離CPT184との比較において、リポソームAおよびBを、1.2mg/kgの投与量でq4dx4スキームにより、経口、静脈内投与した。2つのリポソームは、体、肺、脾臓および腎臓の重量にさほど影響しなかった。リポソームBの静脈内、リポソームAの経口投与は、遊離CPT184と同様に胸腺の重量に影響を及ぼした。リポソームAの静脈内投与はわずかしか影響しなかった。血液分析学的パラメータは24時間後、両リポソームに関して有意な変動を示さなかった。qd5スキームに従い静脈投与したリポソームAは遊離CPT184に匹敵する毒性を示した。
【0123】
リポソームの肺親和性
リポソームAとBは肺レベルで懸著な蓄積が示された。リポソームは1.2mg/kgで静脈投与した。遊離CPT184は、DMSO中1.2mg/kgで経口投与した。動物、健康なマウスを最終投与の24時間後に屠殺した。それらの群から肺を摘出し、液体窒素中に凍結した。一度溶解し、肺をプールし、0.1%酢酸/アセトニトリル1:5中でホモジェナイズした。ホモジェネートを3等分し、その2つにCPT184を、回収率算定のために添加した。3サンプルを16,000gにて5分間遠心分離した。上清を集め、ジクロロメタンで抽出した。有機相をスピードバックを用いて乾燥させ、残存物を、HPLCにローディングするための50μl中に一匹の動物に対応する量を含むように、アセトニトリル中に再溶解した。HPLCをWaters Symmetry C18 3.5μm(4.6×7.5mm)において行った。メルク蛍光計は370nmの励起および510nmの放出の検出器であった。溶離剤は、水/アセトニトリル60:40、イソクラティックであった。サンプルの体積は50μlであった。CPT184の回収率は約70%であった。図3に示すように、リポソームAおよびBは共に、DMSO中の遊離CPT184よりも高いCPT184の蓄積レベルを示した。
【0124】
遺伝子送達
リポソーム‐DNA複合体の調製
リポソームおよびプラスミドDNAを適当に別々にPBSに希釈した。DNAを次いでリポソームに添加し、リポソーム‐DNA複合体を約30分間、4℃に置き、安定なリポソーム‐DNA相互作用の形成を促した。
インビトロ実験において、1,2−ジオレオイルオキシ‐3-トリメチル‐アンモニウムプロパン(DOTAP)を参考カチオン脂質として用いた。2.5μgのプラスミドDNAを2×10ヒーラー細胞につき使用し、リポソーム濃度は9μMであった。
【0125】
インビトロ実験において、DOTAPおよび[2,3−(ジオレオイル)プロピル]トリメチルアンモニウム(DOTMA)の両方を参考カチオン脂質として使用した。
結果中に示すモル比は、DNA1mgあたりのそれぞれのカチオン脂質のnmol濃度を意味する。
インビボ感染実験で、25μgのプラスミドDNAを動物一匹当たりに用いた。
これらの実験で使用したプラスミドpCMVlucは、サイトメガロウイルス(CMV)プロモーターの転写コントロール下のルシフェラーゼ遺伝子のcDNAを含んでいた。
【0126】
ルシフェラーゼ活性の定量測定
タンパク質ルシフェラーゼの細胞および組織内での活性を、ベーリンガー・マンハイムキット(cat no.1669893)を用いて測定した。
細胞を3回PBS中で洗浄し、次いで溶解バッファー(100mMのリン酸カリウムpH7.8。1mMのジチオトレイトール‐DTT)中でスクレーパーを用いてプレートからはがし、凍結と溶解の3連続サイクルに供した。1.5mLのエッペンドルフチューブ中で遠心分離した後、上清をタンパク質の抽出後5時間以内に発光試験に使用した。発光放出測定を、発光計を562nmで用いて行った。液体窒素中でまず凍結させた後、粉末を得るために細かく粉砕し、組織を溶解バッファーに再懸濁し、10-15分間氷中でインキュベートした。
サンプルを次いで2mlのエッペンドルフチューブ中で遠心分離し、上清をルシフェラーゼ活性に関して試験した。
【0127】
ドットブロット分析
細胞のDNAを、Sanbrook, Fritsch and ManiatisによりMolecular Cloning, 1989に記載されているアルカリ溶解法に従い抽出した。
細胞から抽出した5μgのDNAをナイロンフィルター(ベーリンガー)に、バイオラッドドット-ブロット器具を用いて予め吸着させた。フィルターを次いで4時間65度で、0.5Mのピロリンサンナトリウム(NaPi)、1mMのEDTA、7%のSDSを含む溶液でプレハイブリダイゼーションした。32P(アルファ)でラベルしたプローブを、プラスミドpCMVluc・DNAを鋳型としておよび、ランダムプライムしたアマシャムのキットを用いて調製した。フィルターを同じプレハイブリダイゼーションバッファー中で12時間42℃で1×10CPM/mlを用いてハイブリダイゼーションした。フィルターを次いで310分、65℃にて、40mMのNaPi、1%のSDSを含むバッファー中で洗浄した。オートラジオグラフィー分析を、ベータ放射線(これは、電子増倍管システムを用いて読み、かつ定量する)で活性化させた蛍光スクリーンを用いる蛍光画像を画像分析プログラムと組み合わせてを用いて行った。ドットブロットに関して行った濃度測定は、IP-LabGel画像分析プログラムを用いて行った。
【0128】
プラスミドDNA感染試験
多くのプラスミドDNA感染試験を、インビトロとインビボの両方で行った。
その感染力がAbkenet et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 1993, 90, 6518に特徴づけられ、および開示されているDOTAPとDOTMAの両方を、参考となるカチオン脂質として用いた。インビボ試験では、プラスミドDNAに対するカチオン脂質の種々の異なるモル比を、カチオン脂質の活性と遺伝子輸送に最も有効な個々の濃度を決定するために分析した。種々のリポソームの感染力を、pCMVlucプラスミド中に含まれるルシフェラーゼ遺伝子トランスポーター(定量を容易にするために相対蛍光単位(前に記載した)に関して活性化させたもの)を用いて、インビボとインビトロの両方で評価した。
別法として、感染させた細胞から抽出し、ニトロセルロースフィルター上に予め吸着させ(ドットブロット)、32P-標識プラスミドDNAマーカーでハイブリダイゼーションさせたDNAサンプルの濃度分析(蛍光画像)を用いて、多くのカチオンリポソームの感染力を前記のように評価した。
【0129】
インビトロ感染試験
この実験では、肝臓、肺および心臓の感染効率の、ST983リポソーム:プラスミドDNAのモル比への依存性を評価した。次の、DNA1μg当たりのリポソームのnmol比を試験した;12:1、24:1、36:1および48:1。
各群6匹の約20gの体重のBalb/cマウスへ、200μl容積のPBS中、前記の量のリポソーム‐DNA複合体を静脈投与し、複合体の投与の24時間後に屠殺した。
肺、心臓および肝臓組織から抽出されたルシフェラーゼの活性により、分析した全モル比でルシフェラーゼが肺に際立って分布していることが明らかになった。実際、3つの組織から抽出されたトータルのルシフェラーゼの約99%が肺に位置していた。12:1のリポソーム:DNAモル比が最良であることが分かった。得られた結果を以下の表3に示す。
【0130】
【表6】

【0131】
インビボ感染効率の、SRT983リポソーム調製物間の違いへの依存性
12:1のリポソーム:DNAモル比で異なるST983リポソーム調製物を静脈処置したBalb/cマウスの肺から抽出したルシフェラーゼ活性の値を、相対蛍光単位(RLU)として表4に示す。
得られたデータは、ST983リポソームがプラスミドDNAIをインビボで、DOTMAよりも高いおよび/またはそれに匹敵する効率で輸送することができることを示していることに加え、さらに、異なるST983調製物間の変動の程度をも示している。これは、多くの物理化学的特徴、例えばリポソーム小胞のサイズ、異なるST983調製物の単層(SUV)または多層構造に関する小胞の相対的割合などによるものであり得る。実際に、前記物理化学的パラメータは、最適のインビボおよびインビトロ感染効率を得ることに関する決定要因として、R.I. Mahato et al., Human Gene Therapy 9. 1998: 2083に詳細に記載されている。
【0132】
【表7】

【0133】
インビボ感染力の、ST983-DNAリポソーム複合体プレインキュベーション時間への依存性
表5は、プラスミドDNAと共に投与前30分間、または3時間プレインキュベーションしたST983リポソームを用いて静脈処置したマウスの肝臓、肺および心臓から抽出した相対蛍光単位を示す。DNAと共に3時間プレインキュベーションしたST983で処置した動物は、肺および心臓におけるルシフェラーゼ活性に関し、30分間プレインキュベーションした同じリポソームを用いて処置したものと比較して約5倍の増加を示している。この結果は、安定なリポソームDNA複合体の形成が時間に依存する現象であり、インビボ感染力の決定要因として決定的な役割を果たしていることを示唆する。
【0134】
【表8】

【0135】
ST772リポソームを用いた、ヒーラー細胞におけるプラスミドDNAの感染
図1および図2は、ヒーラー細胞におけるST772リポソームのプラスミドDNA感染効率を示す。この目的のために、ST272および、参考カチオン脂質としてDOTAPを用いて感染させた細胞から抽出したDNAの濃度分析を行った。ブロット分析の結果は、DOTAPを用いて得られるものと同じ大きさのオーダーのプラスミドDNAの量を明らかにしている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)
【化1】

(式中、nは1〜3の整数;
Rは、水素または、直鎖または分枝鎖の、2-6の炭素原子を有するアルカノイル;
およびRは、同一または異なっていてよく、3-20の炭素原子を有する飽和または不飽和の直鎖アシル鎖である;および、
は薬理学上許容される酸のアニオンである)
の化合物。
【請求項2】
Rがアセチル、プロピオニル、ブチリル、バレリルおよびイソバレリルから成る群から選択される請求項1記載の化合物。
【請求項3】
およびRが、ヘキサノイル、ウンデカノイル、ミリストイル、パルミトイルまたはオレオイルから成る群から選択される請求項1記載の化合物。
【請求項4】
が、クロライド、ブロマイド、ヨーダイド、アスパルテート、酸アスパルテート、シトレート、酸シトレート、タートレート、酸タートレート、ホスフェート、酸ホスフェート、フマレート、酸フマレート、グリセロホスフェート、グルコースホスフェート、ラクテート、マレエート、酸マレエート、ムケート、オロテート、オキサレート、酸オキサレート、スルフェート、酸スルフェート、トリクロロアセテート、トリフルオロアセテート、メタンスルホネート、パモエートおよび酸パモエートから成る群から選択される請求項1記載の化合物。
【請求項5】
L-カルニチンブロマイドと2-ヒドロキシアセチル-1,3-ジパルミトイルグリセロールのエステル、
アセチルL-カルニチンブロマイドと2-ヒドロキシアセチル-1,3-ジパルミトイルグリセロールのエステル、
プロピオニルL-カルニチンブロマイドと2-ヒドロキシアセチル-1,3-ジパルミトイルグリセロールのエステル、
イソブチリルL-カルニチンブロマイドと2-ヒドロキシアセチル-1,3-ジパルミトイルグリセロールのエステル、
イソバレリルL-カルニチンブロマイドと2-ヒドロキシアセチル-1,3-ジパルミトイルグリセロールのエステル、
L-カルニチンブロマイドと1,3-ジヘキサノイル-2-ヒドロキシアセチルグリセロールのエステル、
アセチルL-カルニチンブロマイドと1,3-ジヘキサノイル-2-ヒドロキシアセチルグリセロールのエステル、
プロピオニルL-カルニチンブロマイドと1,3-ジヘキサノイル-2-ヒドロキシアセチルグリセロールのエステル
から成る群から選択される請求項1記載の化合物。
【請求項6】
リポソームの調製のための請求項1-5いずれか一項に記載の化合物の使用。
【請求項7】
請求項1-5のいずれか一項の化合物を含むリポソーム。
【請求項8】
さらにヘルパー脂質を含む請求項7記載のリポソーム。
【請求項9】
ヘルパー脂質が、コレステロール、1-パルミトイル-2-オレオイルホスファチジルコリンまたはジオレイルホスファチジルコリンから成る群から選択される請求項8記載のリポソーム。
【請求項10】
薬理活性化合物の輸送に有用な組成物の調製のための、請求項7-9のいずれか一項に記載のリポソームの使用。
【請求項11】
薬理活性化合物が、天然由来の、あるいは改変されたプラスミドまたはポリヌクレオチドである請求項10記載の使用。
【請求項12】
プラスミドまたはポリヌクレオチドが遺伝子治療に有用な請求項11記載の使用。
【請求項13】
プラスミドまたはポリヌクレオチドがワクチンとして有用なペプチドまたはタンパク質をコードするものである請求項11記載の使用。
【請求項14】
活性化合物が薬物である請求項10記載の使用。
【請求項15】
薬物が、抗癌、抗脈管形成、抗ウイルス、抗細菌、抗真菌、抗原生動物剤、心血管系で活性のある化合物または免疫原性ペプチドから成る群から選択される請求項14記載の使用。
【請求項16】
薬物が抗癌または、抗脈管形成剤である請求項15記載の使用。
【請求項17】
抗癌剤が、タキソールまたはカンプトテシン誘導体から成る群から選択される請求項16記載の使用。
【請求項18】
カンプトテシンの誘導体が、
7-カルボニトリルカンプトテシン、
7-ベンジルオキシイミノメチルカンプトテシンおよび、
7-ブトキシイミノメチルカンプトテシン
から成る群から選択される請求項17記載の使用。
【請求項19】
化粧用組成物の調製のための請求項7-9に記載のリポソームの使用。
【請求項20】
請求項7、8または9記載のリポソームを含む医薬組成物。
【請求項21】
リポソームが薬理活性化合物を含む請求項20記載の組成物。
【請求項22】
活性化合物が、天然由来の、あるいは改変されたプラスミドまたはポリヌクレオチドである請求項21記載の組成物。
【請求項23】
プラスミドまたはポリヌクレオチドが遺伝子治療に有用なものである請求項22記載の組成物。
【請求項24】
プラスミドまたはポリヌクレオチドがワクチンとして有用なペプチドまたはタンパク質をコードするものである請求項22記載の組成物。
【請求項25】
請求項7-9のいずれか一項に記載のリポソームを含む化粧用組成物。
【請求項26】
リポソームが美容活性を有する物質を含む請求項25記載の組成物。
【請求項27】
化合物が、抗癌、抗脈管形成、抗ウイルス、抗細菌、抗真菌、抗原生動物剤、心血管系で活性のある化合物または免疫原性ペプチドから成る群から選択される請求項21記載の組成物。
【請求項28】
経口、非経口、静脈内、筋肉内、皮下、経皮にて、または鼻腔あるいは口内スプレーの形態で投与することができる請求項20-27記載の組成物。
【請求項29】
式(II)
【化2】

(式中、Rは飽和または不飽和の、4-26の炭素原子を有する直鎖または分枝鎖アシル鎖、
は飽和または不飽和の、4-26の炭素原子を有する直鎖または分枝鎖アルキル鎖、および、
は薬理学上許容される酸のアニオンである)
の化合物を含む、美容活性を有する薬物または物質の輸送のためのリポソームの使用。
【請求項30】
が好ましくは、ノナノイル、ドデカノイル、ミリストイル、パルミトイル、ステアロイルまたはオレオイルから成る群から選択される請求項29記載の使用。
【請求項31】
が好ましくは、ノニル、ウンデシル、テトラデシル、ヘキサデシルまたはオレイルから成る群から選択される請求項29記載の使用。
【請求項32】
が、クロライド、ブロマイド、ヨーダイド、アスパルテート、酸アスパルテート、シトレート、酸シトレート、タートレート、酸タートレート、ホスフェート、酸ホスフェート、フマレート、酸フマレート、グリセロホスフェート、グルコースホスフェート、ラクテート、マレエート、酸マレエート、ムケート、オロテート、オキサレート、酸オキサレート、スルフェート、酸スルフェート、トリクロロアセテート、トリフルオロアセテート、メタンスルホネート、パモエートおよび酸パモエートから成る群から選択される請求項30記載の使用。
【請求項33】
化合物が、
パルミトイルL-カルニチンクロライドウンデシルエステル、
ステアロイルL-カルニチンクロライドウンデシルエステル、
ステアロイルL-カルニチンクロライドテトラデシルエステル、
パルミトイルL-カルニチンクロライドテトラデシルエステル、
ミリストイルL-カルニチンクロライドテトラデシルエステル、
パルミトイルL-カルニチンブロマイドヘキサデシルエステル、
オレイルL-カルニチンクロライドオレイルエステル
から成る群から選択される請求項29-32記載の使用。
【請求項34】
薬物が、抗癌、抗脈管形成、抗ウイルス、抗細菌、抗真菌、抗原生動物剤、心血管系で活性のある化合物または免疫原性ペプチドから成る群から選択される請求項29記載の使用。
【請求項35】
薬物が抗癌または抗脈管形成薬である請求項34記載の使用。
【請求項36】
抗癌剤が、タキソールまたはカンプトテシンの誘導体からなる群から選択される請求項35記載の使用。
【請求項37】
カンプトテシンの誘導体が、
7-ベンジルオキシイミノメチルカンプトテシンまたは、
7-ブトキシイミノメチルカンプトテシン
から成る群から選択される請求項36記載の使用。
【請求項38】
リポソームがさらにヘルパー脂質を含む請求項29記載の使用。
【請求項39】
ヘルパー脂質が、コレステロール、1-パルミトイル-2-オレオイルホスファチジルコリンまたはジオレイルホスファチジルコリンから成る群から選択される請求項38記載の使用。
【請求項40】
薬物または、美容活性を有する物質の輸送のための、請求項29記載のリポソームを含む組成物。
【請求項41】
薬物が、抗癌、抗脈管形成、抗ウイルス、抗細菌、抗真菌、抗原生動物剤、心血管系で活性のある化合物または免疫原性ペプチドから成る群から選択される請求項40記載の組成物。
【請求項42】
経口、非経口、静脈内、筋肉内、皮下、経皮にて、または鼻腔または口内スプレーの形態で投与することができる請求項40-41記載の組成物。
【請求項43】
式(III)
【化3】

(式中、
は飽和または不飽和の、4-26の炭素原子を有する直鎖または分枝鎖アシル鎖、
は飽和または不飽和の、4-26の炭素原子を有する直鎖または分枝鎖アルキル鎖、
は、薬理学上許容される酸のアニオンである。
ただし、Rがステアロイルのとき、Rはステアリールではなく、
がオレオイルのとき、Rはステアリールではなく、
がパルミトイルのとき、Rはパルミトイルではなく、
がミリストイルのとき、Rはミリストイルではなく、
がラウロイルのとき、Rはラウリルではなく、
がオレオイルのとき、Rはオレイルではない)
の化合物を含む、天然由来の、あるいは改変されたプラスミドまたはポリヌクレオチドの輸送のためのリポソームの使用。
【請求項44】
が、好ましくはノナノイル、ドデカノイル、ミリストイル、パルミトイル、ステアロイルまたはオレイルから成る群から選択される請求項43記載の使用。
【請求項45】
が、好ましくはノニル、ウンデシル、テトラデシル、ヘキサデシルまたはオレイルから成る群から選択される請求項43記載の使用。
【請求項46】
が、クロライド、ブロマイド、ヨーダイド、アスパルテート、酸アスパルテート、シトレート、酸シトレート、タートレート、酸タートレート、ホスフェート、酸ホスフェート、フマレート、酸フマレート、グリセロホスフェート、グルコースホスフェート、ラクテート、マレエート、酸マレエート、ムケート、オロテート、オキサレート、酸オキサレート、スルフェート、酸スルフェート、トリクロロアセテート、トリフルオロアセテート、メタンスルホネート、パモエートおよび酸パモエートから成る群から選択される請求項43記載の使用。
【請求項47】
化合物が、
パルミトイルL-カルニチンクロライドウンデシルエステル、
ステアロイルL-カルニチンクロライドウンデシルエステル、
ステアロイルL-カルニチンクロライドテトラデシルエステル、
パルミトイルL-カルニチンクロライドテトラデシルエステル、
から成る群から選択される請求項43-46記載の使用。
【請求項48】
プラスミドまたはポリヌクレオチドが、ワクチンとして有用なペプチドまたはタンパク質をコードするものである請求項43記載の使用。
【請求項49】
リポソームがさらにヘルパー脂質を含む請求項43記載の使用。
【請求項50】
ヘルパー脂質が、コレステロール、1-パルミトイル-2-オレオイルホスファチジルコリンまたはジオレイルホスファチジルコリンから成る群から選択される請求項49記載の使用。
【請求項51】
天然由来の、あるいは改変されたプラスミドまたはポリヌクレオチドの輸送のための請求項43記載のリポソームを含む組成物。
【請求項52】
ポリヌクレオチドまたはプラスミドが、ワクチンとして有用なペプチドまたはタンパク質をコードするものである請求項51記載の組成物。
【請求項53】
経口、非経口、静脈内、筋肉内、皮下、経皮にて、または鼻腔または口内スプレーの形態で投与することができる請求項51-52記載の組成物。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2011−42657(P2011−42657A)
【公開日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2010−210849(P2010−210849)
【出願日】平成22年9月21日(2010.9.21)
【分割の表示】特願2000−610820(P2000−610820)の分割
【原出願日】平成12年4月11日(2000.4.11)
【出願人】(591043248)シグマ−タウ・インドゥストリエ・ファルマチェウチケ・リウニテ・ソシエタ・ペル・アチオニ (92)
【氏名又は名称原語表記】SIGMA−TAU INDUSTRIE FARMACEUTICHE RIUNITE SOCIETA PER AZIONI
【Fターム(参考)】