説明

薬膳パン

【課題】薬膳の食材が食する人の食欲に良好に影響し得る薬膳パンを提供する。
【解決手段】この薬膳パン1は、焼成されたパン生地2の中に、所定の長さの又はその長さにカットされた植物由来の薬膳塊状食材3がパン生地に分散されて1種類以上含まれ、更に、所定の直径以下に粉砕された植物由来の薬膳粉末食材がパン生地と混合されて1種類以上含まれており、薬膳塊状食材と薬膳粉末食材とは、合わせて少なくとも2種類以上含まれている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬膳のパン(薬膳パン)に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、東洋医学の理論に基づいた健康保持のための薬膳の食品として、いろいろなものが提案されている。例えば、特許文献1には、熱処理を施した生薬の粉末を原料に混合して製麺された薬膳麺が記載されている。特許文献2には、薬膳うどんセットが記載されており、この薬膳うどんセットは、茸抽出エキス末を水に溶かし、この茸抽出エキス溶液と地粉を精麦してなるうどん麺用小麦粉とを混合し、練り上げてうどん下地とした薬膳うどんと、茸抽出エキス末を濃縮だししょうゆに混合してなるめんつゆと、の組合せからなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9−206012号公報
【特許文献2】特許第4722077号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような薬膳は、健康保持のために、食する機会の多いパンに適用するのは好ましいことである。しかしながら、特許文献1、2に記載の麺類のように、煮炊きされて薬膳の成分が湯に溶け出すような調理方法とは異なり、パンの調理方法は、食する前にカットされ焼かれるような簡単なものであるから、パン生地の所々に含まれる薬膳の食材が食欲に直接の影響を与え易い。
【0005】
本発明は、係る事由に鑑みてなされたものであり、その目的は、薬膳の食材が食欲に良好に影響し得る薬膳パンを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の薬膳パンは、焼成されたパン生地の中に、認識し易い所定の長さの植物由来の薬膳塊状食材が、前記パン生地に分散されて1種類以上含まれ、更に、該薬膳塊状食材の所定の長さよりも小さい所定の直径以下に粉砕された植物由来の薬膳粉末食材が、前記パン生地と混合されて1種類以上含まれており、前記薬膳塊状食材と前記薬膳粉末食材とは、合わせて少なくとも2種類以上であることを特徴とする。
【0007】
請求項2に記載の薬膳パンは、請求項1に記載の薬膳パンにおいて、前記薬膳塊状食材の所定の長さは、0.5mm〜15mmの長さであることを特徴とする。
【0008】
請求項3に記載の薬膳パンは、請求項1又は2に記載の薬膳パンにおいて、前記薬膳粉末食材の所定の直径は、0.1mmよりも小さい直径であることを特徴とする。
【0009】
請求項4に記載の薬膳パンは、請求項1〜3のいずれか1項に記載の薬膳パンにおいて、前記薬膳塊状食材は、ハト麦、ユリ根、クコの実の3種類のうちから選ばれる食材であることを特徴とする。
【0010】
請求項5に記載の薬膳パンは、請求項1〜4のいずれか1項に記載の薬膳パンにおいて、更に、多孔質の粉末炭素材が前記パン生地と混合されて含まれていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る薬膳パンによれば、認識し易い所定の長さの薬膳塊状食材が、食する人に薬膳であることを認識させて食欲を促すように作用し、薬膳粉末食材が、全体の薬膳としての効能を調整するので、食する人の食欲に良好に影響することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施形態に係る薬膳パンの実施例を示す外観写真である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の実施形態を、以下説明する。本発明の実施形態に係る薬膳パン1は、焼成されたパン生地2の中に、薬膳塊状食材3と薬膳粉末食材4がそれぞれ1種類以上含まれているものである(図1参照)。焼成されたパン生地2は、従来のパン生地2と同じものを用いることができる。薬膳塊状食材3と薬膳粉末食材4とは共に、東洋医学の理論に基づいた健康保持のための薬膳の食材である。薬膳塊状食材3と薬膳粉末食材4は、それらを合わせて(合計して)少なくとも2種類以上が、相互に良好な影響を及ぼすように或いは相互に悪影響を及ぼさないように、薬膳の原則に従って含まれており、通常の薬膳料理のように適切な効能を得ることができるようになっている。
【0014】
薬膳塊状食材3は、薬膳としての効能のために含まれるとともに、食する人に薬膳であることを認識させ食欲を促すような外観のためにも含まれる。そのため、食する人が認識し易い所定の長さになっている。例えば、0.5mm〜15mmの範囲の長さであれば、食する人が認識し易く、かつ、食し易いものとすることができる。ここで、認識し易い所定の長さにするためには、採取された状態が適切な大きさであればそのまま用い、長すぎれば所定の長さにカットすることにより塊状にする。
【0015】
所定の長さの薬膳塊状食材3は、パン生地2の中に分散されている。この分散は、できるだけ広範囲であるのが好ましい。これは、食するときに、薬膳パン1をカット或いはちぎったときに、薬膳塊状食材3が現れやすくするためである。薬膳塊状食材3は、乾燥されたものを用いて、薬膳パン1の発酵工程の前に、後述する薬膳粉末食材4がパン生地2とよく混合した後、続けてミキサー等を用いてそれらと一緒に比較的短時間混ぜればよい。
【0016】
薬膳塊状食材3は、植物由来の薬膳の食材である。動物由来の食材であると、良好な品質のまま薬膳パン1を保存することが困難になるからである。
【0017】
薬膳塊状食材3は、薬膳の食材であれば限定されるものではないが、好ましい例として、ユリ根、クコの実、ハト麦などが挙げられる。薬膳塊状食材3は、ある程度のサイズのものであるから、その味がそのまま知覚され易い。そのため、食材自体が非常に苦かったり辛かったりするものは避けるのが好ましい。ユリ根、クコの実、ハト麦などは、それ自体に甘みがあるため、薬膳塊状食材3に好適である。
【0018】
薬膳粉末食材4は、薬膳塊状食材3の食材を考慮して、全体の薬膳としての効能を調整するために含まれる。薬膳粉末食材4は、薬膳塊状食材3と同種類又は異種類のものの場合がある。同種類の場合は、薬膳塊状食材3が有する同じ効能を薬膳塊状食材3だけのときよりも増加させることができる。異種類の場合は、薬膳塊状食材3と組み合わせて全体として適切な効能を奏することができる。
【0019】
薬膳粉末食材4は、所定の直径以下に粉砕された粉末であり、パン生地2と混合されている。この所定の直径は、薬膳塊状食材3の上記した所定の長さよりも非常に小さい。また、薬膳粉末食材4は、食材の味が薬膳塊状食材3のようには集中しないので、辛みや渋みのある場合、それが抑制されて、食する人の食欲が減退しないようにすることができる。薬膳粉末食材4は、パン生地2と混合され易いように、好ましくは、0.1mmよりも小さい直径以下である。薬膳粉末食材4は、乾燥されたものを用いて、薬膳パン1の発酵工程の前に、ミキサー等をよってよく混合させればよい。
【0020】
薬膳粉末食材4は、植物由来の薬膳の食材である。薬膳粉末食材4は、薬膳の食材であれば限定されるものでなく様々なものが可能であるが、例として、生姜、胡麻、ユリ根、韃靼蕎麦などが挙げられる。生姜は、辛みのある食材であるが、粉末にしてパン生地2と混合されると、辛みが抑制される。また、胡麻は、粉末にすると、成分が人体に吸収され易くすることができる。
【0021】
薬膳パン1には、多孔質の粉末炭素材がパン生地2と混合されて含まれているようにすることもできる。粉末炭素材は、食することが可能な活性炭を用いることが可能である。このようにすると、薬膳粉末食材4は、非常に細かいものであれば、粉末炭素材の空孔の中に入り込むものも多い。そして、約200℃の高温で加熱するパンの焼成工程においては、ビタミン類などは変質や破壊等がある程度起こって減少するのが通常であるが、空孔の中に入り込んだ薬膳粉末食材4は、高温の熱から保護されてビタミン類などの減少が抑制される。また、粉末炭素材によって水分がある程度保たれ易いので、粉末炭素材を含む薬膳パン1の味わいとしては、しっとりしたものとなる傾向にある。
【0022】
表1は、実験のために、粉末のかぼちゃを薬膳粉末食材4に見立ててパン生地と混合して焼成したパンと、粉末のかぼちゃと活性炭をパン生地と混合して焼成したパンと、を製造し、高速液体クロマトグラフ法で分析した結果である。β−カロテンとビタミンE(α−トコフェロール)は、活性炭を混合すると、減少が顕著に抑制されていた。なお、活性炭の量は、全体の重量の約2%程度とした。
【0023】
【表1】

【実施例1】
【0024】
薬膳パン1の実施例1は、図1に示すように、薬膳塊状食材3としてユリ根とクコの実の2種類を含んでおり、薬膳粉末食材4としてユリ根を含んだものである。この薬膳パン1は、体力回復などの効能のためのものである。個別では、ユリ根は、鎮静作用があり、安眠に効果的である。クコの実は、腎臓・肝臓の機能低下を改善する。薬膳粉末食材4のユリ根は、ユリ根の効能を増加させるものである。
【実施例2】
【0025】
薬膳パン1の実施例2は、薬膳塊状食材3としてハト麦を含んでおり、薬膳粉末食材4として生姜を含んだものである。この薬膳パン1は、むくみ抑制や美肌などの効能のためのものである。個別では、ハト麦は、利尿作用により体のむくみを解消する。生姜は、体を温める。
【0026】
以上、本発明の実施形態に係る薬膳パンについて説明したが、本発明は、上述の実施形態に記載したものに限られることなく、特許請求の範囲に記載した事項の範囲内でのさまざまな変更が可能である。
【符号の説明】
【0027】
1 薬膳パン
2 パン生地
3 薬膳塊状食材
4 薬膳粉末食材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
焼成されたパン生地の中に、認識し易い所定の長さの植物由来の薬膳塊状食材が、前記パン生地に分散されて1種類以上含まれ、更に、該薬膳塊状食材の所定の長さよりも小さい所定の直径以下に粉砕された植物由来の薬膳粉末食材が、前記パン生地と混合されて1種類以上含まれており、
前記薬膳塊状食材と前記薬膳粉末食材とは、合わせて少なくとも2種類以上であることを特徴とする薬膳パン。
【請求項2】
請求項1に記載の薬膳パンにおいて、
前記薬膳塊状食材の所定の長さは、0.5mm〜15mmの長さであることを特徴とする薬膳パン。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の薬膳パンにおいて、
前記薬膳粉末食材の所定の直径は、0.1mmよりも小さい直径であることを特徴とする薬膳パン。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の薬膳パンにおいて、
前記薬膳塊状食材は、ハト麦、ユリ根、クコの実の3種類のうちから選ばれる食材であることを特徴とする薬膳パン。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の薬膳パンにおいて、
更に、多孔質の粉末炭素材が前記パン生地と混合されて含まれていることを特徴とする薬膳パン。

【図1】
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