説明

藍藻類スピルリナ組成物

【課題】腎臓機能を回復させる効果をいっそう向上させた藍藻類スピルリナ組成物を提供する。
【解決手段】藍藻類スピルリナ粉末100重量部と前記藍藻類スピルリナより抽出したフィコシアニンを主成分とする青色色素6〜20重量部とを含有している藍藻類スピルリナ組成物とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、腎臓機能を改善させる効果のある藍藻類スピルリナ組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
フィコシアニンは、藍藻類スピルリナに多く含まれている光合成色素の一つであるが、水溶性の蛋白質であるので、水溶液とすることができる。フィコシアニンの水溶液は、明るい青色を呈する。この水溶液とすると明るい青色を呈するフィコシアニンは、従来からチューインガムやアイスキャンディー等の食品を着色する為の天然色素の主成分として知られている。また、フィコシアニンは、人や動物の胆汁色素と同じ構造を有しているので、生体に関わりが深い物質であることもわかっている。
【0003】
従来、フィコシアニンが、生理活性作用、特に、腎臓機能改善作用を有していることが報告されているが、フィコシアニンを含有する薬剤としては、フィコシアニンを含有している藍藻類スピルリナ、又は、藍藻類スピルリナの水溶性画分、を有効成分とする腎臓疾患予防用薬剤(特許文献1を参照。)が提案されている。
【0004】
前記藍藻類スピルリナ、又は、藍藻類スピルリナの水溶性画分に含有されているフィコシアニンは、通常、2〜4%程度のフィコシアニンを含有しているが、これらの藍藻類スピルリナ、又は、藍藻類スピルリナの水溶性画分、を有効成分として含有する腎臓疾患予防用薬剤は、前述のとおり、フィコシアニンの含有量が2〜4%程度と少ないので、血清クレアチニンを十分に低下させることができず、そのために、腎臓機能を十分に改善させることができない、という問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平1−316326号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、かかる問題を解決することを目的としている。
【0007】
即ち、本発明は、腎臓機能を回復させる効果をいっそう向上させた藍藻類スピルリナ組成物を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載された発明は、上記目的を達成するために、藍藻類スピルリナ粉末100重量部と前記藍藻類スピルリナより抽出したフィコシアニンを主成分とする青色色素6〜20重量部とを含有していることを特徴とする藍藻類スピルリナ組成物である。
【発明の効果】
【0009】
請求項1に記載された発明によれば、藍藻類スピルリナ粉末100重量部と前記藍藻類スピルリナより抽出したフィコシアニンを主成分とする青色色素6〜20重量部とを含有している藍藻類スピルリナ組成物とするので、腎臓機能を回復させる効果をいっそう向上させた藍藻類スピルリナ組成物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】実施例1〜8及び比較例1〜3で得た錠剤の錠剤投与後の日数と血清クレアチニン濃度(mg/dl)との関係を示すグラフである。
【図2】実施例1〜8及び比較例1〜3で得た錠剤における青色色素添加量(重量部)と7日後の血清クレアチニン濃度(mg/dl)との関係示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
フィコシアニンは、ポルフィリン環が開環したテトラピロール構造を有するフィコシアノビリンと呼ばれる色素部分と蛋白質とがペプチド結合した水溶性の色素蛋白質の構造をもっている。
【0012】
フィコシアニンの性質に最も大きな影響を及ぼしているのは、分子の大部分を占めている蛋白質部分であるので、フィコシアニンは、蛋白質としての性質を持っており、そのために、フィコシアニンは、蛋白質としての強さ、弱さを持っている。
【0013】
フィコシアニンは、赤色光を吸収するので、その水溶液は青色を呈する。また、フィコシアニンは、極大吸収波長を618nmとする赤色の蛍光を発する蛍光物質である。
【0014】
フィコシアニンは、通常、3量体又は6量体を形成している。単量体は、α、βのポリペプチドで構成されているが、フィコシアニンの場合、α=16,000、β=20,000であるので、その分子量は、約11万又は22万であると推定される。また、フィコシアニンは、等電点を4.3とする酸性蛋白質であるので、その水溶液は、アルカリ性では不安定となるが、pH5〜7では安定となる。
【0015】
スピルリナには、フィコシアニンの他に、フィコビリン蛋白質として、フィコエリトリン及びアロフィコシアニンが含まれており、その吸収曲線は、実際にはこの3本のピークが重なっている。
【0016】
フィコシアニンは、冷水又は40℃以下の温水に速やかに溶解し、明るい青色の水溶液となる。水100g当たりの溶解度は約10gである。フィコシアニンは、エタノール、アセド、エーテル等の有機溶媒には不溶である。その理由は、蛋白質がエタノール、アセド、エーテル等の有機溶媒で変性されて、沈殿を生成するためである。しかしながら、フィコシアニンは、20%以下のエタノール水溶液には溶解するが、不安定で徐々に沈殿を生ずる。
【0017】
フィコシアニンは、水溶液の場合は、40℃以上で急速に暗色化するが、粉末(水分量8%以下)の場合は、110℃で2時間加熱を行っても変化しない。また、フィコシアニンは、水溶液の場合、アルカリ側より酸性側が安定であるが、一般的に、光に対しては退色率が大きい。
【0018】
フィコシアニンを主成分とする青色色素は、
(1)噴霧乾燥したスピルリナを水に浸漬してフィコシアニンを抽出することによりフィコシアニン抽出液を得る工程、
(2)前記フィコシアニン抽出液からスピルリナの水不溶部分を遠心分離機を用いて分離除去する工程、
(3)前記スピルリナの水不溶部分を分離除去したフィコシアニン抽出液を限外濾過膜を用いて、分子量分画を行い、分子量15,000以下の水溶性部分を分離除去する工程、
(4)前記分子量15,000以下の水溶性部分を分離除去したフィコシアニン抽出液からフィコシアニンを分離する工程、
(5)前記分離されたフィコシアニンを限外濾過膜で濃縮する工程、
(6)前記濃縮したフィコシアニンに副原料を加えて、これらを噴霧乾燥することにより、フィコシアニンを主成分とする粉末状の青色色素を得る工程、及び、
(7)前記粉末状の青色色素を熱風乾燥機を用いて殺菌する工程
を順次経て製造される。
【0019】
本発明の藍藻類スピルリナ組成物は、藍藻類スピルリナ粉末100重量部と前記藍藻類スピルリナより抽出したフィコシアニンを主成分とする青色色素6〜20重量部とを含有している。
【0020】
藍藻類スピルリナの粉末100重量部に対する前記スピルリナより抽出したフィコシアニンを主成分とする青色色素の添加量が6重量部未満であると、後述する比較例1〜3に示されているように、健康な男性における血清クレアチニン濃度の正常値:0.60〜1.20mg/dlの範囲に低下させることができないが、藍藻類スピルリナの粉末100重量部に対する前記スピルリナより抽出したフィコシアニンを主成分とする青色色素の添加量が6〜20重量部であると、後述する実施例1〜8に示されているように、錠剤投与7日後の血清クレアチニン濃度(mg/dl)が、健康な男性における血清クレアチニン濃度の正常値:0.60〜1.20mg/dlの範囲に低下させることができる。また、前記藍藻類スピルリナの粉末100重量部に対する前記スピルリナより抽出したフィコシアニンを主成分とする青色色素の添加量が20重量部を超えても、健康な男性における血清クレアチニン濃度の正常値:0.60〜1.20mg/dlの範囲に低下させることができるが、前記フィコシアニンを主成分とする青色色素は高価であるので、前記藍藻類スピルリナ組成物の製造コストを上げるこことなり好ましくない。したがって、前記藍藻類スピルリナ粉末100重量部に対する前記藍藻類スピルリナより抽出したフィコシアニンを主成分とする青色色素の含有量は、6〜20重量部である。
【0021】
このように、藍藻類スピルリナ粉末100と前記藍藻類スピルリナより抽出したフィコシアニンを主成分とする青色色素6〜20重量部とを含有していると、腎臓機能を回復させる効果をいっそう向上させた藍藻類スピルリナ組成物を提供することができる。
【0022】
本発明の藍藻類スピルリナ組成物は、粉末状、粒状、又は、カプセルとされて、薬剤製品とされるが、本発明の藍藻類スピルリナ組成物は、好ましくは、打錠機で打錠されて錠剤とされる。
【実施例】
【0023】
以下に、本発明の実施例を説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0024】
(実施例1)
藍藻類スピルリナ粉末100重量に前記藍藻類スピルリナより抽出したフィコシアニンを主成分とする青色色素6重量部を添加して藍藻類スピルリナ組成物とし、この藍藻類スピルリナ組成物を打錠機で打錠して錠剤とした。そして、このようにして得た錠剤を血清クレアチニン濃度2.50mg/dlの男性患者10名に毎日20錠(0.2g/錠×20錠)7日間投与して、毎日、血清クレアチニン濃度の測定を行った。測定結果は、次の表1
【表1】

に示される。なお、健康な男性における血清クレアチニン濃度の正常値は、0.60〜1.20mg/dlである(血清クレアチニン濃度が2.50mg/dlを越えると、透析が必要となる。)。
【0025】
(実施例2)
藍藻類スピルリナ粉末100重量に前記藍藻類スピルリナより抽出したフィコシアニンを主成分とする青色色素8重量部を添加して藍藻類スピルリナ組成物とし、この藍藻類スピルリナ組成物を打錠機で打錠して錠剤とした。そして、このようにして得た錠剤を血清クレアチニン濃度2.50mg/dlの男性患者10名に毎日20錠(0.2g/錠×20錠)7日間投与して、毎日、血清クレアチニン濃度の測定を行った。測定結果は、次の表2
【表2】

に示される。
【0026】
(実施例3)
藍藻類スピルリナ粉末100重量に前記藍藻類スピルリナより抽出したフィコシアニンを主成分とする青色色素10重量部を添加して藍藻類スピルリナ組成物とし、この藍藻類スピルリナ組成物を打錠機で打錠して錠剤とした。そして、このようにして得た錠剤を血清クレアチニン濃度2.50mg/dlの男性患者10名に毎日20錠(0.2g/錠×20錠)7日間投与して、毎日、血清クレアチニン濃度の測定を行った。測定結果は、次の表3
【表3】

に示される。
【0027】
(実施例4)
藍藻類スピルリナ粉末100重量に前記藍藻類スピルリナより抽出したフィコシアニンを主成分とする青色色素12重量部を添加して藍藻類スピルリナ組成物とし、この藍藻類スピルリナ組成物を打錠機で打錠して錠剤とした。そして、このようにして得た錠剤を血清クレアチニン濃度2.50mg/dlの男性患者10名に毎日20錠(0.2g/錠×20錠)7日間投与して、毎日、血清クレアチニン濃度の測定を行った。測定結果は、次の表4
【表4】

に示される。
【0028】
(実施例5)
藍藻類スピルリナ粉末100重量に前記藍藻類スピルリナより抽出したフィコシアニンを主成分とする青色色素14重量部を添加して藍藻類スピルリナ組成物とし、この藍藻類スピルリナ組成物を打錠機で打錠して錠剤とした。そして、このようにして得た錠剤を血清クレアチニン濃度2.50mg/dlの男性患者10名に毎日20錠(0.2g/錠×20錠)7日間投与して、毎日、血清クレアチニン濃度の測定を行った。測定結果は、次の表5
【表5】

に示される。
【0029】
(実施例6)
藍藻類スピルリナ粉末100重量に前記藍藻類スピルリナより抽出したフィコシアニンを主成分とする青色色素16重量部を添加して藍藻類スピルリナ組成物とし、この藍藻類スピルリナ組成物を打錠機で打錠して錠剤とした。そして、このようにして得た錠剤を血清クレアチニン濃度2.50mg/dlの男性患者10名に毎日20錠(0.2g/錠×20錠)7日間投与して、毎日、血清クレアチニン濃度の測定を行った。測定結果は、次の表6
【表6】

に示される。
【0030】
(実施例7)
藍藻類スピルリナ粉末100重量に前記藍藻類スピルリナより抽出したフィコシアニンを主成分とする青色色素18重量部を添加して藍藻類スピルリナ組成物とし、この藍藻類スピルリナ組成物を打錠機で打錠して錠剤とした。そして、このようにして得た錠剤を血清クレアチニン濃度2.50mg/dlの男性患者10名に毎日20錠(0.2g/錠×20錠)7日間投与して、毎日、血清クレアチニン濃度の測定を行った。測定結果は、次の表7
【表7】

に示される。
【0031】
(実施例8)
藍藻類スピルリナ粉末100重量に前記藍藻類スピルリナより抽出したフィコシアニンを主成分とする青色色素20重量部を添加して藍藻類スピルリナ組成物とし、この藍藻類スピルリナ組成物を打錠機で打錠して錠剤とした。そして、このようにして得た錠剤を血清クレアチニン濃度2.50mg/dlの男性患者10名に毎日20錠(0.2g/錠×20錠)7日間投与して、毎日、血清クレアチニン濃度の測定を行った。測定結果は、次の表8
【表8】

に示される。
【0032】
(比較例1)
藍藻類スピルリナ粉末100重量に前記藍藻類スピルリナより抽出したフィコシアニンを主成分とする青色色素0.1重量部を添加して藍藻類スピルリナ組成物とし、この藍藻類スピルリナ組成物を打錠機で打錠して錠剤とした。そして、このようにして得た錠剤を血清クレアチニン濃度2.50mg/dlの男性患者10名に毎日20錠(0.2g/錠×20錠)7日間投与して、毎日、血清クレアチニン濃度の測定を行った。測定結果は、次の表9
【表9】

に示される。
【0033】
(比較例2)
藍藻類スピルリナ粉末100重量に前記藍藻類スピルリナより抽出したフィコシアニンを主成分とする青色色素5.0重量部を添加して藍藻類スピルリナ組成物とし、この藍藻類スピルリナ組成物を打錠機で打錠して錠剤とした。そして、このようにして得た錠剤を血清クレアチニン濃度2.50mg/dlの男性患者10名に毎日20錠(0.2g/錠×20錠)7日間投与して、毎日、血清クレアチニン濃度の測定を行った。測定結果は、次の表10
【表10】

に示される。
【0034】
(比較例3)
藍藻類スピルリナ粉末のみよりなる藍藻類スピルリナ組成物を打錠機で打錠して錠剤とした。そして、このようにして得た錠剤を血清クレアチニン濃度2.50mg/dlの男性患者10名に毎日20錠(0.2g/錠×20錠)7日間投与して、毎日、血清クレアチニン濃度の測定を行った。測定結果は、次の表11
【表11】

に示される。
【0035】
以上、実施例1〜8及び比較例1〜3に記載された「錠剤の錠剤投与後の日数」と「血清クレアチニン濃度(mg/dl)」との関係は、図1に示される。図1において、横軸は、錠剤投与後の日数(日)であり、そして、縦軸は、血清クレアチニン濃度(mg/dl)である。また、実施例1〜8及び比較例1〜3に記載された「錠剤における青色色素添加量(重量部)」と「7日後の血清クレアチニン濃度(mg/dl)」との関係は、図2に示される。図2において、横軸は、青色色素添加量(重量部)であり、そして、縦軸は、7日後の血清クレアチニン濃度(mg/dl)である。
【0036】
図1から次のことがわかる。即ち、実施例1〜8は、藍藻類スピルリナ粉末100重量部に、フィコシアニンを主成分とする青色色素6重量部、8重量部、10重量部、12重量部、14重量部、16重量部、18重量部及び20重量部を、それぞれ、添加した錠剤を投与したものであり、比較例1,2は、フィコシアニンを主成分とする青色色素0.1重量部及び5.0重量部を、それぞれ、添加した錠剤を投与したものであり、そして、比較例3は、フィコシアニンを主成分とする青色色素を添加しない錠剤を投与したものであるが、図1からは、次のことがわかる。即ち、実施例1〜8では、血清クレアチニン濃度(mg/dl)が錠剤投与7日後まで急激に低下するのに対して、比較例1〜3では、血清クレアチニン濃度(mg/dl)が錠剤投与7日後まで緩やかに低下するに過ぎない。また、図2からは、実施例1〜8では、錠剤投与7日後の血清クレアチニン濃度(mg/dl)が、健康な男性における血清クレアチニン濃度の正常値:0.60〜1.20mg/dlの範囲に低下するのに対して、比較例1〜3では、健康な男性における血清クレアチニン濃度の正常値:0.60〜1.20mg/dlの範囲に低下しない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
藍藻類スピルリナ粉末100重量部と前記藍藻類スピルリナより抽出したフィコシアニンを主成分とする青色色素6〜20重量部とを含有していることを特徴とする藍藻類スピルリナ組成物。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−79792(P2011−79792A)
【公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−234894(P2009−234894)
【出願日】平成21年10月9日(2009.10.9)
【出願人】(591050420)ジャパン・アルジェ株式会社 (6)
【Fターム(参考)】