説明

藻礁用の海藻定着基盤及びこれを利用した藻・魚礁一体型海藻定着基盤

【課題】可溶性アルカリ分が溶出するおそれがなく、海藻種子・胞子の定着率が高まり、海藻の仮根や根が定着しやすい藻礁用の海藻定着基盤。
【解決手段】陶磁器粉砕物、碍子粉砕物、耐火レンガ類粉砕物、天然火成岩粉砕物の中のいずれか一種または複数種の粒径5μ以上で300μ未満のもの10〜27重量%と、粒径300〜1000μのもの63〜70重量%及び天然ガラス質鉱物の粒径50μ以下のもの10〜20重量%とを混合し、所定量の水分及び有機バインダーを加えて混練し、混練物を所定の形状に成形した後、有機バインダーが粘着力を有している湿潤状態の間に、粒径が300μを超えない大きさで所定の粒径範囲に整粒されているセラミック粒子を混練物の表面全体に振りかけてまぶし、セラミック粒子が表面全体にまぶされた混練物を乾燥させ、1000〜1500℃で焼成した多孔質焼結体からなる藻礁用の海藻定着基盤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、藻礁用の海藻定着基盤に関し、特に、茶碗・花瓶類などの陶磁器粉砕物、碍子粉砕物、耐火レンガ粉砕物、天然火成岩粉砕物などを原料とし、焼成方法により製造した多孔質焼結体からなる藻礁用の海藻定着基盤と、これを利用した藻・魚礁一体型海藻定着基盤に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から藻礁用の海藻定着基盤としては種々のものが提案されている。特に、藻食魚類や無脊椎動物などから海藻類の生体や幼体を保護して藻場の拡大を図ることを目的とした藻礁用の海藻定着基盤や、これを利用した藻・魚礁一体型海藻定着基盤に関しては種々の提案がされている(例えば、特許文献1、2)。
【0003】
一方、近時、地球温暖化、CO削減などのテーマを通して地球温暖化への問題意識と危機感が高まる中、その対策としての新技術に大きな期待と願望がよせられている。とりわけ卓越した物性などの特質を備えた有用資源の有効利用には期待がよせられている。
【0004】
卓越した物性などの特質を備えた有用資源のひとつとして電信柱、送電塔などの送電設備とこれらに関連する変電設備等において電気絶縁に常用される碍子がある。碍子には、その使用目的上要求される機能、安全性、信頼性等から1300℃の還元雰囲気という物性上きわめて厳しい条件下で製造された焼成焼結体が使用されている。その製造条件により碍子は吸水率0%の緻密な構造を持つことから硬度・耐摩耗性がすこぶる高く、耐酸・耐アルカリ性に代表される耐薬品性にも卓抜して優れている。しかも、半永久的に物性変化がないため経年変化がほとんど認められないという注目すべき性質を有している。
【0005】
このような碍子の際立った物性安定性に代表される特異な性質のおかげで、使用済みの碍子を回収してもこれを廃棄物として適切に処理する化学的あるいは物理的手段がなく、ましてや実用し得る再利用の技術もなかった。毎年膨大な量にのぼる回収された使用済み碍子は、その希有な注目すべき特質にもかかわらず、新たな価値を再生産することなく単なる廃材として回収された状態のままで埋め立て用などとして投棄されていた。
【0006】
そこで、本願出願人は、碍子廃材の再利用のための碍子廃材を材料とする多孔性焼結体の製造方法を提案している(特許文献3)。
【0007】
この先の提案は、碍子廃材を出発物質として碍子廃材を粉砕する工程、粉砕したものを分級する工程、分級した粉砕物を含む成形材料を調製する工程、次いで、混練する工程、混練物を成形する工程、その後、成形物焼成工程を経て溶融層により碍子粒部が相互に接合された構造と所定の空隙率を持つ容器状の多孔性焼結体を得るものであった。
【0008】
これによって、空隙を有していて軽量で、通気性・通水性と保水性を併せ持つ多孔性焼結体の特性を生かした、多孔性焼結体からなる緑化基板や、海洋性藻類等付着基板を提供することができ、碍子廃材から有価物として経済価値を有するさまざまな実用品を製造し、碍子廃材の有効なリサイクル手段を提供することができた。
【0009】
茶碗・花瓶類などの陶磁器、耐火レンガ類、また、陶石・サバに代表される珪石・長石混合物などの天然火成岩なども前述した碍子と同様に卓越した物性などの特質を備えた有用資源である。
【0010】
しかし、天然窯業原料として使用中の原料以外の低品位で未利用の原料や、陶磁器製造工程での不合格製品や、廃棄対象になった茶碗・花瓶類などの陶磁器については、これまで有効な利用技術が確立されていなかった。また、耐火レンガ類に関しても製造工程での不合格製品や、撤去などにより廃棄対象になった製品についての有効な利用技術はこれまで確立されていなかった。
【0011】
このため、製造工程で不合格となったこれらの製品や、撤去などにより廃棄対象になったこれらの製品の有効利用は少量で、毎年膨大な量が未利用のままとなっていたり、廃棄物として投棄されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開平7−236384号公報
【特許文献2】特開2005−333960号公報
【特許文献3】特開2006−16227号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
従来の藻礁用の海藻定着基盤や、これを利用した藻・魚礁一体型海藻定着基盤は一般的にコンクリートブロックで形成されているため、可溶性アルカリ分の溶出が及ぼす影響を無視できなかった。
【0014】
また、従来の藻礁用の海藻定着基盤や、これを利用した藻・魚礁一体型海藻定着基盤に関しては、海藻種子・胞子の定着率を高めること、海藻の仮根や根が定着しやすいものにする点において改善すべき余地があった。
【0015】
この発明は、藻礁用の海藻定着基盤から可溶性アルカリ分が溶出するおそれがなく、また、海藻種子・胞子の定着率が高まり、海藻の仮根や根が定着しやすい藻礁用の海藻定着基盤を提供すること、更に、藻食魚類や無脊椎動物などから海藻類の生体や幼体を保護することに適した藻礁用の海藻定着基盤と、これを利用した藻・魚礁一体型海藻定着基盤を提案することを目的にしている。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本願の発明者は、特許文献3で提案した技術について更に検討を進める中で、碍子廃材だけでなく、廃棄対象などになった茶碗・花瓶類などの陶磁器、耐火レンガ類、陶石・サバに代表される珪石・長石混合物などの天然火成岩についても、これらの特性を生かし、有用資源として有効利用できることを見出して本願発明を完成させた。
【0017】
なお、碍子には、樹脂製のものも存在しているが、本発明は、1000℃以上の高温で焼成した多孔質焼結体からなる藻礁用の海藻定着基盤に関するものであり、本発明における碍子は、磁器製の碍子のみを対象としている。
【0018】
前記目的を達成する請求項1記載の発明は、
陶磁器粉砕物、碍子粉砕物、耐火レンガ類粉砕物、天然火成岩粉砕物の中のいずれか一種または複数種の粒径5ミクロン以上で300ミクロン未満のもの10〜27重量%と、粒径300〜1000ミクロンのもの63〜70重量%及び、
天然ガラス質鉱物の粒径50ミクロン以下のもの10〜20重量%とを混合し、
あるいは、
陶磁器粉砕物、碍子粉砕物、耐火レンガ類粉砕物、天然火成岩粉砕物の中のいずれか一種または複数種の粒径300ミクロン〜20000ミクロンのもの80〜90重量%及び、
天然ガラス質鉱物の粒径50ミクロン以下のもの10〜20重量%とを混合し、
これに所定量の水分及び有機バインダーを加えて混練し、
混練物を所定の形状に成形した後、
前記有機バインダーが粘着力を有している湿潤状態の間に、粒径が300ミクロンを超えない大きさで所定の粒径範囲に整粒されているセラミック粒子を前記所定の形状に成形されている混練物の表面全体に振りかけてまぶし、
当該セラミック粒子が表面全体にまぶされた前記所定の形状に成形されている混練物を乾燥させ、その後、1000〜1500℃で焼成した
多孔質焼結体
からなる藻礁用の海藻定着基盤である。
【0019】
請求項2記載の発明は、
陶磁器粉砕物、碍子粉砕物、耐火レンガ類粉砕物、天然火成岩粉砕物の中のいずれか一種または複数種の粒径5ミクロン以上で300ミクロン未満のもの10〜27重量%と、粒径300〜1000ミクロンのもの63〜70重量%及び、
天然ガラス質鉱物の粒径50ミクロン以下のもの10〜20重量%とを混合し、
あるいは、
陶磁器粉砕物、碍子粉砕物、耐火レンガ類粉砕物、天然火成岩粉砕物の中のいずれか一種または複数種の粒径300ミクロン〜20000ミクロンのもの80〜90重量%及び、
天然ガラス質鉱物の粒径50ミクロン以下のもの10〜20重量%とを混合し、
これに所定量の水分及び有機バインダーを加えて混練し、
混練物を円柱状の形状に成形した後、
前記有機バインダーが粘着力を有している湿潤状態の間に、粒径が300ミクロンを超えない大きさで所定の粒径範囲に整粒されているセラミック粒子を前記円柱状の形状に成形されている混練物の表面全体に振りかけてまぶし、
当該セラミック粒子が表面全体にまぶされた前記円柱状の形状に成形されている混練物を乾燥させ、その後、1000〜1500℃で焼成した
円柱状の多孔質焼結体の一端側と他端側にそれぞれ種糸取り付け用のフックが立設されている
ことを特徴とする藻礁用の海藻定着基盤である。
【0020】
請求項3記載の発明は、
前記円柱状の多孔質焼結体の周壁に前記一端側と他端側との間に所定の間隔を空けて突起部が複数個形成されている
ことを特徴とする請求項2記載の藻礁用の海藻定着基盤である。
【0021】
請求項4記載の発明は、
陶磁器粉砕物、碍子粉砕物、耐火レンガ類粉砕物、天然火成岩粉砕物の中のいずれか一種または複数種の粒径範囲が2mm以上で3mm未満、3mm以上で5mm未満、5mm以上で10mm未満、10mm以上で20mm未満、20mm以上で40mm未満のものを一種または複数種組み合わせたもの80〜90重量%と、
天然ガラス質鉱物の粒径50ミクロン以下のもの10〜20重量%とを混合し、
これに所定量の水分及び有機バインダーを加えて混練し、
混練物を所定の形状に成形した後、
前記有機バインダーが粘着力を有している湿潤状態の間に、粒径が300ミクロンを超えない大きさで所定の粒径範囲に整粒されているセラミック粒子を前記所定の形状に成形されている混練物の表面全体に振りかけてまぶし、
当該セラミック粒子が表面全体にまぶされた前記所定の形状に成形されている混練物を乾燥させ、その後、1000〜1500℃で焼成した
多孔質焼結体
からなる藻礁用の海藻定着基盤である。
【0022】
請求項5記載の発明は、
前記陶磁器粉砕物、碍子粉砕物、耐火レンガ類粉砕物、天然火成岩粉砕物の中のいずれか一種または複数種の粒径範囲が2mm以上で3mm未満、3mm以上で5mm未満、5mm以上で10mm未満のものを一種または複数種組み合わせたものを使用してなる請求項4記載の藻礁用の海藻定着基盤と、
前記陶磁器粉砕物、碍子粉砕物、耐火レンガ類粉砕物、天然火成岩粉砕物の中のいずれか一種または複数種の粒径範囲が10mm以上で20mm未満、20mm以上で40mm未満のものを一種または複数種組み合わせたものを使用してなる請求項4記載の藻礁用の海藻定着基盤と
が連続的に配置されて形成されている藻礁用の海藻定着基盤である。
【0023】
請求項6記載の発明は、
陶磁器粉砕物、碍子粉砕物、耐火レンガ類粉砕物、天然火成岩粉砕物の中のいずれか一種または複数種の粒径範囲が2mm以上で3mm未満、3mm以上で5mm未満、5mm以上で10mm未満、10mm以上で20mm未満、20mm以上で40mm未満のものを一種または複数種組み合わせたもの80〜90重量%と、
天然ガラス質鉱物の粒径50ミクロン以下のもの10〜20重量%とを混合し、
これに所定量の水分及び有機バインダーを加えて混練し、
混練物を円柱状の形状に成形した後、
前記有機バインダーが粘着力を有している湿潤状態の間に、粒径が300ミクロンを超えない大きさで所定の粒径範囲に整粒されているセラミック粒子を前記円柱状の形状に成形されている混練物の表面全体に振りかけてまぶし、
当該セラミック粒子が表面全体にまぶされた前記円柱状の形状に成形されている混練物を乾燥させ、その後、1000〜1500℃で焼成した
円柱状の多孔質焼結体の一端側と他端側にそれぞれ種糸取り付け用のフックが立設されている
ことを特徴とする藻礁用の海藻定着基盤である。
【0024】
請求項7記載の発明は、
前記円柱状の多孔質焼結体の周壁に前記一端側と他端側との間に所定の間隔を空けて突起部が複数個形成されている
ことを特徴とする請求項6記載の藻礁用の海藻定着基盤である。
【0025】
請求項8記載の発明は、
請求項1記載の藻礁用の海藻定着基盤に、複数本の棒状体が立設されている
ことを特徴とする藻礁用の海藻定着基盤である。
【0026】
請求項9記載の発明は、
請求項1記載の藻礁用の海藻定着基盤の上側に、上側方向に向かって延びる複数本の棒状体が立設されている構造体が取り付けられている
ことを特徴とする藻礁用の海藻定着基盤である。
【0027】
請求項10記載の発明は、
請求項1記載の藻礁用の海藻定着基盤の上側に、円錐形状または多角錐形状に成形されている請求項4又は5記載の藻礁用の海藻定着基盤が取り付けられている
ことを特徴とする藻礁用の海藻定着基盤である。
【0028】
請求項11記載の発明は、
円錐形状または多角錐形状に成形されている請求項4又は5記載の藻礁用の海藻定着基盤が上側に取り付けられている構造体が、請求項1記載の藻礁用の海藻定着基盤の上側に取り付けられている
ことを特徴とする藻礁用の海藻定着基盤である。
【0029】
請求項12記載の発明は、
請求項1、4、5のいずれか一項に記載の藻礁用の海藻定着基盤が複数個配備されることによって形成される藻礁であって、前記複数個の海藻定着基盤は、隣接する海藻定着基盤同士の間に5〜50mmの間隔を空けて配備されていることを特徴とする人工藻礁である。
【0030】
請求項13記載の発明は、
前記複数個の海藻定着基盤が配備される構造物は、隣接する構造物同士の間に所定の空間部を空けて配置されている構造物であることを特徴とする請求項12記載の人工藻礁である。
【0031】
請求項14記載の発明は、
前記構造物は、廃棄がいし又は粗粉砕したがいしを骨材とした構造物であることを特徴とする請求項13記載の人工藻礁である。
【0032】
請求項15記載の発明は、
魚礁用の構造物に、請求項1乃至11のいずれかに記載の藻礁用の海藻定着基盤が組み合わされていることを特徴とする藻・魚礁一体型海藻定着基盤である。
【0033】
請求項16記載の発明は、
前記魚礁用の構造物は、前記構造物は、廃棄がいし又は粗粉砕したがいしを骨材とした構造物であることを特徴とする請求項15記載の藻・魚礁一体型海藻定着基盤である。
【発明の効果】
【0034】
この発明によれば、藻礁用の海藻定着基盤から可溶性アルカリ分が溶出するおそれがなく、また、海藻種子・胞子の定着率が高まり、海藻の仮根や根が定着しやすい藻礁用の海藻定着基盤、例えば、海藻養殖用の定着基盤を提供することができる。
【0035】
また、可溶性アルカリ分が溶出するおそれがなく、海藻種子・胞子の定着率が高まり、海藻の仮根や根が定着しやすく、なおかつ、藻食魚類や無脊椎動物などから海藻類の生体や幼体を保護することに適した藻礁用の海藻定着基盤、例えば、海藻養殖用の定着基盤を提供することができる。
【0036】
更に、このような藻礁用の海藻定着基盤、例えば、海藻養殖用の定着基盤を利用した藻・魚礁一体型海藻定着基盤を提供することができる。
【0037】
また、この発明によれば、廃棄対象となった碍子、茶碗・花瓶類などの陶磁器、耐火レンガ類、陶石・サバに代表される珪石・長石混合物などの天然火成岩を原料として、有価物として経済価値を有する藻礁用の海藻定着基盤、例えば、海藻養殖用の定着基盤を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】(a)は本発明の藻礁用の海藻定着基盤の一例を説明する側面図、(b)は図1(a)の平面図、(c)は図1(b)の一部拡大図。
【図2】(a)本発明の藻礁用の海藻定着基盤において表面に現れる陶磁器粉砕物、碍子粉砕物、耐火レンガ粉砕物、天然火成岩粉砕物などの粒子と、それらの間に形成される空隙部を説明する図、(b)図2(a)の一部を拡大し、一部を省略して表わした図、(c)本発明の藻礁用の海藻定着基盤において、陶磁器粉砕物、碍子粉砕物、耐火レンガ粉砕物、天然火成岩粉砕物などの粒子の表面にセラミック粒子が固着している状態を説明する一部を拡大し、一部を省略して表わした図。
【図3】本発明の藻礁用の海藻定着基盤において藻食魚類による食害を防ぐ機構を説明する図。
【図4】本発明の藻礁用の海藻定着基盤の上に、図1図示の本発明の藻礁用の海藻定着基盤が搭載されてなる本発明の藻礁用の海藻定着基盤の一例を説明する斜視図。
【図5】本発明の藻礁用の海藻定着基盤が組みつけられる魚礁用の構造物の一例であって、四分割されている構造体が互いの間に所定の空間部を空けている魚礁用の構造物を現す斜視図で、(a)は組み立て前の斜視図、(b)は組み立て後の斜視図。
【図6】本発明の藻・魚礁一体型海藻定着基盤の一例を説明する側面図。
【図7】図6図示の藻・魚礁一体型海藻定着基盤の平面図。
【図8】本発明の他の藻・魚礁一体型海藻定着基盤の一例を説明する側面図。
【図9】本発明の他の藻礁用の海藻定着基盤を構成する、上側方向に向かって延びる複数本の棒状体が立設されている構造体を説明する図であって、(a)は棒状体が取り付けられる前の平面図、(b)は棒状体が取り付けられている途中の平面図、(c)は棒状体が取り付けられた後の平面図。
【図10】(a)本発明の他の藻礁用の海藻定着基盤を構成する、上側方向に向かって延びる複数本の棒状体が立設されている構造体の側面図、(b)は本発明の他の藻礁用の海藻定着基盤の側面図、(c)藻食魚類による食害を防ぐ機構を説明する図。
【図11】(a)本発明の他の藻礁用の海藻定着基盤の一例を説明する側面図、(b)は海藻の種が取り付けられた紐状体が巻き対けられた状態の側面図、(c)周壁に突起部が形成されている藻礁用の海藻定着基盤に紐状体が巻き対けられた状態の側面図。
【図12】(a)は本発明の他の藻礁用の海藻定着基盤の一例を説明する斜視図、(b)は図12(a)の断面形状を説明する一部を省略した断面図、(c)は図12(a)の平面図、(d)〜(f)は本発明の藻礁用の海藻定着基盤が複数個、隣接する海藻定着基盤同士の間に所定の間隔を空けて配備されることによって本発明の人工藻礁が形成される一例を表すものであって、図12(a)〜(c)で説明した本発明の藻礁用の海藻定着基盤が四分割されて人工藻礁が形成される場合を説明する(d)斜視図、(e)断面図、(f)平面図である。
【図13】(a)は本発明の更に他の藻礁用の海藻定着基盤の一例を説明する斜視図、(b)は図13(a)の平面図、(c)、(d)は図12、図13(a)、(b)図示の実施例の他の実施形態を説明する図であって、使用する陶磁器粉砕物などの粒径範囲を選択し、比較的粒径の粗い基盤と、比較的粒径の細かい基盤とを連続的に形成した本発明の海藻定着基盤の(c)斜視図、(d)平面図である。
【図14】本発明の藻礁用の海藻定着基盤の使用例の一つを説明する平面図。
【図15】(a)、(b)は本発明の更に他の藻・魚礁一体型海藻定着基盤の使用例を説明する側面図。
【発明を実施するための形態】
【0039】
本発明の藻礁用の海藻定着基盤は、陶磁器粉砕物、碍子粉砕物、耐火レンガ粉砕物、天然火成岩粉砕物の中のいずれか一種または複数種の粒径5ミクロン以上で300ミクロン未満のもの10〜27重量%と、粒径300〜1000ミクロンのもの63〜70重量%及び、天然ガラス質鉱物の粒径50ミクロン以下のもの10〜20重量%とを原料として用いるものである。
【0040】
あるいは、陶磁器粉砕物、碍子粉砕物、耐火レンガ類粉砕物、天然火成岩粉砕物の中のいずれか一種または複数種の粒径300ミクロン〜20000ミクロンのもの80〜90重量%及び、天然ガラス質鉱物の粒径50ミクロン以下のもの10〜20重量%を原料として用いるものである。
【0041】
陶磁器粉砕物としては、天然窯業原料として使用中の原料以外の低品位で未利用の原料や、陶磁器製造工程での不合格製品や、廃棄対象になった茶碗・花瓶類などの陶磁器の粉砕物を使用することができる。
【0042】
耐火レンガ粉砕物としては、耐火レンガ製造工程での不合格製品や、撤去などにより廃棄対象になった耐火レンガ製品などの粉砕物を使用することができる。
【0043】
天然火成岩粉砕物としては、陶石・サバなどの粉砕物、すなわち、珪石・長石混合物の粉砕物を使用することができる。
【0044】
天然ガラス質鉱物としては、軽石、真珠岩、シラス、黒曜石、ゼオライト系の天然火山ガラスのいずれか一種または複数種を使用することができる。
【0045】
海藻種子・胞子の定着率を高め、海藻の仮根や根の定着しやすさを考慮して、陶磁器粉砕物、碍子粉砕物、耐火レンガ粉砕物、天然火成岩粉砕物の中のいずれか一種または複数種の粒径5ミクロン以上で300ミクロン未満のものと、粒径300〜1000ミクロンのものとを混合して用いることが望ましい。
【0046】
また、海藻種子・胞子の定着率を高め、海藻の仮根や根の定着しやすさに加えて、種糸取り付け用のフック、食害防止用の棒状体の取り付けやすさ、等を考慮して、陶磁器粉砕物、碍子粉砕物、耐火レンガ類粉砕物、天然火成岩粉砕物の中のいずれか一種または複数種の粒径300ミクロン〜20000ミクロンのものを用いることが望ましい。
【0047】
この場合、陶磁器粉砕物、碍子粉砕物、耐火レンガ類粉砕物、天然火成岩粉砕物を300〜500ミクロン、500〜700ミクロン、1000〜5000ミクロン、5000〜10000ミクロン、10000〜20000ミクロン、等に分級し、各粒径範囲のものを使用したり、異なる粒径範囲のものを任意に複数種組み合わせて使用することができる。
【0048】
前述した粒径範囲のものを用いると、本発明の藻礁用の海藻定着基盤の製造工程で行われる、後述する、成形から焼成までの工程での全収縮率が3%以内におさまって、基盤寸法・形状精度を高くすることができるので有利である。
【0049】
特に、粒径300ミクロン〜20000ミクロンのものを用いると、全収縮率がより小さくなるので、種糸取り付け用のフック、食害防止用の棒状体を後から取り付ける目的で精度よく本発明の藻礁用の海藻定着基盤を製造する上では有利である。
【0050】
前述したように、陶磁器粉砕物、碍子粉砕物、耐火レンガ粉砕物、天然火成岩粉砕物の中のいずれか一種または複数種の粒径の下限は5ミクロンで、上限は20000ミクロンになっている。これは、多孔質焼結体からなる本発明の藻礁用の海藻定着基盤の製造工程では1000〜1500℃で焼成する焼成工程が採用されるが、焼成後の海藻定着基盤が、海藻種子・胞子・海藻の仮根や根の定着と、育成にとって好ましい範囲を考慮したものである。
【0051】
前記において天然ガラス質鉱物の粒径50ミクロン以下のものを用いるのは、前述した粒径範囲の、陶磁器粉砕物、碍子粉砕物、耐火レンガ粉砕物、天然火成岩粉砕物の中のいずれか一種または複数種の粒子の表面、あるいはその配合物粒子の表面に均一に安定して効率良く付着出来る粉末度を考慮したものである。また、多孔質焼結体からなる本発明の藻礁用の海藻定着基盤の製造工程で行われる、後述する、焼成工程において1000〜1500℃で焼成することで、配合物粒子に均一に安定して効率良く熔着して適正な空隙を持つ多孔質焼結体とすることを考慮したものである。この観点から、天然ガラス質鉱物のより好ましい粒径範囲は5〜50ミクロンである。
【0052】
前述したように、本発明においては、陶磁器粉砕物、碍子粉砕物、耐火レンガ粉砕物、天然火成岩粉砕物の中のいずれか一種または複数種の粒径5ミクロン以上で300ミクロン未満のもが10〜27重量%で、粒径300〜1000ミクロンのものが63〜70重量%、天然ガラス質鉱物の粒径50ミクロン以下のもの10〜20重量%としている。あるいは、陶磁器粉砕物、碍子粉砕物、耐火レンガ類粉砕物、天然火成岩粉砕物の中のいずれか一種または複数種の粒径300ミクロン〜20000ミクロンのもの80〜90重量%と、天然ガラス質鉱物の粒径50ミクロン以下のもの10〜20重量%とを原料としている。この際、陶磁器粉砕物、碍子粉砕物、耐火レンガ類粉砕物、天然火成岩粉砕物は、所定の粒径範囲に分級し、整粒されている、各粒径範囲のものを使用したり、異なる粒径範囲のものを任意に複数種組み合わせて使用している。
【0053】
これは、多孔質焼結体からなる本発明の藻礁用の海藻定着基盤の製造工程で行われる、後述する、焼成工程において1000〜1500℃で焼成することで、本発明の藻礁用の海藻定着基盤に、海藻種子・胞子・海藻の仮根や根が効果的に定着し、好ましい育成を遂げることを考慮したものである。
【0054】
多孔質焼結体からなる本発明の藻礁用の海藻定着基盤は、前述した原料を混合し、これに所定量の水分及び有機バインダーを加えて混練し、混練物を所定の形状(例えば、平板状)に成形した後、前記有機バインダーが粘着力を有している湿潤状態の間に、粒径が300ミクロンを超えない大きさで所定の粒径範囲に整粒されているセラミック粒子を前記所定の形状に成形されている混練物の表面全体に振りかけてまぶし、当該セラミック粒子が表面全体にまぶされた前記所定の形状に成形されている混練物を乾燥させ、その後、1000〜1500℃で焼成して製造される。
【0055】
前記において、有機バインダーとしては、例えば、吸水性高分子、CMC(カルボキシメチルセルロース)、酢酸ビニル系接着剤などを用いることができる。
【0056】
水分(例えば、水)及び、有機バインダーは配合した原料を混練し、所定の形状に成形する際の加工性、成形性、取扱容易性などを考慮して添加するもので、例えば、水分は前述した配合原料に対して20重量%を越えない程度、有機バインダーは前述した配合原料に対して3重量%を越えない程度の割合で配合することができる。
【0057】
ただし、添加する水分と有機結合材は、いずれも焼成工程における焼成に伴って消失するため焼成物の主成分には影響をあたえないので、前記の添加割合を越えても差し支えない。
【0058】
セラミック粒子としては、アルミナ、炭化珪素、窒化珪素、ムライト、シリマナイト、仮焼石英、仮焼蝋石、仮焼カオリン、陶磁器粉砕物、碍子粉砕物のいずれか一種の粒子、またはそれらの中の複数種の混合物を使用することができる。
【0059】
このセラミック粒子は後述する焼成工程の後、前述した天然ガラス質鉱物が焼成工程で熔化することによって多孔質焼結体からなる本発明の藻礁用の海藻定着基盤の表面に熔着される。
【0060】
なお、焼成工程を経て形成される多孔質焼結体からなる本発明の藻礁用の海藻定着基盤は、前述した陶磁器粉砕物、碍子粉砕物、耐火レンガ粉砕物、天然火成岩粉砕物の中のいずれか一種または複数種の粒子が、前述した焼成工程で熔化した天然ガラス質鉱物によって熔着されてなるものである。
【0061】
そこで、本発明の藻礁用の海藻定着基盤の表面に熔着する前記のセラミック粒子は、多孔質焼結体の表面に露出している前記陶磁器粉砕物、碍子粉砕物、耐火レンガ粉砕物、天然火成岩粉砕物の中のいずれか一種または複数種の粒子の表面や、本発明の多孔質焼結体の表面を構成している前記天然ガラス質鉱物が焼成工程で熔化した後、固化した部分の表面に熔着している。
【0062】
また、焼成工程によって多孔質焼結体からなる本発明の藻礁用の海藻定着基盤には空隙部が形成されるが、前述したセラミック粒子は、この空隙部内周壁の表面にも熔着される。
【0063】
なお、この空隙部内周壁の表面も、前記天然ガラス質鉱物が焼成工程で熔化した後、固化した部分及び、この空隙部内周壁に露出する前記陶磁器粉砕物、碍子粉砕物、耐火レンガ粉砕物、天然火成岩粉砕物の中のいずれか一種または複数種の粒子の表面によって構成されている。そこで、前記のセラミック粒子は、この空隙部内周壁に露出している前記陶磁器粉砕物、碍子粉砕物、耐火レンガ粉砕物、天然火成岩粉砕物の中のいずれか一種または複数種の粒子の表面や、この空隙部内周壁の表面を構成している前記天然ガラス質鉱物が焼成工程で熔化した後、固化した部分の表面に熔着している。
【0064】
ここで、粒径が300ミクロンを超えない大きさで所定の粒径範囲に整粒されているセラミック粒子を用いるのは、前述したように、陶磁器粉砕物、碍子粉砕物、耐火レンガ粉砕物、天然火成岩粉砕物の中のいずれか一種または複数種の粒径300ミクロンを越えるものが配合原料の中に必ず含まれていることを考慮したものである。多孔質焼結体からなる本発明の藻礁用の海藻定着基盤の製造工程では、前述したように、原料の混合、所定量の水分及び有機バインダーを加えた混練、混練物の所定形状への成形、乾燥、1000〜1500℃での焼成工程が採用される。これによって、粒径が300ミクロンを超えない大きさのセラミック粒子を用いると、少なくとも、300ミクロンを越える粒径を有する陶磁器粉砕物、碍子粉砕物、耐火レンガ粉砕物、天然火成岩粉砕物の中のいずれか一種または複数種の表面に、粒径が300ミクロンを超えない大きさのセラミック粒子が溶着できる。
【0065】
前述したように、セラミック粒子は多孔質焼結体からなる本発明の藻礁用の海藻定着基盤の表面や、本発明の藻礁用の海藻定着基内に形成されている空隙部の内周壁表面に熔着され、これによって表面凸部が形成される。この表面凸部は、本発明の藻礁用の海藻定着基に海藻種子・胞子・海藻の仮根や根が定着し、成長に有利な役割を発揮する。
【0066】
そこで、陶磁器粉砕物、碍子粉砕物、耐火レンガ粉砕物、天然火成岩粉砕物の中のいずれか一種または複数種の粒径300ミクロンを越えるものが配合原料の中に必ず含まれていることを考慮し、粒径が300ミクロンを超えない大きさで所定の粒径範囲に整粒されているセラミック粒子を用いることが望ましい。かかる観点から、所定の粒径範囲に整粒されているセラミック粒子は、粒径が100ミクロンを超えない大きさで所定の粒径範囲に整粒されているものとすることもできる。
【0067】
なお、粒径が300ミクロン、あるいは100ミクロンを超えない大きさで所定の粒径範囲に整粒されているセラミック粒子については、多孔質焼結体からなる本発明の藻礁用の海藻定着基盤をいかなる種類の海藻、藻の定着、育成に使用するか、その用途に応じて、セラミック粒子の粒径を選択して使用することができる。例えば、粒径4.0ミクロン以上5.0ミクロン未満、粒径5.0ミクロン以上6.0ミクロン未満、粒径6.0ミクロン以上7.0ミクロン未満、粒径7.0ミクロン以上8.0ミクロン未満、粒径8.0ミクロン以上9.0ミクロン未満、粒径9.0ミクロン以上10ミクロン未満、粒径10ミクロン以上20ミクロン未満、粒径20ミクロン以上30ミクロン未満、粒径30ミクロン以上40ミクロン未満、粒径40ミクロン以上50ミクロン未満、粒径50ミクロン以上60ミクロン未満、粒径60ミクロン以上70ミクロン未満、粒径70ミクロン以上80ミクロン未満、粒径80ミクロン以上90ミクロン未満、粒径90ミクロン以上100ミクロン未満、粒径100ミクロン以上200ミクロン未満、粒径200ミクロン以上300ミクロン未満のように、分級、整粒し、所定の粒径範囲のものを使用したり、一の所定粒径範囲のものと、他の所定粒径範囲のものとを所定の割合で配合して使用することができる。
【0068】
すなわち、多孔質焼結体からなる本発明の藻礁用の海藻定着基盤をいかなる種類の海藻、藻の定着、育成に使用するかに応じて、前記のように、所定の粒径範囲に整粒されているものを選択して使用したり、一の所定粒径範囲のものと、他の所定粒径範囲のものとを所定の割合で配合して使用することが望ましい。
【0069】
前述したように、セラミック粒子は多孔質焼結体からなる本発明の藻礁用の海藻定着基盤の表面や、本発明の海藻定着基盤に形成されている空隙部の内周壁表面に熔着されるので、粒径の大きさに応じてセラミック粒子によって形成される表面凸部の大きさが変動する。
【0070】
そこで、多孔質焼結体からなる本発明の藻礁用の海藻定着基盤をいかなる種類の海藻、藻の定着、育成に使用するかに応じて、前述したように、粒径が300ミクロンを超えない大きさで所定の粒径範囲に整粒されているセラミック粒子については、所定の粒径範囲に整粒されているものを選択して使用したり、一の所定粒径範囲のものと、他の所定粒径範囲のものとを所定の割合で配合して使用することが望ましい。
【0071】
例えば、多孔質焼結体からなる本発明の藻礁用の海藻定着基盤に定着する海藻、藻の種類によって、本発明の藻礁用の海藻定着基盤の表面や、多孔質焼結体内に形成されている空隙部の内周壁表面にセラミック粒子によって形成される表面凸部の大きさを変動させることができる。
【0072】
前述したように、前記のセラミック粒子は、前述した原料に所定量の水分及び有機バインダーを加えて混練し、混練物を所定の形状に成形して前記有機バインダーが粘着力を有している湿潤状態の間に、当該所定の形状に成形されている混練物の表面全体に振りかけてまぶされる。そして、セラミック粒子が表面全体にまぶされた前記所定の形状に成形されている混練物を乾燥させ、その後、1000〜1500℃で焼成して、多孔質焼結体からなる本発明の藻礁用の海藻定着基盤が製造される。
【0073】
前記の所定形状に成形した混練物において、有機バインダーが粘着力を有している湿潤状態の間に、セラミック粒子を混練物の表面全体に振りかけてまぶすことにより、これを乾燥、焼成すると、セラミック粒子が、焼成工程で熔化した後、固化する天然ガラス質鉱物の働きにより、多孔質焼結体の表面に露出している前記陶磁器粉砕物、碍子粉砕物、耐火レンガ粉砕物、天然火成岩粉砕物の中のいずれか一種または複数種の粒子の表面や、本発明の多孔質焼結体の表面を構成している前記天然ガラス質鉱物が焼成工程で熔化した後、固化した部分の表面、そして、多孔質焼結体内に形成される空隙部の内周壁に露出している前記陶磁器粉砕物、碍子粉砕物、耐火レンガ粉砕物、天然火成岩粉砕物の中のいずれか一種または複数種の粒子の表面や、この空隙部内周壁の表面を構成している前記天然ガラス質鉱物が焼成工程で熔化した後、固化した部分の表面に、満遍なく、熔着する。
【0074】
焼成温度は1000〜1500℃であることが望ましい。粒子間の空隙の状態を、海藻、藻の定着、育成により好ましい適切な状態にする目的と、一方で、天然ガラス質鉱物の熔化をより十分なものとし、多孔質焼結体の強度をより強くする目的から、かかる焼成温度範囲であることが望ましい。なお、かかる観点から、より望ましい焼成温度は1100〜1300℃、更に好ましい焼成温度は、1200〜1300℃である。
【0075】
本発明が提案する他の藻礁用海藻定着基盤は、陶磁器粉砕物、碍子粉砕物、耐火レンガ類粉砕物、天然火成岩粉砕物の中のいずれか一種または複数種の粒径範囲が2mm以上で3mm未満、3mm以上で5mm未満、5mm以上で10mm未満、10mm以上で20mm未満、20mm以上で40mm未満のものを一種または複数種組み合わせたもの80〜90重量%と、天然ガラス質鉱物の粒径50ミクロン以下のもの10〜20重量%とを混合し、これに所定量の水分及び有機バインダーを加えて混練し、混練物を所定の形状に成形した後、前記有機バインダーが粘着力を有している湿潤状態の間に、粒径が300ミクロンを超えない大きさで所定の粒径範囲に整粒されているセラミック粒子を前記所定の形状に成形されている混練物の表面全体に振りかけてまぶし、当該セラミック粒子が表面全体にまぶされた前記所定の形状に成形されている混練物を乾燥させ、その後、1000〜1500℃で焼成した多孔質焼結体からなるものである。
【0076】
陶磁器粉砕物、耐火レンガ粉砕物、天然火成岩粉砕物としては、前述したものを使用することができる。
【0077】
発明者等が検討を進めたところ、前記のような粒径範囲の陶磁器粉砕物、碍子粉砕物、耐火レンガ類粉砕物、天然火成岩粉砕物の中のいずれか一種または複数種を使用した場合、多孔質焼結体からなる本発明の藻礁用の海藻定着基盤の製造工程で行われる、焼成工程において1000〜1500℃で焼成することで、粒間の隙間が大きくなり、本発明の藻礁用の海藻定着基盤に、海藻種子・胞子・海藻の仮根や根が効果的に定着し、好ましい育成を遂げることが確認できた。
【0078】
陶磁器粉砕物、碍子粉砕物、耐火レンガ粉砕物、天然火成岩粉砕物の中のいずれか一種または複数種を粒径2mm以上で3mm未満、3mm以上で5mm未満、5mm以上で10mm未満、10mm以上で20mm未満、20mm以上で40mm未満に分級し、各粒径範囲のもののみを使用したり、異なる粒径範囲のものを任意に複数種組み合わせて使用することができる。
【0079】
海藻種子・胞子の定着率を高め、海藻の仮根や根の定着しやすさを考慮して、陶磁器粉砕物、碍子粉砕物、耐火レンガ粉砕物、天然火成岩粉砕物の中のいずれか一種または複数種の粒径2mm以上で3mm未満、3mm以上で5mm未満、5mm以上で10mm未満、10mm以上で20mm未満、20mm以上で40mm未満のものを任意に複数種組み合わせ、混合して用いることが望ましい。
【0080】
粒径2mm以上で3mm未満、3mm以上で5mm未満、5mm以上で10mm未満、10mm以上で20mm未満、20mm以上で40mm未満のものを一種、又は、任意に複数種組み合わせて用いる場合、原材料を混合・成形し焼成して製造した藻礁用海藻定着基盤は前述した300〜20000ミクロンの範囲の陶磁器などの粉砕物を原料に使用する場合に比較して大きな空隙部がより複雑に形成されているものになる。そして、粒径2〜40mmの範囲の粉砕物を用いていることから空隙に面する部分を含めた表面に鋭角で尖っている箇所が非常に多いものになる。
【0081】
これによって、フジツボなどの付着防止に効果を発揮し、また、藻食性の巻貝やウニなどが海藻の幼体を摂取することを困難ならしめ、食害防止にも大きな効果を発揮できるものになる。
【0082】
天然ガラス質鉱物の粒径50ミクロン以下のものを用いる理由及び、天然ガラス質鉱物のより好ましい粒径範囲は5〜50ミクロンであることは上述した場合と同様である。
【0083】
粒径範囲が2mm以上で3mm未満、3mm以上で5mm未満、5mm以上で10mm未満、10mm以上で20mm未満、20mm以上で40mm未満の碍子粉砕物などを使用する本発明の藻礁用海藻定着基盤も、前述したものと同じく、前述した原料を混合し、これに所定量の水分及び有機バインダーを加えて混練し、混練物を所定の形状(例えば、平板状、円錐形状、多角錐形状)に成形した後、前記有機バインダーが粘着力を有している湿潤状態の間に、粒径が300ミクロンを超えない大きさで所定の粒径範囲に整粒されているセラミック粒子を前記所定の形状に成形されている混練物の表面全体に振りかけてまぶし、当該セラミック粒子が表面全体にまぶされた前記所定の形状に成形されている混練物を乾燥させ、その後、1000〜1500℃で焼成して製造される。
【0084】
前記において、有機バインダー、水分(例えば、水)、セラミック粒子などの意義、使用方法、焼成温度、焼成処理などは前述したものと同様であり、より望ましい焼成温度は前述した場合と同じく1000〜1500℃、より望ましい焼成温度は1100〜1300℃、更に好ましい焼成温度は、1200〜1300℃である。
【0085】
なお、粒径範囲が2mm以上で3mm未満、3mm以上で5mm未満、5mm以上で10mm未満、10mm以上で20mm未満、20mm以上で40mm未満の碍子粉砕物などを使用する本発明の藻礁用海藻定着基盤の場合、焼成工程において1000〜1500℃で焼成することで、粒間の隙間が大きくなり、しかも、不規則に隙間が形成される。そこで、本発明の藻礁用の海藻定着基盤に、海藻種子・胞子・海藻の仮根や根が効果的に定着し、好ましい育成を遂げることが可能になるので、粒径が300ミクロンを超えない大きさで所定の粒径範囲に整粒されているセラミック粒子を用いることができる。そして、この場合も、前述したように、所定の粒径範囲に整粒されているセラミック粒子は、粒径が100ミクロンを超えない大きさで所定の粒径範囲に整粒されているものを用いることができる。
【0086】
以上に説明した陶磁器粉砕物、碍子粉砕物、耐火レンガ類粉砕物、天然火成岩粉砕物の中のいずれか一種または複数種の粒径範囲が2mm以上で3mm未満、3mm以上で5mm未満、5mm以上で10mm未満、10mm以上で20mm未満、20mm以上で40mm未満のものを一種または複数種組み合わせたものを使用する本発明の藻礁用の海藻定着基盤の場合、使用する粒径範囲を選択することによって、比較的粒径の粗い基盤を好む海藻と、比較的粒径の細かい基盤を好む海藻とにそれぞれ適した生育環境を与える海藻定着基盤にすることもできる。
【0087】
すなわち、上記において、陶磁器粉砕物、碍子粉砕物、耐火レンガ類粉砕物、天然火成岩粉砕物の中のいずれか一種または複数種の粒径範囲が2mm以上で3mm未満、3mm以上で5mm未満、5mm以上で10mm未満のものを一種または複数種組み合わせたものを使用してなる藻礁用の海藻定着基盤と、陶磁器粉砕物、碍子粉砕物、耐火レンガ類粉砕物、天然火成岩粉砕物の中のいずれか一種または複数種の粒径範囲が10mm以上で20mm未満、20mm以上で40mm未満のものを一種または複数種組み合わせたものを使用してなる藻礁用の海藻定着基盤とが連続的に配置されて形成されている藻礁用の海藻定着基盤にするものである。
【0088】
海藻によっては、その生育ステージにおいて、比較的粒径の粗い基盤を好んだり、比較的粒径の細かい基盤を好んだりすることがある。このような場合、粒径範囲が10mm未満のものを使用している海藻定着基盤が、比較的粒径の細かい基盤を好む海藻に適し、粒径範囲が10mm以上のものを使用している海藻定着基盤が、比較的粒径の粗い基盤を好む海藻に適するものになる。これによって、海藻定着の効率を上げることができる。
【実施例1】
【0089】
多孔質焼結体からなる本発明の藻礁用の海藻定着基盤の製造(その1)。
【0090】
(原料)
本発明の藻礁用の海藻定着基盤の原料としては、天然窯業原料として使用中の原料以外の低品位で未利用の原料や、陶磁器製造工程での不合格製品や、廃棄対象になった茶碗・花瓶類などの陶磁器、碍子製造工程での不合格製品や、廃棄対象になった碍子、耐火レンガ製造工程での不合格製品や、撤去などにより廃棄対象になった耐火レンガ、陶石・サバ、等、すなわち、珪石・長石混合物である天然火成岩を用いることができる。
【0091】
(碍子の粉砕)
粉砕は、粉砕機による機械的な粉砕方法として、まず粗粉砕段階においてクラッシングで粉砕し、引き続く中・微粉砕段階において、衝撃式などの微粉砕式の粉砕機による粉砕方法を用いる。
【0092】
ここでは、碍子製造工程での不合格製品や、廃棄対象になった碍子をクラッシングで粗粉砕し、引き続き、衝撃式などの微粉砕式の粉砕機によって微粉砕した。
【0093】
なお、陶磁器、碍子、耐火レンガ、天然火成岩にはSiO、Al、Fe3、
CaO.MgO.KO.NaOが含有されている。
【0094】
(天然ガラス質鉱物の粉砕)
一方、同じく、粉砕工程において、軽石、真珠岩、シラス、黒曜石、ゼオライト系の天然火山ガラスのいずれか一種または複数種からなる天然ガラス質鉱物を、クラッシング及び、衝撃式などの微粉砕式の粉砕機によって粉砕する。
【0095】
この天然ガラス質鉱物はSiOとAlを主成分としFeCaO.MgO.
O、NaOなどを含有する物質である。
【0096】
ここでは、黒曜石をクラッシングで粗粉砕し、引き続き、衝撃式などの微粉砕式の粉砕機によって微粉砕した。
【0097】
多孔質焼結体からなる本発明の藻礁用の海藻定着基盤においては、図2に例示するように、符号4で示す陶磁器粉砕物、碍子粉砕物、耐火レンガ粉砕物、天然火成岩粉砕物の粒子の周囲に、後述する焼成工程で溶融し、その後、固化した天然ガラス質鉱物からなる符合7で示す溶融層が形成されると共に、後述する焼成工程で天然ガラス質鉱物が溶融することにより形成された符号5で示す空隙部を備えたものとなる。
【0098】
後述する焼成工程によってこの空隙部5が形成されることにより、本発明の藻礁用の海藻定着基盤は、海藻、藻の定着、育成に好ましいものになる。
【0099】
(セラミックスの粉砕)
更に、粉砕工程において、アルミナ、炭化珪素、窒化珪素、ムライト、シリマナイト、仮焼石英、仮焼蝋石、仮焼カオリン、陶磁器・碍子不合格品などのセラミックを、クラッシング及び、衝撃式などの微粉砕式の粉砕機によって粉砕する。
【0100】
ここでは、アルミナをクラッシングで粗粉砕し、引き続き、衝撃式などの微粉砕式の粉砕機によって微粉砕した。
【0101】
(碍子粉砕物粒子・天然ガラス質鉱物粒子・セラミック粉砕物粒子の整粒)
前記のように粉砕した粒子の粒径を、粉砕分級工程において整える。
【0102】
振動式の篩い装置等による機械的な分級方法を用い、陶磁器粉砕物、碍子粉砕物、碍子粉砕物、耐火レンガ粉砕物、耐火レンガ粉砕物、天然火成岩粉砕物を、分級し、整粒する。この場合、例えば、粒径5ミクロン以上で300ミクロン未満、粒径300〜1000ミクロン、粒径300〜700ミクロン、粒径500〜700ミクロン、粒径1000〜5000ミクロン、粒径5000〜10000ミクロン、粒径10000〜20000ミクロンの範囲に分級する。
【0103】
ここでは、振動式の篩い装置を用い、微粉砕した碍子を、粒径5ミクロン以上で300ミクロン未満、粒径300〜1000ミクロンの範囲のものに分級した。
【0104】
一方、同じく、前記のように粉砕した天然ガラス質鉱物粉砕物を、振動式の篩い装置等による機械的な分級方法を用い、粒径50ミクロン以下に分級する。
【0105】
ここでは、振動式の篩い装置を用い、微粉砕した黒曜石粉砕物粒子から、粒径5〜50ミクロンの微粉砕した黒曜石を分級した。
【0106】
また、前記のように粉砕したセラミック粉砕物を、振動式の篩い装置等による機械的な分級方法を用い、粒径が300ミクロンを超えない大きさで所定の粒径範囲に整粒する。
【0107】
例えば、粒径4.0ミクロン以上5.0ミクロン未満、粒径5.0ミクロン以上6.0ミクロン未満、粒径6.0ミクロン以上7.0ミクロン未満、粒径7.0ミクロン以上8.0ミクロン未満、粒径8.0ミクロン以上9.0ミクロン未満、粒径9.0ミクロン以上10ミクロン未満、粒径10ミクロン以上20ミクロン未満、粒径20ミクロン以上30ミクロン未満、粒径30ミクロン以上40ミクロン未満、粒径40ミクロン以上50ミクロン未満、粒径50ミクロン以上60ミクロン未満、粒径60ミクロン以上70ミクロン未満、粒径70ミクロン以上80ミクロン未満、粒径80ミクロン以上90ミクロン未満、粒径90ミクロン以上100ミクロン未満、粒径100ミクロン以上200ミクロン未満、粒径200ミクロン以上300ミクロン未満のように、分級、整粒する。
【0108】
ここでは、振動式の篩い装置を用い、微粉砕したアルミナ粉砕物粒子を、粒径40ミクロン以上50ミクロン未満に分級した。
【0109】
(成形材料調整)
次に、前記のようにして分級した陶磁器粉砕物、碍子粉砕物、耐火レンガ粉砕物、天然火成岩粉砕物の中のいずれか一種または複数種の粒径5ミクロン以上で300ミクロン未満のもの10〜27重量%、粒径300〜1000ミクロンのもの63〜70重量%及び、天然ガラス質鉱物の粒径5〜50ミクロンのもの10〜20重量%とを、成形材料調整工程において混合する。あるいは、陶磁器粉砕物、碍子粉砕物、耐火レンガ類粉砕物、天然火成岩粉砕物の中のいずれか一種または複数種の粒径300〜700ミクロン、500〜700ミクロン、1000〜5000ミクロン、5000〜10000ミクロン、10000〜20000ミクロン、等に分級し、整粒されている、各粒径範囲のもの、又は、異なる粒径範囲のものを任意に複数種組み合わせたもの80〜90重量%と、天然ガラス質鉱物の粒径5〜50ミクロンのもの10〜20重量%とを、成形材料調整工程において混合する。
【0110】
ここでは、碍子粉砕物の粒径5ミクロン以上で300ミクロン未満のもの25重量%、粒径300〜1000ミクロンのもの65重量%及び、黒曜石粉砕物の粒径5〜50ミクロンのもの10重量%とを混合した。
【0111】
(成形材料混練)
次に、前述のように成形材料調整したものに所定量の水分及び有機バインダーを加えて、成形材料混練工程において混練する。混練は、ニーダ等の混練機を利用することができる。
【0112】
ここでは、前述のように成形材料調整したものに対して10重量%の水、3重量%のCMC(カルボキシメチルセルロース)を添加し、ニーダで混練した。
【0113】
本工程においては後続する混練物成形工程において成形時の加工性と成形物のハンドリングを容易にするため、水分(例えば、水)及び、吸水性高分子、CMC、酢酸ビニル系接着剤などの有機結合材からなる有機バインダーを加えて混練する。
【0114】
かかる目的から、水分は前述した配合原料に対して20重量%を越えない程度、有機バインダーは前述した混合原料に対して3重量%を越えない程度の割合で配合することができる。ただし、添加する水分と有機結合材は、いずれも焼成工程における焼成に伴って消失するため焼成物の主成分には影響をあたえないので、前記の添加割合を越えても差し支えない。
【0115】
(混練物成形)
次に、混練物成形工程において、混練物を所定の形状に成形する。ここでは、金型及び、プレス成形機を最終的な多孔質焼結体からなる本発明の藻礁用の海藻定着基盤の形状に応じて使用することができる。
【0116】
こうして混練物を所定の形状(例えば、600cm×600cm×60cm(厚み)の板状体)に成形した後、同じく、混練物成形工程において、前記有機バインダーが粘着力を有している湿潤状態の間に、前記のように、粒径が300ミクロンを超えない大きさで所定の粒径範囲に整粒されているセラミック粒子を前記所定の形状に成形されている混練物の表面全体に振りかけてまぶす。
【0117】
すなわち、CMC(カルボキシメチルセルロース)が粘着力を有している湿潤状態の間に、粒径40ミクロン以上50ミクロン未満のアルミナ粉砕物粒子を前記所定の形状に成形されている混練物の表面全体に振りかけてまぶした。
【0118】
(混練物焼成)
最後に、成形物焼成工程において、セラミック粒子が表面全体にまぶされた所定の形状に成形されている混練物を乾燥させ、その後、1000〜1500℃で焼成して多孔質焼結体からなる本発明の藻礁用の海藻定着基盤を製造する。
【0119】
ここでは、アルミナ粉砕物粒子が表面全体にまぶされた板状体(600cm×600cm×60cm(厚み))に成形されている混練物を乾燥させ、その後、1000〜1500℃の温度範囲で12時間かけて焼成した。なお、焼成工程は、9〜13時間の範囲で調整できる。
【0120】
こうして、図1に符号2で示し、図4に符号8で示す板状体の、多孔質焼成体からなる本発明の藻礁用の海藻定着基盤を製造した。
【0121】
この板状体の、多孔質焼成体からなる本発明の藻礁用の海藻定着基盤2、8においては、図2(c)に示すように、セラミック粒子6が、符号4で示す陶磁器粉砕物、碍子粉砕物、耐火レンガ粉砕物、天然火成岩粉砕物の粒子の表面に、焼成工程で溶融し、その後、固化した天然ガラス質鉱物によって熔着される。
【0122】
前記の成形物焼成工程は、表面全体に表面全体にセラミック粒子が振りかけられてまぶされている所定の形状に成形されている混練物を焼成して本発明の藻礁用の海藻定着基盤にする工程である。電気窯や火炎式の焼成窯で適用可能である。
【0123】
多孔質焼結体からなる本発明の藻礁用の海藻定着基盤2、8においては、焼成工程によって天然ガラス質鉱物が溶融し、その後、固化することにより、図2(a)、(b)に符号5で示すように空隙部が形成され、これが海藻種子・胞子・海藻の仮根や根の定着、成長に有利な役割を果たす。
【0124】
この空隙部5が存在することによる本発明の藻礁用の海藻定着基盤の空隙率(気孔径・気孔率)は、陶磁器粉砕物、碍子粉砕物、耐火レンガ粉砕物、天然火成岩粉砕物の粒子の粒径、セラミック粒子の粒径、天然ガラス質鉱物の粒子の粒径及び、これらの配合割合、焼成温度によって調整される。
【0125】
そこで、これらの条件を変えることにより多孔質焼結体からなる本発明の藻礁用の海藻定着基盤の空隙率(気孔径・気孔率)をある一定の範囲内、例えば、気孔径:0.5〜300ミクロン、気孔率:20〜60%に調整することができる。
【0126】
多孔質焼結体からなる本発明の藻礁用の海藻定着基盤の空隙率を、気孔径:0.5〜300ミクロン、気孔率:20〜60%に調整する上で、前述したように、
陶磁器粉砕物、碍子粉砕物、耐火レンガ粉砕物、天然火成岩粉砕物の中のいずれか一種または複数種の粒径5ミクロン以上で300ミクロン未満のもの10〜27重量%と、粒径300〜1000ミクロンのもの63〜70重量%及び、
天然ガラス質鉱物の粒径50ミクロン以下のもの10〜20重量%とを混合し、
あるいは、
陶磁器粉砕物、碍子粉砕物、耐火レンガ類粉砕物、天然火成岩粉砕物の中のいずれか一種または複数種の粒径300〜700ミクロン、500〜700ミクロン、1000〜5000ミクロン、5000〜10000ミクロン、10000〜20000ミクロン、等に分級し、整粒されている、各粒径範囲のもの、又は、異なる粒径範囲のものを任意に複数種組み合わせたもの80〜90重量%及び、
天然ガラス質鉱物の粒径50ミクロン以下のもの10〜20重量%とを混合し、
これに所定量の水分及び有機バインダーを加えて混練し、
混練物を所定の形状に成形した後、
前記有機バインダーが粘着力を有している湿潤状態の間に、粒径が300ミクロンを超えない大きさで所定の粒径範囲に整粒されているセラミック粒子を前記所定の形状に成形されている混練物の表面全体に振りかけてまぶし、
当該セラミック粒子が表面全体にまぶされた前記所定の形状に成形されている混練物を乾燥させ、その後、1000〜1500℃で焼成する
ことが望ましい。
【0127】
なお、前述したように、有機バインダーは焼成工程における焼成に伴って消失するので、有機バインダーの使用は本発明の藻礁用の海藻定着基盤の成分に影響をあたえないが、有機バインダーの混合量が多くなると、空隙率の多寡に影響が生じるおそれがある。そこで、有機バインダーは、前述した混合原料に対して3重量%を越えない程度の割合で配合することが望ましい。
【0128】
多孔質焼結体からなる本発明の藻礁用の海藻定着基盤の表面には、粒径が300ミクロンを超えない大きさで所定の粒径範囲に整粒されているセラミック粒子6(図2(c))が付着している。
【0129】
また、多孔質焼結体からなる本発明の藻礁用の海藻定着基盤は、図2(a)、(b)に符号5で示すように、その内部に数ミクロン以下〜数百ミクロンの微細孔径の無数の連通した微細孔(空隙部)を有している。そして、この無数の空隙部5によって、本発明の藻礁用の海藻定着基盤の前面と背面(例えば、図1(c)に例示される本発明の藻礁用の海藻定着基盤2の上面(図1(c)中、上側面)と、底面(図1(c)中、下側面)とは連通されている。
【0130】
この結果、藻礁用の海藻定着基盤の上面(図1(c)中、上側面)に海藻種子・胞子を付着させると、良好な定着率を得ることができ、更に、成長する海藻の仮根や根が定着しやすいものなる。
【0131】
また、この実施例の藻礁用の海藻定着基盤は、上述した原材料から製造されているため、可溶性アルカリ分が溶出するおそれがない。
【0132】
この実施例の藻礁用の海藻定着基盤は、昆布、ワカメを初めとした種々の海藻養殖用の定着基盤として有用であった。
【実施例2】
【0133】
多孔質焼結体からなる本発明の藻礁用の海藻定着基盤の製造(その2)。
【0134】
(原料)
実施例1で説明したものと同様の原料を使用した。
【0135】
(碍子の粉砕)
粉砕工程は実施例1で説明したものと同様にして行った。
【0136】
(セラミックスの粉砕)
使用するセラミックス及び、その粉砕工程は実施例1と同様にして行った。
【0137】
(碍子粉砕物粒子・セラミック粉砕物粒子の整粒)
粉砕した粒子の粒径は実施例1で説明したものと同様の粉砕分級工程で行った。
【0138】
すなわち、振動式の篩い装置を用い、微粉砕した碍子を、粒径2mm以上で3mm未満、3mm以上で5mm未満、5mm以上で10mm未満、10mm以上で20mm未満、20mm以上で40mm未満の範囲のものに分級した。
【0139】
粉砕したセラミック粉砕物を、振動式の篩い装置等による機械的な分級方法を用い、粒径が300ミクロンを超えない大きさで所定の粒径範囲に整粒する。
【0140】
例えば、実施例1で行ったのと同じようにして、実施例1で説明したものと同様の粒径範囲に分級、整粒する。
【0141】
ここでは、振動式の篩い装置を用い、微粉砕したアルミナ粉砕物粒子を、粒径6ミクロン以上、8ミクロン未満に分級した。
【0142】
(成形材料調整)
分級した陶磁器粉砕物、碍子粉砕物、耐火レンガ粉砕物、天然火成岩粉砕物の中のいずれか一種または複数種の粒径範囲が2mm以上で3mm未満、3mm以上で5mm未満、5mm以上で10mm未満、10mm以上で20mm未満、20mm以上で40mm未満の中の各粒径範囲のもの、又は、異なる粒径範囲のものを任意に複数種組み合わせたもの80〜90重量%と、天然ガラス質鉱物の粒径50ミクロン以下のもの10〜20重量%とを、成形材料調整工程において混合する。
【0143】
ここでは、碍子粉砕物の粒径5mm以上で10mm未満のもの20重量%、粒径10mm以上で20mm未満のもの70重量%及び、黒曜石粉砕物の粒径5〜50ミクロンのもの10重量%とを混合した。
【0144】
(成形材料混練)
次に、前述のように成形材料調整したものに所定量の水分及び有機バインダーを加えて、成形材料混練工程において混練する。混練は、ニーダ等の混練機を利用することができる。
【0145】
ここでは、前述のように成形材料調整したものに対して10重量%の水、3重量%のCMC(カルボキシメチルセルロース)を添加し、ニーダで混練した。
【0146】
この工程は、実施例1と同様にして行った。
【0147】
(混練物成形)
次に、混練物成形工程において、混練物を所定の形状に成形する。ここでは、金型及び、プレス成形機を最終的な多孔質焼結体からなる本発明の藻礁用の海藻定着基盤の形状に応じて使用することができる。
【0148】
こうして混練物を所定の形状(例えば、600cm×600cm×60cm(厚み)の板状体、底面直径300mm×高さ200mmの円柱体、底面直径300mm×高さ200mmの円錐体、底面直径300mm×高さ200mmの四角錐体及び六角錐体)に成形した。また、これらの円錐体、四角錐体、六角錐体において、頂点部から底辺縁に向かって放射状に延びる溝条が周壁に形成されているものを成形した。
【0149】
また、この混練物成形工程において、前記有機バインダーが粘着力を有している湿潤状態の間に、前記のように、粒径が300ミクロンを超えない大きさで所定の粒径範囲に整粒されているセラミック粒子を前記所定の形状に成形されている混練物の表面全体に振りかけてまぶした。
【0150】
すなわち、CMC(カルボキシメチルセルロース)が粘着力を有している湿潤状態の間に、粒径6ミクロン以上、8ミクロン未満に分級されているアルミナ粉砕物粒子を前記所定の形状に成形されている混練物の表面全体に振りかけてまぶした。
【0151】
(混練物焼成)
最後に、成形物焼成工程において、セラミック粒子が表面全体にまぶされた所定の形状に成形されている混練物を乾燥させ、その後、1000〜1500℃で焼成して多孔質焼結体からなる本発明の藻礁用の海藻定着基盤を製造する。
【0152】
ここでは、アルミナ粉砕物粒子が表面全体にまぶされた前記の形状の混練物を乾燥させ、その後、1000〜1500℃の温度範囲で12時間かけて焼成した。なお、焼成工程は、9〜13時間の範囲で調整できる。
【0153】
こうして、図12(a)〜(c)に符号40で示し、図13(a)、(b)に符号41で示す多孔質焼成体からなる本発明の藻礁用の海藻定着基盤を製造した。藻礁用の海藻定着基盤40(図12(a)〜(c))は、六角錐形状のものである。藻礁用の海藻定着基盤40(図13(a)、(b))は円錐体形状のものであって、円錐体において、頂点部から底辺縁に向かって放射状に延びる溝条42が6本周壁に形成されているものである。
【0154】
この多孔質焼成体からなる本発明の藻礁用の海藻定着基盤40、41においては、図12、13に示すように、符号4で示す陶磁器粉砕物、碍子粉砕物、耐火レンガ粉砕物、天然火成岩粉砕物の粒子の表面に焼成工程で溶融し、その後、固化した天然ガラス質鉱物によってセラミック粒子(不図示)が熔着されている。
【0155】
多孔質焼結体からなる本発明の藻礁用の海藻定着基盤40、41においては、焼成工程によって天然ガラス質鉱物が溶融し、その後、固化することにより、図12(a)〜(c)、図13(a)、(b)に符号5で示すように空隙部が形成され、これが海藻種子・胞子・海藻の仮根や根の定着、成長に有利な役割を果たす。
【0156】
しかも、空隙部5の大きさは、陶磁器粉砕物、碍子粉砕物、耐火レンガ粉砕物、天然火成岩粉砕物の粒径が実施例1の場合より大きいことにより、実施例1の場合よりも大きな空隙となる。
【0157】
この実施例においても、多孔質焼結体からなる本発明の藻礁用の海藻定着基盤40、41の表面には、粒径が300ミクロンを超えない大きさで所定の粒径範囲に整粒されているセラミック粒子が付着している。
【0158】
また、多孔質焼結体からなる本発明の藻礁用の海藻定着基盤40、41は、実施例1の場合と同じく、その内部に無数の連通した微細孔(空隙部)を有している。
【0159】
この結果、藻礁用の海藻定着基盤の表面に海藻種子・胞子を付着させると、良好な定着率を得ることができ、更に、成長する海藻の仮根や根が定着しやすいものなる。
【0160】
また、この実施例の藻礁用の海藻定着基盤は、上述した原材料から製造されているため、実施例1の藻礁用の海藻定着基盤と同じく、可溶性アルカリ分が溶出するおそれがない。
【0161】
この実施例の藻礁用の海藻定着基盤は、昆布、ワカメを初めとした種々の海藻養殖用の定着基盤として有用であった。
【0162】
特にこの実施例の場合、粒径2mm以上で3mm未満、3mm以上で5mm未満、5mm以上で10mm未満、10mm以上で20mm未満、20mm以上で40mm未満の範囲の陶磁器などの粉砕物を原材料に使用していることから、実施例1の300〜20000ミクロンの範囲の陶磁器などの粉砕物を原料に使用した場合に比較して大きな空隙部5がより複雑に形成されているものになった。そして、粒径2〜40mmの範囲の粉砕物を用いていることから空隙部5に面する部分を含めた表面に鋭角で尖っている箇所が非常に多いものになった。
【0163】
この実施例2の藻礁用の海藻定着基盤40、41の場合、前述した実施例1の藻礁用海藻定着基盤に比較して、フジツボなどの付着防止、藻食性の巻貝やウニなどによる食害防止の効果が一層高かった。これは、空隙部5に面する部分を含めた表面に鋭角で尖っている箇所が非常に多いものになっている結果と思われた。
【0164】
このように、この実施例2の藻礁用の海藻定着基盤40、41の場合、フジツボなどの付着防止、藻食性の巻貝やウニなどによる食害防止の効果が高いので、この実施例で製造した円錐形状または多角錐形状に成形されている多孔質焼成体からなる藻礁用の海藻定着基盤40、41は、後述の実施例3、実施例4で説明するように、実施例1、2で製造した平板状の多孔質焼成体からなる本発明の藻礁用の海藻定着基盤の上に取り付けて使用することや、構造体の上に取り付け、それを、実施例1、あるいは実施例2で製造した板状体の多孔質焼成体からなる本発明の藻礁用の海藻定着基盤25の上側に取り付けて使用することができる。
【0165】
また、希望するサイズの板状体、円柱体、円錐体、四角錐体・六角錐体などの多角錐体、あるいは円錐体・多角錐体において、頂点部から底辺縁に向かって放射状に延びる溝条が周壁に形成されている藻礁用の海藻定着基盤にして単独で用いることもできる。
【0166】
また、図15に示すように、空隙部45を備えていて海中に沈設される魚礁用の構造体44、46の適当な箇所に取り付け、藻・魚礁一体型海藻定着基盤として使用することもできる。
【0167】
この実施例2の本発明の藻礁用の海藻定着基盤の場合、陶磁器粉砕物、碍子粉砕物、耐火レンガ類粉砕物、天然火成岩粉砕物の使用する粒径範囲を選択することによって、比較的粒径の粗い基盤を好む海藻と、比較的粒径の細かい基盤を好む海藻とにそれぞれ適した生育環境を与える海藻定着基盤にすることができる。これによって、海藻定着の効率を上げることができる。
【0168】
陶磁器粉砕物、碍子粉砕物、耐火レンガ類粉砕物、天然火成岩粉砕物の中のいずれか一種または複数種の粒径範囲が2mm以上で3mm未満、3mm以上で5mm未満、5mm以上で10mm未満のものを一種または複数種組み合わせたものを使用してなる藻礁用の海藻定着基盤と、陶磁器粉砕物、碍子粉砕物、耐火レンガ類粉砕物、天然火成岩粉砕物の中のいずれか一種または複数種の粒径範囲が10mm以上で20mm未満、20mm以上で40mm未満のものを一種または複数種組み合わせたものを使用してなる藻礁用の海藻定着基盤とが連続的に配置されて形成されている藻礁用の海藻定着基盤にするものである。
【0169】
図13(c)、(d)は、この一例を説明するものである。上述したように、円錐体形状のものであって、円錐体において、頂点部から底辺縁に向かって放射状に延びる溝条42が6本周壁に形成されている藻礁用の海藻定着基盤40(図13(a)、(b))を成形する際に、図13(c)、(d)に「粗粒子」と示されている部分を、粒径範囲が10mm以上で20mm未満、20mm以上で40mm未満のものを一種または複数種組み合わせたものを使用して成形した。また、図13(c)、(d)に「細粒子」と示されている部分を、粒径範囲が2mm以上で3mm未満、3mm以上で5mm未満、5mm以上で10mm未満のものを一種または複数種組み合わせたものを使用して成形した。そして、これらを図示のように連続的に配置して、円錐体形状のものであって、円錐体において、頂点部から底辺縁に向かって放射状に延びる溝条42が6本周壁に形成されている藻礁用の海藻定着基盤40(図13(a)、(b))を成形したものである。
【0170】
海藻によっては、その生育ステージにおいて、比較的粒径の粗い基盤を好んだり、比較的粒径の細かい基盤を好んだりすることがある。このような場合、図13(c)、(d)に「細粒子」と示されている部分の海藻定着基盤が、比較的粒径の細かい基盤を好む海藻に適し、図13(c)、(d)に「粗粒子」と示されている部分の海藻定着基盤が、比較的粒径の粗い基盤を好む海藻に適するものになる。
【0171】
以上に説明したこの実施例2、あるいは、前述した実施例1で製造した種々の形状、例えば、前述した円錐形状または多角錐形状などの形状に成形されている、多孔質焼成体からなる本願発明の藻礁用の海藻定着基盤は、その効果をより良く発揮させるべく、複数個を藻礁形成箇所に配置することができる。この場合、図14、図15に符号40で示されているように、互いに所定の間隔をあけて配置することが望ましい。この場合、ガンゼウニなどの海藻食害防止効果を発揮させる観点から、隣接する藻礁用の海藻定着基盤同士の間に5〜50mmの間隔が空いていることが望ましい。
【0172】
図12(d)〜(f)は、複数の藻礁用の海藻定着基盤が、隣接する藻礁用の海藻定着基盤同士の間に所定の間隔を空けて配置される最も典型的な例を説明するものである。上述したように、六角錐形状の海藻定着基盤40を製造する際に、最初から、これが四分割された形状となるようにしておくものである。四分割されている各海藻定着基盤は、隣接する海藻定着基盤との間にそれぞれ5〜50mmの空間部を備えているように製造されている。
【0173】
この5〜50mmの空間部が隣接する海藻定着基盤同士の間に存在することにより、ガンゼウニなどによる海藻食害を効果的に防止することができる。
【実施例3】
【0174】
図1に符号1で示す多孔質焼成体からなる本発明の藻礁用の海藻定着基盤は、図1に符号2で示す板状体の多孔質焼成体からなる本発明の藻礁用の海藻定着基盤に、複数本の棒状体3a、3b、3c、3d、3e、3f、3gを立設したものである。なお、本明細書、図面において、棒状体3a、3b、3c、3d、3e、3f、3g、・・・を総称して「棒状体3」と表すことがある。
【0175】
図1に符号2で示す板状体の多孔質焼成体からなる本発明の藻礁用の海藻定着基盤としては、実施例1で製造したもの、実施例2で製造したもののいずれも使用することができる。この実施例では、実施例1で製造したものを用いる場合を図示して説明している。
【0176】
多孔質焼成体からなる本発明の藻礁用の海藻定着基盤2の上に、複数本の棒状体3を立設することによって、図3図示のように、藻食魚類50や無脊椎動物などから符号20で示す海藻類の生体や幼体を保護することができる。
【0177】
棒状体3はセラミックス製、合成樹脂製、ステンレススチール製、木製、竹製、ガラス製のものなどを使用できる。大きさは、食害対策の用途に応じて種々に定めることができる。例えば、直径:2〜50mm、長さ(高さ):80〜120mmとすることができる。直径が小さい(例えば、直径:2〜5mm)棒状体3を用いれば、貝類やフジツボなどが本発明の藻礁用の海藻定着基盤に付着することを効果的に防止できる。
【0178】
棒状体3を多孔質焼成体からなる本発明の藻礁用の海藻定着基盤2に立設する密度も食害対策の用途に応じて種々に定めることができる。例えば、最も近接している隣の棒状体3との間の間隔が10mm〜50mmの間で種々に調整できる。
【0179】
多孔質焼成体からなる本発明の藻礁用の海藻定着基盤2の上に、複数本の棒状体3を立設するにあたっては、前述した、混練物成形工程において、板状体の海藻定着基盤2を形成すべく金型及、プレス成形機などを用いて混練物を成形する際に、棒状体3を立設する位置にあらかじめ窪み部を形成しておく、あるいは、平板な藻礁用の海藻定着基盤2を焼成した後に、棒状体3を立設する位置に窪み部を形成し、ここに接着剤21(図1(c))などを用いて棒状体3の下端を固定して取り付けることができる。
【0180】
図4は、本発明の他の実施例を説明するものである。
【0181】
前述したようにして形成した棒状体3付きの本発明の多孔質焼成体からなる藻礁用の海藻定着基盤1が、平板状の大きな本発明の多孔質焼成体からなる藻礁用の海藻定着基盤8の上に搭載されているものである。
【0182】
なお、図4では、符号8で示す板状体の多孔質焼成体からなる本発明の藻礁用の海藻定着基盤が実施例1で製造された場合を図示して説明していが、藻礁用の海藻定着基盤8として実施例2で製造したものを使用することもできる。
【0183】
この実施例の藻礁用の海藻定着基盤は、棒状体3を備えていることにより、実施例1、2で説明したように、可溶性アルカリ分が溶出するおそれがなく、海藻種子・胞子の定着率が高まり、海藻の仮根や根が定着しやすい藻礁用の海藻定着基盤であって、なおかつ、藻食魚類や無脊椎動物などから海藻類の生体や幼体を保護することに適した藻礁用の海藻定着基盤、例えば、昆布、ワカメを初めとした種々の海藻養殖用の定着基盤となる。
【0184】
この実施例では、実施例1、あるいは実施例2で製造した板状体の多孔質焼成体からなる本発明の藻礁用の海藻定着基盤に、複数本の棒状体が立設されている例を説明した。
【0185】
ここで、複数本の棒状体に替えて、実施例1、あるいは実施例2で製造した板状体の多孔質焼成体からなる本発明の藻礁用の海藻定着基盤の上側に、実施例2で製造した円錐形状または多角錐形状に成形されている藻礁用の海藻定着基盤40、41が取り付けられている構造からなる藻礁用の海藻定着基盤にすることもできる。図14はこの一例を説明するものであり、実施例1で製造した台形状の多孔質焼成体からなる本発明の藻礁用の海藻定着基盤43の上側に、実施例2で製造した多角錐形状に成形されている藻礁用の海藻定着基盤40が複数取り付けられている構造からなる本発明の藻礁用海藻定着基盤を説明するものである。
【0186】
この場合、実施例2で製造した円錐形状または多角錐形状に成形されている藻礁用の海藻定着基盤40、41の大きさ・形状を、例えば、底面直径300mm×高さ200mmの円錐体、底面直径300mm×高さ200mmの四角錐体及び六角錐体などとすることにより、この実施例において、藻食魚類や無脊椎動物などから海藻類の生体や幼体を保護するという棒状体3が発揮している機能をこれらの大きさ・形状の藻礁用海藻定着基盤40、41によって代替させることができる。
【0187】
そして、実施例2で説明したように、実施例2で製造した円錐形状または多角錐形状に成形されている藻礁用の海藻定着基盤40、41は、可溶性アルカリ分を溶出させるおそれなしに、昆布、ワカメを初めとした種々の海藻養殖用の定着基盤として優れた効果を発揮できるので、土台になっている藻礁用の海藻定着基盤8の働きとあわせて、海藻種子・胞子の定着率を高め、海藻の仮根や根が定着しやすい、なおかつ、藻食魚類や無脊椎動物などから海藻類の生体や幼体を保護することに適した藻礁用の海藻定着基盤、例えば、昆布、ワカメを初めとした種々の海藻養殖用の定着基盤となる。
【実施例4】
【0188】
図9、図10は本発明の多孔質焼成体からなる藻礁用の海藻定着基盤の他の実施例を説明するものである。
【0189】
図10(b)に図示されている本発明の多孔質焼成体からなる藻礁用の海藻定着基盤は、本発明の藻礁用の海藻定着基盤25の上側に、上側方向に向かって延びる複数本の棒状体3が立設されている構造体23が取り付けられているものである。
【0190】
なお、多孔質焼成体からなる本発明の藻礁用の海藻定着基盤25としては、実施例1で製造したもの、実施例2で製造したもののいずれも使用することができる。この実施例では、実施例1で製造したものを用いる場合を図示して説明している。
【0191】
構造体23は、図9図示のように碁盤目状の枠体22(図9(a))に、実施例3で説明した棒状体3を上側方向に向けて取り付けてあるものである。
【0192】
図10(b)中、本発明の多孔質焼成体からなる藻礁用の海藻定着基盤25は実施例1、2で説明したようにして製造したものである。図10(b)図示の実施形態では中央部が山形に突起する形態になっているが、実施体1、2で説明したように平板状(例えば、600mm×600mm×60mm(厚み))のものを用いることもできる。
【0193】
上記のようにして準備した藻礁用の海藻定着基盤25を下側から枠台24、上側から構造体23で図10(b)図示のように挟み込み、不図示の結合具を用いて枠台24と構造体23とを結合して本発明の多孔質焼成体からなる藻礁用の海藻定着基盤としたものである。
【0194】
藻礁用の海藻定着基盤25への海藻種子・胞子の良好な定着、成長する海藻の仮根や根の定着を図りつつ、図10(c)図示のように、藻食魚類50や無脊椎動物などから符号20で示す海藻類の生体や幼体を保護することができる。
【0195】
構造体23の材質及び、立設する棒状体3の大きさ、立設間隔などは実施例3で説明したものと同様にすることができる。
【0196】
この実施例の藻礁用の海藻定着基盤も、実施例3の場合と同じく、棒状体3を備えていることにより、実施例1、2で説明したように、可溶性アルカリ分が溶出するおそれがなく、海藻種子・胞子の定着率が高まり、海藻の仮根や根が定着しやすい藻礁用の海藻定着基盤であって、なおかつ、藻食魚類や無脊椎動物などから海藻類の生体や幼体を保護することに適した藻礁用の海藻定着基盤、例えば、昆布、ワカメを初めとした種々の海藻養殖用の定着基盤となる。
【0197】
この実施例では、実施例1、あるいは実施例2で製造した板状体の多孔質焼成体からなる本発明の藻礁用の海藻定着基盤25の上側に、上側方向に向かって延びる複数本の棒状体3が立設されている構造体23が取り付けられている例を説明した。
【0198】
ここで、円錐形状または多角錐形状に成形されている実施例2で説明した本発明の藻礁用の海藻定着基盤40、41が上側に取り付けられている構造体を、実施例1、あるいは実施例2で製造した板状体の多孔質焼成体からなる本発明の藻礁用の海藻定着基盤25の上側に取り付けで、この実施例の藻礁用の海藻定着基盤とすることもできる。
【0199】
実施例3で説明したように、実施例2で製造した円錐形状または多角錐形状に成形されている藻礁用の海藻定着基盤40、41の大きさ・形状を、例えば、底面直径300mm×高さ200mmの円錐体、底面直径300mm×高さ200mmの四角錐体及び六角錐体などとすることにより、この実施例において、藻食魚類や無脊椎動物などから海藻類の生体や幼体を保護するという棒状体3が発揮している機能をこれらの大きさ・形状の藻礁用海藻定着基盤40、41によって代替させることができる。
【実施例5】
【0200】
図11は本発明の多孔質焼成体からなる藻礁用の海藻定着基盤の他の実施例を説明するものである。
【0201】
図11に示す本発明の海藻定着基盤は、実施例1で説明した本発明の多孔質焼成体からなる藻礁用の海藻定着基盤を円柱状の形状に成形し、この円柱状の海藻定着基盤26の一端側26aと他端側26bにそれぞれ種糸取り付け用のフック27、28を立設したものである。
【0202】
なお、多孔質焼成体からなる本発明の円柱状の海藻定着基盤26としては、実施例1で製造したもの、実施例2で製造したもののいずれも使用することができる。この実施例では、実施例1で製造したものを用いる場合を図示して説明している。
【0203】
図示の実施形態では、直線的に延びるフック27b、28bと、これに対して間隔をあけて配備されるフック27a、28aとによってフック27、28が構成され、フック27aとフック27bとの間、フック28aとフック28bとの間を利用して種糸29が取り付けられているが、種糸取り付け用のフック27、28の構造、形状はこれに限られるものではない。
【0204】
海藻の種付け時期は冬季であることが多く、手作業で行わねばならない種付け作業は、手がかじかむため、簡単ではなかった。
【0205】
図11図示の本発明の海藻定着基盤は、円柱状の海藻定着基盤26の両端に種糸取り付け用のフック27、28が設けられているため、種糸29の一方の端を一方のフック27に取り付けた後、円柱状の海藻定着基盤26の周囲を取り巻くように種糸29を巻きつけ、種糸29の他方の端を他方のフック28に取り付けるだけで簡単に種糸取り付けを行うことができる。これにより、手がかじかむ冬季であっても、海藻の種付けを効率よく行うことができる。
【0206】
そして、円柱状の海藻定着基盤26は実施例1で説明した構造を有するので、可溶性アルカリ分が溶出するおそれがなく、海藻種子・胞子の良好な定着、成長する海藻の仮根や根の定着を図り、海藻の良好な成長を促すことができる。
【0207】
なお、図11(c)図示のように、円柱状の多孔質焼結体26の周壁に一端側26aと他端側26bとの間に所定の間隔を空けて突起部26cが複数個形成されている構造にすることができる。
【0208】
このようにすれば、円柱状の海藻定着基盤26の周囲を取り巻くように巻きつけたれた種糸29がずれるおそれが少なくなるので有利である。
【実施例6】
【0209】
図5〜図8、図15は、実施例1〜4で説明した本発明の多孔質焼成体からなる藻礁用の海藻定着基盤が、魚礁用の構造物に組み合わされている、本発明の藻・魚礁一体型海藻定着基盤の例を説明するものである。
【0210】
図5〜図7図示の実施例では、魚礁用の構造物は、4個の上部ブロック14a、14b、14c、14dが、台座11の上側平面に形成されている穴13及び、接合棒13を介して、平面視四角形の台座11に取り付けられているものである。
【0211】
上部ブロック14a、14b、14c、14dにはそれぞれ穴15が形成されており、それぞれの間に間隔を空けて平面視四角形の台座11上に取り付けられている。
【0212】
このような魚礁用の構造物に実施例1〜4で説明した本発明の多孔質焼成体からなる藻礁用の海藻定着基盤を取り付けることによって、図6、図7図示のように、藻・魚礁一体型海藻定着基盤にすることができる。
【0213】
図6、図7図示の実施形態では、実施例3で説明した棒状体3が立設されている本発明の多孔質焼成体からなる藻礁用の海藻定着基盤1が複数個、魚礁用の構造物に組み合わされている。海藻定着基盤1は、ボルト等の取り付け治具を用いて魚礁用の構造物に組み合わせることができる。
【0214】
図6、図7図示の実施形態では、イカ産卵用の合成樹脂製網17と鉄筋30、タコ産卵用の蛸壺16も備えられている。
【0215】
図8図示の実施形態は、棒状体19を備えている魚礁用の構造物18の上部に、実施例3で説明した棒状体3が立設されている本発明の多孔質焼成体からなる藻礁用の海藻定着基盤1がボルト等の取り付け治具によって取り付けられているものである。
【0216】
魚礁用の構造物18はポーラスコンクリート製にすることができる。魚礁用の構造物18が備えている棒状体19は、実施例3、4で説明した棒状体3と同じく食害対策用のものである。
【0217】
図6、図7では、実施例3で説明した本発明の多孔質焼成体からなる藻礁用の海藻定着基盤1が魚礁用の構造物に取り付けられている構造が説明されているが、実施例2で説明したように、実施例1、あるいは実施例2で製造した種々の形状、例えば、実施例2で説明した円錐形状または多角錐形状などの形状に成形されている、多孔質焼成体からなる本願発明の藻礁用の海藻定着基盤を、上部ブロック14a、14b、14c、14dに取り付けることもできる。
【0218】
この場合には、実施例2で説明したように、複数個の藻礁用の海藻定着基盤を、それぞれ、隣接する藻礁用の海藻定着基盤同士の間に5〜50mmの間隔を空けて配備することが望ましい。実施例2で説明したように、ガンゼウニなどによる海藻食害を防止する上で効果的だからである。
【0219】
特に、図5〜図7に示したように、多孔質焼成体からなる本願発明の藻礁用の海藻定着基盤が複数個配備される構造体を、上部ブロック14a、14b、14c、14dのように、隣接する構造体同士の間に所定の空間部を空けて配置されている構造体にすると、ガンゼウニなどによる海藻食害を防止する上で一層効果的である。
【0220】
図15図示の実施形態は、空隙部45を備えていて海中に沈設される魚礁用の構造体44、46の適当な箇所に取り付け、藻・魚礁一体型海藻定着基盤としたものである。図15図示の構造体44、46も空隙部45を備えていることにより、ガンゼウニなどによる海藻食害を防止する上で効果的であるが、更に、構造体44、46に取り付ける、複数個の多孔質焼成体からなる本願発明の藻礁用の海藻定着基盤40が、隣接する藻礁用の海藻定着基盤40同士の間に5〜50mmの間隔を空けて配備されていると、実施例2で説明したように、ガンゼウニなどによる海藻食害を防止する上で一層効果的である。
【0221】
以上、添付図面を参照して本発明の好ましい実施形態・実施例を説明したが、本発明はかかる実施形態・実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲の記載から把握される技術的範囲において種々の形態に変更可能である。
【産業上の利用可能性】
【0222】
全国的にコンクリート護岸や消波ブロックなどによって沿岸域の範囲が狭められている。また、海の環境変化(例えば、磯焼け現象などの進行) が深刻な問題となっている。これらに対して有効な手立てが無いまま推移し、藻場の減少が顕著化し、海岸部の環境悪化とこれに起因すると思われる漁獲高減少が拡大している。
【0223】
沿岸域の藻場の減少、干潟漁場の環境の悪化、生産力の低下に対応するため、海洋環境・生態系の保全を重視した藻場を効果的に復元することが求められている。
【0224】
すなわち、CO吸収効果等環境改善面も含めて、磯焼けやコンクリート等の人工護岸・砂泥域に藻場を造成するなど、新しい技術導入により計画的な藻場の再造成技術確立が求められている。
【0225】
これらの問題に対して、これまでもさまざまな魚礁が開発され、海中に設置されてきたが、商業用魚類を多く集めることを主目的にしているために、大型で強固な構造を持つ魚礁が多く、海藻等の付着などは十分には考慮されていないのが一般的であった。また、漁業的に産卵・稚魚育成の場の積極的な再生に関する取り組みが要請されていた。
【0226】
海域の自然条件に適合した藻・魚礁の機能、構造、形状を検討し、その相乗効果が期待出来る小型藻・魚礁を製作し、その海域にマッチングした藻場の造成及び再生を積極的に進め、沿岸海域の環境再生を目指すことが要請されている。
【0227】
本発明の藻礁用海藻定着基盤は、コンクリート等で人工的に固められた海浜護岸や、環境変化で磯やけを起こした海中などに、再び生物の繁茂する場所の基本である海藻の定着を促進することに利用されるものである。これにより、本発明の藻礁用海藻定着基盤は、近年の自然調和の気運の高まりや、海域における二酸化炭素吸収の場の提供など生態系再生に寄与するものである。
【0228】
例えば、増殖場造成事業等で実施される、藻場等を造成し、魚類等の有用水産生物(マダイ等)の産卵・生育に適した環境を整備する場合に、本発明の藻礁用海藻定着基盤を利用することができる。また、魚礁等の構築を検討する場合、これら魚礁の表面に本発明の藻礁用海藻定着基盤を利用することで海藻の付着性向上が可能である。すなわち本発明の藻礁用海藻定着基盤は、魚礁表面特性の改善および藻場造成礁に利用することが可能であり、既設のコンクリート表面に設置したり、砂泥域に人工的に造成する藻・魚礁に使用することで、効果的に海藻胞子の付着・育成が可能となる。
【0229】
更に、本発明の藻礁用海藻定着基盤は、一度設置すると物性変化も無いことから、公共的な利用に最適である。
【0230】
藻礁用の海藻定着基盤としては、海藻によって胞子サイズや生態が相違することを考慮して空隙径・空隙率・形状などを設計することが望ましい。また、藻礁用海藻定着基盤を設置する海域ごとの食害生物影響等を考慮して藻礁用海藻定着基盤の空隙径・空隙率・形状などを設計することが望ましい。
【0231】
本発明の藻礁用海藻定着基盤によれば、使用原材料である陶磁器粉砕物、碍子粉砕物、耐火レンガ類粉砕物、天然火成岩粉砕物の粒径範囲を調整することによって、使用方法や海藻の胞子着床に適合する空隙径、空隙率、形状の藻礁用海藻定着基盤を種々に設計することができる。
【0232】
そこで、本発明の藻礁用海藻定着基盤によれば、ガンガゼウニ・貝類等の食害を防止し、フジツボ付着が少ない藻礁用海藻定着基盤を設計することが可能である。すなわち、海藻種・胞子の定着率・生長に優れ、多孔質機能・構造の相乗効果により食害防止効果 及びフジツボ付着防止が可能である。
【0233】
特に、藻礁形成用に本願発明の藻礁用海藻定着基盤を複数個密集させて配備・設置することとし、このとき、隣接する藻礁用の海藻定着基盤同士の間に5〜50mmの間隔を空けて配備するようにすると、ガンゼウニなどによる海藻食害を効果的に防止することができる。更に、多孔質焼成体からなる本願発明の藻礁用の海藻定着基盤が複数個配備される構造体を、隣接する構造体同士の間に所定の空間部を空けて配置されている構造体にすると、ガンゼウニなどによる海藻食害を防止する上で一層効果的である。
【0234】
また、陶磁器粉砕物、碍子粉砕物、耐火レンガ類粉砕物、天然火成岩粉砕物の中のいずれか一種または複数種の粒径範囲が2mm以上で3mm未満、3mm以上で5mm未満、5mm以上で10mm未満、10mm以上で20mm未満、20mm以上で40mm未満のものを一種または複数種組み合わせたものを使用する本発明の藻礁用の海藻定着基盤の場合、使用する粒径範囲を選択することによって、比較的粒径の粗い基盤を好む海藻と、比較的粒径の細かい基盤を好む海藻とにそれぞれ適した生育環境を与える海藻定着基盤にし、定着効率を向上させることができる。
【0235】
本発明の藻礁用海藻定着基盤において原材料に碍子粉砕物を使用すると、有害金属を含まず、アルカリ溶出などの無い、半永久的に物質変化の無い、海藻の定着性に優れた多孔質構造からなる藻礁用海藻定着基盤と提供することができる。また、これが魚礁用の構造物に組み合わされている藻・魚礁一体型海藻定着基盤を提供することができる。
【0236】
碍子は、有害な物質(重金属等)を含有していないものであるが、硬度が高く、リサイクルが難しかった。使用期限の過ぎた碍子は撤去して埋め立て処分場に大量に廃棄するのが一般的であったため高額な処理費が必要であった。これに対して、本発明は、碍子を新たな磁器原料として使用することを可能ならしめるものである。
【0237】
すなわち、原材料に碍子粉砕物を使用する本発明の藻礁用海藻定着基盤は、廃棄される碍子の新規な用途として、焼成物の生物親和性の高さに着目し、海藻の胞子の定着率・成長の研究から生まれた素材である。
【0238】
特に、本願発明の藻礁用の海藻定着基盤が配備される構造物や、本願発明の藻礁用の海藻定着基盤が組み合わされる魚礁用の構造物を、廃棄がいし又は粗粉砕したがいしを骨材とした構造物にすることによって、より一層、廃棄される碍子の新規な用途を拡大することができる。
【符号の説明】
【0239】
1、2、40、41 多孔質焼成体からなる本発明の藻礁用の海藻定着基盤
3(3a、3b、3c、3d、3e、3f、3g) 棒状体
4 陶磁器粉砕物、碍子粉砕物、耐火レンガ粉砕物、天然火成岩粉砕物などの粒子
5 空隙部
6 セラミック粒子
7 天然ガラス質鉱物からなる溶融層
11 魚礁用の構造物の台座
14a、14b、14c、14d 魚礁用の構造物の上部ブロック
16 タコ産卵用の蛸壺
17 イカ産卵用の合成樹脂製網
18 魚礁用の構造物
19 棒状体
20 海藻類の生体や幼体
21 接着剤
22 碁盤目状の枠体
23 構造体
24 枠台
25 藻礁用の海藻定着基盤
26 円柱状の海藻定着基盤
27(27a、27b)、28(28a、28b) 種糸取り付け用のフック
29 種糸
30 鉄筋
50 藻食魚類

【特許請求の範囲】
【請求項1】
陶磁器粉砕物、碍子粉砕物、耐火レンガ類粉砕物、天然火成岩粉砕物の中のいずれか一種または複数種の粒径5ミクロン以上で300ミクロン未満のもの10〜27重量%と、粒径300〜1000ミクロンのもの63〜70重量%及び、
天然ガラス質鉱物の粒径50ミクロン以下のもの10〜20重量%とを混合し、
あるいは、
陶磁器粉砕物、碍子粉砕物、耐火レンガ類粉砕物、天然火成岩粉砕物の中のいずれか一種または複数種の粒径300ミクロン〜20000ミクロンのもの80〜90重量%及び、
天然ガラス質鉱物の粒径50ミクロン以下のもの10〜20重量%とを混合し、
これに所定量の水分及び有機バインダーを加えて混練し、
混練物を所定の形状に成形した後、
前記有機バインダーが粘着力を有している湿潤状態の間に、粒径が300ミクロンを超えない大きさで所定の粒径範囲に整粒されているセラミック粒子を前記所定の形状に成形されている混練物の表面全体に振りかけてまぶし、
当該セラミック粒子が表面全体にまぶされた前記所定の形状に成形されている混練物を乾燥させ、その後、1000〜1500℃で焼成した
多孔質焼結体
からなる藻礁用の海藻定着基盤。
【請求項2】
陶磁器粉砕物、碍子粉砕物、耐火レンガ類粉砕物、天然火成岩粉砕物の中のいずれか一種または複数種の粒径5ミクロン以上で300ミクロン未満のもの10〜27重量%と、粒径300〜1000ミクロンのもの63〜70重量%及び、
天然ガラス質鉱物の粒径50ミクロン以下のもの10〜20重量%とを混合し、
あるいは、
陶磁器粉砕物、碍子粉砕物、耐火レンガ類粉砕物、天然火成岩粉砕物の中のいずれか一種または複数種の粒径300ミクロン〜20000ミクロンのもの80〜90重量%及び、
天然ガラス質鉱物の粒径50ミクロン以下のもの10〜20重量%とを混合し、
これに所定量の水分及び有機バインダーを加えて混練し、
混練物を円柱状の形状に成形した後、
前記有機バインダーが粘着力を有している湿潤状態の間に、粒径が300ミクロンを超えない大きさで所定の粒径範囲に整粒されているセラミック粒子を前記円柱状の形状に成形されている混練物の表面全体に振りかけてまぶし、
当該セラミック粒子が表面全体にまぶされた前記円柱状の形状に成形されている混練物を乾燥させ、その後、1000〜1500℃で焼成した
円柱状の多孔質焼結体の一端側と他端側にそれぞれ種糸取り付け用のフックが立設されている
ことを特徴とする藻礁用の海藻定着基盤。
【請求項3】
前記円柱状の多孔質焼結体の周壁に前記一端側と他端側との間に所定の間隔を空けて突起部が複数個形成されている
ことを特徴とする請求項2記載の藻礁用の海藻定着基盤。
【請求項4】
陶磁器粉砕物、碍子粉砕物、耐火レンガ類粉砕物、天然火成岩粉砕物の中のいずれか一種または複数種の粒径範囲が2mm以上で3mm未満、3mm以上で5mm未満、5mm以上で10mm未満、10mm以上で20mm未満、20mm以上で40mm未満のものを一種または複数種組み合わせたもの80〜90重量%と、
天然ガラス質鉱物の粒径50ミクロン以下のもの10〜20重量%とを混合し、
これに所定量の水分及び有機バインダーを加えて混練し、
混練物を所定の形状に成形した後、
前記有機バインダーが粘着力を有している湿潤状態の間に、粒径が300ミクロンを超えない大きさで所定の粒径範囲に整粒されているセラミック粒子を前記所定の形状に成形されている混練物の表面全体に振りかけてまぶし、
当該セラミック粒子が表面全体にまぶされた前記所定の形状に成形されている混練物を乾燥させ、その後、1000〜1500℃で焼成した
多孔質焼結体
からなる藻礁用の海藻定着基盤。
【請求項5】
前記陶磁器粉砕物、碍子粉砕物、耐火レンガ類粉砕物、天然火成岩粉砕物の中のいずれか一種または複数種の粒径範囲が2mm以上で3mm未満、3mm以上で5mm未満、5mm以上で10mm未満のものを一種または複数種組み合わせたものを使用してなる請求項4記載の藻礁用の海藻定着基盤と、
前記陶磁器粉砕物、碍子粉砕物、耐火レンガ類粉砕物、天然火成岩粉砕物の中のいずれか一種または複数種の粒径範囲が10mm以上で20mm未満、20mm以上で40mm未満のものを一種または複数種組み合わせたものを使用してなる請求項4記載の藻礁用の海藻定着基盤と
が連続的に配置されて形成されている藻礁用の海藻定着基盤。
【請求項6】
陶磁器粉砕物、碍子粉砕物、耐火レンガ類粉砕物、天然火成岩粉砕物の中のいずれか一種または複数種の粒径範囲が2mm以上で3mm未満、3mm以上で5mm未満、5mm以上で10mm未満、10mm以上で20mm未満、20mm以上で40mm未満のものを一種または複数種組み合わせたもの80〜90重量%と、
天然ガラス質鉱物の粒径50ミクロン以下のもの10〜20重量%とを混合し、
これに所定量の水分及び有機バインダーを加えて混練し、
混練物を円柱状の形状に成形した後、
前記有機バインダーが粘着力を有している湿潤状態の間に、粒径が300ミクロンを超えない大きさで所定の粒径範囲に整粒されているセラミック粒子を前記円柱状の形状に成形されている混練物の表面全体に振りかけてまぶし、
当該セラミック粒子が表面全体にまぶされた前記円柱状の形状に成形されている混練物を乾燥させ、その後、1000〜1500℃で焼成した
円柱状の多孔質焼結体の一端側と他端側にそれぞれ種糸取り付け用のフックが立設されている
ことを特徴とする藻礁用の海藻定着基盤。
【請求項7】
前記円柱状の多孔質焼結体の周壁に前記一端側と他端側との間に所定の間隔を空けて突起部が複数個形成されている
ことを特徴とする請求項6記載の藻礁用の海藻定着基盤。
【請求項8】
請求項1記載の藻礁用の海藻定着基盤に、複数本の棒状体が立設されている
ことを特徴とする藻礁用の海藻定着基盤。
【請求項9】
請求項1記載の藻礁用の海藻定着基盤の上側に、上側方向に向かって延びる複数本の棒状体が立設されている構造体が取り付けられている
ことを特徴とする藻礁用の海藻定着基盤。
【請求項10】
請求項1記載の藻礁用の海藻定着基盤の上側に、円錐形状または多角錐形状に成形されている請求項4又は5記載の藻礁用の海藻定着基盤が取り付けられている
ことを特徴とする藻礁用の海藻定着基盤。
【請求項11】
円錐形状または多角錐形状に成形されている請求項4又は5記載の藻礁用の海藻定着基盤が上側に取り付けられている構造体が、請求項1記載の藻礁用の海藻定着基盤の上側に取り付けられている
ことを特徴とする藻礁用の海藻定着基盤。
【請求項12】
請求項1、4、5のいずれか一項に記載の藻礁用の海藻定着基盤が複数個配備されることによって形成される藻礁であって、前記複数個の海藻定着基盤は、隣接する海藻定着基盤同士の間に5〜50mmの間隔を空けて配備されていることを特徴とする人工藻礁。
【請求項13】
前記複数個の海藻定着基盤が配備される構造物は、隣接する構造物同士の間に所定の空間部を空けて配置されている構造物であることを特徴とする請求項12記載の人工藻礁。
【請求項14】
前記構造物は、廃棄がいし又は粗粉砕したがいしを骨材とした構造物であることを特徴とする請求項13記載の人工藻礁。
【請求項15】
魚礁用の構造物に、請求項1乃至11のいずれかに記載の藻礁用の海藻定着基盤が組み合わされていることを特徴とする藻・魚礁一体型海藻定着基盤。
【請求項16】
前記魚礁用の構造物は、前記構造物は、廃棄がいし又は粗粉砕したがいしを骨材とした構造物であることを特徴とする請求項15記載の藻・魚礁一体型海藻定着基盤。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2011−67201(P2011−67201A)
【公開日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−187943(P2010−187943)
【出願日】平成22年8月25日(2010.8.25)
【出願人】(592059323)光洋電器工業株式会社 (6)
【Fターム(参考)】