説明

藻類及び藻類抽出物の栄養補助組成物

藍藻類のスピルリナ・プラテンシス(Spirulina platensis)の乾燥バイオマスと、アスタキサンチンとを含むヒト用栄養補助組成物が開示される。本発明の組成物は、健康なヒト又は不健康なヒトの健全及び健康を支援するために安定で、効果的で、好都合である。さらに、ヒト対象のウイルス感染を、本発明の組成物を当該対象に投与することによって改善する方法が開示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は栄養補助物に関し、より具体的には、植物材料に基づく当該補助物及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
天然栄養補助物産業は3000億ドルの世界市場である。多くの天然植物材料及び抽出物が数千年間にわたり健康目的のために人類に用いられている。世界のある地域では、天然健康製品は、宗教、文化、安全性、費用及び効能が証明されていることを理由に、化学製品又は医薬製品よりも好まれる。
【0003】
ヒトの健康のサポートに用いられてきた歴史がある植物産物の1つが藻類である。ヒトの健康のサポートに用いられることが知られている2の藻類が、スピルリナ・プラテンシス(Spirulina platensis)及びヘマトコッカス・プルビアリス(Haematococcus pluvialis)である。
【0004】
スピルリナ・プラテンシス
スピルリナ・プラテンシス・ゲイトラー(Geitler)は運動性の多細胞の糸状藍藻類で、自然界ではアフリカ及びメキシコの高アルカリ性の火山湖に存在する。現在、アフリカ、インド、中国及びアメリカ合衆国のハワイ諸島をはじめとする世界の多くの国の培養池で生育する。
【0005】
スピルリナは、免疫機能を高めることが示されており、特に、HIV/AIDS及び栄養失調に罹患した人々等の免疫が低下した人々に適用できる。免疫機能のこの自然促進は、藻類バイオマスにおける微量元素のセレンの量を増やすことでさらに高めることができる。一般的に、HIV/AIDSにはセレン欠乏が関連する(Patrick、1999;Baumら、1997)。研究者は、セレンの免疫系における機能及びセレンが抗酸化剤として機能するため、HIV疾患で重要でありうると考える。
【0006】
スピルリナの固有の形態は、環境汚染から保護された閉鎖制御系において製造される形態であり、この場合、藻類培養培地を、バイオマスの天然有機組成物を「調整する」ためにキレート化された微量元素を加えて修飾することができる。このようにして、スピルリナにおける微量元素の濃度を高めることができる。選択した微量元素をスピルリナの成長サイクルの特定の段階で無機キレートとして加える。当該元素はその後、藻類バイオマスを収集する前に生物体内で代謝されて有機複合体に変換される。例えば、セレンの最終的濃度レベルをバイオマス乾燥物1キログラムあたり少なくとも100mgに高めることができる。
【0007】
Saekiら(2000)は、40歳を過ぎた男性に40%のスピルリナ熱水抽出物で2週間の処置をした後、IFN−γ分泌活性及びNK細胞損傷活性が共に著しく促進したことを示した。Evetsら(1994)は、1日あたり5グラムのスピルリナを45日間使用すると、ロシアの高放射能地域のIgEレベルが平均値を超えた子供のIgEレベルを正常化するのに有効であることを開示する。
【0008】
インビトロ研究(Quereshiら、1995a;Quereshiら、1995b)により、スピルリナの水抽出物で処置したニワトリのマクロファージが、マクロファージ機能を促進し、抗体応答及び食作用で免疫刺激をもたらしたことが示されている。ニワトリ餌に1.6%までのレベルのスピルリナを与えた補足的な研究では、フィオヘマグルチニン−P(PHA−P)を注射後で、皮膚好塩基球過敏症(CBH)応答が対照よりもおよそ2倍高く、かつ、T細胞応答が対照よりも4倍近く高く誘発されたことが示された。Al−Batshanら(2001)もニワトリを用いて研究しているが、スピルリナを与えると、一酸化窒素活性を促進させるマクロファージの食作用経路及び代謝経路がアップレギュレーションされることを示した。細菌、ウイルス及び原生動物を含む、様々な病原性微生物に対する、マクロファージによって産生される一酸化窒素の抗菌効果が詳しく報告されているため、スピルリナには正の免疫調節効果があることが知られている。
【0009】
Hayashiら(1996)は、I型単純ヘルペス、ヒトサイトメガロウイルス、麻疹ウイルス、ムンプスウイルス、A型インフルエンザウイルス及びHIV−1ウイルスを含むエンベロープで包まれたいくつかのウイルスのインビトロでの複製を阻害する新規な硫酸化多糖のカルシウムスピルラン(Ca−SP)をスピルリナ・プラテンシスから単離した。
【0010】
ラットに、5%のスピルリナを含む食餌を100日間供与して、(スピルリナを供与しなかった対照群と比較すると)以下の点が明らかになった:1.盲腸の重量が13%増加した;2.ラクトバチルス菌が327%増加した;3.盲腸内部のビタミンB(チアミン)が43%増加した。スピルリナは追加のBを供給しなかったため、スピルリナが全体としてB吸収を改善させた。本研究により、スピルリナの摂取により、ラクトバチルス菌が増加し、かつ、食餌全体からのビタミンB及び他のビタミンの効率的な吸収が高められることが示唆される(Tokaiら、1997)。
【0011】
藍藻類のスピルリナ・プラテンシスは、栄養学的プロフィールが優れていること及びカロテノイド含有量が高いため、ヒト及び動物の食物源として何百年間にもわたり用いられている。スピルリナはタンパク質が比較的多く、その値は55%〜70%に及び、また、必須アミノ酸の全て含む(Clementら、1967;Bourgesら、1971;Anusuya Deviら、1981;Biodelta、1994)。利用可能なエネルギーは2.5kcal/グラム〜4.3kcal/グラムと測定されており、リンの利用能が41%である(Yoshida及びHoshii、1980;Biodelta、1994)。スピルリナの粉末は、青みのある緑色のものとして世の中に出回っており、実際、適切に培養及び加工された場合、いかなる天然食品源の中でも最高レベルのカロテノイドの1つを含有する(Matsunoら、1974;Tanakaら、1974;Nells及びDe Leenheer、1983;Mikiら、1986)。カロテノイドは、主として植物プランクトン、藻類及び植物で産生される、600を超える天然の脂溶性色素の一群である。菌類種及び細菌種の一部もまた、カロテノイドを合成することができるものの、動物はカロテノイドをデノボで産生することができない。天然色素の様々なクラスの中で、カロテノイドは、非常に広範囲に及ぶ構造的に多様な着色剤である。カロテノイドは自然界の広範囲の様々な色に関わっており、最も注目すべきものが、植物の果実及び葉の輝く黄色〜赤色の色である。タンパク質との組合せによっては、カロテノイドは、魚、昆虫、鳥及び甲殻類の様々な種の広範囲の様々な青色、緑色、紫色、褐色及び赤みのある色にも関連する。当該天然色素は、細胞を光損傷から保護することに関連するが、当該色素は、ビタミンAの前駆体としての様々な生物におけるより広範な機能、酸素ラジカルを消去する抗酸化活性、免疫強化、ホルモン調節並びに成長、生殖及び成熟化に機能する。スピルリナの主要なカロテノイドは、β−カロテン、β−クリプトキサンチン及びゼアキサンチンである。
【0012】
スピルリナは乾燥粉末のバイオマス形態で従来から使用され、従来から体重1キログラムあたり約45mgの1日量で経口摂取されている。好ましい形態では、粉末が500mg〜1000mgの錠剤として摂取されるか、又は、飲料物に分散される。
【0013】
アスタキサンチン
アスタキサンチン(3,3’−ジヒドロキシ−β,β−カロテン−4,4’−ジオン)CAS[471−53−4]は、サケ、エビ、マダイ及びロブスター等の海洋動物、フラミンゴ等の鳥類で餌を介して自然に蓄積されるケトカロテノイド色素である。アスタキサンチンはまた、ヘマトコッカス・プルビアリス等のある種の微細藻類及びファフィア(Phaffia)属種等の酵母にも存在する。乾燥物の4パーセントまでの最高濃度がヘマトコッカスに存在する。アスタキサンチンはまた化学合成することができるが、天然立体異性体形態だけは合成できない。
【0014】
アスタキサンチンは、β−カロテン、ゼアキサンチン及びルテイン等の他のカロテノイドに関連する、より強力な抗酸化剤である。アスタキサンチンは、一重項酸素を消去することに特に有効で、α−トコフェロールとしての一重項酸素消去能の500倍以上である。アスタキサンチンの当該抗酸化活性は、UV光による損傷からの皮膚及び眼の保護、抗炎症活性、免疫応答の調節又は促進、老化プロセスの軽減並びに心臓、肝臓、関節及び前立腺への利点を含めて、アスタキサンチンが示す広範囲の様々な健康増進特性に関与すると考えられる。アスタキサンチンの健康増進特性の優れた総説がGuerinら(2003)によって示される。
【0015】
Tsoら(1996)は、中枢神経系及び眼の損傷、特に、加齢性黄斑変性を遅延又は改善する方法としてのアスタキサンチンの使用を開示した。
【0016】
スピルリナの場合のように、アスタキサンチンは著しい免疫応答修飾を示すものの、対照的に、親油性作用因子として作用する。
【0017】
Lorenz(2002)は、アフタ性口内炎を遅延させ、改善及び防止するための経口的治療又は局所的治療としてのアスタキサンチンの使用を開示する。
【0018】
Lignell及びBottinger(2004)は、クローン病のヒト患者で、過度なTh1細胞媒介の免疫応答を抑制し、Th2細胞媒介の免疫応答を刺激するアスタキサンチンの使用を開示する。クローン病のみが研究されたが、当該著者らは、「他の優勢的なTh1細胞媒介の疾患に罹患した患者が、・・・利益を得るであろう」と推測している。残念ながら、Th1又はTh2が介在する応答は何ら測定されなかった。従って、当該開示では、アスタキサンチンに関する免疫媒介の役割は単なる推測にすぎない。
【0019】
Chewら(2004)は、炎症を軽減すること、免疫性を強化すること、生存期間を延長すること及びそれらの組合せで伴侶動物に使用される、アスタキサンチンを含む組成物を開示する。この場合、著者らは、アスタキサンチンが被験体のイヌ及びネコで細胞媒介免疫応答及び体液性免疫応答共に関与したことを示した。
【0020】
Chewら(2004)は、アスタキサンチンを用いた無作為プラセボ対照による用量増加の二重盲検ヒト試験を行ったが、東亜欺試験では、正常な被験者でヒトの免疫応答を刺激する場合のアスタキサンチンの役割が明確に実証された。
【0021】
より近年の研究(Chew及びPark、2005)は、アスタキサンチンがまた、正常なヒト被験者の細胞のDNAに対する、特に、免疫細胞での非特異的な環境的損傷を効果的に軽減することを開示する。本研究では、アスタキサンチンはH.pluvialisの超臨界二酸化炭素抽出物の形態であった。
【0022】
つい最近では、Kotwal(2006)が、小さいビーズ形態にカプセル化された、ヘマトコッカスから抽出されたアスタキサンチンエステルによる抗ウイルス活性を示す。
【0023】
アスタキサンチンは、体重1キログラムあたり約0.01mgから体重1キログラムあたり約0.20mgの1日量で健康目的のために消費される。
【0024】
下記の参考文献は本発明の背景をさらに例示する。
米国特許及び公開された出願
【表1】

【0025】
技術的参考文献
【表2】

【表3】

【表4】

【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0026】
スピルリナ・プラテンシス及びアスタキサンチンが作用において相補的なある領域、並びに、それらが互いに補完するある領域が存在することが、スピルリナ・プラテンシス及びアスタキサンチンの広範囲の様々な健康増進特性から明らかである。例えば、両者の製造物は、スピルリナが主として水溶性成分により、アスタキサンチンが脂肪可溶性成分により、免疫系を調節するようである。あるいは、アスタキサンチンは細胞レベルで抗酸化的な保護を提供することが知られているが、スピルリナの当該性質は示されていない。さらに、スピルリナは疎油性成分により抗ウイルス活性を示すことが知られているのに対し、アスタキサンチンは、新規な親油性成分により抗ウイルス活性を示すことが本明細書中に開示される。
【0027】
より広範囲の健康増進特性がある改善された栄養補助物を作製するために当該2つの補助物を組み合わせて製造物を配合することは明らかに望ましい。すなわち、各々免疫特性及び抗ウイルス特性がある疎油性成分及び親油性成分を組み合わせた製造物組成物であって、抗ウイルス活性、免疫系の支援及び細胞保護を同時に提供することができる製造物組成物である。当該組成物は、健康なヒト及び、特に、HIV感染者等の不健康なヒトに著しく有益であると考えられる。
【課題を解決するための手段】
【0028】
組成物で使用するための乾燥スピルリナバイオマスの好ましい形態は、閉鎖系で製造され、感受性成分に対する損傷を最小限に抑えるために低温乾燥したスピルリナに由来する。乾燥バイオマスの有機結合型セレンのレベルを、スピルリナの生育期間中にセレンを培養培地に加えて増加させることもまた望ましい。法律によりセレン補給されたスピルリナの販売が禁止されている特定の国では、セレンを配合時に直接に加えてもよい。
【0029】
配合物で使用されるアスタキサンチンは、ヘマトコッカス属藻類、ファフィア属及び他の微生物等の天然アスタキサンチン含有供給源に由来し得るか、合成製造から得られる。合成体は、ヒトでの使用が認可されていないため(FDA、米国)、あまり好ましくなく、また、完全な天然異性体からなることはない。
【0030】
アスタキサンチンは、ヘマトコッカス属、ファフィア属又は他の天然物のアスタキサンチン含有乾燥バイオマス及び/又はアスタキサンチン含有抽出物の形態で用いられ得る。残念ながら、ヘマトコッカス又はファフィアの全細胞乾燥バイオマスが粉末に粉砕される場合、当該アスタキサンチンは、空気や生物自身のリパーゼ及び酸化剤の組合せに暴露されると急速に効力を失う。当該粉砕されたバイオマス粉末は、アスタキサンチンの損失を防ぐため、真空パックされた酸素不透過性バッグで貯蔵されるべきか、又は、冷凍すべきである。結果として、乾燥バイオマスの混合物を含む組成物はあまり好ましくない。
【0031】
組成物で用いるアスタキサンチンの好ましい形態は、ヘマトコッカス・プルビアリス・フロトー(Flotow)に由来する抽出物である。H.pluvialisを閉鎖系で培養することができ、開放池系で生じうる環境汚染なく製造することができる。H.pluvialisは乾燥物の4重量パーセントまでをアスタキサンチンとして産生し、つまりH.pluvialisが天然アスタキサンチンのための最も経済的な供給源である。H.pluvialisで産生されるアスタキサンチンの立体異性体は、自然界のサケに存在する立体異性体と同一で、従って、ヒトの食餌に存在する立体異性体と同一である。加えて、H.pluvialisは、アスタキサンチンを主として(90%超)、遊離体よりもはるかに安定であるエステル体で産生する。
【0032】
H.pluvialisを乾燥し、粉砕し、超臨界の二酸化炭素で抽出する場合、アスタキサンチンのエステルが、適切な貯蔵条件では2年間を超えて安定である油状の粘性の暗赤色の抽出物として得られる。つまり、当該抽出物は、組成物に含めるためのアスタキサンチンの好ましい形態である。特に錠剤送達系で安定性をさらに高めるために、H.pluvialisのアスタキサンチン含有抽出物は、噴霧乾燥等の周知のプロセスにより、マルトデキストリン、ゼラチン等でカプセル化することができる。
【0033】
本明細書で開示される組成物(SpiruZan(商標))は、スピルリナ・プラテンシスの乾燥粉末バイオマスをアスタキサンチンの好適な形態と混合した物を含む。アスタキサンチンは、好ましくは、安定性を高めるために、好適なキャリアマトリックスでカプセル化される。十分に混合した組成物はその後、標準的な錠剤化装置で錠剤に変換される。組成物は、約0.025重量パーセントのアスタキサンチン〜約2.5重量パーセントのアスタキサンチンを含有するように設計される。好ましい錠剤重量は500mgであり、その結果、好ましい1日摂取量は、1日あたり3回服用され、約3グラムの乾燥スピルリナバイオマスを4mg〜5mgの天然アスタキサンチンと共に与える2錠である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
本発明の1の態様では、藍藻類(スピルリナ・プラテンシス)の乾燥バイオマスをアスタキサンチンの好適な形態と組み合わせる栄養補助組成物が開示される。本発明の好ましい形態では、アスタキサンチンはヘマトコッカス・プルビアリスのアスタキサンチン含有抽出物の形態である。本発明の組成物では、重量比で約0.025パーセントのアスタキサンチンから約2.5パーセントのアスタキサンチンまでの、乾燥スピルリナバイオマスへのアスタキサンチン含有抽出物の添加のための範囲が開示される。
【0035】
本発明の別の態様では、アスタキサンチンは、好ましくは、乾燥スピルリナバイオマスと接触しているアスタキサンチンの酸化的劣化を最小限を抑えるために、組成物への配合の前にカプセル化剤でカプセル化することができる。典型的なカプセル化剤としては、例えば、デンプン、マルトデキストリン、ゼラチン、タンパク質、ポリマー、糖及び多糖があげられる。そのような開示された栄養補助組成物は、優れた酸化安定性を示し、経口投与を容易にする錠剤、カプセル及び粉末に都合よく加工することができる。ヒト又は動物によって摂取された場合、そのような1つの組成物は、効果的及び便利な単回服用の概念でそれら2つの別個の藻類に関連した健全及び健康を支援する。通常の1日摂取量は体重1キログラムあたり約45mgの組成物の好ましい範囲にある。平均的な成人について、これは1日あたり約3グラムの組成物に等しく、これは、1日あたり3回で、2つの500mg用量として都合よく摂取される。当業者であれは、500mgが錠剤及びカプセルのための便利な単位用量であることに気であろう。
【0036】
当業者であれば、錠剤、カプセル又は粉末中の当該組成物は、例えば、ビタミン、ミネラル、抗酸化剤、トコフェロール、トコトリエノール、フィトステロール、脂肪アルコール、多糖及びビオフラボノイドをはじめとする他の生物学的に活性な抽出物及び化合物を都合よく補充し得ることを理解するであろう。
【0037】
本発明の別の態様では、収集及び乾燥の前に、成長中の藻類にセレン富化基質を与えることにより、組成物に用いられるスピルリナ・プラテンシスのセレン含有量を自然に増やすことができる。本態様で、乾燥バイオマスの1キログラムあたり約100mgのセレンを含有させることが都合よく達成される。セレン補給されたスピルリナを法律により販売できない特定の国では、セレンを配合時に直接に加えることができる。
【0038】
不健康な一部のヒト及び動物、又は同様に、現地の食餌から1日にセレンを十分に摂取できない世界のセレン不足地域では、セレン摂取量が多いことが望ましいことが知られている。
【0039】
本発明の別の態様では、体重1キログラムあたり約10mg〜体重1キログラムあたり約150mgの組成物の1日摂取量が、健康なヒト及び不健康なヒトの健全及び健康を効果的に支援することが開示される。
下記の実施例は本発明の例示であり、これに限定されるとして解釈してはならない。
【実施例1】
【0040】
スピルリナ・プラテンシスを、セレン補給閉鎖生産系で培養した。成長した藻類を収集し、乾燥し、微粉末に粉砕した。セレン含有量は乾燥バイオマス1キログラムあたり100mgであった。
【表5】

【実施例2】
【0041】
ヘマトコッカス・プルビアリスを閉鎖系で培養し、収集し、脱水し、細胞壁の破壊のために破砕し、乾燥した。当該乾燥バイオマスを圧力650bar及び温度60℃ので超臨界二酸化炭素で抽出した。表2に示す典型的な組成とともに10%のアスタキサンチンを含有する暗赤色の抽出物を得た。
【表6】

【0042】
アスタキサンチン富化H.pluvialis抽出物が98%がアスタキサンチンの形態である10.2%の総カロテノイド(抽出物1キログラムあたり10グラムである)を含有したことが表2からわかる。抽出物はまた、合計で5%を超えるエイコサペンタエン酸(EPA)及びエイコサテトラエン酸(ETA)を含有し、10%を超える多価不飽和脂肪酸(リノール酸(18:2)及びリノレン酸(18:3))を含有する。
【実施例3】
【0043】
アスタキサンチン含有抽出物をゼラチン基質で乳化し、噴霧乾燥して、カプセル化された微細なビーズ製造物を作製した。その一般的な組成を表3に示す。
【表7】

アスタキサンチン抽出物ビーズが約2.5重量%のアスタキサンチンを含有したことが表3からわかる。本ビーズは、アスタキサンチンを錠剤化プロセスに送るために非常に好適な細かい顆粒形態である。当該ビーズは、そのアスタキサンチンを酸化性のプロセスに暴露せずに錠剤又はカプセルにするため、スピルリナ・プラテンシスの粉末と都合よく混合することができる。
【実施例4】
【0044】
実施例3に記載したビーズの試料を、ポックスウイルスvGK5(Kotwalら、1989)に対する抗ウイルス活性及び毒性活性についてのインビトロスクリーニングに供した。
【0045】
100μLにおける既知量ウイルスのポックスウイルスの保存物を、希釈した(1:10及び1:4の)ビーズ物の5μL、10μL又は20μLと約1分間混合した[処理bd−1]。その後、これを、6穴プレートのウエルを覆う1mLの培地に加えた。混合後、10−6又は10−7の希釈物が得られるまで、100μLを隣のウエルに移し、この操作を繰り返した。その後、プレートを48時間インキュベーションし、48時間後、培地を除き、0.1%のクリスタルバイオレット溶液で染色した。ビーズ物を添加しない対照プレートもまた、処理しない場合のウイルスの正確なカウント数を得るために処理した[対照bd−2]。その後、比率阻害を、処理しない場合の計測総数で除し、100を乗じた処理後の実際の計測数の比率として求めた。
【0046】
ビーズをそのまま試験し、また、その不活性な賦形剤(アスタキサンチン抽出物を除くすべての成分)を別個に試験した。抗ポックスウイルス阻害を、3.0×10PFU/mL、2.4×10PFU/mL及び2.7×10PFU/mLの濃度で試験した。5μL、10μL及び20μLで、ビーズの1:10の希釈物は85%〜100%の範囲で阻害を示した。1×10PFU/mLのポックスウイルス濃度への線形回帰調節は、107%(5μL)、94%(10μL)及び72%(20μL)の推定された阻害をもたらした。賦形剤についての等価回帰阻害推定値は、0%(6μL)、0%(12μL)及び5%(24μL)であった。賦形剤は、6μL/mL、12μL/mL及び24μL/mLでさしたる阻害は示さなかった(0%〜62%)。
【0047】
1:10のビーズ希釈物は5μLのレベルでゼロの毒性を示したが、10μL及び20μLの用量では高い毒性を維持した。賦形剤は、1:4で希釈したときでさえ、6μL、12μL及び24μLの用量で毒性を示さなかった。
【0048】
ビーズ物が、1:10の希釈物の5μLの用量で試験されたとき、ゼロの毒性を伴って、ポックスウイルスvGK5の100%の阻害を示したことが明らかである。ビーズは2.5%のアスタキサンチンを含有するので、1:10のビーズ希釈物の5μLの用量は、100μLのポックスウイルス溶液におけるアスタキサンチンの0.0125μlの用量、すなわち、125ppmの有効濃度を表す。この研究でのアスタキサンチンについてのIC50が125ppmよりも著しく低く、一方で、TC50が125ppmよりも著しく大きいことは明白である。
【0049】
【表8】

【実施例5】
【0050】
カプセル化された抽出物ビーズを、乾式ミキサーで総重量の6.67%%のレベルで、乾燥したセレン強化バイオマスと混合した。得られた混合物を、500mgの錠剤を形成するために、結合剤を加えずに錠剤化装置に通した。
【表9】

【0051】
アスタキサンチンが0.167重量%で錠剤に含まれることが表5からわかる。セレン含有量は1kgあたり93mgである。3グラムの配合物である6錠の好ましい1日摂取量により、5グラムのアスタキサンチン及び0.279mgのセレンが与えられる。錠剤を水と混合したときは粉々に崩壊せずに優れた溶解特性を示した。錠剤は、ヒトによる経口摂取に非常に好適な形態であった。
【実施例6】
【0052】
実施例5で調製された錠剤を有用性のヒト対象実証試験に適用した。天然物AIDSクリニックの指導のもと、数人のヒト免疫不全症ウイルス(HIV)患者が、錠剤を1日あたり6錠の1日摂取量で一定期間摂取することを志願した。プロトコル、インフォームドコンセント及び安全性要因が独立して、摂取の開始に先立ち、Independent Review Consulting,Inc.(認定された施設内検討委員会)により評価され、承認された。33名の研究被験者(26名の男性及び6名の女性)が、実証試験に参加することを志願した。3名の志願者が研究から脱落したが2名はサプリメントに関連しない理由のためで、1名はアレルギー反応の可能性があるためであった。さらに17名が、実証試験に加わることに関心を示している。全参加者のその後の全体的な健康状態を評価する。
【0053】
開示の組成物がHIV及びAIDS障害集団に渇望されているものであることが実施例6から明らかである。開示の組成物が、不相応な困難もなく投与及び摂取に都合よいこともまた明白である。本発明は、スピルリナ・プラテンシスの乾燥バイオマスをアスタキサンチンとの組合せで含むヒトの栄養補助物と見なすことができる。そのアスタキサンチンは、好ましくは、ヘマトコッカス・プルビアリスのアスタキサンチン含有抽出物の形態である。抽出物は、例えば、二酸化炭素による超臨界流体抽出により製造することができる。組成物は、アスタキサンチンをスピルリナ・プラテンシス乾燥バイオマスの約0.025重量パーセント(0.025重量%)からスピルリナ・プラテンシス乾燥バイオマスの約2.500重量パーセント(2.500重量%)までの範囲で含むことができる。スピルリナ・プラテンシスの乾燥バイオマスは、藻類成長期間における供給基質のセレン補給によりセレン含有量を増やすことができる。例えば、スピルリナ・プラテンシス乾燥バイオマスのセレン含有量は1キログラムあたり約50mgから1キログラムあたり約150mgまでであり得る。セレン補給されたスピルリナが法律により販売禁止されている特定の国では、セレンを配合時に直接に加えることができる。
【0054】
アスタキサンチンは、デンプン、マルトデキストリン、ゼラチン、ポリマー、タンパク質、多糖及び糖等を含むカプセル化剤でマイクロカプセル化することができる。ビタミン、ミネラル、抗酸化剤、トコフェロール、トコトリエノール、フィトステロール、脂肪アルコール、多糖及びビオフラボノイド等の他の生物学的に活性な抽出物及び化合物を組成物に加えることができる。組成物は、錠剤、カプセル及び粉末の形態で提供することができ、また、食品、飼料及び飲料物に配合することができる。
【0055】
組成物は、健康なヒト又は不健康なヒトの健全及び健康を支援するための栄養補助物として使用することができる。組成物は、ヒト対象のHIV/AIDS等のウイルス感染症を改善するために使用することができる。具体的には、組成物を、体重1キログラムあたり約10mgの組成物から体重1キログラムあたり約150mgの組成物までの1日量で、より好ましくは、体重1キログラムあたり約45mgの組成物の範囲の1日量でヒトに経口投与することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スピルリナ・プラテンシス(Spirulina platensis)の乾燥バイオマスを遊離体及び/又はエステル体のアスタキサンチンと組わ合せて含む、ヒト用の栄養補助組成物。
【請求項2】
アスタキサンチンが合成製造から得られる、請求項1記載の組成物。
【請求項3】
アスタキサンチンが、ヘマトコッカス(Haematococcus)属、ファフィア(Phaffia)属又は他の天然物のアスタキサンチン含有乾燥バイオマスに含まれる、請求項1記載の組成物。
【請求項4】
前記アスタキサンチンが、ヘマトコッカス(Haematococcus)属、ファフィア(Phaffia)属又は他の天然物のアスタキサンチン含有抽出物に含まれる、請求項1記載の組成物。
【請求項5】
前記アスタキサンチン含有抽出物が二酸化炭素による超臨界流体抽出により製造される、請求項4記載の組成物。
【請求項6】
前記アスタキサンチン及び/又は前記アスタキサンチン含有乾燥バイオマス及び/又は前記アスタキサンチン含有抽出物が、デンプン、マルトデキストリン、ゼラチン、ポリマー、タンパク質、多糖及び糖を含むカプセル化剤でマイクロカプセル化される、請求項1記載の組成物。
【請求項7】
前記アスタキサンチンが典型的には、前記スピルリナ・プラテンシス乾燥バイオマスの約0.025重量パーセント(0.025重量%)から前記スピルリナ・プラテンシス乾燥バイオマスの約2.500重量パーセント(2.500重量%)を含む、請求項1記載の組成物。
【請求項8】
スピルリナ・プラテンシスの前記乾燥バイオマスのセレン含有量が、藻類成長期で供給物質のセレン補充により増加した、請求項1記載の組成物。
【請求項9】
組成物のセレン含有量がセレンを直接添加することにより増加する、請求項1記載の組成物。
【請求項10】
組成物のセレン含有量が組成物1キログラムあたり約50mgから組成物1キログラムあたり約150mgである、請求項8記載の組成物。
【請求項11】
例えば、ビタミン、ミネラル、抗酸化剤、トコフェロール、トコトリエノール、フィトステロール、脂肪アルコール、多糖及びビオフラボノイドを含む他の生物学的に活性な抽出物及び化合物が加えられた、請求項1記載の組成物。
【請求項12】
錠剤、カプセル、粉末、乳化物及びゲルの形態である、請求項1記載の組成物。
【請求項13】
食品及び飲料物に配合される、請求項1記載の組成物。
【請求項14】
健康なヒト対象又は不健康なヒト対象の健全及び健康を、請求項1記載の組成物を前記対象に投与することにより支援する方法。
【請求項15】
請求項1に記載の組成物を前記対象に経口投与することにより、ヒト対象でのウイルス感染の影響を改善する方法。
【請求項16】
HIV及びAIDSに罹患したヒト対象の健全及び健康を、請求項1記載の組成物を前記対象に経口投与することにより促進する方法。
【請求項17】
前記組成物が、体重1キログラムあたり組成物約10mgから体重1キログラムあたり組成物約150mgの1日量で、優先的に、体重1キログラムあたり組成物約45mgの範囲の1日量で対象に経口投与される、請求項14記載の方法。
【請求項18】
前記組成物が、体重1キログラムあたり組成物約10mgから体重1キログラムあたり組成物約150mgの1日量で、優先的に、体重1キログラムあたり組成物約45mgの範囲の1日量で対象に経口投与される、請求項15記載の方法。
【請求項19】
前記組成物が、体重1キログラムあたり組成物約10mgから体重1キログラムあたり組成物約150mgの1日量で、優先的に、体重1キログラムあたり組成物約45mgの範囲の1日量で対象に経口投与される、請求項16記載の方法。

【公表番号】特表2009−517482(P2009−517482A)
【公表日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−543432(P2008−543432)
【出願日】平成18年11月28日(2006.11.28)
【国際出願番号】PCT/US2006/045735
【国際公開番号】WO2007/062274
【国際公開日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【出願人】(508159008)ユーエス・ニュートラシューティカルズ・エルエルシー・ディービーエイ・ヴァレンサ・インターナショナル (2)
【Fターム(参考)】