説明

虚血の治療におけるA2Aアデノシン受容体アゴニストの使用

【課題】虚血の治療におけるA2Aアデノシン受容体アゴニストの使用の提供。
【解決手段】本発明の一態様は、哺乳類の虚血を治療する方法であって、A2A受容体アゴニストである少なくとも1つの化合物の治療有効量を哺乳類に投与する手順を含む、方法である。別の態様において、本発明は、ヒト患者の冠動脈虚血を低減する方法であって、(1‐{9‐[(2R,3R,4S,5R)‐3,4‐ジヒドロキシ‐5‐(ヒドロキシメチル)オキソラン‐2‐イル]‐6‐アミノプリン‐2‐イル}ピラゾール‐4‐イル)‐N‐メチルカルボキサミドおよび少なくとも1つの医薬品賦形剤を含む少なくとも1用量の医薬組成物を、ヒト患者の冠動脈灌流圧を低減するのに十分な量でヒト患者に投与する手順を含み、冠動脈虚血が冠微小循環性血管収縮を伴う、方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、リガデノソンなどのアデノシンA2A受容体アゴニストを哺乳類に投与する
ことにより哺乳類の虚血を低減する方法であって、虚血を軽減するのに十分な量のアデノ
シンA2A受容体アゴニストが投与される、方法に関する。
【背景技術】
【0002】
(背景)
重篤な冠動脈狭窄を伴ったヒトの虚血時に冠微小循環性血管収縮が起こるという所見が
見出されている。血管収縮は虚血の悪化に寄与する。心血流(CBF)を短期間増加させ
る薬理学的作用剤は、虚血の治療に非常に役立つと考えられている。
【0003】
2Aアデノシン受容体に対する強力で選択的なアゴニストは、当該技術分野で既知で
あり、冠状動脈造影剤との併用を含めた数多くの理由から医薬組成物に有用であると記載
されている。
【0004】
1つの特に強力で有用なアデノシンA2A受容体アゴニストは、リガデノソン((1‐
{9‐[(2R,3R,4S,5R)‐3,4‐ジヒドロキシ‐5‐(ヒドロキシメチル
)オキソラン‐2‐イル]‐6‐アミノプリン‐2‐イル}ピラゾール‐4‐イル)‐N
‐メチルカルボキサミド)である。リガデノソンは、アデノシンA2A受容体に対して選
択的であり、作用の持続時間が短く、持続静注としての投与を必要としないと考えられて
いる。リガデノソンおよび関連するA2A受容体アゴニスト化合物、ならびにそれらの製
造方法および心灌流イメージングにおける使用については、各明細書の開示内容全体が参
考として本明細書で援用される、特許文献1、特許文献2、特許文献3、および特許文献
4、特許文献5、特許文献6、および特許文献7に開示されている。リガデノソンは既知
の化合物であるが、その薬物動態プロファイルおよび潜在的な治療用途の範囲については
、依然として多くが不明である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第6,403,567号明細書
【特許文献2】米国特許第6,642,210号明細書
【特許文献3】米国特許第6,214,807号明細書
【特許文献4】米国特許第6,770,634号明細書
【特許文献5】米国特許第7,109,180号明細書
【特許文献6】米国特許第7,144,872号明細書
【特許文献7】米国特許第7,183,264号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
(発明の要旨)
本発明の一態様は、哺乳類の虚血を治療する方法であって、A2A受容体アゴニストで
ある少なくとも1つの化合物の治療有効量を哺乳類に投与する手順を含む、方法である。
【0007】
別の態様において、本発明は、ヒト患者の冠動脈虚血を低減する方法であって、(1‐
{9‐[(2R,3R,4S,5R)‐3,4‐ジヒドロキシ‐5‐(ヒドロキシメチル
)オキソラン‐2‐イル]‐6‐アミノプリン‐2‐イル}ピラゾール‐4‐イル)‐N
‐メチルカルボキサミドおよび少なくとも1つの医薬品賦形剤を含む少なくとも1用量の
医薬組成物を、ヒト患者の冠動脈灌流圧を低減するのに十分な量でヒト患者に投与する手
順を含み、冠動脈虚血が冠微小循環性血管収縮を伴う、方法である。
【0008】
本発明の方法は、一態様においてはA2A受容体アゴニスト化合物および1つ以上の医
薬品賦形剤を含む医薬組成物を使用して達成される場合がある。
例えば、本願発明は以下の項目を提供する。
(項目1)
哺乳類の虚血を治療する方法であって、A2A受容体アゴニストである少なくとも1つ
の化合物の治療有効量を該哺乳類に投与する手順を含む、方法。
(項目2)
前記治療する虚血が、心臓、脳、および腎臓からなる群から選択される1つ以上の臓器
に影響を与える虚血である、項目1に記載の方法。
(項目3)
前記治療する虚血が冠動脈虚血である、項目1〜2のいずれか1項に記載の方法。
(項目4)
前記冠動脈虚血が微小循環性血管収縮を伴う、項目3に記載の方法。
(項目5)
前記哺乳類がヒトである、項目1〜4のいずれか1項に記載の方法。
(項目6)
前記A2A受容体アゴニストが、(1‐{9‐[(4S,2R,3R,5R)‐3,4
‐ジヒドロキシ‐5‐(ヒドロキシメチル)オキソラン‐2‐イル]‐6‐アミノプリン
‐2‐イル}ピラゾール‐4‐イル)‐N‐メチルカルボキサミド、(4S,2R,3R
,5R)‐2‐[6‐アミノ‐2‐(1‐ペンチルピラゾール‐4‐イル)プリン‐9‐
イル]‐5‐(ヒドロキシメチル)オキソラン‐3,4‐ジオール、またはそれらの混合
物である、項目1〜5のいずれか1項に記載の方法。
(項目7)
前記A2A受容体アゴニストが、(1‐{9‐[(4S,2R,3R,5R)‐3,4
‐ジヒドロキシ‐5‐(ヒドロキシメチル)オキソラン‐2‐イル]‐6‐アミノプリン
‐2‐イル}ピラゾール‐4‐イル)‐N‐メチルカルボキサミドである、項目1〜6
のいずれか1項に記載の方法。
(項目8)
ヒト患者の冠動脈虚血を低減する方法であって、(1‐{9‐[(2R,3R,4S,
5R)‐3,4‐ジヒドロキシ‐5‐(ヒドロキシメチル)オキソラン‐2‐イル]‐6
‐アミノプリン‐2‐イル}ピラゾール‐4‐イル)‐N‐メチルカルボキサミドおよび
少なくとも1つの医薬品賦形剤を含む少なくとも1用量の医薬組成物を、前記ヒト患者の
冠動脈灌流圧を低減するのに十分な量で、前記ヒト患者に投与する手順を含み、前記冠動
脈虚血が冠微小循環性血管収縮を伴う、方法。
(項目9)
前記医薬組成物が液体医薬組成物である、項目8に記載の方法。
(項目10)
前記液体医薬組成物が、経口的に、静脈灌流により、または静脈内ボーラスにより投与
される、項目9に記載の方法。
(項目11)
1用量の前記液体医薬組成物が、約1ミリグラム/mLまでの(1‐{9‐[(2R,
3R,4S,5R)‐3,4‐ジヒドロキシ‐5‐(ヒドロキシメチル)オキソラン‐2
‐イル]‐6‐アミノプリン‐2‐イル}ピラゾール‐4‐イル)‐N‐メチルカルボキ
サミドを含む、項目9〜10のいずれか1項に記載の方法。
(項目12)
前記医薬組成物の用量が、経口投与される少なくとも1つの錠剤の形態である、項目
8に記載の方法。
(項目13)
前記少なくとも1つの錠剤が、10mg〜2gの(1‐{9‐[(2R,3R,4S,
5R)‐3,4‐ジヒドロキシ‐5‐(ヒドロキシメチル)オキソラン‐2‐イル]‐6
‐アミノプリン‐2‐イル}ピラゾール‐4‐イル)‐N‐メチルカルボキサミドを含む
、項目12に記載の方法。
(項目14)
前記少なくとも1用量の投与が、冠動脈灌流圧を少なくとも10%減少させる、項目
8に記載の方法。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(好ましい実施形態の説明)
本発明は、A2A受容体アゴニストである1つ以上の化合物で、哺乳類の虚血を治療す
る方法に関する。本明細書で使用されるA2A受容体アゴニストという用語は、哺乳類ア
デノシンA2A受容体のアゴニストである化合物を指す。
【0010】
虚血とは、哺乳類の1つ以上の臓器への血液供給不足をもたらす血液供給の制限である
。血液供給の不足は、臓器への酸素供給の欠乏をもたらし、臓器の低酸素状態、または酸
素が全く供給されなければ無酸素状態を引き起こす。持続性の虚血は、臓器の損傷および
/または死をもたらす可能性がある。
【0011】
本発明の方法は、哺乳類体内の任意の場所で発生する虚血の治療に有用である。具体的
に、本発明の方法は、1つ以上の心臓、脳および/または腎臓に影響を与える虚血の治療
に有用であり、冠動脈虚血、すなわち心筋に影響を与える虚血の治療に特に有用である。
冠動脈虚血は、冠微小循環性血管収縮、すなわち心臓の微小循環系を構成する血管の収縮
を伴うことが多い。微小循環性血管収縮は、心臓の少なくとも一部分への血流減少を引き
起こす。虚血を軽減または逆行させる1つの方法は、罹患区域または罹患臓器への血流を
増加させることである。冠動脈虚血の場合、好ましい方法は、CPPを増加させずに罹患
区域への血流を増加させることである。
【0012】
本発明の方法では、A2A受容体アゴニストを使用して、罹患区域または罹患臓器の血
管拡張により、および冠微小循環性血管収縮の場合は冠動脈拡張により、部分的に血流を
増加させる。本発明の方法により冠動脈虚血を治療する場合、A2A受容体アゴニストは
、冠動脈拡張を亢進するが統計的に有意な方法で末梢血流を増加させない化合物から選択
されるのが好ましいが、必ずしも必須なわけではない。
【0013】
本発明の方法では、虚血区域または虚血臓器での冠動脈拡張を亢進するA2Aアデノシ
ン受容体アゴニストである少なくとも1つの化合物を含む医薬組成物を使用する。いずれ
のA2A受容体アゴニストであっても、本発明の方法において有用な場合がある。2つの
特に有用なA2A受容体アゴニストを、本明細書ではCVT‐3146およびCVT‐3
033と呼ぶ。両化合物は、投与時に速やかに作用し持続時間が短い。さらに、これらの
好ましい化合物は、冠血管抵抗を低減するが、末梢血流を有意には増加させない。
【0014】
CVT‐3146はまた、リガデノソンとしても知られている。リガデノソンは、(1
‐{9‐[(4S,2R,3R,5R)‐3,4‐ジヒドロキシ‐5‐(ヒドロキシメチ
ル)オキソラン‐2‐イル]‐6‐アミノプリン‐2‐イル}ピラゾール‐4‐イル)‐
N‐メチルカルボキサミドとしても知られており、以下の式を有する:
【0015】
【化1】

【0016】
リガデノソンおよび関連する化合物を合成する方法については、明細書全体が参考として
本明細書で援用される、米国特許第6403567号に記載されている。
【0017】
CVT‐3033はまた、(4S,2R,3R,5R)‐2‐[6‐アミノ‐2‐(1
‐ペンチルピラゾール‐4‐イル)プリン‐9‐イル]‐5‐(ヒドロキシメチル)オキ
ソラン‐3,4‐ジオールとしても知られており、以下の式を有する:
【0018】
【化2】

【0019】
CVT‐3033および関連するA2A受容体アンタゴニスト化合物を合成する方法につ
いては、明細書全体が参考として本明細書で援用される、米国特許第6214807号に
記載されている。
【0020】
本発明のアデノシンA2A受容体アゴニスト化合物は、治療有効量で哺乳類に投与する
。「治療有効量」という用語は、このような治療を必要とする哺乳類に投与した際、以下
に定義するような治療を行うのに十分である、式1の化合物などのA2A受容体アゴニス
トの量を指す。治療有効量は、治療する対象および病態、対象の体重および年齢、病態の
重症度、投与方法などにより変動するが、当業者であれば容易に決定することができる。
【0021】
一実施形態において、治療有効量は、虚血区域の血管拡張を増大させるのに十分でなけ
ればならない。冠動脈虚血の場合、治療有効量は、好ましくは冠動脈灌流圧を増加させる
ことなく、罹患区域の血管拡張および血流を改善すべきである。あるいは、治療有効量は
、冠動脈灌流圧を少なくとも10%減少させなければならず、より好ましくは冠動脈灌流
圧をベースライン圧程度にまで、すなわち虚血事象発症前の冠動脈灌流圧にまで戻さなけ
ればならない。
【0022】
「治療」または「治療する」という用語は、
(i)疾患を予防する、すなわち疾患の臨床症状を発現させないようにすること;
(ii)疾患を阻害する、すなわち臨床症状の発現を停止させること;および/また

(iii)疾患を緩和する、すなわち臨床症状を後退させること、
を含めた、哺乳類の疾患のいずれかの治療を意味する。
【0023】
(医薬組成物)
治療有効量のA2A受容体アゴニスト化合物は、好ましくは医薬組成物の形態で本発明
の方法で投与する。したがって、本発明の方法は、1つ以上のA2A受容体アゴニスト、
ならびに1つ以上の薬学的に許容される賦形剤、担体(不活性固体希釈剤と増量剤を含む
)、希釈剤(滅菌水溶液および種々の有機溶媒を含む)、透過促進剤、可溶化剤、および
アジュバントを活性成分として含有する医薬組成物を提供する。式1の化合物は、単独で
または他の治療薬と組み合せて投与される場合がある。このような組成物は、製薬業界で
周知の方法で調製される(例えば、Remington’s Pharmaceutic
al Sciences,Mace Publishing Co.,Philadel
phia,Pa.17.sup.th Ed.(1985);および“Modern P
harmaceutics”,Marcel Dekker,Inc.3.sup.rd
Ed.(G.S.Banker&C.T.Rhodes,Eds.を参照)。
【0024】
(投与)
2A受容体アゴニスト化合物およびA2A受容体アゴニストを含有する医薬組成物は
、例えば参考として援用される特許および特許出願に記載の通り、直腸、口腔、鼻腔内お
よび経皮経路、動脈内注射により、静脈内に、腹腔内に、非経口的に、筋肉内に、皮下に
、経口的に、局所的に、吸入剤として、または例えばステントなどの含浸器具もしくは被
覆器具または動脈に挿入される円柱形ポリマーを含めた、類似の有用性を有する許容され
る薬剤投与様式のいずれかにより、単回用量または複数回用量のいずれかで投与される場
合がある。
【0025】
1つの投与様式には、非経口的、具体的には注射による様式がある。本発明の新規の組
成物を注射による投与用に組み込む場合がある形態には、ゴマ油、トウモロコシ油、綿実
油、またはピーナッツ油、およびエリキシル剤、マンニトール、ブドウ糖、または滅菌水
溶液を含む水性もしくは油性懸濁液または乳剤、ならびに類似の医薬品賦形剤が含まれる
。生理食塩水中の水溶液も従来注射用に使用されているが、本発明との関連ではあまり好
ましくない。エタノール、グリセロール、プロピレングリコール、および液体ポリエチレ
ングリコールなど(ならびにそれらの好適な混合物)、シクロデキストリン誘導体、なら
びに植物油も使用される場合がある。例えばレシチンなどの被覆剤の使用により、分散剤
の場合は必要とされる粒子径の維持により、ならびに界面活性剤の使用により、適切な流
動性を維持することができる。微生物作用の予防は、種々の抗菌および抗真菌剤、例えば
パラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸、およびチメロサールなどにより
もたらすことができる。
【0026】
滅菌注射剤は、適切な溶媒中の必要量の1つ以上のA2A受容体アゴニスト化合物を、
上に列挙したその他種々の成分とともに組み込み、その後必要に応じてろ過滅菌すること
により調製する。一般的に分散剤は、塩基性分散媒および上に列挙したものの内の他の必
要な成分を含有する滅菌賦形剤に種々の滅菌活性成分を組み込むことにより調製する。滅
菌注射剤を調製するための滅菌粉末の場合、好ましい調製法は、真空乾燥法および凍結乾
燥法であり、これらの技法により、事前にろ過滅菌された溶液から活性成分ならびにその
他いずれかの所望の成分の粉末が得られる。
【0027】
経口投与は、本発明の方法による別の投与経路である。投与は、カプセルまたは腸溶性
錠剤などを介する場合がある。式1の化合物を少なくとも1つ含む医薬組成物を調製する
場合、通常、活性成分は賦形剤で希釈され、および/またはカプセル、サシェ、紙、また
は他の容器の形態であってもよい担体内に包含される。賦形剤が希釈剤の役割を果たす場
合、賦形剤は固体、半固体、または液体の物質(上述)であってよく、活性成分のビヒク
ル、担体または媒質として作用する。したがって、組成物は、錠剤、丸剤、散剤、トロー
チ剤、サシェ剤、カシェ剤、エリキシル剤、懸濁剤、乳剤、溶液剤、シロップ剤、煙霧剤
(固体としてまたは液体媒質中)、例えば10重量%までの活性化合物を含有する軟膏剤
、軟ゼラチンカプセル剤および硬ゼラチンカプセル剤、滅菌注射剤、ならびに滅菌包装粉
末剤の形態であってよい。
【0028】
好適な賦形剤のいくつかの例には、ラクトース、ブドウ糖、スクロース、ソルビトール
、マンニトール、デンプン、アカシアゴム、リン酸カルシウム、アルギン酸塩、トラガン
ト、ゼラチン、ケイ酸カルシウム、微結晶セルロース、ポリビニルピロリドン、セルロー
ス、滅菌水、シロップ、およびメチルセルロースが含まれる。製剤はさらに、タルク、ス
テアリン酸マグネシウム、および鉱油などの潤滑剤;湿潤剤;乳化剤および懸濁化剤;メ
チル安息香酸およびプロピルヒドロキシ安息香酸などの保存剤;甘味剤;および香料添加
剤を含んでもよい。
【0029】
本発明の組成物は、当該技術分野で既知の手順を使用することにより、患者への投与後
の活性成分の急速放出、持続放出または遅延放出が提供されるように配合することができ
る。経口投与用の制御放出型薬物送達系には、浸透圧ポンプ系、およびポリマー被覆貯蔵
部または薬物‐ポリマーマトリックス製剤を含有する溶解系が含まれる。制御放出型系の
例は、米国特許第3845770号;第4326525号;第4902514号および第
5616345号に列挙されている。本発明の方法で使用する別の製剤は、経皮的送達具
(「パッチ」)を使用する。このような経皮パッチを使用して、本発明の化合物を制御さ
れた量で連続的または非連続的に注入する場合がある。医薬品送達用の経皮パッチの構築
および使用は、当該技術分野で既知である。例えば、米国特許第5023252号、第4
992445号、第5001139号を参照されたい。このようなパッチは、医薬品の連
続的送達、拍動性送達、または要求に応じた送達のために構築される場合がある。
【0030】
組成物は、好ましくは単位用量形態で配合される。「単位用量形態」という用語は、ヒ
ト対象および他の哺乳類の単位用量として好適な物理的に個別の単位を指し、各単位は、
好適な医薬品賦形剤とともに、所望の治療効果を生み出すように計算された所定量の活性
物質を含有する(例えば、錠剤、カプセル、およびアンプル)。本発明の方法で使用され
る医薬化合物は、幅広い用量範囲で効果的であり、一般的には薬学的有効量で投与される

【0031】
単回ボーラス静脈(i.v.)注射で非常に少量を投与する場合、A2A受容体アゴニ
ストは、最少で10μg、最大で600μg以上の量を投与することができ、もし副作用
があるとしても非常に少なくなお効果的である。至適用量は、最少で10μg、最大で1
000μg以上の量のA2A受容体アゴニストを含む場合がある。
【0032】
あるいは有効量のA2A受容体アゴニストを含む医薬組成物は、連続静脈点滴により投
与される場合がある。連続静脈点滴の場合、有効用量は、約1μg/分〜約500μg/
分の範囲の少なくとも1つのA2A受容体アゴニストとなる。
【0033】
本発明の一態様において、哺乳類の虚血は、CVT‐3146、すなわちリガデノソン
を含む医薬組成物で治療される。リガデノソンは、水溶性が約50マイクログラム/mL
である。したがって、所望の重量のリガデノソンが許容される容量で投与可能である限り
、リガデノソンを水に溶解して投与することができる。例えば、約400マイクログラム
の用量は、8mLの水で投与することができる。この容量が投与目的に多すぎる場合、ま
たは医薬組成物が室温(RT)以外で保存される場合は、リガデノソンの組成物への溶解
性を増加させるため、および/または得られる医薬組成物に、安定性および保存特性の向
上など他の特性の向上をもたらすために、追加成分を組成物に添加することができる。
【0034】
リガデノソンを含む本発明の液体医薬組成物は、約1ミリグラム/mLまでのリガデノ
ソンを含む場合がある。リガデノソンを含む医薬組成物は、約50〜約250マイクログ
ラム/mLのリガデノソンを含むのが好ましく、より好ましくは約50〜約150マイク
ログラム/mLのリガデノソンを含む。
【0035】
溶解性および保存特性を向上させるために、リガデノソンは、メチルボロン酸(MBA
)共溶媒を含む医薬組成物で投与することができる。アゴニストの溶解性および有効期間
を向上させるために、メチルボロン酸が医薬組成物に添加される。MBAは、得られる化
合物のpHを上昇させる。MBAを含む医薬組成物中のリガデノソンの溶解性は、組成物
のpHが中性に向かって下降するにつれて低下する傾向がある。したがって、リガデノソ
ンの場合、MBA含有組成物の至適pHは、約8.5〜10であり、約9.1〜約9.4
のpHが好ましく、約9.3のpHが最も好ましい。これは、約50〜250mg/mL
のMBAを含む組成物に相当する。MBAの代替物として、リガデノソンは、ホウ酸塩緩
衝液と組み合せることができる。典型的には、ホウ酸塩緩衝液は、酸または塩基を使用し
てpH9.3などの所望のpHに調整されたホウ酸ナトリウム水溶液で構成される。
【0036】
MBA含有医薬組成物は、保存の問題を呈する可能性がある。すなわち、MBAは、特
定のI型ガラス容器に詰めると層間剥離を引き起こす可能性がある。この問題は、MBA
含有医薬組成物を、プラスチック容器またはより耐性のあるI型ガラス容器に保存するこ
とにより克服することができる。
【0037】
中性に近いpHを有するリガデノソン含有医薬組成物が所望の場合の代替策は、リガデ
ノソンをプロピレングリコール(PG)共溶媒と組み合せる方法である。組成物で使用さ
れるPGの量は、約5〜25容量%の範囲である場合があり、リガデノソンを使用する場
合は約8〜約20容量%の範囲であるのがより好ましい。PGの代替物は、ポリエチレン
グリコール(PEG)である。好ましいPEGは、約200〜400の平均分子量を有す
る。
【0038】
好ましくは、PGまたはPEGを含むリガデノソン組成物は、約6〜約8のpHを有し
、約7のpHがが好ましい。組成物のpHを所望の値に調整可能であるいずれの生理学的
に許容される緩衝剤も使用することができる。このような緩衝剤の例には、第二リン酸ナ
トリウム、脱水第二リン酸ナトリウム、および第一リン酸ナトリウム一水和物が含まれる
が、これらに限定されない。EDTAおよびジメチルアセトアミドなどの他の任意の成分
も組成物中で使用できると考えられる。
【0039】
経口投与の場合、各用量単位は、10mg〜2g、より好ましくは10〜700mg、
非経口投与の場合、好ましくは10〜700mg、より好ましくは約50〜200mgの
2A受容体アゴニスト化合物を含有する場合がある。しかし、実際に投与される選択化
合物の量は、治療する病態、選択した投与経路、投与する実際の化合物およびその相対活
性、個々の患者の年齢、体重および応答性、ならびに患者の症状の重症度などを含めた関
連する状況に鑑みて、医師により決定される。
【0040】
錠剤などの固体医薬組成物の調製では、主要な活性成分を医薬品賦形剤と混合して、本
発明の化合物の均質混合物を含有する固体予備処方組成物を形成する。これらの予備処方
組成物が均一であると称する場合は、組成物を錠剤、丸剤、およびカプセルなどの等しく
有効な単位用量の形態に容易に細分できるように、活性成分が組成物中に均等に分散され
ていることを意味する。
【0041】
本発明の方法で使用される錠剤または丸剤は、持続性作用の利点をもたらす用量形態を
提供するために、または胃の酸性状態から保護するために、被膜またはその他の方法で調
合される場合がある。例えば、錠剤または丸剤は、内側の用量成分と外側の用量成分を含
んでよく、後者は前者を包み込む形態であってよい。これらの2つの成分は、胃における
分解に耐性を持たせて、内側の成分を無傷で十二指腸に通過させるか、または放出を遅延
させる役割を果たす腸溶性層により分離することができる。多様な物質をこのような腸溶
性層または被膜に使用することができ、このような物質には、いくつかのポリマー酸、な
らびにポリマー酸とシェラック、セチルアルコールおよび酢酸セルロースなどの物質との
混合物が含まれる。
【0042】
吸引または吸入により投与される治療的に有効な組成物は、薬学的に許容される水性溶
媒もしくは有機溶媒、またはその混合液中の溶液剤および懸濁剤、ならびに粉末剤を含む
場合がある。この液体または固体組成物は、上述の薬学的に許容される好適な賦形剤を含
有する場合がある。好ましくは組成物は、局所的または全身的な効果のために経口または
経鼻呼吸経路により投与される。好ましくは薬学的に許容される溶媒中の組成物は、不活
性ガスの使用により噴霧される場合がある。噴霧された溶液は、噴霧器具から直接吸入さ
れる場合もあれば、あるいは噴霧器具をフェイスマスクテントまたは間欠的陽圧呼吸器に
装着する場合もある。溶液、懸濁液または粉末の組成物は、適切な方法で製剤を送達する
器具から好ましくは経口的または経鼻的に投与される場合がある。
【0043】
本発明のA2Aアゴニストは、好ましくは単回用量で投与される。「単回用量」という
用語は一般的に、少なくとも1つのA2A受容体アゴニストの治療量の迅速に投与される
単一の用量を指す。「単回用量」という用語は、例えば連続静脈点滴により長時間にわた
って投与される1回以上の用量を包含しない。
【0044】
本発明の方法で使用する医薬化合物は、非経口投与用に溶液剤または凍結乾燥粉末とし
て配合される場合がある。粉末は、使用前に好適な希釈剤または他の薬学的に許容される
担体を添加することにより再構成される場合がある。本明細書で使用される「薬学的に許
容される担体」には、あらゆる溶媒、分散媒、被膜剤、抗菌剤および抗真菌剤、ならびに
等張剤および吸収遅延剤などが含まれる。このような媒質および作用剤の医薬活性物質へ
の使用は、当該技術分野で既知である。いずれかの従来の媒質または作用剤が活性成分と
適合しない場合を除き、これを治療的組成物に使用することが企図される。補助活性成分
も組成物に組み込むことができる。液体形態で使用する場合、本発明の化合物は、好まし
くは緩衝化した等張性の水溶液に組み込まれる。好適な希釈剤の例には、通常の等張性生
理食塩水溶液、5%ブドウ糖標準水、およびナトリウム緩衝化溶液または酢酸アンモニウ
ム緩衝化溶液である。このような液体製剤は非経口投与に好適であるが、経口投与用に使
用される場合もある。ポリビニルピロリジノン、ゼラチン、ヒドロキシセルロース、アカ
シア、ポリエチレングリコール、マンニトール、塩化ナトリウム、クエン酸ナトリウムま
たは当業者に既知のその他いずれかの賦形剤などの賦形剤を、本発明の化合物を含む医薬
組成物に添加するのが望ましい場合がある。
【0045】
本発明の方法で使用する医薬組成物は、保存の介在の有無を問わず、調製後、投与され
る場合がある。本発明の医薬組成物を配合する際に考慮される種々の特性には、製品の有
効期間、A2A受容体アゴニストの溶解性、組成物のpH、静脈の過敏性、溶血、保存条
件(例えば、医薬組成物を室温で保存するかまたは別の温度で保存するか)、および滅菌
手順に耐える能力が含まれるが、これらに限定されない。
【0046】
以下の実施例は、本発明の好ましい実施形態を実証するために記載されている。以下の
実施例に開示される技法は、本発明者が本発明の実施において十分に機能することを見出
した技法であり、したがって本発明の実施に好ましい様式を構成するものとして考えられ
ることを、当業者は理解するであろう。しかし、開示された特定の実施形態では多くの変
更が可能であり、それでも本発明の趣旨および適用範囲を逸脱することなく同じまたは類
似の結果を得られることを、当業者は本開示内容に鑑みて理解するはずある。
【実施例】
【0047】
本実施例の目的は、選択的で安定したA2Aアゴニスト、すなわちリガデノソンが、虚
血時の冠微小循環性血管収縮を予防または変化させることができるかどうかを判定するこ
とであった。この目的のため、ランゲンドルフ配置で灌流した60個のマウス単離心臓の
冠血管抵抗(CVR)を、種々の介入時に2種類の手順を使用して70分間連続して監視
した。65mmHgの一定した冠動脈灌流圧(CPP)で灌流した心臓(9個)では、C
VRは70分間の実験を通して安定したままであった。
【0048】
手順1では、CPPを20分の時点で30mmHgに低下させ、その後の20分間その
まま維持し、残りの30分間は65mmHgに回復させた。未処置の心臓(12個)では
、20分間CPPを低下させると、CVRがベースラインから最大で191%±9まで上
昇した(P<0.001)。リガデノソンは、3nMの濃度でCVRのこの増加を著しく
軽減し(6個、ベースラインから最大で131%±15)、10および30nMでCVR
の上昇を消失させた(6個、各濃度でp<0.001)。未処置の心臓では、CPPを6
5mmHgに回復させると、突然不完全な血管拡張を生じ、ベースラインから153%±
10のCVRの低下がもたらされた。この応答は、3nMのリガデノソンにより著しく低
減され、10nMおよび30nMのリガデノソンにより消失した(p<0.01)。
【0049】
手順2では、CPPを20分の時点で30mmHgに低下させ、残りの50分間そのま
ま維持した。未処置の心臓(9個)では、持続的なCPPの低下とともに、実験終了まで
漸進的なCVRの上昇を伴い、終了時にはベースラインから最大240%±21に達した
。CPPを低下させた後、10分(6個)または30分(6個)のいずれかの時点でリガ
デノソンを(10nM)灌流液に添加すると、急速かつ漸進的な血管拡張を生じ、それに
よって10分以内にCVRがベースラインの値まで低下した。要約すると、単離心臓は、
漸進的かつ重篤な血管収縮を伴ってCPPの低下に反応を示し、これはA2Aアゴニスト
で前処置することにより予防することが可能である。さらに、血管収縮中のA2Aアデノ
シン受容体の活性化は、この微小血管反応を鈍化および逆行させることができ、そのため
心筋の灌流を向上させ、虚血の重症度を低減することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本願明細書に記載された発明。

【公開番号】特開2013−10797(P2013−10797A)
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−228109(P2012−228109)
【出願日】平成24年10月15日(2012.10.15)
【分割の表示】特願2009−516747(P2009−516747)の分割
【原出願日】平成19年6月22日(2007.6.22)
【出願人】(504003226)ギリアード・パロ・アルト・インコーポレイテッド (62)
【氏名又は名称原語表記】Gilead Palo Alto,Inc.
【Fターム(参考)】