説明

虚血性病変の治療および予防のためのトレプロスチニルの用途

【課題】虚血性病変、例えば指の潰瘍の治療および/または予防のための、(全身性強皮症を含む)強皮症、バージャー病、レイノー病、レイノー現象および/またはそのような障害を引き起こす他の症状を治療するための医薬組成物の提供。
【解決手段】下記式で示されるトレプロスチニルまたはその誘導体、あるいはその薬学的に許容されうる塩を用いる虚血性病変の治療および/または予防のための組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、強皮症、バージャー病、レイノー病、レイノー現象または他の症状により引き起こされる虚血性病変、例えば指(手の指および足の指)の潰瘍および壊死病班の治療および/または予防のためのトレプロスチニルまたはその誘導体、あるいはその薬学的に許容されうる塩の用途に関する。本発明はまた、本目的のために使用されるキットに関する。
【背景技術】
【0002】
トレプロスチニルは、UT-15としても知られるが、米国特許第4,306,075号の実施例33に開示される既知の化合物である。トレプロスチニルは、エポプロステノールの合成類似体であるプロスタグランジンF1である。この特許の各種化合物に起因する活性として、平滑筋細胞増殖阻害、血小板凝集阻害、サイトカイン分泌阻害、胃液分泌阻害、血管拡張および気管支拡張があげられる。
【0003】
米国特許第5,153,222号は、肺高血圧症の治療のためのトレプロスチニルおよび関連化合物の用途を開示する。米国特許第6,054,486号は、末梢血管疾患、例えば末梢動脈閉塞性疾患および間欠性跛行症の治療のためのトレプロスチニルおよび関連化合物の用途を開示する。Pattersonら[Amer. J. of Cardiology, 75: 26A-33A (1995)]は、クラスIIIまたはクラスIVの心疾患患者に対するトレプロスチニルの血管拡張効果について示している。
【0004】
Clappら[Am. J. Respir. Cell. Mol. Biol., 26(2): 194-201 (2002)]は、トレプロスチニルがヒト肺動脈平滑筋細胞の増殖を阻害することを示している。Raychaudhuriら[J. Biol. Chem., 277(36): 33344-8 (2002)]は、トレプロスチニルが炎症性サイトカイン(腫瘍壊死因子−α、インターロイキン−1β、インターロイキン−6、および顆粒球マクロファージコロニー刺激因子)分泌およびヒト肺胞マクロファージによる遺伝子発現を阻害することを開示している。
【0005】
疾患または症状、例えば強皮症(全身性強皮症を含む)を有する患者は、とりわけ皮膚に分布する血管の異常を体験する。結果として、これらの患者はその皮膚の特定部分に潰瘍形成または壊死(組織死)領域さえ体験する。強皮症のような疾患に関連する虚血性病変は、手および指に、しばしば指関節全面に、また他の骨が隆起する場所、例えば肘、膝、臀部、踝および足指に生じる傾向にある。
【0006】
これまで、虚血性病変の治療に関する介護の標準として、局所親水コロイド包帯剤、局所抗生物質軟膏、疼痛の鎮痛剤の投与、虚血性創傷の創傷切除および創傷介護があげられてきた。ある種の包帯剤は時折障害の治癒の助けとはなったが、これらの治療はしばしば失敗に終わった。
【0007】
他の研究者により、安定なプロスタサイクリン類似体であるイロメジンがバージャー病患者に見られるような下肢の虚血性潰瘍を治癒する可能性があることが示唆された[FiessingerとSchafer, Lancet, 335 (8689): 555-7 (1990); Norgrenら, Eur. J ; Vasc. Surg. (5): 463-7 (1990); Benthin, Ugeskr Laeger, 157 (36): 4946-7 (1995)]。他の研究者により、イロメジン処置により治療された患者がレイノー発病の頻度および重篤度において改善を示すことが示唆された[Kyleら, J Rheumatol., (9): 1403-6 (1992); McHughら, Ann Rheum Dis., 47 (1) : 43-7 (1988)]。
【0008】
Mohlerら[Vascular Medicine, 5: 231-237 (2000)]は、重篤な間欠性跛行の患者において、トレプロスチニルが下肢の大血管、例えば総大腿動脈、表層大腿動脈、膝窩動脈および前頚骨動脈において血流の増加を引き起こすことを示した。これらの研究者はまた、トレプロスチニルが、治療しないと最小の、あるいは検出できない血流をさもなければ示したある末梢動脈疾患患者の踝の血流を検出できるように刺激することを見出した。同様に、研究者らは、何人かの患者がトレプロスチニル治療をした下肢において脈容量記録が改善を示すことを見出した。
【0009】
虚血性病変および特に指の虚血性病変、例えば全身性強皮症により引き起こされた障害は、極端な痛みがあり、弱体化させ、治癒に時間がかかる。従って、そのような障害を予防し、治療するために用いることができる実行可能な方法、ならびにキットを特定する必要がある。本発明はこの必要を満たしており、関連した利点を同様に提供する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0010】
トレプロスチニルまたはその誘導体、あるいはその薬学的に許容されうる塩の投与は、強皮症、バージャー病、レイノー病、レイノー現象のような疾患および他の症状を有する被験体に存在する指の虚血性病変(例えば潰瘍および壊死病班)を含む虚血性病変の発生、数、大きさおよび重篤度を軽減する。トレプロスチニルはプロスタグランジンの安定した類似体であり、静脈内投与に用いることができ、肺を通過する際に分解されず、長い生物学的半減期を有するので、トレプロスチニルは指の虚血性病変を含む虚血性病変の予防および治療にうまく適する。
【0011】
したがって、本発明は、強皮症(全身性強皮症を含む)、バージャー病、レイノー病、レイノー現象、または他の症状の被験体における虚血性病変、例えば指の虚血性病変の治療または予防を提供し、これを必要とする被験体へ有効量のトレプロスチニルまたはその誘導体、あるいはその薬学的に許容されうる塩を投与することを含む。本発明はまた、この目的を達成するためのキットを提供する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】全身性強皮症の患者における指の虚血性病変の治療および予防のためのトレプロスチニルの使用を試験する実験のデザインを示す。
【図2】実験に登録した患者の処置を示す。
【図3】トレプロスチニル治療の間の標的とする障害の大きさを示すグラフである。
【図4】ベースラインの指の虚血性病変の直径の平均的な改善を示すグラフである。
【図5】指の虚血性病変全体数および新規の指の虚血性病変数を示す棒グラフである。
【図6】指の虚血性病変の主観的測定を示す棒グラフである。
【図7】第三中手指節関節(MCP)の標的とする指の虚血性病変の回復を示す。
【図8】平均および最悪安静時疼痛の評価を受けた患者を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
発明者らは、より小さな、および毛細血管を通る血流を増大させることにより、皮膚(すなわち皮膚への)血流を促進する治療法が、指の虚血性病変を含む皮膚の虚血性病変を治療および予防するのに効果的であると信ずる。プロスタサイクリンは、大血管の拡張、平滑筋の弛緩、平滑筋増殖の阻害、ならびに血小板凝集の阻害を引き起こすことが以前に示されている小分子であり、プロスタサイクリンは血液凝固に関与している。微小血管レベルでの、および皮膚近くの毛細血管でのトレプロスチニルによる同様な作用は、皮膚血流を促進し、強皮症、バージャー病、レイノー病、レイノー現象、および他の症状と関連した虚血性病変または潰瘍を治癒し、および/または予防するのに役立つと信じられている。
【0014】
本発明は、虚血性病変を引き起こす疾患または症状を有する被験体における虚血性病変を治療および/または予防する方法に関し、それを必要とする被験体に、有効量のトレプロスチニルまたはその誘導体、あるいはその薬学的に許容されうる塩を投与することを含む。適当な誘導体としては、トレプロスチニルの酸誘導体、プロドラッグ、徐放製剤、吸入剤および経口製剤があげられ、それらは米国特許第6,521,212号および同時係属出願第60/472,407号に開示される。
【0015】
一態様において、虚血性病変を引き起こす疾患または症状は、強皮症、バージャー病、レイノー病および/またはレイノー現象を含む。別の態様において、虚血性病変は指の虚血性病変、例えば指の潰瘍、および/または壊死病班を含む。別の態様において、虚血性病変を引き起こす疾患または症状は全身性強皮症を含む。さらなる態様において、指の虚血性病変に関連する疼痛および/または他の症状が、有効量のトレプロスチニルまたはその誘導体、あるいはその薬学的に許容されうる塩の投与により減少し、解消し、あるいは予防される。
【0016】
本発明はまた、虚血性病変の治療または予防を実施するためのキットに関する。本発明は、虚血性病変を引き起こす疾患または症状を有する被験体において、虚血性病変を治療および/または予防するためのキットを含み、(i)有効量のトレプロスチニルまたはその誘導体、あるいはその薬学的に許容されうる塩、(ii)一つまたはそれ以上の薬学的に許容されうる担体および/または添加剤、および(iii)虚血性病変を治療または予防するための使用説明書を含有する。一態様において、虚血性病変を引き起こす疾患または症状は、強皮症、バージャー病、レイノー病および/またはレイノー現象を含む。別の態様において、虚血性病変は指の虚血性病変、例えば指の潰瘍、および/または壊死病班を含む。別の態様において、虚血性病変を引き起こす疾患または症状は全身性強皮症を含む。
【0017】
特別の定めのない限り、本明細書で用いられる用語「a」または「an」は「一つまたはそれ以上」を意味する。
【0018】
本明細書において用いられているように、フレーズ「使用説明書」は、虚血性病変を治療または予防するための、トレプロスチニルまたはその誘導体、あるいはその薬学的に許容されうる塩の投与に関するFDAで義務付けられたラベリング、説明書、または添付物のいずれかを意味する。例えば、使用説明書には、これに制限されないが、虚血性病変の表示、トレプロスチニルにより改善される、虚血性病変に関連した具体的な症状、例えば指の潰瘍または疼痛などの表示、および虚血性病変を罹患する被験体に推奨される投与量が含まれる。
【0019】
用語「酸誘導体」は、窒素が一つまたは二つのC1-4アルキル基により置換されてもよいアミドを含む、C1-4アルキルエステルおよびアミドを意味するように、本明細書において用いられる。
【0020】
本発明はまた、トレプロスチニルの生物前駆体(bioprecursors)または「プロドラッグ」、すなわち、生体内でトレプロスチニルまたはその薬学活性誘導体に変換される化合物を含む。
【0021】
本発明のさらなる特徴は、バージャー病、強皮症、レイノー病、レイノー現象または他の症状を有する被験体にの虚血性病変の治療または予防のための医薬製造における、トレプロスチニルまたはその誘導体、あるいはその薬学的に許容されうる塩の使用に関する。
【0022】
本発明は、トレプロスチニルまたはその誘導体、あるいはその薬学的に許容されうる塩の使用方法を包含する。一態様において、方法は、レモジュリン(REMODULIN)(登録商標)の商品名で市販される、トレプロスチニルナトリウムを用いる。FDAは、投与濃度1.0 mg/mL、2.5 mg/mL、5.0 mg/mLおよび10.0 mg/mLの注射による肺動脈高血圧症の治療のためのトレプロスチニルナトリウムを承認している。トレプロスチニルナトリウムの化学構造式は次のとおりである:
【0023】
【化1】

【0024】
トレプロスチニルナトリウムは、時々化学名:(a) [(lR, 2R, 3aS, 9aS)-2, 3,3a, 4,9,9a-ヘキサヒドロ-2-ヒドロキシ-1-[(3)-3-ヒドロキシオクチル]-1H-ベンズ[f]インデン-5-イル]オキシ]酢酸;または(b) 9-デオキシ-2',9-α-メタノ-3-オキサ-4, 5,6-トリノール- 3,7-(1',3'-インターフェニレン)-13,14-ジヒドロ-プロスタグランジンF1により表示される。トレプロスチニルナトリウムはまた、UT-15;LRX-15;15AU81;UNIPROST(商標);BW A15AU;およびU- 62,840として知られる。トレプロスチニルナトリウムの分子量は390.52であり、その実験式はC23H34O5である。
【0025】
本発明は、トレプロスチニルの生理学的に許容されうる塩、ならびに本発明の薬理学的に活性のある化合物の調製に用いられるかもしれないトレプロスチニルの非生理学的に許容されうる塩を用いる方法に拡張する。
【0026】
トレプロスチニルの生理学的に許容されうる塩は、塩基に由来する塩を含む。塩基性塩は、アンモニウム塩(四級アンモニウム塩など)、ナトリウムおよびカリウムの塩などのアルカリ金属塩、カルシウムおよびマグネシウムの塩などのアルカリ土類金属塩、ジシクロヘキシルアミンおよびN-メチル-D-グルカミンなどの有機塩基との塩、およびアルギニンおよびリジンなどのアミノ酸との塩を含む。
【0027】
四級アンモニウム塩は、例えばメチル、エチル、プロピル、および塩化ブチル、臭化物とヨウ化物などの低級ハロゲン化アルキルとの反応、ジアルキル硫酸塩との反応、デシル、ラウリル、ミリスチル、およびステアリル塩化物、臭化物、およびヨウ化物などの長鎖ハロゲン化合物との反応、およびベンジルおよびフェネチル臭化物などのハロゲン化アラルキルとの反応より形成できる。
【0028】
望みの効果を得るために、本発明の医薬または診断補助薬に必要なトレプロスチニルまたはその誘導体、あるいはその薬学的に許容されうる塩の量は、要因、例えば特定の用途、用いられる特定の化合物の性質、投与の様式、用いられる化合物の濃度、および患者の体重と症状などの数に依存する。腎臓機能を改善し、および/または腎臓機能不全または障害と関連した症状を治療するための患者あたりの日用量は、体重キログラムあたり、一日あたり、25 μg乃至250 mgの範囲;0.5 μg乃至2.5 mgの範囲;または7 μg乃至285 μgの範囲であってよい。例えば、一日あたり、体重キログラムあたり0.5 μg乃至1.5 mgの範囲の静脈内投与は、好都合なことに、1分あたり、体重キログラムあたり0.5 ng乃至1.0 μgの輸液として投与される。一つの可能な一回投薬量は2.50 ng/kg/分であり、12週間にわたって、各週2.50 ng/kg/minの量ずつ、標的の投与量(例えば15 ng/kg/分)に達するまで増加させる。この目的に適した輸液は例えば、ミリリットルあたり10 ngから1.0 μgを含んでいる。注射のためのアンプルは例えば、0.1 μgから1.0 mgを含み、錠剤またはカプセル剤のような経口投与可能な単位用量製剤は例えば、0.1から100 mg、一般には1から50mgを含む。診断目的のために、一回単位用量製剤が投与される。生理学的に許容されうる塩の場合、上で示された重量は、活性のある化合物イオン、すなわちトレプロスチニル由来のイオンの重量を参照する。
【0029】
本発明の医薬または診断補助薬の製造において、以降「製剤」と参照されるトレプロスチニルおよび/またはその誘導体、および/またはその薬学的に許容されうる塩は、とりわけ許容されうる担体と混合してもよい。担体はもちろん、製剤中のどのような他の成分とも互換であるという意味において、許容されねばならず、被験体に有害であってはならない。担体は固体または液体または両者であってもよく、活性化合物の重量として0.05%から95%を含む単位用量製剤、例えば錠剤として、化合物とともに好ましくは製剤化される。一つまたはそれ以上のトレプロスチニルまたはその誘導体、あるいはその薬学的に許容されうる塩は、本発明の製剤に組み込まれ、成分を混合するための調剤のよく知られているいずれかの技術により調製される。
【0030】
トレプロスチニルに加えて、他の薬理学的に活性のある物質が、強皮症、バージャー病、レイノー病、レイノー現象、または他の症状を有する被験体における虚血性病変の治療に有用であることが知られている本発明の製剤に存在してもよい。例えば、本発明の化合物は、疼痛治療のための鎮痛剤、変更包帯剤(dressing changes)、血管拡張薬、および局所または経口抗生物質と組合わせて存在してもよい。
【0031】
どのような場合にでも最も適した経路は、治療されるべき症状の性質と重篤度、および用いられるトレプロスチニル、ならびに生理学的に許容されうる塩またはその誘導体の特定の形態の性質に依存するが、本発明の製剤には、非経口(例えば、皮下、筋肉内、皮内、または静脈内)、経口、吸入(固体および液体の形態で)、直腸、局所、口腔(例えば、舌下)および経皮投与に適した製剤を含む。
【0032】
非経口投与に適した本発明の製剤は好都合なことに、トレプロスチニルまたはその誘導体、あるいはその薬学的に許容されうる塩の無菌水製剤を含有し、該製剤は被験体となる受容者の血液と等張であってよい。投与はまた静脈内への投与または筋肉内または皮内注射により行われるが、これらの製剤は皮下注射によって投与できる。そのような製剤は、都合よく、前記化合物を水あるいはグリシンまたはクエン酸緩衝液と混合し、得られた溶液を滅菌し、血液と等張にすることによって調製できる。本発明の注射製剤は0.1から5%(w/v)の活性化合物を含んでもよく、0.1 ml/分/kgの割合で投与できる。あるいは、本発明では、0.625乃至50 ng/kg/分の割合で投与できる。あるいは、本発明では、10乃至15 ng/kg/分の割合で投与できる。
【0033】
経口投与に適した製剤は、別個の単位、例えばカプセル剤、カシェ剤、トローチ剤または錠剤として、それぞれ規定量のトレプロスチニルまたは生理学的に許容されうる塩またはその誘導体をそれぞれ含む形態で;粉末または顆粒として;水または非水性液体中の溶液または懸濁液として;あるいは水中油乳剤または油中水乳剤として存在しうる。そのような製剤を、活性化合物と適当な担体(一つまたはそれ以上の副成分を含んでよい)を関連付ける工程を含む調剤のいずれかの適当な方法により調製できる。
【0034】
一般に、本発明の製剤は、活性化合物を液体または微粉化した担体、または両方と均一に、かつ密接に混合し、必要ならば得られた混合物を成形することにより調製される。例えば、錠剤を、任意に一つまたはそれ以上の副成分とともに、活性化合物を含む粉末または顆粒を圧縮または成形することにより調製することができる。圧縮錠剤は、適当な機械で、任意に結合剤、潤滑剤、不活性希釈剤および/または界面活性/分散剤と混合した漠然とした形態、例えば粉末または顆粒の化合物を圧縮することにより調製できる。成型錠剤は、適当な機械で、不活性な液状結合剤により湿らせた粉末化合物を成形することにより製造できる。
【0035】
口腔(例えば、舌下)投与に適した製剤としては、味付けした基剤、通常はショ糖およびアカシアまたはトラガカントにトレプロスチニルまたはその誘導体または薬学的に許容されうるその塩を含むトローチ剤;および不活性基剤、例えばゼラチンおよびグリセリン、またはショ糖およびアカシアに前記化合物を含む芳香錠をあげることができる。
【0036】
直腸内投与に適した製剤は好ましくは、単位投与量坐剤として存在する。これらは、トレプロスチニルまたはその誘導体、あるいはその薬学的に許容されうる塩を一つまたはそれ以上の従来の固体の担体、例えばカカオバターと混合し、得られた混合物を成形することにより調製できる。
【0037】
皮膚への局所適用に適した製剤は好ましくは、軟膏、クリーム、ローション、ペースト、ゲル、スプレー、エアロゾル、またはオイルの形態を取る。使用できる担体としては、ワセリン、ラノリン、ポリエチレングリコール類、アルコール類、およびその二つまたはそれ以上の組み合わせをあげることができる。活性化合物は一般に、0.1乃至15%(w/w)、例えば0.5から2%(w/w)の濃度で存在する。経皮投与のための製剤は、イオン導入(例えば、Pharmaceutical Research、3 (6): 318 (1986)を参照)により送達され、一般には、トレプロスチニルまたはその塩またはその誘導体の任意の緩衝水溶液の形態を取る。適当な製剤には、クエン酸またはビス/トリス緩衝液(pH 6)またはエタノール/水が含まれ、0.1から0.2Mの活性成分を含んでいる。
【0038】
本発明の化合物は、米国特許第4,306,075号、米国特許第6,528,688号および米国特許第6,441,245号に記載される方法と同一またはそれらと類似の方法により好都合に調製される。
【0039】
さらなる態様が発明の範囲内にある。例えば一態様において、虚血性病変を引き起こす疾患または症状を有する被験体(例えば人間)の虚血性病変を治療または予防するための方法は、それを必要とする被験体に、有効量のトレプロスチニルまたはその誘導体、あるいはその薬学的に許容されうる塩を投与することを含む。
【0040】
別の態様において、虚血性病変を引き起こす疾患または症状を有する被験体の虚血性病変を治療または予防するためのキットは、(i)有効量のトレプロスチニルまたはその誘導体、あるいはその薬学的に許容されうる塩、(ii)一つまたはそれ以上の薬学的に許容されうる担体および/または添加剤、および(iii)虚血性病変を治療または予防するための使用説明書を含有する。
【0041】
ある態様において、虚血性病変を引き起こす疾患または症状は、強皮症、バージャー病、レイノー病および/またはレイノー現象を含む。一態様において、虚血性病変は指の虚血性病変を含む。前記方法の別の態様において、指の虚血性病変に関連する疼痛および/または他の症状が、減少し、解消し、あるいは予防される。指の虚血性病変は、指の潰瘍、および/または壊死病班を含む。一態様において、虚血性病変を引き起こす疾患または症状は全身性強皮症を含む。
【0042】
ある方法の態様において、トレプロスチニルまたはその誘導体、あるいはその薬学的に許容されうる塩は、皮下持続注入による皮下投与、静脈内投与、錠剤およびカプセル剤からなる群から選択される経口可能な形態による投与、および/または吸入による投与がなされる。他の態様において、有効量のトレプロスチニルまたはその誘導体、あるいはその薬学的に許容されうる塩は、少なくとも1.0 ng/体重kg/分である。
【0043】
あるキットの態様において、トレプロスチニルまたはその誘導体、あるいはその薬学的に許容されうる塩は、皮下投与、持続的皮下注入、静脈内投与、または吸入に適した形態である。他のキットの態様において、トレプロスチニルまたはその誘導体、あるいはその薬学的に許容されうる塩は、錠剤およびカプセル剤からなる群から選択される経口可能な形態である。別のキットの態様において、有効量のトレプロスチニルまたはその誘導体、あるいはその薬学的に許容されうる塩は、少なくとも1.0 ng/体重kg/分である。
【0044】
ある他の方法の態様において、虚血性病変を引き起こす疾患または症状は全身性強皮症を含有し、前記虚血性病変は指の虚血性病変を含む。トレプロスチニルまたはその誘導体、あるいはその薬学的に許容されうる塩の持続投与により、少なくとも一つの指の虚血性病変の治癒が促進され、新たな指の虚血性病変の発症が減少または予防される。別の態様において、虚血性病変を引き起こす疾患または症状の被験体における虚血性病変(例えば指の虚血性病変)に関連する疼痛および身体障害を軽減、解消または予防する方法は、コレを必要とする被験体に、有効量のトレプロスチニルまたはその誘導体、あるいはその薬学的に許容されうる塩を投与することを含む。他の態様において、該被験体は人間であり、虚血性病変を引き起こす前記の疾患または症状は、禁煙によっても改善されないバージャー病を含む。別の態様において、トレプロスチニルまたはその誘導体、あるいはその薬学的に許容されうる塩は、輸液ポンプによる皮下持続注入により投与される。
【0045】
実施例
【実施例1】
【0046】
指の虚血性病変を罹患する強皮症のヒトに対するトレプロスチニルの投与
手または指に少なくとも一つの障害(すなわち、小さな痛みまたは組織壊疽の部分)を有する強皮症患者に12週にわたってトレプロスチニルを増加させながら投与する。該医薬は、皮下につけたカテーテルにつながった小ポンプにより送達される。この方法では、トレプロスチニルが投薬量を増加しながら、患者に対し、長期にわたる皮下持続性注入により投与される。
【0047】
具体的には、1.0 mg/mLのトレプロスチニルナトリウム製剤(REMODULIN(登録商標))を、皮下薬剤送達用の標準的なマイクロ注入、陽圧輸液ポンプ(Mini-Med)を用いて、皮下投与する。患者は最初、試験薬剤を2.5 ng/kg/分の投薬量で受ける。ある患者において、2.5 ng/kg/分の投薬量が許容されない(例えば、薬物治療または局所治療により適切に処理されない、持続性の頭痛、吐き気、嘔吐、情動不安、不快感、または注入部位における重度の疼痛)ならば、投薬量は1.25 ng/kg/分に減らされる。患者は第1週の間、2.5 ng/kg/分(2.5 ng/kg/分が許容されないならば、1.25 ng/kg/分)を持続する。その後、許容されなくなるまで、あるいは標的投薬量に達するまで、投薬量を各週に2.5 ng/kg/分ずつ増加する。
【0048】
投薬量を患者に許容されなくなるまで週ごとに増加する。週の投薬増加はそれぞれ2.5 ng/kg/分を超えない。標的投与量の一例は15 ng/kg/分である。最小投与量は通常少なくとも0.625 ng/kg/分である。第12週の処置終了後、薬剤注入を注入速度が0 ng/kg/分になるまで、徐々に減じる(臨床的に示されるように、1-4時間をかけて)ことにより停止する。
【0049】
上述の処置を受けた患者は強皮症に関連する新たな障害を殆ど体験せず、処置前にあった障害の数、大きさおよび重篤度が減少する。トレプロスチニルの投与により、全身性強皮症患者の指の虚血性病変が治療および予防される。
【実施例2】
【0050】
全身性強皮症患者の指の虚血性病変の治療および予防のためのトレプロスチニル(Remedulin(登録商標))の検討
指の虚血性病変(DIL)は全身性硬化症患者の最高35%に生じ、極めて痛く、切断を要する壊死にしばしば進行する。この検討の目的は、全身性硬化症患者におけるDILの治癒および予防に対するトレプロスチニルの効果を評価することであった。
【0051】
方法:この研究には、2ヶ月またはより多く(テーブル1)の間存在していた少なくとも1つのDILとともに、びまん性または制限された強皮症を有する12人の被験体が含まれた。研究を完遂した被験体はトレプロスチニルで12週間処置され、薬停止後に8週間追跡した(図1)。
【0052】
【表1】

10年よりも前に禁煙していれば、過去の喫煙歴。
スクリーニングで評価した危険因子には、鎌形赤血球病、リンパ腫、白血病、ミエローマ、類タンパク血症、クリオグロブリン血症、C型肝炎感染、または糖尿病が含まれていた。
【0053】
トレプロスチニル(レモジュリン(Remodulin)(登録商標))を、持続皮下注入(2.5ng/kg/分の注入速度で始め、15ng/kg/分の最大速度が達成されるまで毎週2.5ng/kg/分増加させた)により被験体に送達した。評価を、ベースライン、第2週、第6週、第12週、第16週、および第20週に行った。訪問するたびに、最も大きい(標的)障害および他の顕著なDILを、障害の最も大きい直径を記録することによって測定した。DILを計数し、写真を撮った。潰瘍の患者および外科医のグローバル評価ならびにDILからの障害の患者評価を、訪問毎に視角化アナログスケールを用いて測定した。
【0054】
(結果)
12人の被験体のうちの3人が研究を完了し、2人が現在もなお登録している(図2)。2人の被験体は、以前の虚血性であった指の外科処置の研究を中止し、5人の被験体が注入部位の痛みが我慢できなくなり研究を完了することが出来なかった(図2)。
【0055】
能動治療の12週目を完了した4人の被験体のうち、標的障害が全ての患者において改善し、3人が標的障害の完全な緩解を経験した(図3)。平均で、ベースラインのDILの大きさが65%減少した(図4)。持続トレプロスチニル治療を受けている間、新たな潰瘍を発症した患者はいなかった(図5)。しかしながら、薬物を中断した後の8週間の間に3人の患者のうち2人が新たな潰瘍を発症した。6週目までに、全ての5人の患者が、患者およびグローバル評価およびDIL障害VASスコアに従って、DILの重篤度の自覚的な測定において顕著な改善を示した。DILの重篤度の外科医のグローバル評価は、12週間の治療後に平均で60%改善した(図6および7)。患者のグローバル評価およびDIL障害VASスコアは、12週までに平均で89%および77%それぞれ改善した(図6および7)。
【0056】
(結論)
本研究は、持続的皮下トレプロスチニル治療が、全身性の硬化症を有する患者のDILの治療および予防に有用であることを示す。持続的トレプロスチニル治療は、DILの治癒を促進し、新たなDILの発症を予防するのに有用である。トレプロスチニル治療はまた、DILに関連する疼痛および障害を低減する。
【実施例3】
【0057】
トレプロスチニルナトリウムは、重篤なバージャー病の症状の緩和を提供する
(背景)
バージャー病(閉塞性血栓性血管炎またはTAO)は、中動脈および小動脈の分節血栓性閉塞の発症によって特徴付けられる臨床症候群である。この疾患は、臨床的にも病理学的にもアテローム性動脈硬化症とは区別される。組織学的な特徴は、疾患の持続する期間により様々であり得る。その疾患の慢性期または末期において、血管の組織だった血栓および線維症のみが観察される。その疾患の全ての期において、血管壁の正常な構造は、一般に無傷のまま残る。バージャー病の血管造影法的な特徴は、小サイズおよび中サイズの血管が関与すること、分節的血栓病変、より重篤な疾患が遠位および血栓の領域のまわりに付随する(螺旋状側副(corkscrew collaterals))ことである。Olin, Jeffery W., Current Concepts: Thromboangiitis Obliterans (Buerber’s Disease), N. Engl. J. Med., Volume 343(12), 864-869 (September 21, 2000)。
【0058】
ベビースモーカーである若い男性において典型的に見られ、そして米国よりもアジアおよび東ヨーロッパにおいてより一般的である。喫煙は、一般的に診断の必要条件であると考えられている。提唱されている診断基準は、1)喫煙歴、2)50歳前の発症、3)膝窩下動脈閉塞、4)上肢関与または移動性静脈炎のいずれか、5)喫煙以外のアテローム硬化性危険因子の非存在、である。Sionoya, Shigehiko Diagnostic criteria of Buerger’s Disease, International Journal of Cardiology 66 (Suppl. 1)S243-245 (1998)。
【0059】
バージャー病の一次処置は、タバコ喫煙の中断である。持続的または再発性の症状は、喫煙を止め、タバコのない環境を維持して受動喫煙(second-hand smoke)を排除する患者にはめったに起こらない。喫煙を中断したにもかかわらず、疾患が進行する患者においては、治療の選択肢が限定される。血管再開通術はめったに施されることはなく、通常成功しない。なぜなら、疾患が拡散し遠位へ分布するからである。Mills, Joseph L Sr. Buerger’s Disease in the 21stCentury: Diagnosis, Clinical Features, and Therapy, Seminars in Vascular Surgery, Vol. 16(3), 179-189 (September 2003)。
【0060】
トレプロスチニルナトリウム(Remodulin(登録商標))は、プロスタサイクリンの安定な類似体であり、血漿半減期は4時間を超え、合衆国において、肺動脈高血圧症(PAH)を有する患者における慢性、持続性の皮下注入のために承認されている。この実施例は、他に治療の選択肢がない、トレプロスチニルナトリウムの持続的皮下注入によって処置された重篤かつ進行性のバージャー病を有する患者の例である。
【0061】
事例報告
42歳のキューバ人男性は、左側の虚血性疼痛の評価のために2002年に最初に観察された。患者は、1991年の左BKA(膝下切断)および1993年の右BKAを生じた両側足壊疽の複雑な病歴を有していた。彼の唯一の危険因子は、長期のヘビースモーキングの履歴を有していた。彼は、右手の痛みを2002年に経験した。動脈図により、血管再開通術の影響を受けやすいいくつかの遠位の標的を伴う右側の虚血が判明した。血栓溶解治療が試みられたが48時間後に中止し、患者はワルファリンを施された。再発性の虚血潰瘍および腕部の疼痛性運動障害のために、患者にはいくつかの他の血管専門医による追加の意見が求められ、何も対処法がないと言われた。
【0062】
患者の症状は2002年にバージャー病と診断された。この患者は、彼が最初に症状を発症したときには存在しなかった高脂血症の積極的な病歴を除いて、全てのバージャー病診断基準を満たした。全身の検査では、結合組織疾患についてネガティブであった。理学的身体検査において、上腕の脈がはっきりしていたが、両側の橈骨動脈拍動および尺骨脈はなかった。指の脂肪体のない右手における慢性的な虚血性変化の徴候があった。アレンテストは、左右とも異常であった。右親指の爪の下に小さな壊死領域が存在した。右中指の末節骨において、爪のすぐ近くに長さ1cmの別の虚血性壊死があった。両手は、完全に白く変化し、患者は腕を上げると痛みを訴えた。
【0063】
彼の跛行と虚血性徴候が再発したとき、患者には長い喫煙歴があったが、2002年にやめた。彼には、糖尿病または高血圧の病歴がない。彼は回復途中のアルコール中毒であるが、違法な薬物使用は認めていない。血栓症または凝固能亢進疾患の家族歴はない。検査所見は、結合組織疾患には否定的であった。凝固能亢進の研究室パネル(第5因子ライデン、アンチトロンビンIII、プロテインC、プロテインS、プロトロンビン遺伝子突然変異、抗カルジオリピン抗体、および狼瘡抗凝固剤を含む)は、注意をひかなかった。
【0064】
シロスタゾールをペントキシフィリン、シンバスタチン、および麻薬性鎮痛薬に加えたが、徴候はよくならなかった。2002年12月に、彼の右の人さし指を、壊疽のために切断した。フォローアップにおいてもまだ、右の親指の顕著な壊死と潰瘍化があった。患者は麻酔状態(Anesthasia)にされ、いくつかの星状神経ブロックを経験したが、再び徴候の変化は報告されなかった。結局、右の親指は、切断を必要とした。彼は短い期間追跡不能であり(すなわち、別のケア提供者の下にあった)、右人さし指に発症した潰瘍は感染していて、その後切断された。
【0065】
まもなく、患者は、主に両腕(特に左)の弱さとして表れた跛行症を示し、自分で服を着たり、彼の髪をすいたりするような簡単な日常生活の活動を行うことができなかった。右の中指潰瘍は、治癒していなかった。
【0066】
非侵襲性の脈管テストにより、指レベルで両腕で上限の極限値までの追跡が明らかになり、左が右よりひどかった。動脈造影図は、肘において、重篤な遠位疾患を有する右上腕動脈の閉塞を示し、および腋窩動脈から離れた左上腕動脈は閉塞し、左側疾患がひどかった。動脈造影図は、数レベルの「螺旋状側副」を示した。患者が血管再生から利益を得るかもしれないのが感じられた、そして、ヒトの臍静脈を使った左の腋窩の上腕動脈バイパスを実行した。治療的な血液凝固の阻止にもかかわらず、バイパスは閉塞し続けた。
【0067】
この時点で、皮下のトレプロスチニル療法が患者に施された。トレプロスチニルは、ポケベルサイズの外来注入ポンプを用いて連続皮下注入によって慢性的に送達された(Medtronic Minimed 407C (Minneapolis, MN))。2003年9月に、トレプロスチニルは2.5ng/kg/分で始まって、患者が12.5ng/kg/分の彼の最大耐量に達するまで7日ごと1ng/kg/分で滴定され、次の10ヵ月の間続けられた。彼は下痢とあごの痛みのために、より高用量(プロスタシクリン療法の副作用を制限する一般に報告された用量)に耐えることができなかった。患者は快適さが改善され、自分で服を着ること、髪をすくこと、彼の頭より上に手を伸ばすこと、および運転のような日常生活の活動に参加する能力が増大したことを報告した。ドップラー研究は、波形を記録している脈容量の改善を示した。トレプロスチニルを止めると、1週以内に虚血性徴候が再発した。患者は7日ごとに午後9時〜午前9時までトレプロスチニル12ng/kg/分の維持量で、次の7日間は薬なしで維持される。患者は、この投与計画において、彼の右の中指の潰瘍の完全な治癒を含む徴候の緩解が維持された。
【0068】
患者の徴候的な改善は、トレプロスチニル注入に関連があるように見える。患者の疾患は、2002年前半に喫煙をやめたにもかかわらず進行し続けた。本発明者らは、患者がトレプロスチニル治療を受け始めた時の2003年の受動的コチニン尿検査で、喫煙していなかったことを確認した。痛みと指潰瘍治癒の継続した改善と彼の生活の質の全体的な改善があった。製造業者から投与についての公式な推奨がないが、維持用量を含む本発明者らの投与計画は、臨床的改善に基づいて安全でかつ効果的であるようである。
【0069】
これらの結果は、皮下のトレプロスチニル治療が、禁煙で改善しないバージャー病に臨床的に役立つ(特に、他の治療的なオプションが失敗した臨床的な肢虚血の存在下で)ことを示唆する。適用の容易さ(インシュリンポンプに類似した)は、より浸襲的な静脈内送達に対してより魅力的な治療の選択肢とし、そして十分に耐えられる。
【0070】
実施例4
トレプロスチニルナトリウム(Remodulin(登録商標))による臨床的肢虚血の処置は安静時疼痛およびかかとの虚血潰瘍を低減する
【0071】
背景:処置の選択肢は、慢性的な臨界的手足虚血(CLI)、生命および身体を脅すような状態と末梢性動脈の病気(PAD)で最も重症型で患者のために制限される。先進のCLIは、非治療虚血性潰瘍や壊疽に至るかもしれない(血栓症Research 106(6):295-301(2002))。
【0072】
この研究の目的は、計画的な血管介入手順を有さないCLIの患者におけるトレプロスチニル療法の連続皮下投与の安全性および効率の、盲検でない単一施設の評価、ならびにこれらの患者における慢性トレプロスチニルの安全な用量の決定である。
【0073】
方法:予定された登録は、10人の患者であった。全ての患者はフォンテーンStage III-IVまたはラザフォードクラス4-6疾患にかかっていることになっており、足関節上腕血圧比(ABI)は、最も感作された肢または創傷治癒評価のための参照虚血創傷を含む肢において0〜0.55であった。患者は、研究に入る30日以内に脈管手術あるいは脈管手順を受けた場合、血行動態的に不安定である場合、急性腎不全、急性の肺不全、最近の頭蓋内出血の病歴、胃内出血、尿管出血、または6週間以内の顕著な外傷がある場合、積極的化学療法を必要とする生命を脅かすような悪性腫瘍、末期の腎疾患、および慢性腎透析を有する場合、研究から除外された。トレプロスチニルパッケージ内の印刷物の情報に基づいて、患者の安全性に受け入れがたい危険を構成するいかなる状態または異常な研究室値もまた、除外基準であった。患者は、過去30日以内に調査中の試験にいることができなかったか、過去30日間の慢性のプロスタノイド処置への非応答者であることができなかった。
【0074】
冠状動脈疾患またはCOPDのような共存症の障害のための薬物、創面切除および抗生物質を含む通常の創傷ケア、ならびに安静時疼痛のための鎮痛薬は、研究の間許されたが、臨床的に必要でないかぎり、ベースライン療法から変えられることになっていなかった。
【0075】
ベースライン評価が完了した後、トレプロスチニル療法がクリニックで始められた。患者は、トレプロスチニル療法の開始の後で、少なくとも2時間観察された。患者および/または介護者は、外来用の皮下注入ポンプ(407C Minimed、Sylmar、CA、Model)を用いて、外来患者としてトレプロスチニルを投与するために訓練された。各々の患者は、耐性に基づいて滴定した用量で、2.5ng/kg/分以下の用量で開始された。用量増加は、1週につき1.25-2.5ng/kg/分であることになっていた。最大の許容された用量は、15ng/kg/分であり、そして、最小の許された用量は、0.625ng/kg/分であった。患者は3日ごと皮下注入部位を変えるように命じられた。
【0076】
患者は、第2、6、および12週に評価のためにクリニックに戻った。トレプロスチニル処置は、12週目の訪問評価が完了した後、注入速度を徐々に低下させることによって(臨床的に示されるように、1-4時間の期間にわたって)終了された。
【0077】
安全性は、有害事象(AE)および身体検査調査結果を用いて全ての患者で評価された。CLIの徴候および症状または悪化しているCLIは、因果関係、強さまたは頻度で異なるとわからない限り、AEであると考慮しなかった。
【0078】
安静時疼痛は、安静時疼痛のための視覚的アナログ目盛り(VAS)を用いて全ての患者で評価された。患者は、足の痛みを0-10のスケールで(0は痛みなし、10は最悪の痛みを反映している)評価するように頼まれた。スケールは印刷され、そして患者は彼らの痛み経験を反映した数にマークするよう頼まれた。患者は、以前の評価以来経験した最悪の痛み、およびその時間枠の間の彼らの平均的痛みを評価するよう頼まれた。鎮痛性薬物使用は調査者によって、不変、増加、減少、または中止、として評価された。
【0079】
創傷評価は、ベースラインで少なくとも1つの虚血性創傷があった患者で実行されることになっていた。患者が複数の虚血性創傷を有し、そして1または2(通常最大であるか最も重篤の創傷)が参照創傷として選択された。選ばれた創傷は、記録のために写真を撮った。可能な場合、創傷の外側エッジを、領域測定のためにトレースした。トレースは、創傷の長さと幅を計ることによって創傷域を計算するのに用いられた。全ての創傷がトレース可能だった性質であるというわけではなかった。例えば、つま先の間の、または大きな組織損失によるかかとの創傷はトレースできなかった。これらの創傷は記述されて写真を撮られた。創傷は、研究のための訪問時に、ベースラインに比較して全体的な状態について評価された(すなわち、悪化、わずかに悪化、不変、わずかに改善、改善、治癒)。
【0080】
参照創傷に選ばれた以外の創傷があった患者で、各々の更なる創傷の全体的な状態(すなわち、悪化、同じ、改善、または治癒)も、各々の研究のための訪問で記録した。研究の間に起こったどんな新しい創傷でも、慎重に記録された。
【表2】

【0081】
結果:安全性:10人の患者(6人の女性)は、書面による同意の後で研究において登録された。平均年齢は82.4歳であって、65〜90歳の範囲で変化した。8人の患者は確立した冠状動脈疾患を有し、4人は糖尿病患者であり、そして3人は慢性腎不全があった。全ての患者は、表面的な大腿動脈(SFA)を含む広がったPADを有していた。膝窩下疾患は、7人の患者に存在した。6人の患者には、両足の関与があった。1人の患者は、PADに起因する以前のひざ下切断(BKA)を有していた。3人の患者は失敗したバイパス移植片があった、そして、1人は失敗した血管形成術を有していた。全ての患者は、フォンテーンStage IV(ラザフォード5または6)病の基準を満たし、虚血性安静時疼痛と少なくとも1つの虚血性手足創傷を有していた。表3は、患者の実態的人口統計学と病気の状態をまとめたものである。
【0082】
全ての患者は、皮下のトレプロスチニルを受けた。全ての患者は、研究対象薬剤の2.5ng/kg/分の初回用量を受けた。9人の患者は、週1-6の間で15ng/kg/分の最大用量まで滴定された。1人の患者は、重篤な部位注入の痛みのために7.5ng/kg/分にとどまることになった。
【0083】
報告された最も一般的な副作用は、注入部位の痛みであった。2人の患者は穏やかなあごの痛みを経験した。1人の患者は軽い頭痛を報告した。そして、1人の患者は下痢を経験した。これらの副作用は、トレプロスチニル用量を減少させることによって、ほぼ解決された。2人の患者は、早めに薬を中止した。1人の患者は、ひどい部位の痛み、あごの痛み、頭痛、および下痢に関連して、第8週に中止した。1人の患者は、ポンプおよび注入サイトの変化に圧倒されるのを感じて、第6週に同意を取り下げたが、穏やかな注入部位の痛みだけを報告した。
【0084】
2つの重大な有害事象(SAE)があった。1人の女性患者は、通常の手術後による平復で第10週に胆嚢摘出術受けた。トレプロスチニル注入は、腹腔鏡による手順の間、中断しなかった。第12週に、この同じ患者は、さらなる利尿剤、および彼女の薬物処方投与計画に加えられるACE抑制剤の追加を必要とする悪化する鬱血性心不全を発症した。両方のSAEは、トレプロスチニルに関連がありそうにないと判断された。
【0085】
安静時疼痛:ベースラインから第12週(8.4〜2.5の平均から)まで最悪の安静時疼痛の64%の減少と平均的安静時疼痛の58%の減少がベースラインから第12週(7.1〜2.4の平均)まであった。図8は、予定された研究訪問時の視覚的アナログスケールでの平均の平均および最悪の安静時疼痛の評価、ならびに研究の間の時間にわたる平均の平均安静時疼痛を示す。
【表3】

【0086】
ベースラインで、全ての患者は、オキシコドンHCL/アセトアミノフェン(Percocet(登録商標)Endo Labs Inc)またはヒドロコドン酒石酸水素塩/アセトアミノフェン(Vicodin(登録商標)、Abbott Laboratories社))のいずれかを受けて、虚血性安静時疼痛を管理した。第12週に、1人の患者は鎮痛剤の消費を増やし、4人の患者の薬物投与使用はベースラインから不変であり、3人の患者は鎮痛剤の消費を減らし、1人の患者は非鎮静性、非麻薬性の鎮痛剤に変更し、そして2人の患者は完全な鎮痛を経験して、全ての鎮痛剤をやめた。注入サイト痛みのため、研究をやめた患者は、完全な虚血性鎮痛を経験して、第6週に鎮痛剤をやめたが、トレプロスチニルをやめた1週間後に鎮痛剤投与を再開した。
【表4】

【0087】
創傷治癒:創傷トレースと調査者評価(悪化、不変、改善、または完全に治癒)は、虚血性創傷を評価するのに用いられた。しかし、大部分の創傷の性質および位置のために、創傷のトレースは妨げられた。創傷は、場所、組織損失の範囲、壊疽、または壊死の程度により変化した。悪化、不変、改善、または完全に治癒の調査者評価が最終的な評価において用いられた。全10人の患者は、ベースラインで少なくとも虚血性創傷を有していた。創傷期間は、4週間から9ヵ月まで変化した。創傷サイズは、0.16〜63.7cmの範囲で変動した。3人の患者が、創傷の完全な治癒を経験した。患者5は、第6週で完全な創傷閉鎖を示し、かんじゃ7および10は、第12週で完全な創傷の閉鎖を示した。試験の間、新たな創傷を発症した患者はいなかった。これらの患者のための簡単な症例報告を以下に示す。プロスタサイクリンの独特の用途を示す4番目の症例報告が示されている。トレプロスチニルを使用して切断を遅延させ、患者が危険にさらされた肢の上の骨折した腰の完全な回復をすることができた。
【0088】
(症例1)
患者5は、末梢血管疾患を有する88歳の女性であった。動脈図は、左膝窩を再構築している両側を有する完全に閉塞した左SFAを示す。ベースラインにおける彼女のABIは、0.30であった。彼女は、0.16cmの小さな虚血性潰瘍を左の第2趾に2ヶ月間有していた。MRAは、左第2趾骨髄炎を記録した。彼女は、第6週に完全な創傷閉鎖を有していた。彼女の安静時疼痛が完全に完結されないとき、彼女は、ヒドロコドン酒石酸塩/アセトアミノフェンから、プロポキシフェンおよびアセトアミノフェンに変化した。彼女のトレプロスチニル用量は、15ng/kg/分であった。
【0089】
(症例2)
患者7は、88歳の女性であり、治癒しない虚血性創傷を、4週間前の足指の除去後に、右および左の第3趾に有していた。彼女は、2003年にスティント(stints)で両側の腎血管形成術を受けた。血管造影図は、彼女の腎臓の状態および2.7のクレアチニンによって延期された。MRAは、足へ2つの管が走るびまん性鼠径下疾患を示した。彼女は、足の痛みなしには一歩も歩くことが出来ず、重篤な虚血性安静時疼痛を経験した。彼女のベースラインでのABIは、右0.40、左0.36であった。第6週に、彼女は、安静時疼痛が完全に解決し、制限なく歩けるようになり、そして麻酔性の鎮痛剤の使用を中止した。第12週に、彼女は創傷が完全に閉鎖した。彼女のトレプロスチニル用量は、7.5ng/kg/分であった。
【0090】
(症例3)
患者10は、65才の男性であり、インシュリン依存性糖尿病性、慢性腎不全であり、PADの13年の病歴を有する鬱血性心不全を有している。彼は1991年に右側大腿骨の膝窩バイパスを受けて、5ヵ月後に、閉塞を記録した。彼は、PADの存在下で2001年以来決して完全にはおさまらなかった右の母趾の度重なる神経障害潰瘍化を有していた。彼は2001年後半に別のプロスタノイドの以前の試験に参加して、試験の完了時に潰瘍の改善を示したが、彼が偽薬または活性な薬物をとっていたか否かは知られていない。彼は、2003年に虚血性安静時疼痛を右脚に感じ始めた。ベースラインで、彼は右の母趾潰瘍に9ヵ月の間1.96cm2の大きさの非治癒潰瘍があった。彼は12週間のトレプロスチニルを完了して、第12週に完全な創傷閉鎖をした初期の創傷治癒を示した。彼も第2週に高度の跛行症および虚血性安静時疼痛が完全に解決して、麻薬鎮痛剤を中止した。彼のトレプロスチニル用量は、15ng/kg/分であった。
【0091】
(症例4)
患者3は、酸素に依存するCOPD、心房細動、高血糖、未知の起源の貧血症、および多重血管病の病歴を有する82才の男性である。彼の血管病歴は、1995年および再び2003年に頸動脈動脈内膜切除を必要としている一過性脳虚血発作(TIA)、1995年に冠状動脈バイパスを必要とする冠状動脈疾患、2002年以来末梢血管病を記録したことを含む。彼は2003年8月に彼の左の腰に怪我をして、リハビリテーション施設での間、左のかかとと足虚血性潰瘍になった。2003年11月の超音波診断により、末梢部の右SFA狭窄、大きな側副による近位の左SFA、中間SFA閉塞が示された。最小の血流が、40mm/Hgより少ないつま先圧とともに、足首レベルで観察された。右ABIは0.58であり、左のABIは0.25であった。患者は、2つの大きな虚血性創傷を有し、左のかかと(63.75cm2)と左の横の足(40.17cm2)に大きな組織損失があった。患者は最近の股関節部骨折および人工腰のの不完全な治癒の存在のため、切断の後で義足を利用することができないという懸念があった。彼は研究に登録され、創傷を安定させ、安静時疼痛の緩解が提供され、切断が延期され、左の腰のリハビリテーションを続けた。彼の創傷は重要な改善なしで薬物治療の12週の間に安定しているままだったが、少しも悪化しなかった。平均的安静時疼痛スコアはベースラインで7であって、4に減った。最悪の安静時疼痛スコアは、8から4まで減った。彼は、鎮痛剤の消費を、ヒドロコドン酒石酸水素塩/アセトアミノフェンから、オキシコンチン、オキシコドンHCL/アセトアミノフェン単独まで減らした。彼は左の腰のリハビリテーションを完了することができた。そして、彼がリハビリテーション療法のためのこの延長時間の結果としてBKAの後で義足を利用することができることが予期される。
【0092】
結論:この非盲検研究は、トレプロスチニル注入の安全性を支持する。この研究に登録された患者は、PADのこの終末期の提示で見られる実態的人口統計学を反映した。これは、全体的な病気プロセスに寄与する顕著な共存症の障害にかかった異質な集団である。これらの患者は、間近に迫った切断術を伴う最悪のなかの最悪である。
【0093】
虚血性の痛みと創傷は、CLIを有する患者の主要な管理問題である。トレプロスチニルは、全ての患者に鎮痛を、そして3人の患者に創傷治癒をもたらした。治癒を示すことができなかった患者は、壊死や壊疽で大きな創傷があった。完全な治癒を示した3人の患者は組織損失がより少なかったが、当業者は彼らが広範囲な血管病を有し、そして外科的血管再生オプションがなかったとすれば、悪化したであろうことを予期する。
【0094】
種々の修正および変更が本発明の組成物およびプロセスに対してなされ得ることは、当業者にとって明らかである。このように、添付の請求の範囲およびその等価物の範囲内になるならば、本発明がそのような修正および変更をカバーすることが意図される。
【0095】
上記で引用された全ての出版物の開示は、あたかも各々が個々に参照によって取り入れられるように、その全体が同じ程度に、参考として本明細書中にはっきりと援用される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
虚血性病変を引き起こす疾患または症状の患者の虚血性病変を治療または予防する方法であって、それを必要とする患者に有効量のトレプロスチニルまたはその誘導体、あるいはその薬学的に許容されうる塩を投与する工程を包含する方法。
【請求項2】
前記誘導体がトレプトスチニルの酸誘導体、トレプトスチニルのプロドラッグ、トレプトスチニルの徐放製剤、トレプロスチニルの吸入製剤、トレプロスチニルの経口製剤、トレプロスチニルの多型体またはトレプロスチニルの異性体である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記の虚血性病変を引き起こす疾患または症状が強皮症、バージャー病、レイナー病および/またはレイナー現象を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記虚血性病変が指の虚血性病変を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記の指の虚血性病変が指の潰瘍および/または壊死病班を含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記の虚血性病変を引き起こす疾患または症状が全身性強皮症を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
指の虚血性病変に関連する疼痛または他の症状が減少、消失または予防される、請求項4に記載の方法。
【請求項8】
トレプロスチニルの薬学的に許容されうる塩またはその誘導体、またはその薬学的に許容されうる塩が投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
該患者が人間である、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記のトレプロスチニルまたはその誘導体、あるいはその薬学的に許容されうる塩が皮下投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記のトレプロスチニルまたはその誘導体、あるいはその薬学的に許容されうる塩が皮下持続注入により投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記のトレプロスチニルまたはその誘導体、あるいはその薬学的に許容されうる塩が静脈内投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記のトレプロスチニルまたはその誘導体、あるいはその薬学的に許容されうる塩が錠剤およびカプセル剤からなる群から選択される経口使用製剤で投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記のトレプロスチニルまたはその誘導体、あるいはその薬学的に許容されうる塩が吸入により投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記の有効量が少なくとも1.0 ng/kg体重/分である、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
虚血性病変を引き起こす疾患または症状の患者の虚血性病変を治療または予防するキットであって、(i)有効量のトレプロスチニルまたはその誘導体、あるいはその薬学的に許容されうる塩、(ii)一つまたはそれ以上の薬学的に許容されうる担体および/または添加剤、および(iii)虚血性病変を治療または予防するための使用説明書を含む、キット。
【請求項17】
前記の虚血性病変を引き起こす疾患または症状が強皮症、バージャー病、レイノー病および/またはレイノー現象を含む、請求項16のキット。
【請求項18】
前記虚血性病変が指の虚血性病変を含む、請求項16のキット。
【請求項19】
前記の指の虚血性病変が指の潰瘍および/または壊死病班を含む、請求項18のキット。
【請求項20】
前記の虚血性病変を引き起こす疾患または症状が全身性強皮症を含む、請求項16のキット。
【請求項21】
成分(i)がトレプロスチニルの薬学的に許容されうる塩である、請求項16のキット。
【請求項22】
該患者が人間である、請求項16のキット。
【請求項23】
成分(i)が皮下投与に適した剤型のトレプロスチニルまたはその誘導体、あるいはその薬学的に許容されうる塩である、請求項16のキット。
【請求項24】
成分(i)が皮下持続注入による投与に適した剤型のトレプロスチニルまたはその誘導体、あるいはその薬学的に許容されうる塩である、請求項16のキット。
【請求項25】
成分(i)が静脈内投与に適した剤型のトレプロスチニルまたはその誘導体、あるいはその薬学的に許容されうる塩である、請求項16のキット。
【請求項26】
成分(i)が錠剤およびカプセル剤からなる群から選択される経口使用製剤のトレプロスチニルまたはその誘導体、あるいはその薬学的に許容されうる塩である、請求項16のキット。
【請求項27】
成分(i)が吸入に適した剤型のトレプロスチニルまたはその誘導体、あるいはその薬学的に許容されうる塩である、請求項16のキット。
【請求項28】
前記有効量が少なくとも1.0 ng/kg体重/分である、請求項16のキット。
【請求項29】
前記の虚血性病変を引き起こす疾患または症状が全身性強皮症を含有し、前記虚血性病変が指の虚血性病変を含有し、トレプロスチニルまたはその誘導体、あるいはその薬学的に許容されうる塩の持続投与により少なくとも一つの指の虚血性病変の治癒が促進され、新たな指の虚血性病変の発症が減少または予防される、請求項1に記載の方法。
【請求項30】
虚血性病変を引き起こす疾患または症状を有する患者の虚血性病変に関連する疼痛および身体障害を減少、消失または予防する方法であって、それを必要とする患者に有効量のトレプロスチニルまたはその誘導体、あるいはその薬学的に許容されうる塩を投与する工程を含む、方法。
【請求項31】
前記虚血性病変が指の虚血性病変を含む、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
該患者が人間であり、前記の虚血性病変を引き起こす疾患または症状が筋炎に伴っても改善されないバージャー病を含む、請求項3に記載の方法。
【請求項33】
前記のトレプロスチニルまたはその誘導体、あるいはその薬学的に許容されうる塩が輸液ポンプによる皮下持続注入により投与される、請求項1に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−47235(P2013−47235A)
【公開日】平成25年3月7日(2013.3.7)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−217695(P2012−217695)
【出願日】平成24年9月28日(2012.9.28)
【分割の表示】特願2006−545436(P2006−545436)の分割
【原出願日】平成16年12月16日(2004.12.16)
【出願人】(505431536)ユナイテッド セラピューティクス コーポレイション (6)
【Fターム(参考)】