説明

虚血組織の治療方法

【課題】 本発明は培養三次元組織を用いた虚血組織を治療するための組成物及び方法を提供する。
【解決手段】 虚血組織を少なくとも第1の培養三次元組織と接触させることを含み、該培養三次元組織は虚血に関連する組織リモデリングを低減又は防止するのに十分な量である、方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は培養三次元組織を用いた虚血組織を治療するための組成物及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
組織の損傷及び欠損は多くの症状(これに限定されるものではないが、疾患、手術、環境曝露、創傷及び加齢を含む)が原因となり得る。組織の損傷はまた、典型的には損傷した組織における酸素の需要と供給との間の不均衡を原因とする虚血によっても生じ、また虚血を生じさせる可能性がある。通常、酸素の需要と供給との間の不均衡は、損傷した組織への血流の低減又は遮断に起因する。例えば、1以上の冠動脈の狭窄又は閉塞に起因する心臓への不十分な血流は虚血の原因となり得る。その結果生じる虚血は一過性であり得るが、この場合は虚血に伴う症状が消失し得る。他の例では、損傷した組織への血流の低減又は遮断が延長された結果として虚血は慢性化し得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
病変した又はその他損傷した組織(心臓など)における血流を改善するために現在使用されている臨床的方法は、冠動脈バイパス術、血管形成術、及び動脈内膜切除術などの侵襲的外科技術を含み得る。そのような処置は術中及び術後のいずれにおいても高度の固有リスクを伴い、虚血に関連する根本的な生理学的変化に対する一時的な治療のみを提供することが多い。したがって、特に虚血組織に対する損傷を改善する及び/又は消失させることができる更なる治療についてのニーズが存在する。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、虚血性の組織及び器官の治癒を促進する方法に関する。特に、本方法は、虚血組織で観察される組織リモデリングの特徴である組織の薄化を防止及び/又は低減する、並びに虚血組織及び器官における内皮細胞新生(endothelialization)、組織増殖、血管新生及び/又は脈管形成を促進するための、培養三次元組織の注射、移植及び/又は接着に関する。
【0005】
一部の実施形態では、本明細書に記載する方法は、虚血組織の存在に関連する症状を臨床的に明示する心臓の性能を改善するために使用することができる。例えば、一部の実施形態では、本組成物及び方法は、弱体化した心筋を強化し、もってポンプ効率(pumping efficacy)を明確に増加するために使用することができる。さらに、本明細書に記載の組成物及び方法は、様々な医薬品の投与、外科処置の施行などの慣用の治療法と組合せて冠動脈性心臓病(冠動脈疾患など)と診断された個体を治療することができる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1】図1は、本明細書に記載の一部の実施形態に従ってAngineraTMと接触させたイヌの心臓における新たな微小血管形成の組織学的証拠を記載する。
【図2】図2A及び2Bは、本明細書に記載の一部の実施形態による30日のアメロイド期間中のEDVIパラメーターを記載する。
【図3】図3は、本明細書に記載の一部の実施形態によるAngineraTMの配置後30日目の、4種の治療群における心拍出量を記載する。
【図4】図4は、本明細書に記載の一部の実施形態によるAngineraTMの配置後90日目の、4種の治療群における心拍出量を記載する。
【図5】図5は、AngineraTMの配置後30日目の、4種の治療群における左心室の駆出率を記載する。
【図6】図6は、本明細書に記載の一部の実施形態によるAngineraTMの配置後90日目の、4種の治療群における左心室の駆出率を記載する。
【図7】図7は、Angineraの配置後30日目の、4種の治療群における左心室拡張末期容積を記載する。
【図8】図8は、本明細書に記載の一部の実施形態によるAngineraTMの配置後90日目の、4種の治療群における左心室拡張末期容積を記載する。
【図9】図9は、AngineraTMの配置後30日目の、4種の治療群における左心室収縮容積を記載する。
【図10】図10は、本明細書に記載の一部の実施形態によるAngineraTMの配置後90日目の、4種の治療群における左心室収縮容積を記載する。
【図11】図11は、本明細書に記載の一部の実施形態によるAngineraTMの配置後30日目の、4種の治療群における収縮膜肥厚を記載する。
【図12】図12は、本明細書に記載の一部の実施形態によるAngineraTMの配置後30日目の、4種の治療群における収縮膜肥厚を記載する。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本明細書は、虚血組織に関連する臨床的症状又は徴候の少なくとも1つを治療するのに有効な量の培養三次元組織を虚血組織の領域と接触させることを含む、虚血組織を治療する方法を開示する。培養三次元組織は様々な増殖因子及び/若しくはWntタンパク質を含み、これらはいずれも組織薄化(これは虚血組織で観察される組織リモデリングの特徴である)の予防及び/若しくは低減、並びに/又は内皮細胞新生(endothelialization)、組織増殖、血管新生及び/若しくは脈管形成の促進を含む(限定されることはない)、効果的な治療に寄与する1種以上の生物学的プロセスを促進する三次元組織の細胞内にあり、該細胞により分泌される。
【0008】
三次元組織並びに/又は分泌される増殖因子及び/若しくはWntタンパク質によって発現することができる生物学的性質として、これに限定されるものではないが、虚血組織において観察される組織リモデリングの組織薄化特性の予防及び/若しくは低減、内皮細胞新生、組織増殖、血管新生及び/若しくは脈管形成の促進などがある。
【0009】
三次元組織は任意の組織及び/又は器官における虚血を治療するために使用することができる。例えば、三次元組織は心臓疾患に関連する症状を提示する患者を治療するために使用することができ、該心臓疾患として、これに限定するものではないが、冠動脈疾患、無症候性虚血、安定狭心症、不安定狭心症、急性心筋梗塞及び左心室不全などがある。心臓疾患と診断された患者の心臓における虚血領域にこの三次元組織を適用すると、虚血組織の治癒が促進され、その結果、処置した心臓における心拍出量の全体的な改善がもたらされる。
【0010】
三次元組織及び足場
様々な実施形態において、虚血組織の治癒を促進可能な三次元組織は、下記でより詳細に議論されるように様々な細胞種から得ることができる。三次元組織は商業的に入手することができるし、或いは米国特許第6,372,494号; 6,291,240号; 6121,042号; 6,022,743号; 5,962,325号; 5,858,721号; 5,830,708号; 5,785,964号; 5,624,840号; 5,512,475号; 5,510,254号; 5,478,739号; 5,443,950号;及び5,266,480号(これらの開示は参照によりその全体を本明細書に組み入れる)に記載される手順を用いてde novoで作製することができる。
【0011】
一部の実施形態では、培養三次元組織はSmith & Nephew(London, United Kingdom)から商業的に得られる。特に、DermagraftTMと称する製品(本明細書中AngineraTMともいう)はSmith & Nephewから入手することができる。
【0012】
一般的に、培養細胞は足場(本明細書中、生物適合性の非生存材料からなる足場ともいう)によって支持される。この足場は、(a)細胞を自身に接着させることができ(又は細胞を自身に接着させるように改変でき);かつ(b)2以上の層で細胞を増殖させる(すなわち、三次元組織を形成させる)ことができる、任意の材料及び/又は形状であることができる。
【0013】
一部の実施形態では、生物適合性材料は細胞の接着及び三次元組織への増殖のための間隙を含む三次元足場に形成される。この足場の開口及び/又は間隙は、該開口又は間隙を横切って細胞を伸長させるのに適切なサイズである。足場を横切って伸張する活発に増殖する細胞の維持は、本明細書に記載の活性に関与する増殖因子のレパートリーの産生を増強するようである。開口が小さすぎると、細胞は迅速にコンフルエントに達することができるが、メッシュから容易に抜け出すことができない。これらの閉じ込められた細胞は接触阻害を示し、本明細書に記載の増殖因子の産生を停止することがある。開口が大きすぎると、細胞は開口を横切って伸長することができない場合があり、これは本明細書に記載の増殖因子の産生を減少させることがある。本明細書に例示されるように、メッシュタイプの足場を使用するとき、少なくとも約140μm、少なくとも約150μm、少なくとも約160μm、少なくとも約175μm、少なくとも約185μm、少なくとも約200μm、少なくとも約210μm、そして少なくとも220μmの開口が十分に機能することがわかった。しかし、足場の三次元構造及び複雑さに応じて、他のサイズも同様に十分に機能することができる。実際、本明細書に記載の増殖因子を生産するのに適切な時間の長さで細胞の伸長、複製及び増殖を可能にする任意の形状又は構造を使用することができる。
【0014】
一部の実施形態では、三次元足場はポリマーから形成することができ、或いは糸を組み、織り、編み又はその他でアレンジして足場を形成させることができる(メッシュ又は織物など)。この材料は、材料又は成型加工を発泡体、マトリックス又はスポンジ-様足場に鋳造することによって形成することができる。他の実施形態では、三次元足場はポリマー又は他の繊維と共に圧縮して間隙を有する材料を生成することによって作製されたマット繊維の形態であることができる。三次元足場は、生じる組織が本明細書に記載の組織治癒活性の1種以上を発現する限り、培養中の細胞が増殖するためのあらゆる形態又は幾何学的構造を採ることができる。三次元足場を用いた細胞培養は米国特許第6,372,494号; 6,291,240号; 6121,042号; 6,022,743号; 5,962,325号; 5,858,721号; 5,830,708号; 5,785,964号; 5,624,840号; 5,512,475号; 5,510,254号; 5,478,739号; 5,443,950号;及び5,266,480号(全ての刊行物は参照によりその全体を本明細書に組み入れる)に記載されている。
【0015】
多くの異なる材料が足場の形成に使用することができる。これらの材料は非ポリマー性及び/又はポリマー性材料であることができる。ポリマーを使用するとき、これらはあらゆるタイプのブロックポリマー、コ-ブロックポリマー(例えば、ジ、トリなど)、線状又は分岐状ポリマー、架橋又は架橋されていないものであることができる。足場又は骨格として使用するための材料の非限定的な例として、特に、ガラスファイバー、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド類(例えばナイロン)、ポリエステル類(例えばDacron)、ポリスチレン類、ポリアクリレート類、ポリビニル化合物(例えばポリ塩化ビニル;PVC)、ポリカーボネート類、ポリテトラフルオロエチレン類(PTFE; TEFLON)、エキスパンデッドPTFE(ePTFE)、サーマノックス(TPX)、ニトロセルロース、多糖類(例えばセルロース、キトサン、アガロース)、ポリペプチド類(例えば絹、ゼラチン、コラーゲン)、ポリグリコール酸(PGA)及びデキストランなどがある。
【0016】
一部の実施形態では、足場は使用条件下で長期にわたって分解する材料(分解性材料など)から構成され得る。本明細書で使用される分解性材料とは、分解又は劣化する材料を指す。一部の実施形態では、分解性材料は生物分解性である。すなわち前記分解性材料は、直接的に又は間接的に生物学的作用物質の作用により分解する。分解性材料の非限定的な例として、特にポリ(乳酸-コ-グリコール酸)(すなわち、PLGA)、トリメチレンカーボネート(TMC)、TMC、PGA及び/又はPLAのコポリマー、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリカプロラクトン、腸線縫合糸材料、コラーゲン(例えばウマコラーゲン発泡体)、ポリ乳酸(PLA)、フィブロネクチンマトリックス、又はヒアルロン酸などがある。
【0017】
培養物が長時間にわたって維持され、凍結保存される実施態様では、及び/又は更なる構造的完全性が望まれる場合には、三次元足場は非分解性材料を含むことができる。本明細書で使用される非分解性材料とは、培養培地中の条件下で有意に分解又は劣化しない材料を指す。例示的な非分解性材料として、これに限定されるものではないが、ナイロン、ダクロン、ポリスチレン、ポリアクリレート類、ポリビニル類、テフロン類及びセルロースなどがある。例示的な非分解性の三次元足場には、製品名Nitex(登録商標)で入手可能なナイロンメッシュ(これは140μmの平均細孔径及び90μmのナイロン繊維の平均直径を有するナイロン濾過メッシュである)(#3-210/36, Tetko, Inc., N.Y.)などがある。
【0018】
他の実施形態では、三次元足場は分解性材料と非分解性材料の組合せであることができる。非分解性材料は培養期間の間足場に安定性を与え、分解性材料は虚血組織の治癒を促進するのに十分な因子を産生する三次元組織の形成のための十分な間隙を形成させる。分解性材料は非分解性材料上にコーティングすることができ、または織ったり、編んだり、もしくは成形したりしてメッシュにすることができる。分解性材料と非分解性材料の様々な組合せが使用できる。例示的な組合せは薄い分解性ポリマーフィルム(ポリ[D-L-乳酸-共-グリコール酸]PLGA)でコーティングしたポリ(エチレンテレフタレート)(PET)である。
【0019】
様々な実施形態では、足場材料は細胞の播種前に前処理して足場に対する細胞接着を増強することができる。例えば、細胞の播種前に、ナイロンふるいを0.1M 酢酸で処理し、ポリリシン、ウシ胎児血清及び/又はコラーゲン中でインキュベートしてナイロンをコーティングすることができる。一部の実施形態では、ポリスチレンは硫酸を用いて同様に処理することができる。他の実施形態では、三次元足場の存在下での細胞の増殖は、足場に、タンパク質類(例えばコラーゲン、エラスチン繊維、細網繊維)、糖タンパク質類、グリコサミノグリカン類(例えばヘパラン硫酸、コンドロイチン-4-硫酸、コンドロイチン-6-硫酸、デルマタン硫酸、ケラタン硫酸など)、フィブロネクチン類、細胞マトリックス、及び/又は他の糖ポリマー材料(ポリ[N-p-ビニルベンジル-D-ラクトアミド]、PVLA)を添加するか、或いはこれらでコーディングすることによりさらに増強されて、細胞接着を改善することができる。足場の処理は細胞の接着の改善に有用である。
【0020】
他の実施形態では、足場は、粒子の存在下で培養された細胞が虚血組織の治癒を促進する因子を合成するような大きさを示す粒子を含む。一部の実施形態では、粒子は微粒子又は他の適当な粒子(マイクロカプセル及びナノ粒子など)を含み、該粒子は分解性であっても非分解性であってもよい(例えば「Microencapsulates : Methods and Industrial Applications」,Drugs and Pharmaceutical Sciences, 1996, Vol 73, Benita, S. ed, Marcel Dekker Inc., New York参照)。一般的に、微粒子は少なくとも約1μm、少なくとも約10μm、少なくとも約25μm、少なくとも約50μm、少なくとも約100μm、少なくとも約200μm、少なくとも約300μm、少なくとも約400μm、少なくとも約500μm、少なくとも約600μm、少なくとも約700μm、少なくとも約800μm、少なくとも約900μm、少なくとも約1000μmの粒径範囲を有する。ナノ粒子は、少なくとも約10 nm、少なくとも約25 nm、少なくとも約50 nm、少なくとも約100 nm、少なくとも約200 nm、少なくとも約300 nm、少なくとも約400 nm、少なくとも約500 nm、少なくとも約600 nm、少なくとも約700 nm、少なくとも約800 nm、少なくとも約900 nm、少なくとも約1000 nmの粒径範囲を有する。微粒子は多孔質性又は無孔性であることができる。様々な微粒子が三次元足場を調製するために使用することができ、該微粒子として上記のメッシュ又は編みポリマーを形成させるために使用される分解性の又は非分解性の材料から製造される微小粒子などがある。
【0021】
例示的な非分解性微粒子として、これに限定されるものではないが、ポリスルホン類、ポリ(アクリロニトリル-コ-塩化ビニル)、エチレン酢酸-ビニル、ヒドロキシエチルメタクリレート-メチル-メタクリレート共重合体などがある。分解性微粒子として、フィブリン、カゼイン、血清アルブミン、コラーゲン、ゼラチン、レシチン、キトサン、アルギナート又はポリアミノ酸類(ポリ-リジンなど)から製造されるものなどがある。分解性の合成ポリマーとして、ポリラクチド(PLA)、ポリグリコリド(PGA)、ポリ(ラクチド-コ-グリコリド)(PLGA)、ポリ(カプロラクトン)、ポリジオキサノントリメチレンカーボネート、ポリヒドロキシアルコナート類(例えばポリ(y-ヒドロキシブチレート))、ポリ(Y-エチルグルタメート)、ポリ(DTHイミノカルボニル(ビスフェノールAイミノカーボネート))、ポリ(オルトエステル)及びポリシアノアクリレートなどがある。
【0022】
ヒドロゲルも三次元足場を提供する上で使用可能である。一般的に、ヒドロゲルは架橋された親水性ポリマー網である。ヒドロゲル組成物に有用なポリマーの非限定的な例として、特に、ポリ(ラクチド-コ-グリコリド)、ポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)のポリマー;ポリ(メタクリル酸-γ-ポリエチレングリコール);ポリアクリル酸及びポリ(オキシプロピレン-コ-オキシエチレン)グリコール;及び天然の化合物(コンドロイタン硫酸、キトサン、ゼラチン、フィブリノーゲン又は合成ポリマーと天然ポリマーとの混合物、例えばキトサン-ポリ(エチレンオキシド))から形成されるものなどがある。ポリマーは細胞が接着し、三次元組織を形成するのに十分なゲルを形成するために可逆的に又は不可逆的に架橋させることができる。
【0023】
微粒子を製造する様々な方法は当該分野で周知であり、該方法として溶媒除去処理(例えば米国特許第4,389,330号参照);乳化及び蒸発(Maysinger et al., 1996, Exp. Neuro. 141: 47-56; Jeffrey et al., 1993, Pharm. Res. 10: 362-68)、スプレー乾燥及び押出法などがある。三次元足場を製造するための例示的な微粒子は、米国特許出願公開2003/0211083並びに米国特許第5,271,961号; 5,413,797号; 5,650,173号; 5,654,008号; 5,656,297号; 5,114,855号; 6,425,918号;及び6,482,231、並びに本願と同日出願に係る「Cultured Three Dimensional Tissues and Uses Thereof」を発明の名称とする米国特許出願(これらの開示は参照によりその全体を本明細書に組み入れる)に記載されている。
【0024】
上述されたもの以外の様々な幾何学形態の他の材料が、本明細書に記載の組織治癒特性を有する三次元組織を生成する上で使用することができ、したがってこの材料が本明細書に開示の特定の実施形態に制限されないことは理解されるべきである。
【0025】
細胞及び培養条件
一部の実施形態では、培養三次元組織は、三次元足場を含む生物適合性材料に適切な細胞を播種し、1以上の組織治癒特性を有する培養三次元組織の産生を促進するのに適当な条件下で該細胞を増殖させることによって作製することができる。細胞はドナーから直接、ドナー由来の細胞培養物から、又は確立された細胞培養系から取得することができる。一部の例では、細胞は適当な死体臓器又は胎児供給源のいずれかから多量に取得することができる。一部の実施形態では、同一種の細胞(1以上のMHC遺伝子座で適合することが好ましい)は、生検によって、被検体又はその近親体のいずれかより取得され、その後、標準的な条件を用いる培養でコンフルエントまで増殖させて随時使用される。ドナー細胞は三次元組織で治療する予定の被検体を参照して特徴付けされる。
【0026】
一部の実施形態では、細胞は自己由来である、すなわち細胞はレシピエントに由来する。三次元組織はレシピエント自身の細胞に由来するため、三次元組織の活性を中和する免疫応答の可能性が低減される。これらの実施形態では、細胞は典型的には三次元組織を産生するための十分な数を得るために培養される。
【0027】
他の実施形態では、細胞は培養培地の、目的のレシピエントではないドナーから取得される。これらの実施形態の一部では、細胞は同系であり、全てのMHC遺伝子座で遺伝子的に同一であるドナーから誘導される。他の実施形態では、細胞は同種異系であり、目的のレシピエントと少なくとも1つのMNC遺伝子座で異なるドナーから誘導される。細胞が同種異系であるとき、該細胞は単一のドナーからのものであることができ、又はそれ自体互いに同種異系である異なるドナー由来の細胞の混合物を含むことができる。別の実施形態では、細胞は異種すなわち目的のレシピエントと異なる種由来のものを含む。
【0028】
本発明の様々な実施形態において、足場に播種される細胞は、下記でさらに記載されるように、繊維芽細胞を含み、他の細胞を含むか又は含まない、間質細胞(stromal cells)であることができる。一部の実施形態では、この細胞は、典型的には結合組織由来の、間質細胞であり、該結合組織として、これに限定されるものではないが(1)骨;(2)疎性結合組織(コラーゲン及びエラスチンを含む);(3)靭帯及び腱を形成する繊維性結合組織;(4)軟骨;(5)血液の細胞外マトリックス;(6)脂肪細胞を含む脂肪組織;及び(7)繊維芽細胞などがある。
【0029】
間質細胞は、様々な組織又は器官、例えば、生検(適切な場合)によって又は検死時に得ることができる皮膚、心臓、血管、骨格筋、肝臓、膵臓、脳、包皮などから誘導することができる。
【0030】
繊維芽細胞は胎児、新生児、成人起源、又はその組合せ由来であることができる。一部の実施形態では、間質細胞は胎児繊維芽細胞を含み、これは様々な異なる細胞及び/又は組織の増殖を支持することができる。本明細書で使用される胎児繊維芽細胞は胎児供給源に由来する繊維芽細胞を指す。本明細書で使用される新生児繊維芽細胞は新生児供給源に由来する繊維芽細胞を指す。適切な条件下で、繊維芽細胞は他の細胞、例えば骨細胞、脂肪細胞、及び平滑筋細胞並びに中胚葉起源の他の細胞を生じさせることができる。一部の実施形態では、繊維芽細胞は皮膚繊維芽細胞を含む。本明細書で使用される皮膚繊維芽細胞は皮膚由来の繊維芽細胞を指す。正常なヒト皮膚繊維芽細胞は新生児の包皮から単離することができる。これらの細胞は典型的に一次培養の終了時に凍結保存される。
【0031】
他の実施形態では、三次元組織は幹細胞及び又は始原細胞を、単独で又は本明細書に記述する細胞種のいずれかと組合せて用いて作製することができる。「幹細胞」という用語は、これに限定されるものではないが胚性幹細胞、造血幹細胞、神経幹細胞及び間充織幹細胞を含む。
【0032】
一部の実施形態では、「特異的な」三次元組織は、特定の器官、すなわち皮膚、心臓に由来する、及び/又は後に本明細書に記載の方法による培養で増殖された細胞及び/又は組織を受ける特定の個人由来の細胞を三次元足場に播種することによって調製することができる。
【0033】
上述されるように、追加の細胞が間質細胞と共に培養物中に存在することができる。追加の細胞種として、これに限定されるものではないが、平滑筋細胞。心筋細胞、内皮細胞及び/又は骨格筋細胞などがある。一部の実施形態では、1種以上の他の細胞種と共に繊維芽細胞を三次元足場に播種することができる。他の細胞種の例として、これに限定されるものではないが、疎性結合組織、内皮細胞、周細胞、マクロファージ、単球、脂肪細胞、骨格筋細胞、平滑筋細胞及び心筋細胞で見られる細胞などがある。これらの他の細胞種は、皮膚、心臓及び血管などの適当な組織又は器官から、上述される方法などの当該分野で公知の方法を用いて容易に誘導することができる。他の実施形態では、繊維芽細胞を除く1種以上の他の細胞種が三次元足場に播種される。さらに別の実施形態では、三次元足場に繊維芽細胞のみが播種される。
【0034】
本明細書に記載の方法及び組成物に有用な細胞は適当な器官又は組織を分解することによって容易に単離することができる。これは当業者に公知の技術を用いて容易に行うことができる。例えば、組織又は器官を機械的に分解すること並びに/又は近隣の細胞間の結合を弱めるキレート剤及び/若しくは消化酵素による処理により、認め得る程度に細胞を破壊することなく個々の細胞の懸濁液に組織を分散させることを可能にする。酵素分解は組織を細かく刻み、多くの消化酵素のいずれかを単独で又は組合せて刻んだ組織を処理することによって行うことができる。これらの酵素として、これに限定されるものではないが、トリプシン、キモトリプシン、コラゲナーゼ、エラスターゼ、及び/又はヒアルロニダーゼ、DNアーゼ、プロナーゼ及びディスパーゼなどがある。機械的破壊は、いくつか例を挙げると、これに限定されるものではないが、グラインダー、ブレンダー、網ふるい、ホモジナイザー、圧力セル又は超音波処理装置の使用を含む、多くの方法によって行うことができる。組織分解技術の概要については、Freshney, Culture of Animal Cells. A Manual of Basic Technique, 2d Ed., A.R. Liss, Inc., New York, 1987, Ch. 9, pp. 107-126を参照されたい。
【0035】
組織が個々の細胞の懸濁液にされた時点で、この懸濁液を小集団まで分画することができ、該小集団から繊維芽細胞及び/又は他の間質細胞及び/又は他の細胞種を取得することができる。これは細胞分画についての標準的な技術、これに限定されるものではないが特定の細胞種のクローニング及び選別、所望でない細胞の選択的破壊(ネガティブ選別)、混合集団における差異的細胞被凝集性に基づく分離、凍結溶解手順、混合集団における細胞の差異的付着性、濾過、従来の遠心分離及びゾーン遠心分離、遠心溶出法(向流遠心分離(counter-streaming centrifugation))、単位重力分離、向流分配、電気泳動及び蛍光活性化細胞分類など、を用いて行うことができる。クローン選別及び細胞分離技術の概要については、Freshney, Culture of Animal Cells. A Manual of Basic Techniques, 2d Ed., A.R. Liss, Inc., New York, 1987, Ch. 11 and 12, pp. 137-168を参照されたい。
【0036】
本明細書に記載される方法及び組成物において使用するのに適当な細胞は、例えば以下のようにして単離することができる:新鮮な組織サンプルを十分に洗浄し、Hanks平衡塩溶液(HBSS)中で細かく刻み、血清を除去する。細かく刻まれた組織は新たに調製したトリプシンなどの分解酵素溶液中で1〜12時間インキュベートする。そのようなインキュベーション後に、分解した細胞を懸濁し、遠心分離によってペレット化し、そして培養皿にプレーティングする。間質細胞は他の細胞より前に接着するので、適当な間質細胞を選択的に単離及び増殖させることができる。単離した間質細胞はコンフルエントまで増殖させ、コンフルエント培養物から取り出し、三次元足場に播種することができる(米国特許第4,963,489号; Naughton et al., 1987, J. Med. 18(3&4):219-250)。高濃度の細胞、例えば1ml当たり約1 x 106〜5 x 107個の間質細胞を三次元足場に播種すると、より短い期間で三次元組織を確立することができる。
【0037】
他の実施形態では、三次元足場上で調製される操作された三次元組織は、組織特異的細胞を含み、天然分泌型の増殖因子、及び幹細胞又は始原細胞の特定の細胞種又は組織への増殖又は分化を刺激するWntタンパク質を産生する。さらに、操作された三次元組織は幹細胞及び/又は始原細胞を含むように操作することができる。操作された三次元組織によって刺激され得る及び/又は該組織内に含まれ得る幹細胞及び/又は始原細胞の例として、これに限定されるものではないが、間質細胞、実質細胞、間充織幹細胞、肝予備細胞、神経幹細胞、膵臓幹細胞及び/又は胚性幹細胞などがある。
【0038】
所望の細胞種を前記足場に播種した後、該足場は三次元組織への細胞の増殖を支持する適当な栄養培地中でインキュベートすることができる。多くの市販の培地、例えばダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)、RPMI 1640、フィッシャー培地、及びイスコヴ、マッコイ培地等が使用に適当である。この培地はさらに塩、炭素源、アミノ酸、血清及び血清成分、ビタミン、ミネラル、還元剤、緩衝剤、脂質、ヌクレオシド、抗生物質、接着因子、及び増殖因子で補充することができる。異なるタイプの培養培地の調合は当業者が入手可能な参考資料(例えばMethods for Preparation of Media, Supplements and Substrates for Serum Free Animal Cell Cultures, Alan R. Liss, New York (1984); Tissue Culture: Laboratory Procedures, John Wiley & Sons, Chichester, England (1996); Culture of Animal Cells, A Manual of Basic Techniques, 4th Ed., Wiley-Liss (2000))に記載されている。典型的には、組織治癒活性、増殖因子及び/又はWntタンパク質の分泌を増強するために、三次元組織はインキュベーション期間の間培地中に懸濁される。一部の実施形態では、使用済みの培地を除去し、放出された細胞数を減じ、及び新鮮な培地を加えるために、培養物に定期的に「給餌」することができる。インキュベーション期間中、培養細胞は直線的に増殖し、足場の開口への増殖を開始する前に三次元足場の繊維を覆う。
【0039】
前記足場に沈着する異なる割合の様々なタイプのコラーゲンは、三次元組織と接触する細胞の増殖に影響を与えることができる。沈着する細胞外マトリックス(ECM)タンパク質の割合は、適当なコラーゲン種を合成する繊維芽細胞を選択することによって操作又は増強することができる。これは、補体を活性化することができ、特定のコラーゲン種を規定する適当なアイソタイプ又はサブクラスのモノクローナル抗体を用いて行うことができる。これらの抗体及び補体は所望のコラーゲン種を発現する繊維芽細胞のネガティブ選択のために使用することができる。あるいは、この前記骨組みに播種するために使用する細胞は、所望のコラーゲン種を合成する細胞の混合物であることができる。様々なコラーゲン種の分布及び起源を表1に示す。
【表1】

【0040】
様々な実施形態では、培養三次元組織は該細胞によって産生される細胞産物(増殖因子など)の特徴的レパートリーを有する。一部の実施形態では、培養三次元組織は表2に示す増殖因子の発現及び/又は分泌を特徴とする。
【表2】

【0041】
一部の実施形態では、培養三次元組織は結合組織増殖因子(CTGF)の発現及び/又は分泌を特徴とすることができる。CTGFは骨形成、創傷治癒及び脈管形成において重要な役割を果たす周知の繊維芽細胞分裂促進因子、及び脈管形成因子である。例えばLuo, Q., et al., 2004, J. Biol. Chem., 279:55958-68; Leask and Abraham, 2003, Biochem Cell Biol, 81:355-63; Mecurio, S.B., et al., 2004, Development, 131:2137-47; 及びTakigawa, M., 2003, Drug News Perspect, 16:11-21を参照されたい。
【0042】
上に列挙した増殖因子に加えて、三次元組織はWntタンパク質の発現も特徴とすることができる。本明細書で使用される「Wnt」又は「Wntタンパク質」は、以下の機能的活性の1つ以上を有するタンパク質を指す:(1)Wntレセプター(Frizzledタンパク質とも称する)に結合する、(2)Dishevelledタンパク質のリン酸化及びAxinの細胞局在をモジュレートする、(3)細胞β-カテニンレベル及びこれに対応するシグナル伝達経路のモジュレーション、(4)TCF/LEF転写因子のモジュレーション、及び(5)細胞内カルシウムの増加及びCa+2感受性タンパク質(例えばカルモジュリン依存性キナーゼ)の活性化。Wntタンパク質の関連で使用する「モジュレーション」とは、細胞レベルにおける増加又は減少、細胞内分布における変化、及び/又はWntによってモジュレートされる分子の機能(例えば酵素)活性における変化を指す。
【0043】
本発明は、齧歯類、ネコ科の動物、イヌ科の動物、有蹄類、及び霊長類などの哺乳類で発現されるWntタンパク質に関する。例えば、同定されているヒトWntタンパク質は27%〜83%のアミノ酸配列同一性を有する。Wntタンパク質の更なる構造的特徴は約23又は24個のシステイン残基の保存パターン、疎水性シグナル配列、及びオリゴ糖修飾配列と結合した保存されたアスパラギンである。いくつかのWntタンパク質はまた、例えばパルミトイル基により脂質が修飾される(Wilkert et al., 2003, Nature 423(6938):448-52)。例示的なWntタンパク質及び哺乳類で発現されるその対応の遺伝子として、特にWnt 1、Wnt 2、Wnt 2B、Wnt 3、Wnt 3A、Wnt 4、Wnt 4B、Wnt 5A、Wnt 5B、Wnt 6、Wnt 7A、Wnt 7B、Wnt 8A、Wnt 8B、Wnt 9A、Wnt 9B、Wnt 10A、Wnt 11及びWnt 16などがある。Wnt 12、Wnt 13、Wnt 14及びWnt 15などのWntの同定された他の形態は、Wnt 1〜11及び16について記載されるタンパク質の範囲内であると考えられる。各哺乳類Wntタンパク質のタンパク質及びアミノ酸配列はSwissPro及びGenbank(NCBI)などのデータベースで入手可能である。米国公開第2004/0248803号、及び本願と同日出願に係る「Compositions and Methods Comprising Wnt Proteins to Promote Repair of Damaged Tissue」を発明の名称とする米国出願、及び「Compositions and Methods for Promoting Hair Growth」を発明の名称とする米国出願(これらの開示は参照によりその全体を本明細書に組み入れる)も参照されたい。
【0044】
Wntタンパク質の単離及び同定に関する様々な技術が当該分野で公知である。例えば参照によりその全体を本明細書に組み入れる米国公開第2004/0248803号を参照されたい。
【0045】
一部の実施形態では、Wntタンパク質は少なくともWnt5a、Wnt7a及びWnt11を含む。本明細書で使用されるWnt5aは、上述の機能活性を有し、NCBI寄託番号AAH74783(gI:50959709)又はAAA16842(gI:348918)中のアミノ酸配列を含むヒトWntタンパク質に類似する配列を含むWntタンパク質を指す(Danielson et al., 1995, J. Biol. Chem. 270(52):31225-34も参照されたい)。Wnt7aは、上記のWntタンパク質の機能特性を有し、NCBI寄託番号BAA82509(gI:5509901); AAC51319.1(GI:2105100); 及びO00755(gI:2501663)中のアミノ酸配列を含むヒトWntタンパク質に類似した配列を含むWntタンパク質を指す(Ikegawa et al., 1996, Cytogenet Cell Genet. 74(1-2):149-52; Bui et al., 1997, Gene 189(1):25-9も参照されたい)。Wnt11は上記の機能活性を有し、NCBI寄託番号BAB72099(gI:17026012); CAA74159(gI:3850708);及びCAA73223.1(gI:3850706)中のアミノ酸配列を含むヒトWntタンパク質に類似した配列を含むWntタンパク質を指す(Kirikoshi et al., 2001, Int. J. Mol. Med. 8(6):651-6); Lako et al., 1998, Gene 219(1-2):101-10も参照されたい)。本明細書中、特異的Wntタンパク質の関連で使用される「類似した配列」とは、参照配列と比較したとき、少なくとも約80%以上、少なくとも約90%以上、少なくとも約95%以上、又は少なくとも98%以上のアミノ酸配列の同一性を指す。例えば、ヒトWnt7aはミューリンWnt7aに対して約97%のアミノ酸同一性を示すが、ヒトWnt7aのアミノ酸配列はヒトWnt5aに対して約64%のアミノ酸同一性を示す(Bui et al.,前掲)。
【0046】
三次元組織による様々な増殖因子及び/又はWntタンパク質の発現及び/又は分泌は、目的の因子を異なるレベルで放出する細胞を組み込むことによってモジュレートすることができる。例えば、血管平滑筋細胞はヒト皮膚繊維芽細胞よりも実質的に多くのVEFGを産生することが知られている。繊維芽細胞の代わりに又はこれに加えて血管平滑筋細胞を用いることによって、三次元組織によるVEGFの発現及び/又は分泌をモジュレートすることができる。
【0047】
遺伝子操作された細胞
遺伝子操作された三次元組織は、その開示を参照により全体として本明細書に組み入れる米国特許第5,785,964号に記載されるように調製することができる。遺伝子操作された組織は、増殖因子及び/又はWntタンパク質をin vivoで持続放出するための遺伝子送達ビヒクルとして働くことができる。例えば、特定の実施形態では、間質細胞などの細胞は、操作された細胞にとって外来の又は内在の遺伝子産物を発現するように操作することができる。有効に遺伝子操作できる間質細胞として、これに限定されるものではないが、繊維芽細胞(胎児、新生児又は成人起源)、平滑筋細胞、心筋細胞、幹細胞又は始原細胞、及び疎性結合組織でみられる他の細胞(内皮細胞、マクロファージ、単球、脂肪細胞、周細胞など)、並びに骨髄で見られる細網細胞などがある。様々な実施形態では、幹細胞又は始原細胞は、外来遺伝子産物又は内在性遺伝子産物を発現するように操作することができ、単独で又は間質細胞と組合せて三次元足場で培養することができる。
【0048】
細胞及び組織は、広範な機能を与えることができる望ましい遺伝子産物を発現するように操作することができ、該機能として、これに限定されるものではないが、in vivoで移植したときに組織治癒を促進するための遺伝子操作された細胞及び組織の機能増強などがある。所望の遺伝子産物は、酵素、ホルモン、サイトカイン、調節タンパク質(転写因子又はDNA結合タンパク質など)、構造タンパク質(細胞表面タンパク質など)といったペプチド又はタンパク質であることができるし、或いは、所望の遺伝子産物は、リボソーム又はアンチセンス分子などの核酸であってもよい。一部の実施形態では、所望の遺伝子産物は、上述されるように様々な細胞の分化及び増殖において役割を果たす1種以上のWntタンパク質である(例えばMiller, J.R., 2001, Genome Biology 3:3001.1-3001.15参照)。例えば、組換え操作された細胞は、特定のWnt因子(これに限定されるものではないがWnt5a、Wnt7a、及びWnt11などがある)を発現するように作製することができる。
【0049】
一部の実施形態では、所望の遺伝子産物は、遺伝子操作された細胞の特性を増強することができ、該遺伝子産物として、これに限定されるものではないが、細胞増殖を増強する遺伝子産物、例えば血管内皮増殖因子(VEGF)、肝細胞増殖因子(HGF)、繊維芽細胞増殖因子(FGF)、血小板由来増殖因子(PDGF)、外皮増殖因子(EGF)、トランスフォーミング増殖因子(TGF)、結合組織増殖因子(CTGF)及びWnt因子などがある。他の実施形態では、前記細胞及び組織は細胞の不死化をもたらす所望の遺伝子産物(例えば癌遺伝子又はテロメラーゼ)を発現するように遺伝子操作することができる。
【0050】
他の実施形態では、前記細胞及び組織は、in vitroでの保護機能(凍結保存)及び抗乾燥特性などを与える遺伝子産物、例えばトレハロース(米国特許第4,891,319号; 5,290,765号; 5,693,788号)を発現するように遺伝子操作することができる。細胞及び組織はまた、in vivoでの保護機能を与える遺伝子産物、例えば炎症反応から細胞を保護するもの及び、宿主免疫系による拒絶に対して保護するもの(HLAエピトープ、MHC対立遺伝子、免疫グロブリン及びレセプターエピトープ、細胞接着分子のエピトープ、サイトカイン並びにケモカインなど)、を発現するように操作することもできる。
【0051】
所望の遺伝子産物が本発明の細胞及び組織によって発現されるように操作することができる多くの手法がある。所望の遺伝子産物が構成的に又は組織特異的若しくは刺激特異的な様式で発現されるように操作することができる。所望の遺伝子産物をコードするヌクレオチド配列は、例えば構成的に活性である、組織特異的である、又は1種以上の特定の刺激が存在するときに誘導されるプロモーター要素と機能的に連結することができる。
【0052】
一部の実施形態では、操作された遺伝子産物をコードするヌクレオチド配列は、剪断又は半径方向応力に応答性である調節プロモーター要素と機能的に連結される。これらの実施形態では、プロモーター要素は血流を通過すること(剪断)、及び心臓又は血管を通じた血液の拍動流の結果として誘導される半径方向応力によって活性化される。
【0053】
適当な調節プロモーター要素の例として、これに限定されるものではないが、テトラサイクリン応答性要素、ニコチン応答性要素、インシュリン応答性要素、グルコース応答性要素、インターフェロン応答性要素、グルココルチコイド応答性要素、エストロゲン/プロゲステロン応答性要素、レチノイン酸応答性要素、ウイルス性転写活性化因子、SV40アデノウイルスの早期又は後期プロモーター、lac系、trp系、TAC系、TRC系、3-ホスホグリセリン酸のプロモーター及び酸性ホスファターゼのプロモーターなどがある。さらに、天然のプロモーター及びエンハンサーの分子体系に類似した転写因子結合部位及びホルモン応答性要素の多量体を含む人工の応答要素を構築することができる(例えばHerr and Clarke, 1986, J Cell 45(3): 461-70参照)。このような人工の複合体調節領域は、所望のあらゆるシグナルに応答し、かつ選択されたプロモーター/エンハンサー結合部位に応じて特定の細胞種で発現されるように設計することができる。
【0054】
一部の実施形態では、操作された三次元組織は遺伝子操作された細胞を含み、虚血組織の血管新生及び治癒に関与する幹細胞及び/又は始原細胞の増殖及び分化を刺激する天然分泌型の因子を産生する。
【0055】
虚血組織の治癒を促進するための培養三次元組織の使用
本明細書に記載する三次元組織には、虚血組織の治癒を促進する上での用途がある。虚血組織の治癒を促進する三次元組織の能力は、一部には虚血の重篤度に依存する。当業者には理解されるであろうが、虚血の重得度は、一部には、組織が酸欠状態であった時間の長さに依存する。
【0056】
理論に拘束されず、虚血組織への三次元組織の適用は、虚血組織の治癒に関与する様々な生物学的活性を促進する。そのような活性は、とりわけ虚血組織のリモデリングの低減又は予防である。本明細書において「リモデリング」は、以下の1つ以上の存在を指す:(1)虚血組織の進行的な薄化、(2)虚血組織に分布する血管数の減少、並びに/又は(3)虚血組織に分布する1以上の血管の遮断、及び虚血組織が筋肉組織を含む場合、(4)筋肉組織の収縮性の減少。リモデリングを治療しないと、典型的には虚血組織を減退させ、その結果、もはやこれに対応する健康な組織と同じレベルで働くことができない。
【0057】
一部の実施形態では、虚血組織は心筋組織を含む。実施例1で説明されるように、イヌの心臓の虚血領域に培養三次元組織の1片以上を適用すると、心室の性能が改善し、虚血領域への血液供給が増加した。
【0058】
一部の実施形態では、虚血組織は骨格筋組織、脳組織(例えば脳卒中又は脳を覆う動脈及び静脈の形成異常(すなわちAV形成異常)によって影響を受けたもの)、腎臓、肝臓、消化管の器官、萎縮症を患う筋肉組織(神経に基づく筋肉萎縮など)及び肺組織を含む。別の実施形態では、虚血組織は哺乳類(ヒトなど)に存在する。
【0059】
他の実施形態では、虚血組織として、これに限定されるものではないが組織創傷(皮膚潰瘍及び火傷など)などがある。
【0060】
他の実施形態では、虚血組織は皮膚創傷(皮膚の潰瘍及び火傷など)を含まない。
【0061】
一部の実施形態では、虚血組織は人工的に作り出すことができる、すなわち外科処置の結果として作り出すことができる。
【0062】
一部の実施形態では、虚血組織は心臓組織である。心臓血管虚血は一般的には冠動脈疾患の直接的な結果であり、通常は冠状動脈を閉塞又は遮断することができる血栓の形成をもたらし、その結果、下流の心筋が酸欠となる、冠状動脈におけるアテローム斑の破裂によって生じる。虚血が長引くと、細胞死又は細胞壊死が生じることがあり、死組織の領域は一般的に梗塞と呼ばれる。
【0063】
本明細書に記載の方法によって治療する候補は、心筋虚血と診断されているが、うっ血性心不全とは診断されていない個人であることができる。心筋虚血に関連する疾患として、安定狭心症、不安定狭心症及び心筋梗塞などがある。一部の実施形態では、本明細書に記載する方法の候補は、安定狭心症及び可逆性心筋虚血を患う患者である。安定狭心症は、激しい活動又はストレス時に生じる圧迫性の胸部痛を特徴とし、安静又は舌下ニトログリセリンによって緩和される。安定狭心症の患者の冠動脈造影は、通常、少なくとも1つの冠状動脈の50〜70%閉塞を表す。安定狭心症は、通常、臨床症状及びECG変化の評価によって診断される。安定狭心症の患者は一過的なSTセグメントの異常がある場合があるが、安定狭心症に関連するこれらの変化の感度及び特異性は低い。
【0064】
一部の実施形態では、本明細書に記載の方法の候補は、不安定狭心症及び可逆性心筋虚血に罹患した患者である。不安定狭心症は、舌下ニトログリセリンによって緩和される安静時の圧迫性胸部痛を特徴とする。狭心症の胸部痛は通常は舌下ニトログリセリンによって緩和され、この痛みは通常30分以内に収まる。不安定狭心症の重篤度には3つのクラスがある:クラスI、新たに開始した、重篤な、又は加速された狭心症;クラスII、重篤度、持続期間、又はニトログリセリンの必要性の増加を特徴とする安静時の亜急性狭心症;及びクラスIII、安静時の急性狭心症として特徴付けられる。不安定狭心症は、安定狭心症と急性心筋梗塞(AMI)との間の臨床状態を表し、主に、アテローム性動脈硬化症、冠動脈攣縮又は出血の重篤度及び範囲が、その後の血栓性閉塞を伴う非閉塞プラークに進行することに起因すると考えられている。不安定狭心症を患う患者の冠動脈造影は、通常は、少なくとも1つの冠状動脈の90%以上の閉塞を表し、その結果、基線となる心筋酸素要求に見合う酸素供給の不能を生じる。安定アトローム斑の緩やかな増殖、又はその後の塞栓形成を伴う不安定アテローム斑の破裂は、不安定狭心症の原因となり得る。これらの原因はいずれも冠状動脈の臨床的な縮小を生じる。不安定狭心症は、通常はアテローム斑の破裂、血小板活性化及び血栓形成に関連している。不安定狭心症は、通常は、臨床症状、ECG変化及び心臓マーカーの変化によって診断される。
【0065】
一部の実施形態では、本明細書に記載の方法の候補は、急性心筋梗塞の患者である。心筋梗塞は、30分より長い圧迫性胸部痛の持続を特徴とし、これはECG Q波によって診断することができる。AMIに罹った患者の大部分は冠動脈疾患を有し、25%ものAMI症例は「無症状」であるか又は無症候性梗塞である。AMIは通常は臨床症状、ECG変化及び心臓タンパク質、とりわけ心臓トロポニン、クレアチンキナーゼ-MB及びミオグロビンの評価によって診断される。
【0066】
一部の実施形態では、本明細書に記載の方法の候補は、冠動脈バイパスグラフト(CABG)術を受ける左心室不全及び可逆性心筋虚血を患い、少なくとも1つの移植可能な環状血管と、バイパス又は経皮冠動脈インターベンションに適さない少なくとも1つの環状血管とを有するヒト患者である。
【0067】
下記により詳細に記載するように、上記の病状の1つを患うと診断された個人の心臓の壁を含む1以上の組織は、培養三次元細胞(心外膜、心筋及び心内膜など)と接触させることができる。
【0068】
虚血組織の治癒を判定するのに有用なアッセイ
一部の実施形態では、培養三次元組織の虚血組織への適用は、レーザードップラー造影を用いて測定する際に、虚血組織に存在する血管の数を増加する(例えばNewton et al., 2002, J Foot Ankle Surg, 41(4):233-7参照)。一部の実施形態では、血管の数は1%、2%、5%; 他の実施形態では、血管の数は10%、15%、20%、さらに25%、30%、40%、50%;一部の実施形態では、それ以上に増大し、これらの値の中間もある。
【0069】
一部の実施形態では、培養三次元組織の虚血心臓組織への適用は駆出率を増加する。健康な心臓では、駆出率は約65〜95%である。虚血組織を含む心臓では、駆出率は、一部の実施形態において、約20〜40%である。したがって、一部の実施形態では、培養三次元組織による治療は、治療前の駆出率に比較して駆出率における0.5〜1%の絶対的改善(absolute improvement)を生じる。他の実施形態では、培養三次元組織による治療は1%より大きい駆出率の絶対的改善を生じる。一部の実施形態では、治療は、治療前の駆出率に比較して、1.5%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、さらに9%又は10%の駆出率における絶対的改善を生じる。例えば、治療前の駆出率が40%であった場合、これらの実施形態では41%〜59%の治療後駆出率が観察される。さらに別の実施形態では、培養三次元組織による治療は、治療前の駆出率に比較して10%を超える駆出率の改善をもたらす。
【0070】
一部の実施形態では、培養三次元組織の虚血心臓組織への適用は、心拍出量(CO)、左心室拡張末期容積指数(LVEDVI)、左心室収縮末期容積指数(LVESVI)及び収縮膜肥厚(SWT)の1つ以上を増加する。これらのパラメーターは本分野で標準的な手順、例えば核スキャン(放射性核種心室造影(RNV)又はマルチゲート収集法 (MUGA)など)、及びX線によって測定される。
【0071】
一部の実施形態では、培養三次元組織の虚血心臓組織への適用は、心臓損傷の指標として臨床的に使用される1種以上のタンパク質マーカーの血中レベルの明白な改善を生じる。クレアチンキナーゼ(CK)、血清グルタミン酸オキサロ酢酸トランスアミナーゼ(SGOT)、乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)(例えば米国公開第2005/0142613号参照)、トロポニンI及びトロポニンTなどが心筋損傷を診断するために使用することができる(例えば米国公開第2005/0021234号参照)、さらに別の実施形態では、アルブミンのN-末端に影響を与える変化を測定することができる(参照によりその開示を全体として本明細書に組み入れる例えば米国公開第2005/0142613号、2005/0021234号及び2005/0004485号参照)。
【0072】
本明細書に記載される方法及び組成物は従来の治療(様々な医薬品の投与及び外科的処置の施行など)と組み合わせて使用することができる。例えば、一部の実施形態では、培養三次元組織は心不全を治療するために使用される薬物の1種以上と共に投与される。本明細書に記載される方法における使用に適当な薬物として、アンギオテンシン変換酵素(ACE)阻害剤(例えば、エナラプリル(Vasotec)、リシノプリル (Prinivil, Zestril)及びカプトプリル(Capoten))、アンギオテンシンII(A-II)受容体遮断薬(例えば、ロサルタン(Cozaar)及びバルサルタン(Diovan))、利尿剤(例えばブメタニド(Bumex)、フロセミド(Lasix, Fumide)、及びスピロノラクトン(Aldactone))、ジゴキシン(Lanoxin)、β遮断薬、及びネシリチド(Natrecor)などが使用できる。
【0073】
他の実施形態では、培養三次元組織は外科処置(血管形成術、一枝CABG及び/又は多枝CABGなど)の間に投与することができる。
【0074】
さらに、培養三次元組織は心臓疾患を治療するために使用される治療用機器(心臓ポンプ、血管内ステント、血管内ステントグラフト、左心室補助循環装置(LVAD)、両心室心臓ペースメーカー、人工心臓及び強化体外カウンターパルセーション(EECP)など)と共に使用することができる。
【0075】
培養三次元組織の投与及び用量
培養三次元組織を虚血組織に接着及び/又は接触させるために様々な方法が使用できる。接着のための適切な手段として、これに限定されるものではないが、三次元組織と虚血組織との間の直接的な付着、生物学的接着剤、合成接着剤、レーザー及びヒドロゲルなどがある。多くの止血剤及び密封剤が市販されており、これに限定されるものではないが「SURGICAL」(酸化セルロース)、「ACTIFOAM」(コラーゲン)、「FIBRX」(光活性化フィブリン密封剤)、「BOREAL」(フィブリン密封剤)、「FIBROCAPS」(乾燥粉末フィブリン密封剤)、多糖ポリマーp-G1 cNAc (「SYVEC」パッチ; Marine Polymer Technologies)、Polymer 27CK (Protein Polymer Tech.)などがある。手術室の患者の血液120mlから1時間及び1時間半で自己由来のフィブリン密封剤を製造する医療用機器及び装置(例えばVivostat System)も公知である。
【0076】
一部の実施形態では、培養三次元組織は細胞付着により虚血組織に直接接着される。例えば、一部の実施形態では、三次元組織は心臓の組織の1つ以上(心外膜、心筋及び心内膜など)と接着させることができる。三次元組織を心臓の心外膜又は心筋に接着させるとき、典型的には三次元組織の接着前に心包(すなわち心膜)が開口されるか又はこれに穴が開けられる。他の実施形態では、例えば三次元組織を心内膜に接着させるとき、カテーテル又はこれに類似する機器が心臓の心室内に挿入され、該心室の壁に三次元組織を接着させることができる。
【0077】
一部の実施形態では、三次元組織は外科用接着剤を用いて虚血組織と接着させることができる。本明細書に記載する方法及び組成物における使用に適当な外科用接着剤として、フィブリン接着剤などの生物学的接着剤などがある。フィブリン接着剤組成物を用いた用途の詳細については、例えば米国特許出願第10/851,938号、及びその中で開示される様々な参考文献(その開示を参照により全体として本明細書に組み入れる)を参照されたい。
【0078】
一部の実施形態では、三次元組織を虚血組織に接着させるためにレーザーを用いることができる。一例として、色素レーザーを心臓、三次元組織又はその両者に適用して、適当な波長のレーザーを用いて活性化することにより、培養三次元組織を心臓に付着させることができる。レーザーを用いた様々な用途の議論については、例えば、その開示を参照により全体として本明細書に組み入れる米国特許出願第10/851,938号を参照されたい。
【0079】
一部の実施形態では、培養三次元細胞を虚血細胞に接着させるためにヒドロゲルを使用することができる。多くの天然及び合成のポリマー材料がヒドロゲル組成物を生じさせるために使用することができる。例えば、多糖類(例えばアルギナート)は、二価陽イオン類、ポリホスファゼン類、又はポリアクリレート類とイオン的に又は紫外線ポリマー化によって架橋できる(例えば米国特許第5,709,854号参照)。あるいは、2-オクチルシアノアクリレート(「DERMABOND」, Ethicon, Inc., Somerville, NJ)などの合成の外科用接着剤を三次元組織を虚血組織に接着させるために使用することができる。
【0080】
一部の実施形態では、培養三次元組織は、米国特許出願第10/851,938号(その開示を参照により全体として本明細書に組み入れる)に記載されるように、1以上の縫合糸を用いて虚血組織に接着させることができる。他の実施形態において、縫合糸は、本願との同日出願に係る「Three Dimensional Tissues and Uses Thereof」を発明の名称とする米国出願(その開示を参照により全体として本明細書に組み入れる)に記載されるように、培養三次元組織を含むことができる。
【0081】
培養三次元組織は、虚血組織の組織治癒を促進する及び/又は虚血組織に血管を新生させる(revascularize)のに効果的な量で使用される。培養三次元組織の投与量は、一部には、虚血組織の重篤度、培養三次元組織が注射可能な組成物として使用されるか否か(例えばその開示を参照により全体として本明細書に組み入れる、本願と同日出願に係る「Cultured Three Dimensional Tissues and Uses Thereof」を発明の名称とする米国出願を参照)、存在する様々な増殖因子及び/又はWntタンパク質の濃度、培養三次元組織を含む生細胞の数、虚血組織(例えば皮膚の表面上又は器官に存在する虚血組織)への到達の容易さ、及び/又は治療する予定の組織又は器官に左右される。有効な用量の決定は、十分に当業者の能力の範囲内である。適当な動物モデル(実施例1に記載されるイヌ科動物モデルなど)が特定の組織に対する用量の有効性を試験するために使用することができる。
【0082】
本明細書で使用される「用量」とは、虚血組織に適用される培養三次元細胞の凝集片の数を指す。培養三次元組織の典型的な凝集片は約35cm2である。当業者に理解されるように、凝集片の絶対寸は、虚血組織の脈管形成を刺激する及び/又は虚血組織の治癒を促進するのに十分な細胞数を含む限り、変化し得る。したがって、本明細書に記載の方法における使用に適当な凝集片は15cm2〜50cm2の大きさであることができる。
【0083】
2以上の培養三次元組織の凝集片の適用は、本明細書に記載の方法によって治療可能な虚血組織の範囲を増加するために使用することができる。例えば、凝集組織の単一片を使用する実施形態では、治療可能な範囲は約2倍の大きさになる。培養三次元組織の3つの凝集片を使用する実施形態では、治療可能な範囲は約3倍の大きさになる。培養三次元細胞の4つの凝集片を使用する実施形態では、治療可能な範囲は約4倍の大きさになる。培養三次元細胞の5つの凝集片を使用する実施形態では、治療可能な範囲は約5倍、すなわち35cm2〜175cm2になる。
【0084】
一部の実施形態では、培養三次元組織の1つの凝集片は、虚血組織の一領域と接着される。
【0085】
他の実施形態では、培養三次元組織の2つの凝集片が虚血組織の一領域と接着される。
【0086】
他の実施形態では、培養三次元組織の3つの凝集片が虚血組織の一領域と接着される。
【0087】
他の実施形態では、培養三次元組織の4つ、5つ又はそれ以上の凝集片が虚血組織の一領域と接着される。
【0088】
培養三次元組織の2以上の凝集片が投与される実施形態では、一部には虚血組織の重篤度、治療する予定の組織の種類、及び/又は虚血組織への到達の容易さに応じて、1つの片とその他の片との近接性を調整することができる。例えば、一部の実施形態では、三次元組織の培養片は、1つの片の1以上の端が第2の片の1以上の端と接触するように、互いに直接隣接した位置に配置ことができる。他の実施形態では、1つの片の端が他の片の端と接触しないように、片を虚血組織と接触させることができる。これらの実施形態では、患者が提示する解剖学的な状態及び/又は疾患の状態に基づいて、適当な間隔で片を互いに分離することができる。1つの片とその他の片の近接性の決定は、十分に当業者の能力の範囲内であり、必要に応じて適当な動物モデル(実施例に記載のイヌ科動物モデルなど)を用いて試験することができる。
【0089】
複数の培養三次元組織片を含む実施形態では、該片の一部又は全てを虚血組織を含む範囲に接着させることができる。他の実施形態では、前記片の1以上を虚血組織を含まない範囲に接着させることができる。例えば、一部の実施形態では、1つの片を虚血組織を含む範囲に接着させ、第2の片を虚血組織を含まない隣接範囲に接着させることができる。これらの実施形態では、前記隣接範囲は損傷した又は欠損のある組織を含むことができる。本明細書で使用する「損傷した」又は「欠損のある」組織は、内的な及び/又は外的な事象(これに限定されるものではないが、虚血を起こす事象を含む)によって生じ得る組織の異常な状態を指す。虚血の、損傷した又は欠損のある組織を生じ得る他の事象として、疾患、手術、環境曝露、損傷、加齢、及び/又はそれらの組合せなどがある。
【0090】
複数の培養三次元組織片を含む実施形態では、該片は虚血組織に一斉に又は同時に接着させることができる。
【0091】
一部の実施形態では、前記片は長期にわたって投与することができる。投与の頻度及び間隔は、一部には、虚血組織の重篤度、培養三次元組織を注射可能な組成物として使用するか否か(例えばその開示を参照により全体として本明細書に組み入れる、本願と同日出願に係る「Cultured Three Dimensional Tissues and Uses Thereof」を発明の名称とする米国出願を参照)、存在する様々な増殖因子及び/又はWntタンパク質の濃度、培養三次元組織を含む生細胞の数、虚血組織(例えば皮膚の表面上又は器官に存在する虚血組織)への到達の容易さ、及び/又は治療する予定の組織又は器官に左右される。例えば、虚血組織が皮膚の創傷に存在する場合、週間隔又は月間隔で、2回、3回、4回、5回、6回、7回、8回又はそれ以上で培養三次元組織を適用することができる。投与の頻度及び継続的な適用の間隔の決定は十分に当業者の能力の範囲内であり、必要に応じて適当な動物モデル(実施例1に記載のイヌ科動物モデルなど)を用いて試験することができる。
【0092】
一部の実施形態では、培養三次元組織は、本願と同日出願に係る「Cultured Three Dimensional Tissues and Uses Thereof」を発明の名称とする米国出願に記載されるように、注射可能な組成物として投与することができる。虚血組織を治療するための注射可能組成物の投与及び有効量に関する手引きは、その開示を参照により全体として本明細書に組み入れる、本願と同日出願に係る「Cultured Three Dimensional Tissues and Uses Thereof」を発明の名称とする米国出願中で提供される。
【0093】
本出願において引用された全ての文献及びそのような資料(これに限定されるものではないが特許、特許出願、記事、本及び論文を含む)は、かかる文献及び資料の形式に関わらず、目的に応じてその全体を参照により明確に組み入れるものとする。組み込まれた文献及びそのような資料の1つ以上が本出願と異なるか又は抵触する場合(これに限定されるものではないが、定義した用語、表現、記載される技術などを含む)、この出願が支配するものとする。
【0094】
この明細書中の全ての数値範囲は、その上限と下限を含むものとする。
【0095】
特に定義がない限り、本明細書で使用する全ての技術及び科学用語は、本発明が属する分野の当業者によって共通して理解されるものと同じ意味を有するものとする。特に言及されない限り、本発明で使用する又は企図する技術は、当業者に周知の標準的な技術である。材料、方法及び実施例は単に例示であって、限定するものではない。
【実施例】
【0096】
7.1 イヌの心臓調査における慢性虚血組織の治療
a 実験計画
培養した三次元組織、すなわちAngineraTM(DermagraftTMとも称する)はSmith & Nephew製であった。AngineraTMは、生体吸収性ポリグラクチンメッシュの足場(VicrylTM)上にヒト新生児皮膚繊維芽細胞を培養することによって作製された、滅菌の凍結保存されたヒト繊維芽細胞ベースの組織である。この工程は特化された増殖容器又はバイオリアクター内で行われる。組織増殖は細胞増殖に必要な栄養素を供給する細胞培地で支援される。AngineraTMを製造するために使用される閉鎖系のバイオリアクター系は、滅菌の、均一なかつ再現可能なヒト生組織の増殖のための制御環境を維持する。
【0097】
AngineraTMの製造に使用された皮膚繊維芽細胞は、慣用の環状切除術に由来するヒト新生児包皮組織から取得されたものである。AngineraTMの各ロットは、使用のための販売前にUSP無菌試験にかける。AngineraTMは貯蔵寿命を延長するために収集後-75℃で凍結保存される。解凍後、約60%の細胞は生存能力を維持し、増殖因子、基質タンパク質及びグリコサミノグリカンを分泌することができる。
【0098】
慢性的な虚血心臓組織を治療するAngineraTMの安全性及び有効性を評価するためにイヌ科動物調査を用いた。イヌ科動物調査からのデータの評価は、AngineraTMは全ての用量レベルで安全であることを示した。イヌ科動物調査は米国連邦規制基準のタイトル21、パート58に記載の食品医薬品局 医薬品安全性試験実施基準(GLP)に従った。
【0099】
最初に、左冠状動脈前下行枝(LAD)の腹側心室間枝にアメロイド圧迫器を外科的に設置することにより、慢性心筋虚血を40個体の動物(5個体のオス及び5個体のメス雑種犬の4群)で誘導した。アメロイド圧迫器の外科的設置後約30日(±2日)目に、動物は4種の治療のうちの1つを受けた:第1群、擬似手術処置;第2群、非生存AngineraTMの1ユニットの外科的適用;第3群、生存AngineraTMの1ユニットの外科的適用;及び第4群、生存AngineraTMの3ユニットの外科的適用。本調査に使用したAngineraTMは、臨床用途用にSmith & Nephewによって販売されたDermagraftTMであった。試験を行った又はデータを分析した全ての調査員は、動物の治療の内容について可能な限り知らされなかった。各治療群に由来する性別あたり2個体の動物は30日(±1日)目に検死を行い、性別あたり3個体の動物は90日(±1日)目に検死を行った(表3を参照)。
【0100】
心電図及び直接動脈圧は外科処置の間継続的にモニターした。左側開胸術は第4肋骨と第5肋骨の間で行った。心臓を単離する前に、不整脈の制御を支援する必要があるときは、リドカインを静脈内に局所的に与えた(2mg/kg)。心臓を単離し、心膜ウェル(pericardial well)を構築した。左冠状動脈前下行枝(LAD)の腹側心室間枝を確認し、アメロイド圧迫器の設置のために単離した。適切なサイズのアミロイド圧迫器(Cardovascular Equipment Corporation, Wakefiled, Massachusetts, 2.0〜3.0 mm)をLADの近位部周辺に設置した。必要に応じかつ示されるように、あらゆる心室性不整脈を薬理作用物質、すなわちリドカイン、デキサメタゾン、ブレチリウムを用いて治療した。この調査計画は表3に示される。
【表3】

【0101】
安全性は臨床的所見、物理的及び視覚的(ophthalmic)調査、体重、体温、心臓のモニタリング(心電図(ECG)、動脈圧、心拍数及び左心室機能の心エコー検査による測定を含む)、臨床病理(血液学、凝固、血清生化学、トロポニンT及び尿検査を含む)、選択した器官及び組織の解剖学的病理及び組織病理を評価することによって判断した。30日目及び90日目の時点における全ての治療群からの心エコーデータをさらに評価した。最後に、心臓組織の個別分析を行った。
【0102】
心エコー図を-30日目(すなわち、手術の30日前;手術を0日目に行ったものとする)前の4週間の間、1日目の約8日前、及び屠殺/検死(30又は90日目)の約8日前に収集した。経胸腔安静時(trans-thoracic resting)及び負荷心エコー検査を、心エコーウィンドウ及び像を標準化するための方法を用いて行った。動物は可能な限り手で抑え、右横臥(右側を下)にした。心エコー評価は、動物が安定な心拍数となった後に行い、その後ドブタミンで誘導した心拍数の増加条件下で第2の心エコー調査を行った。ドブタミンは、5μg/kg/分での静脈内投与から開始し、心拍数が50%増加(±10%)するように50μg/kg/分の最大注入速度まで漸増した。動物ID番号、調査日、及び像を各調査のビデオ録画に割り付けた。全てのエコー調査はビデオテープに記録し、画像及びループをデジタル方式で取り込み、光学ディスクに保存した。短軸像はビデオテープに及びデジタル方式で光学ディスクに保存し、少なくとも2回の心臓周期を含ませた。壁肥厚として(cmで)測定されるセグメントの収縮性は、左心室の虚血領域と対照領域で定量した。これらの測定は3つの断面(基底面、乳頭中央面及び乳頭低面を含む)で行った。左心室寸法測定値は2つの二次元画像から得た。2室及び4室の長軸画像を左心室容積、駆出率、及び心拍出量の測定のために記録した。この測定のための数学的モデルは、改変型Simpson近似式(biplane)であった。心電図は心エコー検査と合わせて記録した。
【0103】
光学ディスクに保存した画像は、サンプルの素性について知らされていない少なくとも一人の有資格の心臓専門獣医(VetMed)による時系列での調査のために、DICOM画像形式でCDに保存した。
【0104】
全ての心エコーデータに対して3回測定を行い、3つの測定値の平均として報告した。
【0105】
心エコー検査は、アメロイド設置前の4週間の間に全ての動物で行った。心エコー図によって先天性心疾患又は異常な左心室機能と同定された全ての動物をこの調査から除いた。ドブタミン負荷心エコー検査は、基線比較を確立するために行った。
【0106】
心エコー検査は、手術及びLADへのアメロイド圧迫器の設置後、治療適用前の約8日間の間に、全ての動物に対して行った。局所的な左心室壁運動は、安静条件下及びドブタミン負荷条件下で評価した。貫壁性梗塞と確認された全ての動物をこの調査から除いた。
【0107】
心エコー検査は、検死の約8日間の間に全ての動物で行った。局所的な左心室壁運動は安静条件下及びドブタミン付加条件下で評価した。全体的な左心室機能は、左心室寸法測定値、左心室容積測定値、駆出率、及び心拍出量測定値の組合せを用いて評価した。
【0108】
非GLP心エコーの個別分析は、選択したパラメーターの統計的比較のために本来の心エコーデータに対して行った。治療群間の有意差(p<0.05)を判断するために一元配置分散分析(ANOVA)を用いた。群間及び群内の比較は、30日目及び90日目の時点の両者で、安静条件下対ドブタミン負荷条件下でのパラメーター変化に特に焦点を当てて行った。比較のために確認したパラメーターは以下の通りであった:
1.心拍出量(CO):COは安静条件から負荷条件で増加することが予想された。病変のある心臓は、ドブタミン負荷条件下でCOを増加する能力に障害があることを示すことが予想される。
【0109】
2.左心室駆出率(LVEF):LVEFも、安静条件から負荷条件で増加することが予想された。病変のある心臓は、ドブタミン負荷条件下でLVEFを増加する能力に障害があることを示すことが予想される。
【0110】
3.左心室拡張末期容積指数(LVEDVI):LVEDVIは安静条件から負荷条件で増加することが予想された。病変のある心臓は、ドブタミン負荷条件下でLVEDVIのより大きな増加を示すことが予想される。
【0111】
4.左心室収縮末期容積指数(LVESVI):LVESVIは安静条件から負荷条件で減少することが予想された。病変のある心臓は、ドブタミン負荷条件下でLVESVIを減少する能力に障害があることを示すことが予想される。
【0112】
5.収縮壁肥厚(SWT):SWT値は、安静条件から負荷条件で増加することが予想された。病変のある心臓は、ドブタミン負荷条件下でSWT値を増加する能力に障害があることを示すことが予想される。
【0113】
b.結果
基線アメロイド前エコー評価の間に、重大な左心室機能不全又は先天的心臓疾患を示した動物は観察されなかった。基線安静条件で、全ての動物は血液動態値及び壁寸に関して正常な種の範囲内であると評価された。これらのデータは、全ての群由来の動物について左心室機能の正常な範囲値内で調査が開始されたことを示す。さらに、治療前のアメロイド後左心室壁寸は、アミロイド前基線評価に比較して、基部(僧帽弁膜)、高乳頭及び低乳頭レベルでドブタミン負荷に対する鈍い応答を示し、これは左心室の腹側壁及び側壁における壁機能が縮小していることを示す。これらの治療前のアメロイド後エコー所見は、心室虚血に続発する緩やかな左心室拡張を生じたアメロイド実験モデルと一致し、これは、この調査に用いたアメロイドイヌ科動物モデルが心エコー検査によって測定可能な心室虚血の作製に成功したことを示す。
【0114】
この研究の生存段階の間に動物の死亡は観察されなかった。
【0115】
開胸術(アメロイドの配置)又は胸骨切開術(試験物質の配置)による心臓の曝露に関連した外科的処置に共通する臨床的所見(例えば膨張、紅斑、切開の開口、表皮剥脱など)が観察された。これらの臨床的所見の分布及び頻度は、1日目前で最終的な治療群分け間で類似した。1日目の治療の外科的投与後、臨床的所見は、第3群(単一のAngineraTM)に比較して、第1、2及び4群(それぞれ虚血のみ、非生存AngineraTM及び3片のAngineraTM)において外科的切開の開口がより多くの動物で観察されたことを除き、4つの治療群間で類似した。切開の開口の大部分は、胸骨切開術(治療の適用)後に観察されたが、各群につき1又は2個体の動物は、開胸術(アメロイドオクルダーの適用)後に切開の開口を有した。切開が開口した全ての動物は、切開が塞がるか又は粒状となり乾燥するまで抗生物質で治療した。
【0116】
視覚的調査、物理的調査、体重、体温、血液学、凝固、血液生化学検査、トロポニンT、尿検査、外科的血行動態/心臓血管モニタリング、及び各週の心臓血管モニタリングは全て正常な種の範囲内であると評価され、4つの動物群間で異ならなかった。総じて、これらのデータは評価されたパラメーターの範囲内で全ての用量レベルでAngineraTMの安全性を示した。ECGの定性的評価は、3個体の動物(2個体は第2群の動物、1個体は第3群の動物)を除き正常な心拍を示した。これらの3個体の動物で観察された不整脈又は伝導障害は、イヌにおける正常な異形、又は心筋表面に対する試験物質の外科的設置の一時的な残留効果のいずれかであると評価された。
【0117】
肉眼的(gross macroscopic)病状観察は、多数の心筋接着(心臓と心膜、及び心膜と肺又は胸壁との間)、並びにアメロイド周囲の心筋組織における結節性病変又は変色に制限された。4つの動物治療群間のこれらの観察結果の頻度又は強度に差異は検出されなかった。これらのタイプの肉眼的観察は、この実験プロトコールに利用した外科的処置(すなわち開胸術及び胸骨切開術)と一致する。試験物質の外科的設置に関連する顕微鏡病状観察として、心臓の心外膜表面と、心膜又は肺、及び限定的な漿液血液状浸出物との間の接着に相関する心外膜の広範囲にわたる繊維性肥厚を含んだ。これらの観察は、4種の治療群それぞれの全ての動物について記録し、外科的処置に関連し、試験物質による具体的な治療には関連しないようであった。このように、安全性の問題は組織学的結果から明らかであり、観察された組織応答は外科的処置を原因とする組織損傷と一致した。冠状動脈に対するアメロイドオクルダーの外科的設置の結果であることを示す顕微鏡的変化は、軽度のリンパ形質細胞及び組織球の浸潤、アメロイド化血管における様々な程度の動脈内膜過形成、及び心筋梗塞の範囲にまで及んだ。貫壁性梗塞は調査した組織サンプルのいずれにおいても観察されなかった。全体として、梗塞の発生率又は重篤度が30日目又は90日目の評価の時点で特定の治療と関連し得るという傾向はなかった。
【0118】
要約すると、第1の安全性評価項目(血液動態、心電図、心エコー、並びに臨床的及び全体的所見を含む)の評価は、全ての用量レベルで、いずれの時点においてもAngineraTMの安全性を立証した。
【0119】
心臓組織の更なる評価を新たな微小血管形成の証拠を確認するために行った。これらの所見により、成熟微小血管(細動脈、細静脈及び毛細管)の存在による新規微小血管形成に関する既に報告されかつ公開された知見を確認した(図1参照)。
【0120】
ヘマトキシリン及びエオシンで染色したイヌ科動物調査からの切片を、AngineraTM及び心外膜組織に関連する細胞浸潤を評価するためにさらに分析した。この分析はAngineraTM物質と直接接触した組織に対して行った。以下の観察がなされた:
1.心内膜下虚血損傷を示す瘢痕化が全ての群で見られた。
【0121】
2.第1群(虚血のみ)の標本は炎症のない最小の局所心膜肥厚を示した。
【0122】
3.第2群(非生存のAngineraTM)移植片は、最小の炎症及び局所中皮増殖と共に心膜肥厚のわずかな分散及び局所的な増加を有した。
【0123】
4.第3群(単回用量AngineraTM)及び第4群(3片のAngineraTM)は、パッチと心外膜との間で様々な量の適度な、局所的な、又は多発局所性の若しくはバンド様の炎症、並びに局所的な異物応答と共に繊維性心膜肥厚を有した。
【0124】
5.30日目よりも90日目で炎症の低減が見られた。
【0125】
6.免疫応答の明確な証拠は見られなかった。
【0126】
7.心筋が炎症したケースはなかった。
【0127】
8.脈管系の増加は心膜炎症の領域で局所的に見られた。
【0128】
これらの組織病理学的評価は、AngineraTMに対する免疫応答の証拠がないことを示す。4種全ての治療群で実験条件に関連する一過性の炎症応答が観察された。生存AngineraTM群では、心外膜及び心膜に特異的な微小血管系の増加を含む細胞応答の証拠が存在した。不整脈をもたらし得る心外膜又は心筋における治療に関連した繊維症の局在についての証拠はなかった。浸潤物はリンパ球細胞種というよりむしろマクロファージ細胞種の形態的外観を有した。
【0129】
GLP調査の一部として実施した検死前心エコー評価は、左心室容積の用量依存的な減少を示した。安静時拍動量及び心拍出量指数は第3群で減少したが、これらの緩やかな減少はドブタミン注射に応答して正常化した。安静時拍動量及び心拍出量指数は第4群において減少したが、左心室容積の減少は治療前の値に比較して著しく、基線値を超えて減少した。これらの変化は第3群に比較して第4群でより劇的であった。第4群における差異%に関して、ドブタミン注射に対する応答は基線値で見られるものに比較して実際により優れたものであった。拍動量及び心拍出量指数は、正常な基線値までは戻らなかったが、これに非常に近かった。
【0130】
30日検死前時点で、第3群の動物(単回分用量のAngineraTM)は90日検死前時点における第3群の動物、又は30日若しくは90日検死前時点における第4群の動物(3回用量のAngineraTM)よりも大きい左心室を有した。第4群の動物は、第1、第2又は第3群の動物よりも小さな左心室を有した。自身の代償機構が、第1群の未治療動物及び第2群の非活性AngineraTM治療動物においてみられるように、左心室のサイズ(容積)の減少を生じさせる。しかし、左心室容積が実際に第1、2又は3群の動物よりも第4群の動物において小さいという事実は、積極的な治療効果を示唆している。左心室のサイズ/容積の減少は、少なくとも一部には、拍動量指数(SVI)及び心拍出量指数(COI)の減少の原因である。これらの減少は、心拍出量指数及び拍動量指数の両者を、治療前の値に比較して改善された正常な基線値に類似した又はこれより優れた値まで戻した。治療前の値と比較して最も改善された機能のは、90日検死前時点における第4群の動物のものであった。
【0131】
GLP調査の一部としてのセグメントの壁寸及びセグメントの機能データは、治療群2、3及び4の適用は適用した場所で壁寸を増加したことを示唆した。また、これらの領域で軽度の心筋硬化効果が存在したことが示唆された。これは非活性の試験物質のみを受けた第2群のイヌにおいて明らかである。この群からのデータは、非活性の試験物質単独で、隣接した部分における全体的なセグメント機能の改善を引き起こすことができることも示唆する。これは単純に、他のセグメントにおける代償応答の明示であるかもしれない。第3群の動物は、セグメント機能における緩やかな増加、又は治療前の値を上回る変化がないことを示し、これはAngineraTMが安全であり、かつこの用量で虚血セグメントの機能をわずかに改善するが、セグメント機能を基線の正常値まで戻さないことを支持する。基部レベルでの第4群の測定値は、セグメントの機能を基線値付近まで増加し、治療前の値を上回る顕著な改善を示した。これは高乳頭筋レベル又は先端レベルでの、セグメントの壁肥厚がドブタミン注射に応答して大部分のセグメントにおいて緩やかに低下した場合ではない。緩やかに低下したセグメント機能を表すセグメントは、治療前の値又は治療に応答して正常化された値のいずれかを超えて有意に増加した収縮壁寸を有する。
【0132】
左心室EDVI値の個別の非GLP評価を2つの理由のために実施した。第1に、治療後のEDVI値における変化を具体的に理解するため;第2に、イヌ科動物モデルに関して30日アメロイド期間を評価するためである。公開された文献中で報告された調査は、イヌ科動物が環状循環を有意に膠原化(collaterization)できることを示唆している。これは、治療の利益を評価することを意図する機能データの解釈に制限を与えることができる。しかし、イヌ科動物モデルは公開された文献の範囲内で十分に確立されたモデルのままである。
【0133】
イヌ科動物モデルにおけるこれらの理解に照らして、EDVIパラメーターをより詳細に評価した。30日アメロイド期間の間のEDVIのパラメーターは、ドブタミン負荷条件下における治療前時点でのEDVI値によって示唆されるように(図2)、単一片のAngineraTMで治療した動物(第3群)、及び3片のAngineraTMで治療した動物(第4群)が、より重篤な病状を有する可能性があることを示唆しているようである。しかし、統計的に有意な差異は、これらの基線EDVI値間の比較においては認められず、これはおそらく大きな標準偏差及び小さいサンプルサイズに起因している。X軸凡例に対する見出し:正常=アメロイドオクルージョン前の時点(-30日目);PreTx=アメロイドオクルージョン、治療前の時点(0日目);30d PreNx=治療後30日目、検死(30日目)前、及び90d PreNx=治療後90日目、検死(90日目)前。
【0134】
既に記載したように、第1の心エコー評価で収集した本来の生データに対して第2評価を行った。第2評価は臨床的に関連のある心エコーパラメーターの具体的な統計比較に焦点を当てた。第1エコー評価の一般的な所見及び第2心エコー評価の特定の所見は互いを支持する。さらに、第2の心エコー評価において、心拍出量(CO)、左心室駆出率(LVEF)、左心室収縮末期容積指数(LVESVI)及び収縮壁肥厚(SWT)は、AngineraTMがイヌの慢性虚血心臓に対する積極的な生物学的効果を刺激するという結論を支持する。さらに、これらのデータは、生存AngineraTMによる治療が治療の30日後のイヌの慢性虚血心臓における心室の性能及び心室壁運動を改善するという結論を支持する。
【0135】
治療の30日後、非生存、単一及び複数片のAngineraTMパッチ群のイヌは、その基線である安静時心拍出量に比較して、ドブタミンによる心拍出量の有意な(P<0.05)改善を示した(それぞれ4273 ± 450、4238 ± 268、及び4144 ± 236 ml/分)。擬似手術群はドブタミン注射によってそのCOを有意に改善しなかった。しかし、90日目で、全てのイヌ(擬似手術した動物を含む)はドブタミンによりそのCOを改善した(図3及び4)。COは安静条件からストレス条件で増加することが予想された。病変のある心臓は、ドブタミン負荷条件下でCOを増加する能力に障害があることを示すことが予想される。これらのデータは、非生存、単一片、及び複数片のAngineraTMで治療したイヌが、30日目に対照の擬似群よりもドブタミンに対してよりよいCO応答を有することを示唆する。90日目までに、全ての群は互いに統計的に等しくなった。
【0136】
LVEFは、30及び90日目でCOと類似したドブタミンに対する負荷応答を示した(図5及び6)。特に治療日後に、非生存、単一及び複数のAngineraTMパッチ群のイヌは、その基線である安静時LVEFに比較してドブタミンによるLVEFの有意な(P<0.05)改善を示した。擬似手術群はドブタミン注射によってそのLVEFを有意に改善しなかった。しかし、90日目で、全てのイヌ(偽手術した動物を含む)はドブタミンによりそのLVEFを改善した。LVEFは安静条件からストレス条件で増加することが予想された。病変のある心臓はドブタミン負荷条件下でLVEFを増加する能力に障害があることを示すことが予想される。これらのデータは、非生存、単一の、及び複数のAngineraTMにより治療したイヌが対照の擬似群よりも30日目でより優れたドブタミンに対するLVEF応答を有することを示唆する。90日目までに、全ての群は互いに統計的に等しくなった。
【0137】
LVEDV指数は、全ての群において、安静条件及び負荷条件下で、30及び90日目に測定した。安静条件において、LVEDV指数は、30及び90日目に全ての群で類似した。しかし、負荷条件では、90日目に最大AngineraTM用量(第4群)においてLVEDVが有意に(P<0.05)減少した(図7及び8)。LVEDVIは安静条件からストレス条件で増加することが予想された。病変のある心臓はドブタミン負荷条件下でLVEDVIのより大きな増加を示すことが予想される。したがって、ドブタミン負荷条件下での90日目における第4群の動物結果が統計的に低いLVEDV指数値を有することは、最大の治療群(3片のAngineraTM)が虚血心臓に更なる利益を与えることを示唆する。
【0138】
LVEF及びCOからのデータに合致して、LVSV指数の値も、負荷条件で30日目に、生存又は非生存AngineraTMのいずれかによって基線と比較して有意に減少した。90日目で、擬似手術動物についてもLVSV指数に改善が見られた(図9及び10)。LVESV指数は安静条件からストレス条件で減少することが予想された。病変のある心臓は、ドブタミン負荷条件下でLVESVIを減少する能力に障害があることを示すことが予想される。これらのデータは、非生存、単一、及び複数のAngineraTM片で治療したイヌが、対照の擬似群よりも30日目により優れたドブタミンに対するLVESV指数を有することを示唆する。90日目までに、全ての群は互いに統計的に等しくなった。
【0139】
早期虚血期間の間、ドクタミンは無作為の4群全てでSWTを増加したが(P<0.05)、SWTにおける最大の有意な増加は3つのAngineraTMパッチが移植されたイヌで生じていたので、用量依存的な関係であると思われる(図11)。治療後30日及び90日で、慢性虚血期間内で、全てのデータポイントの線形回帰分析を介してプロットされるように(図12)、長期にわたってドブタミンに応答してSWTを増加することを示す漸進的な傾向がある。これは、未治療の虚血動物、並びにAngineraTMパッチで治療した動物の両者で生じているようである。SWT値は安静条件からストレス条件で増加することが予想された。病変のある心臓はドブタミン負荷条件下でSWT値を増加する能力に障害があることを示すことが予想される。これらのデータは、早期虚血期間(治療後30日)の間、ドブタミンが4種全ての治療群でSWTを増加する(P<0.05)ことを示唆するが、SWTの最大の有意な増加は3つのAngineraTMパッチが移植されたイヌにおいて生じているため、これは用量依存的な関係であると思われる。
【0140】
非生存又は生存AngineraTMパッチのいずれかの設置は、移植したパッチの数に関係なく、虚血の誘導後30日の時点で、ドブタミンによる負荷条件下で、LV駆出率の改善、心拍出量の増加、及びLV収縮容積指数の低減を生じた。慢性虚血動物(第1群)において、この応答は90日目においてのみ見られ、この時点で慢性虚血動物は、これらがAngineraTM治療を受けていない場合であってもドブタミンに対する応答を開始することができた。この所見は、イヌ科動物モデルを冠状動脈の膠原化のための固有の能力を有するモデルとして記載する公開された文献と一致する。
【0141】
結論として、GLP調査の一部としての第1エコー評価の一般的所見と、個別の非GLP心エコー分析の特定の所見は互いを支持する。さらに、個別の非GLP心エコー分析における、CO、LVEF、LVESVI及びSWTにおける変化は、AngineraTMによる治療が、イヌの慢性虚血心臓における心室の性能及び心室壁動作を治療の30日後に改善するという結論を支持する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
虚血組織を少なくとも第1の培養三次元組織と接触させることを含み、該培養三次元組織は虚血に関連する組織リモデリングを低減又は防止するのに十分な量である、方法。
【請求項2】
虚血組織を少なくとも第2の培養三次元組織とさらに接触させる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
分解性の若しくは非分解性の縫合糸、生物学的接着剤、合成接着剤、色素レーザー、ヒドロゲルを用いて、又は細胞接着によって前記培養三次元組織を虚血組織と接着させることをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記虚血組織は心臓組織である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
虚血は可逆性である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
培養三次元組織は治療した心臓の駆出率を改善するのに十分な量である、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
虚血心臓組織を第1の培養三次元組織及び少なくとも第2の培養三次元組織と接触させる、請求項4に記載の方法。
【請求項8】
培養三次元組織の有効量を病変した心臓の虚血領域と接触させることを含む、病変した心臓の駆出率を改善する方法。
【請求項9】
培養三次元組織の有効量を患者の心臓の虚血領域と接触させることを含む、左心室不全及び可逆性心筋虚血に罹患した患者の治療方法。
【請求項10】
虚血心臓組織を第1の培養三次元組織及び少なくとも第2の培養三次元組織と接触させる、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
培養三次元組織は繊維芽細胞を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
培養三次元組織は大動脈平滑筋細胞を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
培養三次元組織は心筋細胞を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
培養三次元組織は幹細胞を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
培養三次元組織は複数の細胞種を含み、該複数の細胞種はそれぞれ独立に繊維芽細胞、平滑筋細胞、心筋細胞、内皮細胞、間充織幹細胞、周細胞、マクロファージ、単球、白血球、形質細胞、マスト細胞及び/又は脂肪細胞から成る群より選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
培養三次元組織の細胞を、分解性材料を含む足場に接着させる、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
分解性材料はポリグリコール酸、ポリラクチド、ポリラクチド-コ-グリコール酸、腸線縫合糸、セルロース、ゼラチン、コラーゲン又はデキストランを含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
心臓虚血を患うヒト患者の治療方法であって、15cm2〜50cm2のサイズの少なくとも1つの培養三次元組織を該患者の心臓組織と接触させることを含み、ここで、該培養三次元組織は心臓の駆出率を0.5%以上増加させることができる、前記方法。
【請求項19】
15cm2〜50cm2のサイズの少なくとも第2の培養三次元組織を、前記患者の心臓組織に接触させることをさらに含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記患者は、治療前に、心臓疾患、冠動脈疾患、無症候性虚血、安定狭心症、不安定狭心症、急性心筋梗塞及び左心室不全から成る群より選択される疾患に罹患していると診断された患者である、請求項18に記載の方法。
【請求項21】
心臓虚血を患うヒト患者の治療方法であって、15cm2〜50cm2のサイズの少なくとも1つの培養三次元組織を該患者の心臓組織と接触させることを含み、ここで、該培養三次元組織は負荷時の心拍出量(CO)を安静時のCOより少なくとも約40%増加させることができる、前記方法。
【請求項22】
15cm2〜50cm2のサイズの少なくとも第2の培養三次元組織を、前記患者の心臓組織に接触させることをさらに含む、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記患者は、治療前に、心臓疾患、冠動脈疾患、無症候性虚血、安定狭心症、不安定狭心症、急性心筋梗塞及び左心室不全から成る群より選択される疾患に罹患していると診断された患者である、請求項21に記載の方法。
【請求項24】
心臓虚血を患うヒト患者の治療方法であって、15cm2〜50cm2のサイズの少なくとも1つの培養三次元組織を該患者の心臓組織と接触させることを含み、ここで、該培養三次元組織は負荷時の左心室駆出率(LVEF)を安静時のLVEFより少なくとも約15%増加させることができる、前記方法。
【請求項25】
15cm2〜50cm2のサイズの少なくとも第2の培養三次元組織を、前記患者の心臓組織に接触させることをさらに含む、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記患者は、治療前に、心臓疾患、冠動脈疾患、無症候性虚血、安定狭心症、不安定狭心症、急性心筋梗塞及び左心室不全から成る群より選択される疾患に罹患していると診断された患者である、請求項24に記載の方法。
【請求項27】
心臓虚血を患うヒト患者の治療方法であって、15cm2〜50cm2のサイズの少なくとも1つの培養三次元組織を該患者の心臓組織と接触させることを含み、ここで、該培養三次元組織は負荷時の左心室拡張末期容積(LVEDV)指数を安静時のLVEDV指数より約13%未満で増加させることができる、前記方法。
【請求項28】
15cm2〜50cm2のサイズの少なくとも第2の培養三次元組織を、前記患者の心臓組織に接触させることをさらに含む、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記患者は、治療前に、心臓疾患、冠動脈疾患、無症候性虚血、安定狭心症、不安定狭心症、急性心筋梗塞及び左心室不全から成る群より選択される疾患に罹患していると診断された患者である、請求項27に記載の方法。
【請求項30】
心臓虚血を患うヒト患者の治療方法であって、15cm2〜50cm2のサイズの少なくとも1つの培養三次元組織を該患者の心臓組織と接触させることを含み、ここで、該培養三次元組織は負荷時の左心室収縮末期容積(LVESV)指数を安静時のLVESV指数より少なくとも約47%減少させることができる、前記方法。
【請求項31】
15cm2〜50cm2のサイズの少なくとも第2の培養三次元組織を、前記患者の心臓組織に接触させることをさらに含む、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記患者は、治療前に、心臓疾患、冠動脈疾患、無症候性虚血、安定狭心症、不安定狭心症、急性心筋梗塞及び左心室不全から成る群より選択される疾患に罹患していると診断された患者である、請求項30に記載の方法。
【請求項33】
心臓虚血を患うヒト患者の治療方法であって、15cm2〜50cm2のサイズの少なくとも1つの培養三次元組織を該患者の心臓組織と接触させることを含み、ここで、該培養三次元組織は負荷時の収縮壁肥厚を安静時の収縮壁肥厚より少なくとも約60%増加させることができる、前記方法。
【請求項34】
15cm2〜50cm2のサイズの少なくとも第2の培養三次元組織を、前記患者の心臓組織に接触させることをさらに含む、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記患者は、治療前に、心臓疾患、冠動脈疾患、無症候性虚血、安定狭心症、不安定狭心症、急性心筋梗塞及び左心室不全から成る群より選択される疾患に罹患していると診断された患者である、請求項33に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2013−49693(P2013−49693A)
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−236424(P2012−236424)
【出願日】平成24年10月26日(2012.10.26)
【分割の表示】特願2008−516810(P2008−516810)の分割
【原出願日】平成17年8月30日(2005.8.30)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TEFLON
2.テフロン
【出願人】(505175375)セレゲン,インコーポレーテッド (6)
【出願人】(512174608)ジ アリゾナ ボード オブ リージェンツ フォー ザ ユニバーシティ オブ アリゾナ (2)
【Fターム(参考)】