説明

虚血障害後の組織のダメージを抑制するための方法および装置

治療剤の局所供給のための方法および装置が、虚血による心筋組織のダメージを抑制する。局所供給装置は、該虚血心筋組織に給する冠状動脈中への該治療剤の供給に使用される。1例では、心筋組織へとインシュリンを局所供給するための移植可能な医療装置は、ステントへと固定された生体相容性ポリマー中に、治療用量のインシュリンを包含する。該治療用量のインシュリンは治療用量にて該ステントから放出され、該心筋組織の虚血によるダメージを抑制するのに有効な投与期間に亘って放出される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2002年11月8日に出願された米国仮出願第60/425,096号への優先権を請求し、該仮出願はその全体を、本明細書中において援用される。
【背景技術】
【0002】
血管床への血流の減少または停止は、これにより危うくされる器官または組織への適切な灌流の即時の介入および復旧を要する種々の臨床現象を説明するものである。虚血障害の程度を異にする種々の組織が、抵抗し得る。しかしながら組織は、もし再灌流されない場合、不可逆的な障害および細胞の壊死へと進展することがある。
【0003】
心臓組織の減少した灌流(虚血)は結果的に、該組織が酸素およびエネルギーを遮断されてしまうので、該心臓が適切に機能する能力の喪失に繋がってしまう。永久的な障害は直接、その心筋が被る酸素欠乏の期間に相関する。ある領域の細胞への血流が正常な代謝活動を支えるに不充分である時に、虚血が起こる。急性心筋梗塞(MI)後の外科的および経皮的再血管形成術は、虚血である心筋組織を処置するに際し、非常に効果的である。急性MIの場合、主血流は冠状動脈の梗塞により止められ、その組織は側副動脈を通じてのみ灌流される。該虚血病状が更なる期間継続する場合、該虚血領域内の細胞へのダメージは、不可逆的な障害および細胞壊死へと進展する。再灌流とは、虚血組織への血流および酸素供給を再確立する作用を記述するのに使用される用語である。再灌流は、虚血領域内の細胞の将来の生存にとって、必須である。再灌流は、冠状動脈形成、血栓溶解薬剤の投与、冠状動脈のバイパス手術、または同様のものの内の1つを一般的に包含する血流再開通治療により、達成されることがある。
【0004】
虚血心筋のタイムリーな再灌流は、梗塞(部位)の大きさを減少させ、血管形成または血栓溶解治療を用いた早期の再灌流は、低減された心筋のダメージ、改善された心室機能、および急性MI患者の死亡率の減少という利益を与える。心筋の救出はしかしながら、冠状動脈の再梗塞や冠状動脈の残りの重篤な狭窄のような合併症により、台無しにされ得る。
【0005】
虚血心筋の再灌流は単独では、該心筋の完全な機能を回復させない。事実、再灌流自体が、該虚血現象を生き延びた多くの細胞へダメージを引き起こし得ることが、よく知られている。研究は、再灌流が、不可逆的に障害された心筋の死を加速させることがあり、危うかったが再灌流により救出され尚生存可能な筋細胞の生存を台無しにすることもあることを示している。これらいわゆる再灌流障害は、最大梗塞サイズの50%より大きい部分を占めることがある。数多くの細胞メカニズムが、虚血誘導性再灌流障害に応答可能であると信じられている。虚血後心筋を保護し、冠状動脈再灌流の利益を最大限にする補助的な処置の開発はこれゆえに、現代の心臓血管研究の主要なターゲットとなってきた。
【0006】
虚血または再灌流によるダメージを最小化して有することが可能な化合物は、重要な治療剤である。過去において、心筋梗塞および再灌流後の死亡率が、虚血後の心臓組織におけるエネルギー移動を最適化する薬剤の供給により更に改善され得ることが、実証されてきた。例えば、急性心筋梗塞および再灌流後の、グルコース、インシュリン、およびカリウムの組み合わせ(GIK)の動脈点滴が、障害されたが生存可能な心筋組織および減少した死亡率にインパクトを与えることが示されている。
【0007】
GIKの動脈点滴により作り出される高濃度のインシュリンが、冠状動脈拡張を改善するのと同様、虚血および虚血後の心筋の収縮および弛緩機能を改善することが、示されている。インシュリンの投与はまた、心筋貯蔵グリコーゲンを保ち、再貯蔵させる。GIKはまた、動脈の遊離脂肪酸(FFA)循環濃度および心筋のFFA取り込みを減少させる。高いFFA濃度は虚血心筋にとって毒性を有し、膜のダメージの増加、不整脈、および心機能低下に関わる。これゆえに、これらによりインシュリンが虚血障害を抑制できる多くのメカニズムが存在する。しかしながら、インシュリンが動脈点滴によって全身に供給される場合、該インシュリンは全身に亘ってグルコースおよびカリウム取り込みを刺激し、これゆえに、血中グルコースおよびカリウム濃度を安全でない濃度にまで減少させ、結果的に、低グルコース血症および低カリウム血症に至る。GIK治療はこれゆえに、全身的インシュリン投与の望ましくない全身的副作用を緩和する、インシュリンを伴うグルコースおよびカリウム投与を含んでおり、グルコースおよびカリウム濃度の注意深いモニタリングが求められる。
【0008】
一般的に、急性心筋梗塞後の組織のダメージを抑制するのに有用であったこれらの化合物は、動脈点滴による場合のように、全身に供給されてきた。これらの化合物の全身的な供給は、この全身的な供給により引き起こされる標的でない組織へのダメージを防ぐ保護剤の更なる投与の必要性、つまり、インシュリン点滴を伴うグルコースおよびカリウム供給の必要性を包含する重大な欠点を持つ。他の欠点は、連続投与および管理、虚血領域への最適下限での供給、患者の不快感、全身供給のために求められる高用量、ならびに該全身供給および高用量による副作用の必要性を包含する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、虚血による心筋組織のダメージを抑制する治療剤の局所的供給に関する。該治療剤は、該心筋組織へと局所的に、該心筋組織の虚血障害の抑制を達成するのに充分な投与期間に亘って、供給される。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の1態様によれば、虚血障害後の組織のダメージを抑制する方法は:
血管内の移植部位を同定すること;
この選択された移植部位へと向かう該血管中へ、心筋細胞の生存可能性を保つ薬剤を含有する拡張可能な医療装置を供給すること;
該医療装置を該移植部位に移植すること;ならびに
その周囲の心筋細胞の虚血障害を抑制するのに充分な投与期間に亘って、拡張可能な該医療装置から、該移植部位の組織および該移植部位の下流の血管へと、治療剤を局所的に供給すること
を包含する。
【0011】
本発明のもう1つ別の態様によれば、心筋梗塞および再灌流後の組織のダメージを抑制するために、インシュリンを心筋組織へと局所的に供給する方法は:
血管内の梗塞部位を同定すること;
該梗塞部位を処置して、再灌流を達成すること;ならびに
虚血障害を抑制するために、処置された該梗塞部位および該梗塞部位の下流またはこれらの近傍において、該組織へとインシュリンを局所的に供給すること
を包含する。
【0012】
本発明の更なる態様によれば、心筋組織へとインシュリンを局所的に供給するための移植可能な医療装置は、冠状動脈内に移植されるべき形状の移植可能な医療装置、および、移植可能な該医療装置に固定された生体相容性ポリマー中の治療用量のインシュリンを包含し、ここでこの治療用量のインシュリンは、該心筋組織の虚血障害を抑制するのに有効な投与期間に亘って、治療用量にて、該心筋組織へと放出される。
【0013】
本発明の更なる態様によれば、心筋組織へと治療剤を局所的に供給するための移植可能な医療装置は、冠状動脈内に移植されるべき形状の移植可能な医療装置、および、急性心筋梗塞後の虚血障害処置用の治療用量の治療剤を包含する。該治療剤は、該治療剤が該心筋組織の虚血障害を抑制するのに有効な投与期間に亘って、治療用量にて、該心筋組織へと放出されるよう移植可能な該医療装置へと固定されている。
【0014】
本発明のもう1つ別の態様によれば、心筋組織へとインシュリンを局所的に供給するためのステントは、血管内に移植されるべき形状の実質的に円筒形の拡張可能な装置本体、および、移植可能な該医療装置本体に固定された生体相容性ポリマー中の治療用量のインシュリンを包含する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明は、急性心筋梗塞を包含する急性虚血症候群の処置方法および装置に関する。本方法および装置は、心筋組織への治療剤の局所的供給のためのものであり、虚血障害においての壊死領域を限られたものにするためのものである。該治療剤の局所的供給は、全身的供給の必要性、および、標的でない組織へのダメージを防ぐための更なる保護剤の投与に関する必要性を回避するものである。
【0016】
第1に、以下の用語は、本明細書中で使用される場合、以下の意味を持つものとされる。
【0017】
用語「薬剤」および「治療剤」は互換的に使用され、生体の導管へと供給され、通常は有益である所望の効果を生み出す如何なる治療活性物質に関しても言及するものである。
【0018】
用語「マトリックス」および「生体相容性マトリックス」は互換的に使用され、被験体における移植時に、該マトリックスの拒絶反応を結果的にもたらすに充分な障害応答を惹起しない媒体または材料に言及するものである。該マトリックスは典型的には、それ自体では如何なる治療応答をも与えないが、該マトリックスは治療剤を含有もしくは取り囲んでもよく、および/または、該治療剤の体内への放出を調節するものであってもよい。マトリックスはまた単に、支持、構造の統一性、または構造障壁を提供するだけであってもよい媒体である。該マトリックスは、ポリマー性、非ポリマー性、疎水性、親水性、親油性、両親媒性、および同様のものであってもよい。該マトリックスは、生体再吸収性であってもまたは生体非再吸収性であってもよい。
【0019】
該用語「生体再吸収性」とは、本明細書中において定義された通りのマトリックスに関し、生理学的環境との相互作用時に、化学的または物理的プロセスにより壊され得る。該マトリックスは、浸食または溶解し得る。生体再吸収性マトリックスは、薬剤供給(ドラッグ・デリバリー)のような体内での一時的機能を提供し、その後数分間〜数年間の、好ましくは1年未満の期間に亘って、代謝可能もしくは排泄可能な成分へと分解もしくは壊され、一方同期間において、如何なる所要の構造的統一性をも維持させるものである。
【0020】
用語「虚血」とは、影響を被る組織への梗塞した血流から結果的に得られる、局所的な低酸素に関する。
【0021】
本明細書中において使用される場合、用語「虚血障害」とは、梗塞した血流による障害および該梗塞の除去により引き起こされる再灌流時の障害の両方に関する。
【0022】
用語「開口部」とは、貫通した開口部および陥没の両方を包含する。
【0023】
用語「医薬的に許容可能」とは、宿主もしくは患者に対して無毒であり、有益な薬剤の安定性を維持し、標的細胞もしくは標的組織への有益な該薬剤の供給を可能にするのに適切であるという特徴に関する。
【0024】
用語「ポリマー」とは、2つ以上の繰り返し単位、いわゆる単量体(モノマー)の化学的結合から形成される分子に関する。従って、該用語「ポリマー」内には、例えば、2量体(ダイマー)、3量体(トリマー)、およびオリゴマーが包含されてもよい。該ポリマーは、合成品、天然起源、または半合成品であってもよい。その好ましい形態では、該用語「ポリマー」は、約3,000より大きい、好ましくは約10,000より大きいMwを典型的に持つ分子に関し、Mwは約10,000,000未満、好ましくは約1,000,000未満、より好ましくは約200,000未満である。ポリマーの例は、ポリ乳酸(PLLAもしくはDLPLA)、ポリグリコール酸、ポリ乳酸+グリコール酸(PLGA)、ポリ乳酸+カプロラクトンのようなポリ−α−ヒドロキシ酸エステル;ポリ(ブロック−エチレンオキシド−ブロック−ラクチド+グリコリド)ポリマー(PEO−ブロック−PLGAおよびPEO−ブロック−PLGA−ブロック−PEO);ポリエチレングリコールおよびポリエチレンオキシド、ポリ(ブロック−エチレンオキシド−ブロック−プロピレンオキシド−ブロック−エチレンオキシド);ポリビニルピロリドン;ポリオルトエステル;ポリヒアルロン酸、ポリ(グルコース)、ポリアルギン酸、キチン、キトサン、キトサン誘導体、セルロース、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、シクロデキストリン、およびβ−シクロデキストリンスルホブチルエーテルのような置換シクロデキストリンのような多糖類および多糖類誘導体;ポリペプチド、および、ポリリジン、ポリグルタミン酸、アルブミンのようなタンパク質;ポリ無水物;ポリヒドロキシバレレート、ポリヒドロキシブチレート、および同様のもののようなポリヒドロキシアルコノエートを包含するが、これらに限定されない。
【0025】
方向を持った供給に関する用語「まず第1に(primarily)」とは、血管へと供給される有益な薬剤の全量の約50%より多い量に関する。
【0026】
用語「再狭窄」とは、ステント移植後の狭窄を包含することがある血管形成過程後の動脈の再狭窄に関する。
【0027】
心筋細胞の生存可能性を保つ薬剤を局所的に供給する方法
以前に梗塞した血管部位もしくはこの近傍において直接移植される場合、ステント形態の移植可能な医療装置は、この移植部位およびその下流の心筋組織へと治療剤を供給するのに使用され得る。この虚血障害部位における該治療剤の局所的供給は、血流が該虚血組織へ戻った際に起こることがある再灌流障害を包含する心筋細胞への虚血障害を抑制することにより、該細胞の生存可能性を改善させる。再灌流治療が血管形成により実施される場合、ステントはしばしば、その再開通した梗塞部位へと供給される。虚血障害処置用治療剤供給用薬剤供給(ドラッグ・デリバリー)ステントは、血管形成後、伝統的な様式で、その移植部位において移植され得る。再灌流治療後に該梗塞部位もしくはその近傍において移植される該治療剤供給用薬剤供給(ドラッグ・デリバリー)ステントは、該治療剤の全身的供給に伴う困難なく、再灌流障害の抑制を包含する虚血障害の抑制という利点を提供する。
【0028】
再灌流障害の代謝メカニズムは、完全には明らかではない。酸素の欠乏および代謝産物の蓄積が、組織におけるエネルギー移動を変えてしまう。再灌流後、グルコースの酸化は、収縮機能もそうであるが、抑制されたままである。加えて、再灌流によるダメージが、免疫応答により起きる。再灌流された虚血組織は、タンパク質分解酵素および酸化剤を放出する白血球を引き寄せ、今度はタンパク質分解酵素および酸化剤が、結果的な治癒および傷跡を伴う更なる炎症を促進する。これゆえに、炎症応答を鎮める抗炎症薬剤は、再灌流障害を抑制することができる。プロテアーゼ阻害剤、抗酸化剤、血管拡張剤、および他の心臓保護剤も、再灌流後の組織機能を改善することができる。急性でも非急性でも、梗塞の下流へと供給される場合の血管拡張剤は血管寸法を拡張することができ、これゆえに、虚血領域への血流を増加させることができる。
【0029】
急性心筋梗塞もしくは他の虚血障害後の虚血障害の抑制に特によく適した薬剤は、アデノシンおよびジピリダモールのような血管拡張剤;酸化窒素供与体;プロスタグランジン類およびこれらの誘導体;抗酸化剤;膜安定化剤;抗TNF化合物;デキサメタゾン、アスピリン、ピルフェニドン、メクロフェナミン酸、およびトラニラストを包含する抗炎症剤;βブロッカー、ACE阻害剤、およびカルシウムチャネルブロッカーを包含する高血圧用薬剤;2−CdAのような抗代謝剤;血管活性腸管ポリペプチド(VIP)を包含する血管活性物質;インシュリン;グリタゾン、Pparアゴニスト、およびメトフォルミンを包含するインシュリンに対する細胞感受性化剤;タンパク質キナーゼ;レステン−NGを包含するアンチセンス・オリゴヌクレオチド;シロリムス、エベロリムス、タクロリムス、エトポシド、およびミトキサントロンを包含する免疫抑制剤;抗血栓剤;チロフィバン、エプチフィバチド、およびabciximabを包含する抗血小板剤;VIP、下垂体アデニル酸シクラーゼ活性化ペプチド(PACAP)、アポA−Iミラノ、アムロジピン、ニコランジル、シロスタキソン、およびチエノピリジンを包含する心臓保護剤;抗白血球剤;COX−1およびCOX−2阻害剤を包含するシクロオキシゲナーゼ阻害剤;ならびに、オムニパトリラートを包含する、グルコース代謝を上昇させるペチドース阻害剤を包含するが、これらに限定されない。
【0030】
虚血障害処置用薬剤はまた、拡張可能な医療装置と組み合わせて、遺伝子治療に基づいたアプローチを使用して、供給されてもよい。遺伝子治療は、細胞もしくは組織への外来遺伝子の供給に関するものであり、これにより、標的細胞に該外来遺伝子産物を発現させるようにする。遺伝子は典型的には、機械的な方法もしくはベクターを媒介した方法によって、供給される。機械的な方法は、直接DNA微小注入、弾丸DNA粒子供給、リポゾームを媒介したトランスフェクション、および受容体を媒介した遺伝子導入を包含するが、これらに限定されない。ベクターを媒介した供給は典型的には、レトロウィルス、アデノウィルス、アデノ関連ウィルス、ヘルペスウィルス、ワクシニアウィルス、ピコルナウィルス、アルファウィルス、およびパポーバウィルスを包含するがこれらに限定されない組み換えウィルスゲノムを含むものである。
【0031】
本発明の1態様によれば、ステントまたは他の局所供給装置が、急性MIおよび再灌流後のインシュリン局所供給に使用される。インシュリンは、糖代謝およびATP産生を改善させるホルモンである。インシュリンはまた、血管拡張剤、抗炎症剤、および抗血小板剤としても作用することがある。これゆえにインシュリンは、幾つかのメカニズムにより作用し、炎症を抑えることにより梗塞サイズを減少させ、虚血壊死の速度を遅くし、FFA循環濃度および心筋のFFA取り込みを減少させ、心筋グリコーゲンを再貯蔵させ、収縮機能を改善させる。
【0032】
本発明における使用のためのインシュリンは、ヒトインシュリン、ヒト以外のインシュリン、または合成インシュリンであってもよく、完全なものであっても断片であってもよい。好ましくは、該インシュリンは、安定な短時間作用型であり、照射に対して耐性である。結晶形態のインシュリンが、照射に対する耐性を向上させるのに使用されてもよい。該インシュリンがポリマーと組み合わされる場合、生体活性を保つために、薬剤が加えられてもよい。インシュリンは、ポリ(ラクチド+グリコリド)(PLGA)中で供給される場合、少なくとも24時間の投与期間の間、その生体活性を保持することが確認されている。実質的により長い投与期間では、抗酸剤または他の薬剤が、PLGAマトリックスからの継続した生体活性に求められるpHを維持するのに使用されてもよい。
【0033】
1例では、インシュリンは、水性ゲルまたは水性ゲル原型マトリックスと組み合わされ得る。該インシュリン/水性ゲルは、ステントの開口部中へと充填され、脱水される。該水性ゲルの再水和化は、該水性ゲルが膨潤するようにし、該インシュリンが該水性ゲルから放出されるようにする。
【0034】
ステントからのインシュリン供給は、まず第1に虚血障害を抑制するための血管への供給に関して本明細書中において記載されてきたが、インシュリンはまた、再狭窄を処置するために、該ステント壁から供給されてもよい。
【0035】
本発明のもう1つ別の態様によれば、ステントまたは他の局所的供給装置が、急性MIおよび再灌流後のVIPの局所的供給に使用される。VIPは、冠状動脈梗塞の間に心臓から自然に放出され、該心臓に保護効果を発揮する神経ペプチドである。VIPは、血管拡張剤、血小板阻害剤、および抗増殖剤として作用する。VIPは、炎症の元となる物質の産生を阻害し、活性化マクロファージにおける抗炎症サイトカイン産生を刺激することにより、作用する。
【0036】
本発明の1実施形態では、虚血障害の抑制に適した薬剤が、心筋梗塞または他の急性虚血症候群後の再開通した梗塞部位またはその近傍において供給される。以前の梗塞部位またはその近傍における該薬剤の供給は、該薬剤が、その再灌流組織へと向かう血流により供給されるようにする。該薬剤は、以下に更に記載されるステント開口部中に薬剤を含有するステントにより、供給され得る。該薬剤はまた、薬剤でコーティングされたステント、移植物、微小球、カテーテル、コイル、または他の局所的供給手段によっても、供給され得る。
【0037】
例えば、微小球、コイル、リポゾーム、または他の小さな薬剤キャリアが、カテーテルまたは薬剤供給(ドラッグ・デリバリー)ステントを用いて、以前の梗塞部位またはその近傍に、局所的に供給され得る。これらの小さな薬剤キャリアは、それら自体が移植されて該薬剤を虚血組織へと直接供給する場合、放出されて、心筋中へと通って行く。
【0038】
該薬剤は、投与期間に亘り放出され得るが、これは、供給される該薬剤の作用様式に依存している。例えば、インシュリンは数分間〜数週間までの投与期間に亘って供給されてもよく、好ましくは、インシュリンは少なくとも1時間の期間に亘って供給され、より好ましくは、少なくとも2時間、更に好ましくは、約10〜48時間である。もう1つ別の例では、アデノシンもしくはこれの誘導体のような速効性の血管拡張剤が、数秒間〜数分間のより短い投与期間に亘って供給されてもよい。
【0039】
1例では、虚血障害抑制のための薬剤が、まず第1に管腔方向を向いているステントから供給され、血管壁方向を向いた該ステントから直接、最小量の薬剤が供給される。このステントは、梗塞部位に単独で置かれてもよく、または、血管形成プロセスに関連して置かれたもう1つ別のステント(むき出しのステントもしくは薬剤供給(ドラッグ・デリバリー)ステント)に加えて置かれてもよい。虚血障害処置剤供給用ステントは、以前に置かれたもう1つ別のステントの内部にもしくは隣接して置かれてもよい。該ステントのための移植部位は、梗塞部位またはその近傍にあってよい。移植部位はまた、溶血破壊部位または血管狭窄位置またはその近傍から選択されてもよい。
【0040】
本発明は、虚血障害抑制のための前記ステントの管腔側からまず第1に供給される第1の薬剤に加えて、ステントの(血管)壁側からまず第1に供給される第2の治療剤供給にも、特によく適している。まず第1に壁づたいに供給される該薬剤は、抗新生物剤、抗血管新生剤、血管新生因子、抗再狭窄剤、ヘパリンのような抗血栓剤、パクリタキセル、ラパマイシン、およびこれらの誘導体のような抗増殖剤を包含してよい。
【0041】
二重の(dual)薬剤の例では、虚血障害抑制に適した薬剤が、ステントからまず第1に管腔づたいに供給され、再狭窄処置用薬剤が、ステントからまず第1に壁づたいに供給される。1つのよくある例では、虚血障害抑制用の第1の該薬剤が、約1時間〜約24時間の期間に亘るような第1投与期間の間、第1の供給速度において供給され、再狭窄処置用の第2の該薬剤は、約2日間以上、好ましくは約3日間以上、より好ましくは約10日間以上の期間に亘るような第2の投与期間の間、第2の供給速度において供給される。
【0042】
もう1つ別のデュアル薬剤供給の例では、虚血障害処置用の2つの薬剤が両方とも、まず第1に管腔づたいに供給される。これら2つの薬剤は、これらの薬剤の作用様式に依存して、異なる投与期間に亘り供給されてよい。例えば、速効性の薬剤が数分間の短期間で供給されてもよく、より遅効性の薬剤が数時間〜数日間に亘って供給される。
【0043】
もう1つ別の例では、虚血障害抑制に適した治療剤の局所供給が、全身供給される1つ以上の治療剤と組み合わされて、使用される。例えばインシュリンが、以前に梗塞した血管部位へと局所供給される場合、必要とされるならば、グルコースおよび/またはカリウムが、全身供給され得る。しかしながら、遙かにより少量の全身投与されたグルコースおよび/またはカリウムが、全身投与されたインシュリンよりも、必要とされるであろう。加えて、グルコースおよび/またはカリウムは、インシュリンと同じ薬剤供給(ドラッグ・デリバリー)ステントにより、または、もう1つ別のステント、カテーテル、もしくは移植物のようなもう1つ別の局所供給手段により、局所供給されてよい。
【0044】
本発明と共に使用される治療剤の幾つかは、まず第1に管腔づたいに、まず第1に壁づたいに、もしくはこれら両方により伝搬されてよく、抗増殖剤、抗血栓剤、免疫抑制剤、抗脂質剤、抗炎症剤、抗新生物剤、抗血小板剤、血管新生剤、抗血管新生剤、ビタミン、抗有糸分裂剤、メタロプロテアーゼ阻害剤、NO供与体、エストラジオール、抗動脈硬化剤、血管作用剤、内皮成長因子、エストロゲン、βブロッカー、AZブロッカー、ホルモン、スタチン、インシュリン成長因子、抗酸化剤、膜安定化剤、カルシウムアンタゴニスト、レチノイド、ビバリルジン、フェノキソジオール、エトポシド、チクロピジン、ジピリダモール、およびトラピジル単独、または、ここに記した如何なる治療剤との組み合わせをも包含するが、これらに限定されない。治療剤はまた、ペプチド、リポタンパク質、ポリペプチド、ポリペプチドをコード化するポリヌクレオチド、脂質、タンパク質薬剤、タンパク質と共役する薬剤、酵素、オリゴヌクレオチドおよびこれの誘導体、リボザイム、他の遺伝子材料、細胞、アンチセンス、オリゴヌクレオチド、モノクローナル抗体、血小板、プリオン、ウィルス、バクテリア、および、内皮細胞、幹細胞、ACE阻害剤、単球/マクロファージ、または血管平滑筋細胞のような真核細胞をも包含する。これらは名前を挙げられるべきものであるが、幾つかの例に過ぎない。該治療剤はプロドラッグであってもよく、これは宿主へと投与される時に、所望の薬剤へと代謝される。加えて治療剤は、治療剤層中へと取り込まれる前に、マイクロカプセル、微小球、微小泡、リポゾーム、ニオゾーム、エマルション、分散体、または同様のものとして、予め処方されてもよい。治療剤はまた、放射性同位体(アイソトープ)、あるいは、光もしくは超音波エネルギーのようなある種の他の形態のエネルギーにより、または、全身投与され得る他の循環分子により活性化される薬剤であってもよい。治療剤は、血管新生、再狭窄、細胞増殖、血栓形成、血小板凝集、凝固、および血管拡張を調節することを包含する多数の機能を果たしてもよい。抗炎症剤は、アリール酢酸誘導体、例えばジクロフェナック;アリールプロピオン酸誘導体、例えばナプロキセン;およびサリチル酸誘導体、例えば、アスピリン、ジフルニサルのような非ステロイド抗炎症剤(NSAID)を包含する。抗炎症剤はまた、デキサメタゾン、プレドニソロン、およびトリアムシノロンのようなグルココルチコイド(ステロイド)をも包含する。抗炎症剤は、抗増殖剤と組み合わされて使用されてもよく、該抗増殖剤に対する組織の反応を緩和させる。
【0045】
本明細書中において記載される薬剤の幾つかは、これらの活性を保つ添加剤と組み合わされてもよい。例えば、界面活性剤、抗酸剤、抗酸化剤、および洗剤を包含する添加剤が使用されてもよく、インシュリンのようなタンパク質製剤の変性および凝集を最小化する。アニオン性、カチオン性、または非イオン性洗剤が、使用されてよい。非イオン性添加剤の例は、ソルビトール、スクロース、トレハロースを包含する糖類;デキストラン、カルボキシメチル(CM)デキストラン、ジエチルアミノエチル(DEAE)デキストランを包含するデキストラン類;D−グルコサミン酸およびD−グルコースジエチルメルカプタールを包含する糖誘導体;ポリエチレングリコール(PEO)およびポリビニルピロリドン(PVP)を包含する合成ポリエーテル;D−乳酸、グリコール酸、およびプロピオン酸を包含するカルボン酸;n−ドデシル−β−D−マルトシド、n−オクチル−β−D−グルコシド、PEO−脂肪酸エステル(例えば、ステアレート(myrj59)またはオレエート)、PEO−ソルビタン−脂肪酸エステル(例えば、Tween80、PEO−20ソルビタンモノオレエート)、ソルビタン−脂肪酸エステル(例えば、SPAN60、ソルビタンモノステアレート)、PEO−グリセリル−脂肪酸エステル、グリセリル脂肪酸エステル(例えば、グリセリルモノステアレート)、PEO−炭化水素−エーテル(例えば、PEO−10オレイルエーテル)を包含する、疎水性界面に親和性を持つ洗剤;トリトンX−100;ならびにルブロール(Lubrol)を包含するが、これらに限定されない。イオン性洗剤の例は、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸亜鉛を包含する脂肪酸塩;レシチンおよびホスファチジルコリンを包含するリン脂質;CM−PEG;胆汁酸;ドデシル硫酸ナトリウム(SDS);ドクセート(docusate、AOT);ならびにタウロ胆汁酸を包含するが、これらに限定されない。
【0046】
開口部を有する移植可能な医療装置
図1は、動脈100の血管116中に移植されたステント形態の、拡張可能な医療装置10を示している。動脈100の(血管)壁は、3つの異なる組織の層、内膜110、中膜112、および外膜114を包含する。拡張可能な医療装置10が梗塞部位において動脈中に移植される場合、拡張可能な該医療装置から動脈100の血管116へと供給される治療剤は、該梗塞部位および血流の下流における該組織へと局所的に分布される。
【0047】
拡張可能な医療装置10の1例は、図1〜3に示されるように、変形しない大きな支柱12を包含し、これは、該構造または該装置全体の機械特性を損なうことなく、開口部14を有し得る。変形しない支柱12は、その全体を本明細書中において援用される米国特許第6,241,762号に詳細に記載されている延性ヒンジ20の使用により達成されてもよい。開口部14は、該装置の移植部位へと種々の有益な薬剤を供給するための、保護された大きな貯蔵庫として働く。
【0048】
相対的に大きな保護された開口部14は、前記の通り、本発明の拡張可能な医療装置を、多量の治療剤、より大きな分子、遺伝子物質、もしくは細胞物質の供給、および、薬剤の方向を持った供給に特に適したものにしている。拡張可能な装置10中の変形しない大きな開口部14は、保護された領域もしくは受容体を形成して、このような薬剤の充填を容易にし、該薬剤を、供給および移植の間の摩耗、押し出し、もしくは他の分解から保護する。
【0049】
図1は、治療剤16の方向を持った供給用の、拡張可能な医療装置を示している。開口部14は、該開口部の血管壁側もしくはこれに隣接して、血管116への供給用治療剤16および任意に障壁層18を含有する。
【0050】
開口部14を使って供給され得る有益な薬剤の容積は、同じステント/血管壁カバー比を有するステントをカバーする5ミクロンのコーティング容積よりも、約3〜10倍大きい。有益な薬剤のこの遙かにより大きな容量は、幾つかの利点を提供する。より大きな該容量は、効率向上のために各々が独立した放出プロファイルを有する多剤の組み合わせを供給するのに、使用され得る。また、より大きな容量は、より多量のより攻撃的でない薬剤を提供し、内皮層の修復が遅れるといったような、より強力な薬剤の望まれない副作用なしに臨床効果を達成するために、使用され得る。
【0051】
図4は、医療装置10の一部分の横断面を示し、ここでは、1つ以上の有益な治療剤が、複数層中の開口部14中へと充填されている。複数の別個の層が簡便な例示のために示されるが、これらの層は、独立した組成物を有する別個の層でもよく、または、ブレンドされて、連続ポリマー・マトリックスおよび薬剤インレーを形成してもよい。例えば、これらの層は、薬剤、ポリマー、溶媒組成物の層中に別個に積層され得、これらは次いで該溶媒の作用により、該開口部中において一緒にブレンドされる。該薬剤はインレー中において、一様かまたは濃度勾配を付けて、分布されてよい。このような層および層配置の創出の幾つかの方法の例は、2002年6月27日に公開された米国特許公開第2002/0082680号に記載されており、この全体が本明細書中において援用される。開口部14内でのポリマーと組み合わせた薬剤の使用は、医療装置10が、薬剤供給(ドラッグ・デリバリー)の所望の特定のプロファイルに対してテイラー・メイドされた薬剤放出速度論を用いて設計されることを可能にする。
【0052】
1例によれば、開口部14の全体としての深さは約50〜約140ミクロンであり、典型的な層厚は約2〜約50ミクロン、好ましくは約12ミクロンであろう。典型的な層の各々がこれゆえに、表面をコーティングされたステントに適用される典型的なコーティングの約2倍、個々に厚い。典型的な開口部中には、少なくとも2層、好ましくは約5〜12層のこのような層が存在し得、有益な薬剤全体の厚さは、典型的な表面コーティングの約4〜28倍厚い。本発明の1実施形態によれば、該開口部は少なくとも5×10−6平方インチ、好ましくは少なくとも10×10−6平方インチの面積を持つ。
【0053】
図4の例では、該開口部の血管壁側が、障壁層18と共に提供され、障壁層18は、該障壁層の完全な浸食の前に、治療剤層16中の実質的に全ての該治療剤を、該開口部の血管壁側から供給させるのに充分遅い浸食速度を持つポリマーまたは他の材料の層である。障壁層18は、輸送、貯蔵、およびステント移植作業の間の、有益な該治療剤の損失を防ぐ。しかしながら障壁層18は、該薬剤の(血管)壁づたいおよび管腔づたいの供給が許容可能な場合、省略されてもよい。
【0054】
1例では、障壁層18および/またはキャップ層22は、これらの層の相互混合を防ぐために、該治療剤層とは異なる溶媒に可溶な材料により形成されてもよい。例えば、1層以上の治療剤およびマトリックスが溶媒中の該開口部中に積層されている場合(例えば、水中におけるインシュリンおよびPVP)、該障壁層が該治療剤を該障壁層中への混合から防ぐように、異なるポリマーと溶媒との組み合わせ(例えば、DMSO中におけるPLGA)を選択するのが望ましいことがある。キャップ層のようなもう1つ別の層は、第3の非混合ポリマーと溶媒との組み合わせ(例えば、アニソール中におけるPLGA)により形成されてもよい。該障壁層およびキャップ層に加えて、他の治療剤層、保護層、または分離層もまた、このような非混合ポリマー/溶媒系で形成されてもよい。
【0055】
該開口部を満たしている間にシールとして働くキャップ層22が、提供され得る。キャップ層22は、好ましくは、急速に分解する生体相容性材料である。
【0056】
障壁層18および治療剤16の両層の各々が独立に作られるので、個々の化学的組成および薬物速度論特性が、各層に付与され得る。このような層の数多くの有用な配置が形成され得、これらの内の幾つかを、以下に記載する。これらの層の各々は、層の間で同一もしくは異なる割合にて、1つ以上の薬剤を包含してよい。層の間での該薬剤濃度における変更が、所望の供給プロファイルを達成するために使用され得る。例えば、約24時間薬剤放出を抑えることが、達成され得る。もう1つ別の例では、初期の一気の放出およびその後の約1週間の一定の放出が、達成され得る。数時間〜数ヶ月間の期間に亘る実質的に一定の放出速度が、達成され得る。これらの層は固体でもよく、孔を有していてもよく、または他の薬剤もしくは賦形剤により充填されていてもよい。
【0057】
図5は、2つ以上の治療剤を包含する拡張可能な医療装置10の一部分の横断面図である。図5に示されるもののようなデュアル薬剤供給システムは、異なる病状もしくは病状段階の処置のために、異なる方向へ、2つ以上の治療剤を供給し得る。例えば、デュアル薬剤供給システムは、同じ薬剤供給(ドラッグ・デリバリー)装置から、虚血および再狭窄処置のために、管腔方向および(血管)壁方向へ、異なる治療剤を供給してもよい。
【0058】
図5では、抗再狭窄剤32が、1層以上の層において、装置10の(血管)壁側において提供され、虚血障害を抑制するための治療剤36が、1層以上の層において、該装置の管腔側において提供される。分離層34は、これらの薬剤層間において提供され得る。分離層34は、これら2つの薬剤の投与期間が実質的に異なり、これらの薬剤の内の1つの供給が完全に完了し、もう1つの薬剤が供給され続ける場合、特に有用たり得る。分離層34は如何なる生体相容性材料でもあり得、これは、好ましくは、これら2つの薬剤の該投与期間の長さに等しいかもしくはこれよりも長い速度にて、分解可能なものである。
【0059】
図6は、生体相容性マトリックスで形成されたインレー40を包含する拡張可能な医療装置10を示し、該マトリックス中では、異なる薬剤供給プロファイルによる供給用の、第1および第2の薬剤が提供される。図6に示されるように、「○」により示される第1の薬剤は、該薬剤濃度が該開口部の(血管)壁側の障壁層18近傍において最高であり、該開口部の管腔側において最低になるような濃度勾配で、該マトリックス中において提供される。「△」により示される第2の薬剤は、該開口部の管腔側に近い領域中において、相対的に濃縮されている。図6に示されるこの形状は結果的に、同一インレー40とは異なる供給プロファイルを有する、2つの異なる薬剤供給を与える。これら2つの異なる薬剤は、異なる作用様式による虚血障害を処置するインシュリンおよびVIPのような薬剤であり得る。
【0060】
前記実施形態では、前記治療剤は、生体相容性マトリックス中の拡張可能な医療装置中において提供され得る。該マトリックスは、以下に記載するもののような生体受食性であるか、または、該治療剤がそこから拡散して行く該装置の永久的に残る一部分であり得る。1層以上の障壁層、分離層、およびキャップ層が使用され得、該開口部内で治療剤を分離し、または、該治療剤が該医療装置移植前に、分解もしくは供給されるのを防ぐ。
【実施例】
【0061】
実施例1
この実施例では、約3mm×17mmの拡張された大きさを持つ、図2および3に示されるステントに実質的に等価な薬剤供給(ドラッグ・デリバリー)ステントが、以下の様式で、インシュリンを充填される。該ステントは心軸上に位置され、任意の急速分解層が、該ステント中の開口部中へと積層される。該急速分解層は、低分子量PLGAであり、管腔側に提供されて、輸送、貯蔵、および供給の間、隣接する層を保護する。ここで記載される層は、滴下によって積層され、DMSO、NMP、またはDMAcのような適切な有機溶媒の使用により、液体形態で供給される。複数層のインシュリンおよび低分子量PLGAマトリックスが次いで該開口部中へと積層され、虚血障害抑制用薬剤のインレーを形成する。該インシュリンおよびポリマーマトリックスは、全薬剤の約70%が最初の約2時間中に放出され、約80%が約8時間中に放出され、本質的に100%が約24時間〜約48時間中に放出される結果を与える薬剤供給(ドラッグ・デリバリー)プロファイルを達成する様式で組み合わされ、積層される。中程度もしくは高分子量のPLGA、つまりゆっくり分解するポリマーの障壁層が、該インシュリン層の上に積層され、該インシュリンが、該ステントの(血管)壁側および血管壁へと転移するのを防ぐ。該障壁層の分解速度は、約24〜48時間の投与期間後まで、前記キャップ層が実質的に分解しないように選択される。
【0062】
該ステント上において提供されるインシュリン用量は、約230マイクログラムである。該用量は、インシュリンの全身点滴に関して報告された研究に基づいて計算されており、24時間の期間に亘って、約10マイクログラムのインシュリンを心臓へと供給すると推定される用量である。該ステント上における全用量は、約5マイクログラム〜約800マイクログラム、好ましくは約200マイクログラム〜約400マイクログラムの範囲であってよい。
【0063】
実施例2
この実施例では、約3mm×17mmの拡張された大きさを持つ、図2および3に示されるステントに実質的に等価な薬剤供給(ドラッグ・デリバリー)ステントが、以下の様式で、約230マイクログラムの全用量のインシュリンを充填される。該ステントは心軸上に位置され、任意の急速分解層が、該ステント中の開口部中へと積層される。該急速分解層は、PLGAである。複数層のインシュリンおよびPEOとPPOとのポリオキサマーブロックコポリマー(PluronicF127)が次いで該開口部中へと積層され、虚血障害抑制用薬剤のインレーを形成する。該インシュリンおよびポリマーマトリックスは、実施例1に記載のものと同様な薬剤供給(ドラッグ・デリバリー)プロファイルを達成する様式で、約33:67の比で組み合わされ、積層される。高分子量PLGA、つまりゆっくり分解するポリマーの障壁層が、該インシュリン層の上に積層され、該インシュリンが、該ステントの(血管)壁側および血管壁へと転移するのを防ぐ。該障壁層の分解速度は、約24〜48時間の投与期間後まで、前記キャップ層が実質的に分解しないように選択される。
【0064】
実施例3
この実施例では、約3mm×17mmの拡張された大きさを持つ、図2および3に示されるステントに実質的に等価な薬剤供給(ドラッグ・デリバリー)ステントが、以下の様式で、約230マイクログラムの全用量のインシュリンおよび約10〜30マイクログラムの全用量のパクリタキセルを充填される。該ステントは心軸上に位置され、任意の急速分解層が、該ステント中の開口部中へと積層される。該急速分解層は、PLGAである。複数層のインシュリンおよび低分子量PLGAが次いで該開口部中へと積層され、虚血障害抑制用薬剤のインレーを形成する。該インシュリンおよびポリマーマトリックスは、実施例1に記載のものと同様な薬剤供給(ドラッグ・デリバリー)プロファイルを達成する様式で組み合わされ、積層される。高分子量PLGA、つまりゆっくり分解するポリマーの障壁層およびパクリタキセルが、該インシュリン層の上に積層され、該ステントの(血管)壁側および血管壁へ、該パクリタキセルを供給する。該パクリタキセル層の再吸収速度は、これらの層が約2日以上の投与期間に亘って連続的にパクリタキセルを供給するよう選択される。
【図面の簡単な説明】
【0065】
本発明は今や、添付の図面に例示される好ましい実施形態に言及しながらより詳細に記載され、ここでは、同様な要素は、同様な参照番号を持っている。
【図1】図1は、動脈管中に移植される、該動脈管への供給用に配置された治療剤を有する拡張可能な医療装置の一部分の、横断面鳥瞰図である。
【図2】図2は、拡張可能な医療装置の複数の開口部を示す鳥瞰図である。
【図3】図3は、図2の拡張可能な医療装置の一部分の拡大側面図である。
【図4】図4は、血管方向への供給用治療剤を例示する、開口部の拡大横断面である。
【図5】図5は、該血管への供給用に提供される第1の治療剤および該血管壁への供給用に提供される第2の治療剤を例示する、開口部の拡大横断面である。
【図6】図6は、該血管への供給用の第1の治療剤および第2の治療剤を例示する、開口部の拡大横断面である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
虚血障害後の組織のダメージを抑制する方法であって:
血管内の移植部位を同定すること;
選択された該移植部位へと向かう血管中へ、心筋細胞の生存能力を保つ薬剤を含有する拡張可能な医療装置を供給すること;
該移植部位に、該医療装置を移植すること;および
周囲にある該心筋細胞の虚血障害を抑制するのに充分な投与期間に亘り、拡張可能な該医療装置から、該移植部位の組織および該移植部位の下流の血管へと、治療剤を局所的に供給すること
を含む方法。
【請求項2】
前記治療剤が血管拡張剤である、請求項1の方法。
【請求項3】
前記治療剤が高血圧用薬剤である、請求項1の方法。
【請求項4】
前記治療剤が血管活性物質である、請求項1の方法。
【請求項5】
前記治療剤が心臓保護剤である、請求項1の方法。
【請求項6】
前記治療剤が膜安定化剤である、請求項1の方法。
【請求項7】
前記治療剤が抗炎症剤である、請求項1の方法。
【請求項8】
前記治療剤が抗酸化剤である、請求項1の方法。
【請求項9】
前記治療剤が膜安定化剤である、請求項1の方法。
【請求項10】
前記治療剤がインシュリンである、請求項1の方法。
【請求項11】
前記治療剤の局所供給が、虚血障害を抑制する該治療剤のまず第1に前記医療装置の管腔側からの供給であることを含み、更に、抗再狭窄剤のまず第1に該医療装置の血管壁側からの供給であることを含む、請求項1の方法。
【請求項12】
心筋梗塞および再灌流後の組織のダメージを抑制するために、心筋組織へと局所的にインシュリンを供給する方法であって:
血管内の梗塞部位を同定すること;
再灌流を達成するために、該梗塞部位を処置すること;および
虚血障害を抑制するために、処置された該梗塞部位もしくはこの近傍の組織および該梗塞部位の下流へと、インシュリンを局所供給すること
を含む方法。
【請求項13】
前記インシュリンが、治療用量のインシュリンが固定されたステントから供給され、該ステントが前記梗塞部位もしくはこの近傍において移植される、請求項12の方法。
【請求項14】
前記インシュリンが、前記梗塞部位へと至るカテーテルにより供給される、請求項12の方法。
【請求項15】
前記インシュリンが、前記梗塞部位もしくはこの近傍に位置される球体、コイル、および移植物の内の1つから供給される、請求項12の方法。
【請求項16】
前記インシュリンおよび生体相容性ポリマーマトリックスが、前記梗塞部位への局所供給用の移植可能な医療装置中の開口部内に積層される、請求項12の方法。
【請求項17】
移植可能な前記医療装置が、前記梗塞部位もしくはこの近傍において移植されるステントである、請求項16の方法。
【請求項18】
更に、前記梗塞部位もしくはこの近傍において移植される移植可能な医療装置から、前記インシュリンを供給することを含み、移植可能な該医療装置から該梗塞部位の血管壁へと、抗再狭窄剤を供給することを含む、請求項12の方法。
【請求項19】
前記抗再狭窄剤がパクリタキセルである、請求項18の方法。
【請求項20】
心筋組織へと局所的にインシュリンを供給するための、移植可能な医療装置であって:
冠状動脈内に移植されるための形状の移植可能な医療装置;および
移植可能な該医療装置へと固定された生体相容性ポリマー中の、治療用量のインシュリンであって、治療用量にて、該心筋組織の虚血障害を抑制するのに有効な投与期間に亘り、該心筋組織へと放出される治療用量のインシュリン
を含む装置。
【請求項21】
移植可能な前記医療装置が、冠状動脈内で拡張可能なステントである、請求項20の装置。
【請求項22】
前記インシュリンおよび生体相容性ポリマーが、移植可能な前記医療装置中の開口部内に積層される、請求項20の装置。
【請求項23】
前記インシュリンおよび生体相容性ポリマーが、移植可能な前記医療装置の表面上に積層される、請求項20の装置。
【請求項24】
前記投与期間が約1時間以上である、請求項20の装置。
【請求項25】
前記投与期間が約10〜約48時間である、請求項20の装置。
【請求項26】
前記治療用量が約5〜約800マイクログラムである、請求項20の装置。
【請求項27】
前記インシュリンおよび生体相容性ポリマーが、移植可能な前記医療装置中の開口部内に積層され、前記冠状動脈壁への該インシュリンの供給を実質的に防ぐ障壁層が提供される、請求項20の装置。
【請求項28】
更に抗再狭窄組成物を含む、請求項20の装置。
【請求項29】
管腔側および血管壁側を有する、実質的に円筒状の装置である、請求項28の装置。
【請求項30】
前記インシュリンが、前記装置のまず第1に管腔側への供給のために、移植可能な該医療装置上に積層され、前記抗再狭窄組成物が、前記装置のまず第1に血管壁側への供給のために、移植可能な該医療装置上に積層される、請求項29の装置。
【請求項31】
前記インシュリンが、ヒトインシュリン、ヒト以外のインシュリン、合成インシュリンからなる群から選択される、請求項20の装置。
【請求項32】
前記インシュリンの治療用量が、少なくとも200マイクログラムである、請求項20の装置。
【請求項33】
心筋組織へと局所的に治療剤を供給するための、移植可能な医療装置であって:
冠状動脈内に移植されるための形状の移植可能な医療装置;および
治療用量の、急性心筋梗塞後の虚血障害処置用治療剤であって、該治療剤が治療用量にて、該心筋組織の虚血障害を抑制するのに有効な投与期間に亘り、該心筋組織へと放出されるように、移植可能な該医療装置へと固定される治療剤
を含む装置。
【請求項34】
前記治療剤が血管拡張剤である、請求項33の装置。
【請求項35】
前記治療剤が高血圧用薬剤である、請求項33の装置。
【請求項36】
前記治療剤が血管活性物質である、請求項33の装置。
【請求項37】
前記治療剤が心臓保護剤である、請求項33の装置。
【請求項38】
前記治療剤が膜安定化剤である、請求項33の装置。
【請求項39】
前記治療剤が抗炎症剤である、請求項33の装置。
【請求項40】
前記治療剤が抗酸化剤である、請求項33の装置。
【請求項41】
前記治療剤が膜安定化剤である、請求項33の装置。
【請求項42】
前記治療剤がインシュリンである、請求項33の装置。
【請求項43】
虚血障害を抑制する前記治療剤が、前記医療装置のまず第1に管腔側からの供給のために、該医療装置へと固定され、更に、該医療装置のまず第1に血管壁側からの供給のために、該医療装置へと固定される抗再狭窄剤を含む、請求項33の装置。
【請求項44】
移植可能な前記医療装置が、冠状動脈内で拡張可能なステントである、請求項33の装置。
【請求項45】
前記治療剤が、移植可能な前記医療装置中の開口部内に積層される、請求項33の装置。
【請求項46】
前記治療剤が、生体相容性ポリマーを有する移植可能な前記医療装置へと固定される、請求項33の装置。
【請求項47】
心筋組織へと局所的にインシュリンを供給するためのステントであって:
血管内に移植されるための形状の、実質的に円筒状の拡張可能な装置本体;および
移植可能な医療装置の該本体へと固定される生体相容性ポリマー中の、治療用量のインシュリン
を含むステント。
【請求項48】
前記インシュリンおよび生体相容性ポリマーが、移植可能な前記医療装置中の開口部内に積層される、請求項47の装置。
【請求項49】
前記インシュリンおよび生体相容性ポリマーが、移植可能な前記医療装置の表面上に積層される、請求項47の装置。
【請求項50】
前記治療用量が、約1時間以上の投与期間に亘る供給用に設定される、請求項47の装置。
【請求項51】
前記治療用量が、約10〜約48時間の投与期間に亘る供給用に設定される、請求項47の装置。
【請求項52】
前記治療用量が、約5〜約800マイクログラムである、請求項47の装置。
【請求項53】
前記インシュリンおよび生体相容性ポリマーが、移植可能な前記医療装置中の開口部内に積層され、前記冠状動脈壁への該インシュリンの供給を実質的に防ぐ障壁層が提供される、請求項47の装置。
【請求項54】
更に抗再狭窄組成物を含む、請求項47の装置。
【請求項55】
前記インシュリンが、前記装置のまず第1に管腔側への供給のために、移植可能な該医療装置上に積層され、前記抗再狭窄組成物が、該装置のまず第1に壁側への供給のために、移植可能な該医療装置上に積層される、請求項54の装置。
【請求項56】
前記インシュリンが、ヒトインシュリン、ヒト以外のインシュリン、合成インシュリンからなる群から選択される、請求項47の装置。
【請求項57】
前記インシュリンの治療用量が、少なくとも5マイクログラムである、請求項47の装置。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
虚血障害後の組織のダメージを抑制する方法であって:
血管内の移植部位を同定すること;
選択された該移植部位へと向かう血管中へ、心筋細胞の生存能力を保つ薬剤を含有する拡張可能な医療装置を供給すること;
該移植部位に、該医療装置を移植すること;および
周囲にある該心筋細胞の虚血障害を抑制するのに充分な投与期間に亘り、拡張可能な該医療装置から、該移植部位の組織および該移植部位の下流の血管へと、治療剤を局所的に供給すること
を含む方法。
【請求項2】
前記治療剤が血管拡張剤である、請求項1の方法。
【請求項3】
前記治療剤が高血圧用薬剤である、請求項1の方法。
【請求項4】
前記治療剤が血管活性物質である、請求項1の方法。
【請求項5】
前記治療剤が心臓保護剤である、請求項1の方法。
【請求項6】
前記治療剤が膜安定化剤である、請求項1の方法。
【請求項7】
前記治療剤が抗炎症剤である、請求項1の方法。
【請求項8】
前記治療剤が抗酸化剤である、請求項1の方法。
【請求項9】
前記治療剤が膜安定化剤である、請求項1の方法。
【請求項10】
前記治療剤がインシュリンである、請求項1の方法。
【請求項11】
前記治療剤の局所供給が、虚血障害を抑制する該治療剤のまず第1に前記医療装置の管腔側からの供給であることを含み、更に、抗再狭窄剤のまず第1に該医療装置の血管壁側からの供給であることを含む、請求項1の方法。
【請求項12】
心筋梗塞および再灌流後の組織のダメージを抑制するために、心筋組織へと局所的にインシュリンを供給する方法であって:
血管内の梗塞部位を同定すること;
再灌流を達成するために、該梗塞部位を処置すること;および
虚血障害を抑制するために、処置された該梗塞部位もしくはこの近傍の組織および該梗塞部位の下流へと、インシュリンを局所供給すること
を含む方法。
【請求項13】
前記インシュリンが、治療用量のインシュリンが固定されたステントから供給され、該ステントが前記梗塞部位もしくはこの近傍において移植される、請求項12の方法。
【請求項14】
前記インシュリンが、前記梗塞部位へと至るカテーテルにより供給される、請求項12の方法。
【請求項15】
前記インシュリンが、前記梗塞部位もしくはこの近傍に位置される球体、コイル、および移植物の内の1つから供給される、請求項12の方法。
【請求項16】
前記インシュリンおよび生体相容性ポリマーマトリックスが、前記梗塞部位への局所供給用の移植可能な医療装置中の開口部内に積層される、請求項12の方法。
【請求項17】
移植可能な前記医療装置が、前記梗塞部位もしくはこの近傍において移植されるステントである、請求項16の方法。
【請求項18】
更に、前記梗塞部位もしくはこの近傍において移植される移植可能な医療装置から、前記インシュリンを供給することを含み、移植可能な該医療装置から該梗塞部位の血管壁へと、抗再狭窄剤を供給することを含む、請求項12の方法。
【請求項19】
前記抗再狭窄剤がパクリタキセルである、請求項18の方法。
【請求項20】
心筋組織へと局所的にインシュリンを供給するための、移植可能な医療装置であって:
冠状動脈内に移植されるための形状の移植可能な医療装置;および
移植可能な該医療装置へと固定された生体相容性ポリマー中の、治療用量のインシュリンであって、治療用量にて、該心筋組織の虚血障害を抑制するのに有効な投与期間に亘り、該心筋組織へと放出される治療用量のインシュリン
を含む装置。
【請求項21】
移植可能な前記医療装置が、冠状動脈内で拡張可能なステントである、請求項20の装置。
【請求項22】
前記インシュリンおよび生体相容性ポリマーが、移植可能な前記医療装置中の開口部内に積層される、請求項20の装置。
【請求項23】
前記インシュリンおよび生体相容性ポリマーが、移植可能な前記医療装置の表面上に積層される、請求項20の装置。
【請求項24】
前記投与期間が約1時間以上である、請求項20の装置。
【請求項25】
前記投与期間が約10〜約48時間である、請求項20の装置。
【請求項26】
前記治療用量が約5〜約800マイクログラムである、請求項20の装置。
【請求項27】
前記インシュリンおよび生体相容性ポリマーが、移植可能な前記医療装置中の開口部内に積層され、前記冠状動脈壁への該インシュリンの供給を実質的に防ぐ障壁層が提供される、請求項20の装置。
【請求項28】
更に抗再狭窄組成物を含む、請求項20の装置。
【請求項29】
管腔側および血管壁側を有する、実質的に円筒状の装置である、請求項28の装置。
【請求項30】
前記インシュリンが、前記装置のまず第1に管腔側への供給のために、移植可能な該医療装置上に積層され、前記抗再狭窄組成物が、前記装置のまず第1に血管壁側への供給のために、移植可能な該医療装置上に積層される、請求項29の装置。
【請求項31】
前記インシュリンが、ヒトインシュリン、ヒト以外のインシュリン、合成インシュリンからなる群から選択される、請求項20の装置。
【請求項32】
前記インシュリンの治療用量が、少なくとも200マイクログラムである、請求項20の装置。
【請求項33】
心筋組織へと局所的に治療剤を供給するための、移植可能な医療装置であって:
冠状動脈内に移植されるための形状の移植可能な医療装置;および
治療用量の、急性心筋梗塞後の虚血障害処置用治療剤であって、該治療剤が治療用量にて、該心筋組織の虚血障害を抑制するのに有効な投与期間に亘り、該心筋組織へと放出されるように、移植可能な該医療装置へと固定される治療剤
を含む装置。
【請求項34】
前記治療剤が血管拡張剤である、請求項33の装置。
【請求項35】
前記治療剤が高血圧用薬剤である、請求項33の装置。
【請求項36】
前記治療剤が血管活性物質である、請求項33の装置。
【請求項37】
前記治療剤が心臓保護剤である、請求項33の装置。
【請求項38】
前記治療剤が膜安定化剤である、請求項33の装置。
【請求項39】
前記治療剤が抗炎症剤である、請求項33の装置。
【請求項40】
前記治療剤が抗酸化剤である、請求項33の装置。
【請求項41】
前記治療剤が膜安定化剤である、請求項33の装置。
【請求項42】
前記治療剤がインシュリンである、請求項33の装置。
【請求項43】
虚血障害を抑制する前記治療剤が、前記医療装置のまず第1に管腔側からの供給のために、該医療装置へと固定され、更に、該医療装置のまず第1に血管壁側からの供給のために、該医療装置へと固定される抗再狭窄剤を含む、請求項33の装置。
【請求項44】
移植可能な前記医療装置が、冠状動脈内で拡張可能なステントである、請求項33の装置。
【請求項45】
前記治療剤が、移植可能な前記医療装置中の開口部内に積層される、請求項33の装置。
【請求項46】
前記治療剤が、生体相容性ポリマーを有する移植可能な前記医療装置へと固定される、請求項33の装置。
【請求項47】
心筋組織へと局所的にインシュリンを供給するためのステントであって:
血管内に移植されるための形状の、実質的に円筒状の拡張可能な装置本体;および
移植可能な医療装置の該本体へと固定される生体相容性ポリマー中の、治療用量のインシュリン
を含むステント。
【請求項48】
前記インシュリンおよび生体相容性ポリマーが、移植可能な前記医療装置中の開口部内に積層される、請求項47の装置。
【請求項49】
前記インシュリンおよび生体相容性ポリマーが、移植可能な前記医療装置の表面上に積層される、請求項47の装置。
【請求項50】
前記治療用量が、約1時間以上の投与期間に亘る供給用に設定される、請求項47の装置。
【請求項51】
前記治療用量が、約10〜約48時間の投与期間に亘る供給用に設定される、請求項47の装置。
【請求項52】
前記治療用量が、約5〜約800マイクログラムである、請求項47の装置。
【請求項53】
前記インシュリンおよび生体相容性ポリマーが、移植可能な前記医療装置中の開口部内に積層され、前記冠状動脈壁への該インシュリンの供給を実質的に防ぐ障壁層が提供される、請求項47の装置。
【請求項54】
更に抗再狭窄組成物を含む、請求項47の装置。
【請求項55】
前記インシュリンが、前記装置のまず第1に管腔側への供給のために、移植可能な該医療装置上に積層され、前記抗再狭窄組成物が、該装置のまず第1に壁側への供給のために、移植可能な該医療装置上に積層される、請求項54の装置。
【請求項56】
前記インシュリンが、ヒトインシュリン、ヒト以外のインシュリン、合成インシュリンからなる群から選択される、請求項47の装置。
【請求項57】
前記インシュリンの治療用量が、少なくとも5マイクログラムである、請求項47の装置。
【請求項58】
前記治療用量が、約200〜約400マイクログラムである、請求項20の装置。
【請求項59】
前記治療用量が、約200〜約400マイクログラムである、請求項42の装置。
【請求項60】
前記治療用量が、約200〜約400マイクログラムである、請求項47の装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2006−505365(P2006−505365A)
【公表日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−552073(P2004−552073)
【出願日】平成15年11月10日(2003.11.10)
【国際出願番号】PCT/US2003/035948
【国際公開番号】WO2004/043510
【国際公開日】平成16年5月27日(2004.5.27)
【出願人】(500449400)コナー メドシステムズ, インコーポレイテッド (17)
【氏名又は名称原語表記】CONOR MEDSYSTEMS, INC.
【住所又は居所原語表記】1360 Hamilton Court,Menlo Park,CA 94025 U.S.A.
【Fターム(参考)】