説明

虫害防止機能を有する食品用包装材料およびそれを用いた包装袋

【課題】バリア性を必要としない食品用包装袋にも容易に適用可能な、即ち製造コストが嵩むというオーバースペックにせずとも、虫が噛み切れないようにした虫害防止機能を有する食品用包装材料およびそれを用いた包装袋の提供にある。
【解決手段】少なくとも最外層の基材フィルム10と最内層のシーラント層20との2層でなる虫害防止機能を有する食品用包装材料1において、該基材フィルム10の表面にシリコーン樹脂層30が施されている虫害防止機能を有する食品用包装材料1である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、虫が寄って来やすいパン粉や乾めんなどを収納する虫害防止機能を有する包装材料およびそれを用いた包装袋に関するものであり、さらに詳細には、虫により噛み切れないようにして虫害を防止する機能を有する食品用包装材料およびそれを用いた包装袋に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、最外層が2軸延伸ポリプロピレンの基材フィルムと最内層が無延伸ポリプロピレンのシーラント層とでなる包装袋をはじめ、紙カップや紙箱内に臭気のある食品類等を収納して保管しておくと、チャタテ虫やコクゾウ虫などがその臭いや揮発成分に引きつられて、容器を破って(噛み切って)穴を開けたり中に入ったりする場合があるという問題があり、その対策として、食品類用以外の容器(袋)用としては、例えばコオロギ類、ハサミムシなどに対する害虫忌避剤である有機リン系、フェノトリン等ビレスロイド系などの揮発性物質を外層に含有させた家畜飼料包装体の虫害防止用シートがある(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
しかしながら、ここで使用される害虫忌避剤は、食品類用の包装容器に適用することは、これら揮発性物質の揮発成分やその臭い等が容器を通して内容物(食品類)に移行し、その結果食品類の味覚が変わる(劣る)等の問題があり使用不可能であった。
【0004】
また、同様に人体に無害のヒノキチオール、ヒバエキスあるいはワサビのフレーバーの如き植物性の臭気のある剤を容器(袋)の外面に塗布する方法があった。しかし、この剤もこの臭気が容器を通して内容物(食品類)に移行し、その風味が損なわれる場合があった。
【0005】
これらの問題を解決する食品類用容器として、例えば図4(a)に示すように、少なくともフェノトリン等ビレスロイド系などの揮発性物質でなる殺虫剤もしくは防虫剤を含有する最外層(6)と、アルミニウム箔、金箔、銀箔等のバリア性を有する中間層(7)と、ヒートシール性を有する最内層(8)とからなる軟包装材を用い、図4(b)に示すように、それを最内層(7)同士をヒートシールして、食品(4)を充填した食品類用包装袋がある(例えば、特許文献2参照。)。
【0006】
以下に、上記先行技術文献を示す。
【特許文献1】特開平5−176666号公報
【特許文献2】特開平3−111275号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記従来の軟包装材を用いた食品類用包装袋において、このような揮発成分や臭気の移行を防止するために、上記のように容器(包装袋)にアルミニウム箔やアルミニウムを蒸着したフィルム等の臭気を含むガスのバリア材を積層するという、いわゆるオーバースペックとすることで、その結果製造コストが嵩むという問題があり、この形態としても、内部の食品からの臭気を含め完全にシャットアウトできるというものではなかった。
【0008】
本発明は、かかる従来技術の問題点を解決するものであり、その課題とするところは、バリア性を必要としない食品用包装容器にも容易に適用可能な、即ち製造コストが嵩むというオーバースペックにせずとも、虫が噛み切れないようにした虫害防止機能を有する食品用包装材料およびそれを用いた包装袋を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に於いて上記課題を達成するために、まず請求項1の発明では、少なくとも最外層の基材フィルムと最内層のシーラント層との2層でなる虫害防止機能を有する食品用包装材料において、前記基材フィルムの表面にシリコーン樹脂層が施されていることを特徴とする虫害防止機能を有する食品用包装材料としたものである。
【0010】
また、請求項2の発明では、上記請求項1に記載の虫害防止機能を有する食品用包装材料を用いたことを特徴とする包装袋としたものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明は以上の構成であるから、下記に示す如き効果がある。
【0012】
即ち、上記請求項1に係る発明によれば、少なくとも最外層の基材フィルムと最内層のシーラント層との2層でなる単純な虫害防止機能を有する食品用包装材料であっても、前記基材フィルムの表面にシリコーン樹脂層を施したものとすることによって、表面のシリコーン樹脂層がスリップ性を有するので、虫が歯を立てても滑って噛めなくなり、よって製造コストが嵩まない(オーバースペックとせずとも)単純な2層構成の虫害防止機能を有する食品用包装材料とすることができる。
【0013】
また、上記請求項2に係る発明によれば、上記請求項1に記載の虫害防止機能を有する食品用包装材料を用いた包装袋とすることによって、ガスバリア性を必要としない2層でなる単純な虫害防止機能を有する食品用包装袋にも製造コストが嵩まないものとして適用できる。
【0014】
従って本発明は、虫が寄って来やすいパン粉や乾めんなどを収納する虫害防止機能を有する食品用包装袋の如き用途において、優れた実用上の効果を発揮する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下本発明を実施するための最良の形態を図面を用いて詳細に説明する。
【0016】
本発明の虫害防止機能を有する食品用包装材料は、例えば図1の積層断面図に示すように、請求項1に係る発明では、最外層の2軸延伸ポリプロピレンでなる基材フィルム(10)と最内層の無延伸ポリプロピレンでなるシーラント層(20)とからなる2層構成の食品用包装材料において、この基材フィルム(10)の表面にシリコーン樹脂層(30)を施して虫害防止機能を有する食品用包装材料(1)としたものであり、また、請求項2の発明では、この虫害防止機能を有する食品用包装材料(1)を用いて、例えば図3の斜視図に示すように、最内層のシーラント層同士がシールされて上端縁シール部(15)と底端縁シール部(16)と合掌貼りでなる背シール部(17)とでなり、虫が寄って来やすい乾めんなどの内容物(40)を収納するピロータイプの包装袋(2)とするものである。
【0017】
このように、基材フィルム(10)の表面にシリコーン樹脂層(30)を形成することによって、虫が歯を立てても滑って噛むことができず、さらにこのシリコーン樹脂層(30)は、揮発成分やその臭い等が内容物へ移行することがないので、アルミニウム箔やポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムにアルミニウム蒸着層あるいは酸化珪素や
酸化アルミニウム等無機酸化物の蒸着層が施されたガスバリア層を施したもので無くとも確実に虫害防止機能を有する食品用包装材料(1)とその包装袋(2)とすることができる。
【0018】
この虫害防止機能を有する食品用包装材料(1)として、例えば図2の積層断面図に示すように、最外層のポリエチレンテレフタレートでなる基材フィルム(10)の表面にシリコーン樹脂層(30)が施され、その裏面に接着剤層(13)を介して、12μm程度のポリエチレンテレフタレートフィルム(14a)に酸化アルミニウムの蒸着層(14b)が施されたガスバリアフィルム層(14)がラミネートされ、このガスバリアフィルム層(14)に接着剤層(13)を介して最内層に無延伸ポリプロピレンでなるシーラント層(20)がラミネートされているガスバリア性を有する食品用包装材料(1a)にも適用することができ、このガスバリアフィルム層(14)によって臭い等の遮断性をも付与されるので、このガスバリア性を有する食品用包装材料(1a)を用いて、より優れた虫害防止機能を有する食品用包装袋(2)とすることもできる。
【0019】
上記虫害防止機能を有する食品用包装材料(1)を用いた包装袋の形態として、例えば図3に示すピロータイプの包装袋(2)に加え、例えば図示しないが4方シール袋,あるいは3方シール袋,ガゼット袋、ガゼットタイプの自立するスタンディングパウチなど様々な形態のものが挙げられ、内容物の種類や使用目的などによって適宜選定することができる。
【0020】
上記基材フィルム(10)の表面に施すシリコーン樹脂層(30)を構成するシリコーンは、基本的にはベースポリマーのポリジメチルシロキサンでなり、これに塗膜強度・耐溶剤性・非移行性・基材フィルム(10)への密着性を考慮してポリメチルハイドロジェンシロキサンにより架橋させたものが一般的に使用される。
【0021】
このシリコーンは、形態により溶剤型・無溶剤型・エマルジョン型・熱キュアー型・UVキュアー型・縮合反応型などに分類され、用途や基材などによりいずれのタイプを選択してもよい。
【0022】
また、上記シリコーンを基材フィルム(10)へ塗膜とするには、例えばベースポリマー、架橋剤、反応抑制剤などが含まれている30%固形分濃度のトルエン溶液に、使用にあたって、塗工に適した粘度にするためトルエンやヘキサンなどで2〜10%程度に希釈し、必要に応じて所定の触媒を添加、充分混合してから溶剤型の塗工液とする。
【0023】
上記溶剤型の塗工は、ダイレクトグラビア、メイヤバー、エアーナイフなどの方式で行なうことができる。なお、無溶剤型シリコーンでは、オフセットグラビアやマルチロールなどの方式で行うのが一般的である。また、その塗工量は、基材によっても異なるが、例えば基材フィルム(10)としてPETやOPPなどの場合は約0.5g/m2 (ドライ)程度が好ましい。
【0024】
上記塗工法で塗工された後、乾燥オーブンで溶剤を飛ばすとともに塗膜がキュアーされてシリコーン樹脂層(30)とすることができる。
【0025】
以下に、本発明の具体的実施例について説明する。
【実施例1】
【0026】
最外層の基材フィルム(10)に厚み12μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムを用い、この内面に最内層のシーラント層(20)として厚み40μmの無延伸ポリプロピレンフィルムを、ポリウレタン系のドライラミネーション用接着剤を介して
ラミネートして2層構成の食品用積層材料を得た。
【0027】
上記で得られた食品用積層材料の基材フィルム(10)の表面にシリコーン樹脂層(30)を施して虫害防止機能を有する食品用包装材料(1)を得た。
【0028】
上記シリコーン樹脂層(30)は、ポリジメチルシロキサンを主体としたシリコーン系樹脂:MLスリップ剤(東洋インキ製造社製)0.5重量%を、硝化綿・アマイド系のグラビアインキメジウム:パンカラー(東洋インキ製造社製)にML消泡剤とともに混合して塗工液(インキ)とし、この塗工液(インキ)をダイレクトグラビア方式で約0.5g/m2 (ドライ)のシリコーン樹脂層(30)とした。
【0029】
上記で得られた300mm×200mmの2枚の虫害防止機能を有する食品用包装材料(1)を用いて、そのシーラント層(20)同士の4方を貼り合わせてなる四方シールの包装袋を得た。
【0030】
上記で得られた包装袋に蕎麦乾麺400gを入れ密封したのち、ゴミムシ10匹のいるガラス貼り容器に包装袋ごと入れて放置し、包装袋の穴開きの有無などによって虫害防止機能を判定した。
【0031】
以下に、本発明の比較例について説明する。
【実施例2】
【0032】
2層構成の食品用積層材料を構成する基材フィルム(10)の表面にシリコーン樹脂層(30)を施さない以外は、実施例1と同様にして虫害防止機能を判定した。
【0033】
上記実施例1の基材フィルム(10)の表面にシリコーン樹脂層(30)を施した食品用包装袋では、2週間経過しても包装袋の穴開きがなく、ゴミムシ10匹とも飢え死にしていた。
【0034】
これに対し比較のための実施例2の基材フィルム(10)の表面にシリコーン樹脂層(30)を施さない食品用包装袋では、2日で包装袋に穴開きが発生した。
【0035】
以上のように、本発明は、虫が好む臭い等を発するパン粉や乾めんなどを収納する食品用包装袋の如き用途において、優れた実用上の効果を発揮する。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の虫害防止機能を有する食品用包装材料の一実施の形態を積層断面で表した説明図である。
【図2】本発明の虫害防止機能を有する食品用包装材料の他の一実施の形態を積層断面で表した説明図である。
【図3】本発明の虫害防止機能を有する食品用包装材料を用いた包装袋の一事例を説明する斜視図である。
【図4】従来の虫害防止機能を有する軟包装袋で、(a)は、食品包装材の側断面図であり、(b)は、食品包装材を用いて食品を包装した場合を表す側断面図である。
【符号の説明】
【0037】
1‥‥虫害防止機能を有する食品用包装材料
1a‥‥ガスバリア性を有する食品用包装材料
2‥‥虫害防止機能を有する食品用包装袋
4‥‥食品
6‥‥防虫剤を含有する最外層
7‥‥バリア性を有する中間層
8‥‥ヒートシール性を有する最内層
10‥‥基材フィルム
13‥‥接着剤層
14‥‥ガスバリアフィルム層
14a‥‥ポリエチレンテレフタレートフィルム
14b‥‥酸化アルミニウムの蒸着層
15‥‥上端縁シール部
16‥‥底端縁シール部
17‥‥背シール部
20‥‥シーラント層
30‥‥シリコーン樹脂層
40‥‥内容物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも最外層の基材フィルムと最内層のシーラント層との2層でなる虫害防止機能を有する食品用包装材料において、前記基材フィルムの表面にシリコーン樹脂層が施されていることを特徴とする虫害防止機能を有する食品用包装材料。
【請求項2】
上記請求項1に記載の虫害防止機能を有する食品用包装材料を用いたことを特徴とする包装袋。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2006−36270(P2006−36270A)
【公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−218370(P2004−218370)
【出願日】平成16年7月27日(2004.7.27)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】