説明

虫捕獲具及び虫捕獲具の取付方法

【課題】樹幹への取付け作業が簡単で、フラスによって虫の捕獲効率が低下することのない良好な虫捕獲具を提供する。
【解決手段】虫捕獲具1は片面が粘着剤を有する粘着面とされて樹幹40に巻きつけられる害虫捕獲調査シート3を備える。害虫捕獲調査シート3の粘着面と相対する樹皮41との間に配置され、虫が通る隙間を形成するスペーサが、隙間より細い複数の糸21を結んで形成した有結節網2の結節23から成る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カシノナガキクイムシ等の害虫が発生または棲息する樹幹の外周部に取付けて、害虫を捕獲・調査するための虫捕獲具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、害虫が発生または棲息する樹木から害虫を捕獲して駆除したり、調査したりするための虫捕獲具として、樹幹に巻き付ける粘着シートを用いた虫捕獲用シート(例えば、特許文献1、2参照)が知られている。
この様な虫捕獲用シートは、可撓性シートの片面ないし両面が粘着剤を有する粘着面とされた粘着シートと、該粘着シートの粘着面と相対する樹皮との間に配置される複数のスペーサとの組み合わせで構成されている。スペーサは、粘着シートの粘着面と樹皮との間に虫が入り込める隙間を形成することで、虫の捕獲効率を高めるものである。
【0003】
そこで、複数のスペーサが予め所要間隔で粘着面に取り付けられた粘着シートを樹幹の外周に巻き付けたり、片面ないし両面に粘着剤を塗布した複数のスペーサを樹幹の外周に取付けた後に粘着シートを取り付けたりして、害虫を捕獲するための空間を確保するように構成されている。
【0004】
ところで、ミズナラやコナラ、ウバメガシ、アラカシ等のナラ類、スダジイやツブラジイ等のシイ類では、カシノナガクキムシによる被害が問題となっている。この被害は、カシノナガキクイムシのオスが穿孔した坑道に、カシノナガキクイムシのメスがカビ(ナラ菌)を持ち込み、このカビが繁殖して通水組織を破壊することが原因と考えられている。
カシノナガクキムシは、多ければ数百匹の集団で1本の樹幹に穿孔し、雌1匹で多いときに数百個の産卵をする。そのため、カシノナガクキムシが穿孔した樹幹の穿入孔からは大量のフラス(木屑とフン)が発生する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開昭62−70776号公報
【特許文献2】特開平7−250603号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述した従来の粘着シートとスペーサとを組み合わせた虫捕獲用シートでは、カシノナガクキムシ等のように大量のフラスを発生させる虫を捕獲する場合には、フラスが大量にスペーサの上に積もって、粘着シートの粘着面にかかってしまい捕獲が十分にできないという問題があった。
そこで、樹幹の穿入孔からでたフラスが積もり難くなるように1個あたりのスペーサを小さくすると、適正な間隔を維持するのが難しくなったり、より多くのスペーサを粘着シートと樹皮との間に配置しなければならず、取付け作業が煩雑になってしまう。
【0007】
従って、本発明はこのような状況に鑑みてなされたものであり、樹幹への取付け作業が簡単で、フラスによって虫の捕獲効率が低下することのない良好な虫捕獲具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前述した目的を達成するために、本発明に係る虫捕獲具は、下記(1)〜(5)を特徴としている。
(1) 少なくとも片面が粘着剤を有する粘着面とされて樹幹に巻きつけられる可撓性シートを備えた虫捕獲具であって、
前記可撓性シートの粘着面と相対する樹皮との間に配置され、虫が通る隙間を形成するスペーサが、前記隙間より細い複数の可撓性長尺部材を結んで形成した有結節網の結節から成ること。
【0009】
(2) 少なくとも片面が粘着剤を有する粘着面とされて樹幹に巻きつけられる可撓性シートを備えた虫捕獲具であって、
前記可撓性シートの粘着面と相対する樹皮との間に配置され、虫が通る隙間を形成するスペーサが、前記隙間より細い可撓性長尺部材に所定間隔で形成された複数の結び目から成ること。
【0010】
(3) 少なくとも片面が粘着剤を有する粘着面とされて樹幹に巻きつけられる可撓性シートを備えた虫捕獲具であって、
前記可撓性シートの粘着面と相対する樹皮との間に配置され、虫が通る隙間を形成するスペーサが、前記隙間より細い可撓性長尺部材により所定間隔で連結された複数のスペーサ部材から成ること。
【0011】
(4) 少なくとも片面が粘着剤を有する粘着面とされて樹幹に巻きつけられる可撓性シートを備えた虫捕獲具であって、
前記粘着面には、該粘着面と樹皮との間に虫が通る隙間を形成するスペーサを取り付ける際の取付け位置及び取付け向き示すマークが設けられ、
前記スペーサは、少なくとも平面視で一部分が鋭角三角形状部分を有する外形形状であり、これにより前記可撓性シートを樹幹に巻き付ける際に前記鋭角三角形状部分が天面となるように前記マークに取付けられること。
【0012】
(5) 少なくとも片面が粘着剤を有する粘着面とされて樹幹に巻きつけられる可撓性シートを備えた虫捕獲具であって、
前記可撓性シートの粘着面と相対する樹皮との間に配置され、虫が通る隙間を形成するスペーサが、少なくとも前記可撓性シートの上端縁付近に上端が位置するように前記樹幹の周囲に所定間隔で略鉛直方向に配置された複数の長尺状スペーサ部材から成ること。
【0013】
上記(1)の構成の虫捕獲具によれば、所定の大きさの結節(結び目)を有する有結節網を樹幹に巻き付けた後、粘着面が樹皮と相対するように可撓性シートを有結節網の上から樹幹に巻き付けるだけで、可撓性シートの粘着面と樹皮との間に虫を捕獲するのに適した隙間を保つことができる。ここで適した隙間とは、穿孔害虫が樹幹内から外に這い出す時に粘着面に捕獲でき、フラスは粘着面に付着しない程度の隙間が形成された状態を意味する。
また、有結節網を構成する可撓性長尺部材自体は細く、結節も小さいので、カシノナガクキムシ等の虫が穿孔した樹幹の穿入孔からでた大量のフラスを結節(スペーサ)に積もり難くすることができる。
また、結節と結節の間隔や結節の大きさは、有結節網の網目の大きさや結び目の形を変えることで任意に変えることができるので、樹幹の太さや樹皮の形状に合わせた調整が容易であり、虫捕獲具の取付け作業が煩雑になることがない。
【0014】
上記(2)の構成の虫捕獲具によれば、所定間隔で複数の結び目が形成された可撓性長尺部材を所定のピッチで螺旋状に樹幹に巻き付けた後、粘着面が樹皮と相対するように可撓性シートを可撓性長尺部材の上から樹幹に巻き付けるだけで、可撓性シートの粘着面と樹皮との間に虫を捕獲するのに適した隙間を保つことができる。
また、可撓性長尺部材自体は細く、結び目も小さいので、カシノナガクキムシ等の虫が穿孔した樹幹の穿入孔からでた大量のフラスを結び目(スペーサ)に積もり難くすることができる。
また、結び目の大きさや結び目と結び目の間隔は、結び目の間隔や結び方を変えたり、可撓性長尺部材を螺旋状に樹幹に巻き付ける際のピッチを変えたりすることで任意に変えることができるので、樹幹の太さや樹皮の形状に合わせた調整が容易であり、虫捕獲具の取付け作業が煩雑になることがない。
【0015】
上記(3)の構成の虫捕獲具によれば、所定間隔で複数のスペーサ部材を連結した可撓性長尺部材を所定のピッチで螺旋状に樹幹に巻き付けた後、粘着面が樹皮と相対するように可撓性シートを可撓性長尺部材の上から樹幹に巻き付けるだけで、可撓性シートの粘着面と樹皮との間に虫を捕獲するのに適した隙間を保つことができる。
また、可撓性長尺部材自体は細く、スペーサ部材も小さくできるので、カシノナガクキムシ等の虫が穿孔した樹幹の穿入孔からでた大量のフラスをスペーサ部材(スペーサ)に積もり難くすることができる。即ち、スペーサ部材は予め可撓性長尺部材に連結されるので、1個あたりの大きさを小さくして数を増やしても虫捕獲具の取付け作業が煩雑になることがない。
【0016】
上記(4)の構成の虫捕獲具によれば、スペーサは少なくとも平面視で一部分が鋭角三角形状部分を有する外形形状を有し、可撓性シートを樹幹に巻き付ける際に鋭角三角形状部分が天面となるように粘着面に取り付けられる。そこで、カシノナガクキムシ等の虫が穿孔した樹幹の穿入孔からでた大量のフラスはスペーサに積もり難くなる。即ち、1個あたりのスペーサを小さくして数量を増やす必要がないので、虫捕獲具の取付け作業が煩雑になることがない。また、粘着面には、スペーサを取り付ける際の取付け位置及び取付け向き示すマークが設けられているので、フラスが積もり難い鋭角三角形状部分が天面となるようにスペーサを確実に取り付けることができる。
【0017】
上記(5)の構成の虫捕獲具によれば、複数の長尺状スペーサ部材を樹幹の周囲に所定間隔で略鉛直方向に配置した後、粘着面が樹皮と相対するように可撓性シートを長尺状スペーサ部材の上から樹幹に巻き付けるだけで、可撓性シートの粘着面と樹皮との間に虫を捕獲するのに適した隙間を保つことができる。
また、長尺状スペーサ部材は、少なくとも可撓性シートの上端縁より若干引っ込んだ位置から突出した位置までを含む上端縁付近に上端が位置し、略鉛直方向(例えば±30度程度の傾斜範囲を含む)に伸びるように配置されるので、カシノナガクキムシ等の虫が穿孔した樹幹の穿入孔からでた大量のフラスを長尺状スペーサ部材(スペーサ)に積もり難くすることができる。尚、長尺状スペーサ部材の下端の位置は、該長尺状スペーサ部材が可撓性シートの粘着面と相対する樹皮との間に所定の隙間を形成できる位置であれば特に制限されない。
また、可撓性シートの粘着面と樹皮との間隔は、長尺状スペーサ部材の太さを変えたり、樹幹の周囲に配置する長尺状スペーサ部材の本数を変えたりすることで任意に変えることができるので、樹幹の太さや樹皮の形状に合わせた調整が容易であり、虫捕獲具の取付け作業が煩雑になることがない。
【発明の効果】
【0018】
本発明の虫捕獲具によれば、カシノナガクキムシ等の虫が穿孔した樹幹の孔からでた大量のフラスをスペーサに積もり難くすることができ、樹幹への取付け作業が簡単で、フラスによって虫の捕獲効率が低下することのない良好な虫捕獲具を提供できる。
【0019】
以上、本発明について簡潔に説明した。さらに、以下に発明を実施するための形態(以下、「実施形態」という。)を添付の図面を参照して詳細に説明をする。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の第1実施形態に係る虫捕獲具の概要を示す斜視図である。
【図2】図1に示した可撓性シートの粘着面を示す正面図である。
【図3】図1に示した可撓性シートの概要を示す斜視図である。
【図4】図1に示したスペーサの使用状態を示す斜視図である。
【図5】図1に示した虫捕獲具の使用状態を示す斜視図である。
【図6】図5に示した虫捕獲具の縦断面図である。
【図7】本発明の第2実施形態に係るスペーサの使用状態を示す斜視図である。
【図8】本発明の第2実施形態に係る虫捕獲具の使用状態を示す斜視図である。
【図9】本発明の第3実施形態に係るスペーサの部分斜視図である。
【図10】本発明の第4実施形態に係る虫捕獲具の使用状態を示す部分破断斜視図である。
【図11】図10に示したスペーサの作用を説明する要部拡大斜視図である。
【図12】図10に示したスペーサの変形例を示す斜視図である。
【図13】本発明の第5実施形態に係る虫捕獲具の使用状態を示す斜視図である。
【図14】図13に示した虫捕獲具の水平断面図である。
【図15】本発明の第6実施形態に係る虫捕獲具の使用状態を示す斜視図である。
【図16】図15に示した虫捕獲具の水平断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照して本発明の一実施形態を詳細に説明する。
図1に示すように、本発明の第1実施形態に係る虫捕獲具1は、可撓性シートである害虫捕獲調査シート3と有結節網2とで構成されている。
本第1実施形態に係る有結節網2は、可撓性長尺部材である線径約1mmの糸21を結んで形成した網であり、結び目である結節23が約3mmの直径を有している。図1に示した有結節網2は、網目の形状が方形の角目網地であるが、網目の形状が菱形の菱目網地を用いることもできる。糸21は、例えばポリエチレン等の合成繊維からなる。
【0022】
そして、有結節網2における各結節23は、後述する害虫捕獲調査シート3を樹幹40に固定した時に、害虫捕獲調査シート3の粘着面31と相対する樹皮41との間に配置され、虫を捕獲するのに適した隙間Sを形成するスペーサを構成する(図6参照)。そこで、各結節23の直径は、虫(カシノナガクキムシ等の体長4〜5mmの甲虫)が通れる程度から翅を広げられる程度の隙間Sを形成する1〜10mmの範囲が好ましい。尚、結節23の直径は、糸21の線径や結び目の形を変えることで、容易に調整することができる。
【0023】
害虫捕獲調査シート3は、屋外における耐水性及び耐湿性を備えた紙や合成樹脂フィルム、生分解性プラスチックなどから成る長方形状の可撓性シート材である。
害虫捕獲調査シート3の外面3aには、図1に示すように、設置状況や設置者、試料番号などを記入するための記入欄33や、害虫捕獲調査シート3を樹幹に固定する際にタッカー(鋲打ち機)でステープル(針)を打つ位置を示す固定位置マーク35が表示されている。なお、第三者に知らせるために、「きくい虫調査シート」や「調査中 はがさないでください」等の用途表示を施すこともできる。
【0024】
害虫捕獲調査シート3の内面3bには、図2に示すように、外縁部から所定の範囲を除き粘着剤が塗布された粘着面(図2に斜線で示した部分)31が形成されている。粘着剤としては、圧力をかけなくとも接触するだけで虫が付着し、野外で使用しても粘着性を3ヶ月以上の長期間維持することができる接着剤を用いることがよい。
【0025】
粘着面31の下層には、周囲に目盛を有する20個のマス目36と、後述するスペーサ60を取り付ける際の取付け位置及び取付け向き示す複数のマーク37が設けられている。マス目36が粘着面31の下層に設けられることにより、虫の捕獲数をマス目毎に計測することができる。尚、粘着剤は、下層のマス目36を目視可能とするため、透明又は半透明の接着剤が望ましい。
内面3bの上縁部中央には、害虫捕獲調査シート3を樹幹に固定する際の設置方位を統一するため、方角や斜面方向を示す方位マーク(例えば、「東」や「谷」)32が設けられている。更に、粘着面31の周囲には、外面3aと同様に記入欄33や固定位置マーク35が表示されている。
【0026】
尚、図3に示すように、販売・搬送される際に不所望の粘着が生じないように、使用前の害虫捕獲調査シート3の粘着面31には、離型紙39が貼着されている。そして、害虫捕獲調査シート3を使用する際には、長手方向中央に形成されたミシン目38を破断しながら離型紙39を剥がして粘着面31を露呈させる。ここで、離型紙39をミシン目38で二分割しながら剥がすことで、離型紙39を剥がすために必要な力を分割しない場合よりも小さくできる。離型紙39を剥がし易くするため、ミシン目38に対応する内面3bの長手方向中央には、粘着面31が形成されていない。
【0027】
次に、本第1実施形態に係る虫捕獲具1の使用方法について説明する。虫捕獲具1は、地表から適当な高さ(例えば、1m〜4m)で樹幹40の樹皮41に取り付けて使用される。
先ず、図4に示すように、有結節網2を樹幹40の所定位置に巻き付け、結節23が樹皮41に当接するように固定する。糸21を結んで形成した有結節網2は、可撓性を有しているので、樹幹40の樹皮41に沿って容易に巻き付けることができ、樹幹40に対する固定も容易である。有結節網2の固定手段としては、留め具や留めバンド、タッカーなど種々の固定手段を用いることができる。
【0028】
次に、離型紙39を剥がした後、図5に示すように、内面3bの粘着面31が樹皮41と相対するように害虫捕獲調査シート3を有結節網2の上から樹幹40に巻き付ける。この際、害虫捕獲調査シート3は、内面3bに設けた方位マーク32が、設置方角である例えば「東」の方位や、斜面の「谷」側となるようにして巻き付けられる。
【0029】
そして、外面3aに表示されている固定位置マーク35にタッカーでステープル45を打ち付け、害虫捕獲調査シート3を樹幹40に固定することによって、虫捕獲具1の取り付けが完了する。可撓性シート材から成る害虫捕獲調査シート3は、可撓性を有しているので、樹幹40の樹皮41及び有結節網2に沿って容易に巻き付けることができ、樹幹40に対する固定も容易である。
【0030】
この様に樹幹40に固定された虫捕獲具1は、有結節網2の上から巻き付けられた害虫捕獲調査シート3の粘着面31が有結節網2の結節23に付着し、有結節網2の網目である複数の結節23の間隔部には、図6に示すように、粘着面31と樹皮41との間に虫を捕獲するのに適した隙間Sが形成される。
【0031】
以上のように樹幹40に固定された虫捕獲具1を放置すると、樹幹40の穿入孔内から出てきたカシノナガキクイムシ等の害虫が、害虫捕獲調査シート3の粘着面31に付着し、捕獲される。また、上記隙間Sを通ろうとして粘着面31と樹皮41との間に入り込んだ害虫も、粘着面31に付着して捕獲される。
この様に適当な期間(通常は数ヶ月)樹幹40に固定して放置された虫捕獲具1は、適当な時期に害虫捕獲調査シート3を外して、捕獲害虫を観察したり、或いはマス目毎に捕獲数を計測したりして、調査が行われる。
カシノナガキクイムシにおいて具体例を挙げれば、樹幹からカシノナガキクイムシが脱出する時期は、本州で6月〜11月頃の約半年におよぶことから、害虫捕獲調査シートは脱出間近の5月頃に設置し、11月頃に回収するのが好ましい。
【0032】
上述したように、本第1実施形態に係る虫捕獲具1によれば、所定の大きさの結節23を有する有結節網2を樹幹40に巻き付けた後、粘着面31が樹皮41と相対するように害虫捕獲調査シート3を有結節網2の上から樹幹40に巻き付けるだけで、害虫捕獲調査シート3の粘着面31と樹皮41との間に虫を捕獲するのに適した隙間Sを容易に形成することができる。そこで、樹幹40への取付け作業が簡単になり、虫捕獲具1を多くの樹幹40に容易に取り付けることができる。
【0033】
また、有結節網2を構成する糸21自体は細く、結節23も小さいので、カシノナガクキムシ等の虫が穿孔した樹幹の穿入孔からでた大量のフラスを結節23に積もり難くすることができ、フラスは地上に落下する。そこで、有結節網2の上に積もったフラスによって捕獲に有効な粘着面31が減少することは無く、虫捕獲具1は虫の捕獲効率が低下し難い。
また、結節23と結節23の間隔や結節23の大きさは、有結節網2の網目の大きさや結び目の形を変えることで任意に変えることができるので、樹幹40の太さや樹皮41の形状に合わせた調整が容易であり、虫捕獲具1の取付け作業が煩雑になることがない。
【0034】
図7及び図8は、本発明の第2実施形態に係るスペーサ及び虫捕獲具の使用状態を示す斜視図である。尚、上記第1実施形態に係る虫捕獲具1と同様の構成部材については、同符号を付して説明を省略する。
本第2実施形態に係る虫捕獲具11は、可撓性シートである害虫捕獲調査シート3と可撓性長尺部材12とで構成されている。
本第2実施形態に係る可撓性長尺部材12は、線径約1mmの糸15に所定間隔で複数の結び目17を形成した紐であり、結び目17が約3mmの直径を有している。糸15は、例えばポリエチレン等の合成繊維からなる。
【0035】
そして、可撓性長尺部材12における各結び目17は、害虫捕獲調査シート3を樹幹40に固定した時に、害虫捕獲調査シート3の粘着面31と相対する樹皮41との間に配置され、虫を捕獲するのに適した隙間Sを形成するスペーサを構成する。そこで、各結び目17の直径は、虫(カシノナガクキムシ等の体長4〜5mmの甲虫)が通れる程度から翅を広げられる程度の隙間Sを形成する1〜10mmの範囲が好ましい。尚、結び目17の直径は、糸15の線径や結び目の形を変えることで、容易に調整することができる。
【0036】
次に、本第2実施形態に係る虫捕獲具11の使用方法について説明する。
先ず、図7に示すように、可撓性長尺部材12を所定のピッチで螺旋状に樹幹40の所定位置に巻き付け、結び目17が樹皮41に当接するように固定する。糸15から成る可撓性長尺部材12は、可撓性を有しているので、樹幹40の樹皮41に沿って容易に巻き付けることができ、樹幹40に対する固定も容易である。可撓性長尺部材12の固定手段としては、留め具や留めバンド、タッカーなど種々の固定手段を用いることができ、両端部をそれぞれ結び付けても良い。
【0037】
次に、上記第1実施形態に係る虫捕獲具1と同様に、離型紙39を剥がした後、図8に示すように、内面3bの粘着面31が樹皮41と相対するように害虫捕獲調査シート3を可撓性長尺部材12の上から樹幹40に巻き付ける。
そして、外面3aに表示されている固定位置マーク35にタッカーでステープル45を打ち付け、害虫捕獲調査シート3を樹幹40に固定することによって、虫捕獲具11の取り付けが完了する。
【0038】
この様に樹幹40に固定された虫捕獲具11は、可撓性長尺部材12の上から巻き付けられた害虫捕獲調査シート3の粘着面31が可撓性長尺部材12の結び目17に付着し、複数の結び目17の間隔部には、粘着面31と樹皮41との間に虫を捕獲するのに適した隙間Sが形成される。
【0039】
上述したように、本第2実施形態に係る虫捕獲具11によれば、所定間隔で複数の結び目17が形成された可撓性長尺部材12を所定のピッチで螺旋状に樹幹40に巻き付けた後、粘着面31が樹皮41と相対するように害虫捕獲調査シート3を可撓性長尺部材12の上から樹幹40に巻き付けるだけで、害虫捕獲調査シート3の粘着面31と樹皮41との間に虫を捕獲するのに適した隙間Sを容易に形成することができる。そこで、樹幹40への取付け作業が簡単になり、虫捕獲具11を多くの樹幹40に容易に取り付けることができる。
【0040】
また、可撓性長尺部材12の糸15自体は細く、結び目17も小さいので、カシノナガクキムシ等の虫が穿孔した樹幹の穿入孔からでた大量のフラスを結び目17に積もり難くすることができ、フラスは地上に落下する。そこで、可撓性長尺部材12の上に積もったフラスによって捕獲に有効な粘着面31が減少することは無く、虫捕獲具11は虫の捕獲効率が低下し難い。
【0041】
また、結び目17の大きさや結び目17と結び目17の間隔は、結び目17の間隔や結び方を変えたり、可撓性長尺部材12を螺旋状に樹幹40に巻き付ける際のピッチを変えたりすることで任意に変えることができるので、樹幹40の太さや樹皮41の形状に合わせた調整が容易であり、虫捕獲具11の取付け作業が煩雑になることがない。
【0042】
図9は、本発明の第3実施形態に係るスペーサの部分斜視図である。本第3実施形態に係る虫捕獲具は、上記第2実施形態に係る可撓性長尺部材12に換えて、スペーサとして可撓性長尺部材50を用いることで構成される。
【0043】
本第3実施形態に係る可撓性長尺部材50は、図9に示すように、虫を捕獲するのに適した隙間Sより細い線径約1mmの糸51により所定間隔で連結された複数のスペーサ部材52により構成されている。糸51は、例えばポリエチレン等の合成繊維からなり、スペーサ部材52は、例えば発泡ポリエチレン等の合成樹脂から成る。
【0044】
そして、可撓性長尺部材50におけるスペーサ部材52は、平面視で一部分が鋭角三角形状部分を有する三角形の外形形状を有した三角柱とされており、害虫捕獲調査シート3を樹幹40に固定した時に、害虫捕獲調査シート3の粘着面31と相対する樹皮41との間に配置され、虫を捕獲するのに適した隙間Sを形成するスペーサを構成する。そこで、各スペーサ部材52の厚み(三角柱の高さ)は、虫(カシノナガクキムシ等の体長4〜5mmの甲虫)が通れる程度から翅を広げられる程度の隙間Sを形成する1〜10mmの範囲が好ましい。また、これらスペーサ部材52は、図9に示したように、平面視での鋭角三角形状部分(頂部)52aが同一方向(図中上方)となるように糸51により連結されている。
【0045】
従って、複数のスペーサ部材52の鋭角三角形状部分52aが上方を向くようにして可撓性長尺部材50を所定のピッチで螺旋状に樹幹40に巻き付けた後、粘着面31が樹皮41と相対するように害虫捕獲調査シート3を可撓性長尺部材50の上から樹幹40に巻き付けるだけで、害虫捕獲調査シート3の粘着面31と樹皮41との間に虫を捕獲するのに適した隙間Sを容易に形成することができる。
その結果、上記第2実施形態に係る虫捕獲具11と同様の作用効果を得ることができる。
【0046】
尚、可撓性長尺部材50の糸51自体は細く、スペーサ部材52の鋭角三角形状部分52aが天面となるように取付けることで、カシノナガクキムシ等の虫が穿孔した樹幹40の穿入孔からでた大量のフラスをスペーサ部材52に積もり難くすることができ、フラスはスペーサ部材52の傾斜面を滑って地上に落下する。そこで、可撓性長尺部材50の上に積もったフラスによって捕獲に有効な粘着面31が減少することは無く、本第3実施形態に係る虫捕獲具も虫の捕獲効率が低下し難い。
【0047】
また、スペーサ部材52は予め糸51に連結されるので、1個あたりの大きさを小さくして数を増やしても虫捕獲具の取付け作業が煩雑になることがない。従って、スペーサ部材を小さくし、外形形状に関わらずフラスを積もり難くすることもできる。
【0048】
図10は、本発明の第4実施形態に係る虫捕獲具の使用状態を示す部分破断斜視図である。尚、上記第1実施形態に係る虫捕獲具1と同様の構成部材については、同符号を付して説明を省略する。
本第4実施形態に係る虫捕獲具61は、害虫捕獲調査シート3とスペーサ60とで構成されている。
【0049】
本第4実施形態に係るスペーサ60は、少なくとも平面視で一部分が鋭角三角形状部分60aを有する三角形の外形形状を有した三角柱とされており、害虫捕獲調査シート3を樹幹40に固定する際に、害虫捕獲調査シート3の粘着面31に予め貼り付けられ、虫を捕獲するのに適した隙間Sを形成する。そこで、各スペーサ60の厚み(三角柱の高さ)は、虫(カシノナガクキムシ等の体長4〜5mmの甲虫)が通れる程度から翅を広げられる程度の隙間Sを形成する1〜10mmの範囲が好ましい。スペーサ60は、例えば発泡ポリエチレン等の合成樹脂から成る。
【0050】
スペーサ60は、図11に示すように、害虫捕獲調査シート3を樹幹40に巻き付ける際に平面視での鋭角三角形状部分60aが天面となるように粘着面31に取り付けられることで、カシノナガクキムシ等の虫が穿孔した樹幹40の穿入孔70からでた大量のフラス71をスペーサ60に積もり難くすることができ、フラス71はスペーサ60の傾斜面を滑って地上に落下する。そこで、スペーサ60の上に積もったフラス71によって捕獲に有効な粘着面31が減少することは無く、本第4実施形態に係る虫捕獲具61も虫の捕獲効率が低下し難い。
【0051】
そこで、カシノナガクキムシ等の虫が穿孔した樹幹の穿入孔70からでた大量のフラス71はスペーサ60に積もり難くなる。即ち、1個あたりのスペーサ60を小さくして数量を増やす必要がないので、虫捕獲具61の取付け作業が煩雑になることがない。また、粘着面31には、図2に示したように、スペーサ60を取り付ける際の取付け位置及び取付け向き示すマーク37が設けられているので、フラス71が積もり難い鋭角三角形状部分60aが天面となるようにスペーサ60を確実に取り付けることができる。
【0052】
従って、粘着面31に鋭角三角形状部分60aが天面となるようにして予め複数のスペーサ60が貼り付けられた害虫捕獲調査シート3を樹幹40に巻き付けるだけで、害虫捕獲調査シート3の粘着面31と樹皮41との間に虫を捕獲するのに適した隙間Sを容易に形成することができる。その結果、上記第1実施形態に係る虫捕獲具1と同様の作用効果を得ることができる。
【0053】
尚、本第4実施形態に係るスペーサの形状は、少なくとも平面視で一部分が鋭角三角形状部分を有するフラス71が積もり難い外形形状であれば、上記スペーサ60の形状に限定されるものではなく、種々の外形形状とすることができる。
図12は、図10に示したスペーサ60の変形例を示す斜視図である。
図12(a)に示したスペーサ80は、平面視で上部分が鋭角三角形状部分80aを有する菱形の外形形状を有した四角柱とされており、平面視での鋭角三角形状部分80aが天面となるように粘着面31に取り付けられる。
図12(b)に示したスペーサ90は、平面視で上部分が鋭角三角形状部分90aを有する扇形の外形形状を有した柱状とされており、平面視での鋭角三角形状部分90aが天面となるように粘着面31に取り付けられる。
【0054】
図13及び図14は、本発明の第5実施形態に係る虫捕獲具の使用状態を示す斜視図及び水平断面図である。尚、上記第1実施形態に係る虫捕獲具1と同様の構成部材については、同符号を付して説明を省略する。
本第5実施形態に係る虫捕獲具81は、害虫捕獲調査シート3とスペーサ22とで構成されている。
【0055】
本第5実施形態に係るスペーサ22は、図13及び図14に示すように、樹幹40の周囲に所定間隔で略鉛直方向(例えば±30度程度の傾斜範囲を含む)に配置された複数(本実施形態では4本)の長尺状スペーサ部材24により構成されている。長尺状スペーサ部材24は、例えば合成樹脂や金属等からなる剛性を有する丸棒状の部材である。長尺状スペーサ部材24は、下端を地面に刺すことで、樹皮41との間に所定間隔を有した状態で略鉛直方向に向かって設置される。勿論、長尺状スペーサ部材24の断面形状は、円形に限らず楕円形や多角形等の種々の断面形状を採りうる。また、長尺状スペーサ部材24は、長手方向に沿って所定間隔で節を有する外形状とすることもできる。
【0056】
そして、これら長尺状スペーサ部材24は、害虫捕獲調査シート3を樹幹40に固定した時に、害虫捕獲調査シート3の粘着面31と相対する樹皮41との間に配置され、虫を捕獲するのに適した1〜10mmの範囲に隙間Sを形成する(図14参照)。尚、粘着面31と樹皮41との間隔は、長尺状スペーサ部材24の直径や本数を変えることで、容易に調整することができる。
【0057】
次に、本第5実施形態に係る虫捕獲具81の使用方法について説明する。
先ず、下端を地面に突き刺し、樹皮41との間に所定間隔を有した状態で上端24aが略鉛直方向に向かうように、各長尺状スペーサ部材24を樹幹40の周囲に所定間隔で配置する。剛性を有する丸棒から成る長尺状スペーサ部材24は、樹幹40の周囲の地面に容易に突き刺すことができ、樹幹40に対する固定も容易である。長尺状スペーサ部材24の固定手段としては、各長尺状スペーサ部材24に直接結び付けたり、各長尺状スペーサ部材24の直径方向(短手方向)に形成した貫通孔を挿通させたりした紐等を樹幹40の周囲に巻き付けるなど種々の固定手段を用いることができる。
【0058】
次に、上記第1実施形態に係る虫捕獲具1と同様に、離型紙39を剥がした後、図13に示すように、内面3bの粘着面31が樹皮41と相対し、長尺状スペーサ部材24の上端24aが露呈するように害虫捕獲調査シート3を長尺状スペーサ部材24の上から樹幹40に巻き付ける。
そして、外面3aに表示されている固定位置マーク35にタッカーでステープル45を打ち付け、害虫捕獲調査シート3を樹幹40に固定することによって、虫捕獲具81の取り付けが完了する。
【0059】
この様に樹幹40に固定された虫捕獲具81は、図14に示すように、長尺状スペーサ部材24の上から巻き付けられた害虫捕獲調査シート3の粘着面31が長尺状スペーサ部材24に付着し、隣接する複数の長尺状スペーサ部材24の間隔部には、粘着面31と樹皮41との間に虫を捕獲するのに適した範囲の隙間Sが形成される。
【0060】
上述したように、本第5実施形態に係る虫捕獲具81によれば、複数の長尺状スペーサ部材24を樹幹40の周囲に所定間隔で略鉛直方向に配置した後、粘着面31が樹皮41と相対し、長尺状スペーサ部材24の上端24aが露呈するように害虫捕獲調査シート3を長尺状スペーサ部材24の上から樹幹40に巻き付けるだけで、害虫捕獲調査シート3の粘着面31と樹皮41との間に虫を捕獲するのに適した範囲の隙間Sを保つことができる。
【0061】
また、スペーサ22は、長尺状スペーサ部材24の上端24aが害虫捕獲調査シート3の上端縁より突出した上端縁付近に位置し、略鉛直方向に伸びるように配置される。そこで、カシノナガクキムシ等の虫が穿孔した樹幹40の穿入孔からでた大量のフラスを長尺状スペーサ部材24に積もり難くすることができ、フラスは地上に落下する。そこで、長尺状スペーサ部材24の上に積もったフラスによって捕獲に有効な粘着面31が減少することは無く、虫捕獲具81は虫の捕獲効率が低下し難い。尚、長尺状スペーサ部材24の上端24aは、害虫捕獲調査シート3の粘着面31と樹皮41との間に隙間Sを形成できれば、害虫捕獲調査シート3の上端縁と同じ或いは若干引っ込んだ位置でもよい。
【0062】
また、害虫捕獲調査シート3の粘着面31と樹皮41との間隔は、長尺状スペーサ部材24の太さを変えたり、樹幹40の周囲に配置する長尺状スペーサ部材24の本数を変えたりすることで任意に変えることができるので、樹幹40の太さや樹皮41の形状に合わせた調整が容易であり、虫捕獲具81の取付け作業が煩雑になることがない。
【0063】
図15及び図16は、本発明の第6実施形態に係る虫捕獲具の使用状態を示す斜視図及び水平断面図である。尚、上記第1実施形態に係る虫捕獲具1と同様の構成部材については、同符号を付して説明を省略する。
本第6実施形態に係る虫捕獲具91は、害虫捕獲調査シート3とスペーサ26とで構成されている。
【0064】
本第6実施形態に係るスペーサ26は、図15及び図16に示すように、樹幹40の周囲に所定間隔で略鉛直方向に配置された複数(本実施形態では3本)の長尺状スペーサ部材28により構成されている。長尺状スペーサ部材28は、例えば合成樹脂や天然繊維等からなる可撓性を有する紐状の部材である。長尺状スペーサ部材28は、上端部をステープル45で樹幹40に固定した後、僅かな螺旋状(例えばリード角が約60度以上)に巻き付けた下端部もステープル45で樹幹40に固定することで、樹皮41との間に所定間隔を有した状態で略鉛直方向に向かって設置される。
【0065】
そして、これら長尺状スペーサ部材28は、害虫捕獲調査シート3を樹幹40に固定した時に、害虫捕獲調査シート3の粘着面31と相対する樹皮41との間に配置され、虫を捕獲するのに適した1〜10mmの範囲に隙間Sを形成する(図16参照)。尚、粘着面31と樹皮41との間隔は、長尺状スペーサ部材28の直径や本数を変えることで、容易に調整することができる。
【0066】
次に、本第6実施形態に係る虫捕獲具91の使用方法について説明する。
先ず、上端部をステープル45で樹幹40に固定し、僅かな螺旋状に巻き付けた下端部もステープル45で樹幹40に固定することで、各長尺状スペーサ部材28を樹幹40の周囲に所定間隔で略鉛直方向に配置する。可撓性を有する紐から成る長尺状スペーサ部材28は、樹幹40の樹皮41に沿って容易に巻き付けることができ、樹幹40に対する固定も容易である。長尺状スペーサ部材28の固定手段としては、タッカーに限らず留め具や留めバンドなど種々の固定手段を用いることができる。
尚、長尺状スペーサ部材28は、螺旋状に巻き付けずに下端部を鉛直方向に垂らした状態でもよいが、僅かに螺旋状に巻き付けることで、粘着面31と樹皮41との間に隙間Sを形成する為に必要な長尺状スペーサ部材28の本数を最小とすることができる。
【0067】
次に、上記第1実施形態に係る虫捕獲具1と同様に、離型紙39を剥がした後、図15に示すように、内面3bの粘着面31が樹皮41と相対し、長尺状スペーサ部材28の上端28aが露呈するように害虫捕獲調査シート3を長尺状スペーサ部材28の上から樹幹40に巻き付ける。
そして、外面3aに表示されている固定位置マーク35にタッカーでステープル45を打ち付け、害虫捕獲調査シート3を樹幹40に固定することによって、虫捕獲具91の取り付けが完了する。
【0068】
この様に樹幹40に固定された虫捕獲具91は、図16に示すように、長尺状スペーサ部材28の上から巻き付けられた害虫捕獲調査シート3の粘着面31が長尺状スペーサ部材28に付着し、複数の長尺状スペーサ部材28の間隔部には、粘着面31と樹皮41との間に虫を捕獲するのに適した範囲の隙間Sが形成される。
【0069】
上述したように、本第6実施形態に係る虫捕獲具91によれば、複数の長尺状スペーサ部材28を樹幹40の周囲に所定間隔で略鉛直方向に配置した後、粘着面31が樹皮41と相対し、長尺状スペーサ部材28の上端28aが露呈するように害虫捕獲調査シート3を長尺状スペーサ部材28の上から樹幹40に巻き付けるだけで、害虫捕獲調査シート3の粘着面31と樹皮41との間に虫を捕獲するのに適した範囲の隙間Sを保つことができる。
【0070】
また、スペーサ26は、長尺状スペーサ部材28の上端28aが害虫捕獲調査シート3の上端縁より突出した上端縁付近に位置し、略鉛直方向に伸びる僅かな螺旋状に巻き付けられて配置される。そこで、カシノナガクキムシ等の虫が穿孔した樹幹40の穿入孔からでた大量のフラスを長尺状スペーサ部材28に積もり難くすることができ、フラスは地上に落下する。そこで、長尺状スペーサ部材28の上に積もったフラスによって捕獲に有効な粘着面31が減少することは無く、虫捕獲具91は虫の捕獲効率が低下し難い。尚、長尺状スペーサ部材28の上端28aは、害虫捕獲調査シート3の粘着面31と樹皮41との間に隙間Sを形成できれば、害虫捕獲調査シート3の上端縁と同じ或いは若干引っ込んだ位置でもよい。また、長尺状スペーサ部材28の下端28bの位置も、該長尺状スペーサ部材28が害虫捕獲調査シート3の粘着面31と樹皮41との間に隙間Sを形成できる位置であれば、害虫捕獲調査シート3の下端縁と同じ或いは若干引っ込んだ位置でもよい。
【0071】
また、害虫捕獲調査シート3の粘着面31と樹皮41との間隔は、長尺状スペーサ部材28の太さを変えたり、樹幹40の周囲に配置する長尺状スペーサ部材28の本数を変えたりすることで任意に変えることができるので、樹幹40の太さや樹皮41の形状に合わせた調整が容易であり、虫捕獲具91の取付け作業が煩雑になることがない。
【0072】
尚、本発明の虫捕獲具に係る可撓性シート、有結節網、結節、可撓性長尺部材、結び目及び長尺状スペーサ部材等の構成部材は、上記実施形態の構成に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づいて種々の形態を採りうる。
【0073】
上記実施形態に係る長尺状スペーサ部材22,26では、害虫捕獲調査シート3の上下端縁を貫通し、略鉛直方向に伸びるように配置された例を示したが、本発明の長尺状スペーサ部材は少なくとも上端が可撓性シートの上端縁から突出していればよく、下端が可撓性シートの下端縁から突出していなくても良い。
また、上記実施形態おいては、予め所定の長方形状にカットされた害虫捕獲調査シート3を用いたが、ロール型の連続した可撓性シートを使用時に所定位置でカットして使用するようにしても良い。
【0074】
また、上記実施形態においては、虫を捕獲して調査する虫捕獲具を例に説明したが、本発明の虫捕獲具は害虫を捕獲して駆除する害虫捕獲具として用いることができることは勿論である。
また、害虫捕獲調査シート3は、粘着面31を外側に向けて樹幹40に直接固定して用いることもでき、内外両面に粘着面31を設けることもできる。
【符号の説明】
【0075】
1 虫捕獲具
2 有結節網
3 害虫捕獲調査シート
21 糸
23 結節
31 粘着面
39 離型紙
S 隙間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも片面が粘着剤を有する粘着面とされて樹幹に巻きつけられる可撓性シートを備えた虫捕獲具であって、
前記可撓性シートの粘着面と相対する樹皮との間に配置され、虫が通る隙間を形成するスペーサが、前記隙間より細い複数の可撓性長尺部材を結んで形成した有結節網の結節から成ることを特徴とする虫捕獲具。
【請求項2】
少なくとも片面が粘着剤を有する粘着面とされて樹幹に巻きつけられる可撓性シートを備えた虫捕獲具であって、
前記可撓性シートの粘着面と相対する樹皮との間に配置され、虫が通る隙間を形成するスペーサが、前記隙間より細い可撓性長尺部材に所定間隔で形成された複数の結び目から成ることを特徴とする虫捕獲具。
【請求項3】
少なくとも片面が粘着剤を有する粘着面とされて樹幹に巻きつけられる可撓性シートを備えた虫捕獲具であって、
前記可撓性シートの粘着面と相対する樹皮との間に配置され、虫が通る隙間を形成するスペーサが、前記隙間より細い可撓性長尺部材により所定間隔で連結された複数のスペーサ部材から成ることを特徴とする虫捕獲具。
【請求項4】
少なくとも片面が粘着剤を有する粘着面とされて樹幹に巻きつけられる可撓性シートを備えた虫捕獲具であって、
前記可撓性シートの粘着面と相対する樹皮との間に配置され、虫が通る隙間を形成するスペーサが、少なくとも前記可撓性シートの上端縁付近に上端が位置するように前記樹幹の周囲に所定間隔で略鉛直方向に配置された複数の長尺状スペーサ部材から成ることを特徴とする虫捕獲具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2012−210200(P2012−210200A)
【公開日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−108493(P2011−108493)
【出願日】平成23年5月13日(2011.5.13)
【出願人】(000100539)アース製薬株式会社 (191)
【Fターム(参考)】