説明

蚊用ベイト剤および蚊の防除方法

【課題】設置するだけで優れた誘引効果、致死効果が得られ、かつ持続性が高く、コンパクト化できる蚊用ベイト剤、および該蚊用ベイト剤を用いた蚊の防除方法の提供を目的とする。
【解決手段】殺虫成分を含む水溶液が、JIS Z8721で規定される明度が1〜4の含浸基体に含浸された蚊用ベイト剤。また、該蚊用ベイト剤を用いた蚊の防除方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蚊用ベイト剤および蚊の防除方法に関する。
【背景技術】
【0002】
蚊などの飛翔昆虫の殺虫方法としては、例えば、殺虫剤をスプレーなどで噴霧する方法が挙げられる。しかし、この方法は、噴霧された殺虫成分をヒトが吸い込むことでヒトに悪影響を及ぼすことが考えられる。また、この方法は、飛翔昆虫の存在を確認してからその都度殺虫剤を噴霧するものである。しかし、蚊の存在は蚊に刺されることによって気付くことも多く、この方法では蚊を未然に防ぐことができない。
【0003】
ヒトが飛翔昆虫の存在を確認するのとは関係なく該昆虫の防除を行うものとしては、例えば、以下の捕獲器が知られている。
(i)容器内に嗅覚誘引性捕獲部材(捕獲剤は落花生油など)が入れられ、該容器の上部が緑色で、その下部の明度が上部の明度よりも低い捕獲器(特許文献1)。
(ii)蚊の捕獲手段として粘着トラップを用い、該捕獲手段を収容する容器の内周面などを黒色布などで黒色にすることで蚊を誘引する捕獲器(特許文献2)。
これら捕獲器(i)、(ii)では、虫の係留や飛翔の色に対する習性の知見に基づいて容器の色を選択し、容器の色によって飛翔昆虫を誘引するものである。
【0004】
しかしながら、捕獲器(i)、(ii)は、前記嗅覚誘引性捕獲部材や粘着トラップで蚊などの飛翔昆虫をその場に捕らえるものであるため、それら捕獲部材において一度飛翔昆虫を捕獲した領域は再度捕獲には利用できない。このため、これらは多数の蚊を捕獲しようとするほど大きな捕獲スペースが必要になる。また、蚊を捕獲するにつれてその捕獲スペースが少なくなっていくので、継続して蚊などを捕獲しようとする場合には捕獲器の交換頻度が多くなる。
また、このような設置するだけで蚊などの昆虫を防除できるものは、それらの虫の誘引効果に優れ、高い致死効果を有していることが望ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−153645号公報
【特許文献2】特開2000−189030号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、設置するだけで優れた誘引効果、致死効果が得られ、かつ持続性が高く、コンパクト化できる蚊用ベイト剤、および該蚊用ベイト剤を用いた蚊の防除方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、前記課題を解決するために以下の構成を採用した。
[1]殺虫成分を含む水溶液が、JIS Z8721で規定される明度が1〜4の含浸基体に含浸された蚊用ベイト剤。
[2]前記含浸基体は、JIS Z8721で規定される色相が1R〜9Rである、前記[1]に記載の蚊用ベイト剤。
[3]前記含浸基体は、JIS Z8721で規定される色相がNである、前記[1]に記載の蚊用ベイト剤。
[4]前記[1]〜[3]のいずれか一項に記載の蚊用ベイト剤を用いた蚊の防除方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明の蚊用ベイト剤は、設置するだけで優れた誘引効果、致死効果が得られ、かつ持続性が高く、コンパクト化できる。
また、本発明の蚊の防除方法によれば、前記蚊用ベイト剤を設置するだけで優れた誘引効果、致死効果が得られ、持続して蚊を防除できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の蚊用ベイト剤の使用形態の一例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[蚊用ベイト剤]
本発明の蚊用ベイト剤は、蚊を防除する殺虫成分(以下、「殺虫成分A」という。)を含む水溶液(以下、単に「薬液」ということがある。)が含浸基体に含浸されたベイト剤である。
【0011】
本発明における含浸基体は、薬液を含浸させる基体であり、蚊が薬液を摂食(吸飲)する際に係留する足場となるものである。
含浸基体としては、薬液を含浸できるものであれば特に限定されない。
含浸基体としては、例えば、一般にシート材などの基材として用いられているものが利用でき、具体的には、天然繊維もしくは合成繊維の不織布または織布、紙などが挙げられる。
前記天然繊維としては、例えば、綿、パルプ、麻などの天然セルロース系繊維、パルプから得られるビスコースレーヨン、銅アンモニウムレーヨン、溶剤紡糸されたレーヨンであるリヨセル、テンセルなどの再生セルロース系繊維、キチン、アルギン酸繊維、コラーゲン繊維などの再生繊維などが挙げられる。
前記合成繊維としては、例えば、ポリオレフィン系繊維、ポリエステル系繊維、ポリアミド系繊維、ポリアクリロニトリル系繊維、ポリエステル系繊維、ポリアミド系繊維、ポリビニルアルコール系繊維、ポリウレタン系繊維などが挙げられる。
【0012】
含浸基体としては、薬液の浸透性が高い点から、パルプを素材とするものが好ましい。パルプを素材とする含浸基体としては、パルプ紙などが挙げられる。
パルプを素材とする含浸基体は、厚さ1cm当たりの目付けが1000〜2000g/mであることが好ましく、1200〜1600g/mであることがより好ましい。前記目付けが1000g/m以上であれば、当該含浸基体が薬剤を含浸した際に充分な強度が保たれ、蚊が係留しやすい。前記目付けが2000g/m以下であれば、含浸基体表面まで薬液が浸透しやすく、また蚊も係留しやすい。
【0013】
本発明における含浸基体の色は、JIS Z8721で規定される明度が1〜4であり、1〜3であることが好ましい。含浸基体の前記明度を1〜4とすることにより、蚊の誘引効果が向上し、蚊が含浸基体に係留して薬剤を摂食する頻度が高くなることで、蚊の致死効果が高くなる。
【0014】
また、含浸基体の色は、JIS Z8721で規定される色相が1R〜9Rで表される赤(5Rが特に好ましい)であるか、該色相がNで表される黒であることが好ましい。含浸基体が前記いずれかの色であれば、蚊の誘引効果がさらに向上し、蚊の致死効果がさらに高くなる。
【0015】
また、含浸基体の色は、JIS Z8721で規定される彩度が1〜6であることが好ましい。含浸基体の色の彩度が前記範囲内であれば、蚊の誘引効果が向上し、蚊の致死効果が高くなる。
【0016】
含浸基体を着色する方法は特に限定されない。例えば、紙などに所定の色を印刷する方法、公知の着色料で含浸基体を着色する方法などが挙げられる。
【0017】
本発明における薬液は、蚊に対して殺虫作用を有し、しかも忌避作用を有さないものであり、蚊が摂食を回避しないものである。薬液に含まれる殺虫成分Aとしては、蚊が摂食することでその蚊を防除できる成分であれば特に限定されず、例えば、ホウ酸および/またはその塩が挙げられる。なかでも、ホウ酸が好ましい。
ホウ酸塩としては、ホウ酸ナトリウム、ホウ酸カリウム、ホウ酸カルシウム、ホウ酸マグネシウムなどが挙げられる。
殺虫成分Aとしては、ホウ酸を用いてもよく、ホウ酸塩を用いてもよく、それらの混合物を用いてもよい。また、殺虫成分Aは、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0018】
薬液中の殺虫成分Aの含有量は、殺虫成分Aの種類によっても異なるが、殺虫成分Aがホウ酸および/またはその塩である場合、当該薬液の総質量に対し、0.1〜5質量%が好ましく、0.2〜5質量%がより好ましく、0.5〜5質量%がさらに好ましい。
前記含有量が0.1質量%以上であれば、蚊に対する致死効果が向上する。前記含有量が5質量%以下であれば、薬液中に殺虫成分Aを溶解することが容易になり、析出などが生じにくく経済性に優れる。また、蚊が薬液を忌避せずに摂食しやすくなり、蚊に対する致死効果が向上する。
【0019】
薬液には、殺虫成分Aに加えて、ヘキソース、糖アルコールおよび二糖からなる群から選択される少なくとも1種の化合物(以下、「化合物(I)」という。)が含まれていることが好ましい。薬液に化合物(I)を配合することにより、誘引効果が向上し、蚊の致死効果がさらに向上する。これは、化合物(I)が蚊に対して誘引作用を示し、蚊の摂食効率が向上するためであると考えられる。
【0020】
ヘキソースとしては、例えば、D−フルクトース(果糖)、D−グルコース(ブドウ糖)、D−ガラクトースなどが挙げられる。
糖アルコールとしては、例えば、D−ソルビトール、D−マンニトールなどが挙げられる。
二糖としては、例えば、マルトース、スクロース(ショ糖)などが挙げられる。
化合物(I)は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0021】
薬液中の化合物(I)の含有量は、当該薬液の総質量に対し、0.1〜20質量%が好ましく、1〜15質量%がより好ましく、3〜10質量%がさらに好ましい。化合物(I)の含有量が前記範囲内であれば、蚊に対する誘引作用が向上し、蚊に対する致死効果が向上する。
【0022】
本発明における薬液は、本発明の効果を損なわない範囲内において、必要に応じ、さらに殺虫成分Aおよび化合物(I)以外の他の成分を含有していてもよい。
他の成分としては、特に限定されず、従来公知の添加剤が使用できる。該添加剤としては、例えば、防腐剤、可溶化剤、香料、着色剤などが挙げられる。これらの添加剤は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0023】
薬液は、殺虫成分A、化合物(I)、および必要に応じて他の成分を水に溶解することにより調製できる。
【0024】
[蚊の防除方法]
本発明の蚊の防除方法は、前述した本発明の蚊用ベイト剤を用いて蚊を防除する方法である。
本発明の蚊用ベイト剤は、蚊が含浸基体に係留できるように、含浸基体の一部または全部を薬液面から露出させて使用する。含浸基体が薬液中に完全に浸漬した状態であると、蚊が係留する足場がなくなるため、摂食効率が低下し、充分な致死効果が得られない。
【0025】
本発明の蚊用ベイト剤を用いた防除方法としては、例えば、容器などから、薬液供給体(吸液芯)を用いて含浸基体を薬液で湿潤させて使用する方法などが挙げられる。具体的には、図1に例示した蚊用防除装置10を用いる方法が挙げられる。
蚊用防除装置10は、図1に示すように、容器1と、容器1内に設置された薬液供給体2と、薬液供給体2の頂部に設置された含浸基体3とを有し、容器1に薬液4が収容されており、薬液供給体2が薬液4に接触している。
【0026】
容器1の材質は特に限定されない。
容器1の色は、例えば、JIS Z8721で規定される明度、すなわちマンセルカラーシステムの明度が4超で、含浸基体とは異なる色相であることが好ましく、該明度が4超の白が特に好ましい。容器1と含浸基体3の色をこのように異なる色にすることにより、そのコントラストによって蚊を含浸基体3に誘引する効果がさらに高まる。
薬液供給体2としては、含浸基体3と同様の素材のものが利用できる。
【0027】
蚊用防除装置10においては、薬液4が薬液供給体2を介して含浸基体3まで輸送され、含浸基体3に薬液4が含浸されて湿潤した状態となる。この蚊用防除装置10を設置すると、含浸基体3の色、薬液4に含まれる化合物(I)などによって蚊が誘引され、該蚊が含浸基体3上に係留する。そして、該蚊が含浸基体3に含浸された薬液4を摂食し、再び飛翔する。薬液4を摂食した蚊は、その後殺虫成分Aによって死に致る。
このように蚊用防除装置10は、単に設置するだけで蚊を誘引して防除することができる。
【0028】
前述したように従来の捕獲器(i)、(ii)は、容器の色によって蚊などの飛翔昆虫を誘引するものである。つまり、容器に誘引された昆虫は粘着トラップなどの捕獲部材に必ずしも係留するわけではなく、誘引効果が向上してもそれが直ちに致死効果の向上に繋がるものではなかった。
これに対し、本発明の蚊用ベイト剤は、薬剤を含浸させる含浸基体の色の明度を1〜4とし、蚊が摂食行動を行う足場となる含浸基体自体の蚊の誘引効果を高め、さらに含浸基体における蚊の摂食行動を促進した。そのため、誘引効果の向上がそのまま致死効果の向上となって現れ、優れた致死効果で蚊の防除が行える。加えて、本発明者等は、蚊の係留および飛翔の色に対する習性を詳しく検討することで、黒色はもちろん色相が1R〜9Rでも非常に高い誘引効果が得られることを見い出した。含浸基体をこれらの色にすることで、致死効果をさらに高めることが可能となる。
また、本発明は、含浸基体上で薬液を摂食させることで蚊を防除するものであり、蚊を含浸基体上で捕獲して殺虫するものではない。つまり、蚊は含浸基体上で薬液を摂食し、再度飛翔した先で死に致る。そのため、蚊の防除を続けて行っても含浸基体には使用不可能となる領域が発生することがなく、多数の蚊を防除しようとする場合でも必要以上に含浸基体を大きくしなくてよいため、コンパクト化が可能である。さらに、含浸基体を頻繁に交換する必要もないため、蚊の防除を継続して行え、持続性にも優れている。
また、本発明の蚊用ベイト剤は、単に設置するという容易な手段で蚊を誘引して防除でき、また殺虫成分が揮散しないのでヒトに悪影響を及ぼすことも抑制できる。
【0029】
なお、本発明の防除方法は、前述した含浸基体に含浸させた薬液を蚊に摂食させることができるものであればよく、前述した蚊用防除装置10を用いる方法には限定されない。例えば、含浸基体を薬液に直接浸した後にそれを取り出して使用する方法であってもよい。
【実施例】
【0030】
以下、実施例及び比較例を示して本発明を詳細に説明する。ただし、本発明は以下の記載によっては限定されない。なお、本実施例における「%」は「質量%」を意味する。また、本実施例における明度、色相、彩度はJIS Z8721で規定されるものである。
また、本実施例で含浸基体として使用する濾紙は、色変換フリーソフト「色出し名人millennium II for windows」を用い、マンセル表記値をRGB標記値に変換した各色をパソコン上に出力し、それぞれを濾紙上に印刷することにより得た。
【0031】
[実施例1]
0.1%のホウ酸および1%の砂糖を含む水溶液(薬液)をプラカップ(直径5cm、深さ4cm)に入れ、該プラカップの底に、明度が1、色相がNの濾紙(含浸基体)を設置し、その濾紙に薬液を含浸させた。濾紙はその一部を薬液から露出させた。また、別のプラカップに1%砂糖水を入れ、該プラカップの底に、明度が9.5で色相がNの白色濾紙を設置し、前記と同様にその濾紙に砂糖水を含浸させ、濾紙の一部を砂糖水から露出させた。これら2つのプラカップをゲージ(縦50cm×横50cm×高さ50cm)内に設置し、該ゲージ内に50頭のチカイエカを放虫していずれかの吸蜜源(薬液、砂糖水)を自由に摂食できるようにした。そして、チカイエカを一昼夜自由行動させた後(24時間後)に、死亡個体数を計測した。
【0032】
[実施例2〜4]
薬液を含浸させる濾紙の色の明度および色相を表1に示すように変更した以外は、実施例1と同様にして死亡個体数を計測した。色相5R、5G、5Bについては、彩度は4とした。
【0033】
[比較例1〜3]
薬液を含浸させる濾紙の色の明度および色相を表1に示すように変更した以外は、実施例1と同様にして死亡個体数を計測した。色相5R、5G、5Bについては、彩度は4とした。
【0034】
実施例1〜4および比較例1〜3のチカイエカの致死効果については、以下の基準で評価した。
◎:死亡個体数が25頭以上であった。
○:死亡個体数が15頭以上25頭未満であった。
△:死亡個体数が10頭以上15頭未満であった。
×:死亡個体数が10頭未満であった。
実施例1〜4および比較例1〜3のチカイエカの致死効果の評価結果を表1に示す。ただし、表1の( )内の数値は、チカイエカの死亡個体数である。
【0035】
【表1】

【0036】
表1に示すように、濾紙(含浸基体)の色の明度が1〜4の実施例1〜4では、死亡個体数が多く、蚊の致死効果が高かった。これは、濾紙の色による誘引効果が向上し、蚊の薬液の摂食効率が向上したためであると考えられる。また、実施例1〜4では、5G(緑)や5B(青)に比べて5R(赤)や黒で特に致死効果が高かった。
一方、明度が4より大きい比較例1〜3では、蚊の致死効果が低く、色相に係わらず明度が高くなるにつれて致死効果が低下した。
【0037】
[実施例5]
0.1%のホウ酸および1%の砂糖を含む水溶液(薬液)を、外面の色の明度が9.5で色相がNのプラカップ(直径5cm、深さ4cm)に入れ、該プラカップの底に、明度が1で色相がNの濾紙(含浸基体)を設置し、その濾紙に薬液を含浸させ、濾紙の一部を薬液から露出させた。このプラカップをゲージ(縦50cm×横50cm×高さ50cm)内に設置し、該ゲージ内に50頭のチカイエカを放虫して吸蜜源(薬液)を自由に摂食できるようにした。そして、チカイエカを三昼夜自由行動させた後(72時間後)に、死亡個体数を計測した。また、一昼夜目に、1時間におけるチカイエカの濾紙(含浸基体)への係留数を計測した。その結果を表2に示す。致死効果の評価基準は前記と同じである。
【0038】
[比較例4]
濾紙(含浸基体)の色を表2に示すように変更した以外は、実施例5と同様にしてチカイエカの死亡個体数と係留数を計測した。その結果を表2に示す。致死効果の評価基準は前記と同じである。
【0039】
【表2】

【0040】
表2に示すように、含浸基体の色が黒(明度1、色相N)の実施例5は、容器外面の色が白(明度9.5、色相N)であるにもかかわらず、含浸基体への蚊の訪問数が多く、高い致死効果が得られた。
一方、含浸基体および容器外面の色が共に白(明度9.5、色相N)である比較例4では、含浸基体への蚊の訪問数が非常に少なく、致死効果が特に低かった。
【0041】
[実施例6]
1%のホウ酸および1%の砂糖を含む水溶液(薬液)をプラカップ(直径5cm、深さ4cm)に入れ、該プラカップの底に、黒(明度1、色相N)の濾紙(含浸基体)を設置し、その濾紙に薬液を含浸させ、濾紙の一部を薬液から露出させた。また、別のプラカップに1%砂糖水を入れ、前記と同様にして、白(明度9.5、色相がN)の濾紙に砂糖水を含浸させ、濾紙の一部を砂糖水から露出させた。これら2つのプラカップをゲージ(縦50cm×横50cm×高さ50cm)に併置し、該ゲージ内に50頭のチカイエカを放し、6時間自由行動させた後に死亡個体数を計測した。また、放虫後から6時間後まで撮影したビデオを確認して、薬液が含浸された含浸基体への総係留数を計測した。
【0042】
[比較例5]
1%のホウ酸および1%の砂糖を含む水溶液(薬液)を含浸させる濾紙を白(明度9.5、色相N)の濾紙に変更した以外は、実施例6と同様にして6時間後の死亡個体数と、薬液が含浸された含浸基体への総係留数を計測した。
【0043】
実施例6および比較例5の評価としては、チカイエカの死亡個体数を「薬液が含浸された含浸基体に係留し、かつ吸蜜したチカイエカの頭数」、薬液が含浸された含浸基体への総係留数から死亡個体数を差し引いたものを「係留のみのチカイエカの頭数」とし、含浸基体の明度がチカイエカの摂食行動に与える影響の評価を行った。その結果を表3に示す。
【0044】
【表3】

【0045】
表3に示すように、含浸基体の色が黒(明度1、色相N)の実施例6では、含浸基体の色が白(明度9.5、色相N)の比較例5に比べて、「係留のみのチカイエカの頭数」が6倍(18/3)であるのに対し、「薬液が含浸された含浸基体に係留し、かつ吸蜜したチカイエカの頭数」が15.5倍(31/2)と大きくなった。この結果は、含浸基体の色が白よりも黒の方がチカイエカが係留した際の摂食行動の割合が増加し、致死効果が大きくなることを示唆している。
【符号の説明】
【0046】
1 容器 2 薬液供給体 3 含浸基体 4 薬液

【特許請求の範囲】
【請求項1】
殺虫成分を含む水溶液が、JIS Z8721で規定される明度が1〜4の含浸基体に含浸された蚊用ベイト剤。
【請求項2】
前記含浸基体は、JIS Z8721で規定される色相が1R〜9Rである、請求項1に記載の蚊用ベイト剤。
【請求項3】
前記含浸基体は、JIS Z8721で規定される色相がNである、請求項1に記載の蚊用ベイト剤。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の蚊用ベイト剤を用いた蚊の防除方法。

【図1】
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【公開番号】特開2012−77050(P2012−77050A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−225770(P2010−225770)
【出願日】平成22年10月5日(2010.10.5)
【出願人】(000006769)ライオン株式会社 (1,816)
【Fターム(参考)】