説明

蛇腹式テント

【課題】 ガレージや物置や温室等として用いられる蛇腹式テントに於て、強風等の大きな外力に依り転倒する惧れがないと共に、それでいて容易に吊上げて移動できる様にする。
【解決手段】 基台2、レール3、門型枠体4、伸縮手段5、係留手段6、吊具7とで構成し、とりわけ接地面Aに移動可能に置かれて所定の重量を備えた基台2と、収縮された各門型枠体4をレール3の略中央に係留する係留手段6と、基台2の四隅に設けられて吊上げ用の索条Bを着脱可能に係止する吊具7とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばガレージや物置や温室や通路等として用いられる蛇腹式テントの改良に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の蛇腹式テントは、基本的には、左右のレールと、レールに沿って前後方向に移動可能に設けられた複数の門型枠体と、各門型枠体を前後方向に伸縮可能に連結する伸縮手段と、から構成されて居り、次の様なものが知られていた。
(1) アンカ等で接地面に固定されるもの(特許文献1〜4参照)。
(2) キャスタ等の車輪を備えるもの(特許文献5参照)。
(3) 接地面に単に置かれるもの(特許文献6〜7参照)。
【0003】
【特許文献1】実開昭51−108334号公報
【特許文献2】実開昭51−158133号公報
【特許文献3】実開平4−125366号公報
【特許文献4】実開平6−37461号公報
【特許文献5】実公昭49−11366号公報
【特許文献6】実公昭44−14039号公報
【特許文献7】実開平4−122159号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、前記(1)のものは、強風等の大きな外力が作用しても転倒する惧れがないものの、容易に移動する事ができなかった。前記(2)のものは、移動が容易であるものの、強風等の大きな外力が作用した場合には、不用意に移動したり転倒する惧れががあった。前記(3)のものは、移動が可能であるものの、吊上げて移動する様にはなって居らず、強風等の大きな外力が作用した場合には、転倒する可能性があった。
この様に、従来のものは、夫々一長一短があって、何れのものも、強風等の大きな外力が作用した場合には転倒する惧れがないと共に、それでいてクレーン等で吊上げて移動する様にはなっていなかった。
【0005】
本発明は、叙上の問題点に鑑み、これを解消する為に創案されたもので、その課題とする処は、強風等の大きな外力に依り転倒する惧れがないと共に、それでいて容易に吊上げて移動する事ができる蛇腹式テントを提供するにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の蛇腹式テントは、基本的には、接地面に移動可能に置かれて所定の重量を備えた基台と、基台上に設けられた左右のレールと、レールに沿って前後方向に移動可能に設けられた複数の門型枠体と、各門型枠体を前後方向に伸縮可能に連結する伸縮手段と、収縮された各門型枠体をレールの略中央に係留する係留手段と、基台の四隅に設けられて吊上げ用の索条を着脱可能に係止する吊具と、から構成した事に特徴が存する。
【0007】
蛇腹式テントは、基台が接地面上に置かれる。基台は、所定の重量を備えているので、強風等の外力が作用しても、蛇腹式テントが容易に転倒する惧れがない。
蛇腹式テントを移動する場合には、伸縮手段に依り各門型枠体が略中央に収縮された後、係留手段に依り各門型枠体が同状態に保持される。
この様な状態で基台の四隅の吊具に索条が係止された後、クレーン等に依り吊上げられて移動される。
各門型枠体は、伸縮手段に依り収縮されると共に、レールの長手方向の略中央に移動された後に、係留手段に依り同状態が維持される。この為、重心が基台の略中央に位置されるので、バランス良く安定して吊上げる事ができる。加えて、門型枠体が邪魔にならずに索条を掛け渡す事ができるので、吊上げ作業が容易且つ安全に行なう事ができる。
【0008】
基台は、四枠状に配される前後左右の枠材と、四隅に設けられて隣接する枠材を着脱可能に連結する隅角材とを備えているのが好ましい。この様にすれば、枠材と隅角材を夫々同形状にして統一化でき、製造や保管を簡単化する事ができる。
【0009】
係留手段は、最前及び最後の門型枠体に昇降可能に設けられた落し棒と、レールの前後方向の所定間隔毎に設けられて落し棒を受け入れる複数の受筒とを備えて居り、門型枠体の伸長状態と端部収縮状態と中央収縮状態とに係留可能であるのが好ましい。この様にすれば、簡単な構成に依り門型枠体を中央収縮状態だけでなくその他の各状態に係留する事ができる。
【0010】
吊具は、基台の隅角材に設けられているのが好ましい。この様にすれば、嵩高な枠材を加工して設ける必要がないと共に、枠材を積み重ねて保管する場合に、誤って吊具を損傷する惧れもない。
【0011】
門型枠体のうち最前及び最後のものは、吊具との間で索条を掛渡して門型枠体を伸長状態に保持する為の掛け具を備えているのが好ましい。この様にすれば、吊具を利用する事ができるので、それだけ部品点数を省略でき、極めて合理的である。
【発明の効果】
【0012】
本発明に依れば、次の様な優れた効果を奏する事ができる。
(1) 基台、レール、門型枠体、伸縮手段、係留手段、吊具とで構成し、とりわけ接地面に移動可能に置かれて所定の重量を備えた基台と、収縮された各門型枠体をレールの略中央に係留する係留手段と、基台の四隅に設けられて吊上げ用の索条を着脱可能に係止する吊具とを備えているので、強風等の大きな外力に依り転倒する惧れがないと共に、それでいて容易に吊上げて移動する事ができる。
(2) 接地面に移動可能に置かれて所定の重量を備えた基台と、収縮された各門型枠体をレールの略中央に係留する係留手段と、基台の四隅に設けられて吊上げ用の索条を着脱可能に係止する吊具とを備えているので、レールや門型枠体が吊上げに依って損傷する事がないと共に、重心を基台の略中央に位置させてバランス良く安定して吊上げる事ができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態を、図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の蛇腹式テントを示す正面図。図2は、図1の側面図。図3は、吊上げた状態を示す図2と同様図。図4は、基台とレールのみを示す分解斜視図。図5は、図1の要部拡大図。図6は、図4の要部拡大図である。
【0014】
蛇腹式テント1は、基台2、レール3、門型枠体4、伸縮手段5、係留手段6、吊具7とからその主要部が構成されている。蛇腹式テント1は、この他に、掛具8、保持手段9を備えて居り、各門型枠体4の外側には、膜体(テントシート)10が覆い被せられる。
【0015】
基台2は、接地面Aに移動可能に置かれて所定の重量を備えたもので、この例では、四枠状に配される前後左右の枠材11と、四隅に設けられて隣接する枠材11をボルト・ナット等の締結具(図示せず)に依り着脱可能に連結する隅角材12とを備えている。枠材11は、断面略H型を呈する市販の山留材を用いている。
【0016】
レール3は、基台2上に設けられた左右のもので、この例では、上方が開放したチャンネル状の型材13と、これの下面に前後方向に所定間隔を置いて設けられた取付板14とを備えて居り、基台2の左右の枠材11上に取付板14がボルト・ナット等の締結具(図示せず)に依り着脱可能に取付けられている。
レール3の前後には、図略しているが、脱輪を防止する為のストッパ(ボルト・ナット)が設けられている。
【0017】
門型枠体4は、レール3に沿って前後方向に移動可能に設けられた複数のもので、この例では、天井部15と、これの両端に着脱可能に垂設された左右(図1に於て左右)の支柱16と、これの下部に設けられてレール3に沿って転動し得る車輪17とを備えて居り、六つのものが前後方向(図2に於て左右方向)に配されている。
【0018】
天井部15は、丸パイプ製の弧状材18と、これらの下部同士を連結する角パイプ製の梁材19と、これらを連結する適数の縦材20とを備えている。
支柱16は、角パイプ製の内側柱材21と、丸パイプ製の外側柱材22と、これらを連結する適数の横材23とを備えている。
車輪17は、支柱16の内側柱材21の下部に設けられて略逆U型を呈するホルダ24と、これに左右方向軸廻りに回転可能に設けられて下半がレール3の内部に位置して転動する主輪25と、ホルダ24の左右両側に設けられてレール3の型材13の上部ウエブに当合して浮き上がりを防止する副輪26とを備えている。
【0019】
伸縮手段5は、各門型枠体4を前後方向に伸縮可能に連結するもので、この例では、門型枠体4の支柱13の内部に設けられている。つまり、門型枠体4の支柱13の内側柱材18の外側に設けられて居り、所謂内側柱材18と外側柱材19との間に位置されている。
伸縮手段5は、各門型枠体4の支柱16の内側柱材21間に配されて交点が枢軸27に依り回転可能に枢結された複数のX型リンク28と、各X型リンク28の下端に回転可能に設けられて門型枠体4の支柱16の内側柱材21に固定される固定枢軸29と、各X型リンク28の上端に回転可能に設けられた可動枢軸30と、可動枢軸30に設けられた環体31と、各支柱16の内側柱材21に設けられて環体31が遊嵌されてこれを上下方向に案内する案内杆32とを具有している。
【0020】
係留手段6は、収縮された各門型枠体4をレール3の略中央に係留するもので、この例では、最前及び最後の門型枠体4の支柱16の内側柱材21に設けられた支持体33と、これに昇降可能に設けられた落し棒34と、レール3の前後方向の所定間隔毎に設けられて落し棒34を受け入れる複数の受筒35とを備えて居り、少なくとも門型枠体4の伸長状態と端部(前側及び後側)収縮状態と中央収縮状態とに係留可能にされる様になっている。
【0021】
吊具7は、基台2の四隅に設けられて吊上げ用の索条Bを着脱可能に係止するもので、この例では、アイボルトにしてあり、基台2の隅角材12の上面に設けられている。
索条Bは、ワイヤロープにしてあり、クレーンのフックCに掛け渡されて所謂玉掛けされる。
【0022】
掛具8は、吊具7との間で別の索条Dを掛渡して各門型枠体4を伸長状態に保持する為のもので、この例では、最前及び最後の門型枠体4の天井部15の左右に設けられて居り、アイボルトにしてある。
【0023】
保持手段9は、前後の門型枠体4の支柱16の内側柱材21間に介設されていると共に、上中下の三箇所に配設されて居り、夫々倒立略U型を呈する丸棒製の保持杆36と、支柱16の内側柱材21に溶接に依り設けられて保持杆36の両端が着脱可能に嵌合される丸パイプ製の受筒37とを備えている。
【0024】
尚、最前及び最後の門型枠体4の天井部15の左右には、止具38が設けられている。これは、必要に応じて、接地面Aに設けられたアンカ等(図示せず)との間で別の索条Eを掛渡して門型枠体4を伸長状態に保持すると共に、蛇腹式テント1の全体を接地面Aに対して固定する為のものであり、アイボルトにしてある。
【0025】
次に、この様な構成に基づいてその作用を述解する。
図1乃至図3に示す如く、蛇腹式テント1の各門型枠体4が伸縮手段5に依り前後方向に伸縮されると、膜体10も拡縮されて所定の空間が形成される。この時、各門型枠体4の車輪17がレール3に案内されるので、伸縮移動が容易に行われる。
各門型枠体4は、係留手段6の落し棒34と受筒35に依り例えば図1及び図2に示す伸長状態や図3に示す中央に寄せた中央収縮状態や前側又は後側に寄せた端部収縮状態(図示せず)等に係留される。この時、保持手段9の保持杆36が隣接する受筒37に嵌合されて同状態が維持される。
【0026】
各門型枠体4が伸長状態にされると、図2に示す如く、吊具7と掛具8との間に索条Dが掛渡されると共に、必要に応じて、図1に示す如く、止具38と接地面Aに設けられるアンカや錘等(図示せず)との間に別の索条Eが掛渡される。こうすると、各門型枠体4が伸長状態が保持されると共に、蛇腹式テント1の全体が接地面Aに対して固定される。
【0027】
基台2は、接地面Aに置かれた後は、例えば前後の枠材11を隅角材12から切り離して左右の枠材11に外側近傍に配置しても良い。この様にすれば、前後の枠材11がないので、蛇腹式テント1への荷物の出し入れに際してこれが邪魔になる事がない。
加えて、左右の枠材11とこれの外側に後から配置される枠材11とを適宜連結して一体化して置けば、四枠状の場合と同様に、錘としての効果が損なわれないので、より一層、強風等の大きな外力に依り転倒する惧れがない。
【0028】
蛇腹式テント1を移動する場合は、基台2が四枠状になる様に戻されて索条D,Eが取外された後に、各門型枠体4が伸縮手段5に依り収縮されると共に、レール3の長手方向の略中央に移動され、図3に示す如く、係留手段6と保持手段9に依り同状態が維持される。
この様な状態で基台2の四隅の吊具7に索条Bが係止されると共に、索条Bがクレーン等のフックCに掛渡されて所謂玉掛けされた後、クレーン等に依り吊上げられて任意の場所に移動される。
【0029】
各門型枠体4は、伸縮手段5に依り収縮されると共に、レール3の長手方向の略中央に移動された後に、係留手段6に依り同状態が維持されるので、重心が基台2の略中央に位置されてバランス良く安定して吊上げる事ができる。加えて、門型枠体4が邪魔にならずに索条Bを掛け渡す事ができ、吊上げ作業が容易且つ安全に行なう事ができる。
【0030】
尚、基台2は、先の例では、枠材11と隅角材12とで構成したが、これに限らず、例えば枠材11だけで構成しても良い。
基台2は、先の例では、四枠状であったが、これに限らず、例えば平板状でも良い。
基台2の枠材11は、先の例では、市販の山留材を用いたが、これに限らず、例えば専用のものを用いても良い。
門型枠体4は、先の例では、六つであったが、これに限らず、例えばこれ以外の複数でも良い。
伸縮手段5は、先の例では、支柱16の内側柱材21と外側柱材22との間に設けたが、これに限らず、例えば支柱16の内側柱材21の内側に設けても良い。
係留手段6は、先の例では、前側と後側で収縮状態に係留できる様にしたが、これに限らす、例えば前側を省略しても良い。
吊具7は、先の例では、基台2の隅角材12に設けたが、これに限らず、例えば基台2の枠材11に設けても良い。
索条B,D,Eは、先の例では、ワイヤロープであったが、これに限らず、例えばチェーン等でも良い。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の蛇腹式テントを示す正面図。
【図2】図1の側面図。
【図3】吊上げた状態を示す図2と同様図。
【図4】基台とレールのみを示す分解斜視図。
【図5】図1の要部拡大図。
【図6】図4の要部拡大図。
【符号の説明】
【0032】
1…蛇腹式テント、2…基台、3…レール、4…門型枠体、5…伸縮手段、6…係留手段、7…吊具、8…掛具、9…保持手段、10…膜体、11…枠材、12…隅角材、13…型材、14…取付板、15…天井部、16…支柱、17…車輪、18…弧状材、19…梁材、20…縦材、21…内側柱材、22…外側柱材、23…横材、24…ホルダ、25…主輪、26…副輪、27…枢軸、28…X型リンク、29…固定枢軸、30…可動枢軸、31…環体、32…案内杆、33…支持体、34…落し棒、35…受筒、36…保持杆、37…受筒、38…止体、A…接地面、B…索条、C…フック、D…索条、E…索条。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
接地面に移動可能に置かれて所定の重量を備えた基台と、基台上に設けられた左右のレールと、レールに沿って前後方向に移動可能に設けられた複数の門型枠体と、各門型枠体を前後方向に伸縮可能に連結する伸縮手段と、収縮された各門型枠体をレールの略中央に係留する係留手段と、基台の四隅に設けられて吊上げ用の索条を着脱可能に係止する吊具と、から構成した事を特徴とする蛇腹式テント。
【請求項2】
基台は、四枠状に配される前後左右の枠材と、四隅に設けられて隣接する枠材を着脱可能に連結する隅角材とを備えている請求項1に記載の蛇腹式テント。
【請求項3】
係留手段は、最前及び最後の門型枠体に昇降可能に設けられた落し棒と、レールの前後方向の所定間隔毎に設けられて落し棒を受け入れる複数の受筒とを備えて居り、門型枠体の伸長状態と端部収縮状態と中央収縮状態とに係留可能な請求項1に記載の蛇腹式テント。
【請求項4】
吊具は、基体の隅角材に設けられている請求項2に記載の蛇腹式テント。
【請求項5】
門型枠体のうち最前及び最後のものは、吊具との間で索条を掛渡して門型枠体を伸長状態に保持する為の掛具を備えている請求項1に記載の蛇腹式テント。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−65484(P2010−65484A)
【公開日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−234146(P2008−234146)
【出願日】平成20年9月12日(2008.9.12)
【出願人】(500094381)株式会社サンエープロテント (24)
【Fターム(参考)】