説明

蛇腹式テント

【課題】 ガレージや物置や温室等として用いられる蛇腹式テントに於て、膜体が車輪に巻き込まれて損傷しない様にする。伸縮手段の固定枢軸の変形や損傷を防止して伸縮が円滑に行える様にする。
【解決手段】 門型枠体2、伸縮手段3、車輪4とから成り、前記車輪4は、支柱6の中心Bから内側に偏心して設けられている。門型枠体2、伸縮手段3、車輪4とから成り、前記伸縮手段3は、X型リンク17、固定枢軸18、可動枢軸19、環体20、案内杆21とを具有し、前記固定枢軸18は、支柱6に貫通して設けられたボルト23と、ボルト23に螺合されてこれを支柱6に固定するナット24とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばガレージや物置や温室や通路等として用いられる蛇腹式テントの改良に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の蛇腹式テントとしては、例えば特許文献1〜3に記載されたものが知られている。
当該蛇腹式テントは、基本的には、天井部と支柱を備えた複数の門型枠体と、各門型枠体を前後方向に伸縮可能に連結する伸縮手段と、各門型枠体の支柱の下部に設けられて各門型枠体を移動させる為の車輪とから構成されている。
前記車輪は、その中心が支柱の中心に合致して設けられて居り、所謂支柱と同心状に設けられていた。
前記伸縮手段は、天井部と支柱を備えた複数の門型枠体と、各門型枠体の支柱間に配されて交点が枢軸に依り回転可能に枢結された複数のX型リンクと、各X型リンクの上端と下端の何れか一方に回転可能に設けられて門型枠体の支柱に固定される固定枢軸と、各X型リンクの上端と下端の何れか他方に回転可能に設けられた可動枢軸と、可動枢軸に設けられた環体と、各支柱に設けられて環体が遊嵌されてこれを上下方向に案内する案内杆とから構成されている。
固定枢軸としては、通常の頭部付ボルトや頭部なしボルトが用いられ、頭部付ボルトの頭部や頭部なしボルトの一端が支柱やブラケットの側面に溶接に依り固定されて居り、所謂植付けボルトにされていた。つまり、固定枢軸は、案内杆と同様に、溶接に依り支柱に固定されていた。
【0003】
【特許文献1】特開平9−195586号公報
【特許文献2】特許第3921471号公報
【特許文献3】特開2007−56464号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、前記車輪にあっては、支柱と同心状に設けられていたので、支柱の外側に配される膜体の下端が車輪に巻き込まれて損傷する惧れがあった。
又、前記伸縮手段にあっては、X型リンクの上端が可動枢軸を介して環体と案内杆とに依り所謂ルーズに支持されていたので、X型リンクの重量が予想以上に固定枢軸に作用してこれが変形したり折損したりし、伸縮が円滑に行えなかった。とりわけ、固定枢軸が支柱の下端に設けられている場合には、湿気の影響を受けて溶接部分が腐食し易く、この事が著しかった。
【0005】
本発明は、叙上の問題点に鑑み、これを解消する為に創案されたもので、その課題とする処は、膜体が車輪に巻き込まれて損傷しない様にした蛇腹式テントを提供するにある。
本発明の別の課題は、伸縮手段の固定枢軸の変形や損傷を防止して伸縮が円滑に行える様にした蛇腹式テントを提供するにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の蛇腹式テントは、基本的には、天井部と支柱を備えた複数の門型枠体と、各門型枠体を前後方向に伸縮可能に連結する伸縮手段と、各門型枠体の支柱の下部に設けられて各門型枠体を移動させる為の車輪とから成り、前記車輪は、支柱の中心から内側に偏心して設けられている事に特徴が存する。
【0007】
車輪は、支柱の中心から内側に偏心して設けられているので、門型枠体の外側に被せられる膜体の下端が車輪に巻き込まれる惧れがなくなり、膜体の損傷を防止する事ができる。
加えて、門型枠体の自重に依り左右の支柱が外側に多少拡がる様な事があっても、車輪が支柱よりも内側に配置されているので、車輪が適正に路面上に接地して移動に支障を来たす惧れがない。
【0008】
本発明の蛇腹式テントは、天井部と支柱を備えた複数の門型枠体と、各門型枠体を前後方向に伸縮可能に連結する伸縮手段と、各門型枠体の支柱の下部に設けられて各門型枠体を移動させる為の車輪とから成り、伸縮手段は、各門型枠体の支柱間に配されて交点が枢軸に依り回転可能に枢結された複数のX型リンクと、各X型リンクの上端と下端の何れか一方に回転可能に設けられて門型枠体の支柱に固定される固定枢軸と、各X型リンクの上端と下端の何れか他方に回転可能に設けられた可動枢軸と、可動枢軸に設けられた環体と、各支柱に設けられて環体が遊嵌されてこれを上下方向に案内する案内杆とを具有し、固定枢軸は、支柱に貫通して設けられたボルトと、ボルトに螺合されてこれを支柱に固定するナットとを備えている事にも特徴が存する。
【0009】
伸縮手段の固定枢軸は、支柱に貫通して設けられたボルトと、ボルトに螺合されてこれを支柱に固定するナットとを備え、とりわけボルトが支柱に貫通して設けられているので、その貫通した分だけ強度が増大され、X型リンクの重量が固定枢軸に作用しても、これが変形したり損傷するのを防止する事ができる。つまり、溶接に依らずに支柱に取付けるので、溶接に依る腐食が起こらないと共に、溶接歪に依る精度の悪化がなくなる。加えて、固定枢軸は、支柱に対して着脱可能になるので、これの交換等も容易に行える。
【0010】
X型リンクは、パイプ材に依り形成されて両端部が合わせ面側に扁平されているのが好ましい。この様にすれば、両端部を扁平にした分だけX型リンクを支柱側に近接して配置する事ができ、蛇腹式テントの内部空間を大きくする事ができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明に依れば、次の様な優れた効果を奏する事ができる。
(1) 門型枠体、伸縮手段、車輪とから成り、前記車輪は、支柱の中心から内側に偏心して設けられているので、膜体を巻き込んで損傷させる事を防止できる。
(2) 車輪は、支柱の中心から内側に偏心して設けられているので、門型枠体の左右の支柱が外側に多少変形しても、円滑な移動を行える。
(3) 車輪を偏心して設けるだけであるので、構造が簡単でコストが余り掛からず、既存のものへも容易に適用できる。
(4) 門型枠体、伸縮手段、車輪とから成り、前記伸縮手段は、X型リンク、固定枢軸、可動枢軸、環体、案内杆とを具有し、前記固定枢軸は、支柱に貫通して設けられたボルトと、ボルトに螺合されてこれを支柱に固定するナットとを備えているので、固定枢軸の変形や損傷を防止できる。その結果、伸縮手段の伸縮を円滑に行う事ができる。
(5) 固定枢軸は、支柱に貫通して設けられたボルトと、ボルトに螺合されてこれを支柱に固定するナットとを備えているので、構造が簡単でコストが余り掛からず、既存のものへも容易に適用できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態を、図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の蛇腹式テントを示す正面図。図2は、図1の側面図。図3は、図2の伸長状態を示す側面図。図4は、図1の要部を拡大して示す正面図。図5は、図4の要部を拡大して示す正面図である。
【0013】
蛇腹式テント1は、門型枠体2、伸縮手段3、車輪4とからその主要部が構成されている。
【0014】
門型枠体2は、天井部5と支柱6を備えて前後方向に配された複数のもので、この例では、天井部5と、これの両端から垂下された左右(図1に於て左右)の支柱6とを備えて居り、七つのものが前後方向(図2に於て左右方向)に配されている。
門型枠体2は、天井部5と支柱6とが着脱可能で且つ旋回可能に嵌合されている。
【0015】
天井部5は、最外端(前後方向に於ける最外端)に位置する前後のものが、丸パイプ製の弧状材7と、これらの下部同士を連結する角パイプ製の梁材8と、これらの中央同士を連結するパイプ製の縦材9と、梁材8の下側に付設されてこれと略同長のカーテンレール10とを備えていると共に、それ以外のものが、弧状材7だけで構成されている。
支柱6は、角パイプ製にしてあり、上部には、天井部5の下端部を受け止める為の受止具11と、天井部5の下端部を固定する為の固定具12とが設けられていると共に、下部には、矩形状の座板13が設けられている。
受止具11は、支柱6の上部寄りの部分を貫通して穿設されたボルト穴と、これに挿通されるボルトと、これに螺合されるナットとを備えている。
固定具12は、支柱6の上部内側(左右方向に於ける内側)に穿設されたボルト穴と、これに連通すべく支柱6に溶接されたナットと、これに螺合されてボルト穴を介して支柱6内に嵌合された天井部5の下端部に当合し得るボルトとを備えている。
【0016】
而して、各門型枠体2の外側には、膜体(テントシート)14が覆い被せられると共に、カーテンレール10には、カーテン15が吊り下げられる。
【0017】
伸縮手段3は、各門型枠体2を前後方向に伸縮可能に連結するもので、この例では、各門型枠体2の支柱6間に配されて交点が枢軸16に依り回転可能に枢結された複数のX型リンク17と、各X型リンク17の下端に回転可能に設けられて門型枠体2の支柱6に固定される固定枢軸18と、各X型リンク17の上端に回転可能に設けられた可動枢軸19と、可動枢軸19に設けられた環体20と、各支柱6に設けられて環体20が遊嵌されてこれを上下方向に案内する案内杆21とを具有している。
【0018】
X型リンク17は、二つのリンクがX型にされてその交点が枢軸16に依り枢結されたものが左右に六つづつ設けられている。X型リンク17は、パイプ材(丸パイプ)に依り形成されて両端部が合わせ面側にプレス加工に依り扁平されている。
枢軸16は、X型リンク17の中程に貫通して穿設された貫孔と、貫孔に挿通されたボルトと、ボルトに挿通されたワッシャと、ボルトに螺合される袋ナットとを備えている。
各X型リンク17の下端のうち最外端に位置する前後のものは、固定枢軸18が回転可能に設けられていると共に、これ以外のものは、隣接するものどうしが重ねられて同一の固定枢軸18に依り枢結されている。
固定枢軸18は、支柱6に貫通して穿設された貫孔22と、貫孔22に挿通されたボルト23と、ボルト23に螺合されてこれを支柱6に抜け止め固定するナット24と、ボルト23に挿通されるカラー25及びワッシャ26と、各X型リンク17の下端に穿設されてボルト23が挿通される透孔27と、ボルト23の端部に螺合される袋ナット28とを備えている。
【0019】
各X型リンク17の上端のうち最外端に位置する前後のものは、可動枢軸19が回転可能に設けられていると共に、これ以外のものは、隣接するものどうしが重ねられて同一の上枢軸19に依り枢結されている。
可動枢軸19は、X型リンク17の上端に穿設された貫孔と、これに挿通されるボルトと、ボルトに挿通されるワッシャと、ボルトに螺合されるナットとを備えている。
環体20は、アイナットにしてあり、支柱6に溶接する前の案内杆21に挿通されて居り、各X型リンク18の上端に設けられた可動枢軸19のボルトに螺合して取付けられている。
案内杆21は、略コ型を呈し、丸棒を折曲して作製してあり、両端が支柱6の内側に溶接に依り固定されている。
【0020】
車輪4は、各門型枠体2の支柱6の下部に設けられて各門型枠体2を移動させる為のもので、この例では、支柱6の座板13の下部に設けられて居り、路面上を転動し得る縦軸廻りに旋回可能なブレーキ付きのキャスタにしてある。
而して、車輪4は、その中心Aが支柱6の中心Bから内側に所定距離Cだけ偏心して設けられている。所定距離Cは、図4の右側及び図5の鎖線で示す如く、車輪4が旋回しても、その最外端が支柱6の最外端(座板13の外端)より内側に位置し、膜体14に接触しない寸法にしてある。
【0021】
次に、この様な構成に基づいてその作用を述解する。
図1乃至図4に示す如く、各門型枠体2が伸縮手段3に依り前後方向に伸縮されると、膜体14も拡縮されて所定の空間が形成される。この時、各門型枠体2は、車輪4を備えているので、伸縮移動が容易に行える。
【0022】
車輪4は、支柱6の中心Bから内側に偏心して設けられているので、門型枠体2の外側に被せられる膜体14の下端が車輪4に巻き込まれる惧れがなくなり、膜体14の損傷を防止する事ができる。
加えて、門型枠体2の自重に依り左右の支柱6が外側に多少拡がる様な事があっても、車輪4が支柱6よりも内側に配置されているので、車輪4が適正に路面上に接地して移動に支障を来たす惧れがない。
【0023】
伸縮手段3の固定枢軸18は、支柱6に貫通して設けられたボルト23と、ボルト23に螺合されてこれを支柱6に固定するナット24とを備え、とりわけボルト23が支柱6に貫通して設けられているので、その貫通した分だけ強度が増大され、X型リンク17の重量が固定枢軸18に作用しても、これが変形したり損傷するのを防止する事ができる。つまり、溶接に依らずに支柱6に取付けるので、溶接に依る腐食が起こらないと共に、溶接歪に依る精度の悪化がなくなる。加えて、固定枢軸18は、支柱6に対して着脱可能になるので、これの交換等も容易に行える。
【0024】
左右のうちの一方の伸縮手段3を短縮状態にすると共に、他方の伸縮手段3を伸長状態にすると、各門型枠体2を平面から見て扇形に彎曲させる事ができる。この時、門型枠体2の天井部5と支柱6とが旋回可能に嵌合されていると共に、伸縮手段3のX型リンク17が丸パイプにされてこれらが線接触する様にしてあり、然も、環体20と案内杆21とが遊嵌されて所謂スライド部分がルーズにしてあるので、前記彎曲が円滑に行われる。
【0025】
蛇腹式テント1は、車輪(キャスタ)4を備えているので、使用時には伸長させると共に、不使用時には収縮させて適宜の保管場所に移動する事ができる。
蛇腹式テント1は、膜体14やカーテン15を透明なものにすれば、温室として利用する事ができる。
【0026】
尚、門型枠体2は、先の例では、七つであったが、これに限らず、例えばこれ以外の複数でも良い。
伸縮手段3は、先の例では、固定枢軸18が下側で可動枢軸19が上側に配置したが、これに限らず、例えばこれらを逆にして、固定枢軸18が上側で可動枢軸19が下側に配置しても良い。
車輪4は、先の例では、キャスタであったが、これに限らず、例えばレールに案内されてこの上を転動する軌道輪でも良い。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の蛇腹式テントを示す正面図。
【図2】図1の側面図。
【図3】図2の伸長状態を示す側面図。
【図4】図1の要部を拡大して示す正面図。
【図5】図4の要部を拡大して示す正面図。
【符号の説明】
【0028】
1…蛇腹式テント、2…門型枠体、3…伸縮手段、4…車輪、5…天井部、6…支柱、7…弧状材、8…梁材、9…縦材、10…カーテンレール、11…受止具、12…固定具、13…座板、14…膜体、15…カーテン、16…枢軸、17…X型リンク、18…固定枢軸、19…可動枢軸、20…環体、21…案内杆、22…貫孔、23…ボルト、24…ナット、25…カラー、26…ワッシャ、27…透孔、28…袋ナット、A…車輪の中心、B…支柱の中心、C…所定距離。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
天井部と支柱を備えた複数の門型枠体と、各門型枠体を前後方向に伸縮可能に連結する伸縮手段と、各門型枠体の支柱の下部に設けられて各門型枠体を移動させる為の車輪とから成り、前記車輪は、支柱の中心から内側に偏心して設けられている事を特徴とする蛇腹式テント。
【請求項2】
天井部と支柱を備えた複数の門型枠体と、各門型枠体を前後方向に伸縮可能に連結する伸縮手段と、各門型枠体の支柱の下部に設けられて各門型枠体を移動させる為の車輪とから成り、前記伸縮手段は、各門型枠体の支柱間に配されて交点が枢軸に依り回転可能に枢結された複数のX型リンクと、各X型リンクの上端と下端の何れか一方に回転可能に設けられて門型枠体の支柱に固定される固定枢軸と、各X型リンクの上端と下端の何れか他方に回転可能に設けられた可動枢軸と、可動枢軸に設けられた環体と、各支柱に設けられて環体が遊嵌されてこれを上下方向に案内する案内杆とを具有し、前記固定枢軸は、支柱に貫通して設けられたボルトと、ボルトに螺合されてこれを支柱に固定するナットとを備えている事を特徴とする蛇腹式テント。
【請求項3】
X型リンクは、パイプ材に依り形成されて両端部が合わせ面側に扁平されている請求項2に記載の蛇腹式テント。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−7295(P2010−7295A)
【公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−165705(P2008−165705)
【出願日】平成20年6月25日(2008.6.25)
【出願人】(500094381)株式会社サンエープロテント (24)
【Fターム(参考)】