説明

蛇腹式テント

【課題】 建築物や解体物等を覆う際に用いられて少なくとも屋根部分が伸縮可能な蛇腹式テントであって、強風や地震等の外力が作用しても、屋根フレームが前後方向に搖動して転倒しない様にする。
【解決手段】 前後方向に移動可能に設けられた複数の屋根フレーム2と、各屋根フレーム2に覆設されたテントシート3と、各屋根フレーム2間に設けられて各屋根フレーム2を伸縮可能に連結するパンダグラフ機構4と、各屋根フレーム2間に設けられて各屋根フレーム2を平行移動可能に連結する平行移動機構5とで構成し、とりわけ平行移動機構5を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば建築物や解体物等を覆う際に用いられて少なくとも屋根部分が伸縮可能な蛇腹式テントの改良に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の蛇腹式テントとしては、前後方向に移動可能に設けられた複数の屋根フレームと、各屋根フレームに覆設されたテントシートと、各屋根フレーム間に設けられて各屋根フレームを伸縮可能に連結するパンダグラフ機構とを備えたものが知られている。
そして、屋根フレームは、次の様にされている。
(1) 左右両側に設けられた比較的短い支柱と、これの下部に回転可能に設けられた車輪とを備え、左右の仮設足場の上部に敷設されたレール上を車輪が転動する様にされている(特許文献1,2参照)。
(2) 左右両側に設けられた比較的長い支柱と、これの下部に回転可能に設けられた車輪とを備え、路面に敷設された左右のレール上を車輪が転動する様にされている(特許文献3,4参照)。
而して、この様なものは、各屋根フレームが前後方向に移動されると、パンダグラフ機構に依り所定の間隔に伸縮される。各屋根フレームが伸縮されると、テントシートもこれに伴って伸縮されて所定の空間が形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3381090号公報
【特許文献2】特許第4198282号公報
【特許文献3】特開平9−209614号公報
【特許文献4】実公昭54−6255号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、この様なものは、パンダグラフ機構が設けられているものの、これは、各屋根フレームを単に所定の間隔に保つものであり、各屋根フレームの姿勢を直立状態に確実に保持するものではなかった。
この為、強風や地震等の外力が作用した場合には、屋根フレームが前後方向に搖動(傾動)し易く、転倒して大きな事故を招く惧れがあった。
とりわけ、パンダグラフ機構に依る伸長状態と収縮状態以外の途中の状態では、この事が著しかった。
【0005】
本発明は、叙上の問題点に鑑み、これを解消する為に創案されたもので、その課題とする処は、強風や地震等の外力が作用しても、屋根フレームが前後方向に搖動して転倒しない様にした蛇腹式テントを提供するにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の蛇腹式テントは、基本的には、前後方向に移動可能に設けられた複数の屋根フレームと、各屋根フレームに覆設されたテントシートと、各屋根フレーム間に設けられて各屋根フレームを伸縮可能に連結するパンダグラフ機構と、各屋根フレーム間に設けられて各屋根フレームを平行移動可能に連結する平行移動機構と、から構成した事に特徴が存する。
【0007】
各屋根フレームが前後方向に移動されると、各屋根フレームがパンダグラフ機構に依り所定の間隔に伸縮される。各屋根フレームが伸縮されると、テントシートも伸縮されて所定の空間が形成される。
各屋根フレームは、平行移動機構に依り常に平行状態が保持されるので、各屋根フレームの姿勢が直立状態に保たれて前後方向に搖動(傾動)する事がない。
従って、強風や地震等の外力が作用しても、屋根フレームが転倒して大きな事故を招く惧れがない。
【0008】
平行移動機構は、隣接する屋根フレーム間に配置される可動板と、一方の屋根フレームと可動板との間に設けられて俯仰可能に枢結される上下の第一平行リンクと、可動板と他方の屋根フレームとの間に設けられて俯仰可能に枢結される上下の第二平行リンクとを備え、一方の屋根フレームと可動板と上下の第一平行リンクとに依り第一の平行リンク機構が形成されていると共に、他方の屋根フレームと可動板と上下の第二平行リンクとに依り第二の平行リンク機構が形成されているのが好ましい。この様にすれば、簡単な構成に依り各屋根フレームを平行移動させる事ができる。
【0009】
可動板と第一平行リンクと第二平行リンクとは、共通の枢結点で枢結されているのが好ましい。この様にすれば、枢結点が共通化されるので、それだけ構造が簡単化されると共に、重量も軽減できる。
【0010】
第一平行リンク及び第二平行リンクと屋根フレームとの間には、取付板が設けられ、第一平行リンク及び第二平行リンクが取付板に俯仰可能に枢結されていると共に、取付板が屋根フレームに着脱可能に取付けられているのが好ましい。この様にすれば、第一平行リンクと可動板と第二平行リンクと取付板とを一纏めにしてユニット化を図る事ができ、屋根フレームへの着脱が短時間に且つ容易に行える。
【発明の効果】
【0011】
本発明に依れば、次の様な優れた効果を奏する事ができる。
(1) 屋根フレーム、テントシート、パンダグラフ機構、平行移動機構とで構成し、とりわけ各屋根フレーム間に設けられて各屋根フレームを平行移動可能に連結する平行移動機構を備えているので、強風や地震等の外力が作用しても、屋根フレームが前後方向に搖動して転倒する事がない。
(2) 各屋根フレームを平行移動可能に連結する平行移動機構を設けるだけであるので、既存のものへも容易に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の蛇腹式テントの概要を示す左半分を省略した正面図。
【図2】パンダグラフ機構を拡大して示す正面図。
【図3】屋根フレームの中央付近に設けられる平行移動機構を拡大して示す正面図。
【図4】図3の側面図。
【図5】パンダグラフ機構間に設けられる平行移動機構を拡大して示す側面図。
【図6】平行移動機構を収縮させた状態を示す図4と同様図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態を、図面に基づいて説明する。
図1〜図6に於て、蛇腹式テント1は、屋根フレーム2、テントシート3、パンダグラフ機構4、平行移動機構5とからその主要部が構成されている。
【0014】
屋根フレーム2は、前後方向(図4に於て左右方向)に移動可能に設けられた複数のもので、この例では、左右両側(図1に於て左右)に設けられた比較的短い支柱6と、これの下部に回転可能に設けられた車輪7とを備えている。
而して、屋根フレーム2は、左右の仮設足場8の上部に前後方向に敷設されたレール9上を車輪7が転動する様にされている。
【0015】
屋根フレーム2は、山型を呈して居り、山型の中央フレーム10と、片流れ型の左右の側フレーム11とに三分割されている。
而して、中央フレーム10及び側フレーム11は、上下の斜材12と、両斜材12を連結する適数の縦材13と、両斜材12を連結する適数の筋交14と、両斜材12の端部に設けられた連結板15等を備えて居り、連結箇所に位置する連結板15同士がボルト・ナット等の締結具(図示せず)に依り着脱可能に連結されている。
【0016】
支柱6は、屋根フレーム2の各側フレーム11の外側下部に垂設されて居り、左右の縦材16と、これらを連結する横材17等を備えている。
屋根フレーム2の左右の側フレーム11同士と、左右の支柱6同士は、夫々棒材やワイヤ等の連結杆18に依り連結されている。
【0017】
テントシート3は、各屋根フレーム2に覆設されたもので、この例では、各屋根フレーム2の上側に張設されている。
【0018】
パンダグラフ機構4は、各屋根フレーム2間に設けられて各屋根フレーム2を伸縮可能に連結するもので、この例では、各屋根フレーム2の下側間に介設されて居り、テントシート3に干渉しない様にされている。
パンダグラフ機構4は、屋根フレーム2の中央近傍に二つと両端近傍に二つの合計四つ設けられている。
【0019】
パンダグラフ機構4は、図2に示す如く、各屋根フレーム2の下側に着脱可能に設けられた支持材19と、前後方向の各支持材19間に配されて交点が枢軸20に依り回転可能に枢結された複数のX型リンク21と、各X型リンク21の一端に回転可能に設けられて支持材19に固定される固定枢軸22と、各X型リンク21の他端に回転可能に設けられた可動枢軸23と、可動枢軸23に設けられた環体24と、各支持材19に設けられて環体24が遊嵌されてこれを支持材19の長手方向(左右方向)に案内する案内杆25と備えている。
パンダグラフ機構4は、支持材19を備えている事に依りユニット化されて居り、屋根フレーム2への取付けを容易にしている。
【0020】
平行移動機構5は、各屋根フレーム2間に設けられて各屋根フレーム2を平行移動可能に連結するもので、この例では、中央付近に二つと、隣接するパンダグラフ機構4の間に二つの合計四つ設けられて居り、テントシート3とパンダグラフ機構4に干渉しない様に設けられている。
【0021】
平行移動機構5は、隣接する屋根フレーム2間に配置される可動板26と、一方の屋根フレーム2と可動板26との間に設けられて俯仰可能に枢結される上下の第一平行リンク27と、可動板26と他方の屋根フレーム2との間に設けられて俯仰可能に枢結される上下の第二平行リンク28とを備え、一方の屋根フレーム2と可動板26と上下の第一平行リンク27とに依り第一の平行リンク機構Aが形成されていると共に、他方の屋根フレーム2と可動板26と上下の第二平行リンク28とに依り第二の平行リンク機構Aが形成されている。
而して、平行移動機構5は、二つの平行リンク機構Aが常に両側より中央が下がった略V型を為す様にしてあり、常にテントフレーム3が干渉しない様にしてある。
【0022】
而して、可動板26と第一平行リンク27と第二平行リンク28とは、共通の枢結点で枢結されている。
第一平行リンク27と第二平行リンク28と屋根フレーム2とは、異なる枢結点で枢結されている。
第一平行リンク27及び第二平行リンク28と屋根フレーム2との間には、取付板29が設けられ、第一平行リンク27及び第二平行リンク28が取付板29に俯仰可能に枢結されていると共に、取付板29が屋根フレーム2に着脱可能に取付けられている。
平行移動機構5は、取付板29を備えている事に依りユニット化されて居り、屋根フレーム2への取付けを容易にしている。
【0023】
中央付近に設けられる平行移動機構5は、図3,図4,図6に示す如く、屋根フレーム2の側フレーム11の連結板15にブラケット30を形成し、このブラケット30に取付板29が着脱可能に取付けられている。隣接するパンダグラフ機構4の間に設けられる平行移動機構5は、図5に示す如く、屋根フレーム2の側フレーム11の縦材13にブラケット30を備えた固定板31が固定され、この固定板31のブラケット30に取付板29が着脱可能に取付けられている。
【0024】
次に、この様な構成に基づいてその作用を述解する。
車輪7がレール9上を転動する事に依り各屋根フレーム2が前後方向に移動されると、各屋根フレーム2がパンダグラフ機構4に依り所定の間隔に伸縮される。各屋根フレーム2が伸縮されると、テントシート3も伸縮されて所定の空間が形成される。
各屋根フレーム2は、平行移動機構5に依り常に平行状態が保持されるので、各屋根フレーム2の姿勢が直立状態に保たれて前後方向に搖動(傾動)する事がない。
【0025】
つまり、各屋根フレーム2は、例えば図4に示す伸長状態から図6に示す収縮状態まで移動する際には、二つの平行リンク機構Aから成る平行移動機構5に依り常に直立姿勢に保持されて平行移動される。
従って、強風や地震等の外力が作用しても、屋根フレーム2が転倒して大きな事故を招く惧れがない。
【0026】
尚、屋根フレーム2は、先の例では、左右両側に短い支柱6とこれの下部に車輪7を備え、仮設足場8の上部に敷設されたレール9上を転動する様にしたが、これに限らず、例えば特許文献3,4に示す如く、左右両側に長い支柱とこれの下部に車輪を備え、路面に敷設したレール上を車輪が転動する様にしても良い。
パンダグラフ機構4は、先の例では、支持材19を備えていたが、これに限らず、例えばこれを割愛して、固定枢軸22及び案内杆25を直接屋根フレーム2に取付けても良い。
平行移動機構5は、先の例では、可動板26と第一平行リンク27と第二平行リンク28とが共通の枢結点で枢結されていたが、これに限らず、例えばこれらを異なる枢結点で枢結しても良い。
平行移動機構5は、先の例では、第一平行リンク27と第二平行リンク28と屋根フレーム2とが異なる枢結点で枢結されていたが、これに限らず、例えばこれらを共通の枢結点で枢結しても良い。
平行移動機構5は、先の例では、取付板29を備えていたが、これに限らず、例えばこれを割愛して、第一平行リンク27及び第二平行リンク28を直接屋根フレーム2に俯仰可能に枢結しても良い。
【符号の説明】
【0027】
1…蛇腹式テント、2…屋根フレーム、3…テントシート、4…パンダグラフ機構、5…平行移動機構、6…支柱、7…車輪、8…仮設足場、9…レール、10…中央フレーム、11…側フレーム、12…斜材、13…縦材、14…筋交、15…連結板、16…縦材、17…横材、18…連結杆、19…支持材、20…枢軸、21…X型リンク、22…固定枢軸、23…可動枢軸、24…環体、25…案内杆、26…可動板、27…第一平行リンク、28…第二平行リンク、29…取付板、30…ブラケット、31…固定板、A…平行リンク機構。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
前後方向に移動可能に設けられた複数の屋根フレームと、各屋根フレームに覆設されたテントシートと、各屋根フレーム間に設けられて各屋根フレームを伸縮可能に連結するパンダグラフ機構と、各屋根フレーム間に設けられて各屋根フレームを平行移動可能に連結する平行移動機構と、から構成した事を特徴とする蛇腹式テント。
【請求項2】
平行移動機構は、隣接する屋根フレーム間に配置される可動板と、一方の屋根フレームと可動板との間に設けられて俯仰可能に枢結される上下の第一平行リンクと、可動板と他方の屋根フレームとの間に設けられて俯仰可能に枢結される上下の第二平行リンクとを備え、一方の屋根フレームと可動板と上下の第一平行リンクとに依り第一の平行リンク機構が形成されていると共に、他方の屋根フレームと可動板と上下の第二平行リンクとに依り第二の平行リンク機構が形成されている請求項1に記載の蛇腹式テント。
【請求項3】
第一平行リンクと第二平行リンクと可動板とは、共通の枢結点で枢結されている請求項2に記載の蛇腹式テント。
【請求項4】
第一平行リンク及び第二平行リンクと屋根フレームとの間には、取付板が設けられ、第一平行リンク及び第二平行リンクが取付板に俯仰可能に枢結されていると共に、取付板が屋根フレームに着脱可能に取付けられる請求項2に記載の蛇腹式テント。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−69058(P2011−69058A)
【公開日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−219018(P2009−219018)
【出願日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【出願人】(500094381)株式会社サンエープロテント (24)
【Fターム(参考)】