説明

蛇腹管ホース

【課題】流体輸送時において乱流の発生を抑制し、乱流自身による或いは管自体の共鳴による流動音の発生や振動の発生を抑制することのできる蛇腹管ホースを提供する。
【解決手段】山部26と谷部28とを有する波形部30を軸方向に連ねてなる蛇腹管18を最内層に有し、且つ波形部30の内側空間32が流体の流通する蛇腹管18の内部空間に連通した空間をなしている蛇腹管ホースにおいて、隣接する谷部28の底部28aと底部28aとの間において、上流側の底部28aの終端部Xに対し、下流側の底部28aの始端部Xが径方向外側に位置するように段差Fを設け、且つ各底部28aを上流側から下流側に進むにつれて蛇腹管18の軸心に接近する形状となす。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は自動車の燃料輸送用,冷媒輸送用,燃料電池で使用される水素ガス等の電池燃料の輸送用その他に好適に使用可能な蛇腹管ホースに関し、特に流体輸送時の流動音の抑制手段に特徴を有するものに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車の燃料(ガソリン等エンジン用の燃料)輸送用ホース,冷媒輸送用ホース等として従来、振動吸収性,組付性等の良好な一般的なゴムホース、例えば耐透過性の優れるFKM(フッ素ゴム),NBR・PVC(アクリロニトリルブタジエンゴムとポリ塩化ビニルとのブレンド)等が用いられて来たが、近年自動車用燃料等の透過規制は地球環境保全の観点から厳しく、今後もその規制の一層の強化が予想される。
従ってかかる燃料輸送用ホース,冷媒輸送用ホースにおいてはより一層の耐透過性が求められる。
【0003】
また燃料電池で使用される水素ガス等の輸送用ホースにあっては、輸送流体に対して極めて高い耐透過性が要求される。
こうした要求に対し、ゴムや樹脂等の有機材料のみで構成されたホースでは求められる要求性能を満足することは困難である。
【0004】
このようなことから、輸送流体に対して耐透過性が極めて優れた金属蛇腹管(実質的に透過はゼロ)を少なくとも最内層に有する蛇腹管ホースが検討されている。
【0005】
しかしながら本発明者等がこの蛇腹管ホースを用いて流体輸送を行ったところ、特に気体を高流量で輸送したときに流動音や振動の発生することが判明した。
その原因を調べたところ、蛇腹管内面は凹凸形状をなしていることから流体輸送時にその凹凸により乱流が生じ易く、その乱流自体によって、或いは乱流に基づく管自体の共鳴によって流動音が発生したり或いは振動が生じることが判明した。
【0006】
即ち、図3に示しているように金属蛇腹管200は径方向外側の山部202と内側の谷部204とを有する波形部206が軸方向に連なった形状をなし、その内面が凹凸形状をなしているために金属蛇腹管200内部を流体が流通したとき、その凹凸形状に起因して乱流が発生し、その乱流に起因して流動音や振動が発生したりする。
以上蛇腹管が金属製の蛇腹管ホースについて問題点を述べたが、こうした問題は樹脂製その他の蛇腹管を有するホースにおいても生じる。
尚図3において202aは山部202の頂部を、204aは谷部204の底部をそれぞれ表している。
【0007】
尚このような蛇腹管ホースについては例えば下記特許文献1,特許文献2に開示がなされているが、これら特許文献には本発明の課題とする乱流や流動音,振動の発生についての指摘はなく、またこの課題を解決するための本願発明の解決手段についての開示もなされていない。
【0008】
【特許文献1】特開平11−159616号公報
【特許文献2】特開2002−195474号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は以上のような事情を背景とし、流体輸送時において乱流の発生を抑制し、乱流自身による或いは管自体の共鳴による流動音の発生や振動の発生を抑制することのできる蛇腹管ホースを提供することを目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
而して請求項1のものは、径方向外側の山部と内側の谷部とを有する波形部を軸方向に連ねて成る蛇腹管を少なくとも最内層に有し、且つ該波形部の内側空間は流体の流通する該蛇腹管の内部空間に連通した空間をなしている蛇腹管ホースにおいて、隣接する谷部の底部と底部の間において、輸送流体の上流側の底部の終端部に対し下流側の底部の始端部が径方向外側に位置するように段差を設け、且つ各底部を上流側から下流側に進むにつれて蛇腹管の軸心に接近する形状となしてあることを特徴とする。
【発明の作用・効果】
【0011】
以上のように本発明は、隣接する谷部の底部と底部との間において、詳しくは輸送流体の上流側の底部の終端部に対し、下流側の底部の始端部が径方向外側に位置するように段差を設け、且つ各底部を上流側から下流側に進むにつれて蛇腹管の軸心に接近する形状となしたもので、本発明によれば、上記段差によって流体の輸送時に流体が各波形部の底部に突き当たって乱流を生ぜしめるのを抑制することができる。
【0012】
しかもその底部は上流側から下流側に向うにつれて蛇腹管の軸心側に漸次接近する形状となしてあるため、流体輸送時において流体をその底部に沿って滑らかに流動させることができる。
これにより流体輸送時における乱流の発生及び管自体の共鳴による流動音や振動の発生を効果的に抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
次に本発明の実施形態を図面に基づいて詳しく説明する。
図1において10は蛇腹管ホースで、12はその端部に装着された継手金具である。
継手金具12は、パイプ状のインサート金具14とスリーブ状のソケット金具16とを有しており、そのソケット金具16が縮径方向にかしめ付けられることによって、それらが蛇腹管ホース10の端部に固定されている。
【0014】
蛇腹管ホース10は金属蛇腹管18を最内層に有し、この金属蛇腹管18の外周側に充填材を兼ねた中間ゴム層20が、更に外周側に補強層22及び最外層としての外面ゴム層24が積層形成されている。
【0015】
金属蛇腹管18は、図2(A)に示しているように径方向外側の山部26と内側の谷部28とを有する波形部(単位波形部)30を軸方向に連ねた形状をなしている。
尚図中26aは山部26の頂部を、また28aは谷部28の底部を表している。
【0016】
図2に示しているように、金属蛇腹管18の波形部30の内側空間32は、隣接する谷部28と28との間の開口部34を通じて流体の流通する金属蛇腹管18の内部空間に連通した空間をなしている。
【0017】
本実施形態では、図2(B)に示すように、隣接する谷部28の底部28aと28aとの間において、輸送流体の上流側の底部(輸送流体は図2(A)中矢印Qで示す方向に流通する)の終端部Xに対し、下流側の底部28aの始端部Xが径方向外側に位置するように段差Fが設けられている。
【0018】
そして各底部28aは、その始端部Xから終端部Xに向って、即ち上流側から下流側に進むにつれて金属蛇腹管18の軸心側に接近するなだらかな湾曲形状をなしている。
ここで底部28aは、このような湾曲形状に代えて傾斜形状となしておくこともできる。
尚図2(B)に示しているように、各波形部30の一対の付根部分は半径R,Rの円弧形状をなしている。
【0019】
本実施形態において、蛇腹管ホース10は内径がφ14mm,波形部30の高さ(径方向高さ)が4mm,外径がφ27mm,中間ゴム層20の肉厚が1mmである。また段差Fは0.7mmである。
【0020】
以上のような本実施形態では、輸送流体の流通方向において下流側に位置する底部28aの始端部Xが、上流側に位置する底部28aの終端部Xに対して径方向外側に段差Fをもって位置しているため、流体の輸送時に流体が各波形部30の底部28aに突き当たって乱流を生ぜしめるのを抑制することができる。
【0021】
しかもその底部28aは上流側から下流側に向うにつれて金属蛇腹管18の軸心側に漸次接近する湾曲形状ないし傾斜形状となしてあるため、輸送流体を底部28aの内面に沿って滑らかに流動させることができる。
これにより流体の輸送時における乱流の発生及び管自体の共鳴による流動音や振動の発生を効果的に抑制することができる。
【0022】
以上本発明の実施形態を詳述したがこれはあくまで一例示である。
例えば蛇腹管における各波形部は軸方向に互いに独立していても良いし、或いはまたスパイラル状に連続していても良く、また本発明は樹脂製その他材質からなる蛇腹管を有するホースに対して、或いはまた蛇腹管単管からなるホースに対して適用することも可能である等、本発明はその趣旨を逸脱しない範囲において種々変更を加えた形態で構成可能である。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の一実施形態の蛇腹管ホースの図である。
【図2】図1の金属蛇腹管の要部の図である。
【図3】従来の金属蛇腹管の図である。
【符号の説明】
【0024】
10 蛇腹管ホース
18 金属蛇腹管
26 山部
28 谷部
28a 底部
30 波形部
32 内側空間
終端部
始端部
F 段差

【特許請求の範囲】
【請求項1】
径方向外側の山部と内側の谷部とを有する波形部を軸方向に連ねて成る蛇腹管を少なくとも最内層に有し、且つ該波形部の内側空間は流体の流通する該蛇腹管の内部空間に連通した空間をなしている蛇腹管ホースにおいて、
隣接する谷部の底部と底部の間において、輸送流体の上流側の底部の終端部に対し下流側の底部の始端部が径方向外側に位置するように段差を設け、且つ各底部を上流側から下流側に進むにつれて蛇腹管の軸心に接近する形状となしてあることを特徴とする蛇腹管ホース。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−46379(P2006−46379A)
【公開日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−224617(P2004−224617)
【出願日】平成16年7月30日(2004.7.30)
【出願人】(000219602)東海ゴム工業株式会社 (1,983)
【Fターム(参考)】