説明

蛋白キナーゼの阻害剤として有用なアミノピリジン

本発明は蛋白キナーゼの阻害剤として有用な化合物に関する。本発明は又そのような化合物を含む製薬上許容しうる組成物、及び種々の疾患、状態、及び障害の治療における化合物及び組成物の使用の方法を提供する。本発明は又本発明の化合物を製造するためのプロセスを提供する。本発明は又修復、再生、及び細胞分化の化学モジュレーターである化合物を提供する。本発明は、式Iの化合物又は製薬上許容しうるその塩を提供し、式中の変数は本明細書において定義する通りである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の技術分野)
本発明は蛋白キナーゼの阻害剤として有用な化合物に関する。本発明は又本発明の化合物を含む製薬上許容しうる組成物及び種々の障害の治療における組成物の使用方法を提供する。本発明は又本発明の化合物を製造するためのプロセスを提供する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
グリコーゲンシンターゼキナーゼ−3(GSK−3)は異なる遺伝子により各々コードされるα及びβアイソフォームを含むセリン/スレオニン蛋白キナーゼである[Coghlan等、Chemistry & Biology 2000,7,793−803;及びKim and Kimmel,Curr.Opinion Genetics Dev.,2000 10,508−514]。蛋白キナーゼ、特にGSK−3は種々の疾患、障害及び状態、例えば糖尿病、アルツハイマー病、ハンチントン病、筋萎縮性側索硬化症、パーキンソン病、双極性障害、統合失調症、脳卒中、化学療法依存性白血球減少症及び心肥大に関与することが示唆されている。[PCT出願WO99/65897及びWO00/38675;Haq等、J.Cell Biol.2000,151,117−130;Hirotani等、Circulation Research 101,2007,pp.1164−1174]。
【0003】
これらの疾患、障害及び状態を治療するためにはGSK−3を阻害することが望ましい手順である。心肥大においては、活性なGSK−3は肥大を抑制するために重要である場合がある。しかしながら、肥大した心筋細胞においてアポトーシスに対抗して保護するためには、GSK−3をブロックすることが重要であると考えられる。[Haq等、J.Cell Biol.2000,151,117−130;Hirotani等、Circulation Research 101,2007,pp.1164−1174]。GSK−3は種々のシグナリング経路に関連する複数の下流のエフェクターを調節する。これらの蛋白にはグリコーゲン合成のために必要な律速酵素であるグリコーゲンシンターゼ、微小管関連蛋白Tau、遺伝子転写因子β−カテニン、翻訳開始因子e1F2B、並びにATPシトレートリアーゼ、アキシン、熱ショック因子−1、c−Jun、c−myc、c−myb、CREB、及びCEPBαが包含される。これらの多様な蛋白標的は細胞の代謝、増殖、分化、及び発生の多くの特徴にGSK−3を関連付けている。
【0004】
II型糖尿病の治療に関連するGSK−3媒介経路において、インスリン誘導シグナリングは細胞のグルコース取り込み及びグリコーゲンの合成をもたらす。この経路においてはGSK−3はインスリン誘導シグナルの負の調節物質である。通常は、インスリンの存在はGSK−3媒介リン酸化の抑制及びグリコーゲンシンターゼの脱活性をもたらす。GSK−3の阻害は増大したグリコーゲン合成及びグルコース取り込みをもたらす[Klein等、PNAS 1996,93,8455−8459;Cross等、Biochem.J.1994,303,21−26);Cohen,Biochem.Soc.Trans.1993,21,555−567;及びMassillon等、Biochem J.1994,299,123−128]。しかしながら、インスリン応答が損なわれている糖尿病患者においては、グリコーゲン合成及びグルコースの取り込みは比較的高い血中インスリンレベルの存在にも関わらず増大することができない。これは最終的には心臓血管疾患、腎不全及び盲目をもたらす場合がある急性及び長期の作用を伴った異常に高値の血中グルコースレベルをもたらす。そのような患者においては、GSK−3の正常なインスリン誘導の阻害が起こらない。又、II型糖尿病を有する患者においてはGSK−3が過剰発現されていることも報告されている[PCT出願WO00/38675参照]。従ってGSK−3の治療用阻害剤は、インスリンへの応答障害に罹患した糖尿病患者を治療するために潜在的に有用である。
【0005】
GSK−3活性はアルツハイマー病に関連している。この疾患の特徴は凝集したβ−アミロイドペプチドにより形成される細胞外プラーク及びtau蛋白を介した細胞内神経細線維もつれの形成である。
【0006】
GSK−3阻害はアルツハイマー病の動物モデルにおいてアミロイド−βペプチドを低減することが分かっている。Phiel等のNature 423、435〜439(2003)の435、438ページを参照できる。3週間の期間にわたってリチウム(GSK−3α阻害剤)を投与されたアミロイド前駆体蛋白(APP)を過剰発現するマウスはアミロイド−βペプチドの組織中レベルの50%超低下を示している。
【0007】
神経細線維もつれは過剰リン酸化されたTau蛋白を含有し、ここでTauは異常な部位上でリン酸化される。GSK−3は細胞及び動物モデルにおいてこれらの異常な部位をリン酸化することが分かっている。GSK−3を過剰発現する条件的トランスジェニックマウスはADの特徴、例えばtau過剰リン酸化、ニューロンアポトーシス及び空間的学習障害を発症する。これらのマウスにおいてGSK−3を除くことにより正常な挙動が回復され、Tau過剰リン酸化、ニューロンアポトーシスが低減される。(Engel T等、J Neuro Sci,2006,26,5083−5090 and Lucas等、EMBO J,2001,20,27−39)。GSK−3の阻害剤は又、細胞におけるTauの過剰リン酸化を防止することが示されている[Lovestone等、Current Biology 1994,4,1077−86;及びBrownlees等、Neuroreport 1997,8,3251−55]。
【0008】
精神病及び気分障害、例えば統合失調症及び双極性障害に関する標的としてのGSK−3は文献においてそれぞれ報告されている。AKTハプロタイプ不全は増大したGSK−3活性に相関する統合失調症患者のサブセットにおいて発見されている。GSK−3βの単対立遺伝子ノックアウトは躁病の挙動モデルにおいてアンフェタミンに応答した減衰した活動亢進をもたらしている。
【0009】
統合失調症及び双極性障害の患者の両方を治療するために使用されている幾つかの抗精神病薬及び気分安定化剤はGSK−3を阻害することがわかっている(Emamian等、Nat Genet,2004,36,131−137;Obrien等、J Neurosci,2004,24,6791−6798;Beaulieu等、PNAS,2004,101,5099−5104;Li等 Int J Neuropsychopharmacol,2006,pp 1−13;Gould TD,Expert Opin Ther Targets,2006,10,377−392)。更に又、最近の特許である米国特許2004/0039007は関連するマウス挙動モデルにおいて抗統合失調作用及び不安緩解作用を示すGSK−3阻害剤を記載している。
【0010】
GSK−3活性は卒中と関連している。Wang等は、GSK−3阻害剤として知られているIGF−1(インスリン成長因子−1)が、ラットにおける卒中のモデルである一過性の中大脳動脈閉塞(MCAO)の後のラット脳において梗塞の大きさを低減していることを示している。[非特許文献1;非特許文献2]。特許文献1はラットにおける卒中モデルであるMCAOにおけるGSK−3阻害剤の作用を報告している。これらのGSK−3阻害剤はラットにおいて線条体の虚血損傷を有意に低減し、そして浮腫形成を低減している。更に又、ラットは「実験の期間を通して神経学的機能における顕著な向上を示していた」。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】米国特許出願公開第2004/0039007号明細書
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】Wang等、Brain Res 2000,859,381−5;Sasaki等、Neurol Res 2001,23,588−92
【非特許文献2】Hashimoto等、J.Biol.Chem 2002,277,32985−32991
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
上記した理由の全てにより、蛋白キナーゼの阻害剤として有用な化合物を開発する多大な必要性が存在している。特に、GSK−3の活性化に関与する障害の大多数に対して現在使用できる治療法が不十分であるため、その阻害剤として有用な化合物を開発することが望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明はGSK−3蛋白キナーゼの阻害剤として有用な化合物及び製薬上許容しうるその組成物を提供する。
【0015】
本発明は又修復、再生、及び細胞分化の化学モジュレーターである化合物を提供する。
【0016】
本発明は、下記式I:
【0017】
【化1】

の化合物又は製薬上許容しうるその塩を提供し、式中の変数は本明細書において定義する通りである。
【0018】
これらの化合物はGSK−3酵素のチロシン自己リン酸化形態をセリン/スレオニンキナーゼ形態よりも優勢にブロックすることにおける意外な選択性を有している。これらの化合物は又ニューロン細胞における軸索及び樹状突起の分枝化を増大させる場合においても意外な有効性を有し、これは、神経変性状態、例えば卒中、アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン病、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、多発性硬化症(MS)、脊髄傷害、外傷性脳傷害、シャルコー−マリー−ツース病、白血球減少症、糖尿病、糖尿病性神経障害、及び骨粗鬆症の治療において有用である。
【0019】
これらの化合物は又修復、再生、及び細胞分化の化学モジュレーターとしても有効である。
【0020】
本発明は又これらの化合物、組成物、医薬組成物を製造するためのプロセス、及び蛋白キナーゼを阻害するためのこのような化合物及び組成物の使用方法を提供する。これらの化合物は特にGSK−3阻害剤として有用である。
【0021】
これらの化合物及びその製薬上許容しうる組成物は又、種々の疾患、障害又は状態、例えば限定しないが、自己免疫性、炎症性、増殖性、又は増殖亢進性の疾患、神経変性性の疾患、又は免疫学的に媒介された疾患を治療又は予防するために有用である。
【0022】
本発明により提供される化合物はインビトロ、インビボ、及びエクスビボにおいてキナーゼを阻害するために有用である。これらの化合物は生物学的及び病理学的な現象におけるキナーゼの研究;そのようなキナーゼにより媒介される細胞内シグナルトランスダクション経路の研究;及び新しいキナーゼ阻害剤の比較評価のために有用である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明は下記式I:
【0024】
【化2】

[式中、
Htは下記環I−a、I−b、又はI−c:
【0025】
【化3】

から選択され;
ここで、環I−cにおけるいずれかの置換可能な炭素は任意に−R10で置換されており、
環Dはフェニルであり、ここでフェニルは1−5個の−Rで任意に置換されており;
はN又はCR10であり;
各々のR、R、及びRは独立してH、ハロ、又はC1−6脂肪族であり、ここで、脂肪族は任意にハロ、−CN、及び−ORから選択される基1〜5個で置換されており;
各々のR10は独立してハロC1−6アルキル、C1−6アルキル、ハロ、OR、C(=O)R、COR、COCOR、NO、CN、S(O)R、SOR、SR、N(R、CON(R、SON(R、OC(=O)R、N(R)COR、N(R)CORから選択され;
はH又はC1−6アルキルであり;
各々のRは独立してH、C1−6アルキル、又はハロC1−6アルキルから選択され;
各々のRは独立してハロ、ハロC1−6アルキル、C3−6シクロアルキル、又はC1−6アルキルから選択され;そして、
各々のRは独立してH、C1−6アルキル、又はハロC1−6アルキルから選択される]の化合物又は製薬上許容しうるその塩を提供する。
【0026】
1つの実施形態において、Htは下記環I−a:
【0027】
【化4】

である。
【0028】
他の実施形態において、Htは下記環I−b:
【0029】
【化5】

である。
【0030】
又別の実施形態において、Htは下記環I−c:
【0031】
【化6】

である。
【0032】
一部の実施形態においては、ZはNである。一部の実施形態においては、ZはCR10である。一部の実施形態においては、R10はHである。
【0033】
別の実施形態はRがH又はC1−6アルキルである化合物を提供する。一部の実施形態においては、RはH又はC1−4アルキルである。他の実施形態においては、アルキルはメチル、エチル、シクロプロピル、又はイソプロピルである。又別の実施形態においては、アルキルはメチルである。一部の実施形態においては、アルキルは任意に1〜5個のハロで置換されている。他の実施形態においては、ハロはフルオロである。一部の実施形態においては、RはC1−6アルキルである。他の実施形態においては、RはC1−4アルキルである。他の実施形態においては、RはHである。
【0034】
別の実施形態はRがH又はC1−6アルキルである化合物を提供する。一部の実施形態においては、RはC1−6アルキルである。他の実施形態においては、RはH又はC1−4アルキルである。一部の実施形態においては、RはC1−4アルキルである。一部の実施形態においては、アルキルはメチル、エチル、シクロプロピル、又はイソプロピルである。他の実施形態においては、アルキルはメチルである。一部の実施形態においては、アルキルは任意に1〜5個のハロで置換されている。他の実施形態においては、ハロはフルオロである。他の実施形態においては、RはHである。
【0035】
又別の実施形態はRがC1−4アルキルである化合物を提供する。
【0036】
別の実施形態においては、RはH又はC1−6アルキルである。一部の実施形態においては、Rはメチルである。
【0037】
別の実施形態においては、Rはハロである。一部の実施形態においては、Rはクロロである。
【0038】
別の実施形態は、Htが式I−cであり、ZがNであり、環Dがクロロにより置換されたフェニルであり、そしてR及びRは各々独立して任意に1〜3個のフルオロで置換されたH又はメチルである化合物を提供する。
【0039】
1つの実施形態は下記に示す表1の化合物を提供する。
【0040】
【表1】

本発明の化合物は一般的に上記した、そして本明細書に開示するクラス、サブクラス、及び種により更に説明されるものを包含する。本明細書においては、以下の定義を特段の記載が無い限り適用する。本発明の説明のために、化学元素はCAS版のHandbook of Chemistry and Physicsの第75版の元素周期律表に従って識別される。更に又、有機化学の一般的原則は「Organic Chemistry」、Thomas Sorrell,University Science Books,Sausalito: 1999、及び「March’s Advanced Organic Chemistry」、第5版、Smith,M.B.and March,J.編、John Wiley & Sons,New York:2001に記載されており、これらの内容は参照により全体が本明細書に組み込まれる。
【0041】
本明細書に記載する通り、原子の特定された数の範囲はそのいずれかの整数を包含する。例えば1〜4原子を有する基は1、2、3、又は4原子を有することができる。
【0042】
本明細書に記載する通り、本発明の化合物は任意に、上記において一般的に説明されたような、又は本発明の特定のクラス、サブクラス、及び種により例示される通り、置換基1個以上により置換されていてよい。当然ながら、「任意に置換された」という表現は「置換された、又は未置換の」という表現と互換的に使用される。一般的に、「置換された」という用語は、「任意に」という用語に先行されているか否かに関わらず、特定の置換基のラジカルによる所定の構造における水素ラジカルの置き換えを指す。特段の記載が無い限り、任意に置換された基は基の置換可能な位置の各々において置換基を有してよく、そしていずれかの所定の構造において1つより多い位置が特定の群から選択される1つより多くの置換基で置換されてよい場合は、その置換基は各位置において同じかまたは異なっていてよい。本発明が想定する置換基の組み合わせは、好ましくは、安定であるか、又は化学的に実現可能な化合物の形成をもたらすようなものである。
【0043】
「安定な」という用語は本明細書においては、本明細書に開示した目的物の1つ以上のための化合物の製造、検出、回収、精製、及び使用を可能にする条件に付された場合に実質的に改変されないものを指す。一部の実施形態においては、安定な化合物又は化学的に可能な化合物は、少なくとも1週間、水分又は他の化学的反応性の条件の非存在下において、40℃以下の温度において保持された場合に実質的に改変されないものである。
【0044】
「脂肪族」又は「脂肪族基」という用語は本明細書においては、分子の残余への結合の単一の点を有する、完全飽和であるか、又は不飽和の単位1つ以上を含有する、直鎖(即ち未分枝鎖)又は環状の、分枝鎖又は未分枝鎖の、置換又は未置換の炭化水素鎖を意味する。特段の記載が無い限り、脂肪族基は脂肪族炭素原子1〜20個を含有する。一部の実施形態においては、脂肪族基は脂肪族炭素原子1〜10個を含有する。他の実施形態においては、脂肪族基は脂肪族炭素原子1〜8個を含有する。又他の実施形態においては、脂肪族基は脂肪族炭素原子1〜6個を含有し、そして更に他の実施形態においては、脂肪族基は脂肪族炭素原子1〜4個を含有する。適当な脂肪族基は、例えば限定しないが、直鎖又は分枝鎖の、置換又は未置換のアルキル、アルケニル、又はアルキニル基を包含する。特定の例は限定しないが、メチル、エチル、イソプロピル、n−プロピル、s−ブチル、ビニル、n−ブテニル、エチニル、及びt−ブチルを包含する。
【0045】
「アルキル」という用語は本明細書においては、完全に飽和しており、そして分子の残余への結合の単一の点を有する、直鎖(即ち未分枝鎖)、分枝鎖又は未分枝鎖の、置換又は未置換の炭化水素鎖を意味する。特段の記載が無い限り、アルキル基はアルキル炭素原子1〜6個を含有する。一部の実施形態においては、アルキル基はアルキル炭素原子1〜4個を含有する。他の実施形態においては、アルキル基はアルキル炭素原子1〜3個を含有する。例は限定しないが、メチル、エチル、イソプロピル、n−プロピル、s−ブチル、n−ブチル、及びn−ペンチルを包含する。
【0046】
「脂環式」(又は「炭素環」又は「カルボサイクリル」又は「シクロアルキル」)という用語は、分子の残余への結合の単一の点を有する、完全に飽和しているか、又は不飽和の単位1つ以上を含有するが、芳香族ではない単環のC−C炭化水素又は二環のC−C12炭化水素を指し、ここで前記二環系におけるいずれかの個々の環は3〜7員を有する。適当な脂環式基は例えば限定しないが、シクロアルキル及びシクロアルケニル基を包含する。特定の例は、限定しないが、シクロヘキシル、シクロプロペニル、及びシクロブチルを包含する。
【0047】
「複素環」、「ヘテロサイクリル」、又は「ヘテロ環の」という用語は本明細書においては、非芳香族の、単環、二環、又は三環の系を意味し、ここで、環員1つ以上は独立してヘテロ原子から選択される。一部の実施形態においては、「複素環」、「ヘテロサイクリル」、又は「ヘテロ環の」基は3〜14の環員を有し、ここで、環員1つ以上は酸素、硫黄、窒素、又はリンから独立して選択されたヘテロ原子であり、そして系における各環は3〜7環員を含有する。
【0048】
適当な複素環は例えば限定しないが、3−1H−ベンズイミダゾール−2−オン、3−(1−アルキル)−ベンズイミダゾール−2−オン、2−テトラヒドロフラニル、3−テトラヒドロフラニル、2−テトラヒドロチオフェニル、3−テトラヒドロチオフェニル、2−モルホリノ、3−モルホリノ、4−モルホリノ、2−チオモルホリノ、3−チオモルホリノ、4−チオモルホリノ、1−ピロリジニル、2−ピロリジニル、3−ピロリジニル、1−テトラヒドロピペラジニル、2−テトラヒドロピペラジニル、3−テトラヒドロピペラジニル、1−ピペリジニル、2−ピペリジニル、3−ピペリジニル、1−ピラゾリニル、3−ピラゾリニル、4−ピラゾリニル、5−ピラゾリニル、1−ピペリジニル、2−ピペリジニル、3−ピペリジニル、4−ピペリジニル、2−チアゾリジニル、3−チアゾリジニル、4−チアゾリジニル、1−イミダゾリジニル、2−イミダゾリジニル、4−イミダゾリジニル、5−イミダゾリジニル、インドリニル、テトラヒドロキノリニル、テトラヒドロイソキノリニル、ベンゾチオラン、ベンゾジチアン、及び1,3−ジヒドロ−イミダゾール−2−オンを包含する。
【0049】
環状の基(例えば脂環式又は複素環)は直線状縮合、架橋、又はスピロ環状となっていることができる。
【0050】
「ヘテロ原子」という用語は酸素、硫黄、窒素、又はリン、(例えばいずれかの酸化された形態の窒素、硫黄、又はリン;四級化形態の塩基性窒素、又は複素環の置換可能な窒素、例えばN(3,4−ジヒドロ−2H−ピロリルの場合等)、NH(例えばピロリジニルの場合等)又はNR(N−置換ピロリジニルの場合等))の一つ以上を意味する。
【0051】
「不飽和の」という用語は本明細書においては、不飽和の単位1つ以上を有する部分ことを意味する。
【0052】
「アルコキシ、又は「チオアルキル」という用語は本明細書においては、酸素(「アルコキシ」の場合)又は硫黄(「チオアルキル」の場合)原子を介して主要な炭素鎖に結合した、上記定義したアルキル基を指す。
【0053】
「ハロアルキル」、「ハロアルケニル」、「ハロ脂肪族」、及び「ハロアルコキシ」という用語は適宜ハロゲン原子1つ以上で置換された、アルキル、アルケニル又はアルコキシを意味する。「ハロゲン」、「ハロ」、及び「hal」という用語はF、Cl、Br、又はIを意味する。
【0054】
「アリール」という用語は、単独で、又は「アラルキル」、「アラルコキシ」、又は「アリールオキシアルキル」のようなより大きい部分の一部として使用される場合、合計で5〜14環員を有する単環、二環、及び三環の系を指し、ここで、系における環の少なくとも1つは芳香族であり、そして系における各環は3〜7環員を含有する。「アリール」という用語は「アリール環」という用語と互換的に使用してよい。「アリール」という用語は又、後に定義する通り、ヘテロアリール環系も指す。
【0055】
「ヘテロアリール」という用語は、単独で、又は「ヘテロアラルキル」又は「ヘテロアリールアルコキシ」のようなより大きい部分の一部として使用される場合、合計で5〜14環員を有する単環、二環、及び三環の系を指し、ここで、系における環少なくとも1つは芳香族であり、系における環少なくとも1つはヘテロ原子1つ以上を含有し、そして系における各環は3〜7環員を含有する。「ヘテロアリール」という用語は「ヘテロアリール環」という用語又は「複素芳香族」という用語と互換的に使用してよい。適当なヘテロアリール環は例えば限定しないが、2−フラニル、3−フラニル、N−イミダゾリル、2−イミダゾリル、4−イミダゾリル、5−イミダゾリル、ベンズイミダゾリル、3−イソキサゾリル、4−イソキサゾリル、5−イソキサゾリル、2−オキサゾリル、4−オキサゾリル、5−オキサゾリル、N−ピロリル、2−ピロリル、3−ピロリル、2−ピリジル、3−ピリジル、4−ピリジル、2−ピリミジニル、4−ピリミジニル、5−ピリミジニル、ピリダジニル(例えば、3−ピリダジニル)、2−チアゾリル、4−チアゾリル、5−チアゾリル、テトラゾリル(例えば、5−テトラゾリル)、トリアゾリル(例えば、2−トリアゾリル及び5−トリアゾリル)、2−チエニル、3−チエニル、ベンゾフリル、ベンゾチオフェニル、インドリル(例えば、2−インドリル)、ピラゾリル(例えば、2−ピラゾリル)、イソチアゾリル、1,2,3−オキサジアゾリル、1,2,5−オキサジアゾリル、1,2,4−オキサジアゾリル、1,2,3−トリアゾリル、1,2,3−チアジアゾリル、1,3,4−チアジアゾリル、1,2,5−チアジアゾリル、プリニル、ピラジニル、1,3,5−トリアジニル、キノリニル(例えば、2−キノリニル、3−キノリニル、4−キノリニル)、及びイソキノリニル(例えば、1−イソキノリニル、3−イソキノリニル、又は4−イソキノリニル)を包含する。
【0056】
「保護基」及び「保護性の基」という用語は本明細書においては互換的に使用され、そして多官能性の化合物における所望の反応性の部位1つ以上を一時的にブロックするために使用される薬剤を指す。特定の実施形態においては、保護基は以下の特性、即ち:a)良好な収率で官能基に選択的に付加させることにより保護された基質が得られること、b)他の反応部位の1つ以上において生じる反応に対して安定であること;そしてc)再生され保護された官能基を攻撃しない試薬により良好な収率で選択的に除去されること、の1つ以上、又は好ましくは全てを有する。例示される保護基は参照により全体が本明細書に組み込まれるT.W.,Wuts,P.G、「Protective Groups in Organic Synthesis」,第3版、John Wiley&Sons,New York:1999(及び書籍の他の版)に詳述されている。「窒素保護基」という用語は本明細書においては、多官能性の化合物における1つ以上の所望の窒素反応部位を一時的にブロックするために使用される薬剤を指す。好ましい窒素保護基は又上記例示した特性を保有しており、そして特定の例示される窒素保護基は又、参照により全体が本明細書に組み込まれるGreene,T.W.,Wuts,P.G、「Protective Groups in Organic Synthesis」、第3版、John Wiley&Sons,New York:1999の第7章に詳述されている。
【0057】
一部の実施形態においては、アルキル又は脂肪族鎖は任意に別の原子又は基により置き換えられることができる。そのような原子又は基の例は限定しないが、−NR−、−O−、−S−、−CO−、−OC(O)−、−C(O)CO−、−C(O)−、−C(O)NR−、−C(=N−CN)、−NRCO−、−NRC(O)O−、−SONR−、−NRSO−、−NRC(O)NR−、−OC(O)NR−、−NRSONR−、−SO−、又は−SO−を包含し、式中、Rは本明細書に定義する通りである。特段の記載が無い限り、任意の置き換えにより化学的に安定な化合物が形成される。任意の置き換えは鎖内部及び鎖のいずれかの末端の両方において;即ち結合点において、及び/又は末端においても同様に生じることができる。2つの任意の置き換えは又、それにより化学的に安定な化合物が生じる限り、鎖内部で相互に隣接することができる。任意の置き換えは又、鎖中の炭素原子の全てを完全に置き換えることもできる。例えばC脂肪族は任意に−NR−、−C(O)−、及び−NR−で中断されるか置き換えられることにより、−NRC(O)NR−(尿素)を形成することができる。
【0058】
特段の記載が無い限り、置き換えが末端で起こる場合、置き換え原子は末端においてHに結合する。例えば−CHCHCHが任意に−O−で置き換えられる場合、生じる化合物は−OCHCH、−CHOCH、又は−CHCHOHとなる。
【0059】
特段の記載が無い限り、本明細書に記載する構造は又、構造の全ての異性体(例えばエナンチオマー、ジアステレオマー、及び幾何(又はコンホーメーション)の)型;例えば各不斉中心に対するR及びS配置、(Z)及び(E)2重結合異性体、及び(Z)及び(E)コンホーメーション異性体を包含することを意味している。従って、本化合物の単独の立体化学異性体並びにエナンチオマー、ジアステレオマー、及び幾何(又はコンホーメーション)混合物が本発明の範囲に包含される。
【0060】
特段の記載が無い限り、本発明の化合物の全ての互変異体が本発明の範囲に包含される。
【0061】
特段の記載が無い限り、置換基はいずれかの回転可能な結合の周囲を自由に回転できる。例えば、下記:
【0062】
【化7】

の通り描画された置換基は又、下記:
【0063】
【化8】

を表している。
【0064】
更に又、特段の記載が無い限り、本明細書に記載した構造は又、同位体的に富化された原子1つ以上の存在においてのみ異なる化合物を包含することを意味している。例えば重水素又はトリチウムによる水素の置き換え、又は13C−又は14C−富化炭素による炭素原子の置き換えを除いて本発明の構造を有する化合物は、本発明の範囲に包含される。そのような化合物は、例えば生物学的試験における分析ツール又はプローブとして有用である。
【0065】
やはり当然ながら、本発明の化合物は治療のための遊離の形態において、或いは適宜、製薬上許容しうる塩、塩、又はその混合物として存在できる。
【0066】
本明細書においては、「製薬上許容しうる塩」という用語は、確かな医学的判断の範囲内において、予定外の毒性、刺激、アレルギー応答等を伴うことなくヒト及びより下等な動物の組織との接触における使用に適しており、そして合理的な利益/危険性の比に相応する化合物の塩を指す。
【0067】
製薬上許容しうる塩は当該分野で良く知られている。例えばS.M.Berge等は参照により本明細書に組み込まれるJ.Pharmaceutical Sciences,1977,66,1−19において詳細に製薬上許容しうる塩を説明している。本発明の化合物の製薬上許容しうる塩は適当な無機及び有機の酸及び塩基から誘導されたものを包含する。これらの塩は化合物の最終単離及び精製の間にインサイチュで製造できる。酸付加塩は1)遊離塩基形態の精製された化合物を適当な有機又は無機の酸と反応させること、及び2)このようにして形成された塩を単離することにより製造できる。
【0068】
製薬上許容しうる非毒性の酸付加塩の例は、無機酸、例えば塩酸、臭化水素酸、リン酸、硫酸及び過塩素酸と共に、又は有機酸、例えば酢酸、シュウ酸、マレイン酸、酒石酸、クエン酸、コハク酸又はマロン酸と共に、又はイオン交換のような当該分野で使用されている他の方法を用いながら形成されたアミノ基の塩である。他の製薬上許容しうる塩はアジピン酸塩、アルギン酸塩、アスコルビン酸塩、アスパラギン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、安息香酸塩、重硫酸塩、ホウ酸塩、酪酸塩、カンファー酸塩、カンファースルホン酸塩、クエン酸塩、シクロペンタンプロピオン酸塩、ジグルコン酸塩、ドデシル硫酸塩、エタンスルホン酸塩、ギ酸塩、フマル酸塩、グルコヘプトン酸塩、グリセロリン酸塩、グリコール酸塩、グルコン酸塩、ヘミ硫酸塩、ヘプタン酸塩、ヘキサン酸塩、ヨウ化水素酸塩、2−ヒドロキシ−エタンスルホン酸塩、ラクトビオン酸塩、乳酸塩、ラウリン酸塩、ラウリル硫酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、マロン酸塩、メタンスルホン酸塩、2−ナフタレンスルホン酸塩、ニコチン酸塩、硝酸塩、オレイン酸塩、シュウ酸塩、パルミチン酸塩、パルモ酸塩、ペクチン酸塩、過硫酸塩、3−フェニルプロピオン酸塩、リン酸塩、ピクリン酸塩、ピバル酸塩、プロピオン酸塩、サリチル酸塩、ステアリン酸塩、コハク酸塩、硫酸塩、酒石酸塩、チオシアン酸塩、p−トルエンスルホン酸塩、ウンデカン酸塩、吉草酸塩等を包含する。適切な塩基から誘導された塩はアルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム及びN(C−Cアルキル)塩を包含する。本発明は又本明細書に開示した化合物のいずれかの塩基性窒素含有基の四級化を包含する。水溶性又は油溶性又は分散性の生成物はそのような四級化により得てよい。
【0069】
塩基付加塩は1)酸形態の精製された化合物を適当な有機又は無機の塩基と反応させること、及び2)このようにして形成された塩を単離することにより製造できる。塩基付加塩はアルカリ又はアルカリ土類金属塩を包含する。代表的なアルカリ又はアルカリ土類金属塩はナトリウム、リチウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム等を包含する。別の製薬上許容しうる塩は、適宜、対イオン、例えばハライド、ヒドロキシド、カルボキシレート、スルフェート、ホスフェート、ニトレート、低級アルキルスルホネート及びアリールスルホネートを用いて形成された非毒性のアンモニウム、第四級アンモニウム、及びアミンカチオンを包含する。他の酸及び塩基は、それ自体は製薬上許容しうるものではなくとも、本発明の化合物及びその製薬上許容しうる酸又は塩基付加塩を得る場合の中間体として有用な塩の製造において使用してよい。
【0070】
以下の略記法を使用する。
DCM ジクロロメタン
EtOAc 酢酸エチル
DMSO ジメチルスルホキシド
ATP アデノシントリホスフェート
DTT ジチオスレイトール
NMR 核磁気共鳴
HPLC 高速液体クロマトグラフィー
LCMS 液体クロマトグラフィー−質量スペクトル分析
TLC 薄層クロマトグラフィー
Rt 保持時間
HEPES 4−(2−ヒドロキシエチル)−1−ピペラジンエタン−スルホン酸
FBS ウシ胎児血清
PVDF ポリフッ化ビニリデン
PBST リン酸緩衝液+Tween20
TCF/LEF T細胞因子/リンパ様エンハンサー因子
DIPEA ジイソプロピルエチルアミン。
【0071】
一般的な合成方法
本発明の化合物は、下記の一般的スキーム及び後述する製造実施例に示すもののような方法により一般的に製造してよい。特段の記載が無い限り、以下のスキームにおける全の変数は本発明に定義する通りである。
【0072】
スキーム1
【0073】
【化9】

試薬及び条件:(i)mCPBA、EtOAc;(ii)POCl;(iii)PdPPhCl、Ba(OH)、DME−HO、110℃;(iv)HtNH、Pd(OAc)、キサントホス、KCO、ジオキサン、120℃。
【0074】
試薬及び条件:
上記スキーム1は化合物5を製造するために使用される一般的合成経路を示す。式5の化合物は中間体1から製造できる。クロロピリジン誘導体2の形成はEtOAc中でm−CPBAにより相当するピリジン1を処理すること、その後、相当するN−オキシドをPOClで処理することによりクロロピリジンに変換することにより達成される。次に当該分野で良く知られているSuzukiカップリング条件を使用しながら中間体2を相当するボロン酸誘導体と反応させることにより化合物3を得る。この反応は種々のボロン酸誘導体に適用される。次にピリジン3を工程1において使用したものと同じ2工程操作法、m−CPBA酸化、次いでPOCl処理を用いながらクロロピリジン誘導体4に変換する。次に中間体4を触媒としてのPdの存在下にNHHtのような多様なアミンで処理することにより最終化合物5を得る。この反応はNHHtのような種々のヘテロ環アミンにも適用される。
【0075】
本発明は蛋白キナーゼの阻害剤として有用な化合物及び組成物を提供する。一部の実施形態においては、蛋白キナーゼはGSK−3キナーゼである。
【0076】
蛋白キナーゼの阻害剤として、本発明の化合物及び組成物は、蛋白キナーゼが疾患、状態又は障害に関与するとされている疾患、状態又は障害を治療するかその重症度を低下させるためにとくに有用である。1つの態様において、本発明は蛋白キナーゼが疾患状態に関与するとされている疾患、状態又は障害を治療するかその重症度を低下させるための方法を提供する。別の態様において、本発明は酵素活性の阻害が疾患の治療に関与するとされる疾患、状態又は障害を治療するかその重症度を低下させるための方法を提供する。別の態様において、本発明は蛋白キナーゼへの結合により酵素活性を阻害する化合物を用いた疾患、状態又は障害を治療するかその重症度を低下させるための方法を提供する。別の態様は蛋白キナーゼ阻害剤でキナーゼの酵素活性を阻害することによりキナーゼ疾患、状態又は障害を治療するかその重症度を低下させるための方法を提供する。
【0077】
一部の実施形態においては、前記蛋白キナーゼ阻害剤はGSK−3阻害剤である。
【0078】
蛋白キナーゼ阻害剤として、本発明の化合物及び組成物は又、生物学的試料中でも有用である。本発明の1つの態様は生物学的試料中の蛋白キナーゼ活性を阻害することに関し、その方法は式Iの化合物又は前記化合物を含む組成物に前記生物学的試料を接触させることを含む。「生物学的試料」という用語は本明細書においては、インビトロ又はインビボの試料を意味し、例えば限定しないが、細胞培養物又はその抽出液;哺乳類から得られた生検材料又はその抽出液;及び血液、唾液、尿、糞便、精液、涙液、又は他の体液又はその抽出液を包含する。
【0079】
生物学的試料中の蛋白キナーゼ活性の阻害は当該分野で知られた種々の目的のために有用である。そのような目的の例は限定しないが、輸血、臓器移植、及び生物学的標本の保存を包含する。
【0080】
本発明の別の態様は生物学的及び病理学的な現象における蛋白キナーゼの研究;そのような蛋白キナーゼにより媒介される細胞内シグナルトランスダクション経路の研究;及び新しい蛋白キナーゼ阻害剤の比較評価に関する。そのような用途の例は限定しないが、酵素試験及び細胞系試験のような生物学的試験を包含する。
【0081】
蛋白キナーゼ阻害剤としての化合物の活性はインビトロ、インビボ又は細胞系統において試験してよい。インビトロ試験はキナーゼ活性又は活性化されたキナーゼのATPase活性のいずれかの阻害を測定する試験を包含する。別のインビトロの試験は蛋白キナーゼに結合する阻害剤の能力を定量し、そして結合前に阻害剤を放射標識すること、阻害剤/キナーゼ複合体を単離すること及び結合した放射標識の量を測定することによるか、又は、既知放射配位子(radioligand)に結合したキナーゼと共に新しい阻害剤をインキュベートする競合試験を実施することによるかのいずれかにより、計測してよい。
【0082】
GSK−3活性の阻害は幹細胞の増殖、細胞分化、ニューロン形成性、及び血管形成に関連付けられている。これらの種々の機能は修復及び再生に関与するとされている。GSK−3の阻害剤は胚性幹細胞の自己更新を持続させ、ニューロン、ベータ細胞、骨髄様及び骨芽細胞の分化を促進することが分かっている(Sato等、Nature Medicine 10,55−63,2004;Ding等、PNAS 100,7632−37,2003;Branco等、J Cell Science 117,5731−37,2004;Trowbridge等、Nature Medicine 12,89−98,2006;Mussmann等、JBC(Epub ahead of print)2007;Kulkarni等、Journal of Bone and Mineral Res.21,910−920,2006)。ニューロンの形成性に関しては、GSK−3の阻害は、極性、長期相乗作用(LTP)及びニューライト/軸索成長を調節するために重要であることが分かっている(Hooper等、European J of Neuroscience 25,81−86,2007;Kim等、Neuron 52,981−996,2006;Jiang等、Cell 120,123−135,2005)。GSK−3の阻害は又内皮細胞における血管形成を誘導することも分かっている(Skurk等、Circulation Research 96,308−318,2005)。
【0083】
従って本発明の1つの態様は細胞の修復および再生において有用な化合物を提供することである。一部の実施形態においては、前記化合物は細胞の増殖、細胞の分化、ニューロン形成、又は血管形成を促進するために使用される。一部の実施形態においては、前記化合物は細胞の分化の化学モジュレーターである。別の実施形態においては、前記化合物は修復及び再生の化学モジュレーターである。
【0084】
一部の実施形態においては、化合物はニューロン細胞において軸索及び樹状突起の分枝化を増大させる場合に使用される。一部の実施形態においては、化合物は神経形成性を促進するために使用される。他の実施形態においては、化合物は血管形成を促進するために使用される。又他の実施形態においては、化合物は神経発生を促進するために使用される。又他の実施形態においては、化合物は躁病及び抑鬱のような神経精神障害を治療するために使用される。
【0085】
別の実施形態はベータ細胞の再生を促進することにより糖尿病を治療するために使用される化合物を提供する。
【0086】
また別の実施形態は骨芽細胞発生により骨粗鬆症を治療するために使用される化合物を提供する。
【0087】
GSK−3はDYRKキナーゼファミリーと同様、チロシン及びセリン/スレオニンキナーゼの両方として機能する。DYRKキナーゼファミリーと同様、GSK−3は重要なチロシン残基をそのキナーゼドメイン(GSK−3a、Tyr279及びGSK−3b、Tyr216)において自己リン酸化する。このチロシンリン酸化はキナーゼ活性を正の方向にモジュレートするために重要であることがわかっている。Locheed等はこの自己リン酸化が成熟化の前の翻訳後中間工程において分子内で生じ、そしてシャペロン依存性であることを明らかにしている(Lochhead等、Molecular Cell 24,(2006),pp.627−633)。成熟化の後、GSK−3はそのチロシンキナーゼ活性を失い、そして外因性基質に対するセリン及びスレオニンキナーゼとしてのみ作用する。
【0088】
β−カテニンはGSK−3がリン酸化する外因性セリン/スレオニン基質の1つである。β−カテニンリン酸化の阻害はβ−カテニンレベルの上昇をもたらし、次にこれが核に転座し、そして細胞の応答及び機能に関与する多くの遺伝子を転写的に制御する。GSK−3阻害剤に関する1つの潜在的な安全性の問題は阻害剤の使用がβ−カテニン誘導を介した増殖亢進をもたらすことである。本来、セリン/スレオニンキナーゼGSK−3は増殖、分化及び代謝のような多数の細胞の活動を制御する多くのシグナリング経路にとって中心的である。
【0089】
従って、本発明の1つの態様は、酵素を完全にブロックすることなく、或いは、β−カテニンのような多重基質に影響することなく、GSK−3活性を部分的に減衰することができる化合物を提供する。1つの実施形態はセリン/スレオニンキナーゼ型よりも優先して酵素のチロシン自己リン酸化型を選択的に阻害する化合物を提供する。
【0090】
一部の実施形態においては、前記酵素はGSK−3αであり;他の実施形態においてはGSK−3βである。一部の実施形態においては、前記化合物は少なくとも40倍〜125倍のβ−カテニン:GSK−3βウインドウを有する。一部の実施形態においては、化合物は少なくとも30倍のβ−カテニン:GSK−3βウインドウを有する。他の実施形態においては、前記化合物は少なくとも500倍〜2000倍のβ−カテニン:GSK−3αウインドウを有する。
【0091】
意外にも、セリン/スレオニンキナーゼ型と相対比較してGSK−3酵素のチロシン型の自己リン酸化を選択的に阻害する化合物は、例えばニューロン細胞における軸索及び樹状突起の分枝化を増大させることにより、ニューロンの生育及び樹状突起の形成を促進する。ニューロンの生育及び樹状突起の形成を増大させることは多くの型の変性状態、例えば卒中、卒中後、脊髄傷害、外傷性脳傷害、アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン病、多発性硬化症、筋萎縮性側索硬化症、糖尿病性神経障害、シャルコー−マリー−ツース病、白血球減少症、糖尿病及び骨粗鬆症を治療する場合に好都合であり、そして予測できなかった改善した治療効果を与える。
【0092】
セリン/スレオニンキナーゼ型と相対比較してGSK−3酵素のチロシン型の自己リン酸化を選択的に阻害する化合物は又、血管形成を促進し、これは本明細書に記載したもののような変性状態の多くの型を治療する場合に好都合であり、そして予測できなかった改善した治療効果を与える。
【0093】
本発明の別の態様は、例えば限定しないが、自己免疫疾患、炎症性疾患、増殖性及び増殖亢進性の疾患、免疫学的に媒介された疾患、免疫不全障害、免疫調節又は免疫抑制性の障害、骨疾患、代謝性疾患、神経学的及び神経変性疾患、神経栄養因子、心臓血管疾患、ホルモン関連疾患、糖尿病、アレルギー、喘息、及びアルツハイマー病を包含する疾患、障害及び状態の治療のために有用な化合物を提供する。本発明の別の態様は蛋白キナーゼの阻害剤であり、そしてこのため本明細書に記載する他の用途と共に疾患、障害及び状態の治療のために有用である化合物を提供する。
【0094】
別の態様は本明細書に記載した化合物のいずれかを含み、そして任意に製薬上許容しうる担体、アジュバント又はビヒクルを含む製薬上許容しうる組成物を提供する。特定の実施形態においては、これらの組成物は任意に更に追加的治療薬1つ以上を含む。
【0095】
本発明の1つの態様は、自己免疫疾患、炎症性疾患、増殖性及び増殖亢進性の疾患、例えば癌、免疫学的に媒介された疾患、免疫不全障害、骨疾患、代謝性疾患、神経学的及び神経変性疾患、心臓血管疾患、アレルギー、糖尿病、喘息、アルツハイマー病、又はホルモン関連疾患から選択される疾患、障害又は状態を治療するか、又はその重症度を低下させるための方法を提供し、これは、化合物、又は化合物を含む製薬上許容しうる組成物の有効量を、それを必要とする対象に投与することを含む。
【0096】
「癌」という用語は限定しないが、以下の癌、即ち:類表皮口腔:口腔、口唇、舌、口内、咽頭;心臓:肉腫(血管肉腫、腺維肉腫、横紋筋肉腫、脂肪肉腫)、粘液腫、横紋筋腫、腺維腫、脂肪腫及び奇形腫;肺:気管支原生癌腫(扁平上皮細胞又は類表皮、未分化小細胞、未分化大細胞、腺癌)、肺胞(細気管支)癌、気管支腺腫、肉腫、リンパ腫、軟骨腫様の過誤腫、中皮腫;胃腸:食道(扁平上皮細胞癌、喉頭、腺癌、平滑筋肉腫、リンパ腫)、胃(癌、リンパ腫、平滑筋肉腫)、膵臓(管腺癌、インスリノーマ、グルカゴノーマ、ガストリノーマ、類癌腫、ビポーマ)、小腸類又は小腸(腺癌、リンパ腫、類癌腫、カポジ肉腫、平滑筋腫、血管腫、脂肪腫、神経線維腫、腺維腫)、大腸類又は大腸(腺癌、管状腺腫、絨毛腺癌、過誤腫、平滑筋腫)、結腸、結腸−直腸、結腸直腸;直腸、泌尿器管:腎臓(腺癌、ウイルムス腫瘍[腎芽細胞腫]、リンパ腫、白血病)、膀胱及び尿道(扁平上皮細胞癌、移行上皮癌、腺癌)、前立腺(腺癌、肉腫)、精巣(セミノーマ、奇形腫、胚性癌腫、奇形癌腫、絨毛癌、肉腫、腸細胞癌腫、腺維腫、腺維腺癌、腺癌様腫瘍、脂肪腫);肝臓:ヘパトーマ(肝細胞癌腫)、胆管癌腫、肝細胞芽腫、血管肉腫、肝細胞腺癌、血管腫、胆道;骨:骨原生肉腫(骨肉腫)、腺維肉腫、悪性腺維性組織球腫、軟骨肉腫、ユーイング肉腫、悪性リンパ腫(細網細胞肉腫)、多発性骨髄腫、悪性巨細胞腫脊索腫、骨軟骨腫(骨軟骨外骨腫症)、良性軟骨腫、軟骨芽腫、軟骨粘液腺維腫、骨様骨腫及び巨細胞腫;神経系:頭蓋(骨腫、血管腫、肉芽腫、キサントーマ、変形性骨炎)、髄膜(髄膜腫、髄膜肉腫、神経膠腫症)、脳(星状細胞腫瘍、髄芽細胞腫、神経膠腫、脳室上衣細胞腫、胚細胞腫[松果体腫]、多形グリア芽細胞腫、稀突起神経膠細胞、神経鞘腫、網膜芽細胞腫、先天性腫瘍)、脊髄神経線維腫、髄膜腫、神経膠腫、肉腫);婦人科:子宮(子宮内膜癌)、子宮頚部(子宮頸癌、前腫瘍子宮頚部形成不全)、卵巣(卵巣癌[漿液性嚢胞腺腫、粘液性嚢胞腺腫、未分類癌腫]、顆粒包膜細胞腫、セルトーリ−ライディッヒ細胞腫、未分化胚細胞腫、悪性奇形腫)、外陰部(扁平上皮細胞癌、上皮内癌腫、腺癌、腺維肉腫、黒色腫)、膣部(明細胞癌腫、扁平上皮細胞癌、ブドウ状肉腫(胚性横紋筋肉腫)、ファローピウス管(癌腫)、乳房;血液学的:血液(骨髄性白血病[急性及び慢性]、急性リンパ芽球性白血病、慢性リンパ性白血病、骨髄増殖性疾患、多発性骨髄腫、骨髄形成異常症候群)、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫[悪性リンパ腫]ヘアリーセル;リンパ様障害;皮膚:悪性黒色腫、基底細胞癌腫、扁平上皮細胞癌、カポジ肉腫、角化棘細胞腫、異形成性母斑(moles dysplastic nevi)、脂肪腫、血管腫、皮膚腺維腫、ケロイド、乾癬、甲状腺:乳頭上甲状腺癌腫、濾胞性甲状腺癌腫;髄様甲状腺癌腫、未分化甲状腺癌、多発性内分泌新形成2A型、多発性内分泌新形成2B型、家族性髄様甲状腺癌、褐色細胞腫、パラガン神経膠腫;及び副腎:神経芽腫を包含する。即ち、「癌細胞」という用語は本明細書においては、上記状態のいずれか1つを被っている細胞を包含する。一部の実施形態においては、癌は結腸直腸癌、甲状腺癌、又は乳癌から選択される。
【0097】
特定の実施形態においては、化合物又は製薬上許容しうる組成物の「有効量」は前記疾患を治療するために有効な量である。本発明の方法による化合物及び組成物は前記疾患を治療するかその重症度を低下させるために有効ないずれかの量及びいずれかの投与経路を用いながら投与してよい。一部の実施形態においては、前記疾患はアレルギー又はI型過敏反応、喘息、糖尿病、アルツハイマー病、ハンチントン病、パーキンソン病、エイズ関連痴呆、双極性障害、筋萎縮性側索硬化症(ALS、ルーゲーリック病)、多発性硬化症(MS)、統合失調症、白血球減少症、心筋細胞肥大、再灌流/虚血、卒中、禿頭症、移植片拒絶、対宿主性移植片病、慢性関節リューマチ、及び固形性及び血液学的な悪性疾患から選択される。一部の実施形態においては、前記疾患は糖尿病、双極性障害、統合失調症、卒中、ハンチントン病、白血球減少症及び心筋細胞肥大から選択される。
【0098】
本発明の他の実施形態においては、前記疾患は蛋白キナーゼ媒介状態である。一部の実施形態においては、前記蛋白キナーゼはGSK−3である。
【0099】
「蛋白キナーゼ媒介状態」という用語は本明細書においては、蛋白キナーゼが役割を果たしているいずれかの疾患又は他の有害な状態を意味する。そのような状態は限定しないが、自己免疫疾患、炎症性疾患、増殖性及び増殖亢進性の疾患、免疫学的に媒介された疾患、免疫不全障害、免疫調節又は免疫抑制性の障害、骨疾患、代謝性疾患、神経学的及び神経変性疾患、心臓血管疾患、ホルモン関連疾患、糖尿病、アレルギー、喘息、及びアルツハイマー病を包含する。
【0100】
「GSK−3媒介状態」という用語は本明細書においては、GSK−3が役割を果たしているいずれかの疾患又は他の有害な状態を意味する。そのような状態は限定しないが、糖尿病、糖尿病性神経障害、骨粗鬆症、アルツハイマー病、ハンチントン病、パーキンソン病、エイズ関連痴呆、双極性障害、筋萎縮性側索硬化症(ALS、ルーゲーリック病)、多発性硬化症(MS)、統合失調症、白血球減少症、心筋細胞肥大、卒中、脊髄傷害、外傷性脳傷害、シャルコー−マリー−ツース病、及び慢性関節リューマチを包含する。
【0101】
一部の実施形態においては、前記疾患は変性状態である。一部の実施形態においては、前記変性状態は卒中、卒中後回復、アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン病、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、多発性硬化症(MS)、脊髄傷害、外傷性脳傷害、シャルコー−マリー−ツース病、白血球減少症、糖尿病、糖尿病性神経障害、及び骨粗鬆症から選択される。
【0102】
一部の実施形態においては、前記疾患は神経変性状態である。別の実施形態においては、前記神経変性状態は、卒中、卒中後回復、アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン病、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、多発性硬化症(MS)、脊髄傷害、外傷性脳傷害、及びシャルコー−マリー−ツース病から選択される。
【0103】
1つの実施形態は本明細書に記載した化合物にニューロン細胞を接触させる工程を含む前記細胞における軸索及び樹状突起の分枝化を増大させる方法を提供する。別の実施形態は本明細書に記載した化合物に前記細胞を接触させる工程を含む神経形成性を促進する方法を提供する。別の実施形態は本明細書に記載した化合物に該細胞を接触させる工程を含む血管形成を促進する方法を提供する。又別の実施形態は、本明細書に記載した化合物を患者に投与することを含む、躁病及び抑鬱のような神経精神障害を治療する方法を提供する。
【0104】
本発明の1つの態様によれば、前記神経変性疾患は卒中である。一部の実施形態においては、化合物は卒中の回復の間に卒中患者を治療するために使用される。一部の場合においては、化合物は卒中後投与において使用される。治療期間の長さは1か月〜1年の範囲である。一部の実施形態においては、化合物は卒中を発症した後に投与する。一部の実施形態においては、前記投与は虚血直後に行う。他の実施形態においては、前記投与は虚血後48時間〜虚血後6カ月に行う。一部の実施形態においては、化合物は物理療法のような卒中回復治療の他の形態と組み合わせて使用する。
【0105】
別の実施形態は本明細書に記載した化合物にベータ細胞を接触させる工程を含む糖尿病の治療方法を提供する。一部の実施形態においては、化合物はベータ細胞再生を促進する。
【0106】
別の実施形態は本明細書に記載した化合物に骨細胞を接触する工程を含む骨粗鬆症の治療方法を提供する。一部の実施形態においては、前記化合物は細胞における骨芽細胞形成を促進する。
【0107】
当然ながら、本発明の化合物の特定のものは治療のための遊離形態において、或いは、適宜、その製薬上許容しうる塩又は製薬上許容しうる誘導体として存在できる。
【0108】
本発明は種々の製薬上許容しうる塩の混合物/複合物、そして更には、遊離形態の化合物及び製薬上許容しうる塩の混合物/複合物を包含する。
【0109】
本明細書に記載した通り、本発明の製薬上許容しうる組成物は更に、製薬上許容しうる担体、アジュバント、又はビヒクルを含み、これらは、本明細書においては、所望の特定の剤型に適する如何なる溶媒、希釈剤、又は他の液体ビヒクル、分散又は懸濁補助剤、界面活性剤、等張性付与剤、増粘剤又は乳化剤、保存料、固体結合剤、滑沢剤等を包含する。Remington’s Pharmaceutical Sciences、第16版、E.W.Martin(Mack Publishing Co.,Easton,Pa.,1980)は製薬上許容しうる組成物を製剤する場合に使用される種々の担体及びその製造のための既知の手法を開示している。何れの従来の担体媒体も、例えばいずれかの望ましくない生物学的作用をもたらすか、又は別様に、製薬上許容しうる組成物のいずれかの他の成分と有害な態様において相互作用すること等により本発明の化合物に対して不適合となる場合を除き、その使用は本発明の範囲内に包含されることを意図している。
【0110】
製薬上許容しうる担体として機能できる物質の一部の例は、限定しないが、イオン交換物質、アルミナ、ステアリン酸アルミニウム、レシチン、血清蛋白、例えばヒト血清アルブミン、緩衝物質、例えばリン酸塩、グリシン、ソルビン酸、又はソルビン酸カリウム、飽和植物性脂肪酸の部分グリセリド混合物、水、塩又は電解質、例えば硫酸プロタミン、リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素カリウム、塩化ナトリウム、亜鉛の塩、コロイド状シリカ、三ケイ酸マグネシウム、ポリビニルピロリドン、ポリアクリレート、ワックス、ポリエチレン−ポリオキシプロピレンブロック重合体、羊毛脂、糖類、例えば乳糖、グルコース及びスクロース;澱粉、例えばコーンスターチ及びバレイショ澱粉;セルロース及びその誘導体、例えばカルボキシメチルセルロースナトリウム、エチルセルロース及びセルロースアセテート;粉末トラガカント;麦芽;ゼラチン;タルク;賦形剤、例えばカカオ脂及び座薬用のワックス;油脂類、例えばピーナツ油、綿実油;サフラワー油;ゴマ油;オリーブ油;コーン油及びダイズ油;グリコール類;例えばプロピレングリコール又はポリエチレングリコール;エステル類、例えばオレイン酸エチル及びラウリン酸エチル;寒天;緩衝剤、例えば水酸化マグネシウム及び水酸化アルミニウム;アルギン酸;発熱物質非含有の水;等張性食塩水;リンゲル溶液;エチルアルコール、及びリン酸緩衝液が包含され、並びに、他の非毒性の適合する滑沢剤、例えばラウリル硫酸ナトリウム及びステアリン酸マグネシウム、並びに着色剤、離型剤、コーティング剤、甘味料、香味料及び芳香剤、保存料及び抗酸化剤もまた製剤担当者の判断に従って組成物中に存在できる。
【0111】
蛋白キナーゼ阻害剤又はその薬学的塩は動物又はヒトへの投与のための医薬組成物に製剤してよい。蛋白キナーゼ媒介状態を治療又は予防するために有効な蛋白阻害剤の量及び製薬上許容しうる担体を含むこれらの医薬組成物は、本発明の別の実施形態である。一部の実施形態においては、前記蛋白キナーゼ媒介状態はGSK−3媒介状態である。一部の実施形態においては、GSK−3媒介状態である。
【0112】
治療に必要な化合物の厳密な量は、対象の種、年齢、及び全身状態、感染の重症度、特定の薬剤、その投与様式等に応じて対象毎に変動することになる。本発明の化合物は好ましくは投与の容易さ及び用量の均一性のために単位剤型において製剤される。「単位剤型」という表現は、本明細書においては、治療すべき患者に対して適切な薬剤の物理的に個別の単位を指す。しかしながら、本発明の化合物及び組成物の総一日当たり使用量は確かな医学的判断の範囲内において担当医師により決定されることになる。いずれかの特定の患者又は生物に対する特定の有効用量のレベルは、治療すべき障害及び障害の重症度;使用する特定の化合物の活性;使用する特定の組成物;患者の年齢、体重、全身健康状態、性別及び食餌状態;使用する特定の化合物の投与時期、投与経路、及び排出速度;治療期間;使用する特定の化合物と組み合わせて、又は同時に使用される薬剤、及び医学分野で良く知られている同様の要因を包含する種々の要因に応じたものとなる。「患者」という用語は本明細書においては、動物、好ましくは哺乳類、そして最も好ましくはヒトを意味する。
【0113】
本発明の製薬上許容しうる組成物は、治療すべき感染症の重症度に応じて、経口、直腸、非経口、槽内、膣内、腹腔内、局所(粉末、軟膏、又はドロップとして)、口内、口腔又は鼻内スプレー等としてヒト及び他の動物に投与できる。特定の実施形態においては、本発明の化合物は所望の治療効果を得るためには、一日に1回以上、一日当たり、
約0.01mg/kg〜約50mg/kg、そして好ましくは約1mg/kg〜約25mg/kg対象体重の用量レベルにおいて経口又は非経口投与してよい。
【0114】
経口投与用の液体剤型は限定しないが、製薬上許容しうる乳液、マイクロエマルジョン、溶液、懸濁液、シロップ及びエリキシルを包含する。活性化合物のほかに、液体剤型は当該分野で一般的に使用されている不活性希釈剤、例えば水又は他の溶媒、可溶化剤及び乳化剤、例えばエチルアルコール、イソプロピルアルコール、炭酸エチル、酢酸エチル、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ジメチルホルムアミド、油脂類(特に綿実油、ピーナツ油、コーン油、胚芽油、オリーブ油、ヒマシ油、及びゴマ油)、グリセロール、テトラヒドロフリルアルコール、ポリエチレングリコール及びソルビタンの脂肪酸エステル、及びこれらの混合物を含有してよい。不活性希釈剤のほかに、経口組成物は又、アジュバント、例えば水和剤、乳化剤及び懸濁剤、甘味料、香味料、及び芳香剤を包含できる。
【0115】
注射用の調製品、例えば滅菌注射用水性又は油性懸濁液は適当な分散剤又は水和剤及び懸濁剤を用いながら当該分野で知られる通り製剤してよい。滅菌注射用調製品は又、非毒性の非経口的に許容される希釈剤又は溶媒中の滅菌注射用溶液、懸濁液又はエマルジョン、例えば1,3−ブタノール中の溶液であることができる。使用してよい許容されるビヒクル及び溶媒に属するものは、水、リンゲル溶液、U.S.P.及び等張性の塩化ナトリウム溶液である。更に又、滅菌された固定油も溶媒又は懸濁媒体として従来より使用されている。この目的のためにはいずれかの銘柄の固定油、例えば合成のモノ又はジグリセリドを使用できる。更に又、オレイン酸のような脂肪酸も注射用製剤の製造において使用される。
【0116】
注射用製剤は例えば細菌保持フィルターを通した濾過によるか、又は使用前に滅菌された水又は他の滅菌された注射用媒体中に溶解又は分散できる滅菌固体組成物の形態に滅菌剤を配合することにより、滅菌できる。
【0117】
本発明の化合物の作用を延長するためには、皮下又は筋肉内注射からの化合物の吸収を緩徐化することが望ましい場合が多い。これは水溶性に乏しい結晶性又は不定形の物質の液体懸濁物の使用により達成してよい。ここで化合物の吸収の速度は、その溶解速度に依存しており、そしてこれは結晶の大きさ及び結晶の形態に依存する場合がある。或いは、非経口投与された化合物の形態の遅延された吸収は、油脂ビヒクル中に化合物を溶解又は懸濁することにより達成される。蓄積注射形態はポリラクチド−ポリグリコリドのような生体分解性の重合体中の化合物のマイクロカプセルを形成することにより作成する。重合体に対する化合物の比及び使用する特定の重合体の性質に応じて、化合物放出速度を制御できる。他の生体分解性重合体の例はポリ(オルトエステル)及びポリ(無水物)を包含する。蓄積注射製剤は又身体組織に対して適合性であるリポソーム又はマイクロエマルジョン中に化合物を捕獲することにより製造される。
【0118】
直腸又は膣内投与用の組成物は、好ましくは、周囲温度では固体であるが体温では液体となることにより直腸又は膣腔部において溶融し、そして活性化合物を放出するカカオ脂、ポリエチレングリコール又は座薬用ワックスのような適当な非刺激性の賦形剤又は担体に本発明の化合物を混合することにより製造できる座薬である。
【0119】
経口投与用の固体剤型はカプセル、錠剤、丸薬、粉末、及び顆粒を包含する。そのような固体剤型においては、活性化合物は少なくとも1つの不活性の製薬上許容しうる賦形剤又は担体、例えばクエン酸ナトリウム又はリン酸二カルシウム及び/又はa)充填剤又は増量剤、例えば澱粉、乳糖、スクロース、グルコース、マンニトール、及びケイ酸、b)結合剤、例えばカルボキシメチルセルロース、アルギネート、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、スクロース、及びアカシア、c)湿潤剤、例えばグリセロール、d)錠剤崩壊剤、例えば寒天、炭酸カルシウム、バレイショ又はタピオカ澱粉、アルギン酸、特定のケイ酸塩、及び炭酸ナトリウム、e)溶解遅延剤、例えばパラフィン、f)吸収加速剤、例えば第四級アンモニウム化合物、g)水和剤、例えばセチルアルコール及びグリセロールモノステアレート、h)吸収剤、例えばカオリン及びベントナイト粘土、及びi)滑沢剤、例えばタルク、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、固体ポリエチレングリコール、ラウリル硫酸ナトリウム、及びこれらの混合物と混合される。カプセル、錠剤及び丸薬の場合は、剤型は又緩衝剤を含んでよい。
【0120】
同様の型の固体組成物は又、乳糖又はミルクシュガーのような錠剤賦形剤並びに高分子量ポリエチレングリコール等を用いたソフト及びハード充填ゼラチンカプセルにおける充填剤としても使用してよい。錠剤、糖衣錠、カプセル、丸薬、及び顆粒の固体剤型はコーティング及びシェル、例えば腸溶性コーティング及び他の製薬技術の当該分野で良く知られているコーティングを用いて製造できる。それらは任意に不透明化剤を含有してよく、そして、任意に遅延した態様において、腸管の特定の部分においてのみ、或いは優先的に、活性成分を放出する組成物のものであることができる。使用できる包埋組成物の例は重合体物質及びワックスを包含する。同様の型の固体組成物は又、乳糖又はミルクシュガーのような錠剤賦形剤並びに高分子量ポリエチレングリコール等を用いたソフト及びハード充填ゼラチンカプセルにおける充填剤としても使用してよい。
【0121】
活性化合物は又、上記した賦形剤1つ以上と共にマイクロカプセル型とすることもできる。錠剤、糖衣錠、カプセル、丸薬及び顆粒の固体剤型はコーティング及びシェル、例えば腸溶性コーティング、放出制御コーティング及び他の製薬技術の当該分野で良く知られているコーティングを用いて製造できる。そのような固体剤型においては、活性化合物はスクロース、乳糖又は澱粉のような不活性希釈剤少なくとも1つと添加混合してよい。そのような剤型は又、通常の慣行に従って、不活性希釈剤とは別の追加的な物質、例えば錠剤成型用滑沢剤及び他の錠剤化補助剤、例えばステアリン酸マグネシウム及び微結晶セルロースを含んで良い。カプセル、錠剤及び丸薬の場合は、剤型は又、緩衝物質を含んでよい。それらは任意に不透明化剤を含有してよく、そして、任意に遅延した態様において、腸管の特定の部分においてのみ、或いは優先的に、活性成分を放出する組成物のものであることができる。使用できる包埋組成物の例は重合体物質及びワックスを包含する。
【0122】
本発明の化合物の局所又は経皮投与のための剤型は軟膏、ペースト、クリーム、ローション、ゲル、粉末、溶液、スプレー、吸入剤又はパッチを包含する。活性成分は滅菌条件下、製薬上許容しうる担体及びいずれかの必要な保存料又は緩衝物質と、必要に応じて添加混合する。眼科用製剤、点耳薬、及び点眼薬もまた本発明の範囲に包含されるものとして意図される。更に又、本発明は身体への化合物の制御された送達をもたらす追加的な利点を有する経皮パッチの使用を意図している。そのような剤型は、適切な培地中に化合物を溶解又は分散することにより製造できる。吸収増強剤も又、皮膚を通過する化合物のフラックスを増大させるために使用できる。速度は、速度制御膜を設けることによるか、又は重合体マトリックス又はゲル中に化合物を分散させることのいずれかにより、制御することができる。
【0123】
本発明の化合物に加えて、本発明の化合物の製薬上許容しうる誘導体又はプロドラッグも又、上記した障害を治療又は防止するための組成物中で使用してよい。
【0124】
「製薬上許容しうる誘導体又はプロドラッグ」とは、レシピエントに投与された場合に本発明の化合物又はその抑制活性を有する代謝産物又は残基を直接的又は間接的のいずれかにより与えることができる本発明の化合物のいずれかの製薬上許容しうるエステル、エステルの塩又は他の誘導体を意味する。特に良好な誘導体又はプロドラッグは、本発明の化合物を患者に投与した場合に(例えば経口投与された化合物をより容易に血中に吸収され得るようにすることにより)その化合物の生態利用性を増大させるか、又は親の種と相対比較して生物学的コンパートメント(例えば脳又はリンパ系)への親化合物の送達を増強するものである。
【0125】
本発明の化合物の製薬上許容しうるプロドラッグは、限定しないが、エステル、アミノ酸エステル、ホスフェートエステル、金属塩及びスルホネートエステルを包含する。
【0126】
これらの医薬組成物中で使用してよい製薬上許容しうる担体は、限定しないが、イオン交換物質、アルミナ、ステアリン酸アルミニウム、レシチン、血清蛋白、例えばヒト血清アルブミン、緩衝物質、例えばホスフェート、グリシン、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、飽和植物性脂肪酸の部分グリセリド混合物、水、塩又は電解質、例えば硫酸プロタミン、リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素カリウム、塩化ナトリウム、亜鉛塩、コロイド状シリカ、三ケイ酸マグネシウム、ポリビニルピロリドン、セルロース系物質、ポリエチレングリコール、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリアクリレート、ワックス、ポリエチレン−ポリオキシプロピレンブロック重合体、ポリエチレングリコール及び羊毛脂を包含する。
【0127】
本発明の組成物は経口、非経口、吸引スプレーにより、局所、直腸内、経鼻、口内、膣内、又は移植されたリザーバを介して投与してよい。「非経口」という用語は本明細書においては、限定しないが、皮下、静脈内、筋肉内、関節内、滑液包内、胸骨内、髄腔内、肝臓内、患部内及び頭蓋内の注射又は注入の手法を包含する。好ましくは、組成物は経口、腹腔内又は静脈内投与する。
【0128】
本発明の組成物の滅菌された注射可能な形態は水性又は油性の懸濁液であってよい。これらの懸濁液は適当な分散剤又は水和剤及び懸濁剤を用いながら当該分野で知られた手法に従って製剤してよい。滅菌された注射可能な調製品は又、非毒性の非経口的に許容される希釈剤又は溶媒中の滅菌された注射可能な溶液又は懸濁液、例えば1,3−ブタンジオール中の溶液であってよい。使用してよい許容できるビヒクル及び溶媒に属するものは水、リンゲル溶液及び等張性の塩化ナトリウム溶液である。更に又、滅菌された固定油も溶媒又は懸濁媒体として従来より使用されている。この目的のためにはいずれかの銘柄の固定油、例えば合成のモノ又はジグリセリドを使用してよい。脂肪酸、例えばオレイン酸及びそのグリセリド誘導体が、天然の製薬上許容しうる油脂類、例えばオリーブ油又はヒマシ油、特にそのポリオキシエチル化型と同様、注射用調製品において有用である。これらの油脂の溶液又は懸濁液は又、長鎖アルコール希釈剤又は分散剤、例えばカルボキシメチルセルロース又は乳液及び懸濁液を包含する製薬上許容しうる剤形の製剤において一般的に使用されている同様の分散剤を含有してよい。他の一般的に使用されている界面活性剤、例えばTween、Span及び他の乳化剤又は製薬上許容しうる固体、液体、又は他の剤型の製造において一般的に使用されている生体利用性増強剤も又、製剤目的のために使用してよい。
【0129】
本発明の医薬組成物は例えば限定しないがカプセル、錠剤、水性の懸濁液又は溶液を包含するいずれかの経口的に許容される剤型において経口投与してよい。経口用の錠剤の場合は、一般的に使用されている担体は限定しないが乳糖及びコーンスターチを包含する。滑沢剤、例えばステアリン酸マグネシウムもまた典型的に添加される。カプセル形態における経口投与のためには、有用な希釈剤は乳糖及び乾燥コーンスターチを包含する。水性懸濁液を経口用途のために必要とする場合、活性成分は乳化剤及び懸濁剤と混合する。所望により、特定の甘味料、香味料又は着色剤も添加してよい。
【0130】
或いは、本発明の医薬組成物は直腸投与のための座薬の形態で投与してよい。これらは、室温では固体であるが直腸の温度では液体であるため、直腸内で溶融して薬剤を放出することになる適当な非刺激性の賦形剤に薬剤を混合することにより製造できる。そのような物質は、限定しないが、カカオ脂、蜜蝋及びポリエチレングリコールを包含する。
【0131】
本発明の医薬組成物は又、特に治療標的が局所適用により容易に接触可能な領域又は臓器を包含する場合、例えば眼、皮膚、又は下部腸管の疾患の場合、局所投与してよい。適当な局所用製剤はこれらの領域又は臓器の各々に対して容易に製造される。
【0132】
下部腸管に対する局所適用は直腸用の座薬の製剤(上記参照)において、又は適当な浣腸製剤において行うことができる。局所経皮パッチも使用してよい。
【0133】
局所適用のためには、医薬組成物は担体1つ以上中に懸濁又は溶解した活性成分を含有する適当な軟膏に製剤してよい。本発明の化合物の局所投与用の担体は、限定しないが、鉱物油、白色鉱油、白色ワセリン、プロピレングリコール、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン化合物、乳化ワックス及び水を包含する。或いは、医薬組成物は製薬上許容しうる担体1つ以上中に懸濁又は溶解した活性成分を含有する適当なローション又はクリームに製剤できる。適当な担体は限定しないが、鉱物油、ソルビタンモノステアレート、ポリソルベート60、セチルエステルワックス、セテアリールアルコール、2−オクチルドデカノール、ベンジルアルコール及び水を包含する。
【0134】
眼科用の場合、医薬組成物は等張性のpH調節された滅菌食塩水中のミクロ化懸濁液として、又は、好ましくは等張性のpH調節された滅菌食塩水中の溶液として、塩化ベンザルコニウムのような保存料を含有するか含有することなく、製剤してよい。或いは、眼科用の場合、医薬組成物はワセリンのような軟膏中に製剤してよい。
【0135】
本発明の医薬組成物は又、鼻用のエアロゾル又は吸入により投与してよい。そのような組成物は医薬品製剤の分野においてよく知られた手法に従って製造され、そしてベンジルアルコール又は他の適当な保存料、生体利用性を増大させるための吸収促進剤、フルオロカーボン、及び/又は他の従来の可溶化剤又は分散剤を用いながら、食塩水中の溶液として製造してよい。
【0136】
単一の剤型を製造するために担体物質と組み合わせてよい蛋白キナーゼ阻害剤の量は、治療すべき宿主、投与の特定の様式に応じて変動することになる。好ましくは組成物は、これらの組成物を投与される患者に対して阻害剤0.01〜100mg/kg体重/日の用量が投与できるように製剤しなければならない。
【0137】
いずれかの特定の患者に対する特定の用量及び治療用法は、種々の要因、例えば使用する特定の化合物の活性、年齢、体重、全身状態、性別、食餌状態、投与時間、排出速度、薬剤の組み合わせ、及び担当医師の判断及び治療すべき特定の疾患の重症度に応じたものとなる。阻害剤の量は又、組成物中の特定の化合物に応じたものとなる。
【0138】
別の実施形態によれば、本発明は、上記した医薬組成物の1つを患者に投与する工程を含む蛋白キナーゼ媒介状態(一部の実施形態においてはGSK−3媒介状態)を治療又は予防するための方法を提供する。「患者」という用語は本明細書においては、動物、好ましくはヒトを意味する。
【0139】
好ましくはその方法は、乳腺、結腸、前立腺、皮膚、膵臓、脳、尿生殖器管、リンパ系、胃、喉頭及び肺の癌、例えば肺の腺癌及び小細胞肺癌のような癌;卒中、糖尿病、骨髄腫、肝臓肥大、心臓肥大、アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン病、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、多発性硬化症(MS)、脊髄傷害、外傷性脳傷害、シャルコー−マリー−ツース病、白血球減少症、糖尿病性神経障害、骨粗鬆症、嚢胞性線維症、及びウィルス疾患、又は上記したいずれかの特定の疾患から選択される状態を治療又は予防するために使用される。
【0140】
本発明の他の態様は、患者における蛋白キナーゼ活性を阻害することに関し、その方法は式Iの化合物又は該化合物を含む組成物を患者に投与することを含む。
【0141】
治療又は予防すべき特定の蛋白キナーゼ媒介状態に応じて、その状態を治療又は予防するために通常投与される追加的薬剤を本発明の阻害剤と共に投与してよい。例えば化学療法剤又は他の抗増殖剤を本発明の蛋白キナーゼ阻害剤と組み合わせることにより、増殖性疾患を治療してよい。
【0142】
これらの追加的な薬剤は蛋白キナーゼ阻害剤含有化合物又は組成物とは別個に、多投薬用法の部分として投与してよい。或いはこれらの薬剤は単一の組成物中で蛋白キナーゼ阻害剤と共に混合された単一の財形の部分であってよい。
【0143】
一部の実施形態においては、前記蛋白キナーゼ阻害剤はGSK−3キナーゼ阻害剤である。
【0144】
本発明は又、患者への投与を行うもの以外の方法において使用してよい。
【0145】
本発明の化合物は当該分野で知られた方法により一般的に製造してよい。これらの化合物は知られた方法、例えば限定しないが、LCMS(液体クロマトグラフィー質量スペクトル分析)及びNMR(核磁気共鳴)により分析してよい。本発明の化合物は又、これらの実施例に従って試験してよい。以下に示す特定の条件は例示に過ぎず、そして本発明の化合物を製造、分析、又は試験するために使用できる条件の範囲を限定する意味はない。むしろ、本発明は又、本発明の化合物を製造、分析、及び試験するための当業者の知る条件を包含する。
【実施例】
【0146】
本明細書においては、「Rt(分)」という用語は化合物に関連する分表示によるHPLC又はLCMSの保持時間のいずれかを指す。
【0147】
特段の記載が無い限り、報告された保持時間を得るために利用したHPLC法は以下の通りである。
カラム:ACE C8カラム、4.6×150mm
勾配:0〜100% アセトニトリル+メタノール 60:40(20mM Trisホスフェート)
流量:1.5mL/分
検出:225nm。
【0148】
LCMS(液体クロマトグラフィー質量スペクトル分析)試料は、MicroMass Quattro Micro質量スペクトル分析器上、電子スプレーイオン化によりシングルMSモードで作動させながら分析した。試料はクロマトグラフィーを用いながら質量スペクトル分析器に導入した。全質量スペクトル分析用の移動相はアセトニトリル−水混合物に0.2%のギ酸又は0.1%のTFAを変性剤として添加したものを使用した。カラム勾配条件は3分間の勾配時間に渡り10%〜90%アセトニトリル、そして5分間の泳動時間をWaters YMC Pro−C18,4.6×50mmカラム上に設定する。流量は1.5ml/分とする。
【0149】
H−NMRスペクトルはBruker DPX400機を使用しながら400MHzにおいて記録した。以下の式Iの化合物を本明細書に記載した方法に従って製造した。化合物は本明細書に記載した方法に従って分析した。
【0150】
化合物I−1〜I−6をスキーム1に、そして又後述する合成実施例に記載した方法に従って合成した。
【0151】
以下の表2は表1に示した化合物に関連する分析データを説明する。
【0152】
【表2】

実施例1:
【0153】
【化10】

工程(i):
2−(2−クロロフェニル)−4−(トリフルオロメチル)ピリジン
DME(140mL)/水(35mL)中の2−クロロ−4−(トリフルオロメチル)ピリジン(4g、22.0ミリモル)、2−クロロフェニルボロン酸(5.04g、24.2ミリモル)、Ba(OH)(12.5g、66.1ミリモル)及びPd(PPhCl(464mg、0.66ミリモル)を1時間110℃で加熱した。固体を濾去し、母液を濃縮して約80mLとし、そしてEtOAcで抽出した。有機層を食塩水、次いで水で洗浄し、乾燥(MgSO)し、濾過し、濃縮した。カラムクロマトグラフィー(1/1石油エーテル/EtOAc)による精製により無色油状物としてSuzuki付加物(5.05g、89%)を得た。
H NMR(400MHz,CDCl):7.41−7.44(2H,m),7.51−7.56(2H,m),7.63−7.65(1H,m),7.94(1H,s),8.94(1H,d)。
【0154】
工程(ii)、(iii):
2−クロロ−6−(2−クロロフェニル)−4−(トリフルオロメチル)ピリジン
EtOAc(100mL)中の2−(2−クロロフェニル)−4−(トリフルオロメチル)ピリジン(5.40g、21.0ミリモル)の溶液にEtOAc(100mL)中のmCPBA(7.25g、42.0ミリモル)を30分かけて添加し、そして次に混合物を3時間還流下に加熱した(注意:シールド使用)。反応混合物を冷却し、次に2回NaHCO飽和水溶液で洗浄し、濃縮した。
【0155】
上記の残留物をPOCl(50mL)に溶解し、45分間還流した。混合物を濃縮し、次に氷を添加した。1時間後、混合物をEtOAcで抽出し、次に有機層を食塩水で洗浄し、乾燥(MgSO)し、濾過し、濃縮した。カラムクロマトグラフィー(10/1石油エーテル/EtOAc)による精製により無色油状物としてクロロピリジン(4.48g、73%)を得た。
H NMR(400MHz,CDCl):7.41−7.45(2H,m),7.50−7.55(1H,m),7.59(1H,s),7.65−7.70(1H,m),7.88(1H,s)。
【0156】
工程(iv)、(v):
N−(6−(2−クロロフェニル)−4−(トリフルオロメチル)ピリジン−2−イル)−5−フルオロ−1H−ピラゾロ[3,4−b]ピリジン−3−アミン
キサントホス(37.7mg、0.065ミリモル)をジオキサン(2ml)中のPd(OAc)(7.3mg、0.033ミリモル)に添加した。3分後、この溶液を窒素下にジオキサン(15ml)中の2−クロロ−6−(2−クロロフェニル)−4−(トリフルオロメチル)ピリジン(85.4mg、0.359ミリモル)、5−フルオロ−1−((2−(トリメチルシリル)エトキシ)メチル)−1H−ピラゾロ[3,4−b]ピリジン−3−アミン(92mg、0.326ミリモル)及び炭酸カリウム(225mg、1.63ミリモル)の混合物に添加した(ジオキサン1mlを使用)。反応混合物を80分間還流下に加熱攪拌した。EtOAcを添加し、固体を濾去し、濾液を濃縮した。カラムクロマトグラフィー(1/2石油エーテル/EtOAc)による精製により得られた残留物をTHF(2ml)に溶解し、そして水性HCl(2M、8mL)で処理した。100℃90分の後、混合物を濃縮した。残留物をEtOAcとNaHCO飽和水溶液の間に分配した。有機層を分離し、乾燥(MgSO)し、濾過し、濃縮した。残留物をFractionlynx質量指向分取用HPLC(水性TFA/MeCN混合物使用)により精製し、そして画分を重炭酸塩Stratosphereカートリッジに通した。濃縮により、白色固体としてアミノピリジン(15mg、11%)を得た。
H NMR(400MHz,DMSO):7.36(1H,s),7.48−7.51(2H,m),7.60−7.64(2H,m),8.31(1H,s),8.43(1H,d),8.56(1H,s),10.61(1H,s),13.17(1H,s)。
【0157】
中間体
【0158】
【化11】

5−フルオロ−1H−ピラゾロ[3,4−b]ピリジン−3−アミン5の合成に関する全体的な合成スキームを以下に示す。
【0159】
【化12】

試薬及び条件:i.Pd(OAc)、PPh、EtN、HCO;ii.1)(COCl)、CHCl、触媒DMF;2)NH(g)、ジオキサン、iii.TFAA、EtN、CHCl、0℃;iv.HNNH・HO、n−ブタノール、還流。
【0160】
2−クロロ−5−フルオロニコチン酸(6)
窒素雰囲気下、丸底フラスコに脱気したDMF(270mL)、Pd(OAc)(0.05等量、2.7g、11.9ミリモル)、PPh(0.1等量、6.2g、23.8ミリモル)、及び脱気したEtN(6等量、200mL、1428.6ミリモル)を添加した。混合物を20分間攪拌し、次にHCOOH(3等量、28mL、714.3ミリモル)を添加した。5分後、2,6−ジクロロ−5−フルオロニコチン酸(50g、238.1ミリモル)を添加した。混合物を50℃で攪拌した。反応は後処理したアリコートの分析(1HNMR)により追跡した。全ての出発物質が消費された時点(24時間)で混合物を0℃に冷却し、そして水(500mL)を添加した。20分後、混合物をセライトパッドで濾過し、これを水で濯いだ。混合物を30%水性NaOHでpH9まで塩基性化し、そしてEtOAcで洗浄した(2×)。HCl(12N)をpH1となるまでゆっくり添加し、そして溶液をNaClで飽和させた。混合物をEtOAcで抽出した(3×)。合わせた有機抽出液を食塩水で洗浄し、乾燥(NaSO)し、そして減圧下に濃縮して得られたベージュ色の固体37g(88%)は更に精製することなく次の工程に使用した。
H NMR(DMSO−d,300 MHz):δ 8.16(dd,1H);8.58(d,1H)。
【0161】
2−クロロ−5−フルオロニコチンアミド(3)
0℃のDCM(400mL)中の2−クロロ−5−フルオロニコチン酸6(50g、285ミリモル)及びDMF(2mL、28ミリモル)の溶液に、オキサリルクロリド(64mL、741ミリモル)を滴下した。反応混合物を室温で一夜攪拌し、そして真空下に濃縮した。得られた黄色の液体を1,4−ジオキサン(600mL)に溶解し、0℃で冷却し、そしてNH(g)を30分間溶液にバブリングした。混合物を一夜室温で攪拌した。得られた混合物を濾過し、濾液を濃縮してベージュ色の固体として化合物3(44g、89%)を得た。
H NMR(DMSO−d,300 MHz):δ7.84(s,1H),7.96(dd,1H),8.09(s,1H),8.49(d,1H)。
【0162】
2−クロロ−5−フルオロニコチノニトリル(4)
DCM(700mL)中の粗製の化合物3(65g、372.4ミリモル)及びEt3N(114mL、819.2ミリモル)の懸濁液を0℃に冷却し、そしてTFAA(57mL、409.6ミリモル)を滴下した。得られた黄色の溶液を0℃で90分間攪拌し、DCMで希釈し、飽和水性NaHCO及び食塩水で洗浄し、そして乾燥(NaSO)した。混合物を濾過し、濃縮した。残留物をKugel Rohr蒸留(〜70℃/1mbar)に付し、ベージュ色の固体として50g(86%)の化合物4を得た。化合物4は又カラムクロマトグラフィー(SiO、8:1ヘプタン:EtOAc)で精製することもできる。H NMR(CDCl,300 MHz):δ7.78(dd,1H);8.49(d,1H)。
【0163】
5−フルオロ−1H−ピラゾロ[3,4−b]ピリジン−3−アミン(5)
1−ブタノール(1L)中の化合物4(50g、321.7ミリモル)の溶液に、ヒドラジン1水和物(150mL、3.2モル)を添加し、そして混合物を4時間還流した。混合物を室温に冷却し、濃縮した。沈殿を順次フィルター上で、水(2×)及びEtO(2×)で洗浄し、そして一夜真空下に乾燥し、黄色固体として化合物5(44g、88%)を得た。H NMR(DMSO−d,300 MHz):δ5.53(s,2H);7.94(dd,1H);8.35(dd,1H);12.02(s,1H)。
【0164】
保護基(例えば、SEM)の付与は、当業者に知られている方法に従い、付与される。
【0165】
実施例2:GSK−3阻害試験:
本発明の化合物を、GSK−3β(AA1−420)活性を阻害するそれらの能力の有無に関して、標準的なカップリング酵素系を用いながらスクリーニングした(Fox等、Protein Sci.1998,7,2249)。反応は100mM HEPES(pH7.5)、10mM MgCl、25mM NaCl、300μM NADH、1mM DTT及び1.5%DMSOを含有する溶液中で実施した。試験における最終基質濃度は20μM ATP(Sigma Chemicals、St Louis、MO)及び300μMペプチド(American Peptide、Sunnyvale、CA)であった。反応は30℃及び20nMのGSK−3βにおいて実施した。カップリング酵素系の成分の最終濃度は2.5mMホスホエノールピルベート、300μM NADH、30μg/mlピルベートキナーゼ及び10μg/mlラクテートデヒドロゲナーゼであった。
【0166】
試験の保存緩衝溶液はATP及び本発明の被験化合物を除き、上記した試薬の全てを含有するように製造した。試験保存緩衝溶液(175μl)を10分間30℃において0.002μM〜30μMの範囲の終濃度における本発明の被験化合物5μlと共に96穴プレート中でインキュベートした。典型的には、ドータープレート中本発明の被験化合物のDMSOによる連続希釈物(10mMの化合物保存液から調製)を製造することにより12点滴定を実施した。ATP(終濃度20μM)20μlを添加することにより反応を開始した。反応の速度は30℃において10分間に渡り、Molecular Devices Spectramaxプレートリーダー(Sunnyvale,CA)を用いながら求めた。Ki値は阻害剤濃度の関数として速度のデータから求めた。本発明の化合物はGSK−3を阻害することがわかった。
【0167】
以下の化合物は≦10nMのKi値でGSK−3を阻害することがわかった:I−2、I−3、及びI−5。
【0168】
以下の化合物は>10nM及び≦1uMのKi値でGSK−3を阻害することがわかった:I−1、I−4、及びI−6。
【0169】
実施例3:GSK−3α及びGSK−3βのp−TYR阻害試験
化合物と投与したJurkat細胞のウエスタンブロッティングを用いることによりチロシン(TYR)残基のリン酸化を阻害する化合物の能力の有無についてこれらをスクリーニングした。試験した特定のTYR残基のリン酸化物はGSK3α TYR279及びGSK3β TYR216である。
【0170】
細胞及び溶解物の調製
Jurkat細胞を飢餓培地(RPMI+1%FBS+P/S)中12穴ディッシュ中2×10個/ウェルの細胞密度において播種する。16時間飢餓状態とした後、化合物を0.3%の最終DMSO濃度において各ウェルに投与し、そして細胞を37℃、5%COにおいて一夜インキュベートする。翌日、細胞を1500rpmで遠心分離し、PBSで洗浄し、そしてβ−メルカプトエタノールを用いて100uLのLaemli試料緩衝液中で溶解する。
【0171】
ウエスタンブロットプロトコル
15マイクロリットル(μL)の細胞溶解物を10%トリス−グリシンゲルに負荷し、そして2時間、又は染料前線がゲルから流出するまで、120vにおいて泳動させる。次に蛋白を60分間100vでPVDF膜上に移行させる。次にPBST(0.1%Tween20を含有するPBS、例えばPBS 1L当たり1mlのTween)を作成し、そして全ての洗浄及び抗体インキュベーションのために使用する。ブロットは1時間5%無脂肪乳PBST中でブロックする。
【0172】
次に一次抗体(GSK−3α/β pTYR 279/216、1:1000希釈度、Upstateカタログ番号05−413)を穏やかに振とうさせながら4℃において一夜5%無脂肪乳PBST中に添加する。次にブロットを5分間PBST中で洗浄する。次にこれを4回反復する。二次抗マウスHRPコンジュゲート抗体(1:5000希釈度)を5%乳PBST中60分間添加する。次にブロットを5分間PBST中で洗浄する。これも又4回反復する。現像溶液(ECL plus Western Blotting Detection System、入手元Amersham/GE、カタログ番号RPN2132)3.0mLを作成し、次に添加する。溶液を約30秒間ブロット上で攪拌する。次にブロットをCL−XposureクリアブルーX線フィルムを用いて現像する。GAPDHの発現レベルを負荷対照(GAPDH抗体:santa cruz25−778)として1:10000希釈度で使用する。
【0173】
GSK−3α及びGSK−3β pTYR IC50の測定のために、特定の化合物濃度における各蛋白に関する対応するバンドの密度を各曝露において存在する無化合物DMSO投与対照細胞試料と比較する。IC50の数はGSK−3α及びGSK−3βのバンドの密度が無化合物対照の50%となる化合物の濃度として定義される。
【0174】
実施例4:β−カテニン安定化プロトコル
β−カテニンのGSK−3リン酸化は分解のためにプロテオソームにそれを標的化する。GSK−3の阻害は細胞のサイトゾルにおけるβ−カテニンの蓄積をもたらし、これは転写因子TCF/LEFとの相互作用を介して核に転座し、そしてWnt依存性の遺伝子の転写を駆動する。試験は化合物を投与したJurkat細胞におけるβ−ラクタマーゼレポーター試験の使用を介して定量的な態様においてβ−カテニン依存性TCF/LEF転写活性のレベルを測定するように設計されている。
【0175】
Jurkatβ−カテニン細胞をフラスコ中試験培地(1%FBS、1xPenstrep、RPMI)中で一夜飢餓状態とする。翌日、Jurkatβ−カテニン細胞を100μlの容量の試験培地中、50,000個/ウェルの細胞密度において96穴平底プレート中に播種する。化合物は0.75%の最終DMSO濃度においてウェルに添加し、そして一夜37℃においてインキュベートする。翌日、20μLの6xCCF4染料をウェルに添加し、そして1〜2時間室温でインキュベートする。プレートをCytofluor4000シリーズマルチウェルプレートリーダー上で読み取り、そして460/530比を測定する。β−カテニンの誘導に関するGSK−3 IC50は、化合物の濃度に対して460/530比をプロット(Log目盛)し、そして傾きの式を用いて比が最大作用の50%となる点を計算することにより求める。
【0176】
β−カテニン:GSK−3のウインドウは実施例3において得られたGSK−3α又はGSK−3βのp−TYR IC50値で実施例4において得られたβ−カテニン IC50値を割ることにより計算した。
【0177】
以下の化合物は500〜1000倍のβ−カテニン:GSK−3αウインドウを有することがわかった:I−2。以下の化合物は1000倍〜2000倍のβ−カテニン:GSK−3αウインドウを有することがわかった:I−3及びI−5。以下の化合物は40〜75倍のβ−カテニン:GSK−3βウインドウを有することがわかった:I−1及びI−5。以下の化合物は75〜125倍のβ−カテニン:GSK−3βウインドウを有することがわかった:I−2及びI−3。
【0178】
表3は表1の選択された化合物に関するGSK−3α pTYR、GSK−3β pTYR、及びβ−カテニンのIC50データを示す。
【0179】
【表3】

本発明者等は本発明の実施形態の多くを説明してきたが、本発明者等の基本的な例を改変することにより本発明の化合物、方法、及びプロセスを利用又は包含する他の実施形態を得てよいことは自明である。従って、当然ながら、本発明の範囲は添付の特許請求の範囲により定義されるべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式I:
【化13】

[式中、
Htは下記環I−a、I−b、又はI−c:
【化14】

から選択され;
ここで、環I−cにおけるいずれかの置換可能な炭素は任意に−R10で置換されており、
環Dはフェニルであり、ここでフェニルは1−5個の−Rで任意に置換されており;
はN又はCR10であり;
各々のR、R、及びRは独立してH、ハロ、又はC1−6脂肪族であり、ここで、脂肪族は任意にハロ、−CN、及び−ORから選択される基1〜5個で置換されており;
各々のR10は独立してハロC1−6アルキル、C1−6アルキル、ハロ、OR、C(=O)R、COR、COCOR、NO、CN、S(O)R、SOR、SR、N(R、CON(R、SON(R、OC(=O)R、N(R)COR、N(R)CORから選択され;
はH又はC1−6アルキルであり;
各々のRは独立してH、C1−6アルキル、又はハロC1−6アルキルから選択され;
各々のRは独立してハロ、ハロC1−6アルキル、C3−6シクロアルキル、又はC1−6アルキルから選択され;そして、
各々のRは独立してH、C1−6アルキル、又はハロC1−6アルキルから選択される]の化合物又は製薬上許容しうるその塩。
【請求項2】
Htが下記環I−a:
【化15】

である請求項1記載の化合物。
【請求項3】
Htが下記環I−b:
【化16】

である請求項1記載の化合物。
【請求項4】
Htが下記環I−c:
【化17】

である請求項1記載の化合物。
【請求項5】
がNである請求項4記載の化合物。
【請求項6】
がH又はC1−6脂肪族であり、ここで脂肪族は任意に1〜5個のハロで置換されている請求項2〜5のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項7】
がH又はC1−6アルキルであり、ここでアルキルは任意に1〜5個のハロで置換されている請求項6記載の化合物。
【請求項8】
がH又はC1−4アルキルであり、ここでアルキルは任意に1〜5個のハロで置換されている請求項7記載の化合物。
【請求項9】
アルキルがメチル、エチル、シクロプロピル、又はイソプロピルであり、ここで各アルキルは任意に1〜5個のハロで置換されている請求項8記載の化合物。
【請求項10】
ハロがフルオロである請求項6記載の化合物。
【請求項11】
がC1−4アルキルである請求項2〜10のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項12】
がHである請求項2〜10のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項13】
がC1−4アルキルである請求項2〜12のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項14】
がHである請求項2〜12のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項15】
がH又はC1−6アルキルである請求項1〜3のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項16】
がメチルである請求項15記載の化合物。
【請求項17】
下記:
【化18】

から選択される請求項1の化合物。
【請求項18】
請求項1〜16項のいずれか1項に記載の化合物、および製薬上許容しうる担体、アジュバント、又はビヒクルを含む組成物。
【請求項19】
化学療法剤又は抗増殖剤、抗炎症剤、免疫調節剤又は免疫抑制剤、神経栄養因子、心臓血管疾患を治療するための薬剤、糖尿病を治療するための薬剤、又は免疫不全障害を治療するための薬剤から選択される治療薬を更に含む請求項18記載の組成物。
【請求項20】
請求項1〜17のいずれか1項に記載の化合物でエクスビボ又はインビトロの生物学的試料中のGSK−3活性を阻害する方法。
【請求項21】
請求項1〜17のいずれか1項に記載の化合物を患者に投与する工程を含む、糖尿病、骨粗鬆症、アルツハイマー病、ハンチントン病、パーキンソン病、エイズ関連痴呆、双極性障害、筋萎縮性側索硬化症(ALS、ルーゲーリック病)、多発性硬化症(MS)、統合失調症、白血球減少症、卒中、及び慢性関節リューマチから選択される疾患又は状態を治療又はその重症度を低下させる方法。
【請求項22】
前記疾患が卒中である請求項21記載の方法。
【請求項23】
前記疾患が糖尿病である請求項21記載の方法。
【請求項24】
前記疾患が統合失調症である請求項21記載の方法。
【請求項25】
前記疾患が双極性障害である請求項21記載の方法。
【請求項26】
前記疾患が白血球減少症である請求項21記載の方法。
【請求項27】
請求項1〜17のいずれか1項に記載の化合物を患者に投与する工程を含む、卒中、脊髄傷害、外傷性脳傷害、シャルコー−マリー−ツース病、及び糖尿病性神経障害から選択される疾患又は状態を治療又はその重症度を低下させる方法。
【請求項28】
前記疾患又は状態が卒中である請求項27記載の方法。
【請求項29】
虚血が生じた後に化合物が投与される請求項28記載の方法。
【請求項30】
卒中後の回復のために化合物が使用される請求項28記載の方法。
【請求項31】
糖尿病を治療するための薬剤、骨粗鬆症を治療するための薬剤、アルツハイマー病を治療するための薬剤、ハンチントン病を治療するための薬剤、パーキンソン病を治療するための薬剤、エイズ関連痴呆を治療するための薬剤、双極性障害を治療するための薬剤、筋萎縮性側索硬化症(ALS、ルーゲーリック病)を治療するための薬剤、多発性硬化症(MS)を治療するための薬剤、統合失調症を治療するための薬剤、白血球減少症を治療するための薬剤、卒中を治療するための薬剤、慢性関節リューマチを治療するための薬剤から選択される追加的治療薬を前記患者に投与する追加的工程を含む請求項21記載の方法であって、ここで:
a)前記追加的治療薬が治療される疾患に対して適切であり;そして、
b)前記追加的治療薬が単一の剤型として前記組成物と共に、又は多剤型の一部として前記組成物とは別個に投与される上記方法。
【請求項32】
脊髄傷害を治療するための薬剤、外傷性脳傷害を治療するための薬剤、シャルコー−マリー−ツース病を治療するための薬剤、又は糖尿病性神経障害を治療するための薬剤から選択される追加的治療薬を前記患者に投与する追加的工程を含む請求項27記載の方法。
【請求項33】
物理療法と組み合わせた請求項28〜30のいずれか1項に記載の方法。
【請求項34】
請求項1〜17のいずれか1項に記載の化合物にニューロン細胞を接触させる工程を含む前記細胞における軸索及び樹状突起の分枝化を増大させる方法。
【請求項35】
請求項1〜17のいずれか1項に記載の化合物にニューロン細胞を接触させる工程を含む前記細胞における神経発生を増大させる方法。
【請求項36】
請求項1〜17のいずれか1項に記載の化合物にニューロン細胞を接触させる工程を含む前記細胞における血管形成を増大させる方法。
【請求項37】
請求項1〜17のいずれか1項に記載の化合物にニューロン細胞を接触させる工程を含む前記細胞の形成性を増大させる方法。

【公表番号】特表2010−520887(P2010−520887A)
【公表日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−552928(P2009−552928)
【出願日】平成20年3月10日(2008.3.10)
【国際出願番号】PCT/US2008/056428
【国際公開番号】WO2008/112646
【国際公開日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【出願人】(598032106)バーテックス ファーマシューティカルズ インコーポレイテッド (414)
【氏名又は名称原語表記】VERTEX PHARMACEUTICALS INCORPORATED
【住所又は居所原語表記】130 Waverly Street, Camridge, Massachusetts 02139−4242, U.S.A.
【Fターム(参考)】