説明

蛋白質及びペプチドナノ粒子のアンフォールディングとフォールディングを利用した薬剤送達方法

本発明は薬理活性剤のインビボ送達用蛋白質ナノ粒子の製造方法を提供し、前記方法は蛋白質をアンフォールディングさせた後に前記蛋白質をリフォールディング又はアセンブリングさせて蛋白質ナノ粒子に封入された薬理活性剤を生成することにより、医薬活性剤を蛋白質又はペプチドに封入してナノ粒子を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は薬理活性剤のインビボ送達とその臨床使用に関する。特に、本発明は蛋白質をアンフォールディングさせた後に前記蛋白質をリフォールディング又はアセンブリングさせてナノ粒子を生成することにより、医薬活性剤を蛋白質又はペプチドに封入してナノ粒子を形成する方法を提供する。製造された粒子は約1〜約40重量%の薬理活性剤を含有しており、直径約5〜約500nm以上である。
【背景技術】
【0002】
薬理活性剤の静脈内投与は医薬を生体の他の部分に輸送する血流との間に迅速で直接的な平衡をもたらす。静脈内投与される活性剤の副作用を減らすためには、活性剤のマイクロ粒子又はナノ粒子封入が有用な方法である。1側面において、治療剤粒子の静脈内注射は血管内区画の内側への薬剤の漸次放出を可能にすると思われる。別の側面において、治療剤粒子が標的物質から製造される場合には、治療剤粒子内の薬剤は標的送達されると思われる。
【0003】
Abraxane(登録商標)(米国特許第6,749,868号、米国特許第5,560,933号)により使用されているもの等の蛋白質粒子の所定の製造方法は蛋白質溶液と有機溶媒の混合液を均質化してエマルションを形成した後に、エマルションを高圧ホモジナイザーに供している。高圧下でアルブミンはパクリタキセル粒子コアの周囲にシェルを形成する。これらの方法は複雑である上、ナノ粒子を獲得し、有機溶媒を除去するために高圧と比較的高温が必要である。有機溶媒は毒性であり、残留を避ける必要があるため、使用するのは望ましくない。更に、ジスルフィド架橋を切断するために物理的力に依存する制約によるものと思われるが、薬剤配合量が制限されている。一方、製造中の高圧と剪断力により、蛋白質又はペプチドは不可逆的に変性する恐れがあり、従って、その生物活性を失う恐れがある。
【0004】
薬理活性剤又は診断剤の担体として蛋白質粒子が文献に報告されている。アルブミンのマイクロスフェアが熱架橋又は化学架橋により製造されている。例えば、パクリタキセル及びドキソルビシン誘導体を含むタキサンの薬剤担体としてのアルブミンの使用が文献に開示されている[Journal of Controlled Release 132(2008)171−183;Advanced Drug Delivery Reviews 60(2008)876−885参照]。更に、他の文献には薬剤送達用としての蛋白質ケージの使用も開示されている[Small 5(2009)1706−1721]。しかし、文献に記載されている薬剤送達システムはその薬剤配合量と、薬剤送達システムに配合可能な治療剤に関する制約により制限されている。
【0005】
熱架橋マイクロスフェアは100℃〜150℃の温度で乳化混合物(例えばアルブミンと、配合しようとする薬剤と、適切な油脂の混合物)から製造される。その後、マイクロスフェアを適切な溶媒で洗浄し、保存する。Leucutaら[International Journal of Pharmaceutics Vol.41:213−217(1988)]は熱架橋マイクロスフェアの製造方法を記載している。
【0006】
文献[Science Vol.213:233−235(1981)]及び米国特許第4,671,954号に記載されているような架橋マイクロスフェアの製造方法はグルタルアルデヒドを使用して蛋白質を化学的に架橋させた後に洗浄・保存している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第6,749,868号明細書
【特許文献2】米国特許第5,560,933号明細書
【特許文献3】米国特許第4,671,954号明細書
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Journal of Controlled Release 132(2008)171−183
【非特許文献2】Advanced Drug Delivery Reviews 60(2008)876−885
【非特許文献3】Small 5(2009)1706−1721
【非特許文献4】Leucuta et al.,International Journal of Pharmaceutics Vol.41:213−217(1988)
【非特許文献5】Science Vol.213:233−235(1981)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
報告されている蛋白質ナノ粒子の製造方法は非水溶性物質を封入しにくい。この問題は方法自体がエマルションの水相中での蛋白質の架橋に依存していることに起因する。水溶性物質であれば、蛋白質を含有する水相に溶解し、架橋蛋白質マトリックスに封入することができるが、これらの方法により形成した蛋白質マトリックスに低水溶性又は油溶性物質を配合することはできない。更に、封入に使用される蛋白質は既に変性していることが多く、その生物活性は製造中に容易に失われる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、1態様において、薬理活性剤を蛋白質に封入したインビボ送達用ナノ粒子の製造方法を提供し、前記方法は、(a)第1の溶媒と共に蛋白質を含有する蛋白質溶液を調製又は取得する段階と;(b)蛋白質をアンフォールディングさせるのに適した溶液の存在下で前記薬理活性剤を段階(a)の前記蛋白質溶液と接触させ、それによって前記蛋白質のアンフォールディングを生じさせ、次に前記蛋白質のリフォールディング又はアセンブリングを生じさせ、前記薬理活性剤を前記蛋白質に封入する段階を含む。ナノ粒子は一般に平均径約5nm〜約2000nm、好ましくは約25nm〜約500nm、より好ましくは約50nm〜約300nmである。本態様の方法により製造されるナノ粒子は一般にナノ粒子の総重量に対して約1%〜約40%の薬理活性剤を含有することができる。
【0011】
更に、薬理活性剤は一般にパクリタキセル、ドセタキセル、イリノテカン、フルオロウラシル、カルムスチン、ドキソルビシン、フェネステリン、ピポスルファン、タモキシフェン、ロムスチン、ガンボギン酸、オリドニン、ポドフィロトキシン、アトルバスタチン、シンバスタチン、フェノフィブラート、ニフェジピン、イブプロフェン、インドメタシン、ピロキシカム、グリブリド、ジアゼパム、リスペリドン、ジプラシドン、タクロリムス、ラパマイシン、インジナビル、リトナビル、テラプレビル、ロピナビル及びその組合せ等の疎水性物質である。好ましい態様において、疎水性薬理活性剤としてはパクリタキセルとドセタキセルが挙げられる。活性剤は親水性化合物でもよい。本発明の範囲に含まれる親水性化合物の例としては、限定されないが、シクロホスファミド、ブレオマイシン、ダウノルビシン、エピルビシン、メトトレキサート、フルオロウラシル及びその類似体、白金及び類似体、ビンブラスチン及び類似体、ホモハリントニン及びその誘導体、アクチノマイシンD、マイトマイシンc並びにエトポシドが挙げられる。更に、本態様の方法は一般にアルブミン、トランスフェリン、インスリン、エンドスタチン、ヘモグロビン、ミオグロビン、ライソザイム、イムノグロブリン、α−2−マクログロブリン、フィブロネクチン、ラミン、コラーゲン、ゼラチン、人工ペプチド及び蛋白質、並びにその組合せを含む蛋白質を利用する。本発明の好ましい態様において、蛋白質としては、アルブミン、トランスフェリン、インスリン、エンドスタチン及びヘモグロビンが挙げられる。本態様の方法は更に段階(a)で使用される水、生理食塩水、糖類、凍結乾燥保護剤及び蛋白質安定化剤を含む第1の溶媒を利用することができる。好ましい態様において、第1の溶媒としては水、リン酸塩、酢酸塩、グリシン、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン、過酸化水素を含有する水溶液、グルタチオンを含有する水溶液、塩化ナトリウム溶液、グルコース溶液、ミコース、マンニトール、スクロース、アセチルトリプトファン、カプリル酸ナトリウム及びその組合せが挙げられる。本態様の方法の段階(a)は一般に約−20℃〜約100℃、好ましくは約50℃〜約85℃、より好ましくは約55℃〜約75℃の温度で実施することができる。更に、本態様の方法の段階(a)は約3〜約9、約5〜約8.5、及び約6〜約8のpHレベルで実施することができる。
【0012】
更に、段階(b)のアンフォールディング溶液は一般に水、強酸、強塩基、無機塩、有機溶媒、変性剤及び界面活性剤を含む。好ましい態様において、アンフォールディング溶液としては、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ホルムアルデヒド、クロロホルム、アセトン、硫化水素、2−メルカプトエタノール、ジチオスレイトール、グアンジン、尿素、過塩素酸塩、トリ−n−ブチルホスフィン、カプトプリル、過ギ酸、ペニシラミン、グルタチオン、メチマゾール、アセチルシステイン、3,3”,3”−ホスフィニジントリプロピオン酸及びその組合せが挙げられる。段階(b)のアンフォールディング工程は蛋白質のアンフォールディングを助長することが可能な外部ストレスも利用することができる。外部ストレスとしては、温度変化、圧力変化、機械的力、放射線及びその組合せが挙げられる。具体的に、約100〜約100,000ポンド毎平方インチ(psi)の圧力を反応に加えると、蛋白質のアンフォールディングを助長することができる。別の態様では、約2000〜約60,000ポンド毎平方インチ(psi)の圧力を反応に加えると、蛋白質のアンフォールディングを助長することができる。
【0013】
更に、本態様の方法は不純物を除去し、より高濃度のナノ粒子溶液を形成するための透析又は濾過段階(c)も含むことができる。本態様の方法は更に段階(c)の高濃度のナノ粒子溶液を凍結乾燥、噴霧乾燥又は減圧脱水等の手段により脱水工程に供し、乾燥ナノ粒子を得る段階も含むことができる。乾燥ナノ粒子は医薬製剤に配合することができる。
【0014】
別の態様において、本発明は疎水性薬理活性剤を蛋白質に封入したインビボ送達用ナノ粒子の製造方法を包含し、前記方法は、(a)約−20℃〜約100℃の温度及び約3〜約9のpHで蛋白質溶液を調製又は取得する段階と;(b)アンフォールディングに適した溶液の存在下で前記疎水性薬理活性剤を段階(a)の前記溶液と接触させ、それによって前記蛋白質のアンフォールディングを生じさせ、次に前記蛋白質のリフォールディング又はアセンブリングを生じさせ、前記薬理活性剤を前記蛋白質に封入する段階を含む。ナノ粒子は直径約5nm〜約500nmであり、前記ナノ粒子はナノ粒子の総重量に対して約1%〜約40%の薬理活性剤を含有する。疎水性薬理活性剤としては、限定されないが、パクリタキセル、ドセタキセル、イリノテカン、カルムスチン、ドキソルビシン、フェネステリン、ピポスルファン、タモキシフェン、ロムスチン、ガンボギン酸、オリドニン、ポドフィロトキシン、アトルバスタチン、シンバスタチン、フェノフィブラート、ニフェジピン、イブプロフェン、インドメタシン、ピロキシカム、グリブリド、ジアゼパム、リスペリドン、ジプラシドン、タクロリムス、ラパマイシン、インジナビル、リトナビル、テラプレビル、ロピナビル及びその組合せが挙げられる。本態様の方法の蛋白質としては、限定されないが、アルブミン、トランスフェリン、インスリン、エンドスタチン、ヘモグロビン、ミオグロビン、ライソザイム、イムノグロブリン、α−2−マクログロブリン、フィブロネクチン、ラミン、コラーゲン、ゼラチン、人工ペプチド及び蛋白質、並びにその組合せが挙げられる。本態様の方法は水、生理食塩水、リン酸塩、酢酸塩、グリシン、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン、過酸化水素を含有する水溶液、グルタチオンを含有する水溶液、塩化ナトリウム溶液、グルコース溶液、ミコース、マンニトール、スクロース、アセチルトリプトファン、カプリル酸ナトリウム及びその組合せを含む第1の溶媒を利用する。更に、本態様の方法のアンフォールディング溶液としては、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ホルムアルデヒド、クロロホルム、アセトン、硫化水素、2−メルカプトエタノール、ジチオスレイトール、グアンジン、尿素、過塩素酸塩、トリ−n−ブチルホスフィン、カプトプリル、過ギ酸、ペニシラミン、グルタチオン、メチマゾール、アセチルシステイン、3,3”,3”−ホスフィニジントリプロピオン酸及びその組合せが挙げられる。
【0015】
別の態様において、本発明はパクリタキセルを蛋白質に封入したインビボ送達用ナノ粒子の製造方法を包含し、前記方法は、(a)約55℃〜約75℃の温度及び約6〜約8のpHで第1の溶媒と共に蛋白質を含有する蛋白質溶液を調製又は取得する段階と;(b)アンフォールディング溶液の存在下で前記パクリタキセルを段階(a)の前記蛋白質溶液と接触させ、それによって前記蛋白質のアンフォールディングを生じさせ、次に前記蛋白質のリフォールディング又はアセンブリングを生じさせ、前記パクリタキセルを前記蛋白質に封入する段階と;(c)場合により前記ナノ粒子を透析又は濾過し、過剰の化学物質を除去し、より高濃度の溶液を得る段階と;(d)段階(c)の前記高濃度のナノ粒子溶液を脱水工程に供し、医薬製剤に配合することが可能な保存処理済みナノ粒子を生成する段階を含み;前記ナノ粒子は平均径約50nm〜約300nmであり、前記ナノ粒子はナノ粒子の総重量に対して約1%〜約40%の薬理活性剤を含有する。本態様において、アンフォールディング溶液はエタノール、アセトン、硫化水素,2−メルカプトエタノール、尿素及びその組合せから構成される群から選択される。更に、本態様の方法で利用される蛋白質はアルブミン、トランスフェリン、インスリン、エンドスタチン及びヘモグロビンから構成される群から選択される。
【0016】
更に別の態様において、本発明はドセタキセルを蛋白質に封入したインビボ送達用ナノ粒子の製造方法を包含し、前記方法は、(a)約55℃〜約75℃の温度及び約6〜約8のpHで第1の溶媒と共に蛋白質を含有する蛋白質溶液を調製又は取得する段階と;(b)アンフォールディング溶液の存在下で前記ドセタキセルを段階(a)の前記蛋白質溶液と接触させ、それによって前記蛋白質のアンフォールディングを生じさせ、次に前記蛋白質のリフォールディング又はアセンブリングを生じさせ、前記ドセタキセルを前記蛋白質に封入する段階と;(c)場合により前記ナノ粒子を透析又は濾過し、過剰の化学物質を除去し、より高濃度の溶液を得る段階と;(d)段階(c)の高濃度のナノ粒子溶液を脱水工程に供し、医薬製剤に配合することが可能な保存処理済みナノ粒子を生成する段階を含み;前記ナノ粒子は平均径約50nm〜約300nmであり、前記ナノ粒子はナノ粒子の総重量に対して約1%〜約40%の薬理活性剤を含有する。本態様において、アンフォールディング溶液はエタノール、アセトン、硫化水素,2−メルカプトエタノール、尿素及びその組合せから構成される群から選択される。更に、本態様の方法で利用される蛋白質はアルブミン、トランスフェリン、インスリン、エンドスタチン及びヘモグロビンから構成される群から選択される。
【0017】
別の態様において、本発明は(a)本願に記載の方法に従ってナノ粒子を製造する段階と;(b)投与を必要とする患者に前記ナノ粒子を投与する段階を含む癌の治療方法を包含する。
【0018】
別の態様において、本発明は薬理活性剤を蛋白質に封入したナノ粒子を包含し、前記ナノ粒子はインビボ送達に適しており、前記ナノ粒子は、(a)約−20℃〜約100℃の温度及び約3〜約9のpHで第1の溶媒中に前記蛋白質を含有する蛋白質溶液を調製又は取得する段階と;(b)アンフォールディング溶液の存在下で前記疎水性薬理活性剤を段階(a)の前記溶液と接触させ、それによって前記蛋白質のアンフォールディングを生じさせ、次に前記蛋白質のリフォールディング又はアセンブリングを生じさせ、前記薬理活性剤を前記蛋白質に封入する段階に従って製造される。
【0019】
別の態様において、本発明はパクリタキセルを蛋白質に封入したナノ粒子を包含し、前記ナノ粒子はインビボ送達に適しており、前記ナノ粒子は、(a)約55℃〜約75℃の温度及び約6〜約8のpHで第1の溶媒に前記蛋白質を溶解する段階と;(b)アンフォールディング溶液の存在下で前記パクリタキセルを段階(a)の前記蛋白質溶液と接触させ、それによって前記蛋白質のアンフォールディングを生じさせ、次に前記蛋白質のリフォールディング又はアセンブリングを生じさせ、前記パクリタキセルを前記蛋白質に封入する段階と;(c)場合により前記ナノ粒子を透析又は濾過し、過剰の化学物質を除去し、より高濃度の溶液を得る段階と;(d)段階(c)の高濃度のナノ粒子溶液を脱水工程に供し、医薬製剤に配合することが可能な保存処理済みナノ粒子を生成する段階に従って製造される。
【0020】
更に別の態様において、本発明はドセタキセルを蛋白質に封入したナノ粒子を包含し、前記ナノ粒子はインビボ送達に適しており、前記ナノ粒子は、(a)約55℃〜約75℃の温度及び約6〜約8のpHで第1の溶媒中に前記蛋白質を含有する蛋白質溶液を調製又は取得する段階と;(b)アンフォールディング溶液の存在下で前記ドセタキセルを段階(a)の前記蛋白質溶液と接触させ、それによって前記蛋白質のアンフォールディングを生じさせ、次に前記蛋白質のリフォールディング又はアセンブリングを生じさせ、前記ドセタキセルを前記蛋白質に封入する段階と;(c)場合により前記ナノ粒子を透析又は濾過し、過剰の化学物質を除去し、より高濃度の溶液を得る段階と;(d)段階(c)の高濃度のナノ粒子溶液を脱水工程に供し、医薬製剤に配合することが可能な保存処理済みナノ粒子を生成する段階に従って製造される。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】パクリタキセル−アルブミンナノ粒子の粒度に及ぼす各種pH値の影響を示す。
【図2】パクリタキセル−アルブミンナノ粒子の粒度分布のグラフを示す。
【図3】本発明の方法に従って製造したパクリタキセル−アルブミンナノ粒子(薬剤配合率10.59%)のTEM写真を示す。
【図4】ナノ粒子の10〜20重量%のパクリタキセルを配合したアルブミンナノ粒子の透過型電子顕微鏡写真を示す。
【図5】パクリタキセル原薬、アルブミン、アルブミンとパクリタキセルの物理的混合物及びパクリタキセル−アルブミンナノ粒子のX線粉末回折パターンを示す。
【図6】各種溶液中のパクリタキセル−アルブミンナノ粒子と対照標準であるAbraxane(登録商標)の再分散を示す。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明では、薬理活性剤を蛋白質に封入したインビボ送達用ナノ粒子の製造方法が提供され、前記方法は、(a)組合せを含有する蛋白質溶液を調製又は取得する段階と;(b)アンフォールディング溶液の存在下で薬理活性剤を段階(a)の溶液と接触させ、それによって前記蛋白質のアンフォールディングを生じさせ、次に前記蛋白質のリフォールディング又はアセンブリングを生じさせ、薬理活性剤を蛋白質に封入する段階を含む。本発明によると、蛋白質又はペプチドを外部ストレス又は化合物によりアンフォールディングさせた後にリフォールディング又はリアセンブリングさせると、薬理活性剤を蛋白質又はペプチドに封入し、直径約5nm〜約2000nmのナノ粒子を形成できることが判明した。薬理活性剤の配合率は約1%〜約40%(w/w)である。
【0023】
本発明はいくつかの側面において従来技術に対する改善を示す。第1に、本発明の方法により形成されたナノ粒子は添加した薬理活性剤の90%までと結合することができると思われ、この量は従来技術の方法を上回り、より効率的な製法と費用効果的な方法を実現する。更に、本発明はナノ粒子の重量の約40%が薬理活性剤に相当し得るように、約40%までの薬剤配合率を可能にする。薬剤配合率の増加により、当業者は患者への薬剤投与量を減らし、投与期間を短縮し、従って、より良好な患者コンプライアンスを達成することが可能になる。薬剤配合率の増加に伴い、薬理活性剤を送達するために使用される蛋白質の量が減るため、製剤の費用効率も改善される。更に、薬剤配合率の低い従来技術の薬剤送達システムは、有効用量を送達するために多量の送達用粒子が必要であったため、高用量を必要とする薬理活性剤を十分に送達することができなかった。これに対して、本発明の方法により製造されたナノ粒子は薬剤配合率が高いため、この問題が著しく軽減する。
【0024】
本発明の別の利点は臨床用薬理活性剤を選択的に送達できるという点にある。本願に記載する方法により製造された粒子は何らかの方法で所定の臓器及び生体系を標的とすることが可能である。例えば、アルブミンを蛋白質担体とする場合には、粒子の寸法を変えることにより、肝臓、肺、脾臓又はリンパ循環系を標的とすることが可能である。トランスフェリン又はインスリンを蛋白質担体とする場合には、その受容体は腫瘍細胞表面で高度に発現されるため、リガンドと腫瘍細胞の表面で発現される受容体の親和性により、薬理活性剤を腫瘍組織に選択的に送達することができる。エンドスタチンを蛋白質担体とする場合には、その受容体は主に新生血管に局在するが、腫瘍組織には多量の新生血管が存在するので、ナノ粒子は腫瘍組織に蓄積するであろう。何らかの方法で、種々の蛋白質担体により種々の組織を標的にできると思われる。従って、本発明は生体の標的領域に薬理活性剤を送達するためのより効率的で費用効果的な方法を提供する。
【0025】
本願で使用する「インビボ送達」なる用語は経口、静脈内、皮下、腹腔内、髄腔内、鼻腔内、筋肉内、吸入、局所、経皮、直腸(座薬)、膣等の投与経路による薬理活性剤の送達を意味する。
【0026】
本願で使用する「ナノ粒子」なる用語はその輸送と特性の観点から1単位として挙動する小単位を意味する。本発明のナノ粒子は一般に平均粒子径約5ナノメートル(nm)〜約2000nmである。好ましい態様において、ナノ粒子の平均粒子径は約25nm〜約500nmである。本発明の更に好ましい態様において、平均粒子径は約50nm〜約300nmである。更に、本発明のナノ粒子はナノ粒子の重量の約40%までが活性剤に相当し得るように、薬理活性剤(活性剤)と結合することが可能である。
【0027】
本願に記載する方法はナノ粒子により人体の標的領域に送達できるように薬理活性剤を利用する。一般に、活性剤としては、患者にインビボ投与した場合に薬理的応答を誘発することが可能な任意物質が挙げられる。本発明で利用することができる活性剤としては、疎水性化合物と親水性化合物の両者が挙げられる。当業者に自明の通り、疎水性物質は水溶解度が低い傾向があり、親水性化合物は水溶解度が高い傾向がある。疎水性化合物の例としては、限定されないが、抗腫瘍剤、心血管薬、抗炎症剤、抗糖尿病剤、中枢神経系アゴニスト、中枢神経系アンタゴニスト、免疫抑制剤及び抗ウイルス剤が挙げられる。本発明の方法で利用することができる特定の薬理活性剤としては、限定されないが、パクリタキセル、ドセタキセル、イリノテカン、カルムスチン、ドキソルビシン、フェネステリン、ピポスルファン、タモキシフェン、ロムスチン、ガンボギン酸、オリドニン、ポドフィロトキシン、アトルバスタチン、シンバスタチン、フェノフィブラート、ニフェジピン、イブプロフェン、インドメタシン、ピロキシカム、グリブリド、ジアゼパム、リスペリドン、ジプラシドン、タクロリムス、ラパマイシン、インジナビル、リトナビル、テラプレビル、ロピナビル及びその組合せが挙げられる。好ましい態様において、活性剤としてはパクリタキセル、ドセタキセル、イリノテカン、カルムスチン、ドキソルビシン、フェネステリン、ピポスルファン、タモキシフェン、ロムスチン、ガンボギン酸、オリドニン、ポドフィロトキシン、本願に記載する化合物の誘導体及び類似体、並びにその組合せ等の抗腫瘍性化合物が挙げられる。更に好ましい態様において、疎水性活性剤としてはパクリタキセルとドセタキセルが挙げられる。同様に当然のことながら、薬理活性剤としては、溶媒和物と非溶媒和物を含めて、本願に記載する化合物の結晶体又は非晶質体も挙げられる。
【0028】
上記のように、活性剤は親水性化合物でもよい。本発明の範囲に含まれる親水性化合物の例としては、限定されないが、シクロホスファミド、ブレオマイシン、ダウノルビシン、エピルビシン、メトトレキサート、フルオロウラシル及びその類似体、白金及び類似体、ビンブラスチン及び類似体、ホモハリントニン及びその誘導体、アクチノマイシンD、マイトマイシンc並びにエトポシドが挙げられる。
【0029】
当業者に自明の通り、本発明の方法で利用される活性剤の量は蛋白質の配合量により異なり、更に製造しようとするナノ粒子の量によっても異なる。同様に当業者に自明の通り、活性剤は100%活性剤の純物質として配合してもよいし、純度100%未満の化合物として配合してもよく、いずれも本発明の範囲内である。
【0030】
本発明の方法は更に、活性剤を封入するために使用され、その後、目的のナノ粒子を生成する蛋白質も利用する。一般に、本発明の方法に使用される蛋白質としては変性と結合の可能な任意蛋白質又はペプチドが挙げられる。蛋白質の適切な例としては、限定されないが、アルブミン、トランスフェリン(ラクトフェリンとオボトランスフェリンを含む)、インスリン、エンドスタチン、ヘモグロビン、ミオグロビン、ライソザイム、イムノグロブリン、α−2−マクログロブリン、フィブロネクチン、ラミン、コラーゲン、ゼラチン、人工ペプチド及び蛋白質、並びにその組合せが挙げられる。好ましい態様において、本発明の方法で利用される蛋白質としては、アルブミン、トランスフェリン、インスリン、エンドスタチン、ヘモグロビン及びその組合せが挙げられる。当業者に自明の通り、本発明の方法で利用される蛋白質の量は選択される活性成分とナノ粒子の所望量により異なる。蛋白質選択に関する一般的な手引きについては、Analytical Biochemistry Vol.72:248−254(1976)を参照されたい。
【0031】
上記のように、本発明の方法の段階(a)は上記のような蛋白質溶液を調製又は取得することからなる。段階(a)に記載する「蛋白質溶液」なる用語は蛋白質と選択蛋白質を溶解することが可能な第1の溶媒の組合せを含む溶液であって、溶液中で選択蛋白質のアンフォールディングが生じ、次に蛋白質のリフォールディング又はアセンブリングが生じる溶液として一般に定義される。本願で使用する「リフォールディング」なる用語はアンフォールディング又は変性した蛋白質又はペプチドがその適切な三次元構造にリフォールディングするプロセスを意味する。「アセンブリング」なる用語はリフォールディングした蛋白質又はペプチドがアセンブリングしてナノ粒子を形成するプロセスを意味する。当業者に自明の通り、蛋白質のリフォールディングプロセスは多数の条件下で実施することができる。蛋白質溶液で使用される溶媒の非限定的な例としては、水、生理食塩水、糖類、凍結乾燥保護剤及び蛋白質安定化剤が挙げられる。好ましい態様において、第1の溶媒としては、水、生理食塩水、凍結乾燥保護剤(例えばリン酸塩、リン酸緩衝生理食塩水、酢酸塩、グリシン、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン、過酸化水素を含有する水溶液、グルタチオンを含有する水溶液、塩化ナトリウム溶液及びグルコース溶液)、蛋白質安定化剤(例えばミコース、マンニトール、スクロース、アセチルトリプトファン及びカプリル酸ナトリウム)及びその組合せが挙げられる。より好ましい態様において、蛋白質溶液の溶媒としてはリン酸塩、酢酸塩及び生理食塩水が挙げられる。更に、蛋白質溶液で使用される溶媒は、蛋白質を溶解すると共に蛋白質をアンフォールディング後にリフォールディング又はアセンブリングさせるのに適した任意量を本方法で利用することができる。一般に、蛋白質溶液の濃度は約0.01M〜約1.6Mである。好ましい態様において、濃度は約0.03M〜約1.5Mである。より好ましい態様において、蛋白質溶液の濃度は約0.05M〜約0.8Mである。最も好ましい態様において、濃度は約0.1M〜約0.3Mである。当業者に自明の通り、蛋白質を溶解するために必要な第1の溶媒の量は蛋白質の配合量と第1の溶媒の濃度を含む各種因子により異なる。
【0032】
上記の有利な特徴をもつ本発明のナノ粒子を製造するには段階(a)の反応パラメータが重要であることが判明した。一般に、最適な結果を得るためには、本発明の段階(a)を約−20℃〜約100℃の温度で反応させる。好ましい態様では、本発明の段階(a)を約50℃〜約85℃の温度で反応させる。より好ましい態様では、本発明の段階(a)を約55℃〜約75℃の温度で反応させる。段階(a)の反応は約3〜約9のpHで反応させた場合に最適な結果に達することも判明した。好ましい態様では、段階(a)の反応を約5〜約8.5のpHで反応させる。更に好ましい態様では、段階(a)を約6〜約8のpHで反応させる。更に、当業者に自明の通り、段階(a)の反応は蛋白質産物を十分に溶解させる時間にわたって進行させるべきである。一般に、時間は使用する蛋白質の種類、蛋白質の使用量、利用する第1の溶媒の種類、第1の溶媒の量、第1の溶媒の濃度及び当業者に公知の他の因子により異なる。一般に、当業者に自明の通り、反応を進行させるために十分な時間にわたって反応全体と反応の個々の段階を実施することができる。1態様では、反応を約30分間〜約8時間進行させる。
【0033】
本発明の方法の第2段階は薬理活性剤を段階(a)の蛋白質溶液と接触させることからなる。更に、段階(b)はアンフォールディング溶液の存在下で実施する。本願で使用する「アンフォールディング溶液」なる用語は蛋白質又はペプチドがその三次構造と二次構造を失うプロセスを誘導することが可能な溶液を意味する。一般に、アンフォールディング溶液は蛋白質の弱い変性を誘導すべきである。一般に、当業者に自明の通り、弱い変性とは、アンフォールディング/変性後に(例えばリフォールディング又はアセンブリング溶液/条件を使用する)所定条件下で蛋白質又はペプチドをリフォールディングさせることができ、その適切な立体構造を回復又は再配置させることができる状況を意味する。アンフォールディング溶液はジスルフィド架橋を切断し、水素結合架橋を形成し、水が蛋白質の内部の疎水性相互作用を妨害できるようにする還元環境を提供することができる。当業者に自明の通り、多数の適切な溶液をアンフォールディング溶液として利用することができる。アンフォールディング溶液として一般に使用することができる化学物質及び成分としては、水、強酸、強塩基、無機塩、有機溶媒、変性剤及び界面活性剤が挙げられる。アンフォールディング溶液の適切な例としては、限定されないが、水、生理食塩水、リン酸塩、酢酸塩、グリシン、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン、過酸化水素を含有する水溶液、グルタチオンを含有する水溶液、塩化ナトリウム溶液、グルコース溶液、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ホルムアルデヒド、クロロホルム、アセトン、硫化水素 2−メルカプトエタノール、ジチオスレイトール、グアンジン、尿素、過塩素酸塩、トリ−n−ブチルホスフィン、カプトプリル、過ギ酸、ペニシラミン、グルタチオン、メチマゾール、アセチルシステイン、3,3”,3”−ホスフィニジントリプロピオン酸及びその組合せが挙げられる。好ましい態様において、アンフォールディング溶液としてはエタノール、アセトン、硫化水素 2−メルカプトエタノール及び尿素が挙げられる。アンフォールディング溶液がpH約3〜約9であるときに本発明の方法は最適であることも分かった。好ましい態様において、アンフォールディング溶液はpH約5.5〜約8.5である。
【0034】
更に、アンフォールディング溶液に加え、本発明の方法は蛋白質アンフォールディング工程を助長するために付加的な外部ストレスも利用することができる。当業者に自明の通り、外部ストレスとしては蛋白質アンフォールディングを誘導することが可能な任意の力が挙げられる。蛋白質アンフォールディングを助長するために利用することができる外部ストレスの非限定的な例としては、温度変化、圧力変化、溶液に加えられる機械的ストレス及び放射線が挙げられる。1態様において、外部ストレスは蛋白質のアンフォールディングを助長するために約100〜約100,000ポンド毎平方インチ(psi)の圧力を反応に加えることからなる。別の態様では、反応への約2000〜約60,000ポンド毎平方インチ(psi)の圧力印加を使用することができる。
【0035】
本発明の方法は更に段階(a)及び(b)により形成されたナノ粒子溶液から不純物又は塩類を除去するための付加段階(c)を含むことができる。一般に、この段階はナノ粒子を小分子から分離するために使用することができる任意工程を含む。当業者に自明の通り、分離方法としては、蛋白質及びペプチドを精製するために当分野で公知の任意方法が挙げられる。これらの工程は塩析法、透析、ゲル電気泳動及びその組合せを適切に選択し、組合せることにより実施することができる。好ましい態様において、前記方法は透析を含む。
【0036】
本発明の方法は更に、(d)薬剤送達装置としてのナノ粒子の有効性を維持するための工程にナノ粒子を供する段階を含むことができる。一般に、保存処理工程はナノ粒子を医薬製剤に配合できるように、ナノ粒子の保存と輸送を容易にするためにナノ粒子を脱水する工程の使用を含む。本発明の方法で利用することができる保存処理工程の適切な例としては、濃縮、減圧乾燥、凍結乾燥及び噴霧乾燥が挙げられる。
【0037】
別の態様において、本発明は患者における疾患の治療方法も包含する。前記方法は一般に本願に記載の方法に従って本願に記載のナノ粒子を製造する段階と、投与を必要とする患者に前記ナノ粒子を投与する段階を含む。当業者に自明の通り、本願に記載するナノ粒子の投与により治療することができる疾患はナノ粒子に封入する薬理活性剤により異なる。本発明の方法に従って治療することができる疾患の非限定的な例としては、癌、心血管疾患(例えば高血圧症及び高脂血症)、炎症過程、糖尿病及び血中グルコース濃度の調節に支障を来す他の疾患状態、中枢神経系疾患、神経疾患(例えばパーキンソン病、アルツハイマー病及び認知症)、自己免疫疾患状態、並びにウイルス感染に起因する疾患状態が挙げられる。
【0038】
当業者に自明の通り、本発明の範囲と趣旨内でいくつかの変形が可能である。アンフォールディング剤を変更してもよいし、多様な薬理活性剤を利用でき、担体の形成にも多様な蛋白質及び合成ペプチドを使用することができる。以下、非限定的な実施例に関して本発明をより詳細に説明する。
【0039】
本発明の製剤は更に医薬的に許容可能な賦形剤も含有することができる。一般に、賦形剤は製法を容易にすると共に製剤の性能/性状を改善するために製剤に添加される。一般的な賦形剤としては希釈剤又は増量剤、滑沢剤、結合剤及び医薬的に許容可能な他の全賦形剤が挙げられ、これらのいずれも本発明の製剤に配合することができる。
【0040】
希釈剤又は増量剤は個々の用量の嵩を好ましい投与経路に適した寸法まで増加するために添加することができる。適切な希釈剤としては、粉末糖類、リン酸カルシウム、硫酸カルシウム、微結晶セルロース、グリシン、トレハロース、ラクトース、マンニトール、カオリン、塩化ナトリウム、乾燥澱粉及びソルビトールが挙げられる。
【0041】
結合剤も製剤に配合することができる。適切な結合剤の例としては、限定されないが、ポビドン、ポリビニルピロリドン、キサンタンガム、セルロースガム(例えばカルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシセルロース)、ゼラチン、澱粉及び予め糊化させた澱粉が挙げられる。
【0042】
製剤に配合することができる他の賦形剤としては、限定されないが、防腐剤、酸化防止剤、又は製薬産業で通常使用されている他の任意賦形剤が挙げられる。当業者に自明の通り、ナノ粒子と共に製剤に配合する賦形剤の量は製剤の望ましい性状により異なる。
【0043】
以下の実施例は単に本発明の例示を目的とし、従って、如何なる点でも本発明を制限するものとみなすべきではない。使用した数値については正確さを確保するように努めたが、多少の実験誤差及び偏差を考慮すべきである。
【実施例1】
【0044】
パクリタキセル−アルブミンナノ粒子の製造
エチレンジアミン四酢酸塩0.5mg/mLと0.05Mメルカプトエタノールを添加した0.1Mリン酸緩衝液(pH6.0)10mlにアルブミン100mgを溶解した。反応を2時間実施した。反応後、蛋白質を沈殿させ、5%トリクロロ酢酸で洗浄した。次に、パクリタキセル16mgをエタノール1.6mLに溶解し、沈殿した蛋白質と混合した。10分間混合後、0.1Mリン酸緩衝液(pH8.0)50mLを加え、混合物を溶解させた。得られた分散液は半透明であり、得られたパクリタキセル粒子の典型的な直径は80nm〜200nmであった(BIC 90plus粒度分析計)。パクリタキセル含有率のHPLC分析の結果、90%を上回るパクリタキセルがアルブミンに封入されていることが判明した。
【実施例2】
【0045】
蛋白質沈殿工程を省略したパクリタキセル−アルブミンナノ粒子の製造
37℃で撹拌下にアルブミン100mgをトリス緩衝液(pH7.4)50mLに溶解し、メルカプトエタノール350μLを加えた。アンフォールディング反応を10分間実施した。パクリタキセル20mgを含有するエタノール溶液2mLを加えた。30分後に試料をトリス緩衝液(pH7.4)で24時間透析した。分散液を更に48時間凍結乾燥した。得られたケーキは滅菌水又は生理食塩水を加えることにより元の分散液に容易に再構成することができた。再構成後の粒度は凍結乾燥前と同一であった。得られたパクリタキセル粒子の典型的な直径は80nm〜200nmであった(BIC 90plus粒度分析計)。パクリタキセル含有率のHPLC分析の結果、90%を上回るパクリタキセルがナノ粒子に封入されていることが判明した。
【実施例3】
【0046】
パクリタキセル−アルブミンナノ粒子の製造
ヒトアルブミン100mgを緩衝液(pH4.8)10mlに溶解し、氷浴中に30分間維持した。(沈殿を誘導するために)冷アセトン(0℃)7.5mLを加え、氷浴中に更に60分間維持した。次に溶液を遠心し、沈殿を回収した。パクリタキセルの10mg/mlアセトン溶液を加え、超音波を加えることにより沈殿と混合した。生理的緩衝液を加え、マグネチックスターラーを使用して混合し、溶液を形成した。こうして得られたパクリタキセル−アルブミンナノ粒子の平均粒度をBIC 90plus粒度分析計により分析した処、150〜220nmであることが分かった。次にナノ粒子溶液を凍結乾燥により乾燥した。凍結乾燥ケーキを再構成した。HPLCアッセイによると、ナノ粒子のパクリタキセル配合率は8.3%であった。
【0047】
付加実験の結果、凍結乾燥用増量剤としてグリシン、マンニトール、トレハロース又はラクトースを使用できるが、ラクトースを使用すると、より小さいナノ粒子が得られることが分かった。更に、付加実験の結果、約55℃〜約75℃の温度で塩溶液を使用しても上記沈殿又はアンフォールディング工程を実施できることが分かった。
【実施例4】
【0048】
蛋白質沈殿工程を省略したパクリタキセル−トランスフェリンナノ粒子の製造
25℃で撹拌下にトランスフェリン100mgをトリス緩衝液(pH7.4)50mlに溶解し、メルカプトエタノール350uLを加えた。アンフォールディング反応を10分間実施した。次にパクリタキセル10mgを含有するエタノール溶液1mLを加えた。平均粒度は154.4nmであった(BIC 90plus粒度分析計)。ナノ粒子の理論的パクリタキセル配合率は9.0%であった。
【実施例5】
【0049】
蛋白質沈殿工程を省略したドセタキセル−トランスフェリンナノ粒子の製造
25℃で撹拌下にトランスフェリン100mgをトリス緩衝液(pH7.4)50mLに溶解し、メルカプトエタノール350uLを加えた。アンフォールディング反応を10分間実施した。ドセタキセル50mgを含有するエタノール溶液5mlを加えた。溶液は沈殿せずに淡青色になった。再構成後の平均粒度は177.1nmであった(BIC 90plus粒度分析計)。ナノ粒子の理論的ドセタキセル配合率は33.3%であった。
【実施例6】
【0050】
ガンボギン酸−アルブミンナノ粒子の製造
先ず、アルブミン100mgを水10mlに溶解した。得られた溶液を等容量のトリクロロ酢酸と混合し、遠心し、上清を除去した。次に、得られた蛋白質沈殿にガンボギン酸のエタノール溶液を加えた後、トリス緩衝液(pH8.0)50mlを加え、蛋白質沈殿が完全に溶解するまで撹拌した。こうして得られたガンボギン酸−アルブミンナノ粒子の平均粒度をBIC 90plus粒度分析計で分析した処、110nmであることが分かった。ナノ粒子の理論的ガンボギン酸配合率は9.0%であった。
【実施例7】
【0051】
パクリタキセル−ヘモグロビンナノ粒子の製造
2N HCl 3mLを含有するアセトン溶液300mLに−20℃で3%ヘモグロビン水溶液10mLをゆっくりと加えた。次に溶液を15分間激しく撹拌した後、15分間遠心した。残留アセトンの蒸発後、回収した沈殿を冷脱イオン水に溶解した。溶液を先ず脱イオン水で2℃にて5時間、次いで0.0016M NaHCO溶液で30時間透析した。濾過によりグロビン溶液を得た。
【0052】
上記グロビン溶液7mLに脱イオン水28mlを加え、約1mg/mLの溶液を得た。次に、パクリタキセルのエタノール溶液(10mg/mL)0.7mLを低温(2〜8℃)で加え、淡青色溶液が得られるまで撹拌した。溶液中に沈殿は生じなかった。こうして得られたパクリタキセル−グロビンナノ粒子の平均粒度をBIC 90plus粒度分析計で分析した処、301.8nmであることが分かった。ナノ粒子の理論的パクリタキセル配合率は9.0%であった。
【実施例8】
【0053】
アセチルトリプトファン緩衝液中でのパクリタキセル−アルブミンナノ粒子の製造
0.16mMアセチルトリプトファンと0.16mMカプリル酸ナトリウムを含有する溶液50mLにアルブミン100mgを溶解した。溶液を37℃で撹拌し、メルカプトエタノール350mLを加えた。アンフォールディング反応を10分間実施した。次に、パクリタキセル15mgを含有するエタノール溶液1.5mLを加え、淡青色溶液が得られるまで撹拌した。BIC 90plus粒度分析計により測定した処、得られたパクリタキセル−アルブミン粒子の典型的な直径は130nmであった。
【実施例9】
【0054】
グルコース溶液中でのパクリタキセル−アルブミンナノ粒子の製造
37℃で撹拌下にアルブミン100mgを5%w/vグルコース溶液50mLに溶解し、メルカプトエタノール350mLを加えた。アンフォールディング反応を10分間実施した。更に、パクリタキセル15mgを含有するエタノール溶液1.5mLを加え、淡青色溶液が得られるまで撹拌した。BIC 90plus粒度分析計により測定した処、得られたパクリタキセル−アルブミン粒子の典型的な直径は130nmであった。
【実施例10】
【0055】
ナノ粒子寸法に及ぼすpHの影響
本発明の教示に従い、各種pHレベルのリン酸緩衝液を利用してナノ粒子を製造し、各種ナノ粒子の寸法に及ぼすその影響について評価した。全蛋白質溶液に15%パクリタキセル(10mg/mL)を加えた。ナノ粒子の直径を等温条件下で分析した。結果を図1に示す。
【実施例11】
【0056】
動的光散乱法(DLS)を使用したパクリタキセル−アルブミンナノ粒子の性状解析
本発明の方法に従って製造したパクリタキセル−アルブミンナノ粒子の粒度分布をBIC 90plus粒度分析計で試験した。図2に示すように、平均粒度は121nmであり、粒度分布は狭い。
【実施例12】
【0057】
ナノ粒子の透過型電子顕微鏡試験
10.59%パクリタキセルを配合したナノ粒子を本発明の方法に従って製造した。EM−2100 200k高分解能透過型電子顕微鏡(日本製)を使用してTEM画像を試験した。図3に結果を示すが、ナノ粒子は球形であることが判明した。
【実施例13】
【0058】
再構成したパクリタキセル−アルブミンナノ粒子の安定性試験
凍結乾燥したパクリタキセル−アルブミンケーキを夫々生理食塩水(NS)で5mg/ml、5%グルコース溶液(GS)で5mg/ml、及びウシ血清(CS)で2mg/mlとなるように再構成した。異なる温度(25℃と37℃)で36時間保存後、パクリタキセル−アルブミンナノ粒子の平均粒度(DLS,BIC 90plus粒度分析計)は変わらなかった。沈殿は認められなかった。結果を表1にまとめる。
【0059】
【表1】

【実施例14】
【0060】
パクリタキセル−トランスフェリンナノ粒子の検討
パクリタキセル−トランスフェリンナノ粒子を製造する付加実験を実施した。(1)トランスフェリンを溶解するには、トリス緩衝液以外に生理食塩水も使用することができ;(2)pH3〜8.5でパクリタキセル−トランスフェリンナノ粒子を得ることができ、より高い薬剤配合率とより望ましい安定性のナノ粒子を得るために最適なpH範囲は6〜7.5であり;(3)凍結乾燥又は減圧乾燥に有効な増量剤としてショ糖、グルコース、グリシン及びミコースを使用できることが分かった。
【実施例15】
【0061】
再構成したパクリタキセル−トランスフェリンナノ粒子の安定性試験
凍結乾燥したパクリタキセル−トランスフェリンケーキを夫々生理食塩水(NS)で5mg/ml、5%グルコース溶液(GS)で5mg/ml、及びウシ血清(CS)で2mg/mlとなるように再構成した。異なる温度(25℃と37℃)で36時間保存後、パクリタキセル−トランスフェリンナノ粒子の平均粒度(DLS,BIC 90plus粒度分析計)は変わらなかった。沈殿は認められなかった。結果を表2にまとめる。
【0062】
【表2】

【実施例16】
【0063】
透過型電子顕微鏡(TEM)を使用したパクリタキセル−アルブミンナノ粒子の性状解析
各パクリタキセル−アルブミンナノ粒子溶液2滴又は3滴を夫々炭素被覆銅グリッド(200メッシュ)に滴下した。2分後にグリッドを引き上げ、過剰の溶液を濾紙で吸い取った後、風乾した。EM−2100 200kV高分解能透過型電子顕微鏡(日本製)を使用してナノ粒子画像を試験した。
【0064】
TEMの結果:試料のTEM画像を図4に示す。(a)パクリタキセル−アルブミンナノ粒子は球形であり;(b)ブランクアルブミンナノ粒子は平均一次粒子径約100nmの不規則形状であり;(c)遊離パクリタキセルは棒状構造に囲まれた中心に高電子密度画像を示し;(d)パクリタキセル−アルブミンナノ粒子はコア/シェル構造を示すことが分かった。
【実施例17】
【0065】
X線粉末回折法(XRD)によるナノ粒子内のパクリタキセルの固相性状解析
パクリタキセルは結晶性であり、水溶解度が非常に低い(脱水物で1μg/ml)。従って、非晶質パクリタキセルが得られるならば、見掛けの溶解度が高いため、注射に非常に有利である。本発明のパクリタキセルナノ粒子内のパクリタキセルの固相性状を評価するために、X線粉末回折法を使用した。(a)パクリタキセル、(b)アルブミンナノ粒子、(c)パクリタキセル−アルブミンナノ粒子(薬剤配合率=12.9%)、(d)アルブミンとパクリタキセル(12.9%)の物理的混合物の4種類の試料をX線粉末回折解析用に作製した。粉末回折計(ARL,XTRA,Applied Research Laboratories,Switzerland)を使用して5〜50°の2θ(CuKa)角度で各試料のデータを取得した。
【0066】
図5に示す結果によると、(a)パクリタキセルのXRDパターンは結晶性薬剤の特徴を表すピークを示し;(b)アルブミンナノ粒子のXRDパターンは15〜45°の2θ範囲で広いハローピークを示し、アルブミンの非晶質相の特徴を表し;(c)パクリタキセル−アルブミンナノ粒子のXRDパターンも15〜45°の2θ範囲で広いハローピークを示し、ナノ粒子内に非晶質パクリタキセルが存在することを示し;(d)パクリタキセル−アルブミンナノ粒子と同一レベルのパクリタキセル(12.9%)を含有するパクリタキセル−アルブミンの物理的混合物のXRDパターンは結晶性パクリタキセルと非晶質アルブミンが試料中に共存することを示す。従って、本発明により製造されたパクリタキセル−アルブミンナノ粒子は事実上非晶質であると結論される。
【実施例18】
【0067】
パクリタキセル−アルブミンナノ粒子の分散試験
本発明の方法による凍結乾燥パクリタキセル−アルブミンケーキと指定薬剤Abraxane(登録商標)を夫々以下の蛋白質濃度:(a,b)2mg/mL;(c,d)20mg/mL;(e,f)50mg/mLとなるように水で再構成した。これらの試料の画像を図6に示す。図6に示すように、全3種の試料でパクリタキセル−アルブミンナノ粒子の安定な半透明コロイド分散液が得られた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬理活性剤を蛋白質に封入したインビボ送達用ナノ粒子の製造方法であって、前記方法が、
(a)第1の溶媒中に前記蛋白質を含有する蛋白質溶液を調製又は取得する段階と;
(b)アンフォールディング溶液の存在下で前記薬理活性剤を段階(a)の前記蛋白質溶液と接触させ、それによって前記蛋白質のアンフォールディングを生じさせ、次に前記蛋白質のリフォールディング又はアセンブリングを生じさせ、前記薬理活性剤を前記蛋白質に封入する段階を含む、前記方法。
【請求項2】
前記ナノ粒子が、ナノ粒子の総重量に対して約1%〜約40%の薬理活性剤を含有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記薬理活性剤が、水溶解度の低い疎水性物質を含み、水溶解度の低い前記疎水性物質が抗腫瘍剤、心血管薬、抗炎症剤、抗糖尿病剤、中枢神経系アゴニスト、中枢神経系アンタゴニスト、免疫抑制剤及び抗ウイルス剤を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
水溶解度の低い前記疎水性物質が、パクリタキセル、ドセタキセル、イリノテカン、カルムスチン、ドキソルビシン、フェネステリン、タモキシフェン、ロムスチン、ガンボギン酸、ポドフィロトキシン、ビンブラスチン、エピルビシン、エトポシド、ホモハリントニン及びその誘導体、アクチノマイシンD、アトルバスタチン、シンバスタチン、フェノフィブラート、ニフェジピン、イブプロフェン、インドメタシン、ピロキシカム、グリブリド、ジアゼパム、リスペリドン、ジプラシドン、タクロリムス、ラパマイシン、インジナビル、リトナビル、テラプレビル、ロピナビル並びにその組合せを含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記薬理活性剤が、親水性化合物を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記親水性化合物が、シクロホスファミド、ブレオマイシン、ダウノルビシン、メトトレキサート、フルオロウラシル、ピポスルファン、オリドニン及びその類似体、白金及び類似体並びにマイトマイシンcから構成される群から選択される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記蛋白質が、アルブミン、トランスフェリン、インスリン、エンドスタチン、ヘモグロビン、ミオグロビン、ライソザイム、イムノグロブリン、α−2−マクログロブリン、フィブロネクチン、ラミン、コラーゲン、ゼラチン、人工ペプチド及び蛋白質、並びにその組合せを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記インビボ送達が、経口、静脈内、皮下、腹腔内、髄腔内、鼻腔内、筋肉内、吸入、局所、経皮、直腸、膣及びその組合せを含む投与経路による前記ナノ粒子の送達を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
段階(a)の前記第1の溶媒が、水、生理食塩水、糖類、凍結乾燥保護剤及び蛋白質安定化剤を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記凍結乾燥保護剤が、リン酸塩、リン酸緩衝生理食塩水、酢酸塩、グリシン、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン、過酸化水素を含有する水溶液、グルタチオンを含有する水溶液、塩化ナトリウム溶液、グルコース溶液及びその組合せを含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記蛋白質安定化剤が、ミコース、マンニトール、スクロース、アセチルトリプトファン、カプリル酸ナトリウム及びその組合せを含む、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
段階(b)の前記アンフォールディング溶液が、水、強酸、強塩基、無機塩、有機溶媒、変性剤及び界面活性剤を含む群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記有機溶媒が、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ホルムアルデヒド、クロロホルム、アセトン、硫化水素及びその組合せを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記変性剤が、2−メルカプトエタノール、ジチオスレイトール、グアンジン、尿素、過塩素酸塩、トリ−n−ブチルホスフィン、カプトプリル、過ギ酸、ペニシラミン、グルタチオン、メチマゾール、アセチルシステイン、3,3”,3”−ホスフィニジントリプロピオン酸及びその組合せを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記無機塩が、水、生理食塩水、リン酸塩、酢酸塩、グリシン、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン、過酸化水素を含有する水溶液、グルタチオンを含有する水溶液、塩化ナトリウム溶液、グルコース溶液及びその組合せを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項16】
(c)前記ナノ粒子を透析又は濾過工程に供し、過剰の化学物質を除去するか、又はより高濃度の溶液を得る段階を更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
(d)段階(c)の前記高濃度のナノ粒子溶液を脱水工程に供し、医薬製剤に配合することが可能な保存処理済みナノ粒子を生成する段階を更に含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記脱水工程が、凍結乾燥、減圧乾燥及び噴霧乾燥を含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
疎水性薬理活性剤を蛋白質に封入したインビボ送達用ナノ粒子の製造方法であって、前記方法が、
(a)約−20℃〜約100℃の温度及び約3〜約9のpHで第1の溶媒中に前記蛋白質を含有する蛋白質溶液を調製又は取得する段階と;
(b)アンフォールディング溶液の存在下で前記疎水性薬理活性剤を段階(a)の前記溶液と接触させ、それによって前記蛋白質のアンフォールディングを生じさせ、次に前記蛋白質のリフォールディング又はアセンブリングを生じさせ、前記薬理活性剤を前記蛋白質に封入する段階を含み;
前記ナノ粒子が、直径約5nm〜約2000nmであり、前記ナノ粒子がナノ粒子の総重量に対して約1%〜約40%の薬理活性剤を含有しており;
前記疎水性薬理活性剤が、パクリタキセル、ドセタキセル、イリノテカン、カルムスチン、ドキソルビシン、フェネステリン、ピポスルファン、タモキシフェン、ロムスチン、ガンボギン酸、オリドニン、ポドフィロトキシン、アトルバスタチン、シンバスタチン、フェノフィブラート、ニフェジピン、イブプロフェン、インドメタシン、ピロキシカム、グリブリド、ジアゼパム、リスペリドン、ジプラシドン、タクロリムス、ラパマイシン、インジナビル、リトナビル、テラプレビル、ロピナビル及びその組合せを含み;
前記蛋白質が、アルブミン、トランスフェリン、インスリン、エンドスタチン、ヘモグロビン、ミオグロビン、ライソザイム、イムノグロブリン、α−2−マクログロブリン、フィブロネクチン、ラミン、コラーゲン、ゼラチン、人工ペプチド及び蛋白質、並びにその組合せを含み;
前記第1の溶媒が、水、生理食塩水、リン酸塩、酢酸塩、グリシン、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン、過酸化水素を含有する水溶液、グルタチオンを含有する水溶液、塩化ナトリウム溶液、グルコース溶液、ミコース、マンニトール、スクロース、アセチルトリプトファン、カプリル酸ナトリウム及びその組合せを含み;
前記アンフォールディング溶液が、水、生理食塩水、リン酸塩、酢酸塩、グリシン、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン、過酸化水素を含有する水溶液、グルタチオンを含有する水溶液、塩化ナトリウム溶液、グルコース溶液、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ホルムアルデヒド、クロロホルム、アセトン、硫化水素、2−メルカプトエタノール、ジチオスレイトール、グアンジン、尿素、過塩素酸塩、トリ−n−ブチルホスフィン、カプトプリル、過ギ酸、ペニシラミン、グルタチオン、メチマゾール、アセチルシステイン、3,3”,3”−ホスフィニジントリプロピオン酸及びその組合せを含む、前記方法。
【請求項20】
前記アンフォールディング溶液が、水、生理食塩水、リン酸塩、酢酸塩、グリシン、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン、塩化ナトリウム溶液、エタノール、アセトン、硫化水素、2−メルカプトエタノール、尿素及びその組合せを含む、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
(c)前記ナノ粒子を透析又は濾過し、過剰の化学物質を除去し、より高濃度の溶液を得る段階を更に含む、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
(d)段階(c)の前記高濃度のナノ粒子溶液を脱水工程に供し、医薬製剤に配合することが可能な保存処理済みナノ粒子を生成する段階を更に含む、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記脱水工程が、凍結乾燥、減圧乾燥及び噴霧乾燥を含む、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
パクリタキセルを蛋白質に封入したインビボ送達用ナノ粒子の製造方法であって、前記方法が、
(a)約55℃〜約75℃の温度及び約6〜約8のpHで第1の溶媒中に前記蛋白質を含有する蛋白質溶液を調製又は取得する段階と;
(b)アンフォールディング溶液の存在下で前記パクリタキセルを段階(a)の前記蛋白質溶液と接触させ、それによって前記蛋白質のアンフォールディングを生じさせ、次に前記蛋白質のリフォールディング又はアセンブリングを生じさせ、前記パクリタキセルを前記蛋白質に封入する段階と;
(c)透析又は濾過を実施し、過剰の化学物質を除去するか、又はより高濃度の溶液を得る段階と;
(d)段階(c)の前記高濃度のナノ粒子溶液を脱水工程に供し、医薬製剤に配合することが可能な保存処理済みナノ粒子を生成する段階を含み;
前記ナノ粒子が平均径約50nm〜約300nmであり、前記ナノ粒子がナノ粒子の総重量に対して約1%〜約40%のパクリタキセルを含有しており;
前記アンフォールディング溶液が、水、生理食塩水、リン酸塩、酢酸塩、グリシン、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン、塩化ナトリウム溶液、エタノール、アセトン、硫化水素、2−メルカプトエタノール、尿素及びその組合せから構成される群から選択され;
前記蛋白質がアルブミン、トランスフェリン、インスリン、エンドスタチン及びヘモグロビンから構成される群から選択される、前記方法。
【請求項25】
ドセタキセルを蛋白質に封入したインビボ送達用ナノ粒子の製造方法であって、前記方法が、
(a)約55℃〜約75℃の温度及び約6〜約8のpHで第1の溶媒中に前記蛋白質を含有する蛋白質溶液を調製又は取得する段階と;
(b)アンフォールディング溶液の存在下で前記ドセタキセルを段階(a)の前記蛋白質溶液と接触させ、それによって前記蛋白質のアンフォールディングを生じさせ、次に前記蛋白質のリフォールディング又はアセンブリングを生じさせ、前記ドセタキセルを前記蛋白質に封入する段階と;
(c)前記ナノ粒子を透析又は濾過し、過剰の化学物質を除去し、より高濃度の溶液を得る段階と;
(d)段階(c)の前記高濃度のナノ粒子溶液を脱水工程に供し、医薬製剤に配合することが可能な保存処理済みナノ粒子を生成する段階を含み;
前記ナノ粒子が平均径約50nm〜約300nmであり、前記ナノ粒子がナノ粒子の総重量に対して約1%〜約40%のドセタキセルを含有しており;
前記アンフォールディング溶液が、水、生理食塩水、リン酸塩、酢酸塩、グリシン、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン、塩化ナトリウム溶液、エタノール、アセトン、硫化水素、2−メルカプトエタノール、尿素及びその組合せから構成される群から選択され;
前記蛋白質がアルブミン、トランスフェリン、インスリン、エンドスタチン及びヘモグロビンから構成される群から選択される、前記方法。
【請求項26】
(a)請求項19に記載の方法に従ってナノ粒子を製造する段階と;
(b)投与を必要とする患者に前記ナノ粒子を投与する段階
を含む、癌の治療方法。
【請求項27】
薬理活性剤を蛋白質に封入したナノ粒子であって、前記ナノ粒子がインビボ送達に適しており、前記ナノ粒子が、
(a)約−20℃〜約100℃の温度及び約3〜約9のpHで第1の溶媒中に前記蛋白質を含有する蛋白質溶液を調製又は取得する段階と;
(b)アンフォールディング溶液の存在下で前記疎水性薬理活性剤を段階(a)の前記蛋白質溶液と接触させ、それによって前記蛋白質のアンフォールディングを生じさせ、次に前記蛋白質のリフォールディング又はアセンブリングを生じさせ、前記薬理活性剤を前記蛋白質に封入する段階に従って製造され;
前記ナノ粒子が、直径約5nm〜約2000nmであり、前記ナノ粒子がナノ粒子の総重量に対して約1%〜約40%の薬理活性剤を含有しており;
前記疎水性薬理活性剤が、パクリタキセル、ドセタキセル、イリノテカン、カルムスチン、ドキソルビシン、フェネステリン、ピポスルファン、タモキシフェン、ロムスチン、ガンボギン酸、オリドニン、ポドフィロトキシン、アトルバスタチン、シンバスタチン、フェノフィブラート、ニフェジピン、イブプロフェン、インドメタシン、ピロキシカム、グリブリド、ジアゼパム、リスペリドン、ジプラシドン、タクロリムス、ラパマイシン、インジナビル、リトナビル、テラプレビル、ロピナビル及びその組合せを含み;
前記蛋白質が、アルブミン、トランスフェリン、インスリン、エンドスタチン、ヘモグロビン、ミオグロビン、ライソザイム、イムノグロブリン、α−2−マクログロブリン、フィブロネクチン、ラミン、コラーゲン、ゼラチン、人工ペプチド及び蛋白質、並びにその組合せを含み;
前記第1の溶媒が、水、生理食塩水、リン酸塩、酢酸塩、グリシン、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン、過酸化水素を含有する水溶液、グルタチオンを含有する水溶液、塩化ナトリウム溶液、グルコース溶液及びその組合せを含み;
前記アンフォールディング溶液が、水、生理食塩水、リン酸塩、酢酸塩、グリシン、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン、過酸化水素を含有する水溶液、グルタチオンを含有する水溶液、塩化ナトリウム溶液、グルコース溶液、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ホルムアルデヒド、クロロホルム、アセトン、硫化水素、2−メルカプトエタノール、ジチオスレイトール、グアンジン、尿素、過塩素酸塩、トリ−n−ブチルホスフィン、カプトプリル、過ギ酸、ペニシラミン、グルタチオン、メチマゾール、アセチルシステイン、3,3”,3”−ホスフィニジントリプロピオン酸及びその組合せを含む、前記ナノ粒子。
【請求項28】
パクリタキセルを蛋白質に封入したナノ粒子であって、前記ナノ粒子がインビボ送達に適しており、前記ナノ粒子が、
(a)約55℃〜約75℃の温度及び約6〜約8のpHで第1の溶媒中に前記蛋白質を含有する蛋白質溶液を調製又は取得する段階と;
(b)アンフォールディング溶液の存在下で前記パクリタキセルを段階(a)の前記蛋白質溶液と接触させ、それによって前記蛋白質のアンフォールディングを生じさせ、次に前記蛋白質のリフォールディング又はアセンブリングを生じさせ、前記パクリタキセルを前記蛋白質に封入する段階と;
(c)前記ナノ粒子を透析又は濾過し、過剰の化学物質を除去し、より高濃度の溶液を得る段階と;
(d)段階(c)の前記高濃度のナノ粒子溶液を脱水工程に供し、医薬製剤に配合することが可能な保存処理済みナノ粒子を生成する段階に従って製造され;
前記ナノ粒子が、平均径約50nm〜約300nmであり、前記ナノ粒子がナノ粒子の総重量に対して約1%〜約40%のパクリタキセルを含有しており;
前記アンフォールディング溶液が、水、生理食塩水、リン酸塩、酢酸塩、グリシン、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン、塩化ナトリウム溶液、エタノール、アセトン、硫化水素、2−メルカプトエタノール、尿素及びその組合せから構成される群から選択され;
前記蛋白質がアルブミン、トランスフェリン、インスリン、エンドスタチン及びヘモグロビンから構成される群から選択される、前記ナノ粒子。
【請求項29】
ドセタキセルを蛋白質に封入したナノ粒子であって、前記ナノ粒子がインビボ送達に適しており、前記ナノ粒子が、
(a)約55℃〜約75℃の温度及び約6〜約8のpHで第1の溶媒中に前記蛋白質を含有する蛋白質溶液を調製又は取得する段階と;
(b)アンフォールディング溶液の存在下で前記ドセタキセルを段階(a)の前記蛋白質溶液と接触させ、それによって前記蛋白質のアンフォールディングを生じさせ、次に前記蛋白質のリフォールディング又はアセンブリングを生じさせ、前記ドセタキセルを前記蛋白質に封入する段階と;
(c)前記ナノ粒子を透析又は濾過し、過剰の化学物質を除去し、より高濃度の溶液を得る段階と;
(d)段階(c)の前記高濃度のナノ粒子溶液を脱水工程に供し、医薬製剤に配合することが可能な保存処理済みナノ粒子を生成する段階に従って製造され;
前記ナノ粒子が、平均径約50nm〜約300nmであり、前記ナノ粒子がナノ粒子の総重量に対して約1%〜約40%のドセタキセルを含有しており;
前記アンフォールディング溶液が、水、生理食塩水、リン酸塩、酢酸塩、グリシン、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン、塩化ナトリウム溶液、エタノール、アセトン、硫化水素、2−メルカプトエタノール、尿素及びその組合せから構成される群から選択され;
前記蛋白質が、アルブミン、トランスフェリン、インスリン、エンドスタチン及びヘモグロビンから構成される群から選択される、前記ナノ粒子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2013−501789(P2013−501789A)
【公表日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−524754(P2012−524754)
【出願日】平成22年8月6日(2010.8.6)
【国際出願番号】PCT/US2010/044642
【国際公開番号】WO2011/019585
【国際公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【出願人】(512033349)ナノパツクス・フアーマ・エル・エル・シー (1)
【Fターム(参考)】