説明

蛋白質抽出方法、蛋白質検出方法、及び蛋白質検出装置

【課題】器具に残留した蛋白質を正確に抽出し、高感度で測定可能な蛋白質抽出方法、蛋白質検出方法及び蛋白質検出装置を提供する。
【解決手段】器具に付着した蛋白質を抽出する方法であって、濃度が20mM以下のアルカリ溶液を抽出液として用いることを特徴とする。前記蛋白質検出方法は、前記蛋白質溶液と蛍光試薬とを反応させる反応工程と、反応させた溶液に励起光を照射して蛍光量を測定する蛍光測定工程と、前記蛍光測定工程にて測定された蛍光量に基づいて、前記蛋白質溶液の濃度を算出する定量工程を含むことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療機関などで用いる各種医療器具や、食品製造分野で用いる各種製造器具等に付着する蛋白質を抽出する方法、蛋白質検出方法、及び蛋白質検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
病院等の医療機関や検査機関における検査数、治療数の増大に伴い、検査や治療による感染事故が国内外で多数報告されている。これら感染例の多くは、内視鏡、管状カテーテル類、鉗子類、剪刀類などの医療器具の不十分な洗浄消毒によることが原因とされており、検査や治療に伴う感染の完全な防止方法の確立が求められている。また、食品製造分野においても、使用される器具や設備に付着した汚れに起因した、食中毒などの被害の発生を防止するために、食品の加工・製造に用いられる器具や設備における衛生面での管理が強く求められている。
【0003】
特に、医療分野においては、手術器具や内視鏡等の医療用器具は、ウォッシャーディスインフェクター等の医療用洗浄機を用いて汚染物を洗浄除去したのちに、滅菌処理を行い、再利用されるが、洗浄工程での洗浄残渣があると、十分な滅菌処理が行えず、感染の危険性が高くなる。このため、洗浄機での洗浄後に洗浄残渣である残留蛋白質を測定し、医療用洗浄機の性能確認を行うことで、洗浄工程の管理が行われている。従来、この残留蛋白質の検出方法としては、特許文献1に示すように、アルカリ水溶液に洗浄後の器具を浸漬させ、器具に付着した残留蛋白質を溶出させたものに対し、クーマシーブリリアントブルーG−250や、アミドブラック10B等を用いて蛋白質を染色し、目視や吸光度計により色差を測定する方法が知られている。
【0004】
しかしながら、特許文献1に示された方法では、蛋白質量の定量評価が可能であるが、検出感度はせいぜい1μg/ml程度であり、十分な検出感度、例えば、1μg/ml以下の蛋白質濃度を測定することが困難であった。また、アミドブラック10Bを用いた染色では、目視での判定となり、定量評価が行えない。このため、院内感染リスクを極力低減させるために、洗浄機の性能向上へのニーズが高まっているにもかかわらず、高感度の検査が行えないという問題がある。
【0005】
一方、蛋白質を高感度で検出する方法として、蛍光試薬を用いて蛋白質と反応させ、蛍光量を測定することにより、検出する方法(以下、蛍光法と記載する。)が一般に知られている。例えば、非特許文献1に記載されているように、蛍光法では10ng/ml〜100ng/mlの微量の蛋白質検出が可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−145271号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Biotechniques,Vol.34,No.4(2003) 850−861
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、一般的な蛍光法において、蛋白質溶液に溶け込んだ蛋白質を高感度に検出できるという点ではすぐれているが、前記非特許文献には、蛋白質溶液をどのように作製するか、あるいはどのように蛋白質を抽出液中に抽出するかについては、記載されていない。このため、洗浄後の器具から抽出した蛋白質溶液を用いて、器具に付着した残留蛋白質量を測定するといった特殊な用途においては、蛋白質の抽出に用いられたアルカリ水溶液に含まれる水酸化ナトリウムなどの測定妨害物質が存在し、残留蛋白質の量を正しく測定することが困難であるといった課題について、何ら解決方法を提供するものではない。すなわち、該文献に示された蛍光法をそのまま適用したとしても、蛍光試薬はアルカリ水溶液と反応することから、正確に蛋白質量を測定することが困難となる。また、アルカリ性が強い水溶液では蛋白質が変性し、高感度に蛋白質を検出する上で問題であった。
【0009】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、器具に残留した蛋白質を正確に抽出する蛋白質抽出方法、及び抽出された蛋白質を高感度で測定可能な蛋白質検出方法、及び蛋白質検出装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る蛋白質抽出方法は、洗浄後の器具に付着した蛋白質を抽出する方法であって、濃度が20mM以下のアルカリ溶液を抽出液として用いることを特徴とする。
【0011】
また、前記アルカリ溶液の濃度は、10mM以下であれば、さらに望ましい。
【0012】
また、本発明に係る蛋白質検出方法は、前記器具は洗浄後のものであることを特徴とする。
【0013】
また、本発明に係る蛋白質検出方法は、上記のいずれかに記載の蛋白質抽出方法を用いて得られた蛋白質溶液を用いて、蛋白質を検出することを特徴とする。
【0014】
また、本発明に係る蛋白質検出方法は、前記蛋白質溶液と蛍光試薬とを反応させる反応工程と、反応させた溶液に励起光を照射して蛍光量を測定する蛍光測定工程と、前記蛍光測定工程にて測定された蛍光量に基づいて、前記蛋白質溶液の濃度を算出する定量工程を含むことを特徴とする。
【0015】
また、本発明に係る蛋白質検出方法は、前記蛍光試薬は、ナノオレンジであることを特徴とする。
【0016】
また、本発明に係る蛋白質検出方法は、洗浄後の器具に付着した蛋白質を、蛍光法を用いて検出することにより、前記洗浄の精度を測定することを特徴とする。
【0017】
本発明に係る蛋白質検出装置は、上記のいずれかに記載の蛋白質検出方法を用いて、前記器具に付着した蛋白質量を測定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、洗浄後の器具に残留した蛋白質を正確に抽出する蛋白質抽出方法、及び抽出された蛋白質を高感度で測定可能な蛋白質検出方法及び装置を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の蛋白質検出工程を示すフロー図である。
【図2】水酸化ナトリウム濃度と蛍光量の関係を示すグラフである。
【図3】本発明の蛍光法での検量線の一例を示すグラフである。
【図4】本発明の蛋白質検出装置の概略構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態について説明する。なお、本発明の図面において、同一の参照符号は、同一部分または相当部分を表わすものとする。
【0021】
本発明の蛋白質検出方法を、蛋白質検出工程を示すフロー図として、図1に示す。工程には、洗浄後の器具から残留蛋白質を抽出する抽出工程101、抽出した蛋白質溶液を蛍光試薬と混合する反応工程102、蛍光量を測定する蛍光測定工程103、蛍光量を蛋白質濃度に換算する定量工程104などの工程を含む。以下、各工程について詳細に説明する。
【0022】
(抽出工程)
蛋白質の抽出工程101においては、抽出液として、アルカリ溶液を用いる。アルカリ溶液としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸カリウム、リン酸ナトリウム等の水溶液が用いられる。抽出液としてアルカリ溶液を使用する場合、アルカリ濃度が高いと抽出液に蛋白質以外の物質が多く含まれることになり、この蛋白質以外の物質が蛍光試薬と反応し、蛍光を発したり、蛋白質と蛍光試薬との反応を阻害する可能性がある。一方、アルカリ濃度が極端に低いと、器具に付着した残留蛋白質を十分に抽出できない可能性があるので、これらを考慮して、適切な濃度に調整することが求められる。そこで、次のような測定を行い、蛋白質抽出に適切なアルカリ溶液の濃度を調査した。
【0023】
まず、蛋白質の含まれていない、濃度の異なる水酸化ナトリウム水溶液を作製し、次にそれぞれナノオレンジ(CSLベーリング株式会社製)を反応させ、蛍光量を測定した。蛍光の測定は、蛍光プレートリーダー(パーキンエルマー社製 ARVO MX 142)を使用し、励起波長は470nm、蛍光波長は570nmを使用した。プレートはコーニング社製96wellプレート(型番3632)を使用した。
【0024】
図2は、上記の方法にて測定された、水酸化ナトリウム水溶液の濃度と蛍光量の関係を示すグラフである。その結果、蛋白質を含まないにも関わらず、濃度が20mM(以下、mol/lをMとあらわす。)を超えた場合に、急激に蛍光量が増大しており、蛋白質の測定に影響があることが判明した。このことから、抽出液としては濃度20mM以下の溶液を使用することが望ましい。さらに望ましくは、濃度10mM以下の溶液を使用することが好ましい。なお、今回は、水酸化ナトリウム水溶液を用いてその濃度と蛍光量を示したが、水酸化ナトリウム以外に、上述した水酸化カリウム等のアルカリ溶液においても、濃度が20mM以下の溶液であれば、蛍光試薬の影響をほとんど受けないため、蛋白質の抽出溶液として用いることができる。
【0025】
さらに、詳細に調べるため、抽出液としてのアルカリ溶液の濃度について実験を行った。抽出液と抽出温度としては、下記に示す条件A〜Cでの時間経過による評価を実施した。また、評価対象サンプルとしては、下記のサンプル1〜3を使用し、抽出前後の質量変化から抽出の可否を判断した。抽出液の量は10mlとし、ポリエチレン製の袋に器具と抽出液を入れることで、器具を抽出液に浸漬させた。加温にはウォーターバスThomastat T−22S(TOHMAS KAGAKU社製)を使用した。なお、条件Cの純水としては蒸留水、RO水、脱イオン水等を使用することができるが、本実験においては、ミリQ水(ミリポア社製の超純水装置で作られた超純水)を使用した。
〔条件〕
条件A:濃度5mMの水酸化ナトリウム溶液に50℃でサンプルを浸漬
条件B:濃度200mMの水酸化ナトリウム溶液に50℃でサンプルを浸漬
条件C:純水に50℃でサンプルを浸漬
〔サンプル〕
1:ステンレス板に羊血(日本生物材料センター製ヘパリン添加羊血に、和光純薬製1%硫酸プロタミン水溶液を10:1の比率で混合)を60μl塗布し、24時間自然乾燥させたもの
2:洗浄評価用インジケータ(Pereg社製、商品名:TOSI:ステンレス基材に擬似汚染物を塗布したもの)
3:サンプル2の洗浄評価用インジケータを130℃で30分間加熱したもの
【0026】
【表1】

表1に各条件での抽出結果を示す。表中の○印は、ほぼ全抽出が可能、△印は残留10%未満、×印は90%以上が残留を示している。
《条件Aでの結果》
サンプル1においては、短時間でも蛋白質をほぼ全抽出することができた。また、サンプル2、サンプル3においても、基材部に白い残渣がやや残留するものの、擬似汚染物の大半が抽出された。残渣は擬似汚染物中のフィブリンであり、擬似汚染物中に含まれるアルブミン等の水溶性の蛋白質は除去されていることから、抽出液のアルカリ性が弱いため水不溶性の物質が溶解せずに残留したと考えられる。
《条件Bでの結果》
浸漬時間を30分にすると、抽出が可能な結果が得られた。浸漬時間が10分未満では、蛋白質はほとんどが器具に残留したままであった。さらに、サンプル1において抽出した蛋白質溶液は、赤色から緑色に変色し、また、白い懸濁が見られた。おそらく、抽出液の濃度200mMではアルカリ性が強く、抽出した蛋白質が変性している可能性があると考えられ、溶液から蛋白質を定量する精度が低下する。また、サンプル2において、基材から汚染物が剥離するが、汚染物は膜として抽出液中を浮遊していた。これは、汚染物の表面が変性し、抽出液に溶解しにくくなっていると考えられ、溶液の蛋白質濃度を測定することが困難であった。
《条件Cでの結果》
浸漬時間を30分にしても、サンプル1〜3において、基材部に白い残渣が多量に残留した。条件Aと比較すると残留する残渣が多く、一部赤色の残渣が含まれており、蛋白質が十分に抽出されていないと考えられる。
【0027】
以上の実験結果、および図2に示された結果から、抽出液のアルカリ濃度として、20mMより濃度が高いと、蛋白質抽出に時間がかかる上、アルカリ性が強い抽出液であるため、蛋白質が変性するといった問題が発生しやすくなり、好ましくないことがわかった。特に、後述する蛍光法により蛋白質を検出する場合は、蛍光試薬がアルカリ水溶液と反応することより、正確に蛋白質量を測定することができず、好ましくない。このような結果から、抽出液として20mM以下の水酸化ナトリウム水溶液を使用することが好ましい。
【0028】
このようにして、20mM以下のアルカリ濃度の抽出液で抽出された蛋白質溶液は、抽出液に溶け込んだ蛋白質が変性しにくく、また抽出液に溶け込んだアルカリ溶質の影響もほとんど無いため、その蛋白質濃度を極めて正確に測定することができる。また、本洗浄が、アルカリ洗剤を用いない洗浄方法、例えば水洗い、超音波洗浄、オゾン水での洗浄などであった場合には、アルカリに溶けやすい残留蛋白質を抽出するという観点では、特に有効であると考えられる。
【0029】
次に上記の方法で得られた蛋白質溶液から、蛋白質を検出する方法について、以下に説明する。なお、本実施形態では、蛍光法を用いた検出方法を例に挙げて説明する。蛍光法は、蛋白質を高感度で検出する方法として、特に有効であるため、洗浄済みの器具に付着した残留蛋白質のような微量の蛋白質の検出に好適であるが、検出方法はこれに限られるものではない。
【0030】
(反応工程)
次に、上記の抽出工程101にて抽出した蛋白質溶液を蛍光試薬と混合し、反応させる反応工程102について説明する。蛍光試薬としては、特定の蛋白質に反応するものではなく、総蛋白質を検出できるものが好ましく、例えば、ナノオレンジやCBQCA(invitrogen株式会社製)等が検出感度が高いため、好ましい。
【0031】
例えば、ナノオレンジを使用する場合、抽出工程101で抽出した蛋白質溶液にナノオレンジを混合し、93℃で10分間加熱し、室温にて冷却を行うことで反応工程102が終了する。反応条件については、使用する蛍光試薬に適した条件を適宜選択すればよい。
【0032】
(蛍光測定工程)
続いて、蛍光測定工程103について説明する。本工程では、抽出した蛋白質溶液と蛍光試薬とを混合し、反応させた混合液に、励起光を照射し、混合液から発せられる蛍光量を測定する。測定は上記抽出工程にて説明した手順と同様であり、一般的なプレートリーダーや蛍光顕微鏡、蛍光分光計等を使用することができる。励起光や蛍光の波長は、使用する蛍光試薬に適したものを選択して用いる。例えば、ナノオレンジを使用する場合、励起波長としては470nm近傍、蛍光波長としては570nm近傍であり、これに適したフィルタ等により分光を行う。
【0033】
(定量工程)
最後に、蛍光量を溶液の蛋白質濃度に換算する定量工程104について説明する。ここでは、上記蛍光測定工程103にて測定された蛍光量に基づいて、蛋白質溶液の濃度を算出する。具体的には、予め既知の濃度の蛋白質溶液にて検量線を作成しておき、検出された蛍光量をこの検量線を用いて溶液の蛋白質濃度を算出する。検量線の作成にはBSA(牛血清アルブミン)等の蛋白質を使用することができる。
【0034】
図3に、蛍光試薬としてナノオレンジを使用した場合の、BSA濃度と蛍光量の関係を示す。BSAの溶媒としては、抽出液と同一のものを使用する。図3は溶媒として濃度5mMの水酸化ナトリウムを使用した場合のグラフである。約0.1μg/ml以下のBSA濃度まで検出が可能であった。器具に残留した蛋白質量は、検出した蛋白質濃度に抽出液量を積算することで算出することができる。例えば、検出蛋白質濃度が0.1μg/ml、抽出液量が10mlの場合、残留蛋白質量は1μg/器具となる。従来の吸光度を用いた検出方法では、検出感度は10μg/器具程度であり、蛍光法を用いることで高感度に検出が可能となる。
【0035】
また、更なる高感度化を図る場合、抽出工程101で抽出した蛋白質溶液を濃縮することが好ましい。例えば、抽出液量が10mlの場合、1mlまで濃縮することで実質の測定感度が10倍向上することになる。濃縮方法としては、限外濾過法が簡易であり、蛋白質の分子量と水酸化ナトリウムの分子量の差を利用して、フィルタを選択することにより、適切に濃縮することができる。
【0036】
以上示したように、適切な濃度のアルカリ溶液を抽出液として用いることにより、器具からの蛋白質抽出工程で、蛋白質をほぼ残留なく抽出することができ、さらに蛋白質の変性や、蛋白質検出時の溶質による測定妨害のない蛋白質溶液を得ることができる。また、これにより抽出された蛋白質を蛍光法を用いて検出することにより高感度に残留蛋白質量を定量することが可能となる。
【0037】
以下に、本発明の検出方法を用いた蛋白質検出装置1について説明する。本発明の蛋白質検出装置1は、器具からの蛋白質抽出部11、蛍光試薬混合部12、および蛍光測定部13を有し、各部において上述した各工程が行われる。
【0038】
図4は、蛋白質検出装置1の概略図である。検査対象の器具2に付着した残留蛋白質は、まず、蛋白質抽出部11において抽出される。器具2は、浴槽4で抽出液3に浸漬され、蛋白質が抽出される。蛋白質抽出が終了すると第1の弁5が開放し、流路6を通って蛋白質溶液が試薬混合部に搬送される。次に試薬混合部12において、試薬容器7中の試薬が第2の弁8で適量に調整されて蛋白質溶液と混合される。次に第3の弁9により混合液が蛍光測定部13に搬送され、蛍光測定光学系10により蛍光量が測定され、解析部(図示せず)により蛋白質濃度が算出される。また、測定後の溶液は排出部(図示せず)から排出される。
【0039】
このように、各工程を一体とした蛋白質検出装置1により、簡易に蛋白質の検出が可能となるとともに、小型化が可能となるので、医療機関や食品製造ライン等において、任意の場所での測定が可能となる。
【0040】
上記の実施形態は医療用器具に関する記述であるが、これに限定されるものではなく、例えば、食品製造ラインで使用する器具等、蛋白質が付着した器具に広く応用することが可能である。また、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明に係る蛋白質の抽出方法、検出方法、検出装置は、例えば医療器具の洗浄精度評価や、医療用洗浄機の性能評価、食品工場の製造ラインの汚染物検出に好適に利用できる。
【符号の説明】
【0042】
1 蛋白質検出装置
2 器具
3 抽出液
4 浴槽
5 第1の弁
6 流路
7 試薬容器
8 第2の弁
9 第3の弁
10 蛍光測定光学系
11 蛋白質抽出部
12 試薬混合部
13 蛍光測定部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
器具に付着した蛋白質を抽出する方法であって、
濃度が20mM以下のアルカリ溶液を抽出液として用いることを特徴とする蛋白質抽出方法。
【請求項2】
前記アルカリ溶液の濃度が10mM以下であることを特徴とする蛋白質抽出方法。
【請求項3】
前記器具は洗浄後のものであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の蛋白質抽出方法。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれかに記載の蛋白質抽出方法を用いて得られた蛋白質溶液を用いて、蛋白質を検出することを特徴とする蛋白質検出方法。
【請求項5】
前記蛋白質検出方法は、前記蛋白質溶液と蛍光試薬とを反応させる反応工程と、
反応させた溶液に励起光を照射して蛍光量を測定する蛍光測定工程と、
前記蛍光測定工程にて測定された蛍光量に基づいて、前記蛋白質溶液の濃度を算出する定量工程を含むことを特徴とする請求項4に記載の蛋白質検出方法。
【請求項6】
前記蛍光試薬は、ナノオレンジであることを特徴とする請求項5に記載の蛋白質検出方法。
【請求項7】
洗浄後の器具に付着した蛋白質を、蛍光法を用いて検出することにより、前記洗浄の精度を測定することを特徴とする蛋白質検出方法。
【請求項8】
請求項4から請求項7のいずれかに記載の蛋白質検出方法を用いて、前記器具に付着した蛋白質量を測定することを特徴とする蛋白質検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−63231(P2012−63231A)
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−207390(P2010−207390)
【出願日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】