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蛍光シリカ
説明

蛍光シリカ

【課題】希土類元素を含まない蛍光シリカであって、高い蛍光強度を有し、且つ高輝度の材料を提供する。
【解決手段】 SiOを主成分として、Cu及びGaを含有することを特徴とする蛍光シリカ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蛍光シリカに関する。
【背景技術】
【0002】
シリカは低屈折率、化学的安定性等を有する材料であり、現在、キセノンランプ、蛍光ランプなどの各種の放電ランプには、化学的保護を目的としてシリカ、アルミナ粉末等が使用されることが多い。
【0003】
希土類元素を含む蛍光シリカについては多数の報告があり、例えば、下記特許文献1,2等には、Tb2O及びY2O3をそれぞれ4mol%又は9mol%含む微細なバインダー用の蛍光シリカを作製し、ランプ中で用いる例が記載されている。しかしながら、近年、Tb、Y等の希土類元素は、資源枯渇から価格が高騰しているために、これを使用しない蛍光シリカが必要とされている。半導体微粒子や有機分子をドープしたシリカは、希土類元素を用いることなく、強い発光を示すものであるが、紫外線照射による劣化が激しいという欠点がある。
【0004】
一方、Cuをポーラスシリカガラスにドープして焼結したシリカは強い蛍光を示し、更に、Al、Zn等を添加することによって蛍光強度が増大することが報告されている(特許文献3、非特許文献1等参照)。
【0005】
しかしながら、Cuに加えて、Alをドープすると、蛍光強度は増強されるものの、発光ピークが視感度の低い青色領域の470nm付近にシフトして輝度が低下するという問題がある。このため、高い蛍光強度を有し、且つより長波長側で発光する蛍光シリカが望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】US6531074
【特許文献2】US2001/0048966
【特許文献2】特開2004−331442号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Zhang Q, CHEMICAL PHYSICS LETTERS, 482 Vol: 4-6 228-233 (2009)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記した従来技術の現状に鑑みてなされたものであり、その主な目的は、希土類元素を含まない蛍光シリカであって、高い蛍光強度を有し、且つ高輝度の材料を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、上記した課題を解決すべく鋭意研究を重ねてきた。その結果、シリカを主成分とする多孔質シリカに、Cuと共にGaをドープした後、還元性雰囲気下で焼成して得られる材料は、Cuのみをドープして焼成した材料と比較して、蛍光強度が大きく増大すると共に、蛍光強度のピークが480nm〜500nmという視感度が高い長波長側にシフトして、輝度が大きく向上することを見出し、ここに本発明を完成するに至った。
【0010】
即ち、本発明は、下記の蛍光シリカ及びその製造方法を提供するものである。
項1. SiOを主成分として、Cu及びGaを含有することを特徴とする蛍光シリカ。
項2. SiO2を主成分として、Cuを0.4重量%〜1.2重量%とGaを0.6〜1.75重量%含有することを特徴とする蛍光シリカ。
項3. SiO2を主成分とする多孔質シリカに、CuとGaを含む水溶液を含浸させた後、還元性雰囲気中で焼成することを特徴とする、上記項1に記載の蛍光シリカの製造方法。
項4. Cuを0.04mol/L〜0.15mol/LとGaを0.05〜0.15mol/L含有する水溶液を用いる、上記項3に記載の蛍光シリカの製造方法。
項5. 水素ガスを1〜5vol%含む水素ガスとArガスとの混合ガスを添加した窒素ガス雰囲気中において、900〜1050℃で焼成する、上記項3又は4に記載の蛍光シリカの製造方法。
【0011】
以下、本発明の蛍光シリカ及びその製造方法について具体的に説明する。
蛍光シリカの製造方法
本発明の蛍光シリカは、SiO2を主成分とする多孔質シリカに、Cu及びGaをドープさせた後、還元性雰囲気下で焼成することによって製造することができる。以下、この製造方法について説明する。
【0012】
(1)多孔質シリカ
本発明の蛍光シリカの製造方法で用いる多孔質シリカは、SiOを主成分とする多孔質シリカであればよく、SiOを90mol%程度以上含有するものであることが好ましく、95 mol%程度以上含有するものであることがより好ましい。該多孔質シリカではSiO以外の成分としては、特に限定的ではないが、その製法に応じて、Al、B等の元素が含まれることがある。
【0013】
該多孔質シリカにおける細孔径は、1nm〜10nm程度であることが好ましく、2nm〜6nm程度であることがより好ましく、2nm〜3nm程度であることが更に好ましい。この範囲内の細孔径を有する多孔質シリカを用いることによって、Cu及びGaを多孔質体内部まで均一にドープすることができ、高い蛍光強度と高輝度を有する蛍光体を得ることができる。細孔径が小さすぎると、Cuのドープ量が低下し、更に、CuとGaが隣接する確率が低下するために蛍光強度及び輝度が低下し易い。一方、孔径が大きすぎると銅が凝集し易くなるので好ましくない。
【0014】
また、多孔質シリカの比表面積は、400m2/gから800m2/g程度であることが好ましく、細孔体積は0.3cm3/g以上であることが好ましい。細孔体積は、大きいほうが好ましいが、大きすぎると銅が析出しやすくなり、また、シリカとしての形状を保つことが難しくなるので、細孔体積の上限は0.8cm3/g 程度とすることが好ましい。
【0015】
尚、本願明細書では、平均細孔径と比表面積は、窒素吸着によるBET法によって求めた値である。
【0016】
本発明では、上記した条件を満足する多孔質シリカであれば、その製法などについては特に限定はなく、例えば、市販の多孔質シリカをそのまま用いることができる。
【0017】
(2)添加元素のドープ工程
本発明の蛍光シリカでは、まず、上記した多孔質シリカに、発光元素としてのCuと増強剤としてのGaをドープさせる。
【0018】
これらの元素をドープする方法については、特に限定はなく、例えば、CVD法などの気相法によってドープする方法、上記した元素を含む溶液中に多孔質シリカを浸漬する方法などを適用できる。特に、溶液中に浸漬する方法によれば、均一に元素がドープされやすい点で有利である。
【0019】
溶液中に多孔質シリカを浸漬する方法では、後述する蛍光シリカ中の各元素の濃度範囲となるように各元素をドープすればよい。
【0020】
ドープする元素を含む溶液の溶媒としては、通常、水を用いればよいが、エタノール、アセトンなどの有機溶媒も適宜使用できる。水を溶媒とする場合には、各元素は、硝酸塩、塩化物などの水溶性化合物として水に溶解すればよい。
【0021】
溶液中における各元素の濃度については特に限定的ではないが、例えば、Cuの濃度は、通常、0.01mol/L〜0.3mol/L程度とすることが好ましく、 0.04mol/L〜0.15mol/L程度とすることがより好ましい。また、Gaの濃度は、0.01mol/L〜0.3mol/L程度とすることが好ましく、0.05mol/L〜0.15mol/L程度とすることがより好ましい。
【0022】
具体的な浸漬方法としては、上記した各元素を含む溶液中に多孔質ガラスを浸漬して、放置すればよい。該溶液の温度は、室温程度でよく、浸漬時間は2分〜40分程度とすればよい。
【0023】
(3)焼成工程
上記したCu及びGaを含む溶液中に多孔質シリカを添加して、該溶液を該多光質シリカに溶液を含浸させた後、該溶液から多孔質シリカを取り出し、乾燥した後、還元性雰囲気中で焼成することによって、多孔質シリカの細孔が消失し、その内部にCu及びGaを含む蛍光シリカが得られる。
Cu及びGaを含む溶液から多孔質シリカを取り出す方法については特に限定はなく、例えば、濾過などの方法でよい。
【0024】
乾燥温度については、特に限定はないが、通常は、110〜500℃程度で乾燥すればよい。
【0025】
次いで、このガラスを還元性雰囲気中で焼成する。還元性雰囲気としては、特に限定はなく、水素ガスなどの還元性ガスの雰囲気中で焼成する方法、カーボンを入れたアルミナルツボ中で焼成する方法などが挙げられる。
【0026】
特に、窒素ガスに、素ガスを1〜5vol%程度含む水素ガスとArガスと混合ガスを添加した雰囲気中で焼成する場合には、蛍光強度及び輝度が高い蛍光シリカを得ることができる。この際、例えば、窒素気流の流量については、20cc/min〜40cc/minとすることが好ましく、窒素気流中に添加する水素ガスとArガスの混合ガスの量は、0.01cc/min〜0.1cc/min程度とすることが好ましい。
【0027】
この際、水素ガスとArガスの混合ガスの量が多すぎると銅が析出し、水素ガスとArガスの混合ガスの量が少なすぎると銅が2価となり、蛍光強度が低下するので好ましくない。
【0028】
焼成温度は、850〜1100℃程度とすることが好ましく、900〜1050℃程度とすることがより好ましい。この範囲の焼成温度とすることによって、蛍光強度が高く、高輝度の蛍光ガラスが得られる。
【0029】
蛍光シリカ
本発明の蛍光シリカは、多孔質シリカを焼成して得られるSiO2を主成分とする材料中に、Cu及びGaが均一に分散し、固定化されたものである。これらの成分の内で、Cuは紫外線励起によって蛍光を生じさせる発光中心となる元素である。また、Gaは、蛍光強度を高くするための増感剤として作用すると同時に、発光ピークの最大値を、視感度が高い480nm〜500nm程度の長波長側にシフトする作用を有し、これにより、高輝度の蛍光ガラスとすることができる。
【0030】
Cuの含有量については、少なすぎると十分な蛍光強度を得難く、多すぎると、濃度消光により輝度が低下することがあるので好ましくない。Gaの含有量については、少なすぎると十分な輝度を得ることができず、多すぎると輝度が低下するという欠点がある。
【0031】
以上の観点から、Cuの含有量は、蛍光シリカの全体を基準として、0.4〜1.2重量%程度であることが好ましく、0.5〜0.65重量%程度であることがより好ましい。また、Gaの含有量については、0.6〜1.75重量%程度であることが好ましく、0.7〜1.2重量%程度であることがより好ましい。尚、本発明の蛍光シリカ中のCuとGaの含有量は、フッ化水素酸と塩酸で該蛍光シリカを分解し、ICP発光で求めることができる。
【0032】
また、本発明の蛍光シリカでは、SiO2の含有量は、90重量%程度以上であることが好ましい。
【0033】
本発明の蛍光シリカは、CuとGaが凝集することなく、均一性良く分散していることにより、紫外光によって励起される際に非常に強い高輝度の発光を示す。従って、本発明の蛍光ガラスによれば、紫外線を可視域の光へ高効率に変換することができる。
【0034】
更に、本発明の蛍光シリカは、母体が安定な酸化物であるため、耐熱性、化学的耐久性、機械的強度等にも優れている。したがって、紫外光照射による欠陥も発生し難いという利点がある。
【0035】
更に、本発明の蛍光シリカは、希土類元素成分を含有することなく強力な蛍光を生じ、高輝度を有するものである。このため、本発明によれば、強い発光を示す発光材料を低コストで製造することができる。
【0036】
本発明の蛍光シリカは、上述したような優れた機能を有するものである。このため、例えば、ランプ用保護膜、バイオ診断用蛍光剤等として利用可能である。
【発明の効果】
【0037】
本発明の蛍光シリカは、高い蛍光強度を有する高輝度の蛍光材料であって、希土類元素を含まない低価格の蛍光体であり、耐熱性、化学的耐久性などにも優れた材料である。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】実施例1で測定したCu濃度0.06mol/Lの含浸液中のGa濃度と蛍光スペクトルの関係を示すグラフ。
【図2】実施例2で測定したCu-Gaドープ蛍光シリカとCu-Alドープ蛍光シリカの蛍光スペクトルを示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下、実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明する。
【0040】
実施例1
下記表1及び表2に示す濃度で塩化銅及び硝酸ガリウムを溶解した水溶液1.5mLを含浸液として用い、これに、0.3gの多孔質シリカ(商標名:富士シリシア製サイリシア530、富士シリシア製、比表面積 588.76m2/g、細孔径 2.3nm(BET法により求めたもの))を入れ、室温で0.5時間放置して、該多孔質シリカに塩化銅及び硝酸ガリウムを含む水溶液を含浸させた。次いで、多孔質シリカを濾取後、110℃で乾燥した。
【0041】
乾燥した多孔質シリカを石英皿の上にのせ、雰囲気制御炉に導入して、N2を30cc/min流した。そこにH2を3vol%含むH2とArの混合ガスを0.2cc/min追加して流し、1000℃で3〜4時間焼成を行った。
【0042】
焼成後の試料について、波長254nmの紫外線で励起して、蛍光スペクトルを測定した。測定後、各試料を20mg採取し、フッ化水素酸1mlと塩酸1ml中でマイクロ波を照射して分解し、分解液を50倍に薄め、ICP発光によってCu及びGaの濃度を定量することで、シリカ中の含有量を求めた。
【0043】
下記表1及び表2に含浸溶液中のCuとGaの濃度と、焼成後のガラス中のCu及びGa濃度の分析値を示す。また、蛍光スペクトルの最大強度と最大値の波長を示す。また、図1には、CuCl2濃度が0.06mol/Lの水溶液を用い、Ga(NO33の濃度を変化させた場合について、得られた各蛍光体の蛍光スペクトルを示す。
【0044】
【表1】

【0045】
【表2】

【0046】
以上の結果から明らかなように、実施例1〜11では、強い蛍光強度と、480nm以上に発光ピークを示す蛍光体が得られた。これに対して、比較例1の蛍光体は、Gaが添加されていないため蛍光を示さなかった。
【0047】
実施例2
0.06mol/Lの塩化銅溶液と1mol/Lの硝酸ガリウムを含む水溶液、又は0.06mol/Lの塩化銅溶液と1mol/Lの硝酸アルミニウムを含む水溶液1.5mLを含浸液として用い、各含浸液に、0.5gの多孔質シリカ(商標名:富士シリシア製サイリシア530、富士シリシア製、比表面積 588.76m2/g、細孔径 2.3nm(BET法により求めたもの))を入れ、室温で0.5時間放置して、該多孔質シリカに塩化銅及び硝酸ガリウムを含む水溶液、又は塩化銅及び硝酸アルミニウムを含む水溶を含浸させた。次いで、多孔質シリカを濾取後、110℃で乾燥した。
【0048】
乾燥した多孔質シリカを石英皿の上にのせ、雰囲気制御炉に導入して、N2を30cc/min流した。そこにH2を3vol%含むH2とArの混合ガスを0.2cc/min追加して流しながら、1000℃で4時間焼成を行った。
【0049】
焼成後の試料について、波長254nmの紫外線で励起して、蛍光スペクトルを測定した。この蛍光スペクトルを図2に示す。
【0050】
図2から、CuとAlをドープしたシリカと比較して、CuとGaをドープしたシリカは、蛍光強度の最大値を示す波長が長波長側にシフトしているのがわかる。
【0051】
これらのシリカ粉を石英セルに入れ、斜め45度から、波長254nmの紫外線で励起し、輝度計(Cannon LS-100)を用いて、輝度を測定して、市販の蛍光体(LaPO4:Ce,Tb)の輝度と比較した。その結果、CuとAlをドープしたシリカの輝度は0.08cd/m、CuとGaをドープしたシリカの輝度は0.12 cd/mであり、CuとGaをドープしたシリカのほうが輝度が増大していた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
SiOを主成分として、Cu及びGaを含有することを特徴とする蛍光シリカ。
【請求項2】
SiO2を主成分として、Cuを0.4重量%〜1.2重量%とGaを0.6〜1.75重量%含有することを特徴とする請求項1に記載の蛍光シリカ。
【請求項3】
SiO2を主成分とする多孔質シリカに、CuとGaを含む水溶液を含浸させた後、還元性雰囲気中で焼成することを特徴とする、請求項1に記載の蛍光シリカの製造方法。
【請求項4】
Cuを0.04mol/L〜0.15mol/LとGaを0.05〜0.15mol/L含有する水溶液を用いる、請求項3に記載の蛍光シリカの製造方法。
【請求項5】
水素ガスを1〜5vol%含む水素ガスとArガスとの混合ガスを添加した窒素ガス雰囲気中において、900〜1050℃で焼成する、請求項3又は4に記載の蛍光シリカの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−53246(P2013−53246A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−192865(P2011−192865)
【出願日】平成23年9月5日(2011.9.5)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成23年度独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「希少金属代替材料開発プロジェクト/蛍光体向けテルビウム・ユーロピウム使用量低減技術開発及び代替材料開発/高速合成・評価法による蛍光ランプ用蛍光体向けTb、Eu低減技術の開発」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(301021533)独立行政法人産業技術総合研究所 (6,529)
【Fターム(参考)】