蛍光センサ
【課題】寿命の長い蛍光センサを提供する
【解決手段】蛍光センサ10は、蛍光を電気信号に変換するPD素子12が形成されているシリコン基板11と、励起光を発生するLED素子15Cが第1の主面15Aに形成されたLED基板15と、LED基板15の第2の主面15Bから放射される励起光の光量分布を平均化する反射膜20と、反射膜20により平均化された励起光を受光しアナライト量に応じた光量の蛍光を発生するインジケータ層17と、を具備する
【解決手段】蛍光センサ10は、蛍光を電気信号に変換するPD素子12が形成されているシリコン基板11と、励起光を発生するLED素子15Cが第1の主面15Aに形成されたLED基板15と、LED基板15の第2の主面15Bから放射される励起光の光量分布を平均化する反射膜20と、反射膜20により平均化された励起光を受光しアナライト量に応じた光量の蛍光を発生するインジケータ層17と、を具備する
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アナライト濃度を計測する蛍光センサに関し、特に励起光の照射によりアナライト濃度に応じた光量の蛍光を発生するインジケータを有する蛍光センサに関する。
【背景技術】
【0002】
液体中のアナライトすなわち被計測物質の濃度を測定するための様々な分析装置が開発されている。例えば、一定容量の透明容器に、アナライトの存在によって性質が変化し蛍光を発生する蛍光色素と、アナライトを含む被計測溶液とを注入し、励起光を照射し蛍光色素からの蛍光強度を計測することによりアナライト濃度を計測する蛍光センサが知られている。
【0003】
そして、小型の蛍光センサでは、光源と光検出器と蛍光色素を含有したインジケータ層とを有している。そして被計測溶液中のアナライトが進入可能なインジケータ層に光源からの励起光を照射することで、インジケータ層内の蛍光色素が被計測溶液中のアナライト濃度に応じた光量の蛍光を発生し、その蛍光を光検出器が受光する。光検出器は光電変換素子であり、受光した光量に応じた電気信号を出力する。この電気信号から被計測溶液中のアナライト濃度が測定される。
【0004】
そして近年、微量試料中のアナライトを計測するために、半導体製造技術およびマイクロマシン製造技術を用いて作製される蛍光センサが提案されている。
【0005】
例えば、図1および図2に示す蛍光センサ110が、米国特許第5039490号明細書に開示されている。図1は蛍光センサ110の概略断面構造を示したものであり、図2は蛍光センサ110の概略構造を説明するための分解図である。なお、以下の図においてアナライト2は模式的に表示している。
【0006】
図1および図2に示すように、蛍光センサ110は、励起光Eが透過可能な透明支持基板101と、蛍光Fを電気信号に変換する光電変換素子部103と、励起光Eを集光する集光機能部105Aを有する光学板状部105と、アナライト2と相互作用することによって励起光Eの入射により蛍光Fを発するインジケータ層106と、カバー層109とから構成されている。
【0007】
光電変換素子部103は、例えばシリコンからなる基板103A上に光電変換素子が形成されている。基板103Aは励起光Eを透過しない。このため、蛍光センサ110では、光電変換素子部103の周囲に励起光Eが透過可能な空隙領域120を有している。
【0008】
すなわち、空隙領域120を通過し光学板状部105に入射した励起光Eだけが、光学板状部105の作用により、インジケータ層106中の、光電変換素子部103の上部付近に集光される。集光された励起光E2と、インジケータ層106の内部に進入したアナライト2の相互作用により、蛍光Fが発生する。発生した蛍光Fの一部は光電変換素子部103に入射し、光電変換素子部103において蛍光強度、つまりアナライト2の濃度に比例した電流または電圧などの信号が発生する。なお励起光Eは、光電変換素子部103上に形成されたフィルタ(不図示)の作用により、光電変換素子部103には入射しない。
【0009】
蛍光センサ110では、励起光Eが、インジケータ層106の光電変換素子部103の上部付近に集光されるため、集光箇所におけるインジケータの劣化速度が早く、センサ全体の寿命が短くなるおそれがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】米国特許第5039490号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
寿命の長い蛍光センサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
実施形態の蛍光センサは、蛍光を電気信号に変換する光電変換素子が形成されている主基板と、励起光を発生する発光素子が第1の主面に形成された発光素子基板と、前記発光素子基板の第2の主面から放射される前記励起光の光量分布を均一化する光量均一化部と前記光量均一化部により均一化された前記励起光を受光しアナライト量に応じた光量の前記蛍光を発生するインジケータと、を具備する。
【発明の効果】
【0013】
本発明の実施形態によれば、寿命の長い蛍光センサを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】従来の蛍光センサの概略断面構造を示した説明図である。
【図2】従来の蛍光センサの概略構造を説明するための分解図である。
【図3】第1の実施の形態の蛍光センサの概略断面構成を示す模式図である。
【図4】第1の実施の形態の蛍光センサの概略構造を説明するための分解図である。
【図5】第1の実施の形態の反射膜を説明するための説明図である。
【図6】第1の実施の形態の蛍光センサにおける励起光の光路を説明するための説明図である。
【図7】第1の実施の形態の反射膜による光量分布変化を説明するための説明図である。
【図8】第1の実施の形態の変形例の蛍光センサにおける励起光の光路を説明するための説明図である。
【図9】第2の実施の形態の遮光膜による光量分布変化を説明するための説明図である。
【図10】第3の実施の形態の蛍光センサの概略断面構成を示す模式図である。
【図11】第4の実施の形態の蛍光センサの概略断面構成を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
<第1実施形態>
以下、図面を用いて、本発明の第1の実施の形態の蛍光センサ10について説明する。
図3および図4に示すように、本実施の形態の蛍光センサ10は、主基板であるシリコン基板11と、酸化シリコン膜13と、フィルタ14と、放射される励起光の光量分布を均一化する光量均一化部である反射膜20が配設された発光素子基板(以下、「LED基板」という)15と、透明樹脂層16と、インジケータ層17と、遮光層18と、がシリコン基板11側から順に積層された構造を有する。シリコン基板11には光電変換素子であるフォトダイオード素子(以下「PD素子」という。)12が形成されている。励起光Eおよび蛍光Fを透過するLED基板15の第1の主面15Aの略中央部には、励起光Eを発生する発光素子である発光ダイオード素子(以下「LED素子」という)15Cが形成されている。なお、PD素子12等と接続される配線等は図示していない。
【0016】
後述するように、反射膜20は、LED基板15の第2の主面15Bの略中央部に配設された、励起光Eを反射し蛍光Fを透過する誘電体多層膜である。フィルタ14は、励起光Eを遮断し、それよりも長波長の蛍光Fを透過する。
【0017】
そして、PD素子12、フィルタ14、LED素子15C、およびインジケータ層17の、それぞれ少なくとも一部が、シリコン基板11上の同一領域内に形成されている。なお蛍光センサ10は、PD素子12、フィルタ14、LED素子15C、およびインジケータ層17のそれぞれの中央部がシリコン基板11上の同一領域内に形成されていることが好ましい。
【0018】
すなわち、蛍光センサ10においてはインジケータ層17からの蛍光Fを透過するLED基板15を用いることにより、既に説明した従来の蛍光センサとは全く異なる構造を実現している。
【0019】
シリコン基板11はPD素子12が表面に作成されている主基板である。光電変換素子として、PD素子12を基体表面に形成する場合は、主基板としては単結晶シリコン基板が好適であるが、PD素子12の製造方法によっては、ガラス基板など多様な材料から選択可能である。
【0020】
PD素子12は蛍光を電気信号に変換する光電変換素子であり、光電変換素子としては、フォトコンダクタ、またはフォトトランジスタ(PT)などの各種光電変換素子から選択可能である。そしてフォトダイオードまたはフォトトランジスタが、最も高感度でかつ安定性に優れた蛍光検出感度が実現でき、その結果、検出感度および検出精度に優れる蛍光センサ10が実現できるため特に好ましい。
【0021】
酸化シリコン膜13は第1の保護膜であり、例えば数十〜数百nmの厚さを有する第1の保護膜としてはシリコン窒化膜、または酸化シリコン膜とシリコン窒化膜とからなる複合積層膜を用いてもよい。
【0022】
フィルタ14は、例えば375nmより短い励起光Eの波長では透過率は10−6以下であり、460nmの蛍光Fの波長では透過率10−1以上すなわち10%以上と、波長による透過率の比としては5桁以上の透過率選択性を有する。フィルタ14は、なお、反射膜20と同様の反射型フィルタでもよいし、シリコン膜または炭化シリコン膜等を用いた吸収型フィルタでもよい。
【0023】
LED基板15は、LED素子15Cが形成可能で蛍光Fを透過する基板、例えばサファイア基板である。すなわち、サファイア基板は蛍光Fの透過率が高く、かつ、窒化ガリウム系化合物半導体よりなる紫外線を発光するLED素子15Cが形成可能である。
【0024】
LED素子15Cは、LED基板15の第1の主面15Aの略中央部に形成されており、励起光はLED基板15の内部を通過して第2の主面15Bから放射される。ここで、第2の主面15Bから放射される励起光Eの光量は、LED素子15Cと対向する中央領域では強く周辺領域では弱いという、所定の分布がある。
【0025】
反射膜20は、高屈折率層と高屈折率層よりも低い屈折率を有する低屈折率層とが交互に積層された干渉効果を有する反射フィルタである。なお、反射膜20は、例えば、第2の主面15Bの全面に形成したのち、所望の領域をマスクしてから不要な領域をエッチング等により除去することで、所望の形状にパターニングされる。または、所望のパターンに形成後に第2の主面15Bに配設してもよい。
【0026】
図5(A)〜図5(D)に示すように、反射膜20は、光量分布に応じて、円形パターン20A(図5(A))、楕円形パターン20B(図5(B))または矩形パターン20C(図5(C))等の1個のパターンから構成してもよいし、複数個のパターン20D(図5(D))から構成してもよい。
【0027】
透明樹脂層16であるエポキシ樹脂膜は第2の保護膜である。第2の保護膜としては、例えばLED基板15をフィルタ14上に接着するときに用いるシリコーン樹脂、または透明な非晶性フッ素樹脂なども使用可能である。
【0028】
インジケータ層17は、進入してきたアナライト2との相互作用および励起光によりアナライト2の濃度に応じた光量の蛍光を発生する。インジケータ層17の層厚は10μm〜500μm、より好ましくは40μm〜200μm程度に設定されている。インジケータ層17は、アナライト2の量、すなわち試料中のアナライト濃度に応じた強度の蛍光を発生する蛍光色素が含まれたベース材料から構成されている。なおインジケータ層17のベース材料は、LED素子15Cからの励起光および蛍光色素からの蛍光が良好に透過できる透明性をもつことが好ましい。ここで、蛍光色素は、試料中に存在するアナライト2そのものでも良い。なお、インジケータは、層状または膜状ではなく、ゲル状または液体状であってもよい。
【0029】
蛍光色素は、アナライト2の種類に応じて選択され、アナライト2の量に応じて発生する蛍光の光量が可逆的に変化する蛍光色素ならば、どのようなものでも使用できる。例えば生体内の水素イオン濃度または二酸化炭素を測定する場合には、ヒドロキシピレントリスルホン酸誘導体、糖類を測定する場合には蛍光残基を有するフェニルボロン酸誘導体、カリウムイオンを測定する場合には蛍光残基を有するクラウンエーテル誘導体などを用いることができる。
【0030】
そして、グルコースのような糖類を測定する場合には、蛍光色素として、ルテニウム有機錯体、蛍光フェニルボロン酸誘導体、または蛋白と結合したフルオレセイン等のグルコースと可逆結合する物質を用いることができる。ルテニウム有機錯体としてはルテニウムと2,2'-ビピリジン、1,10-フェナントロリン、4,7-ジフェニル-1,10-フェナントロリン、4,7-ジメチル-1,10-フェナントロリン、4,7-ジスルホン化ジフェニル-1,10-フェナントロリン、2,2'-ビ-2-チアゾリン、2,2'-ビチアゾール、5-ブロモ-1,10-フェナントロリン、および5-クロロ-1,10-フェナントロリン等との錯体等を用いることができる。更に、ルテニウム有機錯体のルテニウムに代えてオスミウム、イリジウム、ロジウム、レニウムおよびクロム等の有機錯体を用いることができる。なお蛍光フェニルボロン酸誘導体としては、特に2つのフェニルボロン酸と蛍光残基としてアントラセンを含む化合物が検出感度が高い。
【0031】
以上の説明のように、本発明の蛍光センサ10は、蛍光色素の選択によって、酸素センサ、グルコースセンサ、pHセンサ、免疫センサ、または微生物センサなど、多様な用途に対応している。
【0032】
インジケータ層17は、例えば、含水し易いハイドロゲルをベース材料として、ハイドロゲル内に上記蛍光色素を包含または結合させている。ハイドロゲルの成分としてはメチルセルロースもしくはデキストランなどの多糖類、(メタ)アクリルアミド、メチロールアクリルアミド、もしくはヒドロキシエチルアクリレート等のモノマーを重合して作製するアクリル系ハイドロゲル、またはポリエチレングリコールとジイソシアネートから作製するウレタン系ハイドロゲルなどを用いることができる。
【0033】
そして、最上層である遮光層18は、インジケータ層17の上部表面側に形成された、厚さが数十μm以下の層である。遮光層18は、励起光および蛍光が蛍光センサ10の外部へ漏光するのを防止すると同時に、外光が蛍光センサ10の内部に進入するのを防止する。
【0034】
ここで、遮光層18は、外光を遮光するために、インジケータ層17だけでなく蛍光センサ10全体を覆うことが望ましい。遮光層18は、アナライト2が、その内部を通過してインジケータ層17に到達するのを妨げない材料を用いて構成されている。水溶液中のアナライト分析に利用する蛍光センサ10の場合は、遮光層18の材料としては、例えば微多孔質の金属もしくはセラミックス、またはインジケータ層17に用いるハイドロゲルにカーボンブラックもしくはカーボンナノチューブなど光を通さない微粒子を混合した複合材料が好適である。また、遮光層18は、多数の貫通孔を有するシリコン基板等でもよい。
【0035】
また、LED基板15、透明樹脂層16およびインジケータ層17が、額縁状のセンサ枠内部に収納されていてもよい。センサ枠をシリコン等の遮光性材料で構成することにより外光の進入を防止でき、更にセンサ全体の機械的強度の向上を図ることもできる。
【0036】
上記構造を有する蛍光センサ10では、LED素子15Cからの励起光Eが、インジケータ層17中の蛍光色素に照射される。蛍光色素が発生した蛍光Fは、LED基板15およびフィルタ14を通過してPD素子12に到達し、電気信号に変換される。
【0037】
そして、図6に示すように、蛍光センサ10では、LED基板15の第2の主面15Bにおいて光量が大きい中央領域の励起光E3が、反射膜20により反射され、インジケータ層17に直接、入射することがない。反射膜20により反射された励起光E3は、LED基板15内面および周囲の部材の表面等で更に反射し、少なくとも一部はインジケータ層17に入射する。
【0038】
また、インジケータ層17が発生した蛍光Fは、反射膜20およびLED基板15を透過して、PD素子12に入射する。すなわち、蛍光F3は反射膜20を透過して、PD素子12に入射するため、反射膜20は蛍光検出の妨害因子とはならない。このため、蛍光センサ10は、蛍光Fの通過経路中に反射膜20を有していても感度が低下しない。
【0039】
以上の説明のように反射膜20は、第2の主面15Bから放射される励起光Eの光量分布を均一化する光量均一化部である。ここで、図7は第2の主面15Bから放射される励起光Eの光量分布を説明するための図で、横軸中央が第2の主面15Bの中央である。図7に示すように、(A)反射膜無しの場合と比較すると、(B)反射膜ありの場合は、中央領域の光量は減少しているが、周辺領域の光量は反射膜20により反射された光の一部が出射されるため増加している。すなわち、反射膜20は、励起光の光量分布を平均化する励起光拡散部である。
【0040】
蛍光センサ10は、強い励起光がインジケータ層17の中央領域に集中して照射されることがないため、インジケータの劣化進行速度が遅い。このため蛍光センサは、長期間にわたって検出感度の低下等の問題が発生しにくいため、寿命が長い。
【0041】
また、蛍光センサ10の反射膜20は、光量が大きい領域の励起光Eを減少するだけでなく、光量が弱い領域の励起光Eを増加する励起光拡散部であるため、励起光の利用効率がよい。このため、LED素子15Cに流す電流を抑制できるためLED素子15Cの発熱が少なく蛍光センサ10の特性が安定している。
【0042】
<第1実施形態の変形例>
蛍光センサ10の反射膜20に替えて、反射機能を有する光量均一化部としては、励起光および蛍光を共に反射するアルミニウム等の金属膜等を有する蛍光センサであっても、寿命の改善効果は得られる。金属膜等は多層干渉膜に比べて形成が容易で安価である。
【0043】
また、回折機能、散乱機能、または屈折機能を有する光量均一化部を用いることもできる。
【0044】
回折機能を有する光量均一化部は、回折格子構造を有し、入射する光を回折現象によって拡散する。回折格子のパターンのレイアウトは、光の回折を起こせるのであればどのようなパターンでもよく、例えば平行線を並べて配置したり、同心円上に円パターンを配置したりする。
【0045】
回折格子は例えば、溝または屈折率の異なるパターンの平行線または同心円線をガラス板等に多数形成することで構成できる。パターンのピッチは、インジケータ層17との距離、および何次の回折光までを使用するか等の条件によって設定されるが、0.1μmから50μmの範囲で、より好ましくは0.5μmから10μmの範囲である。
【0046】
回折格子は、LED素子15Cから出力された励起光Eを受光すると、励起光Eを回折によって0次、1次、2次、更に高次の回折光に分散する。高次の回折光ほど、回折格子進入前より大きく角度を変えて広がる。光が広がるため、進入した励起光の光量分布は、回折格子に進入する前と比較して均一となる。なお、0次回折光を遮断するために、反射膜20と同様の反射膜等が配設される。
【0047】
次に、入射する光を散乱現象によって拡散する散乱機能を有する光量均一化部は、例えば、直径1nmから10μm程度の粒子を含む樹脂層である。粒子は不透明であってもよく、また樹脂と異なる屈折率を有していれば透明でもよい。
【0048】
散乱効果としては、レイリー散乱、ミー散乱など、光が散乱するのであればどのような現象を利用するものであってもよい。
【0049】
次に、入射する光を屈折現象によって拡散する屈折機能を有する光量均一化部は、例えば、凹レンズ、フレネルレンズ、マイクロ凹レンズアレイ、またはプリズムアレイなどを有する。前記構造は、酸化膜などの透明膜にウエットエッチングなどでパターニングしたり、透明樹脂を所望の形状に加工したり、第2の主面15Bを加工したりして形成される。
【0050】
例えば、図8に示す変形例の蛍光センサ10Aでは、LED基板15の第2の主面15Bに凹部が形成されている。この凹部にLED基板15とは屈折率の異なる透明樹脂層16が埋め込まれることで、凹レンズ機能を有する励起光拡散部21が形成されている。励起光拡散部21は、透明樹脂層16の一部であるが、第2の主面15Bの加工により形成されたLED基板15の一部でもある。もちろん、LED基板15に別途作製した凹レンズを配設してもよい。
【0051】
LED素子15Cが発生した励起光E4は、凹レンズ機能を有する励起光拡散部21により外周部側に拡散する。このため、中央領域の光量は減少し周辺領域の光量が増加する。
【0052】
また、例えば、フレネルレンズは、LED素子15Cから出力された励起光を屈折によってより広い角度に拡散する。光量の多い中央領域ほど屈折角が大きくなるようにフレネルレンズを設計することによって、インジケータ層17へ進入する励起光の光量分布をより均一にすることができる。
【0053】
またマイクロレンズアレイは、励起光を受光すると、それぞれのレンズが励起光を拡散する。屈折の度合いはレンズの焦点距離に依存しており、個々のレンズの焦点距離を、個別に設定できるため、光量の多い中央領域に配設するレンズの屈折角を大きくすることによって、インジケータ層17へ進入する励起光の光量分布をより均一にすることができる。
【0054】
また、プリズムアレイは、励起光を受光すると、それぞれのプリズムが励起光を任意の方向へ拡散させる。光量の多い中央領域の光を大きな角度で屈折させるなどによって、インジケータ層17へ進入する励起光の光量分布をより均一にすることができる。
【0055】
上記、光量分布を平均化する励起光拡散部は、いずれも作成後、LED基板15の第2の主面15Bに配設してもよいし、第2の主面15Bを加工することにより形成してもよい。
【0056】
<第2実施形態>
次に、第2実施形態の蛍光センサ10Bについて説明する。蛍光センサ10Bは蛍光センサ10と類似しているため同じ機能の構成要素には同じ数字の符号を付し説明は省略する。蛍光センサ10Bの光量均一化部は、第2の主面15Bの、少なくともLED素子15Cと対向する領域に形成された、励起光を吸収する機能を有する遮光膜22である。遮光膜22は、光量分布の光量が大きい領域の光量を減衰する励起光減衰部である。
【0057】
すなわち、図9に示すように、「(A)遮光膜無し」の場合と比較すると、「(B)遮光膜あり」の場合は、中央領域の光量が減少しているが、周辺領域の光量は変化がない。
【0058】
遮光膜22は、励起光の光量が大きい、すなわち励起光が強い領域にのみ配設してもよいし、または、励起光が強い領域ほど強く効果が現れる構成でもよい。例えば、遮光膜22は、中央部が最も吸収が大きく、周辺部は小さな吸収となるように、厚さを変えてもよい。また、図5(D)に示す反射膜パターン20Dのように複数のパターンから遮光膜22を構成してもよい。
【0059】
例えば、遮光膜22は、励起光の透過率が10〜90%程度の不透明樹脂を使用してもよいし、あるいは不透明膜のドットパターンまたはストライプパターンでもよい。
【0060】
遮光膜22は、作製が容易であるが、励起光の発光強度が高い箇所の励起光を減衰させることによって、インジケータ層17が受光する光量を均一化することができる。このため、蛍光センサ10Bは、蛍光センサ10等と同じように、寿命が長い。
【0061】
<第3実施形態>
次に、第3実施形態の蛍光センサ10Cについて説明する。蛍光センサ10Cは蛍光センサ10と類似しているため同じ機能の構成要素には同じ数字の符号を付し説明は省略する。
図10に示すように、蛍光センサ10Cは、凹部33がある主基板25と、反射膜20が配設されたLED基板15と、透明樹脂層16Cと、インジケータ層17Cと、遮光層18Cと、を有する。LED基板15と、透明樹脂層16Cと、インジケータ層17Cとは、凹部33の内部に配設されており、遮光層18Cは凹部33の開口を塞ぐように配設されている。
【0062】
主基板25は、図示しない各種の配線層を有する配線基板30と、中央に貫通孔のある四角柱形状の枠状基板40と、を接合することにより作製されている。このため、主基板25には、第1の主面32Aに、第1の主面32Aと平行な底面32Bのある凹部33がある。すなわち、配線基板30の表面が凹部33の底面32Bであり、枠状基板40の貫通孔の内壁が、凹部33の内壁24である。なお、蛍光センサ10Cでは、枠状基板40の外形形状および凹部33の内面形状は、ともに正四角柱であるが、四角柱、多角柱、または円柱であってもよい。
【0063】
PD素子12Cは、枠状基板40の貫通孔の4つの内壁、すなわち主基板25の凹部33の4つの内壁24に形成されている。なお、PD素子12Cは、インジケータ層17Cを囲む4つの内壁の全てに形成されていることが検出感度改善のためには好ましいが、少なくとも1つの内壁の少なくとも一部に形成されていればよい。
【0064】
壁面24にPD素子12Cを形成するには、シリコン等の半導体からなる基板を、5度〜30度に傾けた状態で、4方向からイオン注入処理が行われる。例えば、ほう素を注入する場合の条件は、加速電圧:10〜100keV、注入量:1×1012cm−2〜5×1015cm−2程度である。
【0065】
4つの内壁24に形成されたPD素子12Cを覆うようにフィルタ14Cが配設されている。フィルタ14Cは励起光Eを遮断し、それよりも長波長の蛍光Fを透過する。
【0066】
LED基板15は、凹部33の底面32Bに、第2の主面15Bを上に向けて配設されている。インジケータ層17Cは、LED基板15を覆う透明樹脂層16Cの上に配設されている。
【0067】
第1実施形態の蛍光センサ10と同様に反射膜20は干渉効果を有する反射フィルタであり、第2の主面15Bから放射される励起光Eの光量分布を均一化する光量均一化部である。もちろん、光量均一化部としては既に説明した各種の励起光拡散部または各種の励起光減衰部を用いてもよい。
【0068】
次に、蛍光センサ10Cの動作を説明する。
LED基板15の第2の主面15Bから放射される励起光Eは、反射膜20により平均化され、透明樹脂層16Cを介して、インジケータ層17Cに入射する。インジケータ層17Cは、アナライト量に対応した強度の蛍光Fを発する。
【0069】
インジケータ層17Cが発生した蛍光Fは、フィルタ14Cを介して、内壁24に形成されたPD素子12Cに入射する。そして蛍光Fの強度に応じた信号が、PD素子12Cから出力される。なお、励起光Eはフィルタ14Cにより遮断されPD素子12Cには入射しない。
【0070】
以上の説明のように、蛍光センサ10Cは、主基板25に、主面32Aと平行な底面32Bのある凹部33があり、PD素子12Cが凹部33の内壁24に形成されており、LED基板15およびインジケータ層17Cが凹部33の内部に配設されている。特に、蛍光センサ10Cでは、シリコン等の半導体からなる配線基板30と、貫通孔が形成された枠状基板40と、が接合されている主基板25を有する。
【0071】
蛍光センサ10Cは、第1実施形態の蛍光センサ10と同様の効果を有し、更に、インジケータ層17を取り囲む内壁24に形成されたPD素子12Cにより蛍光Fを検出するために、検出感度が高い。
【0072】
<第3実施形態の変形例>
次に、本発明の第3実施形態の変形例の蛍光センサ10Dについて説明する。蛍光センサ10Dは第3実施形態の蛍光センサ10Cと類似しているため同じ構成要素には同じ数字の符号を付し説明は省略する。
【0073】
図11に示すように、蛍光センサ10Dでは、第3実施形態の配線基板30および枠状基板40に相当する主基板25Dが、半導体基板、例えば、シリコン基板により、一体的に作製されている。すなわち、主基板25Dの凹部33Dは、例えばエッチング法により、シリコン基板の第1の主面32Cに形成された矩形の凹部である。
【0074】
エッチング法としては、水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)水溶液、水酸化カリウム(KOH)水溶液などを用いるウエットエッチング法が望ましいが、反応性イオンエッチング(RIE)、ケミカルドライエッチング(CDE)などのドライエッチング法も用いることができる
例えば、主面の面配向が(100)面のシリコン基板の場合には、(111)面のエッチング速度が(100)面に比べて遅い異方性エッチングとなる。このため、凹部33Dの内壁24Dは(111)面となり、(100)面との角度θ1は54.74度となる。すなわち、開口部および底面32Dが矩形の凹部33Dの4つの内壁24Dはテーパー形状である。
【0075】
PD素子12Dは、凹部33Dの内壁24Dに形成される。PD素子12Dは少なくとも1つの内壁の少なくとも一部に形成される。内壁にテーパーのある凹部33Dは、内壁24が垂直な凹部33に比べてPD素子を形成する面積が広いだけでなく、内壁24DへのPD素子12Dの形成が容易である。PD素子12Dの形成後に、PD素子12Dを覆うようにフィルタ14Dが配設される。
【0076】
なお、蛍光センサの仕様によっては、蛍光センサ10Cのように、凹部の壁面24Dは主面に垂直であってもよい。また、凹部33Dの底面32DにもPD素子が形成され、フィルタが配設されていてもよい。
【0077】
ここで、蛍光センサ10DにおいてはLED基板15Dは、第2の主面15B側から研磨加工され、例えば厚さが10μmと薄層化されている。このため、薄層化されていないLED基板を配設した場合と比較すると、凹部33Dの深さに対してインジケータ層17Dが占める厚さが厚いため、より多くの蛍光が発生する。このため、蛍光センサ10Dは高感度である。また、薄層化されたLED基板を有する蛍光センサは、たとえ浅い深さの凹部であっても十分な検出感度を得ることができる。
【0078】
LED基板15Dの第2の主面15Bには第1実施形態の蛍光センサ10と同じ、光量均一化部である反射膜20が配設されている。もちろん、光量均一化部としては既に説明した各種の励起光拡散部または各種の励起光減衰部を用いてもよい。
【0079】
なお、図11においても、LED基板15Dの第1の主面15Aに形成されたLED素子15Cの電極15Mと接続される配線等は図示していない。透明樹脂層16DがLED基板15Dを覆うように凹部33Dに配設された後、インジケータ層17Dが凹部33Dの内部に配設される。そして凹部33Dの開口を塞ぐように、遮光層18Dが配設される。
【0080】
蛍光センサ10Dは、半導体からなる主基板25Dに、主面32Cと平行な底面32Dのある凹部33Dがあり、PD素子12Dが凹部33Dの内壁24Dに形成されており、LED基板15Dおよびインジケータ層17Dが凹部33Dの内部に配設されている。特に、蛍光センサ10Dでは、凹部33Dがシリコンからなる主基板25Dにエッチングにより形成されている。
【0081】
蛍光センサ10Dは蛍光センサ10C等が有する効果を有し、更に、製造が容易で、かつ小型化に適しており、更に、より高感度である。
【0082】
本発明は、上述した実施形態または変形例等に限定されるものではなく、本発明の要旨を変えない範囲において、種々の変更、改変等ができる。
【符号の説明】
【0083】
2…アナライト、10、10A〜10D…蛍光センサ、11…シリコン基板、12…PD素子、12…酸化シリコン膜、14…フィルタ、15…発光素子基板、15A…第1の主面、15B…第2の主面、15C…LED素子、16…透明樹脂層、17…インジケータ層、18…遮光層、20…反射膜、21…励起光拡散部、22…遮光膜、24…内壁、25…主基板、30…配線基板、32A、32C…主面、32B、32D…底面、33…凹部、40…枠状基板、101…透明支持基板、103…光電変換素子部、103A…基板、105…光学板状部、105A…集光機能部、106…インジケータ層、109…カバー層、110…蛍光センサ、120…空隙領域、E…励起光、F…蛍光
【技術分野】
【0001】
本発明は、アナライト濃度を計測する蛍光センサに関し、特に励起光の照射によりアナライト濃度に応じた光量の蛍光を発生するインジケータを有する蛍光センサに関する。
【背景技術】
【0002】
液体中のアナライトすなわち被計測物質の濃度を測定するための様々な分析装置が開発されている。例えば、一定容量の透明容器に、アナライトの存在によって性質が変化し蛍光を発生する蛍光色素と、アナライトを含む被計測溶液とを注入し、励起光を照射し蛍光色素からの蛍光強度を計測することによりアナライト濃度を計測する蛍光センサが知られている。
【0003】
そして、小型の蛍光センサでは、光源と光検出器と蛍光色素を含有したインジケータ層とを有している。そして被計測溶液中のアナライトが進入可能なインジケータ層に光源からの励起光を照射することで、インジケータ層内の蛍光色素が被計測溶液中のアナライト濃度に応じた光量の蛍光を発生し、その蛍光を光検出器が受光する。光検出器は光電変換素子であり、受光した光量に応じた電気信号を出力する。この電気信号から被計測溶液中のアナライト濃度が測定される。
【0004】
そして近年、微量試料中のアナライトを計測するために、半導体製造技術およびマイクロマシン製造技術を用いて作製される蛍光センサが提案されている。
【0005】
例えば、図1および図2に示す蛍光センサ110が、米国特許第5039490号明細書に開示されている。図1は蛍光センサ110の概略断面構造を示したものであり、図2は蛍光センサ110の概略構造を説明するための分解図である。なお、以下の図においてアナライト2は模式的に表示している。
【0006】
図1および図2に示すように、蛍光センサ110は、励起光Eが透過可能な透明支持基板101と、蛍光Fを電気信号に変換する光電変換素子部103と、励起光Eを集光する集光機能部105Aを有する光学板状部105と、アナライト2と相互作用することによって励起光Eの入射により蛍光Fを発するインジケータ層106と、カバー層109とから構成されている。
【0007】
光電変換素子部103は、例えばシリコンからなる基板103A上に光電変換素子が形成されている。基板103Aは励起光Eを透過しない。このため、蛍光センサ110では、光電変換素子部103の周囲に励起光Eが透過可能な空隙領域120を有している。
【0008】
すなわち、空隙領域120を通過し光学板状部105に入射した励起光Eだけが、光学板状部105の作用により、インジケータ層106中の、光電変換素子部103の上部付近に集光される。集光された励起光E2と、インジケータ層106の内部に進入したアナライト2の相互作用により、蛍光Fが発生する。発生した蛍光Fの一部は光電変換素子部103に入射し、光電変換素子部103において蛍光強度、つまりアナライト2の濃度に比例した電流または電圧などの信号が発生する。なお励起光Eは、光電変換素子部103上に形成されたフィルタ(不図示)の作用により、光電変換素子部103には入射しない。
【0009】
蛍光センサ110では、励起光Eが、インジケータ層106の光電変換素子部103の上部付近に集光されるため、集光箇所におけるインジケータの劣化速度が早く、センサ全体の寿命が短くなるおそれがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】米国特許第5039490号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
寿命の長い蛍光センサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
実施形態の蛍光センサは、蛍光を電気信号に変換する光電変換素子が形成されている主基板と、励起光を発生する発光素子が第1の主面に形成された発光素子基板と、前記発光素子基板の第2の主面から放射される前記励起光の光量分布を均一化する光量均一化部と前記光量均一化部により均一化された前記励起光を受光しアナライト量に応じた光量の前記蛍光を発生するインジケータと、を具備する。
【発明の効果】
【0013】
本発明の実施形態によれば、寿命の長い蛍光センサを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】従来の蛍光センサの概略断面構造を示した説明図である。
【図2】従来の蛍光センサの概略構造を説明するための分解図である。
【図3】第1の実施の形態の蛍光センサの概略断面構成を示す模式図である。
【図4】第1の実施の形態の蛍光センサの概略構造を説明するための分解図である。
【図5】第1の実施の形態の反射膜を説明するための説明図である。
【図6】第1の実施の形態の蛍光センサにおける励起光の光路を説明するための説明図である。
【図7】第1の実施の形態の反射膜による光量分布変化を説明するための説明図である。
【図8】第1の実施の形態の変形例の蛍光センサにおける励起光の光路を説明するための説明図である。
【図9】第2の実施の形態の遮光膜による光量分布変化を説明するための説明図である。
【図10】第3の実施の形態の蛍光センサの概略断面構成を示す模式図である。
【図11】第4の実施の形態の蛍光センサの概略断面構成を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
<第1実施形態>
以下、図面を用いて、本発明の第1の実施の形態の蛍光センサ10について説明する。
図3および図4に示すように、本実施の形態の蛍光センサ10は、主基板であるシリコン基板11と、酸化シリコン膜13と、フィルタ14と、放射される励起光の光量分布を均一化する光量均一化部である反射膜20が配設された発光素子基板(以下、「LED基板」という)15と、透明樹脂層16と、インジケータ層17と、遮光層18と、がシリコン基板11側から順に積層された構造を有する。シリコン基板11には光電変換素子であるフォトダイオード素子(以下「PD素子」という。)12が形成されている。励起光Eおよび蛍光Fを透過するLED基板15の第1の主面15Aの略中央部には、励起光Eを発生する発光素子である発光ダイオード素子(以下「LED素子」という)15Cが形成されている。なお、PD素子12等と接続される配線等は図示していない。
【0016】
後述するように、反射膜20は、LED基板15の第2の主面15Bの略中央部に配設された、励起光Eを反射し蛍光Fを透過する誘電体多層膜である。フィルタ14は、励起光Eを遮断し、それよりも長波長の蛍光Fを透過する。
【0017】
そして、PD素子12、フィルタ14、LED素子15C、およびインジケータ層17の、それぞれ少なくとも一部が、シリコン基板11上の同一領域内に形成されている。なお蛍光センサ10は、PD素子12、フィルタ14、LED素子15C、およびインジケータ層17のそれぞれの中央部がシリコン基板11上の同一領域内に形成されていることが好ましい。
【0018】
すなわち、蛍光センサ10においてはインジケータ層17からの蛍光Fを透過するLED基板15を用いることにより、既に説明した従来の蛍光センサとは全く異なる構造を実現している。
【0019】
シリコン基板11はPD素子12が表面に作成されている主基板である。光電変換素子として、PD素子12を基体表面に形成する場合は、主基板としては単結晶シリコン基板が好適であるが、PD素子12の製造方法によっては、ガラス基板など多様な材料から選択可能である。
【0020】
PD素子12は蛍光を電気信号に変換する光電変換素子であり、光電変換素子としては、フォトコンダクタ、またはフォトトランジスタ(PT)などの各種光電変換素子から選択可能である。そしてフォトダイオードまたはフォトトランジスタが、最も高感度でかつ安定性に優れた蛍光検出感度が実現でき、その結果、検出感度および検出精度に優れる蛍光センサ10が実現できるため特に好ましい。
【0021】
酸化シリコン膜13は第1の保護膜であり、例えば数十〜数百nmの厚さを有する第1の保護膜としてはシリコン窒化膜、または酸化シリコン膜とシリコン窒化膜とからなる複合積層膜を用いてもよい。
【0022】
フィルタ14は、例えば375nmより短い励起光Eの波長では透過率は10−6以下であり、460nmの蛍光Fの波長では透過率10−1以上すなわち10%以上と、波長による透過率の比としては5桁以上の透過率選択性を有する。フィルタ14は、なお、反射膜20と同様の反射型フィルタでもよいし、シリコン膜または炭化シリコン膜等を用いた吸収型フィルタでもよい。
【0023】
LED基板15は、LED素子15Cが形成可能で蛍光Fを透過する基板、例えばサファイア基板である。すなわち、サファイア基板は蛍光Fの透過率が高く、かつ、窒化ガリウム系化合物半導体よりなる紫外線を発光するLED素子15Cが形成可能である。
【0024】
LED素子15Cは、LED基板15の第1の主面15Aの略中央部に形成されており、励起光はLED基板15の内部を通過して第2の主面15Bから放射される。ここで、第2の主面15Bから放射される励起光Eの光量は、LED素子15Cと対向する中央領域では強く周辺領域では弱いという、所定の分布がある。
【0025】
反射膜20は、高屈折率層と高屈折率層よりも低い屈折率を有する低屈折率層とが交互に積層された干渉効果を有する反射フィルタである。なお、反射膜20は、例えば、第2の主面15Bの全面に形成したのち、所望の領域をマスクしてから不要な領域をエッチング等により除去することで、所望の形状にパターニングされる。または、所望のパターンに形成後に第2の主面15Bに配設してもよい。
【0026】
図5(A)〜図5(D)に示すように、反射膜20は、光量分布に応じて、円形パターン20A(図5(A))、楕円形パターン20B(図5(B))または矩形パターン20C(図5(C))等の1個のパターンから構成してもよいし、複数個のパターン20D(図5(D))から構成してもよい。
【0027】
透明樹脂層16であるエポキシ樹脂膜は第2の保護膜である。第2の保護膜としては、例えばLED基板15をフィルタ14上に接着するときに用いるシリコーン樹脂、または透明な非晶性フッ素樹脂なども使用可能である。
【0028】
インジケータ層17は、進入してきたアナライト2との相互作用および励起光によりアナライト2の濃度に応じた光量の蛍光を発生する。インジケータ層17の層厚は10μm〜500μm、より好ましくは40μm〜200μm程度に設定されている。インジケータ層17は、アナライト2の量、すなわち試料中のアナライト濃度に応じた強度の蛍光を発生する蛍光色素が含まれたベース材料から構成されている。なおインジケータ層17のベース材料は、LED素子15Cからの励起光および蛍光色素からの蛍光が良好に透過できる透明性をもつことが好ましい。ここで、蛍光色素は、試料中に存在するアナライト2そのものでも良い。なお、インジケータは、層状または膜状ではなく、ゲル状または液体状であってもよい。
【0029】
蛍光色素は、アナライト2の種類に応じて選択され、アナライト2の量に応じて発生する蛍光の光量が可逆的に変化する蛍光色素ならば、どのようなものでも使用できる。例えば生体内の水素イオン濃度または二酸化炭素を測定する場合には、ヒドロキシピレントリスルホン酸誘導体、糖類を測定する場合には蛍光残基を有するフェニルボロン酸誘導体、カリウムイオンを測定する場合には蛍光残基を有するクラウンエーテル誘導体などを用いることができる。
【0030】
そして、グルコースのような糖類を測定する場合には、蛍光色素として、ルテニウム有機錯体、蛍光フェニルボロン酸誘導体、または蛋白と結合したフルオレセイン等のグルコースと可逆結合する物質を用いることができる。ルテニウム有機錯体としてはルテニウムと2,2'-ビピリジン、1,10-フェナントロリン、4,7-ジフェニル-1,10-フェナントロリン、4,7-ジメチル-1,10-フェナントロリン、4,7-ジスルホン化ジフェニル-1,10-フェナントロリン、2,2'-ビ-2-チアゾリン、2,2'-ビチアゾール、5-ブロモ-1,10-フェナントロリン、および5-クロロ-1,10-フェナントロリン等との錯体等を用いることができる。更に、ルテニウム有機錯体のルテニウムに代えてオスミウム、イリジウム、ロジウム、レニウムおよびクロム等の有機錯体を用いることができる。なお蛍光フェニルボロン酸誘導体としては、特に2つのフェニルボロン酸と蛍光残基としてアントラセンを含む化合物が検出感度が高い。
【0031】
以上の説明のように、本発明の蛍光センサ10は、蛍光色素の選択によって、酸素センサ、グルコースセンサ、pHセンサ、免疫センサ、または微生物センサなど、多様な用途に対応している。
【0032】
インジケータ層17は、例えば、含水し易いハイドロゲルをベース材料として、ハイドロゲル内に上記蛍光色素を包含または結合させている。ハイドロゲルの成分としてはメチルセルロースもしくはデキストランなどの多糖類、(メタ)アクリルアミド、メチロールアクリルアミド、もしくはヒドロキシエチルアクリレート等のモノマーを重合して作製するアクリル系ハイドロゲル、またはポリエチレングリコールとジイソシアネートから作製するウレタン系ハイドロゲルなどを用いることができる。
【0033】
そして、最上層である遮光層18は、インジケータ層17の上部表面側に形成された、厚さが数十μm以下の層である。遮光層18は、励起光および蛍光が蛍光センサ10の外部へ漏光するのを防止すると同時に、外光が蛍光センサ10の内部に進入するのを防止する。
【0034】
ここで、遮光層18は、外光を遮光するために、インジケータ層17だけでなく蛍光センサ10全体を覆うことが望ましい。遮光層18は、アナライト2が、その内部を通過してインジケータ層17に到達するのを妨げない材料を用いて構成されている。水溶液中のアナライト分析に利用する蛍光センサ10の場合は、遮光層18の材料としては、例えば微多孔質の金属もしくはセラミックス、またはインジケータ層17に用いるハイドロゲルにカーボンブラックもしくはカーボンナノチューブなど光を通さない微粒子を混合した複合材料が好適である。また、遮光層18は、多数の貫通孔を有するシリコン基板等でもよい。
【0035】
また、LED基板15、透明樹脂層16およびインジケータ層17が、額縁状のセンサ枠内部に収納されていてもよい。センサ枠をシリコン等の遮光性材料で構成することにより外光の進入を防止でき、更にセンサ全体の機械的強度の向上を図ることもできる。
【0036】
上記構造を有する蛍光センサ10では、LED素子15Cからの励起光Eが、インジケータ層17中の蛍光色素に照射される。蛍光色素が発生した蛍光Fは、LED基板15およびフィルタ14を通過してPD素子12に到達し、電気信号に変換される。
【0037】
そして、図6に示すように、蛍光センサ10では、LED基板15の第2の主面15Bにおいて光量が大きい中央領域の励起光E3が、反射膜20により反射され、インジケータ層17に直接、入射することがない。反射膜20により反射された励起光E3は、LED基板15内面および周囲の部材の表面等で更に反射し、少なくとも一部はインジケータ層17に入射する。
【0038】
また、インジケータ層17が発生した蛍光Fは、反射膜20およびLED基板15を透過して、PD素子12に入射する。すなわち、蛍光F3は反射膜20を透過して、PD素子12に入射するため、反射膜20は蛍光検出の妨害因子とはならない。このため、蛍光センサ10は、蛍光Fの通過経路中に反射膜20を有していても感度が低下しない。
【0039】
以上の説明のように反射膜20は、第2の主面15Bから放射される励起光Eの光量分布を均一化する光量均一化部である。ここで、図7は第2の主面15Bから放射される励起光Eの光量分布を説明するための図で、横軸中央が第2の主面15Bの中央である。図7に示すように、(A)反射膜無しの場合と比較すると、(B)反射膜ありの場合は、中央領域の光量は減少しているが、周辺領域の光量は反射膜20により反射された光の一部が出射されるため増加している。すなわち、反射膜20は、励起光の光量分布を平均化する励起光拡散部である。
【0040】
蛍光センサ10は、強い励起光がインジケータ層17の中央領域に集中して照射されることがないため、インジケータの劣化進行速度が遅い。このため蛍光センサは、長期間にわたって検出感度の低下等の問題が発生しにくいため、寿命が長い。
【0041】
また、蛍光センサ10の反射膜20は、光量が大きい領域の励起光Eを減少するだけでなく、光量が弱い領域の励起光Eを増加する励起光拡散部であるため、励起光の利用効率がよい。このため、LED素子15Cに流す電流を抑制できるためLED素子15Cの発熱が少なく蛍光センサ10の特性が安定している。
【0042】
<第1実施形態の変形例>
蛍光センサ10の反射膜20に替えて、反射機能を有する光量均一化部としては、励起光および蛍光を共に反射するアルミニウム等の金属膜等を有する蛍光センサであっても、寿命の改善効果は得られる。金属膜等は多層干渉膜に比べて形成が容易で安価である。
【0043】
また、回折機能、散乱機能、または屈折機能を有する光量均一化部を用いることもできる。
【0044】
回折機能を有する光量均一化部は、回折格子構造を有し、入射する光を回折現象によって拡散する。回折格子のパターンのレイアウトは、光の回折を起こせるのであればどのようなパターンでもよく、例えば平行線を並べて配置したり、同心円上に円パターンを配置したりする。
【0045】
回折格子は例えば、溝または屈折率の異なるパターンの平行線または同心円線をガラス板等に多数形成することで構成できる。パターンのピッチは、インジケータ層17との距離、および何次の回折光までを使用するか等の条件によって設定されるが、0.1μmから50μmの範囲で、より好ましくは0.5μmから10μmの範囲である。
【0046】
回折格子は、LED素子15Cから出力された励起光Eを受光すると、励起光Eを回折によって0次、1次、2次、更に高次の回折光に分散する。高次の回折光ほど、回折格子進入前より大きく角度を変えて広がる。光が広がるため、進入した励起光の光量分布は、回折格子に進入する前と比較して均一となる。なお、0次回折光を遮断するために、反射膜20と同様の反射膜等が配設される。
【0047】
次に、入射する光を散乱現象によって拡散する散乱機能を有する光量均一化部は、例えば、直径1nmから10μm程度の粒子を含む樹脂層である。粒子は不透明であってもよく、また樹脂と異なる屈折率を有していれば透明でもよい。
【0048】
散乱効果としては、レイリー散乱、ミー散乱など、光が散乱するのであればどのような現象を利用するものであってもよい。
【0049】
次に、入射する光を屈折現象によって拡散する屈折機能を有する光量均一化部は、例えば、凹レンズ、フレネルレンズ、マイクロ凹レンズアレイ、またはプリズムアレイなどを有する。前記構造は、酸化膜などの透明膜にウエットエッチングなどでパターニングしたり、透明樹脂を所望の形状に加工したり、第2の主面15Bを加工したりして形成される。
【0050】
例えば、図8に示す変形例の蛍光センサ10Aでは、LED基板15の第2の主面15Bに凹部が形成されている。この凹部にLED基板15とは屈折率の異なる透明樹脂層16が埋め込まれることで、凹レンズ機能を有する励起光拡散部21が形成されている。励起光拡散部21は、透明樹脂層16の一部であるが、第2の主面15Bの加工により形成されたLED基板15の一部でもある。もちろん、LED基板15に別途作製した凹レンズを配設してもよい。
【0051】
LED素子15Cが発生した励起光E4は、凹レンズ機能を有する励起光拡散部21により外周部側に拡散する。このため、中央領域の光量は減少し周辺領域の光量が増加する。
【0052】
また、例えば、フレネルレンズは、LED素子15Cから出力された励起光を屈折によってより広い角度に拡散する。光量の多い中央領域ほど屈折角が大きくなるようにフレネルレンズを設計することによって、インジケータ層17へ進入する励起光の光量分布をより均一にすることができる。
【0053】
またマイクロレンズアレイは、励起光を受光すると、それぞれのレンズが励起光を拡散する。屈折の度合いはレンズの焦点距離に依存しており、個々のレンズの焦点距離を、個別に設定できるため、光量の多い中央領域に配設するレンズの屈折角を大きくすることによって、インジケータ層17へ進入する励起光の光量分布をより均一にすることができる。
【0054】
また、プリズムアレイは、励起光を受光すると、それぞれのプリズムが励起光を任意の方向へ拡散させる。光量の多い中央領域の光を大きな角度で屈折させるなどによって、インジケータ層17へ進入する励起光の光量分布をより均一にすることができる。
【0055】
上記、光量分布を平均化する励起光拡散部は、いずれも作成後、LED基板15の第2の主面15Bに配設してもよいし、第2の主面15Bを加工することにより形成してもよい。
【0056】
<第2実施形態>
次に、第2実施形態の蛍光センサ10Bについて説明する。蛍光センサ10Bは蛍光センサ10と類似しているため同じ機能の構成要素には同じ数字の符号を付し説明は省略する。蛍光センサ10Bの光量均一化部は、第2の主面15Bの、少なくともLED素子15Cと対向する領域に形成された、励起光を吸収する機能を有する遮光膜22である。遮光膜22は、光量分布の光量が大きい領域の光量を減衰する励起光減衰部である。
【0057】
すなわち、図9に示すように、「(A)遮光膜無し」の場合と比較すると、「(B)遮光膜あり」の場合は、中央領域の光量が減少しているが、周辺領域の光量は変化がない。
【0058】
遮光膜22は、励起光の光量が大きい、すなわち励起光が強い領域にのみ配設してもよいし、または、励起光が強い領域ほど強く効果が現れる構成でもよい。例えば、遮光膜22は、中央部が最も吸収が大きく、周辺部は小さな吸収となるように、厚さを変えてもよい。また、図5(D)に示す反射膜パターン20Dのように複数のパターンから遮光膜22を構成してもよい。
【0059】
例えば、遮光膜22は、励起光の透過率が10〜90%程度の不透明樹脂を使用してもよいし、あるいは不透明膜のドットパターンまたはストライプパターンでもよい。
【0060】
遮光膜22は、作製が容易であるが、励起光の発光強度が高い箇所の励起光を減衰させることによって、インジケータ層17が受光する光量を均一化することができる。このため、蛍光センサ10Bは、蛍光センサ10等と同じように、寿命が長い。
【0061】
<第3実施形態>
次に、第3実施形態の蛍光センサ10Cについて説明する。蛍光センサ10Cは蛍光センサ10と類似しているため同じ機能の構成要素には同じ数字の符号を付し説明は省略する。
図10に示すように、蛍光センサ10Cは、凹部33がある主基板25と、反射膜20が配設されたLED基板15と、透明樹脂層16Cと、インジケータ層17Cと、遮光層18Cと、を有する。LED基板15と、透明樹脂層16Cと、インジケータ層17Cとは、凹部33の内部に配設されており、遮光層18Cは凹部33の開口を塞ぐように配設されている。
【0062】
主基板25は、図示しない各種の配線層を有する配線基板30と、中央に貫通孔のある四角柱形状の枠状基板40と、を接合することにより作製されている。このため、主基板25には、第1の主面32Aに、第1の主面32Aと平行な底面32Bのある凹部33がある。すなわち、配線基板30の表面が凹部33の底面32Bであり、枠状基板40の貫通孔の内壁が、凹部33の内壁24である。なお、蛍光センサ10Cでは、枠状基板40の外形形状および凹部33の内面形状は、ともに正四角柱であるが、四角柱、多角柱、または円柱であってもよい。
【0063】
PD素子12Cは、枠状基板40の貫通孔の4つの内壁、すなわち主基板25の凹部33の4つの内壁24に形成されている。なお、PD素子12Cは、インジケータ層17Cを囲む4つの内壁の全てに形成されていることが検出感度改善のためには好ましいが、少なくとも1つの内壁の少なくとも一部に形成されていればよい。
【0064】
壁面24にPD素子12Cを形成するには、シリコン等の半導体からなる基板を、5度〜30度に傾けた状態で、4方向からイオン注入処理が行われる。例えば、ほう素を注入する場合の条件は、加速電圧:10〜100keV、注入量:1×1012cm−2〜5×1015cm−2程度である。
【0065】
4つの内壁24に形成されたPD素子12Cを覆うようにフィルタ14Cが配設されている。フィルタ14Cは励起光Eを遮断し、それよりも長波長の蛍光Fを透過する。
【0066】
LED基板15は、凹部33の底面32Bに、第2の主面15Bを上に向けて配設されている。インジケータ層17Cは、LED基板15を覆う透明樹脂層16Cの上に配設されている。
【0067】
第1実施形態の蛍光センサ10と同様に反射膜20は干渉効果を有する反射フィルタであり、第2の主面15Bから放射される励起光Eの光量分布を均一化する光量均一化部である。もちろん、光量均一化部としては既に説明した各種の励起光拡散部または各種の励起光減衰部を用いてもよい。
【0068】
次に、蛍光センサ10Cの動作を説明する。
LED基板15の第2の主面15Bから放射される励起光Eは、反射膜20により平均化され、透明樹脂層16Cを介して、インジケータ層17Cに入射する。インジケータ層17Cは、アナライト量に対応した強度の蛍光Fを発する。
【0069】
インジケータ層17Cが発生した蛍光Fは、フィルタ14Cを介して、内壁24に形成されたPD素子12Cに入射する。そして蛍光Fの強度に応じた信号が、PD素子12Cから出力される。なお、励起光Eはフィルタ14Cにより遮断されPD素子12Cには入射しない。
【0070】
以上の説明のように、蛍光センサ10Cは、主基板25に、主面32Aと平行な底面32Bのある凹部33があり、PD素子12Cが凹部33の内壁24に形成されており、LED基板15およびインジケータ層17Cが凹部33の内部に配設されている。特に、蛍光センサ10Cでは、シリコン等の半導体からなる配線基板30と、貫通孔が形成された枠状基板40と、が接合されている主基板25を有する。
【0071】
蛍光センサ10Cは、第1実施形態の蛍光センサ10と同様の効果を有し、更に、インジケータ層17を取り囲む内壁24に形成されたPD素子12Cにより蛍光Fを検出するために、検出感度が高い。
【0072】
<第3実施形態の変形例>
次に、本発明の第3実施形態の変形例の蛍光センサ10Dについて説明する。蛍光センサ10Dは第3実施形態の蛍光センサ10Cと類似しているため同じ構成要素には同じ数字の符号を付し説明は省略する。
【0073】
図11に示すように、蛍光センサ10Dでは、第3実施形態の配線基板30および枠状基板40に相当する主基板25Dが、半導体基板、例えば、シリコン基板により、一体的に作製されている。すなわち、主基板25Dの凹部33Dは、例えばエッチング法により、シリコン基板の第1の主面32Cに形成された矩形の凹部である。
【0074】
エッチング法としては、水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)水溶液、水酸化カリウム(KOH)水溶液などを用いるウエットエッチング法が望ましいが、反応性イオンエッチング(RIE)、ケミカルドライエッチング(CDE)などのドライエッチング法も用いることができる
例えば、主面の面配向が(100)面のシリコン基板の場合には、(111)面のエッチング速度が(100)面に比べて遅い異方性エッチングとなる。このため、凹部33Dの内壁24Dは(111)面となり、(100)面との角度θ1は54.74度となる。すなわち、開口部および底面32Dが矩形の凹部33Dの4つの内壁24Dはテーパー形状である。
【0075】
PD素子12Dは、凹部33Dの内壁24Dに形成される。PD素子12Dは少なくとも1つの内壁の少なくとも一部に形成される。内壁にテーパーのある凹部33Dは、内壁24が垂直な凹部33に比べてPD素子を形成する面積が広いだけでなく、内壁24DへのPD素子12Dの形成が容易である。PD素子12Dの形成後に、PD素子12Dを覆うようにフィルタ14Dが配設される。
【0076】
なお、蛍光センサの仕様によっては、蛍光センサ10Cのように、凹部の壁面24Dは主面に垂直であってもよい。また、凹部33Dの底面32DにもPD素子が形成され、フィルタが配設されていてもよい。
【0077】
ここで、蛍光センサ10DにおいてはLED基板15Dは、第2の主面15B側から研磨加工され、例えば厚さが10μmと薄層化されている。このため、薄層化されていないLED基板を配設した場合と比較すると、凹部33Dの深さに対してインジケータ層17Dが占める厚さが厚いため、より多くの蛍光が発生する。このため、蛍光センサ10Dは高感度である。また、薄層化されたLED基板を有する蛍光センサは、たとえ浅い深さの凹部であっても十分な検出感度を得ることができる。
【0078】
LED基板15Dの第2の主面15Bには第1実施形態の蛍光センサ10と同じ、光量均一化部である反射膜20が配設されている。もちろん、光量均一化部としては既に説明した各種の励起光拡散部または各種の励起光減衰部を用いてもよい。
【0079】
なお、図11においても、LED基板15Dの第1の主面15Aに形成されたLED素子15Cの電極15Mと接続される配線等は図示していない。透明樹脂層16DがLED基板15Dを覆うように凹部33Dに配設された後、インジケータ層17Dが凹部33Dの内部に配設される。そして凹部33Dの開口を塞ぐように、遮光層18Dが配設される。
【0080】
蛍光センサ10Dは、半導体からなる主基板25Dに、主面32Cと平行な底面32Dのある凹部33Dがあり、PD素子12Dが凹部33Dの内壁24Dに形成されており、LED基板15Dおよびインジケータ層17Dが凹部33Dの内部に配設されている。特に、蛍光センサ10Dでは、凹部33Dがシリコンからなる主基板25Dにエッチングにより形成されている。
【0081】
蛍光センサ10Dは蛍光センサ10C等が有する効果を有し、更に、製造が容易で、かつ小型化に適しており、更に、より高感度である。
【0082】
本発明は、上述した実施形態または変形例等に限定されるものではなく、本発明の要旨を変えない範囲において、種々の変更、改変等ができる。
【符号の説明】
【0083】
2…アナライト、10、10A〜10D…蛍光センサ、11…シリコン基板、12…PD素子、12…酸化シリコン膜、14…フィルタ、15…発光素子基板、15A…第1の主面、15B…第2の主面、15C…LED素子、16…透明樹脂層、17…インジケータ層、18…遮光層、20…反射膜、21…励起光拡散部、22…遮光膜、24…内壁、25…主基板、30…配線基板、32A、32C…主面、32B、32D…底面、33…凹部、40…枠状基板、101…透明支持基板、103…光電変換素子部、103A…基板、105…光学板状部、105A…集光機能部、106…インジケータ層、109…カバー層、110…蛍光センサ、120…空隙領域、E…励起光、F…蛍光
【特許請求の範囲】
【請求項1】
蛍光を電気信号に変換する光電変換素子が形成されている主基板と、
励起光を発生する発光素子が第1の主面に形成された発光素子基板と、
前記発光素子基板の第2の主面から放射される前記励起光の光量分布を均一化する光量均一化部と
前記光量均一化部により均一化された前記励起光を受光し、アナライト量に応じた光量の前記蛍光を発生するインジケータと、を具備することを特徴とする蛍光センサ。
【請求項2】
前記主基板に、主面と平行な底面のある凹部があり、前記光電変換素子が前記凹部の内壁に形成されており、前記発光素子基板および前記インジケータが前記凹部の内部に配設されていることを特徴とする請求項1に記載の蛍光センサ。
【請求項3】
前記光量均一化部が、前記光量分布を平均化する励起光拡散部であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の蛍光センサ。
【請求項4】
前記励起光拡散部が、回折機能、散乱機能、屈折機能、または反射機能を有することを特徴とする請求項3に記載の蛍光センサ。
【請求項5】
前記励起光拡散部が、前記第2の主面の少なくとも前記発光素子と対向する領域に形成された反射膜であることを特徴とする請求項4に記載の蛍光センサ。
【請求項6】
前記反射膜が、前記励起光を反射し前記蛍光を透過する多層膜であることを特徴とする請求項5に記載の蛍光センサ。
【請求項7】
前記光量均一化部が、励起光の光量が大きい領域の光量を減衰する励起光減衰部であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の蛍光センサ。
【請求項8】
前記励起光減衰部が、前記第2の主面の少なくとも前記発光素子と対向する領域に形成された、前記励起光を吸収する機能を有する遮光膜であることを特徴とする請求項7に記載の蛍光センサ。
【請求項1】
蛍光を電気信号に変換する光電変換素子が形成されている主基板と、
励起光を発生する発光素子が第1の主面に形成された発光素子基板と、
前記発光素子基板の第2の主面から放射される前記励起光の光量分布を均一化する光量均一化部と
前記光量均一化部により均一化された前記励起光を受光し、アナライト量に応じた光量の前記蛍光を発生するインジケータと、を具備することを特徴とする蛍光センサ。
【請求項2】
前記主基板に、主面と平行な底面のある凹部があり、前記光電変換素子が前記凹部の内壁に形成されており、前記発光素子基板および前記インジケータが前記凹部の内部に配設されていることを特徴とする請求項1に記載の蛍光センサ。
【請求項3】
前記光量均一化部が、前記光量分布を平均化する励起光拡散部であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の蛍光センサ。
【請求項4】
前記励起光拡散部が、回折機能、散乱機能、屈折機能、または反射機能を有することを特徴とする請求項3に記載の蛍光センサ。
【請求項5】
前記励起光拡散部が、前記第2の主面の少なくとも前記発光素子と対向する領域に形成された反射膜であることを特徴とする請求項4に記載の蛍光センサ。
【請求項6】
前記反射膜が、前記励起光を反射し前記蛍光を透過する多層膜であることを特徴とする請求項5に記載の蛍光センサ。
【請求項7】
前記光量均一化部が、励起光の光量が大きい領域の光量を減衰する励起光減衰部であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の蛍光センサ。
【請求項8】
前記励起光減衰部が、前記第2の主面の少なくとも前記発光素子と対向する領域に形成された、前記励起光を吸収する機能を有する遮光膜であることを特徴とする請求項7に記載の蛍光センサ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2013−40797(P2013−40797A)
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−176257(P2011−176257)
【出願日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【出願人】(000109543)テルモ株式会社 (2,232)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【出願人】(000109543)テルモ株式会社 (2,232)
【Fターム(参考)】
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