説明

蛍光ナノシリカ粒子、ナノ蛍光材料、それを用いたバイオチップ及びそのアッセイ法

【課題】DNAチップ用色素として利用する場合に、効率的な蛍光標識が出来ること、並びに蛍光色素の取り込みが良く蛍光強度が十分であり、かつ退色しにくい蛍光ナノシリカ粒子、及び上記蛍光による生体分子の検出・定量方法を提供する。
【解決手段】基板上に固定した標的生体分子認識分子と、前記標的生体分子とを分子認識させる工程、前記第1の分子認識物質を分子認識する第2の物質によって表面修飾された、蛍光色素化合物とシリカ成分とが化学的に結合もしくは吸着してなる蛍光色素化合物含有コロイドシリカ粒子であって、少なくとも1種の前記蛍光色素化合物が前記シリカ粒子全体に分散しており、その平均粒径が30nm以下である蛍光色素化合物含有コロイドシリカ粒子を、基板上に固定した前記標的生体分子認識分子と分子認識した後の前記標的生体分子と分子認識させる工程、及び基板上の前記コロイドシリカ粒子の蛍光を検出もしくは定量する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蛍光色素化合物含有コロイドシリカ粒子、それを用いた蛍光標識ナノビーズ等のナノ蛍光材料、それを用いたバイオチップおよびそれを用いた生体分子検出・定量方法に関する。
【背景技術】
【0002】
テーラーメイド医療、早期診断といった先端医療分野において、バイオチップを用いた診断技術が注目されている。バイオチップとは、抗原、抗体、DNA、RNA、糖、糖鎖、リガンド、受容体、ペプチド、化学物質などの生体分子あるいは生理活性物質を、捕捉分子として基板上に整列化させ固定化したデバイスの総称である。
バイオチップの代表例として、DNAチップが知られている。DNAチップは基板上に固定化されたDNAと検体のDNAまたはRNAを反応させ、検体のDNAまたはRNAに導入された蛍光標識を検出することにより遺伝子の検出及び定量を行うものである。
【0003】
しかしながらDNAチップを始めとするバイオチップは、蛍光標識に使用する色素が退色し易いことから、得られるデータの再現性が低く、臨床に応用できるだけのデータの信頼性に欠けていることが課題である。
退色しにくい蛍光色素としてCdSe等の半導体ナノ粒子が知られているが、半導体ナノ粒子はDNAチップに現在広く使われている色素であるCy3やCy5と蛍光特性が大きく異なり、現在普及しているDNAチップ用解析装置に適用することが困難である。また、検体のDNAを蛍光標識するときや基板上のDNAとハイブリダイゼーションさせたときに、検体のDNAの蛍光標識に使われなかった半導体ナノ粒子あるいはハイブリダイゼーションに使われなかった半導体ナノ粒子標識DNAを除去することが困難である。
これらのことが半導体ナノ粒子をDNAチップに利用する上で問題となっている。
【0004】
有機色素を安定化する方法として有機色素をシリカ粒子に閉じ込めた蛍光シリカ粒子が知られている(例えば、非特許文献1〜3参照。)。
しかし、これまで報告されている蛍光シリカ粒子は粒径が最少で30nm程度であり、DNAチップ用色素として利用する場合に、効率的な蛍光標識が出来ないこと、並びに蛍光色素の取り込みが悪く蛍光強度が不十分であり、かつ退色し易いことが課題であった。
【非特許文献1】J.Phys.Chem.B 1999,703,1408−1415
【非特許文献2】Nano Letters 2005,5,113
【非特許文献3】Nano Letters 2005,5,37
【発明の開示】
【0005】
本発明は、上述のような問題点を解消するため、同時に用いられる蛍光標識ナノビーズとして、複数個からなる蛍光色素化合物含有コロイドシリカ粒子、遊離の前記蛍光色素化合物に対して、輝度を増加させ、かつ前記蛍光に耐退色性を与えた蛍光標識ナノビーズとしてバイオチップに用いられる蛍光色素化合物含有コロイドシリカ粒子、前記コロイドシリカ粒子からなるナノ蛍光材料、前記シリカ粒子を用いたバイオチップ及び生体分子の検出・定量方法を提供することを課題とする。
【0006】
本発明によれば、以下の手段が提供される:
(1) 蛍光色素化合物とシリカ成分とが化学的に結合もしくは吸着してなる複数個の蛍光色素化合物含有コロイドシリカ粒子であって、その平均粒径が30nm以下である蛍光色素化合物含有コロイドシリカ粒子、
(2) 少なくとも1種の前記蛍光色素化合物が前記シリカ粒子全体に分散していることを特徴とする(1)に記載の蛍光色素化合物含有コロイドシリカ粒子、
(3) 前記蛍光が、黄色蛍光、オレンジ色蛍光又は赤色蛍光であることを特徴とする(1)又は(2)に記載の蛍光色素化合物含有コロイドシリカ粒子、
(4) 前記シリカ粒子の表面にアミノ基、水酸基、チオール基、カルボキシル基、マレイミド基及び/又はスクシンイミジルエステル基を有することを特徴とする(1)〜(3)のいずれか1項に記載の蛍光色素化合物含有コロイドシリカ粒子、
【0007】
(5) 前記シリカ粒子の表面を、標的生体分子に特異的に結合もしくは吸着する物質で修飾し、前記蛍光に耐退色性を与えたことを特徴とする(1)〜(4)のいずれか1項に記載の蛍光色素化合物含有コロイドシリカ粒子、
(6) 前記蛍光色素化合物が下記一般式(1)〜(3)のいずれかで表されることを特徴とする、(1)〜(5)のいずれか1項に記載の蛍光色素化合物含有コロイドシリカ粒子、
【0008】
【化1】

【0009】
(ただし、式中Xは同一または別異にCRを表し、Yは同一または別異に水素原子、炭化水素基、またはヘテロ原子を有する官能基から選択され、RまたはRはいずれか一方が前記シリカ成分と共有結合する基ないしは該基を有する炭化水素基を、他方が官能基を有してもよい炭化水素基を表し、RおよびRは水素原子または炭化水素基であり、少なくとも一方は炭化水素基であり、nは1または2である。)
【0010】
【化2】

【0011】
(式中R11、R21は、それぞれ、前記シリカ成分と共有結合する基を表す。)
(7) 遊離の前記蛍光色素化合物に対して輝度を増加させ、かつ前記蛍光に耐退色性を与えた蛍光標識ナノビーズとしてバイオチップに用いる、(1)〜(6)のいずれか1項に記載の蛍光色素化合物含有コロイドシリカ粒子、
(8) 前記(1)〜(7)のいずれか1項に記載の蛍光色素化合物含有コロイドシリカ粒子からなるナノ蛍光材料、
(9) 遊離の前記蛍光色素化合物に対して輝度を増加させ、かつ前記蛍光に耐退色性を与えた蛍光標識ナノビーズとして、前記(1)〜(7)のいずれか1項に記載の蛍光色素化合物含有コロイドシリカ粒子を用いてなるバイオチップ、
【0012】
(10) 検体中の標的生体分子が第1の分子認識物質によって修飾されている生体分子の検出もしくは定量方法であって、次の工程を含んでなることを特徴とする生体分子の検出もしくは定量方法、
基板上に固定した標的生体分子認識分子と、前記標的生体分子とを分子認識させる工程、
前記第1の分子認識物質を分子認識する第2の物質によって表面修飾された前記(1)〜(7)のいずれか1項に記載の蛍光色素化合物含有コロイドシリカ粒子の少なくとも1個を、基板上に固定した前記標的生体分子認識分子と分子認識した後の前記標的生体分子と分子認識させる工程、及び
基板上の前記コロイドシリカ粒子の蛍光を検出もしくは定量する工程、
(11) 前記第1の分子認識物質及び前記第2の物質の組み合わせが、下記(a)〜(i)からなる群より選ばれるいずれか1つであることを特徴とする(10)に記載の生体分子の検出もしくは定量方法、
(a)前記第1の分子認識物質が抗原であり、かつ前記第2の物質が抗体である、
(b)前記第1の分子認識物質が抗体であり、かつ前記第2の物質が抗原である、
(c)前記第1の分子認識物質がビオチンであり、かつ前記第2の物質がアビジンもしくはストレプトアビジンである、
(d)前記第1の分子認識物質がアビジンもしくはストレプトアビジンであり、かつ前記第2の物質がビオチンである、
(e)前記第1の分子認識物質が糖もしくは糖鎖であり、かつ前記第2の物質がそれに特異的に結合する糖結合タンパク質である、
(f)前記第1の分子認識反応物質が糖結合タンパク質であり、かつ前記第2の物質がそれに特異的に結合する糖もしくは糖鎖である、
(g)前記第1の分子認識物質がリガンドであり、かつ前記第2の物質がそれらに特異的に結合する受容体である、
(h)前記第1の分子認識物質が受容体であり、かつ前記第2の物質がそれに特異的に結合するリガンドである、及び
(i)前記第1の分子認識物質が化学物質であり、かつ前記第2の物質がそれに特異的に結合する抗体もしくはペプチドである。
【0013】
(12) 蛍光標識用抗体として、標的生体分子の抗体認識部位を認識する抗体によって表面修飾された前記(1)〜(7)のいずれか1項に記載の蛍光色素化合物含有コロイドシリカ粒子を用いる二抗体サンドイッチ式検出もしくは定量方法、
(13) 検体中の標的生体分子を前記(1)〜(7)のいずれか1項に記載の蛍光色素化合物含有コロイドシリカ粒子で標識する工程、
基板上に固定した標的生体分子認識分子と、前記コロイドシリカ粒子で標識した標的生体分子とを分子認識させる工程、及び
基板上の前記コロイドシリカ粒子の蛍光を検出もしくは定量する工程を含んでなることを特徴とする生体分子の検出もしくは定量方法、
(14) 前記標的生体分子が、抗原、抗体、DNA、RNA、糖、糖鎖、リガンド、受容体、ペプチド又は化学物質であることを特徴とする(10)〜(13)のいずれか1項に記載の生体分子の検出もしくは定量方法、
(15) 前記(1)〜(7)のいずれか1項に記載の蛍光色素化合物含有コロイドシリカ粒子を用いて、検体中の標的DNA又は標的RNAを標識し、これを基板上に固定したDNA又はRNAとハイブリダイズした後、基板上の前記コロイドシリカ粒子の蛍光標識シグナルを検出もしくは定量することを特徴とするDNA又はRNAの検出ないしは定量方法、及び
(16) 2種以上の標的生体分子を同時に検出もしくは定量することを特徴とする(10)〜(15)のいずれか1項に記載の生体分子の検出もしくは定量方法
を提供するものである。
【0014】
本明細書及び特許請求の範囲において、バイオチップ(バイオ素子)とは、前述したように基板上に整列・固定化した生体分子(生理活性物質を含む。以下同様である。)と、それ以外の生体分子又は化合物とを接触させ、生じた特異的相互作用を光学的、電気的あるいは物理的信号変化で検出・定量するための固体基板あるいはその検出手段をいう。例えば、DNAチップ、プロテインチップ等が挙げられる。
また、本明細書及び特許請求の範囲において、「少なくとも1種の蛍光色素化合物がシリカ粒子全体に分散する」とは、シリカ粒子中に少なくとも1種の蛍光色素化合物が高濃度に固定化された状態をいい、シリカ粒子に対する蛍光色素化合物の濃度が35〜75mmol/Lであることが好ましく、40〜55mmol/Lであることがより好ましい。
ここで、「シリカ粒子に対する蛍光色素化合物の濃度」とは、蛍光色素化合物のモル数を、蛍光色素化合物含有コロイドシリカ粒子の体積で割ったものである。蛍光色素化合物のモル数は、蛍光色素化合物含有シリカ粒子分散コロイドの吸光度から求めたものであり、また蛍光色素化合物含有コロイドシリカ粒子の体積は、該シリカ粒子の大きさをTEM写真から求め、一粒子の体積を決定し求めたもの、又は蛍光色素化合物含有シリカ粒子分散コロイドから吸光シリカ粒子のみを回収し、乾燥させ、質量を求め、該シリカ粒子の密度を2.3g/cmとして求めたものである。
本発明において、「蛍光」は、燐光と区別するものではなく、燐光をも含む広義の蛍光である。よって、本発明における蛍光の蛍光寿命は特に制限されるものではなく、10−3秒〜1日以上の蛍光寿命の発光であってもよく、10−10秒〜10−1秒の蛍光寿命の発光が好ましく、10−9秒〜10−3秒の蛍光寿命の発光がより好ましく、10−9秒〜10−5秒の蛍光寿命の発光がさらに好ましい。
また、「蛍光」は蛍光色素化合物が発する固有の波長の発光であるので、吸光物質に対する入射光と透過光との強度差で定義される吸光とは相異なる現象である。よって、蛍光の測定と吸光の測定とでは、測定対象の光が異なり、測定機構等の測定系も異なる。
本発明において、「蛍光に耐退色性を与えた」とは、分散液にアルゴンランプを30分照射したときの蛍光強度の減衰の度合いが、同濃度の蛍光色素化合物(例えば、フルオレセイン)溶液の蛍光強度の減衰の度合いの20%以下のことをいう。
遊離の蛍光色素化合物は、1分子で1つの蛍光標識を行うのに対し、本発明のシリカ粒子中に分散した前記少なくとも1種の蛍光色素化合物群は、一体となって蛍光標識を行なうことができる。
本発明の上記及び他の特徴及び利点は、適宜添付の図面を参照して、下記の記載からより明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1は、得られた蛍光シリカ粒子のTEM写真像を示す図である。
【図2】図2は、退色性比較試験の結果を示すグラフである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
まず、本発明の蛍光色素化合物含有コロイドシリカ粒子について説明する。
本発明の蛍光色素化合物含有コロイドシリカ粒子は、蛍光色素化合物とシリカ成分とが化学的に結合もしくは吸着してなり、その平均粒径を30nm以下とした、標的生体分子(生理活性物質を含む。)を蛍光標識付けする、蛍光色素化合物を分散した複数個のコロイドシリカ粒子からなる。前記蛍光色素化合物が、前記シリカ粒子の内部から表面近傍まで前記シリカ粒子全体に分散していることが好ましく、前記シリカ粒子の中心から表面まで分散していることがより好ましい。
前記蛍光色素化合物が表面近傍ないしは表面まで分散している点で、本発明のコロイドシリカ粒子は、コアシェル構造を有するコロイドシリカ粒子とは異なる特徴を有している。
本発明の蛍光色素化合物含有コロイドシリカ粒子は、ナノ蛍光材料として用いることができる。
本発明のナノ蛍光材料は、前記蛍光色素化合物含有コロイドシリカ粒子からなるので、輝度が高く、耐退色性を付与されている。
本発明のナノ蛍光材料は、標的生体分子を蛍光標識付けする蛍光標識ナノビーズ、化粧品用材料等として用いられる。
また、本発明において、複数種の前記蛍光色素化合物含有コロイドシリカ粒子を、蛍光標識ナノビーズとして一緒に用いたナノ蛍光材料とすることもできる。
前記「吸着」とは、ファンデルワールス力または疎水性相互作用による一体化をいう。
前記標的生体分子もしくは標的生理活性物質としては、抗原、抗体、DNA、RNA、糖、糖鎖、リガンド、受容体、ペプチド、化学物質等が挙げられる。
本明細書及び特許請求の範囲において、リガンドとはタンパク質と特異的に結合する物質をいい、例えば、酵素に結合する基質、補酵素、調節因子、あるいはホルモン、神経伝達物質などをいい、低分子量の分子やイオンばかりでなく、高分子量の物質も含む。
また化学物質とは天然有機化合物に限らず、人工的に合成された生理活性を有する化合物や環境ホルモン等を含む。
【0017】
次に、本発明に用いる蛍光色素化合物について説明する。
上述のように、本発明に用いる蛍光色素化合物は、広義の蛍光色素化合物であり、燐光色素化合物をも包含するものである。
本発明に用いる蛍光色素化合物は、蛍光以外の標識、例えば、磁性標識、放射線標識、pH感受性色素標識も併せ有していてよい。
また、本発明の蛍光色素化合物含有コロイドシリカ粒子には、蛍光色素化合物以外の標識化合物を蛍光色素化合物と共に含有させてよい。
蛍光色素化合物と共に含有させえる前記標識化合物としては、磁性化合物、放射線標識化合物、pH感受性色素化合物等が挙げられる。
このように、蛍光以外の標識をも有する蛍光色素化合物を本発明の蛍光色素化合物含有コロイドシリカ粒子に用いたり、本発明の蛍光色素化合物含有コロイドシリカ粒子に蛍光色素化合物と共に他の標識化合物を含有させることにより、本発明の蛍光色素化合物含有コロイドシリカ粒子により標識付けされた標的生体分子を、蛍光と前記その他の標識による二重以上の検出ないしは定量が可能である。これにより標的生体分子の分離・精製能や定量精度を高めることができる。
前記蛍光色素化合物は特に制限はないが、DNAチップに用いる場合には、汎用の検出器、いわゆるチップリーダー(例えば、アジレント社製DNAマイクロアレイスキャナ、パーキンエレマー・ジャパン社製ScanArrayシリーズ)による検出およびデータの互換性の観点から、下記一般式(1)で表されるCy3又はCy5(いずれも商品名、アマシャム・バイオサイエンス社製)と同等の励起波長および発光波長を有する蛍光色素化合物が好ましい。
【0018】
【化3】

【0019】
ただし、式中Xは同一または別異にCRを表し、Yは同一または別異に水素原子、炭化水素基、またはヘテロ原子を有する官能基から選択され、RまたはRはいずれか一方が前記シリカ成分と共有結合する基ないしは該基を有する炭素原子数1〜10の炭化水素基を、他方が官能基を有してもよい炭素原子数1〜10の炭化水素基を表し、RおよびRは水素原子または炭化水素基であり、少なくとも一方は炭化水素基であり、nは1または2である。
具体的には、式中X(CR)は、CH(CH)、C(CH、C(CH)(C)などが挙げられる。またYは水素原子、メチル、エチル、プロピル、ブチル基等のアルキル基、アリール基、ヒドロキシル基、チオール基、アミノ基、シアノ基、ニトロ基、スルホン基、カルボキシル基、アルキルカルボニル基等が挙げられる。さらにR又はRで表される前記シリカ成分と共有結合する基としては、NHS(N−ヒドロキシスクシンイミド)エステル基等の活性エステル基、マレイミド基、イソチオシアナート基、イソシアナート基、シアノ基、アルデヒド基等が挙げられ、アミノ基、チオール基等を有するシリカ成分とアミド結合、チオエステル結合、ウレア結合、チオウレア結合等を形成して共有結合することができる。さらに、R又はRで表される前記官能基を有してもよい炭化水素基としては、エチル基、ベンジル基等が挙げられる。
前記Cy3又はCy5は、それぞれ、下記式で表されることが好ましい。
【0020】
【化4】

【0021】
式中、R、R、R、Rは、それぞれ、前記シリカ成分と共有結合する基であり、NHSエステル基等の活性エステル基、マレイミド基、イソチオシアナート基、イソシアナート基、シアノ基、アルデヒド基等が挙げられる。
Cy3と同等の励起波長および発光波長を有する蛍光色素化合物としては、励起波長のピークが548nm〜556nmであり、かつ発光波長のピークが563nm〜584nmである色素化合物が挙げられ、本発明の蛍光色素化合物含有シリカ粒子が、発する蛍光色は黄色(540〜590nm)、オレンジ(590〜620nm)等となる。具体的には、下記式で、それぞれ、表される、DY550、DY555(いずれも商品名、Dyomics GmbH社製)、5−TAMRA、BODIPY−TMR−X、Alexa Fluor546、Alexa Fluor555(いずれも商品名、Invitrogen社製)等が挙げられ、好ましくはDY550である。
【0022】
【化5】

【0023】
式中、R11、R12、R13は、それぞれ、前記シリカ成分と共有結合する基であり、NHSエステル基等の活性エステル基、マレイミド基、イソチオシアナート基、イソシアナート基、シアノ基、アルデヒド基等が挙げられる。
Cy5と同等の励起波長および発光波長を有する蛍光色素化合物としては、励起波長のピークが636nm〜654nmであり、かつ発光波長のピークが657nm〜679nmである色素化合物が挙げられ、本発明の蛍光色素化合物含有シリカ粒子が発する蛍光色は赤色(620〜740nm)等となる。具体的には、下記式でそれぞれ表される、DY630、DY631、DY633、DY635、DY636、DY650、DY651(いずれも商品名、Dyomics GmbH社製)、BODIPY 630/650、Alexa Fluor633、Alexa Fluor647(いずれも商品名、Invitrogen社製)、Oyster643、Oyster656(いずれも商品名、Denovo Biolabels社製)等が挙げられる。
【0024】
【化6】

【0025】
【化7】

【0026】
式中、R21、R22、R23、R24、R25、R26、R27は、それぞれ、前記シリカ成分と共有結合する基であり、NHSエステル基等の活性エステル基、マレイミド基、イソチオシアナート基、イソシアナート基、シアノ基、アルデヒド基等が挙げられる。
前記磁性化合物、放射線標識化合物、pH感受性色素化合物の具体例としては、メチルビオロゲン、キシレノールオレンジ、4−アミノ−(2,3,6,6−テトラメチル−1−ピペリジニルオキシ)、4−マレイミド−(2,3,6,6−テトラメチル−1−ピペリジニルオキシ)、キシレンシアノール、ブロモフェノールブルー等が挙げられる。
【0027】
次に、本発明の蛍光色素化合物含有コロイドシリカ粒子の調製について説明する。
本発明の蛍光色素化合物含有コロイドシリカ粒子は、前記蛍光色素化合物とシラン化合物とを反応させ、共有結合、イオン結合その他の化学的に結合もしくは吸着させて得られた生成物に1又は2種以上のシラン化合物を重合させることにより調製することができる。
本発明の蛍光色素化合物含有コロイドシリカ粒子の調製法として、N−ヒドロキシスクシンイミド(NHS)エステル基、マレイミド基、イソシアナート基、イソチオシアナート基、アルデヒド基、パラニトロフェニル基、ジエトキシメチル基、エポキシ基、シアノ基等の活性基を有する前記蛍光色素化合物と、それら活性基と対応して反応する置換基(例えば、アミノ基、水酸基、チオール基)を有するシランカップリング剤とを反応させ、共有結合させて得られた生成物に1又は2種以上のシラン化合物を重合させることにより調製するのが好ましい。
【0028】
本発明者らは、蛍光色素化合物含有コロイドシリカ粒子の調製方法について特許出願している(例えば、特願2004−356608)。その方法に準じて行なうのがさらに好ましい。具体的には、前記蛍光色素化合物含有コロイドシリカ粒子は、下記(a)及び(b)の工程を行なうことにより調製することができる。
(a)N−ヒドロキシスクシンイミド(NHS)エステル等の活性エステル基を有する蛍光色素化合物(1)とアミノ基を有するシランカップリング剤(2)とを反応させて、色素シランカップリング剤複合化合物(3)を生成する工程、及び
(b)前記(a)で得られた色素シランカップリング剤複合化合物(3)を、シリカ化合物(4)と塩基性条件下で重合させて蛍光色素化合物含有コロイドシリカ粒子(5)を形成する工程。
【0029】
本発明者らは、カルボン酸化合物とN−ヒドロキシスクシンイミドとをエステル化反応する工程について特許出願している(例えば、特願2004−356608)。
前記工程(a)で用いるNHSエステル基を有する蛍光色素化合物(1)は、そのエステル化反応工程に準じて行うことで調製できる。但し、商業的に市販のものを入手することも可能である。
【0030】
前記NHSエステル基を有する蛍光色素化合物(1)として具体的には、DY550−NHSエステル、DY555−NHSエステル、DY630−NHSエステル、DY635−NHSエステル(いずれも商品名、Dyomics GmbH社製)、5−TAMRA−NHSエステル、Alexa Fluor546−NHSエステル、Alexa Fluor555−NHSエステル、Alexa Fluor633−NHSエステル、Alexa Fluor647−NHSエステル(いずれも商品名、Invitrogen社製)、Oyster643−NHSエステル、Oyster656−NHSエステル(いずれも商品名、Denovo Biolabels社製)等を挙げることができる。中でも、下記式でそれぞれ表されるDY550−NHSエステル又はDY630−NHSエステルが好ましい。
【0031】
【化8】

【0032】
【化9】

【0033】
前記アミノ基を有するシランカップリング剤(2)としては、特に制限されないが、例えば、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン(APS)、3−[2−(2−アミノエチルアミノ)エチルアミノ]プロピル-トリエトキシシラン、N−2(アミノエチル)3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシランを挙げることができる。中でも、APSが好ましい。
【0034】
前記NHSエステル基を有する蛍光色素化合物(1)と前記アミノ基を有するシランカップリング剤(2)との反応は、DMSO(ジメチルスルホキシド)やDMF(N,N−ジメチルホルムアミド)等の溶媒に溶解した後、室温(例えば、25℃)条件下で攪拌しながら反応することによって行うことができる。
反応に用いる前記NHSエステル基を有する蛍光色素化合物(1)とシランカップリング剤(2)との割合は特に制限されないが、前記NHSエステル基を有する蛍光色素化合物(1):前記アミノ基を有するシランカップリング剤(2)=1:0.5〜2(モル比)の割合が好ましく、1:0.8〜1.2(モル比)の割合がより好ましい。
【0035】
斯くして、蛍光色素化合物(1)のカルボニル基と、アミノ基を有するシランカップリング剤(2)のアミノ基とが、アミド結合(−NHCO−)して、色素シランカップリング剤複合化合物(3)が得られる。すなわち、前記色素シランカップリング剤複合化合物(3)は、アミド結合を介して蛍光色素化合物とシリカ成分が結合している。
【0036】
次いで工程(b)で、前記色素シランカップリング剤複合化合物(3)をシリカ化合物(4)と反応させる。前記シリカ化合物(4)としては、特に制限はされないが、テトラエトキシシラン(TEOS)、γ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン(MPS)、γ-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン(APS)、3−チオシアナトプロピルトリエトキシシラン、3−グリシジルオキシプロピルトリエトキシシラン、3−イソシアナトプロピルトリエトキシシラン、及び3−[2−(2−アミノエチルアミノ)エチルアミノ]プロピル−トリエトキシシランを挙げることができる。中でも、TEOS、MPS又はAPSが好ましい。
【0037】
色素シランカップリング剤複合化合物(3)とシリカ化合物(4)の割合は、特に制限はないが、色素シランカップリング剤複合化合物(3)1モルに対するシリカ化合物(4)のモル比として、50〜40000が好ましく、100〜2000がより好ましく、150〜1000がさらに好ましい。
【0038】
この反応は、アルコール、水及びアンモニアの存在下で行うのが好ましい。ここでアルコールとしてはメタノール、エタノール、プロパノール等の炭素数1〜3の低級アルコールを挙げることができる。
【0039】
かかる反応系における水とアルコールの割合は、特に制限されないが、好ましくは水1容量部に対してアルコールを0.5〜20容量部、より好ましくは2〜16容量部、さらに好ましくは4〜10容量部の範囲である。アンモニアの量も特に制限されないが、アンモニアの濃度が30〜1000mMが好ましく、60〜500mMがより好ましく、80〜200mMがさらに好ましい。
【0040】
この反応は室温で行うことができ、また攪拌しながら行うことが好ましい。通常、数十分〜数十時間の反応で、本発明の蛍光色素化合物含有コロイドシリカ粒子(5)を調製することができる。
本発明の蛍光色素化合物含有コロイドシリカ粒子に蛍光色素化合物と共に他の標識化合物(例えば、磁性化合物)を含有させる場合についても上記と同様な製造方法により調製できる。
【0041】
なお、前記工程(b)において、使用するシリカ化合物(4)の濃度を調整したり、反応時間を調整することにより、調製するシリカ粒子の大きさ(直径)を適宜調節することができる。使用するシリカ化合物(4)の濃度を低くしたり、また反応時間を短くすることにより、より小さなシリカ粒子を調製することができる(例えば、Blaaderenet al.,“Synthesis and Characterization of Monodisperse Colloidal Organo−silica Spheres”,J. Colloid and Interface Science 156,1−18.1993参照)。一方、工程(b)を複数回、繰り返し行えば、より大きなシリカ粒子を調製することができる。このように、得られる蛍光色素化合物含有シリカ粒子の粒径(直径)を、所望の大きさに、例えばnmオーダーからμmオーダーへと自在に調整することができる。具体的には、3〜30nmといった微小な大きさを有する蛍光色素化合物含有シリカ粒子を調製することが可能である。また必要に応じて、その後の処理により希望する粒子径分布となるように調整することもでき、斯くして所望の粒子径分布範囲にあるシリカ粒子を得ることができる。
このようにして得られる蛍光色素化合物含有コロイドシリカ粒子群は、必要に応じて、限外ろ過膜などの常法を利用して共存イオンや共存する不要物を除いて精製してもよい。
上述のように調製すると、球状、もしくは、球状に近いシリカ粒子群が製造できる。球状に近い微粒子とは、具体的には長軸と短軸の比が2以下の形状である。
【0042】
本発明の蛍光色素化合物含有コロイドシリカ粒子の平均粒径は、3nm〜30nmであることが好ましく、より好ましくは3nm〜20nm、さらに好ましくは3nm〜10nmである。
前記コロイドシリカ粒子としては、3nm以下の平均粒径であってもバイオチップ用標識粒子として利用できるが、3nm以下の場合には収率が非常に低いため製造にコストがかかることから、3nm以上が好ましい。
また、平均粒径が30nm以上の粒子はバイオチップ上の生体物質(標的生体分子等)と結合させるときに立体障害が大きいため、バイオチップ上の結合すべき生体物質すべてと結合が出来ず、測定の定量性が低くなる。
同一量の生体分子が固定されたバイオチップ上のスポットを蛍光色素化合物含有コロイドシリカ粒子で蛍光標識し、スポットの蛍光強度を測定する実験を4回繰り返したときのCV値の比を表1に示す。表1から明らかなように、定量性の高い測定のためには蛍光色素化合物含有コロイドシリカ粒子の平均粒径が3nm〜30nmであることが好ましく、より好ましくは3nm〜20nm、さらに好ましくは3nm〜10nmである。
【0043】
【表1】

【0044】
所望の平均粒径のシリカ粒子を得るためには、YM−10、YM−100(いずれも商品名、ミリポア社製)等の限外ろ過膜を用いて限外ろ過を行い、粒径が大きい粒子を除去することで可能である。
本発明において、前記平均粒径は、透過型電子顕微鏡(TEM)、走査型電子顕微鏡(SEM)等の画像から無作為に選択した50個のシリカ粒子の合計の投影面積からシリカ粒子の占有面積を画像処理装置によって求め、この合計の占有面積を、選択したシリカ粒子の個数(50個)で割った値に相当する円の直径の平均値(平均円相当直径)を求めたものである。
粒度分布の変動係数いわゆるCV値は特に制限はないが、10%以下が好ましく、8%以下がより好ましい。
本明細書及び特許請求の範囲において、単分散とはCV値15%以下の粒子群をいう。
【0045】
蛍光色素化合物をシリカ粒子内に固定し、包含させると、前記蛍光色素化合物がシリカ粒子内に分散して存在しているので、遊離の蛍光色素化合物よりも感度を上げることができる。すなわち、遊離の蛍光色素化合物よりも輝度を増加させることができる。
また、本発明の蛍光色素化合物含有コロイドシリカ粒子は、自己消光を起こすことなく、多くの蛍光色素化合物をシリカ粒子内に固定し、包含させることができる(例えば、特願2004−356608)。このため、微小な領域でも使用可能な、高感度な標識が可能である。
【0046】
次に、前記コロイドシリカ粒子の表面修飾について説明する。
シリカは、一般に、化学的に不活性であると共に、その修飾が容易であることが知られている。本発明の蛍光色素化合物含有コロイドシリカ粒子もまた、容易に所望の分子を表面に結合させることが可能であり、またその表面をメソポーラスや平滑状にすることもできる。
【0047】
本発明の蛍光色素化合物含有シリカ粒子の表面修飾について、具体的には、上記工程(b)で用いるシリカ化合物(4)の種類に応じて、所望の分子と結合可能なアクセプター基を表面に有する蛍光色素化合物含有コロイドシリカ粒子とすることができる。前記アクセプター基として、アミノ基、水酸基、チオール基、カルボキシル基、マレイミド基、スクシンイミジルエステル基等が挙げられる。
反応に用いるシリカ化合物(4)と、それによって得られる蛍光色素化合物含有コロイドシリカ粒子の表面に形成されたアクセプター基との関係を表2に示す。
【0048】
【表2】

【0049】
なお、上記得られる蛍光色素化合物含有コロイドシリカ粒子(5)について、反応に使用したシリカ化合物(4)によって表面に導入されるアクセプター基とは異なるアクセプター基を導入したい場合には、前記蛍光色素化合物含有コロイドシリカ粒子(5)を、さらに工程(b)で使用したシリカ化合物(4)とは異なるシリカ化合物で処理することにより達成できる。この処理は、工程(b)で使用したシリカ化合物(4)とは異なるシリカ化合物を用いて、上記工程(b)と同様な操作を行うことにより実施することができる。
【0050】
本発明の蛍光色素化合物含有コロイドシリカ粒子は、表面に有するアクセプター基の種類に応じて所望の分子〔例えば、抗原、抗体、DNA、RNA、糖、糖鎖、リガンド、受容体、ペプチド、化学物質等〕を表面に結合もしくは吸着させ、修飾させることができる。
本発明の蛍光色素化合物含有コロイドシリカ粒子群の表面を所望の生体分子等で修飾させる方法として特に制限はないが、下記(i)〜(iii)の例が挙げられる。
(i)MPS等を用いて調製したチオール基を表面に有する蛍光色素化合物含有コロイドシリカ粒子は、ジスルフィド結合、チオエステル結合、またはチオール置換反応を介した結合を介して、その表面を生体分子等で修飾することができる。
(ii)特に前記生体分子等がアミノ基を有する場合には、蛍光色素化合物含有コロイドシリカ粒子が有するチオール基と、前記生体分子等が有するアミノ基とをスクシンイミジル−トランス−4−(N−マレイミジルメチル)シクロヘキサン−1−カルボキシレート(SMCC)、N−(6−マレイミドカプロイルオキシ)スクシンイミド(EMCS)等の架橋剤を用いて結合することもできる。
(iii)APS等を用いて調製したアミノ基を表面に有する蛍光色素化合物含有コロイドシリカ粒子は、前述と同様に、このアミノ基と生体分子等が有するチオール基とをSMCC、EMCS等の架橋剤を用いて結合することができる。また、このアミノ基と生体分子等が有するアミノ基とをグルタルアルデヒド等の架橋剤で結合することもできる。さらに、アミド結合やチオウレア結合を介して、その表面を生体分子等で修飾することもできる。
【0051】
本発明において、前記蛍光色素化合物含有コロイドシリカ粒子は、標的生体分子で直接修飾してもよいが、前記蛍光色素化合物含有コロイドシリカ粒子を修飾した所望の分子〔例えば、抗体、DNA、RNA、糖鎖、受容体、ペプチド等〕が、更にそれ自体がアクセプター分子となって、例えば抗原−抗体反応、ビオチン−アビジン反応、塩基配列の相補性を利用したハイブリダイゼーションなどの特異的な分子認識反応を利用して、標的生体分子に特異的に結合させることが好ましい。
または、前記蛍光色素化合物含有コロイドシリカ粒子は、標的生体分子の検出もしくは定量法についての項で後述するように、前記標的生体分子が第1の分子認識物質によって修飾されている場合、第1の分子認識物質を分子認識する第2の物質によって表面修飾されていてもよい。
ここで、分子認識反応とは、(1)DNA分子間又はDNA−RNA分子間のハイブリダイゼーション、(2)抗原抗体反応、(3)酵素(受容体)−基質(リガンド)間の反応など、生体分子間の特異的相互作用に由来する反応をいう。
【0052】
次に、複数種の、蛍光色素化合物含有コロイドシリカ粒子のセットについて説明する。
本発明において、異種の複数個の、前記蛍光色素化合物含有コロイドシリカ粒子を、1つのセットとして、後述のバイオチップに用いれば、2種以上の標的生体分子を同時に検出もしくは定量できる。
前記複数種の、前記蛍光色素化合物含有コロイドシリカ粒子のセットは、異なる蛍光色素化合物を含有した、2種以上の前記蛍光色素化合物含有コロイドシリカ粒子を、別個の表面修飾物質で表面修飾してなる、複数種の、前記蛍光色素化合物含有コロイドシリカ粒子からなる。
ここで、前記表面修飾物質は、前記標的生体分子に特異的に結合もしくは吸着する物質であってよいし、前記標的生体分子が第1の分子認識物質によって修飾されている場合、第1の分子認識物質を分子認識する第2の物質であってよい。
前記複数種の、前記蛍光色素化合物含有コロイドシリカ粒子のセットの具体例としては、
標的DNAを認識するDNAで表面修飾された黄色蛍光化合物(例えば、DY550)含有シリカ粒子と、
標的タンパクを認識するリガンドで表面修飾された赤色蛍光化合物(例えば、DY630)含有シリカ粒子とからなるセット等が挙げられ、
上記セットを後述のバイオチップに用いれば、標的DNA及び標的タンパクを同時に検出もしくは定量できる。
次に、本発明のバイオチップについて説明する。
前記蛍光色素化合物含有コロイドシリカ粒子は、前記蛍光に耐退色性を与え、かつ遊離の蛍光色素化合物に対し輝度が増加しているので、高感度分析を要する各種バイオチップに好ましく用いることができる。
本発明のバイオチップは、前記蛍光色素化合物含有コロイドシリカ粒子を、遊離の前記蛍光色素化合物に対して、輝度を増加させ、かつ前記蛍光に耐退色性を与えた蛍光標識ナノビーズとして用いてなる。
【0053】
本発明のバイオチップとしては、前述のようにDNAチップ、プロテインチップ等が挙げられる。
DNAチップは、一般に、ゲノムDNA等の核酸(DNA、RNA)を基板(シリカ基板等)表面にアレイ状に配置・固定したものであり、その情報は基板表面について高感度分析を行なうことにより処理されるものである(例えば、特開2004−004065公報、特開2003−334079公報、特開2001−021558公報参照。)。これによれば、PCRによる増幅等の煩雑な操作を経ずに、検体(例えば、細胞抽出液、溶菌液)中の標的核酸(DNA、RNA)を直接検出・定量できる。
プロテインチップは、一般に、標的タンパク質等(例えば、抗原、抗体、リガンド、受容体、糖、糖鎖、化学物質)を特異的に分子認識する生体分子(例えば、抗原、抗体、リガンド、受容体、核酸)を基板(シリカ基板等)表面にアレイ状に配置・固定したものであり、前記DNAチップと同様にその情報は基板表面について高感度分析を行なうことにより処理されるものである(例えば、特開2005−287463公報、特開2003−130877公報参照。)。
前記プロテインチップは、検体(例えば、血清、尿、培養液)中の標的タンパク質の発現・相互作用・翻訳後修飾等の機能解析、タンパク質精製のモニタリング等に使用することができる。
なお、本発明のバイオチップに用いる基板としては、IntelliGene(登録商標)TestARRAY Ver.4.0(商品名、タカラバイオ社製)、GeneChip(登録商標)Arrays(商品名、アフィメトリクス社製)、FAST(登録商標)Quant Human Th1/Th2 Kit(商品名、タカラバイオ社製)等商業的に入手できる市販のバイオチップ基板を用いてもよい。
【0054】
次に、標的生体分子(標的生理活性物質を含む。)の検出もしくは定量法について説明する。
本発明の標的生体分子の検出もしくは定量法は、前記蛍光色素化合物含有コロイドシリカ粒子を、遊離の前記蛍光色素化合物に対して、輝度を増加させ、かつ前記蛍光に耐退色性を与えた蛍光標識ナノビーズとして用いることができる。特に、前記バイオチップを使用するのが好ましい。
本発明の検出もしくは定量法において、標的生体分子は、前述と同様に抗原、抗体、DNA、RNA、糖、糖鎖、リガンド、受容体、ペプチド、化学物質等が挙げられ、標的生体分子がDNA、RNAの場合、前記DNAチップを用いるのが好ましい。標的生体分子が、リガンド、受容体等のタンパク質、ペプチド、糖、糖鎖、化学物質等の場合、前記プロテインチップを用いるのが好ましい。
【0055】
本発明の検出もしくは定量法は、検体(例えば、任意の細胞抽出液、溶菌液、培養液、溶液、バッファー)中の前記標的生体分子が第1の分子認識物質によって修飾されている場合、
基板上に固定した標的生体分子認識分子と、前記標的生体分子とを分子認識させる工程、
第1の分子認識物質を分子認識する第2の物質によって表面修飾された前記蛍光色素化合物含有シリカ粒子群を、基板上に固定した前記標的生体分子認識分子と分子認識した後の前記標的生体分子と分子認識させる工程、及び
基板上の前記シリカ粒子の蛍光を検出もしくは定量する工程を含んでなる。
前記第1の分子認識物質によって修飾されている前記標的生体分子の具体例としては、ビオチンもしくはアビジンで修飾されたDNAもしくはRNA、ビオチンもしくはアビジンで修飾されたDNAもしくはRNA、ビオチンもしくはアビジンで修飾されたマウスIgG、マルトース結合タンパクで修飾されたマウスIgM等が挙げられる。
上記のような、前記標的生体分子を前記第1の分子認識物質を用いて修飾する方法は、特開平9−154599、特表2003−522158等に記載の方法により行なうことができる。
【0056】
特に、本発明の検出もしくは定量法において、前記第1の分子認識物質及び前記第2の物質の組み合わせが、下記(a)〜(i)からなる群より選ばれるいずれか1つであることが好ましい。
(a)前記第1の分子認識物質が抗原であり、かつ前記第2の物質が抗体である、
(b)前記第1の分子認識物質が抗体であり、かつ前記第2の物質が抗原である、
(c)前記第1の分子認識物質がビオチンであり、かつ前記第2の物質がアビジンもしくはストレプトアビジンである、
(d)前記第1の分子認識物質がアビジンもしくはストレプトアビジンであり、かつ前記第2の物質がビオチンである、
(e)前記第1の分子認識物質が糖もしくは糖鎖であり、かつ前記第2の物質がそれに特異的に結合する糖結合タンパク質である、
(f)前記第1の分子認識反応物質が糖結合タンパク質であり、かつ前記第2の物質がそれに特異的に結合する糖もしくは糖鎖である、
(g)前記第1の分子認識物質がリガンドであり、かつ前記第2の物質がそれらに特異的に結合する受容体である、
(h)前記第1の分子認識物質が受容体であり、かつ前記第2の物質がそれに特異的に結合するリガンドである、及び
(i)前記第1の分子認識物質が化学物質であり、かつ前記第2の物質がそれに特異的に結合する抗体もしくはペプチドである。
【0057】
本発明において、前記蛍光色素化合物含有コロイドシリカ粒子が、前記標的生体分子に特異的に結合もしくは吸着する物質(以下、単に「第2の標的生体分子認識分子」という。)で表面修飾されている場合、
基板上に固定した第1の標的生体分子認識分子と、前記検体中の前記標的生体分子とを分子認識させる工程、
第2の標的生体分子認識分子によって表面修飾された前記蛍光色素化合物含有コロイドシリカ粒子群を、基板上に固定した前記第1の標的生体分子認識分子と分子認識した後の前記標的生体分子と分子認識させる工程、及び
基板上の前記シリカ粒子の蛍光を検出もしくは定量する工程を含んでなる。
特に、本発明の検出もしくは定量法は、蛍光標識用抗体として、標的生体分子の抗体認識部位を認識する抗体によって表面修飾された前記蛍光色素化合物含有コロイドシリカ粒子を用いる二抗体サンドイッチ式検出もしくは定量方法とすることもできる。
例えば、基板固定用抗体として抗ヒトγ−インターフェロン抗体、蛍光標識用抗体として基板固定用抗体とは別のエピトープと結合する抗ヒトγ−インターフェロン抗体で表面修飾された蛍光色素化合物含有コロイドシリカ粒子群を用いて、標的のヒトγ−インターフェロンを二抗体サンドイッチ式に検出もしくは定量する方法等が挙げられる。
【0058】
本発明の検出もしくは定量法において、検体中の標的生体分子を前記蛍光色素化合物含有コロイドシリカ粒子で直接標識する場合、
基板上に固定した標的生体分子認識分子、前記シリカ粒子で標識した標的生体分子とを分子認識させる工程、及び
基板上の前記シリカ粒子の蛍光を検出もしくは定量する工程を含んでなる。
特に、直接標識する標的生体分子がDNA又はRNAである場合、前述のようにDNAチップを用いるのが好ましく、前記蛍光色素化合物含有コロイドシリカ粒子を用いて、検体中の標的DNA又は標的RNAを標識し、これを基板上に固定したDNA又はRNAとハイブリダイズした後、基板上の前記シリカ粒子の標識シグナルを検出もしくは定量することでDNA又はRNAを検出ないしは定量することができる。
標的DNA又はRNAが微量である場合、従来法では、PCR法等で増幅した後、蛍光標識しなければ、DNAチップを用いて検出できなかった。
一方、前記蛍光色素化合物含有コロイドシリカ粒子は高輝度蛍光標識ナノビーズであるので、本発明の検出もしくは定量法によれば、標的DNA又はRNAが微量である場合にも、PCR法等で増幅することを要しない。
【0059】
本発明の蛍光色素化合物含有コロイドシリカ粒子は、高輝度かつ耐退色性に優れ、あらゆる生体分子もしくは生理活性物質を蛍光標識するのに用いることができる。
本発明の蛍光色素化合物含有コロイドシリカ粒子は、蛍光標識ナノビーズとしてバイオチップに使用でき、バイオチップアッセイのデータの再現性を飛躍的に向上させる効果を奏する。
本発明のナノ蛍光材料は、輝度が高く、耐退色性に優れるので、生体分子を蛍光標識付けする蛍光標識ナノビーズや化粧品用材料などとして用いることができる。
本発明のバイオチップは、前記蛍光色素化合物含有シリカ粒子を、蛍光標識ナノビーズとして使用しているので、高感度、かつ再現性に優れる。
本発明の生体分子の検出もしくは定量方法は、あらゆる生体分子ないしは生理活性物質を標的とすることができ、かつ測定データの再現性に優れる。
【実施例】
【0060】
以下、本発明を実施例に基づきさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
(実施例1)バイオチップ用蛍光色素化合物含有コロイドシリカ粒子の調製
まず、平均粒径30nm以下の複数個の蛍光色素化合物含有コロイドシリカ粒子の調製法について説明する。
<ストレプトアビジンで修飾したDY550含有蛍光コロイドシリカ粒子の調製>
DY550−NHSエステル(商品名、Dyomics GmbH社製)5.6mgを1mlのジメチルスルホキシド(DMSO)に溶解した。ここに1.3μlのAPSを加え、室温(25℃)で1時間反応を行った。
得られた反応液50μlにエタノール3.95ml、MPS20μl、蒸留水1ml、28質量%アンモニア水100μlを加え室温で24時間反応を行った。
反応液をYM−100(商品名、ミリポア社製)で限外ろ過した。フィルターを透過した蛍光シリカ粒子分散液を回収し、今度はYM−1(商品名、ミリポア社製)で限外ろ過を行い、全量の10分の1量になるまで蛍光シリカ粒子分散液を濃縮した。濃縮した液を蒸留水で希釈して再度YM−1で限外ろ過を行った。濃縮後蒸留水で希釈し限外ろ過を行う操作を4回繰り返して行い、蛍光シリカ粒子分散液に含まれる未反応のMPSやアンモニア等を除去し、平均粒径26nmの蛍光シリカ粒子6mgを得た。収率約40%。
図1に得られた蛍光シリカ粒子のTEM写真像を示す。図中、白く見える物が、得られた蛍光シリカ粒子である。図1のTEM写真を観察し、前記蛍光コロイドシリカ粒子が得られたことを確認した。前記平均粒径は、TEM観察において異なる5箇所を観察し、それぞれのTEM写真から無作為に50個ずつ選択したシリカ粒子の平均粒径として平均円相当直径を求め、さらに前記5箇所について得られた平均円相当直径を平均した値である。
常法により透析した後のチオール修飾した蛍光シリカ粒子分散液2mg/mL×1.5mLにストレプトアビジン-マレイミド0.5mg(シグマ社製)を加え室温で2時間反応を行った。反応後、未反応のストレプトアビジン-マレイミドを常法により透析して除去し、ストレプトアビジンで修飾したDY550含有蛍光コロイドシリカ微粒子3mgを得た。
【0061】
<ストレプトアビジンで修飾したDY630含有蛍光コロイドシリカ粒子の調製>
色素としてDY630−NHSエステル(商品名、Dyomics GmbH社製)を用いて同様の実験操作を行い、ストレプトアビジンで修飾した、平均粒径24nmのDY630含有シリカ粒子6mgを得た。収率約40%。前記平均粒径は、TEM観察において異なる5箇所を観察し、それぞれのTEM写真から無作為に50個ずつ選択したシリカ粒子の平均粒径として平均円相当直径を求め、さらに前記5箇所について得られた平均円相当直径を平均した値である。
【0062】
(実施例2)DNAチップアッセイ
次に、実施例1で調製した蛍光ナノシリカ粒子群を用いたDNAチップアッセイ方法について説明する。
<DNAチップの退色性比較試験>
(1)後述する5’末端がビオチンで修飾された30塩基からなるオリゴマーを標的生体分子として用い、ハイブリダイゼーション溶液(商品名、ナカライテスク社製)中でDNAチップとのハイブリダイゼーションを行った。
前記DNAチップとしては、pUC19のDNA断片が整列・固定化されているIntelliGene(登録商標)TestARRAY Ver.4.0(商品名、タカラバイオ社製)を用いた。
前記標的生体分子としては、IntelliGene TestARRAY Ver.4.0上に固定化された、pUC19のDNA断片と相補的な下記配列番号1で表される配列のDNAをDNA合成機を用いて調製し使用した。
5'(ビオチン)-agcgtcgatttttgtgatgctcgtcagggg-3'(配列番号1)
【0063】
(2)SSC(クエン酸緩衝液)で前記DNAチップを洗浄後、比較例としてストレプトアビジン修飾したDY550分子(Dyomics GmbH社製)を用いて、または、実施例1で調製したストレプトアビジン修飾DY550含有蛍光シリカ粒子を用いて、それぞれDNAチップの蛍光標識を行った。
ストレプトアビジン修飾したDY550分子による標識の場合は、ストレプトアビジン修飾DY550分子200μMを200μl使用し、
ストレプトアビジン修飾したDY550含有蛍光シリカ粒子による標識の場合は、ストレプトアビジン修飾DY550含有蛍光シリカ粒子500μg/mlを200μl使用し、反応は、それぞれリン酸緩衝食塩水(PBS)中、4℃で12時間行った。
(3)蛍光標識を行ったDNAチップをDNAマイクロアレイスキャナ(商品名、アジレント社製)で1〜5回測定を行い、蛍光強度の減衰(退色)を比較した。
結果を図2に示す。
図2から明らかなように、比較例としてDY550分子で標識した場合は5回の測定で蛍光強度が40%弱に減衰したのに対し、DY550含有蛍光コロイドシリカ粒子で標識した場合は90%程度までしか減衰しなかった。
したがって、本発明のDY550含有蛍光コロイドシリカ粒子による蛍光標識は耐退色性に優れるので、本発明のDY550含有蛍光コロイドシリカ粒子を用いたDNAチップは、再現性に優れる。
また、本発明の蛍光コロイドシリカ粒子が、バイオチップアッセイの蛍光標識ナノビーズとして使用できることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明の蛍光色素化合物含有コロイドシリカ粒子は、DNAチップ等の汎用検出器、いわゆるチップリーダーによる検出およびデータについて互換性があるCy3やCy5と同等の蛍光特性を示す蛍光色素化合物を新しい手法で導入してなる蛍光標識用ナノビーズとして用いることによって、DNAチップを始めとするバイオチップを用いたアッセイにおけるデータの再現性を飛躍的に向上させることができる。
本発明をその実施態様とともに説明したが、我々は特に指定しない限り我々の発明を説明のどの細部においても限定しようとするものではなく、添付の請求の範囲に示した発明の精神と範囲に反することなく幅広く解釈されるべきであると考える。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
検体中の標的生体分子が第1の分子認識物質によって修飾されている生体分子の検出もしくは定量方法であって、次の工程を含んでなることを特徴とする生体分子の検出もしくは定量方法、
基板上に固定した標的生体分子認識分子と、前記標的生体分子とを分子認識させる工程、
前記第1の分子認識物質を分子認識する第2の物質によって表面修飾された、蛍光色素化合物とシリカ成分とが化学的に結合もしくは吸着してなる蛍光色素化合物含有コロイドシリカ粒子であって、少なくとも1種の前記蛍光色素化合物が前記シリカ粒子全体に分散しており、その平均粒径が30nm以下である蛍光色素化合物含有コロイドシリカ粒子を、基板上に固定した前記標的生体分子認識分子と分子認識した後の前記標的生体分子と分子認識させる工程、及び
基板上の前記コロイドシリカ粒子の蛍光を検出もしくは定量する工程。
【請求項2】
前記第1の分子認識物質及び前記第2の物質の組み合わせが、下記(a)〜(i)からなる群より選ばれるいずれか1つであることを特徴とする請求項1に記載の生体分子の検出もしくは定量方法、
(a)前記第1の分子認識物質が抗原であり、かつ前記第2の物質が抗体である、
(b)前記第1の分子認識物質が抗体であり、かつ前記第2の物質が抗原である、
(c)前記第1の分子認識物質がビオチンであり、かつ前記第2の物質がアビジンもしくはストレプトアビジンである、
(d)前記第1の分子認識物質がアビジンもしくはストレプトアビジンであり、かつ前記第2の物質がビオチンである、
(e)前記第1の分子認識物質が糖もしくは糖鎖であり、かつ前記第2の物質がそれに特異的に結合する糖結合タンパク質である、
(f)前記第1の分子認識反応物質が糖結合タンパク質であり、かつ前記第2の物質がそれに特異的に結合する糖もしくは糖鎖である、
(g)前記第1の分子認識物質がリガンドであり、かつ前記第2の物質がそれらに特異的に結合する受容体である、
(h)前記第1の分子認識物質が受容体であり、かつ前記第2の物質がそれに特異的に結合するリガンドである、及び
(i)前記第1の分子認識物質が化学物質であり、かつ前記第2の物質がそれに特異的に結合する抗体もしくはペプチドである。
【請求項3】
蛍光標識用抗体として、標的生体分子の抗体認識部位を認識する抗体によって表面修飾された、蛍光色素化合物とシリカ成分とが化学的に結合もしくは吸着してなる蛍光色素化合物含有コロイドシリカ粒子であって、少なくとも1種の前記蛍光色素化合物が前記シリカ粒子全体に分散しており、その平均粒径が30nm以下である蛍光色素化合物含有コロイドシリカ粒子を用いる二抗体サンドイッチ式検出もしくは定量方法。
【請求項4】
検体中の標的生体分子を、標的生体分子の抗体認識部位を認識する抗体によって表面修飾された、蛍光色素化合物とシリカ成分とが化学的に結合もしくは吸着してなる蛍光色素化合物含有コロイドシリカ粒子であって、少なくとも1種の前記蛍光色素化合物が前記シリカ粒子全体に分散しており、その平均粒径が30nm以下である蛍光色素化合物含有コロイドシリカ粒子で標識する工程、
基板上に固定した標的生体分子認識分子と、前記コロイドシリカ粒子で標識した標的生体分子とを分子認識させる工程、及び
基板上の前記コロイドシリカ粒子の蛍光を検出もしくは定量する工程を含んでなることを特徴とする生体分子の検出もしくは定量方法。
【請求項5】
前記標的生体分子が、抗原、抗体、DNA、RNA、糖、糖鎖、リガンド、受容体、ペプチド又は化学物質であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の生体分子の検出もしくは定量方法。
【請求項6】
標的生体分子の抗体認識部位を認識する抗体によって表面修飾された、蛍光色素化合物とシリカ成分とが化学的に結合もしくは吸着してなる蛍光色素化合物含有コロイドシリカ粒子であって、少なくとも1種の前記蛍光色素化合物が前記シリカ粒子全体に分散しており、その平均粒径が30nm以下である蛍光色素化合物含有コロイドシリカ粒子を用いて、検体中の標的DNA又は標的RNAを標識し、これを基板上に固定したDNA又はRNAとハイブリダイズした後、基板上の前記コロイドシリカ粒子の蛍光標識シグナルを検出もしくは定量することを特徴とするDNA又はRNAの検出ないしは定量方法。
【請求項7】
2種以上の標的生体分子を同時に検出もしくは定量することを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の生体分子の検出もしくは定量方法。

【図2】
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【図1】
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【公開番号】特開2010−112957(P2010−112957A)
【公開日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−284588(P2009−284588)
【出願日】平成21年12月15日(2009.12.15)
【分割の表示】特願2007−520609(P2007−520609)の分割
【原出願日】平成18年12月21日(2006.12.21)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【出願人】(304020292)国立大学法人徳島大学 (307)
【Fターム(参考)】