説明

蛍光プローブ

本発明は、生化学的プロセスによって活性化される消光蛍光プローブに関する。かかるプローブは、不活性化プローブ中では分子内消光が起こるが、定義された条件下では消光剤部分がプローブから開裂されてプローブを蛍光性にするように設計されている。また、かかるプローブを含んでなる、インビボイメージングのために適した光学イメージング剤、並びに医薬組成物及びキット、並びにインビボイメージング方法も開示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生化学的プロセスによって活性化される消光蛍光プローブに関する。かかるプローブは、不活性化プローブ中では分子内消光が起こるが、定義された条件下では消光剤部分がプローブから開裂されてプローブを蛍光性にするように設計されている。また、かかるプローブを含んでなる、インビボイメージングのために適した光学イメージング剤、並びに医薬組成物及びキット、並びにインビボイメージング方法も開示される。
【背景技術】
【0002】
米国特許第6083485号及びその対応特許は、2.0以下のオクタノール−水分配係数を有するシアニン色素を用いるインビボ近赤外(NIR)光学イメージング方法が開示されている。また、前記色素と、特定の細胞集団に結合し、或いはレセプターと選択的に結合し、或いは組織又は腫瘍中に集積する30kDaまでの分子量の「生物学的検出単位」とのコンジュゲートも開示されている。米国特許第6083485号の色素は、ポリリシン、デキストラン、ポリエチレングリコール、メトキシポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール、デキストラン、カルボキシデキストラン又は(100Daから100kDa以上までの分子量の)カスケードポリマー様構造のような巨大分子にコンジュゲートすることもできる。特定の色素コンジュゲートは開示されていない。
【0003】
米国特許第6083486号(General Hospital Corporation)には、インビボでの標的組織との相互作用(即ち、活性化)後にのみ実質的な蛍光を発生するNIR蛍光プローブが開示されている。かかるプローブは分子内消光型であり、ポリマー主鎖及び主鎖に共有結合した複数のNIR蛍光色素を含んでいる。蛍光色素同士は、これらをエネルギー移動によって相互作用させ、かくして互いの蛍光を消光させる相対位置に維持される。かかるプローブは、(i)蛍光色素は生分解可能でない結合によって主鎖に結合されるが、主鎖が活性化部位を含むか、或いは(ii)蛍光色素が活性化部位を含む結合によって主鎖に結合されるように設計される。米国特許第6083486号の「蛍光活性化部位」は、標的組織中に存在する酵素によって開裂し得る(即ち、特異的な酵素開裂を受ける)プローブ中の共有結合である。ポリマー主鎖は、好ましくはポリリシンのようなポリペプチドである。オプション(ii)が好ましいと述べられており、酵素開裂(活性化)によって蛍光色素分子は蛍光消光位置に保たれた状態から自由になる。このように、酵素開裂は蛍光色素をプローブから解放し、したがって蛍光消光配置が取り除かれるように設計され、その結果としてインビボでの酵素活性化部位において選択的に蛍光が認められる。
【0004】
国際公開第2004/028449号には、蛍光色素の消光剤として有用な非蛍光性ビスアズレン二量体が開示されている。また、ビスアズレン消光剤及びスペーサーに結合されたNIR蛍光色素を含む蛍光プローブであって、消光剤及び蛍光色素が標的特異性の活性化部位によって隔てられている蛍光プローブも記載されている。その場合、活性化部位での代謝及び結合開裂は標的組織中における蛍光色素−消光剤相互作用の破壊を引き起こし、その結果として遊離された蛍光色素からの蛍光が発生する(国際公開第2004/028449号の図3)。
【0005】
国際公開第2007/109364号には、消光蛍光色素コンジュゲート並びに癌をはじめとする不要の細胞増殖によって特徴づけられる疾患の検出及び治療におけるその使用方法が開示されている。蛍光色素コンジュゲートはデンドリマー及び2以上の蛍光色素を含み、各蛍光色素はプロテアーゼ開裂部位を介してデンドリマーの消光位置に共有結合されている。デンドリマーは、未改質コンジュゲートにおける消光を確実にするために必要な幾何学的形状をコンジュゲート化蛍光色素に付与するために役立つ。米国特許第6083486号と同じく、代謝可能な基は主鎖中にあってもよいし、或いは蛍光色素をデンドリマー主鎖にコンジュゲートする結合中にあってもよい。
【0006】
米国特許出願公開第2007/0036725号には、活性プロテアーゼを標識するための活性ベースのプロテアーゼであって、次の式を有するプローブが開示されている。
【0007】
【化1】

式中、
(a)Peptideは単一アミノ酸、ジペプチド、トリペプチド又はテトラペプチドであり、さらにキャッピング基を含み、
(b)Quは消光剤又はキャッピング基であり、キャッピング基は脂肪族エステル、芳香族エステル及び複素環式エステルからなる群から選択され、
(c)Fluは蛍光色素であるが、蛍光色素/消光剤ペアは消光剤がペプチド上にありかつ蛍光色素が「Q」の位置にあるように逆転してもよく、
(d)蛍光色素及び消光剤は低級アルキル、アリール又はアリール−低級アルキル連結基を介して結合される。
【0008】
国際公開第2007/008080号には、標的結合リガンド(V)、酵素開裂可能な基(E)、蛍光色素(D)及び消光剤(Q)が1つの分子中で互いにコンジュゲートされてなる二重標的化光学イメージング造影剤が記載されている。かかる造影剤は、好ましくは、互いにコンジュゲートされた構成単位(i)E−Q及び(ii)V−Dを含んでいる。最も好ましいかかる造影剤は、式Q−L1−E−L2−V−L3−D(式中、L1、L2及びL3は独立にリンカー基である。)を有するものである。
【0009】
米国特許第7329505号には、ペプチド主鎖に蛍光色素及び(消光剤としての)トリプトファンをコンジュゲートしてなる短いペプチド配列が開示されている。プローブの活性化は、エキソペプチダーゼ酵素によるペプチド主鎖の分解を通じて行われる。そのプロセスは個別のペプチドフラグメントを遊離させるが、その中で蛍光色素及びトリプトファンが分離されることで顕著に増加した蛍光が発生する。標識ペプチドは、エキソペプチダーゼの検出のために有用であると述べられている。
【0010】
国際公開第2008/078190号には、蛍光色素−ポリマーコンジュゲートを含んでなる活性化可能なプローブであって、蛍光色素が代謝可能なリンカーを介してポリマーに結合されると共に、ポリマーがさらに水可溶化基を含むプローブが開示されている。水可溶化基は、天然ポリマーの固有蛍光を低減させることで、酵素開裂後の蛍光の変化を一層顕著にするために役立つと述べられている。
【発明の概要】
【0011】
本発明は、生化学的プロセスによって活性化される消光蛍光プローブを提供する。かかるプローブは、不活性化プローブ中では分子内消光が起こるが、定義された条件下では消光剤部分がプローブから開裂されてプローブを蛍光性にするように設計されている。
【0012】
先行技術の活性化可能な蛍光プローブは、通例、酵素開裂し得る短い配列(例えば、カテプシンB)によってポリマー(例えば、ポリ−L−リシン)に共有結合された蛍光色素からなっている。蛍光色素同士がポリマー上で互いに近接して結合されている場合、それの蛍光は自己消光を受ける結果、ポリマー構築物の蛍光は低い(しかし、ゼロではない)。酵素作用によって蛍光色素を遊離させると、それの蛍光は大幅に増加する。インタクトなプローブからのバックグラウンド蛍光が欠点である。もう1つの欠点は、遊離した蛍光色素が拡散によって活性化部位から離れる傾向があることである。
【0013】
即ち、米国特許出願公開第2007/0036725号及び国際公開第2007/008080号はいずれも、
(1)蛍光色素が消光から解放されること、及び
(2)活性蛍光色素の脱消光点からの移動を最小にすること
を記載している。米国特許出願公開第2007/0036725号では、活性蛍光色素は酵素の活性部位に共有結合される(段落0009、1頁、第1欄の下部)。国際公開第2007/008080号では、活性蛍光色素は標的結合リガンドに結合している。この発明では、活性蛍光色素を高分子量ポリマー(緩徐な拡散)に結合したままに保つことでそれの移動を妨げる。それとは対照的に、本発明は、蛍光色素のみがポリマーに結合している場合に蛍光共鳴エネルギー移動による消光が起こらないような間隔でポリマー主鎖に恒久的に結合した蛍光色素を提供する。蛍光エネルギー移動は、蛍光色素間の距離に対して非常に敏感である。酵素に暴露されると、消光部分は開裂除去され、拡散によって部位から離れ、大きくて拡散の遅い蛍光性ポリマーが残る。これは、自由に拡散し得る蛍光色素を生成するプローブに比べ、プローブの感度及び特異性を向上させる。
【0014】
米国特許出願公開第2007/0036725号では、足場はモノ、ジ、トリ又はテトラペプチドからなる(段落0011)。国際公開第2007/008080号では、(約10単位以下の)オリゴマーがリンカーとして使用できる(16頁)。これらの先行技術ではいずれも、ポリマーに対する光学イメージング剤の結合は不利である。それは、最初のイメージング剤の固定化が立体障害によって以後の反応を妨げることがあり得るからである。複数のイメージング剤を高分子量ポリマーに結合することは述べられていない。本発明では、高分子量の足場は、
(1)蛍光の発生点からの移動を妨げると共に、
(2)消光部分を開裂する酵素が高濃度で存在する領域にイメージング剤を保つために役立つ。
【発明を実施するための形態】
【0015】
第1の態様では、本発明は、分子量10〜100kDaのポリマー主鎖と、
(i)各々が酵素開裂及び生化学的酸化に耐える第1の結合を介して主鎖に共有結合された一定数(z)の近赤外蛍光色素、及び
(ii)各々が酵素代謝又は生化学的酸化によって開裂され得る第2の結合を介して主鎖に共有結合された一定数(z)の消光剤部分
とを含んでなる分子内消光型蛍光プローブであって、zは1〜150の値を有する整数であり、前記消光剤部分は前記蛍光色素と蛍光消光性エネルギー移動関係にある蛍光プローブを提供する。
【0016】
「プローブ」という用語は、酵素活性又は生化学的反応性化学種をインビトロ又はインビボで検出するために有用な化合物を意味する。疾患(例えば、癌及びアテローム性動脈硬化疾患)では、いくつかの酵素がアップレギュレートされる。これらの疾患及び他の疾患は炎症状態を伴い、そこでは活性化免疫細胞によって超酸化物アニオンのような酸素ラジカルが発生する。したがって、増加した量の特定酵素及び酸素ラジカルを検出するプローブは前記疾患を検出するために有用である。
【0017】
「ポリマー主鎖」という用語は、蛍光色素及び消光剤が結合される生体適合性ポリマーを意味する。ポリマー主鎖は、相異なるアミノ酸残基又は同一のアミノ酸(即ち、ポリアミノ酸)を含んででいてよいポリペプチド、タンパク質、多糖、ポリエステル、ポリアミドアミン、ポリアクリル酸、ポリアルコール又はキトサンであり得る。ポリマー主鎖は、D−アミノ酸又はL−アミノ酸を含み得る。「生体適合性」という用語は、生理学的に認容され得ること、即ち毒性又は過度の不快感なしに哺乳動物体に投与できることを意味する。ポリマー主鎖の分子量は、好適には10〜100kDa(10000〜100000Da)である。プローブの分子量は、拡散を遅らせるために高いけれど、循環から組織又は腫瘍中への輸送を妨げるほどには高くない。
【0018】
「蛍光色素」という用語は通常の意味を有し、即ち蛍光性色素を意味する。本発明で使用するのに適する蛍光色素は、600〜1000nmの範囲内に吸収極大を有しかつ600〜1200nmの範囲内に発光極大を有する蛍光性色素である。
【0019】
「蛍光消光剤」という用語は、蛍光色素の蛍光発光を抑制する結果、消光剤及び蛍光色素の両方が結合した不活性化プローブが最小の蛍光を有するようにする部分を意味する。消光剤分子は当技術分野で公知である[Johansson,Meth.Mol.Biol.,335,17−29(2006)及びBullok et al,Biochem.,46(13),4055−4065(2007)]。蛍光共鳴エネルギー移動を受けやすい蛍光色素ペアは、Shanker et al[Meth.Cell Biol.,84,Chapter 8,213−242(2008)]及びLakowicz(“Principles of Fluorescence Spectroscopy”2nd edition,Kluwer(1999),p.388]によって記載されている。Shanker及びLakowiczの参考文献にはまた、新しい蛍光色素/消光剤ペアを発見するための方法も含まれている。
【0020】
「分子内消光型」という用語は、インタクトなプローブ分子中では、蛍光色素及び消光剤部分が蛍光色素からのいかなる蛍光も消光するように配列されていることを意味する。
【0021】
「生化学的酸化」という用語は、インビボ又はインビトロで哺乳動物体の細胞又は器官が生み出す酸化プロセスを意味する。このような性質の好適な酸化プロセスには、ジスルフィド結合を開裂すると共に、ポリ不飽和脂肪酸中に生じるもののような特定の配置状態にある炭素−炭素二重結合を開裂し得る細胞外超酸化物アニオン、過酸化水素又はヒドロキシル基による酸化が含まれる。
【0022】
「酵素開裂及び生化学的酸化に耐える」という用語は、哺乳動物体の酵素の基質にはならず、かつ上述した生化学的酸化プロセスによっても開裂されない共有結合を意味する。第1の結合として適したかかる結合の例は、炭素−炭素結合、エーテル結合、チオエーテル結合、スルホンアミド結合及びアミド結合(ペプチド結合を除外する)である。明らかに、第1の結合は第2の結合の定義範囲内に含まれる開裂可能な結合(下記参照)を除外する。
【0023】
「酵素代謝又は生化学的酸化によって開裂され得る」という用語は、第2の結合が(a)インビボ又はインビトロでの哺乳動物体の酵素、又は(b)上述した生化学的酸化プロセスによって開裂され得ることを意味する。かかる酵素としては、エステラーゼ、エンドペプチダーゼ、エンドプロテイナーゼ、デアルキラーゼ、グリコシダーゼ、エンドグリカナーゼ、ヘパリナーゼ、コンドロイチナーゼ、ヒアルロニダーゼ、RNアーゼ、DNアーゼ及びホスホジエステラーゼが挙げられる。
【0024】
「蛍光消光性エネルギー移動関係」という用語は、蛍光色素及び消光剤が、エネルギー移動による相互作用によって消光を可能にする相対位置に維持されていることを意味する。
【0025】
「消光剤部分」という用語は、インタクトなプローブが最小の蛍光を有するように蛍光色素の蛍光発光を抑制する部分を意味する。即ち、蛍光色素を励起する波長の光で照射した場合、消光剤は励起された蛍光色素のエネルギーを吸収する結果、インタクトなプローブは全体として最小の蛍光を有する。本発明で使用するのに適した消光剤には、
(a)DABCYL[360〜560nmの領域の光を吸収する4−(4’−ジメチルアミノベンゼンアゾ)安息香酸]及び他のアゾ色素、DANCYL、QSY−7、Black Hole Quenchersなどの非蛍光性色素、
(b)適当な吸収スペクトルを有する蛍光色素、
(c)p−ニトロ安息香酸、m−ニトロ安息香酸、o−ニトロ安息香酸、3,5−ジニトロ安息香酸及び2,4,6−トリニトロベンゼンスルホン酸を含むニトロ置換フェニル部分、並びに
(d)アズレンダイマー
がある。消光剤分子は当技術分野で公知である[Johansson,Meth.Mol.Biol.,335,17−29(2006);Marras ibid,335,3−16(2006)及びBullok et al(上記)]。
【0026】
本発明のプローブは、開裂されたプローブ(即ち、消光剤部分を除去した後のプローブ)中の蛍光色素ペアが自己消光関係にないように設計されている。インタクトなプローブにおいて蛍光色素の多少の自己消光が起こっても、それは問題でないことに注意されたい。いずれにせよ、インタクトなプローブに関しては最小の蛍光が望ましいからである。プローブの活性化は図1に模式的に示される。
【0027】
【化2】

式中、
Bはポリマー主鎖であり、
1は第1の結合であり、
2は第2の結合であり、
cは開裂された第2の結合の残基であり、
Qは消光剤部分であり、
Qcは開裂された消光剤部分であって、開裂された第2の結合の残基を含むことがあり、
qはQと消光関係にある蛍光色素であり、
mは蛍光を発生し得る環境にある蛍光色素である。
【0028】
プローブ当たりの蛍光色素及び消光剤部分ペアの数は、好適には1〜150の範囲内にある。好ましくは、プローブは少なくとも2又は3のかかるペアを有する。上限(150)に対しては、プローブは約100kDaの分子量を有するであろう。
【0029】
第1の態様のプローブは、好ましくは、第2の態様(下記)に記載されるように、インビボイメージングのために適した光学イメージング剤として使用される。しかし、かかるプローブはインビトロ用途(例えば、生物学的試料中の開裂酵素を定量するアッセイ又は組織試料中のかかる酵素の可視化)も有することができる。
【0030】
本発明のプローブは、任意には、さらに生物学的標的化部分を含むことができる。生物学的標的化部分は、主鎖、図1のL1、又は蛍光色素に結合することができる。「生物学的標的化部分」(BTM)という用語は、インビボ投与後、哺乳動物体の特定部位に選択的に取り込まれるか又は特定部位に局在する化合物を意味する。かかる部位は、例えば、特定の疾患状態に関係するものであるか、或いは器官又は代謝過程がいかに機能しているかを表すものであり得る。生物学的標的化部分は、好ましくは、線状ペプチド、環状ペプチド又はこれらの組合せであり得る3〜100量体ペプチド、ペプチド類似体、ペプトイド又はペプチド模倣体、或いは酵素基質、酵素拮抗剤又は酵素阻害剤、或いは合成レセプター結合化合物、或いはオリゴヌクレオチド、オリゴDNAフラグメント又はオリゴRNAフラグメントからなる。
【0031】
「ペプチド」という用語は、ペプチド結合(即ち、1つのアミノ酸のアミン官能基を別のアミノ酸のカルボキシルに連結すると共に、カルボキシルがそれぞれのアミノ酸のC−2(又は「α−炭素」)に結合されているアミド結合)によって連結された(下記に定義するような)2以上のアミノ酸を含む化合物を意味する。「ペプチド模倣体」又は「模倣体」という用語は、ペプチド又はタンパク質の生物学的活性を模倣するが、化学的性質がペプチド的でない(即ち、いかなるペプチド結合(つまり、アミノ酸間のアミド結合)も含まない)生物学的活性化合物をいう。ここでは、ペプチド模倣体という用語は広い意味で使用され、性質が完全にはペプチド的でない分子(例えば、プソイドペプチド、セミペプチド及びペプトイド)を包含する。「ペプチド類似体」という用語は、下記に記載するような1種以上のアミノ酸類似体を含むペプチドをいう。“Synthesis of Peptides and Peptidomimetics”,M.Goodman et al,Houben−Weyl E22c,Thiemeも参照されたい。
【0032】
「アミノ酸」という用語は、L−又はD−アミノ酸、アミノ酸類似体(例えば、ナフチルアラニン)或いはアミノ酸模倣体を意味し、これらは天然のもの又は純粋に合成由来のものであってよく、光学的に純粋なもの(即ち、単一の鏡像異性体)、したがってキラルなものであるか、或いは鏡像異性体の混合物であってよい。本明細書中では、アミノ酸に関する通常の三文字略語又は一文字略語が使用される。好ましくは、本発明のアミノ酸は光学的に純粋なものである。「アミノ酸模倣体」という用語は、アイソスター(即ち、天然化合物の立体構造及び電子構造を模倣するように設計されたもの)である天然アミノ酸の合成類似体を意味する。かかるアイソスターは当業者にとって公知であり、特に限定されないが、デプシペプチド、レトロ−インベルソペプチド、チオアミド、シクロアルカン又は1,5−二置換テトラゾールを包含する[M.Goodman,Biopolymers,24,137(1985)を参照されたい]。
【0033】
好適な酵素の基質、拮抗剤又は阻害剤には、グルコース及びグルコース類似体(例えば、フルオロデオキシグルコース)、脂肪酸、或いはエラスターゼ、アンギオテンシンII又はメタロプロテイナーゼ阻害剤がある。好ましい非ペプチド系アンギオテンシンII拮抗剤はエナラプリルである。ロサルタンはアンギオテンシンIIの非ペプチド系拮抗剤である。好適な合成レセプター結合化合物には、エストラジオール、エストロゲン、プロゲスチン、プロゲステロン及び他のステロイドホルモン、ドーパミンD−1又はD−2レセプター用或いはトロパンのようなドーパミン輸送体用リガンド、並びにセロトニンレセプター用リガンドがある。
【0034】
好ましい特徴
ポリマー主鎖の分子量は、好ましくは9〜50kDa、さらに好ましくは10〜40kDa、最も好ましくは11〜35kDaである。本発明のプローブは好ましくは約30〜50kDaの分子量を有し、これは腎臓経由の緩徐な排泄にとって有利である。かかるプローブは好ましくはインビボ用途のために適している。
【0035】
本発明のプローブは、好ましくは水への溶解度を高めかつ凝集を減少させるために親水性である。かかるプローブはまた、(常に負に帯電している)細胞表面への非特異的付着を減少させかつインビボでの腎臓によるクリアランスを容易にするため、好ましくは正味負の電荷を有するべきである。
【0036】
消光剤部分は、好ましくは蛍光色素と異なる化学種である。消光剤部分は、最も好ましくは非蛍光性である。即ち、それは蛍光色素を活性化するのに適した波長の光で照射した場合に蛍光を発生せず、また蛍光色素から放射される光で照射した場合にも蛍光を発生しない。そのようにすれば、消光剤がプローブから開裂されると、それはいかなる競合的な蛍光も与えない。即ち、すべての蛍光はもっぱら活性化プローブに由来するものである。インビボ用途のためには、消光剤は好適には生体適合性(上記に定義された通り)であり、したがって遊離した消光剤は哺乳動物体にとって無毒性である。したがって、インビボ用途のための好ましい消光剤部分は、非蛍光性かつ生体適合性である。好ましい非蛍光性消光剤には、Weissleder et al[Ang.Chem.Int.Ed.Eng.,41,3659−3662(2002)及び国際公開第04/028449号]によって教示されたアズレンダイマーがある。遠赤外消光剤QSY 21はBullok et al[Biochem.,46(13),4055−4065(2007)]によって教示されている。インビボで使用するためには、近赤外範囲内の光を放射する蛍光色素が特に好適であるので、この範囲内の光を吸収する消光剤が好ましい。消光剤は腎臓によって急速に排泄されるべきである。排泄に先立ち、肝臓でのグルクロン酸抱合のようなコンジュゲーション反応を受けることがある。
【0037】
かかるプローブは、好ましくは第2の結合が酵素の作用で開裂され得るように選択される。好ましいかかる酵素は加水分解酵素であり、さらに好ましくはペプチダーゼ又はプロテアーゼである。本発明で使用するための最も好ましい開裂酵素には、カテプシンB、D、K、L及びS、マトリックスメタロプロテイナーゼ、ウロキナーゼ型プラスミノーゲン活性化因子、カリクレイン、ヘプシン、フリン、マトリプターゼ、プロコラーゲンコンベルターゼ、骨形態形成タンパク質1、並びにトロイド様プロテイナーゼ1及び2がある。これらの酵素の多くは腫瘍の浸潤に関係している。具体的な酵素基質結合を表1及び表2に示す。
【0038】
【表1】

【0039】
【表2】

本発明の状況において使用できる他のプロテアーゼ及びプロテイナーゼには、プラスミン、ウロキナーゼ型プラスミノーゲン活性化因子、プロスタチン、テスチシン、TSP50、GPI−SP1〜3、TESP 1〜2、DISP、トリプターゼγ1、マトリプターゼ−1、2及び3、ヘプシン、TMPRSS 2、3及び4、スピネシン、HAT、MSPL、カリクレイン−14、ポリセラーゼ−1、フリン、PACE4、PC1、PC5、PC7、カリクレイン−5、カスパーゼ9、カテプシンH、K及びL、並びにDESC−1がある。
【0040】
プローブの主鎖は、好ましくは酵素開裂に耐える。即ち、それはインビボで安定である。これは、例えば、2,3−ジアミノプロピオン酸又は2,4−ジアミノ酪酸のような非天然アミノ酸のポリマーを使用することで達成できる。別法として、ペプチドの一方又は両方の末端(好ましくは両方の末端)に代謝阻害基(MIG)がコンジュゲートされる。「代謝阻害基」(MIG)という用語は、酵素活性(特にカルボキシペプチダーゼのようなペプチダーゼの活性)を阻害又は抑制する生体適合性基を意味する。さもないと、かかる酵素はアミノ末端又はカルボキシ末端でアミノ酸をペプチドから切断することがある。かかる基はインビボ用途のために特に重要であり、これらは当業者にとって公知であり、ペプチドアミン末端に関しては、好適にはN−アシル化基−NH(C=O)RG(式中、アシル基−(C=O)RGはC1-6アルキル基及びC3-10アリール基から選択されるRGを有する。)から選択されるか、或いはポリエチレングリコール(PEG)構成単位を含む。好適なPEG基は下記に記載される。好ましいかかるPEG基は、式Bio1又はBio2(下記)のバイオモディファイアーである。好ましいかかるアミノ末端MIG基はアセチル、ベンジルオキシカルボニル又はトリフルオロアセチルであり、最も好ましくはアセチルである。
【0041】
ペプチドカルボキシル末端に関して好適な代謝阻害基には、カルボキサミド、tert−ブチルエステル、ベンジルエステル、シクロヘキシルエステル、アミノアルコール及びポリエチレングリコール(PEG)構成単位がある。BTMペプチドのカルボキシ末端アミノ酸残基にとって好適なMIG基は、アミノ酸残基の末端アミンをC1-4アルキル基(好ましくはメチル基)でN−アルキル化したものである。好ましいかかるMIG基はカルボキサミド又はPEGであり、最も好ましいかかる基はカルボキサミドである。
【0042】
好ましいPEG基は、次の式Bio1又はBio2の単分散PEG様構造のオリゴマー化で導かれる単位を含む。
【0043】
【化3】

かかるPEG様構造は、式Bio1(式中、pは1〜10の整数である。)の17−アミノ−5−オキソ−6−アザ−3,9,12,15−テトラオキサヘプタデカン酸であり得る。別法として、式Bio2のプロピオン酸誘導体に基づくPEG様構造も使用できる。
【0044】
【化4】

式中、pは式Bio1に関して定義した通りであり、qは3〜15の整数である。式Bio2中、pは好ましくは1又は2であり、qは好ましくは5〜12である。
【0045】
このようにプローブ主鎖が開裂に耐えることは、活性化された後、相対的に高分子量の蛍光色素含有部分は容易に拡散しない一方、相対的に低分子量の消光剤含有部分は一層容易に拡散するという利点を有する。かくして、プローブは検査対象の標的に近接して存続する傾向があり、したがって標的選択性イメージングをもたらす。主鎖は、好ましくはポリペプチド及び/又はコポリマーを含む。コポリマーは、第1及び第2の結合の間の化学的識別を可能にする相異なる官能基を有するようにコポリマーの2つの成分を選択できるという利点を有する。好ましいかかるコポリマーは、リシン−グルタミン酸コポリマーを含む。そのようにすれば、(例えば、スルホンアミド又はカルボキサミド結合を介して)蛍光色素をリシン残基に結合できる一方、グルタミン酸残基に結合した短い開裂可能な配列の末端に消光剤部分を設けることができる。その性能は、次の酵素反応後における蛍光色素同士の距離を増加させるため、追加のアミノ酸又はエチレングリコールオリゴマーのような「スペーサー」を含めることで向上させることができよう。
【0046】
[Lys(L1−Fq)−Glu(L2−Q)−Ala−Ala]n
→ [Lys(L1−Fm)−Glu(Lc)−Ala−Ala]n+Qc
式中、
qは図1に関して定義した通りであって、リシンの6位にL1を介して結合しており、
1、L2、Lc、Fm、Q及びQcは図1に関して定義した通りであり、
nは2〜150の値を有する整数である。
【0047】
右辺の開裂生成物中では、蛍光色素(Fm)同士は3つのアミノ酸によって隔てられており、したがって自己消光に対する感受性は極めて低い。共鳴エネルギー移動の効率は距離の6乗に反比例して減少する[Shanker et al,Meth.Cell Biol.,84,Chapter 8,213−242(2008)]。
【0048】
かかるプローブは、任意には、基体ポリマーが負に帯電しており(したがって自由に可溶であり)、開裂生成物プローブが正に帯電しており、かくして開裂プローブが細胞表面に付着する傾向を付与するように置換基を選択することによってさらに改良することができる。これは、高度にスルホン化又はカルボキシル化された脱離可能な消光剤を選択することで達成できる。
【0049】
好ましい蛍光色素は広範な非局在化電子系を有するものであり、例えば、シアニン色素、メロシアニン色素、インドシアニン類、フタロシアニン類、ナフタロシアニン類、トリフェニルメチン類、ポルフィリン類、ピリリウム色素、チアピリリウム色素、スクアリリウム色素、クロコニウム色素、アズレニウム色素、インドアニリン類、ベンゾフェノキサジニウム色素、ベンゾチアフェノチアジニウム色素、アントラキノン類、ナフトキノン類、インダスレン類、フタロイルアクリドン類、トリスフェノキノン類、アゾ色素、分子内及び分子間電荷移動色素及び色素複合体、トロポン類、テトラジン類、ビス(ジチオレン)錯体、ビス(ベンゼン−ジチオレート)錯体、ヨードアニリン色素、ビス(S,O−ジチオレン)錯体がある。緑色蛍光タンパク質(GFP)及び異なる吸収/発光特性を有するGFPの変種のような蛍光タンパク質も有用である。特定の状況においてはある種の希土類金属(例えば、ユウロピウム、サマリウム、テルビウム又はジスプロシウム)の錯体が使用され、蛍光ナノ結晶(量子ドット)についても同様である。
【0050】
使用できる発色団の具体例には、フルオレセイン、スルホローダミン101(Texas Red)、ローダミンB、ローダミン6G、ローダミン19、インドシアニングリーン、Cy2、Cy3B、Cy3.5、Cy5、Cy5.5、Cy7、Cy7.5、Marina Blue、Pacific Blue、Oregon Green 488、Oregon Green 514、テトラメチルローダミン、Alexa Fluor 350、Alexa Fluor 430、Alexa Fluor 532、Alexa Fluor 546、Alexa Fluor 555、Alexa Fluor 568、Alexa Fluor 594、Alexa Fluor 633、Alexa Fluor 647、Alexa Fluor 660、Alexa Fluor 680、Alexa Fluor 700及びAlexa Fluor 750がある。シアニン色素は特に好ましい。インビボ光学イメージング用の色素及び色素コンジュゲートは、Licha et al[Topics Curr.Chem.,222,1−29(2002);Adv.Drug Deliv.Rev.,57,1087−1108(2005)]によって総説されている。
【0051】
発蛍光団である好ましいシアニン色素は、次の式IIのものである。
【0052】
【化5】

式中、
各X’は独立に−C(CH3)2、−S−、−O−及び−C[(CH2)aCH3][(CH2)bM]−(式中、aは0〜5の値を有する整数であり、bは1〜5の値を有する整数であり、MはG基であるか、或いはSO31及びHから選択される。)から選択され、
各Y’は独立にH、−CH2NH2、−SO31、−CH2COOM1、−NCS及びFからなる群から選択される1〜4の基を表し、Y’基は芳香環の任意の位置に配置されており、
Q’は独立にH、SO31、NH2、COOM1、アンモニウム、エステル基、ベンジル及びG基からなる群から選択され、
1はH又はBc(ここで、Bcは生体適合性陽イオンである。)であり、
lは1〜3の整数であり、
mは1〜5の整数であり、
X’、Y’及びQ’の少なくとも1つはG基からなり、
Gは主鎖への結合のために適した反応基又は官能基である。
【0053】
「生体適合性陽イオン」(Bc)という用語は、イオン化して負に帯電した基と共に塩を形成する正に帯電した対イオンを意味する。この場合、前記正に帯電した対イオンも無毒性であり、したがって哺乳動物体(特に人体)への投与に適している。好適な生体適合性陽イオンの例には、アルカリ金属であるナトリウム及びカリウム、アルカリ土類金属であるカルシウム及びマグネシウム、並びにアンモニウムイオンがある。好ましい生体適合性陽イオンはナトリウム及びカリウムであり、最も好ましくはナトリウムである。
【0054】
生物学的標的化分子(BTM)が結合している場合、BTMは合成品又は天然品であり得るが、好ましくは合成品である。「合成品」という用語はそれの通常の意味を有し、即ち、天然の供給源(例えば、哺乳動物体)から単離されるものではなく人造のものを意味する。かかる化合物は、それの製造及び不純物プロファイルを完全に制御できるという利点を有している。したがって、天然由来のモノクローナル抗体及びそのフラグメントは、本明細書中で使用する「合成品」という用語の範囲外にある。BTMがペプチドである場合、好ましいかかるペプチドには以下のものがある。
−ソマトスタチン、オクトレオチド及び類似体。
−STレセプターに結合するペプチド(ここで、STとは大腸菌(E.coli)及び他の微生物によって産生される耐熱性毒素をいう。)。
−ラミニンフラグメント、例えば、YIGSR、PDSGR、IKVAV、LRE及びKCQAGTFALRGDPQG。
−白血球集積部位を標的化するためのN−ホルミルペプチド。
−血小板第4因子(PF4)及びそれのフラグメント。
−例えば血管形成を標的化し得るRGD(Arg−Gly−Asp)含有ペプチド[R.Pasqualini et al.,Nat.Biotechnol.1997 Jun;15(6):542−6]、[E.Ruoslahti,Kidney Int.1997 May;51(5):1413−7]。
−α2−抗プラスミン、フィブロネクチン、β−カゼイン、フィブリノーゲン又はトロンボスポンジンのペプチドフラグメント。α2−抗プラスミン、フィブロネクチン、β−カゼイン、フィブリノーゲン及びトロンボスポンジンのアミノ酸配列は、以下の参考文献中に見出すことができる。α2−抗プラスミン前駆体[M.Tone et al.,J.Biochem,102,1033(1987)]、β−カゼイン[L.Hansson et al,Gene,139,193(1994)]、フィブロネクチン[A.Gutman et al,FEBS Lett.,207,145(1996)]、トロンボスポンジン1前駆体[V.Dixit et al,Proc.Natl.Acad.Sci.,USA,83,5449(1986)]、R.F.Doolittle,Ann.Rev.Biochem.,53,195(1984)。
−アンギオテンシンII:Asp−Arg−Val−Tyr−Ile−His−Pro−Phe(E.C.Jorgensen et al,J.Med.Chem.,1979,Vol 22,9,1038−1044)及び[Sar,Ile]アンギオテンシンII:Sar−Arg−Val−Tyr−Ile−His−Pro−Ile(R.K.Turker et al.,Science,1972,177,1203)のようなアンギオテンシンの基質又は阻害剤であるペプチド。
−アンギオテンシンI:Asp−Arg−Val−Tyr−Ile−His−Pro−Phe−His−Leu。
−エンドセリン、例えばエンドセリン−1:Cys−Ser−Cys−Ser−Ser−Leu−Met−Asp−Lys−Glu−Cys−Val−Tyr−Phe−Cys−His−Leu−Asp−Ile−Ile−Trp。
−ボンベシン:Xaa−Gln−Arg−Leu−Gly−Asn−Gln−Trp−Ala−Val−Gly−His−Leu−Met−NH2
−ガストリン:ピログルタミル−Gly−Pro−Trp−Leu−Glu−Glu−Glu−Glu−Glu−Ala−Tyr−Gly−Trp−Met−Asp−Phe−NH2
−ゴナドトロピン放出ホルモン:ピログルタミル−His−Trp−Ser−Tyr−Gly−Leu−Arg−Pro−Gly−NH2
【0055】
プローブの一部としてBTMを使用することは、プローブの特異性をさらに増大させるという利点を有する。
【0056】
BTMがペプチドである場合、ペプチドの一方又は両方の末端(好ましくは両方の末端)に上記に定義したような代謝阻害基(MIG)がコンジュゲートされる。
【0057】
商業的に入手できない本発明のペプチドは、P.Lloyd−Williams,F.Albericio and E.Girald;Chemical Approaches to the Synthesis of Peptides and Proteins,CRC Press,1997に記載されているような固相ペプチド合成法によって合成できる。
【0058】
本発明のプローブは次のようにして製造できる。ポリ−L−リシン、デキストラン、アミラーゼ(ポリ−D−グルコース)、キトサン、RNA、DNA、ポリ乳酸、ポリ(乳酸/グリコール酸)、ヘパラン硫酸及びコンドロイチン硫酸は商業的に入手できる。キトサン、ヘパラン硫酸及びコンドロイチン硫酸は、脱アセチル化又は脱硫酸化することで、アミノ基を反応に利用できるようにすると共に反応基の数を増加させることができる。かかる方法は当技術分野で公知である。側鎖にアミノ基を有するアミノ酸のポリマーを合成する必要がある。好適な方法の概略は次の通りである。側鎖のアミノ基上にブロッキング基を導入し、水溶性カルボジイミドを用いて置換アミノ酸を僅かに酸性のpHの水溶液中で重合させる。ブロッキング基を除去し、サイズ排除カラム上で副生物を除去すると同時に、生成物の分子量範囲を狭くする。
【0059】
主鎖へのコンジュゲーションを容易にするため、蛍光色素及び/又は消光剤部分の各々には好適には反応性官能基(Qa)が結合されている。Qa基は、主鎖の相補的な官能基と反応することで共有結合を形成するように設計されている。主鎖の相補的な官能基は、主鎖の固有部分であってもよいし、或いは当技術分野で公知のように二官能性基での誘導体化の使用によって導入してもよい。表3は、反応基及びその相補的な対応基の例を示している。
【0060】
【表3】

「活性化エステル」又は「活性エステル」という用語は、良好な脱離基であり、したがってアミンのような求核性化合物との一層容易な反応を可能にするように設計されたカルボン酸のエステル誘導体を意味する。好適な活性エステルの例は、N−ヒドロキシスクシンイミド(NHS)、ペンタフルオロフェノール、ペンタフルオロチオフェノール、p−ニトロフェノール及びヒドロキシベンゾトリアゾールである。好ましい活性エステルは、N−ヒドロキシスクシンイミド又はペンタフルオロフェノールエステルである。
【0061】
主鎖中に存在する官能基の例には、ヒドロキシ、アミノ、スルフヒドリル、カルボニル(アルデヒド及びケトンを含む)並びにチオホスフェートがある。好適なQa基は、カルボキシル、活性化エステル、イソチオシアネート、マレイミド、ハロアセトアミド、ヒドラジド、ビニルスルホン、ジクロロトリアジン及びホスホラミダイトから選択できる。好ましくは、Qaはカルボン酸の活性化エステル、イソチオシアネート、マレイミド又はハロアセトアミドである。
【0062】
相補基がアミン又はヒドロキシルである場合、Qaは好ましくは活性化エステルであり、好ましいかかるエステルは上記に記載した通りである。相補基がチオールである場合、Qaは好ましくはマレイミド基又はヨードアセトアミド基である。
【0063】
蛍光色素及び光学色素を生物学的分子にコンジュゲートするための一般的方法は、Licha et al[Topics Curr.Chem.,222,1−29(2002);Adv.Drug Deliv.Rev.,57,1087−1108(2005)]によって記載されている。本発明で使用するためのペプチド、タンパク質及びオリゴヌクレオチド基質は、末端位置で標識することができ、或いは別法として1以上の内部位置で標識することもできる。蛍光色素標識試薬を用いるタンパク質標識の総説及び例に関しては、“Non−Radioactive Labelling,a Practical Introduction”,Garman,A.J.,Academic Press,1997、及び“Bioconjugation − Protein Coupling Techniques for the Biomedical Sciences”,Aslam,M.and Dent,A.,Macmillan Reference Ltd.(1998)を参照されたい。合成ペプチドにおいて部位特異的標識を達成するためのプロトコルが利用できる。例えば、Hermanson,G.T.,“Bioconjugate Techniques”,Academic Press(1996)を参照されたい。
【0064】
コンジュゲーション反応では、主鎖、蛍光色素又は消光剤は反応する可能性がある追加の官能基を任意に有し得るが、これらは所望の部位のみで化学反応が選択的に起こるように適当な保護基で保護される。「保護基」という用語は、望ましくない化学反応を阻止又は抑制するが、分子の残部を変質させない程度に温和な条件下で問題の官能基から脱離させ得るのに十分な反応性を有するように設計された基を意味する。脱保護後には所望の生成物が得られる。アミン保護基は当業者にとって公知であり、好適にはBoc(ここでBocはtert−ブチルオキシカルボニルである。)、Fmoc(ここでFmocはフルオレニルメトキシカルボニルである。)、トリフルオロアセチル、アリルオキシカルボニル、Dde[即ち、1−(4,4−ジメチル−2,6−ジオキソシクロヘキシリデン)エチル]及びNpys(即ち、3−ニトロ−2−ピリジンスルフェニル)から適宜に選択される。好適なチオール保護基は、Trt(トリチル)、Acm(アセトアミドメチル)、t−Bu(tert−ブチル)、tert−ブチルチオ、メトキシベンジル、メチルベンジル及びNpys(3−ニトロ−2−ピリジンスルフェニル)である。さらに他の保護基の使用は、‘Protective Groups in Organic Synthesis’,Theodora W.Greene and Peter G.M.Wuts(John Wiley & Sons,1991)に記載されている。好ましいアミン保護基はBoc及びFmocであり、最も好ましくはBocである。好ましいアミン保護基はTrt及びAcmである。
【0065】
光学レポーター色素をアミノ酸及びペプチドにコンジュゲートする方法は、Licha(上記参照)並びにFlanagan et al[Bioconj.Chem.,,751−756(1997)]、Lin et al[ibid,13,605−610(2002)]及びZaheer[Mol.Imaging,(4),354−364(2002)]によって記載されている。
【0066】
第2の態様では、本発明は、第1の態様のプローブを含んでなるインビボイメージングのために適した光学イメージング剤を提供する。
【0067】
「イメージング剤」という用語は、インビボで完全な(即ち、無傷の)哺乳動物体の検査対象領域の光学イメージングを行うために適した化合物を意味する。好ましくは、哺乳動物はヒト被験体である。イメージングは侵襲的(例えば、手術中検査又は内視鏡検査)であってもよいし、或いは非侵襲的であってもよい。イメージングは、任意には(例えば、内視鏡器具の生検チャネルを通しての)生検又は(例えば、腫瘍縁の同定による手術処置中の)腫瘍切除を容易にするために使用できる。
【0068】
好ましくは、イメージング剤は、哺乳動物への投与に適した形態でイメージング剤を生体適合性キャリヤーと共に含んでなる医薬組成物として提供される。「生体適合性キャリヤー」とは、組成物が生理学的に認容され得るようにして(即ち、毒性又は過度の不快感なしに哺乳動物体に投与できるようにして)イメージング剤を懸濁又は溶解できる流体(特に液体)である。生体適合性キャリヤーは、好適には、無菌のパイロジェンフリー注射用水、(有利には注射用の最終生成物が等張性になるように平衡させ得る)食塩水のような水溶液、或いは1種以上の張度調整物質(例えば、血漿陽イオンと生体適合性対イオンとの塩)、糖(例えば、グルコース又はスクロース)、糖アルコール(例えば、ソルビトール又はマンニトール)、グリコール(例えば、グリセロール)又は他の非イオン性ポリオール物質(例えば、ポリエチレングリコール、プロピレングリコールなど)の水溶液のような注射可能なキャリヤー液体である。好ましくは、生体適合性キャリヤーはパイロジェンフリー注射用水又は等張食塩水である。
【0069】
イメージング剤及び生体適合性キャリヤーはそれぞれ、注射器又はカニューレによる溶液の追加及び抜取りを許しながら、無菌保全性及び/又は放射能安全性の維持、さらに任意には不活性ヘッドスペースガス(例えば、窒素又はアルゴン)の維持を可能にする密封容器からなる適当なバイアル又は容器に入れた状態で供給される。好ましいかかる容器は、気密クロージャーを(通例はアルミニウムからなる)オーバーシールと共にクリンプ加工した隔壁密封バイアルである。クロージャーは、無菌保全性を維持しながら皮下注射針による1回又は数回の穿刺に適したもの(例えば、クリンプ加工した隔壁シールクロージャー)である。かかる容器は、(例えば、ヘッドスペースガスの変更又は溶液のガス抜きのために)所望される場合にはクロージャーが真空に耐え得ると共に、酸素又は水蒸気のような外部大気ガスの侵入を許すことなしに減圧のような圧力変化にも耐え得るという追加の利点を有している。
【0070】
好ましい複数用量容器は、複数の患者用量を含む(例えば、容積10〜30cm3の)単一のバルクバイアルからなり、したがって臨床的状況に合わせて製剤の実用寿命中に様々な時間間隔で1回分の患者用量を臨床グレードの注射器中に抜き取ることができる。予備充填注射器は1回分のヒト用量又は「単位用量」を含むように設計され、したがって好ましくは臨床用に適した使い捨て注射器又は他の注射器である。本発明の医薬組成物は、好ましくは1人の患者用に適した用量を有し、上述したような適当な注射器又は容器に入れて供給される。
【0071】
かかる医薬組成物は、抗菌防腐剤、pH調整剤、フィラー、安定剤又は重量オスモル濃度調整剤のような追加賦形剤を任意に含むことができる。「抗菌防腐剤」という用語は、潜在的に有害な微生物(例えば、細菌、酵母又はかび)の増殖を阻止する薬剤を意味する。抗菌防腐剤はまた、使用する用量に応じて多少の殺菌性を示すこともある。本発明の抗菌防腐剤の主な役割は、医薬組成物中におけるこのような微生物の増殖を阻止することである。しかし、抗菌防腐剤は、任意には投与に先立って前記組成物を製造するために使用されるキットの1種以上の成分中における潜在的に有害な微生物の増殖を阻止するためにも使用できる。好適な抗菌防腐剤には、パラベン類(即ち、メチル、エチル、プロピル又はブチルパラベン或いはこれらの混合物)、ベンジルアルコール、フェノール、クレゾール、セトリミド及びチオメルサールがある。好ましい抗菌防腐剤はパラベン類である。
【0072】
「pH調整剤」という用語は、組成物のpHがヒト又は哺乳動物への投与のために許容される範囲(およそpH4.0〜10.5)内にあることを保証するために有用な化合物又は化合物の混合物を意味する。好適なかかるpH調整剤には、トリシン、リン酸塩又はTRIS[即ち、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン]のような薬学的に許容される緩衝剤、及び炭酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム又はこれらの混合物のような薬学的に許容される塩基がある。組成物をキットの形態で使用する場合には、pH調整剤を任意には独立のバイアル又は容器に入れて供給することができ、その結果としてキットのユーザーは多段操作の一部としてpHを調整することができる。
【0073】
「フィラー」という用語は、製造及び凍結乾燥中における材料の取扱いを容易にすることができる薬学的に許容される増量剤を意味する。好適なフィラーには、塩化ナトリウムのような無機塩、及びスクロース、マルトース、マンニトール又はトレハロースのような水溶性糖又は糖アルコールがある。
【0074】
第2の態様の医薬組成物は、無菌製造条件下で(即ち、クリーンルーム内で)製造して所望の無菌で非発熱性の生成物を得ることができる。基本構成部分、特に関連する試薬並びにイメージング剤に接触する装置部品(例えば、バイアル)は無菌であることが好ましい。かかる構成部分及び試薬は、無菌濾過或いは(例えば、γ線照射、オートクレーブ処理、乾熱又は(例えば、エチレンオキシドによる)化学処理を用いる)終末滅菌をはじめとする、当技術分野で公知の方法によって滅菌できる。一部の構成部分を予め滅菌しておけば、最小数の操作を実施するだけで済むので好ましい。しかし、予防策として、医薬組成物の製造における最終段階として少なくとも無菌濾過段階を含めることが好ましい。
【0075】
第2の態様の医薬組成物は、好ましくは第3の態様に関して下記に記載するようなキットから製造される。
【0076】
第3の態様では、本発明は、第2の態様に記載したイメージング剤組成物を製造するためのキットを提供する。かかるキットは第1の態様のイメージング剤を無菌固体形態で含んでいて、生体適合性キャリヤーの無菌供給物で再構成すれば溶解が起こって所望の医薬組成物を与える。
【0077】
その場合、イメージング剤及び上述したような他の任意賦形剤は、凍結乾燥粉末として適当なバイアル又は容器に入れて供給できる。かかる薬剤は、次いで所望の生体適合性キャリヤーを用いて再構成することで、哺乳動物への投与が可能な無菌で非発熱性の形態の医薬組成物を与えるように設計される。
【0078】
イメージング剤の好ましい無菌固体形態は凍結乾燥固体である。無菌固体形態は、好ましくは医薬組成物に関して(上記に)記載したような医薬品用容器に入れて供給される。キットを凍結乾燥する場合、配合物は糖類(好ましくはマンニトール、マルトース及びトリシン)から選択される凍結保護剤を任意に含むことができる。
【0079】
第4の態様では、本発明は、インビボ光学イメージング方法であって、
(i)第2の態様の光学イメージング剤を生きている動物又はヒト被験体に投与する段階、
(ii)(a)プローブが前記被験体内の検査対象標的組織中に蓄積し、(b)前記標的組織中の酵素が第2の結合の1以上を酵素開裂することでプローブを活性化するための時間を経過させて活性化プローブを得る段階、
(iii)前記活性化プローブの蛍光色素によって吸収され得る波長の近赤外励起光で標的組織を照明する段階、
(iv)段階(iii)における蛍光色素の励起によって活性化プローブから発生する蛍光を、蛍光検出器を用いて検出する段階、
(v)蛍光検出器によって検出された光を任意に濾光して蛍光成分を分離する段階、及び
(vi)段階(iv)又は(v)の検出された蛍光から標的組織の光学画像を形成する段階
を含んでなる方法を提供する。
【0080】
「光学イメージング」という用語は、緑色乃至近赤外領域(波長500〜1200nm)の光との相互作用に基づいて、疾患の検出、ステージング又は診断、疾患進展の追跡或いは疾患治療の追跡のための画像を形成する任意の方法を意味する。光学イメージングはさらに、いかなる装置も使用しない直接可視化並びに各種スコープ、カテーテル及び光学イメージング装置(例えば、断層撮影表示用のコンピューター支援ハードウェア)のような装置の使用を伴う直接可視化のためのあらゆる方法を包含する。かかるモダリティ及び測定技法には、特に限定されないが、ルミネセンスイメージング、内視鏡検査、蛍光内視鏡検査、光学コヒーレンス断層撮影、透過率イメージング、時間分解透過率イメージング、共焦点イメージング、非線形顕微鏡検査、光音響イメージング、音響光学イメージング、スペクトル分析、反射スペクトル分析、干渉分析、コヒーレンス干渉分析、拡散光学断層撮影及び蛍光媒介拡散光学断層撮影(連続波、時間ドメイン及び周波数ドメインシステム)、並びに光の散乱、吸光、偏光、ルミネセンス、蛍光寿命、量子収量及び消光の測定がある。これらの技法のさらなる詳細は、Tuan Vo−Dinh(editor):“Biomedical Photonics Handbook”(2003),CRC Press LCC、Mycek & Pogue(editors):“Handbook of Biomedical Fluorescence”(2003),Marcel Dekker,Inc.、及びSplinter & Hopper:“An Introduction to Biomedical Optics”(2007),CRC Press LCCに示されている。
【0081】
段階(iii)の照明光を用いる励起のための波長は使用する特定の蛍光色素に応じて変化するが、本発明のプローブに関しては通例好適には500〜1200nm、好ましくは600〜1000nmの範囲内にある。励起光を発生するための装置は、レーザー(例えば、イオンレーザー、色素レーザー又は半導体レーザー)、ハロゲン光源或いはキセノン光源のような通常の励起光源であり得る。任意には、各種の光学フィルターを用いて最適励起波長を得ることができる。好ましくは、第4の態様の段階(iii)の励起光は連続波(CW)の性質を有する。
【0082】
光学イメージング方法は、好ましくは蛍光内視鏡検査である。第4の態様の哺乳動物体は、好ましくは人体である。イメージング剤の好ましい実施形態は、第2の態様に関して(上記に)記載した通りである。
【0083】
第4の態様の好ましい光学イメージング方法は、蛍光反射イメージング(FRI)である。FRIでは、本発明のイメージング剤を診断すべき被験体に投与し、次いで被験体の組織表面を励起光(通常は連続波(CW)励起)で照明する。光はイメージング剤の蛍光色素を励起する。励起光によって発生するイメージング剤からの蛍光を、蛍光検出器を用いて検出する。好ましくは、戻る光を濾光することで蛍光成分を(単独に又は部分的に)分離する。蛍光から画像を形成する。通常、最小限の処理が実施され(寿命、量子収量などの光学パラメーターを計算するためのプロセッサーは使用されない)、画像は蛍光強度をマップする。イメージング剤は、疾患領域に集中して高い蛍光強度を生み出すように設計されている。したがって、疾患領域は蛍光強度画像中に正のコントラストを生み出す。画像は好ましくはCCDカメラ又はチップを用いて取得される結果、リアルタイムイメージングが可能である。
【0084】
第4の態様の方法では、イメージング剤又は医薬組成物は好ましくは前記哺乳動物体に予め投与されている。「予め投与されている」とは、臨床医の関与の下でイメージング剤を例えば静脈内注射によって患者に投与する段階がイメージングに先立って既に実施されていることを意味する。この実施形態は、哺乳動物体の疾患状態のインビボ診断イメージング用の診断剤を製造するために第2の実施形態のイメージング剤を使用することを含んでいる。
【0085】
第5の態様では、本発明は、インビボ光学イメージング方法であって、
(i)第2の態様の光学イメージング剤を生きている動物又はヒト被験体に投与する段階、
(ii)(a)プローブが前記被験体内の検査対象標的組織中に蓄積し、(b)前記標的組織中の酵素が第2の結合の1以上を酵素開裂することでプローブを活性化するための時間を経過させて活性化プローブを得る段階、
(iii)不均質組成を有する前記被験体の光散乱性生体組織を、所定の経時変動強度を有する光源からの励起光に暴露してイメージング剤を励起する段階であって、組織が励起光を多重散乱させる段階、
(iv)前記暴露に応答した組織からの多重散乱発光を検出する段階、
(v)組織内の様々な位置における蛍光特性のレベルにそれぞれ対応する複数の値をプロセッサーで確定することにより、発光から組織全体の蛍光特性を定量化する段階であって、蛍光特性のレベルが組織の不均質組成に応じて変化する段階、及び
(vi)段階(v)の値に従って組織の不均質組成のマッピングを行うことで組織の画像を生成する段階
を含んでなる方法を提供する。
【0086】
第5の態様のイメージング方法は、FDPM(周波数ドメイン光子移動)を使用する。これは、組織内における色素の検出深度が大きいことが重要である場合、連続波(CW)方法に比べて利点を有する[Sevick−Muraca et al,Curr.Opin.Chem.Biol.,,642−650(2002)]。かかる周波数/時間ドメインイメージングのためには、蛍光色素が、画像化すべき病変の組織深度及び使用する計装のタイプに応じて変調できる蛍光特性を有するならば有利である。
【0087】
段階(v)の蛍光特性は、好ましくはイメージング剤の取込みに対応し、好ましくはさらにイメージング剤の投与前における組織の吸着係数及び散乱係数に対応する複数の量のマッピングを含んでいる。段階(v)の蛍光特性は、好ましくは蛍光寿命、蛍光量子効率、蛍光収量及びイメージング剤取込みの1以上に対応する。蛍光特性は、好ましくは発光強度に無関係であり、またイメージング剤濃度に無関係である。
【0088】
段階(v)の定量化は、好ましくは、(a)値の推定値を設定し、(b)推定値の関数として計算発光を求め、(c)計算発光を前記検出段階の発光と比較して誤差を求め、(d)誤差の関数として蛍光特性の修正推定値を得ることを含んでいる。定量化は、好ましくは、組織の多重光散乱挙動をモデル化する数学的関係から値を求めることを含んでいる。第1のオプションの方法は、好ましくはさらに、前記蛍光特性の変動を検出することでインビボでの組織の代謝特性をモニターすることを含んでいる。
【0089】
第5の態様の光学イメージングは、好ましくは哺乳動物体の疾患状態の管理を支援するために使用される。「管理」という用語は、検出、ステージング、診断、疾患進行のモニタリング又は治療のモニタリングでの使用を意味する。疾患状態は、好適にはプローブの第2の結合を開裂する酵素が関係するものである。イメージング用途には、好ましくは、カメラに基づく表面イメージング、内視鏡検査及び外科的誘導がある。好適な光学イメージング方法のさらなる詳細は、Sevick−Muraca et al[Curr.Opin.Chem.Biol.,,642−650(2002)]によって総説されている。
【0090】
第6の態様では、本発明は、哺乳動物体の疾患状態の検出、ステージング、診断、疾患進行モニタリング又は治療モニタリングを行う方法であって、第6の態様のインビボ光学イメージング方法を含んでなる方法を提供する。
【実施例】
【0091】
以下に詳述する非限定的な実施例によって本発明を例証する。実施例1は、本発明のプローブの予測例を示している。
【0092】
実施例1:カテプシンBプローブの合成(予測例)
【0093】
【化6】

式中、
Qは消光剤部分であり、
qはQと消光剤関係にある蛍光色素であり、
nは2〜150の範囲内の値を有する整数である。
【0094】
ポリマー主鎖はポリエチレングリコール(PEG)基である。それには、カテプシンB(Ala−Arg−Arg−Ala)によって選択的に開裂できる結合を介して消光剤部分(Q)が結合されている。PEG主鎖にはまた、蛍光色素(Fq)も結合されている。具体的な化合物は次の通りである。
【0095】
【化7】

消光剤(Q)はジニトロフェニル基であり、蛍光色素はクマリン誘導体である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
分子量10〜100kDaのポリマー主鎖と、
(i)各々が酵素開裂及び生化学的酸化に耐える第1の結合を介して主鎖に共有結合された一定数(z)の近赤外蛍光色素、及び
(ii)各々が酵素代謝又は生化学的酸化によって開裂され得る第2の結合を介して主鎖に共有結合された一定数(z)の消光剤部分
とを含んでなる分子内消光型蛍光プローブであって、zは1〜150の値を有する整数であり、前記消光剤部分は前記蛍光色素と蛍光消光性エネルギー移動関係にある、蛍光プローブ。
【請求項2】
第2の結合が酵素代謝によって開裂され得る、請求項1記載のプローブ。
【請求項3】
酵素が加水分解酵素である、請求項2記載のプローブ。
【請求項4】
ポリマー主鎖が酵素開裂に耐える、請求項1乃至請求項3のいずれか1項記載のプローブ。
【請求項5】
ポリマー主鎖がポリペプチドを含む、請求項1乃至請求項4のいずれか1項記載のプローブ。
【請求項6】
ポリマー主鎖がコポリマーを含む、請求項1乃至請求項5のいずれか1項記載のプローブ。
【請求項7】
コポリマーがリシン−グルタミン酸コポリマーを含む、請求項6記載のプローブ。
【請求項8】
消光剤部分が
(i)非蛍光性色素、
(ii)ニトロ置換フェニル部分、及び
(iii)アズレンダイマー
から選択される、請求項1乃至請求項7のいずれか1項記載のプローブ。
【請求項9】
消光剤部分が非蛍光性である、請求項1乃至請求項8のいずれか1項記載のプローブ。
【請求項10】
消光剤が生体適合性である、請求項1乃至請求項9のいずれか1項記載の光学イメージング剤。
【請求項11】
第1の結合がスルホンアミド又はアミド結合からなる、請求項1乃至請求項10のいずれか1項記載のプローブ。
【請求項12】
蛍光色素が600〜1000nmの範囲内に吸収極大を有する蛍光色素である、請求項1乃至請求項11のいずれか1項記載のプローブ。
【請求項13】
さらに生物学的標的化分子を含む、請求項1乃至請求項12のいずれか1項記載のプローブ。
【請求項14】
請求項1乃至請求項13のいずれか1項記載のプローブを含んでなる、インビボイメージングのために適した光学イメージング剤。
【請求項15】
プローブが、哺乳動物への投与に適した形態で該プローブを生体適合性キャリヤーと共に含んでなる医薬組成物として提供される、請求項14記載の光学イメージング剤。
【請求項16】
1人の患者用に適した用量を有し、適当な注射器又は容器に入れて提供される、請求項15記載の光学イメージング剤組成物。
【請求項17】
請求項15又は請求項16記載の光学イメージング剤組成物を製造するためのキットであって、当該キットは請求項1乃至請求項13のいずれか1項記載のイメージング剤を無菌固体形態で含んでいて、生体適合性キャリヤーの無菌供給物で再構成すれば溶解が起こって所望の医薬組成物を与える、キット。
【請求項18】
無菌固体形態が凍結乾燥固体である、請求項17記載のキット。
【請求項19】
インビボ光学イメージング方法であって、
(i)請求項14乃至請求項16のいずれか1項記載の光学イメージング剤を生きている動物又はヒト被験体に投与する段階、
(ii)(a)プローブが前記被験体内の検査対象標的組織中に蓄積し、(b)前記標的組織中の酵素が請求項1記載の第2の結合の1以上を酵素開裂することでプローブを活性化するための時間を経過させて活性化プローブを得る段階、
(iii)前記活性化プローブの蛍光色素によって吸収され得る波長の近赤外励起光で標的組織を照明する段階、
(iv)段階(iii)における蛍光色素の励起によって活性化プローブから発生する蛍光を、蛍光検出器を用いて検出する段階、
(v)蛍光検出器によって検出された光を任意に濾光して蛍光成分を分離する段階、及び
(vi)段階(iv)又は(v)の検出された蛍光から標的組織の光学画像を形成する段階
を含んでなる方法。
【請求項20】
段階(iii)の励起光が連続波(CW)の性質を有する、請求項19記載の方法。
【請求項21】
インビボ光学イメージング方法であって、
(i)請求項14乃至請求項16のいずれか1項記載の光学イメージング剤を生きている動物又はヒト被験体に投与する段階、
(ii)(a)プローブが前記被験体内の検査対象標的組織中に蓄積し、(b)前記標的組織中の酵素が請求項1記載の第2の結合の1以上を酵素開裂することでプローブを活性化するための時間を経過させて活性化プローブを得る段階、
(iii)不均質組成を有する前記被験体の光散乱性生体組織を、所定の経時変動強度を有する光源からの励起光に暴露してイメージング剤を励起する段階であって、組織が励起光を多重散乱させる段階、
(iv)前記暴露に応答した組織からの多重散乱発光を検出する段階、
(v)組織内の様々な位置における蛍光特性のレベルにそれぞれ対応する複数の値をプロセッサーで確定することにより、発光から組織全体の蛍光特性を定量化する段階であって、蛍光特性のレベルが組織の不均質組成に応じて変化する段階、及び
(vi)段階(v)の値に従って組織の不均質組成のマッピングを行うことで組織の画像を生成する段階
を含んでなる方法。
【請求項22】
インビボ光学イメージングが、哺乳動物体の疾患状態の検出、ステージング、診断、疾患進行のモニタリング又は治療のモニタリングを支援するために使用される、請求項19乃至請求項21のいずれか1項記載の方法。
【請求項23】
哺乳動物体の疾患状態の検出、ステージング、診断、疾患進行のモニタリング又は治療のモニタリングを行う方法であって、請求項19乃至請求項21のいずれか1項記載のインビボ光学イメージング方法を含んでなる方法。

【公表番号】特表2012−513382(P2012−513382A)
【公表日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−541510(P2011−541510)
【出願日】平成21年12月22日(2009.12.22)
【国際出願番号】PCT/EP2009/067734
【国際公開番号】WO2010/072752
【国際公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【出願人】(396019387)ジーイー・ヘルスケア・アクスイェ・セルスカプ (82)
【Fターム(参考)】