説明

蛍光プローブ

蛍光プローブであって、下記の式(I):


(式中、Rは水素原子、カルボキシル基、又はスルホン酸基以外の一価の置換基を示し;Rは水素原子又は一価の置換基を示し;R及びRはそれぞれ独立に水素原子又はハロゲン原子を示し;Rは測定対象物質との接触により切断される一価の基を示し、ただし、R及びRの組み合わせは、それらが結合するベンゼン環の酸化電位が、(1)上記切断の前には、式(I)で表される化合物が実質的に無蛍光性になるように、かつ(2)上記切断の後には、式(I)で表される化合物に由来する切断後の化合物が実質的に高い蛍光性になるように選ばれる。)で表される蛍光プローブ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は蛍光プローブに関する。より具体的には、酵素などの標的物質を捕捉して蛍光を発する蛍光プローブに関するものである。
【背景技術】
フルオレセインは19世紀から知られる蛍光物質で、水溶液中で500nm付近で励起可能であり、量子収率も高いことから蛍光プローブの母核として汎用されている。例えば、一酸化窒素の蛍光プローブ(特開平10−226688号公報)、亜鉛の蛍光プローブ(国際公開WO 01/62755)などの母核に利用されている。
フルオレセインのカルボキシル基を水素原子に置き換えた6−ヒドロキシ−9−フェニルフルオロンは蛍光量子収率が低くなるため、このカルボキシル基はフルオレセインの蛍光団としての特性に役割を持つと考えられてきた(Lindqvist,L.,et al.,J.Chem.Phys.,44,1711−12,1966)。このような理由から、従来提案されているフルオレセイン誘導体ではフルオレセインの蛍光特性を損なわないようにこのカルボキシル基が保存されており、カルボキシル基を他の官能基に変換した化合物はほとんど知られていない。
【発明の開示】
本発明の課題は、蛍光特性に優れた蛍光プローブを提供することにある。本発明者らはフルオレセインの蛍光物質としての性質を種々検討するうち、その蛍光特性はもっぱら三環のキサンテン骨格に基づくものであり、キサンテン環の9−位に結合する2−カルボキシフェニル基は蛍光特性に実質的に何の影響も与えていないとの結論に至った。そこで、本発明者らは、2−カルボキシフェニル基のカルボキシル基を水素原子以外の置換基、例えばメチル基又はメトキシ基などに置換した化合物の蛍光特性を確認したところ、驚くべきことに、これらの化合物がフルオレセインとほぼ同等の強度の蛍光量子収率を有しており、励起波長及び蛍光波長もほぼ同じであることを発見した。
これらの事実、及びカルボキシル基を水素原子に置き換えた6−ヒドロキシ−9−フェニルフルオロンでは蛍光量子収率が低下する事実から、本発明者らはフルオレセインにおけるカルボキシル基の役割がキサンテン環とベンゼン環部の炭素−炭素単結合による自由回転を防ぐことにあり、これによって励起状態の蛍光団が発光過程を経ずに失活する経路を妨げることにあると結論した。さらに、本発明者らは上記の知見を基にして高い蛍光特性を有する蛍光プローブを創出すべく研究を行った結果、キサンテン環の9−位に結合するフェニル基の電子密度が十分に高い化合物では実質的に非蛍光性であり、該フェニル基の電子密度が十分に低い化合物では高い蛍光性を有すること、及びフルオレセインのカルボキシル基を他の官能基に変換して該フェニル基の電子密度を調節することにより、所望の蛍光特性を有する蛍光プローブを合理的に設計できることを見出し、この発明について特許出願した(PCT/JP03/8585)。
本発明は上記の課題を解決するための別の手段を提供すべくさらに研究を進めた結果、キサンテン環のヒドロキシル基がプロトン化されている場合と脱プロトン化されている場合とを比較すると、両者でキサンテン環の還元電位に大きな差が生じていること、及びこの還元電位差を蛍光のON/OFFスイッチとして利用すべくベンゼン環部分(電子ドナー部位)の電子密度を適宜選択することにより、キサンテン環部位に測定対象物質との反応部位を導入した新規蛍光プローブを提供できることを見出した。本発明は上記の知見を基にして完成されたものである。
すなわち、本発明は、蛍光プローブであって、下記の式(I):

(式中、Rは水素原子、カルボキシル基、又はスルホン酸基以外の一価の置換基を示し;Rは水素原子又は一価の置換基を示し;R及びRはそれぞれ独立に水素原子又はハロゲン原子を示し;Rは測定対象物質との接触により切断される一価の基を示し、
ただし、R及びRの組み合わせは、それらが結合するベンゼン環の酸化電位が、
(1)上記切断の前には、式(I)で表される化合物が実質的に無蛍光性になるように、かつ
(2)上記切断の後には、式(I)で表される化合物に由来する切断後の化合物が実質的に高い蛍光性になるように選ばれる。)
で表される蛍光プローブを提供するものである。
この発明の好ましい態様によれば、該ベンゼン環の酸化電位が1.55V〜1.75VになるようにR及びRの組み合わせが選ばれる上記の蛍光プローブ;該ベンゼン環の酸化電位が1.60V〜1.70Vの範囲となるようにR及びRの組み合わせが選ばれる上記の蛍光プローブが提供される。本発明のさらに好ましい態様によれば、R及びRが水素原子である上記の蛍光プローブ;Rが低級アルキル基であり、Rが低級アルコキシ基である上記の蛍光プローブ;Rが低級アルキル基であり、Rがキサンテン環残基に対してパラ位の低級アルコキシ基である上記の蛍光プローブ;上記の切断が加水分解により生じる上記の蛍光プローブ;測定対象物質が加水分解酵素である上記の蛍光プローブ;Rがリン酸エステル加水分解酵素により切断されるホスホノ基である上記の蛍光プローブ;Rが糖加水分解酵素により切断される糖誘導体の残基である上記の蛍光プローブ;Rがβ−ガラクトピラノシル基である上記の蛍光プローブ;Rがβ−ガラクトピラノシル基であり、Rがカルボキシ置換アルコキシ基又は4−カルボキシブトキシ基である上記の蛍光プローブ;Rがβ−ラクタマーゼによる切断される環状アミドを含む基である上記の蛍光プローブ;β−ラクタマーゼによる切断される環状アミドを含む基が下記の式で表される基である上記の蛍光プローブ;

が提供される。
別の観点からは、上記の一般式(I)(式中、R、R、R、R、及びRはそれぞれ上記の定義と同義である)で表される蛍光プローブの設計方法であって、R及びRの組み合わせとして、それらが結合するベンゼン環の酸化電位が、
(1)上記切断の前には、式(I)で表される化合物が実質的に無蛍光性になるように、かつ
(2)上記切断の後には、式(I)で表される化合物に由来する切断後の化合物が実質的に高い蛍光性になるように
組み合わせを選択する工程を含む方法が本発明により提供される。さらに、上記の設計方法により得られた蛍光プローブも本発明により提供される。
【図面の簡単な説明】
第1図は、フルオレセインのカルボキシル基をアルキル基又はアルコキシ基に変換した誘導体(化合物1〜8)について、各化合物の蛍光量子収率とPETドナー部分であるベンゼン環部の酸化電位との関係を示した図である。
第2図は、フルオレセインのカルボキシル基をアルキル基又はアルコキシ基に変換した誘導体(化合物1〜8)について、各化合物の蛍光量子収率とPETドナー部分であるベンゼン環部のHOMOエネルギーレベルとの関係を示した図である。
第3図は、PETの概念図及びフルオレセインについてPETドナー部と蛍光団の2つの部位を示した図である。
第4図は、本発明蛍光プローブAとβ−ガラクトシダーゼとの反応により生じる蛍光を経時的に示した図である。図中右側のグラフは反応当初の15分間の蛍光強度変化を拡大して示したものである。
第5図は、本発明蛍光プローブAを用いて細胞中のβ−ガラクトシダーゼの測定を行った結果を示した写真である。左側はlacZ陽性細胞の結果を示し、右側はLacZ陰性細胞の結果を示す。
第6図は、化合物11(TG−Phos)をアルカリフォスファターゼに接触させた場合の蛍光強度の経時変化を示した図である。
第7図は、TG−Phosのアルカリフォスファターゼによる反応前後の蛍光スペクトル変化(a)及び吸収スペクトル(b)変化を示した図である。
第8図は、例9で得た2−Me 4−O(CHCOOAM TG β−Galをβ−ガラクトシダーゼに接触させた場合の蛍光強度の経時変化を示した図である。
第9図は、2−Me 4−O(CHCOOAM TG β−Galのをβ−ガラクトシダーゼによる反応前後の蛍光スペクトル変化(a)及び吸収スペクトル(b)変化を示した図である。
第10図は、2−Me 4−O(CHCOOAM TG−β Galを用いた生細胞系でのβ−ガラクトシダーゼ蛍光アッセイの結果を示した写真である。
第11図は、TG−β Lacを用いたインビトロβ−ラクタマーゼ蛍光アッセイの結果を示した図である。
【発明を実施するための最良の形態】
本発明により提供される式(I)で表される蛍光プローブは、測定対象物質との接触により切断されて蛍光性の化合物(上記式(I)においてRが切断され、ヒドロキシ基がアニオン状態で存在する化合物に相当する)を生成することができ、測定対象物質の測定のための蛍光プローブとして用いられる。測定対象物質の種類は特に限定されず、酵素、金属イオン(例えば、ナトリウムイオンやリチウムイオンなどのアルカリ金属イオン、カルシウムイオンなどのアルカリ土類金属イオン、マグネシウムイオン、亜鉛イオンなど)、非金属イオン(炭酸イオンなど)、活性酸素種(例えば、一酸化窒素、ヒドロキシラジカル、一重項酸素、及びスーパーオキシドなど)などのいずれであってもよいが、好ましくは酵素である。酵素としては、例えば、還元酵素、酸化酵素、加水分解酵素などを挙げることができる。例えば、β−ラクタマーゼ、チトクロームP450酸化酵素、β−ガラクトシダーゼ、β−グルコシダーゼ、β−グルクロニダーゼ、β−ヘキソサミニダーゼ、ラクターゼ、アルカリホスファターゼなどを挙げることができるが、これらに限定されることはない。酵素のうち、特に加水分解酵素が好ましい。加水分解酵素の典型例として、例えばβ−カラクトシダーゼ、β−ラクタマーゼ、又はアルカリフォスファターゼなどを挙げることができるが、加水分解酵素は上記のものに限定されるわけではない。
本発明の蛍光プローブは、従来、フルオレセインを母核として種々提案されている各種測定対象物の測定のための蛍光プローブにおいて、キサンテン環の9−位に結合する2−カルボキシフェニル基のカルボキシル基を水素原子、スルホン酸基以外の一価の置換基に変換し、かつ測定対象物質との反応部位をキサンテン骨格のヒドロキシル基としたことを特徴としている。本発明の蛍光プローブはそれ自体は実質的に無蛍光性であるが、測定対象物質との接触により切断され、実質的に高い蛍光性を有する化合物を生成することを特徴としている。
は水素原子、カルボキシル基、又はスルホン酸基以外の一価の置換基を示す。Rは水素原子又は一価の置換基を示す。これらの基が示す一価の置換基の種類は特に限定されないが、例えば、Rとしてはアルキル基が好ましく、Rとしてはアルコキシ基が好ましい。Rが示すアルキル基又はRが示すアルコキシ基は、1個又は2個以上の任意の置換基を有していてもよい。Rが示す置換アルコキシ基としては、例えば、カルボキシル置換C1−6アルコキシ基又はアルコキシカルボニル置換C1−6アルコキシ基などが挙げられる。本明細書において、「アルキル基」又はアルキル部分を含む置換基(例えばアルコキシ基など)のアルキル部分は、例えば、炭素数1〜12個、好ましくは炭素数1〜6個、好ましくは炭素数1〜4個の直鎖、分枝鎖、環状、又はそれらの組み合わせからなるアルキル基を意味している。より具体的には、アルキル基として低級アルキル基(炭素数1〜6個のアルキル基)が好ましい。低級アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、シクロプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、シクロプロピルメチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基などを挙げることができる。Rとしては低級アルキル基がより好ましく、Rとしては低級アルコキシ基がより好ましい。特に好ましいのは、Rがメチル基であり、Rがメトキシ基である化合物である。また、Rがモノカルボキシ基置換C1−6アルコキシ基又はモノアルコキシカルボニル置換C1−6アルコキシ基である化合物も好ましい。特に好ましいのはRが4−カルボキシブトキシ基又は4−アセトキシメチルオキシカルボニルブトキシ基である化合物である。Rが4−アセトキシメチルオキシカルボニルブトキシ基である本発明の蛍光プローブは高い脂溶性により細胞内に効率良く取り込まれ、かつ、細胞内に取り込まれると細胞内に存在するエステラーゼにより4−アセトキシメチルオキシカルボニルブトキシ基が加水分解を受け水溶性の高い蛍光プローブに変換され細胞内に滞留しやすくなる優れた特性を有しており、細胞内をイメージングする用途の蛍光プローブとして大変適している。ベンゼン環上のRの置換位置は特に限定されないが、キサンテン環の残基の結合位置に対してパラ位であることが好ましい。R及びRが結合するベンゼン環上には、これらの置換基以外に任意の置換基が存在していてもよい。
本明細書においてハロゲン原子という場合には、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、又はヨウ素原子のいずれでもよく、好ましくはフッ素原子、塩素原子、又は臭素原子である。R及びRが示すハロゲン原子としては塩素原子又はフッ素原子が好ましい。R及びRがそれぞれ独立に水素原子、塩素原子、又はフッ素原子であることが好ましい。Rは測定対象物質との組み合わせにより容易に切断されるように適宜選択することができるが、例えば、糖加水分解酵素を測定対象物質として用いる場合には、Rはとしてその酵素の基質となる糖化合物の残基を用いることができる。糖化合物が有するヒドロキシ基やアミノ基などの官能基は必要に応じて適宜の保護基で保護されていてもよい。このような保護基を有する化合物もすべて本発明の範囲に包含される。
本発明の蛍光プローブにおいて、R及びRの組み合わせは、測定対象物質によるRの切断前には、式(I)で表される化合物が実質的に無蛍光性になるように選択され、かつ(2)測定対象物質によるRの切断後には、式(I)で表される化合物に由来する切断後の化合物が実質的に高い蛍光性になるように選択される。
及びRの組み合わせの選択に際して、それらが結合するベンゼン環の電子密度の情報を利用することができる。電子密度の情報は、例えば該ベンゼン環の酸化電位を量子化学的手法に従って計算することにより容易に入手することができる。該ベンゼン環の酸化電位が低くなることは該ベンゼン環の電子密度が上昇することを意味しており、これはHOMO軌道エネルギーが高くなることに対応している。例えば、該ベンゼン環部位のHOMOエネルギーを密度汎関数法(B3LYP/6−31G(d))により求めることができる。なお、本明細書中に記載された酸化電位はすべて飽和カロメロ電極(SCE)を対照に記述しており、硝酸銀電極(Ag/Ag)を参照電極とした場合の値とは約0.24V基準が異なっている。
本明細書の実施例の例2に具体的に示されているように、一般式(I)で表される化合物においてRが水素原子である化合物は、pH13のアルカリ水溶液中ないし中性水溶液中では、キサンテン環のヒドロキシ基のプロトンが脱離してアニオンになっているが(すなわち該ヒドロキシル基が−Oとなっている)、例えば、この条件下において該ベンゼン環の酸化電位が1.20V以下の化合物は実質的に無蛍光性であり、該ベンゼン環の酸化電位が1.60V以上では実質的に強い蛍光性の化合物となる場合がある。また、pH3.4の酸性条件下では、該ヒドロキシル基にプロトンが存在する状態になっているが(すなわち該ヒドロキシル基が−OHとなっている)、例えば、該ベンゼン環の酸化電位が1.60V以下の化合物は実質的に無蛍光性であり、該ベンゼン環の酸化電位が1.90Vよりも大きい場合は実質的に強い蛍光性の化合物となる場合がある。この関係を図示したのが第1図である。この第1図には、R及びRとして種々の組み合わせを有する化合物における該ベンゼン環の酸化電位の変化と、それらの化合物の蛍光量子収率を示した。pH13の曲線は脱プロトン化された化合物の酸化電位と蛍光量子収率との関係、pH3.4の場合はプロトン化された化合物の酸化電位と蛍光量子収率との結果を示している。
該ヒドロキシル基にプロトンが存在する化合物と、Rが例えばアルキル基などの化合物とを比較した場合、該ベンゼン環部分の酸化電位は実質的に同一であることが実験的に確認されており、Rの切断が生じる前の化合物における該ベンゼン環の酸化電位は、一般式(I)で表される化合物においてRが水素原子である化合物をpH3.4の酸性条件下に置いた場合の該ベンゼン環の酸化電位で代用することができる。従って、該ベンゼン環の酸化電位を指標としてR及びRの好ましい組み合わせを選択するためには、例えば第1図を参照しつつ、一般式(I)で表される化合物においてRが水素原子である化合物について、pH3.4における蛍光量子収率とpH13における蛍光量子収率との差が最大になるように選択すればよい。より具体的には、第1図において、該ベンゼン環の酸化電位が1.55V〜1.75VになるようにR及びRの組み合わせを選ぶことが好ましく、該ベンゼン環の酸化電位が1.60V〜1.70Vの範囲となるようにR及びRの組み合わせを選ぶことがより好ましい。最も好ましいのは、該ベンゼン環の酸化電位が1.65V程度となるようにR及びRの組み合わせを選ぶことである。なお、R及びRが結合するベンゼン環上にR及びR以外の1又は2以上の置換基が存在する場合には、R及びR並びにそ(れら)の置換基を全て含めた状態で該ベンゼン環の酸化電位を上記の範囲となるように選択することが好ましい。
いかなる特定の理論に拘泥するわけではないが、本発明者らが見出した上記の知見はPET(Photoinduced Electron Transfer:光誘起電子移動)により説明できる。PETとは蛍光消光の1つの方法であり、励起光照射により生成する1重項励起蛍光団が蛍光を発して基底状態に戻る速度よりも速く、近隣の電子供与部位(PETドナー)から電子移動が起き、蛍光消光が起こるというものである。式(I)で表される化合物について、蛍光団として作用するキサンテン環部位と、蛍光を消光する部位であるベンゼン環部位(PETドナー)とに分割して考えると、ベンゼン環側の酸化電位が低い(すなわち電子密度が高く、HOMOエネルギーが高い)とPETによりキサンテン環由来の蛍光が消光する。
蛍光プローブとしては、測定対象物質によるRの切断前には実質的に蛍光がなく、測定対象物質によるRの切断後には実質的に強い蛍光性物質に変化する性質を有することが求められるので、蛍光強度の変化が大きいものを好適なプローブとして選択することが望ましい。例えば、測定対象物質によるRの切断前にはPETにより蛍光が消失しており、測定対象物質によるRの切断後には実質的にPETが生じないようにプローブを設計することができる。本発明の蛍光プローブ設計法では、ベンゼン環側の酸化電位を固定しておき、Rの切断の前後でキサンテン環に生じる還元電位の変化を利用して、Rの切断の前にはPETにより蛍光が消光しており、切断の後にはPETに障害が生じて切断後の化合物が強い蛍光を発するように蛍光プローブを設計することができる。
本明細書において用いられる「測定」という用語は、定量、定性、又は診断などの目的で行われる測定、検査、検出などを含めて、最も広義に解釈しなければならない。本発明の蛍光プローブを用いた測定対象物の測定方法は、一般的には、(a)上記式(I)で表される化合物と測定対象物質とを接触させてRを切断させる工程、及び(b)上記工程(a)で生成した化合物(Rが切断された化合物に相当する)の蛍光を測定する工程を含んでいる。例えば、生理食塩水や緩衝液などの水性媒体、又はエタノール、アセトン、エチレングリコール、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミドなどの水混合性の有機溶媒と水性媒体との混合物などに本発明の蛍光プローブ又はその塩を溶解し、細胞や組織を含む適切な緩衝液中にこの溶液を添加して、蛍光スペクトルを測定すればよい。
測定対象物質によりRが切断された後の化合物の蛍光の測定は通常の方法で行うことができ、インビトロで蛍光スペクトルを測定する方法や、バイオイメージングの手法を用いてインビボで蛍光スペクトルを測定する方法などを採用することができる。例えば、定量を行う場合には、常法に従って予め検量線を作成しておくことが望ましい。
本発明の蛍光プローブとしては、上記式(I)で表される化合物のほか、その塩を用いてもよい。塩の種類は特に限定されないが、例えば、酸付加塩としては塩酸塩、硫酸塩、硝酸塩などの鉱酸塩、又はメタンスルホン酸塩、p−トルエンスルホン酸塩、シュウ酸塩、クエン酸塩、酒石酸塩などの有機酸塩などを挙げることができ、塩基付加塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩などの金属塩、アンモニウム塩、又はトリエチルアミン塩などの有機アミン塩などを挙げることができる。これらのほか、グリシンなどのアミノ酸との塩を形成する場合もある。必要に応じて、試薬の調製に通常用いられる添加剤を配合して組成物として用いてもよい。例えば、生理的環境で試薬を用いるための添加剤として、溶解補助剤、pH調節剤、緩衝剤、等張化剤などの添加剤を用いることができ、これらの配合量は当業者に適宜選択可能である。これらの組成物は、粉末形態の混合物、凍結乾燥物、顆粒剤、錠剤、液剤など適宜の形態の組成物として提供される。
【実施例】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明の範囲は下記の実施例に限定されることはない。
例1:化合物の合成
下記の化合物を合成した。これらの化合物は化合物No.が大きくなるほどキサンテン環の9−位に結合するベンゼン環の酸化電位が低くなる(すなわち電子密度が高くなる、換言すればHOMO軌動エネルギーが高くなる)ように設計した。また、無置換ベンゼン体及び化合物1の合成スキームを以下に示した(スキーム中、Meはメチル基を示す)。


キサントンをProc.Indian.Acad.Sci.Sect.A.,57,280(1963)に記載された方法で合成し、得られたキサントンをジ(tert−ブチルジメチリシリル)保護体(キサントン−TBDMS)とした(J.Biol.Chem.,264,14,8171(1989))。よく乾燥させた容器にMg 109mg(4.50mmol)を入れ、真空ポンプで減圧にしながら250℃で180分間加熱攪拌した。放冷後、アルゴン置換にかえ、2−ブロモトルエン77mg(0.45mmol)を蒸留したTHF 2mlに溶解して加え、60℃まで徐々に加熱した。反応液が暗緑色に変化したのを確認して氷冷した。キサントン−TBDMS 137mg(0.300mmol)を蒸留したTHF 2mlに溶解して加え、10分間攪拌した。反応液に2N HCl水溶液10mlを加えて攪拌すると黄色固体が析出した。この固体を濾取した後、少量のTHFで洗浄して乾燥し黄色固体を得た(87mg,収率96%)。
H−NMR(300MHz,DMSO)δ 2.00(3H,s),7.01(2H,d,J=9.15Hz),7.10(2H,s),7.21(2H,d,J=9.15Hz),7.31(1H,d,J=7.14Hz),7.52(3H,m)
MS(El)302(M
同様にして化合物2〜化合物8を得た。
化合物2
H−NMR(300MHz,DMSO)δ 1.97(3H,s),2.42(3H,s),7.01(2H,d,J=9.15Hz),7.10(2H,s),7.21(4H,m),7.34(1H,s)
MS(El)316(M
化合物3
H−NMR(300MHz,DMSO)δ 1.95(3H,s),2.35(3H,s),6.99(2H,d,J=9.15Hz),7.05(2H,s),7.12(1H,s),7.21(2H,d,J=9.15Hz),7.39(2H,m)
MS(El)316(M
化合物4
H−NMR(300MHz,DMSO)δ 3.70(3H,s),7.02(2H,d,J=9.20Hz),7.08(2H,s),7.23(2H,t,J=7.50Hz),7.34(4H,m),7.68(1H,m)
MS(El)318(M
化合物5
H−NMR(300MHz,DMSO)δ 1.98(3H,s),3.86(3H,s),6.96(2H,d,J=9.15Hz),7.03(3H,m),7.10(1H,s),7.23(1H,d,J=8.22Hz),7.28(2H,d,J=9.15Hz)
MS(El)332(M
化合物6
H−NMR(300MHz,DMSO)δ 2.33(3H,s),3.66(3H,s),7.07(2H,d,J=9.15Hz),7.14(3H,m),7.26(1H,d,J=8.88Hz),7.42(1H,d,J=9.15Hz),7.48(1H,d,J=8.88Hz)
MS(El)332(M
化合物7
H−NMR(300MHz,DMSO)δ 3.70(3H,s),3.91(3H,s),6.83(1H,d,J=8.43Hz),6.89(1H,s),7.06(2H,d,J=9.36Hz),7.12(2H,s),7.26(1H,d,J=8.43Hz),7.47(2H,d,J=9.36Hz)
MS(El)348(M
化合物8
H−NMR(300MHz,DMSO)δ 3.64(3H,s),3.76(3H,s),6.96(1H,s),7.04(2H,d,J=9.15Hz),7.10(2H,s),7.23(1H,d,J=9.15Hz),7.30(1H,d,J=9.15Hz),7.23(2H,d,J=9.15Hz)
MS(El)348(M
例2
上記で合成した各化合物の蛍光量子収率とベンゼン環部の酸化電位との関係を調べた。結果を表1及び第1図に示す。図に示した結果から明らかなように、各化合物の蛍光量子収率はベンゼン環部の酸化電位に依存して変化した。pH13のアルカリ水溶液中ではキサンテン環のOH基のプロトンは脱離してアニオンになっており、この条件では酸化電位が1.20V以下ではほぼ無蛍光となり、1.65V以上では量子収率がほぼ1に近い蛍光を有していた。その間は酸化電位が低下するに従って量子収率の減少が見られた。pH3.4の酸性条件下では、塩基性条件下に比べ蛍光の変化するベンゼン環の酸化電位が変化した。すなわち、酸化電位が1.60V以下ではほぼ無蛍光であり、1.90V以上では量子収率がほぼ0.3の蛍光を発した。なお、pH3.4ではキサンテン環のOH基はプロトネートしており、この条件下でのフルオレセインの量子収率はほぼ0.3位であることが知られている。

a)0.1N NaOH水溶液中で測定した。
b)データは0.1M過塩素酸テトラブチルアンモニウム(TBAP)を含むアセトニトリル中で測定した。
c)データはGaussian 98Wを用いてB3LYP/6−31G(d)//B3LYP/6−31G(d)により得た。
d)測定せず。
例3
一般に化合物の酸化電位は量子化学計算により予測可能である。そこで、上記化合物のベンゼン環部位のHOMOエネルギーを密度汎関数法(B3LYP/6−31G(d))により求め、これと蛍光量子収率との関係をプロットした。その結果、例2で酸化電位を指標として得られた結果とほぼ同様の関係が得られた(第2図)。この結果から、これらの化合物の蛍光特性は量子化学計算から定量的に予想可能であることが示された。この知見に基づいて、本発明の合理的な蛍光プローブ設計方法を実施することができる。
例4
PET(Photoinduced Electron Transfer:光誘起電子移動)とは蛍光消光の1つの方法であり、励起光照射により生成する1重項励起蛍光団が蛍光を発して基底状態に戻る速度よりも速く、近隣の電子供与部位(PETドナー)から電子移動が起き、蛍光消光が起こるというものである。本発明の化合物を蛍光団であるキサンテン部位と、蛍光を消光する部位であるベンゼン環部(PETドナー)に分割して考えた場合、ベンゼン環の酸化電位が低い(すなわち電子密度が高い、換言すればHOMOエネルギーが高い)とPETによりキサンテン由来の蛍光が消光する。実際、両部位はフルオレセインのX線結晶解析からほぼ直交していることが明らかになっており、また化合物1〜8では励起・蛍光波長がほぼ同じであることから、本発明の化合物を2つの部位に分割して考察する仮説は妥当性が高い。PETの概念図及びフルオレセインを2つの部位に分割した概念図を第3図に示した。
蛍光プローブは、測定対象物質によりRが切断されていない場合には蛍光が無く、測定対象物質によりRが切断されて初めて蛍光を発する機能を持つ分子である。すなわち、前者の状態ではPETにより蛍光が消光しており、後者の状態ではPETが起こらなくなる蛍光プローブを設計することにより、理想的な蛍光プローブが得られる。ベンゼン環部がどの程度の酸化電位を持てば蛍光プローブとして望ましい性質を有するかは、例えば例2に示した実験で容易に明らかにすることが可能であり、また新規の蛍光団に対してもその還元電位を測定することで容易に予想可能である。本発明の化合物では、PETドナー部として作用するベンゼン環部位の酸化電位は変化せず、キサンテン環部位の還元電位がRの切断により変化してPETを障害し、その結果としてRが切断された化合物から蛍光が発せられる。この際、PETドナー部の酸化電位は量子化学計算から予想可能である。以上のステップにより、目的とする蛍光プローブを一切の合成無しに設計することが可能となる。
例5:β−ガラクトシダーゼ蛍光プローブの製造

よく乾燥した容器に無水ジメチルホルムアミド(0.5ml)、化合物510mg(30μmol)、CsCO100mg(300μmol)、2,3,4,6−テトラ−O−アセチル−β−D−ガラクトピラノシルブロミド100mg(250μmol)を加えた。アルゴン置換し、撹拌しつつ室温にて終夜反応させた。沈殿物を濾去し、母液を減圧濃縮した。得られた残渣を精製水に溶解しジクロロメタンで3回抽出し、有機相を飽和食塩水で洗浄して無水硫酸ナトリウムで乾燥した。溶媒を留去して黄色粉末を得た。溶出溶媒としてジクロロメタン−メタノール(100:3)を用い、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製し化合物9のオレンジ色粉末を得た(11.3mg,57%)。
H NMR(300MHz/CDCl)δ 7.15−6.38(m,9H),5.52(m,2H),5.18−5.12(m,2H),4.25−4.12(m,3H),3.92(s,3H),3.70(s,3H),2.19(s,3H),2.13(s,3H),2.07(s,3H),2.03(s,3H)
EI−MS:M=678
例6:β−ガラクトシダーゼ蛍光プローブを用いたβ−ガラクトシダーゼの測定
例5で得た化合物9(テトラアセテート体)を無水ジメチルスルホキシドに溶解し100mMストック溶液を調製した。この溶液を2Mナトリウムメトキシドで0℃、一時間処理して糖部分の4つのアセチル基を加水分解した化合物(以下、この化合物を「本発明蛍光プローブA」と呼ぶ。)を得た。その後に目的の濃度になるようバッファーで希釈して反応を停止した。インビトロでのβ−ガラクトシダーゼとの反応では、本発明蛍光プローブAの最終濃度が1μMとなるように調整し、バッファーとして100mMリン酸ナトリウムバッファー(pH7.4)を用い、最終的に14.3mM 2−メルカプトエタノール、1mM MgCl、0.001%ジメチルスルホキシド、0.01%メタノール、6U β−ガラクトシダーゼを含む溶液3mlを調製して1cmキュベットの中で37℃にて反応を行った。蛍光強度変化は、Perkin−Elmer LS−50B蛍光スペクトル測定装置を用いて観測した。β−ガラクトシダーゼ(分子量540,000,EC3.2.1.23)はシグマ−アルドリッチより購入した。生細胞でのアッセイでは本発明蛍光プローブAの最終濃度が10μMとなるように調整し、バッファーとして生理食塩水(pH7.4;150mM NaCl,4mM KCl,2mM CaCl,1mM MgCl,5mM HEPES,0.1%グルコース;以下PSSと略す)を用いて調製した溶液を用いた。GP293細胞にLNCX2−lacZを導入したもの(lacZ陽性細胞)をコラーゲンタイプ1でコートした24ウェルマイクロプレートに播種し、ウェルをPSSで2回洗浄した後、上記の本発明蛍光プローブAの溶液を加えて30分間室温でインキュベーションした。ベクターを導入してないGP293細胞(lacZ陰性細胞)を陰性対照として用いた。蛍光イメージング像は、カメラとしてDC300Fカメラ(ライカ)、対物レンズとしてUPlanFl 10x/0.31対物レンズ(オリンパス光学)を取り付けたIX70倒立顕微鏡(オリンパス光学)を用い、励起波長488nm、蛍光波長510−550nmの条件で撮像した。
本発明蛍光プローブAはβ−ガラクトシダーゼにより糖部分が容易に切断され、実質的に無蛍光の状態(蛍光量子収率=0.009)から強い蛍光性化合物(蛍光量子収率=0.84)に変化した。第4図にβ−ガラクトシダーゼ添加後の蛍光の経時変化を示す。比較化合物として公知のフルオレセイン−ジ−O−ガラクトシド(FDG)を用いた。本発明蛍光プローブAはFDGに比べて反応速度が速く、短時間で高い蛍光強度を与えた。この結果から、本発明蛍光プローブAにより、β−ガラクトシダーゼ活性を高感度に測定できることがわかる。生細胞を用いた試験結果を第5図に示す。lacZ陽性細胞の場合のみに蛍光が認められ、本発明蛍光プローブAを用いて細胞中のβ−ガラクトシダーゼを高感度に測定できることがわかる。また、本発明蛍光プローブAは、生理的条件下で細胞膜を透過して容易に細胞内に到達していることも示された。
例7:アルカリフォスファターゼ蛍光プローブの製造

よく乾燥した容器に無水クロロホルム4ml、化合物515.7mg(47μmol),トリエチルアミン16.4μl(118μmol),クロロりん酸ジエチル6.8μl(47μmol)を加えた。アルゴン置換し、撹拌しつつ室温にて一晩反応させた。反応溶媒を留去し、得られた残渣をシリカゲルカラムにて精製(溶出溶媒;ジクロロメタン−メタノール(100:3))し、化合物10(26.2mg、定量的、オレンジ色粉末)を得た。
H NMR(300MHz/CDCl)δ 1.39(m,6H),2.05(s,3H),3.89(s,3H),4.27(m,4H),6.45(d,J=2.0Hz),6.58(dd,J=9.7Hz,2.0Hz),6.86−7.35(m,7H)
HR−MS[ESI−MS]:[M+H]calcd for 369.14161,found 369.13810
よく乾燥した容器に無水ジクロロメタン1ml、化合物10 26.0mg(56μmol)、ヨードトリメチルシラン19.7μl(140μmol)を加えた。アルゴン置換し、撹拌しつつ室温にて一時間反応させた。反応溶媒を留去し、得られた残渣を逆相プレパラティブTLC RP18Wにて精製(展開溶媒;アセトニトリル/水(1:1))し、化合物11(TG−Phos)(1.6mg、収率5.6%、オレンジ色粉末)を得た。
H NMR(300MHz/CDOD)δ 2.02(s,3H,a),3.90(s,3H,c),6.48(d,J=2.0Hz,i),6.60(dd,J=9.6Hz,2.0Hz,j),6.96−7.71(m,7H,b,d,e,f,g,h,k)
HR−MS[ESI−MS]:[M+Na]+calcd for 411.06336,found 411.05935
Φf1(100mMリン酸ナトリウムバッファー,pH7.4)=0.029
例8:イン・ビトロ アルカリフォスファターゼ蛍光アッセイ
化合物11を脱水メタノールに溶解し1mMのストック溶液を作製した。その後1μMになるようにアッセイバッファーに希釈した(アッセイバッファー:0.1Mトリス−塩酸バッファー,pH7.4,0.5mM塩化マグネシウム,0.1%メタノール)。この希釈液3mlを1cmキュベットに移し、37℃にてアルカリフォスファターゼ(0.08units/蛍光測定開始後5分に添加)による蛍光強度変化を測定した(第6図)。測定には、Perkin−Elmer LS−50B蛍光スペクトル測定装置を用い励起波長491nm、510nmでの蛍光強度変化の経時変化を観察した。アルカリフォスファターゼ(分子量160kDa,EC 3.1.3.1)は、シグマ−アルドリッチより購入した。第7図には、TG−Phosのアルカリフォスファターゼによる反応前後の蛍光スペクトル変化(a)及び吸収スペクトル(b)変化を示した。
例9:細胞内滞留型β−ガラクトシダーゼ蛍光プローブの製造

よく乾燥した容器に無水ジメチルホルムアミド10ml、4−ブロモ−3−メチルフェノール2g(10.7mmol)、tert−ブチルジメチルシリルクロライド(TBDMS−Cl)4.8g(30mmol)、イミダゾール3.6g(50mmol)を加えた。アルゴン置換し、室温にて三時間攪拌後、溶媒を真空ポンプにて留去した。得られた残渣を精製水に溶解しジクロロメタンで三回振りとり、飽和食塩水で洗浄、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、ジクロロメタンを留去して、化合物12(3.04g、収率94.7%、無色透明液体)を得た。
H NMR(300MHz/CDCl)δ 7.33(d,J=8.6Hz,1H),6.72(d,J=2.9Hz,1H),6.53(dd,J=8.6Hz,2.9Hz,1H),2.32(s,3H),0.97(s,9H),0.18(s,6H)
EI−MS:M=FAB−MS;[M]=300,302
化合物121.28g(4.27mmol)を蒸留したテトラヒドロフラン10mlに溶解し、よく乾燥させアルゴン置換した二頚コルベンにシリンジで加えた。反応液をドライアイス−アセトンで−78℃に保ち、tert−ブチルリチウムn−ペンタン溶液4.5ml(6.57mmol)をシリンジで少量ずつ加えた。30分間攪拌後、蒸留したテトラヒドロフラン20mlに溶解した3,6−ビス(tert−ブチルジメチルシリルオキシ)キサントン1.07g(2.37mmol)をシリンジで少量ずつ加えた。−78℃のまま30分間攪拌後、2N塩酸で中和し、析出した赤色物質をろ取した。ろ取した物質をシリカゲルカラムにて精製(溶出溶媒;ジクロロメタン−メタノール(100:3−100:5))し、化合物13(774.6mg、収率82%、オレンジ色粉末)を得た。
H NMR(300MHz/CDOD)δ 7.27(d,J=9.2Hz,2H),7.15(d,J=8.3Hz,1H),7.01−6.86(m,6H),2.01(s,3H),1.06(s,9H),0.31(s,6H)
FAB−MS;[M+1]=433
蒸留したテトラヒドロフラン200mlに化合物132.62g(6.2mmol)を溶解し、フッ化テトラブチルアンモニウム(TBAF)の1Mテトラヒドロフラン溶液6.2ml(6.2mmol)を加えた。アルゴン置換し、室温にて二時間攪拌後、溶媒を留去した。得られた残渣をシリカゲルカラムにて精製(溶出溶媒;ジクロロメタン−メタノール(100:5−100:7))し、化合物14(1.13g、収率57.7%、オレンジ色粉末)を得た。
H NMR(300MHz/CDOD)δ 7.06(d,J=9.7Hz,2H),6.94(d,J=8.2Hz,1H),6.78(d,J=2.4Hz,1H),6.74(dd,J=8.2Hz,2.4Hz,1H),6.63(dd,J=9.7Hz,2.0Hz,2H),6.63(d,J=2.0Hz,2H),1.88(s,3H)
HR−MS(ESI−MS):[M+H]calcd for 319.09703,found 319.09652.
よく乾燥した容器に無水ジメチルホルムアミド1ml、化合物14 60mg(0.18mmol)、ブロモ酢酸メチル17μl(0.18mmol)、炭酸セシウム400mg(1.2mmol)を加えた。アルゴン置換し、撹拌しつつ室温にて一晩反応させた。沈殿物を桐山ロートにて除去し、母液を真空ポンプにて留去した。得られた残渣を精製水に溶解しジクロロメタンで三回振りとり、飽和食塩水で洗浄、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、ジクロロメタンを留去した。得られた残渣をシリカゲルカラムにて精製(溶出溶媒;ジクロロメタン−メタノール(100:5))し、化合物15(41.7mg、収率56.9%、赤色粉末)を得た。
H NMR(300MHz/CDCl)δ 7.10(d,J=8.4Hz,1H),7.08(d,J=9.2Hz,2H),6.95(d,J=2.5Hz,1H),6.89(dd,J=8.4Hz,2.5Hz,1H),6.84(d,J=2.0Hz,2H),6.80(dd,J=9.2Hz,2.0Hz,2H),4.73(s,2H),3.86(s,3H),2.03(s,3H)
FAB−MS:M+1=391
Φf1(100mMリン酸ナトリウムバッファー,pH9.0)=0.87
よく乾燥した容器に無水ジメチルホルムアミド0.5ml、化合物15 39mg(0.1mmol)、炭酸セシウム200mg(0.6mmol)、2,3,4,6−テトラ−O−アセチル−α−D−ガラクトピラノシルブロミド100mg(0.25mmol)を加えた。アルゴン置換し、撹拌しつつ室温にて一晩反応させた。沈殿物を桐山ロートにて除去し、母液を真空ポンプにて留去した。得られた残渣を精製水に溶解しジクロロメタンで三回振りとり、飽和食塩水で洗浄、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、ジクロロメタンを留去した。残渣をシリカゲルカラムにて精製(溶出溶媒;ジクロロメタン−メタノール(100:3))し、化合物16(2−Me 4−OCHCOOMe TG−β Gal)(41.8mg、収率58.1%、オレンジ色粉末)を得た。
H NMR(300MHz/CDCl)δ 7.10−6.80(m,7H),6.57(dd,J=9.7Hz,1.9Hz,1H),6.40(d,J=1.9Hz,1H),5.57−5.48(m,2H),5.18−5.12(m,2H),4.73(s,2H),4.22−4.16(m,3H),3.87(s,3H),2.19,2.13,2.07,2.03(s,3H×4),2.05(s,3H)
HR−MS(ESI−MS):[M+Na]calcd for 743.19519,found 743.19309.
Φf1(100mMリン酸ナトリウムバッファー,pH7.4)=0.069
よく乾燥した容器に無水ジメチルホルムアミド(1ml)、化合物14 63.8mg(0.20mmol)、5−ブロモ吉草酸メチル21μl(0.18mmol)、炭酸セシウム400mg(1.2mmol)を加えた。アルゴン置換し、撹拌しつつ室温にて一晩反応させた。沈殿物を桐山ロートにて除去し、母液を真空ポンプにて留去した。得られた残渣を精製水に溶解しジクロロメタンで三回振りとり、飽和食塩水で洗浄、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、ジクロロメタンを留去した。残渣をシリカゲルカラムにて精製(溶出溶媒;ジクロロメタン−メタノール(100:5))し、化合物17(53.7mg、収率61.9%、赤色粉末)を得た。
H NMR(300MHz/CDCl)δ 7.10(d,J=9.2Hz,2H),7.07(d,J=8.3Hz,1H),6.91−6.84(m,4H),6.81(dd,J=9.2Hz,2.0Hz,2H),4.06(m,2H),3.70(s,3H),2.45(m,2H),2.02(s,3H),1.88(m,4H)
HR−MS(ESI−MS):[M+Na]calcd for 455.14706,found 455.14692.
Φf1(100mMリン酸ナトリウムバッファー,pH9.0)=0.82
よく乾燥した容器に無水ジメチルホルムアミド0.5ml、化合物17 18.2mg(42μmol)、炭酸セシウム250mg(0.77mmol)、2,3,4,6−テトラ−O−アセチル−α−D−ガラクトピラノシルブロミド100mg(0.25mmol)を加えた。アルゴン置換し、撹拌しつつ室温にて一晩反応させた。沈殿物を桐山ロートにて除去し、母液を真空ポンプにて留去した。得られた残渣を精製水に溶解しジクロロメタンで三回振りとり、飽和食塩水で洗浄、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、ジクロロメタンを留去した。残渣をシリカゲルカラムにて精製(溶出溶媒;酢酸エチル)し、化合物18(25mg、収率78%、オレンジ色粉末)を得た。
H NMR(300MHz/CDCl)δ 7.08−6.80(m,7H),6.57(dd,J=9.7Hz,2.0Hz,1H),6.39(d,J=2.0Hz,1H),5.56−5.48(m,2H),5,18−5.12(m,2H),4.22−4.11(m,3H),4.06(m,2H),3.70(s,3H),2.19,2.13,2.07,2.03(s,3H×4),1.88(m,4H)
HR−MS(ESI−MS):[M+Na]calcd for 785.24214,found 785.23729.
Φf1(100mMリン酸ナトリウムバッファー,pH7.4)=0.005
化合物18 37.7mg(0.049mmol)を2mlのメタノール/水(3:1)溶液に溶解し、2M水酸化ナトリウム水溶液1ml(2mmol)を加えた。0℃にて30分間攪拌後、アンバーライトIR−120(H)にて反応液を中和し溶媒を留去した。得られた残渣を、展開溶媒をアセトニトリル/水(1:1)として逆相のプレパラティブTLC(RP18W)にて精製し、化合物19(2−Me 4−O(CHCOOH TG−β Gal)(15.1mg、収率53%、オレンジ色粉末)を得た。
H NMR(300MHz/CDOD)δ 7.26(d,J=2.2Hz,1H),7.11(d,J=8.5Hz,1H),7.08(d,J=9.6Hz,1H),7.03(d,J=8.2Hz,1H),7.02(dd,J=8.5Hz,2.2Hz,1H),6.94(d,J=2.3Hz,1H),6.89(dd,J=8.2Hz,2.3Hz,1H),6.53(dd,J=9.6Hz,2.0Hz,1H),6.37(d,J=2.0Hz,1H),4.01(m,2H),5.00(dd,7.7Hz,2.6Hz,1H),3.83(d,J=3.3Hz,1H),3.82−3.64(m,4H),3.53(dd,9.7Hz,3.3Hz,1H),2.17(m,2H),1.93(s,3H),1.74(m,4H)
HR−MS(ESI−MS):[M+Na]calcd for 603.18423,found 603.18242.
化合物19(2−Me 4−O(CHCOOH TG−β Gal)10mg(17.2μmol)をメタノール/アセトニトリル(1ml/2ml)に溶解し、そこへアセトニトリル2mlに溶解した酢酸ブロモメチル(AMBr)68.5μl(690μmol)、ジイソプロピルエチルアミン(DIEA)22.3μl(130μmol)を加えた。アルゴン置換し、室温にて10時間攪拌後、溶媒を留去した。残渣を、展開溶媒をアセトニトリル/水(1:1)として逆相プレパラティブTLC(RP18W)にて精製し、化合物20(2−Me 4−O(CHCOOAM TG−β Gal)(10.9mg、収率97%、オレンジ色粉末)を得た。
H NMR(300MHz/CDOD)δ 7.28(d,J=2.2Hz,1H),7.13−6.88(m,6H),6.53(dd,J=9.7Hz,2.0Hz,1H),6.38(dd,J=2.0Hz,1H),5.65(s,2H),4.02(m,2H),5.01(dd,8.1Hz,2.8Hz,1H),3.83(d,J=3.1Hz,1H),3.79−3.65(m,4H),3.53(dd,9.5Hz,3.6Hz,1H),2.42(m,2H),1.99(s,3H),1.94(s,3H),1.78(m,4H)
HR−MS(ESI−MS):[M+Na]calcd for 675.20536,found 675.20359
Φf1(100mMリン酸ナトリウムバッファー,pH9.0)=0.008
例10:イン・ビトロ β−ガラクトシダーゼ蛍光アッセイ
2−Me 4−O(CHCOOAM TG−β Galを無水ジメチルスルホキシドに溶解し10mMストック溶液を作製した。その後1μMになるようアッセイバッファーに希釈した(アッセイバッファー:0.1Mリン酸ナトリウムバッファー,pH7.4,14.3mM 2−メルカプトエタノール、1mM塩化マグネシウム、0.01%ジメチルスルホキシド)。3mlを1cmキュベットに移し、37℃にてβ−ガラクトシダーゼ(6units/蛍光測定開始後5分に添加)による蛍光強度変化を測定した(第8図及び第9図)。測定には、Perkin−Elmer LS−50B蛍光スペクトル測定装置を用い励起波長492nm、509nmでの蛍光強度変化の経時変化を観察した。β−ガラクトシダーゼ(分子量540,000,EC 3.2.1.23)はシグマ−アルドリッチより購入した。
例11:生細胞系でのβ−ガラクトシダーゼ蛍光アッセイ
生細胞でのアッセイは2−Me 4−O(CHCOOAM TG−β Galの最終濃度が約10μMになるように生理食塩水pH7.4(150mM NaCl,4mM KCl,2mM CaCl,1m MgCl,5mM HEPES,0.1%グルコース;以下PSSと略す)に調整した。GP293細胞にLNCX2−lacZを導入したもの(lacZ陽性細胞)をコラーゲンタイプ1でコートした24ウェルマイクロプレートに播種し、ウェルをPSSで2回洗浄した後上記2−Me 4−O(CHCOOAM TG−β Gal溶液をロードし、30分間室温でインキュベーションした。ベクターを導入してないGP293細胞(lacZ陰性細胞)を陰性対照として用いた。蛍光イメージング像は、対物レンズとしてUApo/340 40x/1.35対物レンズ(オリンパス光学)を取り付けたIX71倒立顕微鏡(オリンパス光学)を用い、励起波長488nm、蛍光波長510−550nmの条件で撮像した。結果を第10図に示す。図中、GP293細胞内部に蛍光が観察され、GP293細胞内部においてβ−ガラクトシダーゼが発現している結果を示す。
例12:β−ラクタマーゼ蛍光プローブの製造

よく乾燥した容器に無水ジメチルホルムアミド8ml、化合物5 122.4mg(0.4mmol)、2−ブロモ−1,1−ジメトキシエタン400μl(4mmol)、炭酸セシウム180mg(0.6mmol)を加えた。アルゴン置換し、115℃にて一晩攪拌した。炭酸セシウムを桐山漏斗で濾過後、溶媒を真空ポンプにて留去した。得られた残渣を精製水に溶解しジクロロメタンで三回振りとり、飽和食塩水で洗浄、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、ジクロロメタンを留去した。得られた残渣をシリカゲルカラムにて精製(溶出溶媒;ジクロロメタン−メタノール(100:4))し、化合物21(78.3mg、収率50.6%、オレンジ色粉末)を得た。
H NMR(300MHz/CDCl)δ 2.04(s,3H),3.48(s,6H),3.89(s,3H),4.11(d,J=5.1Hz,2H),4.76(t,J=5.1Hz,1H),6.43(d,J=2.0Hz,1H),6.57(dd,J=9.7Hz,2.0Hz,1H),6.43−7.14(m,7H)
13C−NMR(75MHz/CDCl)δ 19.91,54.34,55.29,68.13,101.07,101.71,105.66,111.50,113.54,115.02,115.96,118.79,124.48,129.53,129.98,130.31,130.66,137.79,149.44,154.41,158.89,160.32,162.93,185.74
HR−MS[ESI−MS]:[M+Na]+calcd for 443.14706,found 443.14794
よく乾燥した容器に蒸留したテトラヒドロフラン8ml、化合物21 50mg(120μmol)を加えた。氷浴にて0℃に保ち濃塩酸4mlをゆっくり加え、アルゴン雰囲気下、一晩攪拌した。溶媒を留去し、ジクロロメタンで三回振りとり、飽和食塩水で洗浄、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、ジクロロメタンを留去した。得られた残渣をシリカゲルカラムにて精製(溶出溶媒;ジクロロメタン−メタノール(100:4))し、化合物22(40.7mg、収率90%、オレンジ色液体)を得た。
H−NMR(300MHz/CDOD)δ 2.01(s,3H),3.88(s,3H),4.07(dd,J=10.3Hz,4.95Hz,1H),4.13(dd,J=10.3Hz,4.95Hz,1H),4.90(t,J=4.95Hz,1H),6.45(d,J=2.0Hz,
HR−MS[ESI−MS]:[M+H]calcd for 375.12325,found 375.11547
よく乾燥した容器に蒸留したアセトン20ml、7−フェニルアセタミド−3−クロロメチル−セファロスポラン酸p−メトキシベンジルエステル490mg(1mmol)、ヨウ化ナトリウム750mg(5mmol)を加えた。アルゴン置換し、室温で一時間半攪拌した。溶媒を留去し、酢酸エチル25mlで振りとり、10%チオ硫酸ナトリウム水溶液、蒸留水、飽和食塩水で洗浄、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。そこへトリフェニルホスフィン320mg(1.2mmol)を加え、アルゴン置換し、室温で一晩攪拌した。析出物を桐山ロートでろ取し、酢酸エチルで洗い、化合物23(664.3mg、収率78.6%、淡黄色粉末)を得た。
MR−MS[ESI−MS]:[M−I]=713
よく乾燥した容器に蒸留したジクロロメタン4ml、化合物23 168mg(0.2mmol)、1N水酸化ナトリウム水溶液2mlを加えた。室温で一時間攪拌し、分液ロートにてジクロロメタン層を分けとり、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。それを、化合物22 24mg(64.2μmol)が入ったフラスコに加え、室温にて一晩攪拌した。溶媒を留去し、得られた残渣をシリカゲルカラムにて精製(溶出溶媒;ジクロロメタン−メタノール(100:4))し、化合物24(10.3mg、収率21%、オレンジ色粉末)を得た。
HR−MS(ESI−MS):[M+Na]+calcd for 831.23522,found 831.23070.
よく乾燥した容器に蒸留したジクロロメタン2ml、化合物24 122.6mg(0.15mmol)、m−クロロ過安息香酸26mg(0.15mmol)を加えた。アルゴン置換し、0℃で一晩攪拌した。ジクロロメタンを加え、1N炭酸水素ナトリウム水溶液、飽和食塩水で洗浄、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、溶媒を留去した。得られた残渣をシリカゲルカラムにて精製(溶出溶媒;ジクロロメタン−メタノール(100:6))し、化合物25(105mg、収率84%、オレンジ色粉末)を得た。
HR−MS(ESI−MS):[M+Na]+calcd for 847.23013,found 847.23210.
よく乾燥した容器に蒸留したジクロロメタン3ml、化合物25 40mg(0.26mmol)、アニソール150μl(1.38mmol)、トリフルオロ酢酸750μl(9.7mmol)を加えた。アルゴン置換し、0℃で4時間攪拌した。溶媒を留去し、得られた残渣を精製水に溶解し酢酸エチルで三回振りとり、飽和食塩水で洗浄、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、酢酸エチルを留去した。得られた残渣を逆相プレパラティブTLC(RP18W)にて精製(溶出溶媒;アセトニトリル/水(1:1))し、化合物26(TG−β Lac)(9.4mg、収率27.6%、オレンジ色粉末)を得た。
HR−MS(ESI−MS):[M−H]−calcd for 703.17503,found 703.17719
例13:インビトロ β−ラクタマーゼ蛍光アッセイ
TG−β Lac(1μM)を含むアッセイバッファー(リン酸緩衝食塩水(PBS),Ca2+,Mg2+非含有,pH7.4,0.1%ジメチルスルホキシド)に、測定開始5分後、0.3unitのβ−ラクタマーゼを添加し、491nm励起、510nmでの蛍光強度変化を経時観察した。結果を第11図に示す。
【産業上の利用可能性】
本発明により、蛍光特性に優れた蛍光プローブが提供される。また、本発明の設計方法により、蛍光特性に優れた蛍光プローブを合理的に設計できる。
【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】

【図7】

【図8】

【図9】

【図10】

【図11】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
蛍光プローブであって、下記の式(I):

(式中、Rは水素原子、カルボキシル基、又はスルホン酸基以外の一価の置換基を示し;Rは水素原子又は一価の置換基を示し;R及びRはそれぞれ独立に水素原子又はハロゲン原子を示し;Rは測定対象物質との接触により切断される一価の基を示し、
ただし、R及びRの組み合わせは、それらが結合するベンゼン環の酸化電位が、
(1)上記切断の前には、式(I)で表される化合物が実質的に無蛍光性になるように、かつ
(2)上記切断の後には、式(I)で表される化合物に由来する切断後の化合物が実質的に高い蛍光性になるように選ばれる。)
で表される蛍光プローブ。
【請求項2】
該ベンゼン環の酸化電位が1.55V〜1.75Vの範囲となるようにR及びRの組み合わせが選ばれる請求の範囲第1項に記載の蛍光プローブ。
【請求項3】
該ベンゼン環の酸化電位が1.60V〜1.70Vの範囲となるようにR及びRの組み合わせが選ばれる請求の範囲第1項に記載の蛍光プローブ。
【請求項4】
及びRが水素原子である請求の範囲第1項ないし第3項のいずれか1項に記載の蛍光プローブ。
【請求項5】
が低級アルキル基であり、Rが低級アルコキシ基である請求の範囲第4項に記載の蛍光プローブ。
【請求項6】
が低級アルキル基であり、Rがキサンテン環残基に対してパラ位の低級アルコキシ基である請求の範囲第5項に記載の蛍光プローブ。
【請求項7】
上記の切断が加水分解により生じる請求の範囲第1項ないし第6項のいずれか1項に記載の蛍光プローブ。
【請求項8】
測定対象物質が加水分解酵素である請求の範囲第1項ないし第6項のいずれか1項に記載の蛍光プローブ。
【請求項9】
がリン酸エステル加水分解酵素により切断されるホスホノ基である請求の範囲第8項に記載の蛍光プローブ。
【請求項10】
が糖加水分解酵素により切断される糖誘導体の残基である請求の範囲第8項に記載の蛍光プローブ。
【請求項11】
がβ−ガラクトピラノシル基である請求の範囲第10項に記載の蛍光プローブ。
【請求項12】
がβ−ガラクトピラノシル基であり、Rがカルボキシ置換アルコキシ基又は4−カルボキシブトキシ基である請求の範囲第10項に記載の蛍光プローブ。
【請求項13】
がβ−ラクタマーゼにより切断される環状アミドを含む基である請求の範囲第8項に記載の蛍光プローブ。
【請求項14】
環状アミドを含む基が下記の式で表される基である請求の範囲第13項に記載の蛍光プローブ。

【請求項15】
蛍光プローブの設計方法であって、請求の範囲第1項に記載の一般式(I)(式中、R、R、R、R、及びRはそれぞれ上記の定義と同義である)で表される蛍光プローブにおいて、R及びRの組み合わせとして、それらが結合するベンゼン環の酸化電位が、
(1)上記切断の前には、式(I)で表される化合物が実質的に無蛍光性になるように、かつ
(2)上記切断の後には、式(I)で表される化合物に由来する切断後の化合物が実質的に高い蛍光性になるように
組み合わせを選択する工程を含む方法。
【請求項16】
請求の範囲第15項に記載の設計方法により得られた蛍光プローブ。

【国際公開番号】WO2005/024049
【国際公開日】平成17年3月17日(2005.3.17)
【発行日】平成18年11月2日(2006.11.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−513726(P2005−513726)
【国際出願番号】PCT/JP2004/013185
【国際出願日】平成16年9月3日(2004.9.3)
【出願人】(595108044)
【出願人】(390037327)第一化学薬品株式会社 (111)
【Fターム(参考)】