説明

蛍光ランプ、バックライトユニット、液晶表示装置及び蛍光ランプの製造方法

【課題】輝度維持率の低下を抑制しつつ、蛍光体層の剥がれにくい蛍光ランプおよび当該蛍光ランプの製造方法等を提供する。
【解決手段】蛍光ランプは、ガラス管の内面に蛍光体を被覆する被覆膜における近接する部分同士が結着体で結着する構造の蛍光体層が形成されている。この蛍光体層51の形成は、蛍光体と有機金属化合物とを含む第1懸濁液63をガラス管61の内面に塗布・乾燥・焼成して、金属酸化物からなる被覆膜と前記蛍光体とを含むベース層67を形成する形成工程と、ガラス管61の軟化点以下の所定温度で溶融するCBBPを含む第2懸濁液69をベース層67上に塗布・乾燥させて、CBBPを被覆膜に付着させる付着工程と、CBBPを溶融させて、周辺の被覆膜における近接する部分同士を結着する結着体を形成する結着工程とを経て行われる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラス管の内面に形成される蛍光体層を有する蛍光ランプにおける蛍光体層のガラス管からの剥れを抑制することができる蛍光ランプ、当該蛍光ランプの製造方法、さらには、前記蛍光ランプを光源とするバックライトユニット、当該バックライトユニットを備える液晶表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
蛍光ランプには、例えば、蛍光体を金属酸化物で被覆する被覆膜を形成したものがある。被覆膜を形成する理由は、蛍光体への水銀付着を抑制するためである(例えば、特許文献1、2)。
発明者らは、上記被覆膜を利用して、蛍光体と、これら蛍光体を結着(連結)させるための結着剤と、前記結着剤で結着された状態の蛍光体を結着剤ごと被覆する被覆膜とを含む蛍光体層について検討を行っている。なお、結着剤として、例えばCBB(CaO,BaO、B)を、また、金属酸化物として、例えば酸化イットリウムをそれぞれ使用している。
【特許文献1】特再表WO2002/047112号公報(「発明の開示」欄)
【特許文献2】特開2002−164018号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
蛍光体層は、製造工程中や製品の包装、出荷後の運搬中に受ける衝撃によって、ガラス管からの剥がれやクラックが発生する可能性がある。蛍光体層の剥がれ・クラックがひどい場合には、蛍光体層の一部が脱落することもあり、蛍光ランプとしての品質低下を招く。
発明者が検討している上記蛍光体層は、特に剥がれ易いという問題がある。この理由は、蛍光体層の結着力を強くするために結着剤を増やすと、懸濁液に含まれる有機金属化合物(被覆膜である金属酸化物を形成するためのもの)と結着剤とが反応することで蛍光体層が着色(茶色、黄色、又はこれらの混色(以下、単に「茶色等」という。)に着色し、蛍光ランプの輝度が低下する。このため、結着力を高めるための結着剤を増やすことができないのである。
【0004】
なお、蛍光体層の剥がれ・クラックの問題は、蛍光体層を形成した直管形状のガラス管を、さらに「U」字形状、「L」字形状に屈曲させてなる屈曲ランプにおける屈曲部で顕著となる他、電極がガラス管の内部に装着されるランプだけでなく、電極がガラス管の外周に設けられるランプ(いわゆる、外部電極型の蛍光ランプ(EEFL))においても生じうる。
【0005】
上記の課題に鑑み、本発明は、輝度維持率の低下を抑制しつつ、蛍光体層の剥がれにくい蛍光ランプ、バックライトユニット、表示装置および前記ランプの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するため、本発明に係る蛍光ランプの製造方法は、蛍光体と当該蛍光体を被覆する被覆膜とを有する蛍光体層がガラス管の内面に形成されている蛍光ランプの製造方法であって、前記蛍光体層の形成は、前記被覆膜用の有機金属化合物と前記蛍光体とを含む第1懸濁液を前記ガラス管の内面に塗布・乾燥・焼成して、金属酸化物からなる被覆膜と前記蛍光体とを含むベース層を形成する形成工程と、前記ガラス管の溶融温度未満の温度で溶融する結着材料を含む第2懸濁液を前記ベース層上に塗布・乾燥させて、前記結着材料を少なくとも前記被覆膜に付着させる付着工程と、付着した前記結着材料を溶融させて、少なくとも被覆膜に結着させる結着工程とを経て行われることを特徴とする。
【0007】
ここでいう「蛍光ランプ」には、ガラス管が、直管状、「コ」字状、「L」字状その他の形状をしたものを含み、また、電極は、ガラス管の内部に設けられる冷陰極・熱陰極タイプ、外部に設けられる外部タイプを含む。
また、被覆膜は、蛍光体の全面を被覆するものであっても良く、あるいは蛍光体の一部を被覆するものであっても良い。さらに、結着工程は、例えば結着材料を溶融させる程度の熱を加えれば良く、ガラス管全体を加熱するものであっても良く、あるいは、ガラス管の一部分を加熱するものであっても良い。
【0008】
また、前記ガラス管は、当該ガラス管の所定箇所をガラス管の軟化点以上、溶融温度未満の温度に加熱して屈曲させることで形成される屈曲部を有し、当該屈曲部は、前記付着工程以降に形成されることを特徴とし、あるいは、前記屈曲部の曲率半径は、3mm以上、40mm以下であることを特徴とする。
さらには、前記有機金属化合物は、イットリウム、ランタン、ケイ素、マグネシウム、ジルコニウムの内、1種類以上の金属を含むことを特徴とし、また、前記有機金属化合物は、金属アルコキシド、金属アセチルアセトネート、金属カルボキシレートの内、1種類以上からなることを特徴とする。
【0009】
一方、上記の目的を達成するため、本発明に係る蛍光ランプは、ガラス管の内面に蛍光体層が形成されており、前記蛍光体層は、蛍光体と、当該蛍光体が前記ガラス管の内面に付着した状態で、少なくとも前記蛍光体を被覆する被覆膜と、被覆膜における近接する部分同士、及び、被覆膜と当該被覆膜に近接するガラス管の内面とを結着させる結着体とを含むことを特徴とする。
【0010】
また、前記被覆膜は、金属酸化物から構成されていることを特徴とし、前記金属酸化物は、金属として、イットリウム、ランタン、ケイ素、マグネシウム、ジルコニウムの内、1種類以上の金属を含むことを特徴とする。
さらに、前記ガラス管は、1以上の屈曲部を有し、当該屈曲部の曲率半径は、3mm以上、40mm以下であることを特徴とし、前記蛍光体は、結着剤で結着された状態で被覆膜により被覆され、前記結着剤は、CBB、CBBP、Bの内、1種類以上からなり、前記蛍光体の総重量100に対する、前記被覆膜の総重量比をA、結着剤の総重量比をBとした場合に、AとBとが、 0.1≦A≦0.6 0.4≦(A+B)≦0.7 の関係を満たすことを特徴とする。
【0011】
前記結着体は、CBB、CBBP、Bの内、1種類以上からなり、当該結着体の前記蛍光体に対する含有比率が、1.3wt/%以上、3wt/%以下の範囲であることを特徴とする。
一方、上記の目的を達成するため、本発明に係るバックライトユニットは、光源として上記蛍光ランプが搭載されていることを特徴とする。
【0012】
一方、上記の目的を達成するため、本発明に係る液晶表示装置は、上記バックライトユニットが搭載されていることを特徴とする。なお、ここでいう「液晶表示装置」は、液晶カラーテレビ、コンピュータ用の液晶モニタ、携帯用、車載用の小型表示装置等を含む。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る蛍光ランプの製造方法によれば、ベース層を形成した後に、結着体を形成するので、蛍光体層としての結着力を高めることができる。このため、ベース層用の懸濁液中の結着剤の量を少なくできる。これによって、例えば、第1懸濁液に有機金属化合物が含まれていても、ガラス管が着色することも少なく、ランプの輝度低下を招くこともない。当然、蛍光体は酸化金属である被覆膜により被覆されているので、水銀が蛍光体に付着するのも抑制でき、輝度維持率の低下も抑制できる。
【0014】
一方、本発明に係る蛍光ランプは、被覆膜における近接部分同士を結着体で結着させているので、被覆膜により被覆されている蛍光体同士を結着させる結着剤の量を少なくすることができる。このため、例えば、被覆膜を形成するのに、有機金属化合物を用いても、有機材料と結着剤とにより着色することも少なくでき、蛍光ランプの輝度低下を招くこともない。当然、蛍光体は酸化金属である被覆膜により被覆されているので、水銀が蛍光体に付着するのも抑制でき、輝度維持率の低下も抑制できる。
【0015】
一方、本発明に係るバックライトユニット、液晶表示装置は、上記蛍光ランプを有しているので、輝度維持率の低下を抑制できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
1.構成について
以下、本発明に係るランプを用いたバックライトユニット、液晶表示装置について説明する。
1−1.液晶表示装置の構成について
図1は、発明に係る液晶表示装置を示す図であり、内部の様子がわかるように、一部を切り欠いている。
【0017】
液晶表示装置1は、例えば、液晶カラーテレビであり、液晶画面ユニット3とバックライトユニット5とが筐体4に組み込まれてなる。液晶画面ユニット3は、例えば、カラーフィルタ基板、液晶、TFT基板、駆動モジュール等(図示せず)を備え、液晶画面ユニット3の外部からの画像信号に基づいてカラー画像を液晶画面ユニット3の画面6に表示する。
【0018】
1−2.バックライトユニットの構成について
図2は、バックライトユニットの概略斜視図であり、内部の様子が分かるように前面パネルの一部を切り欠いている。このバックライトユニット5は、液晶画面ユニット3をその裏側から直接照射する、いわゆる、直下型のユニットである。
バックライトユニット5は、所定方向(ここでは、ユニットの短手方向)に間隔をおいて複数列(例えば、5列)に配された「コ」字状に屈曲する蛍光ランプ(以下、この蛍光ランプを「屈曲ランプ」という。)7a,7b,7c,7d,7e(以下、屈曲ランプごとに区別する必要がない時は、単に「7」の符号を用いる。)と、これら屈曲ランプ7を収納する筐体9と、この筐体9の前面(開口部)を覆う前面パネル11とを備える。なお、図2では、屈曲ランプ7の固定手段、配線等の記載を省略している。
【0019】
筐体9の底板13は、屈曲ランプ7からその裏側に発せられた光を表側に反射させる反射板となっており、例えば、ポリエチレンテレフタレイト(PET)が用いられている。なお、筐体9を構成する側板15も、底板13と同じ樹脂で構成されている。
前面パネル11は、各屈曲ランプ7からの光を拡散させて平行光(前面パネル11の法線方向)として取り出すためのもので、例えば、拡散板17,拡散シート19,レンズシート21から構成されている。なお、拡散板11には、アクリル材料が用いられている。
【0020】
2.屈曲ランプの構成について
図3の(a)は、屈曲ランプを示す図であり、内部の電極の構成等が分かるように、屈曲ランプの複数個所を切り欠いている。
屈曲ランプ7は、1本のガラス管31の端部31a,31bに電極33,35が封着されていると共に、上述のように、2つの屈曲部34,36を有する「コ」字形状をしており、一対の延伸部37,39と、これら一対の延伸部37,39の一端(屈曲部34,36)間に位置する中間部41とを備える。
【0021】
電極33,35は、いわゆる冷陰極型であって、有底筒状の電極本体33a,35aと、電極本体33a,35aの底部に取着された電極棒33b,35bとを備え、この電極棒33b,35bがビードガラス33c,35cを介してガラス管31の端部31a,31bに封着されている。
また、両端が封止されたガラス管31の内部に形成された放電空間40には、例えば、水銀や希ガス(例えば、アルゴン、ネオン)等が所定量封入されている。なお、希ガスは、減圧状態で封入されている。
【0022】
ガラス管31は、その横断面形状が、例えば、円形状であり、内面には蛍光体層51が形成されている。ガラス管31は、例えば、ホウ珪酸ガラスからなり、例えば、外径が3(mm)、内径が2(mm)のものが使用され、ガラス管31の屈曲部(ここでは屈曲部34)における管軸Xの曲率半径Rは4(mm)である。
図3の(b)は、屈曲ランプの延伸部の内面に形成されている蛍光体層の拡大図であり、図3の(c)は、屈曲ランプの屈曲部の内面に形成されている蛍光体層の拡大図である。なお、図3の(b)及び(c)の蛍光体層は概念図である。
【0023】
蛍光体層51は、例えば、3波長型の各蛍光体53と、各蛍光体53を結着(連結)する結着剤54と、各蛍光体53を結着剤54ごと被覆する被覆膜55と、被覆膜55の表面に付着する結着体57とを備える。なお、蛍光体層51の形成は、後述する。
蛍光体53は、例えば、希土類蛍光体が利用され、ここでは、赤色発光のユーロピウム付活酸化イットリウム[Y:Eu3+](略号:YOX)、緑色発光のセリウム・テルビウム付活リン酸ランタン[LaPO:Ce3+,Tb3+](略号:LAP)および青色発光のユーロピウム付活アルミン酸バリウム・マグネシウム[BaMgAl1627:Eu2+](略号:BAM)の3種類が利用されている。
【0024】
結着剤54は、例えば、CBBである。この結着剤54は、主に、上記蛍光体53同士を結着させるものである。
被覆膜55は、金属酸化物、例えば、酸化イットリウムから構成されている。この被覆膜55は、蛍光体53の表面の全面あるいは一部を被覆している。被覆膜55の目的は、放電空間40の水銀が蛍光体53に付着するのを防止するためである。
【0025】
被覆膜55は、蛍光体層51を形成するための懸濁液(後述の第1懸濁液に相当する。)中に、有機金属化合物、ここでは、カルボン酸イットリウム[Y(C2n+1COO)]が含有されており、焼成工程で熱分解されてガラス状の金属酸化物(酸化イットリウム)になって、蛍光体53を連続状に被覆する。なお、ここでのカルボン酸は、カプリル酸である。
【0026】
結着体57は、低融点(後述の焼成工程や屈曲工程時の熱により溶融する。)でガラス状になる低融点材料、例えば、CBBP(Ca,BaO、B)が用いられる。なお、CBBPは、CBBに、さらにP(ピロリン酸カルシウム)を加えたものである。
この結着体57は、上記の蛍光体53と被覆膜55とを形成した後に形成されることにより、被覆膜55における近接する部分同士、あるいは、被覆膜55とガラス管31の内面とを結着(連結)する。
【0027】
3.屈曲ランプの製造方法について
まず、屈曲ランプの製造方法について説明し、その後に、屈曲ランプの蛍光体層の成形方法について説明する。
3−1.屈曲ランプの製造工程について
図4は、屈曲ランプの製造工程を説明する図である。
【0028】
屈曲ランプは、屈曲ランプ7のガラス管31となるべきガラス管61の内面に蛍光体層51を形成する蛍光体層形成工程と、蛍光体層51が形成されたガラス管61の端部61a,61bに電極33,35を封着する封着工程と、直管状のガラス管61を「コ」字状に屈曲させる屈曲工程とを経て得られる。
なお、図4では、蛍光体層51が形成されたガラス管61を所定長さに切断する切断工程、ガラス管61内に放電物質である水銀、希ガス等を封入する封入工程等の記載を省略するとともに、これらの工程は従来と同じでありその工程についての説明も省略する。また、蛍光体層形成工程については後述し、封着工程は従来と同じ公知であるため、ここでの説明は省略する。
【0029】
屈曲工程は、例えば、ガラス管61における屈曲予定部お呼びその周辺部を、例えば、ガスバーナーを利用して加熱し、加熱部分のガラス管61の温度が500(℃)〜600(℃)程度になると、屈曲予定部を中心としてその両側部分が略直角となるように屈曲させる。なお、ガラス管61の軟化点は、700(℃)である。
3−2.蛍光体形成工程について
図5は、屈曲ランプの製造工程における蛍光体層形成工程を説明する図である。
【0030】
蛍光体層51は、蛍光体53、カルボン酸イットリウム(有機金属化合物)及びCCB(結着剤)を含む第1懸濁液63をガラス管61の内面に塗布する第1塗布工程(図中の(a))と、塗布された第1懸濁液63を乾燥させて第1乾燥層65を形成する第1乾燥工程(図中の(b))と、第1乾燥層65を焼成させて第1焼成層67を形成する第1焼成工程(図中の(c))と、結着体であるCBBPを含む第2懸濁液69を第1焼成層67上に塗布する第2塗布工程(図中の(d))と、第1焼成層67の上面及び第1焼成層67内に浸透した第2懸濁液69を乾燥させて第1焼成層67を含んだ第2乾燥層71を形成する第2乾燥工程(図中の(e))と、第2乾燥層71を焼成させて蛍光体層51を形成する第2焼成工程(図中の(f))とを経て形成される。
【0031】
(1)第1塗布工程(図5の(a))
第1懸濁液63は、有機溶媒、蛍光体、有機金属化合物、結着剤、増粘剤を含む。本実施の形態では、有機溶媒として酢酸ブチルが、有機化合物として、上述したようにカルボン酸イットリウムが、結着剤としてCBBが、増粘剤としてニトロセルロースがそれぞれ用いられている。
【0032】
第1懸濁液63を構成する各物質の構成比率(重量比である)は、蛍光体(3波長すべて含む)を100(%)としたときに、
酢酸ブチル ・・・ 60(%)(但し、塗布量に合せて任意)
カルボン酸イットリウム ・・・ 0.3(%)
CBB ・・・ 0.13(%)
ニトロセルロース ・・・ 1.2(%)
である。
【0033】
第1懸濁液63のガラス管61の内面への塗布は、例えば、垂直に立てたガラス管61の下端開口から第1懸濁液63を吸引し、その後ガラス管61内の第1懸濁液を排出することで行われる。
具体的に説明すると、まず、第1懸濁液63を貯溜するタンクを準備すると共に、ガラス管61を立設状態にする。そして、ガラス管61の下端部をタンク内の第1懸濁液63の内部に浸した状態で、真空ポンプ等の吸引力によって、ガラス管61の上端から内部の空気を排気する。これにより、タンク内の第1懸濁液63がガラス管61内に吸引されることになる。
【0034】
ガラス管61内の第1懸濁液63の液面がガラス管61の上端に至る途中(所定の高さ)で第1懸濁液63の吸引を止めて、その後、ガラス管61を第1懸濁液63から引き上げ、内部の第1懸濁液63をガラス管61の内部から排出させる。これにより、ガラス管61の内周の所定の領域に、第1懸濁液63が膜状に塗布される。
(2)第1乾燥工程(図5の(b))
第1乾燥工程では、上記第1塗布工程で塗布された第1懸濁液63を乾燥する。乾燥する一例としては、立設状態にあるガラス管61の上端から温風を吹き込むことで行われる。温風は、ガラス管61の内径、長さ、第1懸濁液63における有機溶媒の種類や粘度その他により決定されるが、本実施の形態での温風の温度は、25(℃)〜30(℃)の範囲で制御されている。
【0035】
温風の風量及び吹き込む時間も、上述のように、ガラス管の寸法(内径、長さ等)、懸濁液の構成(有機溶媒の種類や粘度その他)の他、温風の温度等により決定されるが、本実施の形態での風量は、50(ml/min)〜300(ml/min)の範囲、吹き込む時間は、5(min)〜20(min)の範囲でそれぞれ制御されている。
(3)第1焼成工程(図5の(c))
第1焼成工程では、上記第1乾燥工程で形成された第1乾燥層65を焼成する。焼成する一例としては、ガラス管61を所定温度の雰囲気内(例えば、加熱炉)に所定時間入れることで行われる。
【0036】
所定温度・所定時間とも、ガラス管61の寸法(内径、長さ等)、蛍光体53の種類、有機金属化合物の種類等により決定されるが、本実施の形態での温度は、650(℃)〜750(℃)の範囲で、時間は、約15分間で行われる。
本第1焼成工程を完了することで、蛍光体53同士が、CBBにより連結された状態で、酸化イットリウムからなる連続状の被覆膜55により被覆される。そして、この状態にある層が、本発明のベース層67である。なお、実施の形態での「第1塗布工程、第1乾燥工程及び第1焼成工程」を併せて、本発明のベース層を形成する形成工程となる。また、本ベース層が形成された後では、結着剤の蛍光体に対する含有比率は、0.13(wt/%)となる。
【0037】
(4)第2塗布工程(図5の(d))
第2懸濁液69は、有機溶媒、結着体(剤)、増粘剤を含む。本実施の形態では、有機溶媒として酢酸ブチルが、結着体剤としてCBBPが、増粘剤としてニトロセルロースが用いられている。
第2懸濁液69を構成する各材料の構成比率(重量比率)は、
酢酸ブチル ・・・ 84(%)
CBBP ・・・ 15(%)
ニトロセルロース ・・・ 1(%)
である。
【0038】
ベース層67上への第2懸濁液69の塗布は、上述した第1塗布工程と同じである。本塗布工程を完了すると、第1焼成工程で形成された被覆膜55の隙間に第2懸濁液69が浸入したり、被覆膜55(ベース層67)の外面に第2懸濁液69が塗布されたりする。
なお、図5の(d)では、ベース層67と第2懸濁液69との区別を設けずに、まとめて第2懸濁液69として示している。
【0039】
(5)第2乾燥工程(図5の(e))
第2乾燥工程では、上記第2塗布工程で塗布された第2懸濁液69を乾燥する。乾燥条件は、上記第1乾燥工程と同じである。これにより、第2乾燥層71が形成され、被覆膜55における近接する部分同士、被覆膜55とガラス管61の内面との間の隙間に結着体(CBBP)が付着する。
【0040】
なお、上記の「第2塗布工程」と当該「第2乾燥工程」とを併せた工程が、本発明の「前記材料を少なくとも前記被覆膜に付着させる付着工程」となる。また、第2乾燥層71は、ベース層67に結着体が付着した層であり、図5の(e)では、ベース層67と第2乾燥層71との区別を設けずに、第2乾燥層71として示している。
(6)第2焼成工程(図5の(f))
第2焼成工程では、上記第2乾燥工程で形成された第2乾燥層71を焼成する。焼成条件は、上記第1焼成工程と同じである。本第2焼成工程を完了することで、被覆膜55における近接する部分同士、被覆膜とガラス管61の内面との間の隙間に付着した結着体が溶融して、被覆膜55における近接する部分同士、被覆膜とガラス管61の内面とを結着して、本発明に係る蛍光体層51が形成される。
【0041】
4.蛍光体層について
4−1.結着力について
延伸部39(,37)に形成されている蛍光体層51は、図3の(b)に示すように、隣接する蛍光体53を結着剤であるCBB54により結着した状態で、被覆膜55により蛍光体53の被覆と連結(結合)とがなされている。
【0042】
そして、被覆膜55の外面(蛍光体に接触している側の面と反対の面である。)には、結着体57であるCBBPが付着し、隣接する被覆膜55における近接する部分同士を連結している。これにより、蛍光体53同士の結着力を高めることができる。
屈曲部36(,34)に形成されている蛍光体層51は、図3の(c)に示すように、隣接する蛍光体53を結着剤54であるCBBにより結着した状態で、被覆膜55により蛍光体53の被覆と連結とがなされている。
【0043】
そして、直管状のガラス管61を屈曲させるときに、例えば、蛍光体層51にクラック58が入り、その部分がガラス管から剥がれても(この剥がれた部分を、「剥がれ部分」という)、この剥がれ部分58には、ガラス管61を屈曲させる際の熱によりガラス状になったCBBP(57)が入り込み、クラック58の内部同士、剥がれ部分に面する被覆膜55における近接する部分同士をそれぞれ連結している。これにより、屈曲部36(,34)における蛍光体層51の結着力を高めることができ、また、蛍光体層51とガラス管31との結着力も高めることができる。
【0044】
4−2.光束維持率について
本実施の形態では、蛍光体53、被覆膜55をガラス管61の内面に形成するための第1懸濁液63には、蛍光体53同士を結着させるCBB(54)が含まれている。CBBに含まれるBは、乾燥させた第1懸濁液63を乾燥させた第1乾燥層65を焼成する際に、第1懸濁液63に含まれるカルボン酸イットリウムの有機成分(Cn+1)と反応する。これにより、炭素成分が残るため、茶色等に着色する。
【0045】
このBは、[発明が解決しようとする課題]の欄で説明したように、ガラス管(31)を茶色等に変色させ、蛍光体53で変換された可視光の取り出し効率が悪くなり、結果的に輝度低下をもたらすことになる。
しかしながら、本実施の形態では、第1懸濁液63中のCBBの含有率が、0.13%と微量であるため、Bの生成量が少なく、着色による輝度低下も抑制できる。
【0046】
なお、CBBの含有量が少ないことに起因して、蛍光体層51としての結着力不足が懸念されるが、上述したように、第2懸濁液69に含まれているCBBP57により、被覆膜55における近接する部分同士、被覆膜55とガラス管31の内面とを結着させるので、蛍光体層51の結着力として十分なものが得られる。
さらに、被覆膜55における近接する部分同士を結着させる結着体57を含む第2懸濁液69を塗布・乾燥・焼成させても、第2懸濁液69中には、結着体のCBBP57を構成しているホウ素と結合する有機成分が含まれていないので、CBBP57の含有量を増やしても、Bと反応することがない。このため、被覆膜55間の結着力を高める目的で、CBBP57の含有量を増加させても、着色による輝度低下のおそれはない。
【0047】
以上、本発明を実施の形態に基づいて説明してきたが、本発明は、上記した形態に限らないことは勿論であり、例えば、以下のような形態とすることも可能である。
1.ランプについて
1−1.種類について
上記実施の形態では、冷陰極蛍光ランプ(CCFL:Cold Cathode Fluorescent Lamp)を例にとって説明したが、本発明は、これに限らず、いわゆる外部電極蛍光ランプにも適用可能である。外部電極蛍光ランプとは、内部電極に代えて、例えば、ガラス管の両端部分のガラス管外周に外部電極を設け、ガラス管壁をキャパシタンスとして利用する誘電体バリア放電蛍光ランプ(EEFL:External Electrodes Fluorescent Lamp)である。
【0048】
なお、外部電極蛍光ランプにおいては、電極部分での電界強度が強くなり、放電空間内の水銀が、電極に引き寄せられるため蛍光体に付着し易く、発光に寄与する放電空間内の水銀が消耗し、短寿命になりやすい傾向にある。当該ランプに本発明を適用すると、蛍光体が被覆膜により被覆されることになり、電極に引き寄せられた水銀が蛍光体に付着するのを抑制することができ、水銀の消耗を防ぐことができる。
【0049】
また、本発明は、熱陰極電極を利用している蛍光ランプにも適用可能であり、さらには、電球形蛍光ランプ、コンパクト蛍光ランプにも適用可能である。
1−2.形状について
上記実施の形態では、蛍光ランプのガラス管が、「コ」字状をしていたが、当然他の形状をしていても良い。他の形状としては、例えば、直管状、「U」字状、「L」字状、「V」字状、さらには、環状等がある。
【0050】
また、電球形蛍光ランプに適用する場合には、ガラス管の形状が、例えば、螺旋状、「U」字状をしたものを複数本連結させた形状、直管を複数本連結させた形状であっても良い。
2.第1懸濁液について
2−1.結着剤の含有量について
上記実施の形態では、第1懸濁液に、結着剤としてのCBBが0.13(%)含んでいたが、結着剤を含んでいなくても良い。この結着剤は、本来、蛍光体同士の結着力を向上させるためのものである。しかしながら、本発明では、被覆膜は、蛍光体を単体で被覆する他、複数の蛍光体をまとめて被覆しているので、被覆膜自体に蛍光体を結着させる機能を有している。このため、第1懸濁液中には結着剤を必ずしも含める必要はない。
【0051】
さらには、第2懸濁液中の結着体によって、被覆膜における近接する部分同士、さらには、被覆膜とガラス管の内面とを結着させているので、蛍光体層自身の強度、蛍光体層とガラス管の内面との結着力を高めることができる。
なお、第1懸濁液中に結着剤が含まれると、蛍光体同士が結着剤で結着した状態、あるいは蛍光体とガラス管の内面とが結着した状態で、被覆膜によって被覆されるため、蛍光体同士の結着力、あるいは蛍光体とガラス管との結着力を高めることができる。
【0052】
したがって、輝度低下が問題にならない範囲内であれば、第1懸濁液に結着剤を含める方が好ましい。発明者らの検討によると、結着剤によって結着力が向上し、しかも、輝度低下が問題とならない結着剤の含有率の範囲は、ランプとして完成した状態で、蛍光体粒子の総重量100に対する、酸化イットリウムの総重量比をA、アルカリ土類金属ホウ酸塩の総重量比をBとした場合に、AとBとが、
0.1≦A≦0.6
0.4≦(A+B)≦0.7
であることが判明している。
【0053】
以下、上記範囲とした理由について説明する。
まず、本願発明者は、蛍光体層における酸化イットリウム(被覆膜である。)とCBB(結着剤である。)の混合比を変えて、衝撃に対する蛍光体層の脱落の有無を調べる衝撃試験を行った。
具体的には、全蛍光体粒子の重量を100とした場合の、酸化イットリウムの総重量比を0〜0.6の範囲で、CBBの総重量比を0〜0.7の範囲で、それぞれ0.1間隔で変化させた。そして、両重量比が異なる組み合わせの複数種類の試験ランプを、その種類毎に各20本製作し、これについて蛍光体層の衝撃試験を実施した。
【0054】
なお、酸化イットリウムの総重量比の上限を0.6にしたのは、以下の理由による。すなわち、酸化イットリウムを増すほど、ランプの輝度が低下する。ランプ輝度低下は、結着剤にCBBのみを用いたランプに対してある程度に抑制する必要がある。この場合に、輝度低下を3%以下に抑制できる、酸化イットリウムの総重量比の上限が0.6だからである。なお、3%以内の輝度低下であれば、実使用上問題のないレベルである。
【0055】
衝撃試験に用いた試験装置80を図6に示す。
試験装置80は、ランプ支持台82と試験棒固定台84とを備える。ランプ支持台82と試験棒固定台84は、それぞれ基台86に固定されている。
ランプ支持台82は、紙面に垂直な方向に長い「Vブロック」状をしている。試験ランプTLは、ガラスバルブ部分がランプ支持台82のV字溝に沿うようにして、当該ランプ支持台82に載置される。
【0056】
試験棒固定台84は、試験棒88をその一端で固定する。当該固定部は、固定支点となる。試験棒88は、コイルばね90とプラスチック棒92とからなる。コイルばね88の上記固定支点からプラスチック棒92との接続部までの長さL2は、30(mm)である。プラスチック棒92は、直径8(mm)の円柱状をしており、コイルばね90との接続部からV溝中心までの長さL3が20(mm)である。なお、プラスチック棒92は、テフロン(登録商標)からなる。
【0057】
上記の構成からなる試験装置80による試験の手順は以下の通りである。
(a)ランプ支持台82に試験ランプTLを載置する。
(b)プラスチック棒92を持ち上げ、その軸心が水平方向から角度α=45°傾く位置までコイルばね88を撓ませる。このときに、プラスチック棒92のガラスバルブ打撃部分に、当該プラスチック棒92の軸心と直交する方向に加えられる荷重が、0.1(kgf)となる。
【0058】
(c)プラスチック棒92を解放し、コイルばね88を復元させて、プラスチック棒92で試験ランプTLに衝撃を加える。
(d)試験ランプTLにおいて蛍光体層の脱落がないかどうかを目視で確認する。
試験ランプ1本に対し、上記(a)〜(d)を20回繰り返し実施した。その結果、20本中の1本でも蛍光体層の脱落の生じた種類の試験ランプは不合格とし、20本全てにおいて蛍光体層の脱落の生じなかった種類の試験ランプは合格とした。
【0059】
試験結果を、図7に示す。
図7中、「A」は酸化イットリウムの上記混合比を、「B」はCBBの上記混合比をそれぞれ示している。
図7において、「NG1」の文字が入っている箇所に対応する試験ランプが、上記衝撃試験において不合格になったものである。これ以外の試験ランプ(A=0、B=0では不実施)は、衝撃試験では合格となった。この結果から分かるように、B=0、すなわち、酸化イットリウムのみで結着剤を構成した場合には、試験の範囲では蛍光体層の脱落が生じることが確認された。また、A=0、すなわち、CBBのみで結着剤を構成した場合であっても、試験範囲のような、CBBの添加量の少ない場合には、蛍光体層の脱落が生じることが分かる。
【0060】
図7から、蛍光体層の脱落を防止するといった観点からは、「0.1≦A」または「0.1≦B」で、かつ、「0.4≦(A+B)」であればよいことが分かる。
以上の結果から、蛍光体層の脱落を防止するといった観点からは、酸化イットリウムとCBBとを混合して結着剤を構成し、両者の合計総量を増やせばよいことが分かる。しかし、両者の合計総量がある限度を超えると、ガラス管を外部から観察した際に茶色等に変色し、これが原因で輝度が低下することを、本願発明者が見出した。これは以下の原因によるものと推察される。前記一連の製造工程における焼成(シンター)工程において、カルボン酸イットリウムを熱分解すると、酸化イットリウムの他に、一般式C2n+2で表される炭化水素が生成される。一方で、CBBが溶融してガラス状になるのであるが、このときに、当該CBBが前記炭化水素を取り込んでしまって茶色等に変色するものと思われる。
【0061】
図7において、「NG2」の文字が入っている箇所に対応する試験ランプが、茶色等に変色して、問題となるほど輝度が低下し、合格基準の輝度に満たず不合格となったランプである。合格基準は、上述した、蛍光体粒子の総重量に対する酸化イットリウムの重量比の上限を規定したのと同様である。すなわち、結着剤にCBBのみを用いた従来のランプの対して3%を超えて輝度が低下するものを不合格(NG2)とした。
【0062】
図7から、輝度低下を防止するといった観点からは、「A≦0.6」または「B≦0.6」で、かつ、「(A+B)≦0.7」であればよいことが分かる。
以上、蛍光体層の脱落防止、輝度低下防止の両観点から、酸化イットリウムとCBBとを「0.1≦A≦0.6」(または、「0.1≦B≦0.6」)かつ、「0.4≦(A+B)≦0.7」となる範囲(図7において、太枠で囲んだ、「OK」の文字が入っている箇所)で混合して結着剤を構成すればよいこととなる。
【0063】
なお、第1懸濁液に結着剤が含むと、ベース層としては、蛍光体と、当該蛍光体を結着させる結着剤と、蛍光体が結着剤で結着された状態で被覆する被覆膜とを含むことになる。
2−2.結着剤
上記実施の形態では、結着剤として、アルカリ土類金属ホウ酸塩の1種であるCBBを利用しているが、他の材料を用いても良い。
【0064】
他の材料としては、同じく、アルカリ土類金属ホウ酸塩の1種であるCBBPや、Bを利用することができる。
この場合は、重量比で、CBBを1としたときに、Pが0.7以下の任意の割合となる比率で混合するのが好ましい。Pの割合が0.7を超えると、被覆膜によって被服されていても、水銀の吸着が起き易くなり、ランプの輝度低下が早まるからである。換言すれば、アルカリ土類金属ホウ酸塩として、Pを含まないCBBを用いれば、CBBPを用いた場合よりも、水銀の吸着による輝度低下の抑制を図ることが可能となるのである。
【0065】
3.蛍光体について
上記実施の形態では、蛍光体として、YOX、LAP、BAMを利用しているが、本発明における蛍光体は、上記のものに限定するものではなく、他の蛍光体を利用することもできる。
ただし、液晶カラーテレビで代表される液晶表示装置では、近年における高画質化の一環としてなされる高色再現化に伴い、当該液晶表示装置のバックライトユニットの光源として用いられる冷陰極蛍光ランプや外部電極蛍光ランプにおいて、再現可能な色度範囲の拡大化の要請がある。
【0066】
このような要請に対して、例えば、以下の蛍光体を用いることで、上記蛍光体を用いる場合よりも、色度範囲の拡大、すなわちCIE1931色度図内におけるNTSC三角(NTSCtriangle)の拡張が可能となる。
赤色蛍光体としては、
(a) ユーロピウム付活イットリウムオキシサルファイト[YS:Eu3+](略号:YOS)、色度座標:x=0.651、y=0.344
(b) ユーロピウム付活リン・バナジウム・酸化イットリウム[Y(P,V)O:Eu3+](略号:YPV)、色度座標:x=0.658、y=0.333
(c) マンガン付活酸化マグネシウム・フッ化マグネシウム・酸化ゲルマニウム[3.5MgO・0.5MgF・GeO:Mn4+](略号:MFG)、色度座標:x=0.711、y=0.287
の中から選択できる。
【0067】
緑色蛍光体としては、
(a) ユーロピウム・マンガン共付活アルミン酸バリウム・マグネシウム[BaMgAl1627:Eu2+,Mn2+](略号:BAMMn)、色度座標:x=0.139、y=0.574
(b) マンガン付活アルミン酸セリウム・マグネシウム・亜鉛[Ce(Mg,Zn)Al1119:Mn2+](略号:CMZ)、色度座標:x=0.164、y=0.722
(c) テルビウム付活アルミン酸セリウム・マグネシウム[CeMgAl1119:Tb3+](略号:CAT)、色度座標:x=0.267、y=0.663
の中から選択できる。
【0068】
因みに、上記実施の形態で用いた蛍光体の色度座標は、以下の通りである。
YOX(x=0.644、y=0.353)、LAP(x=0.351、y=0.585)、BAM(x=0.148、y=0,056)
なお、YOXとLAPの両方を上記(a)〜(c)の蛍光体に代えた場合は勿論のこと、一方のみを代えた場合にも色度範囲は拡大する。
また、青色蛍光体として、BAMに代えて、以下のものを用いても良い。
【0069】
(a) 酸化ランタン付着ユーロピウム付活アルミン酸バリウム・マグネシウム[BaMgAl1627:Eu2+にLaを付着]、色度座標:(x=0.148、y=0.156)を用いることも可能である。
LaBAMは、ユーロピウム付活アルミン酸バリウム・マグネシウムからなる粒子に金属酸化物である酸化ランタンからなる微粒子が付着してなるものであり、前記BAMよりも高い輝度維持率を示す。
【0070】
(b) ストロンチウム・カルシウム・クロロアパタイト[(Sr,Ca,Ba)(POCl:Eu2+](略号:SCA)、色度座標:x=0.151、y=0.065
なお、上記で示した色度座標値は各々の蛍光体における代表値であり、測定方法(測定原理)等に起因して、各蛍光体が示す色度座標値は、上掲した値と若干異なる場合があり得る。
【0071】
なお、赤、緑、青の各色を発光させるために用いる蛍光体は1種類に限らず、複数種類を組み合わせて用いることとしても良い。
4.第2懸濁液について
4−1.第2懸濁液の材料について
上記実施の形態では、結着体として、アルカリ土類金属ホウ酸塩の1種であるCBBPを利用している。これは、CBBPに含まれるホウ素が、焼成時あるいは屈曲部を形成するための加熱時にガラス状になりベース層の隙間に浸入し、その後温度が下がりホウ素が固まって被覆膜における近接する部分同士等を結着させることができるからである。この観点から言えば、結着体は、焼成時あるいは屈曲部を形成するための加熱時の温度で、ガラス状になる低融点材料であって、また、可視光を透過することができる材料であれば良いことになる。
【0072】
したがって、上記実施の形態では、結着体として、アルカリ土類金属ホウ酸塩の1種であるCBBPを利用しているが、他の材料を用いても良い。他の材料としては、同じく、アルカリ土類金属ホウ酸塩の1種であるCBBや、B単体を利用することができる。当然これらを組み合わせて用いることとしても良い。
4−2.結着体の有含比率について
実施の形態では、結着体として、CBBPを使用し、CBBPの蛍光体に対する含有比率は、約1.5(%)であったが、結着体の蛍光体に対する含有比率は、1.3(wt/%)以上、3(wt/%)以下の範囲が好ましい。
【0073】
これは、結着体の含有比率が1.3(wt/%)より少ないと、蛍光体層を結着する結着力が弱く、逆に、含有比率が(3wt/%)より多くなると、水銀から発せられた光の透過率が悪くなり、ランプとしても輝度が低下するからである。
なお、蛍光ランプとして完成後(第2懸濁液を乾燥焼成した後)の結着体の蛍光体に対する含有比率は、第2懸濁液中における結着体の含有比率だけでなく、乾燥条件(温風の温度や風量)によっても変動するので、実施の形態で説明した第2懸濁液の構成、乾燥条件・焼成条件でなくても、蛍光体に対する結着体の含有比率を1.5(%)にすることができる。
【0074】
5.屈曲部について
5−1.屈曲部の仕様について
上記実施の形態では、屈曲部の曲率半径が4(mm)であったが、本発明は、屈曲部の曲率半径が前記半径に限定されるものではなく、他の曲率半径でも良い。つまり、ガラス管を屈曲させると、必ずガラス管が変形するので、蛍光体層がガラス管の内面から剥がれやすくなるからである。
【0075】
発明者の検討によると、曲率半径が小さいほど、従来の蛍光体層のガラス管の内面からの剥がれが顕著になり、特に、曲率半径が4(mm)より小さくなると、蛍光体層の剥がれが目視できる程度に大きくなる。これに対して、本発明を適用させた場合には、屈曲部での蛍光体層の剥がれは目視では確認できなくなり、本発明により得られる効果が特に大きくなるからである。
【0076】
逆に、曲率半径が40(mm)より大きくなると、曲率が大きくなり、従来の蛍光体層でもガラス管の内面からの剥がれが生じないからである。
5−2.屈曲部の有無について
上記実施の形態では、ガラス管は、2箇所で屈曲部を有しているが、1箇所あるいは3箇所以上で屈曲部を有しても良いし、逆に屈曲部を有していなくても良いし、緩やかに湾曲していても良い。
【0077】
6.有機金属化合物について
6−1.金属について
上記実施の形態では、有機金属化合物の金属としてイットリウムが用いられているが、他の材料を用いることができる。他の材料としては、ランタン(La)、ケイ素(Si)、マグネシウム(Mg)、ジルコニウム(Zr)等がある。なお、イットリウム、ランタン、ケイ素、マグネシウム、ジルコニウムを単独で使用しても良いし、複数種類を組合わせて使用しても良い。
【0078】
なお、上記各金属のうち、少なくともイットリウムが含まれるほうが好ましい。これは、水銀(Hg)が酸化イットリウム(Y)に対して親和性が低いから(反応しにくいから)である。
一方、被覆膜として用いられる金属酸化物の金属(有機金属化合物の金属)は、水銀から発せられた紫外線の内、185(nm)の波長の紫外線をカットし、254(nm)の波長の紫外線を透過でき、しかも、水銀との反応しにくい材料であることが望ましい。
【0079】
6−2.有機材料について
上記実施の形態では、有機金属化合物(金属カルボキシレート)の有機材料であるカルボン酸として、カプリル酸が用いられているが、他のカルボン酸材料を用いることができる。他の材料としては、ステアリン酸・オレイン酸・リノール酸等がある。
特にこれらの有機材料は、分子量が多く、炭素成分を多く含む為、結着剤であるCBBとの反応が多くなり、着色しやすくなるが、本発明では、第1懸濁液に結着剤を用いる必要がないので、上記材料を使用することができる。
【0080】
7.製造工程について
上記の実施の形態では、本発明に係る「結着工程」を、第2焼成工程で行っていたが、他の工程で行っても良い。例えば、屈曲ランプの場合、第2焼成工程を省略して、屈曲工程での加熱を利用して、発明に係る「結着工程」としても良い。当然実施の形態にように、結着工程を、第2焼成工程と屈曲工程とで行っても良い。さらには、屈曲工程の後に、さらに焼成工程を行っても良い。
【0081】
但し、ガラス管を屈曲させる工程を「結着工程」とする場合は、結着体の溶融温度よりも高い温度にガラス管の屈曲予定部を加熱する必要がある。
8.バックライトユニットについて
実施の形態でのバックライトユニットは、直下型であったが、導光板のエッジに蛍光ランプが配されるエッジ型であっても良い。
【0082】
また、直下型のバックライトユニットの光源として、「U」字状以外のランプ、例えば、直管状のランプを複数本用いても良い。
【産業上の利用可能性】
【0083】
本発明は、経時的な輝度低下を抑制し、さらに蛍光体層の剥がれを抑制することができる蛍光ランプ、バックライトユニット及び液晶表示装置、さらには、蛍光ランプの製造方法に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0084】
【図1】発明に係る液晶表示装置を示す図であり、内部の様子がわかるように、一部を切り欠いている。
【図2】バックライトユニットの概略斜視図であり、内部の様子が分かるように前面パネルの一部を切り欠いている。
【図3】(a)は、屈曲ランプを示す図であり、内部の電極の構成等が分かるように、屈曲ランプの複数個所を切り欠いている。(b)は、屈曲ランプの延伸部の内面に形成されている蛍光体層の拡大図であり、(c)は、屈曲ランプの屈曲部の内面に形成されている蛍光体層の拡大図である。
【図4】屈曲ランプの製造工程を説明する図である。
【図5】屈曲ランプの製造工程における蛍光体層形成工程を説明する図である。
【図6】衝撃試験に用いた試験装置の概略図である。
【図7】脱落試験の結果等を示す図である。
【符号の説明】
【0085】
1 液晶表示装置
5 バックライトユニット
7 屈曲ランプ
31 ガラス管
34,36 屈曲部
40 放電空間
51 蛍光体層
53 蛍光体
54 結着剤
55 被覆膜
57 結着体
61 ガラス管
63 第1懸濁液
67 ベース層
69 第2懸濁液

【特許請求の範囲】
【請求項1】
蛍光体と当該蛍光体を被覆する被覆膜とを有する蛍光体層がガラス管の内面に形成されている蛍光ランプの製造方法であって、
前記蛍光体層の形成は、
前記被覆膜用の有機金属化合物と前記蛍光体とを含む第1懸濁液を前記ガラス管の内面に塗布・乾燥・焼成して、金属酸化物からなる被覆膜と前記蛍光体とを含むベース層を形成する形成工程と、
前記ガラス管の溶融温度未満の温度で溶融する結着材料を含む第2懸濁液を前記ベース層上に塗布・乾燥させて、前記結着材料を少なくとも前記被覆膜に付着させる付着工程と、
付着した前記結着材料を溶融させて、少なくとも被覆膜に結着させる結着工程と
を経て行われることを特徴とする蛍光ランプの製造方法。
【請求項2】
前記ガラス管は、当該ガラス管の所定箇所をガラス管の軟化点以上、溶融温度未満の温度に加熱して屈曲させることで形成される屈曲部を有し、
当該屈曲部は、前記付着工程以降に形成される
ことを特徴とする請求項1に記載の蛍光ランプの製造方法。
【請求項3】
前記屈曲部の曲率半径は、3mm以上、40mm以下である
ことを特徴とする請求項2に記載の蛍光ランプの製造方法。
【請求項4】
前記有機金属化合物は、イットリウム、ランタン、ケイ素、マグネシウム、ジルコニウムの内、1種類以上の金属を含む
ことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の蛍光ランプの製造方法。
【請求項5】
前記有機金属化合物は、金属アルコキシド、金属アセチルアセトネート、金属カルボキシレートの内、1種類以上からなる
ことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の蛍光ランプの製造方法。
【請求項6】
ガラス管の内面に蛍光体層が形成されている蛍光ランプにおいて、
前記蛍光体層は、
蛍光体と、
当該蛍光体が前記ガラス管の内面に付着した状態で、少なくとも前記蛍光体を被覆する被覆膜と、
被覆膜における近接する部分同士、及び、被覆膜と当該被覆膜に近接するガラス管の内面とを結着させる結着体と
を含むことを特徴とする蛍光ランプ。
【請求項7】
前記被覆膜は、金属酸化物から構成されている
ことを特徴とする請求項6に記載の蛍光ランプ。
【請求項8】
前記金属酸化物は、金属として、イットリウム、ランタン、ケイ素、マグネシウム、ジルコニウムの内、1種類以上の金属を含む
ことを特徴とする請求項6又は7に記載の蛍光ランプ。
【請求項9】
前記ガラス管は、1以上の屈曲部を有し、当該屈曲部の曲率半径は、3mm以上、40mm以下である
ことを特徴とする請求項6〜8のいずれか1項に記載の蛍光ランプ。
【請求項10】
前記蛍光体は、結着剤で結着された状態で被覆膜により被覆され、
前記結着剤は、CBB、CBBP、Bの内、1種類以上からなり、前記蛍光体の総重量100に対する、前記被覆膜の総重量比をA、結着剤の総重量比をBとした場合に、AとBとが、
0.1≦A≦0.6
0.4≦(A+B)≦0.7
の関係を満たす
ことを特徴とする請求項6〜9のいずれか1項に記載の蛍光ランプ。
【請求項11】
前記結着体は、CBB、CBBP、Bの内、1種類以上からなり、当該結着体の前記蛍光体に対する含有比率が、1.3wt/%以上、3wt/%以下の範囲である
ことを特徴とする請求項6〜10のいずれか1項に記載の蛍光ランプ。
【請求項12】
光源として、請求項6〜10のいずれか1項に記載の蛍光ランプが搭載されていることを特徴とするバックライトユニット。
【請求項13】
請求項12に記載のバックライトユニットが搭載されていることを特徴とする液晶表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−287355(P2007−287355A)
【公開日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−110155(P2006−110155)
【出願日】平成18年4月12日(2006.4.12)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】