説明

蛍光ランプ、電球形蛍光ランプおよび照明装置

【課題】 外部圧力による発光管の変形による損傷を抑制するととともに、経時的劣化を抑制することができるスペーサーを有する蛍光ランプを提供する。
【解決手段】 蛍光ランプ1の発光管4を構成する一対の直線部4c間に樹脂スペーサー7が配設され、一対の直線部が隣接する方向に沿った仮想平面のいずれか一方側の樹脂スペーサー7の表面にのみシリコーン樹脂8が塗布されている。シリコーン樹脂8が形成されていない他方側を照射方向に向くように照明器具へ取付けることにより、点灯中のシリコーン樹脂8の影が目立ちにくくなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本実施形態は、バルブ間にスペーサーを介在させた蛍光ランプ、電球形蛍光ランプおよびこれらランプを具備した照明装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、蛍光ランプは小形化、高効率、高出力化が進み、一般白熱電球および高輝度放電ランプへの置き換え可能な蛍光ランプの開発が進んでいる。
【0003】
例えば、HIDランプの外観寸法を等しくしながら同レベルの光束を得るために、屈曲形バルブの直管部の長さを長くして放電路を確保する蛍光ランプが知られている。(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−92836号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような蛍光ランプは、照明器具に取り付けようとしてバルブ先端を強く握ると、バルブは直管部と交差する方向に力が加えられて変形したり、あるいは隣り合うバルブ同士がぶつかったりして破損するおそれがある。そのため、バルブ間にシリコーン樹脂などからなるスペーサーを介在させることでバルブの破損を抑制している。
【0006】
しかし、比較的硬度の高いシリコーン樹脂を使用した場合においても、外部圧力を受けシリコーン樹脂は変形してしまうため、バルブが変形し破損するおそれがあった。
【0007】
本実施形態は、上記課題に鑑みなされたものであり、外部圧力による発光管の変形による損傷を抑制するととともに、スペーサーにより点灯中の外観性が損なわれることを抑制することができる蛍光ランプ、電球形蛍光ランプを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本実施形態の蛍光ランプは、少なくとも一対の直線部および屈曲部を有するU字状に屈曲した複数のバルブを有する発光管と;発光管の一対の直線部間に配設された透光性の樹脂スペーサーと;一対の直線部が隣接する方向に沿った仮想平面のいずれか一方側の樹脂スペーサー表面にのみ塗布されたシリコーン樹脂と;一端側で発光管を保持するとともに他端側に電源に接続される口金を備えたカバー体と;を具備している。
【発明の効果】
【0009】
本実施形態の蛍光ランプによれば、一対の直線部が隣接する方向に沿った仮想平面のいずれか一方側の樹脂スペーサーの表面にのみシリコーン樹脂が塗布されているので、シリコーン樹脂が形成されていない他方側を照射方向に向くように照明器具へ取付けることにより、樹脂スペーサーの機能を寿命中発揮させながら点灯中のシリコーン樹脂の影を目立ちにくくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る電球形蛍光ランプを示す概略側面図。
【図2】図1の発光管とスペーサーの取り付け部分を示す概略上面拡大図。
【図3】本発明第2の実施形態に係る蛍光ランプを示す概略側面図。
【図4】図2の発光管とスペーサーの取り付け部分を示す概略上面断面図。
【図5】本発明第3の実施形態に係る蛍光ランプを示す概略側面図。
【図6】図5の発光管とスペーサーの取り付け部分を示す概略上面拡大図。
【図7】図5の発光管とスペーサーの取り付け部分の変形例を示す概略上面拡大図。
【図8】本発明の実施形態である照明装置を示す概略構成図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態を添付図面に基づいて説明する。なお、複数の添付図面中、同一または相当部分には、同一符号を付している。
【0012】
図1は、第1の実施形態にかかわる電球形蛍光ランプを示す側面図、図2は、図1の発光管とスペーサーの取り付け部分の概略上面拡大図、図3は、第2の実施形態に係る蛍光ランプを示す概略側面図、図4は図3の発光管とスペーサーの取り付け部分の概略拡大断面図、図5および図6ならびに図7は、第4の実施形態に係る蛍光ランプをそれぞれ示す概略図、図8は照明装置の実施形態を示す概略構成図である。
【0013】
本実施形態の蛍光ランプの発光管を構成するバルブ間に緩衝作用を有する部材としては、作業性に優れているシリコーン樹脂は経時的な劣化が少なく、低コストであるため活用性が高い。しかし、硬化後の硬度が高いものであっても、外部圧力を抑制するには不十分である。
【0014】
一方で、樹脂製スペーサーは外部圧力に対する強度を有しておりランプ着脱の際、発光管の先端を強く握ったとしても発光管が変形することを抑制することができる。しかし、樹脂製スペーサーは、点灯中の熱影響およびバルブの熱変形や蛍光ランプからの紫外線を受けるとシリコーン樹脂よりも劣化しやすい傾向にある。特に、点灯中の熱影響を受け、隣接する直管部間に介在しているスペーサーは、バルブの熱変形によりスペーサーが引っ張られ、紫外線などの熱影響を受けた、スペーサーはランプの寿命前に硬化、収縮して、バルブとの接着強度が弱まるため、バルブとの接点領域が小さい場合、容易にスペーサーが脱落するおそれがある。そこで、樹脂スペーサーの脱落を抑制するためのシリコーン樹脂を介在させることでこのような問題を解決することができる。
【0015】
しかし、スペーサーを補強するためにシリコーン樹脂を塗布すると、シリコーン樹脂が透光性が低い場合には点灯中に影となって目立ってしまう。そこで、本実施形態の蛍光ランプは、シリコーン樹脂を一対の直線部が隣接する方向に沿った仮想平面のいずれか一方側の樹脂スペーサー表面にのみ塗布している。
【0016】
発光管を構成する屈曲バルブは、直管ガラスのほぼ中央を加熱溶融し、屈曲するまたは直管ガラスをモールドすることによってU字状に屈曲した形状に形成される。ここで「U字状に形成された」とは、放電路が屈曲部で折り返されて放電路が屈曲するように直管バルブが形成されていることを意味し、屈曲部が湾曲状または円弧状に形成されたものに限定されない。要するに、放電路が屈曲するように直線部の一端同士が連続するように形成されたバルブを意味する。また、屈曲バルブはほぼ平行な2本の直線部の一端部を吹き破りなどによって形成された連通管によって接続されたものであってもよい。
【0017】
本実施形態の蛍光ランプによれば、発光管に対向する形状を発光管外形曲率と同曲率面に形成されたスペーサーにより、発光管との接触面積を確保するので接続強度を良好とできる。さらに、隣接するバルブ間に介在するスペーサーの上からシリコーン樹脂を塗布しているので接触面積を大きく確保したスペーサーの劣化による脱落を抑制することができる。また、バルブ間の樹脂製スペーサーが介在しているので、外部圧力による損傷の発生を確実に抑制することができる。さらに、シリコーン樹脂を一対の直線部が隣接する方向に沿った仮想平面のいずれか一方側の樹脂スペーサー表面にのみ塗布しているので、シリコーン樹脂の透光性が低い場合であっても点灯中の影が目立ちにくくなり、外観性が損なわれることを抑制できる。
【0018】
他の実施形態の電球形蛍光ランプとしては、各バルブの全直線部が円周上に位置するように配設された前記蛍光ランプと、基板および基板に実装された複数の電子部品を有し、高周波電力を前記蛍光ランプに出力する点灯装置と;前記点灯装置を収容しているカバー体と;を具備している。
【0019】
さらに他の実施形態の照明装置は、前記蛍光ランプまたは電球形蛍光ランプと;前記蛍光ランプまたは電球形蛍光ランプが取り付けられる器具本体と;を具備している。
【0020】
次に本実施形態を図示により詳述する。図1に示す電球形蛍光ランプ1は、その高さ方向(管軸方向)の一端(図1では下端)に口金2を有するカバー3、このカバー3の他端(図1では上端)側に支持された発光管4、この発光管4の一端側を支持するカバー3に取り付けられたホルダ5、発光管4を覆うとともに一端側でホルダ5、口金2およびカバー3の内側に収納された点灯装置6を備えている。
【0021】
口金2は、エジソンタイプのE26形などで、ねじ山を備えた筒状のシェル、このシェルの一端側の頂部に絶縁部を介して設けられたアイレットを備えている。シェルは、その他端側をカバー3の一端部に被せて接着剤またはかしめなどにより固定されている。
【0022】
カバー3は、例えばポリブチレンテレフタレート(PBT)などの耐熱性合成樹脂により形成されており、このカバー3の一端(図1中下端)側には口金2が取り付けられている。
【0023】
点灯装置6は、カバー3内に収容される図示しない回路基板を備え、この回路基板に複数の電気部品が実装されて、発光管を高周波点灯させる高周波点灯回路が構成されている。
【0024】
ホルダ5は例えばPBT等の耐熱性合成樹脂により有蓋円筒状に形成され、その蓋部をなす円板状の基板部の図中下面周縁部に、一端(図1では下端)側にカバー3が接着剤等により固着している。
【0025】
ホルダ5は、基板部上に、発光管4の一対の端部を挿通する挿通孔をそれぞれ形成し、これら挿通孔が形成されている。
【0026】
発光管4を構成する屈曲バルブ4a内面には、例えば3波長形の蛍光体が形成され、屈曲バルブ4aの内部にアルゴンなどの希ガスや水銀などを含む封入ガスが封入されている。
【0027】
発光管4は3本のU字状屈曲バルブ4aを所定の位置に配置し、連通管4bを介して順次接続することによって1本の放電路が形成されており、3本の屈曲バルブ4aは、バルブの直線部4cが円周上に位置するように配置されている。
【0028】
各屈曲バルブ4aは、管外径が約11mm、管内径が約9.4mm、肉厚が約0.8mmの無鉛ガラス製で、直管ガラスバルブの中間部を滑らかに湾曲するように高さ55mm程度に屈曲形成したものであり、屈曲部を備えた略U字状に形成されている。
【0029】
なお、図2に示すように、屈曲バルブ4aの屈曲部4dと直線部4cの境界領域近傍であるとともに、隣接するバルブ間には、アクリル樹脂からなる透光性樹脂からなるスペーサーが7介在している。スペーサー7はポリカーボネート、PET、フッ素樹脂等の透光性材料から形成してもよい。
【0030】
なお、シリコーン樹脂8は、一対の直線部4c、4cが隣接する方向に沿った仮想平面のいずれか一方側の樹脂スペーサー7の表面側だけにを塗布している。このシリコーン樹脂8は硬度40〜80であり、一定の弾力性を有している。また、シリコーン樹脂8は白色等の表面の反射率が高くなる材料を使用することが好ましい。
【0031】
なお、バルブ間に介在しているシリコーン樹脂は、自然硬化形シリコーン樹脂であっても熱硬化形シリコーン樹脂であってもよく、要は樹脂製のスペーサーとバルブ間に介在させることが可能であればその種類、硬度、粘度等は限定されるものではない。
【0032】
本実施形態の蛍光ランプは、シリコーン樹脂8が形成されていないU字状屈曲バルブの他方側が照射方向に向くように照明器具へ取付ける使用態様が好適である。
【0033】
シリコーン樹脂8は、スペーサー7の一方側のみに塗布されているので、スペーサー7の他方側からバルブ4の放射光が透過され、第1実施形態のようにシリコーン樹脂8を一方側および他方側それぞれに塗布する場合に比べて点灯中の影が目立ちにくくなる。
【0034】
また、スペーサー7に透光性に優れたプラスチック材料を使用し、シリコーン樹脂8によって補強することでスペーサー7の発光管4への固着強度が高くなり、圧縮方向の荷重に耐えるための緩衝材としての機能を寿命中発揮することが可能となる。なお、本実施の形態は、隣り合う一対の直線部4c、4c間にスペーサー7を形成しているが、互いに隣接する屈曲バルブ4aの直線部4c、4c間にスペーサー7を介在させていてもよい。
【0035】
図3に示す蛍光ランプ10は、複数の屈曲バルブと、この複数の屈曲バルブからなる発光管の端部に取り付けられる樹脂製の口金30とを備えている。
【0036】
また、図4には図3のバルブ直線部4cとスペーサー7の取り付け部分を示す概略上面断面図であり、バルブ直線部4c内に形成された蛍光体層41と、バルブ内表面との間に反射層42が形成されており、蛍光体層41の反射層42の反対側にアパチャー43が形成されている。この反射層42は、発光管4によって形成される仮想平面の一方側に設けられており、アパチャー43が他方に設けられている。
【0037】
本実施形態では、樹脂スペーサー7を省略して発光管4の一方側だけにシリコーン樹脂8を塗布しているが、第1の実施形態のようにスペーサー7を設けても構わない。
【0038】
本実施形態のように、発光管4に反射層42およびアパチャー43を設けることで効果的に対象物を照らすことが可能となる。
【0039】
図5は、第3の実施形態にかかわる蛍光ランプ10を示す概略側面図、図6および図7は図5の発光管4とスペーサー7の取り付け部分の概略上面図である。なお、本実施形態および以下の実施形態において第1および第2の実施形態と同一構成については同一の符号を付し、特に構成上の違いがない場合にはその詳細な説明は省略する。
【0040】
本実施形態の発光管4は、2本の直管バルブ4dは互いに近接して平行に配設され、それぞれ一端が気密に閉塞されている。連通管4bは、直管4dの一端から他端側へ若干後退した位置に吹き破り法によって形成されてH字状をなしている。
【0041】
口金は30は、一対の直管バルブ4dの両端部を抱持するように一対の直管バルブ4dに装着されている。
【0042】
スペーサー7は、図6および図7に示されるように、例えば、略台形の透光性部材にて互いに嵌合可能な凹凸部を上底に形成されている。このスペーサー7を一対の直管バルブ4dが隣接する方向に沿った仮想平面両面側より凹凸部が形成された上底から互いを挿入し、凹凸部を嵌め合わせ、一対のスペーサー7と直管バルブ4d間にシリコーン樹脂8を充填することで、スペーサー7を固着している。
【0043】
また他のスペーサー7として図7に示すように、一対の直管バルブ4dが隣接する方向に沿った仮想面と平行となる直線部7aを有するとともに、直線部7aの両端からバルブ外周の曲率と同等の曲率からなり、直管バルブ4d外表面と接触する一対の弾性片7bを有している。
【0044】
図7(a)に示すように、直管バルブ4dが隣接する方向に沿った仮想平面にスペーサー7の一対の弾性片7bを圧入させ、スペーサー直線部7a側および直管バルブ4dをシリコーン樹脂8により固着することができる。なお、図7(b)に示すように直管バルブ4dに圧入したスペーサー7の一対の弾性片側にシリコーン樹脂8を介在させ互いを固着しても構わない。
【0045】
これら本実施の蛍光ランプ10によれば、隣接するバルブ間にスペーサー7を介在させているので、外部圧力による発光管4の損傷を抑制することが容易となる。さらに、スペーサー7をシリコーン樹脂8により被覆することで、経時的な劣化を抑制することができるので、蛍光ランプの寿命前にスペーサー7が脱落することを抑制することができる。
【0046】
図8は他の実施形態に係る照明装置100の概略構成図である。この照明装置100は、例えばダウンライト等の照明装置であり、照明器具本体200を有する。この照明器具本体200内にはソケット210および反射体220が取り付けられ、ソケット210には上記コンパクト蛍光ランプ10の口金30が装着される。
【0047】
この照明装置100によれば、コンパクト蛍光ランプ10が下方に向いているので、直下照度を向上させることができる。
【符号の説明】
【0048】
1…電球形蛍光ランプ、2…口金、3…カバー、4…発光管、5…ホルダ、6…点灯装置、7…スペーサー、8…シリコーン樹脂、10…コンパクト蛍光ランプ、30…口金、100…照明装置。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一対の直線部および屈曲部を有するU字状に屈曲した複数のバルブを有する発光管と;
発光管の一対の直線部間に配設された透光性の樹脂スペーサーと;
一対の直線部が隣接する方向に沿った仮想平面のいずれか一方側の樹脂スペーサー表面にのみ塗布されたシリコーン樹脂と;
一端側で発光管を保持するとともに他端側に電源に接続される口金を備えたカバー体と;
を具備していることを特徴とする蛍光ランプ。
【請求項2】
各バルブの全直線部が円周上に位置するように配設された請求項1記載の蛍光ランプと;
基板および基板に実装された複数の電子部品を有し、高周波電力を前記蛍光ランプに出力する点灯装置と;
前記点灯装置を収容しているカバー体と;
を具備していることを特徴とする電球形蛍光ランプ。
【請求項3】
請求項1または2いずれか一記載の蛍光ランプまたは電球形蛍光ランプと;
前記蛍光ランプまたは電球形蛍光ランプが取り付けられる器具本体と;
を具備していることを特徴する照明装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−94471(P2012−94471A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−264700(P2010−264700)
【出願日】平成22年11月29日(2010.11.29)
【出願人】(000003757)東芝ライテック株式会社 (2,710)
【Fターム(参考)】