説明

蛍光ランプおよび照明器具

【課題】所望温度の最冷部が屈曲部に形成されても点灯中の外観不良が起こりにくい蛍光ランプを提供する。
【解決手段】蛍光ランプ1は、少なくとも一対の直管部1a,1bの先端側に放電路が折り返される屈曲部11が形成されており、この屈曲部11の先端側には一対の直管部1a,1bが並設する方向に平行であって先端方向に臨んでいる平坦部14および一対の直管部の並設方向に直交する方向の幅寸法が平坦部14に向かうに従って小さくなっていて先端側が平坦部14に接続している暫減部15が形成されていて、基端側の端部が封止された細長い透光性放電容器10と;透光性放電容器10の両端に封装された一対の電極と;透光性放電容器10の内面側に形成された蛍光体層と;透光性放電容器10の内部に封入された水銀および希ガスを含む放電媒体と;を具備している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、屈曲部が形成された透光性放電容器を有するコンパクトな蛍光ランプおよびこの蛍光ランプを用いた照明器具に関する。
【背景技術】
【0002】
蛍光ランプは、近年環境問題から小形化が進展している。特に発光管に屈曲部が形成されたコンパクト形蛍光ランプにおいては、その傾向が顕著である。しかし、所定光量を得るために入力電力はそのまま変わらないので、小形化する分管壁負荷がますます高くなってきている。
【0003】
管壁負荷が大きくなると、点灯中のランプ温度が上昇し、発光管内の水銀蒸気圧が高くなり過ぎて発光効率が低下する。これを回避するために、アマルガムの形で水銀を封入することにより、水銀の最適蒸気圧を呈する温度がランプ温度に接近するように高く設定したり、発光管の一部に最冷部を形成したりすることにより、周囲温度が上昇しても水銀蒸気圧が最適範囲に接近するように配慮したりしている。
【0004】
しかし、近時、蛍光ランプの小形化に伴い照明器具の小形化がますます進展しているために、蛍光ランプの点灯時の周囲温度がさらに上昇し、さらなる最冷部温度の低下に対する要求が強い。
【0005】
従来、コンパクト蛍光ランプにおいて、金型を用いて発光管の屈曲部を成形することにより、屈曲部の機械的強度を確保しつつ最冷部温度が低下するようにした技術が知られている(例えば、特許文献1および2参照)。
【0006】
この従来の技術によれば、透光性放電容器の中間部に形成される屈曲部の上辺部が正面視において平坦であるとともに、放電路に直角な断面において上辺部が頂点となる三角形状をなしていて、頂点から前面側および背面側にかけて平面部が形成されている。
【特許文献1】特開平6−36743号公報
【特許文献2】特開2002−15701号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来技術においては、屈曲部の頂部が比較的先鋭な形状となっているので、最冷部は最も温度が低下しやすいこの頂部に集中して発生する。最冷部には、通常水銀が凝集するため、凝集する量が多い場合には水銀が過剰に点在するようになり、点灯中外部からは黒化したように見えることがある。
【0008】
コンパクト蛍光ランプの屈曲部は、ダウンライト式の照明器具に装着された状態で鉛直方向に向いて点灯することが多く、外部から視認されやすい。このような場合、屈曲部に凝集した水銀による黒化が顕著に現れると、ランプの外観が悪化するばかりでなく、点灯を長期間継続していくと屈曲部の蛍光体が水銀との反応によって劣化して直下照度が低下するおそれがある。
【0009】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、所望温度の最冷部が屈曲部に形成されても点灯中の外観不良が起こりにくい蛍光ランプおよびこれを用いた照明装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の蛍光ランプは、少なくとも一対の直管部の先端側に放電路が折り返される屈曲部が形成されており、この屈曲部の先端側には一対の直管部が並設する方向に平行であって先端方向に臨んでいる平坦部および一対の直管部の並設方向に直交する方向の幅寸法が平坦部に向かうに従って小さくなっていて先端側が平坦部に接続している暫減部が形成されていて、基端側の端部が封止された細長い透光性放電容器と;透光性放電容器の両端に封装された一対の電極と;透光性放電容器の内面側に形成された蛍光体層と;透光性放電容器の内部に封入された水銀および希ガスを含む放電媒体と;を具備していることを特徴としている。
【0011】
本発明および以下の各発明において、特に指定しない限り用語の定義および技術的意味は次による。
【0012】
透光性放電容器は、細長くて両端が封止され、また中間に折り返された屈曲部を備えていればよく、その長さ、管径および屈曲部の数は自由である。しかし、本発明は、いわゆるコンパクト形蛍光ランプおよび電球形蛍光ランプに好適である。
【0013】
また、透光性放電容器の放電路長は、ランプ電力に応じて適当な長さに設定すればよい。コンパクト形蛍光ランプの場合、200〜2000mm程度の範囲から適当に選択することができる。なお、放電路長とは、透光性放電容器の両端に封装される後述する一対の電極の間における透光性放電容器の平均的な長さをいう。
【0014】
さらに、透光性放電容器の形状は、中間に折り返された屈曲部を一つまたは複数備えていればよく、その余の形状については全く自由である。なお、「折り返された屈曲部」とは、細長いバルブの中間部を加熱して軟化状態で折り曲げ、かつ金型を用いて成形して形成されたU字状をなした部分をいう。
【0015】
たとえば、コンパクト形蛍光ランプの場合、U字状、M(またはW)字状、ダブルU字状、トリプルU字状、カルテットU字状などの形状をなしている透光性放電容器を用いることができる。
【0016】
屈曲部の先端側には一対の直管部が並設する方向に平行であって先端方向に臨んでいる平坦部が形成されている。さらに、一対の直管部の並設方向に直交する方向の幅寸法が平坦部に向かうに従って小さくなっていて先端側が平坦部に接続している暫減部が形成されている。
【0017】
屈曲部に暫減部を形成して直管部の先端側を突出させることにより、先端部分の平坦部のガラス管が大きく伸び過ぎてガラス肉厚が過度に薄くなることなく、均等な肉厚に形成することができるとともに、この突出した平坦部付近には放電路が形成されないので所定温度の最冷部をランプ点灯中に確保することができる。
【0018】
また、最冷部が形成される部分の多くが平坦部であるため、最冷部が局所的に形成されにくく、水銀が凝集しにくくなる。これは、ランプ点灯中における平坦部の温度分布が略均等になって局部的な水銀の凝集が起こりにくいためと考えられる。このため、屈曲部には凝集した水銀による黒化が発生し難くなり、ランプの外観を損なうことが抑制される。また、屈曲部に水銀が凝集しにくいため、長期間点灯しても屈曲部の蛍光体が水銀と反応して劣化することも抑制することができる。
【0019】
本発明の蛍光ランプは、屈曲部に設けられた一対の直管部を繋ぐ接続部の基端側部位から平坦部までの長さが直管部の管外径の1.1〜1.5倍の範囲となるように屈曲部が形成されていることを特徴とする。
【0020】
接続部の基端側部位から平坦部までの長さが直管部の管外径の1.1倍未満の場合には、屈曲部先端と放電路とが接近するために最冷部温度を確保することができない。また、この長さが直管部の管外径の1.5倍を超えた場合には、平坦部のガラス肉厚が薄くなりすぎて機械的強度を保てないために好ましくない。
【0021】
本発明の照明器具は、照明器具本体と;照明器具本体に配設された上記発明の蛍光ランプと;を具備していることを特徴とする。
【0022】
本発明において、「照明装置」とは、放電ランプの発光を利用するあらゆる装置を含む広い概念であり、たとえば照明器具、標識灯、液晶などのバックライト装置およびこれを組み込んだパーソナルコンピュータ、テレビジョン受像機、GPS機器などの各種情報機器、ならびに画像読取装置およびこれを組み込んだ複写機、ファクシミリ、スキャナなどのOA機器などを含む。
【発明の効果】
【0023】
本発明の蛍光ランプによれば、屈曲部に暫減部を形成して直管部の先端側を突出させることにより、先端部分の平坦部のガラス管が大きく伸び過ぎてガラス肉厚が過度に薄くなることなく、均等な肉厚に形成することができるとともに、最冷部が形成される屈曲部の先端部位が平坦部であるため、最冷部が局所的に形成されることによる水銀の凝集が発生しにくくなり、ランプの外観を損なうことが抑制される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下添付図面を参照して、本発明に係る蛍光ランプの一実施形態を説明する。各図において、同一の構成要素には同一の符号を付して重複する説明を省略する。図1は、本実施形態の蛍光ランプを示す正面図を示し、図2は、図1の蛍光ランプの屈曲部を部分的に表す拡大平面図を示す。なお、図2(a)は屈曲部を一対の直管部の並設方向に直交する方向から見た正面図、図2(b)は同じく並設方向から見た側面図である。
【0025】
蛍光ランプ1は、ここでは互いに並行に隣立する6本の直管により構成されるガラス製の直管バルブ1a〜1fから構成された透光性放電容器としての発光管10を有している。直管バルブ1a〜1fは、先端側に形成された屈曲部11の接続部12および基端側の結合管13により結合されている。このように、直管バルブ1a〜1fが接続部12および結合管13を介して1本の放電路を形成することで発光管10が構成されている。この発光管10内には、アルゴン(Ar)やクリプトン(Kr)などの希ガス、または水銀などを含むガスが封入されている。
【0026】
放電路の両端に位置するバルブ1aとバルブ1fにおけるそれぞれの一端部には、ステムシールまたはピンチシールによって図示しない一対の電極が封装されている。各電極は、フィラメントコイルを有しており、このフィラメントコイルが一対の線状のウエルズに支持されている。
【0027】
発光管10の内面には、アルミナ微粒子を主体とする保護膜およびこの保護膜上に3波長発光形蛍光体を主体とする蛍光体層がそれぞれ形成されている。
【0028】
直管バルブ1a〜1fにおける基端側は、口金3を構成する例えばポリブチレンテレフタレート(PBT)などの耐熱性合成樹脂により構成されているバルブ支持体31の6個の孔を介して側壁により囲われた側へ突出させられ、バルブ支持体31の側壁により囲われた凹部へシリコーン樹脂やエポキシ樹脂などの接着剤が注入されて、直管バルブ1a〜1fの基端部はバルブ支持体31に固定される。
【0029】
口金3は、バルブ支持体31と、これに結合する例えばポリブチレンテレフタレート(PBT)などの耐熱性合成樹脂により構成されているピン支持体50とから構成されている。ピン支持体50には、ピン支持体50の裏表に突出する状態で4本のピン51が植設されている。4本のうち3本のピン51内に対し、発光管10の電極と電気接続されて発光管10から導出されたリードワイヤが挿入されて固着されている。このリードワイヤとピン51の接続がなされた後に、バルブ支持体31とピン支持体50とは嵌合されて口金3の組立てが完了する。
【0030】
ピン支持体50においては、ピン51が植設されたベース部52から外部方向へ突出した柱状部53が形成され、柱状部53には数か所に抜け止め用の凹凸部54が形成されており、ランプ装置を接続する電源部側のコネクタ部に対して上記口金3が挿入された場合には、適切な噛み合わせ状態が実現され、電灯器はしっかりと固定される。
【0031】
屈曲部11は、一対の直管バルブ(図1においては1aおよび1b)が並設する方向に平行であって先端方向に臨んでいる平坦部14が形成されている。さらに、一対の直管バルブ(図1においては1aおよび1b)の並設方向に直交する方向の幅寸法が平坦部14に向かうに従って小さくなっていて先端側が平坦部14に接続している暫減部15が形成されている。
【0032】
屈曲部11に暫減部15を形成して直管バルブ(図1においては1aおよび1b)の先端側を突出させることにより、先端部分の平坦部14のガラス管が大きく伸び過ぎてガラス肉厚が過度に薄くなることなく、均等な肉厚に形成することができる。また、この突出した平坦部14付近には放電路が形成されないので所定温度の最冷部をランプ点灯中に確保することができる。
【0033】
直管バルブ(図1においては1aおよび1b)が並設する方向の屈曲部先端形状は任意であるが、図2(a)に示す直管バルブ1a,1bの並設方向の最大幅Wおよび同方向の平坦部14の幅寸法WTがW>WTの関係を満たすようにして、平坦部14のガラス肉厚が薄くならないように形成するのが好ましい。本実施形態では、直管部から平坦部14側に向ってなだらかに傾斜する形状となるように形成されている。
【0034】
平坦部14と暫減部15とが接続される角部は断面形状が曲面を成すように形成される。この一対の角部の曲率RTCは、接続部12の基端側断面曲線の曲率RBCよりも小さくなるように形成されている。
【0035】
平坦部14の直管バルブ1a,1bの並設方向に直交する方向の幅寸法DTと直管部の管外径Dとの関係は、ランプ点灯中の最冷部温度を均等に分布させるために0.3D≦DT≦0.8Dの範囲内とするのが適当である。
【0036】
図2におけるL1は、接続部12の基端側から平坦部14までの高さを示しており、本実施形態の場合には約16〜18mmである。なお、直管バルブ1a〜1fの直管部の肉厚は0.8〜1.4mmである。
【0037】
この高さL1は、直管バルブの外径Dの1.1〜1.5倍の範囲となるように屈曲部11を形成するのが好ましい。高さL1が管外径Dの1.2倍未満の場合には、屈曲部11の先端と放電路とが接近するために最冷部温度を確保することができない。また、この高さL1が管外径Dの1.5倍を超えた場合には、平坦部14の先端部位のガラス肉厚が薄くなりすぎて機械的強度を保てなくなる。
【0038】
次に、本実施形態の作用について説明する。
【0039】
本実施形態の蛍光ランプ1は、ランプ点灯中に放電路から比較的離れた平坦部14に最冷部が形成されるようになる。このとき、平坦部14の面積が比較的大きいため、平坦部14の温度はほぼ均等に分布した状態となり、最冷部が局所的に形成されにくい。したがって、平坦部14には水銀が過剰に凝集しにくくなり、屈曲部11には凝集した水銀による黒化が発生し難くなる。このため、屈曲部11が目視されやすいコンパクト形蛍光ランプ1の外観を損なうことが抑制される。また、屈曲部11に水銀が凝集しにくいので、長期間蛍光ランプ1を点灯しても屈曲部11の蛍光体が水銀と反応して劣化して光束が低下することも抑制することができる。
【0040】
図3は、本発明の照明器具に係る本実施形態を示す概略断面図である。照明器具71は天井埋め込み形の照明器具本体72を有しており、この器具本体72内にはソケット72が装着されている。ソケット72には、上記実施形態の蛍光ランプ1が装着される。蛍光ランプ1には、図示しない反射体が光学的に対向配置されており、所望の配光で蛍光ランプ1の放射光を照射してダウンライト形の照明器具として機能する。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明に係る蛍光ランプの一実施形態を示す正面図。
【図2】図1の蛍光ランプの屈曲部を示す一部拡大正面図および側面図。
【図3】本発明の照明器具に係る実施形態を示す概略断面図。
【符号の説明】
【0042】
1・・・蛍光ランプ、10・・・透光性気密容器としての発光管、11・・・屈曲部、12・・・接続部、14・・・平坦部、15・・・暫減部、1a〜1f・・・直管バルブ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一対の直管部の先端側に放電路が折り返される屈曲部が形成されており、この屈曲部の先端側には一対の直管部が並設する方向に平行であって先端方向に臨んでいる平坦部および一対の直管部の並設方向に直交する方向の幅寸法が平坦部に向かうに従って小さくなっていて先端側が平坦部に接続している暫減部が形成されていて、基端側の端部が封止された細長い透光性放電容器と;
透光性放電容器の両端に封装された一対の電極と;
透光性放電容器の内面側に形成された蛍光体層と;
透光性放電容器の内部に封入された水銀および希ガスを含む放電媒体と;
を具備していることを特徴とする蛍光ランプ。
【請求項2】
屈曲部に設けられた一対の直管部を繋ぐ接続部の基端側部位から平坦部までの長さが直管部の管外径の1.1〜1.5倍の範囲となるように屈曲部が形成されていることを特徴とする請求項1記載の蛍光ランプ。
【請求項3】
照明器具本体と;
照明器具本体に配設された請求項1または2記載の蛍光ランプと;
を具備していることを特徴とする照明器具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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