説明

蛍光ランプ及び照明器具

【課題】ガラスバルブの封着端部及び水銀ペレットの寸法ばらつきに拘らず、封着端部への水銀ペレットの固着強度を向上できる蛍光ランプを提供する。
【解決手段】蛍光ランプ1は、ガラスバルブ2、球状の水銀ペレット11、一対のリードワイヤ13、電極15及び希ガスを具備する。内周面に蛍光体層9を有するバルブ3の両端をステム4で封着してガラスバルブ2を形成する。このバルブ内に希ガスを封入する。ガラスバルブ2の一方の封着端部2aに位置されたバルブ3の端部3aとステム4のフレア部4aとの間に、これらの融着部5に向けて先細りとなる環状凹部6を形成する。水銀ペレット11を、融着部5から離れて端部3aとフレア部4aで挟設して、これら端部3a及びフレア部4aの夫々に固着する。リードワイヤ13をステム4に貫通させ、これらワイヤ13に電極15を支持したことを特徴としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水銀ペレットがガラスバルブの内部に配設された蛍光ランプ、及びこのランプを備える照明器具に関する。
【背景技術】
【0002】
ガラスバルブ内に封入された亜鉛(Zn)−水銀(Hg)合金からなる水銀放出金属構体が、ガラスバルブの端部に封着されているステムに固着された環形及び直管形の蛍光ランプが、従来技術として知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
即ち、特許文献1の図1に示された環形蛍光ランプは、そのガラスバルブを円形のドラムに巻き付けて環状に曲げ成形する際に、ガラスバルブの両端封着部の先端部外周に、前記巻き付けのために移動される冶具で掴まれるくびれ部、及びこのくびれ部に連続する環状の突出部を形成し、この突出部の内側に環状の凹部を形成し、亜鉛−水銀合金の水銀放出金属構体(一般的に球状である。)を凹部に収容させて、この水銀放出金属構体を凹部の不定形な曲面のガラス壁内面に大きな接触面積をもって接触させ、更に、前記水銀放出金属構体を排気時の加熱の残存熱及び排気工程直後の外側からの加熱で凹部の内面に溶着して固定させた構成である。
【0004】
又、特許文献1の図3に示された直管形蛍光ランプは、ガラスバルブの両端封着部が、その半径方向の断面においてガラスバルブの直管部からステムに向かってU字状を描くように連続したガラス壁を有していて、このガラス壁の内側に形成された環状の凹部に、亜鉛−水銀合金の水銀放出金属構体を収容し、この水銀放出金属構体を凹部の外側からの加熱によって凹部内面に溶着し固定させた構成である。
【0005】
更に、特許文献1の図4に示された蛍光ランプは、ガラスバルブの端部を圧着して形成された封着部とし、この封着部内に直接収容された亜鉛−水銀合金の水銀放出金属構体を固着させた構成であり、水銀放出金属構体は圧着封着部の上面に固着されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平8−17395号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1の図1に記載の従来技術は、環形蛍光ランプに係る技術であり、ガラスバルブの封着部の外周にくぼみ部を設けることによって凹部を形成する構成である。これに対して、直管形蛍光ランプやコンパクトランプ等は封着部の外周にくぼみ部がない構成であるので、端部が少なくとも直管である蛍光ランプ等特許文献1の図1に記載の従来技術を適用することは難しい。更に、凹部をなすガラス壁内面に水銀放出金属構体を大きな接触面積をもって接触させるためには、ガラス壁内面の形状と球形の水銀放出金属構体の接触部位の形状とが略一致する必要がある。
【0008】
しかし、ガラス製の凹部を正確な寸法精度で形成することは不可能で、その寸法のばらつきは大きい。しかも、水銀放出金属構体の径も種々あるとともに、そのばらつきもある。そのため、実際上は、凹部をなすガラス壁内面と水銀放出金属構体とを大きな接触面積をもって接触させることが困難である。したがって、製造上、水銀放出金属構体の固着強度がばらつき易いので、水銀放出金属構体の固着強度が低い場合には、輸送時等に加わる振動で水銀放出金属構体が凹部から外れてガラスバルブ内を移動することがあり、それに伴い、ガラスバルブの内面に装着されている蛍光体層が傷つけられる可能性がある、という課題がある。
【0009】
同様に、特許文献1の図3に記載の従来技術でも、凹部をなすガラス壁内面の形状と球形の水銀放出金属構体の接触部位の形状とを略一致させる必要があるので、製造上、水銀放出金属構体の固着強度がばらつき易い。それにより、水銀放出金属構体の固着強度が低い場合には、輸送時等に加わる振動で水銀放出金属構体が凹部から外れてバルブ内を移動することがあり、それに伴い、ガラスバルブの内面に装着されている蛍光体層が傷つけられる可能性がある、という課題がある。
【0010】
又、特許文献1の図4に記載の従来技術は、バルブ端部が圧着により封着された構成であるので、このような構成がない封着部を有した直管形蛍光ランプ等には適用できない。しかも、特許文献1の図4のように球形の水銀放出金属構体は圧着封着部に対して一点で接触して固着されているので、その固着強度が低い場合がある。それにより、水銀放出金属構体の固着強度が低い場合には、輸送時等に加わる振動で水銀放出金属構体が凹部から外れてガラスバルブ内を移動することがあり、それに伴い、このバルブの内面に装着されている蛍光体層が傷つけられる可能性がある、という課題がある。
【0011】
したがって、本発明の目的は、ガラスバルブの封着端部及び水銀ペレットの寸法ばらつきに拘らず、封着端部への水銀ペレットの固着強度を向上できる蛍光ランプ及び照明器具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記課題を解決するために、請求項1に係る発明の蛍光ランプは、内周面に蛍光体層を有するバルブの両端がステムで封着されているとともに、一方の封着端部に位置された前記バルブの端部と前記ステムのフレア部との間にこれらの融着部に向けて先細りとなる環状凹部が形成されたガラスバルブと;前記融着部から離れて前記バルブの端部と前記フレア部で挟設されてこれらバルブの端部及びフレア部の夫々に融合して固着された球状の水銀ペレットと;前記ステムに貫通された一対のリードワイヤと;これらリードワイヤに支持された電極と;前記ガラスバルブ内に封入された希ガスと;を具備することを特徴としている。
【0013】
本発明で、ステムのフレア部は、ステムがバルブに融着される前の状態で、バルブの端部との間に先細りの環状凹部を形成するに適した形状に予め形成されていて、排気工程では殆ど変形を起こさない構成でもよく、或いは、ガラスバルブの排気工程で加えられる熱で軟化されつつ排気の影響で変形されることにより、バルブの端部との間に先細りの状凹部を形成した構成であっても差し支えない。
【0014】
本発明で、先細りの環状凹部を形成するための構成として、バルブの端部とステムのフレア部との一方が、バルブの直管部の管軸に略平行であるとともに、他方を延長した線が前記管軸に対して斜めに交差するように前記他方を斜状に設けた構成を挙げることができ、若しくは、バルブの端部とステムのフレア部の双方を延長した線が、いずれも前記管軸に対して斜めに交差するように前記双方を互に逆の傾きで斜状に設けた構成を挙げることができる。
【0015】
本発明で、水銀ペレットには、錫(Sn)−水銀(Hg)合金からなる蛍光灯用アマルガムペレットを好適に用いることができるが、これに制約されず例えば亜鉛(Zn)−水銀(Hg)合金からなる水銀ペレットを用いることも可能である。又、本発明は、ガラスバルブの両端側部位が少なくとも直管をなしている蛍光ランプであれば適用可能であるので、直管形の蛍光ランプに実施を制約されるものではなく、例えばコンパクト形の蛍光ランプにも適用することができる。
【0016】
請求項1の発明では、球状をなした水銀ペレットが、ガラスバルブが有した先細り状の環状を形成したバルブの端部とステムのフレア部の夫々に融合して固着され、かつ、この固着箇所はバルブの端部とフレア部の融着部から離れている。そのため、水銀ペレットの球形のばらつきやガラスバルブの封着端部の寸法のばらつきに拘らず、水銀ペレットの2箇所がガラスバルブの封着端部に固着されるので、水銀ペレットの固着強度を向上できる。
【0017】
請求項2に係る発明の蛍光ランプは、請求項1の発明において、前記水銀ペレットが、錫−水銀合金で、かつ、前記錫の重量を前記水銀の重量以上としたアマルガムペレットであることを特徴としている。
【0018】
この発明で使用した水銀ペレットの融点は、亜鉛−水銀合金製の水銀ペレットの融点より低い。そのため、この錫−水銀合金からなる水銀ペレットをガラスバルブの封着端部に融合して固着する際の温度が低くて良い、という利点を更に有する。
【0019】
又、前記課題を解決するために、請求項3に係る発明の照明器具は、請求項1又は2に記載の蛍光ランプと;この蛍光ランプが装着された器具本体と;を具備することを特徴としている。
【0020】
このような構成によれば、ガラスバルブの封着端部及び水銀ペレットの寸法ばらつきに拘らず、封着端部への水銀ペレットの固着強度を向上できる蛍光ランプを備えた照明器具を提供できる。
【発明の効果】
【0021】
請求項1に係る発明の蛍光ランプによれば、ガラスバルブの封着端部及び水銀ペレットの寸法ばらつきに拘らず、封着端部への水銀ペレットの固着強度を向上できる、という効果がある。
【0022】
請求項2に係る発明の蛍光ランプによれば、低い温度で水銀ペレットをガラスバルブの封着端部に融合して固着できる、という利点を更に有する。
【0023】
という効果がある。
【0024】
請求項3に係る発明によれば、ガラスバルブの封着端部及び水銀ペレットの寸法ばらつきに拘らず、封着端部への水銀ペレットの固着強度を向上できる蛍光ランプを備えた照明器具を提供できる、という効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の一実施形態に係る直管形の蛍光ランプの一端部を示す断面図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る照明器具を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の一実施形態について、図1及び図2を参照して詳細に説明する。
【0027】
図1及び図2中符号1は直管形の蛍光ランプを示す、この蛍光ランプ1は、ガラスバルブ2と、水銀ペレット11と、リードワイヤ13と、電極例えばフィラメント電極15と、希ガス等を具備している。
【0028】
図1に示すようにガラスバルブ2はバルブ例えば直管バルブ3の両端をステム4で封着して形成されている。この封着されたガラスバルブ2の端部を封着端部2aと称する。この封着端部2aは,後述する端部3a、フレア部4a、融着部5、及び環状凹部6を含んでいる。直管バルブ3は例えば透明な無鉛ガラス製であり、その外径は28mm、内径は26mm、肉厚は1mmである。ステム4は例えば鉛ガラスを材料として形成されたフレアガラスである。
【0029】
直管バルブ3の縮径された端部3aにステム4のフレア部4aを融着することによってガラスバルブ2が形成されている。図1中符号5は直管バルブ3の端部3aとフレア部4aの融着部を示しており、この融着部5はガラスバルブ2の周方向に連続して環状に設けられている。又、図1中符号4bはステム4のピンチシール部を示している。
【0030】
直管バルブ3の端部3aの少なくとも内周面は斜状であり、それにより、封着端部2aの内径は、封着端部2aの先端に向かうに従い次第に小さく形成されている。ステム4のフレア部4aはピンチシール部4bからスカート状に一体に延出されている。図1中二点鎖線は、ガラスバルブ2が排気される前の状態でのステム4のフレア部4aの形状を示しており、同図1中実線は、ガラスバルブ2が排気された後の状態でのステム4のフレア部4aの形状を示している。このフレア部4aのピンチシール部4bと反対側の大径端部の先端と、直管バルブ3の端部3aの先端とが融着されている。フレア部4aのピンチシール部4bと反対側の端部の外周面は斜状であり、それにより、前記大径端部の外径は、この大径端部の先端に向かうに従い次第に大きく形成されている。
【0031】
したがって、封着端部2aは環状凹部6を有している。つまり、直管バルブ3の端部3aとステム4のフレア部4aとの間に、ガラスバルブ2の周方向に連続する環状凹部6が形成されている。この環状凹部6は融着部5に向けて先細りに形成されている。なお、以上説明した封着端部2aの構成は、ガラスバルブ2の一方の封着端部のみに形成しても良いし、双方の封着端部に形成してもよい。
【0032】
ステム4に鉛ガラス等からなる排気管7が接続されている。排気管7は、フレア部4aの中央位置にこのフレア部4aを軸方向に貫通するように設けられている。排気管7の内部はピンチシール部4bに設けられた排気口7aを通してガラスバルブ2の内部空間に連通されているとともに、フレア部4aから突出された排気管7の端部は封じ切られている。
【0033】
直管バルブ3の内周面に保護層8を介して蛍光体層9が装着されている。保護層8は、アルミナ、シリカ、チタン、亜鉛等の薄膜からなり、直管バルブ3の内周面に積層されている。直管バルブ3が有した蛍光体層9は、保護層8より厚く、この保護層8の内面に積層されている。この蛍光体層9は、例えば3波長発光形の希土類酸化物蛍光体等からなる。
【0034】
水銀ペレット11は、例えば錫(Sn)−水銀(Hg)合金からなる蛍光灯用アマルガムペレットであり、ガラスバルブに封入される前の状態では略球形に形成されている。
【0035】
錫が主成分となるように錫の重量を水銀の重量より多くして形成された錫−水銀合金製の水銀ペレット11を採用する場合には、亜鉛(Zn)−水銀(Hg)合金からなる蛍光灯用アマルガムペレットに比較して融点を低くできる点で好ましい。水銀の重量が50wt%でかつ亜鉛の重量が50wt%の亜鉛−水銀合金の融点は約300℃であるが、水銀の重量が20wt%でかつ錫の重量が80wt%の錫−水銀合金の融点は約200℃と低い。したがって、錫−水銀合金製の水銀ペレット11をガラスバルブ2の封着端部2aに融合させて固着する際の温度が低くて良いので、ランプを製造する上で有利である。
【0036】
なお、錫−水銀合金製の水銀ペレット11は、加熱により水銀がガラスバルブ2内に一旦放出された後に、放出された水銀を実質的に再吸蔵しないように構成されている。それにより、ガラスバルブ2内の水銀蒸気圧を一定に保持することができるようになっている。
【0037】
この水銀ペレット11は、図1に示すようにガラスバルブ2の一方の封着端部2aの環状凹部6に固着されている。つまり、水銀ペレット11は、ガラスバルブ2の封着端部2aをなした直管バルブ3の端部3a及びステム4のフレア部4aに挟設されていて、これら端部3a及びフレア部4aの夫々に融合して固着されている。この水銀ペレット11は融着部5から離れて配置されていて、それにより、水銀ペレット11と環状凹部6の底との間には略三角形状の隙間が形成されている。
【0038】
蛍光ランプ1の製造における排気工程では、ガラスバルブ2が略垂直に立てられた状態で加熱炉に通されながら排気管7を通じてガラスバルブ2内が排気される。このときの加熱温度は約450℃が好ましい。
【0039】
この排気後に、加熱炉を通過したガラスバルブ2の下端部に位置された封着端部2aが、その下方又は側方もしくはこれらの両方から加熱手段で加熱される。加熱手段としては、ラインバーナー、カップバーナー、赤外線ヒーター、ホットジェット(熱風)等を用いることができる。
【0040】
この加熱手段により、直管バルブ3の端部3aとフレア部4aの温度は、次のペレット供給ポジションにガラスバルブ2に供給された状態でも、自然冷却により大幅に降下することはなく、ペレット供給ポジションで封入される水銀ペレット11を封着端部2aに固着するのに適した所定温度(約200℃以上)に保持される。
【0041】
更に、以上の加熱によりステム4のフレア部4aが軟化されるに伴い、ガラスバルブ2内が負圧であることにより、フレア部4aが、図1中二点鎖線に示した状態からガラスバルブ2の内部に向けて略半球状に膨らむ(図1中実線で示した状態)ように変形する。それにより、先細り状の環状凹部6がフレア部4aの大径端部と直管バルブ3の端部3aとの間に形成される。
【0042】
この直後に、ガラスバルブ2は加熱手段から外れてペレット供給ポジションに移動される。このペレット供給ポジションでは、ガラスバルブ2の図示しない上側の封着端部の排気管を通して水銀ペレット11がガラスバルブ2内に滴下するように供給される。なお、この供給は、ガラスバルブ2内の真空度が上がらないように一瞬で終了される。
【0043】
この水銀ペレット11は、自由落下して、所定温度に保持されている先細り状の環状凹部6に、その底をなした融着部5に達することなく入り込む。つまり、水銀ペレット11の直径に見合った位置で直管ガラス3の端部3a及びフレア部4aに夫々接して、融着部5から離れた状態に配置される。この場合、環状凹部6が先細り状であることにより、水銀ペレット11の球径の大きさの違い及び球径のばらつきやガラスバルブ2の封着端部2aの寸法のばらつきに拘らず、水銀ペレット11を以上のように配置できる。したがって、このような配置は、より小径の水銀ペレット11を用いた場合にも、この水銀ペレット11が一点で融着部5に接した状態に着床することなく、実現できるものである。
【0044】
このため、直管ガラス3の端部3a及びフレア部4aの夫々に対する水銀ペレット11の接触箇所が、直管ガラス3の端部3a及びフレア部4aの残熱(なお、この残熱は、錫−銀合金製の水銀ペレット11の融点である約200℃より高い。)により加熱されて溶融される。そして、この後の封着端部2aの温度降下に伴って、水銀ペレット11が直管ガラス3の端部3a及びフレア部4aの大径端部に夫々固着される。
【0045】
このように水銀ペレット11の2箇所が封着端部2aに夫々固着されるので、封着端部2aに対する水銀ペレット11の固着強度を向上することができる。
【0046】
前記加熱手段による加熱温度は550℃以上であることが好ましい。本発明者による試験結果によれば、550℃又は600℃の加熱温度では、フレア部4aが変形して先細り状の環状凹部6が形成されるとともに、水銀ペレット11の滴下後10秒間静置した時点で固着確認を行ったところ、水銀ペレット11が固着されていることが確認された。これに対して、400℃、450℃、500℃の加熱温度では、フレア部4aの変形が起きないことが確認されたとともに、水銀ペレット11の滴下後10秒間静置した時点で固着確認を行ったところ、水銀ペレット11が固着されていないことが確認された。
【0047】
なお、水銀ペレット11の滴下後60秒間静置した時点での固着確認では、前記いずれの加熱温度でも、水銀ペレット11が固着されていることが確認された。したがって、前記試験結果によれば、水銀ペレット11の固着に要する時間が短く、蛍光ランプ1の製造に要する時間を短縮できることが可能であることが分かった。
【0048】
なお、ステム4のフレア部4aが、予め環状凹部6を形成するのに適合した形状を維持していて、排気工程で熱変形されない構成である場合には、封着端部2aに対する前記加熱手段による加熱温度は、200℃以上500℃以下、好ましくは350℃以上450℃以下とすればよい。このような加熱であっても、錫−銀合金製の水銀ペレット11の融点が約200℃であるので、ペレット供給ポジションでガラスバルブ2内に滴下された水銀ペレット11の2箇所を、直管ガラス3の端部3a及びフレア部4aの残熱により加熱して溶融させ、これら直管ガラス3の端部3a及びフレア部4aの夫々に固着することができる。
【0049】
一対のリードワイヤ13は、ステム4の夫々にそれらのピンチシール部4bをガラスバルブ2の軸方向に貫通して取付けられている。これらリードワイヤ13のガラスバルブ2内に導出されたインナーリード部にわたってフィラメント電極15が支持されている。このフィラメント電極15は、ステム4のピンチシール部4bの近傍に配設されている。
【0050】
ガラスバルブ2内には放電媒体である希ガスが封入されている。希ガスには、例えばアルゴンガス単体、アルゴンとネオンの混合ガス、又はこれらのガスに必要に応じてクリプトンガスやキセノンガス等の他の希ガスを混ぜた混合ガスを用いることができる。
【0051】
又、図1中符号17は、封着端部2aの外周に夫々嵌合してガラスバルブ2の両端部に、接着剤(図示しない)を介して夫々取付けられた口金を示している。この口金17は、水銀ペレット11の視認を妨げることができるように環状凹部6の略全体を覆って設けられている。口金17は、図示しない一対の口金ピンを有していて、これらのピンに、リードワイヤ13のガラスバルブ2外に導出されたアウターリード部が接続されている。
【0052】
前記構成の蛍光ランプ1は、以上説明したようにガラスバルブ2の封着端部2a及び水銀ペレット11の寸法ばらつきに拘らず、封着端部2aへの水銀ペレット11の固着強度が向上されたので、この蛍光ランプ1の輸送時等に加わる振動で、水銀ペレット11が環状凹部6から外れてガラスバルブ2内を移動しないように水銀ペレット11を保持できる。したがって、ガラスバルブ2の蛍光体層9が水銀ペレット11で傷つけられることを防止できる。
【0053】
図2に図1の蛍光ランプ1を備えた照明器具21を例示する。この照明器具21は、例えば建物の天井等に直付け設置される器具本体22を備えている。器具本体22には、電子式の安定器23や電源接続用の図示しない電源端子台等が内蔵されている。更に、器具本体22の反射面をなした下面の長手方向両端部にランプソケット24が取付けられていて、これらランプソケット24間に蛍光ランプ1が取外し可能に支持されている。この照明器具21では、電源端子台、安定器23、及びランプソケット24を介して蛍光ランプ1に給電することができ、それにより、蛍光ランプ1を点灯させることができる。
【符号の説明】
【0054】
1…蛍光ランプ、2…ガラスバルブ、2a…封着端部、3…直管バルブ(バルブ)、3a…直管バルブの端部、4…ステム、4a…フレア部、5…融着部、6…環状凹部、9…蛍光体層、11…水銀ペレット、13…リードワイヤ、15…フィラメント電極(電極)、21…照明器具、22…器具本体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内周面に蛍光体層を有するバルブの両端がステムで封着されているとともに、一方の封着端部に位置された前記バルブの端部と前記ステムのフレア部との間にこれらの融着部に向けて先細りとなる環状凹部が形成されたガラスバルブと;
前記融着部から離れて前記バルブの端部と前記フレア部で挟設されてこれらバルブの端部及びフレア部の夫々に融合して固着された球状の水銀ペレットと;
前記ステムに貫通された一対のリードワイヤと;
これらリードワイヤに支持された電極と;
前記ガラスバルブ内に封入された希ガスと;
を具備することを特徴とする蛍光ランプ。
【請求項2】
前記水銀ペレットが、錫−水銀合金で、かつ、前記錫の重量を前記水銀の重量以上としたアマルガムペレットであることを特徴とする請求項1に記載の蛍光ランプ。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の蛍光ランプと;
この蛍光ランプが装着された器具本体と;
を具備することを特徴とする照明器具。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−187182(P2011−187182A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−48280(P2010−48280)
【出願日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【出願人】(000003757)東芝ライテック株式会社 (2,710)
【Fターム(参考)】