説明

蛍光ランプ

【課題】本発明は2層または複数層の蛍光体層を形成させる蛍光ランプにおいて、外観を損ねないようにすることを目的とする。
【解決手段】透光性封止容器と、透光性封止容器内に形成された蛍光体層と、透光性封止容器の両端に設けられた一対の電極と、透光性封止容器内に含まれる不活性ガス及び水銀と、を有し、蛍光体層は、透光性容器の一方の端部近傍から他方の端部近傍まで少なくとも2層の蛍光体層で形成され、かつ、透光性容器の端部近傍から端部までは、少なくとも2層の蛍光体層のうち最内側の蛍光体層のみが形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蛍光ランプに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、3波長形蛍光ランプが、高効率、高演色性を特徴として発売されて以来、普及が進んできた。
【0003】
近年の環境問題を受けて、エネルギー効率の高い製品の普及をするべく、グリーン購入法、エコポイント制度など、業務及び家庭での用途に対して、さまざまの制度も整備されてきている。例えば、欧州の規制として広まってきたRoHS指令(Objective for restriction of hazardous substances)では、2012年4月13日以降は販売が禁止される予定であり、照明の高効率化においては3波長形蛍光ランプの重要性が益々高まってきている。
【0004】
ところで、3波長形蛍光ランプは、蛍光体に希土類原子の特長を発揮させるオキソ酸塩が広く用いられている。例えば、Y23:Eu蛍光体、LaPO4:Tb,Ce蛍光体、CeMg2Al1019:Tb蛍光体、BaMgAl1017:Eu蛍光体、BaMgAl1017:Eu,Mn蛍光体、(Ba,Sr,Ca,Mg)10(PO4)6Cl2:Eu蛍光体などであるが、いずれも希土類元素がなければ高効率の性能を達成できない。これらの蛍光体を代替する材料が、各所で検討が進められているが、未だに開発されていない。
【0005】
一方、発光ダイオード(LED)を利用した光源として、電球形状、住宅用照明、施設用照明の用途に対し、さまざまな製品が市場に供されてきたが、発光ダイオードが照明用に利用される場合、高い出力で駆動させることになり、回路部品などの温度が上昇し、効率低下につながるため、未だ蛍光ランプを利用した照明に対する効率として、凌駕するものは現れていない。
【0006】
しかし、希土類元素は産地が限られていること、鉱物からの精製抽出の際に放射性物質を除去する必要性があること、などから、採取される量が需要に対して逼迫しており、近年入手が困難となる状況となっている。
【0007】
そこで、希土類元素を含む3波長形蛍光体の使用量を低減された蛍光ランプが検討されるようになった。その中で、2層に蛍光体層を形成させた蛍光ランプが検討されるようになった。
【0008】
2層の蛍光体層をもつ蛍光ランプの例として、特開平9−69354号公報の長残光蛍光ランプがある。ガラス管に隣接する第1層に長残光型蛍光体をもち、第2層に通常の3波長形蛍光体から各発光色の蛍光体の比率を変更した蛍光体層をもつ。
【0009】
特許文献1には、放電側の第2層に高価な蛍光体をもって構成させることで、混合した蛍光体を1層のみ形成させることに比較して、高価な蛍光体の使用量を減らすことができることが記載されている。
【0010】
特許文献2には、ガラス管内面に隣接する第1層にハロリン酸塩蛍光体を用い、第2層に3波長形蛍光体を用い、且つ、第1層、第2層の間に紫外線反射層を介在させた蛍光ランプが記載されている。
【0011】
特許文献3には、2つの蛍光体層をもつ環形蛍光ランプの製造方法として、第1層、第2層の蛍光体塗布膜を形成させる方法が記載されている。
【0012】
特許文献4には、第1層、第2層に含む3波長形蛍光体をそれぞれリサイクル由来及び未使用状態にて50質量%超含む条件のもと、最適の膜厚が記載されている。
【0013】
いずれの方法においても、内面に蛍光体層が形成されたガラス製封止容器を得るためには、当該容器の封止前の両端が開放状態になっているガラス管を、開放状態になっている両端を略垂直に並ぶ状態としてから、上端となる側から蛍光体層を形成する原料となる蛍光体スラリーを流し込むこと、または、下端となる側から蛍光体スラリーを吸い上げた後に落とすことを経た後、この蛍光体スラリーを定着させるための乾燥を行うこととなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特公昭53−867号公報
【特許文献2】特開昭60−49553号公報
【特許文献3】特開平4−123746号公報
【特許文献4】特許第4389162号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
蛍光体スラリーには油性または水性のものが用いられるが、いずれも蛍光体、適当な結着材、高分子系バインダを含んでいる。
【0016】
蛍光ランプの製造工程の概要として、直管蛍光ランプを例示する。ガラス製封止容器のほとんどを構成するガラス管を洗浄した後蛍光体スラリーを塗布し、これを乾燥後、蛍光体とガラス管を固着させること、及び高分子系バインダを蒸散させること目的として焼成を行う。焼成された蛍光体層をもつガラス管の両端に、電極及びリード線を備えたステムマウントをフレア部とのガラス溶着により取り付ける。このガラス溶着においては、蛍光体層をもつガラス管の管端に蛍光体が残っていると、当該部分にガラス歪が残ってしまうため、ガラス管の管端に残っている蛍光体はあらかじめ拭き取っておく。次に、一方のステムマウントには封止容器内が外界に通じせしめるガラス管(排気管)を具備させるため、ここから、水分などの不純ガスを排気、アルゴンなどの不活性ガス及び水銀の封入を行い、封止容器内を減圧に保ったまま、排気管を溶着により封じ切る。不活性ガス及び水銀を封入した封止容器の両端に接着剤を伴い口金を取り付けて、予備点灯となるエージングを経て蛍光ランプが完成する。環形蛍光ランプにおいては、不活性ガス及び水銀を封入する工程にて、ガラス管の温度をガラス加工温度の範囲としてから、直管上のガラス管を環状となるようにドラム巻取りにより加工することになる。
【0017】
本発明の構成である2層または複数層の蛍光体層を形成させる場合、第1の蛍光体層を形成後に、洗浄はせずに蛍光体スラリーによる塗布を行い、第2の蛍光体層を形成させる、という手順で、2層または複数層の蛍光体層を構成させる。第2の蛍光体層を塗布する際には、第1の蛍光体層形成時に、焼成を経たものを用いる場合もある。
【0018】
例えば直管蛍光ランプの材料ガラス管においては両端をややすぼめた形状(ネックフォーム形状)として用いられることが多いが、第1層の形成後、第2及びそれ以上の複数層を形成させていくときには、前記ネックフォーム形状部分に第1層の蛍光体が比較的厚く存在していると、軽い衝撃によりこの部分の蛍光体層が剥がれやすい状態となることが多い。
【0019】
本発明は2層または複数層の蛍光体層を形成させる蛍光ランプにおいて、外観を損ねないようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明は、透光性封止容器と、透光性封止容器内に形成された蛍光体層と、透光性封止容器の両端に設けられた一対の電極と、透光性封止容器内に含まれる不活性ガス及び水銀と、を有し、蛍光体層は、透光性容器の一方の端部近傍から他方の端部近傍まで少なくとも2層の蛍光体層で形成され、かつ、透光性容器の端部近傍から端部までは、少なくとも2層の蛍光体層のうち最内側の蛍光体層のみが形成されている。
【0021】
又は、本発明は、透光性封止容器と、透光性封止容器内に形成された蛍光体層と、透光性封止容器の両端に設けられた一対の電極と、透光性封止容器内に含まれる不活性ガス及び水銀と、を有し、透光性封止容器は、中央部から一方の端部にかけて径が小さくなりはじめる部分Aと、中央部から他方の端部にかけて径が小さくなりはじめる部分Bと、を有し、蛍光体層は、部分Aから部分Bまでは、少なくとも2層の蛍光体層で形成され、かつ、透光性容器の部分Aから端部及び部分Bから端部までは、少なくとも2層の蛍光体層のうち最内側の蛍光体層のみが形成されている。
【0022】
又は、本発明は、不活性ガス及び水銀を含むガラス製の封止容器内で放電状態を発生させ、その放電により励起された水銀から放射する紫外線を利用し、ガラス製封止容器内面に形成させた蛍光体層から近紫外光乃至可視光を得る蛍光ランプにおいて、ガラス製封止容器内面に形成される蛍光体層が2層または複数層で構成され、且つ、少なくとも一方のガラス製封止容器端部において、ガラス製封止容器側に隣接する第1の蛍光体層が、ガラス管中央部から両端にかけてガラス管径が初めて小さくなる点から端部までの範囲に形成されていない。
【0023】
又は、本発明は、不活性ガス及び水銀を含むガラス製の封止容器内で放電状態を発生させ、その放電により励起された水銀から放射する紫外線を利用し、ガラス製封止容器内面に形成させた蛍光体層から近紫外光乃至可視光を得る蛍光ランプにおいて、ガラス製封止容器内面に形成される蛍光体層が3以上の層で構成され、且つ、少なくとも一方のガラス製封止容器端部において、放電空間側の1つの蛍光体層以外の蛍光体層が、ガラス管中央部から両端にかけてガラス管径が初めて小さくなる点から端部までの範囲に形成されていない。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、2層または複数層の蛍光体層を有する蛍光ランプにおいて、管端部の蛍光体層剥がれが発生しなくなり、外観を損ねることが避けられる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】直管蛍光ランプの外観図。
【図2】口金を取り付ける前の2つの蛍光体層をもつ直管蛍光ランプの構造図。
【図3】従来例の2つの蛍光体層をもつ直管蛍光ランプの口金装着前の管端部の拡大図。
【図4】本発明の2つの蛍光体層をもつ直管蛍光ランプの口金装着前の管端部の拡大図。
【図5】本発明の3つの蛍光体層をもつ直管蛍光ランプの口金装着前の管端部の拡大図。
【図6】本発明の2つの蛍光体層をもつ環形蛍光ランプの口金装着前の管端部の拡大図。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明を詳細に説明する前に、概略を説明する。
請求項3は、不活性ガス及び水銀を含むガラス製の封止容器内で放電状態を発生させ、その放電により励起された水銀から放射する紫外線を利用し、ガラス製封止容器内面に形成させた蛍光体層から近紫外光乃至可視光を得る蛍光ランプにおいて、ガラス製封止容器内面に形成される蛍光体層が2層または複数層で構成され、且つ、少なくとも一方のガラス製封止容器端部において、ガラス製封止容器側に隣接する第1の蛍光体層が、ガラス管中央部から両端にかけてガラス管径が初めて小さくなる点から端部までの範囲に形成されていないことを特徴とする蛍光ランプである。少なくとも一方のガラス製封止容器端部、特に膜厚の大きい側において、ガラス製封止容器側に隣接する第1の蛍光体層が、ガラス管中央部から両端にかけてガラス管径が初めて小さくなる点から端部までの範囲に形成されていないことにより、当該箇所の蛍光体層剥がれが発生しなくなり、外観を損ねることが避けられる。この構成に従うとき、ガラス製封止容器と隣接する第1の蛍光体層の間に、金属酸化物の微粒子から構成される膜があってもなくてもよい。
【0027】
請求項4は、不活性ガス及び水銀を含むガラス製の封止容器内で放電状態を発生させ、その放電により励起された水銀から放射する紫外線を利用し、ガラス製封止容器内面に形成させた蛍光体層から近紫外光乃至可視光を得る蛍光ランプにおいて、ガラス製封止容器内面に形成される蛍光体層が3以上の層で構成され、且つ、少なくとも一方のガラス製封止容器端部において、放電空間側の1つの蛍光体層以外の蛍光体層が、ガラス管中央部から両端にかけてガラス管径が初めて小さくなる点から端部までの範囲に形成されていないことを特徴とする蛍光ランプである。蛍光体層を3以上の複数形成させる場合において、放電空間側の1つの蛍光体層以外の蛍光体層が、ガラス管中央部から両端にかけてガラス管径が初めて小さくなる点から端部までの範囲に形成されていないことにより、当該箇所の蛍光体層剥がれが発生しなくなり、外観を損ねることが避けられる。この構成に従うとき、ガラス製封止容器と隣接する第1の蛍光体層の間に、金属酸化物の微粒子から構成される膜や透光性の導電性被膜があってもなくても良い。
【0028】
請求項5は、前記ガラス製封止容器側に隣接する第1の蛍光体層がハロリン酸塩蛍光体を含むことを特徴とする請求項1乃至4に記載の蛍光ランプである。ガラス製封止容器側の第1層に比較的存在量が多い元素で構成されるハロリン酸塩蛍光体を主に用いることで、放電空間側に用いる希少資源に該当する元素をもつ蛍光体を1層のみで構成させる場合より、当該蛍光体の使用量を低減することができ、希少資源に該当する元素の使用量を低減することができる。
【0029】
請求項6は、前記ガラス製封止容器側に隣接する第1の蛍光体層がハロリン酸塩蛍光体を含み、且つ、前記放電空間側の蛍光体層が3波長形蛍光体を含むことを特徴とする請求項3に記載の蛍光ランプである。当該構成とすることで、3波長形蛍光体を1層のみで構成させた蛍光ランプに比較して、同等の性能を維持したまま、希少資源に該当する元素を多く含む3波長形蛍光体の使用量を低減することができる。
【0030】
請求項7は、前記放電空間側の1つの蛍光体層が、3波長形蛍光体を含むことを特徴とする請求項1、2、4の何れか1項に記載の蛍光ランプである。すなわち、当該構成とすることで、3波長形蛍光体を1層のみで構成させた蛍光ランプに比較して、同等の性能を維持したまま、希少資源に該当する元素を多く含む3波長形蛍光体の使用量を低減することができる。3以上の蛍光体層を形成させる構成においては、ガラス製封止容器側の第1層以外の複数の蛍光体層を用いて、長残光型蛍光ランプと同等の構成、すなわち長残光蛍光体層及び3波長形蛍光体層の構成をもたせることが、第1層を持たない場合と同等の性能、及び正常な外観を維持しながら実現が可能である。
【0031】
請求項8は、前記蛍光ランプが直管蛍光ランプであることを特徴とする請求項1乃至7の何れか1項に記載の蛍光ランプである。
【0032】
請求項9は、前記蛍光ランプが環形蛍光ランプであることを特徴とする請求項1乃至7の何れか1項に記載の蛍光ランプである。環形蛍光ランプにおいては、蛍光体スラリー塗布時にネックフォーム形状をもつガラス管を用いることはないが、直管状のガラス製封止容器の状態とするときには、全体を環状に加工する際に治具がつかみやすいようにネックフォーム形状を両端に設けさせるため、前述と同様に蛍光体層が形成されていない部分を設けることが外観上有用である。
【0033】
以下、本発明の実施例を添付図面に従って説明する。
図1に、蛍光ランプの外観図として直管蛍光ランプの構造図を示す。
本体のほとんどを占めるのがガラス製封止容器1である。このガラス製封止容器1内には、希ガスなどの不活性ガス数百Pa及び水銀が封入されており、両端の口金2に付いた口金ピン3を通して、リード線6乃至電極12へ電気を通電すると、両端の電極12間に放電が起こり、電流が流れる。この放電により水銀が励起され紫外線を放射する。ガラス製封止容器1はガラス管8を有している。本実施例において、ガラス管8は中央部から端部にかけて管径が略同じものとする。ガラス製封止容器内面に形成させた蛍光体層4はこの紫外線を励起源として、近紫外光乃至可視光を発光する。
【0034】
図2は、口金2を取り付ける前の図1のランプについて、2つの蛍光体層をもつ蛍光ランプの断面図を示す。図4は図2の管端部14付近の拡大図である。図2、図4は封止容器内を減圧に保ったまま、排気管11を溶着により封じ切った直後の状態に相当する。図2、図4で示されるように、ガラス管8の両管端部14はガラス管8の中央部に比べ管径が小さくなる部分を有している。これは管端部14において口金2が装着しやすくなるようにするためである。13はガラス管8の中央部からガラス管8の管端部14にかけてガラス管径が小さくなりはじめる部分である。15はガラス管径が小さくなりはじめる部分13から管端部14までの範囲である。蛍光体層4は、ガラス製封止容器の内側に形成されている。本実施形態において、蛍光体層4は、第1の蛍光体層9と第2の蛍光体層10とで形成されている。ガラス管8の中央部内側において、ガラス管8に近接する側から内側に向かって順に第1の蛍光体層9、第2の蛍光体層10と呼ぶこととする。
【0035】
図4に示すように、ガラス製封止容器1側に隣接する第1の蛍光体層9は、一方の小さくなり始める部分13から他方の小さくなり始める部分13までは形成されているが、ガラス管8の中央部からガラス管8の管端部14にかけてガラス管径が小さくなりはじめる部分13から管端部14までの範囲15には形成されていない。範囲15には第1の蛍光体層9を形成しないという構成をとることにより、当該箇所の蛍光体層剥がれが発生しなくなり、外観を損ねることが避けられる。ここでガラス管8側に隣接する第1の蛍光体層9に用いる蛍光体としては、例えば3Ca3(PO4)2・Ca(F,Cl)2:Sb,Mn蛍光体などのハロリン酸カルシウム蛍光体を含む蛍光体または混合蛍光体が用いられる。一方、放電空間7側に形成される蛍光体層に用いる蛍光体(本実施形態においては第2の蛍光体層10)としては、例えばY23:Eu蛍光体、LaPO4:Tb,Ce蛍光体、CeMg2Al1019:Tb蛍光体、(Ba,Sr,Ca,Mg)10(PO4)6Cl2:Eu蛍光体、BaMgAl1017:Eu蛍光体、BaMgAl1017:Eu,Mn蛍光体などの希土類元素を含む蛍光体から選ばれる少なくとも1種または複数種の蛍光体を含む蛍光体または混合蛍光体が用いられる。
【0036】
図3に、従来例として、通常の2つの蛍光体層をもつ蛍光ランプの外観図として、口金2装着前の直管蛍光ランプについての管端部14の断面拡大図を示す。
【0037】
このような2層の蛍光体層を形成させる場合、ガラス製封止容器1に隣接する第1の蛍光体層9を形成後に、ガラス管8内の洗浄はせずに蛍光体スラリーによる塗布を行い、第2の蛍光体層10を形成させる、という手順を経る。第2の蛍光体層10を塗布する際には、第1の蛍光体層9形成後に、焼成を経たものを用いる場合もある。
【0038】
本発明は、JIS C 7601に規定されている直管蛍光ランプ、片口金蛍光ランプに適用できるが、技術課題は共通するため、JIS C 7601に規定しない蛍光ランプにおいても適用が可能である。
【0039】
図5は、3つの蛍光体層が形成される場合の本発明の別実施例の拡大断面図である。ガラス製封止容器側から1層目及び2層目の蛍光体層は、ガラス管中央部から両端にかけてガラス管8の中央部からガラス管8の管端部14にかけてガラス管径が小さくなりはじめる部分13から管端部14までの範囲15に形成されていない。この構成をとることにより、当該箇所の蛍光体層剥がれが発生しなくなり、外観を損ねることが避けられる。蛍光体層の剥がれが発生しなくなるメカニズムは、2つの蛍光体層が形成される場合と同様である。また、ガラス製封止容器1側から2層目について、充分に膜厚が小さい場合においては、ガラス管中央部から両端にかけてガラス管径が初めて小さくなる点13から端部14までの範囲15に第2の蛍光体層10は形成されていても良い。第2の蛍光体層10の膜厚が充分に小さい場合においては、当該箇所の蛍光体層の合計の膜厚が大きくならないため、蛍光体層剥がれは発生しやすくはならない。
【0040】
図6は、本発明の別実施例として、口金装着前の環形蛍光ランプについての管端部14の拡大断面図を示す。図に示すように、ガラス製封止容器1側に隣接する第1の蛍光体層9が、ガラス管8の中央部からガラス管8の管端部14にかけてガラス管径が小さくなりはじめる部分13から管端部14までの範囲15に形成されていない。環形蛍光ランプにおいては、通常、材料として用いるガラス管8は、管端に屈曲部のないものを用いるが、環形状に加工する工程において管端を専用の治具にて掴む必要があるため、焼成された蛍光体層をもつガラス管8の両端に、電極12及びリード線6を備えたステムマウント5をフレア部とのガラス溶着をする工程において、管端に窪みを形成させるように成型するものがある。直管蛍光ランプでのネックフォーム類似形状を形作ることになるため、当該部分の蛍光体層の膜厚が大きいと、蛍光体層の剥がれ発生につながることとなる。ネックフォーム類似形状を形作ることになるものにおいても、ガラス管8の中央部からガラス管8の管端部14にかけてガラス管径が小さくなりはじめる部分13から管端部14までの範囲15に第1の蛍光体層9を形成しないことにより、当該箇所の蛍光体層剥がれが発生しなくなり、外観を損ねることが避けられる。
【0041】
従来例及び実施例に従い、第1層にハロリン酸塩蛍光体及び3波長形蛍光体を、第2層に3波長形蛍光体を用いて、以下の通り2層の蛍光体層を形成させた蛍光ランプFL20Sを作製した。
【0042】
(従来例1)
従来例1の蛍光ランプとして、第1の蛍光体層9の形成においては、市販の白色ハロリン酸塩蛍光体を100g、ポリエチレンオキサイド水溶液140ml、ガラス質の結着材、及び酸化アルミニウムの微粒子を撹拌調合した後、比重の調整のためにポリエチレンオキサイド水溶液を追加し、重量が1.2gとなるように塗布した。第2の蛍光体層10の形成においては、市販のEX−N色混合蛍光体(Y23:Eu蛍光体、LaPO4:Tb,Ce蛍光体、BaMgAl1017:Eu蛍光体の混合体)を100g、ポリエチレンオキサイド水溶液140ml、ガラス質の結着材、及び酸化アルミニウムの微粒子を撹拌調合した後、比重の調整のためにポリエチレンオキサイド水溶液を追加し、重量が1.1gとなるように塗布した。上記のように2つの蛍光体層を塗布したガラス管を用いて、蛍光ランプFL20Sを完成させた。
【0043】
(従来例2)
従来例2の蛍光ランプとして、第1の蛍光体層9の形成においては、市販のEX−N色混合蛍光体(Y23:Eu蛍光体、LaPO4:Tb,Ce蛍光体、BaMgAl1017:Eu蛍光体の混合体)を100g、ポリエチレンオキサイド水溶液140ml、ガラス質の結着材、及び酸化アルミニウムの微粒子を撹拌調合した後、比重の調整のためにポリエチレンオキサイド水溶液を追加し、重量が0.8gとなるように塗布した。第2の蛍光体層10の形成においては、市販のEX−N色混合蛍光体(Y23:Eu蛍光体、LaPO4:Tb,Ce蛍光体、BaMgAl1017:Eu蛍光体の混合体)を100g、ポリエチレンオキサイド水溶液140ml、ガラス質の結着材、及び酸化アルミニウムの微粒子を撹拌調合した後、比重の調整のためにポリエチレンオキサイド水溶液を追加し、重量が1.1gとなるように塗布した。上記のように2つの蛍光体層を塗布したガラス管を用いて、蛍光ランプFL20Sを完成させた。
【0044】
(実施例1)
本発明の実施例1の蛍光ランプとして、第1の蛍光体層9の形成においては、市販の白色ハロリン酸塩蛍光体を100g、ポリエチレンオキサイド水溶液140ml、ガラス質の結着材、及び酸化アルミニウムの微粒子を撹拌調合した後、比重の調整のためにポリエチレンオキサイド水溶液を追加し、重量が1.2gとなるように塗布した。その後、ガラス製封止容器1においてガラス管8の中央部からガラス管8の管端部14にかけてガラス管径が小さくなりはじめる部分13から管端部14までの範囲15として、管端部14から8mmの範囲の蛍光体層を拭き取った。第2の蛍光体層10の形成においては、市販のEX−N色混合蛍光体(Y23:Eu蛍光体、LaPO4:Tb,Ce蛍光体、BaMgAl1017:Eu蛍光体の混合体)を100g、ポリエチレンオキサイド水溶液140ml、ガラス質の結着材、及び酸化アルミニウムの微粒子を撹拌調合した後、比重の調整のためにポリエチレンオキサイド水溶液を追加し、重量が1.1gとなるように塗布した。上記のように2つの蛍光体層を塗布したガラス管を用いて、蛍光ランプFL20Sを完成させた。
【0045】
(実施例2)
実施例2の蛍光ランプとして、第1の蛍光体層9の形成においては、市販のEX−N色混合蛍光体(Y23:Eu蛍光体、LaPO4:Tb,Ce蛍光体、BaMgAl1017:Eu蛍光体の混合体)を100g、ポリエチレンオキサイド水溶液140ml、ガラス質の結着材、及び酸化アルミニウムの微粒子を撹拌調合した後、比重の調整のためにポリエチレンオキサイド水溶液を追加し、重量が0.8gとなるように塗布した。その後、ガラス製封止容器1においてガラス管8の中央部からガラス管8の管端部14にかけてガラス管径が小さくなりはじめる部分13から管端部14までの範囲15として、管端部14から8mmの範囲の蛍光体層を拭き取った。第2の蛍光体層10の形成においては、市販のEX−N色混合蛍光体(Y23:Eu蛍光体、LaPO4:Tb,Ce蛍光体、BaMgAl1017:Eu蛍光体の混合体)を100g、ポリエチレンオキサイド水溶液140ml、ガラス質の結着材、及び酸化アルミニウムの微粒子を撹拌調合した後、比重の調整のためにポリエチレンオキサイド水溶液を追加し、重量が1.1gとなるように塗布した。上記のように2つの蛍光体層を塗布したガラス管を用いて、蛍光ランプFL20Sを完成させた。
【0046】
従来例及び実施例を適用した蛍光ランプFL20Sを用いて、ネックフォーム形状が始まる部分(ガラス管8の中央部からガラス管8の管端部14にかけてガラス管径が小さくなりはじめる部分13)に鋼球を落下させて、その衝撃を受けた後の蛍光体層の外観を観察した結果を表1に示す。
【0047】
【表1】

【0048】
表1では、蛍光体層の剥がれが無かったものは“○”を、蛍光体層の剥がれが観察されたものは“×”と記載した。表1の通り、従来例・実施例ともに膜薄側では蛍光体層の剥がれはなかった。一方、膜厚側では本発明の実施例での蛍光体層の剥がれは見られなかったが、従来例においてはガラスへの結着力が比較的高い3波長形蛍光体においても蛍光体層の剥がれが観察された。この結果は、第1の蛍光体層9のための蛍光体スラリー乾燥過程において、ネックフォーム形状部がガラス管中央部近辺に比較して膜厚となったため、第2の蛍光体層10を重ねた後に、異常に膜厚な状態ができたため、軽い衝撃を受けたときでさえ、剥がれが発生することとなったためであると考えられる。
【0049】
今回、ガラス製封止容器1においてガラス管8の中央部からガラス管8の管端部14にかけてガラス管径が小さくなりはじめる部分13から管端部14までの範囲15として、管端部14から8mmの範囲の蛍光体層を拭き取ったが、この範囲は蛍光ランプの品種ごとに変わるため、蛍光体層を拭き取る範囲として寸法数値で指定することは適切でなく、ガラス管8の中央部からガラス管8の管端部14にかけてガラス管径が小さくなりはじめる部分13から管端部14までの範囲15と指定するのが適当である。
【0050】
また、3つの蛍光体層を形成させた場合でも、放電空間側の蛍光体層以外の蛍光体層について、ガラス管8の中央部からガラス管8の管端部14にかけてガラス管径が小さくなりはじめる部分13から管端部14までの範囲15を拭き取ることが有用であることを確認した。
【0051】
本発明は、直管蛍光ランプだけでなく、管が曲がっている環型蛍光ランプなどの放電により蛍光体を励起させるタイプの照明装置へ適用可能である。
【符号の説明】
【0052】
1 ガラス製封止容器
2 口金
3 口金ピン
4 蛍光体層
5 ステムマウント
6 リード線
7 放電空間
8 ガラス管
9 第1の蛍光体層
10 第2の蛍光体層
11 排気管
12 電極
14 ガラス製封止容器1の端部
16 放電空間側の蛍光体層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透光性封止容器と、該透光性封止容器内に形成された蛍光体層と、前記透光性封止容器の両端に設けられた一対の電極と、前記透光性封止容器内に含まれる不活性ガス及び水銀と、を有し、
前記蛍光体層は、
前記透光性容器の一方の端部近傍から他方の端部近傍まで少なくとも2層の蛍光体層で形成され、かつ、前記透光性容器の端部近傍から端部までは、前記少なくとも2層の蛍光体層のうち最内側の蛍光体層のみが形成されていることを特徴とする蛍光ランプ。
【請求項2】
透光性封止容器と、該透光性封止容器内に形成された蛍光体層と、前記透光性封止容器の両端に設けられた一対の電極と、前記透光性封止容器内に含まれる不活性ガス及び水銀と、を有し、
前記透光性封止容器は、中央部から一方の端部にかけて径が小さくなりはじめる部分Aと、中央部から他方の端部にかけて径が小さくなりはじめる部分Bと、を有し、
前記蛍光体層は、前記部分Aから前記部分Bまでは、少なくとも2層の蛍光体層で形成され、かつ、前記透光性容器の前記部分Aから端部及び前記部分Bから端部までは、前記少なくとも2層の蛍光体層のうち最内側の蛍光体層のみが形成されていることを特徴とする蛍光ランプ。
【請求項3】
不活性ガス及び水銀を含むガラス製の封止容器内で放電状態を発生させ、その放電により励起された水銀から放射する紫外線を利用し、ガラス製封止容器内面に形成させた蛍光体層から近紫外光乃至可視光を得る蛍光ランプにおいて、ガラス製封止容器内面に形成される蛍光体層が2層または複数層で構成され、且つ、少なくとも一方のガラス製封止容器端部において、ガラス製封止容器側に隣接する第1の蛍光体層が、ガラス管中央部から両端にかけてガラス管径が初めて小さくなる点から端部までの範囲に形成されていないことを特徴とする蛍光ランプ。
【請求項4】
不活性ガス及び水銀を含むガラス製の封止容器内で放電状態を発生させ、その放電により励起された水銀から放射する紫外線を利用し、ガラス製封止容器内面に形成させた蛍光体層から近紫外光乃至可視光を得る蛍光ランプにおいて、ガラス製封止容器内面に形成される蛍光体層が3以上の層で構成され、且つ、少なくとも一方のガラス製封止容器端部において、放電空間側の1つの蛍光体層以外の蛍光体層が、ガラス管中央部から両端にかけてガラス管径が初めて小さくなる点から端部までの範囲に形成されていないことを特徴とする蛍光ランプ。
【請求項5】
前記透光性封止容器又はガラス製封止容器側に隣接する第1の蛍光体層がハロリン酸塩蛍光体を含むことを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項に記載の蛍光ランプ。
【請求項6】
前記透光性封止容器又はガラス製封止容器側に隣接する第1の蛍光体層がハロリン酸塩蛍光体を含み、且つ、前記最内側又は放電空間側の蛍光体層が3波長形蛍光体を含むことを特徴とする請求項1、2、4の何れか1項に記載の蛍光ランプ。
【請求項7】
前記放電空間側の1つの蛍光体層が、3波長形蛍光体を含むことを特徴とする請求項1、2、4の何れか1項に記載の蛍光ランプ。
【請求項8】
前記蛍光ランプが直管蛍光ランプであることを特徴とする請求項1乃至7の何れか1項に記載の蛍光ランプ。
【請求項9】
前記蛍光ランプが環形蛍光ランプであることを特徴とする請求項1乃至7の何れか1項に記載の蛍光ランプ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−93252(P2013−93252A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−235575(P2011−235575)
【出願日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【出願人】(399048917)日立アプライアンス株式会社 (3,043)
【Fターム(参考)】