説明

蛍光体、プラズマディスプレイパネル用基板、プラズマディスプレイパネル及びプラズマディスプレイ装置

【課題】 蛍光体結晶の内部は、励起源である紫外線が到達しない結果、発光に寄与せず無駄となっている。
【解決手段】 蛍光体11の中心部を非蛍光性の材料より成る核11Bで形成し、核11Bの表面11S上に蛍光体粉末11aの層11Aを形成する。これにより、蛍光体11中の発光に寄与する部分の質量に対して効率の良い発光を実現出来る。尚、核本体11bの表面に可視光反射材を施すことで核11Bを形成する、或いは、可視光反射材で核本体11bを形成しても良い。又、蛍光体粉末の層11Aの表面上に、同粉末と同一原因で劣化して破壊に至り得る材質のオーバーコーティングの層を施して階層を構成し、その表面に微小な蛍光体粉末の層を更に装着しても良い。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、AC駆動型又はDC駆動型のプラズマディスプレイパネル(以下、PDPと称す)に用いられる蛍光体に関するものである。
【0002】
【従来の技術】現在、画像表示装置においてCRTに代わる薄型の平面ディスプレイの研究開発が盛んに行われている。その中でも、PDPに関しては、33インチ型のフルカラーパネルが実現されるに至っている。ここで、PDPは、表示面(前面)ガラスパネルと背面ガラスパネルとの間の内部空間に封入されたNe+Xe(4%)ペニング混合ガスに電圧をかけることで生じるペニング混合ガスの気体放電に伴いXeから放射される波長が147nmの紫外線により蛍光体層が励起されて発光するディスプレイであり、駆動方式に応じて、AC型(3電極面放電又は2電極対向放電型)PDPとDC型PDPとに大別される。
【0003】この様なPDPが有する発光源としての蛍光体層の材料を構成する蛍光体は、母体結晶をベースとして、その中に発光センターである付活剤を分散することによって形成されているが、その際、発光色や残光時間が適切になる様に、母体結晶と付活剤とが適切に選定される。たとえば、酸化物系の蛍光体は、一般的に、母体となる金属の酸化物と付活剤となる金属の酸化物あるいは炭酸塩の粉体とを混合し、1200℃以上の高温で焼成する固相法と呼ばれる方法で得られる。蛍光体は緻密であり、内部に蛍光体自体以外の組成のものを含まない結晶である。
【0004】また、今日におけるPDPの主流は、紫外光により励起されて表示光を発光している蛍光体層を表示ガラスパネル側から観測する反射型と呼ばれるものである。
【0005】しかしながら、蛍光体結晶は可視光に対しては透明であるが、147nmの真空紫外線に対しては不透明であり、しかも真空紫外線が蛍光体結晶内に浸入する深さは非常に浅く、そのため発光は蛍光体結晶の表面部分でしか起こらない。そして、蛍光体結晶内部の発光センターより放射された光は放射状に全方向に伝播するが、緻密で内部に蛍光体自体以外の組成のものを含まない従来の蛍光体結晶を蛍光体層の材料として用いる場合には、表示面側で観測される蛍光の大部分は、観測方向に向かって直接に放射されてきた光で占められており、その他の方向へ放射された光の殆どは、蛍光体層の表面で観測方向に反射される光を除いて、蛍光体層内部等での吸収等により減衰してしまい、輝度に寄与しない。ここで、蛍光体層の表面の反射を増加させる方法として、蛍光体を積み重ねて蛍光体層を厚く形成することで蛍光体層の表面での反射を増加させることができる。しかし、蛍光体層の膜厚が厚くなると、放電空間が狭くなって真空紫外線の発生効率が低下し、却って輝度を低下させてしまうという問題点があった。
【0006】そこで、真空紫外線の発生効率を低下させずに輝度を向上させるために、図6に示す様な方法が、特開平11−293240号公報で提案されている。即ち、蛍光体結晶の内部に細孔もしくは反射体15を含有させておき、表示面方向以外の方向に向かって放射された蛍光を蛍光体内部に存在している細孔もしくは反射体15の界面で反射させることで、輝度を向上させる。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記の提案では、なる程、真空紫外線の発生効率を低下させずに輝度の向上を図り得るが、基本的に蛍光体層の材料源である蛍光体として、その他の従来技術と同様に、既述した蛍光体結晶を用いている。従って、発光に寄与している蛍光体の部分は、真空紫外線が進入できる蛍光体結晶表面のごくわずかな部分にすぎない。そのため、蛍光体結晶の内部は発光に全くかかわることは無く、無駄な部分を形成しており、高価な蛍光体が無駄に使用されているだけといった問題点が依然として払拭されずのままである。
【0008】しかも、蛍光体層の性能は、PDPの動作中に、ガス放電で生ずるイオンや紫外線や熱等の様々な要因によって経時的に劣化してゆくので、蛍光体の長寿命化を図ること、及び劣化に伴う輝度低下を防止することも求められており、上記提案では、この点の要求も改善されていないままである。
【0009】この発明は上記のような問題点を解消するためになされたものであり、無駄な部分を省き、且つ蛍光発生効率の良い蛍光体を提供することを目的とする。
【0010】又、この発明は、長寿命の蛍光体を提供し、蛍光体の劣化に因る輝度低下に伴う表示劣化を防ぐことをも目的としている。
【0011】
【課題を解決するための手段】請求項1に係る発明は、非蛍光体の核と、前記核の表面上に装着された蛍光体粉末の層とを備えたことを特徴とする。
【0012】請求項2に係る発明は、請求項1記載の蛍光体であって、前記核は、非蛍光体の核本体と、前記核本体の表面上に形成された非蛍光体の可視光反射材層とを備え、前記蛍光体粉末の層は前記可視光反射材層の表面上に装着されていることを特徴とする。
【0013】請求項3に係る発明は、請求項1記載の蛍光体であって、前記核は非蛍光体の可視光反射材より成ることを特徴とする。
【0014】請求項4に係る発明は、請求項1記載の蛍光体であって、前記核は紫外線を透過させ得る性質を持つ非蛍光体の材料より成ることを特徴とする。
【0015】請求項5に係る発明は、請求項1乃至4の何れかに記載の蛍光体であって、前記蛍光体粉末の層を第1層とし、前記第1層の表面上に形成された、前記蛍光体粉末の劣化要因と同一の要因によって劣化して破壊に至り得る非蛍光体の材質より成るオーバーコーティングの層と、前記オーバーコーティングの層の表面上に装着された、前記蛍光体粉末より成る第2層とを更に備えたことを特徴とする。
【0016】請求項6に係る発明は、請求項5記載の蛍光体であって、前記第2層の表面上に、前記オーバーコーティングより成る層及び前記蛍光体粉末より成る層を、この順序で少なくとも1回積層形成して成る構造を更に備えたことを特徴とする。
【0017】請求項7に係る発明は、請求項5又は6に記載の蛍光体であって、前記オーバーコーティングの各層の少なくとも一つは紫外線を透過させない性質の材料を含むことを特徴とする。
【0018】請求項8に係る発明は、請求項5乃至7の何れかに記載の蛍光体であって、前記オーバーコーティングの各層の少なくとも一つは可視光反射材料を含むことを特徴とする。
【0019】請求項9に係る発明は、請求項1乃至8の何れかに記載の前記蛍光体より成る蛍光体層を有することを特徴とする。
【0020】請求項10に係る発明は、請求項9記載の前記プラズマディスプレイパネル用基板を有することを特徴とする。
【0021】請求項11に係る発明は、請求項10記載の前記プラズマディスプレイパネルを有することを特徴とする。
【0022】
【発明の実施の形態】(実施の形態1)本実施の形態に係る蛍光体は、あらゆるタイプのPDPに適用される蛍光体層(蛍光体膜)の材料として用いられるものであるが、ここでは、便宜上、AC面放電反射型PDPを例にとり、本発明の蛍光体の構成を、図面に基づき説明する。
【0023】図1は、本発明に係わる蛍光体より成る蛍光体層9を具備したAC面放電反射型PDPの全体構成を表す図である。同図に示す様に、PDPを構成する両パネルの一方である表示面側ガラス基板1の裏面上には、透明表示電極2と同電極2の抵抗を下げるためのバス電極3とが共にストライプ状に形成されており、更に、これらの電極2,3を被覆する様に(但し、取出し端子部は除く)同基板1の裏面上に誘電体層4が形成され、更にその上に保護膜5が形成されている。他方、上記基板1と対向する裏面ガラス基板6の対向面上には、ストライプ状のアドレス電極7と放電空間を保ち光学的クロストークを防ぐためのストライプ状の隔壁8とが、透明表示電極2のストライプの方向と立体的に直交する様に形成されている。尚、10は蛍光を反射させるため等の役割を担う誘電体層であるが、任意の構成要素である(必須ではない)。更に、アドレス電極7の上方の誘電体層10の表面部分と隔壁8の側面上とには、赤、緑、青色の蛍光体から成る蛍光体層9が、交互に塗り分けられ形成されている。また、表示面側ガラス基板1と裏面ガラス基板6との間の内部空間には、例えばNe+Xe(4%)ペニング混合ガスから成る放電ガスが封入されている。この様な構成において、透明表示電極1とアドレス電極7との間に所定の電圧が印加されると、ペニング混合ガスの気体放電に伴いXeから波長が147nmの紫外線が放射される。この紫外線により、蛍光体層9は励起されて可視光(表示光)を発光する。
【0024】蛍光体層9と各部8,10との界面で反射した光を表示光として観測する反射型と呼ばれる方式のPDPでは、蛍光体層9からの発光の内で背面ガラス基板6の方向へと進行する光は、蛍光体層の他の表面で表示面方向に反射する。ここで、蛍光体層9の膜厚が薄いときには、反射する機会が少なくなるために、膜厚が厚い場合に比べて輝度が低くなり、他方、膜厚が厚すぎるときには、放電空間が狭くなるために、気体放電による紫外線の発光効率が低下するため輝度が低下する。しかし、本発明の蛍光体を用いて例えばスクリーン印刷法によって形成された蛍光体層9は、蛍光体の内で紫外線を吸収して観測側へ向う光を発光し得る部分の表面積が従来の蛍光体結晶よりも格段に増加しているため、無駄な部分を有すること無く効率良く発光することができる。このために、蛍光体層9の膜厚を必要以上に厚くする必要がないという利点がある。そこで、以下では、この様な利点をもたらす本実施の形態に係る蛍光体(ペースト状になる前の物)の構成について詳細する。
【0025】図2は、本実施の形態に係る蛍光体11の一例を概略的に示す縦断面図であり、丸で囲んだ部分の拡大断面図をも含んでいる。同図に示す様に、核本体11bは紫外線に対して非蛍光性を有する材料より成り、その様な材質を有するものである限り、その材料は特に限定されない。特に、SiO2(ガラス系材料)等の、紫外線を透過させ得る性質を持つ非蛍光体の材料を核本体11bに用いるときには、蛍光体11に入射した紫外線の内で蛍光体粉末11aによって吸収されることなく核本体11bに進入した紫外線が、核本体11bを透過して、進入した側部分とは反対の蛍光体粉末11aを励起させることができ、入射した紫外線の強度に対する蛍光の強度比(発光効率)を高めることができる。因みに、弗化リチウムはガラス系材料(SiO2)よりも優れた紫外線透過性を有しているので、弗化リチウムで核本体11bを構成するときには、更に効率良く紫外線進入側とは反対側に位置する蛍光体粉末11aを励起させることが出来る。又、核11Bの表面11S上に蛍光体粉末11aを装着する方法としては特に限定されないが、例えば結着剤を用いて蛍光体粉末11aを装着しても良い。
【0026】既述した通り、蛍光体結晶の場合には、紫外線がごく浅い深度までしか進入できず、蛍光体結晶のわずかな部分しか発光に寄与せず、蛍光体質量に対して非常に効率の悪い発光であった。しかし、本実施の形態に係る蛍光体11によれば、蛍光を発生させる部分を蛍光体粉末11aのみで構成しているので、蛍光体中で蛍光発生源となり得る部分に紫外線が進入できない部分が存在しない。換言すれば、蛍光体中、発光に寄与しない蛍光体発生源が存在せず、蛍光体質量に対して十分効率の良い発光を行う事が出来る。しかも、蛍光発生源となり得る部分を蛍光体粉末11aより成る層11Aの形状としているので、従来の蛍光体結晶と比べて、PDPの観測側へ向かって進行する蛍光を発光し得る部分の表面積を格段に増加させることができ、それに伴い、観測側へ向かって進行する蛍光の光量も増加し、表示光の輝度を向上させることができる。
【0027】尚、図2の例では、核本体11bの表面11Sの全面に渡って蛍光体粉末11aを装着しているが、表面11S上に部分的に蛍光体粉末11aを装着することも、効果は減じるが、なお有効である。
【0028】又、蛍光体11の形状は、図2では断面が円形であるが、それに限定されるものではない。
【0029】蛍光体粉末11aの材料も特に限定はされないが、紫外線励起蛍光体として、赤色に発光する蛍光体としては、例えば(Y,Gd)BO3:Eu、Y23:EUやYVO4:Euがあり、緑色に発光する蛍光体としては、例えばZn2SiO4:Mn、BaO・6Al23:Mn、Y2SiO5:TbやLaPO4:Ce,Tbがあり、青色に発光する蛍光体としては、例えばBaMgAl1423:Euや(Ca,Sr,Ba)10(PO4)6Cl2:Euがある。
【0030】(実施の形態1の変形例1)
(1) 図2では核11Bは単一材料として構成されているが、これに代えて、図3に示す様に、核11Bを、非蛍光体の核本体11b(図1のものに相当)と、核本体11bの表面上に全面的に形成された、例えばTi2Oで代表される様な、非蛍光体の可視光反射材層11cとより成る2層構造としても良い。この場合には、実施の形態1の効果に加えて、蛍光体粉末11aから発せられた内側へ向かった表示光が可視光反射材層11cによって外側へ向けて反射されるので、この反射光も観測側の表示光となり得る結果、輝度をより向上させることができる。
【0031】(2) 核11Bが図2の様に核本体11bのみの単一材料で形成される場合には、核本体11b自体を上記記載のTi2Oに代表される様な可視光を反射する反射材で形成しても良い。この場合には、変形例(1)の可視光反射材層11cを設けなくても、反射材層11cを設けたのと同じ効果が得られる。
【0032】(実施の形態2)実施の形態1及びその変形例においては、核本体11b上に、若しくは核本体11bの表面に施した可視光反射材のコーティング層11c上に蛍光体粉末11aを装着した例を説明したが、例えば、核本体11b上、若しくは核本体11bの表面に施した可視光反射材のコーティング層11c上に装着した蛍光体粉末11aの層(第1層)11A上に全面的に又は部分的にオーバーコーティングの層を施し、当該オーバーコーティングの層の上に更に微小な蛍光粉末を装着して蛍光体粉末より成る第2番目の層(第2層)を形成することも可能である。その際には、上記オーバーコーティングの層に、蛍光体粉末に経時的な劣化をもたらす要因(PDPを動作させたときに生ずるガス放電により生じるイオンの衝撃や紫外線の照射等)と同一の要因で劣化を起こして破壊に至り得る性質を有する非蛍光体の材料を用いる。
【0033】図4は、その様なオーバーコーティング層を挟み込んだ2層の蛍光体粉末の層を有する蛍光体11の一例を概略的に示す縦断面図であり、丸で囲んだ部分の拡大図をも含んでいる。即ち、蛍光体11は、核本体11bの表面11S上に装着された第1蛍光体粉末の第1層11A1と、第1層11A1の表面上に形成された、蛍光体粉末11a1(11a2)の劣化要因と同一の要因によって劣化して破壊に至り得る、紫外光に対して非蛍光の材質より成るオーバーコーティングの層11dと、オーバーコーティングの層11dの表面上に装着された第2蛍光体粉末11a2より成る第2層11A2とより成る。ここで、第1蛍光体粉末11a1と第2蛍光体粉末11a2とのそれぞれの材料は共に同一であっても良いし、又は、互いに異なっていても良い。
【0034】本実施の形態の蛍光体11をPDPの蛍光体層材料に用いるときには、次の利点が得られる。即ち、第2蛍光体粉末11a2の劣化と同期して、その下地のオーバーコーティングの層11dも劣化する。そして、最終的にオーバーコーティングの層11dが破壊・崩壊に至る事で、最上層の第2蛍光体粉末11a2の第2層11A2は剥がれ落ちて、オーバーコーティングの層11dの下の未使用・未劣化の第1蛍光体粉末11a1の第1層11A1が露出し、以後は第1層11A1中の第1蛍光体粉末11a1がそれまでの第2蛍光体粉末11a2に変わって蛍光を発することとなる。これにより、第2蛍光体粉末11a2の劣化に起因して低下していた輝度が再び向上する。
【0035】尚、実施の形態1の変形例(1)又は(2)に本実施の形態2の考え方を適用しても良い。
【0036】(実施の形態2の変形例)
(1) 蛍光体粉末の層は2層構造に限られるものではなく、蛍光体粉末の層がオーバーコーティングの層を介在して複数の層から成る積層構造とする事も可能である。即ち、実施の形態2の第2層11A2(図4)の表面上に、オーバーコーティングより成る層及び蛍光体粉末より成る層を、この順序で少なくとも1回繰返して積層形成して成る構造を、蛍光体11に更に備える様にしても良い。その際、各蛍光体粉末の層を成す材料は互いに同一又は互いに異質であっても良く、各オーバーコーティング層も互いに同一又は互いに異質であっても良い。
【0037】図5は、その様な一例として、蛍光体粉末の層の積総数が4である積層構造を有する蛍光体11の縦断面図と、丸で囲んだ部分の拡大断面図とを示している。図5中、11a1、11a2、11a3、11a4はそれぞれ微小な第1、第2、第3、第4の蛍光体粉末であり、11A1、11A2、11A3、11A4はそれぞれ第1層、第2層、第3層、第4層であり、11d1、11d2、11d3はそれぞれ第1、第2、第3のオーバーコーティングの層であり、それぞれ第2、第3、第4の蛍光体粉末11a2、11a3、11a4の劣化原因と同一原因によって劣化し崩壊する性質を有している。
【0038】本変形例によれば、微小な蛍光体粉末の層を複数層としているので、未劣化の蛍光体粉末の露出回数を多くすることができるので、■蛍光体11の寿命をより長くすることができると共に、■より上側の蛍光体粉末が劣化したことに起因した輝度の低下をその下の蛍光体粉末で順次に補っていくことができる結果、輝度低下をより一層有効に防止得る。
【0039】また、オーバーコーティングの層の厚さを変えることにより、未劣化の蛍光体粉末の露出サイクルを任意に変えることが出来る(尚、この点は図4の例でも同じ)。又、オーバーコーティングの層をより厚い方向へと変えれば、蛍光体粉末の劣化に伴う崩壊に要する期間が長くなるので、輝度は低下せざるを得ないが、蛍光体11のより一層の長寿命化を図ることが可能となる。逆により薄い方向へと変えれば、輝度低下を小さく押さえることが可能となる。
【0040】(2) 蛍光体粉末の層の総積層数がn層の積層構造とする事で、第(n−1)層への紫外線の到達は第n層に比較して格段に少なくなるが、第n層と第(n−1)層との間に挟まれた第(n−1)番目のオーバーコーティングの層を、更にはそれ以降の各オーバーコーティングの層をも、紫外線を遮断する機能を有する材料(紫外線を透過させない性質の材料)より構成することにより、第(n−1)層以降の蛍光体粉末の層が全くの新品であることを確実にする事が出来る。尚、当該効果が減少するけれども、上記の遮断機能が備わっている材料と上記の遮断機能を有していない任意の材料との2層構造として、各オーバーコーティングの層を構成することもなお有効である。又、(n−1)個のオーバーコーティングの層の内の少なくとも1つに上記遮断機能を持たせる様にしても良い。
【0041】(3) 微小な蛍光体粉末の層の総積層数をn層とした積層構造の蛍光体において、第n層中の微小な蛍光体粉末からの発光によって、反表示側に向かった光が核本体もしくは核本体の表面に施された可視光反射材層によって反射されて表示側へ出てくる割合は相当小さいものと考えられる。そこで、各オーバーコーティングの層を可視光を反射する機能を有する材料で構成する。これにより、第n層の微小な蛍光体粉末から発せられて反表示側に向った光を、その下の(n−1)個の各オーバーコーティングの層によって表示側へと反射させることが可能となり、第n層の微小な蛍光体粉末から発せられた光の全量を観測側に到達する表示光に使用することが出来る。尚、効果は減少するが、その様な反射機能が備わっている材料とその様な機能が備わっていない材料との混合体をオーバーコーティングの層の材料として使用しても良いし、又、(n−1)個のオーバーコーティングの層の内の少なくとも1つに可視光反射材料を含ませる様にする変形もなお有効である。
【0042】(付記)各実施の形態1、2及びそれぞれの変形例に係る本蛍光体を使用して、例えばスクリーン印刷法によって、PDP用蛍光体層を形成することができる。そして、本蛍光体より成る蛍光体層を有するPDPを、その駆動回路等と共に筐体中に組み込むことで、カラーテレビジョンやコンピュータ用モニタ等のプラズマディスプレイ装置を構成することができる。
【0043】
【発明の効果】この発明は、以上説明したように構成されているので、以下に示すような効果を奏する。
【0044】請求項1ないし11の発明によれば、従来では蛍光体結晶中の紫外線の進入深度以上の部分を非蛍光性材質の核で以て代用しているので、蛍光に寄与しない無駄な蛍光性部分を蛍光体より除去することができ、蛍光体質量に対する発光効率のよい蛍光体を提供する事が出来る。しかも、蛍光体中の蛍光発生源を核の表面上に形成された粉末形状としているので、PDPの観測側方向へ蛍光を放射し得る蛍光発生源の表面積を従来よりも格段に増大させることができ、以て輝度を向上させることができる。
【0045】特に請求項2、3、9、10、11の発明によれば、蛍光体粉末から発せられた内側へ向かった光を外側へ反射させることができるので、PDPの観測側での表示光の輝度を更に向上させることができる。
【0046】請求項4、9、10、11の発明によれば、吸収されずに核内に進入した紫外線を、進入した側とは反対側の蛍光体粉末の励起・発光に用いることができるので、表示光の輝度をより向上させることができる。
【0047】請求項5、6、9、10、11の発明によれば、蛍光体をオーバーコーティングの層を介在させた蛍光体粉末形状の積層構造としているので、上層側の蛍光体粉末の劣化と共にその直下のオーバーコーティングの層が破壊し、それによってその下層の未劣化の蛍光体粉末が露出して発光することになるので、蛍光体の長寿命化を図りつつ、蛍光体粉末の劣化によって低下した輝度を復活させることができる。
【0048】請求項7、9、10、11の発明によれば、紫外線を透過させない材料を含むオーバーコーティングの層の下方に位置する蛍光体粉末の層を、より一層、未使用・未劣化の状態に確保することができる。
【0049】請求項8、9、10、11の発明によれば、可視光反射材料を含むオーバーコーティングの層の上方に位置する蛍光体粉末より発せられて反表示側に向かう光を当該オーバーコーティングの層で表示側へと反射させることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施の形態に係る蛍光体より成る蛍光体層を具備したPDPの概略構成を示す斜視図である。
【図2】 実施の形態1に係る蛍光体の構成を概略的に示す図である。
【図3】 実施の形態1の変形例に係る蛍光体の構成を概略的に示す図である。
【図4】 実施の形態2に係る蛍光体の構成を概略的に示す図である。
【図5】 実施の形態2の変形例に係る蛍光体の構成を概略的に示す図である。
【図6】 従来の蛍光体の構成を概略的に示す図である。
【符号の説明】
9 蛍光体層、11 蛍光体、11A 蛍光体粉末の層、11a,11a1,11a2,11a3,11a4 蛍光体粉末、11B 核、11b 核本体、11c 反射材層、11d,11d1,11d2,11d3 オーバーコーティングの層、11A1 第1層、11A2 第2層、11A3 第3層、11A4第4層、12 紫外線、13 発光センター、14 蛍光体の内部に向かう光、15 細孔、16 発光センターより観測方向に向かう光。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 非蛍光体の核と、前記核の表面上に装着された蛍光体粉末の層とを備えたことを特徴とする、蛍光体。
【請求項2】 請求項1記載の蛍光体であって、前記核は、非蛍光体の核本体と、前記核本体の表面上に形成された非蛍光体の可視光反射材層とを備え、前記蛍光体粉末の層は前記可視光反射材層の表面上に装着されていることを特徴とする、蛍光体。
【請求項3】 請求項1記載の蛍光体であって、前記核は非蛍光体の可視光反射材より成ることを特徴とする、蛍光体。
【請求項4】 請求項1記載の蛍光体であって、前記核は紫外線を透過させ得る性質を持つ非蛍光体の材料より成ることを特徴とする、蛍光体。
【請求項5】 請求項1乃至4の何れかに記載の蛍光体であって、前記蛍光体粉末の層を第1層とし、前記第1層の表面上に形成された、前記蛍光体粉末の劣化要因と同一の要因によって劣化して破壊に至り得る非蛍光体の材質より成るオーバーコーティングの層と、前記オーバーコーティングの層の表面上に装着された、前記蛍光体粉末より成る第2層とを更に備えたことを特徴とする、蛍光体。
【請求項6】 請求項5記載の蛍光体であって、前記第2層の表面上に、前記オーバーコーティングより成る層及び前記蛍光体粉末より成る層を、この順序で少なくとも1回積層形成して成る構造を更に備えたことを特徴とする、蛍光体。
【請求項7】 請求項5又は6に記載の蛍光体であって、前記オーバーコーティングの各層の少なくとも一つは紫外線を透過させない性質の材料を含むことを特徴とする、蛍光体。
【請求項8】 請求項5乃至7の何れかに記載の蛍光体であって、前記オーバーコーティングの各層の少なくとも一つは可視光反射材料を含むことを特徴とする、蛍光体。
【請求項9】 請求項1乃至8の何れかに記載の前記蛍光体より成る蛍光体層を有することを特徴とする、プラズマディスプレイパネル用基板。
【請求項10】 請求項9記載の前記プラズマディスプレイパネル用基板を有することを特徴とする、プラズマディスプレイパネル。
【請求項11】 請求項10記載の前記プラズマディスプレイパネルを有することを特徴とする、プラズマディスプレイ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2001−323262(P2001−323262A)
【公開日】平成13年11月22日(2001.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2000−141651(P2000−141651)
【出願日】平成12年5月15日(2000.5.15)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】