説明

蛍光体、半導体発光素子及び蛍光体の製造方法

【課題】蛍光特性を低下させることなく、耐湿性を大幅に改善することができ、かつ、高い分散性を有する蛍光体、該蛍光体を用いた半導体発光素子及び蛍光体の製造方法を提供する。
【解決手段】最表面に向かって、蛍光体母体と中間層と表面層とを有する蛍光体であって、ケイ素に対するアルカリ土類金属のモル比が1.5以上であり、かつ、該蛍光体1gを35℃の純水1000ml中に10分間浸漬した時のストロンチウムの溶出量が50ppm以下であり、かつ、ケイ素の溶出量が10ppm以下であることを特徴とする蛍光体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐湿性が著しく改善された蛍光体、該蛍光体を用いた半導体発光素子及び蛍光体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、白色光を発する半導体発光素子(白色LED)は、低消費電力、高効率、環境にやさしく、長寿命等の長所を兼ね備えているため、次世代光源として注目を浴びている。
白色LEDにおいて、白色光を作り出す方法としては、青色や紫外光のLEDとそれらの光によって励起されうる蛍光体(赤、黄、緑色蛍光体等)とを組み合わせる方法が一般的に用いられている。
【0003】
また、アルカリ土類金属元素を有するケイ酸塩(シリケートとも呼ばれる)蛍光体は、組成調節により広範囲な発光波長を容易に得られることと、発光効率が高いこと等の特徴を有するため注目されている。このようなケイ酸塩蛍光体の例として、例えば、特許文献1に記載の緑色蛍光体、特許文献2に記載の橙色蛍光体、及び、特許文献3に記載の黄色蛍光体が代表例として挙げられる。
【0004】
しかしながら、このようなアルカリ土類金属元素を有するケイ酸塩蛍光体は、空気中の水蒸気や水分によって表面が分解劣化しやすいという問題があった。そのため、大気中での長時間使用の場合に、発光強度の低下や色調の変化が起こりやすく、蛍光体としての特性が低下し、耐久性に大きな問題があった。
これに対して、蛍光体の耐湿性を改善する方法として、気相法(乾式法)、液相法(湿式法)等を用いて、蛍光体粒子の表面を酸化物等で被覆する方法が検討されている。
例えば、気相法による方法としては、化学的気相成長法(CVD)を用いる方法(特許文献4)や、プラズマ法を用いる方法(特許文献5)によって硫化物蛍光体粒子の表面に酸化アルミニウム膜をコーティングする方法が開示されている。
【0005】
また、液相法による方法としては、ゾルーゲル反応法と中和沈殿法が挙げられ、例えば、特許文献6には、0〜20℃の反応温度でSi、Ti等のアルコキシド及び/又はその誘導体を多量のアンモニア水の存在下で加水分解、脱水重合により蛍光体粒子への表面処理方法が開示されている。
更に、特許文献7には、ゾルーゲル反応法を用いたジルコニア膜の被覆方法が開示されている。特許文献8には、アルミニウム等のイオン含有酸性溶液を、蛍光体を分散させたアルカリ性溶液中に添加し、中和反応によって蛍光体粒子の表面に金属水酸化物を析出する方法が開示されている。
【0006】
しかしながら、特許文献4及び5に開示された気相法では、微粉末である蛍光体粒子を完全に分散することが困難であるため、1個1個の蛍光体粒子の表面に均一かつ全面に被覆することが現実的に難しく、ピンホールや被覆バラツキ等が生じやすいという問題があった。また、気相法は、通常400℃以上の高温で行われるため、蛍光体の種類によっては処理後に蛍光特性が著しく低下してしまうという問題もあった。更に、装置が大掛かりなものとなるため、製造コストが高くなっていた。
【0007】
一方、液相法であるゾルーゲル反応法を用いた場合(特許文献6、7)では、被覆物種類の選択自由度が大きいが、出発原料である金属アルコキシドは通常反応性が高く、蛍光体粒子の表面のみで加水分解反応を起させるための反応条件の制御が非常に難しかった。また、ゾルーゲル反応法で得られた膜には、不完全な加水分解のため残されたアルコキシル基や加水分解反応で脱離したアルコール等の有機成分が含まれるため、通常緻密な膜が得られにくかった。
更に、特許文献6に開示された被覆方法は、加水分解反応が多量のアンモニア水の存在下で行うため、殆どの原料が蛍光体粒子表面以外の溶液中に反応、消費され、反応効率とコストにも問題点があった。加えて、多量のアンモニア水が含まれるので、処理過程中に蛍光体が加水分解によって劣化する恐れもあった。
特許文献7に開示された方法は、長時間の反応と精密な温度及びプロセスの制御が必要であり、効率とコストの点に問題があった。
一方、特許文献8に開示された中和沈殿法では、被覆物を蛍光体粒子の表面に連続膜として析出することは事実上困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特表2009−515030号公報
【特許文献2】特開2007−131843号公報
【特許文献3】特開2007−186674号公報
【特許文献4】特開2001−139941号公報
【特許文献5】特表2009−524736号公報
【特許文献6】特開2008−111080号公報
【特許文献7】特開2009−132902号公報
【特許文献8】特開平11−256150号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、蛍光特性を低下させることなく、耐湿性を大幅に改善することができ、かつ、高い分散性を有する蛍光体、該蛍光体を用いた半導体発光素子及び蛍光体の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、最表面に向かって、蛍光体母体と中間層と表面層とを有する蛍光体であって、ケイ素に対するアルカリ土類金属のモル比が1.5以上であり、かつ、該蛍光体1gを35℃の純水1000ml中に10分間浸漬した時のストロンチウムの溶出量が50ppm以下であり、かつ、ケイ素の溶出量が10ppm以下である蛍光体である。
以下、本発明を詳述する。
【0011】
本発明者らは、鋭意検討した結果、蛍光体母体と中間層と表面層とからなる蛍光体において、ケイ素に対するアルカリ土類金属のモル比を規定し、かつ、蛍光体を純水に浸漬した際におけるストロンチウム及びケイ素の溶出量を所定の範囲内とすることで、蛍光特性を低下させることなく、耐湿性を大幅に改善することができ、かつ、高い分散性を有する蛍光体が得られることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0012】
本発明の蛍光体は、最表面に向かって、蛍光体母体と中間層と表面層とを有する。
図1は、本発明の蛍光体の断面を模式的に示したものである。
図1に示すように、蛍光体母体1の外表面には、中間層2が形成されており、更に、中間層2の外表面には、表面層3が形成されている。
【0013】
本発明の蛍光体は、ケイ素と、アルカリ土類金属とを含有する。
このような元素を含有することで、蛍光体の輝度と安定性が向上されると同時に、発光波長の調節が容易となる。上記アルカリ土類金属とは、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、ラジウム等の周期律表第2族に属する元素をいう。
なかでも、本発明の蛍光体は、上記アルカリ土類金属を有するケイ酸塩類を含有することが好ましい。
【0014】
上記アルカリ土類金属を有するケイ酸塩類としては、例えば、母体結晶構造として、MSiO又はMSiOの結晶構造と実質的に同じ構造(ただし、MはMg、Ca、Sr及びBaからなる群から選択される少なくとも1種を表す)を有し、かつ、付活剤としてFe、Mn、Cr、Bi、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Tb、Dy、Ho、Er、Tm及びYbからなる群から選択される少なくとも1種を含有する蛍光体が挙げられる。
上記アルカリ土類金属を有するケイ酸塩類は、例えば、Zn、Ga、Al、Y、Gd、Tb等を適量含有してもよい。また、本発明の蛍光体は、少量のハロゲン元素(例えば、F,Cl,Br)、硫黄(S)またはリン(P)を適量含有してもよい。
【0015】
本発明の蛍光体は、ケイ素に対するアルカリ土類金属のモル比が1.5以上である。
上記モル比が1.5未満であると、結晶構造が不安定となり、安定な蛍光特性が得られにくくなる。好ましくは1.7以上である。
【0016】
本発明の蛍光体は、蛍光体1gを35℃の純水1000ml中に10分間浸漬した時のケイ素の溶出量が10ppm以下であり、かつ、ストロンチウムの溶出量が50ppm以下である。
上記溶出量が上記範囲内であることで、蛍光体の耐湿性が大幅に改善されることとなり、実使用時の水分(湿気)による性能劣化が大幅低減することとなる。
上記ケイ素及びストロンチウムの溶出量は、誘導結合プラズマ発光分析(ICP)を用いて測定することができる。
【0017】
上記最表面に向かって、蛍光体母体と中間層と表面層とを有し、ケイ素に対するアルカリ土類金属のモル比が1.5以上であり、かつ、ケイ素及びストロンチウムの溶出量が上記範囲内である蛍光体としては、例えば、最表面に向かって、アルカリ土類金属を含有する蛍光体母体と、アルカリ土類金属を含有する中間層と、アルカリ土類金属と、周期律表第4〜6族の元素、イットリウム及びケイ素から選択される少なくとも1種を含有する表面層とを有する蛍光体であって、前記蛍光体母体、中間層及び表面層におけるアルカリ土類金属の含有量が下記(1)及び(2)式を満たす蛍光体が好ましい。
【0018】
【数1】

【0019】
式中、Cは蛍光体母体におけるアルカリ土類金属の含有量、Cは中間層におけるアルカリ土類金属の含有量、及び、Cは表面層におけるアルカリ土類金属の含有量を示す。
【0020】
また、CはCの2/3以下であることが好ましい。これにより、中間層2は実質的にSiとOがリッチな層になり、蛍光体の耐湿性が向上されることとなる。2/3を超えると、耐湿性が不充分となることがある。1/3以下であることがより好ましい。
【0021】
本発明において、上記アルカリ土類金属の含有量は、蛍光体母体、中間層又は表面層を構成する全元素に対するアルカリ土類金属の含有量(重量%)で表す。
上記各層中のアルカリ土類金属の含有量は、電界放射型透過電子顕微鏡に付属されているエネルギー分散型X線分析器(Energy−Dispersive X−ray Spectrometer、EDX)を用いることで測定することができる。
【0022】
上記本発明の蛍光体に用いられる蛍光体母体は、アルカリ土類金属を含有する。このようなアルカリ土類金属を有する蛍光体母体は、例えば、硫化物、アルミン酸塩、窒化物、酸窒化物、リン酸塩、ハロンリン酸塩、ケイ酸塩等が挙げられる。
なかでも、上記蛍光体母体は、アルカリ土類金属元素を有するケイ酸塩類を含有することが好ましい。
【0023】
上記蛍光体母体の例としては、例えば、下記式(3)のような構造を有する蛍光体母体、下記式(4)のような構造を有する蛍光体母体、下記式(5)のような構造を有する蛍光体母体等が挙げられる。
【0024】
【化1】

式(3)中、MはMg、Ca、Ba、Znからなる群より選ばれる少なくとも1種であり、xとyは、それぞれ0≦x≦0.5、2.6≦y≦3.3の範囲内である。
【0025】
【化2】

式(4)中、L1はMg、Ca、Ba及びZnからなる群から選ばれる少なくとも1種であり、L2はB、Al、Ga、C、Ge、N及びPからなる群より選択される少なくとも1種であり、L3はF、Cl、Br、N及びSからなる群より選択される少なくとも1種であり、xは1.5〜2.5である。
【0026】
【化3】

式(5)中、M1及びM2はMg、Ca、Ba、Znからなる群から選ばれる少なくとも1種であり、a、x、y、z、uは、それぞれ0.6≦a≦0.85、0.3≦x≦0.6、0.85≦y≦1、1.5≦z≦2.5、2.6≦u≦3.3の範囲内である。
【0027】
上記蛍光体母体の具体例としては、例えば、SrSiO:Eu2+、(Sr0.9Mg0.025Ba0.075SiO:Eu2+、(Sr0.9Mg0.05Ba0.052.7SiO:Eu2+等を主成分とする橙色蛍光体、(Sr0.6Ba0.4SiO:Eu2+、(Sr0.7Ba0.3SiO:Eu2+、(Ba,Sr,Ca)(Mg,Zn)Si:Eu2+等を主成分とする緑色蛍光体、0.72[(Sr1.025Ba0.925Mg0.05)Si1.03Eu0.050.12]・0.28[SrSi1.02Eu0.60.13]等を主成分とする黄色蛍光体、及び、BaMgSi:Eu2+、BaZnSi:Eu2+等を主成分とする青色蛍光体が挙げられる。
【0028】
上記蛍光体母体の粒子径としては特に限定されないが、中央粒径(D50)で通常0.1〜100μm範囲内であることが好ましく、より好ましくは1.0〜50μm、さらに好ましくは2.0〜30μmである。上記D50が小さすぎると、輝度が低下するだけではなく、蛍光体母体自体が凝集しやくなり、均一な被覆処理が困難になる。また、D50が大きすぎると、樹脂における分散性が悪くなり、発光素子の特性に悪影響を与える恐れがある。
【0029】
上記中間層は、アルカリ土類金属を含有し、かつ、上記蛍光体母体及び表面層に比べてアルカリ土類金属の含有量が低いことが特徴である。このようにアルカリ土類金属の含有量が低いことは、アルカリ土類金属以外の金属の含有量が高いことを意味する。例えば、MSiO又はMSiO等の構造を有する蛍光体母体の表面が化学改質され、表面層及び中間層が形成された場合、中間層のアルカリ土類金属の含有量が、蛍光体母体中のアルカリ土類金属含有量より低くなり、その結果、中間層はアルカリ土類金属が欠損になり、Si及びOの含有量が高いものとなる。
【0030】
このような中間層が形成されていることで、被覆処理工程において水による蛍光体の劣化が生じることを防止することができる。一般的に、耐湿性に劣る蛍光体を処理する場合には、水溶液の使用を避ける必要がある。例えば、ケイ酸塩からなる蛍光体の場合、純水中では数分間以内に脱色劣化が生じるケースが多い。このため、ゾルーゲル反応法等の湿式法により表面処理をする場合にはアルコールなどの有機溶媒中で行うのが殆どである。
これに対して、本発明では、100%の水溶液中で被覆処理を行った場合でも、水による蛍光体の脱色劣化が見られない。この原因は必ずしも明らかではないが、上記アルカリ土類金属含有量の低い中間層が被覆処理の初期に早く形成されていることで、被覆処理過程中の水による劣化が抑制されたものと考えられる。また、被覆処理が水溶液中で行えることは、有機溶媒を使用する場合における廃液処理等の問題がなくなるだけでなく、コストの低減にもつながる。
更に、上記アルカリ土類金属の含有量が低い中間層が形成されることで、水に対する安定性が増し、蛍光体の使用時の耐湿性についても向上させることができる。
【0031】
上記中間層におけるアルカリ土類金属の含有量の好ましい下限は0.01重量%、好ましい上限は40重量%である。上記中間層のアルカリ土類金属の含有量が上記範囲外であると、被覆処理過程中において蛍光体が水による分解劣化が生じる恐れがある。
【0032】
上記中間層には、上記アルカリ土類金属のほか、フッ素を含有してもよい。
上記中間層中におけるフッ素とアルカリ土類金属との合計含有量は、40重量%以下であることが好ましい。上記フッ素とアルカリ土類金属との合計含有量が40重量%を超えると、相対的にケイ素及び酸素の含有量が低下し、蛍光体の耐湿性が低下することになる。
また、中間層にフッ素が存在することで、フッ素とアルカリ土類金属との間にフッ化物が形成されることができる。アルカリ土類金属のフッ化物は水に不溶性のものであり、同種金属のケイ酸塩よりは耐水性が高い。
【0033】
上記中間層の厚みは特に限定されず、通常、0.5〜2000nmであることが好ましい。より好ましくは1〜1000nm、更に好ましくは2〜500nmである。上記中間層の厚みが薄すぎると、前述した水による劣化防止効果が不充分となり、厚すぎると、蛍光体の蛍光特性に悪影響を与えることがある。
【0034】
上記表面層は、周期律表第4〜6族の元素、イットリウムおよびケイ素から選択される少なくとも1種を含有する。
【0035】
上記表面層における周期律表第4〜6族の元素、イットリウムおよびケイ素から選択される少なくとも1種の存在形態は明らかではないが、フッ化物、酸化物又は複酸化物であることが好ましい。特に、酸化物が好ましい。また、複酸化物(例えば、チタン酸バリウム(BaTiO))等が形成されていてもよい。
上記フッ化物、酸化物又は複酸化物は、耐湿性が高いため、上記表面層が形成されていることで、耐湿性が更に向上される。特に、Ti、Zr又はケイ素等の酸化物は耐水性が高いので、表面層におけるこのような金属の含有量が高ければ高いほど望ましい。
【0036】
上記表面層における、周期律表第4〜6族の元素、イットリウムおよびケイ素から選択される少なくとも1種の含有量の好ましい下限が30重量%である。上記含有量が30重量%以上にすることで、上記表面層は周期律表第4〜6族の元素、イットリウムおよびケイ素から選択される少なくとも1種が実質的に主成分になり、蛍光体の耐湿性が向上される。例えば、表面層に含有されるアルカリ土類金属がBa(70重量%)で、アルカリ土類金属以外の金属がTi(30重量%)である場合に、TiとBaの組成比(モル比)に換算すると、Tiの数がBaの約3倍になる。
【0037】
上記表面層がアルカリ土類金属を含む場合、蛍光体母体に由来するアルカリ土類金属であることが好ましい。ここで、蛍光体母体に由来するとは、蛍光体の母体結晶を構成する一部(通常最表面)が化学処理によって改質され、蛍光体の母体結晶構造または組成と違った構造または組成になったことを意味する。
【0038】
上記表面層の厚みは特に限定されず、通常、0.5〜2000nmであることが好ましい。より好ましくは1.0〜1000nm、更に好ましくは2.0〜500nmである。上記表面層の厚みが薄すぎると、劣化防止効果が不充分となり、厚すぎると、蛍光体の蛍光特性に悪影響を与えることがある。
【0039】
(中間層及び表面層の形成方法)
上記中間層及び表面層は、蛍光体母体をMF2−錯体イオン(Mは、周期律表第4〜6族の元素、イットリウム及びケイ素から選択される少なくとも1種)含有溶液に分散し、接触させることにより中間層及び表面層を形成する工程を有する方法を用いることが好ましい。このような蛍光体の製造方法もまた本発明の1つである。
通常、多層を形成する場合には、いくつかの工程を分けて層の形成工程を行う必要があるが、本発明では、従来のような煩雑な工程が必要なく、上記中間層と表面層が同一処理溶液にて一つのプロセスで実現することできる。
【0040】
本発明の蛍光体の製造方法を用いることで、上記中間層及び表面層が形成されるメカニズムは必ずしも明らかではないが、下記のような三つの過程を経て形成されることと考えられる。
1)蛍光体母体の最表面層からのアルカリ土類金属の溶出;
2)溶出したアルカリ土類金属イオンが蛍光体の表面においてフッ素イオンと反応し不溶性のフッ化物を形成する;
3)MF2−錯体イオンが加水分解し、MO酸化物が蛍光体の表面に形成する。
実際には、上記三つの過程がほぼ同時に進行すると考えられる。
【0041】
上記アルカリ土類金属のケイ酸塩を含有する蛍光体母体は水に弱いので、水中に浸漬すると浸漬時間に伴ってアルカリ土類金属の溶出量が増えることが本発明者らによって確認されている。従って、上記蛍光体母体をMF2−錯体イオンを含有する水溶液に分散し接触する時に、金属イオンの溶出反応が同様に発生すると考えられる。しかし、純粋な水の場合と違って、MF2−錯体イオンを含有する水溶液では、下記反応式(6)によって溶液中に遊離のフッ素イオンが存在するため、溶出したアルカリ土類金属イオンが蛍光体の表面近傍にフッ素イオンと反応し、不溶性のフッ化物を形成することができる。蛍光体の表面にこのような不溶性のフッ化物が形成されることによって、金属の溶出反応の進行が抑制されることと考えられる。また、アルカリ土類金属が溶出したところにはケイ素と酸素がリッチになる。このケイ素と酸素のリッチな層(本発明の中間層)の形成もアルカリ土類金属の継続溶出を抑制する働きをすると考えられる。
更に、上記アルカリ土類金属とフッ素イオンとの反応によってフッ素イオンが消費される。反応式(7)から分かるように、フッ素イオンが消費されると、MF2−錯体イオンの加水分解反応が促進され、反応が右へ進む。その結果、MO酸化物が形成される。上述したように、MO酸化物は水に対する安定性が非常に高いので、MOの形成によって、蛍光体の耐湿性が更に向上される。
【0042】
MF2−+nHO → [TiF6−n(OH)2− + nH + nF (6)
MF2− + 2HO → MO + 4H + 6F (7)
BO3− + 6H+ + 4F → BF4− + 3HO (8)
【0043】
反応時の上記MF2−錯体イオン濃度は、0.0005〜2.0Mであることが好ましく、より好ましくは0.001〜1.0Mで、更に好ましくは0.005〜0.5Mである。上記MF2−錯体イオン濃度が低すぎると、処理工程中に蛍光体の加水分解による劣化を抑えることができなくなる。一方、上記MF2−錯体イオン濃度が高すぎると、溶液自身が不安定になるか、反応が速すぎて、良質な膜が得られにくいことがある。
【0044】
上記加水分解反応の反応速度を促進するために、適量の加水分解促進剤を添加してもよい。本発明に使用する加水分解促進剤は、ホウ素(B)又はアルミニウム(Al)を含有する化合物から選ぶことができる。上記式(8)に示すように、ホウ素またはアルミニウムはフッ素イオンと安定な錯体を作ることができる。ホウ素を含有する化合物及びアルミニウムを含有する化合物は、単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。
【0045】
上記ホウ素を含有する化合物としては、例えば、酸化ホウ素、四ホウ酸ナトリウム、ホウ酸(HBO)等が挙げられる。これらの中では、ホウ酸が好ましい。
上記アルミニウムを含有する化合物としては、例えば、AlCl、AlBr、水酸化アルミニウム(Al(OH))等が挙げられる。
【0046】
上記MF2−錯体イオンに対する加水分解促進剤の量は特に限定されないが、通常、1モルのMF2−錯体イオンに対して加水分解促進剤の量が0.1モル以上、好ましくは、0.2モル〜5モル程度、より好ましくは0.5〜4モル程度とすればよい。
【0047】
反応時間は、目的とする中間層および表面層の厚み、反応液の濃度、温度等の反応条件に応じて適宜調整すればよく、通常、5分〜20時間程度、好ましくは10分〜10時間程度である。
一般には、仕込みの蛍光体の量が一定であれば、反応時間が長くなるほど膜厚が厚くなる。反応時間が短すぎると酸化物層の形成が不完全となる。一方、反応時間が長すぎると非経済的である。
反応温度は、目的とする酸化物層の厚みに応じて適宜調整すればよく、通常、0〜90℃程度、好ましくは5〜70℃程度、より好ましくは、10〜50℃程度とすればよい。
反応時の分散条件は特に限定されず、蛍光体を分散させることができる条件であればよい。例えば、磁気スターラー攪拌、モーター付きの機械的な攪拌、ガスバーブリング、液循環、超音波分散、ボールミルやロータリーミキサーのような回転分散、又は上記方法を併用することによって行うことができる。
【0048】
反応後に、蛍光体をろ過、洗浄、乾燥工程を経て回収する。乾燥は常圧乾燥でもよく、減圧乾燥でもよい。
また、本発明の蛍光体の製造方法では、上記回収した蛍光体を50〜600℃の温度で熱処理することが好ましい。
【0049】
本発明の蛍光体には、最表面に撥水層が更に形成されていることが好ましい。
最表面に撥水層を形成することで以下の効果を有する。
1)上記撥水層は、水をはじく性質を有し、湿気や水を蛍光体の表面へ接近しにくくする作用が期待される。これにより、蛍光体の耐湿性を更に向上させることができる。蛍光体の耐湿性を向上するためには、蛍光体の表面近傍に湿気や水を存在させないことが重要である。
2)本発明の蛍光体の樹脂における分散性を改善することができる。純無機の蛍光体は基本的に樹脂との親和性が悪いが、表面に単分子層レベルの撥水層を形成することによって、樹脂との親和性を改善することができる。また、この撥水層は単分子レベルの厚みであるため、表面層の厚みに比べて無視できる。
上記撥水層はフッ素含有化合物からなることが好ましい。
【0050】
(撥水層の形成方法)
上記フッ素含有化合物からなる撥水層の形成方法としては、例えば、フッ素系シランカップリング剤を溶解した溶液中で処理する方法等が挙げられる。
上記フッ素含有カップリング剤としては、例えば、トリフルオロプロピルトリメトキシシラン(CFCHCHSi(OCH)、トリエトキシ−1H,1H,2H,2H−トリデカフルオロ−n−オクチルシラン(CF(CFCHCHSi(OC)、トリメトキシ−1H,1H,2H,2H−トリデカフルオロ−n−オクチルシラン(CF(CFCHCHSi(OCH)、1H,1H,2H,2H−パーフルオロデシルトリメトキシシラン(CF(CFCHCHSi(OCH)等が挙げられる。
【0051】
上記フッ素系カップリング剤を溶かす溶媒としては、フッ素系カップリング剤の種類によって適宜選択すればよい。例えば、水、メタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコール、水とアルコールの混合液等が好適である。また、加水分解反応を促進するために、上記溶媒に適量の酸(酢酸、塩酸、硝酸、硫酸等)を添加してもよい。
上記フッ素系カップリング剤の濃度としては、蛍光体の量に対して0.1〜5重量%の範囲が好ましい、0.5〜2重量%がより好ましい。
【0052】
上記撥水層を形成する際、処理時間は5分〜5時間が好ましく、10分〜3時間がより好ましい。上記所定時間処理した後に、蛍光体を溶液から取り出し、ろ過、洗浄した後に、100〜150℃の温度で乾燥する。乾燥時間は1〜60分間が好ましい。
また、上記撥水層の形成は、湿式法のほかに乾式法を用いることもできる。乾式法として、例えば、乾式攪拌により分散された蛍光体に、上記フッ素含有シランカップリング剤の原液又は適当な溶媒で希釈した希釈液を噴霧する方法が適用できる。
また、乾式法のもう一つの形態として、アルゴン等の不活性ガスで希釈されたフッ素含有反応性ガス中での大気圧プラズマ処理を用いることができる。フッ素含有反応性ガスとしては、CF、C、C、C、CHF等のフッ素化炭化水素から選ぶことができる。
【0053】
上記撥水層の厚みは、上記フッ素系カップリング剤の分子の鎖長にもよるが、通常は5nm以下であることが好ましい。
【0054】
本発明の蛍光体と、封止樹脂との混合組成物を充填したLEDパッケージは、圧力:2大気圧、温度:121℃、相対湿度:100%の雰囲気下で24時間経過した後の光度保持率が95%以上であることが好ましい。上記光度保持率が95%未満であると、実際に発光素子に用いられた時に発光素子の経時劣化が起こりやすいこととなる。
【0055】
本発明の蛍光体を用いて蛍光体層を形成することで半導体発光素子を製造することができる。このような半導体発光素子もまた本発明の1つである。
上記蛍光体を含有した半導体発光素子の用途としては、例えば、電気機器の動作表示灯、町や道路の案内板、携帯電話・ビデオカメラ・テレビ等の電子機器のバックライト、道路表示器、交通表示灯、自動車のランプ、一般照明等が挙げられる。
【発明の効果】
【0056】
本発明によれば、空気中の水蒸気や水による表面の分解劣化を防止でき、長時間または高温高湿環境での使用においても光度の低下や色調の変化が起こることのない、耐湿性に優れた蛍光体を得ることができる。また、本発明の蛍光体を用いることで、耐湿性の高い半導体発光素子を製造することができる。更に、本発明の蛍光体の製造方法によれば、高価な反応装置を必要とせず、被覆処理が水溶液中に短時間で行うことができるので、目的の蛍光体を効率的、経済的に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明の蛍光体の断面模式図である。
【図2】実施例1で得られた表面処理蛍光体の断面を撮影したFE−TEM断面写真である。
【図3】実施例1で得られた表面処理蛍光体の断面の厚み方向における元素組成分析の結果である。
【発明を実施するための形態】
【0058】
以下に実施例を掲げて本発明の態様を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されない。
【0059】
[実施例1]
0.05mol/Lチタンフッ化アンモニウム((NHTiF)及び0.2mol/Lほう酸を含有する混合水溶液500mlに、中央粒径(D50)約16μmの緑色ケイ酸塩蛍光体(主成分:(Ba,Sr)SiO:Eu2+)2.4gを添加した。
蛍光体を添加した混合液を攪拌によって分散しながら、35℃で1時間を反応させた。反応後に、ろ過、洗浄工程を経て回収した蛍光体を120℃で1時間乾燥した。
得られた表面処理蛍光体について以下の方法で断面構造確認及び元素組成分析を行ったところ、厚み約16nmの表面層と厚み約19nmの中間層が観察された。元素組成分析では、表面層にはBa、Ti、Oおよび少量のSrとF元素が観察され、中間層にはSi、Oおよび少量のBaとFが観察された。また、FE−TEM断面写真及び厚み方向における元素組成分析の結果から、中間層及び表面層におけるアルカリ土類金属の含有量の関係、並びに、中間層及び蛍光体母体におけるアルカリ土類金属の含有量の関係を表1に示した。
なお、得られた表面処理蛍光体のFE−TEM断面写真を図2に示し、厚み方向における元素組成分析の結果を図3に示す。
【0060】
<断面構造、元素組成分析>
蛍光体粒子をFocused ion Beam(FIB)で断面を切り、その切った断面を透過電子顕微鏡(FE−TEM)で観察することによって断面構造を確認した。
また、各層における元素組成分析は、上記FE−TEMに付属されているエネルギー分散型X線(EDX)分析装置を用いて分析した。
【0061】
[実施例2]
0.1mol/Lチタンフッ化アンモニウム((NHTiF)及び0.2mol/Lほう酸を含有する混合水溶液500mlに、中央粒径(D50)約16.2μmの橙色ケイ酸塩蛍光体(主成分:(Sr)3SiO5:Eu2+)2.4gを添加した。
蛍光体を添加した混合液を攪拌によって分散しながら、35℃で1時間を反応させた。反応後に、ろ過、洗浄工程を経て回収した蛍光体を120℃で1時間乾燥した。
得られた表面処理蛍光体について、実施例1と同様の方法で断面構造および元素組成分析を行ったところ、蛍光体母体の表面に、表面層と中間層が形成されていたことが確認された。
【0062】
[実施例3]
0.1mol/Lチタンフッ化アンモニウム((NHTiF)及び0.1mol/Lほう酸を含有する混合水溶液500mlに、中央粒径(D50)約15.5μmの黄色ケイ酸塩蛍光体(主成分:(Sr)3SiO5:Eu2+‐(Sr)2SiO4:Eu2+の二相混合物(7:3))2.4gを添加した。
蛍光体を添加した混合液を攪拌によって分散しながら、35℃で1時間を反応させた。反応後に、ろ過、洗浄工程を経て回収した蛍光体を120℃で1時間乾燥した。
得られた表面処理蛍光体について、実施例1と同様の方法で断面構造および元素組成分析を行ったところ、蛍光体母体の表面に、表面層と中間層が形成されていたことが確認された。
【0063】
[比較例1]
表面層と中間層とを有さず表面未処理の中央粒径(D50)約16μmの緑色ケイ酸塩蛍光体(主成分:(Ba,Sr)SiO:Eu2+)を用いた。
【0064】
[比較例2]
表面層と中間層とを有さず表面未処理の中央粒径(D50)約16.2μmの橙色ケイ酸塩蛍光体(主成分:(Ba,Sr)SiO:Eu2+)を用いた。
【0065】
[比較例3]
表面層と中間層とを有さず表面未処理の中央粒径(D50)約15.5μmの黄色ケイ酸塩蛍光体(主成分:(Sr)3SiO5:Eu2+−(Sr)2SiO4:Eu2+の二相混合物(7:3))を用いた。
【0066】
(評価方法)
【0067】
<金属イオンの溶出量分析>
得られた蛍光体1gを35℃の純水1000ml中に10分間攪拌しながら浸漬した後に、ろ過によって蛍光体を除去した。その後、ろ液について、誘導結合プラズマ発光分析(ICP、装置:ICPS−8000、(株)島津製作所製)を用いて各金属(ストロンチウム、ケイ素)の濃度を測定した。
【0068】
<蛍光体の耐湿性評価>
実施例及び比較例で得られた蛍光体又は蛍光体をシリコン樹脂(ダウー・コーニング社製、OE6630)100重量部に対して8重量部混合分散し、更に脱泡することにより蛍光体含有樹脂組成物を調製した。次に、調製した蛍光体含有樹脂組成物を、基板に実装したLEDパッケージ(発光ピーク波長460nm)の上に注入、充填し、更に150℃で2時間加熱することにより、樹脂組成物を硬化させた。上記工程により、LED発光装置を作製した。
得られたLED発光装置を圧力2大気圧、温度121℃、相対湿度100%の雰囲気において耐湿性試験を行った(Pressure Cooker Test(PCT試験))。
蛍光体の耐湿性は、PCT試験前後のLEDチップの発光特性を測定し、光度の変化量から評価した。具体的には、PCT試験前の光度に対し、PCT試験24時間後の光度の保持率でサンプル間の相対耐湿性を評価した。なお、測定装置には、オプトロニックラボラトリーズ社製のOL770測定システムを用いた。結果を表1に示した。
【0069】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明によれば、蛍光特性を低下させることなく、耐湿性を大幅に改善することができ、かつ、高い分散性を有する蛍光体、該蛍光体を用いた半導体発光素子及び蛍光体の製造方法を提供することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
最表面に向かって、蛍光体母体と中間層と表面層とを有する蛍光体であって、
ケイ素に対するアルカリ土類金属のモル比が1.5以上であり、かつ、
該蛍光体1gを35℃の純水1000ml中に10分間浸漬した時のストロンチウムの溶出量が50ppm以下であり、かつ、ケイ素の溶出量が10ppm以下であることを特徴とする蛍光体。
【請求項2】
最表面に向かって、
アルカリ土類金属を含有する蛍光体母体と、アルカリ土類金属を含有する中間層と、アルカリ土類金属と、周期律表第4〜6族の元素、イットリウム及びケイ素から選択される少なくとも1種を含有する表面層とを有する蛍光体であって、
前記蛍光体母体、中間層及び表面層におけるアルカリ土類金属の含有量が下記(1)及び(2)式を満たすことを特徴とする請求項1記載の蛍光体。
【数1】

式中、Cは蛍光体母体におけるアルカリ土類金属の含有量、Cは中間層におけるアルカリ土類金属の含有量、及び、Cは表面層におけるアルカリ土類金属の含有量を示す。
【請求項3】
蛍光体母体は、下記式(3)で表される構造を有することを特徴とする請求項1又は2記載の蛍光体。
【化1】

式(3)中、MはMg、Ca、Ba、Znからなる群より選ばれる少なくとも1種であり、xとyは、それぞれ0≦x≦0.5、2.6≦y≦3.3の範囲内である。
【請求項4】
蛍光体母体は、下記式(4)で表される構造を有することを特徴とする請求項1又は2記載の蛍光体。
【化2】

式(4)中、L1はMg、Ca、Ba及びZnからなる群から選ばれる少なくとも1種であり、L2はB、Al、Ga、C、Ge、N及びPからなる群より選択される少なくとも1種であり、L3はF、Cl、Br、N及びSからなる群より選択される少なくとも1種であり、xは1.5〜2.5である。
【請求項5】
蛍光体母体は、下記式(5)で表される構造を有することを特徴とする請求項1又は2記載の蛍光体。
【化3】

式(5)中、M1及びM2はMg、Ca、Ba、Znからなる群から選ばれる少なくとも1種であり、a、x、y、z、uは、それぞれ0.6≦a≦0.85、0.3≦x≦0.6、0.85≦y≦1、1.5≦z≦2.5、2.6≦u≦3.3の範囲内である。
【請求項6】
請求項1、2、3、4又は5記載の蛍光体を用いてなることを特徴とする半導体発光素子。
【請求項7】
請求項2、3、4又は5記載の蛍光体を製造する方法であって、
蛍光体母体をMF2−錯体イオン(Mは、周期律表第4〜6族の元素、イットリウム及びケイ素から選択される少なくとも1種)含有溶液に分散し、接触させることにより製造されることを特徴とする蛍光体の製造方法。

【図1】
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【図3】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−77182(P2012−77182A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−223099(P2010−223099)
【出願日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】