蛍光体及びその製造方法、並びにそれを用いた発光装置
【課題】高い輝度と優れた安定性を示す蛍光体および発光装置を提供する。
【解決手段】本発明は、一般式(A1−xRxM2X)m(M2X4)nで示される組成であることを特徴とする蛍光体である(但し、A元素はLi、Na,Be,Mg,Ca,Sr,Ba,Sc,Y,La,Gd,Luから選ばれる1種以上の元素であり、R元素はMn,Ce,Pr,Nd,Sm,Eu,Tb,Dy,Ho,Er,Tm,Ybから選ばれる1種以上の賦活剤であり、M元素はSi,Ge,Sn,Ti,Hf,Zr,Be,B,Al,Ga,In,Tl,Znから選ばれる1種以上の元素であり、X元素は酸素と窒素から選ばれる1種以上の元素である)。
【解決手段】本発明は、一般式(A1−xRxM2X)m(M2X4)nで示される組成であることを特徴とする蛍光体である(但し、A元素はLi、Na,Be,Mg,Ca,Sr,Ba,Sc,Y,La,Gd,Luから選ばれる1種以上の元素であり、R元素はMn,Ce,Pr,Nd,Sm,Eu,Tb,Dy,Ho,Er,Tm,Ybから選ばれる1種以上の賦活剤であり、M元素はSi,Ge,Sn,Ti,Hf,Zr,Be,B,Al,Ga,In,Tl,Znから選ばれる1種以上の元素であり、X元素は酸素と窒素から選ばれる1種以上の元素である)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無機化合物を主体とする蛍光体とその用途に関する。さらに詳細には、該用途は、該蛍光体の有する性質、すなわち400nm以上の長波長の蛍光を発光する特性を利用した照明装置、表示装置等の発光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、蛍光体は、蛍光表示管(VFD)、フィールドエミッションディスプレイ(FED)、プラズマディスプレイパネル(PDP)、陰極線管(CRT)、発光ダイオード(LED素子)などの表示装置等の発光装置に用いられている。
これらのいずれの発光装置においても、蛍光体を発光させるためには、蛍光体を励起するために何らかのエネルギーを蛍光体に供給する必要がある。たとえば、真空紫外線、紫外線、電子線、青色光などの高いエネルギーを有した励起源により、蛍光体は励起されて可視光線を発する。
しかしながら、従来のケイ酸塩蛍光体、リン酸塩蛍光体、アルミン酸塩蛍光体、硫化物蛍光体などの蛍光体を用いた場合には、前記のような励起源に曝されることによって、蛍光体の輝度が低下するという問題があった。
そのため、前記のような励起源に曝されても輝度低下が生じない蛍光体が求められていた。そこで、輝度低下の少ない蛍光体として、サイアロン蛍光体等の酸窒化物蛍光体が提案された。
【0003】
特許文献1には、Caを含有するサイアロン蛍光体が開示されている。ここで、このサイアロン蛍光体は、以下に述べるような製造プロセスによって製造される。
まず、窒化ケイ素(Si3N4)、窒化アルミニウム(AlN)、炭酸カルシウム(CaCO3)、酸化ユーロピウム(Eu2O3)を所定のモル比で混合する。次に、1気圧(0.1MPa)の窒素中において1700℃の温度で1時間保持してホットプレス法により焼成して製造される。
このプロセスで得られるEuイオンを固溶したα型サイアロン蛍光体は、450〜500nmの青色光で励起されて550〜600nmの黄色の光を発する蛍光体であり、青色LED素子とこの蛍光体を組み合わせることにより、白色LED素子を作製することが可能とされている。
【0004】
また、特許文献2は、別のサイアロン蛍光体に関するものであって、β−Si3N4構造を有するβ型サイアロン蛍光体について開示されている。このβ型サイアロン蛍光体は、近紫外〜青色光で励起されることにより、500〜600nmの緑色〜橙色の発光を行うため、白色LED素子用の蛍光体として好適に用いられている。
【0005】
更に、特許文献3には、JEM相からなる酸窒化物蛍光体が開示されている。この酸窒化物蛍光体は、近紫外〜青色光で励起されて、460〜510nmに発光波長ピークを有する発光を行う。同蛍光体の励起・発光波長域は、近紫外LEDを励起源とする白色LED用青色蛍光体として好適である。
【0006】
一方、照明装置として用いられる発光装置の従来技術として、青色発光ダイオード素子と、青色吸収黄色発光蛍光体とを組み合わせた白色発光ダイオードが公知であり、各種照明に実用化されている。
たとえば、特許文献4には、青色発光ダイオード素子と青色吸収黄色発光蛍光体との組み合わせによる白色発光ダイオードが開示されている。また、特許文献5にも、同様の構成の発光ダイオードについて開示されている。さらに、特許文献6にも、同様の構成の発光ダイオードについて、波長変換注型材料を用いた発光素子として開示されている。
なお、これらの発光ダイオードで、特によく用いられている蛍光体は一般式(Y,Gd)3(Al,Ga)5O12:Ce3+で表わされる、セリウムで賦活したイットリウム・アルミニウム・ガーネット系蛍光体である。
【0007】
また、特許文献7には、紫外光または近紫外光を発光する半導体発光素子と蛍光体とを備える蛍光体付き発光ダイオードについて開示されている。この蛍光体付き発光ダイオードでは、半導体発光素子がパルス状の大電流により紫外光または近紫外光の発光を行い、その半導体発光素子の発光により素子の表面に成膜された蛍光体が励起される構成について開示されている。この構成においては、素子の表面に成膜する蛍光体の種類に応じて、この蛍光体付き発光ダイオードの発光色を青、緑または赤色とすることが可能とされている。
【0008】
また、特許文献8には、III族窒化物半導体からなる発光層と、この発光層から発せられた発光波長ピーク波長が380nmの紫外光を受光して、赤色、緑色及び青色の三原色の光をそれぞれ発光する3種類の蛍光体層を備えたドットマトリックスタイプの表示装置が開示されている。
【0009】
更に、特許文献9には、390〜420nmの波長の光を発光する半導体発光素子と、この半導体発光素子からの発光により励起される蛍光体とを用いて、白色の光を発光する半導体発光素子が開示されている。ここで、半導体発光素子は、人の視感度が低い光を発光するため、半導体発光素子の発光強度や発光波長が変動しても色調がほとんど変化しないように感じられる。また、390〜420nmの波長の光は、蛍光体を分散する樹脂などの装置構成部品を損傷しにくい。また、一般に紫外光は人体にさまざまな有害な影響を与えるが、390nm以上の波長の光を用いているため、漏れた励起光による有害な影響はない。この場合、390〜420nmの波長の光で励起され発光する蛍光体として、様々な酸化物や硫化物の蛍光体が用いられている。
【0010】
このような照明装置は、例えば、特許文献10、特許文献11などに記載されているような公知の方法により製造できるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2002−363554号公報
【特許文献2】特開2005−255895号公報
【特許文献3】特開2006−232868号公報
【特許文献4】特許第2900928号公報
【特許文献5】特許第2927279号公報
【特許文献6】特許第3364229号公報
【特許文献7】特開平10−12925号公報
【特許文献8】特開平9−153644号公報
【特許文献9】特開2002−171000号公報
【特許文献10】特開平5−152609号公報
【特許文献11】特開平7−99345号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、特許文献1〜11に記載の蛍光体は、近紫外〜青色発光素子を励起光源とした白色LED用途に好適な励起・発光スペクトルを有するが、近年の白色LED高輝度化要求の高まりを背景として、更に高い輝度を有する蛍光体の出現が期待されていた。
また、照明などの発光装置についても、青色発光ダイオード素子とイットリウム・アルミニウム・ガーネット系蛍光体とから或る白色発光ダイオードは赤色成分の不足から青白い発光となる特徴を有し、演色性に偏りがみられるという問題に加え、特に酸化物蛍光体は共有結合性が低いことから、半導体発光素子の高輝度化に伴う発熱量の増大により、発光輝度が低下するという問題があった。
また、硫化物系蛍光体は、高い発光輝度を示すものが知られているが、化学的安定性に難点があるため、白色LEDが本来有する寿命特性の確保が困難であった。
【0013】
本発明は、上記事情を鑑みてなされたもので、従来の蛍光体よりもさらに高い輝度と優れた安定性を示す蛍光体および製造方法ならびにそれを用いた発光装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、一般式(A1−xRxM2X)m(M2X4)nで示される組成であることを特徴とする蛍光体(但し、A元素はLi、Na,Be,Mg,Ca,Sr,Ba,Sc,Y,La,Gd,Luから選ばれる1種以上の元素であり、R元素はMn,Ce,Pr,Nd,Sm,Eu,Tb,Dy,Ho,Er,Tm,Ybから選ばれる1種以上の賦活剤であり、M元素はSi,Ge,Sn,Ti,Hf,Zr,Be,B,Al,Ga,In,Tl,Znから選ばれる1種以上の元素であり、X元素は酸素と窒素から選ばれる1種以上の元素であることを特徴とする蛍光体)が高輝度の発光を示すことを見出した。
この知見についてさらに研究を進めた結果、以下の構成に示す本発明を完成するに至った。
【0015】
(1)一般式(A1−xRxM2X)m(M2X4)nで示される組成であることを特徴とする蛍光体(但し、A元素はLi、Na,Be,Mg,Ca,Sr,Ba,Sc,Y,La,Gd,Luから選ばれる1種以上の元素であり、R元素はMn,Ce,Pr,Nd,Sm,Eu,Tb,Dy,Ho,Er,Tm,Ybから選ばれる1種以上の賦活剤であり、M元素はSi,Ge,Sn,Ti,Hf,Zr,Be,B,Al,Ga,In,Tl,Znから選ばれる1種以上の元素であり、X元素は酸素と窒素から選ばれる1種以上の元素である)。
(2)(8/5)<n/m<(5/3)であり、0<x≦0.2であることを特徴とする(1)に記載の蛍光体。
(3)Aが、Ca,Sr,Baから選ばれる一種以上であることを特徴とする(1)又は(2)のいずれかに記載の蛍光体。
(4)RがEuであることを特徴とする請求項(1)から(3)のいずれか一項に記載の蛍光体。
(5)MがSi,Alから選ばれる1種以上であることを特徴とする(1)から(4)のいずれか一項に記載の蛍光体。
(6)前記蛍光体が(A1−xRx)mSi6n−5m−sAl7m−4n+sOsNm+4n−sで示される組成であることを特徴とする(1)から(5)のいずれか一項に記載の蛍光体(但し、0≦s≦mである)。
(7)前記蛍光材料の含有率が80体積%以上であり、残部がβ―サイアロン、未反応の窒化ケイ素或いは窒化アルミニウム、酸窒化物ガラス、SrSiAl2N2O3、Sr2Al2Si10N14O4、SrSi(10−n)Al(18+n)OnN(32−n)(n〜1)、SrSi6N8から選ばれる一種以上であることを特徴とする(1)〜(6)のいずれかに記載の蛍光体。
(8)出発原料を混練して原料混合物を作る混練工程と、前記原料混合物を焼成する焼成工程と、焼成された前記原料混合物を熱処理する工程とを備え、
前記出発原料として、Aが、II価の価数をとる元素から選ばれる一種以上の元素である場合、Aを含有する化合物として、ASi2,ASiN2,A2Si5N8,A3Al2N4,ASi6N8から選ばれる一種以上の原料を少なくとも用いることを特徴とする蛍光体の製造方法。
(9)焼成された前記原料混合物を熱処理する工程の代わりに、焼成された前記原料混合物の塊を粉砕分級する工程と、粉砕分級された前記原料混合物の塊を熱処理する工程と、前記熱処理物の塊を粉砕分級する工程を備えることを特徴とする(8)に記載の蛍光体の製造方法。
(10)LiSi2N3を少なくとも出発原料として含むことを特徴とする請求項(8)又は(9)のいずれかに記載の蛍光体の製造方法。
(11)目的とする組成の蛍光材料を有する蛍光体粉末を予め合成し、これを種子として前記原料混合物に添加することを特徴とする(8)〜(10)のいずれか一項に記載の蛍光体の製造方法。
(12)発光光源と蛍光体とから構成される発光装置であって、前記蛍光体として、(1)〜(7)のいずれか一項に記載の蛍光体を用いることを特徴とする発光装置。
(13)発光光源と蛍光体とから構成される発光装置であって、前記蛍光体と、さらにβ−SiAlON:Eu,YAG:Ce,(Ca,Sr,Ba)2SiO4:Eu,α−SiAlON:Eu,(Ca,Sr,Ba)2Si5N8:Eu,(Ca,Sr)AlSiN3:Euから選ばれる1種以上の蛍光体を用いることを特徴とする(12)に記載の発光装置。
(14)前記発光光源が、330〜500nmの波長の光を発するLEDチップ、無機ELチップまたは有機ELチップのいずれかであることを特徴とする(12)又は(13)のいずれかに記載の発光装置。
(15)前記蛍光体が、前記LEDチップを取り囲んで形成された封止樹脂中に分散されていることを特徴とする(12)〜(14)のいずれか一項に記載の発光装置。
(16)前記蛍光体が、前記LEDチップの近傍で高密度になるように、前記封止樹脂中に分散されていることを特徴とする(15)に記載の発光装置。
(17)前記蛍光体が前記LEDチップに直接付着されていることを特徴とする(12)〜(16)のいずれか一項に記載の発光装置。
(18)前記蛍光体が前記LEDチップの少なくとも一面を覆うように直接付着されていることを特徴とする(17)に記載の発光装置。
(19)前記蛍光体が層状となっていることを特徴とする(18)に記載の発光装置。
(20)前記発光装置が、LEDチップを複数含むことを特徴とする請求項(12)〜(19)のいずれか一項に記載の発光装置。
【0016】
上記(1)〜(7)のいずれかの蛍光体において、平均粒径が0.1μm以上50μm以下の粉体であるのが好ましい。
上記(1)〜(7)のいずれかの蛍光体において、平均アスペクト比が20以下であるのが好ましい。
上記(1)〜(7)のいずれかの蛍光体において、フッ素を5〜300ppm含有するのが好ましい。
上記(1)〜(7)のいずれかの蛍光体において、ホウ素を10〜3000ppm含有するのが好ましい。
上記(1)〜(7)のいずれかの蛍光体において、少なくとも一部表面に透明膜が形成されており、前記透明膜の屈折率をnとしたときに、前記透明膜の厚さが(10〜180)/nk(単位:ナノメートル)であるのが好ましい。前記透明膜の屈折率nkが1.2以上2.5以下であるとさらに好ましい。前記透明膜の屈折率nkが1.5以上2.0以下であるとさらに好ましい。
【0017】
上記(8)〜(11)のいずれかの蛍光体の製造方法において、焼成された前記原料混合物の塊を、アルミナ焼結体、酸化ジルコニウム焼結体、窒化ケイ素焼結体またはα―サイアロン焼結体製の粉砕媒体もしくはライニング材からなる粉砕装置を用いて平均粒径が50μm以下となるまで粉砕するのが好ましい。
上記(8)〜(11)のいずれかの蛍光体の製造方法において、焼成された前記熱処理物の塊を、アルミナ焼結体、酸化ジルコニウム焼結体、窒化ケイ素焼結体またはα―サイアロン焼結体製の粉砕媒体もしくはライニング材からなる粉砕装置を用いて平均粒径が20μm以下となるまで粉砕するのが好ましい。
上記(8)〜(11)のいずれかの蛍光体の製造方法において、焼成された前記原料混合物の塊の粉砕物を水簸分級するのが好ましい。
上記(8)〜(11)のいずれかの蛍光体の製造方法において、焼成された前記熱処理物の塊の粉砕物を水簸分級するのが好ましい。
上記(8)〜(11)のいずれかの蛍光体の製造方法において、前記原料混合物を噴霧乾燥することにより前記原料粉末の凝集体の粒径を整える造粒工程をさらに備えるのが好ましい。
上記(8)〜(11)のいずれかの蛍光体の製造方法において、前記混練工程が、湿式ミルにより前記原料粉末を溶媒とともに混練する工程であるのが好ましい。
上記(8)〜(11)のいずれかの蛍光体の製造方法において、前記焼成工程が、0.1MPa以上100MPa以下の圧力の窒素雰囲気中において1500℃以上2200℃以下の温度範囲で焼成する工程であるのが好ましい。
上記(8)〜(11)のいずれかの蛍光体の製造方法において、前記焼成工程が、炭素若しくは炭素含有化合物の共存下で焼成する工程であるのが好ましい。
上記(8)〜(11)のいずれかの蛍光体の製造方法において、前記焼成工程が、焼成用容器に収容して焼成する工程であるのが好ましい。
上記(8)〜(11)のいずれかの蛍光体の製造方法において、前記焼成工程が、嵩密度40%以下の充填率に保持した状態で焼成する工程であるのが好ましい。
上記(8)〜(11)のいずれかの蛍光体の製造方法において、前記焼成工程が、前記原料混合物の嵩体積と前記焼成用容器の体積の比率として20体積%以上の充填率に保持した状態で焼成する工程であるのが好ましい。
上記(8)〜(11)のいずれかの蛍光体の製造方法において、前記焼成用容器の材質が、アルミナ、カルシア、マグネシア、黒鉛或いは窒化硼素のいずれかであるのが好ましい。
上記(8)〜(11)のいずれかの蛍光体の製造方法において、前記熱処理工程が、窒素、アンモニア、水素から選ばれる1種または2種以上の雰囲気中、600℃以上2200℃以下の温度で熱処理する工程であるのが好ましい。
上記(8)〜(11)のいずれかの蛍光体の製造方法において、蛍光体の粉末を有機溶媒に懸濁させ、有機金属錯体又は金属アルコキシドを滴下して、前記蛍光体の少なくとも一部表面に透明膜を形成する透明膜形成工程を備えるのが好ましい。
上記(8)〜(11)のいずれかの蛍光体の製造方法において、蛍光体の粉末を水に懸濁させ、pHを一定に保ちながら金属塩水溶液を滴下して、前記蛍光体の少なくとも一部表面に透明膜を形成する透明膜形成工程を備えるのが好ましい。
【0018】
上記(14)の発光装置において、前記LEDチップの発光波長の最大強度が330〜500nmであるのが好ましい。さらに、前記LEDチップの発光が紫外光であるのが好ましい。
上記(14)の発光装置において、前記LEDチップの発光波長の最大強度が380〜410nmであるのが好ましい。
上記(14)の発光装置において、前記LEDチップの発光が青色であるのが好ましい。
上記(14)の発光装置において、前記LEDチップによって蛍光体を励起することにより、白色のLEDデバイスをなすのが好ましい。さらに、前記LEDデバイスの白色の発光色の演色性が70以上とされているのが好ましい。さらにまた、前記LEDデバイスの発光スペクトルの半値幅が100nm以上とされているのが好ましい。
上記(14)の発光装置において、紫外線を発生する前記LEDチップによって蛍光体を励起することにより、有色のLEDデバイスをなすのが好ましい。さらに、紫外線を発生する前記LEDチップによって蛍光体を励起することにより、緑色のLEDデバイスをなすか、青緑色のLEDデバイスをなすか、又は、青色のLEDデバイスをなすのが好ましい。
上記(14)の発光装置において、前記発光装置が、砲弾型LEDデバイスまたは表面実装型LEDデバイスのいずれかであるのが好ましい。さらに、前記発光装置が、配線された基板に前記LEDチップを直接実装したチップ・オン・ボードであるのが好ましい。
上記(14)〜(20)のいずれかの発光装置において、前記発光装置の基板および/またはリフレクタ部に樹脂を含むのが好ましい。さらに、前記樹脂が、熱硬化性樹脂であるのが好ましい。
上記(14)〜(20)のいずれかの発光装置において、前記発光装置の基板および/またはリフレクタ部にセラミクス製部材を含むのが好ましい。
上記(15)の発光装置において、前記封止樹脂が、少なくとも一部の領域にシリコーン樹脂を含むのが好ましい。また、前記封止樹脂が、少なくとも一部の領域にメチルシリコーン樹脂を含むのが好ましい。また、前記封止樹脂が、少なくとも一部の領域にフェニルシリコーン樹脂を含むのが好ましい。
上記(15)又は(16)の発光装置において、前記封止樹脂を覆うように、別の封止樹脂が形成されているのが好ましい。
上記(19)の発光装置において、前記蛍光体の厚みが、1μmから100μmであるのが好ましい。
上記(14)〜(20)のいずれかの発光装置において、前記LEDチップが、一辺350μm角の面積よりも大きいのが好ましい。
上記(14)〜(20)のいずれかの発光装置において、前記発光装置が、1パッケージ当り0.2W以上の電力を投入して使用されるのが好ましい。
上記(14)〜(20)のいずれかの発光装置において、前記LEDチップが、1パッケージ1個当りの平面面積密度にして1.5×104W/m2以上の電力を投入して使用されるのが好ましい。
上記(14)〜(20)のいずれかの発光装置において、前記LEDチップが、1パッケージ1個当りの平面面積密度にして5×104W/m2以上の電力を投入して使用されるのが好ましい。
【発明の効果】
【0019】
上記の構成によれば、従来の蛍光体よりもさらに高い輝度と優れた安定性を示す蛍光体
および製造方法ならびにそれを用いた発光装置を提供することができる。
【0020】
本発明の蛍光体は、一般式(A1−xRxM2X)m(M2X4)nで示される組成であることを特徴とする蛍光体であって、A元素はLi、Na,Be,Mg,Ca,Sr,Ba,Sc,Y,La,Gd,Luから選ばれる1種以上の元素であり、R元素はMn,Ce,Pr,Nd,Sm,Eu,Tb,Dy,Ho,Er,Tm,Ybから選ばれる1種以上の賦活剤であり、M元素はSi,Ge,Sn,Ti,Hf,Zr,Be,B,Al,Ga,In,Tl,Znから選ばれる1種以上の元素であり、X元素は酸素と窒素から選ばれる1種以上の元素であることを特徴とする蛍光体なので、十分に高い輝度の発光強度を得ることができる。
【0021】
本発明の蛍光体は、先に記載の蛍光体とそれ以外の材料とからなる蛍光体であって、先に記載の蛍光体の含有率が80体積%以上であり、残部がβ―サイアロン、未反応の窒化ケイ素或いは窒化アルミニウム、酸窒化物ガラス、酸窒化物ガラス、SrSiAl2N2O3、Sr2Al2Si10N14O4、SrSi(10−n)Al(18+n)OnN(32−n)(n〜1)、SrSi6N8から選ばれる一種以上である構成なので、十分に高い発光強度が得られる。
【0022】
本発明の蛍光体は、平均粒径0.1μm以上50μm以下の粉体である構成であれば、表面欠陥の影響がなく、励起光の吸収が十分であり、発光が高い強度で得られる。
【0023】
本発明の蛍光体は、蛍光体を構成する一次粒子の平均アスペクト比が20以下である構成であれば、樹脂中への蛍光体の分散性が向上されるばかりか、励起光を効率的に吸収し、十分に高い発光強度が得られる。
【0024】
本発明の蛍光体は、微量のフッ素やホウ素が不純物として含有される構成であれば、発光強度は更に改善される。
【0025】
本発明の蛍光体の製造方法は、前記出発原料として、Aが、II価の価数をとる元素から選ばれる一種以上の元素である場合、Aを含有する化合物として、ASi2,ASiN2,A2Si5N8,A3Al2N4,ASi6N8から選ばれる一種以上の原料を少なくとも用いる構成なので、焼成工程での反応性が向上し、一層高輝度の蛍光体を得ることができる。
また、本発明の蛍光体の製造方法は、Liを含有する化合物として、LiSi2N3を少なくとも出発原料として含む構成であれば、焼成工程での反応性が向上し、一層高輝度の蛍光体を得ることができる。
【0026】
本発明の蛍光体の製造方法は、種子として予め合成した目的とする組成を有する蛍光体粉末を原料混合物に添加してなる構成であれば、合成反応が促進され、低温での合成が可能となったり、より結晶度の高い蛍光体が得られて、蛍光体の発光強度を向上したりする。
【0027】
ここで、必要に応じて該原料化合物にフラックスを加えて混合しても良い。フラックスとしては、アルカリ金属のハロゲン化物あるいはアルカリ土類金属のハロゲン化物などが使用可能であるが、例えば、蛍光体原料100質量部に対し、0.01〜20質量部の範囲で添加する。
【0028】
前記原料粉体混合物の凝集体は、湿式ミルにより原料粉末を溶媒とともに混練する混練工程と、スプレードライヤーにより前記混練工程で得られた混練物を噴霧乾燥することにより原料粉末の凝集体の粒径を整える造粒工程とにより得ることができる。
【0029】
本発明の蛍光体の製造方法は、焼成工程を、0.1MPa以上100MPa以下の圧力の窒素雰囲気中において1500℃以上2200℃以下の温度範囲で行う構成であれば、十分な雰囲気圧力により原料化合物の揮散や組成のずれがなく、十分な温度により時間効率がよく、また原料も溶融もせずに、高い発光強度の蛍光体が得られる。
【0030】
本発明の蛍光体の製造方法は、焼成工程を、炭素若しくは炭素含有化合物の共存下で行う構成であれば、原料混合物が還元性雰囲気と接するため、特に酸素含有量が多い原料化合物を用いた場合には、高輝度の蛍光体が得られる。
【0031】
本発明の蛍光体の製造方法は、焼成工程を、嵩密度40%以下の充填率に保持した状態で行う構成であれば、経済性、品質いずれの要請も満足させることができる。
また、原料粉体混合物の凝集体を、嵩密度40%以下の充填率に保持した状態とする方法としては、前記造粒工程で造粒した凝集体粉末を焼成用容器に収容して焼成する方法を採用することができる。
【0032】
本発明の蛍光体の製造方法は、焼成工程を、原料混合物の嵩体積と焼成用容器の体積の比率として20体積%以上の充填率に保持した状態で行う構成であれば、高い輝度の蛍光体が得られる。
【0033】
本発明の蛍光体の製造方法は、焼成された原料混合物の塊を、アルミナ焼結体、酸化ジルコニウム焼結体、窒化ケイ素焼結体またはα―サイアロン焼結体製の粉砕媒体もしくはライニング材からなる粉砕装置を用いて平均粒径が20μm以下となるまで粉砕する構成であれば、粉砕工程での不純物の混入を抑制することができる。
また、本発明の蛍光体の製造方法は、熱処理工程を、窒素、アンモニア、水素から選ばれる1種または2種以上の雰囲気中、600℃以上2200℃以下の温度で行う構成であれば、粉砕工程で導入された欠陥が低減し、発光強度を回復させることができる。
【0034】
本発明の蛍光体は、一般式(A1−xRxM2X)m(M2X4)nで示される組成であることを特徴とする蛍光体であって、A元素はLi、Na,Be,Mg,Ca,Sr,Ba,Sc,Y,La,Gd,Luから選ばれる1種以上の元素であり、R元素はMn,Ce,Pr,Nd,Sm,Eu,Tb,Dy,Ho,Er,Tm,Ybから選ばれる1種以上の賦活剤であり、M元素はSi,Ge,Sn,Ti,Hf,Zr,Be,B,Al,Ga,In,Tl,Znから選ばれる1種以上の元素であり、X元素は酸素と窒素から選ばれる1種以上の元素であることを特徴とする蛍光体であるが、例えば、本発明の蛍光体が一般式(A1−xRx)mSi6n−5m−sAl7m−4n+sOsNm+4n−s(但し、0≦s≦m)であることを特徴とする蛍光体である場合、本発明の蛍光体の粉末に含まれる酸素量は、前記一般式に包含される基づいて計算される酸素量(s)より多い蛍光体であってもよい。その差分の酸素量は0.4質量%以下である。ここで、前記差分の酸素は、本発明の蛍光体の粉末粒子の少なくとも一部表面に形成された透明膜を構成する。
【0035】
本発明の蛍光体は、先に記載の蛍光体を構成する粒子の少なくとも一部表面に、厚さ(10〜180)/nk(単位:ナノメートル)の透明膜を有し、ここでnkは透明膜の屈折率で1.2〜2.5である構成であれば、前記粒子の耐酸化性を向上させるとともに、封止樹脂との屈折率の差を低減して、蛍光体と封止樹脂との界面における光の損失を低減することができる。なお、前記透明膜の屈折率nkは、好ましくは1.5以上2.0以下である。
【0036】
本発明の蛍光体の粉末粒子の少なくとも一部表面に透明膜を形成する方法としては、本発明の蛍光体を有機溶媒に懸濁させて有機金属錯体又は金属アルコキシドを滴下する方法、または、本発明の蛍光体を水に懸濁させてpHを一定に保ちながら金属塩水溶液を滴下する方法などを挙げることができる。
【0037】
本発明の発光装置は、発光光源と蛍光体から構成される発光装置であって、前記蛍光体として本発明の蛍光体を用いる構成なので、十分に高い輝度と演色性を有する発光装置とすることができる。
【0038】
本発明の発光装置は、前記発光光源が、330〜500nmの波長の光を発するLEDチップ、無機ELチップまたは有機ELチップのいずれかである構成なので、本発明の蛍光体を効率よく励起させ、より高い輝度と演色性を有する発光装置とすることができる。
【0039】
本発明の発光装置は、発光光源と蛍光体とから構成される発光装置であって、前記蛍光体と、さらにβ−SiAlON:Eu,YAG:Ce,(Ca,Sr,Ba)2SiO4:Eu,α−SiAlON:Eu,(Ca,Sr,Ba)2Si5N8:Eu,(Ca,Sr)AlSiN3:Euから選ばれる1種以上の蛍光体を用いる構成なので、高い演色性を有する発光装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の第一の実施形態である発光装置(LED照明器具)の断面図である。
【図2】本発明の第二の実施形態である発光装置(LED照明器具)の断面図である。
【図3】本発明の第三の実施形態である発光装置(LED照明器具)の断面図である。
【図4】本発明の第四の実施形態である発光装置(LED照明器具)の断面図である。
【図5】本発明の第五の実施形態である発光装置(LED照明器具)の断面図である。
【図6】本発明の実施例6の蛍光体の発光および励起スペクトルを示す図である。
【図7】本発明の実施例6の蛍光体の粉末X線回折チャートを示す図である。
【図8】本発明の実施例8の蛍光体の発光および励起スペクトルを示す図である。
【図9】本発明の実施例9の蛍光体の発光および励起スペクトルを示す図である。
【図10】本発明の実施例10の蛍光体の発光および励起スペクトルを示す図である。
【図11】本発明の実施例11の蛍光体の発光および励起スペクトルを示す図である。
【図12】本発明の実施例12の蛍光体の発光および励起スペクトルを示す図である。
【図13】本発明の実施例13の蛍光体の発光および励起スペクトルを示す図である。
【図14】本発明の実施例14の蛍光体の発光および励起スペクトルを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
以下、本発明を実施するための形態について説明する。
<実施形態1:蛍光体>
本発明の実施形態である蛍光体は、一般式(A1−xRxM2X)m(M2X4)nで示される組成であることを特徴とする蛍光体であって、A元素はLi、Na,Be,Mg,Ca,Sr,Ba,Sc,Y,La,Gd,Luから選ばれる1種以上の元素であり、R元素はMn,Ce,Pr,Nd,Sm,Eu,Tb,Dy,Ho,Er,Tm,Ybから選ばれる1種以上の賦活剤であり、M元素はSi,Ge,Sn,Ti,Hf,Zr,Be,B,Al,Ga,In,Tl,Znから選ばれる1種以上の元素であり、X元素は酸素と窒素から選ばれる1種以上の元素であることを特徴とする。
これにより、十分に高い発光強度が得られる。なお、x,m,nの値は、(8/5)<n/m<(5/3)、0<x≦0.2の範囲が好ましく、この範囲からはずれると、発光強度が低下するため好ましくない。
【0042】
また、本発明の実施形態である蛍光体は、前記蛍光材料の含有率が80体積%以上であり、残部がβ―サイアロン、未反応の窒化ケイ素或いは窒化アルミニウム、酸窒化物ガラス、SrSiAl2N2O3、Sr2Al2Si10N14O4、SrSi(10−n)Al(18+n)OnN(32−n)(n〜1)、SrSi6N8から選ばれる一種以上である蛍光体であってもよい。これにより、十分に高い発光強度が得られる。なお、残部は結晶相またはアモルファス相のいずれであっても良い。なお、前記蛍光材料の含有量が80体積%より少ないと、十分に高い発光強度が得られない。
【0043】
本発明の実施形態である蛍光体において、n/mの値は(8/5)<n/m<(5/3)の範囲であるが、1.61≦n/m≦1.65の範囲が更に好ましい。n/mの値が1.61≦n/m≦1.65から外れると、発光強度の低下をもたらす。
【0044】
本発明の実施形態である蛍光体において、酸素量(s)の値は、0≦s≦mであるが、0.25m≦s≦0.75mの範囲が好ましい。sの値がこの範囲からずれると、β―サイアロン、未反応の窒化ケイ素或いは窒化アルミニウム、酸窒化物ガラス、SrSiAl2N2O3、Sr2Al2Si10N14O4、SrSi(10−n)Al(18+n)OnN(32−n)(n〜1)、SrSi6N8から選ばれる一種以上等の他の結晶相あるいはアモルファス相の含有量が増大し、発光強度が低下するため好ましくない。
【0045】
本発明の実施形態である蛍光体において、xの値は0<x≦0.2であるが、xの値の好ましい範囲は、0.001≦x≦0.1である。xの値が0.001より小さいと、発光する原子数が少なすぎるため十分な発光強度を得ることができず、また、0.1を超えると、濃度消光のため発光強度が低下し、何れも好ましくない。xの値として更に好ましい範囲は、0.01≦x≦0.06である。この範囲であれば、十分に高い発光強度を得ることが出来る。また、xの値を変化させることにより、当該蛍光体の発光スペクトルは、480から540nmの間で変化させることができる。
【0046】
A元素はLi、Na,Be,Mg,Ca,Sr,Ba,Sc,Y,La,Gd,Luから選ばれる1種以上の元素を用いることができる。特に、M(0)を構成する元素は、十分に高い発光強度が得られるため、Ca,Sr,Baから選ばれる一種以上が好ましい。更に好ましいのはSrである。また、Srの一部をCaで置換すると、発光色が長波長側にシフトし、Baで置換すると、短波長側にシフトする。
【0047】
R元素は、Mn,Ce,Pr,Nd,Sm,Eu,Tb,Dy,Ho,Er,Tm,Ybから選ばれる1種以上の元素を用いることができる。これらは、賦活剤である。特に、R元素は、このうち、Ce,Eu,Ybから選ばれる一種以上の元素であることが好ましい。なお、本実施形態の蛍光体においてRがCeの場合は白青色発光を、Euの場合は青緑色発光を、Ybの場合は緑色発光を示す。
【0048】
<平均粒径>
本発明の実施形態である蛍光体は、平均粒径0.1μm以上50μm以下の範囲の粉体(粉末)であることが好ましい。
平均粒径が0.1μmより小さいと、表面欠陥の影響が顕著となり、発光強度が低下し、平均粒径が50μmより大きいと、励起光の吸収が不十分となり、発光が低下するため、いずれも好ましくない。尚、蛍光体の粒度はレーザー回折・散乱法を用いて測定することができる。
【0049】
<平均アスペクト比>
本発明の実施形態である蛍光体は、蛍光体粉末を構成する一次粒子の平均アスペクト比が20以下であることが好ましい。これにより、樹脂中への分散性が向上するばかりか、励起光を効率的に吸収し、十分に高い発光強度が得られる。
平均アスペクト比が20より大きいと、樹脂への混練が困難となり、樹脂と蛍光体粒子との界面に空隙が生じやすくなる。また、平均アスペクト比が20より大きいと、粒子が交絡したり、励起光と平行に配列した蛍光体粒子の励起光の吸収が不十分となったりして、十分に高い発光強度が得られないため好ましくない。
尚、蛍光体粉末を構成する一次粒子の形状が、板状である場合は、その断面形状よりアスペクト比を求める。
【0050】
<微量添加元素>
本発明の実施形態である蛍光体において、微量添加元素と発光特性の関係を調べたところ、フッ素を5〜300ppmあるいはホウ素を10〜3000ppm含有する場合に、一層良好な発光特性が得られることを見出した。
この現象は、フッ素については5ppm以上、ホウ素については10ppm以上で顕著となるが、前者では300ppm、後者では3000ppmを超えた場合ではそれ以上の効果は得られなくなる。
【0051】
<酸素量>
本発明の実施形態である蛍光体に含有される酸素量が、前記一般式に基づいて計算される値より0.4質量%以下多いと、発光特性がより一層向上する。
ここに、0.4質量%以下多い酸素は、前記蛍光体の粉末粒子の少なくとも一部表面に形成された透明膜を構成する。この透明膜により、前記蛍光体の粉末粒子の耐酸化性が向上するとともに、封止樹脂との屈折率の差が低減する。これにより、前記蛍光体と封止樹脂との界面における光の損失が低減される。更に、前記蛍光体の粒子表面の不対電子や欠陥が低減することからも、発光強度の向上に有効である。
【0052】
<透明膜>
本発明の実施形態である蛍光体の粉末粒子の少なくとも一部表面に透明膜を形成してもよい。前記透明膜の厚さは、(10〜180)/nk(単位:ナノメートル)であり、ここで、nkは透明膜の屈折率で1.2〜2.5、好ましくは1.5以上2.0以下である。
前記透明膜の厚さがこの範囲より厚いと、前記透明膜自身が光を吸収するため発光強度が低下するので好ましくない。また、前記透明膜の厚さがこの範囲より薄いと、均一な透明膜の形成が困難となったり、蛍光体と封止樹脂との界面における光の損失の低減効果が不十分となるため、好ましくない。
尚、一般に、前記透明膜の適切な厚さは、前記透明膜の屈折率nkにより規定され、屈折率の高い透明膜の場合は厚さが薄くても、光の損失を低減するという目的を達し、屈折率が低い場合は前記目的を達するのに厚さを厚くすることを要する。
前記透明膜として好適な材質としては、シリカ、アルミナ、チタニア、マグネシア、フッ化マグネシウム等の無機物質、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリメチルスチレン等の樹脂を例示することができる。
【0053】
<分散性>
本発明の実施形態である蛍光体の粉末粒子の表面をカップリング処理してもよい。これにより、前記蛍光体を樹脂に分散させるときに、その分散性を向上させることができるとともに、樹脂と蛍光体との密着性を向上させることができる。
カップリング剤としては、シランカップリング剤、チタネート系カップリング剤、アルミネート系カップリング剤等を用いることができる。カップリング処理は、必要に応じて透明膜形成後に行ってもよい。
【0054】
<導電性を持つ無機物質>
本発明の実施形態である蛍光体を電子線で励起する用途に使用する場合は、導電性を持つ無機物質を混合することにより、前記蛍光体に導電性を付与することができる。
前記導電性を持つ無機物質としては、Zn、Al、Ga、In、Snから選ばれる1種または2種以上の元素を含む酸化物、酸窒化物、または窒化物、あるいはこれらの混合物を挙げることができる。
【0055】
<無機蛍光体や蛍光染料>
本発明の実施形態である蛍光体には必要に応じ、本発明の実施形態である蛍光体に用いる蛍光材料の発光色とは異なる色を発色する無機蛍光体や蛍光染料を混合することができる。
【0056】
以上のようにして得られる本発明の実施形態である蛍光体は、通常の酸化物蛍光体に比して、電子線やX線、および紫外線から可視光までの幅広い励起範囲を持ち、特に、賦活剤としてEuを用いた場合は、480nmから540nmの緑青色〜緑色を呈することが特徴である。
【0057】
以上の発光特性により、照明器具、表示器具、画像表示装置、顔料、紫外線吸収剤等の発光器具等に好適である。これに加えて、高温にさらしても劣化しないことから耐熱性に優れており、酸化雰囲気および水分環境下での長期間の安定性にも優れている。
【0058】
本発明の実施形態である蛍光体は、製造方法を規定しないが、下記の方法で輝度が高い蛍光体を製造することができる。
【0059】
<蛍光体の製造方法>
本発明の実施形態である蛍光体の製造方法は、原料を混練して原料混合物を作る工程(混練工程)と、該原料混合物を焼成する工程(焼成工程)と、該焼成された原料混合物の塊を粉砕分級する工程(第1粉砕分級工程)と、該焼成された原料混合物を熱処理する工程(熱処理工程)と、該熱処理物の塊を粉砕分級する工程(第2粉砕分級工程)とを備える。
なお、第1及び第2粉砕分級工程は省略しても良い。
【0060】
<混練工程>
原料としては、Aの金属、珪化物、酸化物、炭酸塩、窒化物、酸窒化物、塩化物、フッ化物、酸フッ化物、水酸化物、蓚酸塩、硫酸塩、硝酸塩、有機金属化合物あるいは加熱により酸化物、窒化物、酸窒化物を形成する化合物あるいは複化合物等を用いることができる。
また、Rの金属、珪化物、酸化物、炭酸塩、窒化物、酸窒化物、塩化物、フッ化物、酸フッ化物、水酸化物、蓚酸塩、硫酸塩、硝酸塩、有機金属化合物あるいは加熱により酸化物、窒化物、酸窒化物を形成する化合物あるいは複化合物等を用いることができる。
更に、Mの金属、珪化物、酸化物、炭酸塩、窒化物、酸窒化物、塩化物、フッ化物、酸フッ化物、水酸化物、蓚酸塩、硫酸塩、硝酸塩、有機金属化合物あるいは加熱により酸化物、窒化物、酸窒化物を形成する化合物あるいは複化合物を用いることができる。
このうち、Rの原料として好ましいのは酸化物、窒化物であり、Aの原料として好ましいのは、酸化物、炭酸塩、窒化物、珪化物であり、Mの原料として好ましいのは、窒化物、酸化物、珪化物である。
【0061】
なお、三価のユーロピウム原料を出発原料として用いてEuを賦活剤として含有する蛍光体を合成する場合には、前記三価のユーロピウム原料として、窒化ユーロピウムまたは酸化ユーロピウムを原料混合物の出発原料とするのがよい。
酸化ユーロピウムは、焼成過程で2価に還元される。また、一般に、窒化物原料には通常不純物の酸素が含まれているが、この酸素あるいは酸化ユーロピウムが含有する酸素は、蛍光体の不純物あるいは他の結晶相の構成元素となる。
更に、原料混合物が、炭素あるいは炭素含有化合物の共存下で焼成される場合には、酸化ユーロピウムが強く還元され、酸素量は低減される。
【0062】
ユーロピウムはプラス二価の場合に良好な発光を示す。そのため、原料として三価のユーロピウムを含有する化合物を用いた場合には、焼成過程で還元する必要がある。
本発明の実施形態である蛍光体に含まれる全ユーロピウムに占める二価と三価の割合は、二価が多いほど良く、全ユーロピウムに占める二価の割合は50%以上であることが好ましい。更に好ましくは、80%以上である。
三価のユーロピウムが残留すると、化学量論組成のずれが生じ、発光強度が低下するため好ましくない。
尚、ユーロピウムの二価と三価の割合は、X線吸収微細構造(XAFS:X−ray absorption fine structure)解析法により分析することができる。
【0063】
なお、必要に応じて、本発明の実施形態である蛍光体の粉末を予め合成し、これを種子として原料混合物に添加して、共に混合しても良い。前記種子の添加を行うと合成反応が促進されるため、低温での合成が可能となったり、より結晶度の高い蛍光体が得られて、発光強度が向上する場合がある。
前記種子の添加量は、蛍光体原料100質量部に対し、1〜50質量部の範囲が好ましい。
【0064】
本発明の蛍光体の製造方法は、Aが、II価の価数をとる元素から選ばれる一種以上の元素である場合、Aを含有する化合物として、ASi2,ASiN2,A2Si5N8,A3Al2N4,ASi6N8から選ばれる一種以上の原料を少なくとも出発原料としてもよい。また、前記出発原料には、Liを含有する化合物として、LiSi2N3を含んでもよい。
AあるいはLiを含有し、sの値がmより小さい組成の蛍光体を合成する場合は、AあるいはLiの窒化物等を原料として用いる必要があるが、これらの窒化物は、空気中で容易に酸化されてしまうため、秤量、混合等の工程は、空気を遮断したグローブボックス中で取り扱う必要がある。更に、一般に、焼成炉に原料混合物を充填し、炉内の空気を除去するまでは、原料混合物は空気にさらされるため、秤量、混合等の工程をグローブボックス中で行ったとしても、原料混合物の一定の酸化は避けられない。
一方、ASi2,ASiN2,A2Si5N8,A3Al2N4,ASi6N8等の化合物は、空気中で安定であるため、秤量、混合等の工程や、焼成炉に原料混合物を充填し、炉内の空気を除去するまでの間に酸化される心配はない。
【0065】
上記原料の粉末は、溶媒を用いない乾式ミルによっても混合可能だが、一般には湿式ミルにより溶媒とともに混合される。溶媒を用いた湿式ミルを用いたほうが、短時間で微視的に均一な混合粉末を得ることができる。
【0066】
ミルの種類としては、ボールミル、振動ミル、アトリッションミル等を用いることができるが、設備費用の観点からはボールミルが適している。
混合に用いる溶媒は、エタノール、メタノール、イソプロパノール、ヘキサン、アセトン、水等を用いることができるが、安全性等及び原料粉末の酸化防止を勘案すると、エタノール、ヘキサンの何れかが好ましい。
【0067】
原料粉末と混合溶媒の比率は、混合スラリーの粘度を決定する。好ましい混合スラリーの粘度は、50〜500cps程度である。混合スラリーの粘度が50cpsより小さいと、混合スラリーの乾燥に要するエネルギー量が増大するため好ましくない。一方、混合スラリーの粘度が500cpsを越えると、均一な混合粉末を得るのに長時間を要するため好ましくない。
【0068】
<造粒工程>
原料混合物を噴霧乾燥することにより原料粉末の凝集体の粒径を整える造粒工程を備えても良い。これにより、流動性に優れ、取り扱いが容易な原料粉末の凝集体を得ることができる。
湿式ミルで原料の粉末を溶媒と混合して混合スラリーを作製した後、これを乾燥して、混合粉末を得る。得られた混合スラリーは、乾燥機等に静置して溶媒を蒸発させてもよいが、スプレードライヤーを用いると、原料粉末の再分離を心配することなく、短時間で溶媒を除去した混合粉末を得ることができる。また、スプレードライヤーを用いて得られた混合粉末は、数十から数百μmの顆粒状を呈しているため、流動性に優れ、取り扱いが容易となる。
混合粉末は、必要に応じて加圧成型により40%以下の嵩密度を有する成形体とする。原料粉末を成形体とすることにより、焼成工程等での真空脱気による飛散を防止することができる。
【0069】
<焼成工程>
焼成は、原料混合物を焼成用容器に入れて、0.1MPa以上100MPa以下の圧力の窒素雰囲気中において行う。
窒素雰囲気圧力が0.1MPaより小さいと、原料混合物の揮散が顕著となり、組成のずれを生じ、発光強度が低下する。一方、窒素雰囲気圧力が100MPaより大きくても、原料混合物の揮散を抑制する効果は変わらないため、不経済であり、何れも好ましくない。
焼成温度は、1500℃以上2200℃以下の範囲で行なう。焼成温度が1500℃より低いと、本発明の実施形態である蛍光体を得るのに長時間を要し、2200℃より高いと、原料の溶融が始まるため、何れも好ましくない。
【0070】
前記焼成に用いる炉は、焼成温度が高温であり焼成雰囲気が窒素を含有する不活性雰囲気であることから、金属抵抗加熱方式または黒鉛抵抗加熱方式の炉が好適であり、炉の高温部の材料は、後述する理由からも、炭素を用いた電気炉が特に好適である。焼成の手法は、常圧焼結法やガス圧焼結法などの外部から機械的な加圧を施さない焼結手法が、嵩密度を低く保ったまま焼成するために好ましい。
【0071】
炭素若しくは炭素含有化合物の共存下で焼成すると、原料混合物が還元性雰囲気と接するため、特に酸素含有量が多い原料化合物を用いた場合には、高輝度の蛍光体が得られるため好ましい。
ここで用いられる炭素若しくは炭素含有化合物は、無定形炭素、黒鉛、炭化珪素等であればよく、特に限定されないが、好ましくは無定形炭素、黒鉛等である。カーボンブラック、黒鉛粉末、活性炭、炭化珪素粉末等及びこれらの成型加工品、焼結体等が例示可能であり、いずれも同様の効果を得ることができる。
共存の態様としては、粉末状の炭素を原料混合物中に含有させる場合、炭素若しくは炭素含有化合物からなる焼成用容器を用いる場合、炭素或いは炭素含有化合物以外の材質からなる焼成用容器の内部あるいは外部に炭素若しくは炭素含有化合物を配置する場合、炭素若しくは炭素含有化合物からなる発熱体や断熱体を用いる場合等がある。いずれの配置方法を採用しても同様の効果を得ることができる。
【0072】
上記の原料混合物の混合粉末は、嵩密度40%以下の充填率に保持した状態で焼成すると良い。
嵩密度40%以下の充填率に保持して焼成するのは、原料粉末の周りに自由な空間がある状態で焼成すると、反応生成物が自由な空間に結晶成長することによる結晶同士の接触が少なくなるため、表面欠陥が少ない結晶を合成することが出来るためである。
なお、嵩密度とは粉末の体積充填率であり、焼成用容器に充填したときの質量と体積の比を金属化合物の理論密度で割った値である。
また、前記焼成用容器の材質としては、アルミナ、カルシア、マグネシア、黒鉛或いは窒化硼素を使用することが出来るが、金属化合物との反応性が低いことから、窒化硼素焼結体が適している。
【0073】
原料混合物の充填量は、嵩密度40%以下の充填率を保持した状態で、原料混合物の嵩体積と焼成用容器の体積の比率として20体積%以上であることが好ましい。
原料混合物の充填量を焼成用容器の20体積%以上として焼成することにより、原料混合物に含まれる揮発性成分の揮散が抑制され、焼成過程での組成のずれが抑制される。また、焼成用容器中への原料混合物の充填量が増大し、経済的でもある。
【0074】
<第1粉砕分級工程>
焼成して得られた原料混合物の塊、すなわち、本発明の実施形態である蛍光体を含有する焼成塊は、アルミナ焼結体、酸化ジルコニウム焼結体、窒化ケイ素焼結体またはαサイアロン焼結体製の粉砕媒体もしくはライニング材からなるボールミル、ジェットミル等の工場で通常用いられる粉砕機(粉砕装置)により粉砕する。
粉砕は、前記塊が平均粒径50μm以下となるまで施す。平均粒径が50μmを超えると、粉体の流動性と樹脂への分散性が悪くなり、発光素子と組み合わせて発光装置を形成する際に部位により発光強度が不均一となる。平均粒径が20μm以下となるまで粉砕することがより好ましい。
平均粒径の下限は特に限定されないが、一般に0.5μm以下の粒度に粉砕するためには長時間を要し、更に、蛍光体粉末表面の欠陥が多くなることから、発光強度の低下をもたらすことがある。
【0075】
前記粉砕媒体もしくはライニング材を、アルミナ焼結体、酸化ジルコニウム焼結体、窒化ケイ素焼結体またはαサイアロン焼結体製とするのは、粉砕過程での不純物混入が抑制され、また、混入した不純物も発光強度を大きく低下させることがないためである。
なお、鉄や鉄属元素を含有する粉砕媒体もしくはライニング材からなる粉砕機を用いて粉砕すると、蛍光体が黒色に着色し、更に後述する熱処理工程で鉄や鉄属元素が蛍光体中に取り込まれ、著しく発光強度が低下するため好ましくない。
【0076】
前記粉砕により得られた蛍光体の粉末は、必要に応じて分級を行い、所望の粒度分布とする。
分級の方法としては、篩い分け、風力分級、液体中での沈降法、淘汰管分級などの方法を用いることができる。原料混合物の塊の粉砕物を水簸分級することが好ましい。
なお、この分級工程は表面処理工程の後で行っても差し支えない。
【0077】
<熱処理工程>
焼成後の蛍光体粉末、あるいは粉砕処理後の蛍光体粉末、もしくは分級による粒度調整後の蛍光体粉末は、必要に応じて窒素、アンモニア、水素から選ばれる1種または2種以上の雰囲気中、600℃以上2200℃以下の温度で熱処理する工程に供される。これにより、たとえば、粉砕工程で導入された欠陥などを低減し、発光強度を回復させることができる。
【0078】
前記熱処理温度が600℃より低いと、蛍光体の欠陥除去の効果が少なく、発光強度を回復させるためには長時間を要するため好ましくない。
一方、熱処理温度が2200℃より高いと、蛍光体粉末の一部が融解したり、粒子同士が再度固着するため好ましくない。
【0079】
前記熱処理は、窒素、アンモニア、水素から選ばれる1種または2種以上の雰囲気中で行うのがよい。これらの雰囲気中で熱処理を行うと、蛍光体粉末が酸化されることなく、欠陥を除去することができる。
また、雰囲気圧力は、焼成と同様、0.1MPa以上100MPa以下の圧力の下で行うのが好ましい。雰囲気圧力が0.1MPaより小さいと、熱処理温度によっては蛍光体構成元素の一部が揮散し、発光強度が低下する。一方、窒素雰囲気圧力が100MPaより大きくても、原料混合物の揮散を抑制する効果は変わらないため、不経済であり、何れも好ましくない。
【0080】
さらに、焼成後に生成物を、水または酸水溶液からなる溶剤で洗浄することにより、生成物に含まれるガラス相、第二相、または不純物相の含有量を低減させることができ、輝度が向上する。この場合、酸は、硫酸、塩酸、硝酸、フッ化水素酸、有機酸の単体またはこれらの混合物から選ぶことができ、なかでもフッ化水素酸と硫酸の混合物を用いると、不純物の除去効果が大きい。
【0081】
<第2粉砕分級工程>
更に必要に応じて、第1粉砕分級工程と同様にして、焼成された前記熱処理物の塊を、アルミナ焼結体、酸化ジルコニウム焼結体、窒化ケイ素焼結体またはα―サイアロン焼結体製の粉砕媒体もしくはライニング材からなる粉砕装置を用いて平均粒径が20μm以下となるまで粉砕する。
【0082】
<透明膜形成工程>
必要に応じて、前記蛍光体の少なくとも一部表面に透明膜を形成する透明膜形成工程を行う。
本発明の実施形態である蛍光体の表面に透明膜を形成する方法としては、たとえば、撹拌機や超音波分散装置を用いて、前記蛍光体の粉末をアルコール等の有機溶媒中に懸濁させ、当該縣濁液に有機金属錯体または金属アルコキシドとアンモニア水溶液等のアルカリ性の水溶液を滴下して、前記蛍光体の粒子表面に金属酸化物もしくは金属水酸化物の皮膜を形成して、その後必要に応じて空気中もしくは窒素等の非酸化性雰囲気中で焼成する方法がある。前記透明膜の厚さは、滴下条件や撹拌、縣濁条件を変化させて制御することができる。
【0083】
また、撹拌機や超音波分散装置を用いて、前記蛍光体の粉末を水(pHを調整した酸、アルカリもしくは緩衝液)に懸濁させ、pHを一定に保ちながら金属塩水溶液を滴下して、前記蛍光体の粒子表面に該金属の酸化物もしくは水酸化物の皮膜を形成した後、ろ過、洗浄、乾燥し、必要に応じて空気中もしくは窒素等の非酸化性雰囲気中で焼成を行ってもよい。なお、この方法においても金属塩水溶液の滴下条件や撹拌、縣濁条件を変化させることにより、前記透明膜の厚さを制御することができる。
【0084】
<不純物>
発光輝度が高い蛍光体を得るには、不純物の含有量は極力少ない方が好ましい。特に、Fe、Co、Ni不純物元素が多く含まれると発光が阻害されるので、これらの元素の合計が500ppm以下となるように、原料粉末の選定および合成工程の制御を行うことが好ましい。
【0085】
本発明の実施形態である蛍光体の製造方法は、本発明の実施形態である蛍光体を構成しうる原料混合物を、0.1MPa以上100MPa以下の圧力の窒素雰囲気中において1500℃以上2200℃以下の温度範囲で焼成する構成なので、発光強度の高い蛍光体を得ることができる。
【0086】
<発光装置>
本発明の実施形態である発光装置は、少なくとも発光光源と本発明の実施形態である蛍光体とを用いて構成される。前記発光装置を利用した照明装置としては、LED照明装置、EL照明装置、蛍光ランプなどがある。
たとえば、LED照明装置は、本発明の実施形態である蛍光体を用いて、特開平5−152609号公報、特開平7−99345号公報などに記載されているような公知の方法により製造することができる。
【0087】
「第一の実施形態」
本発明の発光装置の第一の実施形態として、砲弾型白色発光ダイオードランプ(LED照明装置:LEDデバイス)について説明する。
図1は、本発明の発光装置の第一の実施形態である砲弾型白色発光ダイオードランプ1の断面図である。
図1に示すように、砲弾型白色発光ダイオードランプ1は、第一のリードワイヤ2と、第二のリードワイヤ3とを備え、第一のリードワイヤ2は凹部2aを有し、その凹部2aに発光ダイオード素子(LEDチップ)4が蔵置されている。発光ダイオード素子4は、下部電極4aが凹部2aの底面と導電性ペーストによって電気的に接続されており、上部電極4bが第二のリードワイヤ3とボンディングワイヤ(金細線)5によって電気的に接続されている。
【0088】
第一の樹脂(封止樹脂)6は蛍光体7が分散している透明な樹脂であり、発光ダイオード素子4の全体を被覆している。第一の樹脂6は蛍光体7が分散している凹部2aを含む第一のリードワイヤ2の先端部2b、発光ダイオード素子4、蛍光体7を分散した第一の樹脂6は、透明な第二の樹脂(別の封止樹脂)8によって封止されている。
【0089】
第二の樹脂8は全体が略円柱形状であり、その先端部がレンズ形状の曲面となっているため、砲弾型と通称されている。第一の樹脂6と第二の樹脂8の材質としては、シリコーン樹脂が好ましいが、ポリカーボネート樹脂、エポキシ樹脂等の他の樹脂あるいはガラス等の透明材料であっても良い。できるだけ紫外線光による劣化の少ない材料を選定することが好ましい。
第一の樹脂6と第二の樹脂8は、同じ樹脂を用いても良いし、異なる樹脂を用いても良いが、製造の容易さや接着性の良さなどから、同じ樹脂を用いるほうが好ましい。
【0090】
蛍光体7として一部表面に透明膜を形成したものを用いる場合には、蛍光体7を分散させる第一の樹脂6の屈折率は、前記透明膜の屈折率に近いものが好ましい。これにより、前記透明膜と第一の樹脂6との界面における反射を抑制することができる。
なお、この場合、蛍光体7を分散させた第一の樹脂6の外側に、第一の樹脂6よりも屈折率が低い樹脂(第2の樹脂)を配置すると、更に高い輝度を有する発光装置とすることができる。
【0091】
発光ダイオード素子(LEDチップ)4の発光によって、第1の樹脂6に分散された蛍光体7が励起される構成なので、発光強度を向上させることができる。また、様々な発光色を呈するようにすることができる。さらに、白色発光の場合には、演色性を高くすることができる。
【0092】
「第二の実施形態」
本発明の発光装置の第二の実施形態として、基板実装用チップ型白色発光ダイオードランプ(LED照明装置:LEDデバイス)について説明する。
図2は、本発明の発光装置の第二の実施形態である基板実装用チップ型白色発光ダイオードランプ11の断面図である。
図2に示すように、基板実装用チップ型白色発光ダイオードランプ11は、可視光反射率の高い白色のアルミナセラミックスを用いたセラミックス基板19に第一のリードワイヤ12と、第二のリードワイヤ13が固定されており、それらの端12a、端13aは基板19のほぼ中央部に位置し、反対側の端12b、端13bはそれぞれ外部に出ていて、電気基板への実装時にはんだ付けされる電極となっている。第一のリードワイヤ12の端12aは、基板中央部となるように発光ダイオード素子(LEDチップ)4が蔵置され固定されている。発光ダイオード素子4の下部電極4aと第一のリードワイヤ12とは導電性ペーストによって電気的に接続されており、上部電極4bと第二のリードワイヤ13とがボンディングワイヤ(金細線)15によって電気的に接続されている。
【0093】
第一の樹脂(封止樹脂)16は、蛍光体17が分散している透明な樹脂であり、発光ダイオード素子4の全体を被覆している。また、セラミックス基板19上には、壁面部材20が固定されていて、壁面部材20の中央部には椀状の穴20aが形成されている。
穴20aは、発光ダイオード素子4及び蛍光体17を分散させた第一の樹脂16をおさめるものであり、中央に面した部分は、斜面20bとなっている。この斜面20bは光を前方に取り出すための反射面であって、その斜面20bの曲面形は光の反射方向を考慮して決定される。また、少なくとも反射面を構成する斜面20bは、白色または金属光沢を持った可視光線反射率の高い面となっている。
【0094】
壁面部材20は、例えば白色のシリコーン樹脂などで形成されていればよく、中央部の穴20aは、チップ型発光ダイオードランプの最終形状としては凹部を形成するが、ここには発光ダイオード素子4及び蛍光体17を分散させた第一の樹脂16のすべてを封止するようにして透明な第二の樹脂(別の封止樹脂)18を充填している。
第一の樹脂16と第二の樹脂18の材質は、シリコーン樹脂が好ましいが、ポリカーボネート樹脂、エポキシ樹脂等の他の樹脂あるいはガラス等の透明材料であっても良い。できるだけ紫外線光による劣化の少ない材料を選定することが好ましい。
第一の樹脂16と第二の樹脂18は、同じ樹脂を用いても良いし、異なる樹脂を用いても良いが、製造の容易さや接着性の良さなどから、同じ樹脂を用いるほうが好ましい。
発光ダイオード素子(LEDチップ)4の発光によって、第1の樹脂16に分散された蛍光体17が励起される構成なので、発光強度を向上させることができる。また、様々な発光色を呈するようにすることができる。さらに、白色発光の場合には、演色性を高くすることができる。
【0095】
「第三の実施形態」
本発明の発光装置の第二の実施形態として、基板実装用チップ型白色発光ダイオードランプ(LED照明装置:LEDデバイス)について説明する。
図3は、本発明の発光装置の第三の実施形態である基板実装用チップ型白色発光ダイオードランプ111の断面図である。
図3に示すように、基板実装用チップ型白色発光ダイオードランプ111は、可視光反射率の高い白色のアルミナセラミックスを用いたセラミックス基板19に第一のリードワイヤ12と、第二のリードワイヤ13が固定されており、それらの端12a、端13aは基板19のほぼ中央部に位置し、反対側の端12b、端13bはそれぞれ外部に出ていて、電気基板への実装時にはんだ付けされる電極となっている。第一のリードワイヤ12の端12aは、基板中央部となるように発光ダイオード素子(LEDチップ)24が蔵置され固定されている。
【0096】
なお、発光ダイオード素子24としては、350μm角の大きさの青色LEDチップが用いられ、第一のリードワイヤ(リード)12上に樹脂ペーストでダイボンドされている。また、リードワイヤ(リード)12、13としては、銀メッキを施された銅製のリードフレームが用いられ、基板19としては、ナイロン樹脂で成型したセラミックス基板が用いられている。
【0097】
発光ダイオード素子24は、一面側に2つの電極24c、24dが形成された発光素子が用いられており、一の電極24aと第一のリードワイヤ(リード)12とがボンディングワイヤ(金細線)15によって電気的に接続されており、他の電極24bと第二のリードワイヤ(リード)13とがボンディングワイヤ(金細線)15によって電気的に接続されている。
【0098】
第二の実施形態と同様に、壁面部材20が備えられている。蛍光体を含有させた第一の樹脂16を、発光ダイオード素子24を覆うように、かつ、壁面部材20の穴20aを埋めるように適量滴下され、これが硬化させて基板実装用チップ型白色発光ダイオードランプ(LED照明装置)(発光装置)とされている。
【0099】
なお、発光ダイオード素子24としては、350μm角の大きさの青色LEDチップを複数実装した発光装置パッケージを製作し、これをトリムして個片とした発光装置パッケージから色調、発光強度で選別し、製品としてもよい。
【0100】
発光ダイオード素子(LEDチップ)24の発光によって、第1の樹脂16に分散された蛍光体17が励起される構成なので、発光強度を向上させることができる。また、様々な発光色を呈するようにすることができる。さらに、白色発光の場合には、演色性を高くすることができる。
【0101】
「第四の実施形態」
本発明の発光装置の第四の実施形態として、基板実装用チップ型白色発光ダイオードランプ(LED照明装置:LEDデバイス)について説明する。
図4は、本発明の発光装置の第四の実施形態である基板実装用チップ型白色発光ダイオードランプ112の断面図である。
図4に示すように、基板実装用チップ型白色発光ダイオードランプ112は、蛍光体が分散されていない第二の樹脂18が設けられた他は第三の実施形態の発光装置111と同一の構成とされている。基板中央部に発光ダイオード素子(LEDチップ)24が蔵置され固定されている。なお、同一の部材については同一の符号を付して示している。
発光ダイオード素子(LEDチップ)24の発光によって、第1の樹脂(封止樹脂)16に分散された蛍光体17が励起される構成なので、発光強度を向上させることができる。また、様々な発光色を呈するようにすることができる。さらに、白色発光の場合には、演色性を高くすることができる。
【0102】
「第五の実施形態」
本発明の発光装置の第五の実施形態として、基板実装用チップ型白色発光ダイオードランプ(LED照明装置:LEDデバイス)について説明する。
図5は、本発明の発光装置の第五の実施形態である基板実装用チップ型白色発光ダイオードランプ113の断面図である。
図5に示すように、基板実装用チップ型白色発光ダイオードランプ113は、蛍光体23が発光ダイオード素子(LEDチップ)24の一面を覆うように直接付着されており、蛍光体が分散されていない第二の樹脂(別の封止樹脂)18が発光ダイオード素子24を覆うように、かつ、壁面部材20の穴20aを埋めるように形成されている他は、第三の実施形態の発光装置111と同一の構成とされている。基板中央部に発光ダイオード素子(LEDチップ)24が蔵置され固定されている。なお、同一の部材については同一の符号を付して示している。
発光ダイオード素子(LEDチップ)24の発光によって、発光ダイオード24の一面に形成された蛍光体23が励起される構成なので、発光強度を向上させることができる。また、様々な発光色を呈するようにすることができる。さらに、白色発光の場合には、演色性を高くすることができる。
【0103】
以下、第一の実施形態から第五の実施形態までの発光装置に共通する構成及び効果について説明する。
<発光光源>
発光光源(発光ダイオード素子4,24)は、330〜470nmの波長の光を発するものが望ましく、中でも、330〜420nmの紫外(または紫)発光素子または420〜470nmの青色発光素子が好ましい。
【0104】
<LEDチップ>
本発明の実施形態である発光装置1、11、111、112、113は、発光光源としてLEDチップを用いる構成なので、装置サイズを小さくすることができ、消費電力を抑えることができるほか、安価に大量に取り扱うことができる。
また、本発明の実施形態である蛍光体を含ませる構成なので、LEDが発する青色の光を励起光源として、一般的に発光強度が低い波長領域の発光強度を上げ、白色発光の演色性を向上させることができる。特に、演色性70以上のLED発光装置とすることができる。
【0105】
前記発光光源としてLEDチップを用いる場合は、発光効率の点からは窒化ガリウム系化合物半導体が好ましく用いられる。
LEDチップはMOCVD法やHVPE法等により基板上に窒化物系化合物半導体を形成させて得られ、好ましくはInαAlβGa1−α−βN(但し、0≦α、0≦β、α+β≦1)を発光層として形成させる。半導体の構造としては、MIS接合、PIN接合やpn接合などを有するホモ構造、ヘテロ構造あるいはダブルヘテロ構造のものが挙げられる。半導体層の材料やその混晶度によって発光波長を種々選択することができる。また、半導体活性層として量子効果が生ずる薄膜に形成させた単一量子井戸構造や多重量子井戸構造とすることもできる。
【0106】
LEDチップとして用いられる窒化ガリウム系化合物半導体は、2.4〜2.5程度の非常に高い屈折率を持つ。
そのため、前記発光光源として窒化ガリウム系化合物半導体を用いる場合は、高い屈折率を有する樹脂が求められる。蛍光体が含有される第1の樹脂は、この観点からも、高い屈折率を有する樹脂が好ましい。一方、発光素子からの光の取り出し効率を高めるためには、第1の樹脂の外側に配置される第2の樹脂は、第1の樹脂よりも低い屈折率の樹脂の使用が好ましい。
【0107】
<EL素子>
前記発光光源としてEL素子を用いる場合も、発光スペクトルが330nm〜470nmに発光可能なものであれば際限なく使用可能であり、したがって、無機、有機いずれのEL素子も使用可能である。
前記EL素子が無機ELである場合、薄膜型、分散型更に直流駆動型、交流駆動型のいずれであっても差し支えない。また、EL発光にあずかる蛍光体も、特に限定されないが、硫化物系が好適に用いられる。
前記EL素子が有機ELである場合、積層型、ドーピング型更に低分子系、高分子系いずれであっても差し支えない。
【0108】
本発明の実施形態である発光装置1、11、111、112、113において本発明の実施形態である蛍光体を単独で使用する方法の他に、他の発光特性を持つ蛍光体と併用することによって、所望の色を発する発光装置を構成することができる。
この一例として、330〜420nmの紫外LED発光素子と、この波長で励起され420nm以上480nm以下の波長に発光ピークを持つ青色蛍光体と、発光色を緑色に調整した本発明の実施形態である蛍光体と、赤色蛍光体との組み合わせがある。前記青色蛍光体としてはBaMgAl10O17:Eu等が、前記赤色蛍光体としてはCaAlSiN3:Eu等を挙げることができる。この構成では、LEDが発する紫外線が各蛍光体に照射されると、青、緑、赤の3色の光が同時に発せられ、これらの光が混合されて白色の発光装置となる。
また、本発明の実施形態である発光装置1、11、111、112、113は、330〜420nmの紫外LED発光素子と、BaMgAl10O17:Eu等の青色蛍光体と、発光色を青緑に調整した本発明の実施形態である蛍光体と、発光色を緑色に調整した本発明の実施形態である蛍光体もしくはβ―サイアロン蛍光体等の緑色蛍光体と、α−サイアロン等の黄色蛍光体と、CaAlSiN3:Eu等の赤色蛍光体とを組み合わせることにより、極めて演色性の高い発光装置とすることができる。
【0109】
また、本発明の実施形態である発光装置1、11、111、112、113は、420〜470nmの青色LED発光素子と蛍光体から構成される発光装置であって、発光色を緑色に調整した本発明の実施形態である蛍光体と、CaAlSiN3:Eu等の赤色蛍光体と、を組み合わせることによって、白色の発光装置となる。
また、本発明の実施形態である発光装置1、11、111、112、113は、420〜470nmの青色LED発光素子に、発光色を青緑に調整した本発明の実施形態である蛍光体、発光色を緑色に調整した本発明の実施形態である蛍光体もしくはβ―サイアロン蛍光体、もしくはCa3Sc2Si3O12:Ce等の緑色蛍光体、α−サイアロン、YAG:Ce等の黄色蛍光体、CaAlSiN3:Eu等の赤色蛍光体とを組み合わせることにより、極めて演色性の高い発光装置とすることができる。
【0110】
さらにまた、本発明の実施形態である発光装置1、11、111、112、113は、紫外光によっても励起することが可能な蛍光体と、その励起光源として、発光波長の最大強度が380〜410nmにあるLEDを構成要素として備えることができる構成なので、蛍光体の発する光のみを色として感知する有色のLEDデバイスをなすことができる。
例えば、青色、青緑色、緑色のLEDを作製することが可能である。また、本発明の実施形態である蛍光体は、発光特性の温度による影響も受けにくいが、このような蛍光体からの発光を用いた有色LEDは、特に緑色のLEDにおいて課題となっている電流値による波長のシフトが見られないため優れている。
【0111】
<発光装置の形態>
本発明の実施形態である発光装置1、11、111、112、113は、LEDチップを光源として使用する場合には、発光装置の形態が、砲弾型LEDデバイスまたは表面実装型LEDデバイスのいずれかであることが一般的である。これらの形態のデバイスは規格が確立されており広く使用されているので、産業的な使用が容易である。
更に、発光装置の形態が、配線された基板に直接LEDチップを実装したチップ・オン・ボードであっても良い。この場合には、用途にカスタマイズした形態をとることができ、温度特性に優れる本蛍光体の特性を生かした用途に使用することができるようになる。
【0112】
<樹脂部材>
本発明の実施形態である発光装置1、11、111、112、113は、LEDデバイスを構成するする樹脂部材のうち、少なくとも基板および/またはリフレクタ部に、樹脂製またはセラミクス製の部材を含むことが望ましい。
樹脂製の部材は、安価で大量に製造することができるので好適である。樹脂の種類としては、耐熱性が高く、反射率も高いものが望ましく、ナイロン樹脂などが望ましい。熱硬化性樹脂も、耐熱性の高いとともに、比較的安価で大量に製造することが可能であるので、好ましい。また、セラミクス製の部材も、耐熱性に非常に優れているので好ましい。
【0113】
<封止樹脂>
本発明の実施形態である発光装置1、11、111、112、113は、LEDチップを取り囲むように形成された封止樹脂の中に蛍光体を分散させる構成とすることができる。このような構成にする事で、発光装置の製造を安易することができる。
また、このLEDチップの封止樹脂が、少なくとも一部の領域にシリコーン樹脂を含むことが望ましい。シリコーン樹脂は短波長の光に対して耐性を持つので、短波長のLEDチップを封止するのに好適である。更に、樹脂が柔軟性を持つメチルシリコーン樹脂であることで、ボンディングワイヤの断裂を回避することができる。一方、剛性を持つフェニルシリコーン樹脂であっても良い。この場合、湿気などがチップに貫通することを防止し、高湿などの厳しい環境においての使用に際して好適である。
【0114】
<蛍光体分散方法>
本発明の実施形態である発光装置1、11、111、112、113においては、LEDチップの近傍が高密度になるように蛍光体を分散させていることが望ましい。LEDチップの近傍に蛍光体を配置することにより、蛍光体に効率的に励起光を導入させることができる。
また、本発明の実施形態である蛍光体は、他の蛍光体に比較して温度による特性の変化が少ないので、LEDチップの近傍に蛍光体を配置することで、LEDチップから発生する熱を受けて蛍光体の温度が上がってしまったとしても、特性の変化が小さくて済む。
LEDチップの近傍に蛍光体を配置する方法としては、LEDチップの近傍を蛍光体を含む第一の樹脂(封止樹脂)により封止し、その外周を第二の樹脂(別の封止樹脂)で封止する方法を採ることができる。この方法は安価で実施できるので望ましい。第一の樹脂は耐熱性の高いシリコーン樹脂を含むことが望ましい。
同様に、LEDチップの近傍に蛍光体を配置する方法としては、LEDチップに直接蛍光体を付着させる方法を採る事もできる。例えば、LEDチップの少なくとも一面を覆って直接蛍光体を付着させることができる。スピンコートや、蒸着、スパッタ法などを用いて、ウエーハの段階からLEDチップの少なくとも一面に層状に蛍光体を堆積させることができる。これらの方法によれば、蛍光体層を、制御して均一に形成させることができるので好適である。この場合、蛍光体層の厚みを1μmから100μmとすることで、蛍光体層を透過してLEDチップからの光を取り出すことができるので、混色して白色光を作り出すのに好適である。
【0115】
本発明の実施形態である発光装置1、11、111、112、113においては、使用する蛍光体の温度特性が良好であるため、大量の熱を発生する使用方法で使用することが望ましい。例えば、LEDデバイスが1パッケージ当り0.2W以上の電力を投入して使用される場合に望ましい。更に、含有されるLEDチップが、1パッケージ1個当りの平面面積密度にして1.5×104W/m2以上の電力を投入して使用される場合に望ましい。更には、5×104W/m2以上の電力を投入して使用される場合がより望ましい。
また、一般的には、大きな電力を投入して使用する場合とは、LEDデバイスに含まれるLEDチップが一辺350μm角の面積よりも大きい場合、複数のLEDチップが含まれる場合、LEDチップがフリップチップである場合などが想定される。
【0116】
本発明の実施形態である発光装置1、11、111、112、113は、紫外光によっても励起が可能な構成なので、数種類の蛍光体からの発光を混色することにより白色LEDとすることができる。この場合、本発明の実施形態である蛍光体によって、青、緑のどちらか一方あるいはその両方の発色を行うことが可能であるが、これら以外に赤色を呈する蛍光体を含有させる必要がある。このような3色の混色によって形成される白色は、演色性を良好とすることができる。
また、緑のみを本発明の実施形態である蛍光体とし、励起光と青色の発色をLEDからの発光で行わせることもできる。
更に、組成を異とした2種類以上の本発明の実施形態である蛍光体が含ませることができる構成なので、発光されるスペクトルを、演色性に優れる、連続したスペクトルの発光とすることができる。
更に、組成を段階的に変化させた蛍光体群を含有させることで、望むような連続スペクトルを形成することもできる。さらに、合成された発光スペクトルの半値幅が、100nm以上とされていることで、良好な演色性を得ることができる。
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明する。しかし、本発明はこれらの実施例にのみ限定されるものではない。
【実施例】
【0117】
<実施例1〜7>
まず、実施例1〜7の蛍光体の製造方法について説明する。
原料粉末は、平均粒径0.5μm、酸素含有量0.93質量%、α型含有率92%の窒化ケイ素粉末(Si3N4)、窒化アルミニウム粉末(AlN)、SrSi2粉末、酸化ストロンチウム粉末(SrO)、酸化ユーロピウム粉末(Eu2O3)を用いた。
一般式(A1−xRx)mSi6n−5m−sAl7m−4n+sOsNm+4n−sにおいて、表1に示すm,n,s,xの値となるように、表2に示す配合(質量比、以下、他の実施例においても同様)で上記原料粉末を秤量し、メノウ乳棒と乳鉢で30分間混合を行なった。尚、RはEuとした。
【0118】
【表1】
【0119】
【表2】
【0120】
得られた混合粉末をアルミニウム製の金型に入れて嵩密度約25%の成形体を作製し、窒化ホウ素(hBN)製のるつぼに充填した。前記成形体の体積とルツボ体積の比率は、約80%とした。
【0121】
この混合粉末を充填した前記窒化ホウ素製のるつぼを、炭素繊維成形体を断熱材とした黒鉛抵抗加熱方式の電気炉にセットした。
焼成は、まず、拡散ポンプにより焼成雰囲気を真空とし、室温から1000℃まで毎時500℃の速度で加熱し、1000℃で純度が99.999体積%の窒素を導入して、圧力を0.9MPaとし、毎時600℃で1900℃まで昇温し、1900℃で2時間保持して行った。
焼成後、この得られた焼成体(焼成塊)を粗粉砕の後、窒化ケイ素焼結体製の乳鉢を用いて手で粉砕し、30μmの目のふるいを用いて、平均粒径11μmの蛍光体粉末(実施例1〜7)とした。
【0122】
次に、これらの蛍光体粉末(実施例1〜7)の発光スペクトルおよび励起スペクトルを、蛍光分光光度計を用いて測定した。
図6は、実施例6の蛍光体の発光スペクトルおよび励起スペクトルの測定結果である。図6に示すように、実施例6の蛍光体の励起スペクトルのピーク波長は370nmであり、450nmの青色光励起による発光スペクトルのピーク波長は504nmであった。また、ピーク波長の発光強度は100カウントであった。
【0123】
これらの蛍光体粉末(実施例1〜7)の発光ピークの発光強度及び発光波長を表2に示す。なお、発光強度のカウント値は任意単位であり、測定装置や条件によって変化する(以下、同じ)。
【0124】
図7は、実施例6の蛍光体の粉末X線回折パターンの測定結果である。図7に示すように、主要回折ピークからなる粉末X線回折パターンが得られた。
実施例1〜5、実施例7の蛍光体においても、実施例6と同様に、主要回折ピークからなる粉末X線回折パターンが得られた。
これらの蛍光体粉末(実施例1〜7)を湿度80%温度80℃の条件で100時間暴露させたが、輝度の低下はほとんど見られなかった。
【0125】
次に、これらの蛍光体粉末(実施例1〜7)に、必要に応じて365nmの紫外線を照射しながら光学顕微鏡観察を行った。
試料の体色、粒子形状並びに紫外線照射時の発光色から、β―サイアロン、未反応の窒化ケイ素或いは窒化アルミニウム、酸窒化物ガラス、SrSiAl2N2O3、Sr2Al2Si10N14O4、SrSi(10−n)Al(18+n)OnN(32−n)(n〜1)、SrSi6N8から選ばれる一種以上からなる非発光相もしくは504nm付近の青緑とは異なる発光を示す結晶相の割合は、体積比で20%以下であることを確認した。
【0126】
<実施例8〜14>
本発明の蛍光体の実施例8〜14について説明する。
原料粉末は、平均粒径0.5μm、酸素含有量0.93質量%、α型含有率92%の窒化ケイ素粉末(Si3N4)、窒化アルミニウム粉末(AlN)、SrSi2粉末、酸化ストロンチウム粉末(SrO)、酸化ユーロピウム粉末(Eu2O3)を用いた。
一般式(A1−xRx)mSi6n−5m−sAl7m−4n+sOsNm+4n−sにおいて、表3に示すm,n,s,xの値となるように、表4に示す配合(質量比、以下、他の実施例においても同様)で上記原料粉末を秤量し、メノウ乳棒と乳鉢で30分間混合を行なった。尚、RはEuとした。
【0127】
【表3】
【0128】
【表4】
【0129】
得られた混合粉末をアルミニウム製の金型に入れて嵩密度約26%の成形体を作製し、窒化ホウ素製のるつぼに充填した。成形体体積とルツボ体積の比率は、約80%とした。
【0130】
この混合粉末を充填した窒化ホウ素製るつぼを、炭素繊維成形体を断熱材とした黒鉛抵抗加熱方式の電気炉にセットした。
焼成は、まず、拡散ポンプにより焼成雰囲気を真空とし、室温から1000℃まで毎時500℃の速度で加熱し、1000℃で純度が99.999体積%の窒素を導入して圧力を0.9MPaとし、毎時600℃で1900℃まで昇温し、1900℃で2時間保持して行った。
焼成後、この得られた焼成体を粗粉砕の後、窒化ケイ素焼結体製の乳鉢を用いて手で粉砕し、30μmの目のふるいを用いて、平均粒径12μmの蛍光体粉末(実施例8〜14)とした。
【0131】
まず、これらの蛍光体粉末(実施例8〜14)の発光スペクトルおよび励起スペクトルを、蛍光分光光度計を用いて測定した。
図8は、実施例8の蛍光体の発光スペクトルおよび励起スペクトルの測定結果である。図8に示すように、実施例8の蛍光体の励起スペクトルのピーク波長は366nmであり、発光スペクトルのピーク波長は496nmであった。
【0132】
図9は、実施例9の蛍光体の発光スペクトルおよび励起スペクトルの測定結果である。図9に示すように、実施例9の蛍光体の励起スペクトルのピーク波長は372nmであり、発光スペクトルのピーク波長は497nmであった。
【0133】
図10は、実施例10の蛍光体の発光スペクトルおよび励起スペクトルの測定結果である。図10に示すように、実施例10の蛍光体の励起スペクトルのピーク波長は379nmであり、発光スペクトルのピーク波長は504nmであった。
【0134】
図11は、実施例11の蛍光体の発光スペクトルおよび励起スペクトルの測定結果である。図11に示すように、実施例11の蛍光体の励起スペクトルのピーク波長は375nmであり、発光スペクトルのピーク波長は508nmであった。
【0135】
図12は、実施例12の蛍光体の発光スペクトルおよび励起スペクトルの測定結果である。図12に示すように、実施例12の蛍光体の励起スペクトルのピーク波長は397nmであり、発光スペクトルのピーク波長は511nmであった。
【0136】
図13は、実施例13の蛍光体の発光スペクトルおよび励起スペクトルの測定結果である。図13に示すように、実施例13の蛍光体の励起スペクトルのピーク波長は411nmであり、発光スペクトルのピーク波長は518nmであった。
【0137】
図14は、実施例14の蛍光体の発光スペクトルおよび励起スペクトルの測定結果である。図14に示すように、実施例14の蛍光体の励起スペクトルのピーク波長は440nmであり、発光スペクトルのピーク波長は522nmであった。
【0138】
蛍光体粉末(実施例8〜14)の発光ピークの発光強度及び発光波長を表4に示す。なお、発光強度のカウント値は任意単位である。
【0139】
これらの蛍光体粉末(実施例8〜14)を湿度80%温度80℃の条件で100時間暴露させたところ、輝度の低下はほとんど見られなかった。
【0140】
次に、これらの蛍光体粉末(実施例8〜14)に、必要に応じて365nmの紫外線を照射しながら光学顕微鏡観察を行った。
試料の体色、粒子形状並びに紫外線照射時の発光色から、β―サイアロン、未反応の窒化ケイ素或いは窒化アルミニウム、酸窒化物ガラス、SrSiAl2N2O3、Sr2Al2Si10N14O4、SrSi(10−n)Al(18+n)OnN(32−n)(n〜1)、SrSi6N8から選ばれる一種以上からなる非発光相もしくは500〜520nm付近の青緑とは異なる発光を示す結晶相の割合は、体積比で20%以下であることを確認した。
【0141】
<実施例15〜21>
本発明の蛍光体の実施例15〜21について説明する。
原料粉末は、平均粒径0.5μm、酸素含有量0.93質量%、α型含有率92%の窒化ケイ素粉末(Si3N4)、窒化アルミニウム粉末(AlN)、SrSi2粉末、酸化ストロンチウム粉末(SrO)、酸化ユーロピウム粉末(Eu2O3)を用いた。
一般式(A1−xRx)mSi6n−5m−sAl7m−4n+sOsNm+4n−sにおいて、表5に示すm,n,s,xの値となるように、表6に示す配合(質量比、以下、他の実施例においても同様)で上記原料粉末を秤量し、メノウ乳棒と乳鉢で30分間混合を行なった。尚、RはEuとした。
【0142】
【表5】
【0143】
【表6】
【0144】
得られた混合粉末を、アルミニウム製の金型に入れて嵩密度約24%の成形体を作製し、窒化ホウ素製のるつぼに充填した。成形体体積とルツボ体積の比率は、約80%とした。
【0145】
この混合粉末を充填した窒化ホウ素製るつぼを、炭素繊維成形体を断熱材とした黒鉛抵抗加熱方式の電気炉にセットした。
焼成は、まず、拡散ポンプにより焼成雰囲気を真空とし、室温から1000℃まで毎時500℃の速度で加熱し、1000℃で純度が99.999体積%の窒素を導入して圧力を0.9MPaとし、毎時600℃で1900℃まで昇温し、1900℃で2時間保持して行った。
焼成後、この得られた焼成体を粗粉砕の後、窒化ケイ素焼結体製の乳鉢を用いて手で粉砕し、30μmの目のふるいを用いて、平均粒径12μmの蛍光体粉末(実施例15〜21)とした。
【0146】
まず、これらの蛍光体粉末(実施例15〜21)の発光スペクトルおよび励起スペクトルを、蛍光分光光度計を用いて測定した。
各蛍光体の励起スペクトルのピーク波長は370nm付近であり、450nmの青色光励起により、青緑色から緑色の発光を示した。蛍光体粉末(実施例15〜21)の発光ピークの発光強度及び発光波長を表6に示す。なお、発光強度のカウント値は任意単位である。
【0147】
この蛍光体粉末(実施例15〜21)を湿度80%温度80℃の条件で100時間暴露させたところ、輝度の低下はほとんど見られなかった。
【0148】
次に、これらの蛍光体粉末(実施例15〜21)に、必要に応じて365nmの紫外線を照射しながら光学顕微鏡観察を行った。
試料の体色、粒子形状並びに紫外線照射時の発光色から、β―サイアロン、未反応の窒化ケイ素或いは窒化アルミニウム、酸窒化物ガラス、SrSiAl2N2O3、Sr2Al2Si10N14O4、SrSi(10−n)Al(18+n)OnN(32−n)(n〜1)、SrSi6N8から選ばれる一種以上からなる非発光相もしくは504nm付近の青緑とは異なる発光を示す結晶相の割合は、体積比で20%以下であることを確認した。
【0149】
<実施例22>
本発明の蛍光体の実施例22について説明する。
原料粉末は、平均粒径0.5μm、酸素含有量0.93質量%、α型含有率92%の窒化ケイ素粉末(Si3N4)、窒化アルミニウム粉末(AlN)、酸化アルミニウム粉末(Al2O3)、Sr2Si5N8粉末、Eu2Si5N8粉末を用いた。
一般式(A1−xRx)mSi6n−5m−sAl7m−4n+sOsNm+4n−sにおいて、表7に示すm,n,s,xの値となるように、表8に示す配合(質量比、以下、他の実施例においても同様)で上記原料粉末を秤量し、メノウ乳棒と乳鉢で30分間混合を行なった。尚、RはEuとした。
【0150】
【表7】
【0151】
【表8】
【0152】
得られた混合粉末を、アルミニウム製の金型に入れて嵩密度約25%の成形体を作製し、窒化ホウ素製のるつぼに充填した。成形体体積とルツボ体積の比率は、約80%とした。なお、粉末の秤量、混合、成形の各工程は全て、大気中で操作を行った。
【0153】
この混合粉末を充填した窒化ホウ素製るつぼを、炭素繊維成形体を断熱材とした黒鉛抵抗加熱方式の電気炉にセットした。
焼成は、まず、拡散ポンプにより焼成雰囲気を真空とし、室温から1000℃まで毎時500℃の速度で加熱し、1000℃で純度が99.999体積%の窒素を導入して圧力を0.9MPaとし、毎時600℃で1900℃まで昇温し、1900℃で2時間保持して行った。
焼成後、この得られた焼成体を粗粉砕の後、窒化ケイ素焼結体製の乳鉢を用いて手で粉砕し、30μmの目のふるいを用いて、平均粒径12μmの蛍光体粉末とした。
【0154】
まず、この蛍光体粉末(実施例22)の発光スペクトルおよび励起スペクトルを、蛍光分光光度計を用いて測定した。
この蛍光体の励起スペクトルのピーク波長は370nmであり、450nmの青色光励起により、青緑色の発光を示した。蛍光体粉末(実施例22)の発光ピークの発光強度及び発光波長を表8に示す。なお、発光強度のカウント値は任意単位である。
【0155】
この蛍光体粉末(実施例22)を湿度80%温度80℃の条件で100時間暴露させたところ、輝度の低下はほとんど見られなかった。
【0156】
次に、蛍光体粉末(実施例22)に、必要に応じて365nmの紫外線を照射しながら光学顕微鏡観察を行った。
試料の体色、粒子形状並びに紫外線照射時の発光色から、β―サイアロン、未反応の窒化ケイ素或いは窒化アルミニウム、酸窒化物ガラス、SrSiAl2N2O3、Sr2Al2Si10N14O4、SrSi(10−n)Al(18+n)OnN(32−n)(n〜1)、SrSi6N8から選ばれる一種以上からなる非発光相もしくは504nm付近の青緑とは異なる発光を示す結晶相の割合は、体積比で20%以下であることを確認した。
【0157】
<実施例23>
本発明の蛍光体の実施例23について説明する。
原料粉末は、平均粒径0.5μm、酸素含有量0.93質量%、α型含有率92%の窒化ケイ素粉末(Si3N4)、窒化アルミニウム粉末(AlN)、CaSi2粉末、酸化カルシウム粉末(CaO)、酸化ユーロピウム粉末(Eu2O3)を用いた。
一般式(A1−xRx)mSi6n−5m−sAl7m−4n+sOsNm+4n−sにおいて、表9に示すm,n,s,xの値となるように、表10に示す配合(質量比、以下、他の実施例においても同様)で上記原料粉末を秤量し、メノウ乳棒と乳鉢で30分間混合を行なった。尚、RはEuとした。
【0158】
【表9】
【0159】
【表10】
【0160】
得られた混合粉末を、アルミニウム製の金型に入れて嵩密度約23%の成形体を作製し、窒化ホウ素製のるつぼに充填した。成形体体積とルツボ体積の比率は、約80%とした。なお、粉末の秤量、混合、成形の各工程は全て、大気中で操作を行った。
【0161】
この混合粉末を充填した窒化ホウ素製るつぼを、炭素繊維成形体を断熱材とした黒鉛抵抗加熱方式の電気炉にセットした。
焼成は、まず、拡散ポンプにより焼成雰囲気を真空とし、室温から1000℃まで毎時500℃の速度で加熱し、1000℃で純度が99.999体積%の窒素を導入して圧力を0.9MPaとし、毎時600℃で1900℃まで昇温し、1900℃で2時間保持して行った。
焼成後、この得られた焼成体を粗粉砕の後、窒化ケイ素焼結体製の乳鉢を用いて手で粉砕し、30μmの目のふるいを用いて、平均粒径11μmの蛍光体粉末(実施例23)とした。
【0162】
まず、この蛍光体粉末(実施例23)の発光スペクトルおよび励起スペクトルを、蛍光分光光度計を用いて測定した。
この蛍光体の励起スペクトルのピーク波長は380nm付近であり、450nmの青色光励起により、緑色から黄緑色の発光を示した。蛍光体粉末(実施例23)の発光ピークの発光強度及び発光波長を表10に示す。なお、発光強度のカウント値は任意単位である。
【0163】
この蛍光体粉末(実施例23)を湿度80%温度80℃の条件で100時間暴露させたところ、輝度の低下はほとんど見られなかった。
【0164】
次に、蛍光体粉末(実施例23)に、必要に応じて365nmの紫外線を照射しながら光学顕微鏡観察を行った。
試料の体色、粒子形状並びに紫外線照射時の発光色から、β―サイアロン、未反応の窒化ケイ素或いは窒化アルミニウム、酸窒化物ガラス、SrSiAl2N2O3、Sr2Al2Si10N14O4、SrSi(10−n)Al(18+n)OnN(32−n)(n〜1)、SrSi6N8から選ばれる一種以上からなる非発光相もしくは550nm付近の緑から黄緑とは異なる発光を示す結晶相の割合は、体積比で20%以下であることを確認した。
【0165】
<実施例24>
本発明の蛍光体の実施例24について説明する。
原料粉末は、平均粒径0.5μm、酸素含有量0.93質量%、α型含有率92%の窒化ケイ素粉末(Si3N4)、窒化アルミニウム粉末(AlN)、BaSi2粉末、酸化バリウム粉末(BaO)、酸化ユーロピウム粉末(Eu2O3)を用いた。
一般式(A1−xRx)mSi6n−5m−sAl7m−4n+sOsNm+4n−sにおいて、表11に示すm,n,s,xの値となるように、表12に示す配合(質量比、以下、他の実施例においても同様)で上記原料粉末を秤量し、メノウ乳棒と乳鉢で30分間混合を行なった。尚、RはEuとした。
【0166】
【表11】
【0167】
【表12】
【0168】
得られた混合粉末を、アルミニウム製の金型に入れて嵩密度約24%の成形体を作製し、窒化ホウ素製のるつぼに充填した。成形体体積とルツボ体積の比率は、約80%とした。なお、粉末の秤量、混合、成形の各工程は全て、大気中で操作を行った。
【0169】
この混合粉末を充填した窒化ホウ素製るつぼを炭素繊維成形体を断熱材とした黒鉛抵抗加熱方式の電気炉にセットした。
焼成は、まず、拡散ポンプにより焼成雰囲気を真空とし、室温から1000℃まで毎時500℃の速度で加熱し、1000℃で純度が99.999体積%の窒素を導入して圧力を0.9MPaとし、毎時600℃で1900℃まで昇温し、1900℃で2時間保持して行った。
焼成後、この得られた焼成体を粗粉砕の後、窒化ケイ素焼結体製の乳鉢を用いて手で粉砕し、30μmの目のふるいを用いて、平均粒径12μmの蛍光体粉末(実施例24)とした。
【0170】
まず、この蛍光体粉末(実施例24)の発光スペクトルおよび励起スペクトルを、蛍光分光光度計を用いて測定した。
各蛍光体の励起スペクトルのピーク波長は360nm付近であり、400nmの近紫外光励起により、緑青色の発光を示した。蛍光体粉末(実施例24)の発光ピークの発光強度及び発光波長を表12に示す。なお、発光強度のカウント値は任意単位である。
【0171】
この蛍光体粉末(実施例24)を湿度80%温度80℃の条件で100時間暴露させたところ、輝度の低下はほとんど見られなかった。
【0172】
次に、蛍光体粉末(実施例24)に、必要に応じて365nmの紫外線を照射しながら光学顕微鏡観察を行った。
試料の体色、粒子形状並びに紫外線照射時の発光色から、β―サイアロン、未反応の窒化ケイ素或いは窒化アルミニウム、酸窒化物ガラス、SrSiAl2N2O3、Sr2Al2Si10N14O4、SrSi(10−n)Al(18+n)OnN(32−n)(n〜1)、SrSi6N8から選ばれる一種以上からなる非発光相もしくは470nm付近の緑青とは異なる発光を示す結晶相の割合は、体積比で20%以下であることを確認した。
【0173】
<実施例25>
本発明の蛍光体の実施例25について説明する。
原料粉末は、平均粒径0.5μm、酸素含有量0.93質量%、α型含有率92%の窒化ケイ素粉末(Si3N4)、窒化アルミニウム粉末(AlN)、酸化アルミニウム粉末(Al2O3)、LaSi3N5粉末、CeSi3N5粉末を用いた。
一般式(A1−xRx)mSi6n−5m−sAl7m−4n+sOsNm+4n−sにおいて、表13に示すm,n,s,xの値となるように、表14に示す配合(質量比、以下、他の実施例においても同様)で上記原料粉末を秤量し、メノウ乳棒と乳鉢で30分間混合を行なった。尚、RはCeとした。
【0174】
【表13】
【0175】
【表14】
【0176】
得られた混合粉末を、アルミニウム製の金型に入れて嵩密度約23%の成形体を作製し、窒化ホウ素製のるつぼに充填した。成形体体積とルツボ体積の比率は、約80%とした。
【0177】
この混合粉末を充填した窒化ホウ素製るつぼを、炭素繊維成形体を断熱材とした黒鉛抵抗加熱方式の電気炉にセットした。
焼成は、まず、拡散ポンプにより焼成雰囲気を真空とし、室温から1000℃まで毎時500℃の速度で加熱し、1000℃で純度が99.999体積%の窒素を導入して圧力を0.9MPaとし、毎時600℃で1900℃まで昇温し、1900℃で2時間保持して行った。
焼成後、この得られた焼成体を粗粉砕の後、窒化ケイ素焼結体製の乳鉢を用いて手で粉砕し、30μmの目のふるいを用いて、平均粒径11μmの蛍光体粉末(実施例25)とした。
【0178】
まず、これらの蛍光体粉末(実施例25)の発光スペクトルおよび励起スペクトルを、蛍光分光光度計を用いて測定した。
各蛍光体の励起スペクトルのピーク波長は370nmであり、400nmの近紫外光励起により、青色の発光を示した。蛍光体粉末(実施例25)の発光ピークの発光強度及び発光波長を表14に示す。なお、発光強度のカウント値は任意単位である。
【0179】
この蛍光体粉末(実施例25)を湿度80%温度80℃の条件で100時間暴露させたところ、輝度の低下はほとんど見られなかった。
【0180】
次に、蛍光体粉末(実施例25)に、必要に応じて365nmの紫外線を照射しながら光学顕微鏡観察を行った。
試料の体色、粒子形状並びに紫外線照射時の発光色から、β―サイアロン、未反応の窒化ケイ素或いは窒化アルミニウム、酸窒化物ガラス、SrSiAl2N2O3、Sr2Al2Si10N14O4、SrSi(10−n)Al(18+n)OnN(32−n)(n〜1)、SrSi6N8から選ばれる一種以上からなる非発光相もしくは450nm付近の青とは異なる発光を示す結晶相の割合は、体積比で20%以下であることを確認した。
【0181】
<実施例26〜30>
実施例1と同様にして得た焼成塊をメノウ乳棒と乳鉢で解砕し、篩分級或いは水簸分級を行い、表15に示す、所望の平均粒径と平均アスペクト比を有する蛍光体粉末(実施例実施例26〜30)を作製した。
得られた蛍光体粉末(実施例26〜30)を、ニーダーを用いてシリコーン樹脂に10質量%分散し、同樹脂の断面を用いて発光強度と樹脂への分散性を評価した。尚、発光強度は、最大の値を100として規格化した。また、樹脂への分散性は、樹脂と粉末粒子との界面に空隙が認められる粉末粒子の割合で評価した。空隙が認められる粒子割合が少ないほど、分散性は良好であることを示す。
【0182】
【表15】
【0183】
<実施例31〜32>
実施例6の組成に、外割で0.5質量%のフッ化リチウム粉末を添加した以外は、実施例1と同様にして作製した蛍光体粉末(実施例31)と、使用する坩堝を黒鉛製として作製した蛍光体粉末(実施例32)について、発光強度とフッ素量、ホウ素量を調べた。尚、発光強度は、実施例6の発光強度を100として規格化した。また、黒鉛製ルツボを使用した試料の表面は炭化珪素化していたため、表面の炭化珪素層を除去して評価を行った。
【0184】
【表16】
【0185】
<実施例33>
実施例6と同様にして得られた粉末を水簸分級し、平均粒径1.3μmの蛍光体粉末を得た。この粉末を、種子として、実施例6の組成に対して外割で2質量%添加し、実施例6と同様にして蛍光体粉末(実施例33)を合成した。
この蛍光体粉末(実施例33)に、紫外線ランプで波長365nmの光を照射した結果、青緑色に発光することを確認した。
蛍光体粉末(実施例33)の発光スペクトルおよび励起スペクトルを、蛍光分光光度計を用いて測定した結果、励起スペクトルのピーク波長は370nmであり、450nmの青色光励起による発光スペクトルのピーク波長は504nm(青緑色)であった。また、実施例6の発光強度を100として規格化すると、発光ピーク波長の発光強度は108カウントであった。
次に、メノウの乳鉢を用いて粉砕し、CuのKα線を用いた粉末X線回折測定を行った結果、実施例6と同様の主要回折ピークからなる粉末X線回折パターンが得られた。
【0186】
<実施例34>
実施例22と同一の組成比となるよう、原料粉末を合計100g秤取し、エタノールを混合溶媒として、湿式ボールミルで2時間の混合を行い、300cps程度の粘度を持つスラリーを得た。尚、混合溶媒としては、ヘキサン等を用いても差し支えない。
続いて、得られたスラリーを、有機溶媒に対応したスプレードライヤーを用いて噴霧乾燥し、顆粒状の混合粉末とした。
【0187】
得られた混合粉末を、アルミニウム製の金型に入れて嵩密度約24%の成形体を作製し、窒化ホウ素製のるつぼに充填した。成形体体積とルツボ体積の比率は、約80%とした。なお、粉末の秤量、混合、成形の各工程は全て、大気中で操作を行った。
【0188】
この混合粉末を充填した窒化ホウ素製るつぼを、炭素繊維成形体を断熱材とした黒鉛抵抗加熱方式の電気炉にセットした。
焼成は、まず、拡散ポンプにより焼成雰囲気を真空とし、室温から1000℃まで毎時500℃の速度で加熱し、1000℃で純度が99.999体積%の窒素を導入して圧力を0.9MPaとし、毎時600℃で1900℃まで昇温し、1900℃で2時間保持して行った。
焼成後、この得られた焼成体を粗粉砕の後、窒化ケイ素焼結体製の乳鉢を用いて手で粉砕し、30μmの目のふるいを用いて、平均粒径11μmの蛍光体粉末(実施例34)とした。
【0189】
この蛍光体粉末(実施例34)に、紫外線ランプで波長365nmの光を照射した結果、青緑色に発光することを確認した。
蛍光体粉末(実施例34)の発光スペクトルおよび励起スペクトルを、蛍光分光光度計を用いて測定した結果、励起スペクトルのピーク波長は370nmであり、450nmの青色光励起による発光スペクトルのピーク波長は504nm(青緑色)であった。また、実施例70の発光強度を100として規格化すると、発光ピーク波長の発光強度は107カウントであった。
次に、メノウの乳鉢を用いて粉砕し、CuのKα線を用いた粉末X線回折測定を行った結果、実施例1と同様の主要回折ピークからなる粉末X線回折パターンが得られた。
【0190】
<実施例35>
実施例22で用いた原料粉末を、アルミニウム製の金型に入れて嵩密度約25%の成形体を作製し、窒化ホウ素製のるつぼに充填した。成形体体積とルツボ体積の比率は、約80%とした。なお、粉末の秤量、混合、成形の各工程は全て、大気中で操作を行った。
【0191】
この混合粉末を充填した窒化ホウ素製るつぼを、アルミナ繊維成形体を断熱材としたランタンクロマイト抵抗加熱方式の電気炉にセットした。尚、本実施例で使用した電気炉チャンバー内には、炭素を含む材料は一切用いられていない。
焼成は、まず、拡散ポンプにより焼成雰囲気を真空とし、室温から1000℃まで毎時100℃の速度で加熱し、1000℃で純度が99.999体積%の窒素を導入して圧力を0.9MPaとし、毎時100℃で1900℃まで昇温し、1900℃で2時間保持して行った。
焼成後、この得られた焼成体を粗粉砕の後、窒化ケイ素焼結体製の乳鉢を用いて手で粉砕し、30μmの目のふるいを用いて、平均粒径12μmの蛍光体粉末(実施例35)とした。
【0192】
この蛍光体粉末(実施例35)に、紫外線ランプで波長365nmの光を照射した結果、青緑色に発光することを確認した。
蛍光体粉末(実施例35)の発光スペクトルおよび励起スペクトルを、蛍光分光光度計を用いて測定した結果、励起スペクトルのピーク波長は370nmであり、450nmの青色光励起による発光スペクトルのピーク波長は504nm(青緑色)であった。また、実施例22の発光強度を100として規格化すると、発光ピーク波長の発光強度は78カウントであった。
次に、メノウの乳鉢を用いて粉砕し、CuのKα線を用いた粉末X線回折測定を行った結果、実施例6と同様の主要回折ピークからなる粉末X線回折パターンが得られた。
【0193】
<実施例36〜40>
実施例22と同一の組成を持つ混合粉末を、表17に示す嵩密度と充填率となるよう窒化ホウ素製のるつぼに充填した。なお、粉末の秤量、混合、成形の各工程は全て、大気中で操作を行った。
混合粉末を充填した窒化ホウ素製るつぼを、炭素繊維成形体を断熱材とした黒鉛抵抗加熱方式の電気炉にセットした。
焼成は、まず、拡散ポンプにより焼成雰囲気を真空とし、室温から1000℃まで毎時600℃の速度で加熱し、1000℃で純度が99.999体積%の窒素を導入して圧力を0.9MPaとし、毎時600℃で1900℃まで昇温し、1900℃で2時間保持して行った。
焼成後、この得られた焼成体を粗粉砕の後、窒化ケイ素焼結体製の乳鉢を用いて手で粉砕し、30μmの目のふるいを用いて、平均粒径12μm程度の蛍光体粉末(実施例36〜40)とした。
【0194】
これらの蛍光体粉末(実施例36〜40)に、紫外線ランプで波長365nmの光を照射した結果、青緑色に発光することを確認した。
蛍光体粉末(実施例36〜40)の発光スペクトルおよび励起スペクトルを、蛍光分光光度計を用いて測定した結果、励起スペクトルのピーク波長は370nmであり、450nmの青色光励起による発光スペクトルのピーク波長は504nm(青緑色)であった。これらの蛍光体粉末(実施例36〜40)の発光強度は、実施例22の発光強度を100として規格化した。
【0195】
【表17】
【0196】
<実施例41〜42>
実施例22で得られた蛍光体粉末を、表18に示す材質からなるボールミルを用いて、平均粒径が5μm以下となるよう、エタノールを溶媒とした粉砕を行った。得られたスラリーを蒸発乾固した後、実施例42の試料は塩酸洗浄を施し、更に蒸発乾固し、窒化ホウ素製のるつぼに充填した。
【0197】
試料を充填した窒化ホウ素製るつぼを、炭素繊維成形体を断熱材とした黒鉛抵抗加熱方式の電気炉にセットした。
焼成は、まず、拡散ポンプにより焼成雰囲気を真空とし、室温から1000℃まで毎時600℃の速度で加熱し、1000℃で純度が99.999体積%の窒素を導入して圧力を0.9MPaとし、毎時600℃で1900℃まで昇温し、1900℃で2時間保持して行った。
焼成後、この得られた焼成体を粗粉砕の後、窒化ケイ素焼結体製の乳鉢を用いて手で粉砕し、30μmの目のふるいを用いて、平均粒径12μm程度の蛍光体粉末(実施例41〜42)とした。
【0198】
これらの蛍光体粉末(実施例41〜42)に、紫外線ランプで波長365nmの光を照射した結果、青緑色に発光することを確認した。
蛍光体粉末(実施例41〜42)の発光スペクトルおよび励起スペクトルを、蛍光分光光度計を用いて測定した結果、励起スペクトルのピーク波長は370nmであり、450nmの青色光励起による発光スペクトルのピーク波長は504nm(青緑色)であった。これらの蛍光体粉末(実施例41〜42)の発光強度は、実施例22の発光強度を100として規格化した。
【0199】
【表18】
【0200】
<実施例43〜44>
実施例22で得られた蛍光体粉末を窒化ホウ素製のるつぼに充填し、試料を充填した窒化ホウ素製るつぼを、炭素繊維成形体を断熱材とした黒鉛抵抗加熱方式の熱間静水圧加圧装置にセットした。
その後、雰囲気圧力;30MPa、焼成温度;2000℃の条件(実施例43)または雰囲気圧力;50MPa、焼成温度2100℃の条件(実施例44)で加熱を行った
。尚、焼成雰囲気は窒素雰囲気とした。
焼成後、この得られた焼成体を粗粉砕の後、窒化ケイ素焼結体製の乳鉢を用いて手で粉砕し、30μmの目のふるいを用いて、平均粒径11μm程度の蛍光体粉末(実施例43〜44)とした。
【0201】
これらの蛍光体粉末(実施例43〜44)に、紫外線ランプで波長365nmの光を照射した結果、青緑色に発光することを確認した。
蛍光体粉末(実施例43〜44)の発光スペクトルおよび励起スペクトルを、蛍光分光光度計を用いて測定した結果、励起スペクトルのピーク波長は370nmであり、450nmの青色光励起による発光スペクトルのピーク波長は504nm(青緑色)であった。これらの蛍光体粉末(実施例43〜44)の発光強度は、実施例22の発光強度を100として規格化した。
【0202】
【表19】
【0203】
<実施例45>
実施例22で得られた蛍光体粉末5.0gを、テトラエトキシシラン1.0gを溶解したイソプロピルアルコール50mlと蒸留水20mlの混合液に良く分散させた。分散液を良く撹拌しながら、15%アンモニア水溶液50mlを滴下し、その後、撹拌しながら加熱還流を2時間行った。得られたスラリーを濾過、洗浄、乾燥し、窒素雰囲気中、600℃で仮焼し、アモルファスシリカ被膜付き蛍光体(実施例45)を得た。
【0204】
得られたアモルファスシリカ被膜付き蛍光体(実施例45)を透過型電子顕微鏡で観察したところ、シリカ膜の厚さは、およそ70nmであった。この蛍光体(実施例45)の発光強度は、実施例22の発光強度を100として規格化した場合、115だった。
また、上記と同様にして得られたシリカ膜について屈折率を測定したところ、1.48であった。アモルファスシリカ被膜付き蛍光体(実施例45)の酸素量は、実施例22から理論的に求められる酸素量よりも、0.2質量%多かった。
【0205】
<実施例46>
0.1M硼酸0.1M塩化カリウム水溶液50mlに、0.1M水酸化ナトリウム水溶液32mlを加え、蒸留水で100mlに希釈した。この水溶液に、実施例22で得られた蛍光体粉末5.0gを投入し、良く分散させてスラリーとした。
前記スラリーのpHを、水酸化ナトリウム水溶液を用いて9.0〜10.5の範囲に維持しながら、0.1M硫酸アルミニウム水溶液10mlを滴下して、スラリー中の粒子表面にアルミニウム水酸化物微粒子が付着した蛍光体粒子を得た。この蛍光体粒子を洗浄、乾燥した後、空気中、600℃で2時間の仮焼を行い、表面にアルミナ層が形成された蛍光体粉末(実施例46)を得た。
【0206】
蛍光体粉末(実施例46)を透過型電子顕微鏡で観察したところ、アルミナ層の厚さはおよそ50nmであった。この蛍光体粉末(実施例46)の発光強度は、実施例22の発光強度を100として規格化した場合、112だった。また、上記と同様にして得られたアルミナ膜について屈折率を測定したところ、1.70であった。アルミナ被膜付き蛍光体粉末(実施例46)の酸素量は、実施例22から理論的に求められる酸素量よりも、0.3質量%多かった。
【0207】
<実施例47>
実施例22と同様にして得られた蛍光体の焼成塊を、窒化ケイ素焼結体製の乳鉢を用いて軽く解砕した。この焼成塊を、濃度48%のフッ化水素酸と規定濃度36Nの硫酸及び蒸留水を、容積比で5:5:390となるよう混合した混酸水溶液を用いて、良く撹拌しながら30分間の酸処理を行った。その後、蛍光体粉末を分離、洗浄、乾燥し、処理して蛍光体粉末(実施例47)を得た。
走査型電子顕微鏡で蛍光体粉末(実施例47)の形状を観察したところ、粒界相やガラス質の第二相は観察されず、自形面を有する単結晶粒子からなることが判った。
【0208】
この蛍光体粉末(実施例47)に、紫外線ランプで波長365nmの光を照射した結果、青緑色に発光することを確認した。
蛍光体粉末(実施例47)の発光スペクトルおよび励起スペクトルを、蛍光分光光度計を用いて測定した結果、励起スペクトルのピーク波長は370nmであり、450nmの青色光励起による発光スペクトルのピーク波長は504nm(青緑色)であった。この蛍光体粉末(実施例47)の発光強度は、実施例22の発光強度を100として規格化すると、118だった。
【0209】
続いて、本発明の蛍光体を用いた発光装置について説明する。
<実施例48>
本発明の蛍光体を用いて、図1に示すような砲弾型白色発光ダイオードランプ(発光装置)を作製した。
まず、第一のリードワイヤにある素子蔵置用の凹部に青色発光ダイオード素子を、導電性ペーストを用いてボンディングし、第一のリードワイヤと青色発光ダイオード素子の下部電極とを電気的に接続するとともに、青色発光ダイオード素子を固定した。次に、青色発光ダイオード素子の上部電極と第二のリードワイヤとを、ボンディングワイヤによってワイヤボンディングし、電気的に接続した。
【0210】
そして、予め作製しておいた蛍光体を分散させた樹脂を、青色発光ダイオード素子を被覆するようにして凹部にディスペンサで適量塗布した後、これを硬化させ、第一の樹脂を形成した。
最後に、キャスティング法により凹部を含む第一のリードワイヤの先端部、青色発光ダイオード素子、蛍光体を分散した第一の樹脂の全体を第二の樹脂で封止した。
第一の樹脂は、屈折率1.6のエポキシ樹脂を、第二の樹脂は屈折率1.36のエポキシ樹脂を使用した。
【0211】
本実施例では、青緑色蛍光体として実施例22の蛍光体を15質量%、赤色蛍光体としてCaAlSiN3:Eu蛍光体を26質量%の濃度でエポキシ樹脂に混ぜ、これをディスペンサにより適量滴下して、蛍光体を分散した第一の樹脂を形成した。
導電性端子に電流を流すと、LED素子は発光ピーク波長が450nmの青色光を発し、これに励起された実施例22の蛍光体及び赤色蛍光体がそれぞれ青緑色光及び赤色光を発し、これらの光が混合されて白色光を発した。
【0212】
<実施例49>
使用する蛍光体を変えた他は実施例48と同様にして、図1に示すような砲弾型白色発光ダイオードランプ(発光装置)を作製した。
【0213】
本実施例では、青緑色蛍光体として実施例22の蛍光体を15質量%、緑色蛍光体としてβ―サイアロン蛍光体を12質量%、赤色蛍光体としてCaAlSiN3:Eu蛍光体を26質量%の濃度でエポキシ樹脂に混ぜ、これをディスペンサにより適量滴下して、蛍光体を分散した第一の樹脂を形成した。
導電性端子に電流を流すと、LED素子は発光ピーク波長が450nmの青色光を発し、これに励起された実施例22の蛍光体、緑色蛍光体及び赤色蛍光体がそれぞれ青緑色、緑色光及び赤色光を発し、これらの光が混合されて白色光を発した。
【0214】
<実施例50>
使用する蛍光体を変えた他は実施例48と同様にして、図1に示すような砲弾型白色発光ダイオードランプ(発光装置)を製作した。
【0215】
本実施例では、青緑色蛍光体として実施例22の蛍光体を15質量%、緑色蛍光体としてCa3Sc2Si3O12:Ce蛍光体を13質量%、赤色蛍光体としてCaAlSiN3:Eu蛍光体を26質量%の濃度でエポキシ樹脂に混ぜ、これをディスペンサにより適量滴下して、蛍光体を分散した第一の樹脂を形成した。
導電性端子に電流を流すと、LED素子は発光ピーク波長が450nmの青色光を発し、これに励起された実施例22の蛍光体、緑色蛍光体及び赤色蛍光体がそれぞれ青緑色、緑色光及び赤色光を発し、これらの光が混合されて白色光を発した。
【0216】
<実施例51>
使用する蛍光体を変えた他は実施例48と同様にして、図1に示すような砲弾型白色発光ダイオードランプ(発光装置)を製作した。
【0217】
本実施例では、青緑色蛍光体として実施例22の蛍光体を15質量%、緑色蛍光体としてβ―サイアロン蛍光体を13質量%、黄色蛍光体としてYAG:Ce蛍光体を18質量%、赤色蛍光体としてCaAlSiN3:Eu蛍光体を26質量%の濃度でエポキシ樹脂に混ぜ、これをディスペンサにより適量滴下して、蛍光体を分散した第一の樹脂を形成した。
導電性端子に電流を流すと、LED素子は発光ピーク波長が450nmの青色光を発し、これに励起された実施例22の蛍光体、緑色蛍光体、黄色蛍光体及び赤色蛍光体がそれぞれ青緑色、緑色光、黄色光及び赤色光を発し、これらの光が混合されて自然光に近い白色
光を発した。
【0218】
<実施例52>
使用する発光素子(LED)及び蛍光体を変えた他は実施例48と同様にして、図1に示すような砲弾型発光ダイオードランプ(発光装置)を作製した。
発光素子(LED)として発光ピーク波長が380nmの紫外LED素子を用い、実施例22の蛍光体と、実施例14の蛍光体と、BaMgAl10O17:Eu蛍光体と、赤色蛍光体としてCaAlSiN3:Euとをシリコーン樹脂からなる樹脂層に分散させて紫外LED素子にかぶせた構造とした。
導電性端子に電流を流すと、LED素子は発光ピーク波長が380nmの紫外光を発し、これに励起された実施例22の蛍光体、実施例14の蛍光体、BaMgAl10O17:Eu蛍光体及び赤色蛍光体がそれぞれ青緑色、緑色光、黄色光及び赤色光を発し、これらの光が混合されて白色光を発した。
【0219】
<実施例53>
第一の樹脂としては屈折率1.51のシリコーン樹脂を、第二の樹脂としては屈折率1.41のシリコーン樹脂を使用し、使用する蛍光体を変えた他は実施例48と同様にして、図1に示すような砲弾型白色発光ダイオードランプ(発光装置)を製作した。
【0220】
本実施例では、青緑色蛍光体として実施例22の蛍光体を15質量%、赤色蛍光体としてCaAlSiN3:Eu蛍光体を26質量%の濃度でシリコーン樹脂に混ぜ、これをディスペンサにより適量滴下して、蛍光体を分散した第一の樹脂を形成した。
導電性端子に電流を流すと、LED素子は発光ピーク波長が450nmの青色光を発し、これに励起された実施例22の蛍光体及び赤色蛍光体がそれぞれ青緑色光及び赤色光を発し、これらの光が混合されて白色光を発した。
【0221】
<実施例54>
第一の樹脂としては屈折率1.51のシリコーン樹脂を、第二の樹脂としては屈折率1.41のシリコーン樹脂を使用し、使用する蛍光体を変えた他は実施例48と同様にして、図1に示すような砲弾型白色発光ダイオードランプ(発光装置)を製作した。
【0222】
本実施例では、青緑色蛍光体として実施例22の蛍光体を15質量%、緑色蛍光体としてβ―サイアロン蛍光体を12質量%、赤色蛍光体としてCaAlSiN3:Eu蛍光体を26質量%の濃度でシリコーン樹脂に混ぜ、これをディスペンサにより適量滴下して、蛍光体を分散した第一の樹脂を形成した。
導電性端子に電流を流すと、LED素子は発光ピーク波長が450nmの青色光を発し、これに励起された実施例22の蛍光体、緑色蛍光体及び赤色蛍光体がそれぞれ青緑色光、緑色光及び赤色光を発し、これらの光が混合されて白色光を発した。
【0223】
<実施例55>
第一の樹脂としては屈折率1.51のシリコーン樹脂を、第二の樹脂としては屈折率1.41のシリコーン樹脂を使用し、使用する蛍光体を変えた他は実施例48と同様にして、図1に示すような砲弾型白色発光ダイオードランプ(発光装置)を製作した。
【0224】
本実施例では、青緑色蛍光体として実施例22の蛍光体を15質量%、緑色蛍光体としてCa3Sc2Si3O12:Ce蛍光体を13質量%、赤色蛍光体としてCaAlSiN3:Eu蛍光体を26質量%の濃度でシリコーン樹脂に混ぜ、これをディスペンサにより適量滴下して、蛍光体を分散した第一の樹脂を形成した。
導電性端子に電流を流すと、LED素子は発光ピーク波長が450nmの青色光を発し、これに励起された実施例22の蛍光体、緑色蛍光体及び赤色蛍光体がそれぞれ青緑色光、緑色光及び赤色光を発し、これらの光が混合されて白色光を発した。
【0225】
<実施例56>
第一の樹脂としては屈折率1.51のシリコーン樹脂を、第二の樹脂としては屈折率1.41のシリコーン樹脂を使用し、使用する蛍光体を変えた他は実施例48と同様にして、図1に示すような砲弾型白色発光ダイオードランプ(発光装置)を製作した。
【0226】
本実施例では、青緑色蛍光体として実施例22の蛍光体を15質量%、緑色蛍光体としてβ―サイアロン蛍光体を13質量%、黄色蛍光体としてα−サイアロン蛍光体を18質量%、赤色蛍光体としてCaAlSiN3:Eu蛍光体を26質量%の濃度でシリコーン樹脂に混ぜ、これをディスペンサにより適量滴下して、蛍光体を分散した第一の樹脂を形成した。
導電性端子に電流を流すと、LED素子は発光ピーク波長が450nmの青色光を発し、これに励起された実施例22の蛍光体、緑色蛍光体、黄色蛍光体及び赤色蛍光体がそれぞれ青緑色光、緑色光、黄色光及び赤色光を発し、これらの光が混合されて自然光に近い白色光を発した。
【0227】
<実施例57>
第一の樹脂としては屈折率1.51のシリコーン樹脂を、第二の樹脂としては屈折率1.41のシリコーン樹脂を使用し、使用する蛍光体を変えた他は実施例48と同様にして、図1に示すような砲弾型白色発光ダイオードランプ(発光装置)を製作した。
【0228】
本実施例では、青緑色蛍光体として実施例22の蛍光体を15質量%、緑色蛍光体としてβ―サイアロン蛍光体を13質量%、黄色蛍光体としてYAG:Ce蛍光体を18質量%、赤色蛍光体としてCaAlSiN3:Eu蛍光体を26質量%の濃度でシリコーン樹脂に混ぜ、これをディスペンサにより適量滴下して、蛍光体を分散した第一の樹脂を形成した。
導電性端子に電流を流すと、LED素子は発光ピーク波長が450nmの青色光を発し、これに励起された実施例22の蛍光体、緑色蛍光体、黄色蛍光体及び赤色蛍光体がそれぞれ青緑色光、緑色光、黄色光及び赤色光を発し、これらの光が混合されて自然光に近い白色光を発した。
【0229】
<実施例58>
本発明の蛍光体を用いて、図2に示すような基板実装用チップ型白色発光ダイオードランプ(発光装置)を製作した。
まず、第一のリードワイヤ及び第二のリードワイヤを接続したアルミナセラミックス基板のほぼ中央部に青色発光ダイオードを配置し、その青色発光ダイオードの下部電極を第一のリードワイヤと接続し、その上部電極を第二のリードワイヤとボンディングワイヤで接続した。また、アルミナセラミックス基板の発光素子側の面に穴を有する壁面部材を配置し、前記穴に発光素子を収めるように前記壁面部材を固定した。次に、前記青色発光ダイオードを覆うように第一の樹脂(封止樹脂)を形成した後、第一の樹脂を覆い、前記穴を埋めるように蛍光体を含まない第二の樹脂(別の封止樹脂)を形成した。
なお、製造手順は、アルミナセラミックス基板に第一のリードワイヤ、第二のリードワイヤ及び壁面部材を固定する製造手順を除いては、実施例48と略同一である。
【0230】
本実施例では、壁面部材を白色のシリコーン樹脂によって構成し、第一の樹脂と第二の樹脂とには同一のエポキシ樹脂を用いた。
蛍光体としては、実施例22の蛍光体、緑色蛍光体として実施例14の蛍光体、赤色蛍光体としてCaAlSiN3:Eu蛍光体とを用いた。これにより、導電性端子に電流を流すと、白色を発することが確認された。
【0231】
<実施例59>
図3に示すような、基板実装用チップ型白色発光ダイオードランプ(発光装置)を製作した。
まず、銀メッキを施された銅製のリードフレームを含み、ナイロン樹脂で成型した基板とリフレクタからなる表面実装用のLEDパッケージ用のケースのリードフレーム上に、樹脂ペーストで450nmに発光ピークを持つ青色発光ダイオード(青色LEDチップ)をダイボンドした。なお、青色発光ダイオードとして、350μm角の大きさのものを用い、合計で3個実装した。
【0232】
次に、前記青色発光ダイオードの上部側の2つの電極をそれぞれ2本のボンディングワイヤ(金細線)で接続し、一方のボンディングワイヤをリードフレームに、もう一方のボンディングワイヤを別のリードフレームへ接続した。
次に、蛍光体を含有させたメチルシリコーン樹脂を、発光ダイオード素子を覆うように、かつ、壁面部材の穴を埋めるように適量滴下して硬化させた後、一体化された部材から、発光装置パッケージをトリムし、個片とした発光装置パッケージを色調、発光強度で選別して、基板実装用チップ型白色発光ダイオードランプとした。
【0233】
本実施例では、蛍光体として、実施例22の蛍光体とサイアロン蛍光体とを用いた。発光装置の発光効率は100lm/Wであり、色温度5500K程度の白色を発することが確認された。
発光装置の演色性は、Raで90程度であった。投入された電力はパッケージ当り0.18Wであり、電力の密度は、パッケージ1個あたりの平面面積密度にして2×104W/m2であった。
【0234】
<実施例60>
発光ダイオード素子として紫外LEDチップを用い、セラミックで成型した基板にCuによるパターンをプリント配線で形成し、セラミック製のリフレクタを接着した表面実装用のLEDパッケージ用のケースを用い、蛍光体を変えた他は実施例59と同様にして、図3に示すような、基板実装用チップ型白色発光ダイオードランプ(発光装置)を製作した。
【0235】
本実施例では、蛍光体として、実施例22の蛍光体と、サイアロン蛍光体と、CaAlSiN系の蛍光体と、を用いた。発光装置の発光効率は120lm/Wであり、色温度5600K程度の白色を発することが確認された。
発光装置の演色性は、Raで98程度であった。投入された電力はパッケージ当り0.18Wであり、電力の密度は、パッケージ1個あたりの平面面積密度にして2×104W/m2であった。
【0236】
<実施例61>
発光ダイオード素子として440nmに発光ピークを持つ青色発光ダイオード(青色L
EDチップ)を用い、1mm角の大きさの大型チップを1個実装した他は実施例59と
同様にして、図3に示すような、基板実装用チップ型白色発光ダイオードランプ(発光装
置)を製作した。
【0237】
本実施例では、蛍光体として、実施例22の蛍光体と、サイアロン蛍光体を用いた。発光装置の発光効率は90lm/Wであり、色温度5000K程度の白色を発することが確認された。
発光装置の演色性は、Raで87程度であった。投入された電力はパッケージ当り1Wであり、電力の密度は、パッケージ1個あたりの平面面積密度にして1×103W/m2であった。
【0238】
<実施例62>
発光ダイオード素子として470nmに発光ピークを持つ青色発光ダイオード(青色LEDチップ)を用い、蛍光体を分散させない第二の樹脂を形成した他は実施例59と同様にして、図4に示すような、基板実装用チップ型白色発光ダイオードランプ(発光装置)を製作した。
なお、第二の樹脂としては、蛍光体を含まないフェニルシリコーン樹脂を用いた。
【0239】
本実施例では、蛍光体として、実施例22の蛍光体と、サイアロン蛍光体を用いた。発光装置の発光効率は110lm/Wであり、色温度5200K程度の白色を発することが確認された。
発光装置の演色性は、Raで93程度であった。投入された電力はパッケージ当り0.18Wであり、電力の密度は、パッケージ1個あたりの平面面積密度にして2×104W/m2であった。
【0240】
<実施例63>
第一の樹脂を形成せず、青色発光ダイオード(青色LEDチップ)のp側の透明電極の上に、スパッタ法によって本発明の蛍光体の層を10μm成膜し、蛍光体を分散させない第二の樹脂を形成した他は実施例59と同様にして、図5に示すような、基板実装用チップ型白色発光ダイオードランプ(発光装置)を製作した。
【0241】
本実施例では、蛍光体として、実施例22の蛍光体と、サイアロン蛍光体を用いた。発光装置の発光効率は140lm/Wであり、色温度4500K程度の白色を発することが確認された。
発光装置の演色性は、Raで85程度であった。投入された電力はパッケージ当り0.18Wであり、電力の密度は、パッケージ1個あたりの平面面積密度にして2×104W/m2であった。
【0242】
<実施例64>
プリント配線したガラス入りエポキシ基板上に直接青色発光ダイオード(青色LEDチップ)を実装し、これを樹脂封止したチップ・オン・ボード(COB:Chip On Board)形式と呼ぶ白色発光ダイオード(発光装置)を製作した。
青色発光ダイオード(青色LEDチップ)はアルミニウム製の基板に実装し、これにプリント配線したガラス入りエポキシ基板を重ねて接着した。
青色発光ダイオード(青色LEDチップ)が実装された部分には基板に穴が開いており、青色発光ダイオード(青色LEDチップ)が表面に現れる。青色発光ダイオード(青色LEDチップ)と配線との間は、金製のワイヤで接続した。この上から、蛍光体を含有させたメチルシリコーン樹脂を適量滴下して硬化させた。
【0243】
本実施例では、蛍光体として、実施例22の蛍光体と、サイアロン蛍光体を用いた。発光装置の発光効率は100lm/Wであり、色温度5500K程度の温白色を発することが確認された。発光装置の演色性は、Raで90程度であった。
【0244】
<実施例65>
発光ダイオード素子として390nmに発光ピークを持つ紫外発光ダイオード(紫外LEDチップ)を用い、セラミックで成型した基板にCuによるパターンをプリント配線で形成し、セラミック製のリフレクタを接着した表面実装用のLEDパッケージ用のケースを用い、蛍光体を変えた他は実施例59と同様にして、図3に示すような、基板実装用チップ型白色発光ダイオードランプ(発光装置)を製作した。
【0245】
本実施例では、蛍光体として、実施例14の蛍光体のみを用いた。発光装置の発光出力は18mWであった。電流を100μAから50mAまで変化させたが、電流量に対する発光波長の変化は殆ど見られなかった。
【0246】
<実施例66>
発光ダイオード素子として390nmに発光ピークを持つ紫外発光ダイオード(紫外LEDチップ)を用い、セラミックで成型した基板にCuによるパターンをプリント配線で形成し、セラミック製のリフレクタを接着した表面実装用のLEDパッケージ用のケースを用い、蛍光体を変えた他は実施例59と同様にして、図3に示すような、基板実装用チップ型白色発光ダイオードランプ(発光装置)を製作した。
【0247】
本実施例では、蛍光体として、実施例24の蛍光体のみを用いた。発光装置の発光出力
は40mWであった。電流を100μAから50mAまで変化させたが、電流量に対する
発光波長の変化は殆ど見られなかった。
【0248】
<実施例67>
発光ダイオード素子として390nmに発光ピークを持つ紫外発光ダイオード(紫外LEDチップ)を用い、セラミックで成型した基板にCuによるパターンをプリント配線で形成し、セラミック製のリフレクタを接着した表面実装用のLEDパッケージ用のケースを用い、蛍光体を変えた他は実施例59と同様にして、図3に示すような、基板実装用チップ型白色発光ダイオードランプ(発光装置)を製作した。
【0249】
本実施例では、蛍光体として、実施例22の蛍光体のみを用いた。発光装置の発光出力は35mWであった。電流を100μAから50mAまで変化させたが、電流量に対する波長の変化は殆ど見られなかった。
【0250】
<実施例68>
蛍光体を変えた他は実施例59と同様にして、図3に示すような、基板実装用チップ型白色発光ダイオードランプ(発光装置)を製作した。
【0251】
本実施例では、蛍光体として、実施例22の蛍光体と、サイアロン蛍光体と、CaAlSiN蛍光体とを用いた。発光装置の発光効率は120lm/Wであり、色温度5300K程度の白色を発することが確認された。
発光装置の演色性は、Raで96程度であった。投入された電力はパッケージ当り0.18Wであり、電力の密度は、パッケージ1個あたりの平面面積密度にして2×104W/m2であった。
【0252】
<実施例69>
蛍光体を変えた他は実施例59と同様にして、図3に示すような、基板実装用チップ型白色発光ダイオードランプ(発光装置)を製作した。
【0253】
本実施例では、蛍光体として、実施例1から実施例25までの蛍光体を混合したものと、CaAlSiN蛍光体とを用いた。発光装置の発光効率は100lm/Wであり、色温度5500K程度の白色を発することが確認された。発光装置の演色性は、Raで99程度であった。投入された電力はパッケージ当り0.18Wであり、電力の密度は、パッケージ1個あたりの平面面積密度にして2×104W/m2であった。
【産業上の利用可能性】
【0254】
本発明の蛍光体は、従来のサイアロンや酸窒化物蛍光体より高い発光強度を有し、蛍光体として優れ、さらに励起源に曝された場合でも蛍光体の輝度の低下が少ないので、白色LED、白色無機EL、白色有機ELなどに好適に使用される窒化物蛍光体である。今後、各種照明装置や表示装置などの発光装置における材料設計において、大いに活用され、産業の発展に大きく寄与することが期待できる。
【符号の説明】
【0255】
1…砲弾型発光ダイオードランプ(発光装置:LEDデバイス)。
2…第一のリードワイヤ(リードフレーム)。
3…第二のリードワイヤ(リードフレーム)。
4…発光ダイオード素子(LEDチップ)。
4a、4b…電極。
5…ボンディングワイヤ(金細線)。
6…第一の樹脂(封止樹脂)。
7…蛍光体。
8…第二の樹脂(封止樹脂)。
11…基板実装用チップ型発光ダイオードランプ(発光装置:LEDデバイス)。
12…第一のリードワイヤ(リードフレーム)。
13…第二のリードワイヤ(リードフレーム)。
15…ボンディングワイヤ(金細線)。
16…第一の樹脂(封止樹脂)。
17…蛍光体。
18…第二の樹脂(封止樹脂)。
19…基板(アルミナセラミックス製または樹脂成型)。
20…側面部材(壁面部材)。
20a…穴。
20b…斜面(反射面)。
23…蛍光体。
24…発光ダイオード素子(LEDチップ)。
24a、24b…電極。
111、112、113…基板実装用チップ型発光ダイオードランプ(発光装置:LED
デバイス)。
【技術分野】
【0001】
本発明は、無機化合物を主体とする蛍光体とその用途に関する。さらに詳細には、該用途は、該蛍光体の有する性質、すなわち400nm以上の長波長の蛍光を発光する特性を利用した照明装置、表示装置等の発光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、蛍光体は、蛍光表示管(VFD)、フィールドエミッションディスプレイ(FED)、プラズマディスプレイパネル(PDP)、陰極線管(CRT)、発光ダイオード(LED素子)などの表示装置等の発光装置に用いられている。
これらのいずれの発光装置においても、蛍光体を発光させるためには、蛍光体を励起するために何らかのエネルギーを蛍光体に供給する必要がある。たとえば、真空紫外線、紫外線、電子線、青色光などの高いエネルギーを有した励起源により、蛍光体は励起されて可視光線を発する。
しかしながら、従来のケイ酸塩蛍光体、リン酸塩蛍光体、アルミン酸塩蛍光体、硫化物蛍光体などの蛍光体を用いた場合には、前記のような励起源に曝されることによって、蛍光体の輝度が低下するという問題があった。
そのため、前記のような励起源に曝されても輝度低下が生じない蛍光体が求められていた。そこで、輝度低下の少ない蛍光体として、サイアロン蛍光体等の酸窒化物蛍光体が提案された。
【0003】
特許文献1には、Caを含有するサイアロン蛍光体が開示されている。ここで、このサイアロン蛍光体は、以下に述べるような製造プロセスによって製造される。
まず、窒化ケイ素(Si3N4)、窒化アルミニウム(AlN)、炭酸カルシウム(CaCO3)、酸化ユーロピウム(Eu2O3)を所定のモル比で混合する。次に、1気圧(0.1MPa)の窒素中において1700℃の温度で1時間保持してホットプレス法により焼成して製造される。
このプロセスで得られるEuイオンを固溶したα型サイアロン蛍光体は、450〜500nmの青色光で励起されて550〜600nmの黄色の光を発する蛍光体であり、青色LED素子とこの蛍光体を組み合わせることにより、白色LED素子を作製することが可能とされている。
【0004】
また、特許文献2は、別のサイアロン蛍光体に関するものであって、β−Si3N4構造を有するβ型サイアロン蛍光体について開示されている。このβ型サイアロン蛍光体は、近紫外〜青色光で励起されることにより、500〜600nmの緑色〜橙色の発光を行うため、白色LED素子用の蛍光体として好適に用いられている。
【0005】
更に、特許文献3には、JEM相からなる酸窒化物蛍光体が開示されている。この酸窒化物蛍光体は、近紫外〜青色光で励起されて、460〜510nmに発光波長ピークを有する発光を行う。同蛍光体の励起・発光波長域は、近紫外LEDを励起源とする白色LED用青色蛍光体として好適である。
【0006】
一方、照明装置として用いられる発光装置の従来技術として、青色発光ダイオード素子と、青色吸収黄色発光蛍光体とを組み合わせた白色発光ダイオードが公知であり、各種照明に実用化されている。
たとえば、特許文献4には、青色発光ダイオード素子と青色吸収黄色発光蛍光体との組み合わせによる白色発光ダイオードが開示されている。また、特許文献5にも、同様の構成の発光ダイオードについて開示されている。さらに、特許文献6にも、同様の構成の発光ダイオードについて、波長変換注型材料を用いた発光素子として開示されている。
なお、これらの発光ダイオードで、特によく用いられている蛍光体は一般式(Y,Gd)3(Al,Ga)5O12:Ce3+で表わされる、セリウムで賦活したイットリウム・アルミニウム・ガーネット系蛍光体である。
【0007】
また、特許文献7には、紫外光または近紫外光を発光する半導体発光素子と蛍光体とを備える蛍光体付き発光ダイオードについて開示されている。この蛍光体付き発光ダイオードでは、半導体発光素子がパルス状の大電流により紫外光または近紫外光の発光を行い、その半導体発光素子の発光により素子の表面に成膜された蛍光体が励起される構成について開示されている。この構成においては、素子の表面に成膜する蛍光体の種類に応じて、この蛍光体付き発光ダイオードの発光色を青、緑または赤色とすることが可能とされている。
【0008】
また、特許文献8には、III族窒化物半導体からなる発光層と、この発光層から発せられた発光波長ピーク波長が380nmの紫外光を受光して、赤色、緑色及び青色の三原色の光をそれぞれ発光する3種類の蛍光体層を備えたドットマトリックスタイプの表示装置が開示されている。
【0009】
更に、特許文献9には、390〜420nmの波長の光を発光する半導体発光素子と、この半導体発光素子からの発光により励起される蛍光体とを用いて、白色の光を発光する半導体発光素子が開示されている。ここで、半導体発光素子は、人の視感度が低い光を発光するため、半導体発光素子の発光強度や発光波長が変動しても色調がほとんど変化しないように感じられる。また、390〜420nmの波長の光は、蛍光体を分散する樹脂などの装置構成部品を損傷しにくい。また、一般に紫外光は人体にさまざまな有害な影響を与えるが、390nm以上の波長の光を用いているため、漏れた励起光による有害な影響はない。この場合、390〜420nmの波長の光で励起され発光する蛍光体として、様々な酸化物や硫化物の蛍光体が用いられている。
【0010】
このような照明装置は、例えば、特許文献10、特許文献11などに記載されているような公知の方法により製造できるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2002−363554号公報
【特許文献2】特開2005−255895号公報
【特許文献3】特開2006−232868号公報
【特許文献4】特許第2900928号公報
【特許文献5】特許第2927279号公報
【特許文献6】特許第3364229号公報
【特許文献7】特開平10−12925号公報
【特許文献8】特開平9−153644号公報
【特許文献9】特開2002−171000号公報
【特許文献10】特開平5−152609号公報
【特許文献11】特開平7−99345号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、特許文献1〜11に記載の蛍光体は、近紫外〜青色発光素子を励起光源とした白色LED用途に好適な励起・発光スペクトルを有するが、近年の白色LED高輝度化要求の高まりを背景として、更に高い輝度を有する蛍光体の出現が期待されていた。
また、照明などの発光装置についても、青色発光ダイオード素子とイットリウム・アルミニウム・ガーネット系蛍光体とから或る白色発光ダイオードは赤色成分の不足から青白い発光となる特徴を有し、演色性に偏りがみられるという問題に加え、特に酸化物蛍光体は共有結合性が低いことから、半導体発光素子の高輝度化に伴う発熱量の増大により、発光輝度が低下するという問題があった。
また、硫化物系蛍光体は、高い発光輝度を示すものが知られているが、化学的安定性に難点があるため、白色LEDが本来有する寿命特性の確保が困難であった。
【0013】
本発明は、上記事情を鑑みてなされたもので、従来の蛍光体よりもさらに高い輝度と優れた安定性を示す蛍光体および製造方法ならびにそれを用いた発光装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、一般式(A1−xRxM2X)m(M2X4)nで示される組成であることを特徴とする蛍光体(但し、A元素はLi、Na,Be,Mg,Ca,Sr,Ba,Sc,Y,La,Gd,Luから選ばれる1種以上の元素であり、R元素はMn,Ce,Pr,Nd,Sm,Eu,Tb,Dy,Ho,Er,Tm,Ybから選ばれる1種以上の賦活剤であり、M元素はSi,Ge,Sn,Ti,Hf,Zr,Be,B,Al,Ga,In,Tl,Znから選ばれる1種以上の元素であり、X元素は酸素と窒素から選ばれる1種以上の元素であることを特徴とする蛍光体)が高輝度の発光を示すことを見出した。
この知見についてさらに研究を進めた結果、以下の構成に示す本発明を完成するに至った。
【0015】
(1)一般式(A1−xRxM2X)m(M2X4)nで示される組成であることを特徴とする蛍光体(但し、A元素はLi、Na,Be,Mg,Ca,Sr,Ba,Sc,Y,La,Gd,Luから選ばれる1種以上の元素であり、R元素はMn,Ce,Pr,Nd,Sm,Eu,Tb,Dy,Ho,Er,Tm,Ybから選ばれる1種以上の賦活剤であり、M元素はSi,Ge,Sn,Ti,Hf,Zr,Be,B,Al,Ga,In,Tl,Znから選ばれる1種以上の元素であり、X元素は酸素と窒素から選ばれる1種以上の元素である)。
(2)(8/5)<n/m<(5/3)であり、0<x≦0.2であることを特徴とする(1)に記載の蛍光体。
(3)Aが、Ca,Sr,Baから選ばれる一種以上であることを特徴とする(1)又は(2)のいずれかに記載の蛍光体。
(4)RがEuであることを特徴とする請求項(1)から(3)のいずれか一項に記載の蛍光体。
(5)MがSi,Alから選ばれる1種以上であることを特徴とする(1)から(4)のいずれか一項に記載の蛍光体。
(6)前記蛍光体が(A1−xRx)mSi6n−5m−sAl7m−4n+sOsNm+4n−sで示される組成であることを特徴とする(1)から(5)のいずれか一項に記載の蛍光体(但し、0≦s≦mである)。
(7)前記蛍光材料の含有率が80体積%以上であり、残部がβ―サイアロン、未反応の窒化ケイ素或いは窒化アルミニウム、酸窒化物ガラス、SrSiAl2N2O3、Sr2Al2Si10N14O4、SrSi(10−n)Al(18+n)OnN(32−n)(n〜1)、SrSi6N8から選ばれる一種以上であることを特徴とする(1)〜(6)のいずれかに記載の蛍光体。
(8)出発原料を混練して原料混合物を作る混練工程と、前記原料混合物を焼成する焼成工程と、焼成された前記原料混合物を熱処理する工程とを備え、
前記出発原料として、Aが、II価の価数をとる元素から選ばれる一種以上の元素である場合、Aを含有する化合物として、ASi2,ASiN2,A2Si5N8,A3Al2N4,ASi6N8から選ばれる一種以上の原料を少なくとも用いることを特徴とする蛍光体の製造方法。
(9)焼成された前記原料混合物を熱処理する工程の代わりに、焼成された前記原料混合物の塊を粉砕分級する工程と、粉砕分級された前記原料混合物の塊を熱処理する工程と、前記熱処理物の塊を粉砕分級する工程を備えることを特徴とする(8)に記載の蛍光体の製造方法。
(10)LiSi2N3を少なくとも出発原料として含むことを特徴とする請求項(8)又は(9)のいずれかに記載の蛍光体の製造方法。
(11)目的とする組成の蛍光材料を有する蛍光体粉末を予め合成し、これを種子として前記原料混合物に添加することを特徴とする(8)〜(10)のいずれか一項に記載の蛍光体の製造方法。
(12)発光光源と蛍光体とから構成される発光装置であって、前記蛍光体として、(1)〜(7)のいずれか一項に記載の蛍光体を用いることを特徴とする発光装置。
(13)発光光源と蛍光体とから構成される発光装置であって、前記蛍光体と、さらにβ−SiAlON:Eu,YAG:Ce,(Ca,Sr,Ba)2SiO4:Eu,α−SiAlON:Eu,(Ca,Sr,Ba)2Si5N8:Eu,(Ca,Sr)AlSiN3:Euから選ばれる1種以上の蛍光体を用いることを特徴とする(12)に記載の発光装置。
(14)前記発光光源が、330〜500nmの波長の光を発するLEDチップ、無機ELチップまたは有機ELチップのいずれかであることを特徴とする(12)又は(13)のいずれかに記載の発光装置。
(15)前記蛍光体が、前記LEDチップを取り囲んで形成された封止樹脂中に分散されていることを特徴とする(12)〜(14)のいずれか一項に記載の発光装置。
(16)前記蛍光体が、前記LEDチップの近傍で高密度になるように、前記封止樹脂中に分散されていることを特徴とする(15)に記載の発光装置。
(17)前記蛍光体が前記LEDチップに直接付着されていることを特徴とする(12)〜(16)のいずれか一項に記載の発光装置。
(18)前記蛍光体が前記LEDチップの少なくとも一面を覆うように直接付着されていることを特徴とする(17)に記載の発光装置。
(19)前記蛍光体が層状となっていることを特徴とする(18)に記載の発光装置。
(20)前記発光装置が、LEDチップを複数含むことを特徴とする請求項(12)〜(19)のいずれか一項に記載の発光装置。
【0016】
上記(1)〜(7)のいずれかの蛍光体において、平均粒径が0.1μm以上50μm以下の粉体であるのが好ましい。
上記(1)〜(7)のいずれかの蛍光体において、平均アスペクト比が20以下であるのが好ましい。
上記(1)〜(7)のいずれかの蛍光体において、フッ素を5〜300ppm含有するのが好ましい。
上記(1)〜(7)のいずれかの蛍光体において、ホウ素を10〜3000ppm含有するのが好ましい。
上記(1)〜(7)のいずれかの蛍光体において、少なくとも一部表面に透明膜が形成されており、前記透明膜の屈折率をnとしたときに、前記透明膜の厚さが(10〜180)/nk(単位:ナノメートル)であるのが好ましい。前記透明膜の屈折率nkが1.2以上2.5以下であるとさらに好ましい。前記透明膜の屈折率nkが1.5以上2.0以下であるとさらに好ましい。
【0017】
上記(8)〜(11)のいずれかの蛍光体の製造方法において、焼成された前記原料混合物の塊を、アルミナ焼結体、酸化ジルコニウム焼結体、窒化ケイ素焼結体またはα―サイアロン焼結体製の粉砕媒体もしくはライニング材からなる粉砕装置を用いて平均粒径が50μm以下となるまで粉砕するのが好ましい。
上記(8)〜(11)のいずれかの蛍光体の製造方法において、焼成された前記熱処理物の塊を、アルミナ焼結体、酸化ジルコニウム焼結体、窒化ケイ素焼結体またはα―サイアロン焼結体製の粉砕媒体もしくはライニング材からなる粉砕装置を用いて平均粒径が20μm以下となるまで粉砕するのが好ましい。
上記(8)〜(11)のいずれかの蛍光体の製造方法において、焼成された前記原料混合物の塊の粉砕物を水簸分級するのが好ましい。
上記(8)〜(11)のいずれかの蛍光体の製造方法において、焼成された前記熱処理物の塊の粉砕物を水簸分級するのが好ましい。
上記(8)〜(11)のいずれかの蛍光体の製造方法において、前記原料混合物を噴霧乾燥することにより前記原料粉末の凝集体の粒径を整える造粒工程をさらに備えるのが好ましい。
上記(8)〜(11)のいずれかの蛍光体の製造方法において、前記混練工程が、湿式ミルにより前記原料粉末を溶媒とともに混練する工程であるのが好ましい。
上記(8)〜(11)のいずれかの蛍光体の製造方法において、前記焼成工程が、0.1MPa以上100MPa以下の圧力の窒素雰囲気中において1500℃以上2200℃以下の温度範囲で焼成する工程であるのが好ましい。
上記(8)〜(11)のいずれかの蛍光体の製造方法において、前記焼成工程が、炭素若しくは炭素含有化合物の共存下で焼成する工程であるのが好ましい。
上記(8)〜(11)のいずれかの蛍光体の製造方法において、前記焼成工程が、焼成用容器に収容して焼成する工程であるのが好ましい。
上記(8)〜(11)のいずれかの蛍光体の製造方法において、前記焼成工程が、嵩密度40%以下の充填率に保持した状態で焼成する工程であるのが好ましい。
上記(8)〜(11)のいずれかの蛍光体の製造方法において、前記焼成工程が、前記原料混合物の嵩体積と前記焼成用容器の体積の比率として20体積%以上の充填率に保持した状態で焼成する工程であるのが好ましい。
上記(8)〜(11)のいずれかの蛍光体の製造方法において、前記焼成用容器の材質が、アルミナ、カルシア、マグネシア、黒鉛或いは窒化硼素のいずれかであるのが好ましい。
上記(8)〜(11)のいずれかの蛍光体の製造方法において、前記熱処理工程が、窒素、アンモニア、水素から選ばれる1種または2種以上の雰囲気中、600℃以上2200℃以下の温度で熱処理する工程であるのが好ましい。
上記(8)〜(11)のいずれかの蛍光体の製造方法において、蛍光体の粉末を有機溶媒に懸濁させ、有機金属錯体又は金属アルコキシドを滴下して、前記蛍光体の少なくとも一部表面に透明膜を形成する透明膜形成工程を備えるのが好ましい。
上記(8)〜(11)のいずれかの蛍光体の製造方法において、蛍光体の粉末を水に懸濁させ、pHを一定に保ちながら金属塩水溶液を滴下して、前記蛍光体の少なくとも一部表面に透明膜を形成する透明膜形成工程を備えるのが好ましい。
【0018】
上記(14)の発光装置において、前記LEDチップの発光波長の最大強度が330〜500nmであるのが好ましい。さらに、前記LEDチップの発光が紫外光であるのが好ましい。
上記(14)の発光装置において、前記LEDチップの発光波長の最大強度が380〜410nmであるのが好ましい。
上記(14)の発光装置において、前記LEDチップの発光が青色であるのが好ましい。
上記(14)の発光装置において、前記LEDチップによって蛍光体を励起することにより、白色のLEDデバイスをなすのが好ましい。さらに、前記LEDデバイスの白色の発光色の演色性が70以上とされているのが好ましい。さらにまた、前記LEDデバイスの発光スペクトルの半値幅が100nm以上とされているのが好ましい。
上記(14)の発光装置において、紫外線を発生する前記LEDチップによって蛍光体を励起することにより、有色のLEDデバイスをなすのが好ましい。さらに、紫外線を発生する前記LEDチップによって蛍光体を励起することにより、緑色のLEDデバイスをなすか、青緑色のLEDデバイスをなすか、又は、青色のLEDデバイスをなすのが好ましい。
上記(14)の発光装置において、前記発光装置が、砲弾型LEDデバイスまたは表面実装型LEDデバイスのいずれかであるのが好ましい。さらに、前記発光装置が、配線された基板に前記LEDチップを直接実装したチップ・オン・ボードであるのが好ましい。
上記(14)〜(20)のいずれかの発光装置において、前記発光装置の基板および/またはリフレクタ部に樹脂を含むのが好ましい。さらに、前記樹脂が、熱硬化性樹脂であるのが好ましい。
上記(14)〜(20)のいずれかの発光装置において、前記発光装置の基板および/またはリフレクタ部にセラミクス製部材を含むのが好ましい。
上記(15)の発光装置において、前記封止樹脂が、少なくとも一部の領域にシリコーン樹脂を含むのが好ましい。また、前記封止樹脂が、少なくとも一部の領域にメチルシリコーン樹脂を含むのが好ましい。また、前記封止樹脂が、少なくとも一部の領域にフェニルシリコーン樹脂を含むのが好ましい。
上記(15)又は(16)の発光装置において、前記封止樹脂を覆うように、別の封止樹脂が形成されているのが好ましい。
上記(19)の発光装置において、前記蛍光体の厚みが、1μmから100μmであるのが好ましい。
上記(14)〜(20)のいずれかの発光装置において、前記LEDチップが、一辺350μm角の面積よりも大きいのが好ましい。
上記(14)〜(20)のいずれかの発光装置において、前記発光装置が、1パッケージ当り0.2W以上の電力を投入して使用されるのが好ましい。
上記(14)〜(20)のいずれかの発光装置において、前記LEDチップが、1パッケージ1個当りの平面面積密度にして1.5×104W/m2以上の電力を投入して使用されるのが好ましい。
上記(14)〜(20)のいずれかの発光装置において、前記LEDチップが、1パッケージ1個当りの平面面積密度にして5×104W/m2以上の電力を投入して使用されるのが好ましい。
【発明の効果】
【0019】
上記の構成によれば、従来の蛍光体よりもさらに高い輝度と優れた安定性を示す蛍光体
および製造方法ならびにそれを用いた発光装置を提供することができる。
【0020】
本発明の蛍光体は、一般式(A1−xRxM2X)m(M2X4)nで示される組成であることを特徴とする蛍光体であって、A元素はLi、Na,Be,Mg,Ca,Sr,Ba,Sc,Y,La,Gd,Luから選ばれる1種以上の元素であり、R元素はMn,Ce,Pr,Nd,Sm,Eu,Tb,Dy,Ho,Er,Tm,Ybから選ばれる1種以上の賦活剤であり、M元素はSi,Ge,Sn,Ti,Hf,Zr,Be,B,Al,Ga,In,Tl,Znから選ばれる1種以上の元素であり、X元素は酸素と窒素から選ばれる1種以上の元素であることを特徴とする蛍光体なので、十分に高い輝度の発光強度を得ることができる。
【0021】
本発明の蛍光体は、先に記載の蛍光体とそれ以外の材料とからなる蛍光体であって、先に記載の蛍光体の含有率が80体積%以上であり、残部がβ―サイアロン、未反応の窒化ケイ素或いは窒化アルミニウム、酸窒化物ガラス、酸窒化物ガラス、SrSiAl2N2O3、Sr2Al2Si10N14O4、SrSi(10−n)Al(18+n)OnN(32−n)(n〜1)、SrSi6N8から選ばれる一種以上である構成なので、十分に高い発光強度が得られる。
【0022】
本発明の蛍光体は、平均粒径0.1μm以上50μm以下の粉体である構成であれば、表面欠陥の影響がなく、励起光の吸収が十分であり、発光が高い強度で得られる。
【0023】
本発明の蛍光体は、蛍光体を構成する一次粒子の平均アスペクト比が20以下である構成であれば、樹脂中への蛍光体の分散性が向上されるばかりか、励起光を効率的に吸収し、十分に高い発光強度が得られる。
【0024】
本発明の蛍光体は、微量のフッ素やホウ素が不純物として含有される構成であれば、発光強度は更に改善される。
【0025】
本発明の蛍光体の製造方法は、前記出発原料として、Aが、II価の価数をとる元素から選ばれる一種以上の元素である場合、Aを含有する化合物として、ASi2,ASiN2,A2Si5N8,A3Al2N4,ASi6N8から選ばれる一種以上の原料を少なくとも用いる構成なので、焼成工程での反応性が向上し、一層高輝度の蛍光体を得ることができる。
また、本発明の蛍光体の製造方法は、Liを含有する化合物として、LiSi2N3を少なくとも出発原料として含む構成であれば、焼成工程での反応性が向上し、一層高輝度の蛍光体を得ることができる。
【0026】
本発明の蛍光体の製造方法は、種子として予め合成した目的とする組成を有する蛍光体粉末を原料混合物に添加してなる構成であれば、合成反応が促進され、低温での合成が可能となったり、より結晶度の高い蛍光体が得られて、蛍光体の発光強度を向上したりする。
【0027】
ここで、必要に応じて該原料化合物にフラックスを加えて混合しても良い。フラックスとしては、アルカリ金属のハロゲン化物あるいはアルカリ土類金属のハロゲン化物などが使用可能であるが、例えば、蛍光体原料100質量部に対し、0.01〜20質量部の範囲で添加する。
【0028】
前記原料粉体混合物の凝集体は、湿式ミルにより原料粉末を溶媒とともに混練する混練工程と、スプレードライヤーにより前記混練工程で得られた混練物を噴霧乾燥することにより原料粉末の凝集体の粒径を整える造粒工程とにより得ることができる。
【0029】
本発明の蛍光体の製造方法は、焼成工程を、0.1MPa以上100MPa以下の圧力の窒素雰囲気中において1500℃以上2200℃以下の温度範囲で行う構成であれば、十分な雰囲気圧力により原料化合物の揮散や組成のずれがなく、十分な温度により時間効率がよく、また原料も溶融もせずに、高い発光強度の蛍光体が得られる。
【0030】
本発明の蛍光体の製造方法は、焼成工程を、炭素若しくは炭素含有化合物の共存下で行う構成であれば、原料混合物が還元性雰囲気と接するため、特に酸素含有量が多い原料化合物を用いた場合には、高輝度の蛍光体が得られる。
【0031】
本発明の蛍光体の製造方法は、焼成工程を、嵩密度40%以下の充填率に保持した状態で行う構成であれば、経済性、品質いずれの要請も満足させることができる。
また、原料粉体混合物の凝集体を、嵩密度40%以下の充填率に保持した状態とする方法としては、前記造粒工程で造粒した凝集体粉末を焼成用容器に収容して焼成する方法を採用することができる。
【0032】
本発明の蛍光体の製造方法は、焼成工程を、原料混合物の嵩体積と焼成用容器の体積の比率として20体積%以上の充填率に保持した状態で行う構成であれば、高い輝度の蛍光体が得られる。
【0033】
本発明の蛍光体の製造方法は、焼成された原料混合物の塊を、アルミナ焼結体、酸化ジルコニウム焼結体、窒化ケイ素焼結体またはα―サイアロン焼結体製の粉砕媒体もしくはライニング材からなる粉砕装置を用いて平均粒径が20μm以下となるまで粉砕する構成であれば、粉砕工程での不純物の混入を抑制することができる。
また、本発明の蛍光体の製造方法は、熱処理工程を、窒素、アンモニア、水素から選ばれる1種または2種以上の雰囲気中、600℃以上2200℃以下の温度で行う構成であれば、粉砕工程で導入された欠陥が低減し、発光強度を回復させることができる。
【0034】
本発明の蛍光体は、一般式(A1−xRxM2X)m(M2X4)nで示される組成であることを特徴とする蛍光体であって、A元素はLi、Na,Be,Mg,Ca,Sr,Ba,Sc,Y,La,Gd,Luから選ばれる1種以上の元素であり、R元素はMn,Ce,Pr,Nd,Sm,Eu,Tb,Dy,Ho,Er,Tm,Ybから選ばれる1種以上の賦活剤であり、M元素はSi,Ge,Sn,Ti,Hf,Zr,Be,B,Al,Ga,In,Tl,Znから選ばれる1種以上の元素であり、X元素は酸素と窒素から選ばれる1種以上の元素であることを特徴とする蛍光体であるが、例えば、本発明の蛍光体が一般式(A1−xRx)mSi6n−5m−sAl7m−4n+sOsNm+4n−s(但し、0≦s≦m)であることを特徴とする蛍光体である場合、本発明の蛍光体の粉末に含まれる酸素量は、前記一般式に包含される基づいて計算される酸素量(s)より多い蛍光体であってもよい。その差分の酸素量は0.4質量%以下である。ここで、前記差分の酸素は、本発明の蛍光体の粉末粒子の少なくとも一部表面に形成された透明膜を構成する。
【0035】
本発明の蛍光体は、先に記載の蛍光体を構成する粒子の少なくとも一部表面に、厚さ(10〜180)/nk(単位:ナノメートル)の透明膜を有し、ここでnkは透明膜の屈折率で1.2〜2.5である構成であれば、前記粒子の耐酸化性を向上させるとともに、封止樹脂との屈折率の差を低減して、蛍光体と封止樹脂との界面における光の損失を低減することができる。なお、前記透明膜の屈折率nkは、好ましくは1.5以上2.0以下である。
【0036】
本発明の蛍光体の粉末粒子の少なくとも一部表面に透明膜を形成する方法としては、本発明の蛍光体を有機溶媒に懸濁させて有機金属錯体又は金属アルコキシドを滴下する方法、または、本発明の蛍光体を水に懸濁させてpHを一定に保ちながら金属塩水溶液を滴下する方法などを挙げることができる。
【0037】
本発明の発光装置は、発光光源と蛍光体から構成される発光装置であって、前記蛍光体として本発明の蛍光体を用いる構成なので、十分に高い輝度と演色性を有する発光装置とすることができる。
【0038】
本発明の発光装置は、前記発光光源が、330〜500nmの波長の光を発するLEDチップ、無機ELチップまたは有機ELチップのいずれかである構成なので、本発明の蛍光体を効率よく励起させ、より高い輝度と演色性を有する発光装置とすることができる。
【0039】
本発明の発光装置は、発光光源と蛍光体とから構成される発光装置であって、前記蛍光体と、さらにβ−SiAlON:Eu,YAG:Ce,(Ca,Sr,Ba)2SiO4:Eu,α−SiAlON:Eu,(Ca,Sr,Ba)2Si5N8:Eu,(Ca,Sr)AlSiN3:Euから選ばれる1種以上の蛍光体を用いる構成なので、高い演色性を有する発光装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の第一の実施形態である発光装置(LED照明器具)の断面図である。
【図2】本発明の第二の実施形態である発光装置(LED照明器具)の断面図である。
【図3】本発明の第三の実施形態である発光装置(LED照明器具)の断面図である。
【図4】本発明の第四の実施形態である発光装置(LED照明器具)の断面図である。
【図5】本発明の第五の実施形態である発光装置(LED照明器具)の断面図である。
【図6】本発明の実施例6の蛍光体の発光および励起スペクトルを示す図である。
【図7】本発明の実施例6の蛍光体の粉末X線回折チャートを示す図である。
【図8】本発明の実施例8の蛍光体の発光および励起スペクトルを示す図である。
【図9】本発明の実施例9の蛍光体の発光および励起スペクトルを示す図である。
【図10】本発明の実施例10の蛍光体の発光および励起スペクトルを示す図である。
【図11】本発明の実施例11の蛍光体の発光および励起スペクトルを示す図である。
【図12】本発明の実施例12の蛍光体の発光および励起スペクトルを示す図である。
【図13】本発明の実施例13の蛍光体の発光および励起スペクトルを示す図である。
【図14】本発明の実施例14の蛍光体の発光および励起スペクトルを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
以下、本発明を実施するための形態について説明する。
<実施形態1:蛍光体>
本発明の実施形態である蛍光体は、一般式(A1−xRxM2X)m(M2X4)nで示される組成であることを特徴とする蛍光体であって、A元素はLi、Na,Be,Mg,Ca,Sr,Ba,Sc,Y,La,Gd,Luから選ばれる1種以上の元素であり、R元素はMn,Ce,Pr,Nd,Sm,Eu,Tb,Dy,Ho,Er,Tm,Ybから選ばれる1種以上の賦活剤であり、M元素はSi,Ge,Sn,Ti,Hf,Zr,Be,B,Al,Ga,In,Tl,Znから選ばれる1種以上の元素であり、X元素は酸素と窒素から選ばれる1種以上の元素であることを特徴とする。
これにより、十分に高い発光強度が得られる。なお、x,m,nの値は、(8/5)<n/m<(5/3)、0<x≦0.2の範囲が好ましく、この範囲からはずれると、発光強度が低下するため好ましくない。
【0042】
また、本発明の実施形態である蛍光体は、前記蛍光材料の含有率が80体積%以上であり、残部がβ―サイアロン、未反応の窒化ケイ素或いは窒化アルミニウム、酸窒化物ガラス、SrSiAl2N2O3、Sr2Al2Si10N14O4、SrSi(10−n)Al(18+n)OnN(32−n)(n〜1)、SrSi6N8から選ばれる一種以上である蛍光体であってもよい。これにより、十分に高い発光強度が得られる。なお、残部は結晶相またはアモルファス相のいずれであっても良い。なお、前記蛍光材料の含有量が80体積%より少ないと、十分に高い発光強度が得られない。
【0043】
本発明の実施形態である蛍光体において、n/mの値は(8/5)<n/m<(5/3)の範囲であるが、1.61≦n/m≦1.65の範囲が更に好ましい。n/mの値が1.61≦n/m≦1.65から外れると、発光強度の低下をもたらす。
【0044】
本発明の実施形態である蛍光体において、酸素量(s)の値は、0≦s≦mであるが、0.25m≦s≦0.75mの範囲が好ましい。sの値がこの範囲からずれると、β―サイアロン、未反応の窒化ケイ素或いは窒化アルミニウム、酸窒化物ガラス、SrSiAl2N2O3、Sr2Al2Si10N14O4、SrSi(10−n)Al(18+n)OnN(32−n)(n〜1)、SrSi6N8から選ばれる一種以上等の他の結晶相あるいはアモルファス相の含有量が増大し、発光強度が低下するため好ましくない。
【0045】
本発明の実施形態である蛍光体において、xの値は0<x≦0.2であるが、xの値の好ましい範囲は、0.001≦x≦0.1である。xの値が0.001より小さいと、発光する原子数が少なすぎるため十分な発光強度を得ることができず、また、0.1を超えると、濃度消光のため発光強度が低下し、何れも好ましくない。xの値として更に好ましい範囲は、0.01≦x≦0.06である。この範囲であれば、十分に高い発光強度を得ることが出来る。また、xの値を変化させることにより、当該蛍光体の発光スペクトルは、480から540nmの間で変化させることができる。
【0046】
A元素はLi、Na,Be,Mg,Ca,Sr,Ba,Sc,Y,La,Gd,Luから選ばれる1種以上の元素を用いることができる。特に、M(0)を構成する元素は、十分に高い発光強度が得られるため、Ca,Sr,Baから選ばれる一種以上が好ましい。更に好ましいのはSrである。また、Srの一部をCaで置換すると、発光色が長波長側にシフトし、Baで置換すると、短波長側にシフトする。
【0047】
R元素は、Mn,Ce,Pr,Nd,Sm,Eu,Tb,Dy,Ho,Er,Tm,Ybから選ばれる1種以上の元素を用いることができる。これらは、賦活剤である。特に、R元素は、このうち、Ce,Eu,Ybから選ばれる一種以上の元素であることが好ましい。なお、本実施形態の蛍光体においてRがCeの場合は白青色発光を、Euの場合は青緑色発光を、Ybの場合は緑色発光を示す。
【0048】
<平均粒径>
本発明の実施形態である蛍光体は、平均粒径0.1μm以上50μm以下の範囲の粉体(粉末)であることが好ましい。
平均粒径が0.1μmより小さいと、表面欠陥の影響が顕著となり、発光強度が低下し、平均粒径が50μmより大きいと、励起光の吸収が不十分となり、発光が低下するため、いずれも好ましくない。尚、蛍光体の粒度はレーザー回折・散乱法を用いて測定することができる。
【0049】
<平均アスペクト比>
本発明の実施形態である蛍光体は、蛍光体粉末を構成する一次粒子の平均アスペクト比が20以下であることが好ましい。これにより、樹脂中への分散性が向上するばかりか、励起光を効率的に吸収し、十分に高い発光強度が得られる。
平均アスペクト比が20より大きいと、樹脂への混練が困難となり、樹脂と蛍光体粒子との界面に空隙が生じやすくなる。また、平均アスペクト比が20より大きいと、粒子が交絡したり、励起光と平行に配列した蛍光体粒子の励起光の吸収が不十分となったりして、十分に高い発光強度が得られないため好ましくない。
尚、蛍光体粉末を構成する一次粒子の形状が、板状である場合は、その断面形状よりアスペクト比を求める。
【0050】
<微量添加元素>
本発明の実施形態である蛍光体において、微量添加元素と発光特性の関係を調べたところ、フッ素を5〜300ppmあるいはホウ素を10〜3000ppm含有する場合に、一層良好な発光特性が得られることを見出した。
この現象は、フッ素については5ppm以上、ホウ素については10ppm以上で顕著となるが、前者では300ppm、後者では3000ppmを超えた場合ではそれ以上の効果は得られなくなる。
【0051】
<酸素量>
本発明の実施形態である蛍光体に含有される酸素量が、前記一般式に基づいて計算される値より0.4質量%以下多いと、発光特性がより一層向上する。
ここに、0.4質量%以下多い酸素は、前記蛍光体の粉末粒子の少なくとも一部表面に形成された透明膜を構成する。この透明膜により、前記蛍光体の粉末粒子の耐酸化性が向上するとともに、封止樹脂との屈折率の差が低減する。これにより、前記蛍光体と封止樹脂との界面における光の損失が低減される。更に、前記蛍光体の粒子表面の不対電子や欠陥が低減することからも、発光強度の向上に有効である。
【0052】
<透明膜>
本発明の実施形態である蛍光体の粉末粒子の少なくとも一部表面に透明膜を形成してもよい。前記透明膜の厚さは、(10〜180)/nk(単位:ナノメートル)であり、ここで、nkは透明膜の屈折率で1.2〜2.5、好ましくは1.5以上2.0以下である。
前記透明膜の厚さがこの範囲より厚いと、前記透明膜自身が光を吸収するため発光強度が低下するので好ましくない。また、前記透明膜の厚さがこの範囲より薄いと、均一な透明膜の形成が困難となったり、蛍光体と封止樹脂との界面における光の損失の低減効果が不十分となるため、好ましくない。
尚、一般に、前記透明膜の適切な厚さは、前記透明膜の屈折率nkにより規定され、屈折率の高い透明膜の場合は厚さが薄くても、光の損失を低減するという目的を達し、屈折率が低い場合は前記目的を達するのに厚さを厚くすることを要する。
前記透明膜として好適な材質としては、シリカ、アルミナ、チタニア、マグネシア、フッ化マグネシウム等の無機物質、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリメチルスチレン等の樹脂を例示することができる。
【0053】
<分散性>
本発明の実施形態である蛍光体の粉末粒子の表面をカップリング処理してもよい。これにより、前記蛍光体を樹脂に分散させるときに、その分散性を向上させることができるとともに、樹脂と蛍光体との密着性を向上させることができる。
カップリング剤としては、シランカップリング剤、チタネート系カップリング剤、アルミネート系カップリング剤等を用いることができる。カップリング処理は、必要に応じて透明膜形成後に行ってもよい。
【0054】
<導電性を持つ無機物質>
本発明の実施形態である蛍光体を電子線で励起する用途に使用する場合は、導電性を持つ無機物質を混合することにより、前記蛍光体に導電性を付与することができる。
前記導電性を持つ無機物質としては、Zn、Al、Ga、In、Snから選ばれる1種または2種以上の元素を含む酸化物、酸窒化物、または窒化物、あるいはこれらの混合物を挙げることができる。
【0055】
<無機蛍光体や蛍光染料>
本発明の実施形態である蛍光体には必要に応じ、本発明の実施形態である蛍光体に用いる蛍光材料の発光色とは異なる色を発色する無機蛍光体や蛍光染料を混合することができる。
【0056】
以上のようにして得られる本発明の実施形態である蛍光体は、通常の酸化物蛍光体に比して、電子線やX線、および紫外線から可視光までの幅広い励起範囲を持ち、特に、賦活剤としてEuを用いた場合は、480nmから540nmの緑青色〜緑色を呈することが特徴である。
【0057】
以上の発光特性により、照明器具、表示器具、画像表示装置、顔料、紫外線吸収剤等の発光器具等に好適である。これに加えて、高温にさらしても劣化しないことから耐熱性に優れており、酸化雰囲気および水分環境下での長期間の安定性にも優れている。
【0058】
本発明の実施形態である蛍光体は、製造方法を規定しないが、下記の方法で輝度が高い蛍光体を製造することができる。
【0059】
<蛍光体の製造方法>
本発明の実施形態である蛍光体の製造方法は、原料を混練して原料混合物を作る工程(混練工程)と、該原料混合物を焼成する工程(焼成工程)と、該焼成された原料混合物の塊を粉砕分級する工程(第1粉砕分級工程)と、該焼成された原料混合物を熱処理する工程(熱処理工程)と、該熱処理物の塊を粉砕分級する工程(第2粉砕分級工程)とを備える。
なお、第1及び第2粉砕分級工程は省略しても良い。
【0060】
<混練工程>
原料としては、Aの金属、珪化物、酸化物、炭酸塩、窒化物、酸窒化物、塩化物、フッ化物、酸フッ化物、水酸化物、蓚酸塩、硫酸塩、硝酸塩、有機金属化合物あるいは加熱により酸化物、窒化物、酸窒化物を形成する化合物あるいは複化合物等を用いることができる。
また、Rの金属、珪化物、酸化物、炭酸塩、窒化物、酸窒化物、塩化物、フッ化物、酸フッ化物、水酸化物、蓚酸塩、硫酸塩、硝酸塩、有機金属化合物あるいは加熱により酸化物、窒化物、酸窒化物を形成する化合物あるいは複化合物等を用いることができる。
更に、Mの金属、珪化物、酸化物、炭酸塩、窒化物、酸窒化物、塩化物、フッ化物、酸フッ化物、水酸化物、蓚酸塩、硫酸塩、硝酸塩、有機金属化合物あるいは加熱により酸化物、窒化物、酸窒化物を形成する化合物あるいは複化合物を用いることができる。
このうち、Rの原料として好ましいのは酸化物、窒化物であり、Aの原料として好ましいのは、酸化物、炭酸塩、窒化物、珪化物であり、Mの原料として好ましいのは、窒化物、酸化物、珪化物である。
【0061】
なお、三価のユーロピウム原料を出発原料として用いてEuを賦活剤として含有する蛍光体を合成する場合には、前記三価のユーロピウム原料として、窒化ユーロピウムまたは酸化ユーロピウムを原料混合物の出発原料とするのがよい。
酸化ユーロピウムは、焼成過程で2価に還元される。また、一般に、窒化物原料には通常不純物の酸素が含まれているが、この酸素あるいは酸化ユーロピウムが含有する酸素は、蛍光体の不純物あるいは他の結晶相の構成元素となる。
更に、原料混合物が、炭素あるいは炭素含有化合物の共存下で焼成される場合には、酸化ユーロピウムが強く還元され、酸素量は低減される。
【0062】
ユーロピウムはプラス二価の場合に良好な発光を示す。そのため、原料として三価のユーロピウムを含有する化合物を用いた場合には、焼成過程で還元する必要がある。
本発明の実施形態である蛍光体に含まれる全ユーロピウムに占める二価と三価の割合は、二価が多いほど良く、全ユーロピウムに占める二価の割合は50%以上であることが好ましい。更に好ましくは、80%以上である。
三価のユーロピウムが残留すると、化学量論組成のずれが生じ、発光強度が低下するため好ましくない。
尚、ユーロピウムの二価と三価の割合は、X線吸収微細構造(XAFS:X−ray absorption fine structure)解析法により分析することができる。
【0063】
なお、必要に応じて、本発明の実施形態である蛍光体の粉末を予め合成し、これを種子として原料混合物に添加して、共に混合しても良い。前記種子の添加を行うと合成反応が促進されるため、低温での合成が可能となったり、より結晶度の高い蛍光体が得られて、発光強度が向上する場合がある。
前記種子の添加量は、蛍光体原料100質量部に対し、1〜50質量部の範囲が好ましい。
【0064】
本発明の蛍光体の製造方法は、Aが、II価の価数をとる元素から選ばれる一種以上の元素である場合、Aを含有する化合物として、ASi2,ASiN2,A2Si5N8,A3Al2N4,ASi6N8から選ばれる一種以上の原料を少なくとも出発原料としてもよい。また、前記出発原料には、Liを含有する化合物として、LiSi2N3を含んでもよい。
AあるいはLiを含有し、sの値がmより小さい組成の蛍光体を合成する場合は、AあるいはLiの窒化物等を原料として用いる必要があるが、これらの窒化物は、空気中で容易に酸化されてしまうため、秤量、混合等の工程は、空気を遮断したグローブボックス中で取り扱う必要がある。更に、一般に、焼成炉に原料混合物を充填し、炉内の空気を除去するまでは、原料混合物は空気にさらされるため、秤量、混合等の工程をグローブボックス中で行ったとしても、原料混合物の一定の酸化は避けられない。
一方、ASi2,ASiN2,A2Si5N8,A3Al2N4,ASi6N8等の化合物は、空気中で安定であるため、秤量、混合等の工程や、焼成炉に原料混合物を充填し、炉内の空気を除去するまでの間に酸化される心配はない。
【0065】
上記原料の粉末は、溶媒を用いない乾式ミルによっても混合可能だが、一般には湿式ミルにより溶媒とともに混合される。溶媒を用いた湿式ミルを用いたほうが、短時間で微視的に均一な混合粉末を得ることができる。
【0066】
ミルの種類としては、ボールミル、振動ミル、アトリッションミル等を用いることができるが、設備費用の観点からはボールミルが適している。
混合に用いる溶媒は、エタノール、メタノール、イソプロパノール、ヘキサン、アセトン、水等を用いることができるが、安全性等及び原料粉末の酸化防止を勘案すると、エタノール、ヘキサンの何れかが好ましい。
【0067】
原料粉末と混合溶媒の比率は、混合スラリーの粘度を決定する。好ましい混合スラリーの粘度は、50〜500cps程度である。混合スラリーの粘度が50cpsより小さいと、混合スラリーの乾燥に要するエネルギー量が増大するため好ましくない。一方、混合スラリーの粘度が500cpsを越えると、均一な混合粉末を得るのに長時間を要するため好ましくない。
【0068】
<造粒工程>
原料混合物を噴霧乾燥することにより原料粉末の凝集体の粒径を整える造粒工程を備えても良い。これにより、流動性に優れ、取り扱いが容易な原料粉末の凝集体を得ることができる。
湿式ミルで原料の粉末を溶媒と混合して混合スラリーを作製した後、これを乾燥して、混合粉末を得る。得られた混合スラリーは、乾燥機等に静置して溶媒を蒸発させてもよいが、スプレードライヤーを用いると、原料粉末の再分離を心配することなく、短時間で溶媒を除去した混合粉末を得ることができる。また、スプレードライヤーを用いて得られた混合粉末は、数十から数百μmの顆粒状を呈しているため、流動性に優れ、取り扱いが容易となる。
混合粉末は、必要に応じて加圧成型により40%以下の嵩密度を有する成形体とする。原料粉末を成形体とすることにより、焼成工程等での真空脱気による飛散を防止することができる。
【0069】
<焼成工程>
焼成は、原料混合物を焼成用容器に入れて、0.1MPa以上100MPa以下の圧力の窒素雰囲気中において行う。
窒素雰囲気圧力が0.1MPaより小さいと、原料混合物の揮散が顕著となり、組成のずれを生じ、発光強度が低下する。一方、窒素雰囲気圧力が100MPaより大きくても、原料混合物の揮散を抑制する効果は変わらないため、不経済であり、何れも好ましくない。
焼成温度は、1500℃以上2200℃以下の範囲で行なう。焼成温度が1500℃より低いと、本発明の実施形態である蛍光体を得るのに長時間を要し、2200℃より高いと、原料の溶融が始まるため、何れも好ましくない。
【0070】
前記焼成に用いる炉は、焼成温度が高温であり焼成雰囲気が窒素を含有する不活性雰囲気であることから、金属抵抗加熱方式または黒鉛抵抗加熱方式の炉が好適であり、炉の高温部の材料は、後述する理由からも、炭素を用いた電気炉が特に好適である。焼成の手法は、常圧焼結法やガス圧焼結法などの外部から機械的な加圧を施さない焼結手法が、嵩密度を低く保ったまま焼成するために好ましい。
【0071】
炭素若しくは炭素含有化合物の共存下で焼成すると、原料混合物が還元性雰囲気と接するため、特に酸素含有量が多い原料化合物を用いた場合には、高輝度の蛍光体が得られるため好ましい。
ここで用いられる炭素若しくは炭素含有化合物は、無定形炭素、黒鉛、炭化珪素等であればよく、特に限定されないが、好ましくは無定形炭素、黒鉛等である。カーボンブラック、黒鉛粉末、活性炭、炭化珪素粉末等及びこれらの成型加工品、焼結体等が例示可能であり、いずれも同様の効果を得ることができる。
共存の態様としては、粉末状の炭素を原料混合物中に含有させる場合、炭素若しくは炭素含有化合物からなる焼成用容器を用いる場合、炭素或いは炭素含有化合物以外の材質からなる焼成用容器の内部あるいは外部に炭素若しくは炭素含有化合物を配置する場合、炭素若しくは炭素含有化合物からなる発熱体や断熱体を用いる場合等がある。いずれの配置方法を採用しても同様の効果を得ることができる。
【0072】
上記の原料混合物の混合粉末は、嵩密度40%以下の充填率に保持した状態で焼成すると良い。
嵩密度40%以下の充填率に保持して焼成するのは、原料粉末の周りに自由な空間がある状態で焼成すると、反応生成物が自由な空間に結晶成長することによる結晶同士の接触が少なくなるため、表面欠陥が少ない結晶を合成することが出来るためである。
なお、嵩密度とは粉末の体積充填率であり、焼成用容器に充填したときの質量と体積の比を金属化合物の理論密度で割った値である。
また、前記焼成用容器の材質としては、アルミナ、カルシア、マグネシア、黒鉛或いは窒化硼素を使用することが出来るが、金属化合物との反応性が低いことから、窒化硼素焼結体が適している。
【0073】
原料混合物の充填量は、嵩密度40%以下の充填率を保持した状態で、原料混合物の嵩体積と焼成用容器の体積の比率として20体積%以上であることが好ましい。
原料混合物の充填量を焼成用容器の20体積%以上として焼成することにより、原料混合物に含まれる揮発性成分の揮散が抑制され、焼成過程での組成のずれが抑制される。また、焼成用容器中への原料混合物の充填量が増大し、経済的でもある。
【0074】
<第1粉砕分級工程>
焼成して得られた原料混合物の塊、すなわち、本発明の実施形態である蛍光体を含有する焼成塊は、アルミナ焼結体、酸化ジルコニウム焼結体、窒化ケイ素焼結体またはαサイアロン焼結体製の粉砕媒体もしくはライニング材からなるボールミル、ジェットミル等の工場で通常用いられる粉砕機(粉砕装置)により粉砕する。
粉砕は、前記塊が平均粒径50μm以下となるまで施す。平均粒径が50μmを超えると、粉体の流動性と樹脂への分散性が悪くなり、発光素子と組み合わせて発光装置を形成する際に部位により発光強度が不均一となる。平均粒径が20μm以下となるまで粉砕することがより好ましい。
平均粒径の下限は特に限定されないが、一般に0.5μm以下の粒度に粉砕するためには長時間を要し、更に、蛍光体粉末表面の欠陥が多くなることから、発光強度の低下をもたらすことがある。
【0075】
前記粉砕媒体もしくはライニング材を、アルミナ焼結体、酸化ジルコニウム焼結体、窒化ケイ素焼結体またはαサイアロン焼結体製とするのは、粉砕過程での不純物混入が抑制され、また、混入した不純物も発光強度を大きく低下させることがないためである。
なお、鉄や鉄属元素を含有する粉砕媒体もしくはライニング材からなる粉砕機を用いて粉砕すると、蛍光体が黒色に着色し、更に後述する熱処理工程で鉄や鉄属元素が蛍光体中に取り込まれ、著しく発光強度が低下するため好ましくない。
【0076】
前記粉砕により得られた蛍光体の粉末は、必要に応じて分級を行い、所望の粒度分布とする。
分級の方法としては、篩い分け、風力分級、液体中での沈降法、淘汰管分級などの方法を用いることができる。原料混合物の塊の粉砕物を水簸分級することが好ましい。
なお、この分級工程は表面処理工程の後で行っても差し支えない。
【0077】
<熱処理工程>
焼成後の蛍光体粉末、あるいは粉砕処理後の蛍光体粉末、もしくは分級による粒度調整後の蛍光体粉末は、必要に応じて窒素、アンモニア、水素から選ばれる1種または2種以上の雰囲気中、600℃以上2200℃以下の温度で熱処理する工程に供される。これにより、たとえば、粉砕工程で導入された欠陥などを低減し、発光強度を回復させることができる。
【0078】
前記熱処理温度が600℃より低いと、蛍光体の欠陥除去の効果が少なく、発光強度を回復させるためには長時間を要するため好ましくない。
一方、熱処理温度が2200℃より高いと、蛍光体粉末の一部が融解したり、粒子同士が再度固着するため好ましくない。
【0079】
前記熱処理は、窒素、アンモニア、水素から選ばれる1種または2種以上の雰囲気中で行うのがよい。これらの雰囲気中で熱処理を行うと、蛍光体粉末が酸化されることなく、欠陥を除去することができる。
また、雰囲気圧力は、焼成と同様、0.1MPa以上100MPa以下の圧力の下で行うのが好ましい。雰囲気圧力が0.1MPaより小さいと、熱処理温度によっては蛍光体構成元素の一部が揮散し、発光強度が低下する。一方、窒素雰囲気圧力が100MPaより大きくても、原料混合物の揮散を抑制する効果は変わらないため、不経済であり、何れも好ましくない。
【0080】
さらに、焼成後に生成物を、水または酸水溶液からなる溶剤で洗浄することにより、生成物に含まれるガラス相、第二相、または不純物相の含有量を低減させることができ、輝度が向上する。この場合、酸は、硫酸、塩酸、硝酸、フッ化水素酸、有機酸の単体またはこれらの混合物から選ぶことができ、なかでもフッ化水素酸と硫酸の混合物を用いると、不純物の除去効果が大きい。
【0081】
<第2粉砕分級工程>
更に必要に応じて、第1粉砕分級工程と同様にして、焼成された前記熱処理物の塊を、アルミナ焼結体、酸化ジルコニウム焼結体、窒化ケイ素焼結体またはα―サイアロン焼結体製の粉砕媒体もしくはライニング材からなる粉砕装置を用いて平均粒径が20μm以下となるまで粉砕する。
【0082】
<透明膜形成工程>
必要に応じて、前記蛍光体の少なくとも一部表面に透明膜を形成する透明膜形成工程を行う。
本発明の実施形態である蛍光体の表面に透明膜を形成する方法としては、たとえば、撹拌機や超音波分散装置を用いて、前記蛍光体の粉末をアルコール等の有機溶媒中に懸濁させ、当該縣濁液に有機金属錯体または金属アルコキシドとアンモニア水溶液等のアルカリ性の水溶液を滴下して、前記蛍光体の粒子表面に金属酸化物もしくは金属水酸化物の皮膜を形成して、その後必要に応じて空気中もしくは窒素等の非酸化性雰囲気中で焼成する方法がある。前記透明膜の厚さは、滴下条件や撹拌、縣濁条件を変化させて制御することができる。
【0083】
また、撹拌機や超音波分散装置を用いて、前記蛍光体の粉末を水(pHを調整した酸、アルカリもしくは緩衝液)に懸濁させ、pHを一定に保ちながら金属塩水溶液を滴下して、前記蛍光体の粒子表面に該金属の酸化物もしくは水酸化物の皮膜を形成した後、ろ過、洗浄、乾燥し、必要に応じて空気中もしくは窒素等の非酸化性雰囲気中で焼成を行ってもよい。なお、この方法においても金属塩水溶液の滴下条件や撹拌、縣濁条件を変化させることにより、前記透明膜の厚さを制御することができる。
【0084】
<不純物>
発光輝度が高い蛍光体を得るには、不純物の含有量は極力少ない方が好ましい。特に、Fe、Co、Ni不純物元素が多く含まれると発光が阻害されるので、これらの元素の合計が500ppm以下となるように、原料粉末の選定および合成工程の制御を行うことが好ましい。
【0085】
本発明の実施形態である蛍光体の製造方法は、本発明の実施形態である蛍光体を構成しうる原料混合物を、0.1MPa以上100MPa以下の圧力の窒素雰囲気中において1500℃以上2200℃以下の温度範囲で焼成する構成なので、発光強度の高い蛍光体を得ることができる。
【0086】
<発光装置>
本発明の実施形態である発光装置は、少なくとも発光光源と本発明の実施形態である蛍光体とを用いて構成される。前記発光装置を利用した照明装置としては、LED照明装置、EL照明装置、蛍光ランプなどがある。
たとえば、LED照明装置は、本発明の実施形態である蛍光体を用いて、特開平5−152609号公報、特開平7−99345号公報などに記載されているような公知の方法により製造することができる。
【0087】
「第一の実施形態」
本発明の発光装置の第一の実施形態として、砲弾型白色発光ダイオードランプ(LED照明装置:LEDデバイス)について説明する。
図1は、本発明の発光装置の第一の実施形態である砲弾型白色発光ダイオードランプ1の断面図である。
図1に示すように、砲弾型白色発光ダイオードランプ1は、第一のリードワイヤ2と、第二のリードワイヤ3とを備え、第一のリードワイヤ2は凹部2aを有し、その凹部2aに発光ダイオード素子(LEDチップ)4が蔵置されている。発光ダイオード素子4は、下部電極4aが凹部2aの底面と導電性ペーストによって電気的に接続されており、上部電極4bが第二のリードワイヤ3とボンディングワイヤ(金細線)5によって電気的に接続されている。
【0088】
第一の樹脂(封止樹脂)6は蛍光体7が分散している透明な樹脂であり、発光ダイオード素子4の全体を被覆している。第一の樹脂6は蛍光体7が分散している凹部2aを含む第一のリードワイヤ2の先端部2b、発光ダイオード素子4、蛍光体7を分散した第一の樹脂6は、透明な第二の樹脂(別の封止樹脂)8によって封止されている。
【0089】
第二の樹脂8は全体が略円柱形状であり、その先端部がレンズ形状の曲面となっているため、砲弾型と通称されている。第一の樹脂6と第二の樹脂8の材質としては、シリコーン樹脂が好ましいが、ポリカーボネート樹脂、エポキシ樹脂等の他の樹脂あるいはガラス等の透明材料であっても良い。できるだけ紫外線光による劣化の少ない材料を選定することが好ましい。
第一の樹脂6と第二の樹脂8は、同じ樹脂を用いても良いし、異なる樹脂を用いても良いが、製造の容易さや接着性の良さなどから、同じ樹脂を用いるほうが好ましい。
【0090】
蛍光体7として一部表面に透明膜を形成したものを用いる場合には、蛍光体7を分散させる第一の樹脂6の屈折率は、前記透明膜の屈折率に近いものが好ましい。これにより、前記透明膜と第一の樹脂6との界面における反射を抑制することができる。
なお、この場合、蛍光体7を分散させた第一の樹脂6の外側に、第一の樹脂6よりも屈折率が低い樹脂(第2の樹脂)を配置すると、更に高い輝度を有する発光装置とすることができる。
【0091】
発光ダイオード素子(LEDチップ)4の発光によって、第1の樹脂6に分散された蛍光体7が励起される構成なので、発光強度を向上させることができる。また、様々な発光色を呈するようにすることができる。さらに、白色発光の場合には、演色性を高くすることができる。
【0092】
「第二の実施形態」
本発明の発光装置の第二の実施形態として、基板実装用チップ型白色発光ダイオードランプ(LED照明装置:LEDデバイス)について説明する。
図2は、本発明の発光装置の第二の実施形態である基板実装用チップ型白色発光ダイオードランプ11の断面図である。
図2に示すように、基板実装用チップ型白色発光ダイオードランプ11は、可視光反射率の高い白色のアルミナセラミックスを用いたセラミックス基板19に第一のリードワイヤ12と、第二のリードワイヤ13が固定されており、それらの端12a、端13aは基板19のほぼ中央部に位置し、反対側の端12b、端13bはそれぞれ外部に出ていて、電気基板への実装時にはんだ付けされる電極となっている。第一のリードワイヤ12の端12aは、基板中央部となるように発光ダイオード素子(LEDチップ)4が蔵置され固定されている。発光ダイオード素子4の下部電極4aと第一のリードワイヤ12とは導電性ペーストによって電気的に接続されており、上部電極4bと第二のリードワイヤ13とがボンディングワイヤ(金細線)15によって電気的に接続されている。
【0093】
第一の樹脂(封止樹脂)16は、蛍光体17が分散している透明な樹脂であり、発光ダイオード素子4の全体を被覆している。また、セラミックス基板19上には、壁面部材20が固定されていて、壁面部材20の中央部には椀状の穴20aが形成されている。
穴20aは、発光ダイオード素子4及び蛍光体17を分散させた第一の樹脂16をおさめるものであり、中央に面した部分は、斜面20bとなっている。この斜面20bは光を前方に取り出すための反射面であって、その斜面20bの曲面形は光の反射方向を考慮して決定される。また、少なくとも反射面を構成する斜面20bは、白色または金属光沢を持った可視光線反射率の高い面となっている。
【0094】
壁面部材20は、例えば白色のシリコーン樹脂などで形成されていればよく、中央部の穴20aは、チップ型発光ダイオードランプの最終形状としては凹部を形成するが、ここには発光ダイオード素子4及び蛍光体17を分散させた第一の樹脂16のすべてを封止するようにして透明な第二の樹脂(別の封止樹脂)18を充填している。
第一の樹脂16と第二の樹脂18の材質は、シリコーン樹脂が好ましいが、ポリカーボネート樹脂、エポキシ樹脂等の他の樹脂あるいはガラス等の透明材料であっても良い。できるだけ紫外線光による劣化の少ない材料を選定することが好ましい。
第一の樹脂16と第二の樹脂18は、同じ樹脂を用いても良いし、異なる樹脂を用いても良いが、製造の容易さや接着性の良さなどから、同じ樹脂を用いるほうが好ましい。
発光ダイオード素子(LEDチップ)4の発光によって、第1の樹脂16に分散された蛍光体17が励起される構成なので、発光強度を向上させることができる。また、様々な発光色を呈するようにすることができる。さらに、白色発光の場合には、演色性を高くすることができる。
【0095】
「第三の実施形態」
本発明の発光装置の第二の実施形態として、基板実装用チップ型白色発光ダイオードランプ(LED照明装置:LEDデバイス)について説明する。
図3は、本発明の発光装置の第三の実施形態である基板実装用チップ型白色発光ダイオードランプ111の断面図である。
図3に示すように、基板実装用チップ型白色発光ダイオードランプ111は、可視光反射率の高い白色のアルミナセラミックスを用いたセラミックス基板19に第一のリードワイヤ12と、第二のリードワイヤ13が固定されており、それらの端12a、端13aは基板19のほぼ中央部に位置し、反対側の端12b、端13bはそれぞれ外部に出ていて、電気基板への実装時にはんだ付けされる電極となっている。第一のリードワイヤ12の端12aは、基板中央部となるように発光ダイオード素子(LEDチップ)24が蔵置され固定されている。
【0096】
なお、発光ダイオード素子24としては、350μm角の大きさの青色LEDチップが用いられ、第一のリードワイヤ(リード)12上に樹脂ペーストでダイボンドされている。また、リードワイヤ(リード)12、13としては、銀メッキを施された銅製のリードフレームが用いられ、基板19としては、ナイロン樹脂で成型したセラミックス基板が用いられている。
【0097】
発光ダイオード素子24は、一面側に2つの電極24c、24dが形成された発光素子が用いられており、一の電極24aと第一のリードワイヤ(リード)12とがボンディングワイヤ(金細線)15によって電気的に接続されており、他の電極24bと第二のリードワイヤ(リード)13とがボンディングワイヤ(金細線)15によって電気的に接続されている。
【0098】
第二の実施形態と同様に、壁面部材20が備えられている。蛍光体を含有させた第一の樹脂16を、発光ダイオード素子24を覆うように、かつ、壁面部材20の穴20aを埋めるように適量滴下され、これが硬化させて基板実装用チップ型白色発光ダイオードランプ(LED照明装置)(発光装置)とされている。
【0099】
なお、発光ダイオード素子24としては、350μm角の大きさの青色LEDチップを複数実装した発光装置パッケージを製作し、これをトリムして個片とした発光装置パッケージから色調、発光強度で選別し、製品としてもよい。
【0100】
発光ダイオード素子(LEDチップ)24の発光によって、第1の樹脂16に分散された蛍光体17が励起される構成なので、発光強度を向上させることができる。また、様々な発光色を呈するようにすることができる。さらに、白色発光の場合には、演色性を高くすることができる。
【0101】
「第四の実施形態」
本発明の発光装置の第四の実施形態として、基板実装用チップ型白色発光ダイオードランプ(LED照明装置:LEDデバイス)について説明する。
図4は、本発明の発光装置の第四の実施形態である基板実装用チップ型白色発光ダイオードランプ112の断面図である。
図4に示すように、基板実装用チップ型白色発光ダイオードランプ112は、蛍光体が分散されていない第二の樹脂18が設けられた他は第三の実施形態の発光装置111と同一の構成とされている。基板中央部に発光ダイオード素子(LEDチップ)24が蔵置され固定されている。なお、同一の部材については同一の符号を付して示している。
発光ダイオード素子(LEDチップ)24の発光によって、第1の樹脂(封止樹脂)16に分散された蛍光体17が励起される構成なので、発光強度を向上させることができる。また、様々な発光色を呈するようにすることができる。さらに、白色発光の場合には、演色性を高くすることができる。
【0102】
「第五の実施形態」
本発明の発光装置の第五の実施形態として、基板実装用チップ型白色発光ダイオードランプ(LED照明装置:LEDデバイス)について説明する。
図5は、本発明の発光装置の第五の実施形態である基板実装用チップ型白色発光ダイオードランプ113の断面図である。
図5に示すように、基板実装用チップ型白色発光ダイオードランプ113は、蛍光体23が発光ダイオード素子(LEDチップ)24の一面を覆うように直接付着されており、蛍光体が分散されていない第二の樹脂(別の封止樹脂)18が発光ダイオード素子24を覆うように、かつ、壁面部材20の穴20aを埋めるように形成されている他は、第三の実施形態の発光装置111と同一の構成とされている。基板中央部に発光ダイオード素子(LEDチップ)24が蔵置され固定されている。なお、同一の部材については同一の符号を付して示している。
発光ダイオード素子(LEDチップ)24の発光によって、発光ダイオード24の一面に形成された蛍光体23が励起される構成なので、発光強度を向上させることができる。また、様々な発光色を呈するようにすることができる。さらに、白色発光の場合には、演色性を高くすることができる。
【0103】
以下、第一の実施形態から第五の実施形態までの発光装置に共通する構成及び効果について説明する。
<発光光源>
発光光源(発光ダイオード素子4,24)は、330〜470nmの波長の光を発するものが望ましく、中でも、330〜420nmの紫外(または紫)発光素子または420〜470nmの青色発光素子が好ましい。
【0104】
<LEDチップ>
本発明の実施形態である発光装置1、11、111、112、113は、発光光源としてLEDチップを用いる構成なので、装置サイズを小さくすることができ、消費電力を抑えることができるほか、安価に大量に取り扱うことができる。
また、本発明の実施形態である蛍光体を含ませる構成なので、LEDが発する青色の光を励起光源として、一般的に発光強度が低い波長領域の発光強度を上げ、白色発光の演色性を向上させることができる。特に、演色性70以上のLED発光装置とすることができる。
【0105】
前記発光光源としてLEDチップを用いる場合は、発光効率の点からは窒化ガリウム系化合物半導体が好ましく用いられる。
LEDチップはMOCVD法やHVPE法等により基板上に窒化物系化合物半導体を形成させて得られ、好ましくはInαAlβGa1−α−βN(但し、0≦α、0≦β、α+β≦1)を発光層として形成させる。半導体の構造としては、MIS接合、PIN接合やpn接合などを有するホモ構造、ヘテロ構造あるいはダブルヘテロ構造のものが挙げられる。半導体層の材料やその混晶度によって発光波長を種々選択することができる。また、半導体活性層として量子効果が生ずる薄膜に形成させた単一量子井戸構造や多重量子井戸構造とすることもできる。
【0106】
LEDチップとして用いられる窒化ガリウム系化合物半導体は、2.4〜2.5程度の非常に高い屈折率を持つ。
そのため、前記発光光源として窒化ガリウム系化合物半導体を用いる場合は、高い屈折率を有する樹脂が求められる。蛍光体が含有される第1の樹脂は、この観点からも、高い屈折率を有する樹脂が好ましい。一方、発光素子からの光の取り出し効率を高めるためには、第1の樹脂の外側に配置される第2の樹脂は、第1の樹脂よりも低い屈折率の樹脂の使用が好ましい。
【0107】
<EL素子>
前記発光光源としてEL素子を用いる場合も、発光スペクトルが330nm〜470nmに発光可能なものであれば際限なく使用可能であり、したがって、無機、有機いずれのEL素子も使用可能である。
前記EL素子が無機ELである場合、薄膜型、分散型更に直流駆動型、交流駆動型のいずれであっても差し支えない。また、EL発光にあずかる蛍光体も、特に限定されないが、硫化物系が好適に用いられる。
前記EL素子が有機ELである場合、積層型、ドーピング型更に低分子系、高分子系いずれであっても差し支えない。
【0108】
本発明の実施形態である発光装置1、11、111、112、113において本発明の実施形態である蛍光体を単独で使用する方法の他に、他の発光特性を持つ蛍光体と併用することによって、所望の色を発する発光装置を構成することができる。
この一例として、330〜420nmの紫外LED発光素子と、この波長で励起され420nm以上480nm以下の波長に発光ピークを持つ青色蛍光体と、発光色を緑色に調整した本発明の実施形態である蛍光体と、赤色蛍光体との組み合わせがある。前記青色蛍光体としてはBaMgAl10O17:Eu等が、前記赤色蛍光体としてはCaAlSiN3:Eu等を挙げることができる。この構成では、LEDが発する紫外線が各蛍光体に照射されると、青、緑、赤の3色の光が同時に発せられ、これらの光が混合されて白色の発光装置となる。
また、本発明の実施形態である発光装置1、11、111、112、113は、330〜420nmの紫外LED発光素子と、BaMgAl10O17:Eu等の青色蛍光体と、発光色を青緑に調整した本発明の実施形態である蛍光体と、発光色を緑色に調整した本発明の実施形態である蛍光体もしくはβ―サイアロン蛍光体等の緑色蛍光体と、α−サイアロン等の黄色蛍光体と、CaAlSiN3:Eu等の赤色蛍光体とを組み合わせることにより、極めて演色性の高い発光装置とすることができる。
【0109】
また、本発明の実施形態である発光装置1、11、111、112、113は、420〜470nmの青色LED発光素子と蛍光体から構成される発光装置であって、発光色を緑色に調整した本発明の実施形態である蛍光体と、CaAlSiN3:Eu等の赤色蛍光体と、を組み合わせることによって、白色の発光装置となる。
また、本発明の実施形態である発光装置1、11、111、112、113は、420〜470nmの青色LED発光素子に、発光色を青緑に調整した本発明の実施形態である蛍光体、発光色を緑色に調整した本発明の実施形態である蛍光体もしくはβ―サイアロン蛍光体、もしくはCa3Sc2Si3O12:Ce等の緑色蛍光体、α−サイアロン、YAG:Ce等の黄色蛍光体、CaAlSiN3:Eu等の赤色蛍光体とを組み合わせることにより、極めて演色性の高い発光装置とすることができる。
【0110】
さらにまた、本発明の実施形態である発光装置1、11、111、112、113は、紫外光によっても励起することが可能な蛍光体と、その励起光源として、発光波長の最大強度が380〜410nmにあるLEDを構成要素として備えることができる構成なので、蛍光体の発する光のみを色として感知する有色のLEDデバイスをなすことができる。
例えば、青色、青緑色、緑色のLEDを作製することが可能である。また、本発明の実施形態である蛍光体は、発光特性の温度による影響も受けにくいが、このような蛍光体からの発光を用いた有色LEDは、特に緑色のLEDにおいて課題となっている電流値による波長のシフトが見られないため優れている。
【0111】
<発光装置の形態>
本発明の実施形態である発光装置1、11、111、112、113は、LEDチップを光源として使用する場合には、発光装置の形態が、砲弾型LEDデバイスまたは表面実装型LEDデバイスのいずれかであることが一般的である。これらの形態のデバイスは規格が確立されており広く使用されているので、産業的な使用が容易である。
更に、発光装置の形態が、配線された基板に直接LEDチップを実装したチップ・オン・ボードであっても良い。この場合には、用途にカスタマイズした形態をとることができ、温度特性に優れる本蛍光体の特性を生かした用途に使用することができるようになる。
【0112】
<樹脂部材>
本発明の実施形態である発光装置1、11、111、112、113は、LEDデバイスを構成するする樹脂部材のうち、少なくとも基板および/またはリフレクタ部に、樹脂製またはセラミクス製の部材を含むことが望ましい。
樹脂製の部材は、安価で大量に製造することができるので好適である。樹脂の種類としては、耐熱性が高く、反射率も高いものが望ましく、ナイロン樹脂などが望ましい。熱硬化性樹脂も、耐熱性の高いとともに、比較的安価で大量に製造することが可能であるので、好ましい。また、セラミクス製の部材も、耐熱性に非常に優れているので好ましい。
【0113】
<封止樹脂>
本発明の実施形態である発光装置1、11、111、112、113は、LEDチップを取り囲むように形成された封止樹脂の中に蛍光体を分散させる構成とすることができる。このような構成にする事で、発光装置の製造を安易することができる。
また、このLEDチップの封止樹脂が、少なくとも一部の領域にシリコーン樹脂を含むことが望ましい。シリコーン樹脂は短波長の光に対して耐性を持つので、短波長のLEDチップを封止するのに好適である。更に、樹脂が柔軟性を持つメチルシリコーン樹脂であることで、ボンディングワイヤの断裂を回避することができる。一方、剛性を持つフェニルシリコーン樹脂であっても良い。この場合、湿気などがチップに貫通することを防止し、高湿などの厳しい環境においての使用に際して好適である。
【0114】
<蛍光体分散方法>
本発明の実施形態である発光装置1、11、111、112、113においては、LEDチップの近傍が高密度になるように蛍光体を分散させていることが望ましい。LEDチップの近傍に蛍光体を配置することにより、蛍光体に効率的に励起光を導入させることができる。
また、本発明の実施形態である蛍光体は、他の蛍光体に比較して温度による特性の変化が少ないので、LEDチップの近傍に蛍光体を配置することで、LEDチップから発生する熱を受けて蛍光体の温度が上がってしまったとしても、特性の変化が小さくて済む。
LEDチップの近傍に蛍光体を配置する方法としては、LEDチップの近傍を蛍光体を含む第一の樹脂(封止樹脂)により封止し、その外周を第二の樹脂(別の封止樹脂)で封止する方法を採ることができる。この方法は安価で実施できるので望ましい。第一の樹脂は耐熱性の高いシリコーン樹脂を含むことが望ましい。
同様に、LEDチップの近傍に蛍光体を配置する方法としては、LEDチップに直接蛍光体を付着させる方法を採る事もできる。例えば、LEDチップの少なくとも一面を覆って直接蛍光体を付着させることができる。スピンコートや、蒸着、スパッタ法などを用いて、ウエーハの段階からLEDチップの少なくとも一面に層状に蛍光体を堆積させることができる。これらの方法によれば、蛍光体層を、制御して均一に形成させることができるので好適である。この場合、蛍光体層の厚みを1μmから100μmとすることで、蛍光体層を透過してLEDチップからの光を取り出すことができるので、混色して白色光を作り出すのに好適である。
【0115】
本発明の実施形態である発光装置1、11、111、112、113においては、使用する蛍光体の温度特性が良好であるため、大量の熱を発生する使用方法で使用することが望ましい。例えば、LEDデバイスが1パッケージ当り0.2W以上の電力を投入して使用される場合に望ましい。更に、含有されるLEDチップが、1パッケージ1個当りの平面面積密度にして1.5×104W/m2以上の電力を投入して使用される場合に望ましい。更には、5×104W/m2以上の電力を投入して使用される場合がより望ましい。
また、一般的には、大きな電力を投入して使用する場合とは、LEDデバイスに含まれるLEDチップが一辺350μm角の面積よりも大きい場合、複数のLEDチップが含まれる場合、LEDチップがフリップチップである場合などが想定される。
【0116】
本発明の実施形態である発光装置1、11、111、112、113は、紫外光によっても励起が可能な構成なので、数種類の蛍光体からの発光を混色することにより白色LEDとすることができる。この場合、本発明の実施形態である蛍光体によって、青、緑のどちらか一方あるいはその両方の発色を行うことが可能であるが、これら以外に赤色を呈する蛍光体を含有させる必要がある。このような3色の混色によって形成される白色は、演色性を良好とすることができる。
また、緑のみを本発明の実施形態である蛍光体とし、励起光と青色の発色をLEDからの発光で行わせることもできる。
更に、組成を異とした2種類以上の本発明の実施形態である蛍光体が含ませることができる構成なので、発光されるスペクトルを、演色性に優れる、連続したスペクトルの発光とすることができる。
更に、組成を段階的に変化させた蛍光体群を含有させることで、望むような連続スペクトルを形成することもできる。さらに、合成された発光スペクトルの半値幅が、100nm以上とされていることで、良好な演色性を得ることができる。
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明する。しかし、本発明はこれらの実施例にのみ限定されるものではない。
【実施例】
【0117】
<実施例1〜7>
まず、実施例1〜7の蛍光体の製造方法について説明する。
原料粉末は、平均粒径0.5μm、酸素含有量0.93質量%、α型含有率92%の窒化ケイ素粉末(Si3N4)、窒化アルミニウム粉末(AlN)、SrSi2粉末、酸化ストロンチウム粉末(SrO)、酸化ユーロピウム粉末(Eu2O3)を用いた。
一般式(A1−xRx)mSi6n−5m−sAl7m−4n+sOsNm+4n−sにおいて、表1に示すm,n,s,xの値となるように、表2に示す配合(質量比、以下、他の実施例においても同様)で上記原料粉末を秤量し、メノウ乳棒と乳鉢で30分間混合を行なった。尚、RはEuとした。
【0118】
【表1】
【0119】
【表2】
【0120】
得られた混合粉末をアルミニウム製の金型に入れて嵩密度約25%の成形体を作製し、窒化ホウ素(hBN)製のるつぼに充填した。前記成形体の体積とルツボ体積の比率は、約80%とした。
【0121】
この混合粉末を充填した前記窒化ホウ素製のるつぼを、炭素繊維成形体を断熱材とした黒鉛抵抗加熱方式の電気炉にセットした。
焼成は、まず、拡散ポンプにより焼成雰囲気を真空とし、室温から1000℃まで毎時500℃の速度で加熱し、1000℃で純度が99.999体積%の窒素を導入して、圧力を0.9MPaとし、毎時600℃で1900℃まで昇温し、1900℃で2時間保持して行った。
焼成後、この得られた焼成体(焼成塊)を粗粉砕の後、窒化ケイ素焼結体製の乳鉢を用いて手で粉砕し、30μmの目のふるいを用いて、平均粒径11μmの蛍光体粉末(実施例1〜7)とした。
【0122】
次に、これらの蛍光体粉末(実施例1〜7)の発光スペクトルおよび励起スペクトルを、蛍光分光光度計を用いて測定した。
図6は、実施例6の蛍光体の発光スペクトルおよび励起スペクトルの測定結果である。図6に示すように、実施例6の蛍光体の励起スペクトルのピーク波長は370nmであり、450nmの青色光励起による発光スペクトルのピーク波長は504nmであった。また、ピーク波長の発光強度は100カウントであった。
【0123】
これらの蛍光体粉末(実施例1〜7)の発光ピークの発光強度及び発光波長を表2に示す。なお、発光強度のカウント値は任意単位であり、測定装置や条件によって変化する(以下、同じ)。
【0124】
図7は、実施例6の蛍光体の粉末X線回折パターンの測定結果である。図7に示すように、主要回折ピークからなる粉末X線回折パターンが得られた。
実施例1〜5、実施例7の蛍光体においても、実施例6と同様に、主要回折ピークからなる粉末X線回折パターンが得られた。
これらの蛍光体粉末(実施例1〜7)を湿度80%温度80℃の条件で100時間暴露させたが、輝度の低下はほとんど見られなかった。
【0125】
次に、これらの蛍光体粉末(実施例1〜7)に、必要に応じて365nmの紫外線を照射しながら光学顕微鏡観察を行った。
試料の体色、粒子形状並びに紫外線照射時の発光色から、β―サイアロン、未反応の窒化ケイ素或いは窒化アルミニウム、酸窒化物ガラス、SrSiAl2N2O3、Sr2Al2Si10N14O4、SrSi(10−n)Al(18+n)OnN(32−n)(n〜1)、SrSi6N8から選ばれる一種以上からなる非発光相もしくは504nm付近の青緑とは異なる発光を示す結晶相の割合は、体積比で20%以下であることを確認した。
【0126】
<実施例8〜14>
本発明の蛍光体の実施例8〜14について説明する。
原料粉末は、平均粒径0.5μm、酸素含有量0.93質量%、α型含有率92%の窒化ケイ素粉末(Si3N4)、窒化アルミニウム粉末(AlN)、SrSi2粉末、酸化ストロンチウム粉末(SrO)、酸化ユーロピウム粉末(Eu2O3)を用いた。
一般式(A1−xRx)mSi6n−5m−sAl7m−4n+sOsNm+4n−sにおいて、表3に示すm,n,s,xの値となるように、表4に示す配合(質量比、以下、他の実施例においても同様)で上記原料粉末を秤量し、メノウ乳棒と乳鉢で30分間混合を行なった。尚、RはEuとした。
【0127】
【表3】
【0128】
【表4】
【0129】
得られた混合粉末をアルミニウム製の金型に入れて嵩密度約26%の成形体を作製し、窒化ホウ素製のるつぼに充填した。成形体体積とルツボ体積の比率は、約80%とした。
【0130】
この混合粉末を充填した窒化ホウ素製るつぼを、炭素繊維成形体を断熱材とした黒鉛抵抗加熱方式の電気炉にセットした。
焼成は、まず、拡散ポンプにより焼成雰囲気を真空とし、室温から1000℃まで毎時500℃の速度で加熱し、1000℃で純度が99.999体積%の窒素を導入して圧力を0.9MPaとし、毎時600℃で1900℃まで昇温し、1900℃で2時間保持して行った。
焼成後、この得られた焼成体を粗粉砕の後、窒化ケイ素焼結体製の乳鉢を用いて手で粉砕し、30μmの目のふるいを用いて、平均粒径12μmの蛍光体粉末(実施例8〜14)とした。
【0131】
まず、これらの蛍光体粉末(実施例8〜14)の発光スペクトルおよび励起スペクトルを、蛍光分光光度計を用いて測定した。
図8は、実施例8の蛍光体の発光スペクトルおよび励起スペクトルの測定結果である。図8に示すように、実施例8の蛍光体の励起スペクトルのピーク波長は366nmであり、発光スペクトルのピーク波長は496nmであった。
【0132】
図9は、実施例9の蛍光体の発光スペクトルおよび励起スペクトルの測定結果である。図9に示すように、実施例9の蛍光体の励起スペクトルのピーク波長は372nmであり、発光スペクトルのピーク波長は497nmであった。
【0133】
図10は、実施例10の蛍光体の発光スペクトルおよび励起スペクトルの測定結果である。図10に示すように、実施例10の蛍光体の励起スペクトルのピーク波長は379nmであり、発光スペクトルのピーク波長は504nmであった。
【0134】
図11は、実施例11の蛍光体の発光スペクトルおよび励起スペクトルの測定結果である。図11に示すように、実施例11の蛍光体の励起スペクトルのピーク波長は375nmであり、発光スペクトルのピーク波長は508nmであった。
【0135】
図12は、実施例12の蛍光体の発光スペクトルおよび励起スペクトルの測定結果である。図12に示すように、実施例12の蛍光体の励起スペクトルのピーク波長は397nmであり、発光スペクトルのピーク波長は511nmであった。
【0136】
図13は、実施例13の蛍光体の発光スペクトルおよび励起スペクトルの測定結果である。図13に示すように、実施例13の蛍光体の励起スペクトルのピーク波長は411nmであり、発光スペクトルのピーク波長は518nmであった。
【0137】
図14は、実施例14の蛍光体の発光スペクトルおよび励起スペクトルの測定結果である。図14に示すように、実施例14の蛍光体の励起スペクトルのピーク波長は440nmであり、発光スペクトルのピーク波長は522nmであった。
【0138】
蛍光体粉末(実施例8〜14)の発光ピークの発光強度及び発光波長を表4に示す。なお、発光強度のカウント値は任意単位である。
【0139】
これらの蛍光体粉末(実施例8〜14)を湿度80%温度80℃の条件で100時間暴露させたところ、輝度の低下はほとんど見られなかった。
【0140】
次に、これらの蛍光体粉末(実施例8〜14)に、必要に応じて365nmの紫外線を照射しながら光学顕微鏡観察を行った。
試料の体色、粒子形状並びに紫外線照射時の発光色から、β―サイアロン、未反応の窒化ケイ素或いは窒化アルミニウム、酸窒化物ガラス、SrSiAl2N2O3、Sr2Al2Si10N14O4、SrSi(10−n)Al(18+n)OnN(32−n)(n〜1)、SrSi6N8から選ばれる一種以上からなる非発光相もしくは500〜520nm付近の青緑とは異なる発光を示す結晶相の割合は、体積比で20%以下であることを確認した。
【0141】
<実施例15〜21>
本発明の蛍光体の実施例15〜21について説明する。
原料粉末は、平均粒径0.5μm、酸素含有量0.93質量%、α型含有率92%の窒化ケイ素粉末(Si3N4)、窒化アルミニウム粉末(AlN)、SrSi2粉末、酸化ストロンチウム粉末(SrO)、酸化ユーロピウム粉末(Eu2O3)を用いた。
一般式(A1−xRx)mSi6n−5m−sAl7m−4n+sOsNm+4n−sにおいて、表5に示すm,n,s,xの値となるように、表6に示す配合(質量比、以下、他の実施例においても同様)で上記原料粉末を秤量し、メノウ乳棒と乳鉢で30分間混合を行なった。尚、RはEuとした。
【0142】
【表5】
【0143】
【表6】
【0144】
得られた混合粉末を、アルミニウム製の金型に入れて嵩密度約24%の成形体を作製し、窒化ホウ素製のるつぼに充填した。成形体体積とルツボ体積の比率は、約80%とした。
【0145】
この混合粉末を充填した窒化ホウ素製るつぼを、炭素繊維成形体を断熱材とした黒鉛抵抗加熱方式の電気炉にセットした。
焼成は、まず、拡散ポンプにより焼成雰囲気を真空とし、室温から1000℃まで毎時500℃の速度で加熱し、1000℃で純度が99.999体積%の窒素を導入して圧力を0.9MPaとし、毎時600℃で1900℃まで昇温し、1900℃で2時間保持して行った。
焼成後、この得られた焼成体を粗粉砕の後、窒化ケイ素焼結体製の乳鉢を用いて手で粉砕し、30μmの目のふるいを用いて、平均粒径12μmの蛍光体粉末(実施例15〜21)とした。
【0146】
まず、これらの蛍光体粉末(実施例15〜21)の発光スペクトルおよび励起スペクトルを、蛍光分光光度計を用いて測定した。
各蛍光体の励起スペクトルのピーク波長は370nm付近であり、450nmの青色光励起により、青緑色から緑色の発光を示した。蛍光体粉末(実施例15〜21)の発光ピークの発光強度及び発光波長を表6に示す。なお、発光強度のカウント値は任意単位である。
【0147】
この蛍光体粉末(実施例15〜21)を湿度80%温度80℃の条件で100時間暴露させたところ、輝度の低下はほとんど見られなかった。
【0148】
次に、これらの蛍光体粉末(実施例15〜21)に、必要に応じて365nmの紫外線を照射しながら光学顕微鏡観察を行った。
試料の体色、粒子形状並びに紫外線照射時の発光色から、β―サイアロン、未反応の窒化ケイ素或いは窒化アルミニウム、酸窒化物ガラス、SrSiAl2N2O3、Sr2Al2Si10N14O4、SrSi(10−n)Al(18+n)OnN(32−n)(n〜1)、SrSi6N8から選ばれる一種以上からなる非発光相もしくは504nm付近の青緑とは異なる発光を示す結晶相の割合は、体積比で20%以下であることを確認した。
【0149】
<実施例22>
本発明の蛍光体の実施例22について説明する。
原料粉末は、平均粒径0.5μm、酸素含有量0.93質量%、α型含有率92%の窒化ケイ素粉末(Si3N4)、窒化アルミニウム粉末(AlN)、酸化アルミニウム粉末(Al2O3)、Sr2Si5N8粉末、Eu2Si5N8粉末を用いた。
一般式(A1−xRx)mSi6n−5m−sAl7m−4n+sOsNm+4n−sにおいて、表7に示すm,n,s,xの値となるように、表8に示す配合(質量比、以下、他の実施例においても同様)で上記原料粉末を秤量し、メノウ乳棒と乳鉢で30分間混合を行なった。尚、RはEuとした。
【0150】
【表7】
【0151】
【表8】
【0152】
得られた混合粉末を、アルミニウム製の金型に入れて嵩密度約25%の成形体を作製し、窒化ホウ素製のるつぼに充填した。成形体体積とルツボ体積の比率は、約80%とした。なお、粉末の秤量、混合、成形の各工程は全て、大気中で操作を行った。
【0153】
この混合粉末を充填した窒化ホウ素製るつぼを、炭素繊維成形体を断熱材とした黒鉛抵抗加熱方式の電気炉にセットした。
焼成は、まず、拡散ポンプにより焼成雰囲気を真空とし、室温から1000℃まで毎時500℃の速度で加熱し、1000℃で純度が99.999体積%の窒素を導入して圧力を0.9MPaとし、毎時600℃で1900℃まで昇温し、1900℃で2時間保持して行った。
焼成後、この得られた焼成体を粗粉砕の後、窒化ケイ素焼結体製の乳鉢を用いて手で粉砕し、30μmの目のふるいを用いて、平均粒径12μmの蛍光体粉末とした。
【0154】
まず、この蛍光体粉末(実施例22)の発光スペクトルおよび励起スペクトルを、蛍光分光光度計を用いて測定した。
この蛍光体の励起スペクトルのピーク波長は370nmであり、450nmの青色光励起により、青緑色の発光を示した。蛍光体粉末(実施例22)の発光ピークの発光強度及び発光波長を表8に示す。なお、発光強度のカウント値は任意単位である。
【0155】
この蛍光体粉末(実施例22)を湿度80%温度80℃の条件で100時間暴露させたところ、輝度の低下はほとんど見られなかった。
【0156】
次に、蛍光体粉末(実施例22)に、必要に応じて365nmの紫外線を照射しながら光学顕微鏡観察を行った。
試料の体色、粒子形状並びに紫外線照射時の発光色から、β―サイアロン、未反応の窒化ケイ素或いは窒化アルミニウム、酸窒化物ガラス、SrSiAl2N2O3、Sr2Al2Si10N14O4、SrSi(10−n)Al(18+n)OnN(32−n)(n〜1)、SrSi6N8から選ばれる一種以上からなる非発光相もしくは504nm付近の青緑とは異なる発光を示す結晶相の割合は、体積比で20%以下であることを確認した。
【0157】
<実施例23>
本発明の蛍光体の実施例23について説明する。
原料粉末は、平均粒径0.5μm、酸素含有量0.93質量%、α型含有率92%の窒化ケイ素粉末(Si3N4)、窒化アルミニウム粉末(AlN)、CaSi2粉末、酸化カルシウム粉末(CaO)、酸化ユーロピウム粉末(Eu2O3)を用いた。
一般式(A1−xRx)mSi6n−5m−sAl7m−4n+sOsNm+4n−sにおいて、表9に示すm,n,s,xの値となるように、表10に示す配合(質量比、以下、他の実施例においても同様)で上記原料粉末を秤量し、メノウ乳棒と乳鉢で30分間混合を行なった。尚、RはEuとした。
【0158】
【表9】
【0159】
【表10】
【0160】
得られた混合粉末を、アルミニウム製の金型に入れて嵩密度約23%の成形体を作製し、窒化ホウ素製のるつぼに充填した。成形体体積とルツボ体積の比率は、約80%とした。なお、粉末の秤量、混合、成形の各工程は全て、大気中で操作を行った。
【0161】
この混合粉末を充填した窒化ホウ素製るつぼを、炭素繊維成形体を断熱材とした黒鉛抵抗加熱方式の電気炉にセットした。
焼成は、まず、拡散ポンプにより焼成雰囲気を真空とし、室温から1000℃まで毎時500℃の速度で加熱し、1000℃で純度が99.999体積%の窒素を導入して圧力を0.9MPaとし、毎時600℃で1900℃まで昇温し、1900℃で2時間保持して行った。
焼成後、この得られた焼成体を粗粉砕の後、窒化ケイ素焼結体製の乳鉢を用いて手で粉砕し、30μmの目のふるいを用いて、平均粒径11μmの蛍光体粉末(実施例23)とした。
【0162】
まず、この蛍光体粉末(実施例23)の発光スペクトルおよび励起スペクトルを、蛍光分光光度計を用いて測定した。
この蛍光体の励起スペクトルのピーク波長は380nm付近であり、450nmの青色光励起により、緑色から黄緑色の発光を示した。蛍光体粉末(実施例23)の発光ピークの発光強度及び発光波長を表10に示す。なお、発光強度のカウント値は任意単位である。
【0163】
この蛍光体粉末(実施例23)を湿度80%温度80℃の条件で100時間暴露させたところ、輝度の低下はほとんど見られなかった。
【0164】
次に、蛍光体粉末(実施例23)に、必要に応じて365nmの紫外線を照射しながら光学顕微鏡観察を行った。
試料の体色、粒子形状並びに紫外線照射時の発光色から、β―サイアロン、未反応の窒化ケイ素或いは窒化アルミニウム、酸窒化物ガラス、SrSiAl2N2O3、Sr2Al2Si10N14O4、SrSi(10−n)Al(18+n)OnN(32−n)(n〜1)、SrSi6N8から選ばれる一種以上からなる非発光相もしくは550nm付近の緑から黄緑とは異なる発光を示す結晶相の割合は、体積比で20%以下であることを確認した。
【0165】
<実施例24>
本発明の蛍光体の実施例24について説明する。
原料粉末は、平均粒径0.5μm、酸素含有量0.93質量%、α型含有率92%の窒化ケイ素粉末(Si3N4)、窒化アルミニウム粉末(AlN)、BaSi2粉末、酸化バリウム粉末(BaO)、酸化ユーロピウム粉末(Eu2O3)を用いた。
一般式(A1−xRx)mSi6n−5m−sAl7m−4n+sOsNm+4n−sにおいて、表11に示すm,n,s,xの値となるように、表12に示す配合(質量比、以下、他の実施例においても同様)で上記原料粉末を秤量し、メノウ乳棒と乳鉢で30分間混合を行なった。尚、RはEuとした。
【0166】
【表11】
【0167】
【表12】
【0168】
得られた混合粉末を、アルミニウム製の金型に入れて嵩密度約24%の成形体を作製し、窒化ホウ素製のるつぼに充填した。成形体体積とルツボ体積の比率は、約80%とした。なお、粉末の秤量、混合、成形の各工程は全て、大気中で操作を行った。
【0169】
この混合粉末を充填した窒化ホウ素製るつぼを炭素繊維成形体を断熱材とした黒鉛抵抗加熱方式の電気炉にセットした。
焼成は、まず、拡散ポンプにより焼成雰囲気を真空とし、室温から1000℃まで毎時500℃の速度で加熱し、1000℃で純度が99.999体積%の窒素を導入して圧力を0.9MPaとし、毎時600℃で1900℃まで昇温し、1900℃で2時間保持して行った。
焼成後、この得られた焼成体を粗粉砕の後、窒化ケイ素焼結体製の乳鉢を用いて手で粉砕し、30μmの目のふるいを用いて、平均粒径12μmの蛍光体粉末(実施例24)とした。
【0170】
まず、この蛍光体粉末(実施例24)の発光スペクトルおよび励起スペクトルを、蛍光分光光度計を用いて測定した。
各蛍光体の励起スペクトルのピーク波長は360nm付近であり、400nmの近紫外光励起により、緑青色の発光を示した。蛍光体粉末(実施例24)の発光ピークの発光強度及び発光波長を表12に示す。なお、発光強度のカウント値は任意単位である。
【0171】
この蛍光体粉末(実施例24)を湿度80%温度80℃の条件で100時間暴露させたところ、輝度の低下はほとんど見られなかった。
【0172】
次に、蛍光体粉末(実施例24)に、必要に応じて365nmの紫外線を照射しながら光学顕微鏡観察を行った。
試料の体色、粒子形状並びに紫外線照射時の発光色から、β―サイアロン、未反応の窒化ケイ素或いは窒化アルミニウム、酸窒化物ガラス、SrSiAl2N2O3、Sr2Al2Si10N14O4、SrSi(10−n)Al(18+n)OnN(32−n)(n〜1)、SrSi6N8から選ばれる一種以上からなる非発光相もしくは470nm付近の緑青とは異なる発光を示す結晶相の割合は、体積比で20%以下であることを確認した。
【0173】
<実施例25>
本発明の蛍光体の実施例25について説明する。
原料粉末は、平均粒径0.5μm、酸素含有量0.93質量%、α型含有率92%の窒化ケイ素粉末(Si3N4)、窒化アルミニウム粉末(AlN)、酸化アルミニウム粉末(Al2O3)、LaSi3N5粉末、CeSi3N5粉末を用いた。
一般式(A1−xRx)mSi6n−5m−sAl7m−4n+sOsNm+4n−sにおいて、表13に示すm,n,s,xの値となるように、表14に示す配合(質量比、以下、他の実施例においても同様)で上記原料粉末を秤量し、メノウ乳棒と乳鉢で30分間混合を行なった。尚、RはCeとした。
【0174】
【表13】
【0175】
【表14】
【0176】
得られた混合粉末を、アルミニウム製の金型に入れて嵩密度約23%の成形体を作製し、窒化ホウ素製のるつぼに充填した。成形体体積とルツボ体積の比率は、約80%とした。
【0177】
この混合粉末を充填した窒化ホウ素製るつぼを、炭素繊維成形体を断熱材とした黒鉛抵抗加熱方式の電気炉にセットした。
焼成は、まず、拡散ポンプにより焼成雰囲気を真空とし、室温から1000℃まで毎時500℃の速度で加熱し、1000℃で純度が99.999体積%の窒素を導入して圧力を0.9MPaとし、毎時600℃で1900℃まで昇温し、1900℃で2時間保持して行った。
焼成後、この得られた焼成体を粗粉砕の後、窒化ケイ素焼結体製の乳鉢を用いて手で粉砕し、30μmの目のふるいを用いて、平均粒径11μmの蛍光体粉末(実施例25)とした。
【0178】
まず、これらの蛍光体粉末(実施例25)の発光スペクトルおよび励起スペクトルを、蛍光分光光度計を用いて測定した。
各蛍光体の励起スペクトルのピーク波長は370nmであり、400nmの近紫外光励起により、青色の発光を示した。蛍光体粉末(実施例25)の発光ピークの発光強度及び発光波長を表14に示す。なお、発光強度のカウント値は任意単位である。
【0179】
この蛍光体粉末(実施例25)を湿度80%温度80℃の条件で100時間暴露させたところ、輝度の低下はほとんど見られなかった。
【0180】
次に、蛍光体粉末(実施例25)に、必要に応じて365nmの紫外線を照射しながら光学顕微鏡観察を行った。
試料の体色、粒子形状並びに紫外線照射時の発光色から、β―サイアロン、未反応の窒化ケイ素或いは窒化アルミニウム、酸窒化物ガラス、SrSiAl2N2O3、Sr2Al2Si10N14O4、SrSi(10−n)Al(18+n)OnN(32−n)(n〜1)、SrSi6N8から選ばれる一種以上からなる非発光相もしくは450nm付近の青とは異なる発光を示す結晶相の割合は、体積比で20%以下であることを確認した。
【0181】
<実施例26〜30>
実施例1と同様にして得た焼成塊をメノウ乳棒と乳鉢で解砕し、篩分級或いは水簸分級を行い、表15に示す、所望の平均粒径と平均アスペクト比を有する蛍光体粉末(実施例実施例26〜30)を作製した。
得られた蛍光体粉末(実施例26〜30)を、ニーダーを用いてシリコーン樹脂に10質量%分散し、同樹脂の断面を用いて発光強度と樹脂への分散性を評価した。尚、発光強度は、最大の値を100として規格化した。また、樹脂への分散性は、樹脂と粉末粒子との界面に空隙が認められる粉末粒子の割合で評価した。空隙が認められる粒子割合が少ないほど、分散性は良好であることを示す。
【0182】
【表15】
【0183】
<実施例31〜32>
実施例6の組成に、外割で0.5質量%のフッ化リチウム粉末を添加した以外は、実施例1と同様にして作製した蛍光体粉末(実施例31)と、使用する坩堝を黒鉛製として作製した蛍光体粉末(実施例32)について、発光強度とフッ素量、ホウ素量を調べた。尚、発光強度は、実施例6の発光強度を100として規格化した。また、黒鉛製ルツボを使用した試料の表面は炭化珪素化していたため、表面の炭化珪素層を除去して評価を行った。
【0184】
【表16】
【0185】
<実施例33>
実施例6と同様にして得られた粉末を水簸分級し、平均粒径1.3μmの蛍光体粉末を得た。この粉末を、種子として、実施例6の組成に対して外割で2質量%添加し、実施例6と同様にして蛍光体粉末(実施例33)を合成した。
この蛍光体粉末(実施例33)に、紫外線ランプで波長365nmの光を照射した結果、青緑色に発光することを確認した。
蛍光体粉末(実施例33)の発光スペクトルおよび励起スペクトルを、蛍光分光光度計を用いて測定した結果、励起スペクトルのピーク波長は370nmであり、450nmの青色光励起による発光スペクトルのピーク波長は504nm(青緑色)であった。また、実施例6の発光強度を100として規格化すると、発光ピーク波長の発光強度は108カウントであった。
次に、メノウの乳鉢を用いて粉砕し、CuのKα線を用いた粉末X線回折測定を行った結果、実施例6と同様の主要回折ピークからなる粉末X線回折パターンが得られた。
【0186】
<実施例34>
実施例22と同一の組成比となるよう、原料粉末を合計100g秤取し、エタノールを混合溶媒として、湿式ボールミルで2時間の混合を行い、300cps程度の粘度を持つスラリーを得た。尚、混合溶媒としては、ヘキサン等を用いても差し支えない。
続いて、得られたスラリーを、有機溶媒に対応したスプレードライヤーを用いて噴霧乾燥し、顆粒状の混合粉末とした。
【0187】
得られた混合粉末を、アルミニウム製の金型に入れて嵩密度約24%の成形体を作製し、窒化ホウ素製のるつぼに充填した。成形体体積とルツボ体積の比率は、約80%とした。なお、粉末の秤量、混合、成形の各工程は全て、大気中で操作を行った。
【0188】
この混合粉末を充填した窒化ホウ素製るつぼを、炭素繊維成形体を断熱材とした黒鉛抵抗加熱方式の電気炉にセットした。
焼成は、まず、拡散ポンプにより焼成雰囲気を真空とし、室温から1000℃まで毎時500℃の速度で加熱し、1000℃で純度が99.999体積%の窒素を導入して圧力を0.9MPaとし、毎時600℃で1900℃まで昇温し、1900℃で2時間保持して行った。
焼成後、この得られた焼成体を粗粉砕の後、窒化ケイ素焼結体製の乳鉢を用いて手で粉砕し、30μmの目のふるいを用いて、平均粒径11μmの蛍光体粉末(実施例34)とした。
【0189】
この蛍光体粉末(実施例34)に、紫外線ランプで波長365nmの光を照射した結果、青緑色に発光することを確認した。
蛍光体粉末(実施例34)の発光スペクトルおよび励起スペクトルを、蛍光分光光度計を用いて測定した結果、励起スペクトルのピーク波長は370nmであり、450nmの青色光励起による発光スペクトルのピーク波長は504nm(青緑色)であった。また、実施例70の発光強度を100として規格化すると、発光ピーク波長の発光強度は107カウントであった。
次に、メノウの乳鉢を用いて粉砕し、CuのKα線を用いた粉末X線回折測定を行った結果、実施例1と同様の主要回折ピークからなる粉末X線回折パターンが得られた。
【0190】
<実施例35>
実施例22で用いた原料粉末を、アルミニウム製の金型に入れて嵩密度約25%の成形体を作製し、窒化ホウ素製のるつぼに充填した。成形体体積とルツボ体積の比率は、約80%とした。なお、粉末の秤量、混合、成形の各工程は全て、大気中で操作を行った。
【0191】
この混合粉末を充填した窒化ホウ素製るつぼを、アルミナ繊維成形体を断熱材としたランタンクロマイト抵抗加熱方式の電気炉にセットした。尚、本実施例で使用した電気炉チャンバー内には、炭素を含む材料は一切用いられていない。
焼成は、まず、拡散ポンプにより焼成雰囲気を真空とし、室温から1000℃まで毎時100℃の速度で加熱し、1000℃で純度が99.999体積%の窒素を導入して圧力を0.9MPaとし、毎時100℃で1900℃まで昇温し、1900℃で2時間保持して行った。
焼成後、この得られた焼成体を粗粉砕の後、窒化ケイ素焼結体製の乳鉢を用いて手で粉砕し、30μmの目のふるいを用いて、平均粒径12μmの蛍光体粉末(実施例35)とした。
【0192】
この蛍光体粉末(実施例35)に、紫外線ランプで波長365nmの光を照射した結果、青緑色に発光することを確認した。
蛍光体粉末(実施例35)の発光スペクトルおよび励起スペクトルを、蛍光分光光度計を用いて測定した結果、励起スペクトルのピーク波長は370nmであり、450nmの青色光励起による発光スペクトルのピーク波長は504nm(青緑色)であった。また、実施例22の発光強度を100として規格化すると、発光ピーク波長の発光強度は78カウントであった。
次に、メノウの乳鉢を用いて粉砕し、CuのKα線を用いた粉末X線回折測定を行った結果、実施例6と同様の主要回折ピークからなる粉末X線回折パターンが得られた。
【0193】
<実施例36〜40>
実施例22と同一の組成を持つ混合粉末を、表17に示す嵩密度と充填率となるよう窒化ホウ素製のるつぼに充填した。なお、粉末の秤量、混合、成形の各工程は全て、大気中で操作を行った。
混合粉末を充填した窒化ホウ素製るつぼを、炭素繊維成形体を断熱材とした黒鉛抵抗加熱方式の電気炉にセットした。
焼成は、まず、拡散ポンプにより焼成雰囲気を真空とし、室温から1000℃まで毎時600℃の速度で加熱し、1000℃で純度が99.999体積%の窒素を導入して圧力を0.9MPaとし、毎時600℃で1900℃まで昇温し、1900℃で2時間保持して行った。
焼成後、この得られた焼成体を粗粉砕の後、窒化ケイ素焼結体製の乳鉢を用いて手で粉砕し、30μmの目のふるいを用いて、平均粒径12μm程度の蛍光体粉末(実施例36〜40)とした。
【0194】
これらの蛍光体粉末(実施例36〜40)に、紫外線ランプで波長365nmの光を照射した結果、青緑色に発光することを確認した。
蛍光体粉末(実施例36〜40)の発光スペクトルおよび励起スペクトルを、蛍光分光光度計を用いて測定した結果、励起スペクトルのピーク波長は370nmであり、450nmの青色光励起による発光スペクトルのピーク波長は504nm(青緑色)であった。これらの蛍光体粉末(実施例36〜40)の発光強度は、実施例22の発光強度を100として規格化した。
【0195】
【表17】
【0196】
<実施例41〜42>
実施例22で得られた蛍光体粉末を、表18に示す材質からなるボールミルを用いて、平均粒径が5μm以下となるよう、エタノールを溶媒とした粉砕を行った。得られたスラリーを蒸発乾固した後、実施例42の試料は塩酸洗浄を施し、更に蒸発乾固し、窒化ホウ素製のるつぼに充填した。
【0197】
試料を充填した窒化ホウ素製るつぼを、炭素繊維成形体を断熱材とした黒鉛抵抗加熱方式の電気炉にセットした。
焼成は、まず、拡散ポンプにより焼成雰囲気を真空とし、室温から1000℃まで毎時600℃の速度で加熱し、1000℃で純度が99.999体積%の窒素を導入して圧力を0.9MPaとし、毎時600℃で1900℃まで昇温し、1900℃で2時間保持して行った。
焼成後、この得られた焼成体を粗粉砕の後、窒化ケイ素焼結体製の乳鉢を用いて手で粉砕し、30μmの目のふるいを用いて、平均粒径12μm程度の蛍光体粉末(実施例41〜42)とした。
【0198】
これらの蛍光体粉末(実施例41〜42)に、紫外線ランプで波長365nmの光を照射した結果、青緑色に発光することを確認した。
蛍光体粉末(実施例41〜42)の発光スペクトルおよび励起スペクトルを、蛍光分光光度計を用いて測定した結果、励起スペクトルのピーク波長は370nmであり、450nmの青色光励起による発光スペクトルのピーク波長は504nm(青緑色)であった。これらの蛍光体粉末(実施例41〜42)の発光強度は、実施例22の発光強度を100として規格化した。
【0199】
【表18】
【0200】
<実施例43〜44>
実施例22で得られた蛍光体粉末を窒化ホウ素製のるつぼに充填し、試料を充填した窒化ホウ素製るつぼを、炭素繊維成形体を断熱材とした黒鉛抵抗加熱方式の熱間静水圧加圧装置にセットした。
その後、雰囲気圧力;30MPa、焼成温度;2000℃の条件(実施例43)または雰囲気圧力;50MPa、焼成温度2100℃の条件(実施例44)で加熱を行った
。尚、焼成雰囲気は窒素雰囲気とした。
焼成後、この得られた焼成体を粗粉砕の後、窒化ケイ素焼結体製の乳鉢を用いて手で粉砕し、30μmの目のふるいを用いて、平均粒径11μm程度の蛍光体粉末(実施例43〜44)とした。
【0201】
これらの蛍光体粉末(実施例43〜44)に、紫外線ランプで波長365nmの光を照射した結果、青緑色に発光することを確認した。
蛍光体粉末(実施例43〜44)の発光スペクトルおよび励起スペクトルを、蛍光分光光度計を用いて測定した結果、励起スペクトルのピーク波長は370nmであり、450nmの青色光励起による発光スペクトルのピーク波長は504nm(青緑色)であった。これらの蛍光体粉末(実施例43〜44)の発光強度は、実施例22の発光強度を100として規格化した。
【0202】
【表19】
【0203】
<実施例45>
実施例22で得られた蛍光体粉末5.0gを、テトラエトキシシラン1.0gを溶解したイソプロピルアルコール50mlと蒸留水20mlの混合液に良く分散させた。分散液を良く撹拌しながら、15%アンモニア水溶液50mlを滴下し、その後、撹拌しながら加熱還流を2時間行った。得られたスラリーを濾過、洗浄、乾燥し、窒素雰囲気中、600℃で仮焼し、アモルファスシリカ被膜付き蛍光体(実施例45)を得た。
【0204】
得られたアモルファスシリカ被膜付き蛍光体(実施例45)を透過型電子顕微鏡で観察したところ、シリカ膜の厚さは、およそ70nmであった。この蛍光体(実施例45)の発光強度は、実施例22の発光強度を100として規格化した場合、115だった。
また、上記と同様にして得られたシリカ膜について屈折率を測定したところ、1.48であった。アモルファスシリカ被膜付き蛍光体(実施例45)の酸素量は、実施例22から理論的に求められる酸素量よりも、0.2質量%多かった。
【0205】
<実施例46>
0.1M硼酸0.1M塩化カリウム水溶液50mlに、0.1M水酸化ナトリウム水溶液32mlを加え、蒸留水で100mlに希釈した。この水溶液に、実施例22で得られた蛍光体粉末5.0gを投入し、良く分散させてスラリーとした。
前記スラリーのpHを、水酸化ナトリウム水溶液を用いて9.0〜10.5の範囲に維持しながら、0.1M硫酸アルミニウム水溶液10mlを滴下して、スラリー中の粒子表面にアルミニウム水酸化物微粒子が付着した蛍光体粒子を得た。この蛍光体粒子を洗浄、乾燥した後、空気中、600℃で2時間の仮焼を行い、表面にアルミナ層が形成された蛍光体粉末(実施例46)を得た。
【0206】
蛍光体粉末(実施例46)を透過型電子顕微鏡で観察したところ、アルミナ層の厚さはおよそ50nmであった。この蛍光体粉末(実施例46)の発光強度は、実施例22の発光強度を100として規格化した場合、112だった。また、上記と同様にして得られたアルミナ膜について屈折率を測定したところ、1.70であった。アルミナ被膜付き蛍光体粉末(実施例46)の酸素量は、実施例22から理論的に求められる酸素量よりも、0.3質量%多かった。
【0207】
<実施例47>
実施例22と同様にして得られた蛍光体の焼成塊を、窒化ケイ素焼結体製の乳鉢を用いて軽く解砕した。この焼成塊を、濃度48%のフッ化水素酸と規定濃度36Nの硫酸及び蒸留水を、容積比で5:5:390となるよう混合した混酸水溶液を用いて、良く撹拌しながら30分間の酸処理を行った。その後、蛍光体粉末を分離、洗浄、乾燥し、処理して蛍光体粉末(実施例47)を得た。
走査型電子顕微鏡で蛍光体粉末(実施例47)の形状を観察したところ、粒界相やガラス質の第二相は観察されず、自形面を有する単結晶粒子からなることが判った。
【0208】
この蛍光体粉末(実施例47)に、紫外線ランプで波長365nmの光を照射した結果、青緑色に発光することを確認した。
蛍光体粉末(実施例47)の発光スペクトルおよび励起スペクトルを、蛍光分光光度計を用いて測定した結果、励起スペクトルのピーク波長は370nmであり、450nmの青色光励起による発光スペクトルのピーク波長は504nm(青緑色)であった。この蛍光体粉末(実施例47)の発光強度は、実施例22の発光強度を100として規格化すると、118だった。
【0209】
続いて、本発明の蛍光体を用いた発光装置について説明する。
<実施例48>
本発明の蛍光体を用いて、図1に示すような砲弾型白色発光ダイオードランプ(発光装置)を作製した。
まず、第一のリードワイヤにある素子蔵置用の凹部に青色発光ダイオード素子を、導電性ペーストを用いてボンディングし、第一のリードワイヤと青色発光ダイオード素子の下部電極とを電気的に接続するとともに、青色発光ダイオード素子を固定した。次に、青色発光ダイオード素子の上部電極と第二のリードワイヤとを、ボンディングワイヤによってワイヤボンディングし、電気的に接続した。
【0210】
そして、予め作製しておいた蛍光体を分散させた樹脂を、青色発光ダイオード素子を被覆するようにして凹部にディスペンサで適量塗布した後、これを硬化させ、第一の樹脂を形成した。
最後に、キャスティング法により凹部を含む第一のリードワイヤの先端部、青色発光ダイオード素子、蛍光体を分散した第一の樹脂の全体を第二の樹脂で封止した。
第一の樹脂は、屈折率1.6のエポキシ樹脂を、第二の樹脂は屈折率1.36のエポキシ樹脂を使用した。
【0211】
本実施例では、青緑色蛍光体として実施例22の蛍光体を15質量%、赤色蛍光体としてCaAlSiN3:Eu蛍光体を26質量%の濃度でエポキシ樹脂に混ぜ、これをディスペンサにより適量滴下して、蛍光体を分散した第一の樹脂を形成した。
導電性端子に電流を流すと、LED素子は発光ピーク波長が450nmの青色光を発し、これに励起された実施例22の蛍光体及び赤色蛍光体がそれぞれ青緑色光及び赤色光を発し、これらの光が混合されて白色光を発した。
【0212】
<実施例49>
使用する蛍光体を変えた他は実施例48と同様にして、図1に示すような砲弾型白色発光ダイオードランプ(発光装置)を作製した。
【0213】
本実施例では、青緑色蛍光体として実施例22の蛍光体を15質量%、緑色蛍光体としてβ―サイアロン蛍光体を12質量%、赤色蛍光体としてCaAlSiN3:Eu蛍光体を26質量%の濃度でエポキシ樹脂に混ぜ、これをディスペンサにより適量滴下して、蛍光体を分散した第一の樹脂を形成した。
導電性端子に電流を流すと、LED素子は発光ピーク波長が450nmの青色光を発し、これに励起された実施例22の蛍光体、緑色蛍光体及び赤色蛍光体がそれぞれ青緑色、緑色光及び赤色光を発し、これらの光が混合されて白色光を発した。
【0214】
<実施例50>
使用する蛍光体を変えた他は実施例48と同様にして、図1に示すような砲弾型白色発光ダイオードランプ(発光装置)を製作した。
【0215】
本実施例では、青緑色蛍光体として実施例22の蛍光体を15質量%、緑色蛍光体としてCa3Sc2Si3O12:Ce蛍光体を13質量%、赤色蛍光体としてCaAlSiN3:Eu蛍光体を26質量%の濃度でエポキシ樹脂に混ぜ、これをディスペンサにより適量滴下して、蛍光体を分散した第一の樹脂を形成した。
導電性端子に電流を流すと、LED素子は発光ピーク波長が450nmの青色光を発し、これに励起された実施例22の蛍光体、緑色蛍光体及び赤色蛍光体がそれぞれ青緑色、緑色光及び赤色光を発し、これらの光が混合されて白色光を発した。
【0216】
<実施例51>
使用する蛍光体を変えた他は実施例48と同様にして、図1に示すような砲弾型白色発光ダイオードランプ(発光装置)を製作した。
【0217】
本実施例では、青緑色蛍光体として実施例22の蛍光体を15質量%、緑色蛍光体としてβ―サイアロン蛍光体を13質量%、黄色蛍光体としてYAG:Ce蛍光体を18質量%、赤色蛍光体としてCaAlSiN3:Eu蛍光体を26質量%の濃度でエポキシ樹脂に混ぜ、これをディスペンサにより適量滴下して、蛍光体を分散した第一の樹脂を形成した。
導電性端子に電流を流すと、LED素子は発光ピーク波長が450nmの青色光を発し、これに励起された実施例22の蛍光体、緑色蛍光体、黄色蛍光体及び赤色蛍光体がそれぞれ青緑色、緑色光、黄色光及び赤色光を発し、これらの光が混合されて自然光に近い白色
光を発した。
【0218】
<実施例52>
使用する発光素子(LED)及び蛍光体を変えた他は実施例48と同様にして、図1に示すような砲弾型発光ダイオードランプ(発光装置)を作製した。
発光素子(LED)として発光ピーク波長が380nmの紫外LED素子を用い、実施例22の蛍光体と、実施例14の蛍光体と、BaMgAl10O17:Eu蛍光体と、赤色蛍光体としてCaAlSiN3:Euとをシリコーン樹脂からなる樹脂層に分散させて紫外LED素子にかぶせた構造とした。
導電性端子に電流を流すと、LED素子は発光ピーク波長が380nmの紫外光を発し、これに励起された実施例22の蛍光体、実施例14の蛍光体、BaMgAl10O17:Eu蛍光体及び赤色蛍光体がそれぞれ青緑色、緑色光、黄色光及び赤色光を発し、これらの光が混合されて白色光を発した。
【0219】
<実施例53>
第一の樹脂としては屈折率1.51のシリコーン樹脂を、第二の樹脂としては屈折率1.41のシリコーン樹脂を使用し、使用する蛍光体を変えた他は実施例48と同様にして、図1に示すような砲弾型白色発光ダイオードランプ(発光装置)を製作した。
【0220】
本実施例では、青緑色蛍光体として実施例22の蛍光体を15質量%、赤色蛍光体としてCaAlSiN3:Eu蛍光体を26質量%の濃度でシリコーン樹脂に混ぜ、これをディスペンサにより適量滴下して、蛍光体を分散した第一の樹脂を形成した。
導電性端子に電流を流すと、LED素子は発光ピーク波長が450nmの青色光を発し、これに励起された実施例22の蛍光体及び赤色蛍光体がそれぞれ青緑色光及び赤色光を発し、これらの光が混合されて白色光を発した。
【0221】
<実施例54>
第一の樹脂としては屈折率1.51のシリコーン樹脂を、第二の樹脂としては屈折率1.41のシリコーン樹脂を使用し、使用する蛍光体を変えた他は実施例48と同様にして、図1に示すような砲弾型白色発光ダイオードランプ(発光装置)を製作した。
【0222】
本実施例では、青緑色蛍光体として実施例22の蛍光体を15質量%、緑色蛍光体としてβ―サイアロン蛍光体を12質量%、赤色蛍光体としてCaAlSiN3:Eu蛍光体を26質量%の濃度でシリコーン樹脂に混ぜ、これをディスペンサにより適量滴下して、蛍光体を分散した第一の樹脂を形成した。
導電性端子に電流を流すと、LED素子は発光ピーク波長が450nmの青色光を発し、これに励起された実施例22の蛍光体、緑色蛍光体及び赤色蛍光体がそれぞれ青緑色光、緑色光及び赤色光を発し、これらの光が混合されて白色光を発した。
【0223】
<実施例55>
第一の樹脂としては屈折率1.51のシリコーン樹脂を、第二の樹脂としては屈折率1.41のシリコーン樹脂を使用し、使用する蛍光体を変えた他は実施例48と同様にして、図1に示すような砲弾型白色発光ダイオードランプ(発光装置)を製作した。
【0224】
本実施例では、青緑色蛍光体として実施例22の蛍光体を15質量%、緑色蛍光体としてCa3Sc2Si3O12:Ce蛍光体を13質量%、赤色蛍光体としてCaAlSiN3:Eu蛍光体を26質量%の濃度でシリコーン樹脂に混ぜ、これをディスペンサにより適量滴下して、蛍光体を分散した第一の樹脂を形成した。
導電性端子に電流を流すと、LED素子は発光ピーク波長が450nmの青色光を発し、これに励起された実施例22の蛍光体、緑色蛍光体及び赤色蛍光体がそれぞれ青緑色光、緑色光及び赤色光を発し、これらの光が混合されて白色光を発した。
【0225】
<実施例56>
第一の樹脂としては屈折率1.51のシリコーン樹脂を、第二の樹脂としては屈折率1.41のシリコーン樹脂を使用し、使用する蛍光体を変えた他は実施例48と同様にして、図1に示すような砲弾型白色発光ダイオードランプ(発光装置)を製作した。
【0226】
本実施例では、青緑色蛍光体として実施例22の蛍光体を15質量%、緑色蛍光体としてβ―サイアロン蛍光体を13質量%、黄色蛍光体としてα−サイアロン蛍光体を18質量%、赤色蛍光体としてCaAlSiN3:Eu蛍光体を26質量%の濃度でシリコーン樹脂に混ぜ、これをディスペンサにより適量滴下して、蛍光体を分散した第一の樹脂を形成した。
導電性端子に電流を流すと、LED素子は発光ピーク波長が450nmの青色光を発し、これに励起された実施例22の蛍光体、緑色蛍光体、黄色蛍光体及び赤色蛍光体がそれぞれ青緑色光、緑色光、黄色光及び赤色光を発し、これらの光が混合されて自然光に近い白色光を発した。
【0227】
<実施例57>
第一の樹脂としては屈折率1.51のシリコーン樹脂を、第二の樹脂としては屈折率1.41のシリコーン樹脂を使用し、使用する蛍光体を変えた他は実施例48と同様にして、図1に示すような砲弾型白色発光ダイオードランプ(発光装置)を製作した。
【0228】
本実施例では、青緑色蛍光体として実施例22の蛍光体を15質量%、緑色蛍光体としてβ―サイアロン蛍光体を13質量%、黄色蛍光体としてYAG:Ce蛍光体を18質量%、赤色蛍光体としてCaAlSiN3:Eu蛍光体を26質量%の濃度でシリコーン樹脂に混ぜ、これをディスペンサにより適量滴下して、蛍光体を分散した第一の樹脂を形成した。
導電性端子に電流を流すと、LED素子は発光ピーク波長が450nmの青色光を発し、これに励起された実施例22の蛍光体、緑色蛍光体、黄色蛍光体及び赤色蛍光体がそれぞれ青緑色光、緑色光、黄色光及び赤色光を発し、これらの光が混合されて自然光に近い白色光を発した。
【0229】
<実施例58>
本発明の蛍光体を用いて、図2に示すような基板実装用チップ型白色発光ダイオードランプ(発光装置)を製作した。
まず、第一のリードワイヤ及び第二のリードワイヤを接続したアルミナセラミックス基板のほぼ中央部に青色発光ダイオードを配置し、その青色発光ダイオードの下部電極を第一のリードワイヤと接続し、その上部電極を第二のリードワイヤとボンディングワイヤで接続した。また、アルミナセラミックス基板の発光素子側の面に穴を有する壁面部材を配置し、前記穴に発光素子を収めるように前記壁面部材を固定した。次に、前記青色発光ダイオードを覆うように第一の樹脂(封止樹脂)を形成した後、第一の樹脂を覆い、前記穴を埋めるように蛍光体を含まない第二の樹脂(別の封止樹脂)を形成した。
なお、製造手順は、アルミナセラミックス基板に第一のリードワイヤ、第二のリードワイヤ及び壁面部材を固定する製造手順を除いては、実施例48と略同一である。
【0230】
本実施例では、壁面部材を白色のシリコーン樹脂によって構成し、第一の樹脂と第二の樹脂とには同一のエポキシ樹脂を用いた。
蛍光体としては、実施例22の蛍光体、緑色蛍光体として実施例14の蛍光体、赤色蛍光体としてCaAlSiN3:Eu蛍光体とを用いた。これにより、導電性端子に電流を流すと、白色を発することが確認された。
【0231】
<実施例59>
図3に示すような、基板実装用チップ型白色発光ダイオードランプ(発光装置)を製作した。
まず、銀メッキを施された銅製のリードフレームを含み、ナイロン樹脂で成型した基板とリフレクタからなる表面実装用のLEDパッケージ用のケースのリードフレーム上に、樹脂ペーストで450nmに発光ピークを持つ青色発光ダイオード(青色LEDチップ)をダイボンドした。なお、青色発光ダイオードとして、350μm角の大きさのものを用い、合計で3個実装した。
【0232】
次に、前記青色発光ダイオードの上部側の2つの電極をそれぞれ2本のボンディングワイヤ(金細線)で接続し、一方のボンディングワイヤをリードフレームに、もう一方のボンディングワイヤを別のリードフレームへ接続した。
次に、蛍光体を含有させたメチルシリコーン樹脂を、発光ダイオード素子を覆うように、かつ、壁面部材の穴を埋めるように適量滴下して硬化させた後、一体化された部材から、発光装置パッケージをトリムし、個片とした発光装置パッケージを色調、発光強度で選別して、基板実装用チップ型白色発光ダイオードランプとした。
【0233】
本実施例では、蛍光体として、実施例22の蛍光体とサイアロン蛍光体とを用いた。発光装置の発光効率は100lm/Wであり、色温度5500K程度の白色を発することが確認された。
発光装置の演色性は、Raで90程度であった。投入された電力はパッケージ当り0.18Wであり、電力の密度は、パッケージ1個あたりの平面面積密度にして2×104W/m2であった。
【0234】
<実施例60>
発光ダイオード素子として紫外LEDチップを用い、セラミックで成型した基板にCuによるパターンをプリント配線で形成し、セラミック製のリフレクタを接着した表面実装用のLEDパッケージ用のケースを用い、蛍光体を変えた他は実施例59と同様にして、図3に示すような、基板実装用チップ型白色発光ダイオードランプ(発光装置)を製作した。
【0235】
本実施例では、蛍光体として、実施例22の蛍光体と、サイアロン蛍光体と、CaAlSiN系の蛍光体と、を用いた。発光装置の発光効率は120lm/Wであり、色温度5600K程度の白色を発することが確認された。
発光装置の演色性は、Raで98程度であった。投入された電力はパッケージ当り0.18Wであり、電力の密度は、パッケージ1個あたりの平面面積密度にして2×104W/m2であった。
【0236】
<実施例61>
発光ダイオード素子として440nmに発光ピークを持つ青色発光ダイオード(青色L
EDチップ)を用い、1mm角の大きさの大型チップを1個実装した他は実施例59と
同様にして、図3に示すような、基板実装用チップ型白色発光ダイオードランプ(発光装
置)を製作した。
【0237】
本実施例では、蛍光体として、実施例22の蛍光体と、サイアロン蛍光体を用いた。発光装置の発光効率は90lm/Wであり、色温度5000K程度の白色を発することが確認された。
発光装置の演色性は、Raで87程度であった。投入された電力はパッケージ当り1Wであり、電力の密度は、パッケージ1個あたりの平面面積密度にして1×103W/m2であった。
【0238】
<実施例62>
発光ダイオード素子として470nmに発光ピークを持つ青色発光ダイオード(青色LEDチップ)を用い、蛍光体を分散させない第二の樹脂を形成した他は実施例59と同様にして、図4に示すような、基板実装用チップ型白色発光ダイオードランプ(発光装置)を製作した。
なお、第二の樹脂としては、蛍光体を含まないフェニルシリコーン樹脂を用いた。
【0239】
本実施例では、蛍光体として、実施例22の蛍光体と、サイアロン蛍光体を用いた。発光装置の発光効率は110lm/Wであり、色温度5200K程度の白色を発することが確認された。
発光装置の演色性は、Raで93程度であった。投入された電力はパッケージ当り0.18Wであり、電力の密度は、パッケージ1個あたりの平面面積密度にして2×104W/m2であった。
【0240】
<実施例63>
第一の樹脂を形成せず、青色発光ダイオード(青色LEDチップ)のp側の透明電極の上に、スパッタ法によって本発明の蛍光体の層を10μm成膜し、蛍光体を分散させない第二の樹脂を形成した他は実施例59と同様にして、図5に示すような、基板実装用チップ型白色発光ダイオードランプ(発光装置)を製作した。
【0241】
本実施例では、蛍光体として、実施例22の蛍光体と、サイアロン蛍光体を用いた。発光装置の発光効率は140lm/Wであり、色温度4500K程度の白色を発することが確認された。
発光装置の演色性は、Raで85程度であった。投入された電力はパッケージ当り0.18Wであり、電力の密度は、パッケージ1個あたりの平面面積密度にして2×104W/m2であった。
【0242】
<実施例64>
プリント配線したガラス入りエポキシ基板上に直接青色発光ダイオード(青色LEDチップ)を実装し、これを樹脂封止したチップ・オン・ボード(COB:Chip On Board)形式と呼ぶ白色発光ダイオード(発光装置)を製作した。
青色発光ダイオード(青色LEDチップ)はアルミニウム製の基板に実装し、これにプリント配線したガラス入りエポキシ基板を重ねて接着した。
青色発光ダイオード(青色LEDチップ)が実装された部分には基板に穴が開いており、青色発光ダイオード(青色LEDチップ)が表面に現れる。青色発光ダイオード(青色LEDチップ)と配線との間は、金製のワイヤで接続した。この上から、蛍光体を含有させたメチルシリコーン樹脂を適量滴下して硬化させた。
【0243】
本実施例では、蛍光体として、実施例22の蛍光体と、サイアロン蛍光体を用いた。発光装置の発光効率は100lm/Wであり、色温度5500K程度の温白色を発することが確認された。発光装置の演色性は、Raで90程度であった。
【0244】
<実施例65>
発光ダイオード素子として390nmに発光ピークを持つ紫外発光ダイオード(紫外LEDチップ)を用い、セラミックで成型した基板にCuによるパターンをプリント配線で形成し、セラミック製のリフレクタを接着した表面実装用のLEDパッケージ用のケースを用い、蛍光体を変えた他は実施例59と同様にして、図3に示すような、基板実装用チップ型白色発光ダイオードランプ(発光装置)を製作した。
【0245】
本実施例では、蛍光体として、実施例14の蛍光体のみを用いた。発光装置の発光出力は18mWであった。電流を100μAから50mAまで変化させたが、電流量に対する発光波長の変化は殆ど見られなかった。
【0246】
<実施例66>
発光ダイオード素子として390nmに発光ピークを持つ紫外発光ダイオード(紫外LEDチップ)を用い、セラミックで成型した基板にCuによるパターンをプリント配線で形成し、セラミック製のリフレクタを接着した表面実装用のLEDパッケージ用のケースを用い、蛍光体を変えた他は実施例59と同様にして、図3に示すような、基板実装用チップ型白色発光ダイオードランプ(発光装置)を製作した。
【0247】
本実施例では、蛍光体として、実施例24の蛍光体のみを用いた。発光装置の発光出力
は40mWであった。電流を100μAから50mAまで変化させたが、電流量に対する
発光波長の変化は殆ど見られなかった。
【0248】
<実施例67>
発光ダイオード素子として390nmに発光ピークを持つ紫外発光ダイオード(紫外LEDチップ)を用い、セラミックで成型した基板にCuによるパターンをプリント配線で形成し、セラミック製のリフレクタを接着した表面実装用のLEDパッケージ用のケースを用い、蛍光体を変えた他は実施例59と同様にして、図3に示すような、基板実装用チップ型白色発光ダイオードランプ(発光装置)を製作した。
【0249】
本実施例では、蛍光体として、実施例22の蛍光体のみを用いた。発光装置の発光出力は35mWであった。電流を100μAから50mAまで変化させたが、電流量に対する波長の変化は殆ど見られなかった。
【0250】
<実施例68>
蛍光体を変えた他は実施例59と同様にして、図3に示すような、基板実装用チップ型白色発光ダイオードランプ(発光装置)を製作した。
【0251】
本実施例では、蛍光体として、実施例22の蛍光体と、サイアロン蛍光体と、CaAlSiN蛍光体とを用いた。発光装置の発光効率は120lm/Wであり、色温度5300K程度の白色を発することが確認された。
発光装置の演色性は、Raで96程度であった。投入された電力はパッケージ当り0.18Wであり、電力の密度は、パッケージ1個あたりの平面面積密度にして2×104W/m2であった。
【0252】
<実施例69>
蛍光体を変えた他は実施例59と同様にして、図3に示すような、基板実装用チップ型白色発光ダイオードランプ(発光装置)を製作した。
【0253】
本実施例では、蛍光体として、実施例1から実施例25までの蛍光体を混合したものと、CaAlSiN蛍光体とを用いた。発光装置の発光効率は100lm/Wであり、色温度5500K程度の白色を発することが確認された。発光装置の演色性は、Raで99程度であった。投入された電力はパッケージ当り0.18Wであり、電力の密度は、パッケージ1個あたりの平面面積密度にして2×104W/m2であった。
【産業上の利用可能性】
【0254】
本発明の蛍光体は、従来のサイアロンや酸窒化物蛍光体より高い発光強度を有し、蛍光体として優れ、さらに励起源に曝された場合でも蛍光体の輝度の低下が少ないので、白色LED、白色無機EL、白色有機ELなどに好適に使用される窒化物蛍光体である。今後、各種照明装置や表示装置などの発光装置における材料設計において、大いに活用され、産業の発展に大きく寄与することが期待できる。
【符号の説明】
【0255】
1…砲弾型発光ダイオードランプ(発光装置:LEDデバイス)。
2…第一のリードワイヤ(リードフレーム)。
3…第二のリードワイヤ(リードフレーム)。
4…発光ダイオード素子(LEDチップ)。
4a、4b…電極。
5…ボンディングワイヤ(金細線)。
6…第一の樹脂(封止樹脂)。
7…蛍光体。
8…第二の樹脂(封止樹脂)。
11…基板実装用チップ型発光ダイオードランプ(発光装置:LEDデバイス)。
12…第一のリードワイヤ(リードフレーム)。
13…第二のリードワイヤ(リードフレーム)。
15…ボンディングワイヤ(金細線)。
16…第一の樹脂(封止樹脂)。
17…蛍光体。
18…第二の樹脂(封止樹脂)。
19…基板(アルミナセラミックス製または樹脂成型)。
20…側面部材(壁面部材)。
20a…穴。
20b…斜面(反射面)。
23…蛍光体。
24…発光ダイオード素子(LEDチップ)。
24a、24b…電極。
111、112、113…基板実装用チップ型発光ダイオードランプ(発光装置:LED
デバイス)。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(A1−xRxM2X)m(M2X4)nで示される組成であることを特徴とする蛍光体(但し、A元素はLi、Na,Be,Mg,Ca,Sr,Ba,Sc,Y,La,Gd,Luから選ばれる1種以上の元素であり、R元素はMn,Ce,Pr,Nd,Sm,Eu,Tb,Dy,Ho,Er,Tm,Ybから選ばれる1種以上の賦活剤であり、M元素はSi,Ge,Sn,Ti,Hf,Zr,Be,B,Al,Ga,In,Tl,Znから選ばれる1種以上の元素であり、X元素は酸素と窒素から選ばれる1種以上の元素である)。
【請求項2】
(8/5)<n/m<(5/3)であり、0<x≦0.2であることを特徴とする請求項1に記載の蛍光体。
【請求項3】
Aが、Ca,Sr,Baから選ばれる一種以上であることを特徴とする請求項1又は2のいずれかに記載の蛍光体。
【請求項4】
RがEuであることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の蛍光体。
【請求項5】
MがSi,Alから選ばれる1種以上であることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の蛍光体。
【請求項6】
前記蛍光体が(A1−xRx)mSi6n−5m−sAl7m−4n+sOsNm+4n−sで示される組成であることを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の蛍光体(但し、0≦s≦mである)。
【請求項7】
前記蛍光材料の含有率が80体積%以上であり、残部がβ―サイアロン、未反応の窒化ケイ素或いは窒化アルミニウム、酸窒化物ガラス、SrSiAl2N2O3、Sr2Al2Si10N14O4、SrSi(10−n)Al(18+n)OnN(32−n)(n〜1)、SrSi6N8から選ばれる一種以上であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の蛍光体。
【請求項8】
出発原料を混練して原料混合物を作る混練工程と、前記原料混合物を焼成する焼成工程と、焼成された前記原料混合物を熱処理する工程とを備え、
前記出発原料として、Aが、II価の価数をとる元素から選ばれる一種以上の元素である場合、Aを含有する化合物として、ASi2,ASiN2,A2Si5N8,A3Al2N4,ASi6N8から選ばれる一種以上の原料を少なくとも用いることを特徴とする蛍光体の製造方法。
【請求項9】
焼成された前記原料混合物を熱処理する工程の代わりに、焼成された前記原料混合物の塊を粉砕分級する工程と、粉砕分級された前記原料混合物の塊を熱処理する工程と、前記熱処理物の塊を粉砕分級する工程を備えることを特徴とする請求項8に記載の蛍光体の製造方法。
【請求項10】
Liを含有する化合物として、LiSi2N3を少なくとも出発原料として含むことを特徴とする請求項8又は9のいずれかに記載の蛍光体の製造方法。
【請求項11】
目的とする組成の蛍光材料を有する蛍光体粉末を予め合成し、これを種子として前記原料混合物に添加することを特徴とする請求項8〜10のいずれか一項に記載の蛍光体の製造方法。
【請求項12】
発光光源と蛍光体とから構成される発光装置であって、前記蛍光体として、請求項1〜7のいずれか一項に記載の蛍光体を用いることを特徴とする発光装置。
【請求項13】
発光光源と蛍光体とから構成される発光装置であって、前記蛍光体と、さらにβ−SiAlON:Eu,YAG:Ce,(Ca,Sr,Ba)2SiO4:Eu,α−SiAlON:Eu,(Ca,Sr,Ba)2Si5N8:Eu,(Ca,Sr)AlSiN3:Euから選ばれる1種以上の蛍光体を用いることを特徴とする請求項12に記載の発光装置。
【請求項14】
前記発光光源が、330〜500nmの波長の光を発するLEDチップ、無機ELチップまたは有機ELチップのいずれかであることを特徴とする請求項12又は13のいずれかに記載の発光装置。
【請求項15】
前記蛍光体が、前記LEDチップを取り囲んで形成された封止樹脂中に分散されていることを特徴とする請求項12〜14のいずれか一項に記載の発光装置。
【請求項16】
前記蛍光体が、前記LEDチップの近傍で高密度になるように、前記封止樹脂中に分散されていることを特徴とする請求項15に記載の発光装置。
【請求項17】
前記蛍光体が前記LEDチップに直接付着されていることを特徴とする請求項12〜16のいずれか一項に記載の発光装置。
【請求項18】
前記蛍光体が前記LEDチップの少なくとも一面を覆うように直接付着されていることを特徴とする請求項17に記載の発光装置。
【請求項19】
前記蛍光体が層状となっていることを特徴とする請求項18に記載の発光装置。
【請求項20】
前記発光装置が、LEDチップを複数含むことを特徴とする請求項12〜19のいずれか一項に記載の発光装置。
【請求項1】
一般式(A1−xRxM2X)m(M2X4)nで示される組成であることを特徴とする蛍光体(但し、A元素はLi、Na,Be,Mg,Ca,Sr,Ba,Sc,Y,La,Gd,Luから選ばれる1種以上の元素であり、R元素はMn,Ce,Pr,Nd,Sm,Eu,Tb,Dy,Ho,Er,Tm,Ybから選ばれる1種以上の賦活剤であり、M元素はSi,Ge,Sn,Ti,Hf,Zr,Be,B,Al,Ga,In,Tl,Znから選ばれる1種以上の元素であり、X元素は酸素と窒素から選ばれる1種以上の元素である)。
【請求項2】
(8/5)<n/m<(5/3)であり、0<x≦0.2であることを特徴とする請求項1に記載の蛍光体。
【請求項3】
Aが、Ca,Sr,Baから選ばれる一種以上であることを特徴とする請求項1又は2のいずれかに記載の蛍光体。
【請求項4】
RがEuであることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の蛍光体。
【請求項5】
MがSi,Alから選ばれる1種以上であることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の蛍光体。
【請求項6】
前記蛍光体が(A1−xRx)mSi6n−5m−sAl7m−4n+sOsNm+4n−sで示される組成であることを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の蛍光体(但し、0≦s≦mである)。
【請求項7】
前記蛍光材料の含有率が80体積%以上であり、残部がβ―サイアロン、未反応の窒化ケイ素或いは窒化アルミニウム、酸窒化物ガラス、SrSiAl2N2O3、Sr2Al2Si10N14O4、SrSi(10−n)Al(18+n)OnN(32−n)(n〜1)、SrSi6N8から選ばれる一種以上であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の蛍光体。
【請求項8】
出発原料を混練して原料混合物を作る混練工程と、前記原料混合物を焼成する焼成工程と、焼成された前記原料混合物を熱処理する工程とを備え、
前記出発原料として、Aが、II価の価数をとる元素から選ばれる一種以上の元素である場合、Aを含有する化合物として、ASi2,ASiN2,A2Si5N8,A3Al2N4,ASi6N8から選ばれる一種以上の原料を少なくとも用いることを特徴とする蛍光体の製造方法。
【請求項9】
焼成された前記原料混合物を熱処理する工程の代わりに、焼成された前記原料混合物の塊を粉砕分級する工程と、粉砕分級された前記原料混合物の塊を熱処理する工程と、前記熱処理物の塊を粉砕分級する工程を備えることを特徴とする請求項8に記載の蛍光体の製造方法。
【請求項10】
Liを含有する化合物として、LiSi2N3を少なくとも出発原料として含むことを特徴とする請求項8又は9のいずれかに記載の蛍光体の製造方法。
【請求項11】
目的とする組成の蛍光材料を有する蛍光体粉末を予め合成し、これを種子として前記原料混合物に添加することを特徴とする請求項8〜10のいずれか一項に記載の蛍光体の製造方法。
【請求項12】
発光光源と蛍光体とから構成される発光装置であって、前記蛍光体として、請求項1〜7のいずれか一項に記載の蛍光体を用いることを特徴とする発光装置。
【請求項13】
発光光源と蛍光体とから構成される発光装置であって、前記蛍光体と、さらにβ−SiAlON:Eu,YAG:Ce,(Ca,Sr,Ba)2SiO4:Eu,α−SiAlON:Eu,(Ca,Sr,Ba)2Si5N8:Eu,(Ca,Sr)AlSiN3:Euから選ばれる1種以上の蛍光体を用いることを特徴とする請求項12に記載の発光装置。
【請求項14】
前記発光光源が、330〜500nmの波長の光を発するLEDチップ、無機ELチップまたは有機ELチップのいずれかであることを特徴とする請求項12又は13のいずれかに記載の発光装置。
【請求項15】
前記蛍光体が、前記LEDチップを取り囲んで形成された封止樹脂中に分散されていることを特徴とする請求項12〜14のいずれか一項に記載の発光装置。
【請求項16】
前記蛍光体が、前記LEDチップの近傍で高密度になるように、前記封止樹脂中に分散されていることを特徴とする請求項15に記載の発光装置。
【請求項17】
前記蛍光体が前記LEDチップに直接付着されていることを特徴とする請求項12〜16のいずれか一項に記載の発光装置。
【請求項18】
前記蛍光体が前記LEDチップの少なくとも一面を覆うように直接付着されていることを特徴とする請求項17に記載の発光装置。
【請求項19】
前記蛍光体が層状となっていることを特徴とする請求項18に記載の発光装置。
【請求項20】
前記発光装置が、LEDチップを複数含むことを特徴とする請求項12〜19のいずれか一項に記載の発光装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2011−37913(P2011−37913A)
【公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−183313(P2009−183313)
【出願日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【出願人】(000002004)昭和電工株式会社 (3,251)
【出願人】(301023238)独立行政法人物質・材料研究機構 (1,333)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【出願人】(000002004)昭和電工株式会社 (3,251)
【出願人】(301023238)独立行政法人物質・材料研究機構 (1,333)
【Fターム(参考)】
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