説明

蛍光体及びそれを用いた発光装置

【課題】発光効率が高く、高輝度な橙色ないし赤色発光蛍光体を提供する。この発光効率の高い蛍光体を用いて、高効率で演色性の高い発光装置と、この発光装置を用いた照明装置及び画像表示装置を提供する。
【解決手段】下記式[1]で表される化学組成を有する蛍光体。
3−x−yBa …[1]
(Mは、Baを除くアルカリ土類金属元素、及びZnからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素。Mは、Eu、Ce、Cr、Mn、Sm、Tm、Tb、Er及びYbからなる群より選ばれる少なくとも1種の付活元素。Mは、少なくともSiを含む4価の元素。Mは、N、O、Sからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素。0<x<3、0<y<1、0<3−x−y、0.5≦a≦1.5、4.5≦d≦5.5)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蛍光体と、この蛍光体を用いた蛍光体含有組成物及び発光装置、並びにこの発光装置を用いた画像表示装置及び照明装置に関する。詳しくは、本発明は、橙色ないし赤色に発光する蛍光体と、この蛍光体を用いた蛍光体含有組成物及び発光装置、並びにこの発光装置を用いた画像表示装置及び照明装置に関する。
【背景技術】
【0002】
励起光源と、該励起光源からの光の少なくとも一部を波長変換する蛍光体とを有する発光装置に関する従来技術として、青色発光ダイオードと黄色蛍光体とを組み合わせた白色発光装置が、各種照明用途に実用化されている。その代表例としては、特許文献1、特許文献2、特許文献3等に記載のものが挙げられる。これらの白色発光装置において、特によく用いられている蛍光体は、一般式(Y,Gd)(Al,Ga)12:Ce3+で表される、セリウムで付活したイットリウム・アルミニウム・ガーネット系蛍光体である。
【0003】
しかしながら、青色発光ダイオードとイットリウム・アルミニウム・ガーネット系蛍光体を組み合わせた白色発光装置は、その発光に赤色成分が不足していることから、発光色は青白く、演色性が低いという問題があった。
【0004】
このような背景から、前記のイットリウム・アルミニウム・ガーネット系蛍光体を用いた白色発光装置の発光では不足する赤色成分を別の赤色蛍光体で補った白色発光装置の開発が検討されている。このような発光装置は、特許文献4等に開示されている。しかし、特許文献4等に記載される発光装置においても演色性に関して未だ改善すべき問題点は残されており、その課題を解決した発光装置が求められていた。なお、特許文献4に記載の赤色蛍光体はカドミウムを含んでおり、環境汚染の点でも問題がある。
【0005】
特許文献5に、ユーロピウム又はセリウムで付活された一般式M(SiO(ここでMはアルカリ土類金属元素であり、Mg、Ca、Sr、Ba、及びRaを表す。)で示される蛍光体が開示されている。しかしながら、ここには、具体例として、BaSiO:Eu2+が波長590nmに発光ピークを有することが開示されているのみである。また、(Ba1−aSrSiO:Eu2+も例示されているが、aの具体的な数値についての記載はない。
【0006】
非特許文献1に、BaSiO:Eu2+蛍光体の結晶構造が開示されている。また、非特許文献2に、このBaSiO:Eu2+蛍光体を波長405nmのInGaN半導体レーザーで励起した例が開示されている。一方で、非特許文献3に、蛍光体SrSiO:Eu2+が開示されており、Sr/Siが3/0.8、3/0.9、3/1及び3/1.1のとき、発光ピーク波長がそれぞれ559nm、564nm、568nm及び570nmであったことが開示されている。
【0007】
非特許文献4は、本発明の最初の出願日以降に開示されたものであるが、(Ba1−xSrSiO:Eu2+において、Srサイトの一部をBaで置換するとEu2+の発光が長波長側へシフトし、発光強度が低下することが開示されている。即ち、ここで開示された(Ba1−xSrSiO:Eu2+蛍光体の発光強度はSrSiO:Eu2+のものより小さい。また、SrSiO:Eu2+に関して焼成温度を1250℃から1350℃に上げることで輝度が低下するとの記載がある。従って、非特許文献4は(Ba1−xSrSiO:Eu2+蛍光体における発光特性の改善の可能性を示唆するものではない。
【特許文献1】特許第2900928号公報
【特許文献2】特許第2927279号公報
【特許文献3】特許第3364229号公報
【特許文献4】特開平10−163535号公報
【特許文献5】特開2005−68269号公報
【非特許文献1】Mitsuo Yamagaほか4名“Physical Review B”2005年、71巻、205102−1〜7ページ
【非特許文献2】安田諭史他3名「第51回応用物理学関係連合講演会 講演予稿集」、1607ページ
【非特許文献3】Joung Kyu Park他4名“Applied Physics Letters”2004年、84巻、1647〜1649ページ
【非特許文献4】Ho Seong Jang他2名“Proceedings of the 12th International DisplayWorkshops in Conjunction with Asia、display 2005 volume 1”、539〜542ページ
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述の如く、従来、アルカリ土類金属ケイ酸塩を母体とする黄色ないし赤色に発光する蛍光体及びこれらを用いた発光装置が知られている。
しかしながら、その発光効率は十分でなく、さらに発光効率の高い蛍光体及び発光装置が求められている。また、発光装置に組み込まれた蛍光体の温度は、100℃〜200℃程度に上昇することが知られており、温度上昇時においても発光効率が低下しない蛍光体及び発光装置が求められる。
【0009】
従って、本発明は、発光効率が高く、高輝度な橙色ないし赤色発光蛍光体を提供することを目的とする。
本発明はまた、このような発光効率の高い蛍光体を用いて、高効率で高演色性の発光装置と、この発光装置を用いた照明装置及び画像表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、アルカリ土類金属ケイ酸塩を母体とする蛍光体の組成及び結晶構造について鋭意検討した結果、下記式[1]で示される特定の組成範囲において、著しく高効率の発光を示す橙色ないし赤色蛍光体を見出した。また、下記式[1]で表される組成を有する蛍光体は、蛍光体の温度変化に対する発光強度維持率に優れていることを見出し、本発明を完成させた。
即ち、本発明は以下を要旨とするものである。
【0011】
(1) 下記(1)〜(3)を満足することを特徴とする蛍光体。
(1) 下記式[2]及び/又は下記式[3]を満たす。
85≦{R455(125)/R455(25)}×100≦110 …[2]
92≦{R405(100)/R405(25)}×100≦110 …[3]
(式[2]において、R455(25)は、25℃において、該蛍光体をピーク波長455nmの光で励起して得られる発光ピーク強度であり、
455(125)は、125℃において、該蛍光体をピーク波長455nmの光で励起して得られる発光ピーク強度である。
式[3]において、R405(25)は、25℃において、該蛍光体をピーク波長405nmの光で励起して得られる発光ピーク強度であり、
405(100)は、100℃において、該蛍光体をピーク波長405nmの光で励起して得られる発光ピーク強度である。)
(2) 発光ピーク波長が570nm以上、680nm以下の波長範囲にある。
(3) 発光ピークの半値幅が90nm以下である。
【0012】
(2) ピーク波長455nmの光で励起したときの内部量子効率が64%以上である、
及び/又は、
ピーク波長405nmの光で励起したときの内部量子効率が56%以上である
ことを特徴とする(1)に記載の蛍光体。
【0013】
(3) 該蛍光体の重量メジアン径(D50)が1μm以上、40μm以下であることを特徴とする(1)又は(2)に記載の蛍光体。
【0014】
(4) 該蛍光体がEu及び/又はCeを含有することを特徴とする(1)ないし(3)のいずれかに記載の蛍光体。
【0015】
(5) 該蛍光体がEu及びSiを含有することを特徴とする(4)に記載の蛍光体。
【0016】
(6) 下記式[1]で表される化学組成を有することを特徴とする蛍光体。
3−x−yBa …[1]
(式[1]中、Mは、Baを除くアルカリ土類金属元素、及びZnからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素を表す。
は、Eu、Ce、Cr、Mn、Sm、Tm、Tb、Er及びYbからなる群より選ばれる少なくとも1種の付活元素を表す。
は、少なくともSiを含む4価の元素を表す。
は、N、O、Sからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素を表す。
x、yは各々、
0<x<3
0<y<1
0<3−x−y
を満たす数を表す。
a、dは各々、
aは、0.5≦a≦1.5
dは、4.5≦d≦5.5
を満たす数を表す。)
【0017】
(7) 前記式[1]において、Mとして、Euを含有することを特徴とする(6)に記載の蛍光体。
【0018】
(8) 前記式[1]において、Mとして、Srを含有することを特徴とする(6)又は7に記載の蛍光体。
【0019】
(9) 前記式[1]において、yの値が、
0.01≦y≦0.1
を満足することを特徴とする(6)ないし(8)のいずれかに記載の蛍光体。
【0020】
(10) 前記式[1]において、xの値が、
0.8≦x≦1.2
を満足することを特徴とする(6)ないし(9)のいずれかに記載の蛍光体。
【0021】
(11) 前記式[1]において、xの値が、
0.5≦x≦0.8
を満足することを特徴とする(6)ないし(9)のいずれかに記載の蛍光体。
【0022】
(12) 下記式[1B]で表される化学組成を有することを特徴とする蛍光体。
Sr3−x−yBaEuSiO …[1B]
(式[1B]中、x及びyは、0<x<3、0<y<1、0<3−x−yを満たす数を表す。)
【0023】
(13) 前記式[1B]において、x=1であることを特徴とする(12)に記載の蛍光体。
【0024】
(14) 表面に該蛍光体とは異なる物質が存在することを特徴とする(1)ないし(13)のいずれかに記載の蛍光体。
【0025】
(15) 該蛍光体とは異なる物質が金属酸化物を含むことを特徴とする(14)に記載の蛍光体。
【0026】
(16) (1)ないし(15)のいずれかに記載の蛍光体と、液状媒体とを含有することを特徴とする蛍光体含有組成物。
【0027】
(17) 第1の発光体と、該第1の発光体からの光の照射によって可視光を発する第2の発光体とを備える発光装置において、
該第2の発光体が、(1)ないし(15)のいずれかに記載の蛍光体の少なくとも1種を第1の蛍光体として含有することを特徴とする発光装置。
【0028】
(18) 前記第2の発光体が、前記第1の蛍光体とは発光波長の異なる少なくとも1種の蛍光体を、第2の蛍光体として含有することを特徴とする(17)に記載の発光装置。
【0029】
(19) 前記第1の発光体が、420nm以上500nm以下の波長範囲に発光ピークを有し、
前記第2の発光体が、前記第2の蛍光体として、490nm以上560nm以下の波長範囲に発光ピークを有する少なくとも1種の蛍光体を含有することを特徴とする(18)に記載の発光装置。
【0030】
(20) 前記第1の発光体が、300nm以上420nm以下の波長範囲に発光ピークを有し、
前記第2の発光体が、前記第2の蛍光体として、420nm以上490nm以下の波長範囲に発光ピークを有する少なくとも1種の蛍光体と、490nm以上560nm以下の波長範囲に発光ピークを有する少なくとも1種の蛍光体とを含有することを特徴とする(18)に記載の発光装置。
【0031】
(21) 発光装置がさらに封止材料を備えるものであり、該封止材料としてシリコーン樹脂を用いることを特徴とする(17)ないし(20)のいずれかに記載の発光装置。
【0032】
(22) (17)ないし(21)のいずれかに記載の発光装置を光源として備えることを特徴とする画像表示装置。
【0033】
(23) (17)ないし(21)のいずれかに記載の発光装置を光源として備えることを特徴とする照明装置。
【発明の効果】
【0034】
本発明によれば、橙色ないし赤色に発光する蛍光体であって、発光効率が高く、高輝度である、特性の高い蛍光体が提供される。
また、本発明によれば、温度特性に優れた橙色ないし赤色蛍光体が提供される。温度特性が良好な蛍光体であれば、高出力LEDを用いた発光装置にも使用することができ、高出力で高輝度な発光装置を提供することができる。
また、この蛍光体を含有する組成物を用いることによって、高効率及び高特性の発光装置を得ることができる。
この発光装置は、画像表示装置や照明装置の用途に好適に用いられる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
以下、本発明の実施の形態を詳細に説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
【0036】
[1.蛍光体]
[1−1.蛍光体の特性]
(温度特性)
本発明の蛍光体は、温度特性に優れ、以下式[2]及び/又は[3]を満たすことが好ましい。以下の式[2]及び[3]において、R(y)は、温度y℃において、波長xnmの励起光で励起した場合の発光ピーク強度を示す。即ち、Rの直後の下付き数字xが、励起光の波長(単位nm)を示し、かっこ内の数値yが蛍光体の表面温度(単位℃)を示す。
85≦{R455(125)/R455(25)}×100≦110 …[2]
92≦{R405(100)/R405(25)}×100≦110 …[3]
(式[2]において、R455(25)は、25℃において、該蛍光体をピーク波長455nmの光で励起して得られる発光ピーク強度であり、
455(125)は、125℃において、該蛍光体をピーク波長455nmの光で励起して得られる発光ピーク強度である。
式[3]において、R405(25)は、25℃において、該蛍光体をピーク波長405nmの光で励起して得られる発光ピーク強度であり、
405(100)は、100℃において、該蛍光体をピーク波長405nmの光で励起して得られる発光ピーク強度である。)
【0037】
上記式[2]は、温度25℃における発光強度R455(25)に対する温度125℃における発光強度R455(125)との比、即ち、蛍光体の温度変化に対する発光強度維持率を意味する。
上記式[2]の値は、通常85以上、好ましくは87以上、より好ましくは89以上、さらに好ましくは91以上であることが好ましく、また、通常110以下である。
【0038】
また、上記式[3]は、温度25℃における発光強度R405(25)に対する温度100℃における発光強度R405(100)との比、即ち、蛍光体の温度変化に対する発光強度維持率を意味する。
上記式[3]の値は、通常92以上、好ましくは93以上、より好ましくは94以上であることが好ましく、また、通常110以下である。
【0039】
通常の蛍光体は、温度上昇とともに発光強度が低下するので、発光強度維持率が100を超えるようなことは考えられにくいが、何らかの理由により100を超えることがあっても問題はない。ただし、発光強度維持率が110を超えると、発光強度維持率が低い場合と同様、温度変化によって発光装置が色ずれを起こす傾向にある。従って、発光強度維持率は100に近いことが好ましく、100であることが最も好ましい。
【0040】
本発明の蛍光体は、また、上記式[2],[3]に加え、さらに、以下の式[2A],[2B],[3A],[3B]のいずれか1以上を満たすことが好ましい。
92≦{R455(100)/R455(25)}×100≦110 …[2A]
83≦{R455(150)/R455(25)}×100≦110 …[2B]
88≦{R405(125)/R405(25)}×100≦110 …[3A]
83≦{R405(150)/R405(25)}×100≦110 …[3B]
(式[2A],[2B]において、R455(100)は、100℃において、該蛍光体をピーク波長455nmの光で励起して得られる発光ピーク強度であり、R455(150)は、150℃において、該蛍光体をピーク波長455nmの光で励起して得られる発光ピーク強度であり、R455(25)は式[2]におけると同義である。
式[3A],[3B]において、R405(125)は、125℃において、該蛍光体をピーク波長405nmの光で励起して得られる発光ピーク強度であり、R405(150)は、150℃において、該蛍光体をピーク波長405nmの光で励起して得られる発光ピーク強度であり、R405(25)は式[3]におけると同義である。)
【0041】
上記式[2A]は、温度25℃における発光強度R455(25)に対する温度100℃における発光強度R455(100)との比、即ち、蛍光体の温度変化に対する発光強度維持率を意味する。
上記式[2A]の値は、通常92以上、好ましくは93以上、より好ましくは94以上、さらに好ましくは95以上であることが好ましく、また、通常110以下である。
【0042】
上記式[2B]は、温度25℃における発光強度R455(25)に対する温度150℃における発光強度R455(150)との比、即ち、蛍光体の温度変化に対する発光強度維持率を意味する。
上記式[2B]の値は、通常83以上、好ましくは84以上、より好ましくは85以上、さらに好ましくは86以上であることが好ましく、また、通常110以下である。
【0043】
上記式[3A]は、温度25℃における発光強度R405(25)に対する温度125℃における発光強度R405(125)との比、即ち、蛍光体の温度変化に対する発光強度維持率を意味する。
上記式[3A]の値は、通常88以上、好ましくは90以上、より好ましくは92以上であることが好ましく、また、通常110以下である。
【0044】
上記式[3B]は、温度25℃における発光強度R405(25)に対する温度150℃における発光強度R405(150)との比、即ち、蛍光体の温度変化に対する発光強度維持率を意味する。
上記式[3B]の値は、通常83以上、好ましくは85以上、より好ましくは87以上であることが好ましく、また、通常110以下である。
【0045】
蛍光体を発光装置に使用する場合、光源(後述する「第1の発光体」)の発熱により蛍光体が昇温することがある。特に、近年ではより明るい発光装置が求められているため、光源としてパワーLED等の高出力な光源を使用することがあるが、通常は高出力な光源の発熱の程度は大きいため、前記の昇温の程度も大きくなる。
【0046】
前記の発光強度維持率が低いと、GaN系LED等と組み合わせて発光装置を構成した場合に、動作により蛍光体の温度が上昇すると発光強度が低下し、また、温度変化によって発光装置の発光色が変化する傾向にあり、好ましくない。一方、前記の発光強度維持率が高いと、上記のような発光強度の低下や発光色の変化が小さくなる傾向にあり、好ましい。このような温度変化に伴う発光強度の低下や発光色の変化を温度特性と呼び、温度変化に伴う発光強度や発光色の変化が小さい蛍光体を温度特性の優れた蛍光体と言う。
【0047】
本発明の蛍光体は、上述したように温度特性に優れているため、本発明の蛍光体は、後述する発光装置等に好適に用いることができる。
【0048】
なお、前記の発光強度維持率は、例えば、発光スペクトル測定装置として大塚電子製MCPD7000マルチチャンネルスペクトル測定装置、輝度測定装置として色彩輝度計BM5A、ペルチエ素子による冷却機構とヒーターによる加熱機構を備えたステージ、及び光源として150Wキセノンランプを備える装置を用いて以下のようにして測定することができる。
【0049】
ステージに蛍光体サンプルを入れたセルを載せ、温度を20℃から150℃の範囲で変化させる。蛍光体の表面温度が25℃、100℃、125℃、又は150℃で一定となったことを確認する。次いで、光源から回折格子で分光して取り出した405nm、又は455nmの光で蛍光体を励起して発光スペクトルを測定する。測定された発光スペクトルから発光ピーク強度を求める。
なお、蛍光体の表面温度の測定値は、放射温度計と熱電対による温度測定値を利用して補正した値を用いる。
スペクトル測定装置によって測定された発光スペクトルから求めた発光ピーク強度の、25℃における発光ピーク強度に対する相対値を発光強度維持率とする。
【0050】
例えば、455nm励起、125℃における発光強度維持率は以下のようにして求めることができる。
25℃において、ピーク波長455nmの光で励起して得られる発光ピーク強度をR455(25)、125℃において、ピーク波長455nmの光で励起して得られる発光ピーク強度をR455(125)としたとき、{R455(125)/R455(25)}×100で算出される値を455nm励起、125℃における発光強度維持率とする。
【0051】
(発光スペクトルに関する特徴)
本発明の蛍光体が発する蛍光のスペクトル(発光スペクトル)に特に制限は無いが、橙色ないし赤色蛍光体としての用途に鑑みれば、波長405nm又は波長455nmの光で励起した場合に、その発光スペクトルに以下の(2),(3)の特性を有することが好ましい。
(2) 発光ピーク波長が570nm以上680nm以下の波長範囲にある。
(3) 発光ピークの半値幅が90nm以下である。
【0052】
即ち、本発明の蛍光体は、通常570nm以上、好ましくは580nm以上、より好ましくは590nm以上、また、通常680nm以下、好ましくは650nm以下、より好ましくは640nm以下の波長範囲に発光ピークを有する。発光ピークが短波長化すると白色発光装置を構成する場合に赤色成分が少なくなりすぎて赤色蛍光体として不適となる可能性があり、発光ピークが長波長化すると視感度の低い光が増加するために、蛍光体の輝度が低下する可能性がある。
なお、本発明の蛍光体が、複数の発光ピークを有する場合には、最も強度の高いピークの波長を発光ピーク波長とする。
【0053】
また、本発明の蛍光体は、その発光ピークの半値幅(full width at half maximum。以下適宜「FWHM」という。)が、通常90nm以下、好ましくは87nm以下、より好ましくは84nm以下である。なお、発光ピークの半値幅は、通常50nm以上、好ましくは70nm以上、より好ましくは80nm以上である。半値幅が狭いことにより、蛍光体の発光に含まれる赤味成分と、輝度のバランスの良い発光が得られる。
なお、本発明の蛍光体が、複数の発光ピークを有する場合は、最も強度の高い発光ピークの強度の、半分以上の強度を有する波長領域の幅を半値幅とする。
【0054】
なお、本発明の蛍光体を評価するために波長405nm又は波長455nmの光で励起するには、例えば、キセノンランプを用いることができ、その場合、回折格子分光器等によって所望の波長の光を取りだして照射する。また、GaN系LEDやLDも励起光源として使用することができる。また、本発明の蛍光体の発光スペクトルの測定は、室温、例えば25℃において、励起光源として150Wキセノンランプを、スペクトル測定装置としてマルチチャンネルCCD検出器C7041(浜松フォトニクス社製)を備える蛍光測定装置(日本分光社製)を用いて測定することができる。得られた発光スペクトルから、発光ピーク波長及びピーク半値幅を算出することができる。
【0055】
(励起波長に関する特性)
本発明の蛍光体は、200nm以上500nm以下の波長範囲の光で励起可能であれば良く、励起波長は特に限定されないが、例えば、青色領域の光、及び/又は、近紫外領域の光で励起可能であれば、半導体発光素子等を第1の発光体とする発光装置に好適に使用することができる。
【0056】
なお、励起スペクトルの測定は、室温、例えば25℃において、励起光源として150Wキセノンランプを、スペクトル測定装置としてマルチチャンネルCCD検出器C7041(浜松フォトニクス社製)を備える蛍光測定装置(日本分光社製)を用いて測定することができる。得られた励起スペクトルから、励起ピーク波長を算出することができる。
【0057】
(吸収効率)
本発明の蛍光体は、その吸収効率が高いほど好ましく、その値は、以下の(4)及び/又は(5)を満たすことが好ましい。
(4) ピーク波長455nmの光で該蛍光体を励起した場合、その吸収効率が、通常60%以上、好ましくは70%以上、より好ましくは75%以上である。
(5) ピーク波長405nmの光で該蛍光体を励起した場合、その吸収効率が、通常85%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは92%以上である。
【0058】
前記の範囲より吸収効率が低いと所定の発光を得るために必要な励起光量が大きくなり、消費エネルギーが大きくなる傾向にあり、好ましくない。
なお、前記の吸収効率の測定方法については後述の通りである。
【0059】
(内部量子効率)
本発明の蛍光体は、その内部量子効率が高いほど好ましく、その値は、以下の(6)及び/又は(7)を満たすことが好ましい。
(6) ピーク波長455nmの光で該蛍光体を励起した場合、その内部量子効率が、通常64%以上、好ましくは66%以上、より好ましくは68%以上、さらに好ましくは70%以上である。
(7) ピーク波長405nmの光で該蛍光体を励起した場合、その内部量子効率が、通常56%以上、好ましくは57%以上、より好ましくは58%以上である。
【0060】
ここで、内部量子効率とは、蛍光体が吸収した励起光の光子数に対する発光した光子数の比率を意味する。内部量子効率が低いと、所定の発光を得るために必要な励起光量が大きくなり、消費エネルギーが大きくなる傾向にあり好ましくない。
なお、前記の内部量子効率の測定方法については後述の通りである。
【0061】
(外部量子効率)
本発明の蛍光体は、その外部量子効率が高いほど好ましく、その値は以下の(8)及び/又は(9)を満たすことが好ましい。
(8) ピーク波長455nmの光で該蛍光体を励起した場合、その外部量子効率が、通常45%以上、好ましくは48%以上、より好ましくは50%以上である。
(9) ピーク波長405nmの光で該蛍光体を励起した場合、その外部量子効率が、通常48%以上、好ましくは50%以上、より好ましくは52%以上、特に好ましくは54%以上である。
【0062】
外部量子効率が低いと所定の発光を得るために必要な励起光量が大きくなり、消費エネルギーが大きくなる傾向にあり、好ましくない。
なお、前記の外部量子効率の測定方法については後述の通りである。
【0063】
(吸収効率、内部量子効率、及び外部量子効率の測定方法)
以下に、蛍光体の吸収効率αq、内部量子効率ηi、外部量子効率ηo、を求める方法を説明する。
【0064】
まず、測定対象となる蛍光体サンプル(例えば、粉末状など)を、測定精度が保たれるように、十分に表面を平滑にしてセルに詰め、積分球などの集光装置に取り付ける。積分球などの集光装置を用いるのは、蛍光体サンプルで反射したフォトン、及び蛍光体サンプルから蛍光現象により放出されたフォトンを全て計上できるようにする、すなわち、計上されずに測定系外へ飛び去るフォトンをなくすためである。
【0065】
この積分球などの集光装置に蛍光体を励起するための発光源を取り付ける。この発光源は、例えばXeランプ等であり、発光ピーク波長が例えば405nmや455nmの単色光となるようにフィルターやモノクロメーター(回折格子分光器)等を用いて調整がなされる。この発光ピーク波長が調整された発光源からの光を、測定対象の蛍光体サンプルに照射し、発光(蛍光)および反射光を含むスペクトルを分光測定装置、例えば大塚電子株式会社製MCPD2000、MCPD7000などを用いて測定する。ここで測定されるスペクトルには、実際には、励起発光光源からの光(以下では単に励起光と記す。)のうち、蛍光体に吸収されなかった反射光と、蛍光体が励起光を吸収して蛍光現象により発する別の波長の光(蛍光)が含まれる。すなわち、励起光近傍領域は反射スペクトルに相当し、それよりも長波長領域は蛍光スペクトル(ここでは、発光スペクトルと呼ぶ場合もある)に相当する。
【0066】
吸収効率αqは、蛍光体サンプルによって吸収された励起光のフォトン数Nabsを励起光の全フォトン数Nで割った値である。
【0067】
まず、後者の励起光の全フォトン数Nを、次のようにして求める。すなわち、励起光に対してほぼ100%の反射率Rを持つ物質、例えばLabsphere製「Spectralon」(450nmの励起光に対して98%の反射率Rを持つ。)等の反射板を、測定対象として、蛍光体サンプルと同様の配置で上述の積分球などの集光装置に取り付け、該分光測定装置を用いて反射スペクトルIref(λ)を測定する。この反射スペクトルIref(λ)から求めた下記(式I)の数値は、Nに比例する。
【0068】
【数1】

【0069】
ここで、積分区間は実質的にIref(λ)が有意な値を持つ区間のみで行ったものでよい。
蛍光体サンプルによって吸収された励起光のフォトン数Nabsは下記(式II)で求められる量に比例する。
【0070】
【数2】

【0071】
ここで、I(λ)は、吸収効率αqを求める対象としている蛍光体サンプルを取り付けたときの、反射スペクトルである。(式II)の積分区間は(式I)で定めた積分区間と同じにする。このように積分区間を限定することで、(式II)の第二項は,測定対象としている蛍光体サンプルが励起光を反射することによって生じたフォトン数に対応したもの、すなわち、測定対象としている蛍光体サンプルから生ずる全フォトンのうち蛍光現象に由来するフォトンを除いたものに対応したものになる。実際のスペクトル測定値は、一般にはλに関するある有限のバンド幅で区切ったデジタルデータとして得られるため、(式I)および(式II)の積分は、そのバンド幅に基づいた和分によって求まる。
以上より、αq=Nabs/N=(式II)/(式I)と求められる。
【0072】
次に、内部量子効率ηiを求める方法を説明する。ηiは、蛍光現象に由来するフォトンの数NPLを蛍光体サンプルが吸収したフォトンの数Nabsで割った値である。
ここで、NPLは、下記(式III)で求められる量に比例する。
【0073】
【数3】

【0074】
この時、積分区間は、蛍光体サンプルの蛍光現象に由来するフォトンの有する波長範囲に限定する。蛍光体サンプルから反射されたフォトンの寄与をI(λ)から除くためである。具体的に(式III)の積分区間の下限は、(式I)の積分区間の上端を取り、上限は、蛍光に由来のフォトンを含むのに必要十分な範囲とする。
以上により、内部量子効率ηiは、ηi=(式III)/(式II)と求められる。
【0075】
なお、デジタルデータとなったスペクトルから積分を行うことに関しては、吸収効率αqを求めた場合と同様である。
そして、上記のようにして求めた吸収効率αqと内部量子効率ηiの積をとることで外部量子効率ηoを求める。あるいは、ηo=(式III)/(式I)の関係から求めることもできる。ηoは、蛍光に由来するフォトンの数NPLを励起光の全フォトン数Nで割った値である。
【0076】
(重量メジアン径(D50))
本発明の蛍光体は、その重量メジアン径が、通常1μm以上、好ましくは2μm以上、より好ましくは10μm以上、また、通常40μm以下、好ましくは30μm以下、より好ましくは26μm以下の範囲であることが好ましい。重量メジアン径が小さすぎると、輝度が低下し、蛍光体粒子が凝集してしまう傾向があり好ましくない。一方、重量メジアン径が大きすぎると、塗布ムラやディスペンサー等の閉塞が生じる傾向があり好ましくない。
【0077】
なお、本発明の蛍光体の重量メジアン径は、例えばレーザー回折/散乱式粒度分布測定装置等の装置を用いて測定することができる。
【0078】
(蛍光の色に関する特徴)
本発明の蛍光体は、通常は、橙色ないし赤色に発光する。
本発明の蛍光体が橙色ないし赤色に発光する場合、当該蛍光の色度座標は、通常、(x,y)=(0.52,0.48)、(0.44,0.40)、(0.56,0.20)及び(0.72,0.28)で囲まれる領域内の座標となり、好ましくは、(x,y)=(0.52,0.48)、(0.48,0.44)、(0.64,0.24)及び(0.72,0.28)で囲まれる領域内の座標となる。
【0079】
なお、蛍光の色度座標x、yは、蛍光体の発光スペクトルを用いて、JIS Z 8724(色の測定方法−光源色)に準じて計算することにより測定することができる。ただし、本発明においては、励起光として400nm以上480nm以下の波長範囲の光を使用しており、吸収されなかった励起光の影響を除くため、発光スペクトルの480nm以上の部分だけを使用して計算する。
【0080】
(組成)
本発明の蛍光体は、付活元素としてEu及び/又はCeを含有することが好ましく、発光効率(内部量子効率、外部量子効率)の高い蛍光体が得られやすいという観点から、Euを含有することがより好ましく、Euと共にSiを含有することがさらに好ましい。
【0081】
[1−2.式[1]で表される蛍光体]
[1−2−1.組成]
本発明の蛍光体は、下記式[1]で表される化学組成を有することが好ましい。
3−x−yBa …[1]
(式[1]中、Mは、Baを除くアルカリ土類金属元素、及びZnからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素を表す。
は、Eu、Ce、Cr、Mn、Sm、Tm、Tb、Er及びYbからなる群より選ばれる少なくとも1種の付活元素を表す。
は、少なくともSiを含む4価の元素を表す。
は、N、O、Sからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素を表す。
x、yは各々、
0<x<3
0<y<1
0<3−x−y
を満たす数を表す。
a、dは各々、
aは、0.5≦a≦1.5
dは、4.5≦d≦5.5
を満たす数を表す。)
【0082】
上記式[1]で表される蛍光体は、Baを必須とし、さらにBaを除くアルカリ土類金属元素を少なくとも1種含有することを特徴とする。
以下、式[1]について詳細に説明する。
【0083】
<M
前記式[1]中、Mは、Baを除くアルカリ土類金属元素、及びZnからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素を表す。ここで、アルカリ土類金属元素とは、Be、Mg、Ca、Sr、Ba、及びRaを指す。Mとしては、これらの元素のうち何れか1種を単独で含有していてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併有していてもよい。Mとしては、Be、Mg、Ca、Sr、及びBaからなる群から選ばれる1種又は2種以上がより好ましく、Mg、Ca、及びSrからなる群から選ばれる1種又は2種以上がさらに好ましい。中でも、少なくともSrを含有することが好ましく、Srを主体とすることがさらに好ましい。M全体に対するSrの含有量としては、60モル%以上が好ましく、80モル%以上がさらに好ましく、100モル%であることが特に好ましい。
なお、MとしてSrを含有させると、蛍光体の加水分解に対する耐久性が改善するという効果がある。
【0084】
<M
前記式[1]中、Mは、付活元素を表す。Mの具体例としては、Cr、Mn等の遷移金属元素;Eu、Sm、Tm、Yb、Ce、Tb、Er等の希土類元素;等が挙げられる。Mとしては、これらの元素のうち何れか1種を単独で含有していてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併有していてもよい。中でも、MとしてはSm、Eu、及びYbからなる群から選ばれる1種又は2種以上の元素が好ましく、好適な赤色発光が得られるという理由からMとしてEuを含むことがより好ましく、Mの全てがEuであることがさらに好ましい。
【0085】
<M
前記式[1]中、Mは、少なくともSiを含む4価の金属元素を表す。Mは、Siを主体とすることが好ましく、M全体に対するSiの含有量としては、80%以上が好ましく、95モル%以上がさらに好ましく、100モル%であることがより好ましい。Mとして、Ge、Ti、Zr等がSiの一部を置換していてもよいが、赤色の発光強度等の面から、Siが他の元素によって置換されている割合は、できるだけ低い方が好ましく、具体的には、Ge等の他の元素の含有量がSiの20モル%以下であることが好ましく、5モル%以下であることがより好ましい。
【0086】
<M
前記式[1]中、Mは、N、O、及びSからなる群から選ばれる少なくとも1種の元素を表す。Mとしては、これらの元素のうち何れか1種を単独で含有していてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併有していてもよい。Mは、Oを含み、Oの他にN及び/又はSを含んでいても良い。中でも、Mは、Oを主体とすることが好ましく、Oが全てであることが特に好ましい。
例えば、Mとして、N及び/又はOを含む場合、OとNの比率(O:N)が、0.9:0.1〜1:0であることが好ましく、0.95:0.05〜1:0であることがより好ましい。
【0087】
<x,yの好ましい範囲>
前記式[1]中、xは、Baのモル数を表す数であり、1に近いことが好ましいが、通常0より大きく、好ましくは0.5以上、さらに好ましくは0.7以上、特に好ましくは0.8以上、また、通常3より小さく、好ましくは2.5以下、より好ましくは2以下、さらに好ましくは1.5以下、特に好ましくは1.2以下の数を表す。xの値を上記の範囲内に調整することで、発光強度が高く、かつ、耐久性の高い蛍光体を得ることができる。
【0088】
前記式[1]中、yは、Mのモル数を表す数であり、通常0より大きく、好ましくは0.001以上、より好ましくは0.005以上、さらに好ましくは0.01以上、最も好ましくは0.015以上、また、通常1未満、好ましくは0.3以下、さらに好ましくは0.15以下、特に好ましくは0.1以下、最も好ましくは0.05以下の数を表す。yの値を調整することにより、発光強度及び発光波長を調整することができる。yの値が小さすぎると、発光強度が小さくなる傾向がある。一方、yの値が大きすぎても濃度消光と呼ばれる現象により発光強度が低下する傾向がある。
【0089】
x及びyの値を上記の範囲に調節することで発光強度の高い蛍光体を得ることができる。中でも、MがSrだけからなり、xの値が0.9以上、1.1以下であり、かつ、3−x−y、即ち、Mのモル数が1.7以上、2.2以下である場合は、発光強度が特に高くなるため、より好ましい。最も好ましくは、MがSrだけからなり、かつ、x=1である場合であり、MとBaのモル比が2:1である母体結晶、SrBaSiOに、付活元素Mを一部置換した場合である。この場合、蛍光体の内部量子効率や発光強度が著しく高くなり、また、温度特性も良好である。さらに、発光ピーク波長が長波長側へシフトするため、波長630nmにおける発光スペクトルの高さが高い、即ち、赤味成分の多い蛍光体が得られる。上述のx及びyが特定の範囲の蛍光体は、輝度と赤味成分のバランスの良い蛍光体であるため、この蛍光体を用いると特性の高い発光装置の製造が可能となる。
【0090】
前述の特許文献5に、(Ba1−aSrSiO:Eu2+が開示されているが、SrSiOとBaSiOの単なる混晶として開示されているに過ぎない。このような場合、一般的に、中間の組成の特性は、組成の変化に伴って単調に変化するものと推測されるが、本発明において、意外なことに、母体結晶のSrとBaの組成比が2:1である場合が最適であることが明らかになった。
【0091】
なお、温度特性及び内部量子効率の向上には、MとBaのモル比だけではなく、前記式[1]中の付活元素Mの組成比(yの値)も関係しており、yの値が小さいほど、温度特性や内部量子効率が向上する傾向にある。
【0092】
また、xの値を上記の範囲より小さくすると、蛍光体の発光を長波長化することができる。これにより、発光装置とした時に、従来のYAG蛍光体を用いた発光装置では不足していた赤色発光が増強され、演色性の高い白色発光装置を得ることができる。この場合、前記式[1]中、xは、通常0.2以上、好ましくは0.5以上、また、通常2以下、好ましくは1.5以下、さらに好ましくは1以下、特に好ましくは0.8以下の数を表す。
【0093】
<a、dの好ましい範囲>
前記式[1]中、aは、Mのモル数を表す数であり、具体的には、1に近いことが好ましいが、通常0.5以上、好ましくは0.7以上、さらに好ましくは0.9以上、また、通常1.5以下、好ましくは1.3以下、さらに好ましくは1.1以下の数を表す。aの値が小さすぎても大きすぎても、異相結晶が現れ、発光特性が低下する傾向がある。
【0094】
前記式[1]中、dは、Mのモル数を表す数であり、具体的には、5に近いことが好ましいが、通常4.5以上、好ましくは4.7以上、より好ましくは4.9以上、さらに好ましくは4.95以上、また、通常5.5以下、好ましくは5.3以下、より好ましくは5.1以下、さらに好ましくは5.05以下の数を表す。dの値が小さすぎても大きすぎても、異相結晶が現れ、発光特性が低下する傾向がある。
【0095】
<好ましい化学組成>
前記式[1]の化学組成は、特に、下記式[1B]で表されることが好ましい。
Sr3−x−yBaEuSiO …[1B]
(式[1B]中、x及びyは、0<x<3、0<y<1、0<3−x−yを満たす数を表す。)
【0096】
式[1B]において、x,y,0<3−x−yの好適範囲は、前記式[1]におけると同様であるが、特にx=1であることが好ましい。
【0097】
<好ましい組成の具体例>
式[1]、好ましくは式[1B]で表される化学組成のうち、好ましいものの具体例を以下に挙げるが、本発明の蛍光体の組成は以下の例示に限定されるものではない。
即ち、式[1]の化学組成のうち好ましい例としては、Sr1.98BaSiO:Eu0.02、Sr1.97BaSiO:Eu0.03等が挙げられる。これらは、発光強度が高く、好ましい例である。
また、発光波長が長波長よりである具体例としては、Sr2.18Ba0.8SiO:Eu0.02、Sr2.48Ba0.5SiO:Eu0.02等が挙げられる。
【0098】
[1−2−2.結晶構造]
SrSiOとBaSiOの結晶構造は公知であり、表1及び表2にこれらの結晶構造パラメータを示す。この2つの構造は、空間群が異なるものの、ほぼ同じ構造(原子の配列状況)である。これらは、格子定数と各原子の原子座標が若干異なり、特に酸素原子の位置の対称性が異なるため、異なる空間群をとっている。
【0099】
【表1】

【0100】
【表2】

【0101】
本発明者らは本発明のSrBaSiO:Eu蛍光体について粉末X線回折データをRietveld法によりパターンフィッティングし、結晶構造を詳細に解析した。その結果、アルカリ土類金属原子の結晶内の分布が以下に記載するような特定の状態にある蛍光体が特に輝度等の特性の高いものであることを見出た。なお、Rietveld解析は、中井泉、泉富士夫編著「粉末X線解析の実際−リートベルト法入門」朝倉書店刊(2002年)を参考とし、解析プログラムRIETAN2000を使用して行った。
【0102】
本発明の蛍光体の代表組成であるSrBaSiO:Eu蛍光体は、SrSiOやBaSiOとほぼ同じ結晶構造を有し、アルカリ土類金属原子の結晶中の占有位置(以下、サイトと称する場合がある。)が2種類ある。これら3種類の蛍光体は、酸素の配位数が大きく、配位距離も大きいサイト(広いサイト)と、逆に配位数が小さく、配位距離も小さいサイト(狭いサイト)が、1:2の比率で存在する。SrBaSiO:Eu蛍光体では、このうちの狭いサイトをSrが、広いサイトをBaが占めることによって、結晶構造が安定化し、高輝度の発光が得られるものと考えられる。特に広いサイトのBaの占有率が50%以上であることが好ましく、70%以上であることがさらに好ましい。また、狭いサイトのSrの占有率が50%以上であることが好ましく、70%以上であることがさらに好ましい。
【0103】
また、後に実施例として詳細にデータを示すが、Rietveld法による解析の結果、本発明の蛍光体は、SrSiOと同じ空間群である、P4/ncc(No.130)、又は、BaSiOと同じ空間群である、I4/mcm(No.140)のいずれかの空間群に属する結晶であることがわかった。どちらの空間群と仮定しても、ほぼ同等の正確さのフィッティングデータが得られるため、どちらの空間群に属するかについては決定することはできなかった。I4/mcm(No.140)の方が若干対称性の高い空間群であり、CsCoClと同じ空間群に属する。
【0104】
本発明の蛍光体がいずれの空間群であるとしても、広いサイトにBaが、狭いサイトにSrが選択的に配置されることにより特性の高い蛍光体が得られるものと考えることができる。すなわち、P4/nccの場合には、広いサイトがwyckoff記号4cに帰属されるサイトであり、狭いサイトがwyckoff記号8fに帰属されるサイトである。一方、I4/mcmの場合には、広いサイトがwyckoff記号4aに帰属されるサイトであり、狭いサイトがwyckoff記号8hに帰属されるサイトである。
【0105】
なお、結晶の空間群と対称性に関する詳細は、INTERNATIONAL TABLES FOR CRYSTALLOGRAPHY(Third,revised edition),Volume A SPACE−GROUP SYMMETRYに従った。
【0106】
このような本発明の蛍光体は、紫外線や可視光線だけでなく、電子線、X線、電場等によっても発光する。従って、後述のLEDやLD等の半導体発光素子を励起光源とする本発明の発光装置の他、上記のような励起手段を利用する蛍光体としても有効に使用することができる。
【0107】
なお、本発明の蛍光体について、発光特性以外の実用特性について述べると、BaSiOは加水分解しやすいという問題があるが、本発明の蛍光体はBaSiOのような問題は発生しない。
【0108】
[1−2−3.表面処理]
本発明の蛍光体は、上述の如く、耐加水分解性に優れるが、その耐湿性等の耐候性を一層向上させるために、又は後述する発光装置の蛍光体含有部における樹脂に対する分散性を向上させるために、本発明の蛍光体を表面処理する、即ち蛍光体の表面を異なる物質で被覆するなどして、蛍光体の表面に異なる物質を存在させることもできる。
【0109】
蛍光体の表面に存在させることのできる物質(以下、任意に「表面処理物質」と称する。)としては、有機化合物、無機化合物、およびガラス材料を挙げることができる。
【0110】
有機化合物としては、例えばアクリル樹脂、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリエチレン等の熱溶融性ポリマー、ラテックス、ポリオルガノシロキサン等が挙げられる。
【0111】
無機化合物としては、例えば酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、酸化珪素、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化スズ、酸化ゲルマニウム、酸化タンタル、酸化ニオブ、酸化バナジウム、酸化硼素、酸化アンチモン、酸化亜鉛、酸化イットリウム、酸化ビスマス等の金属酸化物、窒化珪素、窒化アルミニウム等の金属窒化物、燐酸カルシウム、燐酸バリウム、燐酸ストロンチウム等のオルト燐酸塩、ポリリン酸塩が挙げられる。
【0112】
ガラス材料としては、例えばホウ珪酸塩、ホスホ珪酸塩、アルカリ珪酸塩等が挙げられる。
【0113】
これらの表面処理物質は2種以上を組み合わせて用いても良い。
【0114】
前記の表面処理により得られる蛍光体は、表面処理物質の存在が前提であるが、その態様は、例えば下記のものが挙げられる。
(i)前記表面処理物質が連続膜を構成して蛍光体表面を被覆する態様
(ii)前記表面処理物質が多数の微粒子となって、蛍光体の表面に付着することにより蛍光体表面を被覆する態様
【0115】
蛍光体の表面への表面処理物質の付着量ないし被覆量は、蛍光体の重量に対して、通常1重量%以上、好ましくは5重量%以上、さらに好ましくは10重量%以上であり、通常50重量%以下、好ましくは30重量%以下、さらに好ましくは20重量%以下である。蛍光体に対する表面処理物質量が多すぎると蛍光体の発光特性が損なわれることがあり、少なすぎると表面被覆が不完全となって、耐湿性、分散性の改善が見られないことがある。
【0116】
また、表面処理により形成される表面処理物質の膜厚(層厚)は、通常10nm以上、好ましくは50nm以上であり、通常2000nm以下、好ましくは1000nm以下である。この膜厚が厚すぎると蛍光体の発光特性が損なわれることがあり、薄すぎると表面被覆が不完全となって、耐湿性、分散性の改善が見られないことがある。
【0117】
表面処理の方法には特に限定は無いが、例えば下記のような金属酸化物(酸化珪素)による被覆処理法を挙げることができる。
【0118】
本発明の蛍光体をエタノール等のアルコール中に添加して、攪拌し、さらにアンモニア水等のアルカリ水溶液を添加して、攪拌する。次に、加水分解可能なアルキル珪酸エステル、例えばテトラエチルオルト珪酸を添加して、攪拌する。得られた溶液を3分間〜60分間静置した後、スポイト等により蛍光体表面に付着しなかった酸化珪素粒子を含む上澄みを除去する。次いで、アルコール添加、攪拌、静置、上澄み除去を数回繰り返した後、120℃〜150℃で10分〜5時間、例えば2時間の減圧乾燥工程を経て、表面処理蛍光体を得る。
【0119】
蛍光体の表面処理方法としては、この他、例えば球形の酸化珪素微粉を蛍光体に付着させる方法(特開平2−209989号公報、特開平2−233794号公報)、蛍光体に珪素系化合物の皮膜を付着させる方法(特開平3−231987号公報)、蛍光体微粒子の表面をポリマー微粒子で被覆する方法(特開平6−314593号公報)、蛍光体を有機材料、無機材料及びガラス材料等でコーティングする方法(特開2002−223008号公報)、蛍光体の表面を化学気相反応法によって被覆する方法(特開2005−82788号公報)、金属化合物の粒子を付着させる方法(特開2006−28458号公報)等の公知の方法を用いることができる。
【0120】
[1−3.蛍光体の製造方法]
本発明の蛍光体の製造方法は特に制限されないが、例えば、前記式[1]における、金属元素Mの原料(以下適宜「M源」という。)、Baの原料(以下適宜「Ba源」という。)、金属元素Mの原料(以下適宜「M源」という。)、及び金属元素Mの原料(以下適宜「M源」という。)を混合し(混合工程)、得られた混合物を焼成する(焼成工程)ことにより製造することができる。
【0121】
<原料>
本発明の蛍光体の製造に使用されるM源、Ba源、M源、及びM源としては、M、Ba、M、及びMの各元素の酸化物、水酸化物、炭酸塩、硝酸塩、硫酸塩、蓚酸塩、カルボン酸塩、ハロゲン化物等が挙げられる。これらの化合物の中から、複合酸化物への反応性や、焼成時におけるNO、SO等の発生量の低さ等を考慮して、適宜選択すればよい。
【0122】
源の具体例を、M金属の種類毎に分けて列挙すると、以下の通りである。
Sr源の具体例としては、SrO、Sr(OH)・8HO、SrCO、Sr(NO、SrSO、Sr(OCO)・HO、Sr(OCOCH・0.5HO、SrCl等が挙げられる。中でも、SrCOが好ましい。空気中の安定性が良く、また、加熱により容易に分解し、目的外の元素が残留しにくく、さらに、高純度の原料を入手しやすいからである。
【0123】
Mg源の具体例としては、MgO、Mg(OH)、塩基性炭酸マグネシウム(mMgCO・Mg(OH)・nHO)、Mg(NO・6HO、MgSO、Mg(OCO)・2HO、Mg(OCOCH・4HO、MgCl等が挙げられる。中でも、MgOや塩基性炭酸マグネシウムが好ましい。
【0124】
Ca源、又はBe源の具体例としては、CaO、Ca(OH)、CaCO、Ca(NO・4HO、CaSO・2HO、Ca(OCO)・HO、Ca(OCOCH・HO、CaCl、BeO等が挙げられる。中でも、CaCO、CaCl等が好ましい。
【0125】
Zn源の具体例としては、ZnO、ZnF、ZnCl、Zn(OH)等の亜鉛化合物(但し、水和物であってもよい。)が挙げられる。中でも、粒子成長を促進させる効果が高いという観点からZnF・4HO(但し、無水物であってもよい。)等が好ましい。
【0126】
Ba源の具体例としては、BaO、Ba(OH)・8HO、BaCO、Ba(NO、BaSO、Ba(OCO)・HO、Ba(OCOCH、BaCl等が挙げられる。中でも、BaCOが好ましい。空気中の安定性が良く、また、加熱により容易に分解するため、目的外の元素が残留しにくく、さらに、高純度の原料を入手しやすいからである。
【0127】
源のうち、Eu源の具体例としては、Eu、Eu(SO、Eu(OCO)、EuCl、EuCl、Eu(NO・6HO等が挙げられる。中でも、Eu等が好ましい。また、Sm源、Ce源、Tm源、Yb源、Cr源、Mn源、Tb源、Er源等の具体例としては、Eu源の具体例として挙げた各化合物において、EuをそれぞれSm、Ce、Tm、Yb、Cr、Mn、Tb、Er等に置き換えた化合物が挙げられる。
【0128】
源のうち、Si源の具体例としては、SiO、HSiO、Si(OCOCH等が挙げられる。中でも、アエロジルなどの反応性の高いSiOが好ましい。また、Ge源、Ti源、Zr源等の具体例としては、Si源の具体例として挙げた各化合物において、SiをそれぞれGe、Ti、Zr等に置き換えた化合物が挙げられる。
【0129】
これらの各元素源化合物は、各々、1種を単独で用いても良く、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0130】
<混合工程>
源、Ba源、M源、及びM源を混合する手法は特に制限されないが、例としては、下記の(A)及び(B)の手法が挙げられる。
【0131】
(A)ハンマーミル、ロールミル、ボールミル、ジェットミル等の乾式粉砕機、又は、乳鉢と乳棒等を用いる粉砕と、リボンブレンダー、V型ブレンダー、ヘンシェルミキサー等の混合機、又は、乳鉢と乳棒を用いる混合とを組み合わせ、M源、Ba源、M源、及びM源等の原料を粉砕・混合する乾式混合法。
【0132】
(B)M源、Ba源、M源、及びM源等の原料に水等の溶媒又は分散媒を加え、粉砕機、乳鉢と乳棒、又は蒸発皿と撹拌棒等を用いて混合し、溶液又はスラリーの状態とした上で、噴霧乾燥、加熱乾燥、又は自然乾燥等により乾燥させる湿式混合法。
また、上記(B)において、Euを均一に混合させるため、Eu(NO・6HO等のEu水溶液に他の原料を混合し、原料混合物を加熱乾燥してもよい。
【0133】
<フラックス>
上記の原料に加え、良好な結晶を成長させる観点から、フラックスを混合してもよい。フラックスの種類は特に制限されないが、例としては、NHClやNHF・HF等のハロゲン化アンモニウム、NaCO、LiCO等のアルカリ金属炭酸塩、LiCl、NaCl、KCl等のアルカリ金属ハロゲン化物、CaCl、CaF、BaF等のアルカリ土類金属ハロゲン化物、B、HBO、NaB等のホウ酸塩化合物、LiPO、NHPO等のリン酸塩化合物、酸化亜鉛、ハロゲン化亜鉛、硫化亜鉛等の亜鉛化合物、Bi等の周期表第15族元素化合物などが挙げられる。中でも、アルカリ金属ハロゲン化物や、アルカリ土類金属ハロゲン化物、Znのハロゲン化物が好ましい。また、これらのハロゲン化物の中でも、フッ化物、塩化物が好ましい。
【0134】
フラックスの使用量は、原料の種類やフラックスの材料等によっても異なるが、通常0.01重量%以上、さらには0.1重量%以上、また、通常20重量%以下、さらには10重量%以下の範囲が好ましい。フラックスの使用量が少な過ぎると、フラックスの効果が現れず、フラックスの使用量が多過ぎると、フラックス効果が飽和したり、母体結晶に取り込まれて発光色を変化させたり、輝度低下を引き起こす場合がある。これらのフラックスは1種を単独で使用してもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0135】
<焼成工程>
(焼成条件)
焼成工程は通常、上述の混合工程により得られたM源、Ba源、M源、及びM源等の原料の混合物を、各原料と反応性の低い材料からなるルツボやトレイ等の耐熱容器中に入れ、加熱することにより行なう。
【0136】
焼成時に用いる耐熱容器の材質としては、アルミナ、石英、窒化ホウ素等のセラミックス、白金、モリブデン、タングステン、タンタル、ニオブ、イリジウム、ロジウム等の金属、あるいは、それらを主成分とする合金、カーボン(グラファイト)などが挙げられる。ここで、石英製の耐熱容器は、比較的低温、すなわち、1200℃以下での熱処理に使用することができ、好ましい使用温度範囲は1000℃以下である。
【0137】
上記の耐熱容器の材質の例示の中でも、蛍光体への不純物元素の混入を防ぐことができることから、本発明の蛍光体成分と反応しにくい金属、あるいは金属合金を使用することが好ましい。大気雰囲気下、あるいは、弱還元雰囲気下で焼成する場合には、白金製の耐熱容器を使用することが好ましく、還元雰囲気下で焼成する場合には、モリブデン製、タングステン製、タンタル製等の耐熱容器を使用することが好ましい。また、窒化ホウ素は、セラミックスであるが、反応性が低いため、還元雰囲気下での焼成に好ましい。
【0138】
上記の耐熱容器の材質について、例えば、白金製やモリブデン製を選択した場合、耐熱容器の全てが白金やモリブデンである必要はなく、少なくとも蛍光体の原料混合物と耐熱容器が接触する部分が白金製やモリブデン製であれば良い。例えば、アルミナ製耐熱容器の底部と側面に白金箔やモリブデン箔を敷き詰めても良い。
【0139】
また、原料混合物に上記のフラックスを添加する場合や、原料混合物にM源及び/又はM源を添加する場合は、耐熱容器の材質としては、アルミナ製、マグネシア製、カルシア製、ジルコニア製、窒化ホウ素製、窒化珪素製、炭化珪素製、カーボン製等が好ましく、アルミナ製がより好ましい。
なお、後述する一次焼成及び二次焼成において、同じ材質の耐熱容器を用いても、異なる材質の耐熱容器を用いてもよい。
【0140】
焼成時の温度は、原料の種類、混合状態、粒径、形態等によって異なるが、通常500℃以上、好ましくは1000℃以上、さらに好ましくは1200℃以上の温度、さらにより好ましくは1400℃以上の温度、最も好ましくは1500℃以上の温度、また、通常1800℃以下、好ましくは1700℃以下、さらに好ましくは1600℃以下の範囲である。焼成時の温度が高すぎると、原料を入れた容器との反応や、原料成分の揮発などによって発光強度が低下する場合がある。温度が低すぎると、原料同士の反応が不十分となり目的とする結晶相が生成しないか、目的の結晶相が得られたとしても結晶性が低いために発光強度が低下する場合がある。
【0141】
焼成時の圧力は、焼成温度等によっても異なるが、通常0.01MPa以上、好ましくは0.08MPa以上、また、通常1MPa以下、好ましくは0.12MPa以下であり、大気圧下であることがさらに好ましい。圧力が低過ぎても高過ぎても電気炉等の設備費が高くなり好ましくない。
【0142】
焼成時間は、焼成時の温度や圧力等によっても異なるが、通常10分以上、好ましくは1時間以上、さらに好ましく2時間以上、通常24時間以下、好ましくは10時間以下の範囲である。
【0143】
焼成時の雰囲気は、付活元素が発光に寄与するイオン状態(価数)となるように必要な雰囲気を選択することが好ましい。例えば、付活元素としてEuを含む場合、Euが発光するためには、Eu2+である必要がある。しかし、Eu源にはEu等、Eu3+の形で含まれているものが通常用いられる。従って、Eu3+をEu2+に還元するために、還元雰囲気下で焼成することが好ましく、強還元雰囲気下で焼成することがさらに好ましい。
【0144】
焼成雰囲気の具体例としては、一酸化炭素雰囲気、水素雰囲気、水素含有窒素雰囲気、炭素含有の強還元雰囲気、水素含有アルゴン雰囲気等が挙げられる。中でも、水素含有窒素雰囲気、炭素含有の強還元雰囲気が好ましく、経済的な観点から水素含有窒素がさらに好ましい。
【0145】
焼成雰囲気として水素含有窒素を用いる場合、電気炉内の酸素濃度を20ppm以下に下げることが好ましい。さらに、雰囲気中の水素含有量は1体積%以上が好ましく、2体積%以上がさらに好ましく、また、5体積%以下が好ましい。雰囲気中の水素の含有量は、高すぎると爆発の危険が生じ、低すぎると十分な還元雰囲気を達成できないからである。
【0146】
なお、後述する一次焼成及び二次焼成において、同一の焼成雰囲気を用いてもよく、異なる焼成雰囲気を用いてもよい。
例えば、後述する一次焼成の場合は、原料化合物からの揮発成分を効率よく除去するために、雰囲気ガスの流通量の多い条件で加熱することが好ましい。一方、後述する二次焼成では、例えば、Eu3+をEu2+に還元するため、水素や炭素を含む還元雰囲気下で加熱することが好ましい。
【0147】
上記のように、焼成雰囲気を適切な還元雰囲気とすることにより、蛍光体中の全Eu中のEu2+の割合を60%以上とすることが好ましく、80%以上とすることがより好ましく、90%以上とすることがさらに好ましい。蛍光体中の全Eu中のEu2+の割合が低すぎると発光強度が低下する恐れがある。
【0148】
なお、蛍光体に含まれる全Eu中のEu2+の割合は、例えば、X線吸収微細構造(X-ray Absorption Fine Structure)の測定によって調べることができる。すなわち、Eu原子のL3吸収端を測定すると、Eu2+とEu3+が別々の吸収ピークを示すので、その面積から比率を定量できる。また、蛍光体に含まれる全Eu中のEu2+の割合は、電子スピン共鳴(ESR)の測定によっても知ることができる。
【0149】
(一次焼成及び二次焼成)
焼成工程においては、最低1回は1200℃以上の焼成を行い、最終焼成は還元雰囲気下で1000℃以上の焼成を行うことが好ましい。焼成工程を一次焼成と二次焼成とに分割し、混合工程により得られた原料混合物をまず一次焼成した後、ボールミル等で再度粉砕、篩い分けしてから二次焼成を行なうことがより好ましい。
すなわち、一次焼成では、原料化合物からの揮発成分を効率よく除去するために、雰囲気ガスの流通量の多い条件で加熱し、二次焼成では、例えば、Eu3+をEu2+に還元するため、水素や炭素を含む還元雰囲気下で加熱することが好ましい。さらに、二次焼成においては、蛍光体の結晶性を向上させ、かつ、Eu2+への還元を十分行うため、一次焼成より高温で加熱することが好ましい。
【0150】
(後処理)
上述の焼成工程後、必要に応じて粉砕、洗浄、分級、表面処理等の処理を行なうことにより、本発明の蛍光体を得ることができる。粉砕処理には、原料の混合工程に使用できるとして列挙した粉砕機が使用できる。洗浄は、脱イオン水等の水、エタノール等の有機溶剤、アンモニア水等のアルカリ性水溶液などで行うことができる。分級処理は、水篩を行う、あるいは、各種の気流分級機や振動篩など各種の分級機を用いることにより行うことができる。中でも、ナイロンメッシュによる乾式分級を用いると、重量メジアン径20μm程度の分散性の良い蛍光体を得ることができる。
【0151】
なお、得られた蛍光体を用いて、後述の方法で発光装置を製造する際には、必要に応じて低温でのアニール焼成や無機物又は有機物による表面処理を施してもよい。中でも、[1−2−3.表面処理]で述べた表面処理を行ってから用いることが好ましい。
【0152】
[1−4.蛍光体の用途]
本発明の蛍光体は、蛍光体を使用する任意の用途に用いることができるが、特に、青色光又は近紫外光で励起可能であるという特性を生かして、各種の発光装置(後述する「本発明の発光装置」)に好適に用いることができる。組み合わせる蛍光体の種類や使用割合を調整することで、様々な発光色の発光装置を製造することができる。特に、本発明の蛍光体が橙色ないし赤色蛍光体であることから、青色光を発する励起光源と緑色蛍光体を組み合わせれば、白色発光装置を製造することができる。この場合の発光色は、本発明の蛍光体や緑色蛍光体の発光波長を調整することにより、好みの発光色にすることができるが、例えば、いわゆる擬似白色(例えば、青色LEDと黄色蛍光体を組み合わせた発光装置の発光色)の発光スペクトルと類似した発光スペクトルを得ることもできる。さらに、この白色発光装置に赤色蛍光体(赤色の蛍光を発する蛍光体)を組み合わせれば、赤色の演色性に極めて優れた発光装置や電球色(暖かみのある白色)に発光する発光装置を実現することができる。また、近紫外光を発する励起光源に、本発明の蛍光体と、青色蛍光体(青色の蛍光を発する蛍光体)、緑色蛍光体(緑色の蛍光を発する蛍光体)を組み合わせても、白色発光装置を製造することができる。
【0153】
発光装置の発光色としては白色に制限されず、必要に応じて、黄色蛍光体(黄色の蛍光を発する蛍光体)、青色蛍光体、緑色蛍光体、他種の橙色ないし赤色蛍光体等を組み合わせて、蛍光体の種類や使用割合を調整することにより、任意の色に発光する発光装置を製造することができる。こうして得られた発光装置を、画像表示装置の発光部(特に液晶用バックライトなど)や照明装置として使用することができる。
【0154】
[1−5.蛍光体含有組成物]
本発明の蛍光体を発光装置等の用途に使用する場合には、これを液状媒体中に分散させた形態で用いることが好ましい。本発明の蛍光体を液状媒体中に分散させたものを、適宜「本発明の蛍光体含有組成物」と呼ぶものとする。本発明の蛍光体含有組成物は、本発明の蛍光体の1種のみを含むものであってもよく、2種以上を含むものであってもよい。
【0155】
本発明の蛍光体含有組成物に使用可能な液状媒体としては、所望の使用条件下において液状の性質を示し、本発明の蛍光体を好適に分散させると共に、好ましくない反応等を生じないものであれば、任意のものを目的等に応じて選択することが可能である。液状媒体の例としては、硬化前の熱硬化性樹脂、光硬化性樹脂が挙げられ、例えば、付加反応型シリコーン樹脂、縮合反応型シリコーン樹脂、変性シリコーン樹脂、エポキシ樹脂等が挙げられる。また、無機系材料、例えば、セラミック前駆体ポリマー若しくは金属アルコキシドを含有する溶液をゾル−ゲル法により加水分解重合して成る溶液を用いることができる。これらの液状媒体は1種を単独で使用してもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。なお、上記の液状媒体に有機溶媒を含有させることもできる。
【0156】
液状媒体の使用量は、用途等に応じて適宜調整すればよいが、一般的には、本発明の液状媒体に対する蛍光体の重量比で、通常3重量%以上、好ましくは5重量%以上、また、通常30重量%以下、好ましくは15重量%以下の範囲である。液状媒体が少なすぎると蛍光体からの発光が強くなり過ぎて輝度が低下する可能性があり、多すぎると蛍光体からの発光が弱くなり過ぎて輝度が低下する可能性がある。
【0157】
また、本発明の蛍光体含有組成物は、本発明の蛍光体及び液状媒体に加え、その用途等に応じて、その他の任意の成分を含有していてもよい。その他の成分としては、拡散剤、増粘剤、増量剤、干渉剤等が挙げられる。具体的には、アエロジル等のシリカ系微粉、アルミナ等が挙げられる。なお、これらその他の成分は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
【0158】
[2.発光装置]
次に、本発明の発光装置について説明する。本発明の発光装置は、励起光源としての第1の発光体と、第1の発光体からの光の照射によって可視光を発する第2の発光体とを、少なくとも備えて構成される。
【0159】
[2−1.第1の発光体]
(第1の発光体)
本発明の発光装置における第1の発光体は、後述する第2の発光体を励起する光を発光するものである。第1の発光体の発光波長は、後述する第2の発光体の吸収波長と重複するものであれば、特に制限されず、幅広い発光波長領域の発光体を使用することができる。通常は、紫外領域から青色領域までの発光波長を有する発光体が使用され、近紫外領域から青色領域までの発光波長を有する発光体を使用することが特に好ましい。第1の発光体の発光波長の具体的数値としては、通常200nm以上、好ましくは300nm以上、さらに好ましくは360nm以上、また、通常500nm以下、好ましくは480nm以下のピーク発光波長を有する発光体が使用される。特に、360nm以上430nm以下の近紫外領域に発光する発光体や430nm以上480nm以下の青色領域に発光する発光体が好ましい。この第1の発光体としては、一般的には半導体発光素子が用いられ、具体的には発光ダイオード(light emitting diode。以下、適宜「LED」と略称する。)や半導体レーザーダイオード(semiconductor laser diode。以下、適宜「LD」と略称する。)等が使用できる。
【0160】
中でも、第1の発光体としては、GaN系化合物半導体を使用したGaN系LEDやLDが好ましい。なぜなら、GaN系LEDやLDは、この領域の光を発するSiC系LED等に比し、発光出力や外部量子効率が格段に大きく、前記蛍光体と組み合わせることによって、非常に低電力で非常に明るい発光が得られるからである。例えば、20mAの電流負荷に対し、通常GaN系LEDやLDはSiC系の100倍以上の発光強度を有する。GaN系LEDやLDにおいては、AlGaN発光層、GaN発光層、又はInGaN発光層を有しているものが好ましい。GaN系LEDにおいては、それらの中でInGaN発光層を有するものが発光強度が非常に強いので、特に好ましく、GaN系LEDにおいては、InGaN層とGaN層の多重量子井戸構造のものが発光強度が非常に強いので、特に好ましい。
【0161】
なお、上記においてX+Yの値は通常0.8〜1.2の範囲の値である。GaN系LEDにおいて、これら発光層にZnやSiをドープしたものやドーパント無しのものが発光特性を調節する上で好ましいものである。
【0162】
GaN系LEDはこれら発光層、p層、n層、電極、及び基板を基本構成要素としたものであり、発光層をn型とp型のAlGaN層、GaN層、又はInGaN層などでサンドイッチにしたヘテロ構造を有しているものが、発光効率が高く、好ましく、さらにヘテロ構造を量子井戸構造にしたものが、発光効率がさらに高く、より好ましい。
【0163】
[2−2.第2の発光体]
本発明の発光装置における第2の発光体は、上述した第1の発光体からの光の照射によって可視光を発する発光体であり、第1の蛍光体として前述の本発明の蛍光体を含有するとともに、その用途等に応じて適宜、第2の蛍光体を含有する。また、例えば、第2の発光体は、第1及び第2の蛍光体を封止樹脂中に分散させて構成される。
【0164】
蛍光体の組成には特に制限はないが、結晶母体であるY、ZnSiO等に代表される金属酸化物、SrSi等に代表される金属窒化物、Ca(PO)Cl等に代表されるリン酸塩及びZnS、SrS、CaS等に代表される硫化物に、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb等の希土類金属のイオンやAg、Cu、Au、Al、Mn、Sb等の金属のイオンを付活元素又は共付活元素として組み合わせたものが好ましい。
【0165】
結晶母体の好ましい例としては、例えば、(Zn,Cd)S、SrGa、SrS、ZnS等の硫化物、YS等の酸硫化物、(Y,Gd)Al12、YAlO、BaMgAl1017、(Ba,Sr)(Mg,Mn)Al1017、(Ba,Sr,Ca)(Mg,Zn,Mn)Al1017、BaAl1219、CeMgAl1119、(Ba,Sr,Mg)O・Al、BaAlSi、SrAl、SrAl1425、YAl12等のアルミン酸塩、YSiO、ZnSiO等の珪酸塩、SnO、Y等の酸化物、GdMgB10、(Y,Gd)BO等の硼酸塩、Ca10(PO)(F,Cl)、(Sr,Ca,Ba,Mg)10(PO)Cl等のハロリン酸塩、Sr、(La,Ce)PO等のリン酸塩等を挙げることができる。
【0166】
ただし、上記の結晶母体及び付活元素又は共付活元素は、元素組成には特に制限はなく、同族の元素と一部置き換えることもでき、得られた蛍光体は近紫外から可視領域の光を吸収して可視光を発するものであれば用いることが可能である。
【0167】
具体的には、蛍光体として以下に挙げるものを用いることが可能であるが、これらはあくまでも例示であり、本発明で使用できる蛍光体はこれらに限られるものではない。なお、以下の例示では、構造の一部のみが異なる蛍光体を、適宜省略して示している。例えば、「YSiO:Ce3+」、「YSiO:Tb3+」及び「YSiO:Ce3+,Tb3+」を「YSiO:Ce3+,Tb3+」と、「LaS:Eu」、「YS:Eu」及び「(La,Y)S:Eu」を「(La,Y)S:Eu」とまとめて示している。省略箇所はカンマ(,)で区切って示す。
【0168】
[2−2−1.第1の蛍光体]
本発明の発光装置における第2の発光体は、第1の蛍光体として、少なくとも上述の本発明の蛍光体を含有する。本発明の蛍光体は、何れか1種を単独で使用してもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。また、第1の蛍光体としては、本発明の蛍光体以外にも、本発明の蛍光体と同色の蛍光を発する蛍光体(同色併用蛍光体)を用いても良い。通常、本発明の蛍光体は橙色ないし赤色色蛍光体であるので、第1の蛍光体として、本発明の蛍光体と共に橙色ないし赤色蛍光体を併用することができる。
【0169】
第1の蛍光体として本発明の蛍光体と併用できる橙色ないし赤色蛍光体を以下に例示する。なお、これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
【0170】
本発明の蛍光体と併用できる橙色ないし赤色蛍光体としては、例えば、赤色破断面を有する破断粒子から構成され、赤色領域の発光を行なう(Mg,Ca,Sr,Ba)Si:Euで表されるユウロピウム付活アルカリ土類シリコンナイトライド系蛍光体、規則的な結晶成長形状としてほぼ球形状を有する成長粒子から構成され、赤色領域の発光を行なう(Y,La,Gd,Lu)S:Euで表されるユウロピウム付活希土類オキシカルコゲナイド系蛍光体等が挙げられる。
【0171】
さらに、特開2004−300247号公報に記載された、Ti、Zr、Hf、Nb、Ta、W、及びMoよりなる群から選ばれる少なくも1種の元素を含有する酸窒化物及び/又は酸硫化物を含有する蛍光体であって、Al元素の一部又は全てがGa元素で置換されたアルファサイアロン構造をもつ酸窒化物を含有する蛍光体も、本実施形態において用いることができる。なお、これらは酸窒化物及び/又は酸硫化物を含有する蛍光体である。
【0172】
また、そのほか、赤色蛍光体としては、(La,Y)S:Eu等のEu付活酸硫化物蛍光体、Y(V,P)O:Eu、Y:Eu等のEu付活酸化物蛍光体、(Ba,Sr,Ca,Mg)SiO:Eu,Mn、(Ba,Mg)SiO:Eu,Mn等のEu,Mn付活珪酸塩蛍光体、LiW:Eu、LiW:Eu,Sm、Eu、Eu:Nb、Eu:Sm等のEu付活タングステン酸塩蛍光体、(Ca,Sr)S:Eu等のEu付活硫化物蛍光体、YAlO:Eu等のEu付活アルミン酸塩蛍光体、LiY(SiO):Eu、Ca(SiO):Eu等のEu付活珪酸塩蛍光体、(Y,Gd)Al12:Ce、(Tb,Gd)Al12:Ce等のCe付活アルミン酸塩蛍光体、(Ca,Sr,Ba)Si:Eu、(Mg,Ca,Sr,Ba)SiN:Eu、(Mg,Ca,Sr,Ba)AlSiN:Eu等のEu付活窒化物蛍光体、(Mg,Ca,Sr,Ba)AlSiN:Ce等のCe付活窒化物蛍光体、(Sr,Ca,Ba,Mg)10(PO)Cl:Eu,Mn等のEu,Mn付活ハロリン酸塩蛍光体、(BaMg)Si:Eu,Mn、(Ba,Sr,Ca,Mg)(Zn,Mg)Si:Eu,Mn等のEu,Mn付活珪酸塩蛍光体、3.5MgO・0.5MgF・GeO:Mn等のMn付活ゲルマン酸塩蛍光体、Eu付活αサイアロン等のEu付活酸窒化物蛍光体、(Gd,Y,Lu,La):Eu,Bi等のEu,Bi付活酸化物蛍光体、(Gd,Y,Lu,La)S:Eu,Bi等のEu,Bi付活酸硫化物蛍光体、(Gd,Y,Lu,La)VO:Eu,Bi等のEu,Bi付活バナジン酸塩蛍光体、SrY:Eu,Ce等のEu,Ce付活硫化物蛍光体、CaLa:Ce等のCe付活硫化物蛍光体、(Ba,Sr,Ca)MgP:Eu,Mn、(Sr,Ca,Ba,Mg,Zn):Eu,Mn等のEu,Mn付活リン酸塩蛍光体、(Y,Lu)WO:Eu,Mo等のEu,Mo付活タングステン酸塩蛍光体、(Ba,Sr,Ca)Si:Eu,Ce(但し、x、y、zは、1以上の整数)等のEu,Ce付活窒化物蛍光体、(Ca,Sr,Ba,Mg)10(PO)(F,Cl,Br,OH):Eu,Mn等のEu,Mn付活ハロリン酸塩蛍光体、((Y,Lu,Gd,Tb)1−xScCe)(Ca,Mg)1−r(Mg,Zn)2+rSiz−qGe12+δ等のCe付活珪酸塩蛍光体等を用いることも可能である。
【0173】
赤色蛍光体としては、β−ジケトネート、β−ジケトン、芳香族カルボン酸、又は、ブレンステッド酸等のアニオンを配位子とする希土類元素イオン錯体からなる赤色有機蛍光体、ペリレン系顔料(例えば、ジベンゾ{[f,f']−4,4',7,7'−テトラフェニル}ジインデノ[1,2,3−cd:1',2',3'−lm]ペリレン)、アントラキノン系顔料、レーキ系顔料、アゾ系顔料、キナクリドン系顔料、アントラセン系顔料、イソインドリン系顔料、イソインドリノン系顔料、フタロシアニン系顔料、トリフェニルメタン系塩基性染料、インダンスロン系顔料、インドフェノール系顔料、シアニン系顔料、ジオキサジン系顔料を用いることも可能である。
【0174】
また、赤色蛍光体のうち、ピーク波長が580nm以上、好ましくは590nm以上、また、620nm以下、好ましくは610nm以下の範囲内にあるものは、橙色蛍光体として好適に用いることができる。このような橙色蛍光体の例としては、(Sr,Mg)(PO:Sn2+等が挙げられる。
【0175】
[2−2−2.第2の蛍光体]
本発明の発光装置における第2の発光体は、その用途に応じて、上述の第1の蛍光体以外にも蛍光体(即ち、第2の蛍光体)を含有していてもよい。この第2の蛍光体は、第1の蛍光体とは発光波長が異なる蛍光体である。通常、これらの第2の蛍光体は、第2の発光体の発光の色調を調節するために使用されるため、第2の蛍光体としては第1の蛍光体とは異なる色の蛍光を発する蛍光体を使用することが多い。上記のように、通常は第1の蛍光体として橙色ないし赤色蛍光体を使用するので、第2の蛍光体としては、例えば緑色蛍光体、青色蛍光体、黄色蛍光体等の橙色ないし赤色蛍光体以外の蛍光体を用いる。
【0176】
(緑色蛍光体)
第2の蛍光体として緑色蛍光体を使用する場合、当該赤色蛍光体は本発明の効果を著しく損なわない限り任意のものを使用することができる。この際、緑色蛍光体の発光ピーク波長は、通常490nm以上、好ましくは510nm以上、より好ましくは515nm以上、また、通常560nm以下、好ましくは540nm以下、より好ましくは535nm以下の波長範囲にあることが好適である。
【0177】
このような緑色蛍光体として、例えば、破断面を有する破断粒子から構成され、緑色領域の発光を行なう(Mg,Ca,Sr,Ba)Si:Euで表されるユウロピウム付活アルカリ土類シリコンオキシナイトライド系蛍光体、破断面を有する破断粒子から構成され、緑色領域の発光を行なう(Ba,Ca,Sr,Mg)SiO:Euで表されるユウロピウム付活アルカリ土類シリケート系蛍光体等が挙げられる。
【0178】
また、そのほか、緑色蛍光体としては、SrAl1425:Eu、(Ba,Sr,Ca)Al:Eu等のEu付活アルミン酸塩蛍光体、(Sr,Ba)AlSi:Eu、(Ba,Mg)SiO:Eu、(Ba,Sr,Ca,Mg)SiO:Eu、(Ba,Sr,Ca)(Mg,Zn)Si:Eu、(Ba,Ca,Sr,Mg)(Sc,Y,Lu,Gd)(Si,Ge)24:Eu等のEu付活珪酸塩蛍光体、YSiO:Ce,Tb等のCe,Tb付活珪酸塩蛍光体、Sr−Sr:Eu等のEu付活硼酸リン酸塩蛍光体、SrSi−2SrCl:Eu等のEu付活ハロ珪酸塩蛍光体、ZnSiO:Mn等のMn付活珪酸塩蛍光体、CeMgAl1119:Tb、YAl12:Tb等のTb付活アルミン酸塩蛍光体、Ca(SiO):Tb、LaGaSiO14:Tb等のTb付活珪酸塩蛍光体、(Sr,Ba,Ca)Ga:Eu,Tb,Sm等のEu,Tb,Sm付活チオガレート蛍光体、Y(Al,Ga)12:Ce、(Y,Ga,Tb,La,Sm,Pr,Lu)(Al,Ga)12:Ce等のCe付活アルミン酸塩蛍光体、CaScSi12:Ce、Ca(Sc,Mg,Na,Li)Si12:Ce等のCe付活珪酸塩蛍光体、CaSc:Ce等のCe付活酸化物蛍光体、SrSi:Eu、(Sr,Ba,Ca)Si:Eu、Eu付活βサイアロン、Eu付活αサイアロン等のEu付活酸窒化物蛍光体、BaMgAl1017:Eu,Mn等のEu,Mn付活アルミン酸塩蛍光体、SrAl:Eu等のEu付活アルミン酸塩蛍光体、(La,Gd,Y)S:Tb等のTb付活酸硫化物蛍光体、LaPO:Ce,Tb等のCe,Tb付活リン酸塩蛍光体、ZnS:Cu,Al、ZnS:Cu,Au,Al等の硫化物蛍光体、(Y,Ga,Lu,Sc,La)BO:Ce,Tb、NaGd:Ce,Tb、(Ba,Sr)(Ca,Mg,Zn)B:K,Ce,Tb等のCe,Tb付活硼酸塩蛍光体、CaMg(SiO)Cl:Eu,Mn等のEu,Mn付活ハロ珪酸塩蛍光体、(Sr,Ca,Ba)(Al,Ga,In):Eu等のEu付活チオアルミネート蛍光体やチオガレート蛍光体、(Ca,Sr)(Mg,Zn)(SiO)Cl:Eu,Mn等のEu,Mn付活ハロ珪酸塩蛍光体、MSi:Eu、MSi:Eu、MSi10:Eu(但し、Mはアルカリ土類金属元素を表す。)等のEu付活酸窒化物蛍光体等を用いることも可能である。
【0179】
また、緑色蛍光体としては、ピリジン−フタルイミド縮合誘導体、ベンゾオキサジノン系、キナゾリノン系、クマリン系、キノフタロン系、ナルタル酸イミド系等の蛍光色素、テルビウム錯体等の有機蛍光体を用いることも可能である。
【0180】
(青色蛍光体)
第2の蛍光体として青色蛍光体を使用する場合、当該青色蛍光体は本発明の効果を著しく損なわない限り任意のものを使用することができる。この際、青色蛍光体の発光ピーク波長は、通常420nm以上、好ましくは430nm以上、より好ましくは440nm以上、また、通常490nm以下、好ましくは470nm以下、より好ましくは460nm以下の波長範囲にあることが好適である。
【0181】
このような青色蛍光体としては、規則的な結晶成長形状としてほぼ六角形状を有する成長粒子から構成され、青色領域の発光を行なうBaMgAl1017:Euで表されるユウロピウム付活バリウムマグネシウムアルミネート系蛍光体、規則的な結晶成長形状としてほぼ球形状を有する成長粒子から構成され、青色領域の発光を行なう(Ca,Sr,Ba)(PO)Cl:Euで表されるユウロピウム付活ハロリン酸カルシウム系蛍光体、規則的な結晶成長形状としてほぼ立方体形状を有する成長粒子から構成され、青色領域の発光を行なう(Ca,Sr,Ba)Cl:Euで表されるユウロピウム付活アルカリ土類クロロボレート系蛍光体、破断面を有する破断粒子から構成され、青緑色領域の発光を行なう(Sr,Ca,Ba)Al:Eu又は(Sr,Ca,Ba)Al1425:Euで表されるユウロピウム付活アルカリ土類アルミネート系蛍光体等が挙げられる。
【0182】
また、そのほか、青色蛍光体としては、Sr:Sn等のSn付活リン酸塩蛍光体、SrAl1425:Eu、BaMgAl1017:Eu、BaAl13:Eu等のEu付活アルミン酸塩蛍光体、SrGa:Ce、CaGa:Ce等のCe付活チオガレート蛍光体、(Ba,Sr,Ca)MgAl1017:Eu、BaMgAl1017:Eu,Tb,Sm等のEu付活アルミン酸塩蛍光体、(Ba,Sr,Ca)MgAl1017:Eu,Mn等のEu,Mn付活アルミン酸塩蛍光体、(Sr,Ca,Ba,Mg)10(PO)Cl:Eu、(Ba,Sr,Ca)(PO)(Cl,F,Br,OH):Eu,Mn,Sb等のEu付活ハロリン酸塩蛍光体、BaAlSi:Eu、(Sr,Ba)MgSi:Eu等のEu付活珪酸塩蛍光体、Sr:Eu等のEu付活リン酸塩蛍光体、ZnS:Ag、ZnS:Ag,Al等の硫化物蛍光体、YSiO:Ce等のCe付活珪酸塩蛍光体、CaWO等のタングステン酸塩蛍光体、(Ba,Sr,Ca)BPO:Eu,Mn、(Sr,Ca)10(PO)・nB:Eu、2SrO・0.84P・0.16B:Eu等のEu,Mn付活硼酸リン酸塩蛍光体、SrSi・2SrCl:Eu等のEu付活ハロ珪酸塩蛍光体等を用いることも可能である。
【0183】
また、青色蛍光体としては、例えば、ナフタル酸イミド系、ベンゾオキサゾール系、スチリル系、クマリン系、ピラゾリン系、トリアゾール系化合物の蛍光色素、ツリウム錯体等の有機蛍光体等を用いることも可能である。
【0184】
(黄色蛍光体)
第2の蛍光体として黄色蛍光体を使用する場合、当該黄色蛍光体は本発明の効果を著しく損なわない限り任意のものを使用することができる。この際、黄色蛍光体の発光ピーク波長は、通常530nm以上、好ましくは540nm以上、より好ましくは550nm以上、また、通常620nm以下、好ましくは600nm以下、より好ましくは580nm以下の波長範囲にあることが好適である。
【0185】
このような黄色蛍光体としては、各種の酸化物系、窒化物系、酸窒化物系、硫化物系、酸硫化物系等の蛍光体が挙げられる。
特に、RE12:Ce(ここで、REは、Y、Tb、Gd、Lu、及びSmからなる群から選ばれる少なくとも1種類の元素を表し、Mは、Al、Ga、及びScからなる群から選ばれる少なくとも1種類の元素を表す。)やM12:Ce(ここで、Mは2価の金属元素、Mは3価の金属元素、Mは4価の金属元素を表す。)等で表されるガーネット構造を有するガーネット系蛍光体、AE:Eu(ここで、AEは、Ba、Sr、Ca、Mg、及びZnからなる群から選ばれる少なくとも1種類の元素を表し、Mは、Si、及び/又はGeを表す。)等で表されるオルソシリケート系蛍光体、これらの系の蛍光体の構成元素の酸素の一部を窒素で置換した酸窒化物系蛍光体、AEAlSiN:Ce(ここで、AEは、Ba、Sr、Ca、Mg及びZnからなる群から選ばれる少なくとも1種類の元素を表す。)等のCaAlSiN構造を有する窒化物系蛍光体等のCeで付活した蛍光体が挙げられる。
【0186】
また、そのほか、黄色蛍光体としては、CaGa:Eu、(Ca,Sr)Ga:Eu、(Ca,Sr)(Ga,Al):Eu等の硫化物系蛍光体、Cax(Si,Al)12(O,N)16:Eu等のSiAlON構造を有する酸窒化物系蛍光体等のEuで付活した蛍光体を用いることも可能である。
【0187】
また、黄色蛍光体としては、例えば、brilliantsulfoflavine FF(Colour Index Number 56205)、basic yellow HG (Colour Index Number 46040)、eosine(Colour Index Number 45380)、rhodamine 6G(Colour Index Number 45160)等の蛍光染料等を用いることも可能である。
【0188】
なお、第2の蛍光体としては、1種類の蛍光体を単独で使用してもよく、2種以上の蛍光体を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。また、第1の蛍光体と第2の蛍光体との比率も、本発明の効果を著しく損なわない限り任意である。従って、第2の蛍光体の使用量、並びに、第2の蛍光体として用いる蛍光体の組み合わせ及びその比率などは、発光装置の用途などに応じて任意に設定すればよい。
【0189】
[2−2−3.第2の蛍光体の物性]
本発明の発光装置に使用される第2の蛍光体の重量メジアン径は、通常10μm以上、中でも15μm以上、また、通常30μm以下、中でも20μm以下の範囲であることが好ましい。重量メジアン径が小さすぎると、輝度が低下し、蛍光体粒子が凝集してしまう傾向があり好ましくない。一方、重量メジアン径が大きすぎると、塗布ムラやディスペンサー等の閉塞が生じる傾向があり好ましくない。
【0190】
[2−2−4.第2の蛍光体の選択]
本発明の発光装置において、以上説明した第2の蛍光体(赤色蛍光体、青色蛍光体、緑色蛍光体等)の使用の有無及びその種類は、発光装置の用途に応じて適宜選択すればよい。例えば、本発明の発光装置を橙色ないし赤色発光の発光装置として構成する場合には、第1の蛍光体(橙色ないし赤色蛍光体)のみを使用すればよく、第2の蛍光体の使用は通常は不要である。
【0191】
一方、本発明の発光装置を白色発光の発光装置として構成する場合には、所望の白色光が得られるように、第1の発光体と、第1の蛍光体(橙色ないし赤色蛍光体)と、第2の蛍光体を適切に組み合わせればよい。具体的に、本発明の発光装置を白色発光の発光装置として構成する場合における、第1の発光体と、第1の蛍光体と、第2の蛍光体との好ましい組み合わせの例としては、例えば、以下の(i)〜(iv)の組み合わせが挙げられる。
【0192】
(i)第1の発光体として青色発光体(青色LED等)を使用し、第1の蛍光体として赤色蛍光体(本発明の蛍光体等)を使用し、第2の蛍光体として緑色蛍光体を使用する。
【0193】
(ii)第1の発光体として近紫外発光体(近紫外LED等)を使用し、第1の蛍光体として赤色蛍光体(本発明の蛍光体等)を使用し、第2の蛍光体として青色蛍光体及び緑色蛍光体を併用する。
【0194】
(iii)第1の発光体として青色発光体(青色LED等)を使用し、第1の蛍光体として橙色蛍光体(本発明の蛍光体等)を使用し、第2の蛍光体として緑色蛍光体を使用する。
(iv)第1の発光体として近紫外発光体(近紫外LED等)を使用し、第1の蛍光体として橙色蛍光体(本発明の蛍光体等)を使用し、第2の蛍光体として青色蛍光体及び緑色蛍光体を併用する。
【0195】
上記に記載したような蛍光体の組み合わせについて、さらに詳しく説明する。
本発明においては、半導体発光素子と蛍光体を、下記に示す組み合わせで使用した発光装置が好ましい。
なお、、下記表において、構造の一部のみが異なる蛍光体を、適宜省略して示している。例えば、「YSiO:Ce3+」、「YSiO:Tb3+」及び「YSiO:Ce3+,Tb3+」を「YSiO:Ce3+,Tb3+」と示し、「LaS:Eu」、「YS:Eu」及び「(La,Y)S:Eu」を「(La,Y)S:Eu」とまとめて示している。この場合、()内の元素の合計は1モルである。また、省略箇所はカンマ(,)で区切って示している。
【0196】
【表3a】

【0197】
【表3b】

【0198】
【表3c】

【0199】
【表3d】

【0200】
【表3e】

【0201】
【表3f】

【0202】
【表3g】

【0203】
【表3h】

【0204】
これらの組み合わせの中でも、半導体発光素子と蛍光体を、下記に示す組み合わせで使用した発光装置が特に好ましい。
【0205】
【表3i】

【0206】
【表3j】

【0207】
【表3k】

【0208】
【表3l】

【0209】
【表3m】

【0210】
【表3n】

【0211】
また、本発明の蛍光体は、他の蛍光体と混合(ここで、混合とは、必ずしも蛍光体同士が混ざり合っている必要はなく、異種の蛍光体を組み合わせることを意味する。)して用いることができる。特に、表3a〜表3nに記載の組み合わせで蛍光体を混合すると、好ましい蛍光体混合物が得られる。なお、混合する蛍光体の種類や、その割合に特に制限はない。
【0212】
[2−2−4.封止材料]
第2の発光体は、例えば、第1の蛍光体及び必要に応じて使用される第2の蛍光体を、封止材料に分散させて構成される。
封止材料の例を挙げると、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、光硬化性樹脂等が挙げられる。具体的には、ポリメタアクリル酸メチル等のメタアクリル樹脂;ポリスチレン、スチレン−アクリロニトリル共重合体等のスチレン樹脂;ポリカーボネート樹脂;ポリエステル樹脂;フェノキシ樹脂;ブチラール樹脂;ポリビニルアルコール;エチルセルロース、セルロースアセテート、セルロースアセテートブチレート等のセルロース系樹脂;エポキシ樹脂;フェノール樹脂;シリコーン樹脂等が挙げられる。また、無機系材料、例えば、金属アルコキシド、セラミック前駆体ポリマー若しくは金属アルコキシドを含有する溶液をゾル−ゲル法により加水分解重合して成る溶液又はこれらの組み合わせを固化した無機系材料、例えばシロキサン結合を有する無機系材料を用いることができる。
【0213】
これらのうち、耐熱性、耐紫外線(UV)性等の点から、シリコーン樹脂や金属アルコキシド、セラミック前駆体ポリマー若しくは金属アルコキシドを含有する溶液をゾル−ゲル法により加水分解重合して成る溶液又はこれらの組み合わせを固化した無機系材料、例えばシロキサン結合を有する無機系材料が好ましい。
【0214】
上記の中でも、本発明の蛍光体と共に用いる場合、シリコーン樹脂やシリコーン系材料を用いることが好ましく、シリコーン樹脂を用いることがより好ましい。
シリコーン系樹脂としては、付加反応型シリコーン樹脂、縮合反応型シリコーン樹脂が挙げられ、中でも、フェニル基を含む縮合反応型シリコーン樹脂が好ましい。また、シリコーン樹脂やシリコーン系材料は屈折率が1.45以上であるものがより好ましい。
【0215】
また、このような封止材料のうちでは、特に、以下の特徴〈1〉〜〈3〉のうち1つ以上を有するシリコーン系材料やシリコーン樹脂が好ましい。
〈1〉固体Si−核磁気共鳴(NMR)スペクトルにおいて、下記(a)及び/又は(b)のピークを少なくとも1つ有する。
(a)ピークトップの位置がケミカルシフト−40ppm以上、0ppm以下の領域にあり、ピークの半値幅が0.3ppm以上、3.0ppm以下であるピーク
(b)ピークトップの位置がケミカルシフト−80ppm以上、−40ppm未満の領域にあり、ピークの半値幅が0.3ppm以上5.0ppm以下であるピーク
〈2〉ケイ素含有率が20重量%以上である。
〈3〉シラノール含有率が0.1重量%以上、10重量%以下である。
【0216】
本発明においては、上記の特徴〈1〉〜〈3〉のうち、特徴〈2〉を有するシリコーン系材料やシリコーン樹脂が好ましい。より好ましくは、上記の特徴〈1〉及び〈2〉を有するシリコーン系材料やシリコーン樹脂が好ましい。特に好ましくは、上記の特徴〈1〉〜〈3〉を全て有するシリコーン系材料やシリコーン樹脂が好ましい。
【0217】
以下、これらの特徴〈1〉〜〈3〉について説明する。以下において、上記の特徴〈1〉〜〈3〉を有するシリコーン系材料を「本発明に用いられるシリコーン系材料」と称する。
【0218】
(固体Si−NMRスペクトル)
ケイ素を主成分とする化合物は、SiO・nHOの示性式で表されるが、構造的には、ケイ素原子Siの四面体の各頂点に酸素原子Oが結合され、これらの酸素原子Oにさらにケイ素原子Siが結合してネット状に広がった構造を有する。そして、以下に示す模式図は、上記の四面体構造を無視し、Si−Oのネット構造を表したものであるが、Si−O−Si−O−の繰り返し単位において、酸素原子Oの一部が他の成員(例えば−H、−CHなど)で置換されているものもあり、一つのケイ素原子Siに注目した場合、模式図の(A)に示す様に4個の−OSiを有するケイ素原子Si(Q)、模式図の(B)に示す様に3個の−OSiを有するケイ素原子Si(Q)等が存在する。そして、固体Si−NMR測定において、上記の各ケイ素原子Siに基づくピークは、順次に、Qピーク、Qピーク、・・・と呼ばれる。
【0219】
【化1】

【0220】
これら酸素原子が4つ結合したケイ素原子は、一般にQサイトと総称される。本発明においてはQサイトに由来するQ〜Qの各ピークをQピーク群と呼ぶこととする。有機置換基を含まないシリカ膜のQピーク群は、通常ケミカルシフト−80ppm〜−130ppmの領域に連続した多峰性のピークとして観測される。
【0221】
これに対し、酸素原子が3つ結合し、それ以外の原子(通常は炭素である。)が1つ結合しているケイ素原子は、一般にTサイトと総称される。Tサイトに由来するピークはQサイトの場合と同様に、T〜Tの各ピークとして観測される。本発明においてはTサイトに由来する各ピークをTピーク群と呼ぶこととする。Tピーク群は一般にQピーク群より高磁場側(通常ケミカルシフト−80ppm〜−40ppm)の領域に連続した多峰性のピークとして観測される。
【0222】
さらに、酸素原子が2つ結合するとともに、それ以外の原子(通常は炭素である。)が2つ結合しているケイ素原子は、一般にDサイトと総称される。Dサイトに由来するピークも、QサイトやTサイトに由来するピーク群と同様に、D〜Dの各ピーク(Dピーク群と称す。)として観測され、QやTのピーク群よりさらに、高磁場側の領域(通常ケミカルシフト0ppm〜−40ppmの領域)に、多峰性のピークとして観測される。これらのD、T、Qの各ピーク群の面積の比は、各ピーク群に対応する環境におかれたケイ素原子のモル比と夫々等しいので、全ピークの面積を全ケイ素原子のモル量とすれば、Dピーク群及びTピーク群の合計面積は通常これに対する炭素原子と直接結合した全ケイ素のモル量と対応することになる。
【0223】
本発明に用いられるシリコーン系材料の固体Si−NMRスペクトルを測定すると、有機基の炭素原子が直接結合したケイ素原子に由来するDピーク群及びTピーク群と、有機基の炭素原子と結合していないケイ素原子に由来するQピーク群とが、各々異なる領域に出現する。これらのピークのうち−80ppm未満のピークは前述の通りQピークに該当し、−80ppm以上のピークはD、Tピークに該当する。本発明のシリコーン系材料においてはQピークは必須ではないが、D、Tピーク領域に少なくとも1本、好ましくは複数本のピークが観測される。
【0224】
また、本発明に用いられるシリコーン系材料において、−80ppm以上の領域に観測されるピークの半値幅は、これまでにゾルゲル法にて知られているシリコーン系材料の半値幅範囲より小さい(狭い)ことを特徴とする。
【0225】
ケミカルシフトごとに整理すると、本発明に用いられるシリコーン系材料において、ピークトップの位置が−80ppm以上−40ppm未満に観測されるTピーク群の半値幅は、通常5.0ppm以下、好ましくは4.0ppm以下、また、通常0.3ppm以上、好ましくは0.4ppm以上の範囲である。
【0226】
同様に、ピークトップの位置が−40ppm以上0ppm以下に観測されるDピーク群の半値幅は、分子運動の拘束が小さいために全般にTピーク群の場合より小さく、通常3.0ppm以下、好ましくは2.0ppm以下、また、通常0.3ppm以上の範囲である。
【0227】
上記のケミカルシフト領域において観測されるピークの半値幅が上記の範囲より大きいと、分子運動の拘束が大きくひずみの大きな状態となり、クラックが発生しやすく、耐熱・耐候耐久性に劣る部材となる虞がある。例えば、四官能シランを多用した場合や、乾燥工程において急速な乾燥を行ない大きな内部応力を蓄えた状態などにおいて、半値幅範囲が上記の範囲より大きくなる。
【0228】
また、ピークの半値幅が上記の範囲より小さい場合、その環境にあるSi原子はシロキサン架橋に関わらないことになり、三官能シランが未架橋状態で残留する例など、シロキサン結合主体で形成される物質より耐熱・耐候耐久性に劣る部材となる虞がある。
【0229】
なお、本発明に用いられるシリコーン系材料の組成は、系内の架橋が主としてシリカを始めとする無機成分により形成される場合に限定される。すなわち、大量の有機成分中に少量のSi成分が含まれるシリコーン系材料において−80ppm以上に上述の半値幅範囲のピークが認められても、良好な耐熱・耐光性及び塗布性能は得ることができない。
【0230】
本発明に用いられるシリコーン系材料のケミカルシフトの値は、例えば以下の方法を用いて固体Si−NMR測定を行ない、その結果に基づいて算出することができる。また、測定データの解析(半値幅やシラノール量解析)は、例えばガウス関数やローレンツ関数を使用した波形分離解析等により、各ピークを分割して抽出する方法で行なう。
【0231】
(固体Si−NMRスペクトル測定及びシラノール含有率の算出)
シリコーン系材料について固体Si−NMRスペクトルを行なう場合、以下の条件で固体Si−NMRスペクトル測定及び波形分離解析を行なう。また、得られた波形データより、シリコーン系材料について、各々のピークの半値幅を求める。また、全ピーク面積に対するシラノール由来のピーク面積の比率より、全ケイ素原子中のシラノールとなっているケイ素原子の比率(%)を求め、別に分析したケイ素含有率と比較することによりシラノール含有率を求める。
【0232】
{装置条件}
装置:Chemagnetics社 Infinity CMX−400 核磁気共鳴分光装置
29Si共鳴周波数:79.436MHz
プローブ:7.5mmφCP/MAS用プローブ
測定温度:室温
試料回転数:4kHz
測定法:シングルパルス法
Hデカップリング周波数:50kHz
29Siフリップ角:90゜
29Si90゜パルス幅:5.0μs
くり返し時間:600s
積算回数:128回
観測幅:30kHz
ブロードニングファクター:20Hz
【0233】
{データ処理法}
シリコーン系材料については、512ポイントを測定データとして取り込み、8192ポイントにゼロフィリングしてフーリエ変換する。
【0234】
{波形分離解析法}
フーリエ変換後のスペクトルの各ピークについてローレンツ波形及びガウス波形或いは両者の混合により作成したピーク形状の中心位置、高さ、半値幅を可変パラメータとして、非線形最小二乗法により最適化計算を行なう。
なお、ピークの同定は、AIChE Journal,44(5),p.1141,1998年等を参考にする。
【0235】
(ケイ素含有率)
本発明に用いられるシリコーン系材料は、ケイ素含有率が20重量%以上である(特徴〈2〉)。
従来のシリコーン系材料の基本骨格は炭素−炭素及び炭素−酸素結合を基本骨格としたエポキシ樹脂等の有機樹脂であるが、これに対し本発明のシリコーン系材料の基本骨格はガラス(ケイ酸塩ガラス)などと同じ無機質のシロキサン結合である。このシロキサン結合は、下記表1の化学結合の比較表からも明らかなように、シリコーン系材料として優れた以下の特徴がある。
(I) 結合エネルギーが大きく、熱分解・光分解しにくいため、耐光性が良好である。
(II) 電気的に若干分極している。
(III) 鎖状構造の自由度は大きく、フレキシブル性に富む構造が可能であり、シロキサン鎖中心に自由回転可能である。
(IV) 酸化度が大きく、これ以上酸化されない。
(V) 電気絶縁性に富む。
【0236】
【表4】

【0237】
これらの特徴から、シロキサン結合が3次元的に、しかも高架橋度で結合した骨格で形成されるシリコーン系のシリコーン系材料は、ガラス或いは岩石などの無機質に近く、耐熱性・耐光性に富む保護皮膜となることが理解できる。特にメチル基を置換基とするシリコーン系材料は、紫外領域に吸収を持たないため光分解が起こりにくく、耐光性に優れる。
【0238】
本発明に用いられるシリコーン系材料のケイ素含有率は、上述の様に20重量%以上であるが、中でも25重量%以上が好ましく、30重量%以上がより好ましい。一方、上限としては、SiOのみからなるガラスのケイ素含有率が47重量%であるという理由から、通常47重量%以下の範囲である。
【0239】
なお、シリコーン系材料のケイ素含有率は、例えば以下の方法を用いて誘導結合高周波プラズマ分光(inductively coupled plasma spectrometry:以下適宜「ICP」と略する。)分析を行ない、その結果に基づいて算出することができる。
【0240】
{ケイ素含有率の測定}
シリコーン系材料の単独硬化物を100μm程度に粉砕し、白金るつぼ中にて大気中、450℃で1時間、次いで750℃で1時間、950℃で1.5時間保持して焼成し、炭素成分を除去した後、得られた残渣少量に10倍量以上の炭酸ナトリウムを加えてバーナー加熱し溶融させ、これを冷却して脱塩水を加え、さらに塩酸にてpHを中性程度に調整しつつケイ素として数ppm程度になるよう定容し、ICP分析を行なう。
【0241】
(シラノール含有率)
本発明に用いられるシリコーン系材料は、シラノール含有率が、通常0.1重量%以上、好ましくは0.3重量%以上、また、通常10重量%以下、好ましくは8重量%以下、さらに好ましくは5重量%以下の範囲である(特徴〈3〉)。本発明に用いられるシリコーン系材料は、シラノール含有率が低いため経時変化が少なく、長期の性能安定性に優れ、吸湿・透湿性何れも低い優れた性能を有する。但し、シラノールが全く含まれない部材は密着性に劣るため、シラノール含有率に上記のごとく最適な範囲が存在する。
【0242】
なお、シリコーン系材料のシラノール含有率は、例えば(固体Si−NMRスペクトル)の(固体Si−NMRスペクトル測定及びシラノール含有率の算出)において説明した方法を用いて固体Si−NMRスペクトル測定を行ない、全ピーク面積に対するシラノール由来のピーク面積の比率より、全ケイ素原子中のシラノールとなっているケイ素原子の比率(%)を求め、別に分析したケイ素含有率と比較することにより算出することができる。
【0243】
また、本発明に用いられるシリコーン系材料は、適当量のシラノールを含有しているため、デバイス表面に存在する極性部分にシラノールが水素結合し、密着性が発現する。極性部分としては、例えば、水酸基やメタロキサン結合の酸素等が挙げられる。
【0244】
また、本発明に用いられるシリコーン系材料は、適当な触媒の存在下で加熱することにより、デバイス表面の水酸基との間に脱水縮合による共有結合を形成し、さらに強固な密着性を発現することができる。
【0245】
一方、シラノールが多すぎると、系内が増粘して塗布が困難になったり、活性が高くなり加熱により軽沸分が揮発する前に固化したりすることによって、発泡や内部応力の増大が生じ、クラックなどを誘起する虞がある。
(硬度測定値)
本発明に用いられるシリコーン系材料は、エラストマー状を呈することが好ましい。具体的には、デュロメータタイプAによる硬度測定値(ショアA)が、通常5以上、好ましくは7以上、より好ましくは10以上、また、通常90以下、好ましくは80以下、より好ましくは70以下である(特徴〈4〉)。上記範囲の硬度測定値を有することにより、クラックが発生しにくく、耐リフロー性及び耐温度サイクル性に優れるという利点を得ることができる。
【0246】
なお、上記の硬度測定値(ショアA)は、JIS K6253に記載の方法により測定することができる。具体的には、古里精機製作所製のA型ゴム硬度計を用いて測定を行なうことができる。また、リフローとは、はんだペーストを基板に印刷し、その上に部品を搭載して加熱、接合するはんだ付け工法のことをいう。そして、耐リフロー性とは、最高温度260℃、10秒間の熱衝撃に耐え得る性質のことを指す。
【0247】
(その他の添加剤)
本発明に用いられるシリコーン系材料は、封止部材の屈折率を調整するために、高い屈折率を有する金属酸化物を与えることのできる金属元素を封止部材中に存在させることができる。高い屈折率を有する金属酸化物を与える金属元素の例としては、Si、Al、Zr、Ti、Y、Nb、B等が挙げられる。これらの金属元素は単独で使用されてもよく、2種以上が任意の組み合わせ及び比率で併用されてもよい。
【0248】
このような金属元素の存在形態は、封止部材の透明度を損なわなければ特に限定されず、例えば、メタロキサン結合として均一なガラス層を形成していても、封止部材中に粒子状で存在していてもよい。粒子状で存在している場合、その粒子内部の構造はアモルファス状であっても結晶構造であってもよいが、高屈折率を与えるためには結晶構造であることが好ましい。また、その粒子径は、封止部材の透明度を損なわないために、通常は、半導体発光素子の発光波長以下、好ましくは100nm以下、さらに好ましくは50nm以下、特に好ましくは30nm以下である。例えば、シリコーン系材料に、酸化珪素、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化イットリウム、酸化ニオブ等の粒子を添加することにより、上記の金属元素を封止部材中に粒子状で存在させることができる。
また、本発明に用いられるシリコーン系材料は、さらに、拡散剤、フィラー、粘度調整剤、紫外線吸収剤等公知の添加剤を含有していてもよい。
【0249】
本発明に用いられるシリコーン系材料としては、具体的には、例えば特願2006−176468号明細書に記載のシリコーン系材料を挙げることができる。
【0250】
[2−3.発光装置の構成]
本発明の発光装置は、上述の第1の発光体及び第2の発光体を備えていれば、そのほかの構成は特に制限されないが、通常は、適当なフレーム上に上述の第1の発光体及び第2の発光体を配置してなる。この際、第1の発光体の発光によって第2の発光体が励起されて(即ち、第1及び第2の蛍光体が励起されて)発光を生じ、且つ、この第1の発光体の発光及び/又は第2の発光体の発光が、外部に取り出されるように配置されることになる。この場合、第1の蛍光体と第2の蛍光体とは必ずしも同一の層中に混合されなくてもよく、例えば、第1の蛍光体を含有する層の上に第2の蛍光体を含有する層が積層する等、蛍光体の発色毎に別々の層に蛍光体を含有するようにしてもよい。
【0251】
また、本発明の発光装置では、上述の第1の発光体、第2の発光体及びフレーム以外の部材を用いてもよい。その例としては、[2−2−4.封止材料]で述べた封止材料が挙げられる。具体例を挙げると、封止材料は、発光装置において、第2の蛍光体を分散させる目的で用いたり、第1の発光体、第2の発光体及びフレーム間を接着する目的で用いたりすることができる。
【0252】
[2−4.発光装置の実施形態]
以下、本発明の発光装置について、具体的な実施の形態を挙げて、より詳細に説明するが、本発明は以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において任意に変形して実施することができる。
【0253】
図1aは、本発明の一実施形態に係る発光装置の構成を模式的に示す図である。本実施形態の発光装置1は、フレーム2と、光源である青色LED(第1の発光体)3と、青色LED3から発せられる光の一部を吸収し、それとは異なる波長を有する光を発する蛍光体含有部(第2の発光体)4からなる。
【0254】
フレーム2は、青色LED3、蛍光体含有部4を保持するための金属製の基部である。フレーム2の上面には、図1a中上側に開口した断面台形状の凹部(窪み)2Aが形成されている。これにより、フレーム2はカップ形状となっているため、発光装置1から放出される光に指向性をもたせることができ、放出する光を有効に利用できるようになっている。さらに、フレーム2の凹部2A内面は、銀などの金属メッキにより、可視光域全般の光の反射率を高められており、これにより、フレーム2の凹部2A内面に当たった光も、発光装置1から所定方向に向けて放出できるようになっている。
【0255】
フレーム2の凹部2Aの底部には、光源として青色LED3が設置されている。青色LED3は、電力を供給されることにより青色の光を発するLEDである。この青色LED3から発せられた青色光の一部は、蛍光体含有部4内の発光物質(第1の蛍光体及び第2の蛍光体)に励起光として吸収され、また別の一部は、発光装置1から所定方向に向けて放出されるようになっている。
【0256】
また、青色LED3は前記のようにフレーム2の凹部2Aの底部に設置されているが、ここではフレーム2と青色LED3との間は銀ペースト(接着剤に銀粒子を混合したもの)5によって接着され、これにより、青色LED3はフレーム2に設置されている。さらに、この銀ペースト5は、青色LED3で発生した熱をフレーム2に効率よく放熱する役割も果たしている。
【0257】
さらに、フレーム2には、青色LED3に電力を供給するための金製のワイヤ6が取り付けられている。つまり、青色LED3の上面に設けられた電極(図示省略)とは、ワイヤ6を用いてワイヤボンディングによって結線されていて、このワイヤ6を通電することによって青色LED3に電力が供給され、青色LED3が青色光を発するようになっている。なお、ワイヤ6は青色LED3の構造にあわせて1本又は複数本が取り付けられる。
【0258】
さらに、フレーム2の凹部2Aには、青色LED3から発せられる光の一部を吸収し異なる波長を有する光を発する蛍光体含有部4が設けられている。蛍光体含有部4は、蛍光体と透明樹脂(封止材料)とで形成されている。蛍光体は、青色LED3が発する青色光により励起されて、青色光よりも長波長の光である光を発する物質である。蛍光体含有部4を構成する蛍光体は1種類であっても良いし、複数からなる混合物であってもよく、青色LED3の発する光と蛍光体含有部4の発する光の総和が所望の色になるように選べばよい。色は白色だけでなく、黄色、オレンジ、ピンク、紫、青緑等であっても良い。また、これらの色と白色との間の中間的な色であっても良い。ここでは、例えば、蛍光体として、本発明の蛍光体からなる橙色蛍光体(第1の蛍光体)と緑色蛍光体(第2の蛍光体)とを用い、発光装置から白色光が発せられるようになっているものとする。
また、透明樹脂は蛍光体含有部4の封止材料であり、ここでは、前述の封止材料を用いている。
【0259】
モールド部7は、青色LED3、蛍光体含有部4、ワイヤ6などを外部から保護するとともに、配光特性を制御するためのレンズとしての機能を持つ。モールド部7には主にシリコーン樹脂を用いることができる。
【0260】
本実施形態の発光装置は以上のように構成されているので、青色LED3が発光すると、蛍光体含有部4内の橙色蛍光体と緑色蛍光体とが励起されて発光する。これにより、発光装置からは、青色LED3が発する青色光、橙色蛍光体が発する橙色光、及び、緑色蛍光体が発する緑色光からなる白色の光が発せられることになるのである。
【0261】
この際、本実施形態の発光装置では、橙色蛍光体として、温度特性に優れた本発明の蛍光体を使用している。このため、青色LED3が発熱したとしても橙色蛍光体が発する光の輝度は大きく低下することはなく、この結果、青色LED3の発熱による発光装置の発光強度の低下を抑制できると共に、発光装置が発する色が橙色光の輝度の低下により変化することを防止できる。このため、第1の発光体として高出力のLEDを用いた場合であっても、本発明の蛍光体を含む蛍光体含有部4は、発光強度の低下や発光色の変化が少ない。
【0262】
本発明の発光装置は、上記の実施形態のものに限定されず、その要旨を逸脱しない範囲において任意に変更して実施することができる。
例えば、第1の発光体として面発光型のものを使用し、第2の発光体として膜状のものを用いることができる。この場合、第1の発光体の発光面に、直接膜状の第2の発光体を接触させた形状とすることが好ましい。なお、ここでいう接触とは、第1の発光体と第2の発光体とが空気や気体を介さないでぴたりと接している状態をつくることを言う。その結果、第1の発光体からの光が第2の発光体の膜面で反射されて外にしみ出るという光量損失を避けることができるので、装置全体の発光効率を良くすることができる。
【0263】
図2は、このように、第1の発光体として面発光型のものを用い、第2の発光体として膜状のものを適用した発光装置の一例を示す模式的な斜視図である。図2に示す発光装置8では、基板9上に第1の発光体としての面発光型GaN系LD10が設けられ、面発光型GaN系LD10の上に膜状の第2の発光体11が形成されている。ここで、相互に接触した状態をつくるためには、第1の発光体であるLD10と第2の発光体11とそれぞれ別個に用意して、それらの面同士を接着剤やその他の手段によって接触させても良いし、LD10の発光面上に第2の発光体11を成膜(成型)させても良い。これらの結果、LD11と第2の発光体11とを接触した状態とすることができる。
このような構成の発光装置8によれば、上記実施形態と同様の利点に加え、光量損失を避けて発光効率を向上させることが可能である。
【0264】
[2−5.発光装置の用途]
本発明の発光装置の用途は特に制限されず、通常の発光装置が用いられる各種の分野に使用することが可能である。中でも、温度特性が良好であることから、本発明の発光装置は、画像表示装置及び照明装置の光源としてとりわけ好適に用いられる。
なお、本発明の発光装置を画像表示装置の光源として用いる場合には、カラーフィルターとともに用いることが好ましい。例えば、画像表示装置として、カラー液晶表示素子を利用したカラー画像表示装置とする場合は、上記発光装置をバックライトとし、液晶を利用した光シャッターと赤、緑、青の画素を有するカラーフィルターとを組み合わせることにより画像表示装置を形成することができる。
【0265】
また、例えば、上記のように、本発明の発光装置を画像表示装置に用いる場合、カラーフィルターと共に、第2の発光体として本発明の蛍光体、及び(Ba,Sr)SiO:Euを用いることが好ましい。この組み合わせで用いると、黄色蛍光体(例えば、YAG蛍光体)のみ使用した発光装置を画像表示装置に用いた場合と比べて、赤み成分が多いため演色性が極めて高く、さらに、光の利用効率に優れ、輝度も高いからである。
【0266】
発光装置1を組み込んだ面発光照明装置12の一例を図3に模式的に示す。この面発光照明装置12では、内面を白色の平滑面等の光不透過性とした方形の保持ケース13の底面に、多数の発光装置1を、その外側に発光装置1の駆動のための電源及び回路等(図示せず。)を設けて配置してある。また、発光の均一化のために、保持ケース13の蓋部に相当する箇所には、乳白色としたアクリル板等の拡散板14が固定されている。
【0267】
この面発光照明装置12の使用時には、発光装置1を発光させる。この光が拡散板14を透過して、図面上方に出射され、保持ケース13の拡散板14面内において均一な明るさの照明光が得られることとなる。
【実施例】
【0268】
以下、本発明について実施例を用いてさらに詳細に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
【0269】
[蛍光体の測定・評価等]
後述の各実施例及び各比較例において、蛍光体粒子の各種の評価は、以下の手法で行なった。
【0270】
(発光スペクトル)
蛍光体の発光スペクトルは、励起光源として150Wキセノンランプを、スペクトル測定装置としてマルチチャンネルCCD検出器C7041(浜松フォトニクス社製)を備える蛍光測定装置(日本分光社製)用いて測定した。励起光源からの光を焦点距離が10cmである回折格子分光器に通し、波長400nm、405nm、455nm、又は460nmの励起光のみを光ファイバーを通じて蛍光体に照射した。励起光の照射により蛍光体から発生した光を焦点距離が25cmである回折格子分光器により分光し、300nm以上、800nm以下の波長範囲においてスペクトル測定装置により各波長の発光強度を測定し、パーソナルコンピュータによる感度補正等の信号処理を経て発光スペクトルを得た。
【0271】
(発光ピーク波長、発光ピーク強度及び半値幅)
発光ピーク波長と半値幅は、得られた発光スペクトルから読み取った。発光ピーク強度は、比較例3の蛍光体(化成オプト二クス社製P46−Y3)のピーク強度を基準とした相対値で表した。
【0272】
(色度座標)
発光スペクトルの420nm〜800nm(励起波長400nm、405nmの場合)又は、480nm〜800nm(励起波長455nm、460nmの場合)の波長領域のデータから、JIS Z8701で規定されるXYZ表色系における色度座標xとyを算出した。
【0273】
(相対輝度)
JIS Z8701で規定される刺激値Yが輝度に比例するので、刺激値Yの相対値を相対輝度とした。基準として比較例3の蛍光体を用いた。
【0274】
(励起スペクトル)
励起スペクトルは、日立作製所製F4500分光蛍光光度計によって行った。
【0275】
(発光強度維持率、及び輝度維持率)
発光スペクトル測定装置として大塚電子製MCPD7000マルチチャンネルスペクトル測定装置、輝度測定装置として色彩輝度計BM5A、ペルチエ素子による冷却機構とヒーターによる加熱機構を備えたステージ、及び光源として150Wキセノンランプを備える装置を使用して測定した。
ステージに蛍光体サンプルを入れたセルを載せ、温度を20℃から150℃の範囲で変化させた。蛍光体の表面温度が20℃、25℃、100℃、125℃、又は150℃で一定となったことを確認した。次いで、光源から回折格子で分光して取り出した405nm、455nm、又は465nmの光で蛍光体を励起して発光スペクトル及び輝度を測定した。測定された発光スペクトルから発光ピーク強度を求めた。
なお、蛍光体の表面温度の測定値は、放射温度計と熱電対による温度測定値を利用して補正した値を用いた。
輝度測定装置により測定された輝度値の、20℃における輝度値に対する相対値を輝度維持率とした。
また、スペクトル測定装置によって測定された発光スペクトルから求めた発光ピーク強度の、20℃又は25℃における発光ピーク強度に対する相対値を発光強度維持率とした。
例えば、455nm励起、125℃における発光強度維持率は以下のようにして求めることができる。
25℃において、ピーク波長455nmの光で励起して得られる発光ピーク強度をR455(25)、125℃において、ピーク波長455nmの光で励起して得られる発光ピーク強度をR455(125)としたとき、下式の値を455nm励起、125℃における発光強度維持率とした。
{R455(125)/R455(25)}×100
なお、後掲の表において、{R455(100)/R455(25)}×100及び{R405(100)/R405(25)}×100を「発光強度維持率100℃」と称し、{R455(125)/R455(25)}×100及び{R405(125)/R405(25)}×100を「発光強度維持率125℃」と称し、{R455(150)/R455(25)}×100及び{R405(150)/R405(25)}×100を「発光強度維持率150℃」と称す。
【0276】
(内部量子効率、外部量子効率、及び吸収効率)
以下のようにして、蛍光体の吸収効率αq、内部量子効率ηi、外部量子効率効率ηo、を求めた。
まず、測定対象となる蛍光体サンプルを、測定精度が保たれるように、十分に表面を平滑にしてセルに詰め、積分球に取り付けた。
【0277】
この積分球に、蛍光体を励起するための発光光源(150WのXeランプ)から光ファイバーを用いて光を導入した。前記の発光光源からの光の発光ピーク波長を405nm、または455nmの単色光となるようにモノクロメーター(回折格子分光器)等を用いて調整した。この単色光を励起光として、測定対象の蛍光体サンプルに照射し、分光測定装置(大塚電子株式会社製MCPD7000)を用いて、蛍光体サンプルの発光(蛍光)および反射光についてスペクトルを測定した。積分球内の光は、光ファイバーを用いて分光測定装置に導いた。
【0278】
吸収効率αqは、蛍光体サンプルによって吸収された励起光のフォトン数Nabsを励起光の全フォトン数Nで割った値である。
【0279】
まず、後者の励起光の全フォトン数Nは、下記(式I)で求められる数値に比例する。そこで、励起光に対してほぼ100%の反射率Rを持つ反射板であるLabsphere製「Spectralon」(450nmの励起光に対して98%の反射率Rを持つ。)を、測定対象として、蛍光体サンプルと同様の配置で上述の積分球に取り付け、励起光を照射し、分光測定装置で測定することにより反射スペクトルIref(λ)を測定し、下記(式I)の値を求めた。
【0280】
【数4】

【0281】
ここで、積分区間は、励起波長が405nmの場合は、351nm〜442nm、励起波長が455nmの場合は、410nm〜480nmとした。
蛍光体サンプルによって吸収された励起光のフォトン数Nabsは下記(式II)で求められる量に比例する。
【0282】
【数5】

【0283】
そこで、吸収効率αqを求める対象としている蛍光体サンプルを取り付けたときの、反射スペクトルI(λ)を求めた。(式II)の積分範囲は(式I)で定めた積分範囲と同じにした。実際のスペクトル測定値は、一般にはλに関するある有限のバンド幅で区切ったデジタルデータとして得られるため、(式I)および(式II)の積分は、そのバンド幅に基づいた和分によって求めた。
以上より、αq=Nabs/N=(式II)/(式I)を計算した。
【0284】
次に、内部量子効率ηiを以下のようにして求めた。内部量子効率ηiは、蛍光現象に由来するフォトンの数NPLを蛍光体サンプルが吸収したフォトンの数Nabsで割った値である。
ここで、NPLは、下記(式III)で求められる量に比例する。そこで、下記(式III)で求められる量を求めた。
【0285】
【数6】

【0286】
積分区間は、励起波長405nmの場合は、443nm〜800nm、励起波長455nmの場合は、481nm〜800nmとした。
以上により、ηi=(式III)/(式II)を計算し、内部量子効率ηiを求めた。
【0287】
なお、デジタルデータとなったスペクトルから積分を行うことに関しては、吸収効率αqを求めた場合と同様に行った。
そして、上記のようにして求めた吸収効率αqと内部量子効率ηiの積をとることで外部量子効率ηoを求めた。
【0288】
(重量メジアン径)
堀場製作所製レーザ回折/散乱式粒子径分布測定装置LA−300を用いて、分散媒としてエタノールを使用して測定した。
【0289】
(粉末X線回折測定)
粉末X線回折はPANalytical製粉末X線回折装置X'Pertにて精密測定した。測定条件は以下の通りである。
CuKα管球使用
X線出力=40KV,30mA
ソーラースリット=0.04rad
発散スリット=自動可変(試料へのX線照射幅を10mmに固定)
検出器=半導体アレイ検出器X’Celerator使用、Niフィルター使用
走査範囲 2θ=5〜155度
読み込み幅=0.015度
計数時間=99.7秒
【0290】
[蛍光体の製造I]
(実施例1〜2、及び比較例1〜2)
Sr:Ba:Si:Euが表6に示すモル比率になるように、SrCO、BaCO、SiO、及びEuを秤量し、メノウ乳鉢でエタノールとともに粉砕・混合を行った。エタノールを気化させて除去し、原料混合物を得た。得られた原料混合物を直径10mmの錠剤に成形し、モリブデン箔にのせて水素含有窒素雰囲気(水素:窒素=3:97(体積比))中、表5に示す加熱温度(最高温度)及び加熱時間で加熱することにより反応させた。続いて、得られた焼成物の粉砕処理を行うことにより蛍光体を製造した。
なお、焼成はいずれの場合も大気圧下で行った。以下の実施例及び比較例においても、焼成時の圧力条件は大気圧とした。
【0291】
【表5】

【0292】
(比較例3)
市販の黄色蛍光体(化成オプトニクス社製黄色蛍光体(Y,Gd,Ce)Al12(タイプP46−Y3))を比較例3の蛍光体として用いた。
【0293】
(実施例3〜8)
Sr:Ba:Si:Euが表6に示すモル比率になるように、SrCO、BaCO、SiO、及びEuを秤量し、メノウ乳鉢でエタノールとともに粉砕・混合を行った。エタノールを気化させて除去し、原料混合物を得た。得られた原料混合物を直径10mmの錠剤に成形し、モリブデン箔にのせて水素含有窒素雰囲気(水素:窒素=3:97(体積比))中、1450℃で6時間加熱することにより反応させた。続いて、得られた焼成物の粉砕処理を行うことにより蛍光体を製造し、その評価を行った。
【0294】
(実施例9)
Sr:Ba:Si:Eu=1.98:1:1:0.02となるように、SrCO、BaCO、SiO、及びEuを秤量し、乾式で良く混合して原料混合物を得た。白金箔を底面と側面に敷き詰めたアルミナるつぼに得られた原料混合物を入れ、マッフル炉(muffle furnace)内に窒素ガスを吹き込みながら、1400℃で6時間加熱した。得られた焼成物を良く粉砕し、アルミナるつぼに入れ、水素含有窒素雰囲気(水素:窒素=4:96(体積比))中、1550℃で6時間加熱した。得られた焼成物を粉砕処理し、目開き37μmのナイロンメッシュを通過させることにより蛍光体を製造した。この蛍光体の重量メジアン径(D50)は、19.8μmだった。
【0295】
(実施例10)
実施例9において、1回目の焼成で、白金箔を用いずに原料混合物をアルミナるつぼに直接入れたことを除いて実施例9と同様に蛍光体を製造した。
【0296】
(実施例11〜16、比較例4)
表6に示したモル比率になるように、SrCO、BaCO、SiO、及びEuを秤量し、乾式で良く混合して原料混合物を得た。得られた原料混合物を、白金箔を底面と側面に敷き詰めたアルミナるつぼに入れ、マッフル炉内に窒素ガスを吹き込みながら、1400℃で3時間加熱した。これを良く粉砕し、モリブデン箔を底面と側面に敷き詰めたアルミナるつぼに入れ、水素含有窒素雰囲気(水素:窒素=4:96(体積比))下、1550℃で3時間加熱した。得られた焼成物を粉砕処理し、目開き37μmのナイロンメッシュを通過させることにより蛍光体を製造した。
【0297】
(実施例17〜19)
蛍光体の組成比(Sr/Ba/Eu比)を表6に示した値に変更したこと以外は実施例9と同様に実施例17〜19の蛍光体を製造した。
【0298】
(実施例20)
Sr:Ba:Si:Eu=1.98:1:1:0.02となるように、SrCO、BaCO、SiO、及びEuを秤量し、乾式で良く混合して原料混合物を得た。得られた原料混合物を、白金箔を底面と側面に敷き詰めたアルミナるつぼに入れ、水素含有窒素雰囲気(水素:窒素=4:96(体積比))中、1400℃で6時間加熱した。これを良く粉砕し、アルミナるつぼに入れて、水素含有窒素雰囲気(水素:窒素=4:96(体積比))中、1550℃で6時間加熱した。得られた焼成物を粉砕処理し、目開き37μmのナイロンメッシュを通過させることにより蛍光体を製造した。
【0299】
(実施例21)
Sr:Ba:Si:Eu=1.98:1:1:0.02となるように、SrCO、BaCO、SiO、及びEuを秤量し、乾式で良く混合して原料混合物を得た。得られた原料混合物を、白金箔を底面と側面に敷き詰めたアルミナるつぼに入れ、マッフル炉内に窒素ガスを吹き込みながら、1400℃で6時間加熱した。これを良く粉砕し、アルミナるつぼに入れ、水素含有窒素雰囲気(水素:窒素=4:96(体積比))中、1550℃で6時間加熱した。得られた焼成物を粉砕処理し、目開き37μmのナイロンメッシュを通過させることにより蛍光体を製造した。
【0300】
(実施例22)
実施例21で得られた蛍光体を5倍重量の水に入れて良く撹拌し、濾過した。同じ作業をもう一度行った後、大気中、120℃で乾くまで乾燥した。
【0301】
[蛍光体の評価I−A]
(405nm励起、及び455nm励起における発光特性)
実施例1〜22、及び比較例2、4の蛍光体について、前述の方法により、405nmの光、及び455nmの光で励起した時の、発光ピーク波長、発光ピーク強度、半値幅、輝度、色度座標、発光強度維持率、内部量子効率、外部量子効率、及び吸収効率と、重量メジアン径(D50)について測定を行った。結果を表7,8に示す。
表7,8から、実施例1〜22で製造した蛍光体は、高温下での発光強度維持率が高く、温度特性に優れた蛍光体であることがわかる。
実施例3〜8の結果から、付活元素であるEu量については、SrとBaとEuの合計モル量を3としたときのEuモル量(前記式[1]におけるy)が0.02の場合に発光強度が最も高くなることがわかった。即ち、このEu量の前後で蛍光体を製造することが好ましいことがわかる。
【0302】
実施例11〜19の結果から、SrとBaのモル比率については、Sr/Baモル比率がおおよそ2/1〜2.2/0.8付近の場合に発光ピーク強度が最も高くなることがわかった。さらにBaを減少させると若干発光ピーク強度が低下したが、発光ピーク波長が長波長よりにシフト(x値が上昇、y値が低下)するため、赤色成分が若干多い蛍光体となる。この蛍光体は、赤色成分が多く、高演色性が求められる用途に好適に用いられる。
【0303】
実施例22のように蛍光体を水洗処理すると、蛍光体表面に付着した不純物を除去することができ、また、粉砕などにより発生する微粒子を取り除くことができるので、実用上好ましい。
実施例20のように、2回焼成を行う場合には、1回目の焼成も2回目の焼成と同様に還元性雰囲気(窒素と水素の混合ガス)で行うこともできる。
【0304】
【表6】

【0305】
【表7】

【0306】
【表8】

【0307】
[蛍光体の評価I−B]
(粉末X線回折パターン)
実施例1の蛍光体の測定結果をRietveld法による解析結果とともに図4aに示す。この図では、一番上に(図4a中、A)得られた蛍光体の回折輝度の実測値(×印)とパターンフィッティングで求められた回折強度データ(実線)を重ねて示し、上から二番目の縦線の並び(図4a中、B)は、パターンフィッティング結果において、回折ピークの存在する位置を示し、三番目のカーブ(図4a中、C)は、蛍光体の回折輝度の実測値とパターンフィッティング結果の差を示している。また、得られた蛍光体の回折輝度の実測値を実線で結んだものを図4bとして示している。
【0308】
なお、Rietveld法による解析は、実施例1の蛍光体の空間群がI4/mcm(No.140)であるとして、パターンフィッティングを行ったものである。ここには示さないが、実施例1の蛍光体の空間群がP4/ncc(No.130)であるとして解析してもほぼ同等の正確さでパターンフィッティングができた。したがって、実施例1の蛍光体は、空間群I4/mcm(No.140)又は、空間群がP4/ncc(No.130)に属するものと考えられる。
【0309】
表9a〜表9eに、パターンフィッティングの結果得られた各回折ピークの面指数、回折強度(2θ)、面間隔、実測強度及び計算強度を示す。なお、蛍光体の回折強度の実測データにおいて、実施例1の蛍光体の結晶に由来するものではない不純物相のピークが確認されたが、これについては表には記載していない。計算値は正方晶のa軸、b軸、c軸の格子定数をそれぞれa、b、cとし、面指数を(hkl)として、以下の[8]式から求めた。表9a〜表9eから、各回折角度の回折強度の実測値と計算値がほぼ一致することがわかる。
2θ=2sin−1[0.5λ(h/a+k/b+l/c)0.5] …[8]
なお、λはX線源として用いたCuKα線の波長1.54056Åである。
表10に、パターンフィッティングの結果得られた格子定数、原子座標などの結晶構造パラメータをまとめて示した。
【0310】
【表9a】

【0311】
【表9b】

【0312】
【表9c】

【0313】
【表9d】

【0314】
【表9e】

【0315】
【表10】

【0316】
(400nm励起、及び460nm励起における発光特性I)
実施例1〜2(及び後掲の実施例23)、及び比較例1〜2の蛍光体について、400nm励起、及び460nm励起における発光特性を測定した。
実施例1〜2(及び後掲の実施例23)、及び比較例1〜2の発光スペクトルを図5(460nm励起)及び図6(400nm励起)に示す。
【0317】
また、実施例1〜2(及び後掲の実施例23)、及び比較例1〜2の蛍光体について発光ピーク波長、相対発光ピーク強度、色度座標、相対輝度を表11及び表12にまとめた。
【0318】
表11に、ピーク波長460nmで励起した場合の発光スペクトルから算出した相対発光ピーク強度、及び相対輝度を示す。相対発光ピーク強度と相対輝度は、比較例3の蛍光体を波長460nmで励起した場合の発光ピーク強度と輝度を102として求めた相対値である。
表12に、ピーク波長400nmで励起した場合の発光スペクトルから算出した相対発光ピーク強度、及び相対輝度を示す。相対ピーク強度と相対輝度は、比較例3の蛍光体を波長460nmで励起した場合の発光ピーク強度と輝度を100として求めた相対値である。
これらの測定結果より、Sr1.98BaEu0.02SiO組成の蛍光体(実施例1)の発光強度が最も高いことがわかる。
【0319】
【表11】

【0320】
【表12】

【0321】
(400nm励起、及び460nm励起における発光特性II)
実施例3〜8の蛍光体について、発光ピーク波長、相対発光ピーク強度、色度座標、相対輝度を測定し、その結果を表13及び表14に示した。
表13に、ピーク波長460nmで励起した場合の発光スペクトルから算出した相対発光ピーク強度、及び相対輝度を示す。相対ピーク強度と相対輝度は、同時に測定した比較例3の蛍光体を波長460nmで励起した場合の発光ピーク強度と輝度を100として求めた相対値である。
表14に、ピーク波長400nmで励起した場合の発光スペクトルから算出した相対発光ピーク強度、及び相対輝度を示す。相対ピーク強度と相対輝度は、比較例3の蛍光体を波長460nmで励起した場合の発光ピーク強度と輝度を100として求めた相対値である。
【0322】
【表13】

【0323】
【表14】

【0324】
また、図10に、励起波長460nmにおけるEu添加量と発光ピーク波長及び相対発光ピーク強度の関係を示した。
実施例3〜8の結果から、付活元素であるEu量については、SrとBaとEuの合計モル量を3としたときのEuモル量(前記式[1]におけるy)が0.02の場合に発光強度が最も高くなることがわかった。即ち、このEu量の前後で蛍光体を製造することが好ましいことがわかる。
【0325】
(455nm励起における発光特性)
実施例9及び10の蛍光体について、455nmで励起した際の発光ピーク波長、相対発光ピーク強度、色度座標、相対輝度を測定し、その結果を表15に示した。
相対ピーク強度と相対輝度は、同時に測定した比較例3の蛍光体を波長460nmで励起した場合の発光ピーク強度と輝度を100として求めた相対値である。
【0326】
【表15】

【0327】
実施例10の蛍光体は実施例9の蛍光体と比較して、発光ピーク強度が小さかった。その原因は、1400℃という高温における加熱処理を、白金箔を用いずにアルミナるつぼで行ったことにより、蛍光体の原料混合物とアルミナが反応し、蛍光体中にAl成分が混入したためと考えられる。
これらの蛍光体のAl含有量を測定したところ、実施例10の蛍光体には、1gあたり、Alが380μg含まれており、実施例9の蛍光体には、1gあたり、Alが30μg含まれていた。したがって、実施例10の蛍光体には、アルミナるつぼ由来のAlが混入したものと考えられる。
【0328】
(励起スペクトル)
実施例1の蛍光体の励起スペクトルを図7に示す。この図から、実施例1の蛍光体は、300nm以上、500nm以下の波長範囲の光で励起可能であり、特に、紫外領域、近紫外領域、及び500nmより短波長の可視光領域の光を効率よく吸収して発光することが分かる。
【0329】
(励起波長465nmにおける発光強度維持率及び輝度維持率)
実施例1の蛍光体について、温度変化に対する発光強度維持率、及び輝度維持率を測定した。
輝度計により測定された輝度値を、20℃における輝度値で規格化して、図9に図示した。
スペクトル測定装置によって測定された発光ピーク強度を、20℃における発光ピーク強度で規格化して、図9に図示した。
図9より、この蛍光体は室温(20℃)から150℃程度の温度範囲において、温度消光がほとんど生じないことが分かった。
【0330】
[蛍光体の製造II]
(実施例23)
Sr:Ba:Si:Euが表16に示すモル比率になるように、SrCO、BaCO、SiO、及びEuを秤量し、メノウ乳鉢でエタノールとともに粉砕・混合を行った。エタノールを気化させて除去し、原料混合物を得た。得られた原料混合物を直径10mmの錠剤に成形し、モリブデン箔にのせて水素含有窒素雰囲気(水素:窒素=3:97(体積比))中、加熱温度(最高温度)1250℃及び加熱時間6時間で加熱することにより反応させた。続いて、得られた焼成物の粉砕処理を行うことにより蛍光体を製造した。
【0331】
(実施例24〜27)
表16に示したモル比率になるように、SrCO、BaCO、SiO、及びEuを秤量し、乾式で良く混合して原料混合物を得た。得られた原料混合物を、白金箔を底面と側面に敷き詰めたアルミナるつぼに入れ、マッフル炉内に窒素ガスを吹き込みながら、1400℃で3時間加熱した。これを良く粉砕し、モリブデン箔を底面と側面に敷き詰めたアルミナるつぼに入れ、水素含有窒素雰囲気(水素:窒素=4:96(体積比))下、1550℃で3時間加熱した。得られた焼成物を粉砕処理し、目開き37μmのナイロンメッシュを通過させることにより蛍光体を製造した。
【0332】
[蛍光体の評価II]
(405nm励起、及び455nm励起における発光特性)
実施例23〜27の蛍光体について、前述の方法により、405nmの光、及び455nmの光で励起した時の、発光ピーク波長、発光ピーク強度、半値幅、輝度、色度座標、発光強度維持率、内部量子効率、外部量子効率、及び吸収効率と、重量メジアン径(D50)について測定を行った。結果を表17,18に示す。
【0333】
Sr/Baのモル比率が2.5/0.5を超えてSrが多くなると、Srの増加とともに発光波長は短波長にシフトする。Sr/Baがおおよそ2.4/0.6〜2.6/0.4付近で最も発光ピーク波長が長波長になる。赤色成分を多くしたい場合にはこの範囲にSr/Ba比率を調節することが好ましい。
これらの結果から、Baの比率xを0.5以上、0.8以下の範囲とすることで、発光ピークが長波長寄りにあって、発光ピーク強度の特に大きい蛍光体を得ることができることが分かる。
【0334】
【表16】

【0335】
【表17】

【0336】
【表18】

【0337】
以上の結果から、前記式[1]を満たす蛍光体は、温度特性が良好であり、内部量子効率や発光ピーク強度が高い蛍光体であることがわかる。さらに、輝度と赤味成分のバランスの良い蛍光体であるため、この蛍光体を用いると特性の高い発光装置の製造が可能となる。
【0338】
[表面処理と耐久性評価]
(実施例28)
実施例1で得られた橙色蛍光体と、緑色蛍光体(Ba1.39Sr0.46Eu0.15)SiOとを用い、以下の手順により白色発光装置を作製した。
東洋電波社製SMD LEDパッケージ「TY−SMD1202B」にCREE社製LEDチップ「C460−MB290」(発光波長461nm)をボンディングした。
ジャパンエポキシレジン社製エポキシ樹脂「YL−7301」および硬化剤「YLH−1230」を100重量部:80重量部の割合で混合し、該混合物100重量部に橙色蛍光体5.3重量部、緑色蛍光体5.8重量部、さらにフィラーとして日本アエロジル社製「RY200」1.0重量部を添加し、シンキー社製撹拌装置「あわとり練太郎AR−100」で3分間混練して蛍光体含有組成物とした。
この組成物を上記LEDチップ付きパッケージの最上面まで充填し、100℃で3時間、次いで140℃で3時間加熱硬化させた。
【0339】
得られた発光装置を、室温(約24℃)において、20mAで駆動し、CIE色度座標xを測定した。
次に、上記発光装置を85℃、85%RHの高温高湿条件で500時間静置した後、同様にCIE色度座標xを測定した。
そして、上記発光装置の製造直後の色度座標xに対する高温高湿曝露500時間経過後の色度座標xの比率(x維持率:%)を算出し、結果を表19に示した。
【0340】
(実施例29)
実施例1で得られた橙色蛍光体3gを50mlのフラスコに入れ、エタノール20mLを添加して、攪拌した。次に、28重量%アンモニア水6.7gを添加し、マグネチックスターラーにて1分間攪拌した。
次に、マグネチックスターラーで激しく撹拌しながらテトラエチルオルト珪酸20mLを2回に分けて徐々に添加し、引き続きマグネチックスターラーにて90分間攪拌した。
得られた溶液を3分間静置した後、スポイト等により上澄みを除去した。
その後、エタノール30mL添加、1分間攪拌、3分間静置、上澄み除去を、上澄み液が無色透明になるまで繰り返した。
得られた沈降物を、真空乾燥器で150℃にて、2時間減圧乾燥し、表面処理橙色蛍光体を得た。
この表面処理橙色蛍光体には、蛍光体の重量に対して13.8重量%の酸化珪素被膜が付着していた。その被膜厚さは100nm程度である。
【0341】
橙色蛍光体として、この表面処理橙色蛍光体を用いたこと以外は実施例28と同様にして白色発光装置を作製し、同様に発光装置の製造直後の色度座標xと、高温高湿曝露500時間経過後の色度座標xと、x維持率を調べ、結果を表19に示した。
【0342】
【表19】

【0343】
実施例28、29の結果から明らかなように、表面処理した本発明の蛍光体を用いた場合、白色発光装置は高温高湿環境下に曝露されたときの耐久性能においてさらに優れた効果を奏する。
【0344】
[発光装置の作製と評価]
(実施例30)
図1bに示す構成の表面実装型白色発光装置を以下の手順により作製した。なお、実施例30の各構成要素のうち、図1bに対応する構成要素が描かれているものについては、適宜その符号をカッコ書きにて示す。
第1の発光体(21)としては、460nmの波長で発光するCree社製の青色LEDである460−MBを用いた。この青色LED(21)を、フレーム(23)の凹部の底の端子(26)に、接着剤として銀ペーストを用いてダイボンディングした。次に、青色LED(21)の電極とフレーム(23)の端子(25)とをワイヤボンディングした。ワイヤ(24)としては、直径25μmの金線を用いた。
【0345】
蛍光体含有部(22)の発光物質として、橙色蛍光体である上記実施例1の蛍光体及び緑色蛍光体であるCe付活Ca(Sc,Mg)Si12を用いた。また、封止材料としてシリコーン樹脂を用いた。
これら2種類の蛍光体とシリコーン樹脂を混合し、得られた蛍光体とシリコーン樹脂の混合物を青色LED(21)をボンディングしたフレーム(23)の凹部に注入した。これを150℃で2時間保持してシリコーン樹脂を硬化させることにより、蛍光体含有部(22)を形成して表面実装型白色発光装置を作製した。
橙色蛍光体と緑色蛍光体の混合比率、蛍光体の合計重量に対するシリコーン樹脂の混合比率は以下の通りである。
【0346】
<混合比率>
橙色蛍光体:緑色蛍光体=72:18(重量比)
蛍光体合計:シリコーン樹脂=9:100(重量比)
【0347】
また、緑色蛍光体であるCe付活Ca(Sc,Mg)Si12は以下のようにして合成した。
CaCO、Mg(OH)・3MgCO・3HO、Sc、SiO及びCe(NO(水溶液)の各原料を、少量のエタノールと共にメノウ乳鉢に入れ、よく混合した後、乾燥させて原料混合物を得た。原料混合物を白金箔に包み、水素含有窒素ガス(水素:窒素=4:96(体積比))を流通させながら、大気圧下、1500℃で3時間加熱することにより焼成した。次いで、得られた焼成物を粉砕及び分級処理することにより緑色蛍光体を合成した。
【0348】
<原料>
CaCO:0.0297モル
Mg(OH)・3MgCO・3HO :Mgとして0.0006モル
Sc :0.0097モル
SiO :0.03モル
Ce(NO (水溶液) :0.0003モル
【0349】
室温(約24℃)において、得られた白色発光装置を、LED(21)に20mAの電流を通電して駆動し発光させた。白色発光装置からの全ての発光を積分球で受け、さらに光ファイバーによって分光器に導き入れ、発光スペクトルと全光束とを測定した。
【0350】
この白色発光装置の発光スペクトルを図8に示す。また、発光スペクトルの測定結果のうち、波長380nmから780nmの範囲の発光強度の数値をもとに、CIE色度座標値x及びyを求めたところ、x=0.33、y=0.34であった。
また、全光束は2ルーメン(lm)で、発光効率は29lm/Wであった。
【0351】
(比較例5)
蛍光体として「化成オプトニクス社製黄色蛍光体(Y,Gd,Ce)Al12(タイプP46−Y3)」(比較例3の蛍光体)を使用したこと以外は、実施例12と同様の手順で表面実装型白色発光装置を製造した。また、実施例12と同様に評価を行ったところ、CIE色度座標値x及びyは、x=0.33、y=0.32であり、全光束は1.6lm、発光効率は23lm/Wであった。
【0352】
実施例30と比較例5の結果から明らかなように、実施例1で得られた橙色蛍光体と緑色蛍光体Ce付活Ca(Sc,Mg)Si12とを使用した白色発光装置は、黄色蛍光体(Y,Gd,Ce)Al12を使用した白色発光装置よりも発光効率において優れている。
【0353】
(実施例31〜112)
以下の手順により表面実装型白色発光装置を作成した。
なお、得られた白色発光装置は、厳密な意味での白色でなかったものがあるが、ここでは、白色発光装置と総称することとする。
【0354】
使用した蛍光体は、以下に示す通りである。
橙色蛍光体A=実施例9で得られた蛍光体
黄色蛍光体2=YAl12:Ce3+,Tb3+
緑色蛍光体1=Ca(Sc,Mg)Si12:Ce3+ (実施例30で使用したものと同じ緑色蛍光体)
緑色蛍光体2=Ba1.39Sr0.46Eu0.15SiO
青色蛍光体1=Ba0.7Eu0.3MgAl1017
【0355】
上記の黄色蛍光体2、緑色蛍光体2及び青色蛍光体1は以下のようにして合成した。
(黄色蛍光体2)
所定量に秤量したY、Tb、CeO及びAlの各原料と、フラックスであるBaFとをよく混合した後、アルミナ製るつぼに入れ、水素含有窒素雰囲気(水素:窒素=4:96(体積比))中、1450℃で2時間加熱することにより焼成した。次いで、得られた焼成物を粉砕、洗浄、分級、乾燥処理することにより黄色蛍光体2(YAl12:Ce3+,Tb3+)を合成した。
【0356】
(緑色蛍光体2)
Sr:Ba:Eu:Si=1.39:0.46:0.15:1のモル比率になるように、BaCO、SrCO、SiO、及びEuを秤量し、少量のエタノールとともにメノウ乳鉢に入れ、よく混合した後、乾燥させて原料混合物を得た。得られた原料混合物をアルミナ製るつぼに入れ、水素含有窒素雰囲気(水素:窒素=4:96(体積比))中、1200℃で6時間加熱することにより焼成した。次いで、得られた焼成物を粉砕及び分級処理することにより緑色蛍光体2A(Ba1.39Sr0.46Eu0.15SiO)を合成した。
また、上記と同じ合成方法により、異なる製造ロットの緑色蛍光体を合成し、これを緑色蛍光体2B(Ba1.39Sr0.46Eu0.15SiO)とした。
【0357】
(青色蛍光体1)
Ba:Eu:Mg:Al=0.7:0.3:1:10のモル比になるように秤量したBaCO、Eu、塩基性炭酸マグネシウム(MgCO・nMg(OH))及びγ−Alと、これらの総重量に対して0.3重量%のAlFとを、少量のエタノールとともにメノウ乳鉢に入れ、よく混合した後、乾燥させて原料混合物を得た。得られた原料混合物をアルミナ製るつぼに入れ、水素含有窒素雰囲気(水素:窒素=4:96(体積比))中、1450℃で3時間加熱することにより焼成した。次いで、得られた焼成物を粉砕及び分級処理することにより青色蛍光体1(Ba0.7Eu0.3MgAl1017)を合成した。
【0358】
図1bに示す構成の表面実装型白色発光装置を以下の手順により作製した。なお、図1bに対応する構成要素が描かれているものについては、適宜その符号をカッコ書きにて示す。
第1の発光体(21)としては、460nmの波長で発光するCree社製の青色LEDである460−MBを用いた。この青色LED(21)を、フレーム(23)の凹部の底の端子(26)に、接着剤として銀ペーストを用いてダイボンディングした。次に、青色LED(21)の電極とフレーム(23)の端子(25)とをワイヤボンディングした。ワイヤ(24)としては、直径25μmの金線を用いた。
【0359】
蛍光体含有部(22)の発光物質として、上記の橙色蛍光体並びに、黄色蛍光体2、緑色蛍光体1、緑色蛍光体2A、緑色蛍光体2B及び青色蛍光体1の1種又は2種以上を用いた。また、封止材料としてエポキシ樹脂を用いた。
【0360】
橙色蛍光体並びに、黄色蛍光体2、緑色蛍光体1、緑色蛍光体2A、緑色蛍光体2B及び青色蛍光体1の1種又は2種以上と、エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン社製YL7301)、エポキシ樹脂硬化剤(ジャパンエポキシレジン社製YLH1230)並びに添加剤(アエロジル(登録商標)、日本アエロジル社製AEROSIL 130)とを良く混合した。
【0361】
エポキシ樹脂、エポキシ樹脂硬化剤及び添加剤の混合比率は、エポキシ樹脂:エポキシ樹脂硬化剤:添加剤=100:80:3.6(重量比)とし、エポキシ樹脂及びエポキシ樹脂硬化剤の合計重量に対する蛍光体の混合比率は、表20〜27に示す通りとした。
【0362】
得られた混合物を青色LED(21)をボンディングしたフレーム(23)の凹部に注入した。これを100℃で3時間加熱処理した後、さらに140℃で3時間加熱してエポキシ樹脂を硬化させることにより、蛍光体含有部(22)を形成して表面実装型白色発光装置を作製した。
作製した白色発光装置について、後述する評価を行い、結果を表20〜27に示した。
【0363】
(実施例113〜154)
以下に示す通りに、青色LEDの代わりに395nmの波長で発光する近紫外LEDを用いたこと、蛍光体の組み合わせ及び混合比率を変えたこと、封止材料としてシリコーン樹脂を用いたこと、蛍光体含有部を形成する際の加熱条件を変えたこと以外は、実施例31〜112と同様にして表面実装型発光装置を作製した。
【0364】
近紫外LED:Cree社製C395−MB
蛍光体の組み合わせ及び混合比率:表28〜32に示す通り(混合比率は、シリコーン樹脂の重量に対する蛍光体の混合比率である。)
封止材料:シリコーン樹脂(東レダウコーニング社製 6101)
加熱条件:150℃で2時間加熱
作製した発光装置について、後述する評価を行い、その結果(特性)を表28〜32に示した。
【0365】
[発光装置の評価(実施例113〜154)]
発光スペクトル:実施例30と同様にして測定した。実施例41、54、86、108、112、127、142、144及び150で作製した発光装置の発光スペクトルを、各々図11〜19に示す。
【0366】
CIE色度座標値のx及びy:JIS Z8701に従って、得られた発光装置の発光スペクトルから算出した。
全光束(単位lm):実施例30と同様にして測定した。
ルミナスパワー(単位lm/W):全光束を、蛍光体含有部形成前の青色LED又は近紫外LEDに20mAの電流を通電して駆動し発光させたときの放射束W1で割った値である。
発光効率(単位lm/W):全光束を、蛍光体含有部形成前の青色LED又は近紫外LEDに20mAの電流を通電して駆動し発光させたときの消費電力W2で割った値である。
平均演色評価数Ra:JIS Z8726の定義に従って算出した。
W1(単位mW):LEDの製造ばらつきを把握するために、蛍光体含有部形成前の青色LED又は近紫外LEDに20mAの電流を通電して駆動したときの放射束である。
通電電圧(単位V):青色LED又は近紫外LEDに20mAの電流を通電して駆動したときの端子間電圧である。
W2(単位mW):通電電圧と通電電流の積として求めた消費電力である。
【0367】
表20は、青色LEDと橙色蛍光体Aのみを用いて作製した発光装置の特性一覧表である。このように、青色LEDと本発明の橙色蛍光体を用いた発光装置は、紫、ピンク、アンバー、橙色、赤色などに発光し、また輝度が高いため、各種の表示装置や車載用光源として好適に使用することができる。
表21は、青色LED、橙色蛍光体A及び黄色蛍光体2を用いて作製した白色発光装置の特性一覧表である。このように、青色LED、本発明の橙色蛍光体及び黄色蛍光体を用いた白色発光装置は、白色〜電球色に発光し、黄色蛍光体のみ使用した白色発光装置と比べて赤み成分が多いため演色性が高く、照明として好適に使用できる。また、このような白色発光装置は、画像表示装置、特に液晶表示装置のバックライトとしても好適に使用することができる。
表22は、青色LED、橙色蛍光体A及び緑色蛍光体1を用いて作製した白色発光装置の特性一覧表である。
表23は、青色LED、橙色蛍光体A及び緑色蛍光体1を用いて作製した白色発光装置の特性一覧表である。表23の白色発光装置は、表22の白色発光装置より橙色蛍光体Aの混合比率が多い。これにより、電球色の白色発光装置を得ることができる。
このように、青色LED、本発明の橙色蛍光体及び緑色蛍光体を用いた発光装置は、白色〜電球色に発光し、黄色蛍光体のみ使用した発光装置と比べて赤み成分や青緑色成分が多いため演色性が極めて高く、照明として好適に使用できる。また、このような白色発光装置は、画像表示装置、特に液晶表示装置のバックライトとしても好適に使用することができる。
【0368】
表24は、青色LED、橙色蛍光体A及び緑色蛍光体2Aを用いて作製した白色発光装置の特性一覧表である。
表25は、青色LED、橙色蛍光体A及び緑色蛍光体2Aを用いて作製した白色発光装置の特性一覧表である。表25の白色発光装置は、表24の白色発光装置より橙色蛍光体Aの混合比率が多い。これにより、電球色の白色発光装置を得ることができる。
表26は、青色LED、橙色蛍光体A及び緑色蛍光体2Bを用いて作製した白色発光装置の特性一覧表である。
表27は、青色LED、橙色蛍光体A及び緑色蛍光体2Bを用いて作製した白色発光装置の特性一覧表である。表27の白色発光装置は、表26の白色発光装置より橙色蛍光体Aの混合比率が多い。これにより、電球色の白色発光装置を得ることができる。
このように、青色LED、本発明の橙色蛍光体及び緑色蛍光体を用いた白色発光装置は、白色〜電球色に発光し、黄色蛍光体のみ使用した発光装置と比べて赤み成分が多いため演色性が極めて高く、さらに、輝度が高いため照明として好適に使用できる。また、このような白色発光装置は、画像表示装置、特に液晶表示装置のバックライトとして好適に使用することができる。
【0369】
表28は、近紫外LED、橙色蛍光体A、緑色蛍光体2A及び青色蛍光体1を用いて作製した白色発光装置の特性一覧表である。
表29は、近紫外LED、橙色蛍光体A、緑色蛍光体2A、及び青色蛍光体1を用いて作製した白色発光装置の特性一覧表である。表29の白色発光装置は、表28の白色発光装置より橙色蛍光体Aの混合比率が多い。これにより、電球色の白色発光装置を得ることができる。
表30は、近紫外LED、橙色蛍光体A、緑色蛍光体2B及び青色蛍光体1を用いて作製した白色発光装置の特性一覧表である。
表31は、近紫外LED、橙色蛍光体A、緑色蛍光体2B及び青色蛍光体1を用いて作製した白色発光装置の特性一覧表である。表31の白色発光装置は、表30の白色発光装置より橙色蛍光体Aの混合比率が多い。これにより、電球色の白色発光装置を得ることができる。
このように、近紫外LED、本発明の橙色蛍光体、緑色蛍光体、及び青色蛍光体を用いた白色発光装置は、白色〜電球色に発光し、青色LEDを使用した白色発光装置と比較して、色むらが少なく、演色性が高いため、照明として好適に使用できる。また、このような白色発光装置は、画像表示装置、特に液晶表示装置のバックライトとして好適に使用することができる。
【0370】
さらに、青色LEDを第1の発光体として使用した白色発光装置は青色光の透過比率が白色発光装置の発光色に影響するが、近紫外LEDを第1の発光体として使用した場合には、蛍光体の混合比率のみで白色発光装置の発光色を制御できるため、青色LEDを使用した場合に比較して、色調の調整を行いやすい。
表32は、近紫外LED及び橙色蛍光体Aを用いて作製した発光装置の特性一覧表である。
このように、近紫外LED及び本発明の橙色蛍光体を用いた発光装置は、橙色やピンク色に発光し、また輝度が高いため、各種の表示装置や車載用光源として好適に使用することができる。
【0371】
【表20】

【0372】
【表21】

【0373】
【表22】

【0374】
【表23】

【0375】
【表24】

【0376】
【表25】

【0377】
【表26】

【0378】
【表27】

【0379】
【表28】

【0380】
【表29】

【0381】
【表30】

【0382】
【表31】

【0383】
【表32】

【図面の簡単な説明】
【0384】
【図1a】本発明の発光装置の実施の形態を示す模式的断面図である。
【図1b】実施例30〜154で作製した表面実装型白色発光装置を示す模式的断面図である。
【図2】本発明の発光装置の他の実施の形態を示す模式的な斜視図である。
【図3】本発明の発光装置を用いた面発光照明装置の一例を示す模式的断面図である。
【図4a】実施例1の蛍光体の粉末X線回折パターン(X線源:CuKα)とRietveld法によるパターンフィッティング結果を示す図である。
【図4b】図4aの蛍光体の観測データを実線で結んだ図である。
【図5】実施例1,2、実施例23及び比較例1,2の蛍光体の発光スペクトル(励起光波長:460nm)を示す図である。
【図6】実施例1,2、実施例23及び比較例1,2の蛍光体の発光スペクトル(励起光波長:400nm)を示す図である。
【図7】実施例1の蛍光体の励起スペクトル(発光検出波長:593nm)を示す図である。
【図8】実施例12で作製した白色発光装置の発光スペクトルを示す図である。
【図9】実施例1の蛍光体の発光強度の温度依存性を示す図である。
【図10】実施例3〜8における蛍光体の励起波長460nmの場合のEu添加量と発光ピーク波長及び相対発光ピーク強度の関係を示す図である。
【図11】実施例41で作製した白色発光装置の発光スペクトルを示す図である。
【図12】実施例54で作製した白色発光装置の発光スペクトルを示す図である。
【図13】実施例86で作製した白色発光装置の発光スペクトルを示す図である。
【図14】実施例108で作製した白色発光装置の発光スペクトルを示す図である。
【図15】実施例112で作製した白色発光装置の発光スペクトルを示す図である。
【図16】実施例127で作製した白色発光装置の発光スペクトルを示す図である。
【図17】実施例142で作製した白色発光装置の発光スペクトルを示す図である。
【図18】実施例144で作製した白色発光装置の発光スペクトルを示す図である。
【図19】実施例150で作製した発光装置の発光スペクトルを示す図である。
【符号の説明】
【0385】
1 発光装置
2 フレーム
2A フレームの凹部
3 青色LED(第1の発光体)
4 蛍光体含有部
5 銀ペースト
6 ワイヤ
7 モールド部
8 発光装置
9 基板
10 面発光型GaN系LD(第1の発光体)
11 第2の発光体
12 面発光照明装置
13 保持ケース
14 拡散板
21 LED(第1の発光体)
22 蛍光体含有部
23 フレーム
24 ワイヤ
25 端子
26 端子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(1)〜(3)を満足することを特徴とする蛍光体。
(1) 下記式[2]及び/又は下記式[3]を満たす。
85≦{R455(125)/R455(25)}×100≦110 …[2]
92≦{R405(100)/R405(25)}×100≦110 …[3]
(式[2]において、R455(25)は、25℃において、該蛍光体をピーク波長455nmの光で励起して得られる発光ピーク強度であり、
455(125)は、125℃において、該蛍光体をピーク波長455nmの光で励起して得られる発光ピーク強度である。
式[3]において、R405(25)は、25℃において、該蛍光体をピーク波長405nmの光で励起して得られる発光ピーク強度であり、
405(100)は、100℃において、該蛍光体をピーク波長405nmの光で励起して得られる発光ピーク強度である。)
(2) 発光ピーク波長が570nm以上、680nm以下の波長範囲にある。
(3) 発光ピークの半値幅が90nm以下である。
【請求項2】
ピーク波長455nmの光で励起したときの内部量子効率が64%以上である、
及び/又は、
ピーク波長405nmの光で励起したときの内部量子効率が56%以上である
ことを特徴とする請求項1に記載の蛍光体。
【請求項3】
該蛍光体の重量メジアン径(D50)が1μm以上、40μm以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載の蛍光体。
【請求項4】
該蛍光体がEu及び/又はCeを含有することを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の蛍光体。
【請求項5】
該蛍光体がEu及びSiを含有することを特徴とする請求項4に記載の蛍光体。
【請求項6】
下記式[1]で表される化学組成を有することを特徴とする蛍光体。
3−x−yBa …[1]
(式[1]中、Mは、Baを除くアルカリ土類金属元素、及びZnからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素を表す。
は、Eu、Ce、Cr、Mn、Sm、Tm、Tb、Er及びYbからなる群より選ばれる少なくとも1種の付活元素を表す。
は、少なくともSiを含む4価の元素を表す。
は、N、O、Sからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素を表す。
x、yは各々、
0<x<3
0<y<1
0<3−x−y
を満たす数を表す。
a、dは各々、
aは、0.5≦a≦1.5
dは、4.5≦d≦5.5
を満たす数を表す。)
【請求項7】
前記式[1]において、Mとして、Euを含有することを特徴とする請求項6に記載の蛍光体。
【請求項8】
前記式[1]において、Mとして、Srを含有することを特徴とする請求項6又は7に記載の蛍光体。
【請求項9】
前記式[1]において、yの値が、
0.01≦y≦0.1
を満足することを特徴とする請求項6ないし8のいずれか1項に記載の蛍光体。
【請求項10】
前記式[1]において、xの値が、
0.8≦x≦1.2
を満足することを特徴とする請求項6ないし9のいずれか1項に記載の蛍光体。
【請求項11】
前記式[1]において、xの値が、
0.5≦x≦0.8
を満足することを特徴とする請求項6ないし9のいずれか1項に記載の蛍光体。
【請求項12】
下記式[1B]で表される化学組成を有することを特徴とする蛍光体。
Sr3−x−yBaEuSiO …[1B]
(式[1B]中、x及びyは、0<x<3、0<y<1、0<3−x−yを満たす数を表す。)
【請求項13】
前記式[1B]において、x=1であることを特徴とする請求項12に記載の蛍光体。
【請求項14】
表面に該蛍光体とは異なる物質が存在することを特徴とする請求項1ないし13のいずれか1項に記載の蛍光体。
【請求項15】
該蛍光体とは異なる物質が金属酸化物を含むことを特徴とする請求項14に記載の蛍光体。
【請求項16】
請求項1ないし15のいずれか1項に記載の蛍光体と、液状媒体とを含有することを特徴とする蛍光体含有組成物。
【請求項17】
第1の発光体と、該第1の発光体からの光の照射によって可視光を発する第2の発光体とを備える発光装置において、
該第2の発光体が、請求項1ないし15のいずれか1項に記載の蛍光体の少なくとも1種を第1の蛍光体として含有することを特徴とする発光装置。
【請求項18】
前記第2の発光体が、前記第1の蛍光体とは発光波長の異なる少なくとも1種の蛍光体を、第2の蛍光体として含有することを特徴とする請求項17に記載の発光装置。
【請求項19】
前記第1の発光体が、420nm以上500nm以下の波長範囲に発光ピークを有し、
前記第2の発光体が、前記第2の蛍光体として、490nm以上560nm以下の波長範囲に発光ピークを有する少なくとも1種の蛍光体を含有することを特徴とする請求項18に記載の発光装置。
【請求項20】
前記第1の発光体が、300nm以上420nm以下の波長範囲に発光ピークを有し、
前記第2の発光体が、前記第2の蛍光体として、420nm以上490nm以下の波長範囲に発光ピークを有する少なくとも1種の蛍光体と、490nm以上560nm以下の波長範囲に発光ピークを有する少なくとも1種の蛍光体とを含有することを特徴とする請求項18に記載の発光装置。
【請求項21】
発光装置がさらに封止材料を備えるものであり、該封止材料としてシリコーン樹脂を用いることを特徴とする請求項17ないし20のいずれか1項に記載の発光装置。
【請求項22】
請求項17ないし21のいずれか1項に記載の発光装置を光源として備えることを特徴とする画像表示装置。
【請求項23】
請求項17ないし21のいずれか1項に記載の発光装置を光源として備えることを特徴とする照明装置。

【図1a】
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【図1b】
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【図2】
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【図3】
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【図4a】
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【図4b】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2008−50379(P2008−50379A)
【公開日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−217906(P2006−217906)
【出願日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【出願人】(000005968)三菱化学株式会社 (4,356)
【Fターム(参考)】