説明

蛍光体層転写シートおよび発光装置

【課題】簡便に蛍光体層を設けることのできる蛍光体層転写シート、および、それを用いて蛍光体層が転写されることによって、優れた製造コストで得られる発光装置を提供すること。
【解決手段】離型基材2と、離型基材2の上に形成される蛍光体層3と、蛍光体層3の上に形成される接着剤層4とを備える蛍光体層転写シート1を用いて、蛍光体層3を基板10の上に転写することによって、蛍光体層3を接着剤層4を介して基板10の上に接着する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蛍光体層転写シートおよび発光装置、詳しくは、白色発光装置として好適に用いられる発光装置およびその製造に用いられる蛍光体層転写シートに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、高エネルギーの光を発光できる発光装置として、白色発光装置が知られている。白色発光装置には、例えば、青色光を発光するLED(発光ダイオード)と、青色光を黄色光に変換できる蛍光体層とが設けられており、白色発光装置は、LEDから発光された青色光と、それが蛍光体層で変換された黄色光との混色によって、高エネルギーの白色を発光する。
【0003】
そのような白色発光装置として、例えば、上側に向かって開口される凹部が形成された実装基板において、凹部の底面に青色LEDチップを設けるとともに、蛍光体を含有する樹脂シートを、凹部の上端(開口縁部)を被覆するように設けることが提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
特許文献1に記載の樹脂シートを実装基板に設けるには、まず、実装基板の凹部の開口縁部の上面に、接着剤を積層し、次いで、蛍光体を含有する樹脂シートを、接着剤の上面に積層する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−46133号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかるに、特許文献1で提案されるような樹脂シートの設置方法では、まず、接着剤層を実装基板の上に形成し、その後、樹脂シートを接着剤層を介して実装基板の上に接着する必要がある。そのため、製造工程が増加して、煩雑となり、手間がかかるという不具合がある。
【0007】
本発明の目的は、簡便に蛍光体層を設けることのできる蛍光体層転写シート、および、それを用いて蛍光体層が転写されることによって、優れた製造コストで得られる発光装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明の蛍光体層転写シートは、離型基材と、前記離型基材の上に形成される蛍光体層と、前記蛍光体層の上に形成される接着剤層とを備えることを特徴としている。
【0009】
また、本発明の蛍光体層転写シートでは、前記蛍光体層は、互いに間隔を隔てて複数整列配置される蛍光体部を備え、前記接着剤層は、各前記蛍光体部間における前記離型基材の上面に接触していることが好適である。
【0010】
また、本発明の蛍光体層転写シートでは、前記接着剤層の屈折率が、前記蛍光体層の屈折率より高いことが好適である。
【0011】
また、本発明の発光装置は、基板と、前記基板の上に設けられる発光ダイオードと、前記基板の上に、前記発光ダイオードを被覆するように設けられる蛍光体層とを備え、前記蛍光体層は、上記した蛍光体層転写シートを用いて前記基板の上に転写されることによって、前記接着剤層を介して前記基板の上に接着されていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0012】
本発明の蛍光体層転写シートによれば、蛍光体層を基板に転写する簡易な方法によって、蛍光体層を接着剤層を介して基板に簡便に接着することができる。
【0013】
そのため、本発明の発光装置を簡便な方法で優れた製造コストで得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は、本発明の蛍光体層転写シートの一実施形態の平面図を示す。
【図2】図2は、蛍光体層転写シートを製造するための工程図であって、(a)は、離型基材を用意する工程、(b)は、蛍光体組成物を離型基材の上に塗布する工程、(c)は、蛍光体層を形成する工程、(d)は、接着剤組成物を離型基材の上に塗布する工程、(e)は、接着剤層を形成する工程を示す。
【図3】図3は、本発明の発光装置の一実施形態を製造するための工程図であって、(a)は、基板および発光ダイオードを用意する工程、(b)は、蛍光体層転写シートによって、蛍光体層を基板の上に転写する工程、(c)は、接着剤層を硬化させる工程、(d)は、レンズを蛍光体部の上に設置する工程を示す。
【図4】図4は、蛍光体層転写シートを製造するための他の工程図であって、(a)は、第1離型基材を用意する工程、(b)は、蛍光体組成物を第1離型基材の上に塗布する工程、(c)は、蛍光体層を形成する工程、(d)は、第2離型基材を用意する工程、(e)は、接着剤組成物を第2離型基材の上に塗布する工程、(f)は、接着剤層を形成する工程、(g)は、蛍光体層および接着剤層を貼り合わせる工程を示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1は、本発明の蛍光体層転写シートの一実施形態の平面図、図2は、蛍光体層転写シートを製造するための工程図、図3は、本発明の発光装置の一実施形態を製造するための工程図を示す。なお、図1において、便宜的に、紙面上下方向を前後方向、紙面左右方向を左右方向とする。
【0016】
図1および図2(e)において、この蛍光体層転写シート1は、略平板矩形状に形成されており、離型基材2と、離型基材2の上に形成される蛍光体層3と、蛍光体層3の上に形成される接着剤層4とを備えている。
【0017】
離型基材2は、平面視において、蛍光体層転写シート1の外形形状に対応するように形成されており、具体的には、略平板矩形シート形状に形成されている。
【0018】
具体的には、離型基材2を形成する材料としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレートなどの樹脂材料、例えば、鉄、アルミニウム、ステンレスなどの金属材料などが挙げられる。好ましくは、樹脂材料が挙げられる。
【0019】
また、離型基材2の表面(上面)には、蛍光体層3および接着剤層4からの離型性を高めるため、必要に応じて、シリコーン処理、長鎖アルキル処理、フッ素処理などの離型処理がなされている。
【0020】
離型基材2の厚みは、例えば、10〜1000μm、好ましくは、50〜500μmである。
【0021】
蛍光体層3は、離型基材2の上面に形成されており、互いに間隔を隔てて複数整列配置される蛍光体部5を備えている。
【0022】
各蛍光体部5は、蛍光体層転写シート1の厚み方向に直交する方向、すなわち、離型基材2の面方向、具体的には、前後方向および左右方向に互いに間隔を隔てて配置されている。図1において、蛍光体部5は、例えば、前後方向に4列、左右方向に3列のパターンで整列配置されている。
【0023】
また、蛍光体部5は、平面視略円形状に形成されている。
【0024】
蛍光体層3は、例えば、蛍光体を含有する蛍光体組成物から形成されている。
【0025】
蛍光体組成物は、好ましくは、蛍光体および樹脂を含有している。
【0026】
蛍光体としては、例えば、青色光を黄色光に変換することのできる黄色蛍光体が挙げられる。そのような蛍光体としては、例えば、複合金属酸化物や金属硫化物などに、例えば、セリウム(Ce)やユウロピウム(Eu)などの金属原子がドープされた蛍光体が挙げられる。
【0027】
具体的には、蛍光体としては、例えば、YAl12:Ce(YAG(イットリウム・アルミニウム・ガーネット):Ce)、(Y,Gd)Al12:Ce、TbAl12:Ce、CaScSi12:Ce、LuCaMg(Si,Ge)12:Ceなどのガーネット型結晶構造を有するガーネット型蛍光体、例えば、(Sr,Ba)SiO:Eu、CaSiOCl:Eu、SrSiO:Eu、LiSrSiO:Eu、CaSi:Euなどのシリケート蛍光体、例えば、CaAl1219:Mn、SrAl:Euなどのアルミネート蛍光体、例えば、ZnS:Cu,Al、CaS:Eu、CaGa:Eu、SrGa:Euなどの硫化物蛍光体、例えば、CaSi:Eu、SrSi:Eu、BaSi:Eu、Ca−α−SiAlONなどの酸窒化物蛍光体、例えば、CaAlSiN:Eu、CaSi:Euなどの窒化物蛍光体、例えば、KSiF:Mn、KTiF:Mnなどのフッ化物系蛍光体などが挙げられる。好ましくは、ガーネット型蛍光体、さらに好ましくは、YAl12:Ceが挙げられる。
【0028】
また、上記した蛍光体は、粒子状をなし、平均粒子径は、例えば、0.1〜30μm、好ましくは、0.2〜10μmである。蛍光体の平均粒子径は、粒度分布測定装置により測定される。
【0029】
蛍光体は、単独使用または2種以上併用することができる。
【0030】
蛍光体の配合割合は、例えば、蛍光体組成物に対して、例えば、1〜50重量%、好ましくは、5〜30重量%である。また、樹脂100質量部に対する蛍光体の配合割合は、例えば、1〜100質量部、好ましくは、5〜40質量部である。
【0031】
樹脂は、蛍光体を分散させるマトリックスであって、例えば、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂などの透明樹脂などが挙げられる。
【0032】
好ましくは、耐久性の観点から、シリコーン樹脂が挙げられる。
【0033】
シリコーン樹脂は、主として、シロキサン結合(−Si−O−Si−)からなる主鎖と、主鎖の硅素原子(Si)に、アルキル基(例えば、メチル基など)またはアルコキシル基(例えば、メトキシ基)などの有機基が結合した側鎖とを分子内に有している。
【0034】
具体的には、シリコーン樹脂としては、例えば、脱水縮合型シリコーンレジン、付加反応型シリコーンレジン、過酸化物硬化型シリコーンレジン、湿気硬化型シリコーンレジン、硬化型シリコーンレジンなどが挙げられる。好ましくは、付加反応型シリコーンレジンなどが挙げられる。
【0035】
シリコーン樹脂の25℃における動粘度は、例えば、10〜30mm/sである。
【0036】
樹脂は、単独使用または2種以上併用することができる。
【0037】
樹脂の配合割合は、蛍光体組成物に対して、例えば、50〜99質量%、好ましくは、70〜95質量%である。
【0038】
蛍光体組成物は、蛍光体および樹脂を上記した配合割合で配合し、攪拌混合することにより、調製される。
【0039】
蛍光体層3の屈折率n1は、例えば、1.30〜1.50、好ましくは、1.35〜1.45である。なお、蛍光体層3の屈折率n1は、JIS K 7142の記載に準拠して測定される。
【0040】
蛍光体層3の厚みは、例えば、20〜500μm、好ましくは、50〜300μmである。
【0041】
接着剤層4は、蛍光体層転写シート1の外形形状に対応するように形成され、具体的には、離型基材2の周縁部を露出するように形成されている。つまり、接着剤層4は、蛍光体層3の表面、および、蛍光体層3から露出する離型基材2の表面(周縁部を除く)を被覆するように、略平板シート状に形成されている。具体的には、接着剤層4は、各蛍光体部5の表面(上面および周側面)と、各蛍光体部5間における離型基材2の表面(上面)とに接触している。
【0042】
接着剤層4としては、例えば、エポキシ接着剤組成物、シリコーン接着剤組成物、ウレタン接着剤組成物、アクリル接着剤組成物などの接着剤組成物から形成されている。接着剤組成物としては、好ましくは、エポキシ接着剤組成物、シリコーン接着剤組成物が挙げられ、さらに好ましくは、エポキシ接着剤組成物が挙げられる。
【0043】
エポキシ接着剤組成物は、例えば、エポキシ樹脂と硬化剤とを含有している。
【0044】
エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノール型エポキシ樹脂(例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、水素添加ビスフェノールA型エポキシ樹脂など)、ノボラック型エポキシ樹脂(例えば、フェノールノボラック型エポキシ樹脂など)などの芳香族系エポキシ樹脂、例えば、トリエポキシプロピルイソシアヌレート(トリグリシジルイソシアヌレート)、ヒダントインエポキシ樹脂などの含窒素環エポキシ樹脂、例えば、脂肪族系エポキシ樹脂、例えば、ジシクロ環型エポキシ樹脂などの脂環式エポキシ樹脂、例えば、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテルなどのグリシジルエーテル型エポキシ樹脂、例えば、トリアジン系エポキシ樹脂などが挙げられる。
【0045】
エポキシ樹脂のエポキシ当量は、例えば、100〜1200g/eqiv.である。エポキシ当量は、JISK7236(2001年)によって測定される。
【0046】
また、エポキシ樹脂の25℃における粘度は、例えば、800〜6000mPa・sである。
【0047】
これらエポキシ樹脂は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0048】
硬化剤は、加熱によりエポキシ樹脂を硬化させることができる潜在性硬化剤(エポキシ樹脂硬化剤)であって、例えば、イミダゾール化合物、アミン化合物、酸無水物化合物、アミド化合物、ヒドラジド化合物、イミダゾリン化合物などが挙げられる。
【0049】
イミダゾール化合物としては、例えば、2−フェニルイミダゾール、2−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾールなどが挙げられる。
【0050】
アミン化合物としては、例えば、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミンなどのポリアミン、または、これらのアミンアダクトなど、例えば、メタフェニレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルホンなどが挙げられる。
【0051】
酸無水物化合物としては、例えば、無水フタル酸、無水マレイン酸、テトラヒドロフタル酸無水物、ヘキサヒドロフタル酸無水物、4−メチル−ヘキサヒドロフタル酸無水物、メチルナジック酸無水物、ピロメリット酸無水物、ドデセニルコハク酸無水物、ジクロロコハク酸無水物、ベンゾフェノンテトラカルボン酸無水物、クロレンディック酸無水物などが挙げられる。
【0052】
アミド化合物としては、例えば、ジシアンジアミド、ポリアミドなどが挙げられる。
【0053】
ヒドラジド化合物としては、例えば、アジピン酸ジヒドラジドなどが挙げられる。
【0054】
イミダゾリン化合物としては、例えば、メチルイミダゾリン、2−エチル−4−メチルイミダゾリン、エチルイミダゾリン、イソプロピルイミダゾリン、2,4−ジメチルイミダゾリン、フェニルイミダゾリン、ウンデシルイミダゾリン、ヘプタデシルイミダゾリン、2−フェニル−4−メチルイミダゾリンなどが挙げられる。
【0055】
これら硬化剤は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0056】
硬化剤の配合割合は、硬化剤とエポキシ樹脂との当量比にもよるが、エポキシ樹脂100重量部に対して、例えば、1〜30重量部である。
【0057】
エポキシ接着剤組成物は、上記したエポキシ樹脂および硬化剤を上記した配合割合で配合し、攪拌混合することにより、調製される。
【0058】
接着剤層4の屈折率n2は、例えば、1.35〜1.65、好ましくは、1.41〜1.58である。
【0059】
また、接着剤層4の屈折率n2は、蛍光体層3の屈折率n1より高く、具体的には、例えば、0.05〜0.30高く、好ましくは、0.10〜0.20高くする。
【0060】
接着剤層4の屈折率n2が蛍光体層3の屈折率n1より高ければ、発光装置18(後述)から発光される光の取出効率を向上させることができる。
【0061】
なお、接着剤層4の屈折率n2は、JIS K 7142の記載に準拠して測定される。
【0062】
接着剤層4の厚みT1、つまり、蛍光体層3の上面から蛍光体層転写シート1の上面までの高さT1は、例えば、1〜1000μm、好ましくは、100〜100μmである。
【0063】
そして、この蛍光体層転写シート1を製造するには、まず、図2(a)に示すように、離型基材2を用意する。
【0064】
次いで、図2(b)に示すように、蛍光体組成物8を離型基材2の上に塗布する。なお、蛍光体組成物8には、必要により、粘度を調製するため、例えば、トルエンなどの溶媒を適宜の割合で配合することもできる。
【0065】
蛍光体組成物8の塗布では、例えば、印刷法などが用いられる。印刷法では、例えば、蛍光体部5の反転パターンに形成されたスクリーン6を、離型基材2の上に載置し、次いで、蛍光体組成物8をスキージ7によってスクリーン6を介して印刷する。この印刷法では、各蛍光体部5の上面が、スクリーン6の上端面と面一となることにより、平坦となるので、蛍光体組成物8を均一かつ簡便に塗布することができる。
【0066】
その後、必要により、溶媒を加熱により除去した後、スクリーン6を離型基材2から引き上げることによって、図2(c)に示すように、複数の蛍光体部5を備える蛍光体層3を形成する。
【0067】
次いで、図2(d)に示すように、接着剤組成物9を離型基材2の上に、蛍光体層3を被覆するように、塗布する。なお、接着剤組成物9には、必要により、粘度を調製するため、例えば、カルビトールアセテートなどの溶媒を適宜の割合で配合することもできる。
【0068】
接着剤組成物9の塗布では、例えば、印刷法、塗工法などが用いられ、好ましくは、印刷法が用いられる。印刷法では、例えば、離型基材2の周縁部に枠部材21を載置し、次いで、接着剤組成物9をスキージ7によって印刷する。この印刷法では、接着剤層4の上面が、枠部材21の上端面と面一となることにより、平坦となるので、接着剤組成物9を均一かつ簡便に塗布することができる。
【0069】
その後、必要により、溶媒を加熱により除去した後、枠部材21を離型基材2から引き上げることによって、図2(e)に示すように、接着剤層4を形成する。
【0070】
これにより、蛍光体層転写シート1を得ることができる。
【0071】
次に、この蛍光体層転写シート1を用いて発光装置18を製造する方法について、図3を参照して説明する。
【0072】
この方法では、まず、図3(a)に示すように、基板10と、それの上に設けられる発光ダイオード11とを用意する。
【0073】
基板10は、ベース基板13、ベース基板13の上面に形成される導体パターン14、および、ベース基板13の上面から上方に立設されるハウジング15を備えている。
【0074】
ベース基板13は、平面視略矩形平板状に形成されており、例えば、ポリイミド樹脂などの公知の絶縁樹脂から形成されている。
【0075】
導体パターン14は、発光ダイオード11の端子と、発光ダイオード11に電気を供給するための電源の端子(図示せず)とを電気的に接続している。導体パターン14は、例えば、銅、鉄などの導体材料から形成されている。
【0076】
ハウジング15は、平面視において、次に説明する発光ダイオード11を1つずつ囲むように配置され、上方に向かって次第に幅狭となる断面略台形状に形成されている。これにより、ハウジング15は、後述する発光ダイオード11が収容される領域を仕切っている。また、ハウジング15は、発光ダイオード11が複数整列配置されることから、平面視略格子形状に形成されている。
【0077】
なお、ハウジング15により仕切られる領域は、平面視において、蛍光体部5よりやや小さい略円形状に形成されている。
【0078】
発光ダイオード11としては、例えば、主として青色光を発光する青色発光ダイオード(青色LED)などが挙げられる。
【0079】
発光ダイオード11は、ベース基板13の上に複数設けられている。各発光ダイオード11は、ハウジング15によって仕切られる領域内に設けられ、導体パターン14とワイヤ16を介して電気的に接続(ワイヤボンディング)されている。
【0080】
なお、ベース基板13の上には、ハウジング15によって仕切られる領域に封止層12充填されており、これによって、発光ダイオード11が封止されている。封止層12は、公知の封止樹脂から形成され、その上面が、ハウジング15の上面と厚み方向において面一に形成されている。
【0081】
次いで、この方法では、図3(b)に示すように、上記の蛍光体層転写シート1を用いて、蛍光体層3を基板10の上に転写する。
【0082】
具体的には、蛍光体層転写シート1の接着剤層4の表面(図3(b)における下面(裏面)で、図2(e)における上面)を、基板10のハウジング15の表面(上面)および封止層12の表面(上面)に当接させる。
【0083】
これにより、蛍光体層3が、接着剤層4を介して、ハウジング15および封止層12の上面に貼着される。
【0084】
また、蛍光体層3は、発光ダイオード11を被覆するように設置される。具体的には、蛍光体部5が、平面視において、ハウジング15により仕切られる領域を含むように、蛍光体層3が設置される。
【0085】
次いで、図3(b)の仮想線で示すように、離型基材2を、蛍光体層3の表面(上面)および各蛍光体部5間から露出する接着剤層4の表面(上面)から、剥離する。
【0086】
その後、図3(c)に示すように、接着剤層4を加熱により硬化させる。加熱温度は、例えば、100〜150℃である。
【0087】
これによって、蛍光体層3がハウジング15および封止層12の上面に接着剤層4を介して接着される。
【0088】
なお、接着剤層4は、上記した硬化により、主に厚み方向に収縮する。硬化後の接着剤層4の厚み(蛍光体層3の下面からハウジング15および封止層12の上面までの高さ)T2は、例えば、1〜1000μm、好ましくは、15〜80μmである。
【0089】
その後、図3(d)に示すように、レンズ17を、各蛍光体部5の上に、設置する。レンズ17は、略半球形状(略ドーム形状)をなし、各発光ダイオード11を封止する封止層12の上を被覆するように、公知の接着剤層(図示しない)を介して設置される。レンズ17は、例えば、シリコーン樹脂などの透明樹脂から形成されている。
【0090】
そして、上記した蛍光体層転写シート1によれば、蛍光体層3を基板10に転写する簡易な方法によって、蛍光体層3を接着剤層4を介して基板10に簡便に接着することができる。
【0091】
そのため、発光装置18を簡便な方法で、優れた製造コストで得ることができる。
【0092】
図4は、蛍光体層転写シートを製造するための他の工程図を示す。なお、図4において、上記した各部に対応する部材については、同一の参照符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0093】
上記した図2の蛍光体層転写シート1の製造方法では、離型基材2の上に、蛍光体層3と接着剤層4とを順次積層しているが、例えば、図4に示すように、蛍光体層3と接着剤層4とを、2つの離型基材の上に、それぞれ形成し、その後、蛍光体層3と接着剤層4とを貼り合わせることもできる。
【0094】
この方法では、まず、図4(a)に示すように、第1離型基材19を用意する。第1離型基材19は、上記した離型基材2と同様である。
【0095】
次いで、図4(b)に示すように、蛍光体組成物8を第1離型基材19の上に塗布し、続いて、必要により、溶媒を加熱により除去した後、図4(c)に示すように、蛍光体層3を形成する。
【0096】
別途、図4(d)に示すように、第2離型基材20を用意する。第2離型基材20は、上記した離型基材2と同様である。
【0097】
次いで、図4(e)に示すように、接着剤組成物9を第2離型基材20の上に塗布し、続いて、必要により、溶媒を加熱により除去した後、図4(f)に示すように、接着剤層4を第2離型基材20の上に形成する。
【0098】
接着剤層4は、周縁部を除く第2離型基材20の上面全面に形成する。
【0099】
その後、図4(g)に示すように、蛍光体層3と接着剤層4とを貼り合わせる。
【0100】
これにより、蛍光体層3と、その表面(上面)に形成される第1離型基材19と、接着剤層4と、その裏面(下面)に形成される第2離型基材20とを備える蛍光体層転写シート1を形成する。
【0101】
その後、蛍光体層転写シート1において、第2離型基材20を接着剤層4の裏面(下面)から剥離した後、この蛍光体層転写シート1を用いて、蛍光体層3を基板10の上に転写する。
【0102】
なお、上記した説明では、蛍光体層3は、複数の蛍光体部5を備えているが、例えば、図示しないが、1つの蛍光体部5のみを備えることもできる。
【0103】
好ましくは、蛍光体層3は、互いに間隔を隔てて複数整列配置される蛍光体部5を備えている。
【0104】
このような配置によれば、ハウジング15によって仕切られる各領域を互いに独立した蛍光体部5で被覆することができる。
【0105】
そして、各蛍光体部5は、上記各領域を連続して被覆するように形成される場合に比べて、必要箇所に個別的に形成されるので、各蛍光体部5の蛍光体の濃度を、連続して形成される蛍光体層3における蛍光体の濃度に比べて、均一にすることできるとともに、厚みを均一にすることもできる。
【0106】
そのため、均一な発光を達成することができる。その結果、発光装置18の発光試験を不要とすることができ、製造コストを低減することができる。
【0107】
さらに、接着剤層4は、間隔を隔てて配置される各蛍光体部5間における離型基材2の上面に接触するので、蛍光体層転写シート1を用いて蛍光体層3を転写すると、各蛍光体部5間における接着剤層4が、発光ダイオード11を仕切るハウジング15の上面に接着する。そのため、蛍光体層転写シート1と基板10との接着性を向上させることができる。その結果、蛍光体層3によって、発光ダイオード11を確実に被覆して、白色光の取出効率を向上させることができる。
【0108】
また、上記した説明では、基板10に封止層12を設けているが、例えば、図示しないが、封止層12を設けることなく、発光ダイオード11が収容される領域を中空形状にすることもできる。
【0109】
また、上記した説明では、発光装置18にレンズ17を設けているが、例えば、図示しないが、レンズ17を設けることなく、発光装置18を構成することもできる。
【0110】
また、上記した説明では、発光ダイオード11をワイヤ16を介して導体パターン14と電気的に接続(ワイヤボンディング)しているが、例えば、図示しないが、発光ダイオード11の下面に端子を形成し、かかる端子と、導体パターン14の端子とを、ワイヤ16を用いることなく、はんだなどによって電気的に接続(フリップチップボンディング)することもできる。
【実施例】
【0111】
以下に実施例を示し、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は、何ら実施例に限定されない。
【0112】
実施例1
(蛍光体層転写シートの作製)
ポリエチレンテレフタレートからなる厚み50μmの離型基材を用意した(図2(a)参照)。
【0113】
また、YAl12:Ceからなる蛍光体粒子(球形状、平均粒子径8μm)26質量部、および、シリコーン樹脂(付加反応型シリコーンレジン、動粘度(25℃)20mm/s、旭化成ワッカーシリコーン社製)74質量部を配合して、均一攪拌することにより、蛍光体組成物を調製した。
【0114】
次いで、調製した蛍光体組成物を離型基材の上に印刷法によって塗布した(図2(b)参照)。印刷法では、まず、上記したパターンのスクリーンを離型基材の上に載置し、次いで、蛍光体組成物をスキージによってスクリーンを介して印刷した。その後、スクリーンを離型基材から引き上げ、100℃で乾燥させることによって、複数整列配置された蛍光体部を備える、厚み75μmの蛍光体層を形成した(図2(c)参照)。
【0115】
別途、エポキシ樹脂(ビスフェノールA型エポキシ樹脂、エポキシ当量600g/eqiv.、粘度(25℃)2000mPa・s、東都化成社製)50質量部、および、硬化剤(酸無水物化合物、新日本理化社製)30質量部を配合して、均一攪拌することにより、エポキシ接着剤組成物を調製した。
【0116】
次いで、離型基材の周縁部に枠部材を載置し、次いで、調製したエポキシ接着剤組成物をスキージによって印刷した(図2(d)参照)。その後、枠部材を離型基材から引き上げ、100℃で乾燥させることによって、厚み(T1)67μmの接着剤層を形成した(図2(e)参照)。
【0117】
これにより、蛍光体層転写シートを作製した(図1参照)。
【0118】
(発光装置の製造)
ベース基板、導体パターンおよびハウジングを備える基板と、青色発光ダイオードとを用意した(図3(a)参照)。なお、青色発光ダイオードを、ワイヤを介して導体パターンとワイヤボンディングした後、封止層によって封止した。
【0119】
次いで、上記で製造した蛍光体層転写シートを用いて、蛍光体層を基板の上に転写した(図3(b)参照)。
【0120】
すなわち、蛍光体層転写シートの接着剤層の表面を、基板のハウジングの上面および封止層の上面に当接させることにより、蛍光体層を、接着剤層を介して、ハウジングおよび封止層の上面に、青色発光ダイオードを被覆するように貼着した。
【0121】
次いで、離型基材を剥離した(図3(b)の仮想線参照)。
【0122】
その後、接着剤層を150℃の加熱によって硬化させた(図3(c)参照)。硬化後の接着剤層の厚み(T2)は40μmであった。
【0123】
その後、ドーム形状のレンズを接着剤層(シリコーン系)を介して設置した。これにより、発光装置を製造した。
【0124】
(評価)
(屈折率の測定)
蛍光体層転写シートにおける蛍光体層の屈折率(n1)および接着剤層の屈折率(n2)を測定したところ、それぞれ、1.41および1.58であった。屈折率は、JIS K 7142の記載に準拠して測定した。
【0125】
【表1】

【符号の説明】
【0126】
1 蛍光体層転写シート
2 離型基材
3 蛍光体層
4 接着剤層
5 蛍光体部
10 基板
11 発光ダイオード
18 発光装置
n1 蛍光体層の屈折率
n2 接着剤層の屈折率

【特許請求の範囲】
【請求項1】
離型基材と、
前記離型基材の上に形成される蛍光体層と、
前記蛍光体層の上に形成される接着剤層と
を備えることを特徴とする、蛍光体層転写シート。
【請求項2】
前記蛍光体層は、互いに間隔を隔てて複数整列配置される蛍光体部を備え、
前記接着剤層は、各前記蛍光体部間における前記離型基材の上面に接触していることを特徴とする、請求項1に記載の蛍光体層転写シート。
【請求項3】
前記接着剤層の屈折率が、前記蛍光体層の屈折率より高いことを特徴とする、請求項1または2に記載の蛍光体層転写シート。
【請求項4】
基板と、
前記基板の上に設けられる発光ダイオードと、
前記基板の上に、前記発光ダイオードを被覆するように設けられる蛍光体層とを備え、
前記蛍光体層は、請求項1〜3のいずれか一項に記載の蛍光体層転写シートを用いて前記基板の上に転写されることによって、前記接着剤層を介して前記基板の上に接着されていることを特徴とする、発光装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−15174(P2012−15174A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−147758(P2010−147758)
【出願日】平成22年6月29日(2010.6.29)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】