説明

蛍光体材料およびその製造方法

【課題】発光強度をより一層向上させた新規な蛍光体材料を提供することを主な目的とする。
【解決手段】金属酸化物のナノチューブ或いはナノワイヤからなり、金属成分の一部が希土類元素により置換されている蛍光体材料(但し、金属酸化物中の金属成分が希土類元素
と同一である場合を除く)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ランプ製造材料、ディスプレー製造材料などとして有用な蛍光体材料に関する。
【背景技術】
【0002】
希土類元素は、その電子構造に由来して、特異な発光特性を有しているので、酸化物などの形態で、発光乃至蛍光体材料として使用されている。これらの公知の蛍光体材料は、通常マイクロメータレベルの粒度を有している。近年、電子部品に対しては、持続的に小型化と高性能化とが求められており、それに伴って、蛍光体材料のさらなる微細化が必要となってきた。例えば、特許文献1は、より微細な蛍光体材料として、外径約5〜7nm、内径約2〜4nm、長さ10nm以上のナノチューブ構造を有する希土類元素含有複合酸化物、格子定数5〜7の六方構造を有する希土類元素含有複合酸化物および層間距離3〜6nmの層状構造を有する希土類元素含有複合酸化物、ならびにそれらの製造方法を開示している。
【0003】
しかしながら、特許文献1に記載されたナノメータサイズの蛍光体材料は、公知の材料に比して、発光特性が十分に向上したとは言えず、さらなる改善が必要である。
【0004】
また、類似の蛍光体材料の製造を開示する他の論文の条件を用いて、ナノチューブならびにナノワイヤ蛍光体を合成したが、その蛍光強度は、非常に微弱であり、実用には供し難いなもであった。
【特許文献1】特開2004−99383号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って、本発明は、発光強度をより一層向上させた新規な蛍光体材料を提供することを主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、公知の蛍光体材料の問題点に留意しつつ、研究を進めた結果、特定の金属酸化物からなるナノチューブ或いはナノワイヤにおいて、金属成分の一部を付活剤としての希土類元素により置換した材料が、“ナノメータサイズの蛍光体は蛍光強度が弱い”という常識を覆して、汎用市販蛍光体の蛍光強度を凌駕する優れた蛍光特性を発揮することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明は、下記の蛍光体材料とその製造方法を提供する。
1.金属酸化物のナノチューブ或いはナノワイヤからなり、金属成分の一部が希土類元素により置換されている蛍光体材料(但し、金属酸化物中の金属成分が希土類元素と同一で
ある場合を除く)。
2.金属酸化物が、アルミナ、ジルコニア、チタニア、チタネート、マグネシア、ランタン酸化物、ガドリニウム酸化物、イットリウム酸化物、スカンジウム酸化物、シリカ、ジルコニア、酸化カルシウム、酸化ガリウム、酸化マンガン、酸化ストロンチウム、酸化バリウム、酸化バナジウム、酸化クロム、酸化マンガン、酸化インジウム、酸化スズ、酸化カドミウム、酸化ニオブ、酸化タンタル、酸化モリブデン、酸化タングステンから選ばれた少なくとも1種類の酸化物からなる上記項1に記載の蛍光体材料。
3.希土類元素が、セリウム、プラセオジム、ネオジム、サマリウム、ユウロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウムおよびイッテルビウムから選ばれた少なくとも一種である上記項1または2に記載の蛍光体材料。
4.金属酸化物ナノチューブの直径が20〜1100nm、内径が15〜1000nmである上記項1〜3のいずれかに記載の蛍光体材料。
5.金属酸化物ナノワイヤの直径が20〜1000nmである上記項1〜3のいずれかに記載の蛍光体材料。
6.金属酸化物のナノチューブからなり、金属成分の一部が希土類元素により置換されている蛍光体材料の製造方法であって、下記の工程を備えたことを特徴とする方法:
母結晶となる金属酸化物源および置換成分(付活剤)としての希土類元素源の水溶液を調製する工程;
得られた水溶液に対し、非イオン性界面活性剤を添加する工程;
上記の様にして調製した水溶液にアルカリ金属水酸化物水溶液あるいはアンモニア水溶液を加えて、そのpHを9〜13.5に調整する工程;
pH調整後の水溶液を容器に収容し、この容器を水熱処理用金属容器内に密封状態で保持しつつ、80〜250℃で水熱処理する工程;
水熱処理終了の反応液を遠心分離処理に供して、容器中の生成物を沈殿させ、上澄み液を廃棄した後、再度蒸留水を容器に加えて攪拌し、再度遠心分離処理を行って、生成物を沈殿させる操作を2回以上行うことにより、生成物を洗浄する工程;および
得られたナノチューブ状の生成物を酸素気流中、空気中、あるいは付活剤の価数を減じる必要性があるときは還元雰囲気中で、500〜1200℃で加熱処理する工程。
7.金属酸化物のナノチューブからなり、金属成分の一部が希土類元素により置換されている蛍光体材料の製造方法であって、下記の工程を備えたことを特徴とする方法:
母結晶となる金属酸化物源ナノ粒子、置換成分(付活剤)としての希土類元素源ナノ粒子および非イオン性界面活性剤を含む分散液を調製する工程;
上記の様にして調製した分散液にアルカリ金属水酸化物水溶液あるいはアンモニア水溶液を加えて、そのpHを9〜13.5に調整する工程;
pH調整後の分散液を容器に収容し、この容器を水熱処理用金属容器内に密封状態で保持しつつ、80〜250℃で水熱処理する工程;
水熱処理終了の反応液を遠心分離処理に供して、容器中の生成物を沈殿させ、上澄み液を廃棄した後、再度蒸留水を容器に加えて攪拌し、再度遠心分離処理を行って、生成物を沈殿させる操作を2回以上行うことにより、生成物を洗浄する工程;および
得られたナノチューブ状の生成物を酸素気流中、空気中、あるいは付活剤の価数を減じる必要性があるときは還元雰囲気中で、500〜1200℃で加熱処理する工程。
8.金属酸化物のナノワイヤからなり、金属成分の一部が希土類元素により置換されている蛍光体材料の製造方法であって、下記の工程を備えたことを特徴とする方法:
母結晶となる金属酸化物源および置換成分(付活剤)としての希土類元素源の水溶液を調製する工程;
上記の様にして調製した水溶液にアルカリ金属水酸化物水溶液あるいはアンモニア水溶液を加えて、そのpHを9〜13.5に調整する工程;
pH調整後の水溶液を容器に収容し、この容器を水熱処理用金属容器内に密封状態で保持しつつ、80〜250℃で水熱処理する工程;
水熱処理終了の反応液を遠心分離処理に供して、容器中の生成物を沈殿させ、上澄み液を廃棄した後、再度蒸留水を容器に加えて攪拌し、再度遠心分離処理を行って、生成物を沈殿させる操作を2回以上行うことにより、生成物を洗浄する工程;および
得られたナノワイヤ状の生成物を酸素気流中、空気中、あるいは付活剤の価数を減じる必要性があるときは還元雰囲気中で、500〜1200℃で加熱処理する工程。
9.金属酸化物のナノワイヤからなり、金属成分の一部が希土類元素により置換されている蛍光体材料の製造方法であって、下記の工程を備えたことを特徴とする方法:
母結晶となる金属酸化物源ナノ粒子および置換成分(付活剤)としての希土類元素源ナノ粒子を含む分散液を調製する工程;
上記の様にして調製した分散液にアルカリ金属水酸化物水溶液あるいはアンモニア水溶液を加えて、そのpHを9〜13.5に調整する工程;
pH調整後の分散液を容器に収容し、この容器を水熱処理用金属容器内に密封状態で保持しつつ、80〜250℃で水熱処理する工程;
水熱処理終了の反応液を遠心分離処理に供して、容器中の生成物を沈殿させ、上澄み液を廃棄した後、再度蒸留水を容器に加えて攪拌し、再度遠心分離処理を行って、生成物を沈殿させる操作を2回以上行うことにより、生成物を洗浄する工程;および
得られたナノワイヤ状の生成物を酸素気流中、空気中、あるいは付活剤の価数を減じる必要性があるときは還元雰囲気中で、500〜1200℃で加熱処理する工程。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、蛍光体材料を所定寸法範囲内のナノチューブ形状或いはナノロッド形状とすることにより、その光学的効果を著しく改善させることができる。すなわち、本発明による蛍光体材料は、公知のナノサイズの蛍光体材料に比して、最大限で10倍以上の発光強度を発揮する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明による蛍光体材料は、金属酸化物のナノチューブ或いはナノワイヤを母結晶乃至骨格構造としてなり、その金属イオンの一部が付活イオンとしての希土類元素により格子点置換された材料である。
【0010】
ナノチューブ或いはナノワイヤの母結晶を構成する金属酸化物は、アルミナ、ジルコニア、チタニア、チタネート、マグネシア、ランタン酸化物、ガドリニウム酸化物、イットリウム酸化物、スカンジウム酸化物、シリカ、ジルコニア、酸化カルシウム、酸化ガリウム、酸化マンガン、酸化ストロンチウム、酸化バリウム、酸化バナジウム、酸化クロム、酸化マンガン、酸化インジウム、酸化スズ、酸化カドミウム、酸化ニオブ、酸化タンタル、酸化モリブデン、酸化タングステンから選ばれた少なくとも1種類からなっている。
【0011】
金属酸化物母結晶中の金属成分の一部を置換する希土類元素は、セリウム、プラセオジム、ネオジム、サマリウム、ユウロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウムおよびイッテルビウムから選ばれた少なくとも1種である。但し、金属酸化物が希土類元素の酸化物である場合或いは希土類元素の酸化物を含む場合には、同種の希土類元素は使用しない。
【0012】
本発明による蛍光体材料においては、金属酸化物のナノチューブ或いはナノワイヤ中の金属成分の0.5〜25mol%程度が希土類元素により置換されていることが好ましい。
【0013】
本発明によるナノチューブ状およびナノワイヤ状の蛍光体材料は、それぞれ以下の方法により、製造することができる。
ナノチューブ状蛍光体材料の製造方法(I)
母結晶となる金属酸化物および置換成分(付活剤)としての希土類元素は、酸化物、金属、水溶性の塩などを出発原料とする。水溶性の塩としては、硝酸塩、硫酸塩、塩化物塩、アンモニウム塩などが例示される。出発原料が、水溶性の塩である場合には、そのまま水に溶解させる。また、酸化物、金属などである場合には、酸或いはアルカリを用いて水に完全に溶解させる。水溶液の濃度は、出発原料である水溶性塩の溶解限度を上限として、適宜選択することができる。金属酸化物源となる水溶性塩と希土類元素源となる水溶性塩との割合は、最終生成物中の希土類元素に依る置換量が、0.5〜25mol%程度となる様に調整すればよい。得られた水溶液には、非イオン性界面活性剤を母結晶原料の5wt%以上、より好ましくは20〜40%程度を添加する。非イオン性界面活性剤としては、ポリエチレン
グリコール型と多価アルコール型がある。発光特性に優れた特定サイズの蛍光体材料を製造するためには、ポリエチレングリコール型で重合度100〜30000程度のものが好ましい。
【0014】
次いで、上記の様にして調製した水溶液にアルカリ金属水酸化物水溶液あるいはアンモニア水溶液を加えて、そのpHを9〜13.5程度、より好ましくは、12〜13程度に調整する
。pH調整後の水溶液を容器(例えば、フッ素系高分子製の容器)に入れ、容器を水熱処理
用金属容器中に密封で保持しつつ、80〜250℃程度、より好ましくは100〜180℃程度で、
水熱処理する。水熱処理は、ナノチューブの直径が20〜1100nm程度で内径が15〜1000nm程度、より好ましくは、直径が20〜100nm程度で内径が15〜85nm程度となるまで継続すれば
よい。ナノチューブの長さは、かなり大きなバラツキ(通常50〜2000nm程度)があるが、蛍光体材料としての発光特性には、殆ど影響しない。
【0015】
水熱処理終了後、遠心分離処理を行って、容器中の生成物を沈殿させ、上澄み液を廃棄した後、再度蒸留水を容器に加えて攪拌し、再度遠心分離処理を行って、生成物を沈殿させる。この沈殿操作を少なくとも1回より好ましくは2回以上行うことにより、生成物を洗浄する。
【0016】
この様にして得られたナノチューブの結晶を酸素気流中で、或いは空気中で、或いは付活剤の価数を減じる必要性があるときは還元雰囲気(例えば、H2が3%、N2が97%の水素含有窒素ガス)中で、500〜1200℃程度で、より好ましくは800〜1000℃程度で加熱処理する

【0017】
かくして、所望の発光特性を備えたナノチューブ状の蛍光体材料が得られる。
ナノチューブ状蛍光体材料の製造方法(II)
本方法によるナノチューブ状蛍光体材料の製造に際しては、母結晶となる金属酸化物源および置換成分(付活剤)としての希土類元素源としては、金属ナノ粒子或いは金属酸化物ナノ粒子を使用する。金属酸化物源となるナノ粒子(2〜100nm程度、より好ましくは10
〜30nm程度)と希土類元素源となるナノ粒子(粒径は、上記と同様)との割合は、最終生成
物中の希土類元素による置換量が、0.5〜25mol%程度となる様に調整すればよい。これらのナノ粒子を水に入れ、さらに非イオン性界面活性剤を母結晶原料の5wt%以上、より好ましくは20〜40%程度を添加する。非イオン性界面活性剤としては、ポリエチレングリコー
ル型と多価アルコール型がある。発光特性に優れた特定サイズの蛍光体材料を製造するためには、ポリエチレングリコール型で重合度100〜30000程度のものが好ましい。
【0018】
次いで、上記の様にして調製した分散液乃至懸濁液にアルカリ金属水酸化物水溶液あるいはアンモニア水溶液を加えて、そのpHを9〜13.5程度、より好ましくは、12〜13程度
に調整する。pH調整後の原料含有液を容器(例えば、フッ素系高分子製の容器)に入れ、
容器を水熱処理用金属容器中に密封で保持しつつ、80〜250℃程度、より好ましくは100〜180℃程度で、水熱処理する。水熱処理は、ナノチューブの直径が20〜1100nm程度で内径
が15〜1000nm程度、より好ましくは、直径が20〜100nm程度で内径が15〜85nm程度となる
まで継続すればよい。ナノチューブの長さは、かなり大きなバラツキ(通常50〜2000nm程
度)があるが、蛍光体材料としての発光特性には、殆ど影響しない。
【0019】
水熱処理終了後、遠心分離処理を行って、容器中の生成物を沈殿させ、上澄み液を廃棄した後、再度蒸留水を容器に加えて攪拌し、再度遠心分離処理を行って、生成物を沈殿させる。この沈殿操作を少なくとも1回より好ましくは2回以上行うことにより、生成物を洗浄する。
【0020】
この様にして得られたナノチューブの結晶を酸素気流中で、或いは空気中で、或いは付活剤の価数を減じる必要性があるときは還元雰囲気(例えば、H2が3%、N2が97%の水素含有窒素ガス)中で、500〜1200℃程度で、より好ましくは800〜1000℃程度で加熱処理する

【0021】
かくして、所望の発光特性を備えたナノチューブ状の蛍光体材料が得られる。
ナノワイヤ状蛍光体材料の製造方法(I)
本方法によるナノワイヤ状の蛍光体材料の製造は、非イオン性界面活性剤を加えることなく、原料水溶液を水熱処理する以外の点では、上記のナノワイヤ状の蛍光体材料の製造方法(II)と同様にして行うことができる。
【0022】
すなわち、母結晶となる金属酸化物および置換成分(付活剤)としての希土類元素は、酸化物、金属、水溶性の塩などを出発原料とする。出発原料が、酸化物、金属などである場合には、酸或いはアルカリを用いて水に完全に溶解させる。
【0023】
次いで、上記の様にして調製した水溶液にアルカリ金属水酸化物水溶液あるいはアンモニア水溶液を加えて、そのpHを9〜13.5程度、より好ましくは、12〜13程度に調整する
。pH調整後の水溶液を容器(例えば、フッ素系高分子製の容器)に入れ、容器を水熱処理
用金属容器中に密封で保持しつつ、80〜250℃程度、より好ましくは100〜180℃程度で、
水熱処理する。水熱処理は、ナノワイヤの直径が20〜1100nm程度、より好ましくは、直径が20〜100nm程度となるまで継続すればよい。ナノワイヤの長さは、かなり大きなバラツ
キ(50〜2000nm程度)があるが、蛍光体材料としての発光特性には、殆ど影響しない。
【0024】
水熱処理終了後、遠心分離処理を行って、容器中の生成物を沈殿させ、上澄み液を廃棄した後、再度蒸留水を容器に加えて攪拌し、再度遠心分離処理を行って、生成物を沈殿させる。この沈殿操作を少なくとも1回、より好ましく2回以上行うことにより、生成物を洗浄する。
【0025】
この様にして得られたナノワイヤの結晶を酸素気流中で、或いは空気中で、或いは付活剤の価数を減じる必要性があるときは還元雰囲気(例えば、H2が3%、N2が97%の水素含有窒素ガス)中で、500〜1200℃程度で、より好ましくは800〜1000℃程度で加熱処理する。
【0026】
かくして、所望の発光特性を備えたナノワイヤ状の蛍光体材料が得られる。
ナノワイヤ状蛍光体材料の製造方法(II)
本方法によるナノワイヤ状の蛍光体材料の製造は、非イオン性界面活性剤を加えることなく、ナノ粒子原料含有液を水熱処理する以外の点では、上記のナノワイヤ状の蛍光体材料の製造方法(I)と同様にして行うことができる。
【0027】
すなわち、母結晶となる金属酸化物源および置換成分(付活剤)としての希土類元素源としては、金属ナノ粒子或いは金属酸化物ナノ粒子を使用する。金属酸化物源となるナノ粒子(2〜100nm程度、より好ましくは10〜30nm程度)と希土類元素源となるナノ粒子(粒径
は、上記と同様)との割合は、最終生成物中の希土類元素による置換量が、0.5〜25mol%
程度となる様に調整すればよい。これらのナノ粒子を水に入れ、得られたナノ粒子含有分散液乃至懸濁液にアルカリ金属水酸化物水溶液あるいはアンモニア水溶液を加えて、そのpHを9〜13.5程度、より好ましくは、12〜13程度に調整する。pH調整後の分散液を容器(例えば、フッ素系高分子製の容器)に入れ、容器を水熱処理用金属容器中に密封で保持しつつ、80〜250℃程度、より好ましくは100〜180℃程度で、水熱処理する。水熱処理は、ナ
ノワイヤの直径が20〜1100nm程度、より好ましくは、直径が20〜100nm程度となるまで継
続すればよい。ナノワイヤの長さは、かなり大きなバラツキ(50〜2000nm程度)があるが、蛍光体材料としての発光特性には、殆ど影響しない。
【0028】
水熱処理終了後、遠心分離処理を行って、容器中の生成物を沈殿させ、上澄み液を廃棄した後、再度蒸留水を容器に加えて攪拌し、再度遠心分離処理を行って、生成物を沈殿させる。この沈殿操作を少なくとも1回、より好ましく2回以上行うことにより、生成物を洗浄する。
【0029】
この様にして得られたナノワイヤ状の生成物を酸素気流中で、或いは空気中で、或いは付活剤の価数を減じる必要性があるときは還元雰囲気(例えば、H2が3%、N2が97%の水素含有窒素ガス)中で、500〜1200℃程度で、より好ましくは800〜1000℃程度で加熱処理す
る。
【0030】
かくして、所望の発光特性を備えたナノワイヤ状の蛍光体材料が得られる。
【0031】
なお、本発明においては、金属酸化物中の酸素の一部を硫黄により置換することができる。硫黄による置換は、上記のいずれかの製造方法により得られたナノチューブあるいはナノワイヤを硫化水素0.5〜15%、不活性ガス85〜99.5%の硫化水素含有ガス(より好ましくは、硫化水素3%程度、不活性ガス97%程度の混合ガス)中、500〜1200℃程度(より好
ましくは800〜1000℃程度)で加熱処理する。不活性ガスは、限定されないが、実用性を考慮すると、窒素ガス、アルゴンガスなどが好ましい。
【0032】
この様にして得た硫黄含有ナノチューブ或いはナノワイヤは、200〜400nmの紫外線による励起によっても良好な蛍光特性を示すが、特に電子線励起に対しては、他の硫黄を含有しない蛍光体に比べて非常に感度が高くなり、強い蛍光を発するなどの効果を発揮する。
[実施例]
実施例1
硝酸イットリウム(Y(NO3)3・6H2O)1.8g、硝酸ユウロピウム(Eu(NO3)3・6H2O)0.17gおよび非イオン性界面活性剤としてのポリエチレングリコール(平均分子量6000)0.5gを蒸留水に溶解して10分攪拌した後、水酸化ナトリウム10%水溶液を添加してpH12.5に調節し
た。
【0033】
この水溶液をPTFE製容器に入れ、密封した容器をステンレス鋼製オートクレーブに収容し、これを密封した後、140℃で24時間水熱処理した。
【0034】
水熱処理後の反応液を遠心分離し、デカンテーションによって白色沈殿を洗浄した後、アルミナ製ボートに乗せて空気中、1000℃で加熱処理した。
【0035】
得られた白色生成物をX線回折で同定したところ、酸化イットリウム(Y2O3)型の結晶
構造を有していることがわかった。走査型電子顕微鏡(SEM)により、生成物の微細構造を
観察したところ、図1に示す様に、外径が80nm、チューブの肉厚が15〜20nmのナノチューブ形状を有していることが確認された。
【0036】
図2は、水熱処理により得られた生成物のXRDプロファイル、同生成物の400℃熱処理後のXRDプロファイルおよび同生成物の500℃熱処理後のXRDプロファイルを示す。水熱処
理により形成されたY(OH)3型の結晶構造が加熱により、(Y2O3)型の結晶構造に変化していることが明らかである。
【0037】
このようにして得られたEuで置換されたY2O3ナノチューブを用いて、室温で蛍光スペクトルを測定したところ、波長245nmの励起光照射下に611nmを主ピークとする赤色発光を示した。さらに550nm〜650nmの発光スペクトルの面積を算出して、市販の粒状のY2O3:Eu+3蛍光体の同様の面積と比較したところ、本発明品が約10倍強く発光していることが示唆
された。
【0038】
なお、以下の実施例および比較例において、生成した蛍光体材料の発光スペクトル強度は、本実施例と同様に、「各実施例により得られた蛍光体材料と同様の組成を有する市
販の粒状蛍光体の発光スペクトル強度」を基準とする相対強度を意味する。
【0039】
参考例1
実施例1の手法に準じて、Eu置換量の異なるY2O3ナノチューブ(置換量0.1〜5.0mol%)を調製した後、室温でそれぞれの蛍光スペクトルを測定した。結果を図3に示す。
【0040】
図3において、“Excitation”は611nmの可視光を照射して得られた当該試料の励起
スペクトルを示し、“Emission”は245nmの励起光を照射して得られた蛍光スペクトルを
示す。グラフ欄外の数値はY2O3母結晶に付活したユウロピウムイオンの濃度(mol%)を示す。また、“SSR”はSolid State Reaction(固相反応)による製品、すなわちY2O3粉末95mol%とEu2O3粉末5mol%とからなる混合酸化物粉末を固めて焼成した比較試料(市販蛍光体
)を用いた結果を示す。
【0041】
比較例1
ポリエチレングリコールに代えてドデシル硫酸ナトリウムを用いる以外は、実施例1と同様にして蛍光体材料を得た。得られた結晶は、直径10nm、内径6nmの酸化物ナノチュ
ーブであった。しかしながら、蛍光強度は、市販の粒状のY2O3:Eu+3蛍光体の約0.1倍であった。
【0042】
実施例2
硝酸ガドリニウム(Gd(NO3)3・6H2O)1.8g、硝酸ユウロピウム(Eu(NO3)3・6H2O)0.17g
および非イオン性界面活性剤としてのポリエチレングリコール(平均分子量6000)0.5gを蒸留水に溶解し、10分攪拌した後、水酸化ナトリウム10%水溶液を添加してpH12.5に調節
した。
【0043】
得られた溶液をPTFE製容器に入れ、密封した容器をステンレス鋼製オートクレーブに収容し、これを密封した後、140℃で24時間水熱処理した。
【0044】
水熱処理後の反応液を遠心分離し、デカンテーションによって白色沈殿を洗浄した後、アルミナ製ボートに乗せて空気中、900℃で加熱処理した。
【0045】
得られた白色生成物をX線回折で同定したところ、酸化ガドリニウム(Gd2O3)型の結晶構造を有していることがわかった。また、走査型電子顕微鏡(SEM)により、生成物の微細
構造を観察したところ、外径が80nm、チューブの肉厚が15〜20nmのナノチューブ形状を有していることがわかった。
【0046】
得られた酸化物ナノチューブを用いて、室温で蛍光スペクトルを測定したところ、励起光245nm照射下611nmを主ピークとする赤色発光を示した。さらに550nm〜650nmの発光スペクトルの面積を算出して、実施例1と同様にして市販蛍光体と比較したところ、本発明品が約3倍強く発光していることが示唆された。
【0047】
比較例2
ポリエチレングリコールに代えてドデシル硫酸ナトリウムを用いる以外は、実施例2と同様にして蛍光体材料を得た。得られた結晶は、直径12nm、内径7nmの酸化物ナノチュ
ーブであった。しかしながら、蛍光強度は、市販蛍光体の約0.15倍であった。
【0048】
実施例3
実施例1と同様にして、水熱処理、遠心分離および洗浄により得た試料を硫化水素気流中、900℃で加熱処理してY2O2S:Eu3+を得た。SEMにより、その微細構造を観察したところ、外径が80nm、チューブの肉厚が15〜20nmのナノチューブであることがわかった。
【0049】
得られたY2O2S:Eu3+を用いて、室温で蛍光スペクトルを測定したところ、励起光245nm照射下611nmを主ピークとする赤色発光を示した。さらに550nm〜650nmの発光スペクトルの面積を算出して、市販蛍光体(大型蛍光灯用の3波長型ランプ用蛍光体材料)と比較したところ、本発明品が約3倍強く発光していることが示唆された。
【0050】
実施例4
実施例2と同様にして、水熱処理、遠心分離および洗浄により得た試料を硫化水素気流中、900℃で加熱処理してGd2O2S:Eu3+を得た。SEMにより、その微細構造を観察したと
ころ、外径が80nm、チューブの肉厚が15〜20nmのナノチューブであることがわかった。
【0051】
この様にして得たGd2O2S:Eu3+を用いて、室温で蛍光スペクトルを測定したところ、
励起光245nm照射下611nmを主ピークとする赤色発光を示した。さらに550nm〜650nmの発光スペクトルの面積を算出して、同様の市販蛍光体と比較したところ、本発明品が4倍強く
発光していることが示唆された。
【0052】
実施例5
実施例1と同様の手法により、Y、AlおよびCeの硝酸塩を最終生成物の組成がYCe0.15AlO3となる様に秤量し、蒸留水に溶解し、これにPEGを0.5g添加し、10分攪拌した後、水
酸化ナトリウム10%水溶液を添加して、水溶液のpH12.5に調節した。
【0053】
この水溶液をPTFE製容器に入れ、密封した容器をステンレス鋼製オートクレーブに収容し、これを密封した後、140℃で24時間水熱処理した。
【0054】
水熱処理後の反応液を遠心分離し、デカンテーションによって白色沈殿を洗浄した後、アルミナ製ボートに乗せて空気中、1000℃で加熱処理した。
【0055】
得られた白色生成物をX線回折で同定したところ、アルミン酸イットリウム(YAlO3)
型の結晶構造を有していることがわかった。走査型電子顕微鏡(SEM)により、生成物の微
細構造を観察したところ、外径が100nmのナノロッドであることがわかった。
【0056】
得られた酸化物ナノロッドを用い、室温で蛍光スペクトルを測定した。0.5406nm波長のX線で励起したところ370nmを主ピークとする青紫色発光を示した。さらに300nm〜400nmの発光スペクトルの面積を算出して、同様の市販蛍光体と比較したところ、本発明品が3
倍強く発光していることが示唆された。
【0057】
実施例6
実施例1と同様の手法により、Y、AlおよびTbの硝酸塩を最終生成物の組成がY3Tb0.075Al5O12となる様に秤量して蒸留水に溶解し、これにPEGを0.5g添加し、10分攪拌した後
、水酸化ナトリウム10%水溶液を添加して、水溶液のpHを12.5に調節した。
【0058】
この溶液をPTFE製容器に入れ、密封した容器をステンレス鋼製オートクレーブに収容し、これを密封した後、140℃で24時間水熱処理した。
【0059】
水熱反応生成物を遠心分離し、デカンテーションによって白色沈殿を洗浄した後、アルミナ製ボートに乗せて空気中、1000℃で加熱処理した。
【0060】
得られた白色生成物をX線回折で同定したところ、アルミン酸イットリウム(Y3Al5O12) 型の結晶構造を有していることがわかった。走査型電子顕微鏡(SEM)により、その微細
構造を観察したところ、外径が約100nmのナノロッドであることがわかった。
【0061】
このようにして得られた酸化物ナノロッドを用いて、室温で蛍光スペクトルを測定したところ、励起光254nm照射下545nmを主ピークとする緑色発光を示した。さらに500nm〜600nmの発光スペクトルの面積を算出して、同様の市販蛍光体と比較したところ、本発明品が5倍強く発光していることが示唆された。
【0062】
実施例7
実施例1の手法に準じて、Ba、Mg、Alおよび Euの硝酸塩を最終生成物の組成がBaEu0.08MgAl14O23となる様に秤量して蒸留水に溶解し、これにPEGを0.5g添加して、10分攪拌
した後、水酸化ナトリウム10%水溶液を添加して、水溶液のpHを12.5に調節した。
【0063】
この水溶液をPTFE製容器に入れ、密封した容器をステンレス鋼製オートクレーブに収容し、これを密封した後、145℃で24時間水熱処理した。
【0064】
水熱反応生成物を遠心分離し、デカンテーションによって白色沈殿を洗浄した後、アルミナ製ボートに乗せて、H23%を含有する水素-窒素混合気流中、900℃で加熱処理した。
【0065】
得られた白色生成物をX線回折で同定したところ、アルミン酸バリウムマグネシウム(BaMgAl14O23) 型の結晶構造を有していることがわかった。走査型電子顕微鏡(SEM)により、生成物の微細構造を観察したところ、外径が約100nmのナノロッドであることがわかっ
た。
【0066】
このようにして得られた酸化物ナノロッドを用い、室温で蛍光スペクトルを測定したところ、励起光250nm照射下450nmを主ピークとする青色発光を示した。さらに400nm〜500nmの発光スペクトルの面積を算出して、同様の市販蛍光体と比較したところ、本発明品が5倍強く発光していることが示唆された。
【0067】
実施例8
実施例1の手法に準じて、Sr、Al、EuおよびDyの硝酸塩を最終生成物の組成がSr4Eu0.04Dy0.08Al14O25となるように秤量して蒸留水に溶解し、これにPEGを0.5g添加して、10
分攪拌した後、水酸化ナトリウム10%水溶液を添加して、水溶液のpHを12.5に調節した。
【0068】
この水溶液をPTFE製容器に入れ、密封した容器をステンレス鋼製オートクレーブに収容し、これを密封した後、145℃で24時間水熱処理した。
【0069】
水熱処理により得られた反応液を遠心分離し、デカンテーションによって白色沈殿を洗浄した後、アルミナボートに乗せてH23%を含有する還元窒素気流中、900℃で加熱処理
した。
【0070】
得られた白色生成物をX線回折で同定したところ、アルミン酸ストロンチウム(Sr4Al14O25)型 の結晶構造を有していることがわかった。また、走査型電子顕微鏡(SEM)により
、生成物の微細構造を観察したところ、外径が約150nmのナノロッドであることが確認さ
れた。
【0071】
このようにして得られた酸化物ナノロッドを用い、室温で蛍光スペクトルを測定したところ、励起光250nm照射下450nmを主ピークとする青色発光を示した。さらに400nm〜500nmの発光スペクトルの面積を算出して、同様の市販蛍光体と比較したところ、本発明品が5倍強く発光していることが示唆された。さらに、10時間後の蛍光強度は、励起直後のそ
れの80%を維持しており、良好な長残光特性を有することが明らかとなった。
実施例9
硼酸(H3BO3)0.42g、硝酸イットリウム(Y(NO3)3・6H2O)2.6g、硝酸ユウロピウム(Eu(NO3)3・6H2O)0.23gおよび非イオン製界面活性剤としてポリエチレングリコール(平均分子量6000)0.5gを蒸留水に溶解し、10分攪拌した後、水酸化ナトリウム10%水溶液を添加し
て、pH12.5に調節した。
【0072】
この水溶液をPTFE製容器に入れ、密封した容器をステンレス鋼製オートクレーブに収容し、これを密封した後、145℃で24時間水熱処理した。
【0073】
水熱処理後の反応液を遠心分離し、デカンテーションによって白色沈殿を洗浄した後、アルミナ製ボートに乗せて空気中、900℃で加熱処理した。
【0074】
得られた白色生成物をX線回折で同定したところ、ホウ酸イットリウム(YBO3) 型の結晶構造を有していることがわかった。走査型電子顕微鏡(SEM)により微細構造を観察した
ところ、外径が80nm、チューブの肉厚が15〜20nmのナノチューブであることが確認された。
【0075】
このようにして得られた酸化物ナノチューブを用い、室温で蛍光スペクトルを測定したところ、励起光245nm照射下611nmを主ピークとする赤色発光を示した。さらに550nm〜650nmの発光スペクトルの面積を算出して、同様の市販蛍光体と比較したところ、本発明品が6倍強く発光していることが示唆された。
【0076】
実施例10
硝酸イットリウム(Y(NO3)3・6H2O)1.8g、硝酸ユウロピウム(Eu(NO3)3・6H2O)0.17gを蒸留水に溶解して10分攪拌した後、さらに水酸化ナトリウム10%水溶液を添加して、pH12.5に調節した。
【0077】
この水溶液をPTFE容器に密封してステンレス製オートクレーブに入れ、これを密封した後180℃、24時間水熱処理した。
【0078】
水熱処理後の反応液を遠心分離し、デカンテーションによって白色沈殿を洗浄した後、アルミナ製ボートに乗せて空気中、1000℃で加熱処理した。
【0079】
得られた白色生成物をX線回折で同定したところ、酸化イットリウム(Y2O3)型 の結晶構造を有していることがわかった。走査型電子顕微鏡(SEM)により微細構造を観察したと
ころ、外径が70nmのナノワイヤであることがわかった。このようにして得られた酸化物ナノワイヤを用いて、室温で蛍光スペクトルを測定したところ、励起光245nm照射下611nmを主ピークとする赤色発光を示した。さらに550nm〜650nmの発光スペクトルの面積を算出して、同様の市販蛍光体と比較したところ、本発明品が7倍強く発光していることが示唆さ
れた。
【0080】
実施例11
硝酸ガドリニウム(Gd(NO3)3・6H2O) 1.8gおよび硝酸ユウロピウム(Eu(NO3)3・6H2O) 0.17gを蒸留水に溶解して10分攪拌した後、さらに水酸化ナトリウム10%水溶液を添加してpHを12.5に調節した。
【0081】
この水溶液をPTFE製容器に入れ、密封した容器をステンレス鋼製オートクレーブに収容し、これを密封した後、180℃で24時間水熱処理した。
【0082】
水熱処理後の反応液を遠心分離し、デカンテーションによって白色沈殿を洗浄した後、アルミナ製ボートに乗せて空気中、900℃で加熱処理した。
【0083】
得られた白色生成物をX線回折で同定したところ、酸化ガドリニウム(Gd2O3) 型 の結晶構造を有していることがわかった。走査型電子顕微鏡(SEM)により、生成物の微細構造
を観察したところ、外径が80nmのナノワイヤ形状を有していることが確認された。
【0084】
このようにして得られた酸化物ナノワイヤを用い、室温で蛍光スペクトルを測定したところ、励起光245nm照射下611nmを主ピークとする赤色発光を示した。さらに550nm〜650nmの発光スペクトルの面積を算出して、同様の市販蛍光体と比較したところ、本発明品が2倍強く発光していることが示唆された。
【0085】
実施例12
図4は、実施例1、6および9で得られた金属酸化物ナノチューブ蛍光体材料において、発光強度に対する付活イオン濃度の影響を示す蛍光スペクトル図を示す。
【0086】
蛍光体材料中の希土類イオン(実施例1および9ではユウロピウムイオン、実施例6ではテルビウムイオン)の付活量を0.1mol%から徐々に増加させると、蛍光強度は増大し
、各実施例とも付活量7.5mol%で最大となった。さらに付活量を増加させると徐々に蛍光
強度を減少させた。これは、濃度消光が起こったためと推察される。
【図面の簡単な説明】
【0087】
【図1】実施例1で合成した金属酸化物ナノチューブ蛍光体材料のSEM像を示す写真である。
【図2】実施例1で合成した金属酸化物ナノチューブ蛍光体材料において、熱処理温度の影響を示すXRDプロファイルである。
【図3】実施例1で合成した金属酸化物ナノチューブ蛍光体材料の蛍光スペクトル図である。
【図4】実施例1、6および9で得られた金属酸化物ナノチューブ蛍光体材料において、発光強度に対する付活イオン濃度の影響を示す蛍光スペクトル図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属酸化物のナノチューブ或いはナノワイヤからなり、金属成分の一部が希土類元素により置換されている蛍光体材料(但し、金属酸化物中の金属成分が希土類元素と同一である
場合を除く)。
【請求項2】
金属酸化物が、アルミナ、ジルコニア、チタニア、チタネート、マグネシア、ランタン酸化物、ガドリニウム酸化物、イットリウム酸化物、スカンジウム酸化物、シリカ、ジルコニア、酸化カルシウム、酸化ガリウム、酸化マンガン、酸化ストロンチウム、酸化バリウム、酸化バナジウム、酸化クロム、酸化マンガン、酸化インジウム、酸化スズ、酸化カドミウム、酸化ニオブ、酸化タンタル、酸化モリブデン、酸化タングステンから選ばれた少なくとも1種類の酸化物からなる請求項1記載の蛍光体材料。
【請求項3】
希土類元素が、セリウム、プラセオジム、ネオジム、サマリウム、ユウロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウムおよびイッテルビウムから選ばれた少なくとも一種である請求項1または2に記載の蛍光体材料。
【請求項4】
金属酸化物ナノチューブの直径が20〜1100nm、内径が15〜1000nmである請求項1〜3のいずれかに記載の蛍光体材料。
【請求項5】
金属酸化物ナノワイヤの直径が20〜1000nmである請求項1〜3のいずれかに記載の蛍光体材料。
【請求項6】
金属酸化物のナノチューブからなり、金属成分の一部が希土類元素により置換されている蛍光体材料の製造方法であって、下記の工程を備えたことを特徴とする方法:
母結晶となる金属酸化物源および置換成分(付活剤)としての希土類元素源の水溶液を調製する工程;
得られた水溶液に対し、非イオン性界面活性剤を添加する工程;
上記の様にして調製した水溶液にアルカリ金属水酸化物水溶液あるいはアンモニア水溶液を加えて、そのpHを9〜13.5に調整する工程;
pH調整後の水溶液を容器に収容し、この容器を水熱処理用金属容器内に密封状態で保持しつつ、80〜250℃で水熱処理する工程;
水熱処理終了の反応液を遠心分離処理に供して、容器中の生成物を沈殿させ、上澄み液を廃棄した後、再度蒸留水を容器に加えて攪拌し、再度遠心分離処理を行って、生成物を沈殿させる操作を2回以上行うことにより、生成物を洗浄する工程;および
得られたナノチューブの結晶を酸素気流中、空気中、あるいは付活剤の価数を減じる必要性があるときは還元雰囲気中で、500〜1200℃で加熱処理する工程。
【請求項7】
金属酸化物のナノチューブからなり、金属成分の一部が希土類元素により置換されている蛍光体材料の製造方法であって、下記の工程を備えたことを特徴とする方法:
母結晶となる金属酸化物源ナノ粒子、置換成分(付活剤)としての希土類元素源ナノ粒子および非イオン性界面活性剤を含む分散液を調製する工程;
上記の様にして調製した分散液にアルカリ金属水酸化物水溶液あるいはアンモニア水溶液を加えて、そのpHを9〜13.5に調整する工程;
pH調整後の分散液を容器に収容し、この容器を水熱処理用金属容器内に密封状態で保持しつつ、80〜250℃で水熱処理する工程;
水熱処理終了の反応液を遠心分離処理に供して、容器中の生成物を沈殿させ、上澄み液を廃棄した後、再度蒸留水を容器に加えて攪拌し、再度遠心分離処理を行って、生成物を沈殿させる操作を2回以上行うことにより、生成物を洗浄する工程;および
得られたナノチューブ状の生成物を酸素気流中、空気中、あるいは付活剤の価数を減
じる必要性があるときは還元雰囲気中で、500〜1200℃で加熱処理する工程。
【請求項8】
金属酸化物のナノワイヤからなり、金属成分の一部が希土類元素により置換されている蛍光体材料の製造方法であって、下記の工程を備えたことを特徴とする方法:
母結晶となる金属酸化物源および置換成分(付活剤)としての希土類元素源の水溶液を調製する工程;
上記の様にして調製した水溶液にアルカリ金属水酸化物水溶液あるいはアンモニア水溶液を加えて、そのpHを9〜13.5に調整する工程;
pH調整後の水溶液を容器に収容し、この容器を水熱処理用金属容器内に密封状態で保持しつつ、80〜250℃で水熱処理する工程;
水熱処理終了の反応液を遠心分離処理に供して、容器中の生成物を沈殿させ、上澄み液を廃棄した後、再度蒸留水を容器に加えて攪拌し、再度遠心分離処理を行って、生成物を沈殿させる操作を2回以上行うことにより、生成物を洗浄する工程;および
得られたナノワイヤ状の生成物を酸素気流中、空気中、あるいは付活剤の価数を減じる必要性があるときは還元雰囲気中で、500〜1200℃で加熱処理する工程。
【請求項9】
金属酸化物のナノワイヤからなり、金属成分の一部が希土類元素により置換されている蛍光体材料の製造方法であって、下記の工程を備えたことを特徴とする方法:
母結晶となる金属酸化物源ナノ粒子および置換成分(付活剤)としての希土類元素源ナノ粒子を含む分散液を調製する工程;
上記の様にして調製した分散液にアルカリ金属水酸化物水溶液あるいはアンモニア水溶液を加えて、そのpHを9〜13.5に調整する工程;
pH調整後の分散液を容器に収容し、この容器を水熱処理用金属容器内に密封状態で保持しつつ、80〜250℃で水熱処理する工程;
水熱処理終了の反応液を遠心分離処理に供して、容器中の生成物を沈殿させ、上澄み液を廃棄した後、再度蒸留水を容器に加えて攪拌し、再度遠心分離処理を行って、生成物を沈殿させる操作を2回以上行うことにより、生成物を洗浄する工程;および
得られたナノワイヤ状の生成物を酸素気流中、空気中、あるいは付活剤の価数を減じる必要性があるときは還元雰囲気中で、500〜1200℃で加熱処理する工程。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−238879(P2007−238879A)
【公開日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−66837(P2006−66837)
【出願日】平成18年3月13日(2006.3.13)
【出願人】(301021533)独立行政法人産業技術総合研究所 (6,529)
【Fターム(参考)】