説明

蛍光体材料の製造方法、蛍光体材料、及び発光装置

【課題】効率よく蛍光体粒子の表面に被覆層を形成することができ、かつ、高い特性及び高い収率を得ることができる蛍光体材料の製造方法、及びそれにより得られた蛍光体材料、並びにそれを用いた発光装置を提供する。
【解決手段】蛍光体粒子11と、セラミックス微粒子12Aと、液体とを含むスラリーを調製する(ステップS101)。次いで、スラリーを減圧蒸発乾燥法により乾燥させて液体を除去し、蛍光体粒子11の表面にセラミックス微粒子12Aを付着させる(ステップS102)。続いて、スラリーを乾燥させたのち、セラミックス微粒子12Aを付着させた蛍光体粒子11を不活性ガス雰囲気中において熱処理する(ステップS103)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蛍光体粒子の表面に被覆層を有する蛍光体材料の製造方法、及びそれにより得られた蛍光体材料、並びにそれを用いた発光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、液晶テレビのバックライト又は次世代照明としてLEDランプに注目が集まっている。LEDランプを白色に発光させるためには、LED素子自体の発光を赤・青・緑等の蛍光体の塗布又は練りこまれたレンズを通し、蛍光体からの発光を重ね合わせることにより白色を得る必要がある。しかし、蛍光体は水分、熱、あるいは紫外線に曝露されると、発光特性が低下してしまうという弱点を有している。そこで、蛍光体粒子をセラミックスで被覆することにより、特性の劣化を防止し、長寿命化を図ることが行われている(例えば、特許文献1参照)。被覆方法としては様々あるが、セラミックス微粒子を原料に用いて被覆するようにすれば、高い特性を得ることができるので好ましい。具体的には、例えば、蛍光体粒子とセラミックス微粒子と液体とを混合してスラリーとし、これを噴霧乾燥、温風乾燥、又は自然乾燥により乾燥させる方法が知られている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−280877号公報
【特許文献2】特開2008−291251号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、噴霧乾燥や温風乾燥は、大量のガスと粉末を気中混合、又は流動させることにより液体を乾燥させる必要があるため、送り込んだガスを逃がす経路から蛍光体粒子及びセラミックス微粒子も逃げてしまうという問題があった。これを防止するために、例えば、バグフィルタを介して粉末を捕集することによりロスを減らす工夫がされているが、それでも収率を高くすることは難しい。また、収率の問題が改善できたとしても、バグフィルタで捕集しきれない小粒径側の粒子がフィルタを通過して逃げてしまうため、母材となる蛍光体粒子の粒度分布が変化し、実用上支障が出てしまう場合があるという問題もあった。更に、蛍光体粒子は非常に高価なものが多く、たとえ少量でもロスが生じてしまうと損害は甚大なものとなってしまう。加えて、セラミックス微粒子が蛍光体粒子に付着せずに乾燥してしまう場合があるという問題もあった。
【0005】
一方、自然乾燥の場合には、噴霧乾燥や温風乾燥に比べて乾燥ガスに触れる比表面積が著しく小さくなるために乾燥に長時間を要し、しかも、乾燥中に雰囲気中の水分が吸着して蛍光体粒子を劣化させてしまうという問題があった。例えば、雰囲気を制御し、脱水雰囲気中で乾燥させる方法としては、グローブボックス等の利用があるが、常時排気しながら脱水雰囲気ガスを導入しなければならず、コスト、時間ともに大幅にかかり現実的ではない。
【0006】
本発明は、このような問題に基づきなされたものであり、効率よく蛍光体粒子の表面に被覆層を形成することができ、かつ、高い特性及び高い収率を得ることができる蛍光体材料の製造方法、及びそれにより得られた蛍光体材料、並びにそれを用いた発光装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の蛍光体材料の製造方法は、蛍光体粒子の表面に被覆層を有する蛍光体材料を製造するものであって、蛍光体粒子と、セラミックス微粒子と、液体とを含むスラリーを減圧蒸発乾燥法により乾燥させ、液体を除去することにより、蛍光体粒子の表面に被覆層を形成するものである。
【0008】
本発明の蛍光体材料は、本発明の蛍光体材料の製造方法により製造されたものであり、本発明の発光装置は、それにより製造された蛍光体材料を含むものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明の蛍光体材料の製造方法によれば、蛍光体粒子と、セラミックス微粒子と、液体とを含むスラリーを減圧蒸発乾燥法により乾燥させるようにしたので、排気するガスの量が極めて少なく、蛍光体粒子及びセラミックス微粒子が処理装置の外に排出される量を極めて少なくすることができる。よって、蛍光体粒子の収率を高くすることができると共に、蛍光体粒子の粒度分布の変化を防止することができ、蛍光体材料の品質を維持することができる。また、セラミックス微粒子が蛍光体粒子に付着せずに単独で乾燥してしまう量を少なくすることができ、成膜効率を高くすることができる。更に、乾燥時間が短く、効率よく製造することができると共に、水分の影響が小さく、特性劣化を防止することができる。
【0010】
また、スラリーを乾燥させたのち、不活性ガス雰囲気中、例えば、窒素及び長周期表第18族元素からなる群のうちの少なくとも1種を含む不活性ガス雰囲気中において熱処理するようにすれば、蛍光体粒子の特性劣化を防止しつつ、被覆層の密着性を高めることができる。
【0011】
更に、スラリーを乾燥させる際に、スラリーを撹拌するようにすれば、乾燥時間をより短くすることができる。
【0012】
加えて、セラミックス微粒子の平均粒径を40nm以下とするようにすれば、又は、セラミックス微粒子が希土類酸化物,酸化ジルコニウム,酸化チタン,酸化亜鉛,酸化アルミニウム,イットリウムとアルミニウムの複合酸化物,酸化マグネシウム及びアルミニウムとマグネシウムの複合酸化物からなる群のうちの少なくとも1種の金属酸化物を含むようにすれば、耐水性や耐紫外光などの特性をより向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施の形態に係る蛍光体材料の製造方法の工程を表す流れ図である。
【図2】本発明の一実施の形態に係る蛍光体材料の製造方法により作製される蛍光体材料の構成を表す模式図である。
【図3】本発明の一実施の形態に係る蛍光体材料の製造方法により作製される蛍光体材料を用いた発光装置の構成を表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0015】
図1は、本発明の一実施の形態に係る蛍光体材料の製造方法の工程を表すものであり、図2は、これにより作製される蛍光体材料10を模式的に表したものである。本実施の形態に係る蛍光体材料10の製造方法は、蛍光体粒子11の表面に被覆層12を有する蛍光体材料10を製造するものであり、本実施の形態に係る蛍光体材料10は、この蛍光体材料10の製造方法により得られたものである。
【0016】
この蛍光体材料10の製造方法では、まず、例えば、蛍光体粒子11と、セラミックス微粒子12Aと、液体とを含むスラリーを調製する(ステップS101)。蛍光体粒子11としては、どのようなものを用いてもよいが、例えば、BaMgAl1017:Eu,ZnS:Ag,Cl,BaAl:EuあるいはCaMgSi:Euなどの青色系蛍光体、(Ba,Ca,Sr)SiO:Eu,ZnSiO:Mn,(Y,Gd)BO:Tb,ZnS:Cu,Alあるいは(Ba,Sr,Mg)O・aAl:Mnなどの緑色系蛍光体、(Y,Gd)BO:Eu,YS:EuあるいはYPVO:Euなどの赤色系蛍光体が挙げられる。蛍光体粒子11の粒子径は、基本的には問わないが、平均粒子径が5μmから20μm程度で、粒子径はできるだけ揃っていた方が好ましい。特性を安定させることができるからである。
【0017】
セラミックス微粒子12Aは、被覆層12を形成するためのものであり、例えば、希土類酸化物,酸化ジルコニウム,酸化チタン,酸化亜鉛,酸化アルミニウム,イットリウム・アルミニウム・ガーネットなどのイットリウムとアルミニウムの複合酸化物,酸化マグネシウム,及びMgAlなどのアルミニウムとマグネシウムの複合酸化物からなる群のうちの少なくとも1種の金属酸化物を主成分として含んでいることが好ましい。耐水性及び耐紫外光などの特性を向上させることができるからである。中でも、希土類酸化物が好ましく、イットリウム,ガドリニウム,セリウム及びランタンからなる群のうちの少なくとも1種の元素を含む希土類酸化物がより好ましく、特にYが望ましい。より高い効果を得ることができ、コストも抑制することができるからである。セラミックス微粒子12Aは、1種を単独で用いてもよいが、2種以上を混合して用いてもよい。また、1種の金属酸化物よりなるセラミックス微粒子12Aを用いてもよいが、2種以上の金属酸化物を含むセラミックス微粒子12Aを用いてもよい。
【0018】
セラミックス微粒子12Aの平均粒子径は、40nm以下とすることが好ましく、30nm以下、更には25nm以下とすればより好ましい。平均粒子径が小さい方がセラミックス微粒子12Aを蛍光体粒子11に付着させやすく、粒子間の隙間が極めて少ない状態で堆積させることができることから、良好な被覆層12を形成することができるからである。また、セラミックス微粒子12Aの平均粒子径は、10nm以上とすることが好ましく、15nm以上とすればより好ましい。セラミックス微粒子12Aの平均粒子径があまり小さいと、粗大な二次凝集粒子が発生し易く、蛍光体粒子11を均一に被覆することが難しくなるからである。セラミックス微粒子12Aの平均粒子径は、蛍光体粒子11の平均粒子径の1/100以下から1/500以下程度であることが好ましい。被覆層12をより安定して形成することができるからである。なお、平均粒子径というのは、一次粒子の平均粒子径である。
【0019】
更に、セラミックス微粒子12Aの最大粒子径は、例えば、50nm以下とすることが好ましい。大きい粒子が存在すると、蛍光体粒子11が露出する欠陥が生じやすくなるからである。微粒子12Aの最大粒子径は、例えば、40nm以下とすればより好ましく、30nm以下とすれば更に好ましい。
【0020】
セラミックス微粒子12Aを分散させる液体には、例えば、有機溶媒を用いることが好ましい。液体の材質は基本的には問わないが、安価かつ常温常圧で蒸発し易く毒性の低い材料としてエタノール、IPA(イソプロピルアルコール)を用いるのが好ましい。但し、母材となる蛍光体粒子11への影響の観点から水および水を多く含む材質は好ましくない。また常温常圧で蒸発し難い材質も好ましくない。
【0021】
次いで、スラリーを減圧蒸発乾燥法により乾燥させて液体を除去し、蛍光体粒子11の表面にセラミックス微粒子12Aを付着させ、被覆層12を形成する(ステップS102)。減圧蒸発乾燥法というのは、減圧雰囲気とすることにより液体の蒸発を促進させ、乾燥させる方法である。更に、乾燥を促進させるため容器外部から加熱し、スラリー温度を上昇させてもよい。スラリーを乾燥させる際には、スラリーを撹拌することが好ましい。乾燥時間を短くすることができるからである。また、スラリーを外部加熱させる場合には撹拌することで突沸を防ぐ効果も得られる。撹拌は、例えば、スラリーを収納した容器を回転させることにより行うようにしてもよく、また、スラリーを収納する容器内に設けた回転羽根等の撹拌装置により行うようにしてもよい。具体的には、例えば、ロータリーエバポレーター又はフラッシュエバポレーターを用いることが好ましい。
【0022】
続いて、スラリーを乾燥させたのち、セラミックス微粒子12Aを付着させた蛍光体粒子11を不活性ガス雰囲気中において熱処理することが好ましい(ステップS103)。蛍光体粒子11の特性の劣化を防止しつつ、被覆層12の密着性を高めることができるからである。不活性ガスとしては、例えば、窒素及び長周期表第18族元素からなる群のうちの少なくとも1種を含むものが挙げられる。熱処理温度は、例えば、450℃以下とすることが好ましい。特性の劣化を防止することができるからである。
【0023】
なお、スラリーの調製(ステップS101)、乾燥(ステップS102)、熱処理(ステップS103)の各工程は、1回行えばよいが、複数回繰り返すようにしてもよい。例えば、スラリーの調製(ステップS101)、乾燥(ステップS102)、熱処理(ステップS103)を行い、被覆層12を形成した蛍光体粒子11について、再び、セラミックス微粒子12A及び液体と共にスラリーを調製し(ステップS101)、乾燥させ(ステップS102)、熱処理をする(ステップS103)ようにしてもよい。蛍光体粒子11をより確実に被覆することができるからである。なお、複数回繰り返す場合には、スラリーに異なる種類のセラミックス微粒子12Aを用いてもよい。また、被覆層12は、セラミックス微粒子12Aを厚み方向に3粒子層以上積層することが好ましく、被覆層12の厚みは、10nm以上1μm以下とすることが好ましい。セラミックス微粒子12Aの積層数が少ないと、又は、被覆層12の厚みが薄いと、特性劣化を防止する効果が小さく、厚みが厚いと、光透過性が低下して発光効率が低下してしまうからである。これにより、蛍光体粒子11の表面を被覆層12で被覆した蛍光体材料10が得られる。
【0024】
図3は、この蛍光体材料10を用いた発光装置20の一構成例を表わすものである。この発光装置20は、基板21の上に発光素子22が搭載されており、発光素子22は基板21の上に形成された配線23とワイヤ24により電気的に接続されている。また、発光素子22の周りには例えばリフレクタ枠25が形成されており、発光素子22の上には、発光素子22を覆うように封止層26が形成されている。封止層26は、例えば、蛍光体材料10を分散させた樹脂により構成されている。
【0025】
発光素子22には、例えば、励起光として紫外光、青色光、又は緑色光を発するものが用いられる。蛍光体材料10としては、例えば、発光素子22から発光された励起光により赤色光を発するもの、青色光を発するもの、緑色光を発するもの、黄色光を発するものなどが、1種類又は必要に応じて2種以上混合して用いられる。
【0026】
このように本実施の形態によれば、蛍光体粒子11と、セラミックス微粒子12Aと、液体とを含むスラリーを減圧蒸発乾燥法により乾燥させるようにしたので、排気するガスの量が極めて少なく、蛍光体粒子11及びセラミックス微粒子12Aが処理装置の外に排出される量を極めて少なくすることができる。よって、蛍光体粒子11の収率を高くすることができると共に、蛍光体粒子11の粒度分布の変化を防止することができ、蛍光体材料10の品質を維持することができる。また、セラミックス微粒子12Aが蛍光体粒子11に付着せずに単独で乾燥してしまう量を少なくすることができ、成膜効率を高くすることができる。更に、乾燥時間が短く、効率よく製造することができると共に、水分の影響が小さく、特性劣化を防止することができる。
【0027】
また、スラリーを乾燥させたのち、不活性ガス雰囲気中、例えば、窒素及び長周期表第18族元素からなる群のうちの少なくとも1種を含む不活性ガス雰囲気中において熱処理するようにすれば、蛍光体粒子11の特性劣化を防止しつつ、被覆層12の密着性を高めることができる。
【0028】
更に、スラリーを乾燥させる際に、スラリーを撹拌するようにすれば、乾燥時間をより短くすることができる。
【0029】
加えて、セラミックス微粒子12Aの平均粒径を40nm以下とするようにすれば、又は、セラミックス微粒子が希土類酸化物,酸化ジルコニウム,酸化チタン,酸化亜鉛,酸化アルミニウム,イットリウムとアルミニウムの複合酸化物,酸化マグネシウム及びアルミニウムとマグネシウムの複合酸化物からなる群のうちの少なくとも1種の金属酸化物を含むようにすれば、耐水性や耐紫外光などの特性をより向上させることができる。
【実施例】
【0030】
(実施例1)
平均粒子径20nm、最大粒子径50nmの酸化イットリウム(Y)よりなるセラミックス微粒子12Aを有機溶媒に分散させたものに、平均粒子径が10μm程度の緑色系の蛍光体粒子11を混合してスラリーを調製した(ステップS101)。次いで、ロータリーエバポレーターを用い、このスラリーを減圧蒸発乾燥法により乾燥させ、有機溶媒を除去した(ステップS102)。その際、スラリーを収納した容器を回転させることによりスラリーを撹拌しながら乾燥させた。続いて、乾燥させた粉末、すなわちセラミックス微粒子12Aを付着させた蛍光体粒子11を窒素雰囲気中において400℃で2時間熱処理した(ステップS103)。そののち、得られた粉末、すなわち被覆層12を形成した蛍光体粒子11について、同様にしてスラリーの調製(ステップS101)、乾燥(ステップS102)、熱処理(ステップS103)をもう1回繰り返し、蛍光体材料10を得た。得られた蛍光体材料10について、原料に用いた蛍光体粒子11の収率を調べたところ、95%以上であった。なお、収率は、収率=処理後の総重量/(処理前の蛍光体粒子重量+セラミックス微粒子の重量)により求めた。
【0031】
(比較例1−1)
スラリーを噴霧乾燥により乾燥させたことを除き、他は実施例1と同様にして蛍光体材料を作製した。得られた蛍光材料について、原料に用いた蛍光体粒子の収率を調べたところ、約70%であった。
【0032】
(比較例1−2)
スラリーを自然乾燥により乾燥させたことを除き、他は実施例1と同様にして蛍光体材料を作製した。比較例1−2では、実施例1と同量のスラリーを乾燥させるのに、実施例1の10倍以上の時間がかかった。
【0033】
表1に実施例1及び比較例1−1,1−2の結果を示す。このように、スラリーを減圧蒸発乾燥法により乾燥させるようにすれば、蛍光体粒子11の収率高くすることができ、かつ、乾燥時間を短くすることができ、好ましいことが分かった。
【0034】
【表1】

【0035】
(実施例2−1)
実施例1により作製した蛍光体材料10を用い、図3に示したような発光装置20を作製した。発光素子22には紫外光を発するものを用いた。
【0036】
(実施例2−2)
熱処理を酸化雰囲気中(大気雰囲気中)において行ったことを除き、他は実施例1と同様にして蛍光体材料10を作製し、実施例2−1と同様にして、発光装置20を作製した。
【0037】
(比較例2)
蛍光体粒子に被覆層を形成せずに、そのまま蛍光体材料として用い、実施例2−1と同様にして発光装置を作製した。
【0038】
(劣化試験)
実施例2−1,2−2及び比較例2の各発光装置20について、発光試験を行い、輝度の経時変化を調べた。得られた結果を表2に示す。表2において、相対輝度というのは、被覆層を形成していない比較例2の初期輝度を100%とした場合の相対値である。
【0039】
【表2】

【0040】
このように、スラリーを乾燥させたのち、不活性ガス雰囲気中において熱処理を行うようにすれば、初期輝度の低下及び輝度維持率を大幅に改善できることが分かった。また、熱処理を大気雰囲気中で行った場合には、初期輝度は低下するものの、未処理の比較例2に比べて輝度維持率を改善できることが分かった。
【0041】
(実施例3−1〜3−5)
セラミックス微粒子12Aの平均粒子径及び最大粒子径を変化させたことを除き、他は実施例1と同様にして蛍光体材料10を作製し、実施例2−1と同様にして発光装置20を作製した。実施例3−1では平均粒子径が40nm、最大粒子径が50nm、実施例3−2では平均粒子径が30nm、最大粒子径が50nm、実施例3−3では平均粒子径が25nm、最大粒子径が50nm、実施例3−4では平均粒子径が20nm、最大粒子径が40nm、実施例3−5では平均粒子径が15nm、最大粒子径が40nmのセラミックス微粒子12Aを用いた。得られた発光装置20について実施例2−1と同様にして発光試験を行い、輝度の経時変化を調べた。得られた結果を実施例2−1及び比較例2の結果と共に表3に示す。表3において、2000時間後の輝度維持率というのは、被覆層を形成していない比較例2の初期輝度を100%とした場合の相対値である。
【0042】
【表3】

【0043】
このように、セラミックス微粒子12Aの平均粒子径を40nm以下、10nm以上とすれば、高い特性を得られることが分かった。また、微粒子12Aの最大粒子径を50nm以下とすれば、より高い特性を得られることが分かった。
【0044】
以上、実施の形態を挙げて本発明を説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、種々変形可能である。例えば、上記実施の形態では、蛍光体材料10の各製造工程について説明したが、全ての工程を含んでいなくてもよく、また他の工程を含んでいてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0045】
LEDなどの発光装置に用いることができる。
【符号の説明】
【0046】
10…蛍光体材料、11…蛍光体粒子、12…被覆層、12A…セラミックス微粒子、20…発光装置、21…基板、22…発光素子、23…配線、24…ワイヤ、25…リフレクタ枠、26…封止層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
蛍光体粒子の表面に被覆層を有する蛍光体材料の製造方法であって、
蛍光体粒子と、セラミックス微粒子と、液体とを含むスラリーを減圧蒸発乾燥法により乾燥させ、液体を除去することにより、蛍光体粒子の表面に被覆層を形成することを特徴とする蛍光体材料の製造方法。
【請求項2】
前記スラリーを乾燥させたのち、不活性ガス雰囲気中において熱処理することを特徴とする請求項1記載の蛍光体材料の製造方法。
【請求項3】
前記熱処理は、窒素及び長周期表第18族元素からなる群のうちの少なくとも1種を含む不活性ガス雰囲気中において行うことを特徴とする請求項2記載の蛍光体材料の製造方法。
【請求項4】
前記スラリーを乾燥させる際に、スラリーを撹拌することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1に記載の蛍光体材料の製造方法。
【請求項5】
前記スラリーを乾燥させる際に、ロータリーエバポレーター又はフラッシュエバポレーターを用いることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1に記載の蛍光体材料の製造方法。
【請求項6】
前記セラミックス微粒子の平均粒径を40nm以下とすることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1に記載の蛍光体材料の製造方法。
【請求項7】
前記セラミックス微粒子は、希土類酸化物,酸化ジルコニウム,酸化チタン,酸化亜鉛,酸化アルミニウム,イットリウムとアルミニウムの複合酸化物,酸化マグネシウム及びアルミニウムとマグネシウムの複合酸化物からなる群のうちの少なくとも1種の金属酸化物を含むことを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか1に記載の蛍光体材料の製造方法。
【請求項8】
請求項1から請求項7のいずれか1に記載の蛍光体材料の製造方法により作製されたことを特徴とする蛍光体材料。
【請求項9】
請求項1から請求項7のいずれか1に記載の蛍光体材料の製造方法により作製された蛍光体材料を含むことを特徴とする発光装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−229289(P2012−229289A)
【公開日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−96645(P2011−96645)
【出願日】平成23年4月23日(2011.4.23)
【出願人】(391005824)株式会社日本セラテック (200)
【Fターム(参考)】