説明

蛍光体材料及びこれを用いた発光部材、画像表示装置

【課題】高輝度で高い色再現域を表示できる蛍光体材料を提供する。
【解決手段】SrXBa1-XGa24(0<X<1)で示される母体材料中にEuを主元素とする発光中心を備えた蛍光体材料とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フラットパネルディスプレイの発光部材に用いられる蛍光体材料及び該材料を用いた発光部材と画像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ディスプレイ用蛍光体として、輝度、色純度等を改善すべく様々な蛍光体材料が研究されている。従来CRT用蛍光体としては、ZnS:Cu,Al、ZnS:Ag,Cl、Y22S:Eu等の蛍光体材料が用いられてきた。また近年では、プラズマディスプレイ用蛍光体として、Zn2SiO4:Mn、BaMgAl1617:Eu等の蛍光体材料が用いられている。
【0003】
また、最近では、図10に示すような赤、緑、青の三原色の組み合わせで画像を表示する方法の他に、図2に示すようなシアン色の発光領域を設け、色の再現領域を広げる研究が行われ、それに合わせた蛍光体材料の研究が行われている。尚、図10中の42はブラックマトリクス、43〜45は蛍光体、図2中の2はブラックマトリクス、3〜6は蛍光体である。
【0004】
例えば、特許文献1には、より広い色再現領域を実現するために、Sr4Al1425:Eu,Dyで表されるシアン−グリーン蛍光体材料を用いたプラズマディスプレイが提案されている。また、特許文献2には、Sr4Si38Cl4で記述されるシアン色蛍光体材料が記載されている。さらに、特許文献3には、BaGa24:Eu蛍光体材料を用いたELパネルに関する記載がなされている。
【0005】
【特許文献1】特開2003−249174号公報
【特許文献2】特開2004−152737号公報
【特許文献3】特開平10−19967号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の上記蛍光体材料は、発光輝度が十分でなく、また、表示色域の観点でも、いまだ不十分であった。また、特許文献2に記載された蛍光体材料においても、発光輝度特性と色域の拡大が十分でなく、高色域なディスプレイ用蛍光体としては不十分であった。さらに、人間の目の感度(標準比視感度)は、555nmが最大となることが知られており、発光スペクトルがその近辺にある程、人が感じる輝度が向上する。特許文献3に記載された蛍光体材料は、発光波長がおよそ490nmであることが知られており、よって、該蛍光体材料では、十分な輝度の発光が得られなかった。
【0007】
また、発光色に関しても、ディスプレイに用いる場合、より広い色域を表示するためには十分ではなかった。
【0008】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、高輝度で高い色再現域を表示できる蛍光体材料を提供し、該蛍光体材料を用いた発光部材及び画像表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第一は、下記式で示される母体材料中に発光中心が付活されていることを特徴とする蛍光体材料である。
【0010】
SrXBa1-XGa24 0<X<1
本発明の蛍光体材料においては、発光中心となる主元素がEuであることを好ましい態様として含む。
【0011】
本発明の第二は、基体と、前記基体上に配設された、少なくとも、上記蛍光体材料を用いて形成されている蛍光体とを備えることを特徴とする発光部材である。更に、本発明の発光部材は、上記蛍光体と、互いに発光ピーク波長の異なる少なくとも3種類の蛍光体とを備えることを好ましい態様として含む。
【0012】
本発明の第三は、上記発光部材と、この発光部材の蛍光体を励起して発光させる励起源とを備えることを特徴とする画像表示装置である。本発明の画像表示装置は、上記励起源が、電子線、または、紫外線源であることを好ましい態様として含む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下に、本発明の実施形態について詳しく説明する。
【0014】
本発明の蛍光体材料は、組成式として、SrXBa1-XGa24で表される母体材料(host)と、発光中心として付活する付活剤(activator)とを有する。付活剤としては、希土類金属を主成分とすることが好ましい。ここで、母体材料の組成比を示すXは、0<X<1の範囲の値をとり、SrGa24、BaGa24となることはない。
【0015】
発光中心の濃度は、母体材料を構成する元素のSrとBaの総和に対して、0.01から10原子%になるように調整することが好ましい。また、付活剤が希土類金属を主成分とする場合、主元素がEuであることが好ましく、具体的には、EuやEu化合物である。Eu化合物としてはユーロピウム金属、塩化ユーロピウム、フッ化ユーロピウム等が挙げられる。
【0016】
本発明の蛍光体材料は、紫外線や電子線を照射することで、高輝度な発光を観測することができる。さらに、母体材料の組成比Xを変化させることで、SrGa24:Euの発光ピーク波長である532nmから、BaGa24:Euの発光ピーク波長である490nmまでの発光色を変化させることができる。その時の発光色の変化を、CIE表色系による2次元色空間を示すxy色度座標で図1に示す。図中、A点がBaGa24:Eu、B点がSrGa24:Euであり、A点とB点とを結ぶ波線が本発明のSrXBa1-XGa24である。図1に示すように、SrとBaの組成比Xを所望の値に調整することで、490nmよりも大きく、532nmよりも小さな発光ピーク波長を有し、高輝度な発光が観測される蛍光体材料が得られる。
【0017】
本発明の蛍光体材料を画像表示装置に用いる場合、広色域化と高輝度の観点でCIE色度座標のx座標値は小さく、y座標値は大きいことが好ましい。この場合、母体材料の組成比のX値は、0<X<1範囲から選択され、さらに好ましくは、0.03≦X≦0.95であることが好ましい。
【0018】
尚、母体材料の組成比は、X線光電子分光(XPS)やEDS(Energy Dispersive X−ray Spectroscopy)、蛍光X線分析等で確認することができる。
【0019】
本発明の蛍光体材料の製造方法としては、原料粉末を混合し結晶化する固相結晶化法が挙げられる。その一例を説明する。
【0020】
先ず、硫化ストロンチウム粉末(SrS)、硫化バリウム粉末(BaS)、硫化ガリウム粉末(Ga23)及び、塩化ユーロピウム粉末(EuCl3)を混合する。この時、例えば、Sr0.2Ba0.8Ga24:Euとなる組成比を得るためには、重量比でおおよそ、SrS:BaS:Ga2S:EuCl3≒0.10:0.58:1.0:0.04となる比率で混合すればよい。また、硫化ガリウムとしては、組成比がGaSのものでも良い。
【0021】
このようにして混合した原料を、アルミナ等で形成された坩堝に入れ、硫化水素雰囲気中で900℃の温度で3時間程度処理することで結晶化することができる。硫化水素雰囲気は、アルゴンや窒素、その他の不活性ガスで数%に希釈したガスを用いることができる。さらに、アルゴンや窒素等の不活性ガス雰囲気中でも良い。
【0022】
また、結晶化処理の温度は、用いる原料粉末の粒径や結晶性により、700℃〜1400℃程度の範囲で製造することができる。
【0023】
次に、本発明の蛍光体材料を用いて、蛍光体を形成する方法について説明する。
【0024】
蛍光体を形成する方法としては、蒸着法やスパッタ法等があるが、ここでは蒸着法、特に二つの電子ビーム源を持つ電子ビーム蒸着法を例として説明する。
【0025】
先ず、硫化ストロンチウム粉末、硫化バリウム粉末及び塩化ユーロピウム粉末を混合し、錠剤状に成型することで、蒸発源を形成する。また、同様にして、硫化ガリウム粉末を錠剤状に成型する。
【0026】
次に、石英やガラス、シリコン等の基体とともに、これらの錠剤を蒸着装置内の所望の位置にセットし、真空排気する。
【0027】
次いで、二つの電子ビーム源より、先述の各々の蒸着源に電子ビームを照射し、蒸着源を蒸発させる。この時、電子ビームの照射量により、それぞれの蒸着源の蒸発量を制御する。例えば、Sr0.2Ba0.8Ga24:Euの組成比で表されるようにコントロールすればよい。基体は、必要に応じて、50℃〜600℃程度の範囲で加熱しても良い。
【0028】
このようにして基体上に形成された蛍光体材料の薄膜を、硫化水素雰囲気中で800℃程度に結晶化処理する。この結晶化処理により基体上に、容易にSr0.2Ba0.8Ga24:Eu蛍光体を得ることができる。結晶化温度は、基体材料等により、650℃〜1200℃程度の範囲で適宜最適な温度を選択することができる。
【0029】
また、熱処理雰囲気は、硫化水素ガス雰囲気の他に、硫化水素ガスをアルゴンや窒素で数%に希釈した雰囲気でも良いし、さらには、アルゴンや窒素等の不活性ガス雰囲気中でも良い。
【0030】
次に、本発明の蛍光体材料を用いた画像表示装置について詳細に説明する。
【0031】
従来、CRTディスプレイに代表されるカラーディスプレイは、赤色(R)、緑色(G)、青色(B)の3色の蛍光体を組み合わせて、カラー画像を形成している。
【0032】
近年、より多くの色、より実物に近い色をディスプレイで再現するために、表示できる色再現域を拡大する研究が行われている。
【0033】
この手法として、上記R,G,Bに加えて、シアン色(C)(もしくは、エメラルドグリーン色)の表色領域を設けて、色域を拡大する研究がなされている。このシアン色の蛍光体材料としては、図1に示すCIE色度座標において、x座標値が小さく、且つ、y座標値が大きいことが発光特性として求められる。それにより、高輝度で広色域のディスプレイが実現できる。
【0034】
本発明の蛍光体材料を用いて形成される上述の蛍光体を用いることにより、高輝度で広色域のディスプレイが実現できる。具体的には、従来のCRTディスプレイ用、フィールドエミッションディスプレイ(FED)用、表面伝導型エミッションディスプレイ用の蛍光体と同様の手法で、フェースプレートにブラックマトリクスを形成し、スクリーン印刷等の方法で蛍光体粒子を形成することができる。
【0035】
図2に、本発明の蛍光体材料を用いて形成される蛍光体が基体上に配設された発光部材の一例を示す。図2は、蛍光膜の1画素の構成を示すもので、図中、1は基体、2はブラックマトリクス等の光吸収層、3〜6は、互いに発光ピーク波長の異なる蛍光体である。図2に示すように、少なくとも、620nm〜780nmの波長域に発光ピーク波長を有する赤色の蛍光体3、500nm〜560nmの波長域に発光ピーク波長を有する緑色の蛍光体4、及び、435nm〜480nmの波長域に発光ピーク波長を有する青色の蛍光体5と、本発明の蛍光体材料を用いて形成された蛍光体6とを基体1上に設けて、4色の蛍光体領域を有する発光部材を形成する。但し、これらの蛍光体領域の順番や配置は、先述の配列に限定されるものではない。また、本発明の発光部材は、蛍光体6のみの1色の蛍光体領域が形成されたものであっても良い。更に、本発明の発光部材は、高輝度で広色域のディスプレイを実現するために必要であれば、5色以上の蛍光体領域が形成されたものであっても良い。
【0036】
また、上記発光部材においては更に、所定の電位が印加される電極をも備えるものであっても良い。この電極は、例えばアルミニウムやITOからなり、蒸着法、スパッタ法で形成される。
【0037】
また、上記の赤色、緑色、青色の各色蛍光体を構成する蛍光体材料として、ZnS:Cu,Al(緑)、ZnS:Ag,Cl(青)、Y22S:Eu(赤)、SrGa24:Eu(緑)、CaS:Eu(赤)、Zn2SiO4:Mn(緑)等から、発光部材の表示特性に合わせ、適宜組み合わせて用いることができる。
【0038】
この時、例えば、赤色にY22S:Eu、緑色にSrGa24:Eu、青色にZnS:Ag,Cl、更に本発明のSr0.2Ba0.8Ga24:Euを用いた場合、上記赤、緑、青の3色の組み合わせに比べて、表示色域は約26%向上する。
【0039】
最適な、SrXBa1-XGa24:Euの構成比は、用いる他の3色の蛍光体材料との組み合わせにより最適な組成比を選択することができ、0.1≦X≦0.8から選択されることが好ましい。
【0040】
上記のような本発明の蛍光体材料を用いて形成された蛍光体を含む4色の蛍光体を用いて、図3に示すようなFEDを作製することができる。図3中、8は基板、9はカソード電極、10は絶縁層、11はゲート電極、12は絶縁層10の開口部、13は電子放出部、14は基板、15は蛍光体、19はメタルバック、21はフェースプレートである。図5は斜視図であり、内部構造を示すために一部を切り欠いて示している。図中、16はリアプレートの基体、18はブラックマトリクス2と蛍光体15を備えた蛍光膜であり、23は電子放出領域、24は支持枠である。図3のディスプレイは、Spindt型の電子放出素子を用いたもので、図4に素子1個の構成を示す。図中の符号は図3と同様である。FEDとしては、このSpindt型以外にもMIM型や表面伝導型等のものから最適なものを選択することができる。
【0041】
図11に表面伝導型電子放出素子の構成を、図12にこれを用いた本発明の画像表示装置のパネルの概略構成を示す。図12は内部構造を示すために一部を切り欠いて示した斜視図である。図中、51は基板、52,53は素子電極、54は導電性膜、55は電子放出部、62は固定部材、63はスペーサー、64はX方向配線、65はY方向配線、66は電子放出素子であり、図5と同じ部材には同じ符号を付した。
【0042】
また、本発明の蛍光体材料を用いて形成された蛍光体を用いることで、エレクトロルミネッセンス(EL)ディスプレイ等への応用も可能である。
【0043】
ELディスプレイとしては、図8に示すようにガラスやシリコン等の基板31上に、ITO等の第一の電極層32を形成し、その上に、Ta25等の材料で形成される第一の誘電体層33を形成する。次いで、SrXBa1-XGa24:Euで表される本発明の蛍光体材料を用いて形成された蛍光体の薄膜層34、さらに、第二の誘電体層35、第二の電極層36を積層し、作製される。
【0044】
上記、積層基板の2つの電極層間に電圧を印加することで、蛍光体の薄膜層34から発光が得られる。
【実施例】
【0045】
以下、具体的な実施例を挙げて本発明を詳細に説明する。
【0046】
(実施例1)
本発明の蛍光体材料を作製した。原材料として、硫化ストロンチウム粉末(SrS)、硫化バリウム粉末(BaS)、硫化ガリウム粉末(Ga23)及び、塩化ユーロピウム粉末(EuCl3)を用いて、これらの粉末を乳鉢を用いて混合した。この時、母体材料がSr0.2Ba0.8Ga24となるように、それぞれの粉末を重量で、
SrS:BaS:Ga2S:EuCl3≒0.93:5.8:10:0.25
となるように秤量して用いた。Eu濃度は、Sr+Baのモル濃度に対して2原子%とした。
【0047】
次に、この粉末をアルミナ製坩堝に入れ、アルゴンで2%に希釈した硫化水素ガス雰囲気中にセットし、3時間、1000℃の雰囲気で結晶化処理を行った。このようにして作製した蛍光体材料の粉末の組成比を、蛍光X線により分析した。その結果、モル比率で、
Sr:Ba:Ga:S:Eu=2.05:7.98:20.3:40.9:0.42
の組成比の蛍光体材料が得られていることが確認できた。
【0048】
次に、作製した蛍光体材料の粉末の発光特性を評価した。0.1gの粉末に、350nmの紫外線を照射した時の輝度は、70cd/m2であった。これは、同条件で作製したBaGa24:Eu蛍光体のおよそ1.25倍の輝度であった。また、発光色をCIE色度座標で表すと、(x,y)=(0.130,0.520)となった。
【0049】
(実施例2)
実施例1と同様の製法で、組成比の異なる蛍光体材料を作製した。原材料は同様に、硫化ストロンチウム粉末(SrS)、硫化バリウム粉末(BaS)、硫化ガリウム粉末(Ga23)及び、塩化ユーロピウム粉末(EuCl3)を用いた。この時、母体材料がSr0.4Ba0.6Ga24となるように、それぞれの粉末を重量で、
SrS:BaS:Ga2S:EuCl3≒1.9:4.3:10.0:0.25
となるように秤量して用いた。
【0050】
これにより得られた蛍光体材料の発光特性を評価した。0.1gの粉末に、350nmの紫外線を照射した時に得られた輝度は、78cd/m2であった。また、CIE色度座標は、(x,y)=(0.135,0.620)であった。
【0051】
(実施例3)
本発明の蛍光体材料を用いて蛍光体を作製した。作製には、2つの電子ビーム源を持つEB蒸着装置を用いた。
【0052】
先ず、蛍光体の組成比がSr0.2Ba0.8Ga24:Euとなるように、硫化ストロンチウム粉末、硫化バリウム粉末及び塩化ユーロピウム粉末を重量で
SrS:BaS:EuCl3≒0.93:5.8:0.25
の比率で混合し、錠剤状に成型して蒸着源を作製した。また、同様にして、硫化ガリウム粉末2gを錠剤状に成型し、もう一つの蒸着源を作製した。
【0053】
次に、厚さ1mmで、20mm×20mmの大きさの石英基板を洗浄し、この石英基板を上記の錠剤とともに、蒸着装置内の所望の位置にセットし、真空排気した。
【0054】
蒸着装置内の真空度が、2×10-4Paに到達した時点で、石英基板の加熱を開始し、100℃に保持した。
【0055】
石英基板の温度の安定後、2つの電子ビーム源より各々の蒸着源に電子ビームを照射し、膜厚計をモニターしながら、所望の蒸発量になるように電子ビーム量をコントロールした。石英基板上には、トータルで0.5μmの厚さの膜を形成した。
【0056】
このようにして形成した薄膜を、アルゴンで2%に希釈した硫化水素雰囲気中で800℃、30分保持して結晶化処理を行い、薄膜の蛍光体を作製した。
【0057】
このようにして作製した薄膜の蛍光体に、350nmの紫外線を照射して発光特性を評価した結果、輝度は20cd/m2で、CIE色度座標は、(x,y)=(0.133,0.516)であった。この薄膜の蛍光体をEDS(Energy Dispersive X−ray Spectroscopy)で分析した結果、モル比でSr:Ba:Ga:S=2.1:7.85:21.1:39.7であった。
【0058】
(実施例4)
実施例1で作製した蛍光体材料を用いて画像表示装置を作製した。本実施例の画像表示装置は、図4の構成の素子を備えた図3のFEDである。
【0059】
先ず、リアプレート(電子源基板)20の製造方法を説明する。
【0060】
ガラス基板8上にカソード電極9として、スパッタ法でアルミニウムを200nm堆積させた。次に、絶縁層10として、600nmの二酸化ケイ素をCVD法で堆積し、さらに、スパッタ法でゲート電極11としてチタン膜を100nm堆積させた。
【0061】
次に、フォトリソグラフィー及びエッチング工程により、上記ゲート電極11及び絶縁層10に1μm径の開口部12を形成した。
【0062】
次いで、上記の製造工程を経た基板を、スパッタ装置内にセットし、装置内の真空排気を行った後、電子放出部13を形成するために、基板8を回転させながら斜方よりモリブデンを堆積させた。この後、余分なモリブデンをリフトオフし電子放出部13を形成した。上記の工程により、リアプレート20を形成した。尚、ここでは、1画素に対応する領域で説明したが、実際には、これらの構造が基板上にマトリクス状に配置されている。
【0063】
次に、フェースプレート(蛍光面)21の作製方法を説明する。
【0064】
ガラス基板14上に、不要な発光面を除去するために、ブラックマトリクス2をスクリーン印刷により形成した。この時、図2に示す蛍光体3、4、5、6が形成される領域に開口部を設けた。
【0065】
次に、蛍光体材料の粉末をバインダー等に分散させ、ペースト状にしたのち、このペーストをスクリーン印刷により上記開口部に塗布して、蛍光体15を形成した。この時蛍光体材料は、赤色の蛍光体3を形成するためにY22S:Eu、緑色の蛍光体4を形成するためにZnS:Cu,Al、青色の蛍光体を形成するためにZnS:Ag,Cl、蛍光体6を形成するためにSr0.2Ba0.8Ga24:Euを用いた。尚、Sr0.2Ba0.8Ga24:Euは、実施例1と同様の条件で作製した。
【0066】
次に、フィルミング工程を経て、メタルバック19としてアルミニウムを100nm蒸着法により堆積し、フェースプレート21を形成した。尚、ここでは、1画素に対応する領域で説明したが、実際には、これらの構造が基板上にマトリクス状に配置されている。
【0067】
このようにして作製した、リアプレート20とフェースプレート21を組み合わせて、FEDを作製した。電子放出部23は、カソード電極9とゲート電極11が交差した領域に設けられている。更に、複数の電子放出部23のそれぞれは、図2に示す蛍光体3〜6のそれぞれに対応するように設けられている。リアプレート20とフェースプレート21の接合部には、支持枠24を配置した。
【0068】
フェースプレート21には、高圧印加端子Hvを接続した。印加電圧は、10kVとした。
【0069】
リアプレート20には、カソード電極9とゲート電極11に、それぞれ信号入力端子Dx1〜Dmx、Dy1〜Dmyが接続されており、それぞれの端子には、駆動ドライバからの信号を入力した。
【0070】
比較のために、従来型の赤(Y22S:Eu)、緑(ZnS:Cu,Al)、青(ZnS:Ag,Cl)色の3色の組み合わせで画像を形成するFEDを作製した。
【0071】
このようにして作製したディスプレイの表示色域を図6のCIE色度座標に示す。本発明のFEDでは従来型のFEDと比較して、表示領域でおよそ38%の色域拡大が実現できた。
【0072】
(実施例5)
実施例4と同様の方法で、図3に示すFEDを作製した。
【0073】
但し、本実施例では、赤色蛍光体にY22S:Eu、緑色蛍光体にSrGa24:Eu、青色蛍光体にZnS:Ag,Cl、更にもう1色の蛍光体としてSr0.4Ba0.6Ga24:Euを用いた。尚、Sr0.4Ba0.6Ga24:Euの蛍光体材料は、実施例2と同様の条件で作製した。
【0074】
比較のために、従来型の赤(Y22S:Eu)、緑(ZnS:Cu,Al)、青(ZnS:Ag,Cl)色の3色の組み合わせで画像を形成するFEDを作製した。
【0075】
このようにして作製したディスプレイの表示色域を図7のCIE色度座標に示す。本発明のFEDでは従来型のFEDと比較して、表示領域でおよそ57%の色域拡大が実現できた。
【0076】
(実施例6)
本発明の蛍光体材料を用いて、図8に示すようなELパネル用素子を作製した。
【0077】
ガラス基板31上に、第一の電極層32として、ITOをスパッタ法にて100nm堆積し、その上に、同様にスパッタ法を用いて第一の誘電体層33としてTa25を200nm堆積した。
【0078】
次に、上記第一の誘電体層33上に、蛍光体の薄膜層34を形成した。蛍光体の薄膜層34の形成方法は、実施例3と同様の方法を用いた。形成した蛍光体の薄膜層34は、Sr0.2Ba0.8Ga24:Euとなるように蒸着法により形成した。
【0079】
次に、上記の蛍光体の薄膜層34上に、第二の誘電体層35として、スパッタ法によりTa25を200nm堆積した。
【0080】
次に、上記の積層基板を、Ar雰囲気で700℃、10分間の加熱処理を行った後、第二の誘電体層35上に、第二の電極層36としてITOをスパッタ法にて200nm形成した。
【0081】
このようにして作製したELパネル用素子の発光特性を評価した。
【0082】
上記素子の電極層32と36の間に、1kHz、パルス幅30μsecの信号を印加した結果、輝度で400cd/m2の発光が得られた。また、この発光色をCIE色度座標で表示すると、(x,y)=(0.12,0.52)の発光色が得られた。
【0083】
(実施例7)
本発明の蛍光体材料を用いて、画像表示装置を作製した。本実施例の画像表示装置は、図9に示すFEDである。リアプレート20の作製方法は、実施例4と同様である。
【0084】
フェースプレート21の作製方法を説明すると、ガラス基板14上に、蛍光体17とブラックマトリクス2からなる蛍光膜を形成した。蛍光体の形成方法は、実施例3と同様にEB蒸着法を用いた。形成した蛍光体17は、Sr0.2Ba0.8Ga24:Euとなるように組成を制御した。赤、青、緑については実施例4と同様とした。
【0085】
また、蒸着時には、蛍光体17がストライプ状に分離されるように、金属マスクを施し、該マスク領域に蛍光体材料が付着しないように成膜した。
【0086】
次に、上記の基板を、アルゴンで1%に希釈した硫化水素雰囲気中で、850℃、30分保持し、結晶化処理を行った。
【0087】
次に、上記の蛍光体が分離された領域に、スクリーン印刷法でブラックストライプ2を形成した後、EB蒸着法にてメタルバック19としてAlを100nm堆積し、フェースプレート21の電極を形成した。
【0088】
このようにして形成したリアプレート20とフェースプレート21を組み合わせて、FEDを作製した。
【0089】
フェースプレート21に、電圧として10kV印加した状態を保持し、リアプレート20を駆動した結果、高精細なFEDが実現できた。
【図面の簡単な説明】
【0090】
【図1】本発明の蛍光体材料の発光色を示す図である。
【図2】本発明の蛍光体材料を用いた蛍光膜の構成を示す図である。
【図3】本発明の画像表示装置の一例のFEDを示す断面図である。
【図4】FEDに用いられるSpindt型電子放出素子を示す図である。
【図5】本発明の画像表示装置の一例のFEDを示す斜視図である。
【図6】本発明の実施例4のシアン色の発光特性を示す図である。
【図7】本発明の実施例5のシアン色の発光特性を示す図である。
【図8】本発明の実施例6のELディスプレイを示す断面模式図である。
【図9】本発明の実施例7のFEDを示す図である。
【図10】従来の蛍光膜の構成を示す図である。
【図11】本発明に適用される表面伝導型電子放出素子の構成を示す模式図である。
【図12】表面伝導型電子放出素子を用いた本発明の画像表示装置のパネルの構成を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0091】
1 基体
2 ブラックマトリクス
3、4、5、6 蛍光体
7 電子源
8 基板
9 カソード電極
10 絶縁層
11 ゲート電極
12 開口部
13 電子放出部
14 基板
15 蛍光体
16 基体
17 薄膜蛍光体
18 蛍光膜
19 メタルバック
20 リアプレート
21 フェースプレート
22 FEDパネル
23 電子放出領域
24 支持枠
31 基板
32 第一の電極層
33 第一の誘電体層
34 蛍光体薄膜層
35 第二の誘電体層
36 第二の電極層
42 ブラックマトリクス
43、44、45 蛍光体
51 基板
52,53 素子電極
54 導電性膜
55 電子放出部
62 固定部材
63 スペーサー
64 X方向配線
65 Y方向配線
66 電子放出素子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式で示される母体材料中に発光中心が付活されていることを特徴とする蛍光体材料。
SrXBa1-XGa24
0<X<1
【請求項2】
前記発光中心となる主元素がEuである請求項1に記載の蛍光体材料。
【請求項3】
前記Xは、0.03≦X≦0.95である請求項1又は2に記載の蛍光体材料。
【請求項4】
基体と、前記基体上に配設された、少なくとも、請求項1〜3のいずれかに記載の蛍光材料を用いて形成されている蛍光体とを備えることを特徴とする発光部材。
【請求項5】
基体と、前記基体上に配設された、互いに発光ピーク波長の異なる少なくとも3種類の蛍光体と、請求項1〜3のいずれかに記載の蛍光体材料を用いて形成されている蛍光体とを備えることを特徴とする発光部材。
【請求項6】
前記3種類の蛍光体はそれぞれ、赤色波長域、緑色波長域、青色波長域に、発光ピーク波長を有する蛍光体である請求項5に記載の発光部材。
【請求項7】
前記基体上に、更に光吸収層が配設されている請求項4〜6のいずれかに記載の発光部材。
【請求項8】
前記基体上に、更に所定の電位が印加される電極が配設されている請求項7に記載の発光部材。
【請求項9】
請求項4〜8のいずれかに記載の発光部材と、前記発光部材の蛍光体を励起して発光させる励起源とを備えることを特徴とする画像表示装置。
【請求項10】
前記励起源が、電子線である請求項9に記載の画像表示装置。
【請求項11】
前記励起源が、紫外線源である請求項9に記載の画像表示装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate


【公開番号】特開2007−112950(P2007−112950A)
【公開日】平成19年5月10日(2007.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−307943(P2005−307943)
【出願日】平成17年10月24日(2005.10.24)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】