説明

蛍光増白剤を含むポリアミド組成物、それから製造された糸、およびかかる糸のヒートセッティング方法

抗菌剤か酸化防止安定剤かのどちらかまたは両方と共に蛍光増白剤を含むポリアミド組成物は、糸、および布、衣類、成形品またはこれらの糸からのカーペットなどの他の物品を製造するのに好適である。ヒートセッティング後に優れた白色度を示す布および成形品を製造するためのポリアミド組成物、ポリマーおよび糸への蛍光増白剤の組み入れ方法もまた開示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、改善された合成ポリアミド組成物およびそれから製造された糸に関する。より具体的には、本発明は、蛍光増白剤と抗菌剤か酸化防止安定剤かのどちらかとを含むポリアミド組成物、およびかかる組成物から製造された糸に関する。本発明はさらに、蛍光増白されたポリアミド組成物および糸の製造方法に、ならびにかかる糸から製造された染色布に関する。本発明はまた、優れた白色度のヒートセットされたポリアミド布の製造方法、およびまた、優れた白色度の成形品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
すべてのポリアミドは熱処理すると幾らかの変色を示す。この問題は、寸法安定性与えるためにヒートセッティングにさらされた布(スパンデックス含有布、幾つかのランジェリーおよびブラジャーカップの成形品で)で特に明らかである。ナイロン変色の問題は抗菌剤の使用でとりわけ明らかである。多くの有機抗菌剤は、それらが溶融紡糸プロセス中に化学反応して未同定の化学種を形成するので、ナイロンで容易に使用することができない。ほとんどの無機代替品は銀を含有する化合物をベースにしており、これらは、特にヒートセット時にまたはその後の洗濯時に変色を引き起こす特有の性向を有する。
【0003】
とりわけ、ポリヘキサメチレンアジパミド、すなわちナイロン6,6(N66)ポリマー−ベース糸はしばしば、ポリカプロアミド、すなわちナイロン6(N6)ポリマー−ベース糸と並べて比較された時に色がわずかに黄色のように見える。しかしながら、両糸とも、布がさらにヒートセットされる時に変色する。
【0004】
N6,6およびN6糸の両方の製造業者は、彼らの製品の黄変に対する改善策を探求してきたし、一般的には蛍光増白剤での局所処理に依存してきた。用語「局所処理」はこの文脈において布の表面に局所的に適用される処理を意味する。蛍光増白剤での糸、布または衣類の局所処理は有効であるが、永続的ではない。布を蛍光増白剤で局所的に処理する方法は、「パディング−オン」として知られている。あるいはまた、糸または布は、蛍光増白性白色染料を用いる通常のやり方で染色されてもよい。しかしながら、どちらのケースでも、蛍光増白効果は、染色および普通の洗濯操作のようなその後の織物加工で徐々に失われる。
【0005】
(非特許文献1)は、ナイロン6「繊維グレード」樹脂での蛍光増白剤、イーストブライト(EASTOBRITE)(登録商標)OB−1[2,2’−(1,2−エテンジイルジ−4,1−フェニレン)ビスベンゾオキサゾール]の使用を開示している。これらの蛍光増白剤は、スペクトルの紫外部分を吸収し、可視スペクトルの青色領域の光を再発光することによって機能する。青色蛍光は、蛍光増白剤を含有する材料の黄色の外観を低下させる。(非特許文献1)は、粉末蛍光増白剤(トリアジン型、クマリン型、ベンゾオキサゾール型、スチルベン型およびOB−1)と2つのポリアミドナイロン6樹脂とのブレンディングを議論している。これらの樹脂は、0.3%二酸化チタンを含有する第1の艶消し樹脂および1.6%二酸化チタン入りの第2の樹脂であった。これらのナイロン6樹脂は3ミリメートル・メッシュサイズに粉砕され、増白剤組成物とドライブレンドされた。異なるように蛍光増白されたナイロン6樹脂は延伸糸へ紡糸され、編まれて布を作り、布は、耐光堅牢度および白色度測定の前にこすり洗いされた。(非特許文献1)はまた、「生産条件をシミュレートする」ために、湿った酸素なし環境中での増白剤と溶融ナイロン6,6とのブレンディングを議論している。イーストマン(EASTMAN)は、イーストブライト(登録商標)OB−1がこのブレンド中で「安定であり、その蛍光を保持する」と報告した。しかしながら、何の繊維紡糸結果も白色度データもナイロン6,6について報告されなかった。引張強度および耐光堅牢度の重要な繊維特性もまた、いかなるポリアミドについてもイーストマンによって報告されなかった。
【0006】
合成ポリマー・ベース糸および布の白色度を保持するための先行技術改善策、特にナイロン6,6「布白色度」を改善するために探求された改善策は、商業的製造方法にとって十分なものではない。上に指摘されたように、従来のパディングまたは染色技法は高くつくし、それらの活性を長期にわたって保持しない。そのようなものとして、ヒートセッティングのような布ポスト処理によって影響を受けない永続的な白色度改善を達成するための合成ポリアミドポリマー中への蛍光増白剤の組み入れに対するニーズは依然として存在する。さらに、パディング−オンおよび白色染色の方法は白色布に限定され、その結果その後に染色してよりきれいなより明るい色を与えることができる良好な白色布を製造する方法を見いだすことは非常に望ましい。
【0007】
【特許文献1】米国特許第5,164,261号明細書
【非特許文献1】イーストマン・ケミカル・カンパニー刊行物(EASTMAN Chemical Company Publication)AP−27C、1996年12月
【非特許文献2】エム.アイ.コーハン(M.I.Kohan)編、「ナイロンプラスチックス・ハンドブック(Nylon Plastics Handbook)」、ISBN 3−446−17048−0
【非特許文献3】米国繊維化学者・色彩技術者協会委員会RA36(Committee RA36,AATCC)、「繊維工業におけるカラー技術(Color Technology in the Textile Industry)」、第2版中のハロルド(Harold)およびハンター(Hunter)著、「白色についての特殊スケール(Special Scales for White Colors)」、1997年、140−146ページ
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0008】
出願者らは、糸そのものへ蛍光増白剤を組み入れることによって合成ポリアミド組成物から製造された糸が白色度外観の点で改善され得ることを観察した。かかる糸は永続的な白色度向上を示し、ヒートセッティングのような操作中この白色度向上を保持することができる。ある種のケースでは、それらはまた、布が染色された時によりきれいな、より強く着色した布をもたらす。着色布へのこの効果は、増白剤が染色プロセス中に布から除去されるので、従来の蛍光増白技法によって達成することができない。
【0009】
さらに、これらのポリアミド組成物は、酸化防止安定剤または抗菌性添加剤を含有してもよい。蛍光増白剤と抗菌剤との使用は、銀ベース抗菌剤入りナイロン糸が、特にヒートセッティング時にまたはその次の洗濯時に、さもなければ変色する傾向があるのでとりわけ有益である。
【0010】
本発明のナイロンポリマーおよびコポリアミドは、とりわけ酸性、反応性および分散性染料によって本質的に染色できるが、ポリマー中に共重合された5−スルホイソフタル酸のような添加物でこれらのポリマーまたは共重合体を変性することによって塩基性染色形にまたされてもよい。この変性は、かかる組成物から製造された糸が塩基性染料での着色をとりわけ受け入れるようにする。ポリアミド組成物はまた、当該技術で周知の他の添加剤(例えば、UV吸収剤、光安定剤、触媒、核剤、着色顔料、そしてこれらに限定されない)を含んでもよい。
【0011】
それ故、本発明に従って、抗菌剤もしくは酸化防止安定剤、または両方と共に蛍光増白剤を含むポリアミド組成物が提供される。ポリアミド組成物は典型的にはポリヘキサメチレンアジパミドもしくはポリカプロアミド、またはそれらの共重合体であってもよいが、これらのポリマーまたは共重合体に限定されない。ポリアミド組成物は酸性染色できるポリマーか、塩基性染色できる(カチオン染色できる)ポリマーかのどちらかであってもよい。本発明はまた、かかる組成物から製造された糸、かかる糸から製造された布および衣類を、蛍光増白剤を含有する染色布を、ならびにポリマー、組成物および糸の製造方法を指向する。
【0012】
さらに本発明に従って、蛍光増白されたナイロン糸から布を作る工程と、布を約160℃〜約220℃の範囲の温度に約20秒〜約90秒間加熱する工程とを含む、満足できる白色度のヒートセットされたナイロン布の製造方法であって、布がヒートセッティング後に測定された、少なくとも75のCIE白色度を有する方法もまた提供される。
【0013】
本発明に従って、改善された白色度のブラジャーカップのような成形品の製造方法がさらに提供される。蛍光増白されたナイロン糸で製造された布は、予め定められた時間、金型中で熱および圧力にかけられる。
【0014】
本発明の他の目的は次の説明から明らかであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明に従って、蛍光増白剤を含むポリアミド組成物が提供される。ポリアミド組成物は、酸性染色できるポリマーまたは塩基性染色できるポリマー(カチオン変性ポリマーとしても知られる)を含んでもよい。ポリアミド組成物は典型的にはポリヘキサメチレンアジパミド(ナイロン6,6)か、ポリカプロアミド(ナイロン6)かのどちらか、またはこれらのポリアミドのどちらかの共重合体であってもよい。蛍光増白剤は組成物の約0.005〜約0.2重量パーセントの量で存在する。
【0016】
本発明のポリアミド組成物は、抗菌剤もしくは酸化防止安定剤、または該2つの添加剤の組合せをさらに含む。抗菌剤は銀含有化合物であってもよい。抗菌剤は典型的には組成物中に約0.1〜約1.0重量パーセントの量で存在する。酸化防止剤の濃度は、有機システムが用いられる場合には0.1〜2重量%の範囲にあってもよいが、酸化防止剤が銅イオン含有化合物の使用をベースとする場合には5ppmほどに低いものであってもよい。本発明の添加剤は2つ以上の蛍光増白剤、抗菌性添加剤または酸化防止添加剤よりなってもよい。
【0017】
本発明のポリアミド組成物は、重合前、重合中または重合後に蛍光増白剤(OBA)を添加することによって製造されてもよい。換言すると、OBAはモノマー材料そのもの(ナイロン6,6のケースではヘキサメチレンジアミンおよびアジピン酸、またはナイロン6のケースではカプロラクタム)と共に、すなわちそれらのモノマー材料がポリマーへと処理されている間に導入されてもよいし、または重合プロセスが完了した時点で溶融ポリマー中へ導入されてもよい。あるいはまた、OBAはまた、担体ポリマーを用いてより高い濃度でマスターバッチ中へ配合されてもよく、その後このマスターバッチのポリマー顆粒が溶融、混合およびフィラメントへの押出の前に通常ポリマー中へ計量供給される。あるいはまた、後の混合および押出のために、固体顆粒を混合するのとは対照的に、マスターバッチ・コンセントレートまたは純OBAが溶融され、別個の流れとして通常の溶融ポリマー・フロー中へ供給されてもよい。
【0018】
具体的には、ポリアミド組成物はオートクレーブ法によって製造されてもよい。この方法では、ナイロン6,6塩の濃い水溶液がオートクレーブ容器に提供されてもよい。該溶液は、当該技術で公知のやり方で、モノマーのヘキサメチレンジアミンおよびアジピン酸の水溶液から調製されてもよい。場合により、該溶液はまた、ジアミン、ジカルボン酸またはカプロラクタム溶液としてのナイロン6モノマーのような少量の他のモノマーを含有してもよい。場合により加えられるコモノマーは、約0.5〜約20重量パーセントの最終共重合体含有率を提供するための量でナイロン6,6塩と混合されてもよい。オートクレーブ容器は次に約220℃に加熱されて内圧を上げるに任せてもよい。艶消剤、二酸化チタン(TiO)のような他の添加剤は場合によりこの時点でオートクレーブ中へ水性分散系として注入されてもよい。
【0019】
蛍光増白されたポリマーを提供するために、蛍光増白剤の水性分散系もまた同一時点でオートクレーブ容器中の混合物中へ注入されてもよい。あるいはまた、蛍光増白剤は、濃厚な塩溶液が先ずオートクレーブ中へ導入される時に、カプロラクタムのような有機溶媒中の水性分散系または水溶液として添加されてもよい。あるいはまた、蛍光増白剤は、濃縮およびオートクレーブ中への導入の前に塩溶液が先ず調製される時に含められていてもよい。混合物は次にオートクレーブ中で約245℃に加熱されてもよい。この温度でのまま、オートクレーブ圧力は、ポリアミド組成物を形成するために、大気圧に下げられてもよく、そしてまた公知のやり方で減圧の適用によってさらに下げられてもよい。ポリアミド組成物を含有するオートクレーブは、典型的にはこの温度に約30分間維持されるであろう。この工程の後に、オートクレーブ中のポリアミドポリマー組成物の約285℃へのさらなる加熱およびオートクレーブ容器への乾燥窒素の導入ならびに約4〜5バール絶対圧へのオートクレーブの加圧が続いてもよい。ポリマー組成物は、オートクレーブ容器の入口を開き、溶融ポリアミド組成物をレースの形で容器から流れ出させることによってオートクレーブから取り出されてもよい。これらのレースは冷却され、水の流れ中で急冷されてもよい。次に、ポリアミドポリマーのレースは公知の方法によって粒状化され、さらに水で冷却されてもよい。
【0020】
あるいはまた、組成物は連続重合(CP)ルートによって調製されてもよい。ナイロン6,6およびその共重合体については、必須のプロセス工程はオートクレーブ法に似ている。ナイロン6,6塩および適切なコモノマーの濃厚液が予備重合装置に導入され、そこで水のほとんどが除去され、塊は低分子量のポリマーに重合する。溶融物は次に加熱されたチューブを下行し、より高分子量ポリマーとして出て、ポリマーからスチームを分離装置で除去することができる。溶融ポリマーは次にレースとして押し出され、水中で冷却され、乾燥するのに、場合により固相で重合度を上げるのに、および後の紡糸のために再溶融するのに好適な顆粒へカットされてもよい。
【0021】
あるいはまた、CPラインは、冷却および顆粒へのカットの中間工程を通すことなく直接紡糸が可能であるように、紡糸機に連結されてもよい。回分法でのように、蛍光増白剤は、幾つかの異なるポイントで、好ましくは水性分散系として導入されてもよい。このように、蛍光増白剤は、濃縮前の元の塩溶液に添加されても、または濃厚な塩溶液と同時に重合の第1段階へ導入されても、またはさらに下流で溶融物中へ注入されても、またはさらに最終の新生ポリマー流れ中へ溶融状態で注入されてもよい。
【0022】
ナイロン6およびその共重合体はほとんど常にCPルートによって製造され、そのルートではカプロラクタム、少量の水、および酢酸または安息香酸のような開始触媒がコモノマーおよび二酸化チタンのような添加剤スラリーと一緒にCP重合器へ供給される。これはしばしば簡単なVKチューブであるが、近代的プラントは一般に、予備重合容器を含む2段階システムを用いる。混合物は熱にさらされ、スチームが除去され、ポリマー塊が押出ダイにポンプ送液され、そこで押し出されたレースは水中で冷却され、顆粒にカットされる。顆粒は普通はモノマーを除去するために熱水で抽出され、次に後の紡糸のために乾燥される。紡糸プラントへの直接連結は、モノマーおよびオリゴマーを抽出することが困難であるためにまれである。蛍光増白されたポリマーを製造するために、蛍光増白剤はプロセスの任意の段階で含めることができるが、はるかに最も便利なのは、他の原材料と一緒に、システムへの入口で水性スラリーとして蛍光増白剤を供給することである。ナイロンポリマーの一般的な製造方法は、(非特許文献2)で熟練者向けにうまくまとめられている。
【0023】
あるいはまた、本発明のポリアミド組成物は、高濃度、例えば1〜10重量%の蛍光増白剤が好適な担体ポリマー、好ましくはポリアミド中へ組み入れられるマスターバッチ法によって製造されてもよい。かかるマスターバッチは理論的には、添加剤の適切な高濃度が達成できるという条件で、上に概説された方法の任意のものによって製造されてもよい。しかしながら、予め定められた量の粉末添加剤と担体ポリマーとが押出機で混合され、一緒に溶融され、レースへ押し出され、水によって冷却され、顆粒へカットされる配合法を用いることがより典型的である。顆粒のその後のブレンディングは、全体にわたって一様であるコンセントレートを与える。この濃厚なマスターバッチは次に計量供給システムによって標準ポリマー顆粒と混合され、2つが一緒に溶融されて本発明の組成物を与えるか、マスターバッチは別々に溶融され、次に溶融した標準ポリマーのフロー中へ注入されるかのどちらかであってもよい。2つ以上の原料、例えば、抗菌剤および/または酸化防止剤と共に蛍光増白剤が加えられることになっている場合、すべての原料を一緒に単一のポリマーマスターバッチへ配合することが非常に有利である。
【0024】
様々な代替がその範囲から逸脱することなく本発明に対して行われてもよい。例えば、蛍光増白剤はマスターバッチに頼らずに溶融され、次に紡糸機の入口で溶融した標準ポリマーのフローへ注入される。あるいはまた、蛍光増白剤は、(非特許文献1)に暗示されているように、任意の段階で標準ポリマーに固体粉末形で投与されてもよいが、この投与は濃度を制御することを困難にするかもしれない。あるいはまた、蛍光増白剤は乳化性ワックス中へ組み入れられてもよく、それが次に水性分散系を形成するために使用される。分散系は必要とされる量でポリアミドポリマー顆粒上へ吹き付けられ、次に乾燥される。処理された顆粒は次に溶融し、繊維へ紡糸することができる。
【0025】
上記のマスターバッチ法、CP法またはオートクレーブ法のどれも、約32〜約62のギ酸法相対粘度(RV)および1000キログラムのポリマー当たり約45グラム当量のアミン末端のポリアミド組成物を提供することができる。場合により、どの方法も、ナイロン6,6塩の水溶液へのヘキサメチレンジアミン溶液のような過剰の有機ジアミンの添加によって提供される、またはナイロン6重合器へのカプロラクタム供給で、1000キログラムのポリマー当たり約50〜約75グラム当量のアミン末端を有するポリアミド組成物を製造するように修正されてもよい。さらにポリマーは、はるかにより高い粘度レベルに固相装置でさらに重合させられてもよい。
【0026】
本明細書に記載されるナイロンポリマーおよびコポリアミドは本質的に酸性染色できる。これらのポリマー中の遊離アミン末端基(AEG)の数は1000キログラムのナイロンポリマー当たり少なくとも25グラム当量である。ポリマーをより深く酸性染色性にするために、高レベルの遊離アミン末端基が望ましい。より深く酸性染色性のナイロンポリマーは1000キログラムのナイロンポリマー当たり少なくとも35グラム当量の高められたAEGレベルを有し、1000キログラムのナイロンポリマー当たり60〜130グラム当量のAEGレベルが用いられてもよい。
【0027】
本明細書に記載されるナイロンポリマーおよびコポリアミドはまた、塩基性染色性の形へ、すなわち、カチオン染料とも呼ばれる塩基性染料での着色を受け入れるようにされてもよい。かかる塩基性染色性糸は、カチオン染料改質剤がポリマー中に共重合されたポリアミドポリマーから製造される。そっくりそのまま参照により本明細書に援用される、ウィンドレイ(Windley)に付与された米国特許公報(特許文献1)は、かかるカチオン染料改質ポリアミドの製造を記載している。本発明では、重合中にポリマーを0.3〜4パーセントの好ましいカチオン染料改質剤5−スルホイソフタル酸のナトリウム塩、またはそのジメチルエステルで改質することが好ましい。典型的には、秤量した量の5−スルホイソフタル酸のナトリウム塩、またはそのジメチルエステルが、当該技術で公知の標準重合手順を用いてオートクレーブ中で既知量のポリアミド前駆体塩と組み合わせられる。好ましくは、ポリマーは、ポリマーの全硫黄分析によって測定されるように、約0.75〜約3重量パーセントの量でカチオン染料改質剤を含有する。この量のカチオン染料改質剤は当量スルホネート機として報告される。好ましいスルホネート基濃度は1000キログラムのポリマー当たり少なくとも25グラム当量から1000キログラムのポリマー当たり約200グラム当量以下である。
【0028】
本発明のポリアミド組成物は、布上へパッドされるのとは対照的に、蛍光増白剤が組成物中に、従って、布が形成された時には糸そのものに存在するので、糸へ紡績された時にとりわけ有用である。本発明の糸は、特にヒートセッティングのような布処理後に、改善された白色度を示す。さらなる利点は、蛍光増白された布が次に、酸性染料、カチオン染料、反応性染料などを用いて、通常の方法で染色されて標準布よりきれいで、新鮮で、明るく見える着色布を与えるかもしれないことである。この結果は、増白剤が染色工程中に抜けるので、パディング−オンまたは青味付け法によって達成するのは不可能である。
【0029】
典型的には、本発明の糸は、低延伸糸(LOY)、部分延伸糸(POY)または完全延伸糸(FDY)のどれかの形のマルチフィラメント織編用糸である。糸は、部分延伸糸から製造されたテクスチャード加工糸、またはエアジェット・テクスチャード加工糸であってもよい。さらに、本発明の糸は実質的に連続であっても、より短い長さのものよりなってもよい。かかる糸は布を製造するために使用されてもよく、布は順繰りに衣類を製造するために使用されてもよい。また、本発明の糸は嵩高加工連続フィラメント糸(BCF)またはスフ糸であってもよく、カーペット糸として実用性を有する。糸はまたより高強度の工業糸であってもよく、工業糸では、熱気球用の透明な派手な色の布のような、ある種の分野で、またはスポーツウェア用靴紐でのより耐久性の白糸で明らかな利点がある。
【0030】
本発明の糸は、公知の溶融紡糸法技術をアレンジすることによって製造されてもよい。かかる技術では、CPまたはオートクレーブ法を用いることによって製造された粒状化ポリアミド組成物であって、両方とも上記のようにその中に蛍光増白剤を有する組成物が紡糸機に提供される。粒状化ポリアミド組成物はまた、標準ポリマーと、蛍光増白剤および場合により他の添加剤と共に担体樹脂を含む測定された量のマスターバッチ・コンセントレートとのブレンドを含有してもよい。あるいはまた、連続重合装置(CP)からの蛍光増白された溶融アウトプットはかかる紡糸機に直接つながれてもよい。溶融ポリマーは計量供給ポンプによってフィルターパックへと前進させられ、紡糸温度で所望のフィラメント断面をもたらすように選ばれた形状のキャピラリーオリフィスを含有する紡糸口金プレートを通して押し出される。これらの断面形状には、円形、非円形、三葉およびディアボロ、中空または多くの他のものが含まれる。紡糸温度は典型的には、ナイロン6,6およびその共重合体については270℃〜300℃、ナイロン6およびその共重合体については250℃〜280℃の範囲にある。紡糸口金プレートから出てくるフィラメントの束は、調節された急冷空気によって冷却され、紡糸仕上剤(油/水エマルジョン)で処理され、場合によりインターレースされる。FDY(完全延伸糸)のケースでは、紡糸機でのインライン加工は、1セットのゴデットロール(供給ロール)周りを数回転させ(回転の数はこれらのロール上での滑りを防ぐのに十分である)、次に予め定められた量(延伸比)で糸を延伸するのに十分な速度で回転する別セットのロール(延伸ロール)上へ糸を通し、最後に巻取装置で巻き取る前に、例えばスチーム−ボックスで糸を加熱し、弛緩させることよりなる。少なくとも4000メートル毎分の速度が近代プロセスに特有である。場合により、加熱ロールのような、代わりの加熱(または弛緩)方法が用いられてもよく、糸がセットされるまたは弛緩される間ずっと張力を制御するために追加セットのゴデットロールが延伸ロールとウィンドーとの間に組み入れられてもよい。また、場合により、紡糸仕上剤の第2塗布、および/または追加インターレーシングが最終巻取工程の前に適用されてもよい。POYのケースでは、追加インライン加工は、本質的に同じ速度で回転する2つのゴデットロール上にS−ラップを作り、次に糸を高速巻取機へ通し、少なくとも3500メートル/分の速度で巻き取ることだけよりなる。S−ラップの使用は張力を制御するために有益であるが、必須ではない。かかるPOYは、製織またはニッティング用のフラットヤーンとして、またはテクスチャード加工用の原料として直接使用されてもよい。LOY紡糸法は、おそらく1000m/分またはそれ以下のより低い巻取速度が用いられることを除いてはPOYに似ている。これらの低い延伸糸は、一般に、第2段階、例えば、通常のドロー−ツイスターまたは延伸−巻取機によってさらに加工される。
【0031】
さらに本発明に従って、糸をある温度に約20〜約90秒間加熱する加熱する工程を含む蛍光増白されたナイロン糸のヒートセッティング方法であって、該糸が約160℃〜約220℃の範囲の温度でヒートセットされた後に測定されて、少なくとも75のCIE白色度を有する方法もまた提供される。185℃のヒートセッティング温度および45秒の加熱期間が好ましい。この方法では、酸化防止添加剤は使用される糸に含まれてもよい。酸化防止剤は、ヒンダードフェノールのような有機物質、または物質の混合物であってもよい。好ましい実施形態では、銅イオン、好ましくは>5ppm、およびハロゲン化物が蛍光増白剤と共に酸化防止剤として使用される。成形ブラジャーカップのような蛍光増白されたナイロン物品のこれらの条件下での製造方法もまた提供される。
【0032】
(試験方法)
糸テナシティおよび糸伸びは、インストロン(INSTRON)引張試験装置(インストロン社、米国02021マサチューセッツ州カントン(Instron Corp.,Canton,Massachusetts,USA 02021))および一定のクロスヘッド速度を用いてASTM(米国材料試験協会)方法D2256−80に従って測定される。テナシティはISO−2062の方法に従って測定され、テックス当たりのセンチ−ニュートン(cN/tex)として表される。糸パーセント伸びは、元の長さの百分率として表される、破壊荷重で測定された検体の長さの増加である。
【0033】
ポリマーRVは、ASTM D789−86に従ってギ酸法を用いて、しかしオストワルド(Ostwald)型の代わりにウベローデ(Ubbelohde)粘度計を用いて測定される。
【0034】
ポリマーアミン末端濃度は、フェノール/メタノール混合物に溶解された秤量ポリマーサンプルの標準化過塩素酸溶液での直接滴定によって測定される。不溶の艶消顔料を除去するために溶液を濾過しなかったが、濃度を計算する際にそれらを考慮に入れた。
【0035】
糸白色度は、各糸サンプルについてCIE白色度格付けに準拠する試験方法を用いて測定された。サンプルは、グレタッグ・マクベス(GRETAG MACBETH)「カラー・アイ(COLOR EYE)」反射率分光光度計を用いて、白色度(W)および黄色度(Y)について個々に測定された。先ず、色座標L、aおよびbを測定し、次に当該技術で公知の方法(ASTM方法E313−1996「機器測定された色座標から白色度および黄色度指数を計算するための標準的技法(Standard Practice for Calculating Whiteness and Yellowness Indices from Instrumentally Measured Color Coordinates)」を参照されたい)によってWおよびYを計算することによって。この測定の詳細は(非特許文献3)およびその中の参考文献に見いだされ、すべてがそっくりそのまま参照により本明細書に援用される。
【実施例】
【0036】
(蛍光増白されたポリマーを使った本発明の例)
本発明の実施例では、96デシテックスおよび68の円形断面フィラメントの糸を、アメリケムUK社(Americhem UK Ltd)製の、ナイロン6ベース担体樹脂中の蛍光増白剤のマスターバッチと共に、0.009重量%TiOを含有する40RV、50AEG(1000キログラムのポリマー当たりのアミン末端基)のナイロン6,6ポリマーから製造した。糸は、表1に示すように、様々な量の蛍光増白剤と、それ故、蛍光増白剤がその中に分散された様々な量のナイロン6ポリマーとを含有する。ポリマーを溶融紡糸し、上記のように、POYとして加工した。これらの糸をテクスチャード加工し、糸チューブへ編み、185℃〜200℃の範囲の幾つかの温度でヒートセットし、次に上記のようなCIE白色度格付けに準拠した試験方法を用いてCIE白色度について測定した。
【0037】
【表1】

【0038】
(比較例)
一連の比較例では、96デシテックスおよび68の円形断面フィラメントの糸を、表2に示すように、0.009重量%TiO、様々な量のナイロン6ポリマーを含有するが、何の蛍光増白剤も含有しない40RV、50AEG(1000キログラムのポリマー当たりのアミン末端基)のナイロン6,6ポリマーから製造した。これは、上の表1の最初の実施例1〜4で見られるいかなる効果も本当に蛍光増白剤の存在によるものであり、マスターバッチでそれらに同伴する少量の付随ナイロン6によるものではないことを検証するためであった。
【0039】
【表2】

【0040】
表1および2のこれらのデータは、0.02〜0.04重量パーセント添加剤で蛍光増白されたナイロン6,6溶融ポリマーが糸白色度のヒートセッティング後保持に非常に有益であることを示す。具体的には、本発明の糸は、より低い温度(185℃)でヒートセットされた比較例よりも200℃でヒートセッティング後の白色度保持で優れている。
【0041】
(酸化防止添加剤入りの蛍光増白されたポリマーの例)
両方の糸ポリマーが0.2%イルガノックス(IRGANOX)(登録商標)B1171、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ・カンパニー、米国ノースカロライナ州ハイポイント(CIBA Specialty Chemicals Company,High Point,North Carolina,USA)から入手されるポリマー酸化防止剤を含有したことを除いては、表1の実施例2と寸分違わぬ第1糸、および表2の比較例1と寸分違わぬ第2糸を製造した。化学的には、この酸化防止剤はヒンダードフェノール・イルガノックス(登録商標)1098と有機ホスファイト・イルガフォス(登録商標)168との混合物である。糸を前と同様に編み、ヒートセットし、CIE白色度について測定した。これらのデータは表3に示され、ポリマーへのイルガノックス(登録商標)B1171酸化防止剤のさらなる添加によって優れた白色度が得られることを示唆する。
【0042】
【表3】

【0043】
表3の実施例1は、この白色度がより高いセッティング温度で次第に失われるが、蛍光増白剤の使用が標準ポリマー(標準ポリマーが酸化防止剤を含有する場合でさえ)を紡糸することによって達成されるものよりはるかに白い糸を与えることを示す。実施例2は、酸化防止剤と併せて蛍光増白剤を使用することによって、200℃でのヒートセッティング後でさえ、ヒートセッティングなしの標準ポリマーからの糸より白い糸または布を製造することが可能であることを示す。
【0044】
(抗菌性添加剤入りの蛍光増白されたポリマーの例)
糸を、鈍光沢ポリマーが1.5%二酸化チタン、様々な量のナイロン6および蛍光増白剤ならびに0.25%の銀ベースのイオンピュア(IONPURE)抗菌性添加剤(石塚硝子株式会社(Ishizuka Glass Company)から入手され、英国スタフォードシャー州ストーンのウェルズ・プラスチックス社(Wells Plastics Limited of Stone,Staffordshire,UK)によるナイロン6でマスターバッチにされた)を含有したことを除いては、表1のものと類似のやり方で製造した。糸を前と同様に編み、ヒートセットし、CIE白色度について測定した。これらのデータを表4に示す。
【0045】
【表4】

【0046】
表4で、比較例のデータは、標準ポリマーから糸を紡糸する時に予期されるべき白色度結果、および糸が次第により高い温度でヒートセットされるにつれてどのようにこれが81から77へ60へと悪化するかを示す。
【0047】
実施例1のデータは、どのように少量の銀ベース抗菌剤の組み入れが、ヒートセッティングなしでさえ、81から70単位へ、紡糸されたままの糸で白色度のかなりの許容できない損失を引き起こすか、および温度が上がるにつれてどのようにこれがはるかに悪くなるかを示す。
【0048】
実施例3のデータは、どのように抗菌剤と一緒に蛍光増白剤の組み入れが、抗菌剤が存在しない比較例の糸より白色度の点で優れている糸を与えるか、および200℃でのセッティング後でさえ許容できる白色度レベルに留まるかを示す。
【0049】
これらのサンプル中にまた存在する少量のナイロン6は、これがマスターバッチに使用された担体ポリマーであるので現れ、白色度データにいかなる有意の効果も持たない。
【0050】
(蛍光増白された塩基性染色できる糸の例)
2つの糸を、ポリマーが塩基性(カチオン)染色できたことを除いては、表1のものと類似のやり方で製造した。第1糸は表1の幾らかのナイロン6および蛍光増白剤を含有した。同じ塩基性染色できるポリマーの第2比較糸は何の蛍光増白剤も持たなかった。これらの糸を表1のもののように処理し、表5に報告されるCIE白色度について測定した。
【0051】
【表5】

【0052】
(蛍光増白されたポリアミド6,6ポリマーを製造するための製造方法の例)
ナイロン6,6ホモポリマーを、百万部当たり44部の消泡剤および約100ppmイーストブライトOB−1と共に所望量の30%ヘキサメチレンジアミン水溶液(最終ポリマー中に所望のアミン末端基レベルを与えるために加えられる過剰ジアミンの量は、幾らかのジアミンが蒸発によって失われるので、実験によって決定される)と共にかき混ぜ機付き容器中に入れたナイロン6,6塩(ヘキサメチレンジアミンとアジピン酸とから調製された)の51.5%水溶液から製造した。混合物を2.7バール絶対圧下に室温から155℃まで加熱することによって蒸発させた。蒸発を80〜85%固形分含有率で終了させた。濃縮スラリーを不活性ガス(窒素)下にオートクレーブに移し、容器に熱を加えて混合物の温度を上げた。オートクレーブ中の自生圧を18.2バール絶対に維持した。230℃および18.2バール絶対で、百万当たり330部のTiOの40%水性分散系を、20バール窒素圧を用いてオートクレーブ中へ注入した。245℃で、オートクレーブ中の圧力を大気圧に下げ、容器への減圧の適用によって0.65バール絶対にさらに下げ、約30分間維持した。容器の温度を今形成されたポリマーの溶融温度より上に維持し、容器圧を次に減圧の解除および乾燥窒素の導入によって大気圧まで上げた。約285℃で4〜5バール絶対の加圧窒素を容器に導入した。過度の圧力はポリマー溶融物を容器開口部から冷却水の流れへレースの形で流れ込ませた。これらの急冷されたポリマーのレースをチップ化(粒状化)し、さらに水で冷却した。ポリマーチップ(約4mm長さ×3mm直径)を次に水から分離し、約60℃より下の温度まで風乾させた。得られたナイロン6,6ホモポリマーは、アミンとカルボキシル末端基とのバランスを示唆する、90%ギ酸中で測定されるように38〜50の相対粘度(RV)を有した。測定されたアミン末端基は典型的には、1000kgのポリマー当たり約45〜55グラム当量(滴定および既知のポリマー標準サンプルとの比較によって測定されるように)である。そのように製造されたポリマーは0.025〜0.035%二酸化チタンTiO艶消剤、および約0.02%の蛍光増白剤イーストブライトOB−1を含有した。
【0053】
実験を、異なる濃度で、異なる蛍光増白剤ユビテックス(Uvitex)OBを用いて繰り返した。ポリマーの特性を下の表6に記録する。
【0054】
【表6】

【0055】
(蛍光増白され、その次に着色布を与えるためにオーバー染色される布の例)
染色の正確な作用は青味付けとしてパッドオンされた、または塗布された蛍光増白剤のほとんどまたはすべてを布から除去するので、蛍光増白されたポリアミド布の染色の効果について何の先行経験もない。
【0056】
(実施例1)
96デシテックスおよび68のフィラメントのPOY糸を、公称40RV値の、明るい(0.009%TiOレベル)ナイロン6,6ポリマーから公知のやり方で製造し、76デシテックスのテクスチャード加工糸へ仮撚りテクスチャード加工した。糸をパネルへ編み、布を190℃で45秒間ヒートセットした。この後、布を1.5℃/分の温度上昇速度を用いて、大気圧で98℃で60分間染色した。使用した染料はpH7の0.15%ニロサン・ブリリアント・ブルー(Nylosan Brilliant Blue)N−FL(180%強度)であった。第2POY糸を、0.04%の蛍光増白剤をマスターバッチ添加(アメリケム)によって標準の明るいポリマー中へ組み入れたことを除いては、正確に上のように、製造し、テクスチャード加工し、布に変換し、染色した。最終糸中のナイロン6担体ポリマーの量は合計1.96%に達した。
【0057】
両布とも本質的に同じ色の深みに染まったが、蛍光増白剤を含有する布は、標準ポリマーからの布より目に見えてきれいで、黄味が少なかった。機器測定された明度を下の表7に報告する。
【0058】
【表7】

【0059】
「b」値(黄−青軸)は、蛍光増白剤を使って製造された布がほぼ4単位だけ黄味が少ないとの評価を裏付けるが、「C」(クロマ)値は、それがまた対照より明るいことを示す。
【0060】
(実施例2)
2つの異なる青緑色染料を使った本実施例は、蛍光増白された糸を使用することによってより明るい、よりきれいな着色布を製造することが可能であることだけでなく、驚くべきことに、2つの染料のうちより薄ばんやりしたもので製造した蛍光増白された布がより明るい染料で通常達成できるに過ぎない輝度を達成できることをも明らかにした。よりブリリアント染料は一般により高分子量のものであり、一様なストライプなし外観が必要とされる業界では知ってのとおり扱いにくいので、これは重要である。蛍光増白剤と共により小さい染料分子の使用は、選択された色で一様な布へのはるかにより容易な方法を提供する。
【0061】
蛍光増白剤入りおよびなしの、そして76デシテックスに延伸テクスチャード加工された、上の実施例1のテクスチャード加工糸、すなわち、96f68POYを再び布へ編み、今回は185℃で45秒間ヒートセットした。布を次にこすり洗いし、7.0のpHで98℃で60分間、および1.5℃毎分の温度上昇速度で染色した。各ケースで2つの染料、明るい青緑色色合いを与える直接染料アシドール・ブリリアント・ブルー(Acidol Brilliant Blue)M5G、およびストライプを生み出す傾向は少ないが、「より艶なしの」より薄ぼんやりした色を与える酸性染料スプラノール・ターコイズ(Supranol Turquoise)GGLを使用した。結果は、専門家のパネルによって主観的に評価されたように、蛍光増白された布が各ケースでスプラノール(より薄ぼんやりした)染料で染色した場合に対照布よりはるかにブリリアントな色を与えること、ならびに蛍光増白されたスプラノール布がよりブリリアントなアシドール染料での標準布よりさらに優れていることを示した。これらの判断は、下の表8に示す機器測定によって裏付けられた。
【0062】
【表8】

【0063】
ここで、C−値、クロマは最も関係のあるパラメーターである。表8のこれらのデータは、ブリリアントなアシドール・ターコイズ染料での標準糸について39.85の値を示す。クロマは、より薄ぼんやりしたスプラノール・ターコイズが使用された時に38.89へ下がるに過ぎない。しかしながら、より薄ぼんやりしたスプラノールは蛍光増白された糸に使用された時に40.77のC−値を与える。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
蛍光増白剤と、抗菌剤、酸化防止安定剤およびそれらの混合物からなる群から選択された成分とを含むことを特徴とするポリアミド組成物。
【請求項2】
前記ポリアミドにカチオン染料を受け入れさせる改質剤をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記ポリアミド組成物は、ポリヘキサメチレンジアミンアジパミド、ポリカプロアミド、またはそれらの共重合体を含むことを特徴とする請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
前記蛍光増白剤はトリアジン型、クマリン型、ベンゾオキサゾール型、スチルベン型および2,2’−(1,2−エテンジイルジ−4,1−フェニレン)ビスベンゾオキサゾールからなる群から選択されることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
前記蛍光増白剤が全組成物の0.01〜0.2重量パーセントの量で存在することを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
前記抗菌剤が2〜800ppm重量部の量の銀を有する銀含有化合物であることを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
前記抗菌剤が0.1〜0.4重量パーセントの量で組成物中に存在することを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
前記組成物は、ポリマーの1000キログラム当たり25〜130グラム当量のアミン末端および32より大きい相対粘度を有することを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載のポリアミド組成物。
【請求項9】
請求項1〜4のいずれか一項に記載のポリアミド組成物を含む単一のフィラメントを少なくとも含むことを特徴とする糸。
【請求項10】
低延伸糸、部分延伸糸、完全延伸糸、フラット延伸糸、延伸テクスチャード加工糸、エアジェット・テクスチャード加工糸、バルキー加工連続フィラメント糸およびスフ糸からなる群から選択されることを特徴とする請求項9に記載の糸。
【請求項11】
請求項9に記載の糸から製造されることを特徴とする布。
【請求項12】
請求項11に記載の布から製造されることを特徴とする衣類。
【請求項13】
請求項9に記載の糸から製造されることを特徴とするカーペット。
【請求項14】
蛍光増白されたナイロン糸から布を作る工程と、該布を160℃〜220℃の範囲の温度に20〜90秒間加熱する工程とを含むヒートセットされたポリアミド布の製造方法であって、該布が、ヒートセットされた後に測定された、少なくとも75のCIE白色度を有することを特徴とする方法。
【請求項15】
前記ヒートセットされたポリアミド布を金型中へ導入する工程と、該布を60秒までの間、ヒートセット温度より5〜15℃高い温度で少なくとも6バールの圧力にかけて成形品を形成する工程とをさらに含むことを特徴とする請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記成形品がブラジャーカップであることを特徴とする請求項15に記載の方法。

【公表番号】特表2007−534789(P2007−534789A)
【公表日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−547308(P2006−547308)
【出願日】平成16年12月21日(2004.12.21)
【国際出願番号】PCT/US2004/043122
【国際公開番号】WO2005/064049
【国際公開日】平成17年7月14日(2005.7.14)
【出願人】(505245302)インヴィスタ テクノロジー エスアエルエル (81)
【氏名又は名称原語表記】INVISTA Technologies S.a.r.l.
【住所又は居所原語表記】Talstrasse 80,8001 Zurich,Switzerland
【Fターム(参考)】